(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】電力ケーブル終端接続部及び電力ケーブル終端接続部の形成方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/02 20060101AFI20220630BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G1/14
(21)【出願番号】P 2018187107
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】平野 順士
(72)【発明者】
【氏名】菊崎 正太
(72)【発明者】
【氏名】関野 基一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-5617(JP,A)
【文献】特開平11-146551(JP,A)
【文献】特開2015-142486(JP,A)
【文献】実開昭53-32392(JP,U)
【文献】特表2010-539867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/65236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00-15/196
H02G 1/14- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの端末の絶縁体表面に端末本体が装着されて構成される電力ケーブル終端接続部において、
前記端末本体が、電界緩和層と、その外側に配置される本体カバーとに分離されており、
前記電界緩和層は、高誘電材料で形成されたテープを前記電力ケーブルの絶縁体の表面上に巻回させて形成されており、
前記本体カバーは、電気絶縁性を有しており、その先端の一部で、前記電力ケーブルの絶縁体表面に、微粒子からなる潤滑剤を介して密着されていることを特徴とする電力ケーブル終端接続部。
【請求項2】
前記潤滑剤を構成する微粒子は、シリコーン樹脂又は四フッ化エチレン樹脂の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル終端接続部。
【請求項3】
前記潤滑剤を構成する微粒子は、平均粒径が0.8~2μmとされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル終端接続部。
【請求項4】
段剥ぎされた電力ケーブルの絶縁体の表面上に、高誘電材料で形成されたテープを巻回させて電界緩和層を形成する電界緩和層形成工程と、
前記電力ケーブルの先端側から、先端の一部に微粒子からなる潤滑剤が塗布された、電気絶縁性を有する本体カバーを前記電力ケーブルに挿入する本体カバー挿入工程と、
前記本体カバーを前記電界緩和層の外側に配置して、前記電力ケーブルの端末の絶縁体表面に端末本体が装着された状態に形成する端末本体形成工程と、
を備えることを特徴とする電力ケーブル終端接続部の形成方法。
【請求項5】
前記本体カバーの先端の一部には、予め前記微粒子からなる潤滑剤が塗布されていることを特徴とする請求項4に記載の電力ケーブル終端接続部の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル終端接続部及び電力ケーブル終端接続部の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブル終端接続部には種々のタイプがあるが、例えば
図7(A)に示すように、電力ケーブル先端での電界集中を緩和させるため、電力ケーブル101の絶縁体101Aに、絶縁層102Aと半導電層102Bとを備えるゴムストレスコーン等の端末本体102が装着されたタイプの電力ケーブル終端接続部100がある。
【0003】
すなわち、このタイプの電力ケーブル終端接続部100では、段剥ぎされた電力ケーブル101の絶縁体101Aの所定の位置に端末本体102が装着され、電力ケーブル101の先端に露出している導体101Bに端子103が取り付けられる。
そして、電力ケーブル101の端末本体102よりも先端側の部分に絶縁テープ104が巻回されて電力ケーブル終端接続部100が形成される。
【0004】
そして、電力ケーブル終端接続部100の形成工程では、
図7(B)に示すように、端末本体102が、段剥ぎされた電力ケーブル101に、その先端側(すなわち露出した導体101B側)から挿入される。
その際、端末本体102を電力ケーブル101の絶縁体101Aに密着させるために、端末本体102の内径は電力ケーブル101の絶縁体101Aの外径よりも小さくなるように形成される場合がある。
【0005】
そのような場合、端末本体102を電力ケーブル101の絶縁体101Aに挿入する際の挿入性を良好にするために、通常、端末本体102の内面102a(
図7(B)参照)に潤滑剤が塗布される。
潤滑剤としては、グリース(例えばシリコーングリース等)やオイルを用いることができる。
また、特許文献1では、潤滑剤としてシリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂の微粒子を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、潤滑剤としてグリースを用いる場合、電力ケーブル終端接続部の作業現場で端末本体102の内面102a等にグリースを塗布されるが、現場でこのような面倒な作業を行うことを避けるために、例えば、端末本体102の内面102aに予めグリースを塗布しておくことが考えられる。
【0008】
しかし、端末本体102の内面102aに予めグリースを塗布すると、シリコーンゴム等で形成された端末本体102がグリースを吸収してしまう場合がある。
そして、グリースが端末本体102に吸収されると、端末本体102を電力ケーブル101に挿入する際の挿入性が悪化する。
【0009】
そのため、端末本体102にグリースを塗布してから時間が経つほどより多くのグリースが端末本体102に吸収される。
そのため、予めグリースを塗布した端末本体102を長期に保管すると、電力ケーブル101への挿入性が損なわれてしまうという問題が生じ得る。
【0010】
また、内面102aにグリースを塗布した端末本体102を電力ケーブル101に挿入すると、端末本体102の内面102aのグリースが電力ケーブル101の絶縁体101Aの表面に付着する。そのため、端末本体102と電力ケーブル101の絶縁体101A表面との間の部分からグリースが失われていき、グリースによる潤滑性が低下していく。
そのため、電力ケーブル101に対する端末本体102の挿入距離を長くしようとしても、途中で挿入が困難になる場合があった。
【0011】
さらに、端末本体102を電力ケーブル101に装着した後、電力ケーブル101の絶縁体101Aの表面上にグリースが残る。そして、電力ケーブル101の絶縁体101Aの表面上にグリースが残っていると、それらに図示しない絶縁テープを巻回して被覆する際に、電力ケーブル101の絶縁体101Aと絶縁テープとの密着性が阻害される。
そのため、端末本体102を電力ケーブル101に装着した後、電力ケーブル101の絶縁体101Aの表面上に残ったグリースを擦ってぬぐい取らなければならず、作業が面倒なものになっていた。
【0012】
一方、特許文献1に記載されているように、潤滑剤としてシリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂の微粒子を用いると、シリコーン樹脂等の微粒子は、端末本体102がシリコーンゴム等で形成されていても吸収されないため、上記のような問題は生じない。
また、電力ケーブル101の絶縁体101Aの表面上に微粒子が残っていても、絶縁テープの巻回は阻害せず、また、電力ケーブル101の絶縁体101Aの表面上に残った微粒子を除去する場合も、グリースのようにぬぐい取る必要はなく払うだけで除去できるため、除去作業を楽に行うことができる。
【0013】
しかし、潤滑剤としてグリースを用いる場合と比較すると、シリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂の微粒子は摩擦係数が大きいため、挿入性はグリースを用いる場合より劣る。
そのため、潤滑剤としてシリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂の微粒子を用いると、端末本体102を電力ケーブル101に挿入して電力ケーブル101の絶縁体101Aに装着する作業を必ずしも容易に行うことができなかった。
【0014】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、端末本体を電力ケーブルに容易に挿入して形成することが可能な電力ケーブル終端接続部及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
電力ケーブルの端末の絶縁体表面に端末本体が装着されて構成される電力ケーブル終端接続部において、
前記端末本体が、電界緩和層と、その外側に配置される本体カバーとに分離されており、
前記電界緩和層は、高誘電材料で形成されたテープを前記電力ケーブルの絶縁体の表面上に巻回させて形成されており、
前記本体カバーは、電気絶縁性を有しており、その先端の一部で、前記電力ケーブルの絶縁体表面に、微粒子からなる潤滑剤を介して密着されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力ケーブル終端接続部において、前記潤滑剤を構成する微粒子は、シリコーン樹脂又は四フッ化エチレン樹脂の微粒子であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電力ケーブル終端接続部において、 前記潤滑剤を構成する微粒子は、平均粒径が0.8~2μmとされていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、電力ケーブル終端接続部の形成方法において、
段剥ぎされた電力ケーブルの絶縁体の表面上に、高誘電材料で形成されたテープを巻回させて電界緩和層を形成する電界緩和層形成工程と、
前記電力ケーブルの先端側から、先端の一部に微粒子からなる潤滑剤が塗布された、電気絶縁性を有する本体カバーを前記電力ケーブルに挿入する本体カバー挿入工程と、
前記本体カバーを前記電界緩和層の外側に配置して、前記電力ケーブルの端末の絶縁体表面に端末本体が装着された状態に形成する端末本体形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電力ケーブル終端接続部の形成方法において、前記本体カバーの先端の一部には、予め前記微粒子からなる潤滑剤が塗布されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、端末本体を電力ケーブルに容易に挿入して電力ケーブル終端接続部を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部の構成を表す部分断面図である。
【
図2】本体カバーの構成や潤滑剤が本体カバーの円筒部の内面に塗布されていることを表す部分断面図である。
【
図3】本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部の形成方法の各工程の流れを表すフローチャートである。
【
図4】(A)電力ケーブルに錫メッキ軟銅線が取り付けられた状態を表す図であり、(B)電力ケーブルに電界緩和層が形成された状態を表す図である。
【
図5】(A)電力ケーブルに本体カバーを挿入した状態を表す図であり、(B)電力ケーブルに挿入された本体カバーの断面図である。
【
図6】本体カバーを電界緩和層の外側に配置して電力ケーブルの絶縁体表面上に端末本体を形成した状態を表す図である。
【
図7】(A)従来の電力ケーブル終端接続部の構成を表す部分断面図であり、(B)端末本体を電力ケーブルに挿入する状態を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部及び電力ケーブル終端接続部の形成方法について説明する。
ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。
また、電力ケーブル10の後述する導体10Eが露出している側の端部(以下の各図における図中左側の端部)を電力ケーブル10の先端という。
【0023】
[電力ケーブル終端接続部]
図1は、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部の構成を表す部分断面図である。
電力ケーブル終端接続部1では、電力ケーブル10の端末がケーブルシース10A、遮蔽銅テープ10B、外部半導電層10C、絶縁体10Dが順次段剥ぎされ、先端に導体10Eが露出している。
【0024】
電力ケーブル10の先端の導体10Eには端子11が取り付けられており、電力ケーブル10の絶縁体10D表面の所定の位置に端末本体12が取り付けられている。
また、電力ケーブル10の端末本体12よりも先端側の部分(端末本体12の後述する本体カバー12Bの円筒部12Bbや電力ケーブル10の絶縁体10D、導体10E、端子11の一部)に絶縁テープ13が巻回されており、その部分が絶縁テープ13で被覆されている。
【0025】
本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1では、端末本体12が、電界緩和層12Aと、その外側に配置される本体カバー12Bとに分離されている。
電界緩和層12Aは、高誘電材料で形成されたテープを電力ケーブル10の外部半導電層10Cと接触するように電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上に巻回させて形成されている。
【0026】
具体的には、電界緩和層12Aを形成するテープは、例えばアクリル系ゴムやニトリル系ゴム等を基材とし、それに導電性物質を混ぜ込むことで、例えば比誘電率が6以上の高い誘電性を有するように形成されている。
そして、それを電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面の所定の位置に、所定の範囲を被覆し、所定の厚みになるように巻回することで、電界緩和層12Aが形成されている。その際、形成される電界緩和層12Aが電力ケーブル10の外部半導電層10Cと接触する状態になるようにテープが巻回される。
【0027】
本体カバー12Bは、電気絶縁性を有するエチレン・プロピレンゴム(EPR)やシリコーンゴム等で形成されている。
本体カバー12Bは、略円筒形に形成されており、内側が電界緩和層12Aの外面に沿うように形成されているが、必ずしも本体カバー12Bの内側と電界緩和層12Aの外面とを密着させる必要はない。
【0028】
本体カバー12Bは、
図2に示すように、その先端側にテーパ状のテーパ部12Baが形成されている。すなわち、テーパ部12Baは、本体カバー12Bの先端に向かうほど径が小さくなるように形成されている。そして、そのさらに先端側、すなわち本体カバー12Bの先端部分に円筒状の円筒部12Bbが形成されている。
本体カバー12B先端の円筒部12Bbの内径は電力ケーブル10の絶縁体10Dの外径よりも僅かに小さくなるように形成されており、本体カバー12Bを電力ケーブル10に装着した際に、本体カバー12Bの円筒部12Bbが、電界緩和層12Aよりも先端側で、電力ケーブル10の絶縁体10Dに密着するようになっている。
【0029】
後述するように、電力ケーブル10への本体カバー12Bの挿入性を向上させるために、本実施形態では、本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面α(
図2参照)に微粒子からなる潤滑剤14が塗布された状態で本体カバー12Bが電力ケーブル10に挿入される。
そのため、本体カバー12Bが電力ケーブル10に装着された後も本体カバー12Bと電力ケーブル10の絶縁体10D表面との間に微粒子からなる潤滑剤14が残っている(
図1参照)。
【0030】
そのため、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1では、端末本体12の本体カバー12Bは、その先端の一部すなわち円筒部12Bbで、電力ケーブル10の絶縁体10D表面に、微粒子からなる潤滑剤14を介して密着された状態になっている。
なお、本体カバー12Bの円筒部12Bb以外の部分の内面βには潤滑剤14を塗布する必要がない。
【0031】
また、後述するように、本実施形態では、潤滑剤14を構成する微粒子として、シリコーン樹脂又は四フッ化エチレン樹脂の微粒子が用いられている。
さらに、後述するように、本実施形態では、潤滑剤14を構成する微粒子は平均粒径が0.8~2μmとされており、本体カバー12Bの厚み等に比べて非常に小さいため、後述する
図5(B)等においても同様であるが、
図1や
図2では潤滑剤14の層や微粒子等は図示されておらず、その存在場所(すなわち
図2における本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面α)のみが示されている。
【0032】
[電力ケーブル終端接続部の形成方法]
次に、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1の形成方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1の形成方法の各工程の流れを表すフローチャートである。
【0033】
電力ケーブル終端接続部1の形成方法では、まず、
図4(A)に示すように、段剥ぎされた電力ケーブル10のケーブルシース10Aの一部を剥いで遮蔽銅テープ10Bを露出させる。
そして、露出させた遮蔽銅テープ10Bに、当該遮蔽銅テープ10Bに接地電位を供給するための錫メッキ軟銅線15を取り付ける(錫メッキ軟銅線取り付け工程:ステップS1)。
【0034】
次に、
図4(B)に示すように、電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上の所定の位置に、高誘電材料で形成されたテープを巻回させて、電界緩和層12Aを電力ケーブル10の外部半導電層10C(
図1参照)と接触する状態に形成する(電界緩和層形成工程:ステップS2)。
その際、電界緩和層12Aを構成する高誘電テープを、電力ケーブル10の絶縁体10D等に締め付けるように巻回することで、電界緩和層12Aが電力ケーブル10の絶縁体10D表面に密着する状態が形成される。なお、このように高誘電テープが巻回されて電界緩和層12Aが形成されるため、電界緩和層12Aと電力ケーブル10の絶縁体10Dとの間には潤滑剤は存在しない。
【0035】
次に、
図5(A)に示すように、電力ケーブル10の先端側(露出した導体10E側)から本体カバー12Bを電力ケーブル10に挿入する(本体カバー挿入工程:ステップS3)。
前述したように、電力ケーブル10への本体カバー12Bの挿入性を向上させるために、本体カバー12Bの先端の一部すなわち円筒部12Bbの内面α(
図2参照)に微粒子からなる潤滑剤14が塗布されている。
【0036】
本実施形態では、潤滑剤14を構成する微粒子として、潤滑性や扱いやすさ等の点で優れるシリコーン樹脂又は四フッ化エチレン樹脂の微粒子が用いられている。
また、本実施形態では、潤滑剤14を構成する微粒子は平均粒径が0.8~2μmとされている。微粒子の平均粒径がこれより大きいと、本体カバー12Bを電力ケーブル10に挿入する際にそれを阻害する作用が強くなる。また、微粒子の平均粒径がこれより小さいと、微粒子が小さ過ぎて潤滑性が損なわれたり、微粒子が舞い上がる等して扱いづらくなる。
【0037】
なお、本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αへの微粒子からなる潤滑剤14の塗布は、電力ケーブル終端接続部1形成の作業現場で作業員等が行ってもよいが、例えば、本体カバー12Bの製造時等に予め本体カバー12Bの円筒部12Bの内面αに微粒子からなる潤滑剤14を塗布しておくことも可能である。
このように、本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに予め微粒子からなる潤滑剤14が塗布されていると、作業現場で作業員等が潤滑剤14を塗布しなくて済むため、電力ケーブル終端接続部1の形成作業の作業性を向上させることができる。
【0038】
本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに微粒子からなる潤滑剤14を塗布する際、円筒部12Bbの内面αに潤滑剤14の微粒子を付着させるために、円筒部12Bbの内面αにオイルやグリース等を塗布する必要はない。
本発明者の研究では、本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに、潤滑剤14の微粒子を擦り付けるように塗布することで、十分な量の微粒子を塗布することができると同時に、塗布した微粒子が円筒部12Bbの内面αから脱落せずに内面α上に存在し続けることが分かっている。
【0039】
一方、前述したように、潤滑剤14を構成する微粒子としてシリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂の微粒子を用いると、潤滑剤としてグリース等を用いる場合に比べて摩擦係数が大きいため、挿入性はグリース等を用いる場合より劣る。
しかし、
図5(B)に示すように、本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αの面積は、従来の端末本体102の内面102a(
図7(B)参照)の面積に比べて格段に小さい。そのため、本体カバー12Bを電力ケーブル10の絶縁体10Dに挿入して摺動させる際に生じる摩擦力が、従来の端末本体102に比べて格段に小さくなる。
【0040】
そのため、潤滑剤としてグリース等より摩擦係数が大きいシリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂の微粒子を用いても十分にスムーズに本体カバー12Bを電力ケーブル10の絶縁体10Dに挿入して摺動させることが可能となる。
そのため、本実施形態に係る本体カバー12Bによれば、微粒子からなる潤滑剤を用いても、本体カバー12Bを電力ケーブル10に容易に挿入して摺動させることが可能となる。
【0041】
また、本体カバー12Bを電力ケーブル10の絶縁体10Dに摺動させながら挿入すると、円筒部12Bbの内面αに塗布していた潤滑剤14の微粒子が電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上に付着する場合がある。
しかし、このように潤滑剤14の微粒子が電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上に付着してもその量は僅かであり、後述する電力ケーブル10の絶縁体10D等への絶縁テープ13の巻回を阻害することはない。また、電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上に残った微粒子を除去する場合も、グリース等のようにぬぐい取る必要はなく払うだけで除去できるため、除去作業を楽に行うことができる。
【0042】
ところで、上記のように、本体カバー12Bを電力ケーブル10の絶縁体10Dに摺動させながら挿入する際に円筒部12Bbの内面αに塗布していた潤滑剤14の微粒子が電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上に付着すると、潤滑剤14の微粒子が本体カバー12Bと電力ケーブル10の絶縁体10Dとの間の部分から失われていき、潤滑剤14による潤滑性が低下していく。
また、上記のように、本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面α(
図5(B)参照)の面積は、従来の端末本体102の内面102a(
図7(B)参照)の面積に比べて格段に小さいため、もともと本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに塗布できる潤滑剤14の量が、従来の端末本体102の内面102aに塗布できる潤滑剤14の量に比べて少ない。
【0043】
そのため、従来の端末本体102に比べて、本実施形態に係る本体カバー12Bの方が潤滑剤14の微粒子が失われていくことで生じる潤滑性の低下の影響が大きく現れる可能性がある。
しかし、本発明者の研究では、従来の端末本体102の内面102aに微粒子からなる潤滑剤14を塗布して電力ケーブル10に挿入すると、挿入長は数十cm程度であるのに対し、本実施形態に係る本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに微粒子からなる潤滑剤14を塗布して電力ケーブル10に挿入すると、挿入長は数m程度になることが分かっている。
【0044】
これは、上記のように本実施形態に係る本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αの面積が従来の端末本体102よりも小さいために塗布できる潤滑剤14の量が少なくなる効果よりも、内面αの面積が小さいことで摩擦力が小さくなることの効果の方が強く働くため、挿入長が長くなると考えられる。
いずれにせよ、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1やその形成方法によれば、本体カバー12Bを電力ケーブル10に挿入する際に、従来の端末本体102を電力ケーブル10に挿入する場合に比べて挿入が容易になるという効果(挿入容易性)が得られるだけでなく、挿入長が長くなるという有益な効果も得ることができる。
【0045】
次に、
図6に示すように、本体カバー12Bを電界緩和層12Aの外側に配置して、電力ケーブル10の絶縁体10Dの表面上に端末本体12を形成する(端末本体形成工程:ステップS4)。本実施形態では、このようにして電力ケーブル10の端末の絶縁体10D表面上に端末本体12が装着される。
そして、
図1に示しように、電力ケーブル10の導体10Eに端子11が圧縮されて取り付けられ(端子取り付け工程:ステップS5)、電力ケーブル10の端末本体12よりも先端側の部分に絶縁テープ13が巻回される(絶縁テープ巻回工程:ステップS6)など必要な処理が行われて、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1が形成される。
【0046】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1や電力ケーブル終端接続部1の形成方法によれば、端末本体12を電界緩和層12Aと本体カバー12Bとに分離する。そして、高誘電材料で形成されたテープを電力ケーブル10の絶縁体10D等の表面上に巻回して電界緩和層12Aを形成するとともに、電気絶縁性を有する本体カバー12Bを、その先端の一部(円筒部12Bb)で電力ケーブル10の絶縁体10D表面に微粒子からなる潤滑剤14を介して密着する状態で、電界緩和層12Aの外側に配置する。
【0047】
本実施形態では、このように高誘電材料で形成されたテープを電力ケーブル10の絶縁体10D等の表面上に巻回して電界緩和層12Aを形成する。
そのため、電界緩和層12Aを電力ケーブル10の絶縁体10D等に装着する際に、電界緩和層12Aを電力ケーブル10に挿入して摺動させる必要がないため、電界緩和層12Aを電力ケーブル10に容易に装着することができる。
【0048】
また、本体カバー12Bを電界緩和層12Aの外側に配置する際には、本体カバー12Bを電力ケーブル10に挿入して摺動させることが必要になるが、本実施形態では、電力ケーブル10の絶縁体10Dに当接するのは、本体カバー12Bの先端の一部(円筒部12Bb)のみである。
そのため、従来の端末本体102のように広い内面102aの全域が電力ケーブル10の絶縁体10Dと摺動する場合に比べて、本体カバー12Bと電力ケーブル10の絶縁体10Dとが接触する面積が格段に小さくなる。
【0049】
そのため、本体カバー12Bを電力ケーブル10の絶縁体10Dに挿入して摺動させる際に生じる摩擦力が従来の端末本体102に比べて格段に小さくなるため、本体カバー12Bを電力ケーブル10に容易に挿入することが可能となる。
このように、本実施形態に係る電力ケーブル終端接続部1や電力ケーブル終端接続部1の形成方法本実施形態では、電界緩和層12Aを電力ケーブル10の絶縁体10Dに容易に装着することができ、本体カバー12Bを電界緩和層12Aの外側に容易に配置することができるため、端末本体12を電力ケーブル10に容易に挿入して形成することが可能となる。
【0050】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば、端末本体12の本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに、例えば波状等の凹凸を設けても良い。
本体カバー12Bの円筒部12Bbの内面αに凹凸を設けることで、本体カバー12Bを電力ケーブル10に挿入する際の本体カバー12Bの円筒部Bbと電力ケーブル10の絶縁体10Dとの接触面積が小さくなり、それらの間の摩擦力を軽減することができる。また、円筒部Bbの凹凸の凹の部分に潤滑剤14が溜まるため、潤滑剤14が本体カバー12Bの円筒部Bbの内面αに残りやすい等の効果がある。
【符号の説明】
【0052】
1 電力ケーブル終端接続部
10 電力ケーブル
10D 絶縁体
12 端末本体
12A 電界緩和層
12B 本体カバー
12Bb 円筒部(先端の一部)
14 潤滑剤