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特許7097243角形電線管、直線状管路の敷設構造、管路の敷設構造、管路の敷設方法および角形電線管の段積み管路の敷設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】角形電線管、直線状管路の敷設構造、管路の敷設構造、管路の敷設方法および角形電線管の段積み管路の敷設方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/11 20060101AFI20220630BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20220630BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F16L11/11
H02G9/06
H02G1/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018122168
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020002984
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕造
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-369363(JP,A)
【文献】特開2004-248364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/11
H02G 9/06
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部と小径部が交互に形成された角形電線管であって、
長手方向に垂直な断面において、前記大径部は略正方形状で、前記小径部は略円形であり、前記大径部の略正方形状は長辺と短辺の辺の長さの比率が1~1.2:1の範囲に含まれるものであり、
前記角形電線管には、前記角形電線管の長手方向に連続する開口スリットが設けられ、
前記開口スリットは、前記角形電線管の一方の側面を開口端として、前記開口スリットの延長線上であって、前記一方の側面と対向する他方の側面の前記大径部の少なくとも一部にスリットが形成されて、前記他方の側面がスリットの接続部となり、
前記開口スリットは、前記角形電線管の底面に平行な中心線上に形成されるか、または前記底面に平行な中心線上より、上方の所定距離離間した位置に、前記底面に略平行に設けられるか、あるいは、前記角形電線管の前記底面に平行な前記中心線より上部側に、前記一方の側面の前記開口スリットの端部に対して前記他方の側面の前記スリットの接続部が斜め下方に形成されることで、
蓋部を地面に載置された本体部に対して傾けて前記開口スリットを開口する際に、前記角形電線管の一部が前記一方の側面よりも外方に突出することなく開くことが可能であることを特徴とする角形電線管。
【請求項2】
前記開口スリットを開いた際の、前記小径部の開口部の開口寸法は、前記小径部の内径以下で、前記小径部の内径の80%以上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の角形電線管。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の角形電線管を用いた管路の敷設構造であって、
複数個の前記角形電線管が、内部に電線またはケーブルが敷設された状態で、それぞれの前記角形電線管の側面を相互に接触させて、それぞれの前記角形電線管の管路の前記開口スリットの前記開口端が同一方向に向けて配置されることを特徴とする直線状管路の敷設構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の角形電線管を用いた管路の敷設構造であって、
複数個の前記角形電線管が、内部に電線またはケーブルが敷設された状態で、それぞれの前記角形電線管の側面を相互に接触させて、それぞれの前記角形電線管の管路の前記開口スリットの前記開口端が同一方向に向けて配置され、
前記複数個の角形電線管の併設方向の開口スリットの開口端と、他の角形電線管の開口スリットの開口端とが、対向するように配置されることを特徴とする直線状管路の敷設構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4のいずれかに記載の直線状管路の敷設構造と連続する曲り部と直線状部の両者を有することを特徴とする管路の敷設構造。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の角形電線管を用いた管路の敷設構造であって、
前記管路は、曲り部と直線状部を含み、
1本目の前記角形電線管の前記開口スリットの前記開口端を前記曲り部の外方に向けて配置して、当該角形電線管の内部に電線またはケーブルを敷設した後で、1本目の前記角形電線管の曲り部の内側に沿わせて、2本目の前記角形電線管の前記開口スリットの前記開口端を前記曲り部の外方に向けて1本目の前記角形電線管に密接して配置して、2本目の前記角形電線管の内部に電線またはケーブルを敷設することを特徴とする管路の敷設方法。
【請求項7】
前記角形電線管の配置を複数回繰り返して行うことを特徴とする請求項6記載の管路の敷設方法。
【請求項8】
前記角形電線管の配置として1段目を請求項6または請求項7に記載の方法にしたがって段積み後、さらに2段目以降を同様の方法で順次段積みを行うことを特徴とする角形電線管の段積み管路の敷設方法。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載の管路の敷設方法で敷設された複数の角形電線管の管路を、帯状の固定部材により固定することを特徴とする管路の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を保護するための角形電線管、これを用いた直線状管路の敷設構造および管路の敷設構造ならびに管路の敷設方法および角形電線管の段積み管路の敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、土木建築現場で用いられる地中埋設用の電線保護管として、断面が円形の丸形の電線管が提案されている。電線等を敷設する際に、電線等は電線管に挿通される。電線管は管状であるため、このような管状の部材に電線を挿通するためには、電線を端部から順次送り込む必要があるが、この作業は必ずしも容易ではなかった。
【0003】
これに対し、電線管の一部に、長手方向に沿ってスリットを形成して開口部を形成し、この開口部から電線を挿入する方法がある。この場合には、電線を長手方向に送り込む必要がないため作業性が良い。
【0004】
このような電線管としては、例えば、管状体の長手方向に沿って管軸と平行に、切欠きを形成してなる割りと切欠きを形成し、さらに割りと切欠きを結ぶ直線が、電線管の中心からオフセット(所定距離ずれて)形成された管状体が提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1の電線管は、ケーブルを収納した後に割りを閉じる際には、切断した断面の長い円弧の方が、短い円弧の方よりも撓み易いため、その結果、割りの開口縁部同志を容易に重ね合わせることができ、割り部の隙間を無くすことが可能である。
【0006】
また、長手方向に山谷が連続し、山部の形状が略四角形状の角形電線管であって、電線管に長手方向に割り部を2個所設けて、2つの独立した分割体を形成して、これらを重ね合わせて使用することが可能な電線管が提案されている(特許文献2)。
【0007】
特許文献2の電線管は、内部に電線やケーブルを載置した後、割られた分割体同志が組み合わせられる。この状態で、略C字形状の保持具によって、分割体同士を固定することが可能である。
【0008】
また、波付電線管の断面の一方の位置にヒンジ部が設けられ、他方の位置に切り割部が設けられ、外側から電線に被冠して使用する保護管と、この保護管に被冠して長手方向に延設させる電線管とこれに用いられる継手が提案されている(特許文献3)。
【0009】
特許文献3の電線管は、ヒンジ部が上側に配置された状態で、地面に載置したケーブルを上方から挟み込んで収納することが可能である。
【0010】
また、開口部を有し、断面の略円弧状の2つのシェルがヒンジ部を介して対向して配置され、2つのシェルの一方が拡径されながら、他方のシェルの最大径を過ぎた後に縮径されて、他方のシェルを一方のシェルの内部に収納可能な管状のケーブル保護管が提案されている(特許文献4)。
【0011】
特許文献4では、外部シェルに内部シェルを被せる際に、直径の大きな内部シェルを縮径して、直径の小さな外部シェルの内部に挿入することで、嵌合後の内部シェルの復径時の弾性反発力で強固な嵌合構造を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-369363号公報
【文献】特開2004-248364号公報
【文献】特開2006-141099号公報
【文献】特表2009-542180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1の電線管は、断面が円形であるため、電線管に電線を挿入するために割りを開口する際に、電線管の両側に空間を必要とする。このため、複数の電線管を併設する場合には、断面が円形だと、隙間を明けずに電線管同士を相互に接触させて整列配置することが困難であり、狭いスペースに併設するには問題があった。
【0014】
また、特許文献1の電線管は、切欠き部が地面近傍に配置される構造であり、小さい方の円弧を切欠き部の中心から横方向に開くことで、ケーブルが電線保護管に挿入されるため、地面に砂利などが存在すると、電線管を開くことができない可能性がある。また、電線管を開く際に、短い円弧側を開こうとしても、その反動で電線管が設置面に対して回転して電線管がさらに位置ずれすることがある。このために、長い円弧と短い円弧の両者を押えて開口しなければならないため、作業性が悪い。また、長い円弧と短い円弧の両者を押えて拡開する際に、拡開時に電線管の管幅が広がり、2つの電線管を隣接して配置することが困難である。また、地面の近傍に切欠きがあるために、電線管を大きく開口することが困難で、電線管に線径の大きな電線やケーブルを複数本挿入することができない。
【0015】
また、特許文献2のように、2つの分割体を使用する場合には、分割体の長手方向の両端を揃える必要があり、施工が面倒である。また、同様に、運搬時にも2つの分割体の両端を相互に重ね合わせて運搬する必要がある。さらに、振動などにより上下の分割体に位置ずれが生じたり、風などにより相互に重ね合わせた分割体が吹き飛ばされることを防止し、電線管の内部に雨が浸入しないようにするため、上下の2つの分割体を専用の固定具で固定する必要があり、施工に手間がかかる。
【0016】
また、2つの分割体を閉じて固定する固定具は、取り付けた際、電線管の外周を周方向に180°を越えて配置される。また、この電線管及び固定具は、断面形状が略円形のため、電線管を積み重ねたり、電線管同士を対向して配置して使用することはできない。
【0017】
また、特許文献3の電線管は、ヒンジ部を設けているため、電線管の開閉がしやすく、容易にケーブルをケーブル保護管に収納することができるが、この電線管は、ケーブル収納時に、ヒンジ部の両側に形成された左右両側の波付き部を開口しなければならない。このため、1本の電線管の敷設後、さらにもう1本の電線管に電線を配置した後に、開口部を閉じた後に、例えば持ち上げて移動しないと電線管を2列や複数例に並べて配置することができない。また、実際には、小径の電線管に1本の電線を挿入することは可能と思われるが、開口部を下側に向けて太径の電線を開口部から挟み込むことは、現実的には不可能である。
【0018】
また、特許文献4の電線管は、電線管を開口しやすくするために、断面円形の電線管に開口スリットが設けられて、さらに開口部の対向位置にヒンジ部を設けられるため、収納する電線がヒンジ部を跨いでヒンジ部の両側に電線が載置されてしまうおそれがある。このため、電線管の内部に載置された電線によって、電線管が重くなり、電線管の開口部を閉じるのが困難となる。
【0019】
本発明は、従来の断面が円形の土木建築現場で用いられるスリット入り電線管における複数の電線管を隣接配置することができずに、スリット開口時の電線管の安定性や作業性が悪いという問題を解決すべくなされたもので、内部へケーブルを挿入する際の開閉が容易で、運搬性や作業性に優れ、複数電線管の隣接配置と複数段積みが可能な角形電線管、これを用いた直線状管路の敷設構造および管路の敷設構造ならびに管路の敷設方法および角形電線管の段積み管路の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述した目的を達するために第1の発明は、大径部と小径部が交互に形成された角形電線管であって、長手方向に垂直な断面において、前記大径部は略正方形状で、前記小径部は略円形であり、前記大径部の略正方形状は長辺と短辺の辺の長さの比率が1~1.2:1の範囲に含まれるものであり、前記角形電線管には、前記角形電線管の長手方向に連続する開口スリットが設けられ、前記開口スリットは、前記角形電線管の一方の側面を開口端として、前記開口スリットの延長線上であって、前記一方の側面と対向する他方の側面の前記大径部の少なくとも一部にスリットが形成されて、前記他方の側面がスリットの接続部となり、前記開口スリットは、前記角形電線管の底面に平行な中心線上に形成されるか、または前記底面に平行な中心線上より、上方の所定距離離間した位置に、前記底面に略平行に設けられるか、あるいは、前記角形電線管の前記底面に平行な前記中心線より上部側に、前記一方の側面の前記開口スリットの端部に対して前記他方の側面の前記スリットの接続部が斜め下方に形成されることで、蓋部を地面に載置された本体部に対して傾けて前記開口スリットを開口する際に、前記角形電線管の一部が前記一方の側面よりも外方に突出することなく開くことが可能であることを特徴とする角形電線管である。
【0023】
前記開口スリットを開いた際の、前記小径部の開口部の開口寸法は、前記小径部の直径以下で、前記小径部の直径の80%以上に形成されてもよい。
【0027】
第1の発明によれば、電線管の大径部が角形形状をしているため、断面円形や螺旋形の波付け電線管と較べて製品を安定して配置しやすい。また、角形の大径部は、断面円形の小径部からの突出量が大きいために、電線の保護効果も大きい。さらに、角形電線管の素管は直管状に所定長さで押出しされるため、断面円形の電線管に較べて蛇行しにくく、電線管を開口する際にも、電線管の断面が円形でなく、開口部を所定位置に設けることができるために転がり難い。
【0028】
また、開口スリットを設けた構造にすることで、円断面形状を有する小径部は開口スリットにより上下方向の下側小径部と上側小径部の2つに分割される。この際、角形電線管の開口スリットより上側を拡開するだけで、下部側の円弧状の小径部上に電線やケーブルを上方から載置することができる。また、電線やケーブルを小径部上に載置した後、拡開した角形電線管の上側部分を下側部分に接触するように閉じるだけで、角形電線管へ容易に収納することができる。
【0029】
また、角形電線管の大径部において、地面に対する設置の安定性を十分確保していることから、電線やケーブルを下側の小径部上に安定して載置することができる。また、この際、電線やケーブルを斜めに下側小径部に載置したとしても、大径部の底面が地面に対して安定して設置していることから、角形電線管が動くことがない。また、円断面の丸形コルゲート電線管と異なり、角形電線管の場合には、小径部に対する大径部の突出量が大きく、電線やケーブルを収納した後、角形電線管の上側部分を下側部分に対して閉じるだけで、電線やケーブルを収納することが可能なため、開口部の固定具などは必要ではない。
【0030】
また、2本の角形電線管を、開口スリットの開口端部を相互に対向させて接触させて密着配置しても、角形電線管を開口する時に角形電線管の上側部分の開口部側を相互に接触させて配置した部分が、開口端部と反対側に逃げる方向に移動し、角形電線管の一部が開口側の側面よりも外方に突出することなく開くことが可能である。このため、2本の角形電線管を、電線を敷設する前から密着配置することが可能である。そのため、地上の狭いスペースでも安定した敷設が可能である。
【0031】
特に、開口スリットが、角形電線管の底面に平行な中心線よりも上方に所定距離離間した位置であって、底面に略平行に設けられれば、下部側の収納空間を大きくすることできる。また、下方の電線管の重量を相対的に大きくすることができ、内部に電線を挿入する際に、電線管をより安定させることができる。
【0032】
また、角形電線管の開口スリットの上部を開口する時に、開口時における、大径部側面からの上部側の蓋部の突出量を少なくすることができる。そのため、角形電線管に電線を敷設する際の、作業性が向上するとともに、駅構内の線路脇などの設置スペースの少ない場所にも角形電線管を設置することが可能になる。
【0033】
また、このような効果は、開口スリット(スリット開口端)が、角形電線管の底面に平行な中心線上の一方の側面の開口端から底面に対して斜めに下方に向けて形成しても同様に得ることができる。
【0034】
また、このように開口スリットを、底面に平行な中心線よりも上方に配置する際において、開口スリットを開いた際の、小径部の開口寸法が、小径部の内径以下で、小径部の内径の80%以上となるようにすることで、電線を挿入する際の開口幅を確保することができる。このため、電線管への電線の挿入作業が容易である。
【0036】
第2の発明は、第1の発明にかかる角形電線管を用いた管路の敷設構造であって、複数個の前記角形電線管が、内部に電線またはケーブルが敷設された状態で、それぞれの前記角形電線管の側面を相互に接触させて、それぞれの前記角形電線管の管路の前記開口スリットの前記開口端が同一方向に向けて配置されることを特徴とする直線状管路の敷設構造である。
【0037】
第2の発明によれば、複数本の角形電線管を併設しても、角形電線管を開口する際に、開口側の端面が、開口端部と反対側に逃げる方向に移動することから、開口端側の側面より突出することがない。このため、順次開口部を同一方向に向けて敷設すれば、複数本の角形電線管を互いに接触させて配置しても、電線等の挿入作業が容易である。このため、地上の狭いスペースでも安定した敷設が可能である。
【0038】
第3の発明は、第1の発明にかかる角形電線管を用いた管路の敷設構造であって、複数個の前記角形電線管が、内部に電線またはケーブルが敷設された状態で、それぞれの前記角形電線管の側面を相互に接触させて、それぞれの前記角形電線管の管路の前記開口スリットの前記開口端が同一方向に向けて配置され、前記複数個の角形電線管の併設方向の開口スリットの開口端と他の角形電線管の開口スリットの開口端とが、対向するように配置されることを特徴とする直線状管路の敷設構造である。
【0039】
第3の発明によれば、第2の発明と同様の効果を得ることができるとともに、最後に配置する角形電線管を、既設の角形電線管に対して、開口スリットが対向するように配置しても、当該角形電線管を開口する際に、開口側の端面が、開口端部と反対側に逃げる方向に移動する。このため、開口側の端面が、開口端側の側面より突出することがないので、複数本の角形電線管を互いに接触させて配置することができる。
【0040】
第4の発明は、第2の発明にかかる直線状管路の敷設構造と連続する曲り部を有することを特徴とする管路の敷設構造である。
【0041】
第4の発明によれば、直線状部と曲り部とが連続する管路を得ることができる。
【0042】
第5の発明は、第1の発明にかかる角形電線管を用いた管路の敷設方法であって、前記管路は、曲り部と直線状部を含み、1本目の前記角形電線管の前記開口スリットの前記開口端を前記曲り部の外方に向けて配置して、当該角形電線管の内部に電線またはケーブルを敷設した後で、1本目の前記角形電線管の曲り部の内側に沿わせて、2本目の前記角形電線管の前記開口スリットの前記開口端を前記曲り部の外方に向けて1本目の前記角形電線管に密接して配置して、2本目の前記角形電線管の内部に電線またはケーブルを敷設することを特徴とする管路の敷設方法である。
【0043】
前記角形電線管の配置を複数回繰り返して行ってもよい。さらに、前記角形電線管の配置として1段目を上記の方法にしたがって段積み後、さらに2段目以降を同様の方法で順次段積みを行ってもよい。
【0044】
上記の管路の敷設方法で敷設された複数の角形電線管の管路を、帯状の固定部材により固定してもよい。
【0045】
第5の発明によれば、容易に、複数の角形電線管を併設して配置することができる。例えば、2本の角形電線管を密着配置した場合において、直線状部と曲り部を含む敷設構造を考慮する。この場合には、電線やケーブルを配置するために、曲り部の開口スリットを開こうとすると、開口スリット拡開時に電線管が配置された曲率と反対方向に電線管の曲率半径が大きくなる方向に変化するような曲げ戻しの反力が働く。この際、相互に電線管の開口部を対向させて配置すると、開口端を曲げの曲率半径の中心方向に向けて配置した側の電線管の反力が大きくなる。
【0046】
また、2本の角形電線管の曲り部を略平行に安定して配置するためには、それぞれの角形電線管の曲り部における開口スリットを、曲り部の外側に向けて配置する必要がある。その際に、2本の角形電線管の開口スリットがともに、曲り部の外方に向けて配置されて両者を密着配置すると、角形電線管の開口時に、一方の角形電線管の上部が側面位置よりも曲り部の内側にはみ出す。このため、これらの2本の角形電線管を密着した状態であっても、開口時には、上部のはみ出す分だけ両者が離間する。
【0047】
これに対し、曲り部と直線状部を含むように2本の角形電線管を敷設する場合において、第5の発明では、同時に2本の角形電線管を配置するのではなく、1本目の角形電線管を、開口部の開口端部を曲り部の外方に向けて配置して、その電線管の内部に電線やケーブルを敷設した後で、2本目の角形電線管を1本目の角形電線管の曲り部の内側に合わせて敷設する。このようにすることで、2本の角形電線管を相互に接触させて敷設することができる。
【0048】
また、このような作業をさらにくり返し、順に曲り部の内側に3本目、4本目の角形電線管を併設することも可能である。
【0049】
さらに、曲り部を含む複数の角形電線管を敷設した後、複数の角形電線管をインシュロック(登録商標)などの固定部材で固定することで、配置した角形電線管を相互に固定することができる。
【0050】
なお、曲り部の角形電線管の最内層の曲率半径は、内部に収納する電線ケーブルの最少曲げ半径および角形電線管の最少曲げ半径より大きい必要がある。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、内部へケーブルを挿入する際の開閉が容易で、運搬性や作業性に優れ、隣接配置と複数段積みが可能な角形電線管、これを用いた直線状管路の敷設構造および管路の敷設構造ならびに管路の敷設方法および角形電線管の段積み管路の敷設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】角形電線管1を示す正面図。
図2】角形電線管1を示す平面図。
図3】(a)は、角形電線管1を示す左側面図,(b)は、角形電線管1を示す右側面図。
図4図1のA-A線断面図。
図5図2のB-B線断面図。
図6】角形電線管1を開いた状態を示す側面図。
図7】(a)、(b)は、角形電線管1の製造工程を示す面図。
図8】(a)~(c)は、角形電線管1の敷設工程を示す面図。
図9】(a)~(c)は、角形電線管1の敷設工程を示す面図。
図10】(a)~(c)は、角形電線管1の敷設工程を示す面図。
図11】角形電線管40を示す図で、(a)は閉じた状態を示す図、(b)は開いた状態を示す図。
図12】角形電線管40を示す図で、(a)は閉じた状態を示す図、(b)は開いた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態にかかる角形電線管1について説明する。図1は、角形電線管1を示す正面図であり、図2は、角形電線管1を示す平面図であり、図3(a)は、角形電線管1を示す左側面図で,図3(b)は角形電線管1を示す右側面図である。また、図4は、図1のA-A線断面図であり、図5は、図2のB-B線断面図である。なお、角形電線管1を示す右側面図は、左側面図と対称に表れる。また、角形電線管1の底面図および背面図は、平面図と同一である。
【0054】
角形電線管1は、大径部3と小径部5が長手方向に交互に形成される。長手方向に垂直な断面において、大径部3は略矩形であり、ほとんどの場合が正方形状で、小径部5は略円形である。なお、大径部3の径(1辺の長さ)は、小径部5における外径よりも大きい。このように、略正方形状の大径部3を設けることで、角形電線管1を積み上げた際に、角形電線管1を安定して配列することができる。
【0055】
角形電線管1には、長手方向に連続する開口スリット7が設けられる。図3に示すように、開口スリット7は、角形電線管1の一方の側面17aが開口端となる。また、開口スリット7の延長線上であって、側面17aと対向する他方の側面17bの小径部5には、スリット11が形成される。スリット11は、角形電線管1の内側から、大径部3の側面17bの厚み分を残して、大径部3の一部と小径部5を切断するように形成される。すなわち、スリット11で切断されていない、側面17bにおける大径部3の肉厚部分が、スリットの接続部9となる。
【0056】
ここで、角形電線管1の長手方向に垂直な断面において、開口スリット7は、角形電線管1の底面13に平行な中心線M上、またはそれより上部側(上面15側)に形成される。図示した例では、開口スリット7は、角形電線管1の底面13に平行な中心線Mよりも上方に所定距離離間した位置に、底面13に略平行に設けられる。
【0057】
ここで、開口スリット7とスリット11とを結ぶ線よりも上面15側を蓋部21とし、開口スリット7とスリット11とを結ぶ線よりも底面13側を本体部19とする。蓋部21は、スリットの接続部9を起点として、本体部19に対して開閉可能である。
【0058】
図6は、角形電線管1を開いた状態を示す図である。前述したように、角形電線管1の長手方向に垂直な断面において、開口スリット7の略延長線上にスリット11およびスリットの接続部9が配置される。また、開口スリット7は、スリットの接続部9を通る底面13に平行な直線と略同一直線状に配置される。
【0059】
ここで、図中の線Eは、蓋部21を開口スリット7から開いた際の、最外周を通る軌跡を示す。開口スリット7の開口端が、スリットの接続部9を通る底面13に平行な直線よりも下方に来ないようにすることで、開口スリット7から蓋部21を開口する際に、角形電線管1の一部が開口端側の側面17aよりも外方(図中右側)に突出することなく開くことが可能である。このため、仮に側面17a側に、他の角形電線管や他の構造体が接触していた場合でも、蓋部21を容易に開くことが可能である。
【0060】
なお、開口スリット7から蓋部21を開いた際の、小径部5の開口寸法(図中D)は、小径部5の内径(図中C)以下であり、小径部5の内径(図中C)の80%以上に形成されることが望ましい。小径部5の開口寸法が小さくなりすぎると、本体部19の内部に電線等を挿入する作業が困難となり、太い電線等を挿入することができなくなる。
【0062】
次に、角形電線管1の製造方法について説明する。図7(a)は、角形電線管10を示す図である。角形電線管10は、例えば、ブロー成形によって形成される。角形電線管10は、大径部3と小径部5とが長手方向に交互に形成される。この際、角形電線管1は所定長さに形成されて巻き取れてもよいし、長手方向に直線状に押出されてもよく、前記所定長さのいずれかの長尺体を切断したものであっても良い。
【0065】
次に、図7)、図7)に示すように、両端が切断された角形電線管10の側面17aから、対向する側面17b側に向けて切断刃を挿入し、開口スリットを形成する(図中H)。この際、側面17a側から切断刃を挿入して開口スリット7を形成すると同時に、大径部3の側面17bにおける肉厚を除いて、側面17b側の大径部3の一部と小径部5とを切断してスリット11およびスリットの接続部9を形成する。以上により、長手方向に開口スリット7およびスリット11が形成された角形電線管1が形成される。
【0066】
次に、角形電線管1の敷設方法について説明する。図8(a)は、角形電線管1aを用いた、管路の敷設構造を示す図である。なお、以下に示す角形電線管1aは、前述した角形電線管1と同一の構造である。
【0067】
図8(a)に示すように、まず、1本目の角形電線管1aを敷設する。なお、図示した例では、角形電線管1aの管路は、直線状部27と曲り部29とを有するが、曲り部29は、必ずしも必要ではない。以下の説明では、曲り部29が設けられない管路を、直線状管路とする。すなわち、図示した管路の敷設構造では、直線状管路の敷設構造と連続する曲り部29を有する。1本目の角形電線管1aは、開口スリット7の開口端を曲り部29の曲げ外方に向けて配置される。
【0068】
次に、角形電線管1aの開口スリット7から蓋部21を開く。図8(b)は、図8(a)のI-I線断面において、蓋部21を開いた状態を示す図である。なお、図8(b)の矢印Jは、曲り部29の曲げ外側であり、矢印Kは、曲り部29の曲げ内側であり、以下、特に説明をしない限り同様とする。すなわち、蓋部21は、曲げの外方側に配置された開口スリット7から、曲げ内方側に向けて開かれる。
【0069】
次に、角形電線管1aの内部に、電線31(またはケーブル)を敷設する。電線31は、本体部19の上方から、蓋部21を開いて開口する小径部5の内部に配置される。なお、この際、本体部19は蓋部21に対して大きいため、その重量によって位置や姿勢が安定する。また、蓋部21による小径部5の上部の開口幅は、小径部5の内径に対して80%以上であるため、電線31を容易に内部に挿入することができる。
【0070】
電線31を挿入後、図8(c)に示すように、蓋部21を閉じることで、内部に電線31が敷設された管路が形成される。
【0071】
次に、図9(a)に示すように、1本目の角形電線管1aの曲り部29の内側に沿わせて、2本目の角形電線管1bを、1本目の角形電線管1aに密接して配置する。なお、角形電線管1bは、角形電線管1等と同じ構造である。この際、角形電線管1bの開口スリット7の開口端を、曲り部29の外方に向けて配置する。すなわち、複数個の角形電線管1a、1bは、それぞれの管路の開口スリット7の開口端が同一方向に向くように配置される。
【0072】
図9(b)は、図9(a)のL-L線断面において、角形電線管1bの蓋部21を開いた状態を示す図である。前述した工程と同様に、角形電線管1bの蓋部21を開き、上方から2本目の角形電線管1bの内部に電線31(またはケーブル)を挿入する。なお、角形電線管1bの蓋部21を開く際に、蓋部21は、角形電線管1bの開口端側の側面17a側にはみ出すことがない。このため、角形電線管1bの側面17aを角形電線管1bの側面17bに接触させた状態で、角形電線管1bの蓋部21を開くことができる。
【0073】
次に、角形電線管1bの蓋部21を閉じる。このようにすることで、複数個の角形電線管1a、1bが、内部に電線31(またはケーブル)が敷設された状態で、それぞれの角形電線管1a、1bの側面17b、17aを相互に接触させて配置された、管路の敷設構造33を得ることができる。この際、それぞれの角形電線管1a、1bの管路の開口スリット7の開口端が同一方向に向けて配置される。以上の工程を繰り返し、角形電線管の配置を複数回繰り返して行うことで、任意の本数の角形電線管同士をその側面を相互に接触させて併設することができる。また、1段目を当該方法にしたがって段積み後、さらに2段目以降を同様の方法で順次段積みし、角形電線管の段積み管路としてもよい。
【0074】
なお、曲り部29を有しない直線状管路の敷設構造の場合には、必ずしも全ての角形電線管の開口スリット7の開口端の向きを全て同一方向とする必要はない。図10(a)は、管路の敷設構造33aを示す図である。
【0075】
図示した例では、角形電線管1a、1b、1cが順に敷設される。このような順で敷設することで、角形電線管1bを敷設して、蓋部21を開く際には、角形電線管1aと干渉することがなく、角形電線管1cを敷設して、蓋部21を開く際には、角形電線管1bと干渉することがない。この後、さらに、角形電線管1cの横(図中右側)に、角形電線管を併設する場合には、同様に、最後に敷設する角形電線管の蓋部21を開く際に、当該角形電線管と接触して配置されている1本前に敷設した角形電線管1cと干渉することがない。
【0076】
一方、既設の併設された複数の角形電線管1a、1b、1cの内、併設方向の一方の端部側(図中左側)における最初に敷設した角形電線管1aと接触するように、さらに他の角形電線管1dを併設する際には、角形電線管1dの開口スリット7の開口端と、併設される角形電線管1aの開口スリット7の開口端とが対向するように配置される。
【0077】
この場合には、角形電線管1dの蓋部21は、開く際に角形電線管1dの開口端側の側面17a側にはみ出すことがない。このため、角形電線管1dの側面17aを角形電線管1aの側面17aに接触させた状態で、角形電線管1dの蓋部21を開くことができる。さらに、図10(a)のように、4本の角形電線管が併設された状態の敷設構造を示すが、断面方向の最外周の両側面には、開口部が配置されずに開口スリットの接続部が配置されることから、外周部全体として閉塞された状態で配置することが可能になるため、角形電線管の内部に埃やゴミ等が入りにくい。
【0078】
図10(b)は、角形電線管1dの内部に電線31を敷設した状態の管路の敷設構造33aを示す図である。このように、複数の角形電線管が併設されている状態で、例えば、角形電線管1c側にさらに角形電線管を追加する場合には、当該角形電線管の開口スリット7の開口端を、併設される角形電線管1cの開口スリット7の開口端と同一方向に向けて配置すればよい。同様に、複数の角形電線管が併設されている状態で、例えば、角形電線管1d側にさらに角形電線管を追加する場合には、当該角形電線管の開口スリット7の開口端を、併設される角形電線管1dの開口スリット7の開口端と同一方向に向けて配置すればよい。
【0079】
なお、図10(c)に示すように、複数の角形電線管を併設した状態で、複数の角形電線管を帯状の固定部材35により固定してもよい。固定部材35は、例えば、インシュロック(登録商標)などの結束バンドを使用することができる。図10(c)は、大径部3を固定部材35で固定した場合を示すが、大径部3の代わりに小径部5を固定しても良く、大径部3または小径部5のいずれを固定しても良い。
【0080】
以上、本実施の形態によれば、角形電線管1は、大径部3が略正方形状の電線管であるため、角形電線管1を多条多段に積み重ねることができ、断面円形や螺旋形の波付け電線管に較べて角形電線管は容易に配置することができる。
【0081】
また、角形電線管1は、地面等に設置した際に、転がりにくく安定するため、例えば蓋部21を開いて内部に電線31を挿入する作業時にも、位置ずれ等が起こりにくい。特に、開口スリット7が、角形電線管1の底面13に平行な中心線Mよりも上方に所定距離離間した位置であって、底面13に略平行に設けられるため、蓋部21に対して本体部19の重量が重くなり、より安定して配置することができる。
【0082】
また、中心線Mに対して、開口スリット7、スリット11およびスリットの接続部9を上方にオフセットして配置した場合でも、本体部19の上方の小径部5の開口幅が、小径部5の内径の80%以上となるように、開口スリット7等を配置することで、内部への電線31の挿入作業の妨げとなることがない。
【0083】
また、開口スリット7、スリット11およびスリットの接続部9は、角形電線管1の底面13に平行に設けられるため、開口スリット7を開口する際に、蓋部21が、角形電線管1の開口端側の側面17aよりも外方に突出することがない。このため、角形電線管1の開口端側に他の角形電線管等が併設する場合でも、蓋部21を開いて、内部に電線31を挿入することができる。
【0084】
例えば、既設の1本目の角形電線管1aの側面17b側に接触するように、2本目の角形電線管1bを開口スリット7の開口端が同一方向に向くように配置することで、角形電線管1bの内部に電線31を挿入する際、角形電線管1bの蓋部21が角形電線管1aと干渉することなく作業を行うことができる。また、直線状管路の敷設構造の場合には、角形電線管1aの側面17a側に接触するように、他の角形電線管1dを開口スリット7の開口端が互いに対向するように配置することで、角形電線管1dの内部に電線31を挿入する際、角形電線管1dの蓋部21が角形電線管1aと干渉することなく作業を行うことができる。
【0085】
また、直線状部27と曲り部29を含む敷設構造の場合には、曲り部29の開口スリット7を開こうとすると、開口方向と反対方向に反力が働くが、曲り部29における開口スリット7の配置を、曲り部29の外側に向けて配置することで、容易に開口スリット7を開くことができる。なお、複数本の角形電線管1を、それぞれの開口スリット7がともに曲り部29の外方に向けて密着配置すると、一方の角形電線管の開口時に、蓋部21が他方の角形電線管側に突出する。このため、2本の角形電線管を所定距離離間して配置する必要がある。しかし、同時に2本の角形電線管を配置するのではなく、1本目の角形電線管1aを、開口スリット7の開口端部を曲り部29の外方に向けて配置して、内部に電線31を敷設した後で、2本目の角形電線管1bを角形電線管1aの曲り部29の内側の曲率に合わせて併設することで、2本の角形電線管1a、1bを相互に接触させて敷設することができる。これに対して、大径部、小径部が共に円形断面のスリットを形成したコルゲート管の場合には、複数本のコルゲート管を併設配置する場合に、電線またはケーブルの挿入時に電線管のスリットを開口するため、コルゲート管の開口時の開口代に相当する分だけ、相互に間隔を開けてコルゲート管を配置する必要がある。
【0086】
また、複数の角形電線管1を併設した場合には、固定部材35で併設された角形電線管1の全体を固定することで、より安定した管路の敷設構造を得ることができる。
【0087】
次に、角形電線管について、他の実施形態について説明する。図11(a)は、角形電線管40を示す図である。なお、以下の説明において、角形電線管1と同一の機能を奏する構成については、図1図10等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0088】
角形電線管40は、角形電線管1とほぼ同様の構成であるが、開口スリット7、スリット11およびスリットの接続部9の配置が異なる。角形電線管40は、開口スリット7、スリット11およびスリットの接続部9が、底面13に平行な中心線M上に一直線上に配置される。すなわち、蓋部21と本体部19とが同一のサイズで対称に形成される。
【0089】
図11(b)は、角形電線管40の蓋部21を開いた状態を示す図である。このように、開口スリット7、スリット11およびスリットの接続部9を、底面13に平行な中心線M上に配置しても、蓋部21を開く際に、蓋部21の一部が、側面17aからはみ出すことがない。
【0090】
また、図12(a)は、角形電線管40aを示す図である。角形電線管40aは、開口スリット7は、角形電線管40aの底面13に平行な中心線M上の一方の側面17bから底面13に対して斜め上方に向けて形成される。すなわち、スリットの接続部9が、角形電線管40aの底面13に平行な中心線M上に配置され、スリット11および開口スリット7が、一直線上に斜め上方(上面15側)に向けて配置される。
【0091】
なお、この場合でも、本体部19の上方の小径部5の開口幅が、小径部5の内径の80%以上となるようにスリット11および開口スリット7の傾斜を設定することが望ましい。例えば、スリット11および開口スリット7の形成角度は、底面13に平行な方向に対して、おおよそ、0°を超えて最大30°の範囲の直線上に形成することが望ましい。
【0092】
図12(b)は、角形電線管40aの蓋部21を開いた状態を示す図である。このように、開口スリット7、スリット11およびスリットの接続部9を、底面13に平行な中心線M上に配置しても、蓋部21を開く際に、蓋部21の一部が、側面17aからはみ出すことがない。
【0093】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0094】
1、1a、1b、1c、1d、10、40、40a、40b………角形電線管
3………大径部
5………小径部
7………開口スリット
9………スリットの接続部
11………スリット
13………底面
15………上面
17a、17b………側面
19………本体部
21………蓋部
27………直線状部
29………曲り部
31………電線
33、33a………管路の敷設構造
35………固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12