(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-29
(45)【発行日】2022-07-07
(54)【発明の名称】蓄電システムおよび充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20220630BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/02 H
H02J7/34 J
(21)【出願番号】P 2020552502
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2019012335
(87)【国際公開番号】W WO2020079868
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2018194959
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀人
(72)【発明者】
【氏名】可知 純夫
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 茂
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6004350(JP,B2)
【文献】特開2012-205384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池と、
前記多並列蓄電池の電力の授受を制御する交直変換装置と、
前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続された第1スイッチと、
前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に前記第1スイッチと並列に接続された所定のインピーダンスを有するインピーダンス回路と、
前記蓄電池列毎に対応して設けられ、前記インピーダンス回路と直列に接続され、当該インピーダンス回路とともに前記第1スイッチと並列に接続される第2スイッチと、
前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオン/オフを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第2スイッチをオフした状態で前記第1スイッチをオンして前記交直変換装置から前記蓄電池列へ電力を供給することにより、前記蓄電池列を満充電状態にするための均等充電を行うとともに、前記蓄電池列毎に前記均等充電が完了したか否かを判定し、前記均等充電が完了したと判定した前記蓄電池列の前記第2スイッチをオンした状態で当該蓄電池列の前記第1スイッチをオフする
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電システムにおいて、
前記インピーダンス回路は、抵抗を含む
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電システムにおいて、
前記インピーダンス回路は、キャパシタを含む
ことを特徴とする蓄電システム。
【請求項4】
少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池と、前記多並列蓄電池の電力の授受を制御する交直変換装置と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続された第1スイッチと、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に前記第1スイッチと並列に接続された所定のインピーダンスを有するインピーダンス回路と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、前記インピーダンス回路と直列に接続され、当該インピーダンス回路とともに前記第1スイッチと並列に接続される第2スイッチと、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオン/オフを制御する制御装置とを備えた蓄電システムにおける前記多並列蓄電池の充電制御方法であって、
前記制御装置が、前記第2スイッチをオフした状態で前記第1スイッチをオンして前記交直変換装置から前記蓄電池列へ電力を供給することにより、前記蓄電池列を満充電状態にするための均等充電を開始する第1ステップと、
前記制御装置が、前記蓄電池列毎に前記均等充電が完了したか否かを判定する第2ステップと、
前記制御装置が、前記均等充電が完了したと判定した前記蓄電池列の前記第2スイッチをオンした状態で前記第1スイッチをオフする第3ステップとを含む
ことを特徴とする充電制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の充電制御方法において、
前記インピーダンス回路は、抵抗を含む
ことを特徴とする充電制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の充電制御方法において、
前記インピーダンス回路は、キャパシタを含む
ことを特徴とする充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムおよび充電制御方法に関し、例えば鉛蓄電池の充電を制御する蓄電システム、および鉛蓄電池の充電を制御する充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、長期間の充放電の繰り返しにより、容量が低下し劣化する。鉛蓄電池を用いた蓄電システムでは、鉛蓄電池の劣化の一因であるサルフェーションを除去するために、鉛蓄電池を満充電状態にする均等充電を定期的に行っている。
【0003】
近年、鉛蓄電池の大容量化の要求により、単一の鉛蓄電池セル(単電池)または複数の鉛蓄電池セルを直列に接続した蓄電池列(ストリング)を複数並列に接続した多並列蓄電池を備えた蓄電システムが普及しつつある。
【0004】
従来の多並列蓄電池を備えた蓄電システムでは、多並列蓄電池全体で均等充電を管理している。そのため、各蓄電池列の鉛蓄電池セル自体の特性(内部抵抗)や温度等に起因して、均等充電時に蓄電池列間に流れる充電電流がばらつくことにより、過充電や充電不足となる蓄電池列が発生し、多並列蓄電池の劣化が進行するという問題があった。
【0005】
この問題を解決するための従来技術として、交直変換装置(PCS:Power Conditioning System、以下、「PCS」とも称する。)と蓄電池列との間に充放電量を制御する充放電制御機器(チョッパ)を接続し、各蓄電池列に接続された充放電制御機器が対応する蓄電池列の充放電量を調整することで、均等充電時に過充電や充電不足となることを防止する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来技術では、各蓄電池列の充放電量を調整するための充放電制御機器を蓄電池列毎に設ける必要があり、蓄電システムのコストが高くなるという課題がある。
【0008】
本願発明者らは、上述の問題を解決するために、新たな充電制御方法について検討した。
【0009】
図9は、本願発明者らが本願に先立って検討した充電制御方法を説明するための図である。
【0010】
本充電制御方法は、並列に接続された複数の蓄電池列90_1~90_10を有する蓄電システム900において、各蓄電池列90_1~90_10とPCS91との間にスイッチ92_1~92_10を設け、均等充電が完了した蓄電池列90_1~90_10をPCS91から切り離すことによって、各蓄電池列90_1~90_10の過充電を防止する方法である。
【0011】
なお、以下の説明において、蓄電池列90_1~90_10およびスイッチ92_1~92_10を特に区別しない場合には、参照符号のサフィックスを省略し、「蓄電池列90」等と表記する場合がある。
【0012】
例えば、
図9に示すように10組の蓄電池列90_1~90_10を有する蓄電システムにおいて、各蓄電池列90_1~90_10とPCS91との間にスイッチ92_1~92_10をそれぞれ配置する。蓄電池列90_1~90_10の均等充電を行う際には、先ず、全てのスイッチ92_1~92_10をオンさせて全ての蓄電池列90_1~90_10を充電する。充電中は、各蓄電池列90_1~90_10の充電状態を監視しておく。そして、均等充電が完了したと判定した蓄電池列90に接続されているスイッチ92をオフし、その蓄電池列90をPCS91から切り離す。
【0013】
この方法によれば、各蓄電池列の過充電を防止することが可能となる。しかしながら、この方法では、以下に示す新たな課題があることが明らかとなった。
【0014】
図10は、本願発明者らが本願に先立って検討した充電制御方法によって均等充電を制御したときの各蓄電池列の電圧の変化を示す図である。
【0015】
図10には、
図9に示した10組の蓄電池列90_1~90_10を有する蓄電システム900において、均等充電における定電圧充電(CV充電)中にスイッチ92_1~92_10を制御することにより、蓄電池列90_1から蓄電池列90_9までを一定の時間間隔でPCS91から解列したときの各蓄電池列90_1~90_10の電圧の波形が示されている。参照符号901~909は、解列後の蓄電池列90_1~90_9のそれぞれの電圧を表し、参照符号910は、PCS91に接続されている残りの蓄電池列90_1~90_10の電圧を表している。
【0016】
図10から理解されるように、一つの蓄電池列90を解列したとき、PCS91に接続されている残りの蓄電池列90の電圧が変動し、一時的に蓄電池列90の上限電圧を超えて過電圧となる。そして、PCS91に接続されている蓄電池列90の個数が少なくなるにつれて、蓄電池列90を解列したときに生じる残りの蓄電池列90の電圧の変動幅が大きくなり、最終的には上限電圧を大きく超えて過電圧となってしまう。
【0017】
この現象の原因は、蓄電池列90の解列の前後においてPCS91側から見た蓄電池全体のインピーダンスが変化することであると、本願発明者らは考えた。
【0018】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、多並列蓄電池を備えた蓄電システムにおいて、より簡単な構成で、均等充電による蓄電池列間の充電状態のばらつきを抑えるとともに、より信頼性の高い均等充電を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の代表的な実施の形態に係る蓄電システムは、少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池と、前記多並列蓄電池の電力の授受を制御する交直変換装置と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続された第1スイッチと、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に前記第1スイッチと並列に接続された所定のインピーダンスを有するインピーダンス回路と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、前記インピーダンス回路と直列に接続され、当該インピーダンス回路とともに前記第1スイッチと並列に接続される第2スイッチと、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオン/オフを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第2スイッチをオフした状態で前記第1スイッチをオンして前記交直変換装置から前記蓄電池列へ電力を供給することにより、前記蓄電池列を満充電状態にするための均等充電を行うとともに、前記蓄電池列毎に前記均等充電が完了したか否かを判定し、前記均等充電が完了したと判定した前記蓄電池列の前記第2スイッチをオンした状態で当該蓄電池列の前記第1スイッチをオフすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る多並列蓄電池を有する蓄電システムによれば、より簡単な構成で、均等充電による蓄電池列間の充電状態のばらつきを抑えつつ、より信頼性の高い均等充電を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る蓄電システムの構成を示す図である。
【
図2A】インピーダンス回路の構成の一例を示す図である。
【
図2B】インピーダンス回路の構成の別の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る蓄電システムにおける均等充電時の充電制御方法の流れを示すフロー図である。
【
図4A】実施の形態に係る蓄電システムにおける均等充電時の充電制御方法を説明するための図である。
【
図4B】実施の形態に係る蓄電システムにおける均等充電時の充電制御方法を説明するための図である。
【
図4C】実施の形態に係る蓄電システムにおける均等充電時の充電制御方法を説明するための図である。
【
図4D】実施の形態に係る蓄電システムにおける均等充電時の充電制御方法を説明するための図である。
【
図5】均等充電時の蓄電池列(鉛蓄電池)の充電電流および放電電流を示すタイミングチャートである。
【
図6】定電圧―定電流充電方式または定電力―定電流充電方式によって均等充電を行ったときの定電圧充電期間における蓄電池列の充電電流と充電状態(SOC)との関係を示す図である。
【
図7】定電流―定電圧充電方式によって均等充電を行った時の各蓄電池列に流れる充電電流の時間的な変化の一例を示す図である。
【
図8】均等充電における定電圧充電時の一つの蓄電池列の内部インピーダンスの経時変化を示す図である。
【
図9】本願発明者らが本願に先立って検討した充電制御方法を説明するための図である。
【
図10】本願発明者らが本願に先立って検討した充電制御方法によって均等充電を制御したときの各蓄電池列の電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0023】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る蓄電システム(100)は、少なくとも一つの鉛蓄電池セル(200)を含む複数の蓄電池列(20,20_1~20_n)を並列に接続した多並列蓄電池(2)と、前記多並列蓄電池の電力の授受を制御する交直変換装置(3)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続された第1スイッチ(4A_1~4A_n)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に前記第1スイッチと並列に接続された所定のインピーダンスを有するインピーダンス回路(5,5_1~5_n)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、前記インピーダンス回路と直列に接続され、当該インピーダンス回路とともに前記第1スイッチと並列に接続される第2スイッチ(4B_1~4B_n)と、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオン/オフを制御する制御装置(1)とを備え、前記制御装置は、前記第2スイッチをオフした状態で前記第1スイッチをオンして前記交直変換装置から前記蓄電池列へ電力を供給することにより、前記蓄電池列を満充電状態にするための均等充電を行うとともに、前記蓄電池列毎に前記均等充電が完了したか否かを判定し、前記均等充電が完了したと判定した前記蓄電池列の前記第2スイッチをオンした状態で当該蓄電池列の前記第1スイッチをオフすることを特徴とする蓄電システム。
【0024】
〔2〕上記蓄電システムにおいて、前記インピーダンス回路は、抵抗(R,R1,R2)を含んでもよい。
【0025】
〔3〕上記蓄電システムにおいて、前記インピーダンス回路は、キャパシタ(C)を含んでもよい。
【0026】
〔4〕本発明の代表的な実施の形態に係る充電制御方法は、少なくとも一つの鉛蓄電池セル(200)を含む蓄電池列(20_1~20_n)を複数並列に接続した多並列蓄電池(2)と、前記多並列蓄電池の電力の授受を制御する交直変換装置(3)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に直列に接続された第1スイッチ(4A_1~4A_n)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、対応する前記蓄電池列と前記交直変換装置との間に前記第1スイッチと並列に接続された所定のインピーダンスを有するインピーダンス回路(5,5_1~5_n)と、前記蓄電池列毎に対応して設けられ、前記インピーダンス回路と直列に接続され、当該インピーダンス回路とともに前記第1スイッチと並列に接続される第2スイッチ(4B_1~4B_n)と、前記蓄電池列の状態を前記蓄電池列毎に監視し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのオン/オフを制御する制御装置(1)とを備えた蓄電システムにおける前記多並列蓄電池の充電制御方法である。本充電制御方法は、前記制御装置が、前記第2スイッチをオフした状態で前記第1スイッチをオンして前記交直変換装置から前記蓄電池列へ電力を供給することにより、前記蓄電池列を満充電状態にするための均等充電を開始する第1ステップ(S1)と、前記制御装置が、前記蓄電池列毎に前記均等充電が完了したか否かを判定する第2ステップ(S2)と、前記制御装置が、前記均等充電が完了したと判定した前記蓄電池列の前記第2スイッチをオンした状態で前記第1スイッチをオフする第3ステップ(S3、S4)とを含むことを特徴とする。
【0027】
〔5〕上記充電制御方法において、前記インピーダンス回路は、抵抗(R,R1,R2)を含んでもよい。
【0028】
〔6〕上記充電制御方法において、前記インピーダンス回路は、キャパシタ(C)を含んでもよい。
【0029】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0030】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の一実施の形態に係る蓄電システムの構成を示す図である。
同図に示される蓄電システム100は、例えばサイクルユースの鉛蓄電池を備えた蓄電システムである。蓄電システム100は、例えば、通常時に電力供給部7(商用電源)から負荷6に給電し、停電の発生時には、電源バックアップ用の鉛蓄電池から負荷6に給電する。
【0031】
電力供給部7は、蓄電システム100および負荷6に電力を供給する機能部である。電力供給部7は、例えば、商用電源である。なお、電力供給部7は、商用電源に加えて、太陽光発電(PV:Photovoltaics)等の再生可能エネルギーに基づいて電力を発生させる発電設備を有していてもよい。
【0032】
蓄電システム100は、蓄電池モジュール2、交直変換装置3、スイッチ4A_1~4A_n(nは2以上の整数)、スイッチ4B_1~4B_n、インピーダンス回路5_1~5_nおよび制御装置1を備えている。
【0033】
以下、スイッチ4A_1~4A_n、スイッチ4B_1~4B_n、インピーダンス回路5_1~5_n等について特に区別しない場合には、参照符号のサフィックスを省略し、「スイッチ4A」等と表記する場合がある。
【0034】
蓄電池モジュール2は、電力を充放電可能に構成された鉛蓄電池を含む。蓄電池モジュール2は、少なくとも一つの鉛蓄電池セルを含む蓄電池列を複数並列に接続した多並列蓄電池である。
【0035】
具体的に、蓄電池モジュール2は、
図1に示すように、m(mは1以上の整数)個の鉛蓄電池セル200が直列に接続された複数の蓄電池列20_1~20_nを並列に接続した構造を有している。以下、蓄電池モジュール2を「多並列蓄電池2」とも称する。
【0036】
また、蓄電池モジュール2は、各蓄電池列20_1~20_nの出力電圧(蓄電電圧)を計測する電圧センサ201と、各蓄電池列20_1~20_nの充電電流および放電電流を計測する電流センサ202とを、蓄電池列20_1~20_n毎に有している。
【0037】
交直変換装置(以下、「PCS(Power Conditioning System)」とも称する。)3は、後述する制御装置1によって制御され、電力供給部7、蓄電池モジュール2、および負荷6の間で相互に電力を変換し、電力供給部7、蓄電池モジュール2、および負荷6の間での電力の授受を制御する電力変換部である。
【0038】
例えば、PCS3は、電力供給部7からの交流電力(AC)を直流電力(DC)に変換して蓄電池モジュール2に供給する。PCS3は、例えば、DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ(AC/DC)、およびスイッチ回路等を含んで構成されている。
【0039】
スイッチ4A_1~4A_n(第1スイッチ)は、PCS3と多並列蓄電池2との間の接続と遮断を切り替える部品である。
図1に示すように、スイッチ4A_1~4A_nは、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられ、対応する蓄電池列20_1~20_nとPCS3との間に直列に接続されている。スイッチ4A_1~4A_nは、例えば電磁スイッチ(リレー)である。
【0040】
スイッチ4B_1~4B_n(第2スイッチ)は、PCS3と多並列蓄電池2との間におけるインピーダンス回路5の接続と遮断を切り替える部品である。
図1に示すように、スイッチ4B_1~4B_nは、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられ、対応する蓄電池列20_1~20_nとPCS3との間に直列に接続されている。具体的には、スイッチ4B_1~4B_nは、対応するインピーダンス回路5_1~5_nと直列に接続され、対応するインピーダンス回路5_1~5_nとともに対応するスイッチ4A_1~スイッチ4A_nと並列に接続されている。スイッチ4B_1~4B_nは、例えば電磁スイッチ(リレー)である。
【0041】
インピーダンス回路5_1~5_nは、所定のインピーダンスを有する回路である。インピーダンス回路5_1~5_nは、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられている。インピーダンス回路5_1~5_nは、対応する蓄電池列20_1~20_nとPCS3との間において、対応するスイッチ4B_1~4B_nと直列に接続され、且つスイッチ4B_1~4B_nとともにスイッチ4A_1~4A_nと並列に接続されている。
【0042】
インピーダンス回路5は、所定のインピーダンスを有する回路であれば、その回路構成は特に限定されない。例えば、インピーダンス回路5は、抵抗、キャパシタ、およびインダクタの少なくとも一つを含み、インピーダンス回路5全体のインピーダンスが所定の値になるように設計されていればよい。
【0043】
図2Aおよび
図2Bは、インピーダンス回路5の構成の一例を示す図である。
図2Aに示すように、インピーダンス回路5は、抵抗(素子)Rで構成されていてもよいし、
図2Bに示すように、抵抗と、少なくとも一つのキャパシタとを含んでいてもよい。ここで、キャパシタは抵抗と並列に接続される。例えば、
図2Bには、抵抗R1と、抵抗R1に並列に接続されたキャパシタCと、抵抗R1およびキャパシタCと直列に接続された抵抗R2とを有するインピーダンス回路5が示されている。
【0044】
制御装置1は、蓄電システム100全体の統括的な制御を行う装置である。制御装置1は、各蓄電池列20_1~20_nの状態を蓄電池列20_1~20_n毎に監視し、スイッチ4A_1~4A_nおよびスイッチ4B_1~4B_nのオン/オフを個別に制御可能になっている。
【0045】
図1に示すように、制御装置1は、監視部11、蓄電池管理部12、およびスイッチ制御部13を有する。
【0046】
監視部11は、多並列蓄電池2の電圧センサ201および電流センサ202によって計測された物理量を逐次取得し、当該物理量に基づいて多並列蓄電池2の状態を監視するデータ処理装置である。監視部11は、例えば、BMU(Battery Management Unit)である。
【0047】
蓄電池管理部12は、蓄電システム100の各構成要素の統括的な制御を司る装置である。蓄電池管理部12は、例えばEMS(Energy Management System)である。
具体的に、蓄電池管理部12は、PCS3を駆動することにより、多並列蓄電池2の充放電制御を行う。例えば、蓄電池管理部12は、監視部11による多並列蓄電池2の監視結果に基づいて、定電流―定電圧充電(CCCV)方式や定電力―定電圧充電方式等の各種充電方式で多並列蓄電池2の均等充電を実行する。
【0048】
ここで、定電流―定電圧充電(CCCV)方式とは、定電流によって蓄電池列20_1~20_nの充電を開始し、蓄電池列20_1~20_nの電圧が所定の電圧に到達した後に定電圧によって蓄電池列20_1~20_nを充電する充電方式である。
【0049】
また、定電力―-定電圧充電方式とは、定電力によって蓄電池列20_1~20_nの充電を開始し、蓄電池列20_1~20_nの電圧が所定の電圧に到達した後に定電圧によって蓄電池列20_1~20_nを充電する充電方式である。
【0050】
スイッチ制御部13は、監視部11または蓄電池管理部12からの指示に応じて、スイッチ4A_1~4A_nおよびスイッチ4B_1~4B_nのオン/オフを切り替える機能部である。
例えば、スイッチ4A_1~4A_nおよびスイッチ4B_1~4B_nがリレーである場合、スイッチ制御部13は、監視部11または蓄電池管理部12からの指示に応じてリレーのオン/オフを切り替えるための駆動信号を生成する信号生成回路である。
【0051】
監視部11および蓄電池管理部12は、例えば、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置と、I/F回路等の周辺回路とを有するデータ処理装置(コンピュータ)において、上記記憶装置に記憶されたプログラムに従って上記プロセッサが各種演算を実行して周辺回路等を制御することにより、実現される。
【0052】
制御装置1は、多並列蓄電池2を構成する鉛蓄電池の劣化を防止するために、多並列蓄電池2の蓄電池列20_1~20_nを満充電状態にする均等充電を定期的に実行する。
【0053】
制御装置1は、スイッチ4B_1~4B_nをオフした状態でスイッチ4A_1~4A_nをオンしてPCS3から蓄電池列20_1~20_nへ電力を供給することにより、蓄電池列20_1~20_nを満充電状態にするための均等充電を行うとともに、蓄電池列20_1~20_n毎に均等充電が完了したか否かを判定し、均等充電が完了したと判定した蓄電池列20_1~20_nのスイッチ4B_1~4B_nをオンした状態で当該蓄電池列20_1~20_nのスイッチ4A_1~4A_nをオフする。
【0054】
以下、蓄電システム100における均等充電時の充電制御方法について、図を用いて詳細に説明する。
【0055】
図3は、蓄電システム100における均等充電時の充電制御方法の流れを示すフロー図である。
図4A~
図4Dは、蓄電システム100における均等充電時の充電制御方法を説明するための図である。
【0056】
ここでは、
図4A~
図4Dに示すように、蓄電システム100における多並列蓄電池2が、直列に接続された4個(m=4)の鉛蓄電池セル200を有する3つの蓄電池列20_1~20_3を並列に接続した構造を有する場合を例にとり、説明する。
【0057】
また、
図4A~
図4Dにおいて、均等充電中の各蓄電池列20_1~20_3の充電電流をそれぞれI1,I2,I3とし、各蓄電池列20_1~20_3の特性等のばらつきにより、I2>I1>I3であるとする。なお、
図4A~
図4Dにおいて、電圧センサ201および電流センサ202の図示を省略している。
【0058】
先ず、
図4Aに示すように、制御装置1は、スイッチ4A_1~4A_3およびスイッチ4B_1~4B_3を制御してPCS3から蓄電池列20_1~20_3へ電力を供給することにより、蓄電池列20_1~20_3の均等充電を開始する(ステップS1)。
【0059】
例えば、監視部11が蓄電池管理部12に対して均等充電の実行を要求する。蓄電池管理部12は、監視部11からの要求に応じて、先ず、スイッチ制御部13を介してスイッチ4B_1~4B_3をオフさせる(または、オフしていることを確認する)。次に、蓄電池管理部12は、スイッチ制御部13を介してスイッチ4A_1~4A_3をオンさせる(または、オンしていることを確認する)。そして、蓄電池管理部12は、所定の充電方式(例えば、定電流―定電圧充電方式)で均等充電を行うようにPCS3を駆動し、蓄電池列20_1~20_3への電力供給を開始する。
【0060】
次に、制御装置1は、均等充電が完了した蓄電池列20_1~20_3があるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、監視部11が、各蓄電池列20_1~20_3の電圧センサ201および電流センサ202から取得した各蓄電池列20_1~20_3の電圧(出力電圧)および電流の計測結果に基づいて、蓄電池列20_1~20_3の均等充電が完了したか否かを判定する。なお、具体的な判定方法については、後述する。
【0061】
ステップS2において、均等充電が完了した蓄電池列20_1~20_3が存在しない場合には、制御装置1は、引き続き各蓄電池列20_1~20_3の均等充電を継続する。
【0062】
一方、ステップS2において、均等充電が完了した蓄電池列20_1~20_3が存在する場合には、制御装置1は、均等充電が完了した蓄電池列20_1~20_3のスイッチ4B_1~4B_3をオンする(ステップS3)。
【0063】
例えば、上述の例の場合、均等充電中の各蓄電池列20_1~20_3の充電電流がI2>I1>I3の関係にあるので、最も大きい充電電流I2の蓄電池列20_2が最初に満充電となり、均等充電が完了する。監視部11は、蓄電池列20_2の均等充電が完了したと判定した場合、蓄電池管理部12に対して、そのことを通知する。その通知を受けた蓄電池管理部12は、スイッチ制御部13に対してスイッチ4B_2を閉制御(オン)するように指示し、
図4Bに示すように、スイッチ制御部13がスイッチ4B_2を閉制御してインピーダンス回路5を蓄電池列20_2とPCS3との間に接続する。
【0064】
次に、制御装置1は、均等充電が完了した蓄電池列20_1~20_3のスイッチ4A_1~4A_3をオフする(ステップS4)。例えば、上述の例の場合、蓄電池管理部12は、スイッチ4B_2がオン状態であることを確認した後、スイッチ制御部13に対してスイッチ4A_2を開制御(オフ)するように指示し、
図4Bに示すように、スイッチ制御部13がスイッチ4A_2を開制御する。
【0065】
このとき、蓄電池列20_2はインピーダンス回路5_2を介してPCS3と接続されているため、PCS3側から見た蓄電池列20_2のインピーダンス値は他の蓄電池列20_1,20_3のインピーダンス値に比べて高い。そのため、インピーダンス回路5_2のインピーダンスを適切な値にすることにより、蓄電池列20_2に流れる電流I2をほぼ0Aに抑えることが可能となる。すなわち、蓄電池列20_2への充電を停止することが可能となる。
【0066】
また、このときのPCS3から見た蓄電池全体(多並列蓄電池2)のパラメータ(インピーダンス)は、上述した先行検討例(
図9参照)のように蓄電池列20_2をPCS3から完全に切り離した場合に比べて、大きく変化することはない。すなわち、インピーダンス回路5_2のインピーダンスを適切な値にすることにより、蓄電池列20_2の解列前後(スイッチ4A_2、4B_2の切り替え前後)において、PCS3から見た蓄電池全体のインピーダンスの変化を抑えることができる。これにより、満充電に至っていない残りの蓄電池列20_1,20_3の均等充電時の電圧および電流の調整を良好に行うことが可能となる。
【0067】
次に、制御装置1は、全ての蓄電池列20_1~20_3の均等充電が完了したか否かを判定する(ステップS5)。全ての蓄電池列20_1~20_3の均等充電が完了していない場合には、ステップS2に戻り、上述したステップS2からステップS5までの処理を再度実行する。
【0068】
例えば、蓄電池列20_2の均等充電が完了し、蓄電池列20_2がPCS3から解列された後において、均等充電中の蓄電池列20_1,20_3の充電電流はI1>I3の関係にある。そのため、蓄電池列20_1が、蓄電池列20_2の次に満充電となる。監視部11は、蓄電池列20_1の均等充電が完了したと判定した場合、蓄電池管理部12に対して、そのことを通知する。その通知を受けた蓄電池管理部12は、スイッチ制御部13に対してスイッチ4B_1を閉制御(オン)するように指示し、
図4Cに示すように、その指示を受けたスイッチ制御部13がスイッチ4B_1を閉制御して、蓄電池列20_1とPCS3との間にインピーダンス回路5_1を接続する。
【0069】
次に、蓄電池管理部12は、スイッチ4B_1がオン状態であることを確認した後、スイッチ制御部13に対してスイッチ4A_1を開制御(オフ)するように指示し、
図4Cに示すように、スイッチ制御部13がスイッチ4A_1を開制御する。
【0070】
このとき、蓄電池列20_1は、インピーダンス回路5_1を介してPCS3と接続されているため、先述の蓄電池列20_2の場合と同様に、PCS3側から見た蓄電池列20_1のインピーダンスは他の蓄電池列20_3のインピーダンスに比べて高く、且つ蓄電池列20_1の解列前後(スイッチ4A_1、4B_1の切り替え前後)において、PCS3から見た蓄電池全体のインピーダンスの変化を抑えることができる。
【0071】
そのため、インピーダンス回路5_1のインピーダンスを適切な値にすることにより、蓄電池列20_1に流れる電流I1をほぼ0Aに抑制して蓄電池列20_3の過充電を防止することが可能となり、且つ満充電に至っていない残りの蓄電池列20_3の均等充電時の電圧および電流の制御を良好に行うことが可能となる。
この直後は、まだ蓄電池列20_3の均等充電が継続しているため、再びステップS2に戻る。
【0072】
蓄電池列20_3が満充電となった場合、監視部11は、蓄電池列20_3の均等充電が完了したことを、蓄電池管理部12に通知する。その通知を受けた蓄電池管理部12は、スイッチ制御部13に対してスイッチ4B_3を閉制御(オン)するように指示し、
図4Dに示すように、スイッチ制御部13がスイッチ4B_3を閉制御して、インピーダンス回路5_3を蓄電池列20_3とPCS3との間に接続する。
【0073】
次に、蓄電池管理部12は、スイッチ4B_3がオン状態であることを確認した後、スイッチ制御部13に対してスイッチ4A_3を開制御(オフ)するように指示し、
図4Dに示すように、スイッチ制御部13がスイッチ4A_3を開制御して、蓄電池列20_3をPCS3から解列させる。
これにより、全ての蓄電池列20_1~20_3の均等充電が完了する。
【0074】
ステップS5において、制御装置1は、全ての蓄電池列20_1~20_3の均等充電が完了したと判断した場合、多並列蓄電池2の均等充電のための制御を終了する(ステップS6)。
【0075】
以上、本実施の形態に係る蓄電システム100において、上記手順により、多並列蓄電池2の均等充電が行われる。均等充電終了後、制御装置1は、各蓄電池列20_1~20_3のスイッチ4A_1~4A_3を閉制御(オン)した後、各蓄電池列20_1~20_3のスイッチ4B_1~4B_3を開制御(オフ)して、蓄電システム100を元の状態に戻す制御を行う。
【0076】
次に、均等充電の完了の判定方法について説明する。
本実施の形態に係る均等充電の完了の判定方法として、以下に2つの例を示す。
【0077】
先ず、蓄電システム100による均等充電の完了の判定方法の第1の例について説明する。
第1の例として、制御装置1は、前回実施した均等充電が完了してからの蓄電池列20の充電電流の積算値と前回実施した均等充電が完了してからの蓄電池列20の放電電流の積算値との比率が所定値となった場合に、蓄電池列20の均等充電が完了したと判定する。
【0078】
図5は、均等充電時の蓄電池列20(鉛蓄電池)の充電電流および放電電流を示すタイミングチャートである。
図5において、縦軸は、電流を表し、横軸は、時間を表している。また、参照符号302は、蓄電池列20の充電電流を表し、参照符号303は、蓄電池列20の放電電流を表している。
【0079】
先ず、制御装置1の監視部11は、均等充電が完了したタイミングにおいて、蓄電池列20_1~20_n毎に充電電流および放電電流の積算を開始する。例えば、
図5において、均等充電が完了した時刻t31において、監視部11は、各蓄電池列20_1~20_nの充電電流の積算を開始するとともに、各蓄電池列20_1~20_nの放電電流の積算を開始する。
【0080】
次に、監視部11は、蓄電池列20_1~20_n毎に、充電電流の積算値と放電電流の積算値との比率を算出する。具体的には、放電電流の積算値に対する充電電流の積算値の比率を算出する。
【0081】
次に、監視部11は、蓄電池列20_1~20_n毎に、算出した上記比率が比率基準値に到達したか否かを判定する。
【0082】
ここで、比率基準値とは、均等充電における定電圧充電期間の末期を判定するための基準となる値である。一般に、均等充電は、放電容量に対して100%以上(例えば、104%)となるように過充電が行われる。そのため、比率基準値は、100%を超える値、例えば101%~104%の範囲の値に設定することが好ましい。
【0083】
監視部11は、上記比率が比率基準値に到達した蓄電池列20が存在しない場合、蓄電池列20_1~20_n毎の充電電流および放電電流の積算を継続する。一方、算出した比率が比率基準値に到達した蓄電池列20が存在する場合、監視部11は、算出した比率が比率基準値に到達した蓄電池列20について、均等充電が完了したと判定する。監視部11は、全ての蓄電池列20_1~20_nについて均等充電が完了したことを示す判定結果が得られるまで、上記の処理を繰り返し実行する。
【0084】
以上の手順でデータ処理を実行することにより、蓄電池列20_1~20_n毎に、均等充電の完了の有無を判定することができる。
【0085】
次に、蓄電システム100による均等充電の完了の判定方法の第2の例について説明する。
第2の例として、制御装置1は、均等充電における定電圧によって蓄電池列20を充電する定電圧充電期間において、蓄電池列20の充電電流が低下して所定値となった場合に、蓄電池列20の均等充電が完了したと判定する。
【0086】
図6は、定電圧―定電流充電方式または定電力-定電流充電方式によって均等充電を行ったときの定電圧充電期間における蓄電池列20の充電電流と充電状態(SOC:State of Charge)との関係を示す図である。
【0087】
図6に示すように、蓄電池は、定電圧充電時、満充電に近くなるほど充電電流が小さくなる傾向がある。そこで、均等充電における定電圧充電期間において、蓄電池列20毎に充電電流を監視することで、均等充電の完了を検出することが可能となる。例えば、監視部11は、定電圧充電期間において、各蓄電池列20_1~20_nの充電電流が低下して所定の閾値Ithに到達したときに、均等充電が完了したと判定する。
【0088】
図7は、定電流―定電圧充電方式によって均等充電を行った時の各蓄電池列に流れる充電電流の時間的な変化の一例を示す図である。
上述したように、蓄電池列20_1~20_3は、温度や鉛蓄電池セル200自体の特性(内部抵抗)により、定電流充電時の充電電流にばらつきが発生する可能性がある。例えば、上述の例のようにI2>I1>I3となった場合を考える。
【0089】
制御装置1の監視部11は、各蓄電池列20_1~20_3の充電電流を監視する。上述の例の場合、I2>I1>I3であるので、蓄電池列20_2の充電電流I2が最初に閾値Ithに到達する。監視部11は、蓄電池列20_2の充電電流I2が閾値Ithに到達したことを検知した場合、蓄電池列20_2の均等充電が完了したと判定する。
【0090】
次に、I1>I3であることから、蓄電池列20_1の充電電流I1が次に閾値Ithに到達する。監視部11は、蓄電池列20_1の充電電流I1が閾値Ithに到達したことを検知した場合、蓄電池列20_1の均等充電が完了したと判定する。
【0091】
最後に、蓄電池列20_3の充電電流I3が次に閾値Ithに到達する。監視部11は、蓄電池列20_3の充電電流I3が閾値Ithに到達したことを検知した場合、蓄電池列20_3の均等充電が完了したと判定する。
【0092】
このように、蓄電池列20毎に均等充電時の定電圧充電期間における充電電流を監視することで、蓄電池列20毎に均等充電の完了の有無を判定することができる。
【0093】
なお、定電力-定電圧充電方式の場合も同様の手法により、蓄電池列20毎に均等充電の完了の有無を判定することができる。
【0094】
以上、本実施の形態に係る蓄電システム100は、少なくとも一つの鉛蓄電池セル200を含む蓄電池列20_1~20_nを複数並列に接続した多並列蓄電池2と、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられ、対応する蓄電池列20とPCS3との間に直列に接続されたスイッチ4A_1~4A_nと、蓄電池列20_1~20_n毎に対応して設けられたインピーダンス回路5_1~5_nと直列に接続され当該インピーダンス回路5_1~5_nとともにスイッチ4A_1~4A_nとそれぞれ並列に接続されるスイッチ4B_1~4B_nと、制御装置1とを備えている。蓄電システム100において、制御装置1は、スイッチ4Bをオフした状態でスイッチ4Aをオンして均等充電を行うとともに、均等充電が完了したと判定した蓄電池列20のスイッチ4Bをオンした状態でスイッチ4Aをオフする。
【0095】
これによれば、均等充電時におけるPCS3から各蓄電池列20_1~20_nへの電力供給を、蓄電池列20_1~20_n毎に制御することができる。すなわち、スイッチ4B_1~4B_nをオフした状態でスイッチ4A_1~4A_nをオンすることにより、PCS3から各蓄電池列20_1~20_nへ電力が供給されるので、各蓄電池列20_1~20_nの均等充電が可能となる。一方で、均等充電を行っているときに、満充電と判定された蓄電池列20のスイッチ4Bをオンした状態でその蓄電池列20のスイッチ4Aをオフすることにより、その蓄電池列20がインピーダンス回路5_3を介してPCS3と接続される。このとき、インピーダンス回路5_3のインピーダンスが適切な値に設定されていれば、蓄電池列20_3に流れる電流I3をほぼ0Aに抑制することが可能となるので、その蓄電池列20の充電を実質的に停止することができ、均等充電が完了した蓄電池列20の過充電を防止することが可能となる。
【0096】
したがって、本実施の形態に係る蓄電システム100によれば、各蓄電池列20_1~20_nの鉛蓄電池セル200自体の特性(内部抵抗)や温度等に起因して、均等充電時に各蓄電池列20_1~20_nに流れる充電電流がばらついた場合であっても、夫々の蓄電池列20_1~20_nを満充電状態にし、且つ満充電状態となった蓄電池列20の充電を個別に停止することが可能となる。これにより、均等充電時の充電電流のばらつきに起因して過充電や充電不足となる蓄電池列20_1~20_nの発生を防止することができるので、多並列蓄電池2の劣化を抑制することが可能となる。
【0097】
また、蓄電システム100は、均等充電時のPCS3から各蓄電池列20_1~20_nへの電力の供給および遮断の切り替えをスイッチ4A_1~4A_nおよびスイッチ4B_1~4B_nによって実現しているので、上述した特許文献1の従来技術のように、各蓄電池列の充放電量を調整するための複雑な充放電制御機器を蓄電池列毎に別途設ける必要がなく、従来技術に比べて、蓄電システムのコストの増加を抑えることができる。
【0098】
また、本実施の形態に係る蓄電システム100によれば、均等充電が完了した蓄電池列20の充電を停止する場合に、その蓄電池列20のスイッチ4Bをオンした状態でスイッチ4Aをオフすることにより、その蓄電池列20がインピーダンス回路5を介してPCS3に接続される。
【0099】
このとき、上述したように、インピーダンス回路5のインピーダンスを適切な値に設定しておくことにより、均等充電が完了した蓄電池列20の解列後(スイッチ4Aとスイッチ4Bの切り替え後)に、均等充電が完了した蓄電池列に流れる充電電流をほぼ0Aに抑えることが可能となる。
【0100】
また、インピーダンス回路5のインピーダンスを適切な値に設定しておくことにより、均等充電が完了した蓄電池列20の解列前後のPCS3側から見た蓄電池全体(多並列蓄電池2)のパラメータ(インピーダンス)の変化を抑えることができる。これにより、PCS3が均等充電中の蓄電池列20の電圧および充電電流を適切に制御することが可能となる。すなわち、上述の
図10に示したような蓄電池列を解列した際に生じる電圧の変動を効果的に抑え、電圧が上限電圧を超えないように制御することが可能となる。
【0101】
ここで、インピーダンス回路5のインピーダンスは、均等充電における定電圧充電時の蓄電池列20の電圧値と電流値とに基づく値に設定することが好ましい。以下詳細に説明する。
【0102】
図8は、均等充電における定電圧充電時の一つの蓄電池列の内部インピーダンスの経時変化を示す図である。同図において、均等充電における定電圧充電時の一つの蓄電池列の電圧値をその蓄電池列に流れる電流値で除した値を、その蓄電池列の内部インピーダンスの値とし、その内部インピーダンスの時間変化を参照符号800で示している。
【0103】
一般に、均等充電の定電圧充電時において、時間の経過とともに蓄電池列が満充電状態に近づくと、その蓄電池列の充電電流は減少する。そのため、
図8に示すように、蓄電池列の内部インピーダンスは時間の経過とともに上昇する傾向となる。
【0104】
そこで、均等充電が完了したと判定された蓄電池列とPCS間に接続されるインピーダンス回路5のインピーダンスの値を、均等充電の定電圧充電時における蓄電池列の電圧値と電流値とに基づく値(電圧値を電流値で除した値)に設定する。
【0105】
例えば、
図8に示すように、定電圧充電が開始された時刻tsから定電圧充電が完了する時刻(定電圧充電末期の時刻)teまでの期間における蓄電池列20の内部インピーダンスの範囲(Zs~Ze)において、PCS3の制御条件に応じて適切な値を選択し、その値をインピーダンス回路5のインピーダンスとして設定すればよい。あるいは、蓄電池列20が多並列であることを考慮し、定電圧充電の開始時の一つの蓄電池列20の内部インピーダンスの値または定電圧充電の終了間際(定電圧充電末期)の一つの蓄電池列20の内部インピーダンスの値を係数倍した値を、インピーダンス回路5のインピーダンスとして設定してもよい。
【0106】
このように、インピーダンス回路5のインピーダンスを適切な値に設定することにより、スイッチ4A,4Bの切り替え後に、均等充電が完了した蓄電池列に流れる充電電流をほぼ0Aに抑制することが可能となり、且つ蓄電池列20の解列前後(インピーダンス回路5の接続前後)のPCS3側から見た蓄電池全体のインピーダンスの変化を抑えて、PCS3による均等充電中の蓄電池列の電圧および電流を適切に制御することが可能となる。
【0107】
以上、本実施の形態に係る蓄電システム100によれば、より簡単な構成によって、均等充電による蓄電池列間の充電状態のばらつきを抑えて、多並列蓄電池の劣化を抑制することが可能となるとともに、より信頼性の高い均等充電を実現することが可能となる。
【0108】
また、蓄電システム100において、制御装置1は、前回実施した均等充電が完了してからの蓄電池列20_1~20_nの充電電流の積算値と前回実施した均等充電が完了してからの蓄電池列20_1~20_nの放電電流の積算値との比率が所定値となった場合に、蓄電池列20_1~20_nの均等充電が完了したと判定してもよい。
【0109】
これによれば、均等充電の充電方式によらず、より正確に、蓄電池列20毎に均等充電の完了の有無を判定することができる。
【0110】
また、蓄電システム100において、制御装置1は、均等充電における定電圧によって蓄電池列20_1~20_nを充電する定電圧充電期間において、蓄電池列20_1~20_nの充電電流が低下して所定値となった場合に、蓄電池列20_1~20_nの均等充電が完了したと判定してもよい。
【0111】
これによれば、定電流―定電圧充電方式や定電力-定電圧充電方式のように均等充電の終了間際に定電圧充電を行う均等充電方式を採用した蓄電システムにおいて、より簡単かつ正確に、蓄電池列20毎に均等充電の完了の有無を判定することが可能となる。
【0112】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0113】
例えば、上記実施の形態において、均等充電の定電圧充電期間を有する充電方式として、定電流-定電圧充電方式および定電力-定電圧充電方式を例示したが、これに限られない。
【0114】
例えば、初めに定電流充電を行い、蓄電池電圧が所定の閾値に達した後に前回の電流値よりも低い電流値での定電流充電を行うことを複数回繰り返し、最後に、所定の電圧で定電圧充電を行って鉛蓄電池を満充電状態まで回復させる多段充電方式であってもよい。
【0115】
例えば、制御装置1は、多段充電方式の定電圧充電期間において、蓄電池列20_1~20_nの充電電流が低下して所定値となった場合に、蓄電池列20_1~20_nの均等充電が完了したと判定することにより、定電流―定電圧充電方式および定電力-定電圧充電方式の場合と同様に、より簡単かつ正確に、蓄電池列20毎に均等充電の完了の有無を判定することができる。
【符号の説明】
【0116】
1…制御装置、2…蓄電池モジュール(多並列蓄電池)、3…交直変換装置(PCS)、4A_1~4A_n…スイッチ(第1スイッチ)、4B_1~4B_n…スイッチ(第2スイッチ)、5,5_1~5_n…インピーダンス回路、6…負荷、7…電力供給部、11…監視部、12…蓄電池管理部、13…スイッチ制御部、20,20_1~20_n…蓄電池列、100…蓄電システム、200…鉛蓄電池セル、201…電圧センサ、202…電流センサ、Ith…閾値(所定値)、R,R1,R2…抵抗(素子)、C…キャパシタ。