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特許7097308ウィック構造体及びウィック構造体を収容したヒートパイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ウィック構造体及びウィック構造体を収容したヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20220630BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20220630BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20220630BHJP
   F28F 21/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
F28D15/04 B
F28D15/04 E
F28F21/08
F28F21/04
F28F21/02
F28D15/04 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018567971
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2018028169
(87)【国際公開番号】W WO2019022214
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2017145994
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018123795
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】海渕 朋未
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-087089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0071880(US,A1)
【文献】特開2002-318085(JP,A)
【文献】特開2007-183021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28F 21/08
F28F 21/04
F28F 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートパイプのコンテナ内部に収容されるウィック構造体であって、
それぞれ対向して立設された複数の箔を有し、
前記複数の箔のアスペクト比が、2以上1000以下、前記箔の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上1μm以下、前記箔の厚さが、1μm以上300μm以下、相互に隣接する前記箔の立ち上がり基部における箔間距離が、2μm以上300μm以下であり、
前記ウィック構造体は、前記コンテナの一方の端部に配置され、前記コンテナの中央部と、前記一方の端部と対向する他方の端部には、配置されておらず、
前記ウィック構造体の配置された前記一方の端部が受熱部、前記他方の端部が放熱部であるウィック構造体。
【請求項2】
前記箔が、複数、並び、少なくとも1つの構造保持部で保持され、該構造保持部を介して、複数の前記箔が連結されている請求項1に記載のウィック構造体。
【請求項3】
前記構造保持部が、前記コンテナの内面に複数の前記箔が接続固定されるための固定部として機能してもよい請求項に記載のウィック構造体。
【請求項4】
前記箔の立ち上がり基部に、箔支持部が形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウィック構造体。
【請求項5】
相互に隣接する前記箔の間の一部に、多孔質部材が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウィック構造体。
【請求項6】
前記箔の材質が、金属、セラミック及び/または炭素である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウィック構造体。
【請求項7】
前記コンテナの長手方向に対し鉛直方向の断面積が、前記コンテナの長手方向に対し鉛直方向の前記コンテナの断面積の、10%~90%である請求項1乃至のいずれか1項に記載のウィック構造体。
【請求項8】
前記固定部が、金属粉の焼結体、銀ろう、はんだである請求項に記載のウィック構造体。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のウィック構造体が収容されたヒートパイプ。
【請求項10】
前記ウィック構造体が、受熱部に設置された請求項に記載のヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の圧力損失を低減できるウィック構造体、及び該ウィック構造体が収容されることで、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、高機能化に伴う高密度搭載等により、発熱量が増大し、その冷却がより重要となっている。電子部品の冷却方法として、ヒートパイプが使用されることがある。
【0003】
上記のように、発熱体の発熱量が増大していることから、ヒートパイプの熱輸送特性のさらなる向上が要求されている。熱輸送特性のさらなる向上のために、ヒートパイプに封入されている作動流体がウィック構造体中を流通する際に、圧力損失を低減することも検討されている。一方で、ウィック構造体には、毛細管力の向上も要求されることから、作動流体とウィック構造体との界面の表面積を大きくする必要もある。しかし、毛細管力を向上させるために前記表面積を大きくすると、作動流体がウィック構造体中を流通する際の圧力損失が増大してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、凝縮端と蒸発端を有する細長い中空のハウジングと、前記ハウジングの中に配置されている波形の吸上部であって、折り畳まれたフィンを備えている複数の楔状の毛管を有する、波形の吸上部と、前記波形の吸上部と流体連通状態に置かれた流体と、を備えているヒートパイプが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、折り畳まれたフィンを備えた波形の吸上部を設けた特許文献1のヒートパイプでは、吸上部のフィンピッチを十分に小さくすることはできず、十分な毛細管力を得ることができないという問題がある。また、特許文献1のヒートパイプでは、波形という吸上部の形状、すなわち、吸上部の、ハウジングの長手方向に対し直交方向の部位は、開放されていないことから、液相から気相に相変化した作動流体は、吸上部中を流通する際に、圧力損失を受けてしまうという問題がある。
【0006】
一方で、ヒートパイプに収容するウィック構造体として、金属粉の焼結体や金属メッシュが使用されることもある。しかし、金属粉の焼結体や金属メッシュでは、所定の毛細管力は得られやすいものの、液相から気相に相変化した作動流体は、金属粉の焼結体や金属メッシュ中を流通する際に、流路形状の複雑さから、圧力損失を受けてしまう場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2008-505305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、毛細管力を損なうことなく、流通する作動流体の圧力損失を低減できるウィック構造体、及び該ウィック構造体が収容されることにより、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成要素の要旨は、以下の通りである。
[1]ヒートパイプのコンテナ内部に収容されるウィック構造体であって、
それぞれ対向して立設された複数の箔を有するウィック構造体。
[2]前記箔が、複数、並び、少なくとも1つの構造保持部で保持され、該構造保持部を介して、複数の前記箔が連結されている[1]に記載のウィック構造体。
[3]前記構造保持部が、前記コンテナの内面に複数の前記箔が接続固定されるための固定部として機能してもよい[1]または[2]に記載のウィック構造体。
[4]前記箔の立ち上がり基部に、箔支持部が形成されている[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[5]相互に隣接する前記箔の間の一部に、多孔質部材が設けられている[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[6]前記箔の材質が、金属、セラミック及び/または炭素である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[7]前記複数の箔のアスペクト比が、2以上1000以下である[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[8]前記箔の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上1μm以下である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[9]前記箔の厚さが、1μm以上300μm以下である[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[10]相互に隣接する前記箔の立ち上がり基部における箔間距離が、2μm以上300μm以下である[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[11]前記コンテナの長手方向に対し鉛直方向の断面積が、前記コンテナの長手方向に対し鉛直方向の前記コンテナの断面積の、10%~90%である[1]乃至[10]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[12]前記固定部が、金属粉の焼結体、銀ろう、はんだである[3]乃至[11]のいずれか1つに記載のウィック構造体。
[13][1]乃至[12]のいずれか1つに記載のウィック構造体が収容されたヒートパイプ。
[14]前記ウィック構造体が、受熱部に設置された[13]に記載のヒートパイプ。
【0010】
上記ウィック構造体は、複数の箔が並んで設けられた態様となっており、相互に隣接する箔の間には、空隙部である溝部が形成されている。
【0011】
本明細書中、「アスペクト比」とは、相互に隣接する箔の立ち上がり基部における箔の厚さ(T)に対する、相互に隣接する箔間に形成された箔の高さ(D)(箔の高さ(D)/箔の厚さ(T))を意味する。また、1枚の箔21が構造保持部22によって、高さ方向に所定の間隔をおいて複数に分断されている態様の場合には、箔21の高さ(D)は上記間隔を除いた寸法を意味する。なお、箔ピッチ(L)は、一つの箔の一方の面と、該一つの箔と隣接した他の箔のうち該一つの箔と対向していない面と、の間の距離である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、ウィック構造体を形成する複数の箔が、それぞれ離間して設けられていることにより、該ウィック構造体は、毛細管力を損なうことなく、前記複数の箔の間を流通する作動流体の圧力損失を低減できる。結果として、該ウィック構造体がヒートパイプに収容されることにより、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプを得ることができる。また、箔は、放熱フィンとしての機能も発揮できる点でも、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプを得ることができる。
【0013】
本発明の態様によれば、ウィック構造体を形成する複数の箔が、アスペクト比2以上1000以下にて設けられていることにより、ウィック構造体の毛細管力がさらに向上しつつ作動流体の圧力損失を低減できる。結果として、より優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプを得ることができる。
【0014】
本発明の態様によれば、箔の材質が金属、セラミック及び/または炭素であることにより、ウィック構造体の熱伝導性が向上する。結果として、ヒートパイプの熱輸送特性がさらに向上する。
【0015】
本発明の態様によれば、箔の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上1μm以下であることにより、ウィック構造体の毛細管力の向上に寄与することができる。
【0016】
本発明の態様によれば、コンテナの長手方向に対し鉛直方向のウィック構造体の断面積が、コンテナの長手方向に対し鉛直方向のコンテナの断面積の10%~90%であることにより、ウィック構造体がヒートパイプに収容されると、気相の作動流体の流通性と、気相の作動流体の対向流である液相の作動流体の流通性と、をバランス良く向上させることができる。なお、本発明のウィック構造体は、コンテナの長手方向全体に設けてもよく、コンテナの受熱部等、コンテナの長手方向の一部に設けてもよい。従って、上記断面積の比率は、コンテナのうち、本発明のウィック構造体が設置された部分における断面積の比率である。上記「受熱部」とは、コンテナに冷却対象である発熱体が熱的に接続される部位であり、液相の作動流体は、主に受熱部にて気相に相変化する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態例に係るウィック構造体の概要を説明する斜視図である。
図2】本発明の第5実施形態例に係るウィック構造の概要を説明する斜視図である。
図3】ヒートパイプに収容された、本発明の第1実施形態例に係るウィック構造体の正面断面図である。
図4】ヒートパイプに収容された、本発明の第4実施形態例に係るウィック構造体の正面断面図である。
図5】本発明の第2実施形態例に係るウィック構造体の説明図である。
図6】本発明の第3実施形態例に係るウィック構造体の説明図である。
図7】ヒートパイプに収容された、本発明の第1実施形態例に係るウィック構造体の側面断面図である。
図8】ベーパーチャンバに収容された、本発明の第6実施形態例に係るウィック構造体の側面断面図である。
図9】ベーパーチャンバに収容された、本発明の第6実施形態例に係るウィック構造体を説明した図8のA-A断面図である。
図10】ベーパーチャンバに収容された、本発明の第7実施形態例に係るウィック構造体の平面断面図である。
図11】ベーパーチャンバに収容された、本発明の第7実施形態例に係るウィック構造体を説明した図10のB-B断面図である。
図12】本発明の他の実施形態例に係るウィック構造体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第1実施形態例に係るウィック構造体と第1実施形態例に係るウィック構造体が収容されたヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。まず、ウィック構造体が収容されたヒートパイプについて説明する。
【0019】
図3、7に示すように、ヒートパイプ10のコンテナ15内部に、第1実施形態例に係るウィック構造体1が収容される。コンテナ15は、管形状の部材である。コンテナ15内部には、作動流体(図示せず)が封入されている。
【0020】
コンテナ15は、密閉された管材である。コンテナ15の長手方向に対して直交方向の断面形状は、特に限定されないが、ヒートパイプ10では、扁平形状となっている。また、コンテナ15の長手方向の形状は、特に限定されないが、ヒートパイプ10では、略直線状となっている。
【0021】
コンテナ15の長手方向に対して直交方向の寸法は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、好ましくは1.0mm以上、特に好ましくは2.0mm以上である。また、コンテナ15の長手方向に対して直交方向の寸法の上限値は、特に限定されないが、例えば、15mm以下が好ましく、10mm以下が特に好ましい。コンテナ15の肉厚は、特に限定されないが、例えば、50~500μmである。ヒートパイプ10の熱輸送方向は、コンテナ15の長手方向である。
【0022】
図1、3に示すように、ヒートパイプ10のコンテナ15内部に収容されるウィック構造体1は、複数の箔21と、箔21を固定するための構造保持部22と、を有している。それぞれの箔21、21・・・が構造保持部22に保持されることで、箔21が位置決めされて、並列に配置されている。
【0023】
箔21は、1つの構造保持部21を介して、隣接する他の箔21を含めて、他のそれぞれの箔21、21・・・と連結されている。図1、3では、構造保持部22は、コンテナ15内面の底部に沿って延在した平面状の部位である。構造保持部22が、コンテナ15内面のうち、底部に複数の箔21、21・・・が接続固定されるための固定部としても機能している。
【0024】
また、図3に示すように、ウィック構造体1では、構造保持部22はコンテナ15内面と直接接した態様となっているが、構造保持部22とコンテナ15内面との間に、必要に応じて、銅粉等の金属粉の焼結体、銀ろう、はんだ等(図示せず)が介在してもよい。この場合、構造保持部22は、銅粉等の金属粉の焼結体、銀ろう、はんだ等によってコンテナ15内面に固定される、ひいては、ウィック構造体1が、銅粉等の金属粉の焼結体、銀ろう、はんだ等によってコンテナ15内面に固定されることとなる。その際、銅粉等の金属粉の焼結体は、毛細管力を有するので、液相の作動流体をウィック構造体1の位置まで還流させるウィック部としても機能する。この場合、構造保持部22とコンテナの間に液相の作動流体が存在する状態になり、ヒートパイプ10の熱抵抗が大きくなってしまう恐れもある。この点を改善するために、粒径の小さい金属粉をウィック構造体1の固定に使う場合もある。
【0025】
それぞれの箔21、21・・・の形状は、平坦な矩形のシート状(フィルム状)となっている。それぞれの箔21、21・・・は、コンテナ15の長手方向に対して鉛直方向に立設されている。また、それぞれの箔21、21・・・は、構造保持部22から鉛直方向に延在している。さらに、それぞれの箔21、21・・・は、コンテナ15の長手方向に対して直交方向に沿って、所定間隔で並列に配置されている。また、それぞれの箔21、21・・・は、構造保持部22に沿って所定間隔で並列に配置されている。従って、それぞれの箔21、21・・・は、離間して配置されている。ヒートパイプ10のウィック構造体1では、それぞれの箔21、21・・・は、少なくとも構造保持部22からの立ち上がり基部において、略等間隔に配置されている。なお、図1、3では、それぞれの箔21、21・・・は、構造保持部22からの立ち上がり基部から先端部である自由端にわたって、略等間隔に配置されている。また、ヒートパイプ10のウィック構造体1では、それぞれの箔21、21・・・は、少なくとも構造保持部22からの立ち上がり基部において、相互に略平行に並列配置されている。なお、図1、3では、それぞれの箔21、21・・・は、構造保持部22からの立ち上がり基部から先端部である自由端にわたって、相互に略平行に並列配置されている。
【0026】
なお、上記の通り、箔21は、コンテナ15の長手方向に対して鉛直方向に立設されているので、平坦な形状を維持できず、一部に曲部が形成される等、鉛直方向の形状に変形が生じ得る。よって、隣接する箔21同士は、構造保持部22からの立ち上がり基部よりも自由端側の部位においては、構造保持部22からの立ち上がり基部における間隔よりも近接していてもよく、また、接触してもよい。
【0027】
上記した箔21の構成から、図7に示すように、それぞれの箔21、21・・・は、コンテナ15の長手方向に沿って延在している態様となっている。なお、ヒートパイプ10では、ウィック構造体1は、コンテナ15の一方の端部11に配置され、コンテナ15の中央部13と、一方の端部11と対向する他方の端部12には、ウィック構造体1は配置されていない。
【0028】
それぞれの箔21、21・・・は、高さ方向における一方の端辺部23が構造保持部22に保持されることで、位置決めされている。従って、箔21の一方の端辺部23が、構造保持部22からの立ち上がり基部となっている。すなわち、それぞれの箔21、21・・・は、構造保持部22から立設している態様となっており、それぞれの箔21、21・・・は、構造保持部22を介して、相互に連結されている。
【0029】
一方で、箔21の一方の端辺部23と対向する他方の端辺部24は、固定されておらず、自由端となっている。ウィック構造体1では、箔21の他方の端辺部24の先端は、コンテナ15の内面に接触していない。従って、相互に隣接する箔21の他方の端辺部24間は、開放部となっている。上記から、相互に隣接する箔21間には、空隙部である溝部25が形成されている。箔21の表面形状は平坦、すなわち、平面状なので、ヒートパイプ10の長手方向に対して直交方向における溝部25の断面形状は、矩形状となっている。さらに、溝部25は、相互に隣接する箔21間をヒートパイプ10の長手方向に沿って延在している。また、構造保持部22表面は、溝部25の底部に対応する。従って、箔21の高さ(D)は、構造保持部22表面から箔21の他方の端辺部24までの距離に相当する。
【0030】
ウィック構造体1では、箔21の他方の端辺部24側が開放部となっており、さらに溝部25の上記断面形状は矩形状となっているので、溝部25にて液相から気相へ相変化した作動流体は、溝部25から、他方の端辺部24間の開放部を介して、円滑に、ウィック構造体1の外部へ放出される。従って、溝部25にて液相から気相へ相変化した作動流体がウィック構造体1の外部へ放出されるにあたり、圧力損失を低減でき、ひいては、コンテナ15内における気相の作動流体の流通を、円滑化できる。
【0031】
なお、箔21の他方の端辺部24は、上記したコンテナ15内面に接触していない自由端に代えて、コンテナ15内面に接触した非自由端または固定端としてもよい。それぞれの箔21、21・・・は、相互に離間して配置されている。従って、箔21の他方の端辺部24がコンテナ15内面に接触していても、溝部25にて液相から気相へ相変化した作動流体は、溝部25から、箔21と箔21の離間部を介して、円滑に、ウィック構造体1の外部へ放出される。
【0032】
ウィック構造体1では、複数の箔21のアスペクト比は、特に限定されないが、例えば、アスペクト比が2以上1000以下となるように配置されている。「アスペクト比」とは、相互に隣接する箔21の立ち上がり基部(一方の端辺部23)における箔の厚さ(T)に対する、相互に隣接する箔21間に形成された箔21の高さ(D)(箔の高さ(D)/箔の厚さ(T))を意味する。なお、図1、3に示すように、箔ピッチ(L)は、一つの箔21の一方の面と、該一つの箔21と隣接した他の箔21のうち該一つの箔21と対向していない面との間の距離である。アスペクト比が2以上1000以下となるように、それぞれの箔21、21・・・が配置されていることにより、毛細管力をより向上させつつ、ウィック構造体1を流通する作動流体の圧力損失を低減できる。また、ウィック構造体1がコンテナ15に収容されることにより、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプ10を得ることができる。なお、シート状(フィルム状)の箔21が、立設されていることで平坦な形状を維持できずに曲部を有する等、ウィック構造体1の箔21の形状に変形が生じている場合には、該変形を解消した形状を前提として上記アスペクト比を算出する。また、1枚の箔21が構造保持部22によって、高さ方向に所定の間隔をおいて複数に分断されている態様の場合には、箔21の高さ(D)は上記間隔を除いた寸法を意味する。
【0033】
上記の通り、箔21のアスペクト比は、例えば、2以上1000以下が好ましいが、その下限値は、ウィック構造体1の毛細管力をさらに向上させて液相の作動流体の還流をより円滑化させる点から、70がより好ましく、80がさらに好ましく、90が特に好ましい。また、箔21のアスペクト比の上限値は、液相から気相に相変化した作動流体がウィック構造体1中を流通する際の圧力損失を確実に低減させ、また箔21の機械的強度を得る点から、480がより好ましく、330が特に好ましい。
【0034】
また、箔21のアスペクト比は、それぞれの箔21、21・・・において、同じアスペクト比でもよく、異なるアスペクト比でもよい。
【0035】
箔21の表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されず、平滑面でもよいが、その下限値は、毛細管力の向上に寄与させる点から0.01μmが好ましく、0.02μmが特に好ましい。一方で、箔21の表面の算術平均粗さ(Ra)の上限値は、特に限定されないが、気相の作動流体の円滑な流通の点から1.0μmが好ましく、0.5μmが特に好ましい。
【0036】
また、図12に示すように、箔21には、必要に応じて、厚さ方向に貫通した貫通孔100を設けてもよい。また、箔21の表面には、必要に応じて、厚さ方向に突起した凸部、厚さ方向に窪んだ凹部等の構造を形成してもよい。また、箔21の上記貫通孔100と、隣接する他の箔21の上記貫通孔100とが管部によって連通されて、スルーホールを形成することで、隣接する箔21が連結されていてもよい。
【0037】
また、箔21の厚さ(T)は、特に限定されないが、その下限値は、機械的強度の点から1μmが好ましく、2μmが特に好ましい。一方で、箔21の厚さ(T)の上限値は、溝部25の幅を確保しつつ、アスペクト比を向上させる点から300μmが好ましく、200μmがより好ましく、100μmが特に好ましい。また、箔21の厚さ(T)は、6μm以下の厚さの場合、優れた取り扱い性は得られないが、ウィック構造体1の毛細管力を向上させる点から、箔21の厚さ(T)は薄い方が好ましい。
【0038】
コンテナ15の長手方向に対し鉛直方向のウィック構造体1の断面積は、特に限定されないが、液相の作動流体をコンテナ15の一方の端部11へ円滑に還流させる点から、コンテナ15の長手方向に対し鉛直方向におけるコンテナ15の断面積の10%以上が好ましく、20%以上が特に好ましい。一方で、コンテナ15の長手方向に対し鉛直方向のウィック構造体1の断面積は、ウィック構造体1内で液相から気相へ相変化した作動流体をコンテナ15の一方の端部11から他方の端部12方向へ円滑に流通させる点から、コンテナ15の長手方向に対し鉛直方向におけるコンテナ15の断面積の90%以下が好ましく、80%以下が特に好ましい。
【0039】
相互に隣接する箔21の構造保持部22からの立ち上がり基部(一方の端辺部23)における箔ピッチ(L)は、複数の箔21のアスペクト比に応じて適宜設定可能であるが、その下限値は、溝部25の幅(すなわち、相互に隣接する箔21間の距離)を確保して作動流体の流通性を得る、すなわち、圧力損失を確実に低減する点から2μmが好ましく、10μmがより好ましく、20μmが特に好ましい。一方で、箔ピッチ(L)の上限値は、毛細管力の低下を確実に防止する点から、300μmが好ましく、100μmがより好ましく、80μmが特に好ましい。
【0040】
箔21の材質は、特に限定されず、例えば、熱伝導性に優れた点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の点からステンレス等の金属(すなわち、金属箔)を使用することができる。また、箔21の材質としては、上記各種金属以外に、セラミック(ガラスを含む)や、熱伝導性の点から炭素材(例えば、グラファイト、ダイヤモンド等)を使用することもできる。また、構造保持部材22の材質としては、金属(銅、銅合金等)、セラミック、炭素材料を挙げることができる。
【0041】
また、構造保持部22は、ウィック構造体1のコンテナ15内面の底部側だけではなく、必要に応じて、ウィック構造体1の側面部まで延在させることで、構造保持部22を、ウィック構造体1を収容するコンテナとしても機能させてよい。
【0042】
コンテナ15の材質は、特に限定されず、例えば、熱伝導性に優れる点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の点からステンレス等を使用することができる。その他、使用状況に応じて、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル及びニッケル合金等を使用してもよい。また、コンテナ15に封入する作動流体としては、コンテナ15の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、代替フロン、パーフルオロカーボン、シクロペンタン等を挙げることができる。
【0043】
次に、本発明の第1実施形態例に係るウィック構造体1を収容したヒートパイプ10の熱輸送のメカニズムについて、図1、3、7を用いながら説明する。ここでは、ウィック構造体1の配置されたコンテナ15の一方の端部11を受熱部、他方の端部12を放熱部とした場合を例にとって説明する。
【0044】
まず、コンテナ15のうち、ウィック構造体1の構造保持部22が配置されている側に、発熱体(図示せず)を熱的に接続する。ウィック構造体1の構造保持部22は、コンテナ15内面と接触している。ヒートパイプ10が受熱部にて発熱体から受熱すると、ヒートパイプ10のコンテナ15からウィック構造体1の構造保持部22へ熱が伝達される。構造保持部22へ伝達された熱は、構造保持部22から箔21へと伝達され、ウィック構造体1内部(溝部25)にて、液相の作動流体が気相へ相変化する。ウィック構造体1の溝部25にて気相に相変化した作動流体が、溝部25を重力方向上側(箔21の立ち上がり基部から箔21の他方の端辺部24への方向)へ移動していき、溝部25から、相互に隣接する箔21の他方の端辺部24間に形成された開放部を介して、ウィック構造体1の外部へ放出される。コンテナ15の内部空間は、気相の作動流体が流通する蒸気流路14として機能する。ウィック構造体1の外部へ放出された気相の作動流体が、蒸気流路14を、コンテナ15の長手方向に受熱部から放熱部へと流れることで、発熱体からの熱が受熱部から放熱部へ輸送される。受熱部から放熱部へ輸送された発熱体からの熱は、必要に応じて熱交換手段の設けられた放熱部にて、気相の作動流体が液相へ相変化することで潜熱として放出される。放熱部にて放出された潜熱は、放熱部からヒートパイプ10の外部環境へ放出される。放熱部にて気相から液相に相変化した作動流体は、例えば、コンテナ15の内面に設けられた複数の細溝や金属粉の焼結体等のウィック部(図示せず)に取り込まれ、該ウィック部の毛細管力によって、放熱部から受熱部へと返送される。
【0045】
第1実施形態例に係るウィック構造体1では、複数の箔21が、それぞれ離間して配置されていることにより、ウィック構造体1は、毛細管力が損なわれることなく、ウィック構造体1中を流通する作動流体の圧力損失を低減できる。従って、ウィック構造体1は、放熱部から受熱部への液相の作動流体の還流特性を維持しつつ、ウィック構造体1内部における気相の作動流体の流通性に優れている。よって、ウィック構造体1がコンテナ15内部に収容されることにより、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプ10を得ることができる。
【0046】
次に、本発明の第1実施形態例に係るウィック構造体1の製造方法例について説明する。ウィック構造体1の製造方法としては、例えば、3Dプリンタや金属粉末造形にて製造することができる。本発明のウィック構造体のような高アスペクト比率の構造をエッチングで実現するには深彫りが難しくなるが、3Dプリンタでは微細部分の積層により、高アスペクト比構造の製造が可能となる。3Dプリンタとしては、溶液光硬化積層方式、溶融積層方式、材料押出光硬化方式、粉末床溶融結合方式等を採用することができる。
【0047】
次に、本発明の他の実施形態例に係るウィック構造体について説明する。第1実施形態例に係るウィック構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。図5に示すように、第2実施形態例に係るウィック構造体2として、箔21の立ち上がり基部に沿って、必要に応じて、さらに、箔支持部30が形成されたウィック構造体2としてもよい。箔支持部30は、例えば、凸形状である。箔支持部30を設けることで、箔21が構造保持部22に安定的に保持される。箔21と構造保持部22は完全に化学結合しているとは限らない場合もあり得、そのような場合には、箔支持部30による保持効果がより重要となる。
【0048】
また、図6に示すように、第2実施形態例に係るウィック構造体2として、相互に隣接する箔21間に、必要に応じて、さらに、金属製のメッシュ材、金属粉の焼結体、金属短繊維の焼結体、ポーラス金属等の多孔質部材31が設けられたウィック構造体3としてもよい。ウィック構造体3では、構造保持部22の表面に多孔質部材31が設けられている。多孔質部材31が設けられることで、ウィック構造体3の毛細管力と熱伝達特性がより向上する。
【0049】
また、第1実施形態例に係るウィック構造体1では、それぞれの箔21、21・・・は略等間隔に配置されていたが、それぞれの箔21、21・・・は、相互に異なる間隔で配置されてもよい。
【0050】
また、第1実施形態例に係るウィック構造体1では、それぞれの箔21、21・・・は、いずれも略同じ高さであり、それぞれの箔21、21・・・の先端部の位置が略同じであったが、箔21、21・・・の高さは、少なくとも一部の箔21において異なっていてもよく、箔21、21・・・の先端部の位置は、少なくとも一部の箔21において異なっていてもよい。また、作動流体は主に受熱部にて液相から気相へ相変化することから、放熱部から受熱部へ向かうほど箔21の高さが低くなっている態様とすることにより、熱輸送特性の向上が見込める場合もある。
【0051】
第1実施形態例に係るウィック構造体1では、それぞれの箔21、21・・・は、コンテナ15の長手方向に対して鉛直方向に立設されていたが、箔21の立設方向、すなわち、箔21の一方の端辺部23から他方の端辺部24への方向は、特に限定されない。例えば、平面型ヒートパイプにウィック構造体1が収容される場合には、箔21の一方の端辺部23から他方の端辺部24への方向が、平面型ヒートパイプの平面方向に沿っている態様としてもよい。この場合、箔21の平面部は、平面型ヒートパイプの平面方向に沿って延在している。
【0052】
また、扁平形状のコンテナ10においても、箔21の一方の端辺部23から他方の端辺部24への方向が、扁平形状のヒートパイプの平坦部方向に沿っている態様としてもよい。この場合、箔21の平面部は、扁平形状のヒートパイプの平坦部方向に沿って延在している。
【0053】
第1実施形態例に係るウィック構造体1は、コンテナ15の一方の端部11に配置され、中央部13と他方の端部12にはウィック構造体1は配置されていなかったが、これに代えて、中央部13及び/または他方の端部12にもウィック構造体1が配置されてもよい。
【0054】
第1実施形態例に係るウィック構造体1の収容されたヒートパイプ10は、コンテナ15の長手方向に対して直交方向の断面形状が扁平形状であったが、コンテナ15は扁平加工されていなくてもよく、該断面形状は、例えば、円形、角丸長方形、多角形等でもよい。また、第1実施形態例に係るウィック構造体1の収容されたヒートパイプ10は、コンテナ15の長手方向の形状は略直線状となっていたが、これに代えて、U字状、L字状等、曲部を有する形状としてもよい。
【0055】
また、第1実施形態例に係るウィック構造体1では、それぞれの箔21、21・・・は、少なくとも構造保持部22からの立ち上がり基部において、相互に略平行に並列配置されていたが、それぞれの箔21、21・・・の配置関係は、略平行に限定されず、例えば、ランダムに配置されてもよい。また、箔21、21・・・は、平面視において、放射状に配置されてもよく、箔21が連なって弧状に配置されてもよい。
【0056】
また、第1実施形態例に係るウィック構造体1では、箔21の表面形状は平面状であったが、これに代えて、表面が湾曲した形状、表面に段差が形成された形状、表面が波形に加工された形状等としてもよい。
【0057】
また、構造保持部22の位置は、特に限定されず、例えば、図4の第4実施形態例に係るウィック構造体4に示すように、それぞれの箔21、21・・・が、複数の構造保持部22によって所定の間隔をおいて複数に分断されていてもよい。なお、図4のウィック構造体4について、上記ウィック構造体1、2、3と同じ構成要素については、同じ符号を用いている。
【0058】
ウィック構造体4では、2つのコ字状の構造保持部22が設けられている。それぞれの箔21、21・・・について、その一方の端辺部23と他方の端辺部24との間に構造保持部22が設けられ、それぞれの箔21、21・・・は、箔21の高さ方向において、2つまたは3つに分断されている。ウィック構造体4では、それぞれの構造保持部22によって、正面視矩形状の切り欠き41が形成されている。
【0059】
箔21は、複数(ウィック構造体4では2つ)の構造保持部21のうちの少なくとも1つの構造保持部21を介して、隣接する他の箔21を含めて、それぞれの箔21、21・・・と連結されている。なお、ウィック構造体4では、箔21の一方の端辺部23にも他方の端辺部23にも構造保持部21は設けられていない。
【0060】
ウィック構造体4でも、複数の箔21、21・・・が、それぞれ離間して設けられていることにより、毛細管力を損なうことなく、複数の箔21、21・・・の間を流通する作動流体の圧力損失を低減できる。また、箔21は、放熱フィンとしての機能も発揮できる点でも、優れた熱輸送特性を発揮するヒートパイプ10を得ることができる。
【0061】
次に、本発明の第5実施形態例に係るウィック構造体について説明する。第1~第4実施形態例に係るウィック構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。第1~第3実施形態例に係るウィック構造体1では、構造保持部22は、コンテナ15内面の底部に沿って延在した平面状の部位であったが、これに代えて、図2に示すように、第5実施形態例に係るウィック構造体5では、構造保持部22は、箔21を所定間隔にて連結する棒状部材である。
【0062】
ウィック構造体5では、棒状部材である構造保持部22が、箔21の各角部にて、それぞれの箔21、21、・・・に嵌挿されている。構造保持部22は、複数(図2では、4本)の棒状部材で構成されている。それぞれの箔21、21・・・が棒状部材である構造保持部22に嵌挿されることで、箔21が位置決めされて、並列に配置されている。
【0063】
棒状部材の材質としては、特に限定されないが、例えば、熱伝導性に優れた点から、箔21と同じ材質を挙げることができる。具体的には、例えば、銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の点からステンレス等の金属(すなわち、金属箔)を使用することができる。また、棒状部材箔21の材質としては、上記各種金属以外に、セラミック(ガラスを含む)や、熱伝導性の点から炭素材(例えば、グラファイト、ダイヤモンド等)を使用することもできる。
【0064】
次に、本発明の第6実施形態例に係るウィック構造体と第6実施形態例に係るウィック構造体が収容された平面型のヒートパイプ(以下、「ベーパーチャンバ」ということがある。)について、図面を用いながら説明する。まず、ウィック構造体が収容されたベーパーチャンバについて説明する。
【0065】
図8、9に示すように、ベーパーチャンバ60のコンテナ15内部に、第6実施形態例に係るウィック構造体6が収容される。コンテナ15は、中空の平面型の部材である。コンテナ15内部には、作動流体(図示せず)が封入されている。
【0066】
コンテナ15は、密閉された部材である。コンテナ15は、対向する2枚の板状部材、すなわち、一方の板状部材61と一方の板状部材61と対向する他方の板状部材62が積層されて形成されている。一方の板状部材61は平板状である。他方の板状部材62も平板状であるが、中央部が凸状に塑性変形されている。他方の板状部材62の、外側に向かって突出し、凸状に塑性変形された部位が、コンテナ15の凸部63であり、凸部63の内部が空洞部となっている。空洞部は、脱気処理により減圧されている。一方の板状部材61の周縁部と他方の板状部材62の周縁部とが接合されることで、コンテナ15の空洞部が気密状態となっている。接合方法としては、特に限定されず、例えば、ろう付け、レーザ溶接、抵抗接合、圧接接合等を挙げることができる。
【0067】
コンテナ15の平面視の形状は、特に限定されないが、ベーパーチャンバ60では、図9に示すように、四角形状となっている。
【0068】
コンテナ15の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~2.0mmである。また、一方の板状部材61と他方の板状部材62の厚さは、特に限定されないが、例えば、それぞれ、0.1mmを挙げることができる。ベーパーチャンバ60の熱輸送方向は、コンテナ15の平面方向である。
【0069】
図8に示すように、ベーパーチャンバ60のコンテナ15内部に収容されるウィック構造体6は、複数の第1の箔21と、第1の箔21を保持するための構造保持部22と、を有している。それぞれの第1の箔21、21・・・が構造保持部22に保持されることで、第1の箔21が位置決めされている。
【0070】
それぞれの第1の箔21、21・・・の形状は、平坦な矩形のシート状(フィルム状)となっている。それぞれの第1の箔21、21・・・は、コンテナ15の平面方向に対して鉛直方向に立設されている。また、それぞれの第1の箔21、21・・・は、構造保持部22から鉛直方向に延在している。さらに、それぞれの第1の箔21、21・・・は、コンテナ15の平面方向に沿って、所定間隔で並列に配置されている。従って、それぞれの第1の箔21、21・・・は、離間して配置されている。
【0071】
また、図8、9に示すように、ウィック構造体6は、第1の箔21間に、第1の箔21よりも厚い第2の箔26が立設されている。ウィック構造体6では、第2の箔26を複数有している。第2の箔26が構造保持部22に保持されることで、第2の箔26が位置決めされている。
【0072】
第2の箔26の形状は、平坦な矩形のシート状(フィルム状)となっている。第2の箔26は、コンテナ15の平面方向に対して鉛直方向に立設されている。また、第2の箔26は、構造保持部22から鉛直方向に延在している。さらに、第2の箔26は、並列に配置されている第1の箔21間に配置されており、且つ、コンテナ15の平面方向に沿って、所定間隔で並列に配置されている。従って、第2の箔26は、他の第2の箔26に対し所定間隔で並列に配置され、第1の箔21に対しても所定間隔で並列に配置されている。相互に隣接する第2の箔26間には、複数の第1の箔21が立設されている。
【0073】
ベーパーチャンバ60のコンテナ15は平面型であり、コンテナ15を構成する一方の板状部材61と他方の板状部材62の厚さも0.1mm程度と薄いので、コンテナ15内部を脱気処理して減圧状態にすると、コンテナ15に空洞部方向への応力が生じる。しかし、ウィック構造体6に第1の箔21よりも厚い第2の箔26がさらに設けられていることにより、コンテナ15に空洞部方向への応力が生じても、第2の箔26がコンテナ15に対する支持部材として機能し、コンテナ15内部に収容されているウィック構造体6の変形、損傷を確実に防止できる。また、第2の箔26が支持部材として機能するために、コンテナ15の平面方向に対し鉛直方向の第2の箔26の寸法(第2の箔26の高さ)は、コンテナ15の平面方向に対し鉛直方向の第1の箔21の寸法(第1の箔21の高さ)よりも高くなっている。
【0074】
ベーパーチャンバ60のウィック構造体6では、隣接する第2の箔26間に配置された複数の第1の箔21、21・・・及び第2の箔26とコンテナ15側面との間に配置された複数の第1の箔21、21・・・は、少なくとも構造保持部22からの立ち上がり基部において、略等間隔に配置されている。なお、図8では、隣接する第2の箔26間に配置された複数の第1の箔21、21・・・及び第2の箔26とコンテナ15側面との間に配置された複数の第1の箔21、21・・・は、構造保持部22からの立ち上がり基部から先端部である自由端にわたって、略等間隔に配置されている。また、複数の第2の箔26、26・・・も、相互に略等間隔に配置されている。さらに、ベーパーチャンバ60のウィック構造体6では、複数の第1の箔21、21・・・及び複数の第2の箔26、26・・・は、少なくとも構造保持部22からの立ち上がり基部において、相互に略平行に並列配置されている。なお、図8では、第1の箔21、21・・・と第2の箔26、26・・・は、構造保持部22からの立ち上がり基部から先端部である自由端にわたって、相互に略平行に並列配置されている。
【0075】
なお、上記の通り、第2の箔26よりも厚さの薄い第1の箔21は、コンテナ15の平面方向に対して鉛直方向に立設されているので、平坦な形状を維持できず、一部に曲部が形成される等、鉛直方向の形状に変形が生じ得る。よって、第1の箔21は、隣接する他の第1の箔21または隣接する第2の箔26に対して、構造保持部22からの立ち上がり基部よりも自由端側の部位においては、構造保持部22からの立ち上がり基部における間隔よりも近接していてもよく、また、接触してもよい。
【0076】
上記した第1の箔21及び第2の箔26の構成から、図9に示すように、第1の箔21、21・・・及び第2の箔26・・・は、それぞれ、コンテナ15の平面方向に沿って延在している態様となっている。なお、ベーパーチャンバ60では、ウィック構造体6の第1の箔21及び第2の箔26は、コンテナ15の中央部とその近傍にわたって配置され、コンテナ15の周縁部には、ウィック構造体6は配置されていない。
【0077】
図8に示すように、第1の箔21、21・・・は、それぞれ、高さ方向における一方の端辺部23が構造保持部22に保持されることで、位置決めされている。従って、第1の箔21の一方の端辺部23が、構造保持部22からの立ち上がり基部となっている。すなわち、第1の箔21、21・・・は、それぞれ、構造保持部22から立設している態様となっており、それぞれの第1の箔21、21・・・は、構造保持部22を介して、相互に連結されている。
【0078】
第1の箔21と同じく、第2の箔26、26・・・も、それぞれ、高さ方向における一方の端辺部27が構造保持部22に保持されることで、位置決めされている。従って、第2の箔26の一方の端辺部27が、構造保持部22からの立ち上がり基部となっている。すなわち、第2の箔26、26・・・は、それぞれ、構造保持部22から立設している態様となっており、それぞれの第2の箔26、26・・・は、構造保持部22を介して相互に連結され、さらに、構造保持部22を介して第1の箔21、21・・・とも相互に連結されている。
【0079】
一方で、第1の箔21の一方の端辺部23と対向する他方の端辺部24は、固定されておらず、自由端となっている。ウィック構造体6では、第1の箔21の他方の端辺部24の先端は、コンテナ15の内面に接触していない。また、第1の箔21と同様に、第2の箔26の一方の端辺部27と対向する他方の端辺部28は、固定されておらず、自由端となっている。従って、相互に隣接する第1の箔21の他方の端辺部24間は、開放部となっており、第2の箔26の他方の端辺部28と第2の箔26に隣接する第1の箔21の他方の端辺部24間も、開放部となっている。
【0080】
上記から、相互に隣接する第1の箔21間には、空隙部である第1の溝部65が形成されている。第1の箔21の表面形状は平坦、すなわち、平面状なので、ベーパーチャンバ10の平面方向に対して直交方向における第1の溝部65の断面形状は、矩形状となっている。さらに、第1の溝部65は、相互に隣接する第1の箔21間をベーパーチャンバ60の平面方向に沿って延在している。また、構造保持部22表面は、第1の溝部65の底部に対応する。従って、第1の溝部65の深さ(D)は、構造保持部22表面から第1の箔21の他方の端辺部24までの距離に相当する。
【0081】
また、第2の箔26と第2の箔26に隣接する第1の箔21との間には、空隙部である第2の溝部66が形成されている。第2の箔26の表面形状は平坦、すなわち、平面状なので、ベーパーチャンバ60の平面方向に対して直交方向における第2の溝部66の断面形状は、矩形状となっている。さらに、第2の溝部66は、第2の箔26と第2の箔26に隣接する第1の箔21との間をベーパーチャンバ60の平面方向に沿って延在している。
【0082】
ウィック構造体6では、第1の箔21の他方の端辺部24側が開放部となっており、さらに第1の溝部65の上記断面形状は矩形状となっているので、第1の溝部65にて液相から気相へ相変化した作動流体は、第1の溝部65から、他方の端辺部24間の開放部を介して、円滑に、ウィック構造体6の外部へ放出される。また、ウィック構造体6では、第2の箔26の他方の端辺部28側も、開放部となっており、さらに第2の溝部66の上記断面形状は矩形状となっているので、第2の溝部66にて液相から気相へ相変化した作動流体は、第2の溝部66から、他方の端辺部24と他方の端辺部28との間の開放部を介して、円滑に、ウィック構造体6の外部へ放出される。従って、第1の溝部65、第2の溝部66にて液相から気相へ相変化した作動流体がウィック構造体6の外部へ放出されるにあたり、圧力損失を低減でき、ひいては、コンテナ15内における気相の作動流体の流通を、円滑化できる。
【0083】
ウィック構造体6では、複数の第1の箔21、21・・・のアスペクト比は、特に限定されないが、例えば、アスペクト比が2以上1000以下となるように配置されている。「アスペクト比」とは、上記の通り、相互に隣接する第1の箔21の立ち上がり基部(一方の端辺部23)における箔の厚さ(T)に対する、相互に隣接する第1の箔21間に形成された第1の箔21の高さ(D)(第1の箔の高さ(D)/第1の箔の厚さ(T))を意味する。なお、図8に示すように、箔ピッチ(L)は、一つの第1の箔21の一方の面と、該一つの第1の箔21と隣接した他の第1の箔21のうち該一つの第1の箔21と対向していない面との間の距離である。アスペクト比が2以上1000以下となるように、複数の第1の箔21、21・・・が配置されていることにより、毛細管力をより向上させつつ、ウィック構造体6を流通する作動流体の圧力損失をさらに低減できる。また、ウィック構造体6がコンテナ15に収容されることにより、優れた熱輸送特性を発揮するベーパーチャンバ60を得ることができる。なお、シート状(フィルム状)の第1の箔21が、立設されていることで平坦な形状を維持できずに曲部を有する等、ウィック構造体6の第1の箔21の形状に変形が生じている場合には、該変形を解消した形状を前提として上記アスペクト比を算出する。
【0084】
上記の通り、第1の箔21のアスペクト比は、例えば、2以上1000以下であるが、その下限値は、ウィック構造体1の毛細管力をさらに向上させて液相の作動流体の還流をより円滑化させる点から、70がより好ましく、80がさらに好ましく、90が特に好ましい。また、第1の箔21のアスペクト比の上限値は、液相から気相に相変化した作動流体がウィック構造体1中を流通する際の圧力損失を確実に低減する点から、480がより好ましく、330が特に好ましい。
【0085】
また、第1の箔21のアスペクト比は、それぞれの第1の箔21、21・・・において、同じアスペクト比でもよく、異なるアスペクト比でもよい。
【0086】
第1の箔21及び第2の箔26の表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されず、平滑面でもよいが、その下限値は、毛細管力の向上に寄与させる点から0.01μmが好ましく、0.02μmが特に好ましい。一方で、第1の箔21及び第2の箔26の表面の算術平均粗さ(Ra)の上限値は、特に限定されないが、気相の作動流体の円滑な流通の点から1.0μmが好ましく、0.5μmが特に好ましい。
【0087】
また、ウィック構造体6では、第2の箔26の厚さは、第1の箔21の厚さよりも厚い態様となっている。第2の箔26の厚さは、第1の箔21の厚さよりも厚い態様であれば特に限定されないが、例えば、その下限値は、支持部材としての機能を確実に得る点から35μmが好ましく、40μmが特に好ましい。一方で、第2の箔26の厚さの上限値は、気相の作動流体の円滑な流通の点から300μmが好ましく、200μmが特に好ましい。また、第1の箔21の厚さは、例えば、その下限値は、機械的強度の点から1μmが好ましく、2μmが特に好ましい。一方で、第1の箔21の厚さの上限値は、第1の溝部35の幅を確保しつつ、アスペクト比を向上させる点から30μmが好ましく、25μmが特に好ましい。また、第1の箔21の厚さは、6μm以下の厚さの場合、優れた取り扱い性は得られないが、ウィック構造体6の毛細管力を向上させる点から、第1の箔21の厚さは薄い方が好ましい。
【0088】
第1の箔21の高さは、特に限定されないが、液相の作動流体を放熱部から受熱部方向へ円滑に還流させる点から、コンテナ15空洞部の平面方向に対し鉛直方向の寸法の10%以上が好ましく、20%以上が特に好ましい。一方で、第1の箔21の高さは、ウィック構造体1内で液相から気相へ相変化した作動流体を受熱部から放熱部方向へ円滑に流通させる点から、コンテナ15空洞部の平面方向に対し鉛直方向の寸法の90%以下が好ましく、80%以下が特に好ましい。
【0089】
相互に隣接する第1の箔21の構造保持部22からの立ち上がり基部(一方の端辺部23)における箔ピッチ(L)は、複数の第1の箔21、21・・・のアスペクト比に応じて適宜設定可能であるが、その下限値は、第1の溝部65の幅(すなわち、相互に隣接する第1の箔21間の距離)を確保して作動流体の流通性を得る、すなわち、圧力損失を確実に低減する点から2μmが好ましく、10μmがより好ましく、20μmが特に好ましい。一方で、箔ピッチ(L)の上限値は、毛細管力の低下を確実に防止する点から100μmが好ましく、80μmが特に好ましい。
【0090】
第1の箔21の材質は、特に限定されず、例えば、熱伝導性に優れた点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の点からステンレス等の金属(すなわち、金属箔)を使用することができる。また、第1の箔21の材質としては、上記各種金属以外に、セラミック(ガラスを含む)や、熱伝導性の点から炭素材(例えば、グラファイト、ダイヤモンド等)を使用することもできる。第2の箔26の材質は、特に限定されず、例えば、第1の箔21と同じく、熱伝導性に優れた点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の点からステンレス等の金属(すなわち、金属箔)を使用することができる。第2の箔26として使用する金属箔の態様としては、貫通孔を有さない金属、複数の貫通孔を有する金属等の多孔質材、金属メッシュ等が挙げられる。また、第2の箔26の材質としては、上記各種金属以外に、セラミック(ガラスを含む)や、熱伝導性の点から炭素材(例えば、グラファイト、ダイヤモンド等)を使用することもできる。第1の箔21の材質と第2の箔26の材質は、同じでもよく、異なっていてもよい。また、構造保持部材22の材質としては、金属(銅、銅合金等)、セラミック、炭素材料を挙げることができる。
【0091】
コンテナ15の材質は、特に限定されず、例えば、熱伝導性に優れる点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、強度の点からステンレス等を使用することができる。その他、使用状況に応じて、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル及びニッケル合金等を使用してもよい。また、コンテナ15に封入する作動流体としては、コンテナ15の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、代替フロン、パーフルオロカーボン、シクロペンタン等を挙げることができる。
【0092】
次に、本発明の第6実施形態例に係るウィック構造体6を収容したベーパーチャンバ60の熱輸送のメカニズムについて、図8、9を用いながら説明する。ここでは、ウィック構造体6の配置されたコンテナ15の中央部を受熱部、周縁部を放熱部とした場合を例にとって説明する。
【0093】
まず、コンテナ15外面のうち、ウィック構造体6の構造保持部22が配置されている側に、発熱体(図示せず)を熱的に接続する。ウィック構造体6の構造保持部22は、コンテナ15内面と接触している。ベーパーチャンバ60が受熱部にて発熱体から受熱すると、ベーパーチャンバ60のコンテナ15からウィック構造体6の構造保持部22へ熱が伝達される。構造保持部22へ伝達された熱は、構造保持部22から第1の箔21と第2の箔26へと伝達され、ウィック構造体6内部(第1の溝部65と第2の溝部66)にて、液相の作動流体が気相へ相変化する。ウィック構造体6の第1の溝部65と第2の溝部66にて気相に相変化した作動流体が、第1の溝部65と第2の溝部66を重力方向上側(箔の立ち上がり基部から箔の他方の端辺部への方向)へ移動する。重力方向上側へ移動した気相の作動流体は、第1の溝部65と第2の溝部66から、それぞれ、相互に隣接する第1の箔21の他方の端辺部24間に形成された開放部と、第1の箔21の他方の端辺部24と第2の箔26の他方の端部28間に形成された開放部と、を介して、ウィック構造体6の外部へ放出される。コンテナ15の内部空間は、気相の作動流体が流通する蒸気流路14として機能する。ウィック構造体6の外部へ放出された気相の作動流体が、蒸気流路14を、コンテナ15の平面方向に受熱部(中央部)から放熱部(周縁部)へと流れることで、発熱体からの熱が受熱部から放熱部へ輸送される。受熱部から放熱部へ輸送された発熱体からの熱は、必要に応じて熱交換手段の設けられた放熱部にて、気相の作動流体が液相へ相変化することで潜熱として放出される。放熱部にて放出された潜熱は、放熱部からベーパーチャンバ60の外部環境へ放出される。放熱部にて気相から液相に相変化した作動流体は、例えば、コンテナ15の内面に設けられた複数の細溝等のウィック部(図示せず)に取り込まれ、該ウィック部の毛細管力によって、放熱部から受熱部へと返送される。
【0094】
第6実施形態例に係るウィック構造体6では、複数の第1の箔21、21・・・が、それぞれ離間して配置されていることにより、ウィック構造体6は、毛細管力が損なわれることなく、ウィック構造体6中を流通する作動流体の圧力損失を低減できる。従って、ウィック構造体6は、放熱部から受熱部への液相の作動流体の還流特性を維持しつつ、ウィック構造体6内部における気相の作動流体の流通性に優れている。よって、ウィック構造体6がコンテナ15内部に収容されることにより、優れた熱輸送特性を発揮するベーパーチャンバ60を得ることができる。さらに、平面型のコンテナ15の内部が減圧状態であることにより、コンテナ15の内部方向へ応力が生じても、第2の箔26が支持部材として機能するので、コンテナ15内部に収容されているウィック構造体6の変形、損傷を確実に防止でき、優れた熱輸送特性を長期にわたって維持できる。
【0095】
ウィック構造体6で使用される第1の箔21がシート状部材なので、細かな空隙を有するメッシュ部材や金属粉の焼結体等からなるウィック構造体と比較して、その構造上、熱伝導性に優れている。従って、発熱体からウィック構造体6への熱伝導性に優れるとともに、ウィック構造体6から外部への熱伝導性にも優れるので、結果として、ベーパーチャンバ60の熱輸送特性が向上する。
【0096】
次に、本発明の第6実施形態例に係るウィック構造体6の製造方法例について説明する。ウィック構造体6の製造方法としては、例えば、3Dプリンタや金属粉末造形にて製造することができる。3Dプリンタとしては、溶液光硬化積層方式、溶融積層方式、材料押出光硬化方式、粉末床溶融結合方式等を採用することができる。
【0097】
次に、本発明の第7実施形態例に係るウィック構造体について説明する。第1~第6実施形態例に係るウィック構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0098】
第6実施形態例に係るウィック構造体6では、第1の箔21と第2の箔26は、いずれも、相互に略平行に並列配置されていたが、これに代えて、図10に示すように、第7実施形態例に係るウィック構造体7では、所定領域の第1の箔21の面が、他の所定領域の第1の箔21の面に対して平行ではない方向に延在している。さらに、所定領域の第2の箔26の面が、他の所定領域の第2の箔26の面に対して平行ではない方向に延在している。ウィック構造体7では、第1の箔21の面と第2の箔26の面が、コンテナ15空洞部の中心Cに向かって延在するように配置されている。
【0099】
ウィック構造体7は、平面視略正方形であるコンテナ15の空洞部を等分するように、複数の領域(図10では、領域7-1、領域7-2、領域7-3、領域7-4の4つの領域)に区分されている。領域7-1に立設された第1の箔21の面と第2の箔26の面は、中心Cと対称となる位置にある領域7-3に立設された第1の箔21の面と第2の箔26の面に対して略平行方向に延在している。一方で、領域7-1と領域7-3に立設された第1の箔21の面と第2の箔26の面は、中心Cと対称となる位置ではない領域7-2と領域7-4に立設された第1の箔21の面と第2の箔26の面に対しては平行ではない方向(図10では、約90°の方向)に延在している。また、領域7-2に立設された第1の箔21の面と第2の箔26の面は、中心Cと対称となる位置にある領域7-4に立設された第1の箔21の面と第2の箔26の面に対して略平行方向に延在している。
【0100】
ウィック構造体7では、ベーパーチャンバ60の平面方向において、液相から気相へ相変化した作動流体の、コンテナ15空洞部の中心Cからの拡散が均等化される。さらに、ウィック構造体7では、気相から液相へ相変化した作動流体の、コンテナ15空洞部の中心Cへの還流が円滑化される。従って、コンテナ15の中心Cまたはその近傍に発熱体を熱的に接続すると、ベーパーチャンバ60の熱輸送特性がさらに向上する。
【0101】
なお、図10、11に示すように、ウィック構造体7では、領域7-1、領域7-2、領域7-3、領域7-4の周囲には、それぞれ、毛細管力を有するウィック部40が設けられている。ウィック部40としては、例えば、金属メッシュ、金属粉の焼結体等を挙げることができる。ウィック部40が設けられていることにより、作動流体が、領域7-1、領域7-2、領域7-3及び領域7-4の第1の箔21へ円滑に供給される。
【0102】
第6、7実施形態例に係るウィック構造体6、7では、必要に応じて、第1の箔21と第2の箔26の立ち上がり基部に沿って、さらに、上記と同様の箔支持部が形成されていてもよい。箔支持部は、例えば、凸形状である。箔支持部30を設けることで、第1の箔21と第2の箔26が構造保持部22に安定的に保持される。
【0103】
第6、7実施形態例に係るウィック構造体6、7では、必要に応じて、相互に隣接する第1の箔21間と、第2の箔26と第2の箔26に隣接する第1の箔21間に、それぞれ、さらに、上記と同様の、金属製のメッシュ材、金属粉の焼結体、金属短繊維の焼結体、ポーラス金属等の多孔質構造体が設けられてもよい。構造保持部22の表面に、多孔質構造体を設けることができる。従って、第1の溝部65と第2の溝部66を形成する空隙部は維持されている。多孔質構造体が設けられることで、ウィック構造体6、7の毛細管力と熱伝達特性がより向上する。
【0104】
次に、本発明の他の実施形態例に係るウィック構造体について説明する。上記第6、第7実施形態例のウィック構造体では、支持部材として機能する第2の箔26が設けられていたが、ウィック構造体の使用状況等に応じて、第2の箔26は設けなくてもよい。また、上記第6、第7実施形態例に係るウィック構造体では、第1の箔21及び第2の箔26は、いずれも、略等間隔に配置されていたが、これに代えて、異なる間隔で配置されてもよい。
【0105】
また、上記第6、第7実施形態例のウィック構造体では、構造保持部22はコンテナ15内面と直接接した態様となっているが、構造保持部22とコンテナ15内面との間に、必要に応じて、銅粉等の金属粉の焼結体、銀ろう、はんだ等が介在してもよい。この場合、構造保持部22は、銅粉等の金属粉の焼結体、銀ろう、はんだ等によってコンテナ15内面に固定される、ひいては、ウィック構造体1が、銅粉等の金属粉の焼結体、銀ろう、はんだ等によってコンテナ15内面に固定されることとなる。また、銅粉等の金属粉の焼結体は、毛細管力を有するので、液相の作動流体をウィック構造体1の位置まで還流させるウィック部としても機能する。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のウィック構造体は、毛細管力を損なうことなく、流通する作動流体の圧力損失を低減できるので、例えば、高発熱量の電子部品等を冷却するヒートパイプの分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0107】
1、2、3、4、5、6、7 ウィック構造体
10 ヒートパイプ
15 コンテナ
21 箔(第1の箔)
22 構造保持部
25 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12