(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20220701BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20220701BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20220701BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
G03F7/039 601
C08L25/18
C08K5/04
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019505766
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2018003908
(87)【国際公開番号】W WO2018168258
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017052986
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】米久田 康智
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直也
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102659(JP,A)
【文献】特開2004-310121(JP,A)
【文献】特開2006-276759(JP,A)
【文献】特開2016-133743(JP,A)
【文献】特開2015-057638(JP,A)
【文献】特開2013-257542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が
10μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含み、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、
樹脂を含有し、
波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、前記樹脂に対して1.00質量%以下であり、
前記樹脂が、塩基性化合物の存在下で合成された樹脂であって、一般式(I)で表される繰り返し単位を含有し、
前記不純物が、一般式(X)で表される化合物を含み、
前記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が、前記樹脂に対して0.10質量%以下であり、
下記一般式(ZI)及び一般式(ZII)のいずれか一方の光酸発生剤を含有する、パターン形成方法。
【化1】
R
41、R
42及びR
43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R
42はAr
4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
42は単結合又はアルキレン基を表す。
X
4は、単結
合を表す。
L
4は、単結
合を表す。
Ar
4は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R
42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
R
aは、一般式(Y1)で表される基、又は、一般式(Y2)で表される基を表す。
R
44は、アルキル基を表す。
R
bは、水素原子、又は、保護基を表す。*は結合位置を表す。
【化2】
上記一般式(ZI)において、
R
201、R
202、及びR
203は、各々独立に、有機基を表す。なお、R
201~R
203のうち2つが結合して環構造を形成してもよい。
Z
-は、一般式(3)で表されるアニオン、式(E-2)で表されるアニオン、又は、式(E-3)で表されるアニオンを表す。
【化3】
一般式(3)中、oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R
4及びR
5が複数存在する場合、R
4及びR
5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Wは、環状構造を含む有機基を表す。
【化4】
上記一般式(ZII)中、R
204及びR
205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Z
-は、前記一般式(3)で表されるアニオン、前記式(E-2)で表されるアニオン、又は、前記式(E-3)で表されるアニオンを表す。
【請求項2】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が1μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含み、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、
樹脂を含有し、
波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、前記樹脂に対して1.00質量%以下であり、
前記樹脂が、塩基性化合物の存在下で合成された樹脂であって、一般式(I)で表される繰り返し単位を含み、且つ、前記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が、全繰り返し単位に対して、65~95モル%であり、
前記不純物が、一般式(X)で表される化合物を含み、
前記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が、前記樹脂に対して0.10質量%以下であり、
下記一般式(ZI)及び一般式(ZII)のいずれか一方の光酸発生剤を含有する、パターン形成方法。
【化5】
R
41
、R
42
及びR
43
は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R
42
はAr
4
と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
42
は単結合又はアルキレン基を表す。
X
4
は、単結合を表す。
L
4
は、単結合を表す。
Ar
4
は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R
42
と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
R
a
は、一般式(Y1)で表される基、又は、一般式(Y2)で表される基を表す。
R
44
は、アルキル基を表す。
R
b
は、水素原子、又は、保護基を表す。*は結合位置を表す。
【化6】
上記一般式(ZI)において、
R
201
、R
202、
及びR
203
は、各々独立に、有機基を表す。なお、R
201
~R
203
のうち2つが結合して環構造を形成してもよい。
Z
-
は、一般式(3)で表されるアニオン、式(E-2)で表されるアニオン、又は、式(E-3)で表されるアニオンを表す。
【化7】
一般式(3)中、oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R
4
及びR
5
は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R
4
及びR
5
が複数存在する場合、R
4
及びR
5
は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Wは、環状構造を含む有機基を表す。
【化8】
上記一般式(ZII)中、R
204
及びR
205
は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Z
-
は、前記一般式(3)で表されるアニオン、前記式(E-2)で表されるアニオン、又は、前記式(E-3)で表されるアニオンを表す。
【請求項3】
前記レジスト膜形成工程が、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が10μm以上のレジスト膜を形成する工程である、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記樹脂が、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含有する、請求項
1~3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が
10μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜をKrFエキシマ―レーザーにて露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含み、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、
樹脂を含有し、
波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、前記樹脂に対して1.00質量%以下であり、
前記樹脂が、塩基性化合物の存在下で合成された樹脂であって、一般式(I)で表される繰り返し単位を含有し、
前記不純物が、一般式(X)で表される化合物を含み、
前記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が、前記樹脂に対して0.10質量%以下である、パターン形成方法。
【化9】
R
41、R
42及びR
43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R
42はAr
4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
42は単結合又はアルキレン基を表す。
X
4は、単結
合を表す。
L
4は、単結
合を表す。
Ar
4は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R
42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
R
aは、一般式(Y1)で表される基、又は、一般式(Y2)で表される基を表す。
R
44は、アルキル基を表す。
R
bは、水素原子、又は、保護基を表す。*は結合位置を表す。
【請求項6】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が1μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜をKrFエキシマ―レーザーにて露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、を含み、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、
樹脂を含有し、
波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、前記樹脂に対して1.00質量%以下であり、
前記樹脂が、塩基性化合物の存在下で合成された樹脂であって、一般式(I)で表される繰り返し単位を含み、且つ、前記一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量が、全繰り返し単位に対して、65~95モル%であり、
前記不純物が、一般式(X)で表される化合物を含み、
前記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が、前記樹脂に対して0.10質量%以下である、パターン形成方法。
【化10】
R
41
、R
42
及びR
43
は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R
42
はAr
4
と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
42
は単結合又はアルキレン基を表す。
X
4
は、単結合を表す。
L
4
は、単結合を表す。
Ar
4
は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R
42
と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
R
a
は、一般式(Y1)で表される基、又は、一般式(Y2)で表される基を表す。
R
44
は、アルキル基を表す。
R
b
は、水素原子、又は、保護基を表す。*は結合位置を表す。
【請求項7】
前記レジスト膜形成工程が、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が10μm以上のレジスト膜を形成する工程である、請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記樹脂が、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含有する、請求項
5~7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が、更に、光酸発生剤を含有する、請求項
5~8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記樹脂は、塩基性化合物の存在下で合成された際に、弱酸を含有する溶液を用いた洗浄処理が施されている、請求項
5~9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。例えば、ポジ型の化学増幅の画像形成方法としては、エキシマレーザー、電子線、及び極紫外光等の露光により、露光部の光酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶性の基をアルカリ可溶性の基に変化させ、アルカリ現像液により露光部を除去する画像形成方法が挙げられる。
このようなレジスト組成物として、例えば、特許文献1にはp-ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有する樹脂を含有するポジ型のレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、現在、露光光源の波長を利用した微細化は限界を迎えつつあり、特にインプラプロセス工程用途及びNANDメモリ(NOT ANDメモリ)においては、大容量化を目的としてメモリ層の三次元化が主流となりつつある。メモリ層の三次元化には縦方向への加工段数の増加が必要となるため、レジスト膜には、従来のナノ寸法からミクロン寸法への厚膜化が求められている。
本発明者らは、特許文献1に記載されるp-ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有する樹脂を用いて厚膜(1μm以上)のレジスト膜を作製してその露光現像後のパターンの性能について検討していたところ、解像性が必ずしも十分ではなく、更に改善する余地があることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、解像性に優れたパターンを与え得る、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中における波長248nmに吸収を有する不純物の含有量を所定量以下とすることにより本発明の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
【0007】
〔1〕 膜厚が1μm以上のパターンの形成に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
樹脂を含有し、
波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、上記樹脂に対して1.00質量%以下である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕 上記樹脂が、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位を含有する、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕 上記樹脂が、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含有する、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕 上記不純物が、芳香族化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕 上記樹脂が、後述する一般式(I)で表される繰り返し単位を含有し、
上記不純物が、後述する一般式(X)で表される化合物である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕 上記樹脂が塩基性化合物の存在下で合成された樹脂であり、
上記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が、上記樹脂に対して0.10質量%以下である、〔5〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕 更に、光酸発生剤を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕 粘度が100~500mPa・sである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されたレジスト膜。
〔10〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて膜厚が1μm以上のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
上記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、
を含むパターン形成方法。
〔11〕 〔10〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、解像性に優れたパターンを与え得る、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】現像後のウェーハの断面のSEM画像である(判定N)。
【
図2】現像後のウェーハの断面のSEM画像である(判定B)。
【
図3】現像後のウェーハの断面のSEM画像である(判定A)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、及びX線等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0012】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以後、単に「本発明の組成物」とも称する)は、膜厚が1μm以上のパターンの形成に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
樹脂を含有し、
波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、上記樹脂に対して1.00質量%以下である。
本発明の組成物は、いわゆるレジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0013】
本発明の組成物は、上記構成とすることにより、パターンを形成した際の解像性に優れる。
【0014】
本発明者らは、形成されるレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)の厚みが大きくなるほど、従来のナノ寸法の膜厚のレジスト膜のリソグラフィー工程では問題とならなかった不純物による影響が顕著に生じることを知見した。具体的には、露光の際に、厚膜のレジスト膜中に含まれる不純物によって光が吸収され、厚膜深部にまで光が到達しない現象が顕著になる。この結果として、形成されるパターンの解像性が悪化し、所望の形状が得られないことを確認している。
本発明者らは、上記不純物について更なる検討をしたところ、特に、レジスト膜中の波長248nmに吸収を有する不純物の含有量を樹脂に対して1.00質量%以下とすることにより、形成されるパターンの解像性に優れることを明らかとした。
【0015】
<不純物>
本発明において、不純物とは、本発明の組成物中に含まれ得る、樹脂、光酸発生剤、酸拡散制御剤、界面活性剤、溶剤、疎水性樹脂、及び架橋剤以外の成分を意図し、例えば、上記各成分を通じて組成物中に持ち込まれる原材料等の成分(例えば、樹脂から持ち込まれる未反応モノマー及び上記未反応モノマーの変性物、並びに、樹脂の合成において脱保護反応に用いられた塩基性化合物等)等が挙げられる。
【0016】
(波長248nmに吸収を有する不純物)
本発明の組成物は、不純物のうち、特に波長248nmに吸収を有する不純物の含有量が、樹脂に対して1.00質量%以下である。
波長248nmに吸収を有する不純物は、波長248nmに吸収を有しさえすれば特に限定されず、なかでも、吸収ピークを波長220~280nmに有しているものが好ましい。特に、不純物が芳香族化合物(例えばベンゼン環を有する化合物等)である場合には、芳香環に由来する高い吸収を波長248nm付近に有するため、精製により除去されることが望ましい。
上記波長248nmに吸収を有する不純物は、例えば、樹脂(例えば、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する繰り返し単位(特に、フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造(酸分解性基)を有する繰り返し単位)、及び/又は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(特に、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位)を有する樹脂)の合成原料である未反応モノマー及び未反応モノマーの変性物が該当する。未反応モノマー及び未反応モノマーの変性物は、樹脂を介して組成物中に持ち込まれる。したがって、上述の樹脂を使用する場合には、精製処理により未反応モノマー及び未反応モノマーの変性物を低減する必要がある。
【0017】
上記波長248nmに吸収を有する不純物としては、一般式(X)で表される化合物が挙げられる。特に、樹脂がフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(特に、一般式(I)で表される繰り返し単位)を含有する場合、一般式(X)で表される化合物が不純物として持ち込まれやすい。
【0018】
【0019】
一般式(X)中、X4、L4及びAr4の定義は、後述する一般式(I)中の各基の定義と同義である。
また、Raは、一般式(Y1)で表される基、又は、一般式(Y2)で表される基を表す。一般式(Y1)及び一般式(Y2)中、R41、R42及びR43の定義は、後述する一般式(I)中の各基の定義と同義である。
R44は、アルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
Rbは、水素原子、又は、保護基を表す。保護基としては、アルキル基、又は、-CO-Rc等が挙げられる。
Rcは、アルキル基を表す。
Rbで表されるアルキル基、及び、Rcで表されるアルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
*は結合位置を表す。
【0020】
本発明の組成物中、波長248nmに吸収を有する不純物の含有量は、樹脂(樹脂全質量)に対して1.00質量%以下であり、パターンの解像性により優れる点で、0.95質量%以下が好ましく、0.80質量%以下がより好ましく、0.60質量%以下が更に好ましく、0質量%が特に好ましい。
つまり、波長248nmに吸収を有する化合物は、本発明の組成物中に含有されないか、又は、含有される場合(波長248nmに吸収を有する化合物の含有量が、樹脂に対して0質量%超である場合)は1.00質量%以下である。
【0021】
本発明の組成物中における波長248nmに吸収を有する不純物の含有量は、液体クロマトグラフィーにより同定できる。
【0022】
(塩基性不純物)
本発明の組成物は、不純物のうち、塩基性不純物の含有量が、樹脂に対して低減されていることが好ましい。本発明の組成物が塩基性不純物を含有すると、放射線及び活性光線の照射により光酸発生剤から発生した酸の失活が生じるためである。
ここで、塩基性不純物とは、アミン化合物及び金属水酸化物(金属としては、例えば、アルカリ金属イオン等)等の塩基性化合物を意図する。
なお、塩基性不純物が波長248nmに吸収を有する場合は、その塩基性不純物は上記「波長248nmに吸収を有する不純物」に該当し、「塩基性不純物」には含まれないものとする。
上記塩基性不純物は、本発明の組成物中に、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(特に、一般式(I)で表される繰り返し単位)を有する樹脂を含有する場合に、上記樹脂を介して持ち込まれる場合が多い。フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有する樹脂、例えば、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位を有する樹脂は、一般的に、アセトキシスチレンを原材料として合成される。そのため、モノマーの合成時、及び、樹脂の合成後のいずれかにおいて、塩基性化合物の存在下にてアセトキシ基を脱保護してフェノール性水酸基とする脱保護反応を経る必要がある。つまり、上記アミン化合物及び金属水酸化物等の塩基性化合物は、主にこの脱保護の際に使用した塩基性化合物に由来する。したがって、上述の樹脂を使用する場合には、精製処理により脱保護の際に使用した塩基性化合物を除去する必要がある。
本発明の組成物は、塩基性化合物の存在下にて合成された樹脂を含有する場合には、上記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が、樹脂に対して0.10質量%以下であることが好ましい。上記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量が樹脂に対して0.10質量%以下である場合、パターンの解像性により優れる。上記塩基性化合物に由来する塩基性不純物の含有量は、樹脂に対して、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、0質量%が特に好ましい。
つまり、塩基性不純物は、本発明の組成物中に含有されないか、又は、含有される場合(塩基性不純物の含有量が、樹脂に対して0質量%超である場合)は、0.10質量%以下であることが好ましい。
【0023】
上記アミン化合物としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、及びジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。また、上記金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等が挙げられる。
【0024】
本発明の組成物中における上記塩基性不純物の含有量は、ガスクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法、及び中和滴定等により同定/定量できる。
【0025】
<樹脂(A)>
本発明の組成物は、樹脂を含有する。
上記樹脂は、酸の作用により分解して極性が増大する基(以下、「酸分解性基」とも言う)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう)を含有することが好ましい。
この場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0026】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0027】
樹脂(A)としては、公知の樹脂を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0055>~<0191>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0035>~<0085>、及び米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落<0045>~<0090>に開示された公知の樹脂を樹脂(A)として好適に使用できる。
【0028】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解して脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びにアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0029】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子等の電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基等)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0030】
好ましい極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0031】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0032】
R36~R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられる。
R36~R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R36~R39、R01及びR02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
R36~R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等が挙げられる。
R36~R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
R36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0033】
酸分解性基として、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、又は第3級のアルキルエステル基等が好ましく、アセタール基、又は第3級アルキルエステル基がより好ましい。
【0034】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0035】
【0036】
一般式(AI)に於いて、
Xa1は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx1~Rx3のいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
【0037】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH2-、-(CH2)2-、又は-(CH2)3-がより好ましい。Tは、単結合であることがさらに好ましい。
【0038】
Xa1は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
Xa1のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xa1のアルキル基は、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。Xa1のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0039】
Rx1、Rx2及びRx3のアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又はt-ブチル基等が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx1、Rx2及びRx3のアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx1、Rx2及びRx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0040】
Rx1、Rx2及びRx3の2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及びシクロオクタン環等の単環のシクロアルカン環、又は、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及びアダマンタン環等の多環のシクロアルキル環が好ましい。なかでも、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又はアダマンタン環がより好ましい。Rx1、Rx2及びRx3の2つが結合して形成する環構造としては、下記に示す構造も好ましい。
【0041】
【0042】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、一般式(AI)におけるXa1がメチル基である場合に相当するが、Xa1は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換することができる。
【0043】
【0044】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0336>~<0369>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0045】
また、樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0363>~<0364>に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0046】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0047】
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0048】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0049】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればよく、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましい。なかでも、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン構造に他の環構造が縮環しているもの、又は、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン構造に他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。
樹脂(A)は、下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有することが更に好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-8)、一般式(LC1-16)、若しくは一般式(LC1-21)で表されるラクトン構造、又は、一般式(SL1-1)で表されるスルトン構造が挙げられる。
【0050】
【0051】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても、有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基等が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、又は酸分解性基が好ましい。n2は、0~4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0052】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0053】
【0054】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
nは、-R0-Z-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、-R0-Z-は存在せず、単結合となる。
R0は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。R0が複数個ある場合、R0は、各々独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。Zが複数個ある場合には、Zは、各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
R8は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
R7は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0055】
R0のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
Zとしては、エーテル結合、又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0056】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0057】
【0058】
一般式(A-1)中、RA
1は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
RA
2は、置換基を表す。nが2以上の場合、RA
2は、各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-C(=O)-O-で表される基と共に単環構造又は多環構造を形成する原子団を表す。
【0059】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0370>~<0414>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0060】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてよく、2種以上を併用して有していてもよい。
【0061】
以下に一般式(III)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例、及び一般式(A-1)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、一般式(III)におけるR7及び一般式(A-1)におけるRA
1がメチル基である場合に相当するが、R7及びRA
1は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換することができる。
【0062】
【0063】
上記モノマーの他に、下記に示すモノマーも樹脂(A)の原料として好適に用いられる。
【0064】
【0065】
樹脂(A)に含まれるラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位の含有量(ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
【0066】
樹脂(A)は、極性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、及びフッ素化アルコール基等が挙げられる。
極性基を有する繰り返し単位としては、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。また、極性基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、又はノルボルナン基が好ましい。
【0067】
以下に極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0068】
【0069】
この他にも、極性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0415>~<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、極性基を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてよく、2種以上を併用して有していてもよい。
極性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
【0070】
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有していてもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落<0236>~<0237>に記載された繰り返し単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0071】
【0072】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
【0073】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、又は、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
このような繰り返し構造単位としては、所定の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0074】
所定の単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及びビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等が挙げられる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物を用いてもよい。
樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0075】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、芳香族基を有する繰り返し単位が5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0076】
樹脂(A)は、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が樹脂(A)の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0077】
本発明の組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(a)を含有することが好ましい。
【0078】
芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(a)としては、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)が好ましい。
【0079】
・フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)
本明細書において、フェノール性水酸基とは、芳香族炭化水素基の水素原子をヒドロキシル基で置換してなる基である。芳香族炭化水素基の芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環及びナフタレン環等が挙げられる。
【0080】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0081】
【0082】
式中、
R41、R42及びR43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はAr4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
X4は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L4は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar4は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
一般式(I)で表される繰り返し単位を高極性化する目的では、nが2以上の整数、又はX4が-COO-、又は-CONR64-であることも好ましい。
【0083】
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及びドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0084】
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるシクロアルキル基としては、単環でも、多環でもよい。置換基を有していてもよい、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で表されるアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、及びR43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0085】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0086】
Ar4は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表す。nが1である場合における2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及びアントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、及びチアゾール等のヘテロ環を含む芳香族炭化水素基が好ましい。
【0087】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香族炭化水素基の具体例としては、2価の芳香族炭化水素基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香族炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。
【0088】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基及び(n+1)価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及びR43で挙げたアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及びブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
X4により表される-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及びドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましい。
X4としては、単結合、-COO-、又は-CONH-が好ましく、単結合、又は-COO-がより好ましい。
【0089】
L4としての2価の連結基としては、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、置換基を有していてもよい、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及びオクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Ar4としては、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、又はビフェニレン環基がより好ましい。なかでも、一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位であることが好ましい。即ち、Ar4は、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0090】
以下、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)の具体例を示すが、本発明は、これに限定されない。式中、aは1又は2を表す。
【0091】
【0092】
樹脂(A)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)を1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
【0093】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~95モル%が好ましく、20~90モル%がより好ましく、30~85モル%が更に好ましい。
【0094】
芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(a)としては、フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造(酸分解性基)を有する繰り返し単位(a2)を好適に挙げることができる。
【0095】
・フェノール性水酸基が酸の作用により分解して脱離する脱離基で保護された構造(酸分解性基)を有する繰り返し単位(a2)
【0096】
酸の作用により分解して脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基を挙げることができる。
式(Y1):-C(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y2):-C(=O)OC(Rx1)(Rx2)(Rx3)
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38)
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0097】
式(Y1)、(Y2)中、Rx1~Rx3は、各々独立に、アルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。但し、Rx1~Rx3の全てがアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)である場合、Rx1~Rx3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
なかでも、Rx1~Rx3は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表す繰り返し単位であることがより好ましく、Rx1~Rx3が、各々独立に、直鎖状のアルキル基を表す繰り返し単位であることが更に好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して、単環若しくは多環を形成してもよい。
Rx1~Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。なかでも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx1~Rx3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)及び(Y2)で表される基は、例えば、Rx1がメチル基又はエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0098】
式(Y3)中、R36~R38は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は、水素原子であることが好ましい。
【0099】
式(Y4)中、Arは、芳香族炭化水素基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0100】
繰り返し単位(a2)としては、フェノール性水酸基における水素原子が式(Y1)~(Y4)で表される基によって保護された構造を有するものが好ましい。
【0101】
繰り返し単位(a2)としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0102】
【0103】
一般式(AII)中、
R61、R62及びR63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R62はAr6と結合して環を形成していてもよく、その場合のR62は単結合又はアルキレン基を表す。
X6は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表す。R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L6は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar6は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
Y2は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Y2の少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。Y2としての酸の作用により脱離する基は、式(Y1)~(Y4)であることが好ましい。
nは、1~4の整数を表す。
【0104】
上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及びアルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられ、炭素数8以下のものが好ましい。
以下、繰り返し単位(a2)の具体例を示すが、本発明は、これに限定されない。
【0105】
【0106】
【0107】
樹脂(A)は、繰り返し単位(a2)を、1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
【0108】
樹脂(A)における繰り返し単位(a2)の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、上記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して5~80モル%が好ましく、5~75モル%がより好ましく、10~65モル%が更に好ましい。
【0109】
なお、本願明細書において、酸分解性基と芳香族炭化水素基とを有する繰り返し単位は、酸分解性基を有する繰り返し単位にも、芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位にも、該当するものとする。
【0110】
<樹脂(B)>
本発明の組成物が後述する架橋剤(G)を含有する場合、本発明の組成物はフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)(以下、「樹脂(B)」ともいう)を含有することが好ましい。樹脂(B)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
この場合、典型的には、ネガ型パターンが好適に形成される。
架橋剤(G)は、樹脂(B)に担持された形態であってもよい。
樹脂(B)は、前述した酸分解性基を有していてもよい。
【0111】
樹脂(B)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(II)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0112】
【0113】
一般式(II)中、
R2は、水素原子、アルキル基(好ましくはメチル基)、又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表す。
B’は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar’は、芳香環基を表す。
mは1以上の整数を表す。
樹脂(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂(B)としては、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0142>~<0347>に開示された樹脂を好適に挙げられる。
【0114】
本発明の組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)の両方を含有していてもよい。
【0115】
上記樹脂の重合方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
但し、樹脂の製造に際しては、樹脂から組成物中に取り込まれる不純物(例えば、波長248nmに吸収を有する不純物、及び塩基性不純物等)をより低減するため、精製処理を充分に実施する必要がある。
上記不純物(特に波長248nmに吸収を有する不純物)を低減する精製方法としては、良溶媒に溶解した樹脂含有溶液と貧溶媒とを接触させて固形物を析出させる方法(沈殿精製)が挙げられる。沈殿精製を複数回繰り返すことが好ましい。
なお、上記良溶媒としては、樹脂と未反応モノマー等が溶解する溶媒であれば特に限定されない。また、上記貧溶媒としては、樹脂を析出させる溶媒であれば特に限定されない。
上記不純物(特に塩基性不純物)を低減する精製方法としては、希塩酸等の弱酸を含有する溶液を用いて樹脂を洗浄する方法、及び、水洗により塩基性不純物を除去する方法等が挙げられる。
【0116】
本発明の組成物中、樹脂(A)及び/又は樹脂(B)の含有量(いずれも含有する場合にはその合計含有量)は、全固形分に対して、一般的に30質量%以上である場合が多く、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されず、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
【0117】
<光酸発生剤(C)>
本発明の組成物は、典型的には、光酸発生剤(以下、「光酸発生剤(C)」ともいう)を含有することが好ましい。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo-ニトロベンジルスルホネート化合物が挙げられる。
【0118】
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0125>~<0319>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0086>~<0094>、及び、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0323>~<0402>に開示された公知の化合物を光酸発生剤(C)として好適に使用できる。
【0119】
光酸発生剤(C)としては、例えば、下記一般式(ZI)、一般式(ZII)又は一般式(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0120】
【0121】
上記一般式(ZI)において、
R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、好ましくは1~20である。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-が挙げられる。
Z-は、アニオンを表す。
【0122】
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、化合物(ZI-2)、化合物(ZI-3)及び化合物(ZI-4)における対応する基が挙げられる。
なお、光酸発生剤(C)は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0123】
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0124】
アリールスルホニウム化合物に含まれるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0125】
R201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0126】
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
R201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
R201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基である。
【0127】
R201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、及び、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
R201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0128】
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
化合物(ZI-3)は、下記一般式(ZI-3)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0129】
【0130】
一般式(ZI-3)中、
R1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
R6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0131】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとRx、及びRxとRyは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環構造としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0132】
R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等が挙げられる。
R5cとR6c、及びR5cとRxが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等が挙げられる。
Zc-は、アニオンを表す。
【0133】
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0134】
【0135】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
R13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R14は、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基等の上記基を表す。
R15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
Z-は、アニオンを表す。
【0136】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
【0137】
次に、一般式(ZII)、及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204~R207のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
R204~R207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、又は、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が好ましい。
【0138】
R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。
Z-は、アニオンを表す。
【0139】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc-、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記一般式(3)で表されるアニオンが好ましい。
【0140】
【0141】
一般式(3)中、
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0142】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCF3であることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0143】
R4及びR5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R4及びR5が複数存在する場合、R4及びR5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R4及びR5で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R4及びR5は、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0144】
Lは、2価の連結基を表す。Lが複数存在する場合、Lは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO2-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO2-、-COO-アルキレン基-又は-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0145】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0146】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0147】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、及び、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0148】
一般式(3)で表されるアニオンとしては、SO3
--CF2-CH2-OCO-(L)q’-W、SO3
--CF2-CHF-CH2-OCO-(L)q’-W、SO3
--CF2-COO-(L)q’-W、SO3
--CF2-CF2-CH2-CH2-(L)q-W、SO3
--CF2-CH(CF3)-OCO-(L)q’-Wが好ましい。ここで、L、q及びWは、一般式(3)と同様である。q’は、0~10の整数を表す。
【0149】
一態様において、一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc-、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(4)で表されるアニオンも好ましい。
【0150】
【0151】
一般式(4)中、
XB1及びXB2は、各々独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない1価の有機基を表す。XB1及びXB2は、水素原子であることが好ましい。
XB3及びXB4は、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。XB3及びXB4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、XB3及びXB4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。XB3及びXB4の両方が、フッ素原子で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L、q及びWは、一般式(3)と同様である。
【0152】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc-、及び一般式(ZI-4)におけるZ-は、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐鎖状アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0153】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc-、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記の一般式(SA1)で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0154】
【0155】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び-(D-B)基以外の置換基を更に有していてもよい。更に有してもよい置換基としては、フッ素原子及び水酸基等が挙げられる。
【0156】
nは、0以上の整数を表す。nとしては、1~4が好ましく、2~3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0157】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0158】
Bは、炭化水素基を表す。
【0159】
好ましくは、Dは単結合であり、Bは脂肪族炭化水素構造である。Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0160】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び一般式(ZII)におけるヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0161】
【0162】
一般式(ZI)、一般式(ZII)におけるアニオンZ-、一般式(ZI-3)におけるZc-、及び一般式(ZI-4)におけるZ-の好ましい例を以下に示す。
【0163】
【0164】
上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて光酸発生剤として使用できる。
【0165】
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、光酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~35質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましく、1~15質量%が特に好ましい。
光酸発生剤として、上記一般式(ZI-3)又は(ZI-4)で表される化合物を含有する場合、組成物中に含まれる光酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、1~35質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0166】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(D)を含有することが好ましい。酸拡散制御剤(D)は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0627>~<0664>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0095>~<0187>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0403>~<0423>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0259>~<0328>に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤(D)として好適に使用できる。
【0167】
塩基性化合物(DA)としては、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0168】
【0169】
一般式(A)及び(E)中、
R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0170】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0171】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0172】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0173】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0174】
【0175】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0176】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0177】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0178】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0179】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0180】
本発明の組成物では、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用できる。
光酸発生剤と、光酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0181】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0182】
【0183】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(但し、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Y3は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、M+は各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0184】
M+として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0185】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0186】
【0187】
一般式(C-1)~(C-3)中、
R1、R2、及びR3は、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
L1は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-X-は、-COO-、-SO3
-、-SO2
-、及び-N--R4から選択されるアニオン部位を表す。R4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)2-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、及びL1は、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R1~R3のうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0188】
R1~R3における炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0189】
2価の連結基としてのL1は、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。L1は、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0190】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0191】
【0192】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0193】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落<0466>に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0194】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0195】
【0196】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0197】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落<0475>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0198】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落<0203>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0199】
酸拡散制御剤(D)の好ましい例を以下に示す。
【0200】
【0201】
【0202】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸拡散制御剤(D)の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0203】
<疎水性樹脂(E)>
本発明の組成物は、疎水性樹脂(E)を含有することが好ましい。なお、疎水性樹脂(E)は、樹脂(A)及び樹脂(B)とは異なる樹脂であることが好ましい。
本発明の組成物が、疎水性樹脂(E)を含有することにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面における静的/動的な接触角を制御できる。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂(E)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
【0204】
疎水性樹脂(E)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“ケイ素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含有されたCH3部分構造”からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂(E)における上記フッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0205】
疎水性樹脂(E)がフッ素原子を含む場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又はフッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
【0206】
疎水性樹脂(E)は、下記(x)~(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有することが好ましい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう)
(z)酸の作用により分解する基
【0207】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、又はビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0208】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSO2O-)、及びスルホン酸エステル基(-SO2O-)等が挙げられ、ラクトン基又はカルボン酸エステル基(-COO-)が好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位としては、例えば、樹脂の主鎖にこれらの基が直接結合している繰り返し単位であり、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等が挙げられる。この繰り返し単位は、これらの基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合していてもよい。又は、この繰り返し単位は、これらの基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂(A)の項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0209】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、3~98モル%がより好ましく、5~95モル%が更に好ましい。
【0210】
疎水性樹脂(E)における、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、1~80モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
疎水性樹脂(E)は、更に、上述した繰り返し単位とは別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0211】
フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましい。また、ケイ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましい。
【0212】
一方、特に疎水性樹脂(E)が側鎖部分にCH3部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及びケイ素原子を実質的に含まない形態も好ましい。また、疎水性樹脂(E)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。
【0213】
疎水性樹脂(E)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
【0214】
疎水性樹脂(E)に含まれる残存モノマー及び/又はオリゴマー成分の合計含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1~5の範囲が好ましく、より好ましくは1~3の範囲である。
【0215】
疎水性樹脂(E)としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用することができる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落<0451>~<0704>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0340>~<0356>に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂(E)として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0177>~<0258>に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂(E)を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0216】
疎水性樹脂(E)を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0217】
【0218】
【0219】
疎水性樹脂(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂(E)を混合して使用することが、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
疎水性樹脂(E)の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.05~8質量%がより好ましい。
【0220】
<溶剤(F)>
本発明の組成物は、溶剤を含有することが好ましい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~<0426>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0357>~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0221】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~60/40がさらに好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0222】
<架橋剤(G)>
本発明の組成物は、酸の作用により樹脂を架橋する化合物(以下、架橋剤(G)ともいう)を含有してもよい。架橋剤(G)としては、公知の化合物を適宜に使用することができる。例えば、米国特許出願公開2016/0147154A1号明細書の段落<0379>~<0431>、及び、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0064>~<0141>に開示された公知の化合物を架橋剤(G)として好適に使用できる。
架橋剤(G)は、樹脂を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環等が挙げられる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤(G)は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤(G)は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤(G)の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、1~50質量%が好ましく、3~40質量%が好ましく、5~30質量%が更に好ましい。
【0223】
<界面活性剤(H)>
本発明の組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい界面活性剤を含有する場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0224】
本発明の組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得ることができる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0225】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して10ppm以上とすることにより、疎水性樹脂(E)の表面偏在性が上がる。それにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0226】
(その他の添加剤)
本発明の組成物は、更に、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は溶解促進剤等を含有してもよい。
【0227】
<調製方法>
本発明の組成物の固形分濃度は、通常1.0~50質量%であることが好ましく、10~50質量%がより好ましく、30~50質量%が更に好ましい。固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0228】
なお、本発明の組成物からなる感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚は、1μm以上であり、加工段数を増やす目的として、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば100μm以下である。
なお、後述するように、本発明の組成物からパターンを形成することができる。
形成されるパターンの膜厚は、1μm以上であり、加工段数を増やす目的として、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。上限は特に限定されず、例えば100μm以下である。
【0229】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667号公報)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0230】
本発明の組成物は、粘度が100~500mPa・sであることが好ましい。本発明の組成物の粘度は、塗布性により優れる点で、100~300mPa・sがより好ましい。
なお、粘度は、E型粘度計により測定することができる。
【0231】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0232】
〔パターン形成方法〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明の感活性光線性又は感放射線性膜についても説明する。
【0233】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によってレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程)、
(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、
を有する。
【0234】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0235】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)成膜工程、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜用いることができる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用することができる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含有するものが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含有するレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0236】
支持体は、特に限定されず、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を用いることができる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO2、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0237】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0238】
露光工程に用いられる光源波長に制限はなく、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらの中でも遠紫外光が好ましい。その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、及び、電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、KrFエキシマレーザーがより好ましい。
【0239】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0240】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は界面活性剤を適当量含有していてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0241】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0242】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0243】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0244】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0715>~<0718>に開示された溶剤を使用できる。
【0245】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含まないことが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0246】
有機系現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含有していてもよい。
【0247】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0248】
有機系現像液は、上述した酸拡散制御剤を含有していてもよい。
【0249】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、又は一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0250】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成できる。
【0251】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0252】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含有していてもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0253】
有機溶剤を含有する現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含有する溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含有する現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含有するリンス液がより好ましい。
【0254】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0255】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性が得られる。
【0256】
リンス液は、界面活性剤を適当量含有していてもよい。
リンス工程においては、有機系現像液を用いる現像を行った基板を、有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~4,000rpm(revolution per minute)の回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0257】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0258】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426号公報)に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500号公報)に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0259】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351号公報)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0260】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含有するガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468号公報)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227号公報)及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0261】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例】
【0262】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0263】
〔樹脂の合成〕
以下の手順により、各種樹脂を合成した。
<樹脂1Aの合成>
樹脂1Aは、下記の方法(以下、「PACST法」ともいう。)により合成した。
【0264】
【0265】
温度計、ガス吹込み管、冷却管、攪拌装置及び水浴を備えた四つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を60g入れ、窒素置換後80℃まで昇温した。そこにパラアセトキシスチレン(東ソー製)200.31g、メタクリル酸t-ブチル(和光純薬製)67.55g、メタクリル酸ベンジル(和光純薬製)33.48g、及び、V-601(重合開始剤、和光純薬製)13.12gを241.1gのPGMEAに溶解した混合溶液を4時間かけて滴下した。滴下後80℃で3時間撹拌し、ポリマー溶液1A-1を得た。
得られたポリマー溶液1A-1を5L三口フラスコへ移し、そこにプロピレングリコールモノメチルエーテル300g、メタノール600g、純水35g、及びトリエチルアミン149.96gを入れ、80℃に設定した油浴に付けて12時間反応させた。1H-NMR(nuclear magnetic resonance)よりアセチル基保護が外れている事を確認し、反応液を室温まで冷却した。反応液を分液ロートへ移し、そこに酢酸エチルと希塩酸を入れ抽出操作を3回繰り返した(塩基性不純物除去)。続いて純水で3回ほど有機層を洗浄した後、エバポレーションにて濃縮した粘性の液体にヘプタンを投入して固体を析出させた(1回目の沈殿精製)。上澄み液をデカンテーションして得られた粉体を酢酸エチルに溶解し、その酢酸エチル溶液をヘプタン中へゆっくりと滴下して沈殿精製を行った(2回目の沈殿精製)。析出した粉体をろ過後、ヘプタンで掛け洗いし、40℃で減圧乾燥した。目的の樹脂1Aが得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0266】
<樹脂1Bの合成>
樹脂1Bは、下記の方法(以下、「PHS法」ともいう。)により合成した。
【0267】
【0268】
Journal of the American Chemical Society, 131, 13949 (2009)に記載の方法に従い、パラアセトキシスチレンを出発原料として、水酸化ナトリウム条件下で加水分解することでパラヒドロキシスチレンを収率よく合成した。
温度計、ガス吹込み管、冷却管、攪拌装置及び水浴を備えた四つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を60g入れ、窒素置換後80℃まで昇温した。そこにパラヒドロキシスチレン276.35g、メタクリル酸t-ブチル(和光純薬製)67.55g、メタクリル酸ベンジル(和光純薬製)33.48g、及び、V-601(重合開始剤、和光純薬製)13.12gを241.1gのPGMEAに溶解した混合溶液を4時間かけて滴下した。滴下後、80℃で3時間撹拌させた反応溶液を分液ロートへ移し、そこに酢酸エチルと希塩酸を入れ抽出操作を3回繰り返した(塩基性不純物除去)。続いて純水で3回ほど有機層を洗浄した後、エバポレーションにて濃縮した粘性の液体にヘプタンを投入して固体を析出させた(1回目の沈殿精製)。上澄み液をデカンテーションして得られた粉体を酢酸エチルに溶解し、その酢酸エチル溶液をヘプタン中へゆっくりと滴下して沈殿精製を行った(2回目の沈殿精製)。析出した粉体をろ過後、ヘプタンで掛け洗いし、40℃で減圧乾燥した。目的の樹脂1Aが得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0269】
<樹脂2Aの合成>
上述の樹脂1A(PACST法)の合成方法において、モノマー種をかえた以外は同様の方法により、下記構造の樹脂2Aを合成した。目的の樹脂2Aが得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0270】
<樹脂2Bの合成>
上述の樹脂1B(PHS法)の合成方法において、モノマー種をかえた以外は同様の方法により、下記構造の樹脂2Bを合成した。目的の樹脂2Bが得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0271】
【0272】
<樹脂3Aの合成>
上述の樹脂1A(PACST法)の合成方法において、モノマー種をかえた以外は同様の方法により、下記構造の樹脂3Aを合成した。目的の樹脂3Aが得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0273】
<樹脂3Bの合成>
上述の樹脂1B(PHS法)の合成方法において、モノマー種をかえた以外は同様の方法により、下記構造の樹脂3Bを合成した。目的の樹脂3Bが得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0274】
【0275】
<樹脂4の合成>
樹脂4は、下記の方法(高分子反応)により合成した。
【0276】
【0277】
Journal of the American Chemical Society, 131, 13949 (2009)に記載の方法に従い、パラアセトキシスチレンを出発原料として、水酸化ナトリウム条件下で加水分解することでパラヒドロキシスチレンを収率よく合成した。
温度計、ガス吹込み管、冷却管、攪拌装置及び水浴を備えた四つ口フラスコにパラヒドロキシスチレン210gと45gのt-ブチルビニルエーテルを1000mLの脱水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、そこへ脱水パラトルエンスルホン酸1gを加え、更に脱水剤としてモレキュラーシーブ3Aを30g添加し、室温にて4時間撹拌した。反応液をろ過した後、ろ液を水3リットルに投入し(塩基性不純物除去)、析出した粉体をろ取した(1回目の沈殿精製)。得られた粉体は室温で減圧乾燥した後に2リットルの酢酸エチルに溶解させ、50Lのヘプタンへと滴下し、沈殿精製した(2回目の沈殿精製)。目的の樹脂4が得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0278】
<樹脂5の合成)>
上述の樹脂1B(PHS法)の合成方法において、モノマー種をかえた以外は同様の方法により、下記構造の樹脂5を合成した。目的の樹脂5が得られたことは1H-NMR及びGPCにて確認した。
【0279】
【0280】
<樹脂1A’の合成>
上述の樹脂1A(PACST法)の合成方法において、沈殿精製を1回とした以外は同様の方法により、樹脂1A’を合成した。
【0281】
<樹脂3B’の合成>
上述の樹脂3B(PHS法)の合成方法において、塩基性不純物除去を実施せず、沈殿精製を1回とした以外は同様の方法により、樹脂3B’を合成した。
【0282】
<樹脂2A’の合成>
上述の樹脂2A(PACST法)の合成方法において、塩基性不純物除去を実施しなかった以外は同様の方法により、樹脂2A’を合成した。
【0283】
<樹脂4’の合成>
上述の樹脂4(高分子反応)の合成方法において、塩基性不純物除去を実施しなかった以外は同様の方法により、樹脂4を合成した。
【0284】
第1表に、合成した各種樹脂における繰り返し単位のモル比率、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn)を示す。なお、第1表に示される各種樹脂の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:THF)により測定した(ポリスチレン換算量である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMRにより測定した。
なお、上記樹脂1A’、樹脂2A’、樹脂3B’、及び、樹脂4’は、それぞれ、樹脂1A、樹脂2A、樹脂3B、及び、樹脂4と同程度の繰り返し単位のモル比率、Mw、及び、Mw/Mnを示した。
【0285】
【0286】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製〕
以下に、第2表に示す感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に含まれる各種成分を示す。
【0287】
<樹脂>
第2表に示される樹脂として、上段で合成した樹脂を用いた。
【0288】
<光酸発生剤>
第2表に示される光酸発生剤の構造を以下に示す。
【0289】
【0290】
<酸拡散制御剤>
第2表に示される酸拡散制御剤の構造を以下に示す。
【0291】
【0292】
<界面活性剤>
第2表に示される界面活性剤を以下に示す。
W-1:下記構造のものを用いた。
【0293】
【0294】
<溶剤>
第2表に示される溶剤を以下に示す。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0295】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製>
第2表に示した各成分を、後述するパターン形成後の膜厚が11μmとなるように固形分を調整して混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)を調液した。なお、樹脂組成物において、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られた樹脂組成物を、実施例及び比較例で使用した。
なお、各組成物に含まれる25種(Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Zn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Pb、Ti、V、W、Mo、Zr)の金属不純物成分量をAgilent Technologies社製ICP-MS装置(誘導結合プラズマ質量分析計)「Agilent 7500cs」にて測定したところ、各金属種の含有量はそれぞれ10ppb未満であった。
【0296】
<248nmに吸収を有する不純物の同定>
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が含有する波長248nmに吸収を有する不純物の種類及び含有量(質量%)を測定した。実施例1~実施例8、及び比較例1~4の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物では、それぞれ第2表中の「波長248nmに吸収を有する不純物」欄に示す化合物a~eが観測された。化合物a~eの構造と含有量は、液体クロマトグラフィーにより同定した。
なお、化合物a~eは、それぞれ、パラヒドロキシスチレン及びその変性物(化合物a、c)、パラアセトキシスチレン及びその変性物(化合物b、d)、並びに4-(tert-ブトキシ)スチレン(化合物e)であり、いずれも樹脂の原料成分由来であると推測された。
以下に化合物a~eの具体的な構造を示す。
【0297】
【0298】
<塩基性不純物の同定>
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が含有する塩基性不純物の種類及び含有量(質量%)を測定した。実施例1~実施例8、及び比較例1~4の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物では、それぞれ第2表中の「塩基性不純物」欄に示す化合物x及びzが観測された。化合物x及びzの構造と含有量は、キャピラリー電気泳動法により同定した。
なお、化合物x及びzは、それぞれ、トリエチルアミン及び水酸化ナトリウムであり、いずれも樹脂の脱保護時に使用する塩基性化合物に由来するものと推測された。
【0299】
以下に第2表を示す。
なお、表中、各成分の含有量は、固形分全量に対する含有量(質量%)に相当する。
【0300】
【0301】
〔パターン形成及び各種評価〕
<パターン形成:KrF露光、アルカリ現像>
東京エレクトロン製スピンコーターACT-8を利用して、ヘキサメチルジシラザン処理を施したSi基板(Advanced Materials Technology社製)上に、反射防止層を設けることなく、上記で調製した樹脂組成物を基板が静止した状態で滴下した。滴下した後、基板を回転し、その回転数を、3秒間500rpmで維持し、その後2秒間100rpmで維持し、さらに3秒間500rpmで維持し、再び2秒間100rpmで維持した後、膜厚設定回転数(1200rpm)に上げて60秒間維持した。その後、ホットプレート上で130℃にて60秒間加熱乾燥を行い、膜厚11μmのポジ型レジスト膜を形成した。このレジスト膜に対し、縮小投影露光及び現像後に形成されるパターンのスペース幅が5μm、ピッチ幅が25μmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C、波長248nm)を用いて、NA=0.60、σ=0.75の露光条件でパターン露光した。照射後に120℃にて60秒間ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した。その後、30秒間、純水でリンスして乾燥して、スペース幅が5μm、ピッチ幅が25μmの孤立スペースパターンを形成した。
上記パターン露光は、縮小投影露光後のスペース幅が5μm、ピッチ幅が25μmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介する露光であり、露光量は、スペース幅が5μm、ピッチ幅が25μmの孤立スペースパターンを形成する最適露光量(感度)(mJ/cm2)とした。上記感度の決定において、パターンのスペース幅の測定は走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0302】
(性能評価)
以下に示す方法にて、得られたパターンの評価を行った。
現像後のウェーハの断面SEMの結果より、基板まで解像できていないものはN、基板まで解像できているがパターンの直線性が悪いものをB、パターンの直線性が良いものをAとして評価した。判定の例を
図1~
図3に示す。
図1は、判定がNの例であり、
図2は、判定がBの例であり、
図3は、判定がAの例である。
評価結果を第3表に示す。
【0303】
【0304】
実施例1~8の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた場合には、いずれも基板まで解像できていることが確認された。
一方、比較例1~4の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いた場合には、波長248nmに吸収を有する不純物及び塩基性不純物の影響により、基板まで解像できていないことが確認された。