(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】インプリント用下層膜形成用組成物、インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法、パターン製造方法、半導体素子の製造方法、硬化物およびキット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220629BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020549200
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037199
(87)【国際公開番号】W WO2020066982
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018185117
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】袴田 旺弘
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164961(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175668(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170428(WO,A1)
【文献】特開2017-152705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分と、
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルとを含むインプリント用下層膜形成用組成物であって、
前記粒子性メタルの含有量が、組成物の152質量ppt~10質量ppbである、インプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項2】
さらに、前記鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルを含み、
前記Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと、
前記鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルの合計量が、組成物の152質量ppt~30質量ppbである、請求項
1に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項3】
前記硬化性成分がエチレン性不飽和基および極性基を有する樹脂を含む、請求項
1又は2に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項4】
前記極性基が、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基およびカルボキシル基の少なくとも1種である、請求項
3に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項5】
前記極性基が、非イオン性の基である、請求項
3または
4に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である、請求項
3~
5のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項7】
前記硬化性成分が23℃で液体である化合物を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項8】
前記23℃で液体である化合物がエチレン性不飽和基を有する、請求項
7に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項9】
前記硬化性成分が架橋剤を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項10】
さらに、溶剤を含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項11】
固形分濃度が0質量%超1質量%以下である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の原料を混合した後、
2種以上のフィルターを用いて濾過することを含み、
前記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、孔径が互いに異なる、インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項13】
前記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、材質が互いに異なる、請求項
12に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項14】
前記2種以上のフィルターのうち、フィルターの孔径の大きいものから順に、インプリント用下層膜形成用組成物を通過させて濾過することを含む、請求項
12または
13に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項15】
前記2種以上のフィルターのうち、最も孔径が小さいフィルターの孔径X
1が0.5~15nmである、請求項
12~
14のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項16】
前記2種以上のフィルターのうち、最も孔径が大きいフィルターの孔径X
2が5~100nmである、請求項
12~
15のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項17】
前記2種以上のフィルターのうち、少なくとも1種が鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を吸着可能な吸着基を有する樹脂を含む、請求項
12~
16のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項18】
前記吸着基を有する樹脂がポリアミドである、請求項
17に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物を基板に適用しインプリント用下層膜を形成する工程、
前記インプリント用下層膜上にインプリント用硬化性組成物を適用する工程、
前記インプリント用硬化性組成物にモールドを接触させた状態で前記インプリント用硬化性組成物を露光する工程および
前記モールドを剥離する工程
を含む、パターン製造方法。
【請求項20】
前記インプリント用下層膜を形成する工程がスピンコート法を含む、請求項
19に記載のパターン製造方法。
【請求項21】
前記インプリント用硬化性組成物を適用する工程がインクジェット法を含む、請求項
19または
20に記載のパターン製造方法。
【請求項22】
請求項
19~
21のいずれか1項に記載のパターン製造方法を含む半導体素子の製造方法。
【請求項23】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物から形成された硬化物。
【請求項24】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のインプリント用下層膜形成用組成物と、
重合性化合物と、
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10m以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルとを含むインプリント用硬化性組成物であって、前記粒子性メタルの合計含有量が、インプリント用硬化性組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbである、インプリント用硬化性組成物と
を有するキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用下層膜形成用組成物、インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法、パターン製造方法、半導体素子の製造方法、硬化物およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法とは、パターンが形成された金型(一般的にモールド、スタンパと呼ばれる)を押し当てることにより、材料に微細パターンを転写する技術である。インプリント法を用いることで簡易に精密な微細パターンの作製が可能なことから、近年さまざまな分野での応用が期待されている。特に、ナノオーダーレベルの微細パターンを形成するナノインプリント技術が注目されている。
インプリント法としては、その転写方法から熱インプリント法、光インプリント法と呼ばれる方法が提案されている。熱インプリント法では、ガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある)以上に加熱した熱可塑性樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することにより微細パターンを形成する。この方法は多様な材料を選択できるが、プレス時に高圧を要すること、熱収縮等により微細なパターン形成が困難であるといった問題点も有する。
【0003】
一方、光インプリント法では、インプリント用硬化性組成物にモールドを押し当てた状態で光硬化させた後、モールドを離型する。未硬化物へのインプリントのため、高圧や高温加熱の必要はなく、簡易に微細なパターンを形成することが可能である。
光インプリント法では、基板(必要に応じて密着処理を行う)上にインプリント用硬化性組成物を塗布後、石英等の光透過性素材で作製されたモールドを押し当てる。モールドを押し当てた状態で光照射によりインプリント用硬化性組成物を硬化し、その後モールドを離型することで目的のパターンが転写された硬化物が作製される。
基板上にインプリント用硬化性組成物を適用する方法としては、スピンコート法やインクジェット法が挙げられる。特にインクジェット法は、インプリント用硬化性組成物のロスが少ないといった観点から、近年注目される適用方法である。
【0004】
また、転写したインプリントパターンをマスクとして微細加工を行う方法はナノインプリントリソグラフィー(NIL)と呼ばれ、現行のArF液浸プロセスに代わる次世代リソグラフィ技術として開発が進められている。
一方、ナノインプリントリソグラフィープロセスにおいて、インプリント用硬化性組成物を付与する基板に下層膜を設けておく技術が提案されている。特許文献1では、化合物(A)と溶剤(B)とを含有するインプリント用密着下層膜であって、化合物(A)が、特定の官能基を有し、大西パラメータ(Z)と分子量を所定の範囲にする技術が開示されている。その他の密着下層膜の具体例としては特許文献2~4が挙げられる。
また、特許文献5では、重合性成分を含む前処理組成物を用いて基板上に前処理コーティングを形成し、そこにインプリントレジストの不連続部分を配置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-093552号公報
【文献】特開2014-024322号公報
【文献】特開2016-028419号公報
【文献】特開2017-206695号公報
【文献】特開2017-055108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、インプリント用下層膜形成用組成物について、繰り返し使用によってモールドに欠陥が生じてしまう場合があることが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、モールド耐久性に優れたインプリント用下層膜形成用組成物、ならびに、インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法、パターン製造方法、半導体素子の製造方法、硬化物およびキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、鉄、銅、チタンまたは鉛を含む粒子性メタルであって粒子径が10nm以上である成分の量を減らすことにより、モールドの破損を効果的に抑制できることを見出した。一方で、上記粒子性メタルが全く存在しないと、インプリントを繰り返し行った際に、モールドの汚染が顕著になり、モールド耐久性が劣ることも分かった。そして、鉄、銅、チタンまたは鉛を含む粒子性メタルであって、粒子径が10nm以上の成分の量を組成物の50質量ppt~10質量ppbの割合で含む構成とすることにより、モールド耐久性について、良好な性能を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>硬化性成分と、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルとを含むインプリント用下層膜形成用組成物であって、上記粒子性メタルの含有量が、組成物の50質量ppt~10質量ppbである、インプリント用下層膜形成用組成物。
<2>さらに、上記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルを含み、
上記Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと、
上記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルの合計量が、組成物の100質量ppt~30質量ppbである、<1>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<3>上記硬化性成分がエチレン性不飽和基および極性基を有する樹脂を含む、<1>または<2>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<4>上記極性基が、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基およびカルボキシル基の少なくとも1種である、<3>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<5>上記極性基が、非イオン性の基である、<3>または<4>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<6>上記エチレン性不飽和基が、(メタ)アクリロイル基である、<3>~<5>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<7>上記硬化性成分が23℃で液体である化合物を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<8>上記23℃で液体である化合物がエチレン性不飽和基を有する、<7>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<9>上記硬化性成分が架橋剤を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<10>さらに、溶剤を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<11>固形分濃度が0質量%超1質量%以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物。
<12><1>~<11>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物の原料を混合した後、2種以上のフィルターを用いて濾過することを含み、上記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、孔径が互いに異なる、インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<13>上記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、材質が互いに異なる、<12>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<14>上記2種以上のフィルターのうち、フィルターの孔径の大きいものから順に、インプリント用下層膜形成用組成物を通過させて濾過することを含む、<12>または<13>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<15>上記2種以上のフィルターのうち、最も孔径が小さいフィルターの孔径X1が0.5~15nmである、<12>~<14>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<16>上記2種以上のフィルターのうち、最も孔径が大きいフィルターの孔径X2が5~100nmである、<12>~<15>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<17>上記2種以上のフィルターのうち、少なくとも1種が鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を吸着可能な吸着基を有する樹脂を含む、<12>~<16>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<18>上記吸着基を有する樹脂がポリアミドである、<17>に記載のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法。
<19><1>~<11>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物を基板に適用しインプリント用下層膜を形成する工程、
上記インプリント用下層膜上にインプリント用硬化性組成物を適用する工程、
上記インプリント用硬化性組成物にモールドを接触させた状態で上記インプリント用硬化性組成物を露光する工程および
上記モールドを剥離する工程
を含む、パターン製造方法。
<20>上記インプリント用下層膜を形成する工程がスピンコート法を含む、<19>に記載のパターン製造方法。
<21>上記インプリント用硬化性組成物を適用する工程がインクジェット法を含む、<19>または<20>に記載のパターン製造方法。
<22><19>~<21>のいずれか1つに記載のパターン製造方法を含む半導体素子の製造方法。
<23><1>~<11>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物から形成された硬化物。
<24><1>~<11>のいずれか1つに記載のインプリント用下層膜形成用組成物と、
重合性化合物と、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10m以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルとを含むインプリント用硬化性組成物であって、上記粒子性メタルの合計含有量が、インプリント用硬化性組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbである、インプリント用硬化性組成物とを有するキット。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、モールド耐久性に優れたインプリント用下層膜形成用組成物、ならびに、インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法、パターン製造方法、半導体素子の製造方法、硬化物およびキットを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】パターンの形成、および、得られたパターンをエッチングによる基板の加工に用いる場合の製造プロセスの一例を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシを表す。
本明細書において、「インプリント」は、好ましくは、1nm~10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm~100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線、極端紫外線(EUV)、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。
本明細書において、固形分とは、組成物の全成分から溶剤除いた成分の総質量をいう。
本発明における沸点測定時の気圧は、特に述べない限り、101325Pa(1気圧)とする。本発明における温度は、特に述べない限り、23℃とする。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000またはTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0011】
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物は、硬化性成分と、Single Particle ICP(Inductively Coupled Plasma)-MASS(Mass Spectrometry)法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルとを含むインプリント用下層膜形成用組成物であって、粒子性メタルの含有量が、組成物の50質量ppt~10質量ppbであることを特徴とする。
このように、特定粒子性メタルを10質量ppb以下とすることにより、モールドの破損を効果的に抑制でき、モールド耐久性を向上できると推測される。このメカニズムは、特定粒子性メタルとモールド表面との接触を低減できたためと推測される。また、特定粒子性メタルの量を50質量ppt以上とすることにより、モールドの汚れを効果的に抑制でき、モールド耐久性を向上できると推測される。このメカニズムは、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる吸着性物質が粒子に付着することで、モールドの汚染を抑制できるためと推測される。
また、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上のものを用いることにより、ナノインプリント時の残膜(通常10~50nm)以上のサイズの粒子性メタルを除去することができ、モールド耐久性が向上する。
さらに、基板上にインプリント用下層膜形成用組成物を適用する場合、下層膜上に設けるインプリントパターンに発生する欠陥数とインプリント用下層膜形成用組成物中に含まれる特定粒子性メタルの濃度にも相関関係があると推測された。具体的には、インプリント用下層膜形成用組成物中に含まれる特定粒子性メタルの濃度を規定値内に抑えることで欠陥の発生を大幅に抑制できることを見出した。さらにインプリント用下層膜形成用組成物に特定のフィルター濾過処理を施すことで、インプリント用下層膜形成用組成物中の特定粒子性メタルの量を大きく低減できることが分かった。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
<特定粒子性メタル>
インプリント用下層膜形成用組成物は、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタル(特定粒子性メタル)を合計で、組成物の50質量ppt~10質量ppbの割合で含む。
特定粒子性メタルは、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子であれば特に定めるものではなく、鉄、銅、チタンおよび鉛の2種以上からなる粒子、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種と他の金属からなる粒子、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種と非金属からなる粒子も含む趣旨である。
【0013】
特定粒子性メタルの粒子径は、10nm以上である。上限については、特定粒子性メタルの量が組成物の10質量ppb以下である限り、特に定めるものではないが、100nm以下が実際的である。
インプリント用下層膜形成用組成物中に特定粒子性メタルが10質量ppbを超えて存在すると、形成した下層膜上に特定粒子性メタルが堆積しモールドとの接触およびインプリント用硬化性組成物の充填を阻害する。この結果、インプリント用硬化性組成物のモールドへの未充填などを引き起こし、パターン欠陥の誘発につながる。また、モールドと特定粒子性メタルが物理的に接触するとモールドのパターン形状の破損を招く。さらに、特定粒子性メタルが堆積すると、ドライエッチング時にエッチングストッパとして機能してしまいエッチング欠陥を発生させてしまう。さらに、特定粒子性メタルの粒子径が10nm以上の場合に、特定粒子性メタルとモールドとの接触によりモールドパターンの破損を招いてしまうことが分かった。本発明では、上記構成とすることにより、このような問題を解決している。
【0014】
インプリント用下層膜形成用組成物は、特定粒子性メタルを組成物の50質量ppt~10質量ppbの割合で含む。上記上限値以下とすることにより、モールド耐久性を向上させるとともに、エッチング欠陥の発生が顕著に抑制され、半導体素子の歩留まりが向上する。さらにインプリント用下層膜形成用組成物の経時安定性も向上させることができる。
特定粒子性メタルの含有量は、下限値が、90質量ppt以上が好ましく、100質量ppt以上がさらに好ましい。また、特定粒子性メタルの含有量は、上限値が、8質量ppb以下が好ましく、5質量ppb以下がより好ましく、4質量ppb以下がさらに好ましく、3質量ppb以下が一層好ましく、2質量ppb以下がより一層好ましい。上述のとおり、特定粒子性メタルの量を10質量ppb以下とすることによって、モールドの破損(特に、モールドパターンの破損)を抑制することができる。一方、50質量ppt以上とすることによって、繰り返しインプリントを実施した際のモールドの汚染を効果的に抑制できる。
【0015】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄を含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.02質量ppb以上が好ましく、0.08質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、10質量ppb以下が好ましく、7質量ppb以下がより好ましく、2質量ppb以下がさらに好ましく、1質量ppb以下が一層好ましい。
【0016】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、銅を含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.01質量ppb以上が好ましく、0.05質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、5質量ppb以下が好ましく、3質量ppb以下がより好ましく、1質量ppb以下がさらに好ましく、0.7質量ppb以下が一層好ましい。
【0017】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、チタンを含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.01質量ppb以上が好ましく、0.02質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、5質量ppb以下が好ましく、2質量ppb以下がより好ましく、1質量ppb以下がさらに好ましく、0.5質量ppb以下が一層好ましい。
【0018】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉛を含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.005質量ppb以上が好ましい。また、上限値は、1質量ppb以下が好ましく、0.6質量ppb以下がより好ましい。
【0019】
特定粒子性メタルの粒子径(Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径)および含有量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。実施例で使用される機器では測定できない場合、あるいは、廃番等により機器が入手困難な場合には、Agilent 8900を用いることができ、Agilent 8900では測定できない場合、あるいは、廃番等により機器が入手困難な場合には、PerkinElmer社製 NexION350Sを用いることができる。
【0020】
<特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタル>
インプリント用下層膜形成用組成物は、上記特定粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタル(以下、「他の金属を含む粒子性メタル」ということがある)の合計量が、組成物の100質量ppt~30質量ppbであることが好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。さらに、離型性も向上させることができる。
特定粒子性メタルと他の金属を含む粒子性メタルの合計含有量は、下限値が、0.1質量ppb以上が好ましく、0.3質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、75質量ppb以下が好ましく、70質量ppb以下がより好ましく、40質量ppb以下がさらに好ましく、30質量ppb以下が一層好ましく、25質量ppb以下がより一層好ましく、10質量ppb以下がさらに一層好ましく、6質量ppb以下が特に一層好ましく、4質量ppb以下がより特に一層好ましく、3質量ppb以下が最も好ましい。
特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルの粒子径および含有量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
インプリント用下層膜形成用組成物は、特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも2種を含むことが好ましく、少なくとも3種を含むことがより好ましく、少なくとも4種を含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、モールド耐久性がより向上する傾向にある。
【0021】
<硬化性成分>
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物は、硬化性成分を含む。硬化性成分とは、下層膜を構成する成分であり、高分子成分(例えば、分子量1,000超)や低分子成分(例えば、分子量1,000未満)のいずれであってもよい。具体的には、樹脂、23℃で液体である化合物、架橋剤などが例示される。これらは、それぞれ、1種のみ用いられていてもよいし、2種以上用いられていてもよい。
本発明における硬化性成分の第一の実施形態は、硬化性成分の90質量%以上が樹脂である形態である。第一の実施形態において、樹脂は、エチレン性不飽和基および極性基を有する樹脂が好ましい。
本発明における硬化性成分の第二の実施形態は、硬化性成分が、樹脂と23℃で液体である化合物を含む形態である。第二の実施形態において、硬化性成分の40~90質量%(好ましくは70~90質量%)が樹脂であり、硬化性成分の10~60質量%(好ましくは10~30質量%)が23℃で液体である化合物であることが好ましい。23℃で液体である化合物はエチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。
本発明における硬化性成分の第三の実施形態は、硬化性成分が、樹脂と架橋剤を含む形態である。第三の実施形態において、硬化性成分の50~90質量%(好ましくは65~80質量%)が樹脂であり、硬化性成分の10~50質量%(好ましくは20~35質量%)が架橋剤であることが好ましい。硬化性成分が第三の実施形態の場合、インプリント用下層膜形成用組成物は、熱酸発生剤を含むことが好ましい。
本発明における硬化性成分の第四の実施形態は、硬化性成分の90質量%以上が23℃で液体である化合物である形態である。23℃で液体である化合物はエチレン性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。
【0022】
インプリント用下層膜形成用組成物における硬化性成分の合計含有量は、特に限定されないが、固形分中では50質量%以上であることが好ましく、固形分中で70質量%以上であることがより好ましく、固形分中で80質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、99.9質量%以下であることが好ましい。
硬化性成分のインプリント用下層膜形成用組成物中(溶剤を含む)での濃度は、特に限定されないが、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%未満であることが一層好ましい。
【0023】
<<樹脂>>
本発明で用いる樹脂は、公知の樹脂を広く用いることができる。
本発明で用いる樹脂は、エチレン性不飽和基および極性基の少なくとも一方を有することが好ましく、エチレン性不飽和基および極性基の両方を有することがより好ましい。
エチレン性不飽和基を有することにより、強度に優れた下層膜が得られる。また、極性基を有することにより、基板との密着性が向上する。また、架橋剤を配合する場合は、硬化後に形成される架橋構造がより強固となり、得られる下層膜の強度を向上させることができる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基(好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基)、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、メチルアリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、シクロヘキセニル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がさらに好ましい。ここで定義するエチレン性不飽和基をEtと称する。
また、極性基は、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、リン酸基、カルボキシル基および水酸基の少なくとも1種であることが好ましく、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基およびカルボキシル基の少なくとも1種であることがより好ましく、アルコール性水酸基またはカルボキシル基であることがさらに好ましい。ここで定義する極性基を極性基Poと称する。
極性基は、非イオン性の基であることが好ましい。
本発明で用いる樹脂は、さらに、環状エーテル基を含んでいてもよい。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基が例示され、エポキシ基が好ましい。ここで定義する環状エーテル基を環状エーテル基Cytと称する。
【0024】
樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂が例示され、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂およびノボラック樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
上記樹脂の重量平均分子量は、4,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、8,000以上であることがさらに好ましい。上限としては、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であってもよい。
【0025】
樹脂は下記の式(1)~(3)の少なくとも1つの構成単位を有することが好ましい。
【0026】
【0027】
式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。R21およびR3はそれぞれ独立に置換基である。L1、L2およびL3は、それぞれ独立に、単結合または連結基である。n2は0~4の整数である。n3は0~3の整数である。Q1はエチレン性不飽和基または環状エーテル基である。Q2はエチレン性不飽和基、環状エーテル基または極性基である。
【0028】
R1およびR2は、メチル基が好ましい。
R21およびR3はそれぞれ独立に後述する置換基Tが好ましい。
R21が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。本明細書において連結とは結合して連続する態様のほか、一部の原子を失って縮合(縮環)する態様も含む意味である。また特に断らない限り、連結する環状構造中に、酸素原子、硫黄原子、窒素原子(アミノ基)を含んでいてもよい。形成される環状構造としては、脂肪族炭化水素環(以下に例示するものを環Cfと称する)(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等)、芳香族炭化水素環(以下に例示するものを環Crと称する)(ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等)、含窒素複素環(以下に例示するものを環Cnと称する)(例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)、含酸素複素環(以下に例示するものを環Coと称する)(フラン環、ピラン環、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環等)、含硫黄複素環(以下に例示するものを環Csと称する)(チオフェン環、チイラン環、チエタン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環等)などが挙げられる。
【0029】
R3が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。形成される環状構造としては、Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csなどが挙げられる。
【0030】
L1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合または後述する連結基Lであることが好ましい。中でも、単結合、または連結基Lで規定されるアルキレン基もしくは(オリゴ)アルキレンオキシ基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。連結基Lは、極性基Poを置換基として有することが好ましい。また、アルキレン基が水酸基を置換基として有する態様も好ましい。
n2は0または1であることが好ましく、0がより好ましい。n3は0または1であることが好ましく、0がより好ましい。
Q1はエチレン性不飽和基Etが好ましい。
Q2は、極性基が好ましく、アルコール性水酸基を有するアルキル基が好ましい。
【0031】
上記の樹脂は、さらに、下記構成単位(11)、(21)および(31)の少なくとも1つの構成単位を含んでいてもよい。特に、本発明に含まれる樹脂は、構成単位(11)が構成単位(1)と組み合わせられることが好ましく、構成単位(21)が構成単位(2)と組み合わせられることが好ましく、構成単位(31)が構成単位(3)と組み合わせられることが好ましい。
【0032】
【0033】
式中、R11およびR22は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基である。R17は置換基である。R27は置換基である。n21は0~5の整数である。R31は置換基であり、n31は0~3の整数である。
【0034】
R11およびR22は、メチル基が好ましい。
R17は極性基を含む基または環状エーテル基を含む基であることが好ましい。R17が極性基を含む基である場合、上述の極性基Poを含む基であることが好ましく、上述の極性基Poであるか、上述の極性基Poで置換された置換基Tであることがより好ましい。R17が環状エーテル基を含む基である場合、上述の環状エーテル基Cytを含む基であることが好ましく、上述の環状エーテル基Cytで置換された置換基Tであることがより好ましい。
R27は置換基であり、R27の少なくとも1つは、極性基であることが好ましい。上記置換基は、後述する置換基Tが好ましい。n21は0または1が好ましく、0がより好ましい。R27が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成していてもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
R31は後述する置換基Tが好ましい。n31は0~3の整数であり、0または1が好ましく、0がより好ましい。R31が複数あるとき、互いに連結して環状構造を形成してもよい。形成される環状構造としては、環Cf、環Cr、環Cn、環Co、環Csの例が挙げられる。
【0035】
置換基Tとしては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい)、水酸基、アミノ基(-NRN
2)(炭素数0~24が好ましく、0~12がより好ましく、0~6がさらに好ましい)、スルファニル基、カルボキシル基、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アルコキシ基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アシル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アシルオキシ基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリーロイル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリーロイルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、カルバモイル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、スルファモイル基(炭素数0~12が好ましく、0~6がより好ましく、0~3がさらに好ましい)、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、ホスホノオキシ基、アルキルスルホニル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールスルホニル基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、複素環基(酸素原子、窒素原子、および硫黄原子の少なくとも1つを含む;炭素数1~12が好ましく、1~8がより好ましく、2~5がさらに好ましい、5員環または6員環を含むことが好ましい)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)、イミノ基(=NRN)、アルキリデン基(=C(RN)2)などが挙げられる。
RNは水素原子、置換基Tのアルキル基、置換基Tのアルケニル基、置換基Tのアリール基、置換基Tのアリールアルキル基、または置換基Tの複素環基である。
各置換基に含まれるアルキル部位およびアルケニル部位は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。上記置換基Tが置換基を取りうる基である場合にはさらに置換基Tを有してもよい。例えば、アルキル基に水酸基が置換したヒドロキシアルキル基になっていてもよい。
【0036】
連結基Lとしては、アルキレン基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、(オリゴ)アルキレンオキシ基(1つの構成単位中のアルキレン基の炭素数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;繰り返し数は1~50が好ましく、1~40がより好ましく、1~30がさらに好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、チオカルボニル基、-NRN-、およびそれらの組み合わせにかかる連結基が挙げられる。アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基は上記置換基Tを有していてもよい。例えば、アルキレン基が水酸基を有していてもよい。
連結基Lの連結鎖長は、1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい。連結鎖長は連結に関与する原子団のうち最短の道程に位置する原子数を意味する。例えば、-CH2-(C=O)-O-であると3となる。
なお、連結基Lで規定されるアルキレン基、アルケニレン基、(オリゴ)アルキレンオキシ基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。
連結基Lを構成する原子としては、炭素原子と水素原子、必要によりヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる少なくとも1種等)を含むものであることが好ましい。連結基中の炭素原子の数は1~24個が好ましく、1~12個がより好ましく、1~6個がさらに好ましい。水素原子は炭素原子等の数に応じて定められればよい。ヘテロ原子の数は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、それぞれ独立に、0~12個が好ましく、0~6個がより好ましく、0~3個がさらに好ましい。
【0037】
樹脂の合成は常法によればよい。例えば、式(1)の構成単位を有する樹脂は、オレフィンの付加重合に係る公知の方法を適宜採用することができる。式(2)の構成単位を有する樹脂は、スチレンの付加重合に係る公知の方法を適宜採用することができる。式(3)の構成単位を有する樹脂は、フェノール樹脂の合成に係る公知の方法を適宜採用することができる。
上記の樹脂は1種を用いても複数のものを用いてもよい。
硬化性成分としての樹脂は、上述の他、国際公開第2016/152600号の段落0016~0079の記載、国際公開第2016/148095号の段落0025~0078の記載、国際公開第2016/031879号の段落0015~0077の記載、国際公開第2016/027843号の0015~0057に記載のものを用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0038】
<<23℃で液体である化合物>>
硬化性成分は、23℃で液体である化合物であってもよい。
23℃で液体である化合物は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、上述のエチレン性不飽和基Etがより好ましい。
23℃で液体である化合物は、23℃における粘度が20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがより好ましく、11.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、9.0mPa・s以下であることが一層好ましい。上記粘度の下限値としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、1.0mPa・s以上とすることができる。このような低粘度の化合物を用いることにより、効率良く架橋を促進できる。
23℃で液体である化合物は、一分子中にエチレン性不飽和基を1つのみ有していても、2つ以上有していてもよく、2~6つが好ましく、2~4つがさらに好ましい。
23℃で液体である化合物は、下記式(2)で表されることが好ましい。
【化3】
【0039】
式中、R
21はq価の有機基であり、R
22は水素原子またはメチル基であり、qは2以上の整数である。qは2以上7以下の整数が好ましく、2以上4以下の整数がより好ましく、2または3がさらに好ましい。
R
21は、2~7価の有機基であることが好ましく、2~4価の有機基であることがより好ましく、2または3価の有機基であることがさらに好ましい。R
21は直鎖、分岐および環状の少なくとも1つの構造を有する炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
R
21が2価の有機基であるとき、下記式(1-2)で表される有機基であることが好ましい。
【化4】
式中、Z
1およびZ
2はそれぞれ独立に、単結合、-Alk-、-AlkO-または-OAlkO-であることが好ましい。Alkはアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)を表し、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有していてもよい。
【0040】
R9は、単結合または下記の式(9-1)~(9-10)から選ばれる連結基またはその組み合わせが好ましい。中でも、式(9-1)~(9-3)、(9-7)、および(9-8)から選ばれる連結基であることが好ましい。
【0041】
【0042】
R101~R117は任意の置換基である。中でも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アラルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、チエニル基、フリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(アルキル基は炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が好ましい。R101とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108、R109とR110、複数あるときのR111、複数あるときのR112、複数あるときのR113、複数あるときのR114、複数あるときのR115、複数あるときのR116、複数あるときのR117は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Arはアリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であり、具体的には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、フルオレンジイル基が挙げられる。
hCyはヘテロ環基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、2~5がさらに好ましい)であり、5員環または6員環がより好ましい。hCyを構成するヘテロ環の具体例としては、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、インドール環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ピロール環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロリドン環、モルホリン環が挙げられ、中でも、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環が好ましい。
Z3は単結合または連結基である。連結基としては、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子が置換してもよいアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が挙げられる。
nおよびmは100以下の自然数であり、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
pは0以上で、各環に置換可能な最大数以下の整数である。上限値は、それぞれの場合で独立に、置換可能最大数の半分以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
【0043】
本発明で用いる23℃で液体である化合物を構成する原子の種類は特に定めるものでは無いが、炭素原子、酸素原子、水素原子およびハロゲン原子から選択される原子のみで構成されることが好ましく、炭素原子、酸素原子および水素原子から選択される原子のみで構成されることがより好ましい。
【0044】
本発明で好ましく用いられる23℃で液体である化合物としては、特開2014-170949号公報に記載の重合性化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に含まれる。
【0045】
<<架橋剤>>
本発明で用いる架橋剤は、架橋反応により硬化を進行させるものであれば、特に限定はない。本発明では、架橋剤は、樹脂が有する極性基との反応によって、架橋構造を形成するものが好ましい。このような架橋剤を用いることにより、樹脂がより強固に結合し、より強固な膜が得られる。
架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)、オキセタニル化合物(オキセタニル基を有する化合物)、アルコキシメチル化合物(アルコキシメチル基を有する化合物)、メチロール化合物(メチロール基を有する化合物)、ブロックイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート基を有する化合物)などが挙げられ、アルコキシメチル化合物(アルコキシメチル基を有する化合物)が低温で強固な結合形成が可能であるため好ましい。
【0046】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物は、1分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基の数は、1分子内に2~100個が好ましい。上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ化合物の詳細は、特開2017-171784号公報の段落0132~0142の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0047】
(オキセタニル化合物)
オキセタニル化合物は、1分子内にオキセタニル基を2つ以上有する化合物が好ましい。オキセタニル基の数は、1分子内に2~100個が好ましい。上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。1分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT-121、OXT-221、OX-SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)、ETERNACOLL(登録商標) OXMA、ETERNACOLL(登録商標) OXBP(宇部興産(株)製)を用いることができる。
【0048】
(アルコキシメチル化合物、メチロール化合物)
アルコキシメチル化合物およびメチロール化合物としては、アルコキシメチル基またはメチロール基が、窒素原子または芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。
【0049】
アルコキシメチル基またはメチロール基が、窒素原子に結合している化合物としては、アルコキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、アルコキシメチル化尿素およびメチロール化尿素等が好ましい。また、特開2004-295116号公報の段落番号0134~0147、特開2014-089408号公報の段落番号0095~0126の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0050】
アルコキシメチル基またはメチロール基が窒素原子に結合している化合物の好ましい構造として、下記式(100-1)~(100-4)で示される化合物を挙げることができる。式中R
7~R
11は、水素原子または1価の有機基を表す。2価の有機基は上述の置換基Tが好ましい。X
2は、単結合または2価の連結基であり、2価の連結基が好ましい。2価の連結基は、上述の連結基Lが例示される。特に、R
7は、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【化6】
【0051】
アルコキシメチル基またはメチロール基が、芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物の例として、例えば下記式(101-1)、式(101-2)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
式(101-1)
【化7】
式(101-1)中、Xは単結合または1~4価の有機基を表し、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を表し、nは1~4の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0~4の整数である。
【0053】
式(101-2)
【化8】
式(101-2)中、2つのYはそれぞれ独立に水素原子またアルキル基を表し、アルキル基は、酸素原子またはフッ素原子を含んでいてもよく、R
13~R
16はそれぞれ独立に水素原子または1価の有機基を示し、mおよびnはそれぞれ独立に1~3の整数であり、pおよびqはそれぞれ独立に0~4の整数である。
【0054】
アルコキシメチル化合物、メチロール化合物の市販品としては、例えば、サイメル300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174、UFR65、300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMX-750、-032、-706、-708、-40、-31、-270、-280、-290、-750LM、ニカラックMS-11、ニカラックMW-30HM、-100LM、-390(以上、(株)三和ケミカル製)などが挙げられる。
【0055】
(ブロックイソシアネート化合物)
ブロックイソシアネート化合物は、1分子内に2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物が好ましい。ブロックイソシアネート化合物の詳細は、特開2017-171784号公報の段落0151~0154の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0056】
<他の成分>
本発明の下層膜形成用組成物は、上記成分に加え、他の成分を含んでいてもよい。
具体的には、熱酸発生剤、アルキレングリコール化合物、重合開始剤、溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、界面活性剤等を1種または2種以上含んでいてもよい。
上記成分について、特開2013-036027号公報、特開2014-090133号公報、特開2013-189537号公報に記載の各成分を用いることができる。含有量等についても、上記公報の記載を参酌できる。
本発明では特に、溶剤を含むことが好ましい。
【0057】
<<熱酸発生剤>>
熱酸発生剤は、加熱によって酸が発生し、酸の作用によって架橋を進行させる化合物である。上記架橋剤と併用することにより、より強度の高い下層膜を得ることができる。
熱酸発生剤としては、通常はカチオン成分とアニオン成分とが対になった有機オニウム塩化合物が用いられる。上記カチオン成分としては、例えば、有機スルホニウム、有機オキソニウム、有機アンモニウム、有機ホスホニウムや有機ヨードニウムを挙げることができる。また、上記アニオン成分としては、例えば、BF4-、B(C6F5)4-、SbF6-、AsF6-、PF6-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-や(CF3SO2)3C-を挙げることができる。
具体的には、特開2017-224660号公報の段落0243~0256および特開2017-155091号公報の段落0016の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
熱酸発生剤の含有量は、架橋剤100質量部に対し、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。熱酸発生剤は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0058】
<<重合開始剤>>
インプリント用下層膜形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよく、熱重合開始剤および光重合開始剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。重合開始剤を含むことにより、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる重合性基の反応が促進し、密着性が向上する傾向にある。インプリント用硬化性組成物との架橋反応性を向上させる観点から光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0059】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
アシルホスフィン化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE1173、IRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF製)を用いることができる。
【0060】
上記インプリント用下層膜形成用組成物に用いられる光重合開始剤の含有量は、配合する場合、固形分中、例えば、0.0001~5質量%であり、好ましくは0.0005~3質量%であり、さらに好ましくは0.01~1質量%である。2種以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0061】
<溶剤>
インプリント用下層膜形成用組成物は溶剤(以下、「下層膜用溶剤」ということがある)を含むことが好ましい。溶剤は例えば、23℃で液体であって沸点が250℃以下の化合物が好ましい。インプリント用下層膜形成用組成物は、下層膜用溶剤を99.0質量%以上含むことが好ましく、99.2質量%以上含むことがより好ましく、99.4質量%以上であってもよい。すなわち、インプリント用下層膜形成用組成物は、固形分濃度が1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましい。また、下限値は、0質量%超であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、0.1質量%以上であることが一層好ましい。溶剤の割合を上記の範囲とすることで、膜形成時の膜厚を薄く保ち、エッチング加工時のパターン形成性が向上する傾向にある。
【0062】
溶剤は、インプリント用下層膜形成用組成物に、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
下層膜用溶剤の沸点は、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、160℃以下であることが一層好ましく、130℃以下であることがより一層好ましい。下限値は23℃であることが実際的であるが、60℃以上であることがより実際的である。沸点を上記の範囲とすることにより、下層膜から溶剤を容易に除去でき好ましい。
【0063】
下層膜用溶剤は、有機溶剤が好ましい。溶剤は、好ましくはエステル基、カルボニル基、水酸基およびエーテル基のいずれか1つ以上を有する溶剤である。なかでも、非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。
【0064】
具体例としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが選択される。
【0065】
アルコキシアルコールとしては、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール(例えば、1-メトキシ-2-プロパノール)、エトキシプロパノール(例えば、1-エトキシ-2-プロパノール)、プロポキシプロパノール(例えば、1-プロポキシ-2-プロパノール)、メトキシブタノール(例えば、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-3-ブタノール)、エトキシブタノール(例えば、1-エトキシ-2-ブタノール、1-エトキシ-3-ブタノール)、メチルペンタノール(例えば、4-メチル-2-ペンタノール)などが挙げられる。
【0066】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、および、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが特に好ましい。
【0067】
また、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)またはプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、または乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、または酢酸3-メトキシブチルが好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、または、3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
鎖状ケトンとしては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトンまたはメチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロンまたはシクロヘキサノンが好ましい。
ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン(γBL)が好ましい。
アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
【0068】
上記成分の他、炭素数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつ、ヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
【0069】
炭素数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミルを用いることが特に好ましい。
【0070】
下層膜用溶剤として中でも好ましい溶剤としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが挙げられ、プロピレングリコールモノアルキルエーテルおよびラクトンが特に好ましい。
【0071】
<収容容器>
インプリント用下層膜形成用組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。収容容器は、酸洗浄処理したものが好ましい。
【0072】
<表面自由エネルギー>
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物から形成されたインプリント用下層膜の表面自由エネルギーが30mN/m以上であることが好ましく、40mN/m以上であることがより好ましく、50mN/m以上であることがさらに好ましい。上限としては、200mN/m以下であることが好ましく、150mN/m以下であることがより好ましく、100mN/m以下であることがさらに好ましい。
表面自由エネルギーの測定は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で行うことができる。
【0073】
<インプリント用下層膜形成用組成物の製造方法>
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物は、原料を所定の割合となるように配合して調製される。原料とは、インプリント用下層膜形成用組成物に積極的に配合される成分をいい、不純物等の意図せずに含まれる成分は除く趣旨である。具体的には、硬化性成分や溶剤が例示される。ここで、原料は市販品であっても、合成品であってもよい。いずれの原料も、通常、不純物を含む粒子(特定粒子性メタルや特定粒子性メタル以外の金属粒子、その他の不純物)などを含んでいる。
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法の好ましい一実施形態として、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる原料の少なくとも1種を、フィルターを用いて濾過処理を行うことを含む製造方法が挙げられる。また、2種以上の原料を混合した後、フィルターを用いて濾過し、他の原料(濾過していてもよいし、濾過していなくてもよい)と混合することも好ましい。より好ましい一実施形態としては、インプリント用下層膜形成用組成物に含まれる原料(好ましくはすべての原料)を混合した後、フィルターを用いて濾過処理を行う実施形態が例示される。
【0074】
フィルターは、ポリアミドを含むフィルターが好ましい。
濾過は1段階のフィルターによる濾過でも効果を発揮するが、2段階以上のフィルターによる濾過がより好ましい。2段階以上のフィルターによる濾過とは、2つ以上のフィルターを直列に配置して濾過することをいう。本発明では、1~5段階のフィルターによる濾過が好ましく、1~4段階のフィルターによる濾過がより好ましく、2~4段階のフィルターによる濾過がさらに好ましい。
【0075】
本発明のインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法は、インプリント用下層膜形成用組成物の原料を混合した後、2種以上のフィルターを用いて濾過することを含み、上記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、孔径が互いに異なることが好ましい。このような構成とすることにより、より効果的に特定粒子性メタル等の除去を行うことが可能になる。また、上記2種以上のフィルターの少なくとも2種は、材質が互いに異なることが好ましい。このような構成とすることにより、より多種類の特定粒子性メタル等の除去を行うことが可能になる。
さらに、上記2種以上のフィルターのうち、フィルターの孔径の大きいものから順に、インプリント用下層膜形成用組成物を通過させて濾過することが好ましい。すなわち、濾過装置の上流から下流に向かい、孔径が小さくなるようにフィルターを配置することが粒子性メタル除去能の観点で好ましい。
【0076】
2種以上のフィルターのうち、最も孔径が小さいフィルターの孔径X1は0.5~15nmであることが好ましく、1~10nmであることがより好ましく、1~5nmであることがさらに好ましい。孔径X1が0.5nm以上であることにより、濾過速度が向上し、生産性が向上する傾向にある。また、濾過供給圧力の上昇に伴うフィルターの破壊やフィルター材質からの不純物の溶出をより効果的に抑制することができる。一方、孔径X1が15nm以下であることにより、特定粒子性メタル等の除去をより効果的に行うことができる。ここでは、最小の孔径X1を有するフィルターをフィルターA、その他のフィルター群をフィルターBUと呼ぶ。
また、上記2種以上のフィルターのうち、最も孔径が大きいフィルターの孔径X2は5~100nmであることが好ましく、7~80nmであることがより好ましく、10~50nmであることがさらに好ましい。ただし、孔径X2が孔径X1を下回ることはない。孔径X2が5nm以上であることにより、濾過速度が向上し、生産性が向上する傾向にある。また、濾過供給圧力の上昇に伴うフィルターの破壊やフィルター材質からの不純物の溶出をより効果的に抑制することができる。一方、孔径X2が100nm以下であることにより、上記フィルターBUやフィルターAの根詰まりを招き、生産性が顕著に向上する傾向にある。
孔径X1と孔径X2の差は、0を超え200nm以下であることが好ましく、3~100nmであることがより好ましく、10~50nmであることがさらに好ましい。上記範囲内とすることにより、生産性を維持しつつ効率良く粒子性メタルを除去することができる。
2種の孔径の異なるフィルターを用いる場合、1段階目の濾過は、孔径が0.5~15nmのフィルター(好ましくは孔径が1~10nmのフィルター)を用い、2段階目の濾過は、孔径が3~100nmのフィルター(好ましくは孔径が5~50nmのフィルター)を用いることができる。
3種の孔径の異なるフィルターを用いる場合、1段階目の濾過は、孔径が0.5~15nmのフィルター(好ましくは孔径が1~10nmのフィルター)を用い、2段階目の濾過は、孔径が3~100nmのフィルター(好ましくは孔径が5~50nmのフィルター)を用い、3段階目の濾過は、孔径が10~150nmのフィルター(好ましくは孔径が30~100nmのフィルター)を用いることができる。また、1段階目と2段階目、2段階目と3段階目等、直前の段階とのフィルターの孔径の差は、5~20nmであることが好ましい。
【0077】
フィルターの材料を構成する成分(材料成分)は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては特に制限されず、フィルターの材料として公知のものが使用できる。具体的には、6-ポリアミド、6,6-ポリアミド等のポリアミド、ポリエチレン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、および、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、セルロース、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。なかでも、より優れた耐溶剤性を有し、より優れた欠陥抑制性能を有する点で、ポリアミド(なかでも、6,6-ポリアミドが好ましい)、ポリオレフィン(なかでも、ポリエチレンが好ましい)、ポリフルオロカーボン(なかでも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)、ポリスチレン、ポリスルホン、および、ポリエーテルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレン(超高分子量のもの、グラフト化されたものを含む)、ポリアミド、および、ポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、ポリエチレン(超高分子量のもの、グラフト化されたものを含む)およびポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種が一層好ましく、ポリアミドからなるものがより一層好ましい。これらの重合体は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0078】
また、フィルターの材料を構成する成分(材料成分)の好ましい一実施形態として、中性基およびイオン交換基の少なくとも1種がグラフト化したポリマー(グラフト化したポリマー)が挙げられる。中性基およびイオン交換基は、水酸基、カルボキシル基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。
グラフト化ポリマーは、グラフト化ポリオレフィンであることが好ましく、グラフト化ポリエチレンであることがより好ましい。
また、フィルターの材料を構成する成分(材料成分)の好ましい一実施形態として、他の樹脂で構成された多孔質膜を被覆したり担持していてもよい。上記材質が被覆および担持されたフィルターは特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子を吸着する官能基の運動性が向上するため、特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルの捕捉能力が非常に高い。
グラフト化ポリマーの記載は、国際公開第2016/081729号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0079】
本発明では、上記2種以上のフィルターのうち、少なくとも1種が鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を吸着可能な吸着基を有する樹脂を含むことが好ましい。鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を吸着可能な吸着基は、さらに、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種も吸着可能な吸着基であることが好ましい。吸着基としては、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミド基が例示される。
本発明では、特に、吸着基を有する樹脂がポリアミドであることが好ましい。
本発明で用いるフィルターは、また、有効濾過面積が100~1000cm2であることが好ましく、500~1000cm2であることがより好ましい。このようなフィルターを用いることにより、生産性を向上させることができる。
【0080】
フィルターに対するインプリント用下層膜形成用組成物の供給圧力としては特に制限されないが、一般に、0.001~2.0MPaが好ましい。なかでも、より効率良く特定粒子性メタルを除去できる点で、供給圧力は、0.001~1.5MPaが好ましく、0.01~1.2MPaがより好ましく、0.05~1.0MPaがさらに好ましく、0.1~1.0MPaが一層好ましい。
また、濾過圧力は濾過精度に影響を与えることから、濾過時における圧力の脈動は可能な限り少ない方が好ましい。フィルターにはフィルター性能(フィルターが壊れない)を保障する耐差圧が設定されており、この値が大きい場合には濾過圧力を高めることで濾過速度を高めることができる。つまり、上記濾過速度の上限は、通常、フィルターの耐差圧に依存するが、通常、10.0L/分以下が好ましく、1.0L/分以下がより好ましく、0.5L/分以下がさらに好ましい。下限値としては、例えば、0.001L/分以上であり、0.01L/分以上であることがより好ましく、0.1L/分以上であることがさらに好ましく、0.25L/分以上であることが一層好ましい。
インプリント用下層膜形成用組成物をフィルターに通す際の温度としては特に制限されないが、一般に、室温程度(例えば、15~30℃、さらには20~25℃)が好ましい。
なお、濾過工程は、クリーンな環境下で実施するのが好ましい。具体的には米国連邦規格(Fed.Std.209E)のClass1000(ISO14644-1:2015では、Class6)を満たすクリーンルームで実施するのが好ましく、Class100(ISO14644-1:2015では、Class5)を満たすクリーンルームがより好ましく、Class10(ISO14644-1:2015では、Class4)を満たすクリーンルームが更に好ましく、Class1(ISO14644-1:2015では、Class3)またはそれ以上の清浄度(クラス2、または、クラス1)を有するクリーンルームが特に好ましい。
【0081】
本発明で用いるインプリント用下層膜形成用組成物に含まれる原料、例えば、23℃で液体である化合物や溶剤は、上記濾過前に、蒸留処理を施してもよいが、施さない方が好ましい。蒸留処理を施すと、濾過の回数をより効果的に減らすことができる。一方、蒸留処理を施さないと素材のコストを低減できる。
【0082】
本発明の製造方法は、また、実質的にケイ素原子を含有しないインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法に適している。実質的に含有しないとは、ケイ素の含有量がインプリント用下層膜形成用組成物に含まれる硬化性成分の3質量%以下であることをいい、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0083】
本実施形態に係るインプリント用下層膜形成用組成物の製造方法は、上記以外の工程を有していてもよい。上記以外の工程としては、例えば、フィルター洗浄工程、装置洗浄工程、除電工程、および、被精製液準備工程等が挙げられる。
【0084】
<インプリント用硬化性組成物>
インプリント用下層膜形成用組成物は、通常、インプリント用硬化性組成物の下層膜を形成するための組成物として用いられる。通常、本発明のインプリント用下層膜形成用組成物から形成された硬化物を下層膜として用いる。
【0085】
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物は、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタル(以下、「粒子性メタルA」と呼ぶことがある)を合計で、組成物の100質量ppt~30質量ppbの割合で含む態様とすることができる。
このように、粒子性メタルAを上記範囲とすることにより、モールドの破損を効果的に抑制でき、モールド耐久性を向上できると推測される。
【0086】
粒子Aは、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルであれば特に定めるものではなく、鉄、銅、チタンおよび鉛の2種以上からなる粒子性メタル、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種と他の金属からなる粒子性メタル、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種と非金属からなる粒子性メタルも含む趣旨である。
粒子性メタルAの含有量は、下限値が、150質量ppt以上が好ましく、200質量ppt以上が一層好ましい。また、粒子性メタルAの含有量は、上限値が、25質量ppb以下が好ましく、19質量ppb以下がより好ましく、15質量ppb以下がさらに好ましく、10質量ppb以下が一層好ましく、8質量ppb以下がより一層好ましく、5質量ppb以下がさらに一層好ましく、3質量ppb以下がよりさらに一層好ましく、1.5質量ppb以下、1質量ppb以下であってもよい。上述のとおり、粒子性メタルAの量を30質量ppb以下とすることによって、モールドの破損(特に、モールドパターンの破損)を抑制することができる。一方、100質量ppt以上とすることによって、繰り返しインプリントを実施した際のモールドの汚染を効果的に抑制できる。
粒子性メタルAの量および粒子径は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0087】
インプリント用硬化性組成物は、上記粒子性メタルA以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタル(以下、「粒子性メタルB」ということがある)の合計量が、固形分の150質量ppt~60質量ppbであることが好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。さらに、離型性も向上させることができる。
粒子性メタルAと粒子性メタルBの合計含有量は、下限値が、0.2質量ppb以上が好ましく、0.3質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、100質量ppb以下が好ましく、50質量ppb以下がより好ましく、10質量ppb以下がさらに好ましく、5質量ppb以下が一層好ましい。
粒子性メタルBは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
インプリント用硬化性組成物は、粒子性メタルA以外の金属を含む粒子性メタルとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも2種を含むことが好ましく、少なくとも3種を含むことがより好ましく、少なくとも4種を含むことがより好ましく、すべてを含むことがさらに好ましい。このような構成とすることにより、モールド耐久性がより向上する傾向にある。
インプリント用硬化性組成物の組成等は、特に定めるものではないが、重合性化合物および光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0088】
<<重合性化合物>>
インプリント用硬化性組成物は重合性化合物を含むことが好ましく、この重合性化合物が最大量成分を構成することがより好ましい。重合性化合物は、一分子中に重合性基を1つ有していても、2つ以上有していてもよい。インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも1種は、重合性基を一分子中に2~5つ含むことが好ましく、2~4つ含むことがより好ましく、2または3つ含むことがさらに好ましく、3つ含むことが一層好ましい。
インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも1種は、芳香族環(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)および脂環(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~6がさらに好ましい)の少なくとも一方を含むことが好ましく、芳香族環を含むことがさらに好ましい。芳香族環はベンゼン環が好ましい。
重合性化合物の分子量は100~900が好ましい。
上記重合性化合物の少なくとも1種は、下記式(I-1)で表されることが好ましい。
【化9】
L
20は、1+q2価の連結基であり、例えば、1+q2価の、アルカン構造の基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケン構造の基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール構造の基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、ヘテロアリール構造の基(炭素数1~22が好ましく、1~18がより好ましく、1~10がさらに好ましい、ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が挙げられる、5員環、6員環、7員環が好ましい)、またはこれらを組み合わせた基を含む連結基が挙げられる。アリール基を2つ組み合わせた基としてはビフェニルやジフェニルアルカン、ビフェニレン、インデンなどの構造を有する基が挙げられる。ヘテロアリール構造の基とアリール構造の基を組合せたものとしては、インドール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン、カルバゾールなどの構造を有する基が挙げられる。
R
21およびR
22はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
L
21およびL
22はそれぞれ独立に単結合または上記連結基Lを表し、なかでもヘテロ原子を有する連結基が好ましい。L
20とL
21またはL
22は連結基Lを介してまたは介さずに結合して環を形成していてもよい。L
20、L
21およびL
22は上記置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数が結合して環を形成してもよい。置換基Tが複数あるとき互いに同じでも異なっていてもよい。
q2は0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0または1がさらに好ましい。
【0089】
重合性化合物の例としては下記実施例で用いた化合物、特開2014-90133号公報の段落0017~0024および実施例に記載の化合物、特開2015-9171号公報の段落0024~0089に記載の化合物、特開2015-70145号公報の段落0023~0037に記載の化合物、国際公開第16/152597号の段落0012~0039に記載の化合物を挙げることができるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0090】
重合性化合物は、インプリント用硬化性組成物中、30質量%以上含有することが好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が一層好ましく、60質量%以上であってもよく、さらに70質量%以上であってもよい。また、上限値は、99質量%未満であることが好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましく、97質量%以下とすることもできる。
【0091】
<<他の成分>>
インプリント用硬化性組成物は、重合性化合物以外の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、重合開始剤、界面活性剤、増感剤、離型剤、酸化防止剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。
本発明で用いることができるインプリント用硬化性組成物の具体例としては、特開2013-036027号公報、特開2014-090133号公報、特開2013-189537号公報に記載の組成物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、インプリント用硬化性組成物の調製、膜(パターン形成層)の形成方法についても、上記公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0092】
本発明では、インプリント用硬化性組成物における溶剤の含有量は、インプリント用硬化性組成物の5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
インプリント用硬化性組成物は、ポリマー(好ましくは、重量平均分子量が1,000を超える、より好ましくは重量平均分子量が2,000を超える、さらに好ましくは重量平均分子量が10,000以上のポリマー)を実質的に含有しない態様とすることもできる。ポリマーを実質的に含有しないとは、例えば、ポリマーの含有量がインプリント用硬化性組成物の0.01質量%以下であることをいい、0.005質量%以下が好ましく、全く含有しないことがより好ましい。
【0093】
<<物性値等>>
インプリント用硬化性組成物の粘度は、20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがより好ましく、11.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、9.0mPa・s以下であることが一層好ましい。上記粘度の下限値としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、5.0mPa・s以上とすることができる。粘度は、下記の方法に従って測定される。
粘度は、東機産業(株)製のE型回転粘度計RE85L、標準コーン・ロータ(1°34’×R24)を用い、サンプルカップを23℃に温度調節して測定する。単位は、mPa・sで示す。測定に関するその他の詳細はJISZ8803:2011に準拠する。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0094】
インプリント用硬化性組成物の表面張力(γResist)は28.0mN/m以上であることが好ましく、30.0mN/m以上であることがより好ましく、32.0mN/m以上であってもよい。表面張力の高いインプリント用硬化性組成物を用いることで毛細管力が上昇し、モールドパターンへのインプリント用硬化性組成物の高速な充填が可能となる。上記表面張力の上限値としては、特に限定されるものではないが、下層膜との関係およびインクジェット適性を付与するという観点では、40.0mN/m以下であることが好ましく、38.0mN/m以下であることがより好ましく、36.0mN/m以下であってもよい。本発明において、表面張力は、下記の方法に従って測定される。
<<<表面張力>>>
表面張力は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で行う。単位は、mN/mで示す。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0095】
インプリント用硬化性組成物の大西パラメータは、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.7以下であることがさらに好ましい。インプリント用硬化性組成物の大西パラメータの下限値は、特に定めるものではないが、例えば、1.0以上、さらには、2.0以上であってもよい。
大西パラメータはインプリント用硬化性組成物の不揮発性成分について、それぞれ、全構成成分の炭素原子、水素原子および酸素原子の数を下記式に代入して求めることができる。
大西パラメータ=炭素原子、水素原子および酸素原子の数の和/(炭素原子の数-酸素原子の数)
【0096】
<<保存容器>>
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。収容容器は、酸洗浄処理したものが好ましい。
【0097】
<キット>
本発明のキットは、本発明のインプリント用下層膜形成用組成物と、インプリント用硬化性組成物を含む。インプリント用硬化性組成物は、重合性化合物と、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルを含むインプリント用硬化性組成物であって、粒子性メタルの合計含有量が、インプリント用硬化性組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbであることが好ましい。インプリント用硬化性組成物の詳細は、上述した内容と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0098】
<パターンおよびパターン製造方法>
本発明の好ましい実施形態にかかるパターン製造方法は、本発明のインプリント用下層膜形成用組成物を基板に適用しインプリント用下層膜を形成する工程(下層膜形成工程)、インプリント用下層膜上(好ましくは、下層膜の表面)にインプリント用硬化性組成物を適用する工程(インプリント用硬化性組成物層形成工程)、インプリント用硬化性組成物にモールドを接触させた状態で上記インプリント用硬化性組成物を露光する工程およびモールドを剥離する工程を含む。
以下、パターン製造方法について、
図1に従って説明する。本発明の構成が図面により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0099】
<<下層膜形成工程>>
下層膜形成工程では、
図1(1)(2)に示す様に、基板1の表面に、下層膜2を形成する。下層膜は、インプリント用下層膜形成用組成物を基板上に層状に適用して形成することが好ましい。基板1は、単層からなる場合の他、下塗り層や密着膜を有していてもよい。
【0100】
基板の表面へのインプリント用下層膜形成用組成物の適用方法としては、特に定めるものではなく、一般によく知られた適用方法を採用できる。具体的には、適用方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法が例示され、スピンコート法が好ましい。
また、基板上にインプリント用下層膜形成用組成物を層状に適用した後、好ましくは、熱によって溶剤を揮発(乾燥)させて、薄膜である下層膜を形成する。
【0101】
下層膜2の厚さは、2nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、4nm以上であることがさらに好ましく、5nm以上であってもよい。また、下層膜の厚さは、40nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、15nm以下であってもよい。膜厚を上記下限値以上とすることにより、インプリント用硬化性組成物の下層膜上での拡張性(濡れ性)が向上し、インプリント後の均一な残膜形成が可能となる。膜厚を上記上限値以下とすることにより、インプリント後の残膜が薄くなり、膜厚ムラが発生しにくくなり、残膜均一性が向上する傾向にある。
【0102】
基板の材質としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報の段落0103の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)基板、窒化ガリウム基板、アルミニウム基板、アモルファス酸化アルミニウム基板、多結晶酸化アルミニウム基板、SOC(スピンオンカーボン)、SOG(スピンオングラス)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、ならびに、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlGa、InP、または、ZnOから構成される基板が挙げられる。なお、ガラス基板の具体的な材料例としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。本発明では、シリコン基板およびSOC(スピンオンカーボン)を塗布した基板が好ましい。
【0103】
本発明においては、有機層を最表層として有する基板を用いることが好ましい。
基板の有機層としてはCVD(Chemical Vapor Deposition)で形成されるアモルファスカーボン膜や、高炭素材料を有機溶剤に溶解させ、スピンコートで形成されるスピンオンカーボン膜が挙げられる。スピンオンカーボン膜としては、ノルトリシクレン共重合体、水素添加ナフトールノボラック樹脂、ナフトールジシクロペンタジエン共重合体、フェノールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報に記載されるフルオレンビスフェノールノボラック、特開2005-250434号公報に記載のアセナフチレン共重合、インデン共重合体、特開2006-227391号公報に記載のフェノール基を有するフラーレン、ビスフェノール化合物およびこのノボラック樹脂、ジビスフェノール化合物およびこのノボラック樹脂、アダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、ヒドロキシビニルナフタレン共重合体、特開2007-199653号公報に記載のビスナフトール化合物およびこのノボラック樹脂、ROMP、トリシクロペンタジエン共重合物に示される樹脂化合物が挙げられる。
SOCの例としては特開2011-164345号公報の段落0126の記載を参照することができ、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0104】
<<インプリント用硬化性組成物層形成工程>>
インプリント用硬化性組成物層形成工程では、例えば、
図1(3)に示すように、上記下層膜2の表面に、インプリント用硬化性組成物3を適用する。
インプリント用硬化性組成物の適用方法としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報の段落0102の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。上記インプリント用硬化性組成物は、インクジェット法により、上記下層膜の表面に適用することが好ましい。また、インプリント用硬化性組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより下層膜の表面に液滴を配置する方法において、液滴の量は1~20pL程度が好ましく、液滴間隔をあけて下層膜表面に配置することが好ましい。液滴間隔としては、10~1000μmの間隔が好ましい。液滴間隔は、インクジェット法の場合は、インクジェットのノズルの配置間隔とする。
さらに、下層膜2と、下層膜上に適用した膜状のインプリント用硬化性組成物3の体積比は、1:1~500であることが好ましく、1:10~300であることがより好ましく、1:50~200であることがさらに好ましい。
また、本発明では、上記インプリント用硬化性組成物を基板上に層状に適用する工程を含み、上記層状に適用したインプリント用硬化性組成物を、好ましくは100~300℃で、より好ましくは130~260℃で、さらに好ましくは150~230℃で、加熱(ベーク)することを含むことが好ましい。加熱時間は、好ましくは30秒~5分である。
【0105】
<<モールド接触工程>>
モールド接触工程では、例えば、
図1(4)に示すように、上記インプリント用硬化性組成物3とパターン形状を転写するためのパターンを有するモールド4とを接触させる。このような工程を経ることにより、所望のパターン(インプリントパターン)が得られる。
具体的には、膜状のインプリント用硬化性組成物に所望のパターンを転写するために、膜状のインプリント用硬化性組成物3の表面にモールド4を押接する。
【0106】
モールドは、光透過性のモールドであってもよいし、光非透過性のモールドであってもよい。光透過性のモールドを用いる場合は、モールド側から硬化性組成物3に光を照射することが好ましい。本発明では、光透過性モールドを用い、モールド側から光を照射することがより好ましい。
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドである。上記モールドが有するパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じて形成できるが、本発明では、モールドパターン製造方法は特に制限されない。また、本発明の好ましい実施形態に係るパターン製造方法によって形成したパターンをモールドとして用いることもできる。
本発明において用いられる光透過性モールドを構成する材料は、特に限定されないが、ガラス、石英、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート樹脂などの光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示され、石英が好ましい。
本発明において光透過性の基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。
【0107】
上記パターン製造方法では、インプリント用硬化性組成物を用いてインプリントリソグラフィを行うに際し、モールド圧力を10気圧以下とするのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧力が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部にあたるインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる一方で、モールド転写の均一性が確保できる範囲から選択することが好ましい。
また、インプリント用硬化性組成物とモールドとの接触を、ヘリウムガスまたは凝縮性ガス、あるいはヘリウムガスと凝縮性ガスの両方を含む雰囲気下で行うことも好ましい。
【0108】
<<光照射工程>>
光照射工程では、上記インプリント用硬化性組成物に光を照射して硬化物を形成する。光照射工程における光照射の照射量は、硬化に必要な最小限の照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、インプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量などを調べて適宜決定される。
照射する光の種類は特に定めるものではないが、紫外光が例示される。
また、本発明に適用されるインプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温とするが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、上記パターン製造方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
露光に際しては、露光照度を1~500mW/cm2の範囲にすることが好ましく、10~400mW/cm2の範囲にすることがより好ましい。露光の時間は特に限定されないが、0.01~10秒であることが好ましく、0.5~1秒であることがより好ましい。露光量は、5~1000mJ/cm2の範囲にすることが好ましく、10~500mJ/cm2の範囲にすることがより好ましい。
上記パターン製造方法においては、光照射により膜状のインプリント用硬化性組成物(パターン形成層)を硬化させた後、必要に応じて、硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後にインプリント用硬化性組成物を加熱硬化させるための温度としては、150~280℃が好ましく、200~250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5~60分間が好ましく、15~45分間がさらに好ましい。
【0109】
<<離型工程>>
離型工程では、上記硬化物と上記モールドとを引き離す(
図1(5))。得られたパターンは後述する通り各種用途に利用できる。
すなわち、本発明では、上記下層膜の表面に、さらに、インプリント用硬化性組成物から形成されるパターンを有する、積層体が開示される。また、本発明で用いるインプリント用硬化性組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.01μm~30μm程度である。
さらに、後述するとおり、エッチング等を行うこともできる。
【0110】
<パターンとその応用>
上述のように上記パターン製造方法によって形成されたパターンは、液晶表示装置(LCD)などに用いられる永久膜や、半導体素子製造用のエッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)として使用することができる。特に、本明細書では、本発明の好ましい実施形態に係るパターン製造方法を含む、半導体素子(回路基板)の製造方法を開示する。さらに、本発明の好ましい実施形態に係る半導体素子の製造方法では、上記パターン製造方法により得られたパターンをマスクとして基板にエッチングまたはイオン注入を行う工程と、電子部材を形成する工程と、を有していてもよい。すなわち、本明細書では、上記パターン製造方法を含む半導体素子の製造方法を開示する。さらに、本明細書では、上記半導体素子の製造方法により半導体素子を得る工程と、上記半導体素子と上記半導体素子を制御する制御機構とを接続する工程と、を有する電子機器の製造方法を開示する。
また、上記パターン製造方法によって形成されたパターンを利用して液晶表示装置のガラス基板にグリッドパターンを形成し、反射や吸収が少なく、大画面サイズ(例えば55インチ、60インチ超)の偏光板を安価に製造することが可能である。例えば、特開2015-132825号公報や国際公開第2011/132649号に記載の偏光板が製造できる。
本発明で形成されたパターンは、
図1(6)(7)に示す通り、エッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)としても有用である。パターンをエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基板上に上記パターン製造方法によって、例えば、ナノまたはミクロンオーダーの微細なパターンを形成する。本発明では特にナノオーダーの微細パターンを形成でき、さらにはサイズが50nm以下、特には30nm以下のパターンも形成できる点で有益である。上記パターン製造方法で形成するパターンのサイズの下限値については特に定めるものでは無いが、例えば、1nm以上とすることができる。
また、本発明では、基板上に、本発明の好ましい実施形態に係るパターン製造方法によりパターンを得る工程と、得られた上記パターンを用いて上記基板にエッチングを行う工程と、を有する、インプリント用モールドの製造方法も開示する。
ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF
4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基板上に所望のパターンを形成することができる。パターンは、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。すなわち、上記パターン製造方法によって形成されたパターンは、リソグラフィ用マスクとして好ましく用いられる。
【0111】
本発明で形成されたパターンは、具体的には、磁気ディスク等の記録媒体、固体撮像素子等の受光素子、LED(light emitting diode)や有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)等の発光素子、液晶表示装置(LCD)等の光デバイス、回折格子、レリーフホログラム、光導波路、光学フィルター、マイクロレンズアレイ等の光学部品、薄膜トランジスタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、反射防止膜、偏光板、偏光素子、光学フィルム、柱材等のフラットパネルディスプレイ用部材、ナノバイオデバイス、免疫分析チップ、デオキシリボ核酸(DNA)分離チップ、マイクロリアクター、フォトニック液晶、ブロックコポリマーの自己組織化を用いた微細パターン形成(directed self-assembly、DSA)のためのガイドパターン等の作製に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。本実施例は、特に述べない限り、23℃の条件下で行った。
【0113】
<インプリント用下層膜形成用組成物の調製>
下記表2~5に記載の配合比となるように、原料を配合し、混合した。混合後、インプリント用下層膜形成用組成物を濾過装置内のタンクに移し、下記表2~5に記載のフィルターにて濾過を行った。フィルターは全てカプセルタイプ(有効濾過面積700cm2)を使用した。濾過装置内のタンク内圧力が0.1MPaになるようにドライ窒素をタンクに充填させながら濾過を行った。複数のフィルターを用いた場合は、濾過フィルター(1)~(6)の順に行った。この時の温度は、23℃とした。また、濾過は、米国連邦規格(Fed.Std.209E)のClass1(ISO14644-1:2015では、Class3)を満たすクリーンルームで実施した。
濾液の初流5Lを廃棄後、酸洗浄処理済のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)製ボトルにインプリント用下層膜形成用組成物を充填させた。
また、一部の実施例については、フィルター濾過後の薬液を再度濾過タンクに戻す配管を設けることで循環濾過を行った。循環濾過時には送液ポンプを使用した。
【0114】
<生産性の評価>
インプリント用下層膜形成用組成物1Lを濾過するのに要する時間(分)を生産性の指標として下記のとおり評価した。
A:所要時間≦4分
B:4分<所要時間≦7分
C:7分<所要時間≦10分
D:所要時間>10分
【0115】
<下層膜の作製および膜厚の測定>
厚さ300mmのシリコンウェハ上に、上記インプリント用下層膜形成用組成物を回転数1500rpmにてスピンコート塗布し、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、下層膜を形成した。下層膜の膜厚はエリプソメータにて測定した。
なお、比較例6、実施例6および実施例7については、上記条件にて実施例17の下層膜を形成した後、その表面に、表2~5に示す下層膜形成用組成物を用いて、上記条件に従い下層膜を形成した。比較例6、実施例6および実施例7に関しては、実施例17の下層膜の膜厚を除いた下層膜の膜厚を測定した。
【0116】
<金属を含む粒子性メタルの濃度の測定>
インプリント用下層膜形成用組成物中の金属を含む粒子性メタルの濃度は、ICP-MSを用いて測定した。
具体的には、ICP-MS(「Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(半導体分析用、オプション#200)」)を用いた。サンプル導入系は石英のトーチと同軸型PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)ネブライザ(自吸用)、および、白金インターフェースコーンを使用した。
クールプラズマ条件の測定パラメータは以下のとおりである。
測定により得られた金属粒子性メタルの粒子径分布から10nm以上の粒子性メタルの含有量を算出した。単位は質量pptまたは質量ppbとした。
測定した金属は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Zn、As、Au、Ag、Cd、Co、Pb、Ti、VおよびWとした。
・RF(Radio Frequency)出力:600W
・キャリアガス流量:0.7L/分
・メークアップガス流量:1L/分
・サンプリング深さ:18mm
【0117】
<欠陥(パーティクル)の測定>
ウェハ検査装置と全自動欠陥レビュー分類装置を用いて、上記下層膜形成ウェハの全面に存在する最長長さが19nm以上のサイズの欠陥数を測定した。最長長さが19nm以上のサイズの欠陥とは、最も長い部分の長さが19nmを超える欠陥をいう。
ウェハ検査装置での測定後、全自動欠陥レビュー分類装置にて欠陥の形状観測を行い、明らかに塗布前のウェハおよび外的環境起因である欠陥(フォールオン欠陥と呼ばれる膜上にパーティクルがのったもの)は欠陥数から差し引いた。
ウェハ検査装置は、KLA-Tencor社製のウェハ検査装置「SP-5」を用いた。全自動欠陥レビュー分類装置は、アプライドマテリアル社の全自動欠陥レビュー分類装置「SEMVision G6」を用いた。
A:欠陥数≦50個/ウェハ
B:50個/ウェハ<欠陥数≦200個/ウェハ
C:200個/ウェハ<欠陥数≦500個/ウェハ
D:欠陥数>500個/ウェハ
【0118】
<インプリント欠陥の評価>
石英モールドとして、(ホール径)40nm、ピッチ80nmで格子状に配置されたホールパターンを有する石英モールドを使用した。
上記で得られた下層膜上に、インプリント用硬化性組成物をインクジェット法により適用後、ヘリウム雰囲気下で、上記モールドで挟んだ。石英モールド側から高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cm2の条件で露光した後、石英モールドを離型することでパターンを得た。
上記サンプルを上記欠陥検査装置および欠陥レビュー分類装置に導入し、欠陥数(DD(Detect Density)、単位は、数/cm2)を確認した。
【0119】
結果を以下に示す。
A:DD<1個/cm2
B:1個/cm2≦DD<100個/cm2
C:100個/cm2≦DD<1000個/cm2
D:DD≧1000個/cm2
【0120】
<エッチング欠陥の評価>
上記で作製した下層膜を、エッチング装置(APPLIED MATERIALS社製 Centura-DPS)に導入し、上記サンプルに対して、エッチング装置(APPLIED MATERIALS社製 Centura-DPS)に導入し、下記条件にてエッチング(1)およびエッチング(2)をこの順に連続して行った。得られたエッチングパターンをSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)により観察し、欠陥数(DD(Detect Density)、単位は、数/cm2)を確認した。
【0121】
【0122】
結果を以下に示す。
A:DD<1個/cm2
B:1個/cm2≦DD<100個/cm2
C:100個/cm2≦DD<1000個/cm2
D:DD≧1000個/cm2
【0123】
<モールド耐久性の評価>
石英モールドとして、線幅20nm、深さ55nmのライン(Line)/スペース(Space)を有する石英モールドを使用した。マスク欠陥レビューSEM(Scanning Electron Microscope)装置E5610(アドバンテスト社製)を用いて、上記石英モールドの欠陥(マスク欠陥)が存在していない500箇所の座標をあらかじめ把握した。
上記で作製した下層膜上に、FUJIFILM Dimatix社製インクジェットプリンター DMP-2831を用いて、表9に記載のインプリント用硬化性組成物をインクジェット法により適用後、ヘリウム雰囲気下で、上記モールドで挟んだ。石英モールド側から高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cm2の条件で露光した後、石英モールドを離型することでパターンを得た。
本インプリントプロセスを100回繰り返した後に石英モールドを回収し、上記500箇所での石英モールドの欠陥の発生有無を確認した。
A:石英モールドの欠陥の発生は確認されなかった
B:石英モールドの欠陥が確認された箇所が5箇所未満であった
C:石英モールドの欠陥が確認された箇所が5箇所以上25箇所未満であった
D:石英モールドの欠陥が確認された場所が25箇所以上であった
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表2~5において、各成分の配合量は、質量部である。また、表2~5において、固形分濃度の単位は、質量%である。
【0129】
各成分およびフィルターは以下のものを用いた。
<樹脂>
【表6】
表6において、nは5~20である。
【0130】
<その他の成分>
【表7】
K-PURE TAG 2678は、楠本化成社製、熱酸発生剤である。
【0131】
【0132】
C-4のPGMEAは、蒸留精製グレード品。
【0133】
<インプリント用硬化性組成物の組成>
【表9】
上記表9において、配合比は質量比である。l+m+nは7~12である。
【0134】
<フィルター>
【表10】
HDPEは、高密度ポリエチレンフィルターである。
UPEは、超高分子量ポリエチレンである。
Nylonは、ポリアミドフィルターである。
PTFEは、ポリテトラフルオロエチレンである。
中性基グラフト化UPEは、特表2017-536232号公報の段落0058~0059に従って製造した。中性基として、ヒドロキシメチルアクリルアミドに由来するヒドロキシ基を有している。
被覆PTFEは、特開2017-002273号公報の段落0018~0032および段落0070~0071の記載に従い、メルカプト酢酸とアリル基とのチオールエン反応によりカルボン酸基を側鎖に導入した被覆性樹脂を孔径7nmのPTFE多孔質膜上に被覆したものである。
PGMEA1日浸漬洗浄Nylonは、孔径1nmのポリアミドフィルターをPGMEAに1日浸漬して溶出成分を取り除くことによって洗浄したものである。
【0135】
上記表3~5から明らかなとおり、インプリント用下層膜形成用組成物は、モールド耐久性に優れていた(実施例1~17)。さらに、下層膜としたときの欠陥(パーティクル)が少なかった。さらに、上記下層膜を用いて製造したインプリントパターンはインプリント欠陥が少なかった。また、上記下層膜は、エッチング欠陥も少なかった。さらに、孔径の異なる2種以上のフィルターで濾過した場合、生産性にも優れていた(実施例7、8、10~17)。
これに対し、上記表2および3から明らかなとおり、比較例の組成物は、モールド耐久性が劣っていた(比較例1~10)。さらに、下層膜としたときの欠陥(パーティクル)が多かった。また、上記下層膜を用いて製造したインプリントパターンはインプリント欠陥が多かった。加えて、上記下層膜はエッチング欠陥も多かった。さらに、比較例の組成物は、生産性にも劣っていた。
【符号の説明】
【0136】
1 基板
2 下層膜
3 インプリント用硬化性組成物
4 モールド