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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】配索体
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/04 20060101AFI20220630BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220630BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20220630BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H01B7/04
B60R16/02 620A
H01B7/08
H01B7/00 306
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018209133
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020077498
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 健作
(72)【発明者】
【氏名】清村 淳雄
(72)【発明者】
【氏名】今村 隆寛
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-105309(JP,A)
【文献】特開2018-101578(JP,A)
【文献】特開2017-220559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/04
B60R 16/02
H01B 7/08
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に沿って延設される配索体であって、
長手方向に垂直な断面が略四角形状の導体を備え、
前記導体は、切欠きが形成された切欠き形成部を一部に有し
前記切欠き形成部には、第1方向に延びている複数の前記切欠きが形成されており、前記第1方向と垂直な第2方向における、前記切欠きのピッチに対する該ピッチ内に含まれる前記切欠きの幅の総和の割合が30%以上である
ことを特徴とする配索体。
【請求項2】
車両の車体に沿って延設される配索体であって、
長手方向に垂直な断面が略四角形状の導体を備え、
前記導体は、切欠きが形成された切欠き形成部を一部に有し
前記切欠き形成部には、第1方向に延びている複数の前記切欠きが形成されており、前記第1方向と垂直な第2方向における、前記切欠きのピッチに対する、該ピッチ内に含まれる前記切欠きの幅の総和の割合が80%以下である
ことを特徴とする配索体。
【請求項3】
前記導体に電気的かつ機械的に被接続体が接続されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配索体。
【請求項4】
前記被接続体は、電気機器、電線、接続端子、および接続コネクタの少なくともいずれか一つである
ことを特徴とする請求項に記載の配索体。
【請求項5】
前記導体の長手方向の一部を被覆する絶縁被覆部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の配索体。
【請求項6】
前記導体と積層または並列配置された他の導体を備える
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の配索体。
【請求項7】
積層または並列配置された複数の前記導体を備える
ことを特徴とする請求項に記載の配索体。
【請求項8】
前記切欠き形成部には、長手方向と交差する方向に延びている複数の前記切欠きが形成されている
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の配索体。
【請求項9】
前記切欠き形成部には、長手方向に延びている複数の前記切欠きが形成されている
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の配索体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器が搭載された車両には、ワイヤーハーネス等の配索体が配索されている。配索体は、たとえば複数本の被覆電線を束ねることによって形成されたものである。車両内では、配索体が電気機器に接続されたり、配索体同士がコネクタを介して接続されたりすることによって、電気機器に電力や電気信号が供給される。
【0003】
近年、配索体により大電力を流す要求や配索体の低背化の要求が高まってきている。これらの要求に応じるため、撚線からなる導体に換えて、長手方向に垂直な断面が略四角形状の導体を用いた配索体が提案されている。たとえば、特許文献1には、車体に沿って延設された板状の金属配線が開示されている。このような板状の導体は放熱性も高く、大電力を流すのに好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-95094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の車体に沿って延設される配索体は、配策の際に曲げられる場合が多い。このとき、断面が略四角形状の導体を用いた配索体は、同じ断面積を有し撚線からなる導体を用いた配索体(以下、撚線配索体と記載する場合がある)と比較して、可撓性が低いという問題がある。特に、扁平な板状の導体を用いた配索体(以下、平型配索体と記載する場合がある)では、可撓性に異方性があり、板の幅方向に曲げる場合に可撓性が低い。このような可撓性の低さを補うために、平型配索体に撚線配索体を溶接等によって接続し、曲げる際には撚線配索体の部分で曲げるという方法も考えられる。しかしながら、この方法では溶接や溶接箇所の防食処理などが必要であり、製造コストが高くなる。
【0006】
また、板状の導体は、その端部に接続端子を圧着接続によって取り付けるのが困難なため、接続性が低いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、可撓性または接続性が高い配索体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る配索体は、車両の車体に沿って延設される配索体であって、長手方向に垂直な断面が略四角形状の導体を備え、前記導体は、切欠きが形成された切欠き形成部を一部に有していることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る配索体は、前記切欠き形成部には、第1方向に延びている複数の前記切欠きが形成されており、前記第1方向と垂直な第2方向における、前記切欠きのピッチに対する該ピッチ内に含まれる前記切欠きの幅の総和の割合が30%以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る配索体は、前記切欠き形成部には、第1方向に延びている複数の前記切欠きが形成されており、前記第1方向と垂直な第2方向における、前記切欠きのピッチに対する、該ピッチ内に含まれる前記切欠きの幅の総和の割合が80%以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る配索体は、前記導体に電気的かつ機械的に被接続体が接続されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る配索体は、前記被接続体は、電気機器、電線、接続端子、および接続コネクタの少なくともいずれか一つであることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る配索体は、前記導体の長手方向の一部を被覆する絶縁被覆部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る配索体は、前記導体と積層または並列配置された他の導体を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る配索体は、積層または並列配置された複数の前記導体を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る配索体は、前記切欠き形成部には、長手方向と交差する方向に延びている複数の前記切欠きが形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る配索体は、前記切欠き形成部には、長手方向に延びている複数の前記切欠きが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長手方向に垂直な断面が略四角形状の導体の一部に切欠きが形成されていることによって、可撓性または接続性が高い配索体を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係る配索体の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、図1における切欠き形成部の一部の詳細構成を示す図である。
図3図3は、実施形態2に係る配索体の概略構成を示す模式図である。
図4図4は、配索体の使用形態の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態3、4に係る配索体の模式的な断面図である。
図6図6は、可撓性の試験方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、必要に応じて、互いに直交するx軸、y軸、z軸から構成される直交座標系によって方向を説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る配索体の概略構成を示す模式図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)はA-A線断面図である。配索体10は、車両の車体に沿って延設される配索体であって、導体1と、絶縁被覆部2とを備えている。なお、図1(a)では、導体1の構成の説明のために絶縁被覆部2を透明に表している。
【0022】
導体1は、x方向を長手方向、y方向を幅方向、z方向を厚さ方向とすると、長手方向に垂直な断面(yz平面に平行な面)が略四角形状である。本実施形態では、導体1は扁平の板状である。なお、本実施形態では断面の角が略90度であるが、平行四辺形や台形でもよい。また、角にコーナー加工(面取り加工やR加工)が施されたものも略四角形状に含まれる。導体1は、たとえば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの、電線の導体材料として使用可能な材料からなる。また、導体1は、長手方向の両端に端部1a、1bを有している。
【0023】
絶縁被覆部2は、導体1の長手方向において、端部1a、1bを除く部分を被覆している。絶縁被覆部2は、たとえばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ノンハロゲン材料などの、電線の被覆材料として使用可能な絶縁性の樹脂からなる。
【0024】
導体1は、一部に切欠き形成部1c、1d、1e、1fを有している。これらの切欠き形成部1c、1d、1e、1fには、複数の切欠きが形成されている。各切欠きは、厚さ方向で対向する導体1の二つの主表面の間を貫通するように形成されている。
【0025】
各切欠き形成部について説明する。切欠き形成部1cは、端部1aに設けられており、端部1aの縁から長手方向に延びている複数の切欠きが形成されている。各切欠きの長さは本実施形態では等しいが、等しくなくてもよい。
【0026】
切欠き形成部1dは、絶縁被覆部2で被覆されている部分に設けられており、長手方向に対して傾斜するように交差する方向に延びている複数の切欠きが形成されている。
【0027】
図2は、図1における切欠き形成部1dの一部の詳細構成を示す図である。切欠き形成部1dでは、幅方向の両側から交互に延びるように切欠きNが周期的に配列している。その結果、導体1の切欠き形成部1dでは、狭幅導体部Cが蛇行する形状となっている。狭幅導体部Cとは、切欠き形成部1dの形成によって切欠きNの間に生じた、導体1の幅よりも狭い部分の導体のことである。ここで、切欠きNが延びている方向を第1方向D1とし、第1方向D1と垂直な方向を第2方向D2とする。第1方向D1、第2方向はいずれもxy面に平行な方向である。そして、第2方向D2において、切欠きNのピッチPを規定する。ピッチPは、切欠きNが周期的に配列されている場合に、その1周期の長さで規定される。また、第2方向D2において狭幅導体部幅WCと切欠き幅WNを規定する。本実施形態では切欠き幅WNは、第1方向D1において、幅方向(y方向)の両端部を除いて略一定である。切欠き幅WNは、幅方向の一方において端部に近づくにつれて徐々に小さくなっており、他方において端部に近づくにつれて徐々に広がっている。狭幅導体部幅WCは略一定である。本実施形態では、狭幅導体部Cが幅方向両端で円弧状となっており、その半径が導体1の幅と同程度であると、絶縁被覆部2の損傷を防止する上では好ましい。ただし、狭幅導体部が幅方向両端で円弧状でなくてもよい。また、各切欠きの長さは本実施形態では等しいが、等しくなくてもよい。また、本実施形態では、切欠き幅WNは、幅方向の両端部を除いて略一定であり、狭幅導体部幅WCは略一定であるが、必ずしも略一定でなくてもよい。
【0028】
図1に戻って、切欠き形成部1dは長さL1を有する。長さL1は、切欠き形成部1dの長手方向の両端に位置する切欠きの間の、長手方向における距離である。
【0029】
切欠き形成部1eは、絶縁被覆部2で被覆されている部分に設けられており、長手方向に延びている複数の切欠きが形成されている。各切欠きの長さは本実施形態では等しいが、等しくなくてもよい。
【0030】
切欠き形成部1fは、絶縁被覆部2で被覆されている部分に設けられており、長手方向に対して直交するように交差する方向に延びている複数の切欠きが形成されている。切欠き形成部1dでは、長手方向において、幅方向の一方の側(図面上側)から1本の切欠きが延び、次に他方の側(図面下側)から2本の切欠きが延びる構造が周期的に形成されている。切欠き形成部1fは長さL2を有する。長さL2は、長さL1と同様に、切欠き形成部1fの長手方向の両端に位置する切欠きの間の、長手方向における距離である。各切欠きの長さは本実施形態ではすべて等しくはないが、等しくてもよい。
【0031】
なお、切欠き形成部1c、1e、1fにおいても、切欠き形成部1dと同様に、切欠きが延びている第1方向、第1方向と垂直な第2方向、切欠きのピッチ、狭幅導体部幅、切欠き幅等を規定できる。
【0032】
この配索体10は、導体1が切欠き形成部1d、1e、1fを有しているので、厚さ方向に曲げ易いだけでなく、切欠き形成部1d、1e、1fにおいて幅方向に曲げ易く、かつ長手方向を軸として捻りやすくなっている。すなわち、配索体10は、導体に切欠きの無い平型配索体に比べて可撓性が高い。
【0033】
また、この配索体10は、導体1が端部1aに切欠き形成部1cを有しているので、端部1aに外側から圧力を加えると、切欠きが潰れて断面の輪郭が小さくなる。そのため、端部1aに接続端子を圧着接続によって取り付けることができる。すなわち、配索体10は、導体に切欠きの無い平型配索体に比べて他の配索体や電気機器への接続性が高い。
【0034】
さらに、この配索体10は、導体1が切欠き形成部1c、1d、1e、1fを有しているので、表面積が大きくなり、導体に切欠きの無い平型配索体に比べて放熱性が高い。
【0035】
配索体10は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、アルミニウム等からなる材料板を砥石などで切断し、長手方向に延伸する板状の導体を作製する。つぎに、この導体に切欠き形成部1c、1d、1e、1fを形成して導体1とする。さらに、導体1にPVCを押出被覆して絶縁被覆部2を形成する。このとき、切欠きにPVCが入り込まないような切欠き幅とすることが好ましい。また、押出被覆の際に切欠き形成部1cがめくれないように、押出の向きを設定することが好ましい。
【0036】
切欠き形成部1c、1d、1e、1fは、板状の導体に、レーザ加工装置を用いたレーザカット、ガス切断などの溶断、高速切断機などを用いた砥石による切断、バンドソーなどを用いた鋸による切断、打ち抜き加工、剪断作用により切断を行うスケヤシャーなど、公知の方法を適用することで形成することができる。
【0037】
つぎに、導体1の形状を表すパラメータの値を説明する。ただし、各パラメータは例示であって、これらの値に限定されるものではない。
【0038】
まず、導体1の全長は、典型的には3m~5m程度である。また、導体1の厚さは、好適な強度とするためには0.1mm以上が好ましく、好適な可撓性とするためには3mm以下が好ましい。なお、切欠き形成部1c、1d、1e、1fをレーザカットで形成する場合には、形成の容易性の観点から、導体1の厚さは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合は0.1mm~0.7mm程度が好ましく、銅または銅合金からなる場合は10mm程度以下が好ましい。
【0039】
また、導体1の扁平率を(導体の幅)/(導体の厚さ)で定義すると、扁平率は10/3(10mm/3mm)~100(50mm/0.5mm)であり、好ましくは6~12である。
【0040】
また、狭幅導体部幅は、好適な強度とするためには0.1mm以上が好ましく、好適な可撓性とするためには5mm以下が好ましい。また、切欠き幅は特に限定されないが、0.025mm以上であれば形成がより容易になり好ましい。ピッチについては、0.25mm~10mm程度であり、0.25mm~5mm程度が好ましい。切欠き形成部の長さ(長さL1、L2など)は、50mm以上であれば可撓性がより高くなり好ましい。また、切欠き形成部の長さは導体1の全長の3%~30%程度が望ましい。ただし、切欠き形成部の長さが長くなるほど導体の電気抵抗が上昇したり、製造コストが増加したりするので、電気抵抗に対する要求やコストの程度などに応じて長さを設定することが好ましい。
【0041】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る配索体の概略構成を示す模式図である。配索体20は、車両の車体に沿って延設される配索体であって、導体1と、絶縁被覆部2と、接続端子3と、電線4とを備えている。
【0042】
導体1および絶縁被覆部2は実施形態1と同じものである。ただし、導体1については、切欠き形成部1c、1dのみ図示し、切欠き形成部1e、1fは図示を省略している。
【0043】
図示されるように、導体1は可撓性が高い切欠き形成部1dにおいて幅方向に曲げられている。
【0044】
被接続体である接続端子3は、切欠き形成部1cが設けられた端部1aに圧着接続されることで、導体1に電気的かつ機械的に接続されている。上述したように、端部1aに外側から圧力を加えると切欠きが潰れて断面の輪郭が小さくなる。そのため、接続端子3は、端部1aに好適な機械強度特性および電気特性を確保できるように、圧着接続にて取り付けることができる。
【0045】
接続端子3は、ネジなどで、他の電線、たとえばバスバーや被覆電線の導体露出部などに接続されたり、他の接続端子に接続されたり、接続コネクタに接続された、車両に搭載された電気機器に接続されたりする。また、接続端子3にハウジングを取り付けて接続コネクタを構成し、他の接続コネクタや電気機器に接続することもできる。これにより、配索体20の導体1は電気機器、電線、接続端子、および接続コネクタの少なくともいずれか一つに接続される。なお、電気機器としては、バッテリーや、車両の動力源としての電動機、や、電動機を制御するインバータや、ECU(Electric Control Unit)や、各種補機などがあるが、特に限定はされない。
【0046】
被接続体である電線4は、絶縁被覆が施された撚線電線であり、その断面は略円形のものである。電線4は、一方の端部において撚線からなる導体4aが露出しており、露出した導体4aが導体1の端部1bに溶接などによって電気的かつ機械的に接続されている。また、電線4の他方の端部は車両に搭載された電気機器に接続されている。
【0047】
以上のように、配索体20は、接続端子3や電線4を介して、電気機器、電線、接続端子、および接続コネクタなどに好適に接続できる。これにより、配索体20を用いて、電子機器間で電力や電気信号等の伝送を行うことができる。このとき、配索体20は、可撓性、接続性、および放熱性の高さを利用して、車両の車体に沿って様々な態様で延設される配索体として使用することができる。
【0048】
たとえば、図4は、配索体20の使用形態の一例を示す図である。2本の配索体20は、電動車両100において、バッテリー101からインバータ102に電力を伝送するために、車体に沿って延設されている。配索体20の導体1は板状でありながら可撓性、接続性、放熱性が高いので、高圧や大電流の電力の伝送にも好適に使用できる。
【0049】
また、配索体10、20は、インバータ102と不図示の電動機とを接続する三相交流電流を流す配線としても好適に使用できる。
【0050】
(実施形態3、4)
図5は、実施形態3、4に係る配索体の模式的な断面図である。図3(a)に示す実施形態3に係る配索体30は、実施形態1に係る配索体10を厚さ方向に積層して構成したものである。すなわち、配索体30は、2層の絶縁被覆部2を挟んで積層された2つの導体1を備える。
【0051】
図3(b)に示す実施形態4に係る配索体40は、配索体10を幅方向に並列配置して構成したものである。すなわち、配索体30は、2層の絶縁被覆部2を挟んで並列配置された2つの導体1を備える。
【0052】
配索体30、40は、いずれも、2つの導体1を備えるので、電力伝送線として好適に使用することができ、たとえば図4における2本の配索体20に置き換えて使用できる。電力が直流電力の場合、2つの導体1の一方を正線、他方を負線とすることができる。また、2つの導体1の一方をアース線に接続して使用してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、2本の導体1が積層または並列配置されているが、そのうちの1本を他の導体、たとえば撚線からなる導体に置き換えて配索体を構成してもよい。また、3本以上の導体1を積層または並列配置して配索体を構成してもよい。
【0054】
(実施例)
アルミニウム合金からなり、長さ3m、幅12mm、厚さが0.5mm~3mmの範囲で異なる複数の板状の導体を準備した。各厚さの導体について、切欠きの無い基準導体と、導体1における切欠き形成部1dのような切欠き形成部を形成した実施例の導体とを準備した。切欠き形成部の長さは500mmとした。このとき、各厚さの導体として、切欠き間の導体幅(狭幅導体部幅)が0.1mm~5mmの範囲で異なる複数の導体を準備した。また、各厚さおよび各狭幅導体部幅の導体として、ピッチが0.25mm~5mmの範囲で異なる複数の導体を準備した。
【0055】
ここで、切欠き率を定義する。切欠き率は、切欠きが延びている方向と垂直な方向における、切欠きのピッチに対する、該ピッチ内に含まれる前記切欠きの幅の総和の割合である。たとえば、図2の場合、第2方向D2においてピッチPには2本の切欠きNが含まれることとなるので、切欠き率は、2×(切欠き幅WNの値)/(ピッチPの値)×100(%)で表される。
【0056】
各実施例の導体は、切欠き率が10%未満、10%~30%、30%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%より大きい、のいずれかの範囲に入るように、切欠き幅を調整した。
【0057】
基準導体と各実施例の導体について電気抵抗を測定した。また、基準導体と各実施例の導体について、以下に示すような方法にて可撓性(柔軟性)の評価を行った。
【0058】
まず、サンプルとして、基準導体から長さ500mmの部分を切り出した。また、サンプルとして、各実施例の導体から切欠き形成部を切り出した。そして、図6に示すように、これらのサンプルをサンプルSとして、固定台P1にサンプルSの一方の片端を固定し、U字に曲げて、サンプルSのもう一方の片端もロードセルL付きの固定台P2を有する試験機Tに固定した。このとき、サンプルSは曲げにくい方向、すなわち幅方向にU字状に曲げた。すなわち、図6は、サンプルSを高さ方向(図1におけるz方向)から見た状態を示している。そして、サンプルSに、100mm/minの速度で、圧縮荷重Fとして25Nの負荷を掛けた。そして、サンプルSがそれ以上曲がらないときの曲げ半径を最小曲げ半径として、可撓性の指標とした。なお、サンプルSが破断した場合は、破断直前の値を最小曲げ半径とした。この最小曲げ半径の値は、配索体の用途に応じて30mm~500mm程度であることが望ましい。
【0059】
表1は、各実施例の導体の電気抵抗の、基準導体の電気抵抗に対する増加率と、最小曲げ半径とを、切欠き率の範囲ごとに示した表である。表1に示すように、電気抵抗の増加率については、切欠き率が80%~90%では50%以下であり、切欠き率が70%~80%では30%まで減少し、さらに切欠き率が70%以下では10%以下にまで減少した。また、最小曲げ半径については、切欠き率が10%~30%では300mm以下であり、切欠き率が30%~60%では150mm以下に減少し、切欠き率が60%以上では75mm以下にまで減少した。たとえば、狭幅導体部幅が1.0mm、切欠き幅が0.5mm、ピッチが3mmの場合で最小曲げ半径は70mmであった。なお、基準導体については、本方法で最小曲げ半径を測定しようとしたところ、曲がらず、最小曲げ半径が測定できない程に可撓性が低いことが確認された。
【0060】
【表1】
【0061】
これらの結果から、切欠き率については、可撓性の観点からは30%以上が好ましく、電気抵抗特性の観点からは80%以下が好ましく、可撓性と電気抵抗特性との両立の観点からは30%~80%が好ましいことが確認された。
【0062】
なお、上記実施形態では、各切欠き形成部には切欠きが複数形成されているが、切欠きは1本でもよい。
【0063】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1、4a 導体
1a、1b 端部
1c、1d、1e、1f 切欠き形成部
2 絶縁被覆部
3 接続端子
4 電線
10、20、30、40 配索体
100 電動車両
101 バッテリー
102 インバータ
C 狭幅導体部
D1 第1方向
D2 第2方向
F 圧縮荷重
N 切欠き
P ピッチ
P1、P2 固定台
S サンプル
T 試験機
WC 狭幅導体部幅
WN 切欠き幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6