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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/10 20060101AFI20220701BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20220701BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20220701BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D17/06 C
C25D21/10 301
C25D7/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022521682
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2022004589
【審査請求日】2022-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】和久田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】下山 正
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-524079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261254(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0342583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を収容するように構成されためっき槽と、
被めっき面を下方に向けた基板を保持するように構成された基板ホルダと、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
前記基板と前記アノードとの間に配置され、前記被めっき面と対向する対向面を有する抵抗体であって、前記対向面は、第1の対向面、および前記第1の対向面よりも前記被めっき面から離れた第2の対向面、を有する、抵抗体と、
前記第2の対向面によって形成される前記抵抗体の窪み領域に配置される、電場を遮蔽するための遮蔽部材と、
を含
前記抵抗体は、前記第1の対向面における抵抗率と前記第2の対向面における抵抗率が均一になるように形成される、
めっき装置。
【請求項2】
前記抵抗体は、前記アノード側と前記基板側とを貫通する複数の貫通孔が形成された板状の部材であり、前記第1の対向面における前記抵抗体の厚みと前記第2の対向面における前記抵抗体の厚みが均一になるように形成される、
請求項に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記抵抗体は、前記アノード側と前記基板側とを貫通する複数の貫通孔が形成された板状の部材であり、前記第1の対向面における前記抵抗体の厚みが前記第2の対向面における前記抵抗体の厚みよりも大きく、かつ、前記第1の対向面における前記複数の貫通孔による開口率が前記第2の対向面における前記複数の貫通孔による開口率よりも大きくなるように形成される、
請求項に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記第2の対向面は、前記対向面の外縁部の一部に形成される、
請求項1からのいずれか一項に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記基板ホルダの回転角度に応じて、前記遮蔽部材を、前記抵抗体の前記第2の対向面と前記基板との間の遮蔽位置と、前記抵抗体の前記第2の対向面と前記基板との間から離れた退避位置と、の間で、前記基板の前記被めっき面に沿った方向に往復移動させるように構成された遮蔽機構、
をさらに含む、
請求項1からのいずれか一項に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記抵抗体と前記基板との間に配置されたパドルと、
前記パドルを前記基板の前記被めっき面に沿った方向に往復移動させるように構成されたパドル攪拌機構と、
をさらに含む、
請求項1からのいずれか一項に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置の一例としてカップ式の電解めっき装置が知られている。カップ式の電解めっき装置は、被めっき面を下方に向けて基板ホルダに保持された基板(例えば半導体ウェハ)をめっき液に浸漬させ、基板とアノードとの間に電圧を印加することによって、基板の被めっき面に導電膜を析出させる。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、カップ式の電解めっき装置では、基板とアノードとの間に抵抗体を配置するとともに、基板と抵抗体との間に電場を遮蔽するための遮蔽部材を配置することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6901646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のめっき装置は、遮蔽部材を有するめっき装置において、抵抗体を基板の被めっき面に接近させて配置することによりめっき膜厚の分布の均一性を向上させることについて改善の余地がある。
【0006】
すなわち、基板とアノードとの間に抵抗体を配置すると、基板とアノードとの間の抵抗値が大きくなり電場が広がり難くなるが、抵抗体が基板の被めっき面から離れて配置されると、電場が広がり得る空間が大きくなる。ここで、基板ホルダの給電接点は基板の外縁部に接触しているため、相対的に電場が基板の外縁部に集中するようになり、外縁部のめっき膜厚が厚くなるおそれがある。
【0007】
このため、抵抗体を基板の被めっき面に接近させることによって被めっき面に形成されるめっき膜厚分布を均一化することが望まれる。しかしながら、抵抗体と基板との間に遮蔽部材を配置する場合には、抵抗体と遮蔽部材とが干渉しないように、抵抗体を基板の被めっき面から離して配置せざるを得なくなり、その結果、めっき膜厚の分布の均一性が損なわれるおそれがある。
【0008】
そこで、本願は、遮蔽部材を有するめっき装置において、抵抗体を基板の被めっき面に接近させて配置することによりめっき膜厚の分布の均一性を向上させることを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、めっき液を収容するように構成されためっき槽と、被めっき面を下方に向けた基板を保持するように構成された基板ホルダと、前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置され、前記被めっき面と対向する対向面を有する抵抗体であって、前記対向面は、第1の対向面、および前記第1の対向面よりも前記被めっき面から離れた第2の対向面、を有する、抵抗体と、前記第2の対向面によって形成される前記抵抗体の窪み領域に配置される、電場を遮蔽するための遮蔽部材と、を含む、めっき装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図3図3は、本実施形態のめっきモジュールの構成を概略的に示す縦断面図である。
図4図4は、本実施形態の抵抗体を模式的に示す平面図である。
図5図5は、各条件におけるめっき膜厚分布のシミュレーション結果を示す図である。
図6図6は、各条件におけるめっき膜厚分布のシミュレーション結果を示す図である。
図7図7は、遮蔽部材による電場の回り込みを模式的に示す図である。
図8図8は、抵抗体の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
<めっき装置の全体構成>
図1は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態のめっき装置の全体構成を示す平面図である。図1、2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、および、制御モジュール800を備える。
【0013】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収納された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数および配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200およびスピンリンスドライヤ60の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110および搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、図示していない仮置き台を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0014】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数および配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数および配置は任意である。
【0015】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数および配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数および配置は任意である。
【0016】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数および配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤが上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤの数および配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0017】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収納された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0018】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0019】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収納したカセットが搬出される。
【0020】
<めっきモジュールの構成>
次に、めっきモジュール400の構成を説明する。本実施形態における24台のめっきモジュール400は同一の構成であるので、1台のめっきモジュール400のみを説明する。
【0021】
図3は、本実施形態のめっきモジュール400の構成を概略的に示す縦断面図である。図4は、本実施形態の抵抗体を模式的に示す平面図である。図3に示すように、めっきモジュール400は、めっき液を収容するためのめっき槽410を備える。めっきモジュール400は、めっき槽410の内部を上下方向に隔てるメンブレン420を備える。めっき槽410の内部はメンブレン420によってカソード領域422とアノード領域424に仕切られる。カソード領域422とアノード領域424にはそれぞれめっき液が充填される。アノード領域424のめっき槽410の底面にはアノード430が設けられる。アノード430は、円板形状の基板Wfと概略等しい大きさを有する円板形状の部材である。
【0022】
また、めっきモジュール400は、被めっき面Wf-aを下方に向けた状態で基板Wfを保持するための基板ホルダ440を備える。基板ホルダ440は、図示していない電源から基板Wfの外縁部に給電するための給電接点を備える。めっきモジュール400は、基板ホルダ440を昇降させるための昇降機構442を備える。昇降機構442は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。
【0023】
また、めっきモジュール400は、被めっき面Wf-aの中央を垂直に伸びる仮想的な回転軸周りに基板Wfが回転するように基板ホルダ440を回転させるための回転機構446を備える。回転機構446は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。めっきモジュール400は、昇降機構442を用いて基板Wfをカソード領域422のめっき液に浸漬し、回転機構446を用いて基板Wfを回転させながらアノード430と基板Wfとの間に電圧を印加することによって、基板Wfの被めっき面Wf-aにめっき処理を施すように構成される。
【0024】
めっきモジュール400は、基板Wfとアノード430との間に配置された抵抗体450を備える。抵抗体450は、メンブレン420に対向してカソード領域422に配置されている。抵抗体450は、基板Wfの被めっき面Wf-aにおけるめっき処理の均一化を図るための部材である。抵抗体450は、一実施形態では、アノード430側と基板Wf側とを貫通する複数の貫通孔が形成された板状部材(パンチングプレート)によって構成される。しかしながら、抵抗体450の形状は任意である。また、抵抗体450は、パンチングプレートに限定されず、例えばセラミック材料に多数の細孔が形成された多孔質体によって構成することができる。
【0025】
また、めっきモジュール400は、基板ホルダ440に保持された基板Wfと抵抗体450との間に配置されたパドル480と、パドル480をめっき液内で攪拌させるためのパドル攪拌機構482と、を備える。パドル480は、例えば格子状に配置された複数の棒状部材を有する板部材によって構成することができるが、これに限らず、ハニカム状の多数の穴が形成された板部材によって構成することもできる。パドル攪拌機構482は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。パドル攪拌機構482は、基板Wfの被めっき面Wf-aに沿ってパドル480を往復運動させることにより、基板Wfの被めっき面の近傍のめっき液を攪拌するように構成される。
【0026】
上記の抵抗体450は、アノード430と基板Wfとの間の抵抗体として作用する。抵抗体450を配置することによって、アノード430と基板Wfとの間の抵抗値が大きくなるため電場が広がりにくくなり、その結果、基板Wfの被めっき面Wf-aに形成されるめっき膜厚の分布の均一性を向上させることができる。
【0027】
抵抗体450は、特に、基板Wfの被めっき面Wf-aの外縁部におけるめっき膜厚分布に影響を及ぼす。すなわち、基板Wfと抵抗体450との間の距離が大きくなると、基板Wfと抵抗体450との間の電場の広がることができる空間が大きくなる。ここで、基板ホルダ440の給電接点は基板Wfの外縁部に接触しているため、相対的に電場が基板Wfの外縁部に集中するようになり、外縁部のめっき膜厚が厚くなる。したがって、抵抗体450を基板Wfの被めっき面Wf-aの近傍に配置するのが好ましい。
【0028】
しかしながら、本実施形態のめっきモジュール400は、基板Wfと抵抗体450との間に配置される遮蔽部材481を備えている。遮蔽部材481は、アノード430と基板Wfとの間に形成される電場を遮蔽するための部材である。遮蔽部材481は例えば板状に形成された遮蔽板であってもよい。また、めっきモジュール400は、遮蔽部材481を移動させるための遮蔽機構485を備える。遮蔽機構485は、制御モジュール800から入力される基板ホルダ440の回転角度に関する情報に基づく指令信号に応じて動作するように構成される。
【0029】
具体的には、遮蔽機構485は、めっきの堆積速度を抑制したい基板Wfの特定の部位の回転角度が所定範囲内にあるときは、図3において実線で示すように、遮蔽部材481を、抵抗体450と基板Wfとの間の遮蔽位置に移動させるように構成される。一方、遮蔽機構485は、特定の部位の回転角度が所定範囲外にあるときは、図3において破線で示すように、遮蔽部材481を、抵抗体450と基板Wfとの間から離れた退避位置に移動させるように構成される。
【0030】
従来技術では、抵抗体450と基板Wfとの間に遮蔽部材481を配置する場合には、抵抗体450と遮蔽部材481とが干渉しないように、抵抗体450を基板Wfの被めっき面Wf-aから離して配置せざるを得なくなり、その結果、めっき膜厚の分布の均一性を向上させるのが難しくなる。
【0031】
これに対して、本実施形態の抵抗体450は、図3および図4に示すように、抵抗体450の外縁部の一部がアノード430側にずれるように構成されている。具体的には、抵抗体450は、基板Wfの被めっき面Wf-aと対向する対向面450-aを有する。対向面450-aは、第1の対向面450-a1、および第1の対向面450-a1よりも被めっき面Wf-aから離れた第2の対向面450-a2、を有する。本実施形態では、円弧状に形成された遮蔽部材481の形状に対応して、第2の対向面450-a2は、対向面450-aの中心角θ=40°の範囲の外縁部(対向面450-aの外縁部の一部)に円弧状に形成されている。なお、第2の対向面450-a2が形成される範囲および形状は、遮蔽部材481の形状に応じて適宜設定することができる。
【0032】
抵抗体450は、第1の対向面450-a1における抵抗率と第2の対向面450-a2における抵抗率が均一になるように形成される。具体的には、第2の対向面450-a2は、第1の対向面450-a1に対してαmm窪んで形成されている。また、抵抗体450の第2の対向面450-a2の裏面は、第1の対向面450-a1の裏面に対してαmm突出して形成されている。これにより、抵抗体450は、第1の対向面450-a1における抵抗体450の厚みと第2の対向面450-a2における抵抗体450の厚みが均一になるように形成されている。
【0033】
本実施形態では、遮蔽部材481は、第2の対向面450-a2によって抵抗体450の対向面450-aに形成された窪み領域βに配置される。すなわち、遮蔽機構485は、基板Wfの特定の部位の回転角度が所定範囲内にあるときは、図3において実線で示すように、遮蔽部材481を、抵抗体450の第2の対向面450-a2と基板Wfとの間(窪み領域β)に移動させるように構成される。また、遮蔽機構485は、特定の部位の回転角度が所定範囲外にあるときは、図3において破線で示すように、遮蔽部材481を、抵抗体450の第2の対向面450-a2と基板Wfとの間から離れた退避位置に移動させるように構成される。
【0034】
本実施形態のめっきモジュール400によれば、遮蔽部材481を有するめっき装置において、抵抗体450を基板Wfの被めっき面Wf-aに接近させて配置することによりめっき膜厚の分布の均一性を向上させることができる。以下、この点について説明する。
【0035】
図5は、各条件におけるめっき膜厚分布のシミュレーション結果を示す図である。図5は、遮蔽部材481が設けられていない状態におけるめっき膜厚分布のシミュレーション結果を示しておいる。図5のグラフにおいて、横軸は被めっき面Wf-aの中心から外縁部までの半径、縦軸はめっき膜厚を示している。図5において、条件(1)は、抵抗体450が単純な円板形状の場合のめっき膜厚分布を示している。条件(2)は、抵抗体450の第2の対向面450-a2に対応する部分を削って板厚を薄くした場合のめっき膜厚分布を示している。条件(3)は、図3に示すように抵抗体450の第2の対向面450-a2に対応する部分をアノード430側にずらせた場合のめっき膜厚分布を示している。なお、条件(1)から条件(3)において、抵抗体450の全面において複数の貫通孔の開口率は一様である。
【0036】
図5に示すように、条件(2)では基板Wfの外縁部の膜厚が極端に厚くなるという結果が得られた。これは、抵抗体450の外縁部の板厚を薄くして抵抗が小さくなったことが原因であると考えられる。これに対して、条件(3)では条件(1)と同等の膜厚分布が得られた。つまり、抵抗体450を図3に示すように形成しても、抵抗体450としての性能に影響しないという結果が得られた。
【0037】
図6は、各条件におけるめっき膜厚分布のシミュレーション結果を示す図である。図6のグラフにおいて、横軸は被めっき面Wf-aの中心から外縁部までの半径、縦軸はめっき膜厚を示している。図6において、条件(4)は、図3に示すように抵抗体450の第2の対向面450-a2に対応する部分をアノード430側にずらし、第2の対向面450-a2の窪み領域βに遮蔽部材481を配置した場合のめっき膜厚分布を示している。条件(5)は、単純な円板形状の抵抗体450と基板Wfとの間に遮蔽部材481を配置した場合のめっき膜厚分布を示している。条件(5)では、被めっき面Wf-aの外縁部のめっき膜厚が極端に薄くなり、外縁部の内側のめっき膜厚が極端に厚くなるという結果が得られた。この結果について、図7を用いて説明する。
【0038】
図7は、遮蔽部材による電場の回り込みを模式的に示す図である。図7に示すように、遮蔽部材481を基板Wfの被めっき面Wf-aに近づけすぎると、被めっき面Wf-aの外縁部AAに対する電場が抑制されすぎる一方、遮蔽部材481によって遮蔽された電場が外縁部の内側BBに集中して回り込む。その結果、条件(5)の結果に示すように、被めっき面Wf-aの外縁部のめっき膜厚が極端に薄くなり、外縁部の内側のめっき膜厚が極端に厚くなると考えられる。
【0039】
これに対して、本実施形態(条件(4))によれば、遮蔽部材481を基板Wfの被めっき面Wf-aから適切に離して配置するとともに、窪み領域βに抵抗体450を配置することによって抵抗体450を遮蔽部材481に干渉することなく被めっき面Wf-aに接近させて配置することができる。その結果、条件(4)の結果に示すように、めっき膜厚の分布の均一性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記の実施形態では、第1の対向面450-a1における抵抗体450の厚みと第2の対向面450-a2における抵抗体450の厚みを均一に形成する例を示したが、これに限定されない。例えば、抵抗体450は、図3の実施形態と同様に第2の対向面450-a2を形成して窪み領域βを設ける一方、第2の対向面450-a2の裏面を第1の対向面450-a1の裏面に対して突出させずに平面とすることができる。この場合、抵抗体450は、第1の対向面450-a1における複数の貫通孔による開口率が第2の対向面450-a2における複数の貫通孔による開口率よりも大きくなるように形成することができる。つまり、抵抗体450の第1の対向面450-a1の厚みが第2の対向面450-a2の厚みより大きくなる分、開口率を大きくすることによって、第1の対向面450-a1における抵抗率と第2の対向面450-a2における抵抗率を均一にすることができる。
【0041】
また、抵抗体450は、図3に示した構成以外にも様々な構成を有し得る。図8は、抵抗体の変形例を模式的に示す図である。図8(a)に示すように、抵抗体450の外縁部は、アノード側(下方)に向けて傾斜していてもよい。これにより、抵抗体450の対向面には傾斜面450-a3が形成されてる。傾斜面450-a3は、上記実施形態における第2の対向面に対応する。傾斜面450-a3が形成されることによって、抵抗体450には遮蔽部材481を配置するための窪み領域βが形成される。
【0042】
また、図8(b)に示すように、抵抗体450の外縁部は、アノード側(下方)に向けて傾斜し、さらに外方へ向けて伸びていてもよい。これにより、抵抗体450の対向面には傾斜面450-a4、および傾斜面450-a4の下端から外方へ伸びる段差面450-a5が形成される。傾斜面450-a4および段差面450-a5は、上記実施形態における第2の対向面に対応する。傾斜面450-a4および段差面450-a5が形成されることによって、抵抗体450には遮蔽部材481を配置するための窪み領域βが形成される。
【0043】
また、図8(c)に示すように、抵抗体450の外縁部は、アノード側(下方)に向けて2段階に窪んでいてもよい。これにより、抵抗体450の対向面には第1の対向面450-a1よりも被めっき面Wf-aから離れた(窪んだ)段差面450-a6、および段差面450-a6よりも被めっき面Wf-aから離れた(窪んだ)段差面450-a7が形成される。段差面450-a6および段差面450-a7は、上記実施形態における第2の対向面に対応する。段差面450-a6および段差面450-a7が形成されることによって、抵抗体450には遮蔽部材481を配置するための窪み領域βが形成される。
【0044】
また、図8(d)に示すように、抵抗体450の外縁部は、アノード側(下方)に向けて円弧状に湾曲していてもよい。これにより、抵抗体450の対向面には円弧面450-a8が形成される。円弧面450-a8は、上記実施形態における第2の対向面に対応する。円弧面450-a8が形成されることによって、抵抗体450には遮蔽部材481を配置するための窪み領域βが形成される。
【0045】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0046】
本願は、一実施形態として、めっき液を収容するように構成されためっき槽と、被めっき面を下方に向けた基板を保持するように構成された基板ホルダと、前記めっき槽内に配置されたアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置され、前記被めっき面と対向する対向面を有する抵抗体であって、前記対向面は、第1の対向面、および前記第1の対向面よりも前記被めっき面から離れた第2の対向面、を有する、抵抗体と、前記第2の対向面によって形成される前記抵抗体の窪み領域に配置される、電場を遮蔽するための遮蔽部材と、を含む、めっき装置を開示する。
【0047】
さらに、本願は、一実施形態として、前記抵抗体は、前記第1の対向面における抵抗率と前記第2の対向面における抵抗率が均一になるように形成される、めっき装置を開示する。
【0048】
さらに、本願は、一実施形態として、前記抵抗体は、前記アノード側と前記基板側とを貫通する複数の貫通孔が形成された板状の部材であり、前記第1の対向面における前記抵抗体の厚みと前記第2の対向面における前記抵抗体の厚みが均一になるように形成される、めっき装置を開示する。
【0049】
さらに、本願は、一実施形態として、前記抵抗体は、前記アノード側と前記基板側とを貫通する複数の貫通孔が形成された板状の部材であり、前記第1の対向面における前記抵抗体の厚みが前記第2の対向面における前記抵抗体の厚みよりも大きく、かつ、前記第1の対向面における前記複数の貫通孔による開口率が前記第2の対向面における前記複数の貫通孔による開口率よりも大きくなるように形成される、めっき装置を開示する。
【0050】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第2の対向面は、前記対向面の外縁部の一部に形成される、めっき装置を開示する。
【0051】
さらに、本願は、一実施形態として、前記基板ホルダの回転角度に応じて、前記遮蔽部材を、前記抵抗体の前記第2の対向面と前記基板との間の遮蔽位置と、前記抵抗体の前記第2の対向面と前記基板との間から離れた退避位置と、の間で、前記基板の前記被めっき面に沿った方向に往復移動させるように構成された遮蔽機構、をさらに含む、めっき装置を開示する。
【0052】
さらに、本願は、一実施形態として、前記抵抗体と前記基板との間に配置されたパドルと、前記パドルを前記基板の前記被めっき面に沿った方向に往復移動させるように構成されたパドル攪拌機構と、をさらに含む、めっき装置を開示する。
【符号の説明】
【0053】
400 めっきモジュール
410 めっき槽
430 アノード
440 基板ホルダ
442 昇降機構
446 回転機構
450 抵抗体
450-a 対向面
450-a1 第1の対向面
450-a2 第2の対向面
480 パドル
481 遮蔽部材
482 パドル攪拌機構
485 遮蔽機構
1000 めっき装置
Wf 基板
Wf-a 被めっき面
β 窪み領域
【要約】
遮蔽部材を有するめっき装置において、抵抗体を基板の被めっき面に接近させて配置することによりめっき膜厚の分布の均一性を向上させる。
めっき装置は、めっき液を収容するように構成されためっき槽410と、被めっき面Wf-aを下方に向けた基板Wfを保持するように構成された基板ホルダ440と、めっき槽410内に配置されたアノード430と、基板Wfとアノード430との間に配置され、被めっき面Wf-aと対向する対向面450-aを有する抵抗体であって、対向面450-aは、第1の対向面450-a1、および第1の対向面450-a1よりも被めっき面Wf-aから離れた第2の対向面450-a2、を有する、抵抗体450と、第2の対向面450-a2によって形成される抵抗体450の窪み領域βに配置される、電場を遮蔽するための遮蔽部材481と、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8