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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】シラン架橋樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20220630BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220630BHJP
【FI】
C08J3/24 A CES
C08L23/00
C08K5/5425
C08K5/098
C08K3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019038506
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020143184
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】松村 有史
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 崇範
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-101129(JP,A)
【文献】特開2016-121203(JP,A)
【文献】特開2015-067708(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147148(WO,A1)
【文献】特開平09-235431(JP,A)
【文献】特開昭58-129044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H01B 3/16- 3/56
H01B 7/00-7/02;7/29-7/42
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)に対して、有機過酸化物(A2)とシランカップリング剤(A3)とを、それぞれ所定の混合割合で、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合してシランマスターバッチ(A)を調製する工程(a)と、
ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して、シラノール縮合触媒(B2)を所定の混合割合で溶融混合して触媒マスターバッチ(B)を調製する工程(b)と、
前記工程(a)で得られた前記シランマスターバッチ(A)と前記工程(b)で得られた前記触媒マスターバッチ(B)とを混合した後に成形する工程(c)と、
前記工程(c)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程(d)を有するシラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記工程(a)では、前記シランマスターバッチ(A)に無機フィラーを含有させず、
前記工程(b)では、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して更に無機フィラー(B3)を所定の混合割合で溶融混合して触媒マスターバッチ(B)を調製し、
前記工程(c)では、前記シランマスターバッチ(A)と前記触媒マスターバッチ(B)とが、前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)と前記ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)の合計100質量部に対して、前記有機過酸化物(A2)が0.003~0.3質量部、前記シラノール縮合触媒(B2)が0.01~0.5質量部、前記無機フィラー(B3)が15~50質量部になるように混合され、前記シランカップリング剤(A3)が、前記合計100質量部に対して、2質量部を超え、10質量部以下の配合量になるように混合されることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)では、前記シランマスターバッチ(A)と前記触媒マスターバッチ(B)とが、前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)と前記ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)のベース樹脂比40:60~95:5で混合されることを特徴とする請求項1に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤(A3)が、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記無機フィラー(B3)が、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記無機フィラー(B3)が、水酸化マグネシウムがシランカップリング剤で表面処理されたものであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)において、前記シランマスターバッチ(A)の前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)中、エチレン系共重合体が10~100重量%含有されることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)において、前記シランマスターバッチ(A)の前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)中、エチレン系共重合体が酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するエチレン系共重合体であって、共重合体成分が10~40重量%含有されることを特徴とする請求項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン架橋樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器分野や産業分野に使用される絶縁電線、チューブ、ケーブル、コード、光ファイバー心線又は光ファイバーコード(光ファイバーケーブル)等の配線材は、例えば、ポリオレフィン樹脂からなる被覆層を有している。この被覆層を形成するポリオレフィン樹脂を架橋すると、被覆層の耐熱性を向上させることができる。
ポリオレフィン樹脂を架橋する方法として、特殊な設備を要しない等の利点を有するシラン架橋法が知られている。シラン架橋法では、まず、有機過酸化物の存在下で、加水分解性シリル基と不飽和基とを有するシランカップリング剤をポリオレフィン樹脂にグラフト反応させたシラングラフト樹脂を調製する。次いで、得られたシラングラフト樹脂をシラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させることにより、加水分解性シリル基を縮合する。このようにして、ポリオレフィン樹脂をシラン架橋させることができる。
【0003】
シラン架橋法により、配線材を製造する場合、通常、シラングラフト樹脂を含有するシランマスターバッチ(ベース樹脂組成物)と、シラノール縮合触媒を含有する触媒マスターバッチ(シラン架橋用触媒組成物)とを用いる。
例えば、特許文献1に記載の発明では、シラングラフト樹脂を含有した難燃コンパウンドと、シラノール縮合触媒と特定のポリプロピレンとプロピレンワックスとを混合してなる触媒マスターバッチとが用いられている。
また、特許文献2に記載の発明では、触媒マスターバッチのベース樹脂(キャリア樹脂)に、エチレン-αオレフィン共重合体樹脂等の特定の樹脂成分のほか、鉱物性オイルを含有させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-196397号公報
【文献】特開2018-178029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気・電子機器等の小型化や軽量化が進展し、これらの機器等に用いられる配線材には細径化の要求が高まっている。このような要求を満たす配線材を、上記シラン架橋法により押出成形して製造する場合、押出機のスクリュー回転数が同じであれば、配線材の径が太い場合に比べて径が細い場合の方が、成形された配線材が押出機から押し出される速度が速くなり、理論上、配線材の径が細ければ細いほど押出機から押し出される速度が速くなる。しかし、その速度にも限界があるため、配線材の径が細い場合でも、一般的に押出機のスクリュー回転数を低くして成形された配線材が押出機から押し出される速度を下げる。
しかしながら、このように押出機のスクリュー回転数を低くすると、シラングラフト樹脂が押出機のシリンダー内に長時間滞留することになるため、シリンダーの熱によってシラン架橋しやすくなる。そして、押出成形中にシラングラフト樹脂がシラン架橋すると、ゲル状のブツ(凝集塊)が形成され、得られる配線材の外観が悪化する。
【0006】
この点、特許文献2では、触媒マスターバッチが特定の樹脂成分のほかに鉱物性オイルを含有するように構成することで、押出機のシリンダー内でシランマスターバッチと触媒マスターバッチとを混合する際に、混合されるコンパウンドに滑性が付与されるため、シリンダー内壁に付着しにくくなる等が原因となり、押出機のスクリュー回転数を低くしてもブツのない優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体が得られることが記載されている。
本発明者らは、このようなシラン架橋樹脂成形体の製造方法等について更に研究を重ねた結果、触媒マスターバッチやシランマスターバッチのベース樹脂として特定の樹脂成分を用いなくても、また、それらに鉱物性オイルを含有させてもよいが鉱物性オイルを含有させなくてもブツのない優れた外観を有する成形体が得られるようなシラン架橋樹脂成形体の製造方法等を見出すことができた。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決し、触媒マスターバッチやシランマスターバッチのベース樹脂が特定の樹脂成分に制限されることがなく、鉱物性オイルを含有させなくても、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を製造することのできるシラン架橋樹脂成形体の製造方法を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、シランマスターバッチではなく、それと溶融混合させる触媒マスターバッチの方に無機フィラーを所定量含有させると、ベース樹脂を特定の樹脂成分に制限しなくても、また、鉱物性オイルを含有させなくても、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を製造できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき、更に研究を重ね、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)に対して、有機過酸化物(A2)とシランカップリング剤(A3)とを、それぞれ所定の混合割合で、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合してシランマスターバッチ(A)を調製する工程(a)と、
ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して、シラノール縮合触媒(B2)を所定の混合割合で溶融混合して触媒マスターバッチ(B)を調製する工程(b)と、
前記工程(a)で得られた前記シランマスターバッチ(A)と前記工程(b)で得られた前記触媒マスターバッチ(B)とを混合した後に成形する工程(c)と、
前記工程(c)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程(d)を有するシラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
前記工程(a)では、前記シランマスターバッチ(A)に無機フィラーを含有させず、
前記工程(b)では、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して更に無機フィラー(B3)を所定の混合割合で溶融混合して触媒マスターバッチ(B)を調製し、
前記工程(c)では、前記シランマスターバッチ(A)と前記触媒マスターバッチ(B)とが、前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)と前記ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)の合計100質量部に対して、前記有機過酸化物(A2)が0.003~0.3質量部、前記シラノール縮合触媒(B2)が0.01~0.5質量部、前記無機フィラー(B3)が15~50質量部になるように混合され、前記シランカップリング剤(A3)が、前記合計100質量部に対して、2質量部を超え、10質量部以下の配合量になるように混合されることを特徴とするシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<2>前記工程(c)では、前記シランマスターバッチ(A)と前記触媒マスターバッチ(B)とが、前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)と前記ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)のベース樹脂比40:60~95:5で混合されることを特徴とする<1>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<3>前記シランカップリング剤(A3)が、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランであることを特徴とする<1>又は<2>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
>前記無機フィラー(B3)が、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする<1>~<>のいずれか一項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
>前記無機フィラー(B3)が、水酸化マグネシウムがシランカップリング剤で表面処理されたものであることを特徴とする<1>~<>のいずれか一項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
>前記工程(a)において、前記シランマスターバッチ(A)の前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)中、エチレン系共重合体が10~100重量%含有されることを特徴とする<1>~<>のいずれか一項に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
>前記工程(a)において、前記シランマスターバッチ(A)の前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)中、エチレン系共重合体が酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するエチレン系共重合体であって、共重合体成分が10~40重量%含有されることを特徴とする<>に記載のシラン架橋樹脂成形体の製造方法。
【0010】
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法やその方法により製造されたシラン架橋樹脂成形体によれば、触媒マスターバッチやシランマスターバッチのベース樹脂を特定の樹脂成分に制限しなくても、また、鉱物性オイルを含有させなくても、シラングラフト樹脂の架橋物の生成を抑えて、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。
なお、以下ではシラン架橋樹脂成形体の製造方法について説明するが、以下は、その製造方法により製造されたシラン架橋樹脂成形体の説明にもなっている。
【0013】
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法は、少なくとも下記工程(a)~(d)を行うことによりシラン架橋樹脂成形体が製造される。
すなわち、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)に対して、有機過酸化物(A2)とシランカップリング剤(A3)とを、それぞれ所定の混合割合で、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合してシランマスターバッチ(A)を調製する工程(a)と、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して、シラノール縮合触媒(B2)と無機フィラー(B3)とを、それぞれ所定の混合割合で溶融混合して触媒マスターバッチ(B)を調製する工程(b)と、前記工程(a)で得られた前記シランマスターバッチ(A)と前記工程(b)で得られた前記触媒マスターバッチ(B)とを混合した後に成形する工程(c)と、前記工程(c)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程(d)を有する。
【0014】
そして、前記工程(c)では、前記シランマスターバッチ(A)と前記触媒マスターバッチ(B)とが、前記ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)と前記ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)の合計100質量部に対して、前記有機過酸化物(A2)が0.003~0.3質量部、前記シランカップリング剤(A3)が1~10質量部、前記シラノール縮合触媒(B2)が0.01~0.5質量部、前記無機フィラー(B3)が15~100質量部になるように混合される。
【0015】
まず、本発明において用いる各成分について説明する。
【0016】
<ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)、(B1)>
ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)やポリオレフィン系ベース樹脂(B1)として用いるポリオレフィン系樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来、耐熱性樹脂組成物に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-α-オレフィン共重合体、ポリプロピレンとエチレン-α-オレフィン樹脂とのブロック共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン系共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、金属水和物等をはじめとする各種フィラーに対する受容性が高く、耐熱性を確保しつつ耐電圧、特に高温での耐電圧特性の低下を抑制する点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-α-オレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン系共重合体等が好適である。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
ポリエチレン(PE)は、主成分がエチレン成分である樹脂であればよく、エチレンのみからなる単独重合体(ホモポリエチレンともいう)、エチレンと5mol%以下のα-オレフィレン(プロピレンを除く)との共重合体、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィンとの共重合体が包含される(例えば、JIS K 6748)。なお、上述のα-オレフィレン及びの非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いられる。
【0018】
本発明において用い得るポリエチレン(PE)としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。このなかでも、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。ポリエチレン(PE)は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリプロピレン(PP)は、主成分がプロピレン成分である樹脂であればよく、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレンともいう)のほか、ランダムポリプロピレン等のエチレン-プロピレン共重合体(プロピレン系重合体ということがある。)及びブロックポリプロピレンを包含する。
ここでいう「ランダムポリプロピレン」は、プロピレンとエチレンとの共重合体であって、エチレン成分含有量が1~5質量%のプロピレン系共重合体をいう(なお、エチレン成分がランダムで結合していてもブロックで結合していてもかまわない。)。
また、「ブロックポリプロピレン」は、ホモポリプロピレンとエチレン-プロピレン共重合体とを含む組成物であって、エチレン成分含有量が5~15質量%程度以下で、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
ポリプロピレン(PP)は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
エチレン-α-オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体(なお、上述のポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)に含まれるものを除く。)が挙げられる。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン構成成分の具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等の各構成成分が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、好ましくはエチレンと炭素数3~12のα-オレフィンとの共重合体(ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)に含まれるものを除く。)であり、具体的には、エチレン-プロピレン共重合体(EPR、ただし、ポリプロピレン(PP)に含まれるものを除く。)、エチレン-ブチレン共重合体(EBR)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0021】
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン系共重合体における酸共重合成分等としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル等の各構成成分が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキル構成成分のアルキル基は、炭素数1~12のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基が挙げられる。
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン系共重合体(ポリエチレン(PE)に含まれるものを除く。)としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。酸共重合成分を有するポリオレフィン共重合体は1種単独で使用され、又は2種以上が併用される。
【0022】
例えば、エチレン系共重合体であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等に比べて押出成形中にブツが発生しやすいが、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法を用いれば、後述する実施例に示すようにシランマスターバッチ(A)や触媒マスターバッチ(B)のポリオレフィン系ベース樹脂(A1)、(B1)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体を用いても成形中のブツの発生を抑制することができる。
本発明者の研究によれば、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法を用いれば、シランマスターバッチ(A)のポリオレフィン系ベース樹脂(A1)中、エチレン系共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体)を10~100重量%含有していても、シラン架橋樹脂成形体の成形中のブツの発生を抑制することができることが分かっており、エチレン系共重合体が酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するエチレン系共重合体であって共重合体成分(すなわち酸共重合成分又は酸エステル共重合成分)が10~40重量%含有されていればより好ましい。
【0023】
なお、上記のポリオレフィン系樹脂に、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴムやポリオレフィン共重合体のゴムやエラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン-プロピレン系ゴム等を混合したり、パラフィン系オイルやナフテン系オイル、芳香族系オイル等を含む鉱物性オイルを含有させてもよい。
【0024】
<有機過酸化物(A2)>
有機過酸化物(A2)は、熱分解によりラジカルを発生して、加水分解性シランカップリング剤のベース樹脂(A1)へのグラフト化反応の促進、特に加水分解性シランカップリング剤がエチレン性不飽和基を含む場合における該基とベース樹脂(A1)とのラジカル反応(樹脂成分からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を促進させる働きをする。
有機過酸化物(A1)は、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はないが、例えば、一般式:R-OO-R、R-OO-C(=O)R、RC(=O)-OO(C=O)Rで表される化合物が好ましく用いられる。ここで、R、R、R及びRは各々独立にアルキル基、アリール基、アシル基を表す。
【0025】
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3が好ましい。
【0026】
有機過酸化物(A2)の分解温度は、80~195℃であるのが好ましく、125~180℃であるのが特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物(A2)の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物(A2)を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味し、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
【0027】
<シランカップリング剤(A3)>
シランカップリング剤(A3)としては加水分解性シランカップリング剤を用いることができる。加水分解性シランカップリング剤は、ラジカルの存在下でベース樹脂(A1)にグラフト反応しうる基と、未処理無機フィラーと化学結合しうる基とを有するものであればよく、末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基と加水分解性とを含有する基を有しているものが好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基と加水分解性を含有する基とを有している加水分解性シランカップリング剤である。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p-スチリル基等が挙げられる。またこれらの加水分解性シランカップリング剤とその他の末端基を有する加水分解性シランカップリング剤を併用しても良い。
【0028】
このような加水分解性シランカップリング剤としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基もしくは水素原子あるいはY13である。Y11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0031】
上記一般式(1)で表される加水分解性シランカップリング剤のRa11は、エチレン性不飽和基を含有する基が好ましく、エチレン性不飽和基を含有する基は、上述した通りであり、好ましくはビニル基である。
【0032】
b11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13であり、脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1~8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられ、好ましくは後述のY13である。
【0033】
11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基であり、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数1~4のアシルオキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。加水分解しうる有機基としは具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシ等を挙げることができる。この中でも、加水分解性シランカップリング剤が100℃で揮発性を有するものが好ましく、加水分解性シランカップリング剤の揮発性及び反応性の点から、メトキシ又はエトキシがさらに好ましく、メトキシが特に好ましい。ここで、「揮発性を有する」とは、100℃において常圧放置しておくと少なくとも一部が揮発することをいう。
【0034】
上記加水分解性シランカップリング剤としては、好ましくは加水分解速度の速い加水分解性シランカップリング剤、より好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じである加水分解性シランカップリング剤であり、さらに好ましくは、Y11、Y12及びY13の少なくとも1つ、特に好ましくはすべてがメトキシ基である。
【0035】
末端にビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基を有する加水分解性シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのオルガノシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。これらの加水分解性シランカップリング剤は単独又は2種以上併用してもよい。このような架橋性の加水分解性シランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有する加水分解性シランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
末端にグリシジル基を有するものは、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
<シラノール縮合触媒(B2)>
シラノール縮合触媒(B2)は、ベース樹脂(A1)にグラフト化された加水分解性シランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒(B2)の働きに基づき、加水分解性シランカップリング剤を介して、ベース樹脂(A1)同士が架橋される。その結果、耐熱性に優れたシラン架橋樹脂成形体が得られる。
【0037】
シラノール縮合触媒(B2)としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物などが用いられる。一般的なシラノール縮合触媒(B2)としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物などが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物である。
【0038】
<無機フィラー(B3)>
無機フィラー(B3)は、その表面に、シランカップリング剤のシラノール基等の反応部位と水素結合もしくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラー(B3)における、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
【0039】
無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク等の水酸基あるいは結晶水を有する化合物のような金属水和物が挙げられる。また、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
【0040】
無機フィラーは、シランカップリング剤等で表面処理された表面処理無機フィラーを使用することができる。例えば、シランカップリング剤表面処理無機フィラーとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、水酸化マグネシウム、協和化学工業社製等)等が挙げられる。シランカップリング剤による無機フィラーの表面処理量は、特に限定されないが、例えば、3質量%以下である。
無機フィラーは、これらの無機フィラーのうち、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
無機フィラーが粉体である場合、無機フィラーの平均粒径は、0.2~10μmが好ましく、0.3~8μmがより好ましく、0.4~5μmがさらに好ましく、0.4~3μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲内にあると、シランカップリング剤の保持効果が高く、耐熱性に優れたものとなる。また、シランカップリング剤との混合時に無機フィラーが2次凝集しにくく、外観に優れたものとなる。平均粒径は、無機フィラーをアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
【0042】
<添加剤>
シランマスターバッチ(A)や触媒マスターバッチ(B)は、電線、電気ケーブル、電気コード、自動車用部材、OA機器、建築部材、雑貨、シート、発泡体、チューブ又はパイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を、目的とする効果を損なわない範囲で適宜含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、更には上記樹脂成分以外の樹脂等が挙げられる。
架橋助剤は、有機過酸化物の存在下において、シラングラフト樹脂を形成するベース樹脂との間に部分架橋構造を形成する化合物をいう。例えば、多官能性化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又はイオウ酸化防止剤等が挙げられる。
滑剤としては、炭化水素、シロキサン、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル、アルコール、金属石けん等の各滑剤が挙げられる。
【0043】
次に、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法を具体的に説明する。
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法は、上記の通り、工程(a)と工程(b)と工程(c)と工程(d)とを有している。
【0044】
本発明の製造方法において、工程(a)は、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)に対して、有機過酸化物(A2)とシランカップリング剤(A3)とを、それぞれ所定の混合割合で、有機過酸化物(A2)の分解温度以上の温度で溶融混合してシランマスターバッチ(A)を調製する工程である。
なお、有機過酸化物(A2)やシランカップリング剤(A3)の混合割合については後述する。
【0045】
工程(a)において、上記成分を溶融混合する温度は、有機過酸化物(A2)の分解温度以上、好ましくは150~230℃の温度である。その他の混合条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。これにより、溶融した上記成分に、有機過酸化物(A2)が分解、作用して、シランカップリング剤(A3)のベース樹脂(A1)へのグラフト反応が進行する。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。樹脂成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーを用いることが好ましい。
【0046】
工程(a)においては、上記成分の他に用いることができる上記添加物等の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜に設定される。これらの添加物は、上記のいずれの工程で混合されてもよい。
【0047】
このようにして、工程(a)を行い、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)と有機過酸化物(A2)とシランカップリング剤(A3)とを含有するシランマスターバッチ(A)を調製できる。
【0048】
本発明の製造方法において、工程(b)は、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して、シラノール縮合触媒(B2)と無機フィラー(B3)とを、それぞれ所定の混合割合で溶融混合してシランマスターバッチ(B)を調製する工程である。
なお、シラノール縮合触媒(B2)や無機フィラー(B3)の混合割合については後述する。
【0049】
工程(b)において、上記成分を溶融混合する温度は、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)の溶融温度以上に設定でき、例えば150~230℃に設定することが好ましい。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
混合方法や混合装置は、上記の混合方法や混合装置と同様の方法や装置を用いて行うことができる。
【0050】
本発明の製造方法において、工程(c)は、前記工程(a)で得られたシランマスターバッチ(A)と前記工程(b)で得られた触媒マスターバッチ(B)とを混合した後に成形する工程である。
シランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)との混合方法は、特に限定されない。例えば、工程(a)の溶融混合と同様にして混合することができる。溶融温度は、ベース樹脂の溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80~250℃、より好ましくは100~240℃である。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。工程(c)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)とが混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
【0051】
前述したように、本発明の製造方法では、前記工程(c)において、シランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)は、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)とポリオレフィン系ベース樹脂(B1)のベース樹脂比40:60~95:5で混合されることが好ましい。
【0052】
すなわち、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)とポリオレフィン系ベース樹脂(B1)の合計100質量部に対してポリオレフィン系ベース樹脂(A1)を40質量部より少なく混合させると、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)にグラフト化されるシラン基の量が少な過ぎて、製造されるシラン架橋樹脂成形体における架橋量が少なくなり過ぎるため、後述する参考例1に示すように、製造されたシラン架橋樹脂成形体の加熱変形性が悪くなる場合がある。そのため、上記合計100質量部に対してポリオレフィン系ベース樹脂(A1)を40質量部以上混合させることが好ましい。
また、前記工程(c)で、上記合計100質量部に対してポリオレフィン系ベース樹脂(A1)を95質量部より多く混合させるためには、触媒マスターバッチ(B)側のポリオレフィン系ベース樹脂(B1)が5質量部未満にする必要がある。しかし、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)がこのように少量になると、前記工程(b)すなわち触媒マスターバッチ(B)の調製工程で、触媒マスターバッチ(B)を調製できなくなる場合がある。すなわち、工程(b)で、少量のポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に必要な量の無機フィラー(B3)(上記合計100質量部に対して15~100質量部)を混合しようとしても、ポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対して無機フィラーの量が相対的に多くなり過ぎてしまい、それらを混合しようとしても混合できなくなる場合がある。
そのため、上記合計100質量部に対するポリオレフィン系ベース樹脂(A1)の混合量は95質量部以下であることが望ましい。
【0053】
有機過酸化物(A2)の配合量は、ポリオレフィン系ベース樹脂(A1)とポリオレフィン系ベース樹脂(B1)の合計100質量部に対して、0.003~0.3質量部であり、0.005~0.3質量部が好ましく、0.005~0.1質量部がより好ましい。有機過酸化物(A2)の配合量を上記範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト反応を行うことができ、ブツの発生を抑えて押出性に優れたシラン架橋樹脂成形体を製造することができる。
シランカップリング剤(A3)の配合量は、上記合計100質量部に対して、1~10質量部であり、2質量部を超え、10質量部以下であることが好ましく、4~10質量部がより好ましい。シランカップリング剤(A3)の配合量を上記範囲内にすることにより、高い耐熱性と優れた外観をシラン架橋樹脂成形体に付与できる。
【0054】
シラノール縮合触媒(B2)の配合量については、上記合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部である。シラノール縮合触媒(B2)の配合量を上記範囲内にすることにより、ブツの発生を効果的に抑制でき、また、後述する工程(d)で架橋反応を十分に進行させることができる。そのため、得られるシラン架橋樹脂成形体に外観に加えて高い耐熱性を付与できる。
無機フィラー(B3)の配合量は、上記合計100質量部に対して、15~100質量部である。無機フィラー(B3)の配合量を上記範囲内にすることにより、高い耐熱性と優れた外観をシラン架橋樹脂成形体に付与できる。
【0055】
なお、前記工程(a)におけるシランマスターバッチ(A)のポリオレフィン系ベース樹脂(A1)に対する有機過酸化物(A2)やシランカップリング剤(A3)の混合割合や、前記工程(b)における触媒マスターバッチ(B)のポリオレフィン系ベース樹脂(B1)に対するシラノール縮合触媒(B2)や無機フィラー(B3)の混合割合、あるいは前記工程(c)でシランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)を溶融混合する際のポリオレフィン系ベース樹脂(A1)とポリオレフィン系ベース樹脂(B1)のベース樹脂比は、前記工程(c)での有機過酸化物(A2)、シランカップリング剤(A3)、シラノール縮合触媒(B2)、無機フィラー(B3)の各配合量が上記の各範囲内に収まるように適宜調整される。
【0056】
本発明の製造方法において、工程(d)は、前記工程(c)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程である。この工程(d)では、前記工程(c)で得られたシラン架橋性樹脂成形体を水と接触させる。これにより、シランカップリング剤の加水分解性シリル基が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合して、架橋反応が起こる。
この工程(d)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。上記縮合反応は常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(d)において、シラン架橋性樹脂成形体を水と積極的に接触させる必要はない。この縮合反応を促進させるために、シラン架橋性樹脂成形体を水と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
【0057】
このようにして、シラン架橋樹脂成形体が製造される。そして、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法を用いれば、シランマスターバッチ(A)や触媒マスターバッチ(B)のベース樹脂(A1)、(B1)が特定の樹脂成分に制限されることがなく、鉱物性オイルを含有させなくても、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を製造できる。得られるシラン架橋樹脂成形体の外観が優れる理由についてはまだ定かではないが、例えば、以下のように考えることができる。
【0058】
シランマスターバッチ(A)中ではポリオレフィン系ベース樹脂(A1)がグラフト化されてシラングラフト樹脂が形成されているが、シラングラフト樹脂のシラン基の一部が、シランマスターバッチ(A)中の水分や、工程(c)でシランマスターバッチ(A)と溶融混合される触媒マスターバッチ(B)中の水分、あるいは空気中の水分等で加水分解する。そして、加水分解して反応性を帯びたシラン基同士がシラノール縮合触媒(B2)とともに水分に触れることでシランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)との混合中にコンパウンド内で縮合が生じると、それがブツとなって現れる。
発明者らの研究では、シランマスターバッチ(A)のポリオレフィン系ベース樹脂(A1)が、例えば酸素(O)の二重結合を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の場合にはブツが生じやすいが、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の場合はEVAに比べてブツが生じにくいことが分かっている。
【0059】
そして、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法のように、触媒マスターバッチ(B)側に無機フィラー(B3)を所定量配合すると、製造されるシラン架橋樹脂成形体にはブツが生じないのに対し、後述する比較例5、6に示すように、シランマスターバッチ(A)側に無機フィラー(例えば水酸化マグネシウム(I))を配合しても、触媒マスターバッチ(B)側に無機フィラー(B3)を配合しなければ、製造されるシラン架橋樹脂成形体にブツが生じる。
このことから、触媒マスターバッチ(B)に無機フィラー(B3)を所定量混合させることによるシラノール縮合触媒(B2)の希釈効果が考えられる。
【0060】
すなわち、前記工程(c)でシランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)とを混合する際、シランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)は最初から均一な濃度で混合されるわけではなく、混合初期にはシランマスターバッチ(A)に対する触媒マスターバッチ(B)の濃度にムラが生じ、シランマスターバッチ(A)に対する触媒マスターバッチ(B)の濃度が高い部分ではシラノール縮合触媒(B2)による架橋反応が生じてしまうためにブツが生じる場合があり得る。
しかし、本発明のように触媒マスターバッチ(B)側に無機フィラー(B3)が所定量混合されていると、触媒マスターバッチ(B)におけるシラノール縮合触媒(B2)の濃度が無機フィラー(B3)によって希釈されるため、上記のようにシランマスターバッチ(A)に対する触媒マスターバッチ(B)の濃度が高い部分でもシラノール縮合触媒(B2)の濃度がさほど高くなくなるため架橋反応が生じなくなる(あるいは生じにくくなる。)。そのため、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法を用いると、製造されたシラン架橋樹脂成形体にブツが生じず(あるいはブツが生じても顕微鏡レベルであり)、優れた外観を有するシラン架橋樹脂成形体を製造できると考えられる。
【0061】
この場合、上記のようにシランマスターバッチ(A)側に無機フィラーを配合しても、触媒マスターバッチ(B)側に無機フィラー(B2)を配合しなければ本発明のような触媒マスターバッチ(B)中のシラノール縮合触媒(B2)の濃度の希釈効果が得られないため、後述する比較例5、6に示すように、製造されるシラン架橋樹脂成形体にブツが目視できる状態になってしまうと考えられる。
【0062】
しかし、本発明者らの研究では、触媒マスターバッチ(B)におけるシラノール縮合触媒(B2)の濃度を希釈するために、触媒マスターバッチ(B)に無機フィラー(B3)を配合せずにポリオレフィン系ベース樹脂(B1)等の樹脂量を増量しても、本発明のように無機フィラー(B3)を所定量配合した場合のような外観上の有益な効果が得られないことが分かっている。
そのため、触媒マスターバッチ(B)が無機フィラー(B3)を含有することで、工程(c)でシランマスターバッチ(A)と溶融混合する際に触媒マスターバッチ(B)中の無機フィラー(B3)がシランマスターバッチ(A)中に残存しているシランカップリング剤(A3)を吸着(結合)するため、残存するシランカップリング剤(A3)による余分な架橋反応を抑えること等による効果も考えられるが、本発明のシラン架橋樹脂成形体の製造方法を用いて得られるシラン架橋樹脂成形体の外観が優れる理由について、詳しくはまだ定かではない。
【0063】
<シラン架橋樹脂成形体の製法方法の適用>
本発明のシラン架橋樹脂成形体の製法方法は、シラン架橋樹脂成形体からなる製品(半製品、部品、部材も含む。)の製造に適用することができる。この製品は、シラン架橋樹脂成形体を含む製品でもよく、シラン架橋樹脂成形体のみからなる製品でもよい。このような製品として、例えば、耐熱性電線、耐熱性ケーブル又は光ファイバーケーブル等の配線材の被覆材、ゴムモールド材(例えば、自動車用グラスランチャンネル、ウェザーストリップ、ゴムホース、ワイパーブレードゴム、防振ゴム)等が挙げられる。また、シラン架橋樹脂成形体は、従来、電子線照射による架橋又は化学加硫されたポリオレフィン材料、EPゴム材料の代替品として用いることができる。
【0064】
本発明の製造方法は、配線材の製造に好適に適用される。
本発明の製造方法を用いて押出成形により配線材を製造する場合、好ましくは、シランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)とを混合した成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混合して導体等の外周に押し出す。用いる導体としては、単線でも撚線でもよく、また裸線でも錫メッキ若しくはエナメル被覆したものでもよい。導体を形成する金属材料としては軟銅、銅合金、アルミニウム等が挙げられる。導体の周りに形成される絶縁層の肉厚は特に限定しないが、通常、0.15~5mm程度である。
本発明の製造方法を用いると、細径化した電線であっても外観に優れたものを製造できる。本発明において、細径化した電線とは、近年の電気・電子機器等の小型化ないしは軽量化に求められる程度の外径を有するものであれば特に限定されない。例えば、外径が2mm未満、好ましくは1.5mm以下の電線が挙げられる。
【実施例
【0065】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表I~表IIIにおいて、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。また、各成分について空欄は対応する成分の配合量が0質量部であることを意味する。
なお、表I~表IIIでは、シランマスターバッチが「シランMB」、触媒マスターバッチが「触媒MB」と記載されており、表IIIでは無機フィラーが「無機F」と記載されている。
【0066】
表I~表III中に示す各成分(化合物)の詳細を以下に示す。
(1-1)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA(VA14%)):EV560(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)
(1-2)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA(VA25%)):VF120T(商品名、ダウ社製)
(1-3)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA(VA33%)):EV170(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)
(2)ポリエチレン(PE):SP0540(商品名、プライムポリマー社製)
(3)ポリプロピレン(PP):PB222A(商品名、サンアロマー社製)
(4)有機過酸化物:パーヘキサ25B(商品名、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度179℃、日本油脂社製)
(5)シランカップリング剤:KBM1003(商品名、ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)
(6)酸化防止剤:イルガノックス1010(商品名、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、BASF社製)
(7)水酸化マグネシウム(I):マグシーズFK621(商品名、シランカップリング剤処理された水酸化マグネシウム、神島化学工業社製)
(8)シラノール縮合触媒:アデカスタブOT-1(商品名、ジオクチルスズジラウレート、ADEKA社製)
(9)水酸化マグネシウム(II):キスマ5(商品名、未処理水酸化マグネシウム、協和化学工業社製)
(10)水酸化マグネシウム(III):マグシーズLN-6(商品名、ステアリン酸処理された水酸化マグネシウム、神島化学工業社製)
(11)シリカ:クリスタライト5X(商品名、龍森社製)
(12)炭酸カルシウム:ソフトン1200(商品名、備北粉化工業社製)
【0067】
(実施例1~15及び比較例1~6)
まず、表I~表IIIの「シランマスターバッチ(シランMB)」欄に示す各成分を、バンバリーミキサーを用いて、200℃で溶融混合した後、ペレット化して、シランマスターバッチ(A)を得た(工程(a))。
次いで、表I~表IIIの「触媒マスターバッチ(触媒MB)」欄に示す各成分を、バンバリーミキサーを用いて、200℃で溶融混合した後、ペレット化して、触媒マスターバッチ(B)を得た(工程(b))。
【0068】
次に、25mmφ押出機(スクリュー有効長Lと直径Dとの比:L/D=25)を、ダイス温度160℃、以下フィーダー側へ、C3=150℃、C2=140℃、C1=130℃の押出温度条件に設定した。この押出機に、シランマスターバッチ(A)のペレットと触媒マスターバッチ(B)のペレットとを投入して溶融混合し、スクリュー回転数10rpmで、裸軟銅線からなる0.8mmφの導体上に外径1.2mmφ、厚さ0.2mmとなるように押出被覆した(工程(c))。
得られた被覆導体(成形体)を、23℃、相対湿度50%の環境下に24時間放置して空気中の水分と接触させて架橋させて、被覆層を有する電線(シラン架橋樹脂成形体)を製造した(工程(d))。
【0069】
(比較例7)
上記と同様にして、シランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)を得た。
そして、工程(c)で、押出機にシランマスターバッチ(A)のペレットと触媒マスターバッチ(B)のペレットとを投入して溶融混合する際に、無機フィラー(水酸化マグネシウム(I))を添加した。そして、上記と同様にして工程(d)を行った。
【0070】
上記押出成形して得た各被覆導体、又は、製造した各電線について、下記試験をし、その結果を表I~表IIIに示した。
【0071】
<外観試験>
上記の押出成形に製造された各実施例及び各比較例(及び参考例)の被覆導体の表面を目視で観察して、その外観を評価した。
評価は、目視でも顕微鏡でもブツが観察されない場合を「◎」とし、目視ではブツが観察されないが顕微鏡では僅かに観察される場合を「〇」とし、目視でブツが観察される場合を「×」(不合格)とした。
【0072】
<加熱変形試験>
参考試験として、各電線において、被覆層の加熱変形特性を測定した。この試験により、架橋反応の程度(シラン架橋樹脂成形体の耐熱性)を評価できる。
試験条件はUL1581に準拠し、測定温度180℃で、各電線に対して2.45Nの負荷荷重をかけて変形率を測定した。このときの変形率が15%未満のものを「◎」とし、15%以上25%未満のものを「〇」とし、25%以上50%未満を「△」とし、50%以上のものを「×」(不合格)とした。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表I~表IIIの結果から、以下のことが分かる。
工程(b)で触媒マスターバッチ(B)に無機フィラー(B3)を混合しない比較例1~6の電線はいずれもシラン架橋樹脂成形体(被覆層)の外観に劣る。また、工程(b)で触媒マスターバッチ(B)に無機フィラー(B3)を混合せずに工程(c)でシランマスターバッチ(A)と触媒マスターバッチ(B)を混合する際に無機フィラーを投入した比較例7(B3)の電線も、シラン架橋樹脂成形体(被覆層)の外観に劣る。なお、参考例1、2については前述した通りである。
これに対して、工程(b)で触媒マスターバッチ(B)に無機フィラー(B3)を混合した実施例1~15は、いずれも外観に優れた細径の電線を製造できる。このように、工程(b)で触媒マスターバッチ(B)を調製する際に無機フィラー(B3)を混合することで(すなわち触媒マスターバッチ(B)側に無機フィラー(B3)を混合することで)、従来問題となっていたブツの発生が抑制され、外観に優れた細径の電線を製造することができる。なお、実施例で加熱変形の評価が合格ではあるが△になっている理由は、他の実施例に比べて架橋されるベース樹脂(A1)の割合が少ないためである。
また、工程(b)で触媒マスターバッチ(B)を調製する際に混合する無機フィラー(B3)として、無機フィラーと予め混合されたシランカップリング剤(表I~表IIIにおける「水酸化マグネシウム(I)」)を用いた実施例1~15は、細径であっても、外観、耐熱性をより高い水準で兼ね備えている。