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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ゴム組成物用粘着付与剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20220701BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220701BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20220701BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20220701BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220701BHJP
   C08G 61/02 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C08L65/00
C08L21/00
C08K5/04
C08J3/12 Z CEZ
C08J3/20 Z
C08G61/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019549642
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017081051
(87)【国際公開番号】W WO2018104151
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】16202416.0
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス アレクサンダー ヴェスターハウス
(72)【発明者】
【氏名】フランク ロイター
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ローデヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ フレシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュリッター
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フェルカート
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ニムツ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ アーベル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シェル
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-087555(JP,A)
【文献】特開昭51-002752(JP,A)
【文献】特開2009-108117(JP,A)
【文献】国際公開第2009/155747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
[式中、Rは、1~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基であり、かつRは、20個までの炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である]で示される繰り返し単位を有する樹脂と、不飽和脂肪族炭化水素と不飽和ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物またはジカルボン酸アミドとの反応によって得られるオリゴマー、飽和または不飽和脂肪アルコール又は不飽和脂肪酸から選択される非芳香族化合物との混合物を含む、粘着付与剤。
【請求項2】
式I中のRが、CHまたはHC-CHまたはHC-CHである、請求項1記載の粘着付与剤。
【請求項3】
式I中のRが、4~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である、請求項1または2記載の粘着付与剤。
【請求項4】
樹脂が、アセチレンとパラ三級ブチルフェノールとを反応させて得られる樹脂であるKoresin(登録商標)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の粘着付与剤。
【請求項5】
式Iの樹脂100重量部当たり、0.1~50重量部の非芳香族化合物を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の粘着付与剤。
【請求項6】
少なくとも80重量%の式Iの樹脂および非芳香族化合物を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の粘着付与剤。
【請求項7】
前記非芳香族化合物が、不飽和脂肪族炭化水素と不飽和ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物またはジカルボン酸アミドとの反応によって得られるオリゴマー又は飽和または不飽和脂肪アルコールから選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の粘着付与剤。
【請求項8】
非芳香族化合物を、樹脂の溶融物に添加し、得られた混合物を、錠剤化によって固体顆粒に変換する、請求項1からまでのいずれか1項記載の粘着付与剤の製造方法。
【請求項9】
非芳香族化合物を、150~250℃の温度を有する溶融された、アセチレンとパラ三級ブチルフェノールとを反応させて得られる樹脂であるKoresin(登録商標)に添加する、請求項記載の方法。
【請求項10】
請求項記載の粘着付与剤をゴムに添加する、ゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項記載の粘着付与剤を含む、ゴム組成物。
【請求項12】
ゴム100重量部当たり、0.1~50重量部の粘着付与剤を含む、請求項11記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明の対象は、式I
【化1】
[式中、Rは、1~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基であり、かつRは、20個までの炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である]で示される繰り返し単位を有する樹脂と、少なくとも50重量%の少なくとも4個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基を含む非芳香族化合物とを含む粘着付与剤である。
【0002】
式Iによる周知の粘着付与剤は、例えば、独国特許第734493号明細書(DE 734 493)に記載されている、BASFにより販売されている樹脂、Koresin(登録商標)である。Koresin(登録商標)は、特に自動車またはトラック用のタイヤであるゴム製品を製造するためのゴム組成物に粘着付与剤として添加されている。Koresin(登録商標)は、パラ三級ブチルフェノールをアセチレンと反応させることによって作られた樹脂である。
【0003】
ゴム組成物は、粘着付与剤と配合されなければならない。均一な組成を得るためには、温度は、樹脂を確実に溶融するのに十分に高くなければならない。ガラス転移点、軟化点がそれぞれ高い粘着付与剤には、高い配合温度が要求される。
【0004】
工業プロセスは、低温で有利に行われる。低温プロセスは、エネルギーを節約し、使用される材料を保存し、かつ揮発性化合物への暴露を低減する。
【0005】
したがって、ガラス転移点または軟化点が低い粘着付与剤が、配合工程には好ましい。
【0006】
しかしながら、ガラス転移点または軟化点が低い粘着付与剤を使用しても、最終的に得られる製品の塗布性に悪影響を及ぼすことはない。
【0007】
多くのゴム製品の製造には、ゴム組成物の高い粘着性が重要である。
【0008】
ゴム製品の製造では、同じまたは異なるゴム組成物から製造された一定数の未加硫ゴム部材を組み合わせて、所望のゴム組成物を形成する。ゴム部材同士の接着力が強く、互いに強く粘着しなければならない。次の工程では、ゴム組成物が高温で加硫される。加硫するとゴムが架橋し、ゴム部材は互いに強く結合し、機械的性質の優れた最終ゴム製品、例えば、タイヤが形成される。
【0009】
本発明の課題は、ガラス転移点、軟化点がそれぞれ低い粘着付与剤を提供することであった。しかしながら、ガラス転移点が低く、軟化点がそれぞれ低い粘着付与剤の使用は、ゴム組成物の粘着性、ひいては最終的に得られる製品の機械的性質にあまり悪影響を与えないか、または全く悪影響を与えないはずである。
【0010】
したがって、上記で定義された粘着付与剤およびそのゴム組成物における粘着付与剤としての使用が見出された。
【0011】
樹脂について
樹脂は、式I
【化2】
[式中、Rは、1~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基であり、かつRは、20個までの炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である]で示される繰り返し単位を含む。好ましくは、式I中のRは、1~4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基である。本発明の特に好ましい実施形態では、式I中のRは、CHまたはHC-CHまたはHC-CHである。
【0012】
好ましくは、式I中のRは、4~10個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である。本発明の特に好ましい実施形態では、式I中のRは、4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基である。最も好ましい実施形態では、Rは、パラ三級ブチルである。
【0013】
=CHの樹脂は、式R-C-OHのフェニル化合物を、ホルムアルデヒドと反応させることによって得ることができる。この反応では、ホルムアルデヒドが、R-C-OHの炭素原子(通常、OH基に対してオルト位にある炭素原子)に付加し、続いて得られたメチロール基が、さらにR-C-OHと水の除去下で反応する。さらにホルムアルデヒドは、反応性の低いメタ位に付加し得るので、得られた樹脂は、ある程度まで架橋され得る。
【0014】
=HC-CHまたはR=HC-CHの樹脂は、式R-C-OHのフェニル化合物を、アセチレンと反応させることにより得ることができる。この反応では、アセチレンが、R-C-OHの炭素原子(通常、OH基に対してオルト位にある炭素原子)に付加し、続いて得られたビニル基が、さらにR-C-OHと反応する。さらにアセチレンは、反応性の低いメタ位に付加し得るので、得られた樹脂は、ある程度まで架橋され得る。
【0015】
最も好ましい樹脂は、アセチレンをパラ三級ブチルフェノールと反応させることによって得られる、BASFによって市販されている樹脂、Koresin(登録商標)である。
【0016】
Koresin(登録商標)は、式II
【化3】
の単位を含む。
【0017】
反応におけるアセチレンの代替的な統合のために、Koresin(登録商標)は、式III
【化4】
で示される単位をさらに含んでよく、式IIおよびIII中のRは、パラ三級ブチルである。
【0018】
Koresin(登録商標)のポリマー分子の末端基は、特にアセチレンから生じるビニル基であり得る。
【0019】
樹脂は、反応のさらなる出発材料としてコモノマーまたは反応性添加剤を使用することによって組み込まれるさらなる構造要素を含み得る。
【0020】
好ましくは、樹脂の製造に使用される出発材料の少なくとも80重量%は、R-C-OHおよびホルムアルデヒド(R=CHの場合)またはR-C-OHおよびアセチレン(R=HC-CHまたはR=HC-CHまたはそれらの混合物の場合)である。
【0021】
より好ましい実施形態では、樹脂の製造に使用される出発材料の少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%が、R-C-OHおよびホルムアルデヒド(R=CHの場合)またはR-C-OHおよびアセチレン(R=HC-CHまたはR=HC-CHまたはそれらの混合物の場合)である。
【0022】
最も好ましい実施形態では、R-C-OHおよびホルムアルデヒド(R=CHの場合)またはR-C-OHおよびアセチレン(R=HC-CHまたはR=HC-CHまたはそれらの混合物の場合)以外の出発材料が、樹脂の製造に使用されている。
【0023】
非芳香族化合物について
粘着付与剤は、少なくとも50重量%の、少なくとも4個の炭素原子を有する1つ以上の直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基を含む非芳香族化合物をさらに含む。
【0024】
好ましくは、非芳香族化合物は、少なくとも60重量%、特に少なくとも70重量%、それぞれ少なくとも80重量%の、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基を含む。
【0025】
炭化水素基は、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、特に少なくとも8個の炭素原子、それぞれ少なくとも10個の炭素原子を有する炭化水素基である。水素以外の他の原子に直接結合している炭素基は、炭化水素基の構成要素とは見なされていない。通常、炭化水素基の炭素原子数は、最大60、特に最大40になり、好ましい実施形態では最大20になる。
【0026】
特に好ましい実施形態では、非芳香族化合物は、10~60個の炭素原子を有する少なくとも80重量%の直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基を含む。
【0027】
非芳香族化合物は、他の化学元素または官能基を含まない純粋な炭化水素であり得る。
【0028】
非芳香族化合物は、1つ以上の炭化水素基およびさらなる官能基を含む炭化水素化合物であり得る。好ましい実施形態では、さらなる官能基は、酸素または窒素原子を含む基から選択される。
【0029】
好ましくは、このようなさらなる官能基は、アルコール基、一級、二級または三級アミノ基、カルボニル基、例えば、アルデヒド基またはケト基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基またはジカルボン酸イミド基である。
【0030】
好ましくは、非芳香族化合物は、炭素、水素および任意に酸素および窒素原子のみからなる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、非芳香族化合物は、炭素、水素、または炭素、水素および酸素のみからなる。
【0032】
最も好ましい実施形態では、非芳香族化合物は、炭素、水素および酸素のみからなる。
【0033】
好ましくは、非芳香族化合物の重量平均分子量は、100~2.000g/モル、特に200~1.000g/モルである。
【0034】
好ましい非芳香族化合物は、
- 直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素
- 不飽和脂肪族炭化水素と不飽和ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物またはジカルボン酸アミドとの反応によって得られるオリゴマー
- 飽和または不飽和脂肪アルコール
- 飽和または不飽和脂肪酸
- 飽和または不飽和脂肪アルコールと、飽和または不飽和脂肪酸を含むモノ-、ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とのエステル
- 飽和または不飽和脂肪酸と、飽和または不飽和脂肪アルコール以外のアルコールとのエステル、または
- 飽和または不飽和脂肪酸無水物またはアミド
である。
【0035】
好ましい直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和脂肪族炭化水素は、完全に飽和しているか、または1個または2個の炭素-炭素二重結合を有する、6~24個の炭素原子を有する炭化水素である。例としては、オクタン、オクテン、デカン、デセン、ドデカン、ドデセン等を挙げることができる。
【0036】
不飽和脂肪族炭化水素と不飽和ジカルボン酸とを反応させて得られる好ましいオリゴマーは、PIBSAとして知られるポリイソブテニルコハク酸無水物である。ポリイソブテニルコハク酸無水物は、例えば、商品名Glissopal SA(登録商標)でBASFから販売されている。ポリイソブテニルコハク酸無水物は、ポリイソブチレン(2-メチルプロペン=イソブテンのポリマー)と無水マレイン酸とを反応させることにより得られる。好ましいポリイソブテニルコハク酸無水物は、150~3,000g/モル、特に500~1,500g/モルの数平均分子量を有し、ポリイソブテニルコハク酸無水物1000g当たり0.1~3モルのコハク酸無水物のコハク酸無水物基の含有量を有する。
【0037】
好ましい飽和または不飽和脂肪アルコールは、6~24個の炭素原子、1個または2個のヒドロキシル基を有し、完全に飽和しているか、または1個または2個の炭素-炭素二重結合を有する。例としては、オクタノール、デカノール、テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、オクタデカノール(ステアリルアルコール)が挙げられる。
【0038】
好ましい飽和または不飽和脂肪酸は、6~24個の炭素原子を有し、1個または2個のカルボン酸基を有し、完全に飽和しているか、または1個または2個の炭素-炭素二重結合を有する。例としては、飽和脂肪酸、例えば、オクタン酸、デカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリル酸)および不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸(C18)、リノール酸(2つの二重結合を有するC18)が挙げられる。
【0039】
好ましい脂肪アルコールとモノ-、ジ-、トリ-、テトラカルボン酸とのエステルは、前述の脂肪アルコールとアクリル酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、または上記の飽和もしくは不飽和脂肪酸とのエステルである。
【0040】
飽和または不飽和脂肪酸と飽和または不飽和脂肪アルコール以外のアルコールとの好ましいエステルは、上記の脂肪酸と低分子量アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはn-ブタノールとのエステルである。
【0041】
好ましい飽和または不飽和脂肪酸無水物またはアミドは、上記の脂肪酸の無水物またはアミドである。特に脂肪酸および脂肪族アルコールが好ましい。
【0042】
粘着付与剤およびそのゴムにおける使用について
粘着付与剤は、上記式Iの樹脂および上記非芳香族化合物を含む。
【0043】
好ましい実施形態では、粘着付与剤は、式Iの樹脂100重量部当たり、少なくとも0.1重量部、特に少なくとも1重量部、より好ましい実施形態では少なくとも2重量部の非芳香族化合物を含む。
【0044】
通常、粘着付与剤は、式Iの樹脂100重量部当たり、100重量部を上回る非芳香族化合物を含まない。
【0045】
好ましい実施形態では、粘着付与剤は、式Iの樹脂100重量部当たり、最大50重量部、より好ましい実施形態では最大30重量部の非芳香族化合物を含む。
【0046】
特に好ましい実施形態では、粘着付与剤は、式Iの樹脂100重量部当たり、最大15重量部、最も好ましい実施形態では最大10重量部の非芳香族化合物を含む。
【0047】
式Iの樹脂100重量部当たり、0.1~50重量部、最も好ましい実施形態では1~10重量部の非芳香族化合物を含む粘着付与剤が特に好ましい。
【0048】
粘着付与剤は、さらなる成分を含み得る。特に、粘着付与剤は、式Iのもの以外の他の樹脂または任意の種類の安定剤などの添加剤を含み得る。粘着付与剤は、用途で要求されるかまたは所望される添加剤または成分、例えばゴム用の安定剤またはゴムの加硫に使用される促進剤をすでに含んでいてもよい。好ましい実施形態では、粘着付与剤は、少なくとも80重量%、より好ましい実施形態では少なくとも90重量%、特に好ましい実施形態では少なくとも97重量%の式Iの樹脂および非芳香族化合物のみを含む。最も好ましい実施形態では、粘着付与剤は、式Iの樹脂および非芳香族化合物のみを含み、かつさらなる成分を全く含まない。
【0049】
粘着付与剤は、非芳香族化合物と樹脂とを任意の公知の方法で混合することによって製造され得る。好ましくは、非芳香族化合物が、樹脂の溶融物に添加される。溶融物、特に溶融したKoresinの温度は、150~250℃、特に180~230℃である。樹脂と非芳香族化合物との得られた混合物は、好ましくは、非芳香族化合物が樹脂中に均一に分散するまで撹拌される。好ましくは、得られた混合物は、錠剤化によって固体顆粒に変換される。得られた粘着付与剤をさらに使用するために、顆粒は、保管または輸送され得る。
【0050】
好ましくは、粘着付与剤は、ゴム組成物中の粘着付与剤として使用される。
【0051】
ゴム組成物は、ゴム、粘着付与剤および任意でさらなる成分を含む。ゴムは、任意のゴム、ならびに天然ゴムまたは合成ゴムであってよい。好ましくは、ゴムは、架橋可能な二重結合を少なくとも1つ有する化合物である。天然ゴムは、イソプレンのポリマーである。
【0052】
合成ゴムは、例えば、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン(BR)、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、アクリルニトリル-ブタジエンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマーまたはポリクロロプレンであり得る。
【0053】
好ましいゴムは、BRまたはSBRである。
【0054】
好ましい実施形態では、ゴム組成物は、ゴム100重量部当たり、少なくとも0.1重量部、特に少なくとも1重量部、より好ましい実施形態では少なくとも2重量部の粘着付与剤を含む。
【0055】
通常、ゴム組成物は、ゴム100重量部当たり、100重量部を上回る粘着付与剤を含まない。
【0056】
好ましい実施形態では、ゴム組成物は、ゴム100重量部当たり、最大50重量部、より好ましい実施形態では最大30重量部の粘着付与剤を含む。
【0057】
特に好ましい実施形態では、ゴム組成物は、ゴム100重量部当たり、最大15重量部、最も好ましい実施形態では最大10重量部の粘着付与剤を含む。
【0058】
ゴム100重量部当たり、0.1~50重量部、最も好ましい実施形態では1~10重量部の粘着付与剤を含むゴム組成物が特に好ましい。
【0059】
ゴム組成物は、さらに添加剤を含み得る。特に、ゴム組成物は、通常、元素状硫黄などの加硫剤および加硫促進剤、例えば、酸化亜鉛またはベンゾチアゾールスルホンアミド、特にN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド(CBS)を含む。
【0060】
他の添加剤は、特に、フィラーおよび顔料、例えば、カーボンブラックおよびシリカである。
【0061】
ゴム組成物は、標準的な混合手順に従って、例えば、ゴム、粘着付与剤、加硫剤および任意に促進剤、顔料などの成分を、バンバリーミキサーのような標準的な装置で混練することによって製造され得る。
【0062】
粘着付与剤が溶融物としてゴムに添加される、ゴム組成物の製造方法が好ましい。粘着付与剤の添加中、ゴムの温度は、好ましくは60~150℃の温度に維持され、特に好ましくは80~120℃の温度に維持される。
【0063】
ゴム組成物は、ゴム製品の製造に使用され得る。製造工程において、ゴム組成物、それから作られるそれぞれの部材は、通常通りに加硫され得る。得られる好ましいゴム製品は、特に自動車またはトラック用のタイヤである。ゴム製品は、通常は高温で行われる加硫によって最終的に形成される。
【0064】
ゴム組成物から作られた製品は、特に他の材料、例えば補強材料、特に加硫ゴム組成物で覆われているスチールコードを含む複合材料であり得る。
【0065】
本発明の粘着付与剤は、低いガラス転移点、それぞれ比較的低い軟化点を有し、より低い温度、例えば80~120℃の温度でのゴム組成物の製造を可能にする。粘着付与剤を含むゴム組成物は、高い粘着性を有し、高性能、特に非常に優れた機械的性質、例えば、高い安定性および剛性を有するゴム製品、特にタイヤの製造を可能にする。
【0066】
実施例
Koresinと非芳香族化合物との様々な混合物の製造手順:Koresin(登録商標)(200g)および非芳香族化合物(第1表に示した量)を、凝縮器および機械的撹拌機を備えたフラスコに入れ、200℃まで加熱した。次に、混合物を3時間撹拌してから冷却した。溶融物が冷えて固まった後、材料を取り出してDSC(示差走査熱量計)で分析した。ガラス転移温度(Tg)をDSCデータから導き出した。
【表1】
【0067】
粘着性の測定
以下の組成(重量部)を有するゴム配合物を使用した:
SBRゴム 100
プロセスオイル 13
カーボンブラック 45
タルク 17
ポリブタジエン 17
【0068】
上記のゴム配合物を、5重量部のKoresin(登録商標)(実施例1)または同量の実施例7に記載の混合物(7重量部のステアリン酸)、実施例11(5重量部のステアリルアルコール)と、それぞれ、ローラーミルで配合した。粘着付与剤を添加した後、樹脂を確実に均一に分散させるために、混合物の温度を3分間かけて120℃に上げた。
【0069】
完成したコンパウンドから調製した試験試料を、23℃および相対湿度50%で第2表に示す時間、保存した。
【0070】
試験試料の粘着性を、第2表に示すように様々な保存時間の後に測定した。
【0071】
特に、これらの試料の粘着性を、「Ketjen Tackmeter」で測定した。ストリップの形をした2つの試験試料を、20N/cmの力で30秒間一緒に押し付ける。試料間には、規定された接触面積を確保するための窓を有するテフロン箔がある。力を解放してさらに10秒間弛緩させた後、ストリップを引き離した。2つのゴムストリップを互いに引き離す力を、ニュートン(N)で測定した。強い力は、試験試料の高い粘着性に対応する。
【表2】