(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】二次電池用分離膜およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20220701BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20220701BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20220701BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220701BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220701BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20220701BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/42
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2017098236
(22)【出願日】2017-05-17
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2016-0060152
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】徐 東 完
(72)【発明者】
【氏名】高 彰 鴻
(72)【発明者】
【氏名】金 養 燮
(72)【発明者】
【氏名】金 容 慶
(72)【発明者】
【氏名】朴 杉 秦
(72)【発明者】
【氏名】朴 鎭 奎
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118908(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148577(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一方の面に位置する耐熱層と、を含み、
前記耐熱層は、アクリル系共重合体、アルカリ金属、およびフィラーを含み、
前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位、シアノ基含有構造単位、およびスルホネート基含有構造単位を含み、
前記(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位は、下記化学式1、化学式2、またはこれらの組み合わせで表され、
【化1】
[前記化学式1、化学式2において、R
1およびR
2は、それぞれ独立した水素またはメチル基であり、前記化学式2において、Mは、アルカリ金属である。]
前記スルホネート基含有構造単位は、下記化学式5、化学式6、またはこれらの組み合わせで表され、
【化2】
[前記化学式5、化学式6において、R
5およびR
6はそれぞれ独立した水素または炭素数1~3のアルキル基であり、L
3およびL
5はそれぞれ独立した-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-O-、または-C(=O)NH-であり、L
4およびL
6はそれぞれ独立した置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数3~20のヘテロ環基であり、a、b、c、およびdは、それぞれ独立した0~2の整数であり、化学式6において、M’は、アルカリ金属である。]
前記アルカリ金属は、前記アルカリ金属と前記アクリル系共重合体との総重量100重量%に対して1重量%以上40重量%以下の範囲で含まれ、前記アルカリ金属及び前記アクリル系共重合体との総含有物質量100モル%に対して0.1モル%以上1.0モル%以下の範囲で含まれ
、
前記アルカリ金属は、前記アクリル系共重合体と結合した塩の形態を含む、二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記シアノ基含有構造単位は、下記化学式4で表される、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【化3】
[前記化学式4において、R
4は、水素または炭素数1~3のアルキル基であり、L
1は、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-O-、または-C(=O)NH-であり、xは、0~2の整数であり、L
2は、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数3~20のヘテロ環基であり、yは、0~2の整数である。]
【請求項3】
前記アクリル系共重合体の総含有物質量100モル%に対して、前記スルホネート基含有構造単位は、0.1モル%以上20モル%以下の範囲で含まれる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体の総含有物質量100モル%に対して、
前記(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位は、10モル%以上70モル%以下の範囲で含まれ、
前記シアノ基含有構造単位は、30モル%以上85モル%以下の範囲で含まれ、
前記スルホネート基含有構造単位は、0.1モル%以上20モル%以下の範囲で含まれる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体の重量平均分子量は、200,000以上700,000以下の範囲である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項6】
前記アクリル系共重合体のガラス転移温度は、200℃以上280℃以下の範囲である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項7】
前記耐熱層の総重量100重量%に対して、前記アクリル系共重合体は、1重量%以上30重量%以下の範囲で含まれる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項8】
前記耐熱層の総重量100重量%に対して、前記フィラーは、70重量%以上99重量%以下の範囲で含まれる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項9】
前記フィラーは、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、SrTiO
3、BaTiO
3、Mg(OH)
2、ベーマイト、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項10】
前記耐熱層の厚さは、1μm以上5μm以下の範囲である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項11】
前記二次電池用分離膜を130℃以上170℃以下の温度範囲で20分から70分間放置した後に測定した前記二次電池用分離膜の縦方向および横方向への収縮率は、それぞれ5%以下である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項12】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に位置する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の二次電池用分離膜とを含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二次電池用分離膜およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池用分離膜は、電池内で正極と負極を隔離しながらイオン伝導度を持続的に維持させて電池の充電と放電とを可能にする中間膜である。ところが、電池が異常な挙動によって高温の環境下に晒されると、分離膜は低い溶融度により機械的に収縮したり損傷を受ける。この場合、正極と負極が互いに接触して電池が発火する現象が生じることがある。このような問題を克服するために、分離膜の収縮を抑制し、電池の安定性を確保することができる技術が必要である。
【0003】
これに関連し、熱抵抗が大きい無機粒子を接着性のある有機バインダーと混合して分離膜にコーティングすることによって、分離膜の熱抵抗性を高める方法が知られている。しかし、既存の方法は、接着力を十分に確保できず、多様な大きさと形態を有する分離膜に一括的に適用しにくい。したがって、耐熱性が高く、かつ、接着力に優れた分離膜に対する開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高い耐熱性および強い接着力を有する二次電池用分離膜を提供することを課題とする。また、一実施形態に係る二次電池用分離膜を含むことで、耐熱性、安定性、寿命特性、レート特性、耐酸化性などが向上したリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、多孔性基材と、多孔性基材の少なくとも一方の面に位置する耐熱層とを含み、耐熱層は、アクリル系共重合体、アルカリ金属、およびフィラーを含み、アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位、シアノ基含有構造単位、およびスルホネート基含有構造単位を含む二次電池用分離膜が提供される。
【0006】
他の実施形態によれば、正極と、負極と、正極と負極との間に位置する二次電池用分離膜とを含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態に係る二次電池用分離膜は、耐熱性と接着力に優れ、これを含むリチウム二次電池は、耐熱性、安定性、寿命特性、レート特性および耐酸化性などに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る二次電池用分離膜の断面を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るリチウム二次電池の分解斜視図である。
【
図3】製造例1-1、比較製造例1および比較製造例2によるリチウム二次電池の寿命特性を示すグラフである。
【
図4】製造例1-1、比較製造例1および比較製造例2によるリチウム二次電池のレート特性を示すグラフである。
【
図5】合成例1、比較合成例1および比較合成例2で製造したアクリル系バインダーおよびポリビニリデンフルオライド系バインダーの耐酸化性を示すリニアスイープボルタンメトリー法によって評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは一例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求範囲によってのみ定義される。
【0010】
以下、別途定義がない限り、「置換」とは、化合物中の水素が、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアルキルアリール基、炭素数1~30のアルコキシ基、炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数3~30のヘテロアルキルアリール基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~15のシクロアルケニル基、炭素数6~30のシクロアルキニル基、炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(F、Cl、Br、またはI)、ヒドロキシ基(-OH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基(-CN)、アミノ基(-NRR’、ここで、RとR’は、互いに独立した水素または炭素数1~6のアルキル基である)、スルホベタイン基(-RR’N+(CH2)nSO3
-)、カルボキシベタイン基(-RR’N+(CH2)nCOO-、ここで、RとR’は、互いに独立した炭素数1~20のアルキル基である)、アジド基(-N3)、アミジノ基(-C(=NH)NH2)、ヒドラジノ基(-NHNH2)、ヒドラゾノ基(=N(NH2))、アルデヒド基(-C(=O)H)、カルバモイル基(carbamoyl group、-C(O)NH2)、チオール基(-SH)、エステル基(-C(=O)OR、ここで、Rは、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基である)、カルボキシル基(-COOH)またはその塩(-C(=O)OM、ここで、Mは、有機または無機陽イオンである)、スルホン酸基(-SO3H)またはその塩(-SO3M、ここで、Mは、有機または無機陽イオンである)、リン酸基(-PO3H2)またはその塩(-PO3MHまたは-PO3M2、ここで、Mは、有機または無機陽イオンである)、およびこれらの組み合わせから選択された置換基で置換されることを意味する。
【0011】
以下、炭素数1~3のアルキル基は、メチル基、エチル基、またはプロピル基を意味する。炭素数1~10のアルキレン基は、例えば、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~5のアルキレン基、または炭素数1~3のアルキレン基であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基であってもよい。炭素数3~20のシクロアルキレン基は、例えば、炭素数3~10のシクロアルキレン基、または炭素数5~10のアルキレン基であってもよく、例えば、シクロへキシレン基であってもよい。炭素数6~20のアリーレン基は、例えば、炭素数6~10のアリーレン基であってもよく、例えば、フェニレン基であってもよい。炭素数3~20のヘテロ環基は、例えば、炭素数3~10のヘテロ環基であってもよく、例えば、ピリジル基であってもよい。
【0012】
以下、「ヘテロ」とは、N、O、S、Si、およびPから選択されるヘテロ原子を1個以上含むことを意味する。以下、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、共重合体、ブレンド、合金、複合体、反応生成物などを意味することができる。また、化学式において、*の表示は、同一または異なる原子、基、または構造単位と結合する部分を意味する。以下、「アルカリ金属」は、周期律表1族に属する元素で、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、またはフランシウムなどを意味し、陽イオン状態または中性状態で存在し得る。
【0013】
以下、一実施形態に係る二次電池用分離膜を説明する。
図1は、一実施形態に係る二次電池用分離膜を示す図である。
図1を参照すれば、一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、多孔性基材20と、多孔性基材20の一方の面または両面に位置する耐熱層30とを含む。
【0014】
多孔性基材20は、多数の気孔を有し、通常、電気化学素子に使用される基材であってもよい。多孔性基材20としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、サイクリックオレフィンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択されたいずれか1つの高分子、またはこれらの2種以上の共重合体または混合物で形成された高分子膜であってもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
多孔性基材20は、一例として、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系基材であってもよく、ポリオレフィン系基材は、シャットダウン機能に優れ、電池の安全性の向上に寄与することができる。ポリオレフィン系基材は、例えば、ポリエチレンの単一膜、ポリプロピレンの単一膜、ポリエチレン/ポリプロピレンの二重膜、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三重膜、およびポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの三重膜からなる群より選択される。また、ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン樹脂のほか、非オレフィン樹脂を含むか、オレフィンと非オレフィンモノマーの共重合体を含んでもよい。
【0016】
多孔性基材20は、約1μm以上40μm以下の範囲の厚さを有してもよく、例えば、1μm以上30μm以下、1μm以上20μm以下、5μm以上15μm以下、または10μm以上15μm以下の範囲の厚さを有してもよい。
【0017】
一実施形態に係る耐熱層30は、アクリル系共重合体、アルカリ金属、およびフィラーを含む。
【0018】
耐熱層30は、フィラーを含むことによって耐熱性が改善され、温度上昇によって分離膜が急激に収縮したり変形したりすることを防止することができる。フィラーは、例えば、無機フィラー、有機フィラー、有機-無機複合フィラー、またはこれらの組み合わせであってもよい。無機フィラーは、耐熱性を改善できるセラミック物質であってもよいし、例えば、金属酸化物、半金属酸化物、金属フッ化物、金属水酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。無機フィラーは、例えば、Al2O3、SiO2、TiO2、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、SrTiO3、BaTiO3、Mg(OH)2、ベーマイト(boehmite)、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、これに限定されるものではない。有機フィラーは、アクリル化合物、イミド化合物、アミド化合物、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、これに限定されるものではない。有機フィラーは、コアシェル構造を有してもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
フィラーは、球状、板状、キュービック(cubic)形、または無定形であってもよい。フィラーの平均粒径は、約1nm以上2500nm以下の範囲であってもよく、上記範囲内で100nm以上2000nm以下、または200nm以上1000nm以下であってもよく、例えば、約300nm以上800nm以下であってもよい。フィラーの平均粒径は、累積分布曲線(cumulative size-distribution curve)において累積体積が50%での粒子サイズ(D50)であってもよい。上記範囲の平均粒径を有するフィラーを用いることによって耐熱層30に適切な強度を付与し、分離膜10の耐熱性、耐久性および安定性を向上させることができる。フィラーは、種類が異なるか、大きさが異なる2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
フィラーは、耐熱層30の総重量100重量%に対して50重量%以上99重量%以下の範囲で含まれてもよい。一実施形態において、フィラーは、耐熱層30に対して70重量%以上99重量%以下の範囲で含まれ、例えば、80重量%以上99重量%以下、85重量%以上99重量%以下、90重量%以上99重量%以下、または95重量%以上99重量%以下の範囲で含まれてもよい。フィラーが上記範囲内に含まれる場合、一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、優れた耐熱性、耐久性、耐酸化性および安定性を示すことができる。
【0021】
アルカリ金属は、陽イオンの形態であってもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムであってもよい。アルカリ金属は、後述するアクリル系共重合体と結合して塩の形態で存在してもよい。アルカリ金属は、水系溶媒においてアクリル系共重合体の合成を補助することができ、耐熱層30の接着力を向上させ、分離膜10の耐熱性、通気度および耐酸化性などを改善することができる。
【0022】
アルカリ金属は、アルカリ金属とアクリル系共重合体との総重量100重量%に対して1重量%以上40重量%以下の範囲で含まれ、例えば、1重量%以上30重量%以下、または1重量%以上20重量%以下、または10重量%以上20重量%以下の範囲で含まれてもよい。
【0023】
また、アルカリ金属は、アルカリ金属およびアクリル系共重合体の総含有物質量100モル%に対して0.1モル%以上1.0モル%以下の範囲で含まれてもよい。
【0024】
アルカリ金属が上記範囲に含まれる場合、水系溶媒においてアクリル系共重合体の合成を補助することができ、この結果、耐熱層30は優れた接着力を有することができ、これを含む分離膜10は、優れた耐熱性、通気度および耐酸化性を示すことができる。
【0025】
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位、シアノ基含有構造単位、およびスルホネート基含有構造単位を含む。アクリル系共重合体は、フィラーを多孔性基材20上に固定する役割を果たすと同時に、耐熱層30が多孔性基材20および電極によく付着するように接着力を提供することができ、分離膜10の耐熱性、通気度および耐酸化性の向上に寄与することができる。
【0026】
(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位において、(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸の共役塩基、(メタ)アクリル酸塩、またはこれらの誘導体であってもよい。(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位は、例えば、下記化学式1、化学式2、化学式3、またはこれらの組み合わせで表されてもよい。
【化1】
化学式1から化学式3において、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立した水素またはメチル基であり、化学式2において、Mはアルカリ金属である。アルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムであってもよい。
【0027】
一例として、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位は、化学式2で表される構造単位および化学式3で表される構造単位を含むことができ、この場合、化学式2で表される構造単位および化学式3で表される構造単位は、10:1から1:2、または10:1から1:1、または5:1から1:1のモル比率で含まれてもよい。
【0028】
(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸から誘導される構造単位は、アクリル系共重合体の総含有物質量100モル%に対して10モル%以上70モル%以下の範囲で含まれ、例えば、20モル%以上60モル%以下、または30モル%以上60モル%以下、または40モル%以上55モル%以下の範囲で含まれてもよい。上記構造単位が上記範囲に含まれる場合、アクリル系共重合体とこれを含む分離膜10は、優れた接着力と耐熱性、通気度および耐酸化性を示すことができる。
【0029】
シアノ基(cyano group)含有構造単位は、例えば、下記化学式4で表されてもよい。
【化2】
化学式4において、R
4は水素または炭素数1~3のアルキル基であり、L
1は、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-O-、または-C(=O)NH-であり、xは0~2の整数であり、L
2は、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数3~20のヘテロ環基であり、yは0~2の整数である。
【0030】
シアノ基含有構造単位は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、アルケンニトリル、シアノアルキル(メタ)アクリレート、または2-(ビニルオキシ)アルカンニトリルから誘導された構造単位であってもよい。ここで、アルケンは、炭素数1~20のアルケン、炭素数1~10のアルケン、または炭素数1~6のアルケンであってもよく、アルキルは、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~10のアルキル、または炭素数1~6のアルキルであってもよく、また、アルカンは、炭素数1~20のアルカン、炭素数1~10のアルカン、または炭素数1~6のアルカンであってもよい。
【0031】
アルケンニトリルは、例えば、シアニドアリル、4-ペンテンニトリル、3-ペンテンニトリル、2-ペンテンニトリル、または5-ヘキセンニトリルなどであってもよい。シアノアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、シアノメチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、シアノプロピル(メタ)アクリレート、またはシアノオクチル(メタ)アクリレートなどであってもよい。2-(ビニルオキシ)アルカンニトリルは、例えば、2-(ビニルオキシ)エタンニトリル、または2-(ビニルオキシ)プロパンニトリルなどであってもよい。
【0032】
シアノ基含有構造単位は、アクリル系共重合体の総含有物質量100モル%に対して30モル%以上85モル%以下の範囲で含まれ、例えば、30モル%以上70モル%以下、30モル%以上60モル%以下、または35モル%以上55モル%以下の範囲で含まれてもよい。シアノ基含有構造単位が上記範囲に含まれる場合、アクリル系共重合体およびこれを含む分離膜10は、優れた耐酸化性を確保することができ、接着力と耐熱性および通気度を示すことができる。
【0033】
スルホネート基(sulfonate group)含有構造単位は、スルホン酸の共役塩基、スルホン酸塩、スルホン酸、またはこれらの誘導体を含有する構造単位であってもよい。例えば、スルホネート基含有構造単位は、下記化学式5、化学式6、化学式7、またはこれらの組み合わせで表されてもよい。
【化3】
化学式5から化学式7において、R
5、R
6、およびR
7は、それぞれ独立した水素または炭素数1~3のアルキル基であり、L
3、L
5、およびL
7は、それぞれ独立した-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-O-、または-C(=O)NH-であり、L
4、L
6、およびL
8は、それぞれ独立した、置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数3~20のヘテロ環基であり、a、b、c、d、e、およびfは、それぞれ独立した0~2の整数であり、化学式6において、M’はアルカリ金属である。
【0034】
一例として、化学式5から化学式7において、L3、L5、およびL7は-C(=O)NH-であり、L4、L6、およびL8は、それぞれ独立した炭素数1~10のアルキレン基であり、a、b、c、d、e、およびfは、1であってもよい。
【0035】
スルホネート基含有構造単位は、化学式5で表される構造単位、化学式6で表される構造単位、および化学式7で表される構造単位のうちのいずれか1つのみを含んでもよく、2種類以上を含んでもよい。一例として、スルホネート基含有構造単位は、化学式6で表される構造単位を含んでもよく、他の例として、スルホネート基含有構造単位は、化学式6で表される構造単位および化学式7で表される構造単位を含んでもよい。
【0036】
スルホネート基含有構造単位は、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アネトールスルホン酸、アクリルアミドアルカンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、またはこれらの塩から誘導された構造単位であってもよい。
【0037】
ここで、アルカンは、炭素数1~20のアルカン、炭素数1~10のアルカン、または炭素数1~6のアルカンであってもよく、アルキルは、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~10のアルキル、または炭素数1~6のアルキルであってもよい。塩は、前述したスルホン酸と適切なイオンによって構成される塩を意味する。イオンは、例えば、アルカリ金属イオンであってもよく、この場合、塩は、スルホン酸アルカリ金属塩であってもよい。
【0038】
アクリルアミドアルカンスルホン酸は、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸であってもよく、スルホアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、3-スルホプロピル(メタ)アクリレートなどであってもよい。
【0039】
スルホネート基含有構造単位は、アクリル系共重合体の総含有物質量100モル%に対して0.1モル%以上20モル%以下の範囲で含まれ、例えば、0.1モル%以上10モル%以下、または1モル%以上20モル%以下、または1モル%以上10モル%以下の範囲で含まれてもよい。スルホネート基含有構造単位が上記範囲に含まれる場合、アクリル系共重合体およびこれを含む分離膜10は、優れた接着力と耐熱性、通気度および耐酸化性を示すことができる。
【0040】
アクリル系共重合体は、一例として、下記化学式8で表されてもよい。
【化4】
化学式8において、R
11およびR
12は、それぞれ独立した水素またはメチル基であり、R
13およびR
14は、それぞれ独立した水素または炭素数1~3のアルキル基であり、L
1およびL
5は、それぞれ独立した-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-O-、または-C(=O)NH-であり、L
2およびL
6は、それぞれ独立した置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数3~20のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数3~20のヘテロ環基であり、x、y、c、およびdは、それぞれ独立した0~2の整数であり、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムなどのアルカリ金属であり、k、l、mおよびnは、各構造単位のモル比率を意味する。
【0041】
一例として、化学式8において、k+l+m+n=1であってもよい。さらに一例として、0.1≦(k+l)≦0.5、0.4≦m≦0.85、および0.001≦n≦0.2であってもよく、例えば、0.1≦k≦0.5および0≦l≦0.25であってもよい。
【0042】
一例として、化学式8において、x=y=0であり、L5は、-C(=O)NH-であり、L6は、炭素数1~10のアルキレン基であり、c=d=1であってもよい。
【0043】
アクリル系共重合体において、アルカリ金属(M+)が置換された程度は、(k+n)に対して0.5から1.0であってもよく、例えば、0.6から0.9または0.7から0.9であってもよい。アルカリ金属の置換された程度が上記範囲を満たす場合、アクリル系共重合体およびこれを含む分離膜10は、優れた接着力および耐熱性、耐酸化性を示すことができる。
【0044】
アクリル系共重合体は、前述した構造単位のほか、他の構造単位をさらに含んでもよい。例えば、アクリル系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートから誘導された構造単位、ジエン系から誘導された構造単位、スチレン系から誘導された構造単位、エステル基含有構造単位、カーボネート基含有構造単位、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0045】
アクリル系共重合体は、上記構造単位が交互に分布する交互共重合体、任意に分布するランダム共重合体、または一部の構造単位がグラフトされるグラフト共重合体など多様な形態であってもよい。
【0046】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、200,000以上700,000以下の範囲であってもよく、例えば、200,000以上600,000以下、または300,000以上700,000以下の範囲であってもよい。アクリル系共重合体の重量平均分子量が上記範囲を満たす場合、アクリル系共重合体およびこれを含む分離膜10は、優れた接着力と耐熱性、通気度および耐酸化性を発揮することができる。ここで重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定したポリスチレン換算平均分子量であってもよい。
【0047】
アクリル系共重合体のガラス転移温度は、200℃以上280℃以下の範囲であってもよく、例えば、210℃以上270℃以下、または210℃以上260℃以下の範囲であってもよい。アクリル系共重合体のガラス転移温度が上記範囲を満たす場合、アクリル系共重合体およびこれを含む分離膜10は、優れた接着力と耐熱性、通気度および耐酸化性を発揮することができる。ここでガラス転移温度は、示差走査熱量測定法で測定された値であってもよい。
【0048】
アクリル系共重合体は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合など公知の多様な方法によって製造される。
【0049】
アクリル系共重合体は、耐熱層30の総重量100重量%に対して1重量%以上30重量%以下の範囲で含まれ、例えば、1重量%以上20重量%以下、または1重量%以上15重量%以下、または1重量%以上10重量%以下の範囲で含まれてもよい。アクリル系共重合体が耐熱層30に上記範囲で含まれる場合、分離膜10は、優れた耐熱性と接着力、通気度および耐酸化性などを示すことができる。
【0050】
一方、耐熱層30は、アクリル系共重合体のほか、架橋構造を有する架橋バインダーをさらに含むことができる。架橋バインダーは、熱および/または光に反応できる硬化性官能基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーから得られ、例えば、少なくとも2個の硬化性官能基を有する多官能モノマー、多官能オリゴマーおよび/または多官能ポリマーから得られる。硬化性官能基は、ビニル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、オキセタン基、エーテル基、シアネート基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、またはこれらの組み合わせを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0051】
架橋バインダーは、一例として、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを硬化して得ることができ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンヘキサ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを硬化して得ることができる。
【0052】
他の一例として、架橋バインダーは、少なくとも2個のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを硬化して得ることができ、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、またはこれらの組み合わせを硬化して得ることができる。
【0053】
他の一例として、架橋バインダーは、少なくとも2個のイソシアネート基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを硬化して得ることができ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,2,4)-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、またはこれらの組み合わせを硬化して得ることができる。
【0054】
また、耐熱層30は、アクリル系共重合体のほか、非架橋バインダーをさらに含むことができる。非架橋バインダーは、例えば、ビニリデンフルオライド系重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレン-ビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
ビニリデンフルオライド系重合体は、具体的には、ビニリデンフルオライドモノマー由来構造単位のみを含むホモポリマー、またはビニリデンフルオライド由来構造単位と他のモノマー由来構造単位とのコポリマーであってもよい。コポリマーは、具体的には、ビニリデンフルオライド由来構造単位と、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレンテトラフルオライド、およびエチレンモノマーに由来する構造単位のうちの1種以上であってもよいが、これに限定されるわけではない。例えば、コポリマーは、ビニリデンフルオライドモノマー由来構造単位とヘキサフルオロプロピレンモノマー由来構造単位とを含むポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)コポリマーであってもよい。
【0056】
一例として、非架橋バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)ホモポリマー、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。この場合、多孔性基材20と耐熱層30との接着力が向上し、分離膜10の安定性と電解液含浸性が向上して、電池の高率充放電特性などが向上することができる。
【0057】
耐熱層30は、約0.01μm以上20μm以下の範囲の厚さを有してもよいし、上記範囲内で約1μm以上10μm以下、または約1μm以上5μm以下、または1μm以上3μm以下の範囲の厚さを有してもよい。
【0058】
多孔性基材20の厚さに対する耐熱層30の厚さの比率は、0.05から0.5の範囲であってもよく、例えば、0.05から0.4、または0.05から0.3、または0.1から0.2の範囲内であってもよい。この場合、多孔性基材20と耐熱層30とを含む分離膜10は、優れた通気度と耐熱性および接着力などを示すことができる。
【0059】
一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、優れた耐熱性を有する。具体的には、分離膜10は、高温での収縮率が5%以下、または4%以下であってもよい。例えば、分離膜10を130℃以上170℃以下の温度範囲で20分から70分間放置した後に測定した分離膜10の縦方向および横方向への収縮率は、それぞれ5%以下であってもよい。また、分離膜10を150℃で60分間放置した後に測定した分離膜10の縦方向および横方向への収縮率は、それぞれ5%以下、または4%以下であってもよい。
【0060】
一般に、分離膜10において、耐熱層30が厚ければ高温での収縮率が低い傾向がある。しかし、一実施形態に係る分離膜10は、耐熱層30の厚さが1μm以上5μm以下、または1μm以上3μm以下の範囲であるにもかかわらず、5%以下の高温収縮率を実現することができる。
【0061】
また、一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、200℃以上、例えば、200℃以上250℃以下の範囲の高温でも破断したり形態が変形したりせず、安定した形態を維持することができる。
【0062】
一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、優れた通気度を示すことができ、具体的には、200sec/100cc未満、例えば、190sec/100cc以下、または160sec/100cc以下の通気度を有することができる。ここで、通気度とは、100ccの空気が分離膜を透過するのにかかる時間(秒)を意味する。
【0063】
一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、公知の多様な方法によって製造される。例えば、二次電池用分離膜10は、多孔性基材20の一方の面または両面に耐熱層形成用組成物を塗布した後、乾燥して形成される。
【0064】
耐熱層形成用組成物は、アクリル系共重合体、アルカリ金属、フィラー、および溶媒を含むことができる。溶媒は、アクリル系共重合体およびフィラーを溶解または分散させることができれば特に限定されない。一実施形態において、溶媒は、水、アルコール、またはこれらの組み合わせを含む水系溶媒であってもよい。この場合、環境に優しいという利点がある。
【0065】
塗布は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、スリットコーティング、ロールコーティング、インクジェット印刷などによって行われるが、これに限定されるものではない。
【0066】
乾燥は、例えば、自然乾燥、温風、熱風または低湿風による乾燥、真空乾燥、遠赤外線、電子線などの照射による方法で行われるが、これに限定されない。乾燥工程は、例えば、25℃~120℃の温度で行われる。
【0067】
二次電池用分離膜10は、前述した方法のほか、ラミネーション、共押出などの方法で製造されてもよい。
【0068】
以下、前述した二次電池用分離膜10を含むリチウム二次電池について説明する。
【0069】
リチウム二次電池は、使用する分離膜と電解液の種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池などに分類され、形態によって、円筒形、角形、コイン形、パウチ形などに分類され、サイズによって、バルクタイプと薄膜タイプに分けられる。これら電池の構造と製造方法は当該分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0070】
ここでは、リチウム二次電池の一例として角形リチウム二次電池を例として説明する。
図2は、一実施形態に係るリチウム二次電池の分解斜視図である。
図2を参照すれば、一実施形態に係るリチウム二次電池100は、正極40と負極50との間に分離膜10を介して巻き取られた電極アセンブリ60と、電極アセンブリ60が内蔵されるケース70とを含む。
【0071】
電極アセンブリ60は、例えば、分離膜10を挟んで正極40と負極50を巻いて形成したゼリーロール(jelly roll)形態であってもよい。正極40、負極50、および分離膜10は、電解液(図示せず)に含浸されている。正極40は、正極集電体と、正極集電体上に形成される正極活物質層とを含むことができる。正極活物質層は、正極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を含むことができる。
【0072】
正極集電体としては、アルミニウム、ニッケルなどを用いてもよいが、これに限定されない。
【0073】
正極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入および脱離が可能な化合物を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、アルミニウム、鉄、またはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物または複合リン酸化物のうちの1種以上を使用することができる。例えば、正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0074】
バインダーは、正極活物質粒子を互いに接着させるだけでなく、正極活物質を正極集電体に接着させる役割を果たし、具体例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどがあるが、これらに限定されない。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
導電剤は、電極に導電性を付与するものであり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、金属粉末、金属繊維などがあるが、これらに限定されない。これらは、単独でまたは2種以上が混合されて用いられる。金属粉末と金属繊維は、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属であってもよい。
【0076】
負極50は、負極集電体と、負極集電体上に形成される負極活物質層とを含むことができる。負極集電体としては、銅、金、ニッケル、銅合金などを用いてもよいが、これに限定されない。負極活物質層は、負極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を含んでもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入および脱離可能な物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質、遷移金属酸化物、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0077】
リチウムイオンを可逆的に挿入および脱離可能な物質としては、炭素系物質が挙げられ、その例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの組み合わせが挙げられる。結晶質炭素の例としては、無定形、板状(plate-shape)、麟片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛が挙げられる。非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。リチウム金属の合金としては、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群より選択される金属との合金が使用できる。リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-C複合体、Si-Y合金、Sn、SnO2、Sn-C複合体、Sn-Yなどが挙げられ、また、これらの少なくとも1つとSiO2とを混合して用いてもよい。元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0078】
負極50に使用されるバインダーと導電剤の種類は、上述した正極40で使用されるバインダーおよび導電剤と同一であってもよい。
【0079】
正極40と負極50は、それぞれの活物質およびバインダーと、任意に導電剤とを溶媒中に混合して各活物質組成物を製造し、活物質組成物をそれぞれの集電体に塗布して製造することができる。この時、溶媒としては、N-メチルピロリドンなどを用いてもよいが、これに限定されない。このような電極の製造方法は当該分野で広く知られた内容であるので、本明細書での詳細な説明は省略する。
【0080】
電解液は、有機溶媒とリチウム塩とを含む。有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす。有機溶媒としては、例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0081】
カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどが使用することができる。エステル系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用することができる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用でき、ケトン系溶媒としては、例えば、シクロヘキサノンなどが使用できる。また、アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用でき、非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香族環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが使用することができる。
【0082】
有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、2種以上を混合して用いる場合の混合比率は、目的の電池性能に応じて適切に調節可能である。
【0083】
リチウム塩は、有機溶媒に溶解して、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進させる物質である。リチウム塩の例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO3C2F5)2、LiN(CF3SO2)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(xおよびyは、自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
リチウム塩の濃度は、0.1Mから2.0Mの範囲内で使用することができる。リチウム塩の濃度が上記範囲内の場合、電解液が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解液性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
【0085】
以下、実施例を通じて上述した本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
[合成例:アクリル系共重合体の製造]
[合成例1]
撹拌機、温度計および冷却管を備えた3Lの四口フラスコ内に、蒸留水(968g)とアクリル酸(45.00g、0.62mol)、過硫酸アンモニウム(0.54g、2.39mmol、単量体に対して1500ppm投入)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(5.00g、0.02mol)および5N水酸化ナトリウム水溶液(アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との総量に対して0.8当量)を加え、ダイヤフラムポンプで内圧を10mmHgに減圧し、窒素で内圧を常圧に戻す操作を3回繰り返した後、アクリロニトリル(50.00g、0.94mol)を添加する。
【0087】
反応液の温度が65℃~70℃の間で安定するように制御しながら18時間反応させ、過硫酸アンモニウム(0.23g、1.00mmol、単量体に対して630ppm投入)を再投入した後、温度を80℃に上昇させ、さらに4時間反応させる。室温に冷却した後、25%アンモニア水溶液を用いて反応液のpHを7~8に調整する。
【0088】
このような方法でポリ(アクリル酸-co-アクリロニトリル-co-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)ナトリウム塩を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は39:59:2である。反応液(反応生成物)を10mL程度取り出して不揮発成分を測定した結果、9.0%(理論値:10%)であった。
【0089】
[合成例2]
アクリル酸(40g、0.56mol)、アクリロニトリル(50g、0.94mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(10g、0.05mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は36:61:3である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0090】
[合成例3]
アクリル酸(35g、0.49mol)、アクリロニトリル(50g、0.94mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(15g、0.07mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は32:63:5である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0091】
[合成例4]
アクリル酸(30g、0.42mol)、アクリロニトリル(50g、0.94mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(20g、0.10mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、およびアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は28:65:7である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0092】
[合成例5]
アクリル酸(32g、0.49mol)、アクリロニトリル(60g、1.13mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(5g、0.02mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は30:69:1である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0093】
[合成例6]
アクリル酸(30g、0.42mol)、アクリロニトリル(60g、1.13mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(10g、0.05mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は26:71:3である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0094】
[合成例7]
アクリル酸(25g、0.35mol)、アクリロニトリル(60g、1.13mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(15g、0.07mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は22:73:5である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0095】
[合成例8]
アクリル酸(20g、0.28mol)、アクリロニトリル(60g、1.13mol)、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(20g、0.10mol)を用いたことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸、アクリロニトリル、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は18:75:7である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0096】
[比較合成例1]
アクリル酸(50g、0.69mol)およびアクリロニトリル(50g、0.94mol)を用い、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を用いないことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸およびアクリロニトリルのモル比は42:58である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0097】
[比較合成例2]
アクリル酸(50g、0.69mol)および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(50g、0.24mol)を用い、アクリロニトリルを用いないことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。アクリル酸およびアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のモル比は74:26である。反応液の不揮発成分は9.0%(理論値:10%)であった。
【0098】
[比較合成例3]
水酸化ナトリウム水溶液を用いないことを除いて、合成例1と同様の方法でアクリル系共重合体を製造した。
【0099】
表1では、合成例1~8および比較合成例1~3で製造したアクリル系共重合体の各単量体のモル比率と重量平均分子量およびガラス転移温度を示した。
【0100】
【0101】
表1において、AAはアクリル酸であり、ANはアクリロニトリルであり、AMPSは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸である。ガラス転移温度は示差走査熱量測定法で測定した値である。
【0102】
[実施例:二次電池用分離膜の製造]
[実施例1-1]
合成例1で製造したアクリル系高分子(蒸留水で10重量%に希釈)およびベーマイト(Nabaltec社製AOH60、平均粒径600nm)を1:20の質量比で水溶媒に投入した後、ビーズミルを用いて25℃で30分間ミリングし、全体固形分が20重量%となるように水を添加して耐熱層形成用組成物を製造した。これを12.5μmの厚さのポリエチレン多孔性基材(SK社製、通気度:113sec/100cc、突き刺し強度:360kgf)の断面にダイコーティング方式で3μmの厚さにコーティングした後、70℃で10分間乾燥して、二次電池用分離膜を製造した。
【0103】
[実施例1-2]
合成例1で製造したアクリル系高分子とベーマイトを1:40の質量比で投入したことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0104】
[実施例1-3]
フィラーとしてベーマイト(Nabaltec社製AOH60、平均粒径:600nm)75重量%とベーマイト(Nabaltec社製200SM、平均粒径:350nm)25重量%を混合したものを用い、合成例1で製造したアクリル系高分子とフィラーを1:20の質量比で投入したことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0105】
[実施例1-4]
ベーマイト(Nabaltec社製AOH60、平均粒径:600nm)およびベーマイトの1.0重量%に相当するポリアクリール系分散剤を水溶媒に投入して、25℃で30分間ミリングして25重量%の無機フィラー分散液を先に製造する。無機フィラー分散液に、合成例1のアクリル系高分子とベーマイトの質量比が1:20となるように合成例1のアクリル系高分子を添加し、全体固形分が20重量%となるように水を添加して耐熱層形成用組成物を製造したことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0106】
[実施例2]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例2のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0107】
[実施例3]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例3のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0108】
[実施例4]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例4のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0109】
[実施例5]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例5のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0110】
[実施例6]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例6のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0111】
[実施例7]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例7のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0112】
[実施例8]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに合成例8のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0113】
[比較例1]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに比較合成例1のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0114】
[比較例2]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに比較合成例2のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0115】
[比較例3]
合成例1のアクリル系高分子の代わりに比較合成例3のアクリル系高分子を用いたことを除いて、実施例1-1と同様の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0116】
[評価例1:通気度]
実施例1~8および比較例1~3の二次電池用分離膜に対して、通気度測定装置(旭精工社製、EG01-55-1MR)を用いて100ccの空気が透過するのにかかる時間(秒)を測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0117】
[評価例2:熱収縮率]
実施例1~8および比較例1~3の二次電池用分離膜を8cm×8cmの大きさに切り出してサンプルを準備する。サンプルの表面に5cm×5cmの大きさの四角形を描いた後、紙またはアルミナ粉の間に差し込み、オーブンにて150℃で1時間放置した後、サンプルを取り出し、描いておいた四角形の辺の寸法を測定して、横方向(MD)と縦方向(TD)それぞれの収縮率を計算する。その結果を下記表2に示した。
【0118】
[評価例3:耐熱破断]
実施例1~8および比較例1~3の二次電池用分離膜を5cm×5cmの大きさに切り出してサンプルを準備する。中央に4cm×4cmの大きさの穴が空いた段ボール上に、ポリイミドフィルムを用いてサンプルを固定させた後、200℃、230℃、および250℃に加熱したそれぞれのオーブンにサンプルを入れる。10分後、オーブンからサンプルを取り出し、破断の有無を確認して、その結果を下記表2に示した。破断すれば○と表示し、破断していなければ×と表示した。
【0119】
【0120】
表2を参照すれば、実施例で製造した分離膜は、152sec/100cc以下の優れた通気度を示し、150℃で5%以下の収縮率を示し、200℃~250℃でも破断しない特性を示して、優れた耐熱度と熱的安定性を実現していることを確認できる。一方、比較例1の分離膜は、150℃で1時間放置後の熱収縮率が著しく高く、230℃以上の温度で破断する問題が発生して高温での耐熱性に劣り、比較例2~3の分離膜は、通気度が悪く、150℃で1時間放置後の熱収縮率が著しく高く、200℃以上の温度で破断する問題が発生したことが分かる。
【0121】
[製造例1-1~1-4および製造例2~8、そして比較製造例1~3:リチウム二次電池の製造]
LiCoO2、ポリビニリデンフルオライド、およびカーボンブラックを96:2:2の重量比でN-メチルピロリドン溶媒に添加してスラリーを製造した。スラリーをアルミニウム薄膜に塗布および乾燥し、圧延して、正極を製造した。
【0122】
黒鉛、ポリビニリデンフルオライド、およびカーボンブラックを98:1:1の重量比でN-メチルピロリドン溶媒に添加してスラリーを製造した。スラリーを銅箔に塗布および乾燥し、圧延して、負極を製造した。
【0123】
製造された正極と負極との間に、実施例および比較例で製造した各分離膜を介してワインディング形態のゼリーロール電極アセンブリを準備した。これに、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを3:5:2の体積比で混合した溶媒に1.15MのLiPF6を添加した電解液を注入し、密封して、リチウム二次電池を製造した。
【0124】
[評価例4:電池の寿命特性]
実施例1-1、比較例1および2で製造した分離膜を適用した、製造例1-1、比較製造例1および2の電池に対して、サイクル数に応じた容量回復率を評価し、その結果を
図3に示した。
【0125】
充電(Charge):CC1.0C to 4.4V、CV to 0.01C
放電(Discharge):CC1.0C to 2.75V
【0126】
図3を参照すれば、製造例1-1の電池の寿命特性は、比較製造例2を比べて著しく優れていることを確認できる。
【0127】
[評価例5:電池のレート特性]
実施例1-1、比較例1および2で製造した分離膜を適用した、製造例1-1、比較製造例1および2の電池に対して、レート(C-rate)に応じた容量回復率を評価し、その結果を
図4に示した。
【0128】
充電(Charge):CC_1.0C to 4.4V、CV to 0.01C
放電(Discharge):CC_1.0C、2.0C、3.0C to 2.75V
【0129】
図4を参照すれば、製造例1-1で製造した電池のレート特性は、比較製造例2を比べて著しく優れていることが分かる。
【0130】
[評価例6:リニアスイープボルタンメトリー法(Linear Sweep Voltammetry、LSV)評価]
バインダーの耐酸化性評価のために、合成例1、比較合成例1および2で製造したアクリル系バインダー、およびポリビニリデンフルオライド系バインダー(ソルベイ、Solef○
R5130)を有し、炭素材(SFG6)90重量%およびバインダー10重量%を白金(Pt)電極上にコーティングして、耐酸化性測定のための電極を準備した。1.3M LiPF
6をエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネートを30/50/20の重量比で混合した溶媒に溶かした溶液を電解液として用いて、耐酸化性テストを行った。30℃で0.005V/secの条件で電位を変化させた結果を、電流-電位曲線として
図5に示した。
【0131】
図5を参照すれば、合成例1の場合、4.65Vで電位が変化し、比較合成例1は4.61Vで、比較合成例2は4.64Vで、そしてポリビニリデンフルオライド系バインダーは4.63Vで電位が変化することが分かる。電位が変化するということは、バインダーが分解されることを示すので、上記の結果を通して、合成例1のバインダーが耐酸化性に優れていることが確認できる。
【0132】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0133】
10:分離膜
20:多孔性基材
30:耐熱層
40:正極
50:負極
60:電極アセンブリ
70:ケース