(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20220630BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20220630BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C23C14/35 C
C23C14/34 C
H01L21/285 S
(21)【出願番号】P 2017223803
(22)【出願日】2017-11-21
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】青沼 大介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 新
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
C23C 14/34
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容されるチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板の被処理面と対向するようにそれぞれ配置される円筒形の第1のターゲット、及び円筒形の第2のターゲットと、
前記第1のターゲット、及び前記第2のターゲットをそれぞれの中心軸線周りに互いに逆方向に回転させる駆動機構と、
前記ターゲットの外周に磁界を発生させる磁界発生部と、を備えるスパッタリング装置であって、
前記磁界発生部は、
前記第1のターゲット内側の中空部に配置され、前記第1のターゲットの中心軸線と平行に延び前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に第1極を有する第1磁石と、
前記中空部に前記第1磁石を囲むように環状に設けられ、前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に前記第1極とは逆極性の第2極を有する第2磁石と、を含み、
前記第1のターゲットの中心軸線と直交する断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において該表面の法線方向の磁束密度成分が0となる第1の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第1の仮想直線は、前記被処理面に対して垂直に交わり、
前記断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において前記第1の点とは異なる位置で前記法線方向の磁束密度成分が0となる第2の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第2の仮想直線は、前記基板と交わらず、
前記第2の仮想直線は、前記第2のターゲットと交わる
ことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記断面において、
前記駆動機構は、前記第1のターゲットの周面上の任意の点が前記第2の点から前記第1の点へ移動するときの距離がより短くなる回転方向に、前記第1のターゲットを回転させることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットは互いに平行に配置されることを特徴と
する請求項1又は2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記磁界発生部は、
前記第2のターゲットの内側の中空部に配置され、前記第2のターゲットの中心軸線と平行に延び前記第2のターゲットの内周面と対向する端部に第1極を有する第3磁石と、
前記第2のターゲットの内側の中空部に前記第3磁石を囲むように環状に設けられ、前記第2のターゲットの内周面と対向する端部に前記第1極とは逆極性の第2極を有する第4磁石と、を含み、
前記断面において、前記第2のターゲットの中心点と、前記第2のターゲットの表面において該表面の法線方向の磁束密度成分が0となる第3の点とを通り、かつ、前記第3磁石と前記第4磁石との間を通る第3の仮想直線は、前記被処理面と交わり、
前記断面において、前記第2のターゲットの中心点と、前記第2のターゲットの表面において前記第3の点とは異なる位置で前記法線方向の磁束密度成分が0となる第4の点とを通り、かつ、前記第3磁石と前記第4磁石との間を通る第4の仮想直線は、前記被処理面と交わらない
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記断面において、
前記第4の仮想直線は、前記第1のターゲットと交わることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記断面において、
前記第3の仮想直線は、前記被処理面に対して垂直に交わることを特徴とする請求項4または5に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記断面において、
前記第3の仮想直線は、前記第1の仮想直線と交わることを特徴とする請求項4または5に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
基板が収容されるチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板の被処理面と対向するようにそれぞれ配置される円筒形の第1のターゲット、及び円筒形の第2のターゲットと、
前記第1のターゲット、及び前記第2のターゲットをそれぞれの中心軸線周りに互いに逆方向に回転させる駆動機構と、
前記ターゲットの外周に磁界を発生させる磁界発生部と、を備えるスパッタリング装置であって、
前記磁界発生部は、
前記第1のターゲット内側の中空部に配置され、前記第1のターゲットの中心軸線と平行に延び前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に第1極を有する第1磁石と、
前記中空部に前記第1磁石を囲むように環状に設けられ、前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に前記第1極とは逆極性の第2極を有する第2磁石と、を含み、
前記第1のターゲットの中心軸線と直交する断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において該表面の法線方向の磁束密度成分が0となる第1の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第1の仮想直線は、前記被処理面に交わり、
前記断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において前記第1の点とは異なる位置で前記法線方向の磁束密度成分が0となる第2の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第2の仮想直線は、前記第2のターゲットと交わり、
前記断面において、前記第1の仮想直線は、前記第1のターゲットの径方向に延びる前記被処理面に垂直な仮想直線に対して、前記第2の仮想直線が延びる側とは反対側に傾いた角度で延びることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項9】
前記磁界発生部は、
前記第2のターゲットの内側の中空部に配置され、前記第2のターゲットの中心軸線と平行に延び前記第2のターゲットの内周面と対向する端部に第1極を有する第3磁石と、
前記第2のターゲットの内側の中空部に前記第3磁石を囲むように環状に設けられ、前記第2のターゲットの内周面と対向する端部に前記第1極とは逆極性の第2極を有する第4磁石と、を含むことを特徴とする請求項8に記載のスパッタリング装置。
【請求項10】
前記断面において、
前記駆動機構は、前記第1のターゲットの周面上の任意の点が前記第2の点から前記第1の点へ移動するときの距離がより短くなる回転方向に、前記第1のターゲットを回転させることを特徴とする請求項9に記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記断面において、
前記第2のターゲットの中心点と、前記第2のターゲットの表面において該表面の法線方向の磁束密度成分が0となる第3の点とを通り、かつ、前記第3磁石と前記第4磁石との間を通る第3の仮想直線は、前記被処理面と交わり、
前記断面において、前記第2のターゲットの中心点と、前記第2のターゲットの表面において前記第3の点とは異なる位置で前記法線方向の磁束密度成分が0となる第4の点とを通り、かつ、前記第3磁石と前記第4磁石との間を通る第4の仮想直線は、前記第1のターゲットと交わることを特徴とする請求項9又は10に記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記断面において、
前記第3の仮想直線は、前記被処理面に対して垂直に交わることを特徴とする請求項11に記載のスパッタリング装置。
【請求項13】
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットは互いに平行に配置されることを特徴とする請求項8~
11のいずれか1項に記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に成膜を行うためのスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造において基板の成膜処理に用いられるスパッタリング装置として、マグネトロンスパッタリングを用いた装置が、近年主流となっている。ターゲット裏側に配置したマグネットが生成する磁界によりターゲット近傍においてプラズマ領域の密度を高め、Ar等のスパッタリングガスのイオンの生成を促進し、該イオンとターゲットとの衝突機会を増やすことで、成膜速度の向上を図ることができる。さらに、ターゲット材料の効率的な消費の観点から、円筒形状に成形したターゲットを用いた装置構成が提案されている(特許文献1)。ターゲット表面においてスパッタリングガスイオンとの衝突によるターゲット粒子の放出がより多く生じる箇所は、マグネットが生成する磁界における磁力の向きや大きさとの関係で決まる。そのため、スパッタリングによってターゲット表面が掘られる箇所は局所的なものとなる。そこで、固定された磁石ユニットに対し、その外周を囲む円筒ターゲットを回転させることで、ターゲット表面の削れ方を周方向に均一化し、無駄の少ないターゲット材料の消費を可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターゲット表面からのターゲット粒子の放出エネルギーの強弱は、形成される磁界に応じた分布が形成され、基板の被成膜面におけるターゲット粒子の堆積分布は、基板に対する磁界及びターゲットの相対配置によって種々変化する。また、同じ相対配置でも、基板の被成膜面の凹凸形状によってはターゲット粒子の堆積の仕方が変化し、成膜精度に影響を及ぼす場合がある。例えば、被成膜面にスリットや丸穴などの凹形状部が形成されている場合、凹形状部の底面と側壁の膜厚比との関係で、凹形状部の開口部が底部よりも先にターゲット粒子で塞がり、空洞(ボイド)を形成してしまうことがある。また、被成膜面に凸形状部がある場合、凸形状部の天面と側面の膜厚比の均一化を図ることが難しく、成膜分布が不均一となってしまうことがある。
一方で、円筒ターゲット周面から法線方向にターゲット粒子が最も高いエネルギーで放出される箇所は、円筒ターゲット周面の周方向に複数形成される。それぞれの方向を基板に対して成膜に有効な方向とする、すなわち、それぞれの高エネルギー箇所から放出されるターゲット粒子を無駄少なく成膜に利用しようとすると、基板に対する磁界(磁石ユニット)の相対配置において設計上制約が生じる。
【0005】
本発明は、成膜精度の向上を図ることができる技術、成膜精度の向上を図りつつターゲット材料の無駄の少ない消費を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のスパッタリング装置は、
基板が収容されるチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板の被処理面と対向するようにそれぞれ配置される円筒形の第1のターゲット、及び円筒形の第2のターゲットと、
前記第1のターゲット、及び前記第2のターゲットをそれぞれの中心軸線周りに互いに逆方向に回転させる駆動機構と、
前記ターゲットの外周に磁界を発生させる磁界発生部と、を備えるスパッタリング装置であって、
前記磁界発生部は、
前記第1のターゲット内側の中空部に配置され、前記第1のターゲットの中心軸線と平行に延び前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に第1極を有する第1磁石と、
前記中空部に前記第1磁石を囲むように環状に設けられ、前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に前記第1極とは逆極性の第2極を有する第2磁石と、を含み、
前記第1のターゲットの中心軸線と直交する断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において該表面の法線方向の磁束密度成分が0となる第1の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第1の仮想直線は、前記被処理面に対して垂直に交わり、
前記断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において前記第1の点とは異なる位置で前記法線方向の磁束密度成分が0となる第2の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第2の仮想直線は、前記基板と交わらず、
前記第2の仮想直線は、前記第2のターゲットと交わる
ことを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明のスパッタリング装置は、
基板が収容されるチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板の被処理面と対向するようにそれぞれ配置される円筒形の第1のターゲット、及び円筒形の第2のターゲットと、
前記第1のターゲット、及び前記第2のターゲットをそれぞれの中心軸線周りに互いに逆方向に回転させる駆動機構と、
前記ターゲットの外周に磁界を発生させる磁界発生部と、を備えるスパッタリング装置であって、
前記磁界発生部は、
前記第1のターゲット内側の中空部に配置され、前記第1のターゲットの中心軸線と平行に延び前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に第1極を有する第1磁石と、
前記中空部に前記第1磁石を囲むように環状に設けられ、前記第1のターゲットの内周面と対向する端部に前記第1極とは逆極性の第2極を有する第2磁石と、を含み、
前記第1のターゲットの中心軸線と直交する断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において該表面の法線方向の磁束密度成分が0となる第1の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第1の仮想直線は、前記被処理面に交わり、
前記断面において、前記第1のターゲットの中心点と、前記第1のターゲットの表面において前記第1の点とは異なる位置で前記法線方向の磁束密度成分が0となる第2の点とを通り、かつ、前記第1磁石と前記第2磁石との間を通るように、前記第1のターゲットの径方向に延びる第2の仮想直線は、前記第2のターゲットと交わり、
前記断面において、前記第1の仮想直線は、前記第1のターゲットの径方向に延びる前記被処理面に垂直な仮想直線に対して、前記第2の仮想直線が延びる側とは反対側に傾いた角度で延びることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成膜精度の向上を図ることができる。また、成膜精度の向上を図りつつターゲット材料の無駄の少ない消費を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係るスパッタリング装置の模式的断面図
【
図8】比較例1、2に係るスパッタリング装置の説明図
【
図14】本発明の実施例2に係るスパッタリング装置の模式的断面図
【
図15】本発明の実施例3に係るスパッタリング装置の模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
図1~
図8を参照して、本発明の実施例1に係るスパッタリング装置について説明する。本実施例に係るスパッタリング装置は、円筒形状のターゲット内側に磁石ユニットを配置した、マグネトロン方式のスパッタリング装置である。本実施例に係るスパッタリング装置は、各種半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品、光学部品などの製造において基板上に薄膜を堆積形成するために用いられる。より具体的には、例えば、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)における電極や配線の形成に好適に用いられる。
【0011】
図1は、本実施例に係るスパッタリング装置の全体構成を示す模式的側断面図である。
図2(a)は、
図1のAA断面図である。
図2(b)は、ターゲットを回転駆動させる駆動機構の構成を示す模式的断面図である。
図3は、磁石ユニットの構成を示す模式図であり、(a)は本実施例の磁石ユニットの模式的断面図、(b)は(a)の模式的C矢視図、(c)は変形例1の磁石ユニットの模式的断面図、(d)は変形例2の磁石ユニットの模式的断面図である。
図4(a)は、2つのスパッタリングユニットの構成を説明する模式的断面図である。
図4(b)は、2つのスパッタリングユニットにおいて生成される磁界の磁力線を示す図である。
図6は、ターゲット表面の磁場分布を示すグラフである。
図7は、カソード電源の具体例を示す模式図であり、(a)はDC電源、(b)はAC電源(MF電源)、(c)はrf電源である。
図8(a)は、本実施例の比較例1に係るスパッタリング装置の構成を示す模式的断面図である。
図8(b)は、比較例1により基板の被成膜面の凹形状部にボイドが発生する様子を説明する模式的断面図である。
図8(c)は、比較例2による基板の被成膜面の立体形状部のスパッタリングの様子を示す模式図である。
【0012】
<スパッタリング装置の全体構成>
図1に示すスパッタリング装置1は、インライン型装置であり、基板10がロードロック室20からスパッタリング室21、アンロードロック室22へ順次搬送される構成となっている。スパッタリング室21内には、後述する磁石ユニット及びターゲットを備えたカソードユニット4が配置されている。各室には、クライオポンプやTMP(ターボモレキュラポンプ)等からなる排気装置24、26、28がそれぞれ接続されており、各室の圧力が調整可能に構成されている。
【0013】
基板10は、基板ホルダ3に載せられて(保持されて)各室間を搬送される。基板ホル
ダ3には、基板10の被成膜面(被処理面)11を開放する開口部31が設けられており、該開口部31を介して、被成膜面11に成膜処理が施される。基板ホルダ3は、各室間を延びる搬送ガイド32に沿って矢印B方向に移動可能に構成されている。
【0014】
基板ホルダ3に載せられた基板10は、先ず、搬入ドアバルブ23を介してロードロック室20に搬入される。搬入ドアバルブ23が閉じられ、ロードロック室20は、排気装置24により、所定の低圧力まで排気される。ゲードバルブ25が開かれ、基板10はスパッタリング室21に搬入される。スパッタリング室21は、排気装置26により、予め所定の高真空圧まで排気された状態となっている。スパッタリング室21に収容された基板ホルダ3は、チャンバ内を一定の速度で移動し、その間に、基板10に対してカソードユニット4による成膜処理が施される。成膜された基板10は、ゲートバルブ27を介してアンロードロック室22へ搬出される。アンロードロック室22は、排気装置28により予め所定の高真空圧に排気されている。ゲードバルブ27が閉じられ、アンロードロック室22が大気圧に戻されると、搬出ドアバルブ29が開かれ、基板10が機外へ搬出されて成膜処理が終了する。
【0015】
<スパッタリングチャンバ及びカソードユニット>
図1、
図2に示すように、スパッタリング室21(チャンバ)は、上方に基板10の搬送経路が設けられ、その下方にカソードユニット4が配置されている。スパッタリング室21は、排気装置26により、スパッタリングプロセスに好適な真空度(例えば、2×10Pa~2×10
-5Pa)に調整されるとともに、ガス供給源50から、スパッタリングガスが流量制御されて供給される。これにより、スパッタリング室21の内部にスパッタリング雰囲気が形成される。スパッタリングガスとしては、例えばAr、Kr、Xe等の希ガスや成膜用の反応性ガスが用いられる。
【0016】
図4に示すように、カソードユニット4は、ターゲット40Aと磁石ユニット41Aとからなる第1のユニット14Aと、ターゲット40Bと磁石ユニット41Bとからなる第2のユニット14Bの、2つの対となるスパッタリングユニットを備える。
【0017】
ターゲット40A、40Bは、円筒形状に成形された成膜材料であり、基板10の搬送経路からそれぞれ等距離の位置において、基板10の被成膜面11(搬送方向)に平行、かつ中心軸線が基板10の搬送方向と直交する方向となるように配置される。各ターゲット40A、40Bの内周面にはそれぞれカソード電極42A、42Bが密着して設けられている。磁石ユニット41A、41Bはそれぞれ各ターゲット40A、40B(カソード電極42A、42B)の内側の中空部に配置される。カソード電極42A、42Bにはそれぞれ電源43A、43Bが接続されており、スパッタリング室21は接地されている。電源43A、43Bによる電圧印加において、カソード電極42A、42Bが陰極となり、スパッタリング室21の壁部が陽極となる。
【0018】
ターゲット40A、40Bの材料としては、例えば、Cu、Al、Ti、Mo、Cr、Ag、Au、Niなどの金属ターゲットとその合金材が挙げられる。この場合には、電源43A、43Bとして、
図7(a)に示す、DC電源431A、431Bが好適に用いられる。また、ターゲット40A、40Bの材料としては、例えば、上記に加えて、Si、Ti、Cr、Al、Taなどの金属ターゲットに反応性ガス(O
2、N
2,H
2Oなど)を添加したものが挙げられる。この場合には、電源43A、43Bとして、
図7(b)に示す、AC電源(MF電源)432が好適に用いられる。なお、正弦波タイプではなく矩形波タイプでもよい。さらに、ターゲット40A、40Bの材料としては、例えば、SiO
2、Ta
2O
5、Al
2O
3などの絶縁材料が用いられる場合もある。この場合には、電源43A、43Bとして、
図7(c)に示す、高周波電源433A、433Bが好適に用いられる。
【0019】
図3(a)、(b)に示すように、磁石ユニット41Aは、第1磁石としての中心磁石401Aと、第2磁石としての外周磁石402Aと、ヨーク403Aと、を備える。同様に、磁石ユニット41Bは、第3磁石としての中心磁石401Bと、第4磁石としての外周磁石402Bと、ヨーク403Bと、を備える。ヨーク403A(403B)は、基板10の搬送方向と直交する方向を長手方向とする縦長形状の磁性部材である。ヨーク403A上面の中央部に上記長手方向に沿って延びる中心磁石401A(401B)が設けられている。また、ヨーク403Aの外周端には、中心磁石401A(401B)の外周を囲むように環状に形成された外周磁石402A(402B)が設けられている。
【0020】
図3(b)に示すように、外周磁石402A(402B)は、一対の長辺部4021A(4021B)、4022A(4022B)と、一対の短辺部4023A(4023B)、2024A(4024B)と、からなる矩形(額縁形状)の磁石である。長辺部4021A(4021B)、4022A(4022B)は、ヨーク403A(403B)の長手方向と直交する方向の両端部において、上記長手方向に中心磁石401A(401B)よりも長く延びている。短辺部4023A(4023B)、4024A(4024B)は、ヨーク403A(403B)の長手方向における両端部において中心磁石401A(401B)の延びる方向と直交する方向に延びている。
【0021】
図3(a)に示すように、中心磁石401A(401B)と外周磁石402A(402B)は、それぞれのターゲット40A(40B)の内周面と対向する端部に、互いに逆極性となる極を有している。本実施例では、中心磁石401A(401B)が第1極としてのN極を有し、外周磁石402A(402B)が第2極としてのS極を有する構成としている。
【0022】
<スパッタリング>
上述したスパッタリング雰囲気の形成と、電源43A、43Bから各カソード電極42A、42Bへの電圧印加により、ターゲット40A、40Bの外周面近傍にプラズマ領域が生成される。プラズマ領域の生成により生成されるスパッタリングガスイオンとターゲット40A(40B)との衝突により、ターゲット粒子がターゲット40A(40B)の外周面から放出される。各ターゲット40A、40Bから放出されたターゲット粒子が基板10に向かって飛翔、堆積することで基板10の被成膜面11に成膜がされる。
【0023】
図4(a)、(b)に示すように、上述した磁界発生部としての磁石ユニット41A(41B)により、ターゲット40A(40B)の外周面で閉じるループ状の磁界M1、M2が形成される。この磁界により、ターゲット40A、40Bの外周面近傍に形成されるレーストラック状のプラズマ領域の密度が高められ、ターゲット40A(40B)の外周面近傍におけるスパッタリングガスイオンの生成が促進される。
【0024】
図2(a)に示すように、ターゲット40A(40B)及び磁石ユニット41A(41B)は、エンドブロック43とサポートブロック44とにより円筒ターゲット40A(40B)の中心軸線方向におけるそれぞれの両端部が支持されている。スパッタリング室21に対して、磁石ユニット41A(41B)は、固定支持されているのに対し、ターゲット40A(40B)は、その中心軸線周りに回転可能に支持されている。スパッタリング装置1は、磁石ユニット41A(41B)を静止させたままターゲット40A(40B)のみを回転させる駆動機構を備えている。
図2(b)は、ターゲット40Bを回転させる駆動機構の構成を示す模式的断面図である。なお、ターゲット40Aの回転駆動機構も同様の構成を有しており、説明は省略する。また、
図2(b)において磁石ユニット41Bの構成は図示を省略している。
図2(b)に示すように、スパッタリング装置1は、ターゲット40A(40B)を回転させる駆
動力を得るための動力源としてモータ70を備える。また、カソード電極42Bは、中心軸線方向の両端にそれぞれ軸部421B、422Bを備える。一方の軸部421Bは、ベアリング72を介してサポートブロック44の軸孔に回転自在に支持されている。他方の軸部422Bは、ベアリング72を介してエンドブロック43の軸孔に回転自在に支持されているとともに、ベルト71を介してモータ70に連結されている。モータ70の回転駆動力がベルト71を介して他方の軸部422Bに伝達することにより、カソード電極42Bがエンドブロック43とサポートブロック44に対して回転する。これにより、カソード電極42Bの外周に設けられた円筒ターゲット40Bがその中心軸線周りに回転する。
一方、磁石ユニット41Bは、軸線方向の両端部にそれぞれ軸部141B、142Bを備えている。一方の軸部141Bは、カソード電極42Bの一方の端部に対してベアリングを介して回転自在に支持されている。他方の軸部142Bは、カソード電極42Bの他方の軸部の軸孔内周面に対してベアリング72を介して回転自在に構成されるとともに、エンドブロック43に固定されている。すなわち、磁石ユニット41Bは、他方の軸部142Bがエンドブロック43に固定支持されていることにより、モータ70の駆動によって回転するカソード電極42Bに対してベアリング72を介して相対回転し、チャンバ21に対して静止状態を維持する。なお、ここで示した駆動機構は一例であり、従来周知の他の駆動機構を採用してよい
【0025】
ターゲット40A(40B)は、磁石ユニット41A(41B)に対して相対回転するように構成されている。ターゲット表面においてスパッタリングにより掘られる箇所は局所的に形成されるため、ターゲット40A(40B)を回転させてターゲット表面の削れ方を周方向に均一化し、無駄の少ないターゲット材料の消費を可能とすることができる。本実施例では、
図5に示すように、ターゲット40Aとターゲット40Bは、互いに逆方向に、かつ互いに同じ速度(10~30rpm(rotation per minute))で等速回転するように制御される。
【0026】
<本実施例の特徴>
図4、
図6に示すように、ターゲット40Aの中心軸線と直交する断面でみたときに、ターゲット表面に形成される磁場において、ターゲット表面の法線方向(ターゲットの径方向)の磁束密度成分Brが0となる箇所が2点形成される(Z1、Z2)。なお、
図6のBθは、ターゲット周面の周方向の磁束密度成分である。上記2点Z1、Z2は、上記断面において、ターゲット40Aの中心点から中心磁石401Aと外周磁石402Aとの対向領域を通過する仮想直線と交わる位置に形成される。ターゲット表面からのターゲット粒子の放出エネルギーは、ターゲット40Aの中心点から2点Z1(第1の点)、Z2(第2の点)を通る仮想直線(第1の仮想直線L1、第2の仮想直線L2)が延びる方向において最も強くなる。そのため、2点Z1、Z2を通る仮想直線L1、L2が延びる方向により多くのターゲット粒子が飛翔することとなり、該仮想直線L1、L2の行き着く先においてターゲット粒子の堆積量が相対的に多くなる。
【0027】
本実施例では、
図4(a)に示すように、2つの仮想直線L1、L2のうちの一方の仮想直線L1が、基板10の被成膜面11に対して直交する方向に延びるように、ターゲット40Aの中心を基準とした磁石ユニット41Aの位相角度が設定されている。このような角度設定により、基板10の被成膜面11にスリットや丸穴などの凹形状部や凸型の立体形状部が形成されている場合であっても、精度の高い成膜が可能となる。
【0028】
図8(a)に示す比較例1に係る磁石ユニット441は、仮想直線L1、L2が基板10の被成膜面11と、面に垂直な方向に対して角度を持って交わる構成となっている。このような構成において、
図8(b)に示すように、基板10の被成膜面11にスリットや丸穴などの凹形状部12が設けられている場合、凹形状部12の底面と側壁の膜厚比の関
係により、凹形状部12でのターゲット粒子の埋め込み性が低下する場合がある。その結果、凹形状部12の開口部が底部よりも先にターゲット粒子で塞がってしまい、凹形状部12に堆積形成される薄膜13中に空隙(ボイド)14が形成される確率が高くなってしまう。
【0029】
図8(c)に示す比較例2に係る磁石ユニット541についても、2つの仮想直線L1、L2のいずれも基板10の被成膜面に対して直角ではない角度で交わる構成となっている。特許文献1に開示された構成も同様の構成となっている。このような構成において、被成膜面11上に凸状の立体形状部15が形成されている場合、立体形状部15に対するターゲット粒子の飛来方向が揃わず、側面15b、15cにおける膜厚が薄くなりやすくなる。そのため、立体形状部15における天面15aと側面15b、15cとの間の膜厚比の均一化を図ることが難しく、成膜分布が不均一となってしまうことがある。
【0030】
これに対し、
図4(a)に示すように仮想直線L1が基板10の被成膜面11に対して直交する本実施例の構成によれば、被成膜面11に設けられた凹形状部12や立体形状部15における膜厚の均一化を図ることができ、成膜精度の向上を図ることができる。
【0031】
また、本実施例では、
図4(a)に示すように、2つの仮想直線L1、L2の他方の仮想直線L2(第2の仮想直線)が、ターゲット40Bと交わる方向に延びている。すなわち、2つのスパッタリングユニットのうちの一方のユニットにおける、円筒ターゲットの中心点からターゲット表面の法線方向の磁束密度分布が0となる点を通る2つの仮想直線の一つが、他方のユニットのターゲットと交わる方向に延びている。これにより、第1のスパッタリングユニットから仮想直線L2に沿って放出されるターゲット粒子は、ターゲット40Bの表面に堆積し、第2のスパッタリングユニットにおけるスパッタリングにおいて、基板10の被成膜面11の成膜に供されることになる。なお、本実施例では、仮想直線L2が延びる方向は基板10の搬送方向と平行な方向となっているが、基板10(基板10の搬送経路)と交わらず、第2のスパッタリングユニットのターゲットへターゲット粒子を多く飛翔させることができる方向であればよい。
【0032】
本実施例によれば、1つのスパッタリングユニットにおいて、ターゲット粒子が高いエネルギーで放出される2つの仮想直線の方向のうち一方は、成膜に好適な角度に設定し、他方は、他のスパッタリングユニットのターゲットと交差する角度に設定している。当該スパッタリングユニットによるスパッタリング成膜では、一方の仮想直線に沿って放出されるターゲット粒子が、基板10の被成膜面11に凹形状部12や立体形状部15が形成されていても高い成膜精度が得られる角度で基板へ飛翔する。また、他方の仮想直線に沿って放出されるターゲット粒子は、他のスパッタリングユニットのターゲットに飛翔・堆積し、他のスパッタリングユニットにおけるスパッタリングに利用される。
【0033】
2つの仮想直線の両方を成膜に好適な角度に設定することは設計上困難な場合があり、得られる成膜精度が中途半端なものとなってしまうことになる場合がある。本実施例では、2つの仮想直線の一方の仮想直線は、より確実に高い成膜精度が得られる角度とする一方、他方の仮想直線は、無理に成膜に利用することはしないで、別のスパッタリングユニットのターゲットの再チャージに利用する構成としている。これにより、高い成膜精度を得つつ、無暗にターゲット材料を消費してしまうことを回避し、効率的なターゲット材料の消費を実現することができる。
【0034】
また、
図4に示すように、本実施例では、2つのスパッタリングユニットのうちの他方のユニット14B(ターゲット40Bと磁石ユニット41B)も、一方のユニット14A(ターゲット40Aと磁石ユニット41A)と同様に構成されている。すなわち、ターゲット40Bの中心軸線と直交する断面において、中心磁石401B、外周磁石402B、
ヨーク403Bは、中心磁石401A、第外周磁石402A、ヨーク403Aと、基板10の搬送方向に対称的な配置構成となっている。上記断面において、磁石ユニット41Bがターゲット40B表面に生成する磁場において、ターゲット表面の法線方向(ターゲットの径方向)の磁束密度成分Brが0となる箇所が2点形成される(Z3、Z4)。上記2点Z3、Z4は、上記断面において、ターゲット40Bの中心点から中心磁石401Bと外周磁石402Bとの対向領域を通過する仮想直線と交わる位置に形成される。ターゲット表面からのターゲット粒子の放出エネルギーは、ターゲット40Bの中心点から2点Z3(第3の点)、Z4(第4の点)を通る仮想直線(第3仮想直線L3、第4仮想直線L4)が延びる方向において最も強くなる。2つの仮想直線L3、L4のうちの一方の仮想直線L3は、基板10の被成膜面11に対して直交する方向に延び、他方の仮想直線L4は、ターゲット40Aと交わる方向に延びている。
【0035】
したがって、本実施例によれば、2つのユニット14A、14Bのそれぞれにおいて成膜に好適な方向へのターゲット粒子の放出を行いつつ、2つのユニット14A、14Bが互いにターゲット材料を供給し合う構成となる。なお、2つのユニット14A、14Bの間の距離、すなわち、ターゲット40Aとターゲット40Bの間隔が近すぎると、お互いの磁場が干渉してプラズマ領域のレーストラック形状が歪んだ形になってしまい、成膜の膜厚均一性が保てなくなるおそれがある。一方、ターゲット40Aとターゲット40Bの間でターゲット粒子を付着し合うのにも限界の距離がある。それらを考慮し、ターゲット40Aとターゲット40Bの間隔は、装置構成に応じて適宜設定される。
【0036】
図5は、ターゲット40A、40Bの回転制御パターンを説明する模式図であり、(a)はターゲット粒子の付着から再飛散までの時間(距離)が短いパターン、(b)はターゲット粒子の付着から再飛散までの時間が長いパターンを示す。ターゲットから飛翔したターゲット粒子は、チャンバ内の酸素等の残留ガスと混ざるため、酸化等による劣化が生じる可能性がある。例えば、ターゲット40Aとターゲット40Bを、互いに同方向に回転させる構成とした場合、付着から再飛翔までの時間が異なることから、ターゲット40Aとターゲット40Bにおいて付着したターゲット粒子の酸化等の進行度合いに違いが生じることになる。その結果、ターゲット40Aとターゲット40Bとで成膜性能に違いが生じる可能性がある。本実施例では、
図5に示すように、ターゲット40Aとターゲット40Bを、互いに逆方向に回転させる構成としている。こうすることで、一方のターゲットから他方のターゲットへ飛翔したターゲット粒子が他方のターゲットに付着してから再び飛翔するまで時間(距離)を、ターゲット40Aとターゲット40Bにおいて同じにすることができる。これにより、ターゲット40Aとターゲット40Bにおいて材料の状態を同じにすることができる。また、
図5(a)に示すように、酸素等の残留ガスと混ざって付着したターゲット粒子が再び飛散までの時間(距離)が短い回転パターンを採用するとより好適である。すなわち、ターゲット40A、40Bの周面上の任意の点が第2の点(Z2、Z4)から第1の点(Z1、Z3)へ移動するときの距離がより短くなる回転方向にターゲット40A、40Bを回転させる。こうすることで、
図5(b)の回転パターンよりも、ターゲット40A、40Bの劣化の発生・進行の抑制が可能となる。
【0037】
<変形例>
図3(c)、(d)を参照して、本実施例の変形例1、2について説明する。本実施例の磁石ユニット41は、
図3(a)、(b)に示すように、中心磁石401と外周磁石402のヨーク403に対する立設方向が互いに直交する方向となる構成を採用しているが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、
図3(c)に示す変形例1のように、中心磁石1401と外周磁石1402とが、直角よりも狭い角度をなすようにヨーク1403から立設する構成としてもよい。あるいは、
図3(d)に示す変形例2のように、中心磁石2401と外周磁石2402とがそれぞれ同じ方向にヨーク2403の上面から立設する構成としてもよい。中心磁石と外周磁石との間の立設方向の角度の大きさを変化さ
せることで、ターゲット表面の法線方向の磁束密度成分Brが0となる点を通る2つの仮想直線がなす角度を変化させることができる。
【0038】
図9は、本実施例の変形例3の構成を説明する模式図である。変形例3において実施例1と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。変形例3においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。実施例1では、チャンバ21内に固定されたカソードユニット4に対して基板10が移動する構成となっている。これに対し、変形例3では、基板10を成膜処理中においてチャンバ21内に静止支持し、カソードユニット4を、チャンバ21内を基板10に対して基板10の被成膜面11と平行に揺動移動する構成となっている。変形例3におけるカソードユニット4は、下方に車輪60が設けられ、チャンバ21の底面に敷設されたレール61上を被成膜面11と平行な矢印D方向に移動可能に構成されている。成膜処理中は、カソードユニット4を基板10に対して一定の速度で矢印D方向に揺動移動させることで、膜厚の均一化を図ることができる。
【0039】
図10は、本実施例の変形例4の構成を説明する模式図である。変形例4において実施例1と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。変形例4においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。変形例4は、成膜処理中において基板10とカソードユニット4とを相対移動させずにそれぞれ静止した状態で対向配置している。さらに、カソードユニット4を構成するスパッタリングユニット対の数を3組に増やした構成となっている。スパッタリングユニット対を、基板10の被成膜面11に沿った方向に増設することで、基板10の被成膜面11の全域をカバーし、膜厚の均一化を図ることができる。
【0040】
図11は、本実施例の変形例5の構成を説明する模式図である。変形例5において実施例1と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。変形例5においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。変形例5は、変形例4の構成において、基板10を、スパッタリングユニット対の並び方向に沿った矢印E方向に一定速度で揺動移動させる構成となっている。これにより、変形例4よりもさらに膜厚の均一化を図ることができる。
【0041】
図12は、本実施例の変形例6の構成を説明する模式図である。変形例6において実施例1と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。変形例6においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。変形例6は、変形例5とは逆に、変形例4の構成において、カソードユニット4を基板10の被成膜面11と平行に矢印F方向に一定速度で揺動移動させる構成となっている。カソードユニット4は、変形例3と同様、下方に車輪60が設けられ、チャンバ21の底面に敷設されたレール61上を被成膜面11と平行な矢印F方向に移動可能に構成されている。これにより、変形例4よりもさらに膜厚の均一化を図ることができる。
【0042】
図13は、本実施例の変形例7の構成を説明する模式図である。変形例7において実施例1と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。変形例7においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。変形例7は、いわゆるカルーセル型スパッタリング装置である。すなわち、回転ドラム型の基板ホルダ7が、複数の基板10をそれぞれの被成膜面11が基板ホルダ7の回転軸を中心とする径方向に向くように支持し、その外周を囲むように複数のカソードユニット401、402、403が対向配置されている。各カソードユニット401は、それぞれのスパッタリングユニットにおける上記仮想直線L1、L3が基板ホルダ7の回転中心と交わる方向に延びるように構成される。成膜処理中、基板ホルダ7は矢印G方向に一定速度で回転する。特に小型基板の成膜処理において、省スペースで一度に大量の基板を高い精度で均一に成膜することが可能となる。
【0043】
(実施例2)
図14は、本発明の実施例2に係るスパッタリング装置1bの構成を示す模式的断面図である。実施例2において実施例1と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。実施例2においてここで特に説明しない事項は実施例1と同様である。
【0044】
実施例2に係るスパッタリング装置1bは、カソードユニット4bを構成するスパッタリングユニット対である第1ユニット14Aと第2ユニット14Bが、実施例1とは異なり非対称に構成されている。すなわち、実施例2におけるカソードユニット4bは、第1ユニット14Aと第2ユニット14Bの成膜特性がそれぞれ異なる構成となっている。実施例2の第1ユニット14Aは、実施例1と同様に、第1仮想直線L1が基板10の被成膜面11に対して垂直に交わるように構成されている。一方、実施例2の第2ユニット14Bは、第3仮想直線L3が基板10の被成膜面11に対して垂直な方向に対して角度を有する方向であって、基板10の搬送方向(矢印B方向)とは逆の方向に傾いた方向に延びるように構成されている。第2ユニット14Bは、第1ユニット14Aに対して、基板10の搬送方向における下流側に位置しており、したがって、第3仮想直線L3は第1仮想直線L1と交わる。第1仮想直線L1と第3仮想直線L3の交点は、基板10の被成膜面11上となるように構成されている。
【0045】
基板10の被成膜面11に凸状の立体形状部15が設けられている場合、立体形状部15の上面(天面)に対しては、第1ユニット14Aによる第1仮想直線L1に沿ったターゲット粒子の飛翔により、垂直方向に成膜を施す。また、立体形状部15の側面に対しては、第2ユニット14Bによる第3仮想直線L3に沿ったターゲット粒子の飛翔により、斜めの方向から成膜を施す。このような制御により、立体形状部15に対して均一な膜厚形成が可能となる。
【0046】
(実施例3)
図15は、本発明の実施例3に係るスパッタリング装置1cの構成を示す模式的断面図である。実施例3において上記実施例と同様の構成については、同じ符号を付し、再度の説明を省略する。実施例3においてここで特に説明しない事項は上記実施例と同様である。
【0047】
実施例1では、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3をそれぞれ基板10の被成膜面11に対して垂直に交わる構成とした。これに対し、実施例3におけるカソードユニット4cは、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3がそれぞれ被成膜面11に垂直な方向に対して傾いた方向に延びるように構成した。より具体的には、第1仮想直線L1は、ターゲット40Aの径方向に延びる仮想直線のうち被成膜面11に垂直な仮想直線に対して、第2の仮想直線L2が延びる側とは反対側に傾いた角度で延びる。また、第3仮想直線L3は、ターゲット40Bの径方向に延びる仮想直線のうち被成膜面11に垂直な仮想直線に対して、第4の仮想直線L4が延びる側とは反対側に傾いた角度で延びる。
【0048】
基板10の被成膜面11の形状や装置構成によっては、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3をそれぞれ基板10の被成膜面11に対して垂直に交わるように延ばすよりも、角度をつけた方が成膜精度を向上させることができる場合も有り得る。そのような場合には、本実施例のように、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3の基板10の被成膜面11に対する角度を適宜設定するようにすればよい。
【0049】
上記各実施例及び各変形例は、可能な限りそれぞれの構成を互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…スパッタリング装置、10…基板、11…被成膜面、21…スパッタリング室、26…排気装置、3…基板ホルダ、4…カソードユニット、40A、40B…ターゲット、41A、41B…磁石ユニット、42A、42B…カソード電極、43A、43B…電源、50…ガス供給源