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特許7096731信号処理装置、表示装置、撮像装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】信号処理装置、表示装置、撮像装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/202 20060101AFI20220629BHJP
   H04N 9/69 20060101ALI20220629BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20220629BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220629BHJP
   H04N 5/66 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H04N5/202
H04N9/69
G06T5/00 740
G06T1/00 510
H04N5/66 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018147230
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020022147
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】日下部 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 勝
【審査官】西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0006273(US,A1)
【文献】特開2010-039199(JP,A)
【文献】特開2017-076955(JP,A)
【文献】特開2018-007246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/202
H04N 9/69
G06T 5/00
G06T 1/00
H04N 5/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号のRGB値を入力し、当該RGB値を三刺激値に変換する変換処理部と、
前記RGB値に基づいて、HK(ヘルムホルツ-コールラウシュ)値を算出し、当該HK値を10の値の指数とした演算を行い、第1演算結果を求めるHK算出処理部と、
前記HK算出処理部により求めた前記第1演算結果に、前記変換処理部により変換された前記三刺激値のうちの輝度を乗算し、等価輝度を求める第1乗算部と、
予め設定されたSG(システムガンマ)値を用いて、前記第1乗算部により求めた前記等価輝度の指数演算を行い、第2演算結果を求めるSG指数演算処理部と、
前記SG指数演算処理部により求めた前記第2演算結果に、前記RGB値を乗算し、システムガンマ処理後のRGB値を求める第2乗算部と、
を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
被写体を撮影して得られた映像信号のRGB値を入力してシステムガンマ処理を施し、システムガンマ処理後のRGB値を出力する信号処理装置を備えた撮像装置と、予め設定されたSG(システムガンマ)値を用いて、前記信号処理装置により出力された前記システムガンマ処理後のRGB値の輝度の指数演算を行い、指数演算結果に前記システムガンマ処理後のRGB値を乗算する装置を備えた表示装置と、からなる映像システムにおける前記信号処理装置であって、
前記映像信号のRGB値を入力し、当該RGB値に基づいて、HK(ヘルムホルツ-コールラウシュ)値を算出し、当該HK値を10の値の指数とした演算を行い、第1演算結果を求めるHK算出処理部と、
予め設定されたSG値を用いて、前記HK算出処理部により求めた前記第1演算結果の指数演算を行い、第2演算結果を求めるSG指数演算処理部と、
前記SG指数演算処理部により求めた前記第2演算結果に、前記RGB値を乗算し、前記システムガンマ処理後のRGB値を求める乗算部と、
を備えたことを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号処理装置において、
さらに、前記RGB値を複数段階に分けたときのRGBの整数値、及び当該RGBの整数値に対応するHK設定値が格納されたテーブルを備え、
前記HK算出処理部は、
前記RGB値を複数段階に分けたときのRGBの整数値及び小数値をそれぞれ求め、前記テーブルを用いて、前記整数値に対応する前記HK設定値をそれぞれ求め、複数の前記HK設定値に内挿処理を施し、前記HK値を算出する、ことを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の信号処理装置を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の信号処理装置を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の信号処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HDR(High Dynamic Range:ハイダイナミックレンジ)映像信号にシステムガンマ処理を施す信号処理装置、表示装置、撮像装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NTSC(National Television System Committee:全米テレビジョンシステム委員会)で規定される標準方式等に準拠する映像システムにおいて、入力信号の光の量(厳密にはCIE(Commission Internationale de l’Eclairage:国際照明委員会)で規定されるXYZ値(三刺激値))は、出力信号を処理する表示装置にて正確に再現されない。
【0003】
このような映像システムには、色再現の問題、再現可能な輝度の範囲の問題等があるが、入力信号及び出力信号が映像システムにおいて取り扱い可能な範囲であるとしても、入力信号のXYZ値及び出力信号のXYZ値は、通常は比例していない。
【0004】
この理由は、入力信号と出力信号との間に、システムガンマと呼ばれる画像の階調の応答特性が存在するためである。システムガンマの値をSGとすると、以下の式のとおり、入力の輝度及び出力の輝度は、比例関係ではなく、べき乗の非線形の関係となる。SG値は、1.2程度である。尚、ここで称する「輝度」は、厳密には相対的な輝度を意味し、入力信号及び出力信号共に最大値を1.0とする。以下、同じ意味で「輝度」と称する。
〔数1〕
(出力の輝度)=(入力の輝度)SG ・・・(1)
【0005】
従来、システムガンマについては、映像システムの特性上の暗黙の了解であったが、HDR規格(非特許文献1を参照)においては、システムガンマが国際規格として組み入れられた。さらに、HDRにおけるシステムガンマの取り扱いについては、ITU-Rの技術資料(非特許文献2を参照)に記載されている。
【0006】
システムガンマの取り扱いは光の量に関する取り扱いであるため、その説明にはCIEで規定されるXYZ値を用いる必要がある。しかし、ここでは説明を簡単にするため、XYZ値の代わりにRGB値を用いる。
【0007】
HDRが導入された4K8Kの映像システム(非特許文献3を参照)においては、以下の式のとおり、入力信号である光から得られるXYZ値Xin,Yin,ZinがRGB値Rin,Gin,Binに変換される。以降の説明を簡単にするため、RGB値Rin,Gin,Binは最小値0及び最大値1.0に正規化されているとする。
〔数2〕
【0008】
前述の非特許文献2によれば、映像システムにおけるHDR方式のうち放送で用いられるHLG方式の入力信号であるRGB値Rin,Gin,Binと、システムガンマの応答特性が反映された出力信号であるRGB値RSG,GSG,BSGとの間の関係は、以下の式のとおり、2種類ある。
〔数3〕
SG1=(RinSG
SG1=(GinSG
SG1=(BinSG ・・・(3)
〔数4〕
SG2=(YinSG-1・Rin
SG2=(YinSG-1・Gin
SG2=(YinSG-1・Bin ・・・(4)
前記式(3)(4)では結果が異なるため、出力信号であるRGB値RSG,GSG,BSGの下付き表記に添え字1,2を付してある。
【0009】
前記式(3)で表される出力信号は、RGB値Rin,Gin,Binのそれぞれにシステムガンマ処理を施した信号である。以下、前記式(3)の演算処理で表される特性を、「RGBのシステムガンマ」という。また、前記式(4)で表される出力信号は、XYZ値Xin,Yin,Zinのうちの輝度Yinにシステムガンマ処理を施し、RGB値Rin,Gin,Binのそれぞれに割り振った信号である。以下、前記式(4)の演算処理で表される特性を、「輝度Yのシステムガンマ」という。
【0010】
図11は、従来技術におけるRGBのシステムガンマ処理を説明する図である。信号処理装置100は、前記式(3)の演算を行うシステムガンマ処理部110,111,112を備えている。システムガンマ処理部110,111,112は、入力信号であるRGB値Rin,Gin,Binをそれぞれ入力し、RGBのシステムガンマ処理を行うことにより、出力信号であるRGB値RSG1,GSG1,BSG1を生成して出力する。
【0011】
図12は、従来技術における輝度Yのシステムガンマ処理を説明する図である。信号処理装置101は、前記式(4)の演算を行う変換処理部113、SG(システムガンマ)指数演算処理部114、乗算部115,116,117を備えている。変換処理部113は、入力信号であるRGB値Rin,Gin,Binをそれぞれ入力し、RGB値Rin,Gin,BinをXYZ値に変換し、XYZ値のうちのY値を輝度YinとしてSG指数演算処理部114に出力する。
【0012】
ここで、RGB値Rin,Gin,Binと輝度Yinとの関係は、前記式(2)の逆変換の関係となるため、輝度Yinは以下の式にて表される。
〔数5〕
in=0.2627・Rin+0.6780・Gin+0.0593・Bin ・・・(5)
【0013】
SG指数演算処理部114は、変換処理部113から輝度Yinを入力し、輝度Yのシステムガンマ処理における第1の演算である指数演算を行うことにより、輝度(YinSG-1を求める。そして、SG指数演算処理部114は、輝度(YinSG-1を乗算部115,116,117に出力する。
【0014】
乗算部115,116,117は、輝度(YinSG-1を入力し、輝度Yのシステムガンマ処理における第2の演算である乗算演算を行うことにより、前記式(4)のRGB値RSG2,GSG2,BSG2をそれぞれ求めて出力する。
【0015】
NTSCで規定される標準方式等に準拠する映像システムまたはハイビジョン(登録商標)を扱う映像システムにおけるシステムガンマは、前記式(3)に示すRGBのシステムガンマが想定されていた。
【0016】
しかしながら、前記式(3)に示すRGBのシステムガンマでは、無彩色及び特殊な有彩色(Rのみ、Gのみ、Bのみ等の単色)以外において、以下の式のとおり、入力信号と出力信号との間で比例関係が成立しない。
〔数6〕
SG1:GSG1:BSG1 ≠ Rin:Gin:Bin ・・・(6)
【0017】
つまり、入力信号であるRGB値Rin,Gin,Binに対し、前記式(3)によるRGBのシステムガンマ処理が行われると、正しい色が表示されないという問題があった。
【0018】
この問題を解決するために、前記式(3)に示すRGBのシステムガンマに代えて、前述の非特許文献3に記載されている前記式(4)に示す輝度Yのシステムガンマが導入された。
【0019】
前記式(4)に示す輝度Yのシステムガンマは、以下の式のとおり、入力信号であるRGB値Rin,Gin,Binと出力信号であるRGB値RSG2,GSG2,BSG2と間で、RGBにおける比例関係が成立するため、色相が変化することはない。
〔数7〕
SG2:GSG2:BSG2 = Rin:Gin:Bin ・・・(7)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】ITU-R Recommendation BT.2100,“Image parameter values for high dynamic range television for use in production and international programme exchange”
【文献】ITU-R Report BT.2390,“High dynamic range television for production and international programme exchange”
【文献】ITU-R Recommendation BT.2020,“Parameter values for ultra-high definition television systems for production and international programme exchange”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述のとおり、システムガンマは規格に取り入れられ、前記式(4)による輝度Yのシステムガンマ処理を行うことにより、色相の変化は生じない。
【0022】
しかしながら、前記式(4)による輝度Yのシステムガンマ処理では、明るさ感が低下するため、高画質な表示を実現する点で不十分であるという問題があった。
【0023】
一般に、人間の視覚における明るいまたは暗いの感覚は、輝度Y(CIEで規定されるXYZ値のうちのY値)だけで決まるものではない。色彩工学では、彩度が高い色は、同じ輝度値の無彩色よりも明るく見えることが知られている。
【0024】
これは、Helmholtz-Kohlrausch(ヘルムホルツ-コールラウシュ)効果(以下、HK効果という。)と呼ばれており、どの色がどの程度のHK効果があるのかについては、以下の非特許文献4,5のとおり、既に定量的に求めることができる。以下、HK効果を示す値をHK値という。このHK値は輝度とは異なる。
[非特許文献4] 納谷ほか、「物体色および光源色の Helmholtz-Kohlrausch 効果の予測-I、無彩色可変法の場合の推定」、照明学会誌、第82巻第2号、pp.131~136(1998)
[非特許文献5] 納谷ほか、「物体色および光源色の Helmholtz-Kohlrausch 効果の予測-II、有彩色可変法の場合の推定」、照明学会誌、第82巻第2号、pp.137~142(1998)
【0025】
例えば、元の画像では絵柄Aの「明るさ」と絵柄Bの「明るさ」とが近いと知覚されていたが、何らかの映像信号処理が施されたことにより、絵柄A,Bの「明るさ」に違いがあると知覚された場合を想定する。この場合、この映像信号処理の前後では画像の印象が異なるため、映像信号処理後の画像は、映像信号処理前よりも画質が劣化したと感じられてしまう。
【0026】
図13(1)は、元画像を示す図であり、図13(2)は、従来技術における輝度Yのシステムガンマ処理後の画像を示す図である。図13(1)(2)において、a1,a2は赤色の花、b1,b2は黄色の花、c1,c2は白色の花を示す。図13(1)の元画像において、赤色の花a1の輝度Yは、黄色の花b1の約1/3である。赤色の花a1の代表的な画素値は(240,1,21)であり、黄色の花b1の代表的な画素値は(211,195,133)である。この元画像に電気光変換を行った結果、赤色の花a1の輝度Yは0.19となり、黄色の花b1の輝度Yは0.59となる。
【0027】
元画像における赤色の花a1の輝度Y=0.19が、黄色の花b1の輝度Y=0.59よりも小さいため、前記式(4)から、元画像の輝度Yに応じてRGB値の変化量が異なることとなる。図13(2)の画像では、赤色の花a2の輝度Yはその低下が大きく、黄色の花b2の約1/4となる。
【0028】
つまり、赤色の花a2の代表的な画素値は(206,1,16)となり、黄色の花b2の代表的な画素値は(203,188,127)となる。この画像に電気光変換を行った結果、赤色の花a2の輝度Yは0.136となり、黄色の花b2の輝度Yは0.525となる。
【0029】
図14は、前述の非特許文献5に記載されたHK値を説明する図である。横軸は、三刺激値のうちのx値であり、縦軸はy値(輝度Y)である。また、400~700の数値は波長を示し、-0.10~0.50の数値はHK値を示す。図14から、HK値は色により異なることがわかる。
【0030】
対象の色の輝度YをYCとし、対象の色の「明るさ」と同じであると感じさせる無彩色の輝度YをYNとすると、HK値及び輝度YC,YNは、以下の関係式が成り立つ。
〔数8〕
N = YC・10HK ・・・(8)
【0031】
前記式(8)は、対象の色の輝度YCに、HK値を指数とした10HK値を乗算した場合のその乗算結果が、無彩色の輝度YNと等しいことを示す式である。つまり、HK値は、対象の色と同じ「明るさ」の無彩色を想定した場合に、対象の色の輝度YCを、無彩色の輝度YNに変換するためのパラメータである。HK値により、任意の色と同じ「明るさ」に見える無彩色の輝度YNを求めることができるため、異なる色で同じ「明るさ」に見える輝度の条件を計算することができる。
【0032】
図13(1)の元画像において、赤色の花a1のHK値は0.5程度であり、黄色の花b1のHK値はほぼ0である。赤色の花a1において、これと同じ「明るさ」を感じさせる無彩色の輝度はYN=YC・100.5=YC・3であり、黄色の花b1において、これと同じ「明るさ」を感じさせる無彩色の輝度はYN=YC・100=YC・1である。これは、赤色の花a1の輝度YCが黄色の花b1の1/3であれば、赤色の花a1及び黄色の花b1は、ほぼ同じ「明るさ」に見えることを意味している。
【0033】
前述のとおり、図13(1)の元画像における赤色の花a1の輝度Yは0.19であり、黄色の花b1の輝度Yは0.59であるため、0.19≒0.59・1/3である。したがって、図13(1)の元画像において、赤色の花a1及び黄色の花b1は、同じ明るさに見える。
【0034】
一方、図13(2)の画像における赤色の花a2の輝度Yは0.136であり、黄色の花b2の輝度Yは0.525であるため、0.136<0.525・1/3となる。したがって、図13(2)の画像において、黄色の花b2は赤色の花a2よりも明るく見える。
【0035】
このように、前記式(4)による輝度Yのシステムガンマ処理では、色の違いにより明るさが変化するため、画像の印象も変化してしまい、高画質な表示を実現することができない。
【0036】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像信号にシステムガンマ処理を施す際に、色の違いに応じた明るさの変化を抑制可能な信号処理装置、表示装置、撮像装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
前記課題を解決するために、請求項1の信号処理装置は、映像信号のRGB値を入力し、当該RGB値を三刺激値に変換する変換処理部と、前記RGB値に基づいて、HK(ヘルムホルツ-コールラウシュ)値を算出し、当該HK値を10の値の指数とした演算を行い、第1演算結果を求めるHK算出処理部と、前記HK算出処理部により求めた前記第1演算結果に、前記変換処理部により変換された前記三刺激値のうちの輝度を乗算し、等価輝度を求める第1乗算部と、予め設定されたSG(システムガンマ)値を用いて、前記第1乗算部により求めた前記等価輝度の指数演算を行い、第2演算結果を求めるSG指数演算処理部と、前記SG指数演算処理部により求めた前記第2演算結果に、前記RGB値を乗算し、システムガンマ処理後のRGB値を求める第2乗算部と、を備えたことを特徴とする。
【0038】
また、請求項2の信号処理装置は、被写体を撮影して得られた映像信号のRGB値を入力してシステムガンマ処理を施し、システムガンマ処理後のRGB値を出力する信号処理装置を備えた撮像装置と、予め設定されたSG(システムガンマ)値を用いて、前記信号処理装置により出力された前記システムガンマ処理後のRGB値の輝度の指数演算を行い、指数演算結果に前記システムガンマ処理後のRGB値を乗算する装置を備えた表示装置と、からなる映像システムにおける前記信号処理装置であって、前記映像信号のRGB値を入力し、当該RGB値に基づいて、HK(ヘルムホルツ-コールラウシュ)値を算出し、当該HK値を10の値の指数とした演算を行い、第1演算結果を求めるHK算出処理部と、予め設定されたSG値を用いて、前記HK算出処理部により求めた前記第1演算結果の指数演算を行い、第2演算結果を求めるSG指数演算処理部と、前記SG指数演算処理部により求めた前記第2演算結果に、前記RGB値を乗算し、前記システムガンマ処理後のRGB値を求める乗算部と、を備えたことを特徴とする。
【0039】
また、請求項3の信号処理装置は、請求項1または2に記載の信号処理装置において、さらに、前記RGB値を複数段階に分けたときのRGBの整数値、及び当該RGBの整数値に対応するHK設定値が格納されたテーブルを備え、前記HK算出処理部が、前記RGB値を複数段階に分けたときのRGBの整数値及び小数値をそれぞれ求め、前記テーブルを用いて、前記整数値に対応する前記HK設定値をそれぞれ求め、複数の前記HK設定値に内挿処理を施し、前記HK値を算出する、ことを特徴とする。
【0040】
さらに、請求項4の表示装置は、請求項1に記載の信号処理装置を備えたことを特徴とする。
【0041】
さらに、請求項5の撮像装置は、請求項1から3までのいずれか一項に記載の信号処理装置を備えたことを特徴とする。
【0042】
さらに、請求項6のプログラムは、コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載の信号処理装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明によれば、映像信号にシステムガンマ処理を施す際に、色の違いに応じた明るさの変化を抑制することができる。したがって、画像に対する印象の変化が少なくなり、結果として、高画質な表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例1の信号処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施例1の信号処理装置の処理例を示すフローチャートである。
図3】HK算出処理部の処理例を示すフローチャートである。
図4】テーブルのデータ構成例を示す図である。
図5】(1)は元画像を示す図である。(2)は実施例1における明るさのシステムガンマ処理後の画像を示す図である。
図6】実施例1の信号処理装置を表示装置に組み込んだ例を示す映像システムの概略図である。
図7】実施例1の信号処理装置をカメラに組み込んだ例を示す映像システムの概略図である。
図8】実施例2の信号処理装置の構成例を示すブロック図である。
図9】実施例2の信号処理装置の処理例を示すフローチャートである。
図10】実施例2の信号処理装置をカメラに組み込んだ例を示す映像システムの概略図である。
図11】従来技術におけるRGBのシステムガンマ処理を説明する図である。
図12】従来技術における輝度Yのシステムガンマ処理を説明する図である。
図13】(1)は元画像を示す図である。(2)は従来技術における輝度Yのシステムガンマ処理後の画像を示す図である。
図14】非特許文献5に記載されたHK値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。実施例1は、入力した映像信号の輝度を、当該色のHK値を用いて同じ明るさの無彩色の等価輝度に補正し、補正後の等価輝度を基準としたシステムガンマ処理、すなわちHK値を用いて明るさの感覚を基準としたシステムガンマ処理を行う例である。以下、HK値を用いて明るさの感覚を基準としたシステムガンマ処理を、明るさのシステムガンマ処理という。
【0046】
実施例2は、従来のシステムガンマ処理を行う信号処理装置101を備えた表示装置をそのまま用いることを前提に、従来のシステムガンマ処理と新たなシステムガンマ処理とを組み合わせることで、全体として、実施例1と同様の明るさのシステムガンマ処理を行う例である。
【0047】
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。前述のとおり、実施例1は、明るさのシステムガンマ処理を行う例である。
【0048】
図1は、実施例1の信号処理装置の構成例を示すブロック図であり、図2は、実施例1の信号処理装置の処理例を示すフローチャートである。この信号処理装置1は、変換処理部113、HK(ヘルムホルツ-コールラウシュ)算出処理部11、テーブル12、乗算部13、SG指数演算処理部14及び乗算部15,16,17を備えている。
【0049】
信号処理装置1は、RGB値Rin,Gin,Binに対して明るさのシステムガンマ処理を施し、RGB値RSG,GSG,BSGを求める。
【0050】
信号処理装置1がHDR映像信号のRGB値Rin,Gin,Binを入力すると(ステップS201)、変換処理部113は、RGB値Rin,Gin,BinをXYZ値に変換し、XYZ値のうちのY値を輝度Yinとする(ステップS202)。変換処理部113は、輝度Yinを乗算部13に出力する。
【0051】
HK算出処理部11は、RGB値Rin,Gin,Binに基づいてHK値を算出する(ステップS203)。HK算出処理部11は、HK値を10の値の指数とした演算を行い、10HK値を求め、10HK値を乗算部13に出力する。
【0052】
前述の非特許文献4,5には、RGB値Rin,Gin,BinからHK値を求める具体的な計算方法が記載されている。HK値は、色及び輝度により決定することができるからである。
【0053】
しかしながら、前述の非特許文献4,5に記載された計算方法は、図14に示した波長及びHK値の等高線を推定する等の複雑な計算を行う必要があることから、映像信号をリアルタイムに処理する場合には適していない。一方で、図14から、HK値は色の変化に対して滑らかに変化していることがわかる。
【0054】
そこで、HK算出処理部11は、ステップS203において、3次元ルックアップテーブルであるテーブル12及び内挿処理により、RGB値Rin,Gin,Binに対応するHK値を、簡易な処理により求める。
【0055】
図3は、HK算出処理部11の処理例を示すフローチャートであり、この処理例は、図2に示したステップS203の具体的な処理に相当する。HK算出処理部11は、RGB値Rin,Gin,Binを入力する(ステップS301)。
【0056】
HK算出処理部11は、以下の式のとおり、RGB値Rin,Gin,BinのそれぞれをN段階に分けたときの整数値nR,nG,nB及び小数値ΔR,ΔG,ΔBを求める(ステップS302)。
〔数9〕
R =[N・Rin
ΔR =N・Rin-nR
G =[N・Gin
ΔG =N・Gin-nG
B =[N・Bin
ΔB =N・Bin-nB ・・・(9)
【0057】
ここで、RGB値Rin,Gin,Binの範囲をそれぞれ0.0~1.0とする。また、RGB値Rin,Gin,BinをN段階に分けたときの整数値nR,nG,nBの範囲をそれぞれ0~Nとし、同様に、小数値ΔR,ΔG,ΔBの範囲をそれぞれ0.0~1.0(0.0から1.0未満まで)とする。前記式(9)の[x]は、x以下で最大の整数を示す。
【0058】
HK算出処理部11は、以下のステップS303~S308の処理において、以下の式のとおり、テーブル12を用いて、整数値nR,nG,nBに基づいて複数のHKの設定値を求める。そして、HK算出処理部11は、複数のHKの設定値に内挿処理を施し、具体的なHK値を求め、10HKの値を求める。
〔数10〕
【0059】
このように、HK値は、テーブル12及び内挿処理により求めることができるため、複雑な処理を行うことなく、簡易な処理にて得ることができる。
【0060】
HK算出処理部11は、パラメータiR,iG,iBを初期化する(ステップS303:iR,iG,iB=0)。そして、HK算出処理部11は、テーブル12から、整数値nR,nG,nBに対応するHK(nR,nG,nB)であるHKの設定値を読み出す(ステップS304)。
【0061】
図4は、テーブル12のデータ構成例を示す図である。このテーブル12は、R値成分の整数値nR、G値成分の整数値nG、B値成分の整数値nB、及びこれらの整数値nR,nG,nBに対応するHK(nR,nG,nB)から構成される。
【0062】
これらのデータは、ユーザにより、図14に示した波長、x値、y値及びHK値を参照して予め設定される。HK(nR,nG,nB)は、RGB値Rin,Gin,Binに対応するHK値を求めるために用いる代表的なHK値である。
【0063】
つまり、テーブル12には、RGB値Rin,Gin,Binにより特定される波長、x値及びy値に対応する全てのHK値のうち、一部のHK値がHK(nR,nG,nB)として格納される。このため、テーブル12には、一部のHK値が格納されていればよく、ユーザによるテーブル12を設定する負荷を低減することができる。
【0064】
図3に戻って、HK算出処理部11は、パラメータiR,iG,iB=1であり、HK(nR,nG,nB)を読み出す処理が完了したか否かを判定する(ステップS305)。
【0065】
HK算出処理部11は、ステップS305において、パラメータiR,iG,iB=1でない場合、すなわちHK(nR,nG,nB)を読み出す処理が完了していないと判定した場合(ステップS305:N)、ステップS306へ移行する。一方、HK算出処理部11は、ステップS305において、パラメータiR,iG,iB=1である場合、すなわちHK(nR,nG,nB)を読み出す処理が完了していると判定した場合(ステップS305:Y)、ステップS308へ移行する。
【0066】
HK算出処理部11は、ステップS305(N)から移行して、パラメータiR,iG,iBを順番にインクリメントする(ステップS306)。最初の処理では、パラメータ(iR,iG,iB)=(0,0,0)が(0,0,1)となり、ステップS304~S307のループ処理毎に、(0,1,0)(0,1,1)・・・(1,1,1)となる。
【0067】
HK算出処理部11は、整数値nR,nG,nBにパラメータiR,iG,iBをそれぞれ加算し、整数値nR,nG,nBを更新する(ステップS307:nR=nR+iR,nG=nG+iG,nB=nB+iB)。そして、HK算出処理部11は、ステップS304へ移行し、更新した整数値nR,nG,nBを用いて、テーブル12からHK(nR,nG,nB)を読み出す。
【0068】
HK算出処理部11は、ステップS305(Y)から移行して、テーブル12から読み出したHK(nR,nG,nB)であるHKの設定値を用いて内挿処理を行い、具体的なHK値を求める(ステップS308)。
【0069】
HK算出処理部11は、HK値から10HK値を求め、10HK値を乗算部13に出力する(ステップS309)。
【0070】
図2に戻って、乗算部13は、変換処理部113から輝度Yinを入力すると共に、HK算出処理部11から10HK値を入力し、10HK値に輝度Yinを乗算して等価輝度(10HK・Yin)を求める(ステップS204)。そして、乗算部13は、等価輝度(10HK・Yin)をSG指数演算処理部14に出力する。
【0071】
等価輝度(10HK・Yin)は、前記式(8)のとおり、当該等価輝度(10HK・Yin)を有する無彩色の映像信号の明るさの感覚と、輝度Yinを有する映像信号の明るさの感覚とが同じであるという意味において、等価である。
【0072】
これにより、当該信号処理装置1が入力したRGB値Rin,Gin,Binの輝度Yinに対し、当該色のHK値を用いて同じ明るさの無彩色の等価輝度(10HK・Yin)が得られる。そして、後段のSG指数演算処理部14により、等価輝度(10HK・Yin)に対し、システムガンマ値SGを用いた指数演算が行われる。
【0073】
SG指数演算処理部14は、乗算部13から等価輝度(10HK・Yin)を入力する。SG指数演算処理部14は、予め設定されたシステムガンマ値SGから1を減算して減算結果(SG-1)を求める。そして、SG指数演算処理部14は、減算結果(SG-1)を等価輝度(10HK・Yin)の指数としたシステムガンマの指数演算を行い、指数演算結果(10HK・YinSG-1を求める(ステップS205)。SG指数演算処理部14は、指数演算結果(10HK・YinSG-1を乗算部15,16,17にそれぞれ出力する。
【0074】
ここで、本発明の実施形態では、等価輝度(10HK・Yin)に対し、システムガンマ値SGを用いた指数演算が行われるが、図12に示した従来の信号処理装置101では、輝度Yinに対し、システムガンマ値SGを用いた指数演算が行われる。
【0075】
乗算部15,16,17は、RGB値Rin,Gin,Binを入力すると共に、SG指数演算処理部14から指数演算結果(10HK・YinSG-1を入力する。そして、乗算部15,16,17は、以下の式のとおり、指数演算結果(10HK・YinSG-1にRGB値Rin,Gin,Binを乗算し(ステップS206)、RGB値RSG,GSG,BSGをそれぞれ求めて出力する(ステップS207)。
〔数11〕
SG=(10HK・YinSG-1・Rin
SG=(10HK・YinSG-1・Gin
SG=(10HK・YinSG-1・Bin ・・・(11)
【0076】
このように、信号処理装置1において、明るさのシステムガンマ処理によりRGB値RSG,GSG,BSGが算出される際に、等価輝度(10HK・Yin)に対して、システムガンマ値SGによる指数演算が行われる。
【0077】
この等価輝度(10HK・Yin)は、前記式(8)に示したとおり、入力したRGB値Rin,Gin,Binの輝度Yinを、当該色のHK値を用いて同じ明るさの無彩色の輝度に補正した値であり、HK値を用いた明るさの感覚を表す値である。
【0078】
つまり、信号処理装置1が入力した第1のRGB値Rin,Gin,Binによる色の明るさの感覚と、第2のRGB値Rin,Gin,Binによる色の明るさの感覚との間の相対的な印象を第1の印象とし、明るさのシステムガンマ処理により得られる、第1のRGB値Rin,Gin,Binに対応する第1のRGB値RSG,GSG,BSGによる色の明るさの感覚と、第2のRGB値Rin,Gin,Binに対応する第2のRGB値RSG,GSG,BSGによる色の明るさの感覚との間の相対的な印象を第2の印象とする。そうすると、明るさのシステムガンマ処理前の第1の印象と、明るさのシステムガンマ処理後の第2の印象は同じとなる。
【0079】
図5(1)は、元画像を示す図であり、図5(2)は、実施例1における明るさのシステムガンマ処理後の画像を示す図である。図5(1)(2)において、a1,a3は赤色の花、b1,b3は黄色の花、c1,c3は白色の花を示す。図5(1)の元画像は、図13(1)の元画像と同じであり、赤色の花a1の輝度Yは、黄色の花b1の約1/3であり、両花a1,b1の明るさは同じである。
【0080】
図5(2)の画像は、赤色の花a3の代表的な画素値が(230,1,19)となり、黄色の花b3の代表的な画素値が(201,186,126)となる。赤色の花a3の輝度Yは0.175となり、黄色の花b3の輝度Yは0.532となる。この場合の赤色の花a3の輝度Yは、黄色の花b3の約1/3であり、両花a3,b3の明るさは同じである。
【0081】
したがって、明るさのシステムガンマ処理前の図5(1)の画像において、赤色の花a1及び黄色の花b1は同じ明るさに見え、明るさのシステムガンマ処理後の図5(2)の画像においても、赤色の花a3及び黄色の花b3は同じ明るさに見える。
【0082】
尚、システムガンマ処理前において両花a1,b1の明るさの感覚が異なる場合には、明るさのシステムガンマ処理後においても、同じ程度で明るさの感覚が異なることとなり、明るさの違いの程度はそのまま反映される。
【0083】
以上のように、実施例1の信号処理装置1によれば、変換処理部113は、RGB値Rin,Gin,BinをXYZ値に変換し、Y値を輝度Yinとする。
【0084】
HK算出処理部11は、RGB値Rin,Gin,BinのそれぞれをN段階に分けたときの整数値nR,nG,nB及び小数値ΔR,ΔG,ΔBを求め、テーブル12を用いて、整数値nR,nG,nBに基づいて複数のHKの設定値を求める。そして、HK算出処理部11は、複数のHKの設定値に内挿処理を施し、具体的なHK値を求め、10HK値を求める。
【0085】
乗算部13は、10HK値に輝度Yinを乗算して等価輝度(10HK・Yin)を求める。SG指数演算処理部14は、減算結果(SG-1)を等価輝度(10HK・Yin)の指数としたシステムガンマの指数演算を行い、指数演算結果(10HK・YinSG-1を求める。
【0086】
乗算部15,16,17は、指数演算結果(10HK・YinSG-1にRGB値Rin,Gin,Binを乗算し、前記式(11)に示したRGB値RSG,GSG,BSGをそれぞれ求める。
【0087】
このように、信号処理装置1における明るさのシステムガンマ処理により、等価輝度(10HK・Yin)である明るさを基準として、RGB値RSG,GSG,BSGが生成される。この等価輝度(10HK・Yin)は、前記式(8)に示したとおり、入力したRGB値Rin,Gin,Binの輝度Yinを、当該色のHK値を用いて同じ明るさの無彩色の輝度に補正した値であり、HK値を用いた明るさの感覚を表す値である。
【0088】
これにより、明るさのシステムガンマ処理前における複数の色に対する相対的な明るさの感覚と、当該システムガンマ処理後における複数の色に対する相対的な明るさの感覚とが、同じとなる。
【0089】
したがって、映像信号にシステムガンマ処理を施す際に、色の違いに応じた明るさの変化を抑制することができる。このため、画像に対する印象の変化が少なくなり、結果として、高画質な表示を実現することができる。
【0090】
〔実施例1の第1適用例/表示装置に適用した例〕
次に、図1に示した実施例1の信号処理装置1の第1適用例について説明する。図6は、実施例1の信号処理装置1を表示装置に組み込んだ例を示す映像システムの概略図である。この映像システムは、被写体20を撮影するカメラ21、及び表示装置22を備えて構成される。カメラ21及び表示装置22は、伝送路23を介して接続される。
【0091】
カメラ21は撮像装置であり、光/電気変換部(OE部)30を備えている。OEは、光量の信号を電気信号に変換する関数を示している。光/電気変換部30は、被写体20を撮影することで得られるRGB値Rin,Gin,Binを入力し、RGB値Rin,Gin,Binの光量の信号をRGB値R’in,G’in,B’inの電気信号である映像信号に変換する。そして、光/電気変換部30は、RGB値R’in,G’in,B’inを、伝送路23を介して表示装置22に出力する。
【0092】
ここで、光量の信号をE(Rin,Gin,Bin)とし、変換後の映像信号をE’とすると、光/電気変換部30による演算は、以下の式で表される。
〔数12〕
a=0.17883277,b=1-4・a,c=0.5-a・ln(4・a)である。
【0093】
表示装置22は、電気/光変換部(OE-1部)31及び信号処理装置1を備えている。OE-1は、電気信号を光量の信号に変換する関数を示している。電気/光変換部31は、カメラ21から伝送路23を介してRGB値R’in,G’in,B’inを入力し、RGB値R’in,G’in,B’inの映像信号をRGB値Rin,Gin,Binの光量の信号に変換する。そして、電気/光変換部31は、RGB値Rin,Gin,Binを信号処理装置1に出力する。
【0094】
ここで、電気/光変換部31による演算は、以下の式で表される。
〔数13〕
a,b,cは、前記式(12)に示したとおりである。
【0095】
信号処理装置1は、図1に示した信号処理装置1であり、電気/光変換部31からRGB値Rin,Gin,Binを入力し、図1に示した構成にて図2に示した処理例のように、明るさのシステムガンマ処理を行う。そして、信号処理装置1は、明るさのシステムガンマ処理後のRGB値RSG,GSG,BSGをそれぞれ求めて出力する。
【0096】
以上のように、図1に示した実施例1の信号処理装置1を表示装置22に組み込むことにより、明るさのシステムガンマ処理を表示装置22において行うことができ、色の違いに応じた明るさの変化を抑制することができる。したがって、画像に対する印象の変化が少なくなり、結果として、高画質な表示を実現することができる。
【0097】
〔実施例1の第2適用例/カメラに適用した例〕
次に、図1に示した実施例1の信号処理装置1の第2適用例について説明する。図7は、実施例1の信号処理装置1をカメラに組み込んだ例を示す映像システムの概略図である。この映像システムは、被写体20を撮影するカメラ24、及び表示装置25を備えて構成される。カメラ24及び表示装置25は、伝送路23を介して接続される。
【0098】
カメラ24は撮像装置であり、信号処理装置1及び光/電気変換部30を備えている。信号処理装置1は、被写体20を撮影することで得られるRGB値Rin,Gin,Binを入力し、図1に示した構成にて図2に示した処理例のように、明るさのシステムガンマ処理を行う。そして、信号処理装置1は、明るさのシステムガンマ処理後のRGB値RSG,GSG,BSGをそれぞれ求めて光/電気変換部30に出力する。
【0099】
光/電気変換部30は、信号処理装置1からRGB値RSG,GSG,BSGを入力し、図6に示した光/電気変換部30と同様の処理を行い、RGB値R’SG,G’SG,B’SGを、伝送路23を介して表示装置25に出力する。
【0100】
表示装置25は、電気/光変換部31を備えている。電気/光変換部31は、カメラ24から伝送路23を介してRGB値R’SG,G’SG,B’SGを入力し、図6に示した電気/光変換部31と同様の処理を行う。そして、電気/光変換部31は、電気/光変換にて求めたRGB値RSG,GSG,BSGを、明るさのシステムガンマ処理後のRGB値RSG,GSG,BSGとして出力する。
【0101】
以上のように、図1に示した実施例1の信号処理装置1をカメラ24に組み込むことにより、明るさのシステムガンマ処理をカメラ24において行うことができ、色の違いに応じた明るさの変化を抑制することができる。したがって、画像に対する印象の変化が少なくなり、結果として、表示装置25において高画質な表示を実現することができる。
【0102】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。前述のとおり、実施例2は、従来のシステムガンマ処理を行う信号処理装置101を備えた表示装置をそのまま用いることを前提に、従来のシステムガンマ処理と新たなシステムガンマ処理とを組み合わせることで、全体として、実施例1と同様の明るさのシステムガンマ処理を行う例である。
【0103】
図8は、実施例2の信号処理装置の構成例を示すブロック図であり、図9は、実施例2の信号処理装置の処理例を示すフローチャートである。この信号処理装置2は、HK算出処理部11、テーブル12、SG指数演算処理部18及び乗算部15,16,17を備えている。
【0104】
信号処理装置2を備えたカメラ、及び表示装置からなる映像システムにおいて、表示装置が従来の輝度Yのシステムガンマ処理を行うことを前提に、全体として明るさのシステムガンマ処理を行うように、信号処理装置2は、所定のシステムガンマ処理を行う。
【0105】
信号処理装置2がHDR映像信号のRGB値Rin,Gin,Binを入力する(ステップS901)。HK算出処理部11は、図1のHK算出処理部11及び図2のステップS203の処理と同様に、RGB値Rin,Gin,Binに基づいてHK値を算出する(ステップS902)。HK算出処理部11は、HK値から10HK値を求め、10HK値をSG指数演算処理部18に出力する。
【0106】
SG指数演算処理部18は、HK算出処理部11から10HK値を入力する。SG指数演算処理部18は、予め設定されたシステムガンマ値SGから1を減算して減算結果(SG-1)を求め、減算結果(SG-1)をシステムガンマ値SGで除算し、除算結果(SG-1)/SGを求める。
【0107】
SG指数演算処理部18は、除算結果(SG-1)/SGを輝度10HKの指数とした指数演算を行い、指数演算結果10HK・(SG-1)/SGを求める(ステップS903)。SG指数演算処理部18は、指数演算結果10HK・(SG-1)/SGを乗算部15,16,17にそれぞれ出力する。
【0108】
乗算部15,16,17は、RGB値Rin,Gin,Binを入力すると共に、SG指数演算処理部18から指数演算結果10HK・(SG-1)/SGを入力する。そして、乗算部15,16,17は、以下の式のとおり、指数演算結果10HK・(SG-1)/SGにRGB値Rin,Gin,Binを乗算し(ステップS904)、RGB値Rm,Gm,Bmをそれぞれ求めて出力する(ステップS905)。
〔数14〕
【0109】
以上のように、実施例2の信号処理装置2によれば、HK算出処理部11は、RGB値Rin,Gin,BinのそれぞれをN段階に分けたときの整数値nR,nG,nB及び小数値ΔR,ΔG,ΔBを求め、テーブル12を用いて、整数値nR,nG,nBに基づいて複数のHKの設定値を求める。そして、HK算出処理部11は、複数のHKの設定値に内挿処理を施し、具体的なHK値を求め、10HK値を求める。
【0110】
SG指数演算処理部18は、除算結果(HK・(SG-1)/SG)を輝度10HKの指数とした指数演算を行い、指数演算結果10HK・(SG-1)/SGを求める。
【0111】
乗算部15,16,17は、指数演算結果10HK・(SG-1)/SGにRGB値Rin,Gin,Binを乗算し、前記式(14)に示したRGB値Rm,Gm,Bmをそれぞれ求める。
【0112】
これにより、後述する図10に示すように、信号処理装置2と図12に示した従来の信号処理装置101とを組み合わせることにより、実施例1と同様に、明るさのシステムガンマ処理を行うことができる。
【0113】
したがって、映像信号にシステムガンマ処理を施す際に、色の違いに応じた明るさの変化を抑制することができる。このため、画像に対する印象の変化が少なくなり、結果として、高画質な表示を実現することができる。
【0114】
また、従来のシステムガンマ処理を行う信号処理装置101を備えた表示装置27をそのまま用いることができるから、表示装置27の回路等を変更する手間を省くことができる。
【0115】
〔実施例2の適用例/カメラに適用した例〕
次に、図8に示した実施例2の信号処理装置2の適用例について説明する。図10は、実施例2の信号処理装置2をカメラに組み込んだ例を示す映像システムの概略図である。この映像システムは、被写体20を撮影するカメラ26、及び表示装置27を備えて構成される。カメラ26及び表示装置27は、伝送路23を介して接続される。
【0116】
カメラ26は撮像装置であり、信号処理装置2及び光/電気変換部30を備えている。信号処理装置2は、被写体20を撮影することで得られるRGB値Rin,Gin,Binを入力する。そして、信号処理装置2は、図8に示した構成にて図9に示した処理例のとおり、映像システム全体で明るさのシステムガンマ処理が行われるように、システムガンマ処理を行う。信号処理装置2は、システムガンマ処理後のRGB値Rm,Gm,Bmをそれぞれ求めて光/電気変換部30に出力する。
【0117】
光/電気変換部30は、信号処理装置2からRGB値Rm,Gm,Bmを入力し、図6に示した光/電気変換部30と同様の処理を行い、RGB値R’ m,G’ m,B’ mを、伝送路23を介して表示装置27に出力する。
【0118】
表示装置27は、電気/光変換部31、及び図12に示した従来の信号処理装置101を備えている。電気/光変換部31は、カメラ26から伝送路23を介してRGB値R’ m,G’ m,B’ mを入力し、図6に示した電気/光変換部31と同様の処理を行う。そして、電気/光変換部31は、電気/光変換にて求めたRGB値Rm,Gm,Bmを、信号処理装置2によるシステムガンマ処理後のRGB値Rm,Gm,Bmとして信号処理装置101に出力する。
【0119】
信号処理装置101は、電気/光変換部31からRGB値Rm,Gm,Bmを入力し、図12に示した信号処理装置101と同様の処理を行い、以下の式のとおり、RGB値RSG,GSG,BSGを求める。
〔数15〕
SG=(YmSG-1・Rm
SG=(YmSG-1・Gm
SG=(YmSG-1・Bm ・・・(15)
【0120】
信号処理装置101は、RGB値RSG,GSG,BSGを、明るさのシステムガンマ処理後のRGB値RSG,GSG,BSGとして出力する。
【0121】
ここで、信号処理装置2によるシステムガンマ処理を示す前記式(14)と、信号処理装置101による従来の輝度Yのシステムガンマ処理を示す前記式(15)とを組み合わせると、明るさのシステムガンマ処理を示す前記式(11)となることを説明する。
【0122】
前記式(14)から、輝度Ym及び輝度Yinの関係は、以下のとおりとなる。
〔数16〕
【0123】
前記式(15)の右辺の輝度Ymに前記式(16)を代入し、前記式(15)の右辺のRGB値Rm,Gm,Bmに前記式(14)を代入することにより、前記式(11)を得ることができる。
【0124】
以上のように、従来の信号処理装置101を備えた表示装置27を含む映像システムにおいて、図8に示した実施例2の信号処理装置2をカメラ26に組み込むことにより、信号処理装置101による従来のシステムガンマ処理と、信号処理装置2によるシステムガンマ処理とを組み合わせることができる。その結果、明るさのシステムガンマ処理を、映像システム全体において行うことができ、色の違いに応じた明るさの変化を抑制することができる。
【0125】
したがって、画像に対する印象の変化が少なくなり、結果として、表示装置27において高画質な表示を実現することができる。また、表示装置27をそのまま用いることができるから、表示装置27の回路等を変更する手間を省くことができる。
【0126】
以上、実施例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば前記実施例1では、HK算出処理部11は、RGB値Rin,Gin,BinからHK値を求める際に、テーブル12及び内挿処理により、前記式(10)にてHK値を求めるようにした。本発明は、HKの算出処理を限定するものではなく、前述の非特許文献4,5等に記載された他の処理を用いるようにしてもよい。
【0127】
尚、本発明の実施例1による信号処理装置1及び実施例2による信号処理装置2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。信号処理装置1,2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0128】
信号処理装置1に備えた変換処理部113、HK算出処理部11、テーブル12、乗算部13、SG指数演算処理部14及び乗算部15,16,17の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、信号処理装置2に備えたHK算出処理部11、テーブル12、SG指数演算処理部18及び乗算部15,16,17の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0129】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0130】
1,2,100,101 信号処理装置
11 HK(ヘルムホルツ-コールラウシュ)算出処理部
12 テーブル
13,15,16,17,115,116,117 乗算部
14,18,114 SG(システムガンマ)指数演算処理部
20 被写体
21,24,26 カメラ
22,25,27 表示装置
23 伝送路
30 光/電気変換部(OE部)
31 電気/光変換部(OE-1部)
110,111,112 システムガンマ処理部
113 変換処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14