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特許7096931フッ素化アミド化合物、フッ素化含窒素複素環含有化合物およびフッ素化化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-28
(45)【発行日】2022-07-06
(54)【発明の名称】フッ素化アミド化合物、フッ素化含窒素複素環含有化合物およびフッ素化化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/32 20060101AFI20220629BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220629BHJP
   C08G 73/18 20060101ALI20220629BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C08G69/32
C08G73/10
C08G73/18
H05K1/03 610H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021080688
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2021178956
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2020083305
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大石 好行
(72)【発明者】
【氏名】野口 剛
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-288344(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054471(WO,A1)
【文献】特開2018-145303(JP,A)
【文献】特許第6374867(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第03031848(EP,A1)
【文献】特開平02-208324(JP,A)
【文献】特開平03-049291(JP,A)
【文献】Yakubovichi,A.YA. et al.,Vysokomolukulyarnye Soedineniya, Seriya A,1970年,Vol.12, No.11,2520-2531頁,特に、2520,2526-2527頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/32
C07D 251/30
C08G 73/10
C08G 73/18
C07C 211/53
C07C 63/72
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1a)で示される繰り返し単位を有するフッ素化アミド化合物。
式(1a):
【化1】
(式(1a)中、nは~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
式(1a)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~100である請求項1に記載のフッ素化アミド化合物。
【請求項3】
(1b)で示される繰り返し単位を有するフッ素化アミド化合物。
式(1b):
【化2】
(式(1b)中、nは4~8の整数、Rfは、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【請求項4】
式(1b)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~100である請求項3に記載のフッ素化アミド化合物。
【請求項5】
(3a)で示される繰り返し単位を有するフッ素化含窒素複素環含有化合物。
式(3a):
【化3】
(式(3a)中、nは~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基を表す。)
【請求項6】
式(3a)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~100である請求項5に記載のフッ素化含窒素複素環含有化合物。
【請求項7】
(3b)で示される繰り返し単位を有するフッ素化含窒素複素環含有化合物。
式(3b):
【化4】
(式(3b)中、nは4~8の整数、Rfは、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【請求項8】
式(3b)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~100である請求項7に記載のフッ素化含窒素複素環含有化合物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載のフッ素化アミド化合物、または、請求項5~8のいずれかに記載のフッ素化含窒素複素環含有化合物を含有する低誘電体。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載のフッ素化アミド化合物、または、請求項5~8のいずれかに記載のフッ素化含窒素複素環含有化合物を含有するプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素化アミド化合物、フッ素化含窒素複素環含有化合物およびフッ素化化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1や特許文献1には、ポリイミドやポリベンゾイミダゾールは高分子材料としては最高レベルの耐熱性、強度、化学安定性を持ち、耐熱性繊維、成形品、塗工用ワニス等として様々な分野で使用されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】日本ポリイミド研究会編、「最新ポリイミド-基礎と応用-」、株式会社エヌ・ティー・エス、2002年1月28日発行、292~326頁
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-208699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いフッ素化アミド化合物を提供することを目的とする。
また、本開示では誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いフッ素化含窒素複素環含有化合物を提供することを目的とする。
また、本開示では新規のフッ素化化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、式(1)で示される繰り返し単位を有するフッ素化アミド化合物が提供される。
【0007】
式(1):
【化1】
(式(1)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Aはアミド結合、Yは、独立に、-CORまたは-NHR、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0008】
式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~100であることが好ましい。
【0009】
式(1)で示される繰り返し単位が、式(1a)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(1a):
【化2】
(式(1a)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子を表す。)
【0010】
式(1)で示される繰り返し単位が、式(1b)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(1b):
【化3】
(式(1b)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0011】
また、本開示によれば、式(3)で示される繰り返し単位を有するフッ素化含窒素複素環含有化合物が提供される。
式(3):
【化4】
(式(3)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、環Cは置換基を有していてもよいイミド環またはベンゾイミダゾール環を表す。)
【0012】
式(3)で示される繰り返し単位の平均重合度が2~100であることが好ましい。
【0013】
式(3)で示される繰り返し単位が、式(3a)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(3a):
【化5】
(式(3a)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基を表す。)
【0014】
式(3)で示される繰り返し単位が、式(3b)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
式(3b):
【化6】
(式(3b)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0015】
また、本開示によれば、上記のフッ素化アミド化合物、または、上記のフッ素化含窒素複素環含有化合物を含有する低誘電体が提供される。
また、本開示によれば、上記のフッ素化アミド化合物、または、上記のフッ素化含窒素複素環含有化合物を含有するプリント基板が提供される。
【0016】
また、本開示によれば、式(4a-1)で示されるフッ素化化合物(4a-1)が提供される。
式(4a-1):
【化7】
(式(4a-1)中、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0017】
また、本開示によれば、式(4B)で示されるフッ素化化合物(4B)が提供される。
式(4B):
【化8】
(式(4B)中、nは4~8の整数、環Aは炭化水素環、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いフッ素化アミド化合物を提供することができる。
また、本開示によれば、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いフッ素化含窒素複素環含有化合物を提供することができる。
また、本開示によれば、新規のフッ素化化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<フッ素化アミド化合物>
本開示のフッ素化アミド化合物は、式(1)で示される繰り返し単位を有する。
【0021】
式(1):
【化9】
(式(1)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、Aはアミド結合、Yは、独立に、-CORまたは-NHR、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子、Rは、独立に、Hまたは1価の有機基を表す。)
【0022】
nは4~8の整数を表す。nとしては、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、6~8の整数が好ましく、6または8がより好ましく、8がさらに好ましい。
【0023】
Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基を表す。Rfとしては、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、単結合、-O-、-CO-または2価のフッ素化有機基が好ましく、-O-または2価のフッ素化有機基がより好ましく、2価のフッ素化有機基がさらに好ましい。
【0024】
上記非フッ素化有機基は、フッ素原子を有しない2価の有機基である。上記非フッ素化有機基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の非フッ素化アルキレン基または2価の非フッ素化アリール基が好ましい。
【0025】
上記フッ素化有機基は、1つ以上のフッ素原子を有する2価の有機基である。Rfとしては、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、直鎖状もしくは分岐鎖状のフッ素化アルキレン基が好ましい。
【0026】
上記フッ素化アルキレン基は、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0027】
上記フッ素化アルキレン基の炭素数は、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、好ましくは1~15であり、より好ましくは2以上であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である。
【0028】
上記フッ素化アルキレン基としては、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、-C(CF-が好ましい。
【0029】
は、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子である。
【0030】
としてのアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1~12であり、より好ましくは1~6である。
【0031】
としてのアルコキシ基および芳香族オキシ基が有し得る置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、フッ素化アルキル基、ハロ基(ハロゲン原子)、ニトロ基、シアノ基またはエステル基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0032】
としての芳香族オキシ基としては、置換基を有していないフェノキシ基、置換基を有していてもよいトリアジニルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
としては、独立に、OH、置換基を有していないフェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子、または、
【化10】
が好ましい。
【0034】
は、独立に、Hまたは1価の有機基である。1価の有機基は、炭素原子を含有する1価の基、または、有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基である。上記1価の有機基としては、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族基等が挙げられる。
【0035】
上記1価の有機基の具体例としては、-CH、-C、-C等の炭素数1~10、特に1~6の低級アルキル基;-CF、-C、-CHF、-CHCF、-CH等の炭素数1~10、特に1~6のフッ素原子含有低級アルキル基;(置換基を有していない)フェニル基;(置換基を有していない)ベンジル基;-C、-CH等のフッ素原子で1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基;-C5-k(CF、-CH5-k(CF(kは1~5の整数)等の-CFで1~5個の水素原子が置換されたフェニル基またはベンジル基が挙げられる。
【0036】
としては、独立に、Hまたは置換基を有していてもよい芳香族基が好ましく、Hまたは置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましく、H、置換基を有していないフェニル基または炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基がさらに好ましい。
【0037】
としては、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、置換基を有していないフェニル基または炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。
【0038】
式(1)で示される繰り返し単位としては、式(1a)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(1a):
【化11】
(式(1a)中、n、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0039】
式(1a)で示される繰り返し単位を含有するフッ素化アミド化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化12】
(式中、n、Rf、RおよびRは、式(1)と同様である。mは、式(1a)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0040】
本開示のフッ素化アミド化合物は、式(1a)で示される繰り返し単位を含有することにより、誘電率および誘電損失がより一層低いものとなる。また、式(1)で示される繰り返し単位として、式(1a)で示される繰り返し単位を含有するフッ素化アミド化合物は、式(3a)で示される繰り返し単位を有するフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)の前駆体として、好適に利用できる。
【0041】
式(1a)中のn、Rf、RおよびRは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができる。
【0042】
また、式(1)で示される繰り返し単位としては、式(1b)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(1b):
【化13】
(式(1b)中、n、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0043】
式(1b)で示される繰り返し単位を含有するフッ素化アミド化合物としては、たとえば、以下のいずれかの式で表される化合物が挙げられる。
【化14】
(式中、n、Rf、RおよびRは、式(1)と同様である。mは、式(1b)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0044】
本開示のフッ素化アミド化合物は、式(1b)で示される繰り返し単位を含有することにより、誘電率および誘電損失がより一層低いものとなる。また、式(1)で示される繰り返し単位として、式(1b)で示される繰り返し単位を含有するフッ素化アミド化合物は、式(3b)で示される繰り返し単位を有するフッ素化含窒素複素環含有化合物(ベンゾイミダゾール化合物)の前駆体として、好適に利用できる。
【0045】
式(1b)中のn、Rf、RおよびRは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、フッ素化アミド化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができる。
【0046】
本開示のフッ素化アミド化合物において、式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度としては、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは100以下であり、2以上であってよく、3以上であってもよい。平均重合度は、本開示のフッ素化アミド化合物の数平均分子量から計算により求められる。
【0047】
本開示のフッ素化アミド化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1万以上であり、より好ましくは2万以上であり、好ましくは100万以下であり、より好ましくは50万以下である。
【0048】
本開示のフッ素化アミド化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
【0049】
本開示のフッ素化アミド化合物の対数粘度ηinhは、好ましくは0.3dL/g以上であり、より好ましくは0.5dL/g以上である。対数粘度ηinhは、溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などにフッ素化アミド化合物を溶解させることにより、溶液濃度0.5g/dLの溶液を調製し、得られた溶液の30℃での粘度(溶液粘度)を測定し、以下の式により算出できる。
対数粘度ηinh=ln(溶液粘度/溶媒粘度)/溶液濃度
【0050】
本開示のフッ素化アミド化合物は、後述する式(3)で示される繰り返し単位を有するフッ素化含窒素複素環含有化合物の前駆体として、好適に利用できる。
【0051】
<フッ素化含窒素複素環含有化合物>
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物は、式(3)で示される繰り返し単位を有する。
式(3):
【化15】
(式(3)中、nは4~8の整数、Rfは、単結合、-SO-、-O-、-CO-、2価の非フッ素化有機基または2価のフッ素化有機基、環Cは置換基を有していてもよいイミド環またはベンゾイミダゾール環を表す。)
【0052】
nおよびRfは、式(1)と同様である。nおよびRfを、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、フッ素化含窒素複素環含有化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができる。
【0053】
環Cは、置換基を有していてもよいイミド環またはベンゾイミダゾール環である。イミド環は置換基を有していないことが好ましい。ベンゾイミダゾール環は、置換基を有していなくても、置換基を有していてもよい。ベンゾイミダゾール環が有し得る置換基としては、1価の有機基が挙げられ、式(1)のRとして説明した基が好ましい。
【0054】
式(3)で示される繰り返し単位としては、式(3a)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(3a):
【化16】
(式(3a)中、nおよびRfは、式(1)と同様である。)
【0055】
式(3a)で示される繰り返し単位を含有するフッ素化含窒素複素環含有化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化17】
(式中、n、RfおよびRは、式(1)と同様である。mは、式(3a)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0056】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物は、式(3a)で示される繰り返し単位を含有することにより、誘電率および誘電損失がより一層低いものとなる。
【0057】
式(3a)中のnおよびRfは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、フッ素化含窒素複素環含有化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができる。
【0058】
また、式(3)で示される繰り返し単位としては、式(3b)で示される繰り返し単位が好ましい。
式(3b):
【化18】
(式(3b)中、n、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0059】
式(3b)で示される繰り返し単位を含有するフッ素化含窒素複素環含有化合物としては、たとえば、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化19】
(式中、n、Rf、R、RおよびYは、式(1)と同様である。mは、式(3b)で示される繰り返し単位の平均重合度を表す。)
【0060】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物は、式(3b)で示される繰り返し単位を含有することにより、誘電率および誘電損失がより一層低いものとなる。
【0061】
式(3b)中のn、RfおよびRは、式(1)と同様であり、式(1)と同様の好適な構成とすることにより、フッ素化含窒素複素環含有化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができる。
【0062】
式(3b)で示される繰り返し単位としては、フッ素化含窒素複素環含有化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、式(3b-1)または式(3b-2)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0063】
式(3b-1)
【化20】
(式(3b-1)中、n、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0064】
式(3b-2)
【化21】
(式(3b-2)中、n、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0065】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物のガラス転移温度は、好ましくは50~400℃であり、より好ましくは100~350℃であり、さらに好ましくは150~260℃である。ガラス転移温度は、熱機械分析法(TMA)、示差走査熱量測定法(DSC)または動的粘弾性測定法(DMA)により、測定する値である。
【0066】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物において、式(3)で示される繰り返し単位の平均重合度としては、好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下であり、2以上であってよく、3以上であってもよい。平均重合度は、本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物の数平均分子量から計算により求められる。
フッ素化含窒素複素環含有化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、フッ素化含窒素複素環含有化合物としては、平均重合度が比較的大きなポリマーであってよく、たとえば、平均重合度が100超のポリマーであってもよい。
【0067】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1万以上であり、より好ましくは2万以上であり、好ましくは100万以下であり、より好ましくは50万以下である。
【0068】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
【0069】
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物の対数粘度ηinhは、好ましくは0.3dL/g以上であり、より好ましくは0.5dL/g以上である。対数粘度ηinhは、溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などにフッ素化含窒素複素環含有化合物を溶解させることにより、溶液濃度0.5g/dLの溶液を調製し、得られた溶液の30℃での粘度(溶液粘度)を測定し、以下の式により算出できる。
対数粘度ηinh=ln(溶液粘度/溶媒粘度)/溶液濃度
【0070】
<フッ素化アミド化合物の製造方法>
本開示のフッ素化アミド化合物は、式(4)で示されるフッ素化化合物(4)を、後述する製造方法により製造した後、得られたフッ素化化合物(4)と式(5)で示される化合物(5)とを重合させることにより、好適に製造することができる。
【0071】
式(4):
【化22】
(式(4)中、nおよびYは、式(1)と同様である。)
【0072】
式(5):
【化23】
(式(5)中、RfおよびYは、式(1)と同様である。ただし、式(4)中のYが-CORである場合は、式(5)中のYは-NHRである。また、式(4)中のYが-NHRである場合は、式(5)中のYは-CORである。また、式(5)中のYが-CORである場合は、隣接する2つのYが酸無水物結合(-CO-O-CO-)を介してお互いに結合することにより、2つのYが結合する2つの炭素原子とともに、環を形成してもよい。RおよびRは、式(1)と同様である。)
【0073】
フッ素化化合物(4)および化合物(5)としては、フッ素化化合物(4)が式(4a)で示されるフッ素化化合物(4a)であり、化合物(5)が式(5a)で示される化合物(5a)であるか、または、フッ素化化合物(4)が式(4b)で示されるフッ素化化合物(4b)であり、化合物(5)が式(5b)で示される化合物(5b)であることが好ましい。フッ素化化合物(4a)と化合物(5a)とを重合させることにより、式(1a)で示される繰り返し単位を有するフッ素化アミド化合物が得られる。また、フッ素化化合物(4b)と化合物(5b)とを重合させることにより、式(1b)で示される繰り返し単位を有するフッ素化アミド化合物が得られる。
【0074】
式(4a):
【化24】
(式(4a)中、nおよびRは、式(1)と同様である。)
【0075】
式(5a):
【化25】
(式(5a)中、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0076】
式(4b):
【化26】
(式(4b)中、nおよびRは、式(1)と同様である。)
【0077】
式(5b):
【化27】
(式(5b)中、RfおよびRは、式(1)と同様である。)
【0078】
フッ素化化合物(4a)としては、得られるフッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物の誘電率および誘電損失をより一層低くすることができることから、式(4a-1)で示されるフッ素化化合物(4a-1)が好ましい。
【0079】
式(4a-1):
【化28】
(式(4a-1)中、Rは、式(1)と同様である。)
【0080】
フッ素化化合物(4)と化合物(5)との重合は、溶媒中で行うことができる。溶媒はフッ素化化合物(4)および化合物(5)と実質的に反応せず、かつ、フッ素化化合物(4)および化合物(5)を良好に溶解させる性質を有する他、フッ素化化合物(4)と化合物(5)とを重合することにより得られる化合物に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)が好ましい。これら溶媒の使用量は、フッ素化化合物(4)または化合物(5)の0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0081】
重合は、添加剤の存在下に実施することもできる。たとえば、分子量の大きな化合物を得るために、塩化リチウムや塩化カルシウム等の無機塩類を添加してもよい。添加剤としては、なかでも塩化リチウムが好ましい。添加剤の添加量は、溶媒量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0082】
重合は、たとえば、フッ素化化合物(4)および化合物(5)のいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。重合温度としては、-50~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、35~80℃がさらに好ましい。重合時間としては、0.1~50時間が好ましく、1~24時間がより好ましい。
【0083】
式(1)で示される繰り返し単位の平均重合度は、フッ素化化合物(4)と化合物(5)とのモル比、重合温度、重合時間、重合溶液濃度などを調整することによって、調整することができる。
【0084】
上記の製造方法によって、通常は、フッ素化アミド化合物の溶液が得られる。得られたフッ素化アミド化合物の溶液は、各種の用途にそのまま用いてもよい。また、得られたフッ素化アミド化合物の溶液を、メタノールや水等の貧溶媒に投じてフッ素化アミド化合物を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類等を除去することにより、純度の高いフッ素化アミド化合物を得てもよい。
【0085】
フッ素化化合物(4a-1)は、式(6a)で示される化合物(6a)と、1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとを反応させることにより製造することができる。
式(6a):
【化29】
(式(6a)中、Rは、式(1)と同様である。)
【0086】
化合物(6a)と1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとの反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒は、化合物(6a)および1,8-ジヨードパーフルオロオクタンと実質的に反応せず、かつ、化合物(6a)および1,8-ジヨードパーフルオロオクタンを良好に溶解させる性質を有する他、得られるフッ素化化合物(4a-1)に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物(6a)または1,8-ジヨードパーフルオロオクタンの0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0087】
化合物(6a)と1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとの反応は、たとえば、化合物(6a)および1,8-ジヨードパーフルオロオクタンのいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。反応温度としては、50~150℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。反応時間としては、1~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0088】
化合物(6a)と1,8-ジヨードパーフルオロオクタンとの反応は、銅、銅化合物などの触媒の存在下に行っても良い。
【0089】
反応終了後、反応混合物をメタノールや水等の貧溶媒に投じてフッ素化化合物(4a-1)を分離した後、再沈殿法によって精製を行って副生成物や無機塩類等を除去することにより、純度の高いフッ素化化合物(4a-1)を得てもよい。
【0090】
本開示は、式(4B)で示されるフッ素化化合物(4B)にも関する。フッ素化化合物(4B)としては、式(4b)で示されるフッ素化化合物(4b)が挙げられる。フッ素化化合物(4B)およびフッ素化化合物(4b)は、いずれも、新規な化合物である。
式(4B):
【化30】
(式(4B)中、nは4~8の整数、環Aは炭化水素環、Rは、独立に、OH、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい芳香族オキシ基、または、ハロゲン原子を表す。)
【0091】
式(4B)におけるnおよびRは、式(1)におけるnおよびRと同様である。
【0092】
環Aは、炭化水素環を表す。炭化水素環は、単環または多環であってよく、また、脂肪族炭化水素環または芳香族炭化水素環であってよい。脂肪族炭化水素環は、芳香族性を有しない飽和または不飽和の炭化水素環であってよい。
【0093】
環Aの炭化水素環に隣接するカルボニル基およびパーフルオロアルキレン基が、炭化水素環に結合する位置は特に限定されず、炭化水素環を構成する炭素原子のうち、任意の炭素原子に結合することができる。
【0094】
環Aの炭素数は、好ましくは3~30であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは6以上であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは14以下である。
【0095】
環Aの炭化水素環は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、フッ素原子などのハロゲン原子、メチル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0096】
環Aとしては、
シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環などの単環の飽和炭化水素環;
シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロプロペン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環などの単環の非芳香族不飽和炭化水素環;
ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、デカヒドロナフタレン環、ビシクロウンデカン環、スピロビシクロペンタン環などの多環の非芳香族炭化水素環;
ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオレン環、テトラセン環、クリセン環、ピレン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、トリフェニレン環、ペリレン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ジフェニルメタン環、ジフェニルエーテル環、ジフェニルスルホン環、ジフェニルケトン環などの芳香族炭化水素環;
などが挙げられる。
【0097】
環Aとしては、なかでも、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環、ビフェニル環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。これらは、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0098】
次に、式(4B)で示されるフッ素化化合物(4B)の製造方法を説明する。式(4b)で示されるフッ素化化合物(4b)もこの製造方法により製造することができる。RがOHであるフッ素化化合物(4B)は、式(10)で示される化合物(10)と、式(7)で示される化合物(7)とを反応させることにより、式(8)で示される化合物(8)を得た後、得られた化合物(8)を酸化させることにより、製造することができる。
【0099】
式(10):
【化31】
(式(10)中、環Aは式(4B)と同様である。)
【0100】
式(7):
I-(CF-I
(式(7)中、nは、式(4B)と同様である。)
式(8):
【化32】
(式(8)中、nおよび環Aは、式(4B)と同様である。)
【0101】
化合物(10)としては、式(10-1)で示される化合物が好ましく、4-ヨードトルエンまたは3-ヨードトルエンがより好ましい。
式(10-1):
【化33】
【0102】
化合物(8)としては、式(8-1)で示される化合物が好ましい。
式(8-1):
【化34】
(式(8-1)中、nは、式(4B)と同様である。)
【0103】
化合物(8)としては、式(8-1a)または式(8-1b)で示される化合物がさらに好ましい。
式(8-1a):
【化35】
(式(8-1a)中、nは、式(4B)と同様である。)
【0104】
式(8-1b):
【化36】
(式(8-1b)中、nは、式(4B)と同様である。)
【0105】
さらに、RがOHであるフッ素化化合物(4B)と、式(9)で示される化合物(9)とを反応させることにより、所望のRで示される基(たとえば、アルコキシ基、芳香族オキシ基)を有するフッ素化化合物(4B)を製造することができる。
式(9):
R-OH
(式(9)中、Rは、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基または置換基を有していてもよい芳香族基である。)
【0106】
また、RがOHであるフッ素化化合物(4B)と、ハロゲン化剤とを反応させることにより、Rがハロゲン原子であるフッ素化化合物(4B)を製造することができる。
【0107】
また、RがOHであるフッ素化化合物(4B)と、塩化トリアジン化合物とを反応させることにより、Rがトリアジニルオキシ基であるフッ素化化合物(4B)を製造することができる。
【0108】
化合物(10)と化合物(7)との反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒は、化合物(10)および化合物(7)と実質的に反応せず、かつ、化合物(10)および化合物(7)を良好に溶解させる性質を有する他、得られる化合物(8)に対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。これら溶媒の使用量は、化合物(10)または化合物(7)の0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0109】
化合物(10)と化合物(7)との反応は、たとえば、化合物(10)および化合物(7)のいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。反応温度としては、50~150℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。反応時間としては、1~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0110】
化合物(10)と化合物(7)との反応は、銅、銅化合物などの触媒の存在下に行ってもよい。
【0111】
化合物(8)の酸化は、たとえば、CrO、KMnOなどの酸化剤を用いて行うことができる。また、化合物(8)の酸化は、硫酸、酢酸などの酸性化合物の存在下に行うことが好ましい。
【0112】
がOHであるフッ素化化合物(4B)と、ハロゲン化剤との反応に用いるハロゲン化剤としては、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。反応温度は、たとえば、20~100℃であってよい。フッ素化化合物(4B)とハロゲン化剤との反応は、溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒が挙げられる。
【0113】
がOHであるフッ素化化合物(4B)と、塩化トリアジン化合物との反応は、N-メチルモルホリン(NMM)の存在下で、溶媒中で行うことができ、この反応により、トリアジン系活性ジエステルを合成することができる。溶媒は、フッ素化化合物(4B)、塩化トリアジン化合物およびN-メチルモルホリン(NMM)と実質的に反応せず、かつ、フッ素化化合物(4B)、塩化トリアジン化合物およびN-メチルモルホリン(NMM)を良好に溶解させる性質を有する他、得られるトリアジン系活性ジエステルに対して良溶媒であることが望ましい。このような溶媒としては、特に限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリドン(DMI)、スルホラン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどがあげられる。中でも、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。これら溶媒の使用量は、フッ素化化合物(4B)または塩化トリアジン化合物の0.1モルに対して通常10~1000mL、好ましくは50~400mLである。
【0114】
がOHであるフッ素化化合物(4B)と、塩化トリアジン化合物との反応は、たとえば、RがOHであるフッ素化化合物(4B)および塩化トリアジン化合物のいずれか一方を溶媒に溶解させ、得られた溶液に他方の化合物を添加し、次いで窒素等の不活性雰囲気下で撹枠しながら反応させることにより、行うことができる。反応温度としては、0~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、0~50℃がさらに好ましい。反応時間としては、1~50時間が好ましく、1~30時間がより好ましい。
【0115】
<フッ素化含窒素複素環含有化合物の製造方法>
本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物は、上記の製造方法によりフッ素化アミド化合物を得た後、フッ素化アミド化合物を脱水環化させることにより、好適に製造することができる。また、フッ素化アミド化合物を製造する際に、フッ素化化合物(4)と化合物(5)との重合を加温状態で行った場合には、化合物の一部または全部が脱水環化して、式(3)で示される繰り返し単位を有する化合物が形成され、結果として、生成物の一部または全部として、本開示のフッ素化含窒素複素環含有化合物が得られることがある。すなわち、本開示には、フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物の混合物も含まれる。
【0116】
フッ素化アミド化合物の脱水環化は、フッ素化アミド化合物を加熱することにより実施できる。脱水環化のための加熱の温度としては、110~450℃が好ましく、150~350℃がより好ましい。加熱の時間としては、0.1~10時間が好ましく、0.5~8時間がより好ましい。脱水環化は、大気中、窒素もしくはアルゴン雰囲気中または減圧下で実施できる。
【0117】
本開示のフッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物は、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いことから、低誘電体として好適に使用できる。
【0118】
本開示のフッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物は、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いことから、半導体パッケージ基板、フレキシブルプリント基板およびリジッドプリント基板として好適に使用できる。
【0119】
本開示のフッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物は、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いことから、半導体パッケージ配線盤、フレキシブルプリント配線板、リジッドプリント配線板、TAB用テープ、COF用テープあるいは金属配線など、また、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池などの層間絶縁膜、ベース基材、接着シート、プリプレグ、プライマーなどの電子部品や電子機器類の素材として好適に使用できる。
【0120】
本開示のフッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物は、特に、高周波における誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いことから、高周波、特に3~30GHzのマイクロ波を利用する電子部品や電子機器類の素材として好適に使用できる。たとえば、高周波回路の絶縁板、接続部品の絶縁材、プリント基板、高周波用真空管のベースやアンテナカバー、同軸ケーブル、LANケーブル等の被覆電線などの素材として好適に使用できる。また、3~30GHzのマイクロ波を利用する、衛星通信機器、携帯電話基地局などの機器の素材として、好適に使用することができる。
【0121】
プリント基板としては特に限定されないが、たとえば、携帯電話、各種コンピューター、通信機器等の電子回路のプリント配線基板が挙げられる。
【0122】
同軸ケーブルとしては特に限定されないが、たとえば、内部導体、絶縁被覆層、外部導体層及び保護被覆層が芯部より外周部に順に積層することからなる構造を有するものが挙げられる。
【0123】
本開示のフッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物は、誘電率が低く、かつ、誘電損失が低いとともに、耐熱性、溶剤溶解性、電気絶縁性、無色透明性及び柔軟性にも優れ、薄膜化が容易であることから、層間絶縁膜、フィルム、接着シート、プリプレグ、プライマー、高分子電解質膜、レジスト材料等に好適に利用できる。なかでも、フィルムに好適である。
【0124】
上記フィルムは、本発明のフッ素化アミド化合物またはフッ素化含窒素複素環含有化合物を、押出成形法、カレンダー成形法、溶液キャスト法等の公知のフィルム成形法により成形することにより製造することができる。また、本発明のフッ素化アミド化合物を含む溶液をキャストし、加熱することにより、フッ素化アミド化合物の脱水環化によるフッ素化含窒素複素環含有化合物の生成とフィルム化とを同時に行うこともできる。さらに、フィルムに対して、サンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などを行っても良い。
【0125】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0126】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0127】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0128】
(1)GPC:東ソー(株)製高速GPCシステムHLC-8220GPC(カラム:東ソーTSKgel(α-M)、カラム温度:45℃、検出器:UV-8020、波長254nm、溶離液:N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(0.01mol/L臭化リチウムを含む。)、検量線:標準ポリスチレン、カラム流速:0.2mL/min)
(2)赤外スペクトル(FT-IR):日本分光(株)製FT/IR-4200
(3)核磁気共鳴スペクトル(NMR):BRUKER製AC400P
(4)熱重量測定(TGA):(株)日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300、昇温速度10℃/min
(5)示差走査熱量測定(DSC):(株)日立ハイテクサイエンス製DSC7000、昇温速度10℃/min
(6)熱機械分析(TMA):(株)日立ハイテクサイエンス製TMA7000、昇温速度10℃/min
(7)動的粘弾性測定(DMA):(株)日立ハイテクサイエンス製DMA7100、昇温速度2℃/min
(8)引張試験:(株)島津製作所製オートグラフAGS-D型、引張速度10mm/min
(9)紫外可視分光光度計:(株)島津製作所UV-1800
(10)屈折率測定:Metricon Model 2010/M PRISM COUPLER
(11)誘電率測定:AET製誘電率・誘電正接測定装置(空洞共振器タイプ、10GHz)
【0129】
<合成例1>
1,6-ビス(4-アミノフェニル)ドデカフルオロヘキサン(APDF6)
【0130】
【化37】
【0131】
撹拌子、ジムロート冷却管、三方コックを取り付けた100mLナスフラスコに、4-ヨードアニリン(15g、69mmol)、DMSO(60mL)を入れ溶解させたのち、銅粉(21.6g、342mmol)を空気中で酸化しないように素早く入れ、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン(18.9g、33mmol)を潮解する前に素早く入れた。その後、120℃まで昇温し、120℃で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、吸引ろ過をしてDMSO溶液を回収した。DMSO溶液から減圧蒸留により、DMSOを留去し粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタンに溶解させ蒸留水で洗浄後、ジクロロメタン溶液を回収し無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。エバポレータでジクロロメタンを留去して、黄色の粗生成物を得た。ヘキサンで再結晶を行い、室温で減圧乾燥した。メタノールに溶かし、活性炭で脱色処理を行った。メタノールを除去後、60℃で一晩減圧乾燥し、黄色粉末状のAPDF6(収量:10.8g、収率:65%)を得た。
【0132】
FT-IR、H-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび元素分析によって構造を確認した。
FT-IR(KBr、cm-1):3444(N-H)、3057(C-H)、1609(C=C)、1185(C-F)
H-NMR(DMSO-d、ppm):5.82(s,4H,NH)、6.62(d,4H,Ar-H)、7.20(d,4H,Ar-H)
13C-NMR(DMSO-d、ppm):113.0、127.6、152.4
19F-NMR(DMSO-d、ppm):-122.2、-121.5、-108.0
融点:79.4℃(DSC)
元素分析:計算値 C,44.64%;H,2.50%;N,5.78%
実測値 C,44.66%;H,2.72%;N,5.49%
【0133】
<実施例1>
1,8-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサデカフルオロオクタン(APHF8)
【0134】
【化38】
【0135】
撹拌子、ジムロート冷却管、三方コックを取り付けた100mLナスフラスコに、4-ヨードアニリン(7.5g、34mmol)、DMSO(20mL)を入れ溶解させたのち、銅粉(10g、172mmol)を空気中で酸化しないよう素早く入れ、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン(11.6g、17mmol)を潮解する前に素早く入れた。その後、120℃まで昇温し、120℃で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、吸引ろ過をしてDMSO溶液を回収した。DMSO溶液から減圧蒸留により、DMSOを留去し粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタンに溶解させ蒸留水で洗浄後、ジクロロメタン溶液を回収し無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。エバポレータでジクロロメタンを留去して、8.4g(80%)の粗生成物を回収した。ヘキサンで再結晶を行い、室温で減圧乾燥した。メタノールに溶かし活性炭で脱色処理を行った。メタノールを除去して黄色粉末状のAPHF8(収量:5.9g、収率:58%)を得た。
【0136】
FT-IR、H-NMR、13C-NMR、および19F-NMRによって構造を確認した。
FT-IR(KBr、cm-1):3489~3392(N-H)、3050 (C-H)、1581(C=C)、1259~1145(C-F)
H-NMR(DMSO-d、ppm):5.86(s,4H,NH)、6.66(d,4H,Ar-H)、7.22(d,4H,Ar-H)
13C-NMR(DMSO-d、ppm):113.0、127.8、152.4
19F-NMR(DMSO-d、ppm):-121.7、-121.1、-107.5
融点:85.8℃(DSC)
元素分析:計算値 C,41.16%;H,2.08%;N,4.80%
実測値 C,41.23%;H,2.28%;N,4.85%
【0137】
<合成例2>
1,6-ビス(p-トリル)ドデカフルオロヘキサン(TDF6)
【0138】
【化39】
【0139】
攪拌子、冷却管、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに、4-ヨードトルエン(8.72g、40mmol)とDMSO(20mL)を加えて溶解させた。次に、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン(11.08g、20mmol)と銅粉(12.69g、200mmol)を加え、段階的に120℃まで昇温して、120℃で24時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、吸引ろ過で銅粉を除去し、減圧蒸留でDMSOを留去した。得られた粗生成物をジエチルエーテル(100mL)に溶解させ、蒸留水で洗浄した。有機層を分取して無水硫酸ナトリウムで一晩脱水した。エバポレータでジエチルエーテルを留去することで、白色の生成物(TDF6)(収量:8.59g、収率:89%)を得た。
【0140】
得られた生成物の物性を以下に示す。
H-NMR(CDCl、ppm):2.34(s、6H、CH)、7.41(d、4H、Ar-H)、7.51(d、4H、Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):20.86、126.46、129.67,136.58,136.67,138.60,138.71,142.90
19F-NMR(CDCl、ppm):-109.72、-121.57、-122.13
【0141】
<実施例2>
1,6-ビス(4-カルボキシフェニル)ドデカフルオロヘキサン(CPDF6)
【0142】
【化40】
【0143】
攪拌子、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を取り付けた500mLの三口フラスコに、TDF6(14.47g、30mmol)、酢酸(150mL)、濃硫酸(20mL)を加えて溶解させ0℃に冷却した。無水酢酸(50mL)に酸化クロム(10.00g、100mmol)を溶解させた溶液を滴下し、滴下が終了した後に室温で12時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応溶液を蒸留水(1L)に投入して生成物を析出させ、吸引ろ過によって回収し、100℃で12時間減圧乾燥を行った。収量は15.9g(収率98%)であった。乾燥後の生成物をDMF/蒸留水の混合溶媒で再結晶を行い、100℃で12時間減圧乾燥を行うことで、白色粉末状の生成物(収量:6.35g、収率:39%)を得た。
【0144】
得られた生成物の物性を以下に示す。
H-NMR(DMSO-d、ppm):7.80(d、4H、Ar-H)、8.13(d、4H、Ar-H)、13.50(s、1H、COOH)
13C-NMR(DMSO-d、ppm):127.15,129.93,131.19,134.74,136.57,136.66,138.70,166.23
19F-NMR(DMSO-d、ppm):-110.41、-121.57、-122.04
【0145】
<実施例3>
ビス(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-p-ドデカフルオロヘキシレンジベンゾエート(p-DFBBT)
【0146】
【化41】
【0147】
攪拌子、窒素導入管、温度計を取り付けた500mLの三口フラスコに、CPDF6(27.11g、50mmol)、クロロジメトキシトリアジン(CDMT)(17.51g、100mmol)、NMP(400mL)を加えて溶解させ、0℃に冷却した。この後に、N-メチルモルホリン(NMM)(11.59mL、110mmol)を加えて、0℃で1時間反応させた。反応終了後、酢酸を用いてpH3に調整した水溶液400mLに反応溶液を投入し、生成物を析出させた。これを吸引ろ過で回収し、50℃で12時間減圧乾燥を行った。粗収量は32.8g(粗収率80%)であった。乾燥後の粗生成物をクロロホルム/ヘキサン混合溶媒を用いて再結晶し、50℃で12時間減圧乾燥することで、白色粉末状の生成物(収量:21.33g、収率:52%)を得た。
【0148】
得られた生成物の物性を以下に示す。
H-NMR(CDCl、ppm):4.09(s、12H、CH)、7.76(d、4H、Ar-H)、8.30(s、4H、Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):56.20、127.64,130.90,131.61,137.01,137.10,139.19,161.54,170.70,171.13,174.39
19F-NMR(CDCl、ppm):-112.65、-122.53、-123.10
【0149】
<実施例4>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-BPDA)
【0150】
【化42】
【0151】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APDF6(0.726g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え、撹拌して溶解させた。その後、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(0.441g、1.50 mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.72dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後、60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色不透明のフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚25μm)を得た。
【0152】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1778(C=O)、1734(C=O)、1389(C-N)、1185(C-F)、740(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:520℃(空気中)、555℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:550℃(空気中)、576℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:53%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:210℃(DMA)
熱膨張係数:43ppm/℃
カットオフ波長:389nm
500nmでの透過率:28%
平均屈折率(nave):1.579(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.72(ε=1.10×nave
【0153】
<実施例5>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-6FDA)
【0154】
【化43】
【0155】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APDF6(0.726g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え撹拌して溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.32dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物はNMP、DMAc、γ-ブチロラクトン、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、THF、シクロヘキサノンに可溶であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後、60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚22μm)を得た。
【0156】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1789(C=O)、1725(C=O)、1376(C-N)、1199(C-F)、745(イミド環)
H-NMR(CDCl、ppm):7.65(d,4H,Ar-H)、7.76(d,4H,Ar-H)、7.91(d,2H,Ar-H)、7.96(s,2H,Ar-H)、8.08(d,2H,Ar-H)
19F-NMR(CDCl、ppm):-126.8、-126.4、-115.9、-68.4
対数粘度(ηinh):0.52dL/g(0.5 g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
GPC:数平均分子量(Mn)47000、分子量分布(Mw/Mn)2.5
溶解性:NMP、DMAc、DMF、DMI、THF、クロロホルム、アセトン、メタノール、酢酸エチル、THF、シクロヘキサンに室温で溶解
5%重量減少温度:509℃(空気中)、524℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:527℃(空気中)、544℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:221℃(DSC)、215℃(DMA)、213℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):92ppm/℃
引張破断強度:58MPa
破断伸び:9.3%
引張弾性率:1.6GPa
カットオフ波長:337nm
500nmでの透過率:80%
平均屈折率(nave):1.526(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.55(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.54
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0022
【0157】
<実施例6>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6-BPDA/6FDA(50/50))
【0158】
【化44】
【0159】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APDF6(0.726g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え、撹拌して溶解させた。その後、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(0.221g、0.75mmol)と4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.333g、0.75mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌して反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.35dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後減圧乾燥機で60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色不透明のフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚35μm)を得た。
【0160】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1792(C=O)、1741(C=O)、1380(C-N)、1179(C-F)、721(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.43dL/g(0.5 g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
溶解性:NMP、DMAc、DMFに室温で溶解
5%重量減少温度:503℃(空気中)、526℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:526℃(空気中)、550℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:49%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:205℃(DSC)、208℃(DMA)、210℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):73(ppm/℃)
カットオフ波長:365nm
500nmでの透過率:73%
平均屈折率(nave):1.562(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.68(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.58
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0025
【0161】
<実施例7>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8-BPDA)
【0162】
【化45】
【0163】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APHF8(0.886g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え、撹拌して溶解させた。その後、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(0.441g、1.50mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.54dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、黄色不透明のフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚63μm)を得た。
【0164】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1782(C=O)、1725(C=O)、1375(C-N)、1205(C-F)、739(イミド環)
溶解性:有機溶媒に不溶
5%重量減少温度:521℃(空気中)、545℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:547℃(空気中)、564℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:48%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:190℃(DMA)
平均屈折率(nave):1.551(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.65(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.72
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0014
【0165】
<実施例8>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8-6FDA)
【0166】
【化46】
【0167】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、APHF8(0.886g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え、撹拌して溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.43dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物はNMP、DMAc、γ-ブチロラクトン、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、THF、シクロヘキサノンに可溶であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後、60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚35μm)を得た。
【0168】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1793(C=O)、1742(C=O)、1381(C-N)、1180(C-F)、720(イミド環)
対数粘度(ηinh):0.51dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
GPC:数平均分子量(Mn)27000、分子量分布(Mw/Mn)1.6
溶解性:NMP、DMAc、DMF、DMI、THF、クロロホルムに室温で溶解
5%重量減少温度:497℃(空気中)、524℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:516℃(空気中)、544℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:49%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:194℃(DSC)、190℃(DMA)、188℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):85(ppm/℃)
引張破断強度:59MPa
破断伸び:4.8%
引張弾性率:1.7GPa
カットオフ波長:330nm
500nmでの透過率:83%
平均屈折率(nave):1.511(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.51(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.39
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0016
【0169】
<実施例9>
フッ素化アミド化合物(6FTA-p-DFBBT)
【0170】
【化47】
【0171】
攪拌子、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに6FTA(0.364g、1.0mmol)とNMP2mLを加えて溶解させ、0℃に冷却した。次に、トリアジン系活性ジエステル(p-DFBBT)(0.821g,1.0mmol)加え溶解させ、0℃で1時間反応させた。段階的に80℃まで昇温し、80℃で24時間反応させた。反応終了後、重合溶液を蒸留水(300mL)に投入し、フッ素化アミド化合物を析出させた。析出したフッ素化アミド化合物を吸引ろ過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行った。粗収率は97%であった。乾燥後のフッ素化アミド化合物をNMP(5mL)に溶解させ、蒸留水で再沈殿精製を行うことで、淡黄色粉末状のフッ素化アミド化合物(6FTA-p-DFBBT)(収量:0.663g、収率:74%)を得た。IRおよびH-NMRによってフッ素化アミド化合物が生成したことを確認した。
【0172】
得られたフッ素化アミド化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):3366(N-H)、1664(C=O)、1519(C=C)
H-NMR(DMSO-d、ppm):5.38(s、4H、NH)、6.79(d、2H、Ar-H)、6.93(d、2H、Ar-H)、7.26(s、2H、Ar-H)、7.83(d、4H、Ar-H)、8.17(d、4H、Ar-H)、9.94(s、2H、NHCO)
対数粘度(ηinh):0.34dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
GPC:数平均分子量(M)25000、分子量分布(M/M)2.0
溶解性:NMP、DMAc、DMF、DMSO、THF、アセトン、メタノールに室温で溶解
【0173】
<実施例10>
フッ素化アミド化合物(6FTAPh-p-DFBBT)
【0174】
【化48】
攪拌子、窒素導入管を取り付けた100mLの三口フラスコに6FTAPh(0.516g、1.0mmol)とNMP(2mL)を加えて溶解させた。次に、トリアジン系活性ジエステル(p-DFBBT)(0.821g、1.0mmol)加え溶解させ、段階的に120℃まで昇温し、120℃で24時間反応させた。反応終了後、重合溶液を蒸留水(300mL)に投入し、フッ素化アミド化合物を析出させた。析出したフッ素化アミド化合物を吸引ろ過で回収し、室温で12時間減圧乾燥を行った。粗収率は96%であった。乾燥後のフッ素化アミド化合物をNMP(5mL)に溶解させ、蒸留水で再沈殿精製を行うことで、白色粉末状のフッ素化アミド化合物(6FTAPh-p-DFBBT)(収量:0.695g、収率:68%)を得た。
【0175】
得られたフッ素化アミド化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):3341(NHCO)、1672(C=O)、1598(C=C)、1532(C=C)
H-NMR(CDCl、ppm):6.36(s、2H、Ar-NH-Ar)、6.93(m、10H、Ar-H)、7.22(s、2H、Ar-H)、7.63(t、4H、Ar-H)、7.83-7.90(m、8H、Ar-H)、8.80(s、2H、NHCO)
対数粘度(ηinh):0.37dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)
GPC:数平均分子量(M)59000、分子量分布(M/M)1.3
溶解性:NMP,DMAc,DMF,DMSO,THF,クロロホルム,アセトンに室温で溶解
【0176】
<実施例11>
フッ素化含窒素複素環含有化合物(イミダゾール化合物:6FTA-p-DFBBT)
【0177】
【化49】
【0178】
乾燥させたフッ素化アミド化合物(6FTA-p-DFBBT)の粉末を減圧乾燥機中で60℃で6時間、100℃で6時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間、350℃で1時間熱処理を行い、茶色のイミダゾール化合物の粉末を得た。
【0179】
得られたイミダゾール化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1551(C=C)、1451(C=N)、723(C-F)
元素分析:測定値 C,49.72%;H,2.33%;N,6.60%
計算値 C,50.37%;H,1.93%;N,6.71%
溶解性:NMPに溶解
ガラス転移温度:240℃(DSC測定)
5%重量減少温度:429℃(空気中)、442℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:478℃(空気中)、497℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:57%(窒素中、800℃)(TGA)
カットオフ波長:342nm
500nmにおける光透過率:86%
平均屈折率(nave):1.565(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.69(ε=1.10×nave
【0180】
<実施例12>
フッ素化含窒素複素環含有化合物(イミダゾール化合物:6FTAPh-p-DFBBT)
【0181】
【化50】
【0182】
乾燥させたフッ素化アミド化合物(6FTAPh-p-DFBBT)の粉末を減圧乾燥機で60℃で6時間、100℃で6時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間、350℃で1時間熱処理を行い、茶色のイミダゾール化合物の粉末を得た。
【0183】
得られたイミダゾール化合物の物性を以下に示す。
FT-IR(KBr、cm-1):1596(C=C)、1503(C=C)、1455(C=N)
溶解性:NMP、DMAc、DMF,THFに室温で溶解
ガラス転移温度:211℃(DSC)
5%重量減少温度:503℃(空気中)、519℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:532℃(空気中)、542℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:61%(窒素中、800℃)(TGA)
カットオフ波長:340nm
500nmにおける光透過率:77%
平均屈折率(nave):1.545(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.63(ε=1.10×nave
【0184】
<合成例3>
1,6-ビス(3-アミノフェニル)ドデカフルオロヘキサン(mAPDF6)
【0185】
【化51】
【0186】
撹拌子、ジムロート冷却管、三方コックを取り付けた100mLナスフラスコに、3-ヨードアニリン(5.0g、22.8mmol)、DMSO(20mL)を入れ溶解させたのち、銅粉(7.2g、114mmol)を空気中で酸化しないように素早く入れ、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン(6.3g、11.4mmol)を潮解する前に素早く入れた。その後、120℃まで昇温し、120℃で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、吸引ろ過をしてDMSO溶液を回収した。DMSO溶液から減圧蒸留により、DMSOを留去し粗生成物を得た。この粗生成物をジクロロメタンに溶解させ蒸留水で洗浄後、ジクロロメタン溶液を回収し無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。エバポレータでジクロロメタンを留去して、黄色の粗生成物を得た。メタノール/蒸留水の混合溶媒で再結晶を行い、60℃で減圧乾燥した。メタノールに溶かし、活性炭で脱色処理を行った。メタノールを除去後、60℃で一晩減圧乾燥し、黄色粉末状のmAPDF6(収量:3.0g、収率:54%)を得た。
【0187】
H-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび元素分析によって構造を確認した。
H-NMR(CDCl、ppm):3.81(s,4H,NH)、6.83(d,2H,Ar-H)、6.85(s,2H,Ar-H)、6.95(d,2H,Ar-H)、7.24(t,2H,Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):113.1、116.9、118.2、129.6,130.3,146.7
19F-NMR(CDCl、ppm):-121.9、-121.3、-110.7
融点:79.4℃(DSC)
元素分析:計算値 C,44.64%;H,2.50%;N,5.78%
実測値 C,44.75%;H,2.80%;N,5.52%
【0188】
<実施例13>
1,6-ビス(4-クロロカルボニルフェニル)ドデカフルオロヘキサン(CCPDF6)
【0189】
【化52】
【0190】
撹拌子、冷却管、塩化カルシウム管を取り付けたナスフラスコ(100mL)に、CPDF6(5.38g、9.9mmol)と塩化チオニル(40mL)を加え、ゆっくりと85℃まで昇温し、1時間撹拌した。室温まで放冷し、減圧蒸留により過剰の塩化チオニルを留去し、固体の生成物を得た。これを昇華(140℃/0.8Torr)により精製し、白色の針状晶の生成物(収量:4.4g、収率:77%)を得た。
FT-IR、H-NMR、13C-NMR、19F-NMRおよび元素分析によって構造を確認した。
FT-IR(KBr、cm-1):3063(Ar-H)、1746(C=O)、1142(C-F)
H-NMR(CDCl、ppm):8.24(d,4H,Ar-H)、7.75(d,4H,Ar-H)
13C-NMR(CDCl、ppm):127.78、131.40、135.49,136.44、167.76、
19F-NMR(CDCl、ppm):-111.33、-121.10、-121.60
融点:129~130℃
元素分析:計算値 C,41.48%;H,1.39%
実測値 C,41.43%;H,1.48%
【0191】
<実施例14>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6/BisAAF(50/50)-6FDA)
【0192】
【化53】
【0193】
APDF6(0.363g、0.75mmol)、2、2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BisAAF)(0.251g、0.75mmol)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を用いて、上記の実施例と同様に実験を行い、フッ素化アミド化合物を合成した。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.50dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物を同様に加熱して、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚64μm)を得た。
【0194】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
数平均分子量(Mn):31000、分子量分布(Mw/Mn):2.5(GPC)
溶解性:NMP、DMAc、シクロヘキサノン、THF、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに室温で溶解
5%重量減少温度:502℃(空気中)、524℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:522℃(空気中)、542℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:265℃(DSC)、258℃(DMA)、267℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):62(ppm/℃)
カットオフ波長:354nm
500nmでの透過率:84%
平均屈折率(nave):1.537(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.60(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.49
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0043
【0195】
<実施例15>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APDF6/TFMB(50/50)-6FDA)
【0196】
【化54】
【0197】
APDF6(0.363g、0.75mmol)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(0.240g、0.75mmol)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を用いて、上記の実施例と同様に実験を行い、フッ素化アミド化合物を合成した。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.37dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物を同様に加熱して、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚69μm)を得た。
【0198】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
数平均分子量(Mn):50000、分子量分布(Mw/Mn):1.8(GPC)
溶解性:NMP、DMAc、シクロヘキサノン、THF、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに室温で溶解
5%重量減少温度:505℃(空気中)、538℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:525℃(空気中)、560℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:268℃(DSC)、257℃(DMA)、261℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):43(ppm/℃)
カットオフ波長:355nm
500nmでの透過率:83%
平均屈折率(nave):1.538(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.60(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.52
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0039
【0199】
<実施例16>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8/BisAAF(50/50)-6FDA)
【0200】
【化55】
【0201】
APHF8(0.443g、0.75mmol)、BisAAF(0.251g、0.75mmol)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を用いて、上記の実施例と同様に実験を行い、フッ素化アミド化合物を合成した。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.32dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物を同様に加熱して、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚47μm)を得た。
【0202】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
数平均分子量(Mn):30000、分子量分布(Mw/Mn):2.4(GPC)
溶解性:NMP、DMAc、THF、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに室温で溶解
5%重量減少温度:509℃(空気中)、520℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:529℃(空気中)、539℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:51%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:252℃(DSC)、247℃(DMA)、246℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):75(ppm/℃)
カットオフ波長:352nm
500nmでの透過率:73%
平均屈折率(nave):1.528(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.57(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.49
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0023
【0203】
<実施例17>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:APHF8/TFMB(50/50)-6FDA)
【0204】
【化56】
【0205】
APHF8(0.443g、0.75mmol)、TFMB(0.240g、0.75mmol)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を用いて、上記の実施例と同様に実験を行い、フッ素化アミド化合物を合成した。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.42dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物を同様に加熱して、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚86μm)を得た。
【0206】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
数平均分子量(Mn):55000、分子量分布(Mw/Mn):2.4(GPC)
溶解性:NMP、DMAc、シクロヘキサノン、THF、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに室温で溶解
5%重量減少温度:525℃(空気中)、529℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:545℃(空気中)、550℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:51%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:255℃(DSC)、241℃(DMA)、239℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):55(ppm/℃)
カットオフ波長:350nm
500nmでの透過率:80%
平均屈折率(nave):1.528(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.57(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.57
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0031
【0207】
<比較例1>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:BisAAF-6FDA)
【0208】
【化57】
【0209】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、BisAAF(0.502g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え撹拌して溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.58dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物はNMP、DMAc、γ-ブチロラクトン、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、THF、シクロヘキサノンに可溶であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後、60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚58μm)を得た。
【0210】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
数平均分子量(Mn)26000、分子量分布(Mw/Mn)2.3(GPC)
溶解性:DMF、DMAc、THF、クロロホルム、酢酸エチル、アセトンに室温で溶解
5%重量減少温度:508℃(空気中)、524℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:525℃(空気中)、539℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:54%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:311℃(DSC)、313℃(DMA)、310℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):69ppm/℃
カットオフ波長:354nm
500nmでの透過率:88%
平均屈折率(nave):1.550(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.64(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.65
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0070
【0211】
<比較例2>
フッ素化アミド化合物およびフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物:TFMB-6FDA)
【0212】
【化58】
【0213】
撹拌棒、撹拌羽根、ジムロート冷却管、窒素導入管を取り付けた100mL三口フラスコをバーナーで熱し乾燥したのち、TFMB(0.480g、1.50mmol)、蒸留したNMP(3mL)を加え撹拌して溶解させた。その後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)(0.666g、1.50mmol)を加え、徐々に昇温させ、60℃で18時間撹拌させ反応させることでフッ素化アミド化合物の溶液を得た。フッ素化アミド化合物の対数粘度(ηinh)は0.58dL/g(0.5g/dL濃度のNMP溶液、30℃測定)であった。フッ素化アミド化合物はNMP、DMAc、γ-ブチロラクトン、アセトン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、THF、シクロヘキサノンに可溶であった。室温まで冷却し、蒸留したNMP(2mL)を加え撹拌させることで溶液全体の濃度を薄め、その溶液をガラス板上に流延させた。これを室温で3時間減圧乾燥させ、その後、60℃で6時間、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間、300℃で1時間のプログラムで減圧乾燥させることで、淡黄色透明なフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルム(膜厚66μm)を得た。
【0214】
得られたフッ素化含窒素複素環含有化合物(イミド化合物)フィルムの物性を以下に示す。
数平均分子量(Mn)21000、分子量分布(Mw/Mn)1.9(GPC)
溶解性:DMF、DMAc、シクロヘキサノン、THF、酢酸エチル、アセトンに室温で溶解
5%重量減少温度:527℃(空気中)、530℃(窒素中)(TGA)
10%重量減少温度:543℃(空気中)、552℃(窒素中)(TGA)
炭化収率:52%(窒素中、800℃)(TGA)
ガラス転移温度:332℃(DSC)、331℃(DMA)、323℃(TMA)
熱膨張係数(CTE):68ppm/℃
カットオフ波長:351nm
500nmでの透過率:84%
平均屈折率(nave):1.554(d線)
屈折率から求められる誘電率(ε):2.66(ε=1.10×nave
10GHzにおける誘電率(Dk):2.74
10GHzにおける誘電正接(Df):0.0066