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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】検査装置および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20220629BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220629BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G03F7/20 521
G02B5/30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020517972
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018074845
(87)【国際公開番号】W WO2019063314
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】62/565,021
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ケルカー、パラグ、ヴィナヤック
(72)【発明者】
【氏名】クロイツァー、ジャスティン、ロイド
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-301411(JP,A)
【文献】特開2006-145644(JP,A)
【文献】特開2009-147317(JP,A)
【文献】特表平02-502588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G02B 5/04
G02B 5/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定される面上のアライメントマークに放射ビームを提供し、前記面上のアライメントマークから方向転換された放射を受け取るように構成された光学システムと、
前記方向転換された放射を測定するように構成された検出システムと、
を備える検査装置であって、
前記光学システムは、前記方向転換された放射をp偏光放射とs偏光放射とに分割するための偏光ビームスプリッタを備え、前記偏光ビームスプリッタは、第1の方向に第1の色オフセットを提供するように構成された第1多層偏光コーティングと、前記第1の方向と異なる第2の方向に第2の色オフセットを提供するように構成された第2多層偏光コーティングとを備え、前記第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、前記第1および第2の色オフセットよりも小さくなり、
前記検出システムは、前記偏光ビームスプリッタから出射されたp偏光放射を検出して第1検出信号を提供する第1検出器と、前記偏光ビームスプリッタから出射されたs偏光放射を検出して第2検出信号を提供する第2検出器と、前記第1検出信号および前記第2検出信号の強度変動に基づいて、前記アライメントマークのアライメントを決定するように構成された処理ユニットと、を備える、検査装置。
【請求項2】
前記第1または第2の偏光コーティングは、マクニール型の多層偏光コーティングである、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1の方向は、前記第2の方向と本質的に反対である、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1の色オフセットは、本質的に前記第2の色オフセットと同じである、請求項1から3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
光学システムを用いて、測定される面上のアライメントマークに放射ビームを提供し、前記面上のアライメントマークから方向転換された放射を受け取ることと、
前記方向転換された放射を検出して測定値を取得することと、
を備える測定方法であって、
前記光学システムは、前記方向転換された放射をp偏光放射とs偏光放射とに分割するための偏光ビームスプリッタを備え、前記偏光ビームスプリッタは、第1の方向に第1の色オフセットを提供するように構成された第1多層偏光コーティングと、前記第1の方向と異なる第2の方向に第2の色オフセットを提供するように構成された第2多層偏光コーティングとを備え、前記第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、前記第1および第2の色オフセットよりも小さくなり、
前記測定値を取得することは、
前記偏光ビームスプリッタから出射されたp偏光放射を検出して第1検出信号を提供することと、
前記偏光ビームスプリッタから出射されたs偏光放射を検出して第2検出信号を提供することと、
前記第1検出信号および前記第2検出信号の強度変動に基づいて、前記アライメントマークのアライメントを決定することと、を備える、測定方法。
【請求項6】
前記第1または第2の偏光コーティングは、マクニール型の多層偏光コーティングである、請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
前記第1の方向は、前記第2の方向と本質的に反対である、請求項5または6に記載の測定方法。
【請求項8】
前記第1の色オフセットは、本質的に前記第2の色オフセットと同じである、請求項5から7のいずれかに記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/565,021号の優先権を要求し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本説明は、概して光学コーティングおよび/または反射ジオメトリに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスなどのデバイスの製造は、通常、多数の製造プロセスを使用して基板(例えば、半導体ウェハ)を処理して、デバイスのさまざまなフィーチャ及びしばしば多層を形成することを含む。そのような層および/またはフィーチャは、通常、例えば蒸着、リソグラフィ、エッチング、化学機械研磨、およびイオン注入を使用して製造および処理される。基板上の複数のダイ上に複数のデバイスを作成し、個々のデバイスに分離することができる。このデバイス製造プロセスは、パターニングプロセスと見なされる。パターニングプロセスは、基板上にパターンを提供するために、リソグラフィ装置を使用した光学および/またはナノインプリントリソグラフィなどのパターン転写ステップを含み、通常、しかしオプションとして、現像装置によるレジスト現像、ベークツールを使用した基板のベーキング、エッチング装置によるパターンのエッチングなどの1つ以上の関連するパターン処理ステップを含む。さらに、パターニングプロセスには1つ以上の計測プロセスが含まれる。
【0004】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板、通常は基板のターゲット部分に転写する
機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、集積回路の個々の層に形成されるべきパターンを形成するために使用されうる。このパターンが基板(例えばシリコンウェハ)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイを含む)ターゲット部分に転写される。パターン転写は典型的には基板に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に一枚の基板にはネットワーク状に隣接する一群のターゲット部分が含まれ、これらは連続的に露光される。
【0005】
さらに、計測プロセスは、プロセスを監視および/または制御するために、パターニングプロセス中のさまざまなステップで使用される。たとえば、計測プロセスは、例えば、パターニングプロセスの実行が1つ以上の特性から決定され得るように、パターニングプロセスの巻に基板上に形成されるフィーチャの相対位置(レジストレーション、オーバーレイ、アライメントなど)または寸法(線幅、限界寸法(CD)、厚さなど)など、基板の1つ以上の特性を測定するために使用される。1つ以上の特性が許容できない場合(例えば、特性が所定の範囲外)、パターニングプロセスの1つ以上の変数は、パターニングプロセスによって製造された基板が許容可能な特性を持つように、例えば1つ以上の特性の測定に基づいて設計または変更されてもよい。これらの計測プロセスの多くは、通常、さまざまな表面に放射を入射させることを含む。
【0006】
そのような計測の例の一つは位置合わせである。パターニングプロセスの一部として、異なる処理ステップでは、基板上に異なる層を連続して形成する必要がある。したがって、基板を、その上に形成された以前のパターンに対して高い精度で位置決めすることが必要となる。一般に、アライメントマークは、位置合わせされる基板上に配置され、2番目のオブジェクトを基準にして配置される。例えばリソグラフィ装置の位置合わせシステムを使用して、アライメントマークの位置(例えば、XおよびY位置)を検出し、アライメントマークを使用して基板を位置合わせして、パターニングデバイスからの正確な露光を保証できる。通常、アライメントシステムには独自の照明システムと検出システムがある。
【0007】
計測の別の例はレベル検知である。パターニングプロセスの一部として、処理ステップでは、リソグラフィ装置の焦点または焦点付近で基板上に層を形成する必要がある。したがって、高い精度で、基板を焦点に対して位置決めすること、および/または基板の特定のレベルの近くに焦点を高精度で調整することが必要である。したがって、投影システムに対する基板の高さおよび/または方向(オリエンテーション)を決定するために、レベルセンサを設けることができる。一実施形態では、これは、1つ以上の放射ビームを基板に対して傾斜角で投影し、リダイレクトされた放射を捕捉することにより行われる。検出されたリダイレクト放射を使用して、基板の高さ(たとえばZ方向)および/または方向(たとえばXまたはY周りの回転)を決定できる。その後、これらの結果を使用して、焦点に対する基板の位置を制御したり、および/または、基板に対する焦点を調整したりできる。通常、レベルセンサには独自の照明システムと検出システムがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
様々な装置(例えば、アライメント、高さ、オーバーレイなどを決定するために使用される検査装置の照明システムなど)は、処理(たとえば、測定)のためにある範囲の放射波長を提供することができる。以下でさらに説明するように、第1の波長を使用する放射と第2の異なる波長を使用する放射との間に色オフセット(chromatic offset)が発生する可能性がある。したがって、様々な異なる波長の放射を使用する装置において色オフセットを低減するための1つまたは複数の技術が提供される。
【0009】
一実施形態では、検査装置が提供される。この検査装置は、測定される面に放射ビームを提供し、該面から方向転換された放射を受け取るように構成された光学システムと、方向転換された放射を測定するよう構成された検出システムと、を備える。光学システムは、放射を処理するための光学素子を含み、光学素子は、放射の低減された色オフセットを生じさせるように構成されたマクニール型の多層偏光コーティングを備える。
【0010】
一実施形態では、測定方法が提供される。この方法は、測定される面に放射ビームを提供し、該面から方向転換された放射を受け取ることであって、放射の低減された色オフセットを生じさせるように構成されたマクニール型の多層偏光コーティングを備える光学素子を使用して放射が処理されることと、方向転換された放射を検出して測定値を取得することと、を備える。
【0011】
一実施形態では、検査装置が提供される。この検査装置は、測定される面に放射ビームを提供し、該面から方向転換された放射を受け取るように構成された光学システムと、方向転換された放射を測定するように構成された検出システムとを備える。光学システムは、放射を処理するための光学素子を備える。光学素子は、第1の方向または配向に第1の色オフセットを提供するように構成された第1多層偏光コーティングと、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供するように構成された第2多層偏光コーティングとを備え、第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットが、第1および第2の色オフセットよりも小さくなる。
【0012】
このセクションは、実施形態を要約し、簡単に紹介するためのものである。セクションの目的を不明瞭にしないために、単純化または省略が行われる場合がある。そのような単純化または省略は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下で詳細に説明される。本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。そのような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に提示される。追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付図面は、本発明を例示し、説明とともに、発明の原理を説明し、当業者が発明を行い使用することを可能とするのにさらに役立つ。
【0014】
図1】リソグラフィ装置の一実施形態を示す図である。
【0015】
図2】リソグラフィセル又はクラスタの一実施形態を示す図である。
【0016】
図3】例示的な検査装置および計測技術を概略的に示す図である。
【0017】
図4】例示的な検査装置を概略的に示す図である。
【0018】
図5】検査装置の照明スポットと計測ターゲットとの間の関係を示す図である。
【0019】
図6A】ターゲットを測定するように構成された検査装置の概略図である。
【0020】
図6B】所定の照明方向に対するターゲット周期構造の回折スペクトルの詳細を概略的に示す図である。
【0021】
図6C】回折に基づく測定のために図6Aの検査装置を使用する際にさらなる照明モードを提供するための照明開口を概略的に示す図である。
【0022】
図6D図6Aの検査装置で使用するためのさらなる照明開口を概略的に示す図である。
【0023】
図7】複数の周期構造ターゲットの形およびターゲット上の測定スポットの輪郭を示す図である。
【0024】
図8図6Aの検査装置で得られた図7のターゲットの像を示す図である。
【0025】
図9】アライメントマークを測定するように構成されたアライメントシステムの形態の検査装置の概略図である。
【0026】
図10図3図4および図9に示されているような検査装置などの装置で使用できる例示的な偏光ビームスプリッタを概略的に示す図である。
【0027】
図11】例示的な偏光コーティングに入射する放射の波長に対する色オフセットのグラフである。
【0028】
図12】基板内の複数の入射角について、基板と接する偏光コーティングの層の屈折率に対する基板の屈折率のグラフである。
【0029】
図13】一実施形態によるコーティングに入射する放射の波長に対する色オフセットのグラフである。
【0030】
図14】一実施形態によるコーティングに入射する放射の波長に対する反射および透過消光比のグラフである。
【0031】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照した以下の詳細な説明から、より明らかであろう。これらの図面において、同一の参照符号は、全体を通じて対応する要素を示す。図面において、同一の参照番号は、概して、同一、機能的に同様、および/または構造的に同様の要素を示す。要素が最初に現れる図面は、対応する参照番号の最も左の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態をより詳細に説明する前に、実施形態を実装可能である例示的な環境を提示することが有益である。
【0033】
図1は、リソグラフィ装置LAを模式的に示す。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成された照明光学システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成された第1位置決め装置PMに接続されているパターニングデバイスサポートまたはサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストでコーティングされたウェハ)Wを保持し、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成された第2位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウェハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイを含む)ターゲット部分Cに投影するよう構成されている投影光学システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0034】
照明光学システムは、屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、あるいは他の種類の光学素子などの各種の光学素子、またはこれらの組合せを含み得るものであり、放射の向きや形状を整え、あるいは放射を制御するためのものである。
【0035】
パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、およびパターニングデバイスが真空環境で保持されるか否か等のその他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイスサポートは、機械的固定、真空固定、静電固定、またはパターニングデバイスを保持するその他の固定技術を用いてもよい。パターニングデバイスサポートは、例えばフレームまたはテーブルであってもよく、これらは固定されていてもよいし必要に応じて移動可能であってもよい。パターニングデバイスサポートは、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して所望の位置にあることを保証してもよい。本明細書における「レチクル」または「マスク」なる用語の使用は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同じ意味と見なしてよい。
【0036】
本明細書において「パターニングデバイス」なる用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するために放射ビーム断面にパターンを与えるのに使用される何らかのデバイスについて言及するものとして広義に解釈される。放射ビームに付与されたパターンは、基板のターゲット部分に望まれるパターンに厳密に一致していなくてもよい。例えば、位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャがパターンに含まれていてもよい。一般に、放射ビームに付与されたパターンは、ターゲット部分に生成される集積回路等のデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0037】
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0038】
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイまたは反射型マスクを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。装置が反射型である一実施形態では、投影システムは、主に反射光学素子(ミラー)で構成されてよい。
【0039】
また、リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が比較的屈折率の高い液体、たとえば水で覆われ、それにより投影システムと基板との間の空間が充填されるタイプの装置であってもよい。液浸液は例えばマスクと投影システムとの間などの、リソグラフィ装置の他の空間に与えられてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を大きくするため技術として周知である。本明細書で使用される「液浸(immersion)」という用語は、基板などの構造が液体の中に沈められなければならないことを意味するものではなく、むしろ露光中投影システムと基板との間に液体がある程度のことを意味するものである。
【0040】
図1に示されるように、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源がエキシマレーザである場合には、光源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラーおよび/またはビームエキスパンダを含む。あるいは光源が例えば水銀ランプである場合には、光源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系と総称される。
【0041】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するよう構成されるアジャスタADを含んでもよい。一般には、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径および/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ-アウタ(σ-outer)」、「シグマ-インナ(σ-inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなどの種々の他の要素を含んでもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性および強度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。
【0042】
放射ビームBは、パターニングデバイスサポート(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射して、当該パターニングデバイスによりパターンが付与される。パターニングデバイス(例えばマスク)MAを通過した放射ビームBは投影光学システムPSに進入する。投影システムPLはそのビームを基板Wのターゲット部分Cに集束し、それにより、ターゲット部分C上にパターンの像を投影する。第2の位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、2Dエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路上に異なるターゲット部分Cを位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMおよび他の位置センサ(図1には明示せず)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAを正確に位置決めするのに使用されうる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械検索後や走査中に行われる。
【0043】
パターニングデバイス(例えばマスク)MAと基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用のターゲット部分を占拠しているが、アライメントマークはターゲット部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブレーン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイス(例えばマスク)MAに複数のダイがある場合には、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。 デバイスフィーチャの中で、ダイ内に小さなアライメントマーカを含めてもよい。その場合、マーカはできるだけ小さく、隣接するフィーチャとは異なる結像またはプロセス条件を必要としないことが望ましい。アライメントマーカを検出するアライメントシステムについては、以下でさらに説明する。
【0044】
この例のリソグラフィ装置LAは、基板テーブルを交換できる2つの基板テーブルWTa、WTbおよび2つのステーション(露光ステーションおよび測定ステーション)を有するいわゆるデュアルステージタイプのものである。1つの基板テーブル上の1つの基板が露光ステーションで露光されている間に、別の基板を測定ステーションで他の基板テーブルにロードし、さまざまな準備ステップを実行できる。
【0045】
例えば、基板の露出の制御を容易にするために、光学レベルセンサLSによって基板の表面を検査して、その高さを決定することができる。既知の高さで、基板と投影光学システムとの間の相対位置を制御して、例えば、投影システムの焦点に基板を配置または維持するのを助けることができる。
【0046】
さらに、例えば基板の露光の制御を容易にするために、基板および/または基板テーブル上のアライメントマーカの位置は、光学アライメントセンサASを使用して測定することができる。基板および/または基板テーブルにおけるアライメントマークの既知の位置により、パターニングデバイスからのパターンを基板上の所望の位置に比較的正確に配置することができる。
【0047】
一実施形態では、基板および/または基板テーブルのこの高さ測定および/またはアライメント測定は、基板の露光前に測定ステーションで行うことができる。これにより、装置のスループットを大幅に向上させることができる。
【0048】
図示の装置は、例えばステップモードまたはスキャンモードを含む様々なモードで使用することができる。リソグラフィ装置の構造および動作は、当業者には周知であり、本発明の実施形態を理解するためにさらに説明する必要はない。
【0049】
図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLCまたはリソセル(lithocell)またはクラスタ(cluster)とも称されるリソグラフィシステムの一部を形成している。リソグラフィセルLCは、基板に露光前プロセスおよび露光後プロセスを実行する装置も含む。従来、これらは、レジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光されたレジストを現像するディベロッパDE、チルプレートCH、およびベークプレートBKを含む。基板ハンドラー、つまりロボットROは、入力/出力ポートIO1,IO2から基板を持ち上げ、これを異なるプロセス装置間で移動させ、これをリソグラフィ装置のローディングベイLBへと送出する。これらの装置は、往々にしてまとめてトラックと呼ばれ、トラック制御ユニットTCUの制御下にある。トラック制御ユニットTCU自体は、監視制御系SCSにより制御される。監視制御系SCSは、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。したがって、様々な装置を操作して、スループットおよび処理効率を最大限にすることができる。
【0050】
少なくとも1つのパターニングステップ(例えば、光リソグラフィステップ)を含むパターニングプロセス(例えば、デバイス製造プロセス)を設計、監視、制御などするために、パターニングされた基板を検査し、パターニングされた基板の1つ以上のパラメータを測定することができる。1つ以上のパラメータは、例えば、パターニングされた基板内または上に形成された連続層間のオーバーレイ、例えば、パターニングされた基板内または上に形成されたフィーチャの限界寸法(CD)(例えば、限界線幅)、光学リソグラフィ工程の焦点または焦点誤差、光学リソグラフィ工程の線量または線量誤差、光学リソグラフィ工程の光学収差などを含む。この測定は、製品基板自体のターゲットおよび/または基板上に設けられた専用の計測ターゲットで実行されうる。走査型電子顕微鏡、画像ベースの測定または検査ツール、および/またはさまざまな専用ツールの使用を含む、パターニングプロセスで形成された構造の測定を行うためのさまざまな手法がある。専用の計測および/または検査ツールの比較的高速かつ非侵襲的(non-invasive)な形式は、放射ビームが基板の表面上のターゲットに向けられ、リダイレクト(回折/反射)ビームの特性が測定されるものである。基板によって散乱される前後のビームの1つ以上の特性を比較することにより、基板の1つ以上の特性を決定することができる。これは、回折ベースの計測または検査と呼ばれる場合がある。
【0051】
図3は、例示的な検査装置(例えば、スキャトロメータ)を示している。それは、基板W上に放射を投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を含む。方向転換(リダイレクト)された放射は、たとえば、左下のグラフに示されるように、鏡面反射放射のスペクトル10(波長の関数としての強度)を測定する分光計(スペクトロメータ)検出器4に送られる。このデータから、検出されたスペクトラムを生じさせる構造又はプロファイルが、プロセッサPUによって(例えば厳密結合波解析及び非線形回帰によって、又は、図3の右下部に示されるようなシミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって)再構成されうる。一般に、再構成のためには、構造の大体の形態が既知であり、いくつかの変数がその構造が作られたプロセスの知識から推測され、それにより、測定データから判定される構造の変数はほんの幾つかでよい。このような検査装置は、法線入射検査装置、又は斜入射検査装置として構成されうる。
【0052】
使用可能な別の検査装置を図4に示す。このデバイスでは、放射源2から放出された放射は、レンズシステム120を使用してコリメートされ、干渉フィルタ130および偏光子170を透過し、部分反射面160によって反射され、望ましくは少なくとも0.9または少なくとも0.95の高い開口数(NA)を有する対物レンズ150を介して基板W上のスポットSに焦点が合わせられる。浸漬検査装置(水などの比較的高い屈折率の流体を使用)は、1を超える開口数を持つことさえある。
【0053】
次に、基板Wによって方向を変えられた放射は、スペクトルを検出するために、部分反射面160を通過して検出器180に入る。検出器180は、後方投影焦点面110に(すなわち、レンズシステム150の焦点距離に)配置されてもよく、または平面110は、補助光学系(図示せず)を用いて検出器180に再結像されてもよい。基板ターゲット30の二次元角散乱スペクトルを測定できるように、二次元検出器であってもよい。検出器180は、例えば、CCDまたはCMOSセンサのアレイであってよく、例えば、フレーム当たり40ミリ秒の積分時間を使用し得る。
【0054】
参照ビームが、例えば入射放射の強度を測定するために使用されてもよい。これを行うために、放射ビームが部分反射面160に入射するとき、その一部は基準ミラー140に向かう参照ビームとして部分反射面160を透過をする。参照ビームは、次に同じ検出器180の異なる部分、或いは異なる検出器(図示せず)上に投影される。
【0055】
例えば405~790nmの範囲、または200~300nmなどのさらに低い範囲の対象波長を選択するために、1つまたは複数の干渉フィルタ130が利用可能である。干渉フィルタは、異なるフィルタのセットを含むよりも調整可能である。干渉フィルタの代わりに格子を使用できる。開口絞りまたは空間光変調器(図示せず)を照明経路に設けて、ターゲットへの放射の入射角の範囲を制御してもよい。
【0056】
検出器180は、方向転換された放射の強度を、単一波長(又は狭波長範囲)で、複数の波長で別々に、又は波長範囲にわたって積分して測定しうる。さらに、検出器は、TM偏光及びTE偏光の強度、及び/又は、TM偏光とTE偏光との位相差を別々に測定しうる。
【0057】
基板W上のターゲット30は、1D格子であってよく、この格子は、現像後にバーが中実レジストラインから形成されるようにプリントされる。ターゲット30は、現像後に格子が中実のレジストピラー又はレジスト内のビアから形成されるようにプリントされる2D格子であってもよい。バー、ピラー、又はビアは、基板内または基板上(例えば基板上の一つまたは複数の層内に)にエッチングされてもよい。パターン(例えばバー、ピラーまたはビア)は、パターニングプロセスの処理の変化(リソグラフ投影装置(特に投影システムPS)の光学収差、焦点の変化、線量の変化など)に敏感であり、プリントされた格子における変動という形で現れる。したがって、プリントされた格子の測定データは、格子を再構成するために使用される。ライン幅及び/又は形状といった1D格子の1つ以上のパラメータ、又は、ピラー又はビア幅又は長さ或いは形状といった2D格子の1つ以上のパラメータは、プリンティングステップの知識からプロセッサPUによって行われる再構成プロセス及び/又は他の検査プロセスに入力されうる。
【0058】
図5は、典型的なターゲット30の平面図と、図4の装置における照明スポットSの範囲を示している。周囲の構造からの干渉がない回折スペクトルを得るために、一実施形態では、ターゲット30は、照明スポットSの幅(例えば、直径)よりも大きい周期構造(例えば、格子)である。Sは、ターゲットの幅と長さよりも小さい場合がある。言い換えれば、ターゲットは照明によって「アンダーフィル」されており、回折信号は、ターゲット自体の外側の製品の特徴などからの信号を実質的に含まない。照明装置2、120、130、170は、対物レンズ150の後焦点面にわたって均一な強度の照明を提供するように構成され得る。あるいは、例えば、照明経路に開口を含めることにより、照明は、軸上又は軸外方向に制限され得る。
【0059】
再構成によるパラメータの測定に加えて、製品および/またはレジストパターンのフィーチャの非対称性の測定において、回折に基づく計測または検査を使用することができる。非対称性測定の特定の用途は、たとえばオーバーレイの測定であるが、他の用途も知られている。この場合、ターゲット30は通常、別のセットに重ねられた1セットの周期的フィーチャを含む。たとえば、非対称性は、ターゲット30からの回折スペクトルの反対部分を比較することで測定できる(たとえば、周期格子の回折スペクトルの-1次と+1次を比較する)。図3または図4の機器を使用した非対称測定の概念は、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開US2006-066855に記載されている。簡単に言えば、ターゲットの回折スペクトルの回折次数の位置はターゲットの周期性によってのみ決定されるが、回折スペクトルの非対称性は、ターゲットを構成する個々のフィーチャの非対称性を示す。検出器180が画像センサであり得る図4の機器では、このような回折次数の非対称性は、検出器180により記録された瞳像の非対称性として直接現れる。この非対称性は、ユニットPUにおけるデジタル画像処理により測定し、既知のオーバーレイの値に対して較正することができる。
【0060】
実施形態での使用に適したさらなる計測装置を図6Aに示す。ターゲットTおよびターゲットを照射するために使用される測定放射の回折光線が、図6Bにより詳細に示されている。図示されている検査装置は、暗視野計測装置として知られているタイプのものである。検査装置は、独立式の装置であってもよいし、リソグラフィ装置LA(例えば、測定ステーションにて)またはリソグラフィセルLCのいずれかに組み込まれてもよい。装置を通じて複数の分岐を有する光軸は、破線Oで示される。この装置において、光源11(例えば、キセノンランプ)により出力される放射は、レンズ12,14および対物レンズ16を備える光学システムにより、光学素子15を介して基板W上に向けられる。これらレンズは、4F配置の二重シーケンスで構成される。例えば検出器上に基板の像を与えるのであれば、異なるレンズ配置を用いることもでき、同時に、このレンズ配置は、空間周波数フィルタリング用の中間瞳面の利用を可能にする。したがって、放射が基板に入射する位置での角度範囲は、基板面での空間スペクトルを示し、本書で(共役)瞳面と称される面内の空間強度分布を定義することにより選択できる。具体的には、レンズ12と14の間であって対物レンズ瞳面の逆投影像である面内に適切な形状のアパーチャプレート13を挿入することによりこれを実現できる。図示される例では、符号13N,13Sのアパーチャプレート13が異なる形状を有し、異なる照明モードの選択を可能にする。第1照明モードにおいて、アパーチャプレート13Nは、説明のみを目的として「北」と指定された方向からの軸外放射を提供する。第2照明モードにおいて、アパーチャプレート13Sは、同様であるが「南」と名付けられた反対方向からの照明を提供するために用いられる。所望の照明モード外のいずれの不要な放射も所望の測定信号に干渉することから、瞳面の残りは暗闇であることが望ましい。
【0061】
図6Bに示されるように、ターゲットTは、対物レンズ16の光軸Oに直交するよう基板Wに配置される。基板Wは、サポート(図示せず)により支持されてよい。軸Oからずれた角度からターゲットTに入射する測定放射Iの光線は、ゼロ次の光線(実線0)および二つの1次光線(一点破線+1および二点破線-1)を生じさせる。はみ出る小さなターゲットの場合、これらの光線は、計測ターゲットTおよび他のフィーチャを含む基板の領域をカバーする多数の平行光線の一つにすぎないことを忘れてはならない。プレート13のアパーチャは(有効な放射量を認めるのに必要な)有限の幅を有するため、実際には入射光線Iがある角度範囲を占め、回折光線0および+1/-1は多少拡がるであろう。小さいターゲットの点像分布関数によれば、+1および-1の各次数は、ある角度範囲にわたってさらに拡がり、図示されるような単一の理想的な光線とならないであろう。ターゲットの周期構造ピッチおよび照明角度は、1次光線が中心光軸の近くにアライメントされて対物レンズに入射するように設計または調整されることができることに留意する。図6Aおよび図6Bに示される光線は、図面において純粋にこれらが容易に識別可能となるように、多少軸外しとなるよう示されている。
【0062】
基板W上のターゲットTにより回折される少なくとも0および+1の次数は、対物レンズ16により収集され、光学素子15を通って戻るように方向付けられる。図6Aに戻ると、北(N)および南(S)の符号が付された径方向に反対のアパーチャを指定することにより、第1および第2照明モードの双方が示される。測定放射の入射光線Iが光軸の北側からである場合、つまり、アパーチャプレート13Nを用いて第1照明モードが適用される場合、+1(N)の符号が付された+1の回折光線が対物レンズ16に入射する。反対に、アパーチャプレート13Sを用いて第2照明モードが適用される場合、(-1(S)の符号が付された)-1の回折光線が対物レンズ16に入射するものとなる。
【0063】
ビームスプリッタ17は、回折ビームを二つの測定路に分割する。第1測定路において、光学システム18は、ゼロ次および1次の回折ビームを用いて第1センサ19(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上でターゲットの回折スペクトル(瞳面像)を形成する。各回折次数がセンサ上の異なる点でぶつかるため、画像処理は、次数を比較および対比できる。センサ19に撮像される瞳面像は、検査装置のピント調整および/または1次回折ビームの強度測定の規格化に用いることができる。瞳面像は、再構成などの多くの測定の目的のために用いることもできる。
【0064】
第2測定路において、光学システム20,22は、センサ23(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上にターゲットTの像を形成する。第2測定路において、瞳面に共役となる面内に開口絞り21が設けられる。開口絞り21は、ゼロ次の回折ビームを遮るように機能し、センサ23上に形成されるターゲットの画像が-1または+1次のビームからのみ形成されるようにする。センサ19および23の撮像画像は、画像を処理する処理部PUに出力される。PUの機能は、実行すべき測定の具体的な形式に依存するであろう。なお、本書に用いられる「画像」の用語は広義である。仮に-1次および+1次の一方しか存在しなければ、周期構造フィーチャの画像自体は形成されないであろう。
【0065】
図6A、6Cおよび6Dに示されるアパーチャプレート13および視野絞り21の具体的形状は、純粋に例にすぎない。実施形態において、ターゲットの軸上照明が用いられ、実質的に一方の1次回折放射のみをセンサに向けて通過させるために軸外アパーチャを持つ開口絞りが用いられる。さらに別の実施形態において、1次ビームの代わりに又は1次ビームに加えて、2次、3次、さらに高次のビーム(図6A、6B、6Cまたは6Dに不図示)を測定に用いることができる。
【0066】
これら異なる形式の測定に適用可能な測定放射を作るため、アパーチャプレート13は、所望のパターンを所定の位置にもたらすように回転するディスクの周りに形成される多数のアパーチャパターンを備えてもよい。なお、アパーチャプレート13Nまたは13Sは、一方向(設定に応じてXまたはY)に方向付けられた周期構造の測定にのみ用いることができる。直交する周期構造の測定のため、90°または270°のターゲットの回転が実行されてもよい。異なるアパーチャプレートが図6Cおよび6Dに示されている。 これらの使用、および装置の他の多数の変形形態および用途は、上記の特許出願公開に記載されている。
【0067】
図7は、既知のプラクティスに従って基板上に形成された(複合)ターゲットを示す。この例におけるターゲットは、それらが全て検査装置の計測放射照明ビームによって形成される測定スポット31内にあるように互いに密接に配置された4つの周期構造(例えば、格子)32~35を含む。したがって、4つの周期構造は、すべて同時に照射され、センサ19および23上に同時に結像される。オーバーレイ測定専用の例では、周期構造32~35は、それ自体、例えば基板W上に形成される半導体の異なる層にパターニングされた周期構造を重ね合わせることによって形成される複合周期構造である。周期構造32~35は、複合周期構造の異なる部分が形成されている層間のオーバレイの測定を容易にするために、異なるバイアスをかけられたオーバレイオフセットを有することができる。オーバーレイバイアスの意味は、図7を参照して以下に説明される。周期構造32~35はまた、入射する放射をX方向およびY方向に回折するように、図示のようにそれらの向きが異なってもよい。一例では、周期構造32および34は、それぞれバイアスオフセット+d、-dを有するX方向周期構造である。周期構造33および35は、それぞれバイアスオフセット+d、-dを有するY方向周期構造である。これらの周期構造の別々の画像は、センサ23によって捕捉された画像において識別することができる。これはターゲットの一例にすぎない。ターゲットは、4つより多い、または少ない数の周期構造、または単一の周期構造のみを含むことができる。
【0068】
図8は、図6の装置内の図7のターゲットを使用し、図3(d)のアパーチャプレート13NWまたは13SEを用いるときに、センサ23上に形成され、センサ23により検出されうる画像例を示す。瞳面イメージセンサ19は異なる個別の周期構造32~35を分解できないが、イメージセンサ23であればできる。黒い四角は、センサ上の画像の視野を示し、この範囲内の円形領域41に対応する箇所に基板上の照明されたスポット31が結像する。この範囲内では、矩形領域42-45が小さいターゲット周期構造32~35の像を表す。仮にターゲットが製品領域に位置していれば、この画像の視野の周辺に製品フィーチャも視認しうる。画像処理制御システムPUは、周期構造32~35の個別画像42~45を識別するためのパターン認識を用いてこれらの画像を処理する。このようにして、センサフレーム内の特定の場所に極めて正確に画像がアライメントされる必要がなくなり、測定装置全体としてのスループットが大きく改善される。
【0069】
いったん周期構造の個別画像が識別されると、例えば、識別された領域内で選択されたピクセルの強度値を平均化または合計することにより、それら個別画像の強度を測定できる。画像の強度および/または他の特性は互いに比較できる。これらの結果は、パターニング工程の異なるパラメータ測定のために組み合わせることができる。オーバレイ性能はこのようなパラメータの重要な一例である。
【0070】
ここで、図9は、一般に参照符号100で示される例示的なアライメント測定システムを示し、基板110などのオブジェクト上のアライメントマーク105(「ターゲット」とも呼ばれる)の形のアライメントターゲットを測定する。アライメント測定システム100は、基板110に向けて測定ビーム120、入射測定ビームを供給する例えばレーザ光源などの照明光源115と、測定ビーム120、基板110による方向転換後のリダイレクト測定ビームを受け取る検出器システム125とを含む。
【0071】
アライメント測定システム100は、アライメントマーク105によってリダイレクトされ、検出器システム125によって受け取られた測定ビーム120に基づいてアライメントを決定する処理ユニット130をさらに備える。照明光源115、検出器システム125、および/または処理ユニット130は、別個のユニットであってもよく、または単一のユニットに統合されてもよい。処理ユニット130は、専用の処理ユニットであってもよく、またはリソグラフィ装置の中央処理ユニットなど、別の装置の別のプロセッサに統合されてもよい。
【0072】
一実施形態では、照明光源115は、単一の波長を有する測定ビーム120を提供する。一実施形態では、照明光源は、複数の波長、例えば「白色光」、すなわち、例えば可視スペクトルを含む電磁スペクトルの「色」の混合を含む測定ビームを生成してよい。
【0073】
測定ビーム120は、偏光ビームまたは非偏光ビームであってよい。一実施形態では、測定ビームは45度の角度で偏光される。この角度は、例えば、アライメントマークの小区分方向、スキャン方向、ステージ直交系、または他の任意の適切な基準に関して定義することができる。測定ビーム120は、パルスまたは連続ビームであってよい。
【0074】
検出器システム125は干渉計ユニット135を含み、リダイレクト測定ビーム120は、参照ビーム165と結合され、結果として、アライメントマーク105の測定を表す強度変動を有する結合測定ビーム130をもたらす。干渉計ユニット135などの干渉計ユニットは既知であるが、本明細書で説明されるような干渉計ユニットの用途は、距離を測定するための干渉計の一般的な用途とは異なる。
【0075】
結合測定ビーム130は、ビーム分割デバイス140に向けて導かれる。ビーム分割デバイス140、例えば半透明ミラーでは、結合測定ビーム130は、第1測定ビーム部分135aと第2測定ビーム部分135bに分割される。第1測定ビーム部分135aは、偏光角を45度から0度に変更するように構成された第1偏光デバイス145に導かれ、第2測定ビーム部分135bは、偏光角を45度から90度に変更するように構成された第2偏光デバイス150に導かれる。第1および第2偏光デバイス145、150は、例えば、反対の偏光を有する2つの1/4波長板によって形成され得る。第1偏光デバイス145から第1測定ビーム部分135aは第1検出器155に導かれ、第2偏光デバイス150から第2の測定ビーム部分135bは第2検出器160に導かれる。第1検出器155は、第1検出器155によって受け取られた第1測定ビーム部分135aに基づいて第1検出信号を提供する。第2検出器160は、第2検出器160によって受け取られた第2測定ビーム部分135bに基づいて第2検出信号を提供する。
【0076】
処理ユニットは、第1検出信号および/または第2検出信号の強度変動に基づいて、アライメントマーク105のアライメントを決定するように構成される。
【0077】
異なる偏光を有する2つの測定ビーム部分における測定ビームの分割の考えられる利点の例は、第1および第2検出信号を比較することにより、例えば第1および第2検出信号を減算することにより、アライメントマーク105の層以外の基板上の層によって引き起こされるノイズを除去することができることである。例えば、基板110は、複数の材料層を含むことができ、その1つはアライメントマーク105である。測定ビームでは、測定ビームが異なる層を通過するとき、または層の1つに向け直される(リダイレクトされる)ときにノイズが取り込まれる。測定ビーム内の異なる偏光角では、このノイズの影響は通常類似している。しかしながら、適切なアライメントマーク105が選択されると、測定ビームに対するアライメントマーク105の影響は、異なる偏光方向において異なる可能性がある。
【0078】
検出器155、160によって提供される検出信号は、異なる偏光を有する第1および第2ビーム部分に基づいている。これらの検出信号は、例えば減算によって、処理ユニット内で互いに比較される。その結果、両方のビーム部分で実質的に同じレベルのノイズレベル、すなわち、異なる層によって引き起こされるノイズレベルは相殺されるか、または少なくとも実質的に低減される。対照的に、第1検出器155および第2検出器160によって受け取られた、異なる偏光を有する測定ビーム部分のアライメントマーク105による方向転換による強度変動は、異なる値を有することになる。例えば検出信号の減算による比較は、検出信号が相殺されるのではなく、アライメントマーク105のアライメントを表す信号をもたらす。この信号に基づいて、基板のアライメントが決定され得る。
【0079】
第1および第2測定ビーム部分の偏光方向は、信号間の所望の(例えば最適な)差が得られるよう選択されうる。ある実施の形態では、一方の測定ビーム部分は偏光されて磁気的横波(TM波)を伴うビーム部分となる。このTM波は、p波電場を有する、p偏光している、または接平面偏光している、などとして示される。他方の測定ビーム部分は偏光されて電気的横波(TE波)を伴うビーム部分となる。このTE波は、s波電場を有する、s偏光している、サジタル面偏光している、などとして示される。
【0080】
適切な結果を得るために、2つの偏光間で十分に大きな信号差を提供できる小区分化アライメントマークを使用可能である。ある実施の形態では、そのようなアライメントマーク105は、ある方向において密に小区分化されたラインを、小区分化されていないスペースと組み合わせて含む。例えば、所定の位相深さについて、アライメントマークのコントラストは、アライメントマーク105のラインとスペースとの間の例えば反射率の差によって決定される。小区分化された格子の反射率は、小区分化のデューティサイクルを変えると変わる。アライメントマーク105が例えばスペースについては0%のデューティサイクル、ラインについては約25%のデューティサイクルとなるよう作られている場合、TM偏光放射はほとんどアラインメント信号を生成しない。しかしながら、TE偏光についてのアライメント信号は、ラインとスペースとの間の大きな差のためかなり大きい。
【0081】
少なくとも2つの異なる偏光の使用の追加的または代替的な考えられる利点は、照明光源115のノイズを実質的に排除できることである。照明光源4が例えば45度の単一角度の下で所定のノイズレベルを有する偏光ビームなどの測定ビームを生成する場合、測定ビームは異なる偏光を有する2つの測定ビーム部分に分離されるであろう。したがって、照明光源115によって誘起されるノイズは、第1測定ビーム部分および第2測定ビーム部分の両方について同様のレベルとなるであろう。その結果、第1および第2測定ビーム部分から得られた測定信号の減算または他の比較方法によって、このノイズ項を除去できるかまたは少なくともかなり低減できる。
【0082】
さらに、図9の実施形態における2つの異なる偏光の生成は、ビーム分割デバイス140ならびに第1および第2偏光デバイス145、150を含む例示的な構造によって達成されるが、2つの異なる偏光の生成は、異なる例示的な構造によって達成することができる。特に、1つのそのような構造は、特定の偏光のみを実質的に通過し、他の偏光を反射することを可能とする偏光ビーム分割面を含む。偏光ビーム分割面を備えたそのような構造の例が図10に概略的に示されている。
【0083】
図10は、図3、4、および9に示されるような検査装置で使用され得る例示的な偏光ビームスプリッタ1000を概略的に示す。このスプリッタの実施形態では、少なくとも2つの偏光ビーム分割面が設けられる。偏光ビーム分割面のそれぞれは、実質的に特定の偏光のみを通過し、他の偏光を反射する。一実施形態では、偏光ビーム分割面1010、1020のそれぞれは、薄膜層のスタックを含む光学薄膜コーティングを備える。
【0084】
一実施形態では、偏光ビームスプリッタ1000は、第1偏光ビーム分割面1010および第2偏光ビーム分割面1020を備える。一実施形態では、単一の偏光ビーム分割面を設けることができる(例えば、偏光ビームスプリッタは、図9に示されるようなビームスプリッタ140の形態とすることができ、図9では示される分割面が偏光ビーム分割面である)。したがって、図10の実施形態では、第2偏光ビーム分割面1020は分割面である必要はなく、放射の偏光を変更しなくてもよい。
【0085】
スプリッタ1000において、入射ビーム1030(例えば、図9のビーム130)は、ビームを成分1032および1034に分割する偏光ビーム分割面1010に入射する。一実施形態では、入射ビーム1030は、たとえば、45度に偏光された放射、または非偏光の放射である。偏光ビーム分割面1010を透過した成分1032は、実質的にp偏光放射のみを含み、一方、偏光ビーム分割面1010によって反射された成分1034は、実質的にs偏光放射のみを含む。成分1032は、センサ(非限定的な例として破線で示される図9の検出器155など)に向けられる。反射成分1034は、偏光ビーム分割面1010から偏光ビーム分割面1020に進む。偏光ビーム分割面1010と同様に、偏光ビーム分割面1020は、実質的にs偏光放射のみを反射する。したがって、より純粋なs偏光放射ビームを、センサ(非限定的な例として破線で示される図9の検出器160など)に向けて提供することができる。偏光ビーム分割面1020に入射するときの成分1034のp偏光放射は、例えば、ビームダンプに通過することができる。図9は2つのセンサを示しているが、センサは放射を測定するために異なる領域を持つ単一のセンサにすることができる。さらに、2つの異なる偏光を有する放射は、同じ側で同じ方向にスプリッタ1000から出るように示されている。これは、そうである必要は無い。第1の偏光を有する放射は、例えば図9の配置と同様に、第2の異なる偏光を有する放射とは異なる面から出る可能性がある。
【0086】
偏光ビーム分割面1010および/または1020などの光学薄膜コーティングの場合、コーティングの薄膜スタック設計と、薄膜スタックへの放射の入射角に基づいて、波長ごとに有効侵入深さが異なる。これは、少なくとも一次的には、薄膜コーティングからの反射後の画像オフセットに変換され、その画像オフセットは異なる偏光に対して異なる可能性がある。この例が図9に概略的に示され、ここで、放射1030は第1の波長を有し、放射1040は第2の異なる波長を有する。スプリッタ1000では、入射ビーム1040は、ビームを成分1042および1044に分割する偏光ビーム分割面1010に入射する。一実施形態では、入射ビーム1040は、例えば、45度で偏光された放射であるか、または非偏光放射である。偏光ビーム分割面1010を透過した成分1042は、実質的にp偏光放射のみを含み、一方、偏光ビーム分割面1010によって反射された成分1044は、実質的にs偏光放射のみを含む。成分1042は、センサに向けられている。反射成分1044は、偏光ビーム分割面1010から偏光ビーム分割面1020へ進む。偏光ビーム分割面1010と同様に、偏光ビーム分割面1020は、実質的にs偏光放射のみを反射する。したがって、より純粋なs偏光放射ビームをセンサに向けて提供することができる。しかしながら、放射030(およびその成分1032および1034)とは異なる波長の放射1040(およびその成分1042および1044)は、放射1030とは異なる有効侵入深さを有し、1050で示されるように、成分1032の位置に対する成分1042の位置の画像オフセットをもたらす。同様に、1060で示されるように成分1034の位置に対する成分1044の位置の画像オフセットがある。
【0087】
ビーム幅が数百ミクロンのオーダーであり、画像オフセットが数十ミクロン以下のオーダーである場合、画像オフセットは深刻な問題を引き起こさないかもしれないが、いくつかのアプリケーションでは、目標はサブナノメータ測定(例えば、アライメント)の精度に到達することであり、そこではこのようなオフセットが役割を果たす可能性がある。たとえば、公称入射角を中心に+/-1度の比較的小さいビーム角度変動の場合でも、この影響を考慮せずに設計された偏光面コーティングからの反射後、画像オフセットは所望の精度の10倍となる可能性がある。さらに、画像オフセットは、消光比(たとえば、不要な偏光モードの放射照度と所望の偏光モードの放射照度の比)に対してのみ最適化された偏光コーティングを有する検査装置で使用される波長の範囲にわたって、非常に大きな変動(たとえば、0~20ミクロン)を有する可能性がある。例として、主な考慮事項として消光比のみを使用して設計されたコーティングからの色オフセットは、図11(縦軸に沿ったミクロン単位の色オフセット対横軸に沿ったナノメートル単位の波長のグラフ)に示すように特定の波長に対して12ミクロンもの高さになる可能性がある。これは、色オフセットが約640nmから650nmの波長範囲で12ミクロンを超える場合があり、500nmから約750nmの波長で大きくなる場合があることを示している。
【0088】
したがって、本明細書の実施形態は、画像オフセットを低減するためのコーティングの構成に焦点を合わせる。画像オフセットは波長に依存するため、本明細書ではこれを色オフセット(chromatic offset)と呼ぶ。色オフセットは、偏光によって異なる。したがって、たとえば、p偏光の色オフセットはs偏光とは異なる。本明細書の実施形態は、偏光コーティングから主に反射される偏光放射に焦点を合わせており、これは、一実施形態ではs偏光放射である。コーティングの色オフセットは、スタック内の薄膜層の順序に依存する可能性があり、非対称コーティングスタックのコーティングを通過する順方向と逆方向で異なる可能性がある。さらに、コーティングを透過する偏光放射の色オフセットは、反射される偏光放射よりも小さくなる傾向がある。したがって、本明細書の実施形態は、コーティングから反射する偏光放射のコーティングの構成に焦点を当てている。なぜなら、その放射は、通常、コーティングを透過する偏光放射の色オフセットと比較して、波長依存性が大きく、大きさが大きい色オフセットを有するからである。しかし、本明細書に記載されているコーティングの構成は、追加的または代替的に、コーティングを透過する偏光放射の色オフセットを低減することに焦点を当てることができる。
【0089】
1次では、色オフセットxは次のように与えられる。
【数1】
ここで、λは真空中の放射の波長、nは屈折率、
は放射の入射角θに対する考慮中の偏光の反射または透過位相の波長微分である。したがって、考慮中の特定の偏光について上記に示したように、色オフセットは、放射の波長、偏光コーティングの屈折率、および入射角に依存する。したがって、望ましくは、特定の波長および偏光に対して、色オフセットの低減または最小化を可能にするための適切な屈折率および入射角が特定される。
【0090】
したがって、一実施形態では、(HL)^nなどの比較的シンプルな四分の一波長スタックを使用することができる。ここで、Hは高屈折率材料の四分の一波長厚さであり、Lは低屈折率材料の四分の一波長厚さである。^nは、H層とL層の組み合わせのn回の繰り返しを表す(たとえば、(HL)^5は、H層とL層の組み合わせを5回繰り返したスタックである)。ある実施形態では、検査装置は、比較的広い波長範囲の測定放射(例えば、約400nm~約1000nmまたは約500nm~約900nmなどの約300nm~約1100nmの範囲(またはその中の任意の範囲)から選択される放射)を使用することができる。したがって、四分の一波長厚さは、波長範囲の中心波長、または入射が垂直でない調整された中心波長で定義される。一実施形態では、調整された中心波長は、非垂直入射角を考慮するために、スタックへの入射角のコサインで割った公称入射角(たとえば、スタックに接合する基板の入射角)での対象波長範囲の中心波長である。例えば、約500nm~900nmの波長範囲および49度のスタックへの入射角の場合、中心波長は約700nmであり、調整された波長は約1066nmである。一実施形態では、中心波長は、波長範囲の調和平均である(これはその後、基板内の入射角が非垂直である場合に調整される)。したがって、四分の一波長厚さは、((調整された)中心波長/4/(調整された)中心波長での屈折率)として定義される。
【0091】
偏光コーティングとして設計された(HL)^nなどの四分の一波長スタックは、波長範囲にわたって良好な消光比と低い色オフセットを実現するには十分でない場合がある。層を追加して市販ソフトウェアで最適化しても、市販ソフトウェアは通常
を最適化するオプションを提供しないため、効果が無い可能性がある。波長に関する位相微分は、そのようなソフトウェアで調査できるが、それらは現状で重要な入射角に関して調査できない可能性がある。
【0092】
マクニール(MacNeille)型のビームスプリッタコーティングは、(例えば、偏光面1010および/または1020の)コーティング材料と、コーティングと接触する基板(例えば、固体1015)の材料が選択されると、s偏光の反射で最小の色オフセットを提供し、所定の入射角で最大の可能な波長範囲を提供できることが分かっている。
【0093】
一実施形態では、そのような薄膜コーティングは、2つのコーティング材料の交互の層を含み、その薄膜は、基板の両側に封入される。一実施形態では、基板は、両面が同じ材料であるか、または異なる材料である。本明細書の説明は、コーティングに入射放射を結合する基板に焦点を当てているが、コーティングを通過する偏光を透過する基板も選択することができる。
【0094】
屈折率NおよびNを有するマクニール型の偏光薄膜コーティングの材料の交互層の厚さは、それぞれ基本的に以下の通りである。
屈折率Nの層の四分の一波長厚さの(N +N 1/2/ N 倍 (2)
屈折率Nの層の四分の一波長厚さの(N +N 1/2/ N 倍 (3)
【0095】
さらに、基板(例えば、固体1015)の屈折率が以下に等しい場合、最良の消光比が達成される。
/(N +N 1/2/sin(γ) (4)
ここで、γは基板への入射角である。そして、コーティング材料内の入射角と屈折角は、tan(α)=N/Nおよびtan(β)=N/Nとして選択される。ここで、αは、層N内の入射角であり、βは、Nを有する層からNを有する層への屈折角である。したがって、N、Nの選択により、基板とコーティングに対する入射角の選択、またはその逆が決まる。一実施形態では、NおよびNに対応する材料は誘電体材料である。N、基板の屈折率、および基板への入射角の関係を図12に示す。図12では、屈折率Nは横軸に沿っており、基板の屈折率は縦軸に沿っている。ライン1200は45度の入射角に対応し、ライン1210は47度の入射角に対応し、ライン1220は49度の入射角に対応し、ライン1230は51度の入射角に対応する。この場合、Nは簡略化のために1.46に固定されており、コーティングに使用される一般的な低屈折率材料であるSiO(石英)に対応する。
【0096】
したがって、図12または図12に対応するデータまたは図12のデータを表す関数を使用して、基板の屈折率を特定の入射角について確認することができ、または特定の入射角を基板の特定の屈折率について確認することができる。例として、N=2.39およびN=1.46を選択した場合、基板への選択した49度の入射角に対して、基板の屈折率は約1.65となる。この例では、選択したNとNはそれぞれ酸化ニオブとSiOに対応し、屈折率が1.65に近い光学基板はショット(Schott)のSF2光学ガラスにすることができる。これらのさまざまな屈折率と入射角では、層の厚さの比率は0.490H:1.314Lである。HとLは、波長範囲の調整された中心波長においてそれぞれNとNに対応する材料の四分の一波長厚さである(例えば、この例では約1020nm)。したがって、この例では、Nに対応する高屈折率材料層の実際の厚さは、0.460H=0.490*(調整された)中心波長(たとえば、1020nm)/4/(H材料の屈折率、つまり、(調整された)中心波長でのN)として計算できる。
【0097】
層の組み合わせ(0.490H 1.314L)は、所望の消光比および/または色オフセットを得るために複数回繰り返される。ソフトウェアの最適化を使用して、層の組み合わせの繰り返し数を選択し、しきい値を満たすか交差する消光比および/または色オフセットを取得できる。一実施形態では、消光比は、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約500、または少なくとも約1000である。一実施形態では、色オフセットは、10ミクロン以下、55ミクロン以下、3ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下である。
【0098】
上記の層の組み合わせは2つの材料に言及しているが、2つを超える材料を層の組み合わせで使用することができることは理解されるであろう(例えば、特定の組み合わせでは3層とするができ、そこでは各層は別の材料である)。さらに、異なる材料の異なる組み合わせを使用することができ、その例を以下でさらに説明する。
【0099】
一実施形態では、異なる層の組み合わせの繰り返しを追加することにより、所望の高消光比が達成される波長範囲を増加させるか、または特定の波長範囲の所望の高消光比を増加させることができる。一実施形態では、異なる層の組み合わせは、基本的な層の組み合わせと同じ材料を使用するが、異なる組み合わせにおける1つまたは複数の層の異なる厚さを有する。一実施形態では、異なる組み合わせは、コーティングの層の基本的な組み合わせの倍数(整数倍などの実数倍を含む)である。反射後の位相の影響を低減または最小化するために、より厚い層との層の組み合わせは、入射放射を受けるコーティング面からより離れて配置され(たとえば、コーティングが上部である場合、下部に向かって)、放射が最初にぶつかる層は、位相応答と色オフセットを決定し、一方、最初に放射にぶつかる層からさらに離れた層は、より長い波長でより良い消光を達成するために使用される。厚いスタックを上部に配置すると、特定の波長で好ましくない大きな色オフセットが生じる可能性がある。したがって、複数の異なる層の組み合わせのスタックは、複数の異なる層の組み合わせのスタックで使用されるのと同じ材料の単一の組み合わせ(それは繰り返される)を持つスタックと比較して、波長範囲にわたって消光比と色オフセットの両方に対してより良い応答を生み出すことができる。
【0100】
したがって、異なる層の組み合わせ(各組み合わせは同じフィルム材料を有する)を有する繰り返し層を備えるコーティングは、例えば、(aH bL)^n(cH dL)^ m eH fL・・・と表すことができる。ここで、a、b、c、d、e、f・・・は実数、nおよびmは整数であり、コーティングにおける関連する層の組み合わせの繰り返し数を表し、HおよびLは、それぞれ高屈折率材料と低屈折率材料の四分の一波長厚さを指す(および同じ(調整された)中心波長を指す)。層eHおよび/またはfLは、例えば、スタックの対称性を提供するため、および/または位相の影響を低減するために、適切に追加され得る。望ましい色オフセットおよび/または望ましい消光比を得るために、ソフトウェア最適化を使用して、係数a、b、c、d、e、f・・・の1つ以上を調整し、nおよび/またはmの値を調整し、層eHおよび/またはfLを含めるかどうかを調整し、および/または(調整された)中心波長を調整する。
【0101】
一例として、層の組み合わせの2つのスタックを有するコーティングは、以下のように設計することができる:(0.94464H 2.51904L)^ 5(0.560142H 1.493712L)^5 0.560142H。ここで、Hは調整された中心波長1020nmでの酸化ニオブの四分の一波長厚さであり、Lは調整された中心波長1020nmでの二酸化ケイ素の四分の一波長厚さである。さらに、基板はSF2光学ガラスとすることができ、第1層上の基板材料(SF2)への入射角は49度である。この実施形態では、(0.94464H 2.51904L)^5のより厚いスタックが、最初に入射放射を受け取る表面から離れて配置される。この実施形態は、組み合わせ(0.94464H 2.51904L)と組み合わせ(0.560142H 1.493712L)のフィルムの厚さの比率が、組み合わせ(0.490H 1.314L)のフィルムの厚さの比率と実質的に同じであるという点で、フィルムの組み合わせ(0.490H 1.314L)を使用する上記の例に基づく。
【0102】
図13および図14を参照すると、偏光ビームスプリッタに使用される2つのスタックを有する上記のコーティング設計は、2ミクロン未満の偏光反射ビームに対して良好な色オフセットを示し、500~900nmの範囲のすべての波長に対して200を超える消光比を示す。図13は、横軸に沿ったこの実施形態によるコーティングに入射する放射のナノメートル単位の波長に対する、縦軸に沿ったミクロン単位の色オフセットのグラフである。図13に示すように、色オフセットは500~900nmの波長範囲で2ミクロン未満である。さらに、図14は、横軸に沿ったこの実施形態によるコーティングに入射する放射のナノメートル単位の波長に対する縦軸に沿った反射および透過消光比のグラフである。図14に見られるように、透過消光比1400および反射消光比1410は、両方とも、500から900nmの波長範囲にわたって約200より大きい。
【0103】
一実施形態では、2つ以上の偏光コーティングが提供される。第1の多層偏光コーティングは、第1の方向または配向(例えば、角度)で第1の色オフセットを提供し、第2の多層偏光コーティングは、第1の方向とは異なる第2の方向または配向に第2の色オフセットを提供し、第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、第1および第2の色オフセットよりも小さくなる。一実施形態では、第2の方向は、第1の方向または配向(オリエンテーション)と本質的に反対である。一実施形態では、第1および/または第2の多層偏光コーティングは、マクニール型の多層偏光コーティングである。したがって、一実施形態では、例えば本質的に反対の位相特性を有する相補的コーティングがペリスコープ(periscope)型の配置(例えば、図10の光学素子のような)で提供され、第1の反射が画像を第1の方向または配向(例えば、右)に移動し、第2の反射が画像を第2の方向または配向(たとえば、左)に移動するため、正味の色オフセットは、第1の反射または第2の反射後の色オフセットよりも小さい(例えば、第1の反射の色オフセットが右だったのと同じまたは略同じ(例えば、プラスまたはマイナス15%以内、プラスまたはマイナス100%以内、またはプラスまたはマイナス5%以内)量だけ左に色オフセットを有する第2の反射によって)。
【0104】
したがって、概説として、光学画像は、光学インタフェースからの反射の際に、振幅および位相の両方の変化によって変更/歪曲され得る。変更(alteration)は、波長、入射角、および偏光の関数である。変更は通常、従来の光回折限界分解能よりも小さくなる。それでも、アライメントセンサなどのサブ回折装置では、変更が大きくなる可能性がある。特に、画像にはさまざまな角度が含まれるため、角度の関数として変動があり、これは大きい可能性がある。例として、図10に示すように、s偏光画像成分がペリスコープ(periscope)状のジオメトリで45度で2回反射されると、瞳面画像が予想される位置からずれる可能性がある。さらに、ずれは望ましくない波長の関数になる可能性がある。したがって、回折限界分解能は500μmのオーダになる可能性があるが、画像移動は、約500~約900 nmの波長放射範囲で約15μm以上変動する可能性があり、これは重大である。したがって、一実施形態では、制御された位相および/または反射ジオメトリを備えた光学コーティングの設計が提供され、波長の関数としての画像の変更(alteration)/移動(translation)を低減または排除する。特に、一実施形態では、マクニール型の偏光コーティングを使用して、検査装置(アライメントセンサなど)における偏光素子の色オフセットを低減する。マクニール偏光コーティングは、色オフセットが少なくともs偏光に関係している限り、有利性を提供できる。それに加えて、またはその代わりに、第2の色オフセットを補償して正味の低減された色オフセットを提供する第1の色オフセットを提供するために、反射ジオメトリが提供され得る。
【0105】
本明細書に記載されるコーティングおよび/または反射ジオメトリは、様々な用途を有することができる。例えば、本明細書で説明したリソグラフィ装置(アライメントセンサAS、レベルセンサLS、干渉計IFなどの光学計測装置を含む)、本明細書で説明した検査装置(図3、4および6の要素など)、本明細書で説明した装置とともに使用する光学要素の一部であるか、またはそれらに設けられる物体に適用することができる。したがって、一実施形態では、コーティングおよび/または反射ジオメトリは、DUVおよび/またはEUVアライメントセンサ、光学レベルセンサ、DUVおよび/またはEUV照明および/または投影光学系などに提供することができる。パターニングプロセスまたはその関連装置のいずれかでのコーティングの使用に焦点を合わせて説明してきたが、本明細書に記載のコーティングは他の用途に使用することができ、したがってコーティングは、パターニングプロセスまたはその装置のいずれかで使用される構造に使用されることに限定されると考えるべきではないことが理解されよう。さらに、色オフセットの低減を助けるコーティングの使用に焦点を合わせて説明したが、本明細書に記載のコーティングは他の目的を有することができ、したがって、本明細書のコーティングは色オフセットの低減の目的だけに限定されない。
【0106】
一実施形態では、検査装置が提供される。検査装置は、測定される面に放射ビームを提供し、該面から方向転換(リダイレクト)された放射を受け取るように構成された光学システムと、方向転換された放射を測定するよう構成された検出システムと、を備える。光学システムは、放射を処理するための光学素子を含み、光学素子は、放射の低減された色オフセットを生じさせるように構成されたマクニール型の多層偏光コーティングを備える。
【0107】
一実施形態では、偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって10ミクロン以下の色オフセットを生じさせる。一実施形態では、偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって少なくとも100の消光比を生じさせる。一実施形態では、偏光コーティングは、繰り返しの層の組み合わせの第1スタックおよび繰り返しの層の組み合わせの第2スタックを備え、第2スタックの層の少なくとも1つの厚さは、第1スタックの個々の層の厚さとは異なる。一実施形態では、第1スタックの層の材料は、第2スタックの層と同じ材料である。一実施形態では、第2スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比は、第1スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比の倍数である。一実施形態では、偏光コーティングは、第1スタックの層と同じ材料の、第1スタックに隣接して第1スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層および/または第2スタックの層と同じ材料の、第2スタックに隣接して第2スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層をさらに備える。一実施形態では、第1スタックは、第2スタックの層の組み合わせよりも厚い層の組み合わせを有し、第1スタックは、最初に放射を受けるコーティングの面から、第2スタックよりもさらに離れている。一実施形態では、光学素子は、さらなる多層偏光コーティングを備える。マクニール型多層偏光コーティングは、第1の方向または配向に第1色のオフセットを提供し、さらなる多層偏光コーティングは、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供し、第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、第1および第2の色オフセットよりも小さくなる。
【0108】
一実施形態では、測定方法が提供される。この方法は、測定される面に放射ビームを提供し、該面から方向転換された放射を受け取ることであって、放射の低減された色オフセットを生じさせるように構成されたマクニール型の多層偏光コーティングを備える光学素子を使用して放射が処理されることと、方向転換された放射を検出して測定値を取得することと、を備える。
【0109】
一実施形態では、偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって10ミクロン以下の色オフセットを生じさせる。一実施形態では、偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって少なくとも100の消光比を生じさせる。一実施形態では、偏光コーティングは、繰り返しの層の組み合わせの第1スタックおよび繰り返しの層の組み合わせの第2スタックを備え、第2スタックの層の少なくとも1つの厚さは、第1スタックの個々の層の厚さとは異なる。一実施形態では、第1スタックの層の材料は、第2スタックの層と同じ材料である。一実施形態では、第2スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比は、第1スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比の倍数である。一実施形態では、偏光コーティングは、第1スタックの層と同じ材料の、第1スタックに隣接して第1スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層および/または第2スタックの層と同じ材料の、第2スタックに隣接して第2スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層をさらに備える。一実施形態では、第1スタックは、第2スタックの層の組み合わせよりも厚い層の組み合わせを有し、第1スタックは、最初に放射を受けるコーティングの面から、第2スタックよりもさらに離れている。一実施形態では、光学素子は、さらなる多層偏光コーティングを備える。マクニール型多層偏光コーティングは、第1の方向または配向に第1色のオフセットを提供し、さらなる多層偏光コーティングは、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供し、第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、第1および第2の色オフセットよりも小さくなる。
【0110】
一実施形態では、検査装置が提供される。この検査装置は、測定される面に放射ビームを提供し、該面から方向転換された放射を受け取るように構成された光学システムと、方向転換された放射を測定するように構成された検出システムとを備える。光学システムは、放射を処理するための光学素子を備える。光学素子は、第1の方向または配向に第1の色オフセットを提供するように構成された第1多層偏光コーティングと、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供するように構成された第2多層偏光コーティングとを備え、第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットが、第1および第2の色オフセットよりも小さくなる。
【0111】
一実施形態では、第1または第2の偏光コーティングは、マクニール型の多層偏光コーティングである。一実施形態では、第1の方向または配向は、第2の方向または配向と本質的に反対である。一実施形態では、第1の色オフセットは本質的に第2の色オフセットと同じである。
【0112】
実施形態は、以下の項を使用してさらに説明され得る。
1.測定される面に放射ビームを提供し、前記面から方向転換された放射を受け取るように構成された光学システムと、
前記方向転換された放射を測定するよう構成された検出システムと、
を備え、
前記光学システムは、前記放射を処理するための光学素子を含み、前記光学素子は、前記放射の低減された色オフセットを生じさせるように構成されたマクニール型の多層偏光コーティングを備える、検査装置。
2.前記偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって10ミクロン以下の色オフセットを生じさせる、項1に記載の装置。
3.前記偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって少なくとも100の消光比を生じさせる、項1または2に記載の装置。
4.前記偏光コーティングは、繰り返しの層の組み合わせの第1スタックおよび繰り返しの層の組み合わせの第2スタックを備え、前記第2スタックの層の少なくとも1つの厚さは、前記第1スタックの個々の層の厚さとは異なる、項1から3のいずれかに記載の装置。
5.前記第1スタックの層の材料は、前記第2スタックの層と同じ材料である、項4に記載の装置。
6.前記第2スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比は、前記第1スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比の倍数である、項4または5に記載の装置。
7.前記偏光コーティングは、前記第1スタックの層と同じ材料の、前記第1スタックに隣接して前記第1スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層および/または前記第2スタックの層と同じ材料の、前記第2スタックに隣接して前記第2スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層をさらに備える、項4から6のいずれかに記載の装置。
8.前記第1スタックは、前記第2スタックの層の組み合わせよりも厚い層の組み合わせを有し、前記第1スタックは、最初に放射を受けるコーティングの面から、前記第2スタックよりもさらに離れている、項4から7のいずれかに記載の装置。
9.前記光学素子は、さらなる多層偏光コーティングを備える。前記マクニール型の多層偏光コーティングは、第1の方向または配向に第1色のオフセットを提供し、前記さらなる多層偏光コーティングは、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供し、前記第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、前記第1および第2の色オフセットよりも小さくなる、項1から8のいずれかに記載の装置。
10.測定される面に放射ビームを提供し、前記面から方向転換された放射を受け取ることであって、前記放射の低減された色オフセットを生じさせるように構成されたマクニール型の多層偏光コーティングを備える光学素子を使用して前記放射が処理されることと、 前記方向転換された放射を検出して測定値を取得することと、
を備える、測定方法。
11.前記偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって10ミクロン以下の色オフセットを生じさせる、項10に記載の方法。
12.前記偏光コーティングは、少なくとも500nmから900nmの放射波長範囲にわたって少なくとも100の消光比を生じさせる、項10または11に記載の方法。
13.前記偏光コーティングは、繰り返しの層の組み合わせの第1スタックおよび繰り返しの層の組み合わせの第2スタックを備え、前記第2スタックの層の少なくとも1つの厚さは、前記第1スタックの個々の層の厚さとは異なる、項10から12のいずれかに記載の方法。
14.前記第1スタックの層の材料は、前記第2スタックの層と同じ材料である、項13に記載の方法。
15.前記第2スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比は、前記第1スタックで繰り返される組み合わせの層の厚さの比の倍数である、項13または14に記載の方法。
16.前記偏光コーティングは、前記第1スタックの層と同じ材料の、前記第1スタックに隣接して前記第1スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層および/または前記第2スタックの層と同じ材料の、前記第2スタックに隣接して前記第2スタックのその材料の層の対称的な配置を有する材料層をさらに備える、項13から15のいずれかに記載の方法。
17.前記第1スタックは、前記第2スタックの層の組み合わせよりも厚い層の組み合わせを有し、前記第1スタックは、最初に放射を受けるコーティングの面から、前記第2スタックよりもさらに離れている、項13から16のいずれかに記載の方法。
18.前記光学素子は、さらなる多層偏光コーティングを備える。前記マクニール型の多層偏光コーティングは、第1の方向または配向に第1色のオフセットを提供し、前記さらなる多層偏光コーティングは、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供し、前記第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、前記第1および第2の色オフセットよりも小さくなる、項10から17のいずれかに記載の方法。
19.測定される面に放射ビームを提供し、前記面から方向転換された放射を受け取るように構成された光学システムと、
前記方向転換された放射を測定するように構成された検出システムと、
を備え、
前記光学システムは、前記放射を処理するための光学素子を備え、前記光学素子は、第1の方向または配向に第1の色オフセットを提供するように構成された第1多層偏光コーティングと、第2の異なる方向または配向に第2の色オフセットを提供するように構成された第2多層偏光コーティングとを備え、前記第1および第2の色オフセットの組み合わされた色オフセットは、前記第1および第2の色オフセットよりも小さくなる、検査装置。
20.前記第1または第2の偏光コーティングは、マクニール型の多層偏光コーティングである、項19に記載の検査装置。
21.前記第1の方向または配向は、前記第2の方向または配向と本質的に反対である、項19または20に記載の検査装置。
22.前記第1の色オフセットは、本質的に前記第2の色オフセットと同じである、項19から21のいずれかに記載の検査装置。
【0113】
本書では、デバイスの製造のための装置の使用に特に言及する場合があるが、ここで説明する装置には、統合光学システムの製造、磁区メモリ、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの用途を有していてもよい。当業者は、そのような代替用途の文脈において、用語「ウエハ」又は「ダイ」は、それぞれより一般的な用語「基板」又は「ターゲット部分」と同義と見なすことができる。本明細書で言及される基板は、露光の前後に、例えばトラック(通常、レジスト層を基板に塗布し、露光されたレジストを現像するツール)又は計測ツールおよび/または検査ツールで処理されてもよい。適用可能な場合、本明細書の開示は、そのような及び他の基板処理ツールに適用されてもよい。さらに、例えば多層ICを作成するために、基板を複数回処理することができ、したがって、本明細書で使用する基板という用語は、すでに複数の処理層を含む基板を指すこともある。
【0114】
本発明の一実施形態は、本明細書に開示される方法の性能を引き起こすための機械可読命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はそのようなコンピュータプログラムを有するデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態を取り、そこに保存され得る。さらに、機械可読命令は、2つ以上のコンピュータプログラムで具現化されてもよい。2つ以上のコンピュータプログラムは、1つ以上の異なるメモリ及び/又はデータ記憶媒体に格納されてもよい。
【0115】
本明細書で開示される1つまたは複数の態様は、制御システムに実装され得る。本明細書に記載される任意の制御システムは、装置の少なくとも1つの構成要素内に位置する1つ以上のコンピュータプロセッサにより1つ以上のコンピュータープログラムが読み取られるときに、それぞれまたは組み合わせて動作可能であってもよい。制御システムは、それぞれまたは組み合わせて、信号を受信、処理、および送信するための任意の適切な構成を備えていてもよい。制御システムの少なくとも1つと通信するように、1つ以上のプロセッサが構成されている。例えば、各制御システムは、上記の方法のための機械可読命令を含むコンピュータプログラムを実行するための1つ以上のプロセッサを含んでもよい。制御システムは、そのようなコンピュータプログラムを保存するためのデータ記憶媒体、および/またはそのような媒体を受け取るためのハードウェアを含むことができる。したがって、制御システムは、1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械可読命令に従って動作し得る。
【0116】
上記では光学システムにおける実施の形態の使用に具体的に言及したかもしれないが、本発明の実施形態は他の用途においても使用されうるものであることは理解されよう。例えば、実施形態は、インプリントリソグラフィで用いるものであり得る。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィによって、基板上に生成されるパターンが画定される。パターニングデバイスのトポグラフィを基板に供給されたレジストの層に押しつけ、その後に電磁放射、熱、圧力またはその組合せにより、レジストを硬化する。パターニングデバイスをレジストから離すと、レジストの硬化後にパターンが残される。
【0117】
本明細書で使用される「放射線」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射線(例えば、365、355、248、193、157又は126nmの波長、または約365、355、248、193、157又は126nmの波長を有する)及び極紫外線(EUV)放射線(例えば、5から20nmの範囲の波長を有する)、ならびにイオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射線を包含する。
【0118】
「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気および静電気光学部品を含む様々なタイプの光学部品のいずれか、またはその組合せを指してもよい。
【0119】
特に明記しない限り、議論から明らかなように、本明細書の議論全体を通して、「処理」、「コンピューティング」、「計算する」、「決定する」などは、専用コンピュータ又は同様の専用電子処理/計算デバイスなどの特定の装置のアクション又はプロセスを指す。
【0120】
特定の機能および関係の実現を例証する機能的な構成要素の助けを用いて本発明を説明してきた。これらの機能的な構成要素の境界は、説明の便宜上、適宜定義されている。それらの特別な機能および関係が適切に実行される限り、別の境界も定義することができる。
【0121】
読者は、本出願がいくつかの発明を説明していることを理解すべきである。これらの発明を複数の独立した特許出願に分けるのではなく、出願人は関連する主題が出願プロセスの経済に役立つため、これらの発明を単一の文書にグループ化し。しかし、そのような発明の明確な利点と側面を混同すべきではない。いくつかの場合、実施形態は本明細書に記載されたすべての欠陥に対処するが、本発明は独立して有用であり、いくつかの実施形態はそのような問題のサブセットのみに対処するか、又は当業者に明らかな他の言及されていない利点を提供することを理解されたい。コストの制約により、ここに開示されたいくつかの発明は現在請求されていない可能性があり、継続出願のような後の出願で、又は現在の請求項を修正することにより請求される。同様に、スペースの制約により、本文書の発明の要約セクションも概要セクションも、そのようなすべての発明又はそのような発明のすべての態様の包括的なリストを含むと解釈されるべきではない。
【0122】
説明及び図面は、開示された特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、反対に、添付のクレームで定義されているとおり、本発明の精神及び範囲内にあるすべての修正、均等物、及び代替物を網羅することを理解されたい。
【0123】
本発明の様々な態様の修正及び代替実施形態は、この説明に鑑みて当業者には明らかであろう。したがって、この説明及び図面は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書に示され説明された本発明の形態は、実施形態の例として解釈されるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書で図示及び説明されたものの代わりになり、本発明のこの説明の利益を得た後の当業者により、部品及びプロセスは逆になり又は省略され、特定の特徴が独立して利用され、実施形態又は実施形態の特徴がすべて組み合わされる可能性がある。添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更を加えることができる。ここで使用される見出しは、組織的な目的のためだけのものであり、説明の範囲を制限するために使用されることを意図したものではない。
【0124】
本出願全体を通して、「することができる(may)」という語が用いられる場合、強制的な意味(すなわち「~しなければならない」を意味する)のではなく、許可の意味で用いられる(すなわち「~する可能性を有する」を意味する)。「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及び「含む(includes)」等の語は、限定ではないが、含んでいる(including)を意味する。本出願全体を通して、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、「the(その)」が用いられる場合、文脈上明らかに他の意味が示される場合を除いて、複数形を含む。従って、1つ以上の要素について「1つ以上」のような他の用語及び句が使用されるにもかかわらず、例えば「1つの(an)」要素又は「1つの(a)」要素という場合、2つ以上の要素の組み合わせを含む。「又は(or)」という用語は、他の指示がない限り、非排他的である、すなわち「及び(and)」と「又は(or)」の双方を包含する。条件関係を記述する用語、例えば「X、Yに応じて」、「X、Yの時」、「X、Yであるならば」、「X、Yである場合」等は、前件(antecedent)が後件(consequent)の必要因果条件であるか、前件が充分因果条件であるか、又は前件が寄与因果条件である因果条件を包含する。例えば、「状態Xは条件Yが確立した時に発生する」は、「XはYの時にのみ発生する」及び「XはY及びZの時に発生する」に対して包括的である(generic)。そのような条件関係は、前件が確立した直後に続いて起こる結果に限定されない。いくつかの結果は遅れることがある。条件文において、前件はそれらの後件に接続されている。例えば、前件は後件が発生する可能性に関連している。複数の属性又は関数が複数のオブジェクトにマッピングされている言明(statement)(例えば、1つ以上のプロセッサがステップA、B、C、及びDを実行する)は、他の指示がない限り、全てのそのようなオブジェクトにマッピングされた全てのそのような属性又は関数と、属性又は関数のサブセットにマッピングされた属性又は関数のサブセットとの双方を包含する(例えば、全てのプロセッサの各々がステップAからDを実行する場合と、プロセッサ1がステップAを実行し、プロセッサ2がステップB及びステップCの一部を実行し、プロセッサ3がステップ3の一部及びステップDを実行する場合の双方)。更に、他の指示がない限り、1つの値又はアクションが別の条件又は値「に基づいている」言明は、その条件又は値が唯一の要因である例と、その条件又は値が複数の要因のうちの1つの要因である例の双方を包含する。他の指示がない限り、ある集合の「各(each)」インスタンスがある特性を有するという言明は、より大きい集合のいくつかの他の点で同一の又は同様のメンバがその特性を持たない事例を除外すると解釈するべきではない。すなわち、各(each)は必ずしも、あらゆるもの(each and every)を意味するわけではない。
【0125】
本明細書において「一実施形態」、「実施形態の一実施例」等は、説明した実施形態が特定のフィーチャ、構造、または特徴を含んでいてもよいことを表すが、すべての実施形態がその特定のフィーチャ、構造、または特徴を必ずしも含んでいるわけではない。さらにまた、上記のフレーズは必ずしも同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定のフィーチャ、構造、または特徴を一実施形態に関して説明するとき、明示的に説明しようがしまいが、他の実施形態に関してそのような特定のフィーチャ、構造、または特徴を作用させることは、当業者の知識の範囲内であるとして理解すべきである。
【0126】
特定の米国特許、米国特許出願、又はその他の資料(例、記事)が参照により組み込まれている限り、そのような米国特許、米国特許出願、及びその他の資料の本文は、矛盾しない範囲でのみ参照により組み込まれる。そのような矛盾が生じた場合、参照により組み込まれた米国特許、米国特許出願、及びその他の資料におけるそのような矛盾したテキストは、参照により本明細書に具体的に組み込まれない。
【0127】
特定の実施形態についての上記説明は発明の実施形態の一般的性質を明らかにしており、したがって、当分野の能力に含まれる知識を適用することによって、過度の実験をすることなく、および本発明の一般概念から逸脱することなく、種々の応用に対してそのような特定の実施形態を直ちに修正しおよび/または適応させることができる。したがって、そのような適応および修正は、本明細書に提示された教示および助言に基づき、開示された実施形態の意義および等価物の範囲内であると意図されている。本明細書の表現または専門用語は説明を目的としており限定のためではなく、本明細書の専門用語または表現は教示および助言を考慮して当業者によって解釈されるべきものであることを理解されたい。
【0128】
上記の説明は、制限ではなく例示を目的としている。したがって、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された開示に変更を加えることができ、本発明の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれかにより制限されるべきではないが、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきであることは、当業者には明らかであろう。
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