(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】検出精度特定方法、検出精度特定装置、及び検出精度特定プログラム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20220704BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220704BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220704BHJP
【FI】
C12Q1/68 100Z
C12M1/34 B
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2017214816
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 学
(72)【発明者】
【氏名】和泉 賢
(72)【発明者】
【氏名】川島 優大
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195735(JP,A)
【文献】FOROOTAN, A. et al,Biomolecular Detection and Quantification,2017年04月29日,Vol. 12,P. 1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定方法であって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率と、試料のサンプリングの際に生じる確率分布とに基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定工程を、
含むことを特徴とする検出精度特定方法。
【請求項2】
前記確率分布が、ポアソン分布である請求項1に記載の検出精度特定方法。
【請求項3】
下記数式(2)
から求めた、ある特定の濃度λにおける不検出精度能D(λ)と、試料中の核酸の分子数毎の検出率とに基づき、検査対象の核酸の検出精度能を特定する請求項
2に記載の検出精度特定方法。
【数1】
ただし、前記数式(2)中、E(k)は、分子数kに対する不検出率を表す。P(k,λ)は、特定の濃度λ(分子数/サンプル)の母集団からサンプル量だけサンプリングしたときに、試料中に含まれる核酸の分子数k
を表し、下記数式(1)のポアソン分布で表される。
ただし、kは0、1、2、3、・・・の値である。
【数2】
【請求項4】
前記既知分子数の核酸の分子数が、10以下である請求項1から3のいずれかに記載の検出精度特定方法。
【請求項5】
前記既知分子数の核酸の分子数が、異なる2以上の整数である請求項1から4のいずれかに記載の検出精度特定方法。
【請求項6】
前記既知分子数の核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた請求項1から5のいずれかに記載の検出精度特定方法。
【請求項7】
前記細胞が酵母である請求項6に記載の検出精度特定方法。
【請求項8】
検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定装置であって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率と、試料のサンプリングの際に生じる確率分布とに基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定手段を
有することを特徴とする検出精度特定装置。
【請求項9】
検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定プログラムであって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率と、試料のサンプリングの際に生じる確率分布とに基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする検出精度特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出精度特定方法、検出精度特定装置、及び検出精度特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分析技術の高感度化により、測定対象を分子数単位で測定することが可能となっており、食品、環境検査、及び医療へ、微量核酸を検出する遺伝子検出技術の産業利用が求められている。特に、病原体や未承認の遺伝子組み換え食品は、試料中に含まれていないことを確認することが多く、高いレベルでの検出精度が要求される。
【0003】
例えば、分子生物学研究分野で多く使用されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に代表される核酸増幅を用いた核酸検出法は、その技術特性から、理論上1分子数の核酸からでも増幅が可能とされている。
このような微量の遺伝子検出においては、定量解析を行う場合に、標準試薬を用いる必要があり、例えば、特定の塩基配列を有するDNA断片を限界希釈し、得られた希釈液のリアルタイムPCRの結果から、目的とする分子数を含む希釈液を選別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。検出の有無だけを判定する定性解析においても、その検出下限値(LOD:Limit of Detection)を算出することは、検査の妥当性を確認する上で重要である。一般的な検査において検出下限値を算出する方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、核酸検出手法や装置の検出下限値は数コピーレベルであり、数コピーレベルの安定した標準物質を作り出すことが困難であったことから、正しい検出下限値の測定は困難であった。
これに対して、特定のコピー数のDNA断片を細胞に遺伝子組み換え技術により導入し、培養した細胞を単離することにより、目的のコピー数のDNA断片を含有する標準試薬の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これを用いた検出下限値の算出方法は提案されていなかった。
また、試料自体のばらつきも考慮して、特定濃度で繰り返し実験を行うことにより、特定濃度に対するProbability of Detection(POD:検出能)を算出する方法が報告されている(非特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低分子数の核酸における検出精度能(検出下限値)を高精度に特定することが可能な検出精度特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段としての本発明の検出精度特定方法は、検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定方法であって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定工程を、含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、低分子数の核酸における検出精度能(検出下限値)を高精度に特定することが可能な検出精度特定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、既知分子数が1~4の核酸に対し、核酸の増幅及び検出を行い、検出率(%)を算出した検出結果の一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの結果をもとに、核酸の検出率を分子数毎に表したヒストグラムである。
【
図2】
図2は、試料中の核酸の分子数毎に表したポアソン分布の一例を示すヒストグラムである。
【
図3】
図3は、試料中の核酸の不検出率を表した検出精度能の一例を示す曲線図である。
【
図4】
図4は、試料中の核酸の不検出率を表した検出精度能の一例を示す曲線図である。
【
図5】
図5は、検出精度特定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、検出精度特定装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、検出精度特定プログラム処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明で用いられる標準物質としての検査デバイスの一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、検査デバイスの一例を示す側面図である。
【
図10】
図10は、検査デバイスにおける核酸を充填するウェルの位置の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、検査デバイスにおける核酸を充填するウェルの位置の他の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、ウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置の一例を示す概略図である。
【
図18】
図18は、
図17の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。
【
図20】
図20は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、液滴形成装置の変形例を示す模式図である。
【
図22】
図22は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。
【
図23A】
図23Aは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。
【
図23B】
図23Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。
【
図24】
図24は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。
【
図25】
図25は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。
【
図26】
図26は、液滴形成装置の他の一例を示す模式図である。
【
図27】
図27は、マイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法の一例を示す模式図である。
【
図28】
図28は、吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法の一例を示す模式図である。
【
図29】
図29は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(検出精度特定方法、検出精度特定装置、及び検出精度特定プログラム)
本発明の検出精度特定方法は、検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定方法であって、既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定工程を含み、検出率の情報取得工程及び確率分布取得工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0009】
本発明の検出精度特定装置は、検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定装置であって、既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定手段を有し、検出率の情報取得手段及び確率分布取得手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0010】
本発明の検出精度特定プログラムは、検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定プログラムであって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する処理をコンピュータに実行させる。
【0011】
本発明の検出精度特定装置における制御部等が行う制御は、本発明の検出精度特定方法を実施することと同義であるので、本発明の検出精度特定装置の説明を通じて本発明の検出精度特定方法の詳細についても明らかにする。また、本発明の検出精度特定プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の検出精度特定装置として実現させることから、本発明の検出精度特定装置の説明を通じて本発明の検出精度特定プログラムの詳細についても明らかにする。
【0012】
本発明の検出精度特定方法、本発明の検出精度特定装置、及び本発明の検出精度特定プログラムは、低分子数の核酸を含む試料から核酸を検出する際に、その系の検出感度、特に検出下限値を把握することは、検査の精度管理上重要であるが、先行技術文献では、低分子数の核酸を含む試料から試料を採取する際に、含まれる核酸の量に応じてポアソン分布に従うランダムなばらつきが発生するため、検査装置自体の精度を向上させることが困難であるという知見に基づくものである。
また、従来のPODを算出する方法では、検出下限値などの検出能を数値化するためには、様々な濃度でPODを算出する必要があり、実験の手間がかかってしまうという知見に基づくものである。
【0013】
本発明の検出精度特定方法、本発明の検出精度特定装置、及び本発明の検出精度特定プログラムを用いると、試料に含まれる検査対象の核酸を検出する際に、特に低分子数の核酸を含む試料を用いるときであっても、信頼性の高い検出結果、つまり検出精度の高い結果を特定することができる。そして、特に10以下の低分子数の核酸における検出精度能(検出下限値)を高精度に特定することが可能となる。
【0014】
<検出率の情報取得工程及び検出率の情報取得部>
検出率の情報取得工程は、特定配列の核酸が既知分子数で含まれる標準物質に対し、核酸が検出される確率情報を取得する工程であり、検出率の情報取得部により実施される。
【0015】
標準物質とは、日本工業規格の中で、測定装置の校正,測定方法の評価又は材料に値を付与することに用いるために、一つ以上の特性値が十分に均一で,適切に確定されている材料又は物質として定義されるものである(JIS Q0030、ISO Guide30)。本発明で用いる標準物質は、特定の配列を有する核酸分子の個数が特性値であり、核酸分子を含有する水溶液が標準物質となる。
「既知分子数」の「既知」とは、標準物質に含まれる核酸の分子数が認識できる状態にあることを指す。
標準物質に含まれている核酸は、その核酸が特定の種類であり、その分子数が既知である。
検出率とは、標準物質に含まれている既知の分子数で存在している核酸を検出する確率をいう。
この検出率の情報は、例えば、標準物質に含まれている核酸を増幅処理することにより、増幅処理後の核酸を検出し、その検出割合を求めることで得ることができる。
なお、「標準物質」は、既知分子数核酸及び該核酸を保持する保持手段とを合わせて「検査デバイス」とし、その一例として、既知分子数の核酸をウェルプレートのウェルに導入した、既知分子数の核酸付きウェルプレートを用いて説明することとする。
【0016】
検出率の情報について更に詳しく説明する。
例えば、標準物質の一例としての検査デバイスのウェルに含まれている1~4の細胞に対し、リアルタイムPCR(polymerase chain reaction)法によって、核酸の増幅及び検出を行った。検出結果を
図1Aに示す。なお、本実施例においては、1つの細胞に含まれている核酸は1つである。したがって、細胞の数=核酸の分子数=DNAのコピー数の関係が成り立っている。
21個の標準物質を用い、分子数が1~4の核酸に対し、核酸の検出を行い核酸の検出の有無を確認する実験を行う。核酸を検出できたウェルの数を検出数として
図1Aに記載した。また、その検出数をもとに、検出率(%)を求めることができる。なお、
図1A中、Ct(Threshold Cycle)はリアルタイムPCR法における核酸の増幅が有意に認められるシグナルレベルを表す。Ave.は平均を、SDは標準偏差を表す。
次に、
図1Aの結果に基づき、核酸の不検出率を分子数毎にヒストグラムで表した(
図1Bの結果参照)。
以下、本明細書の図に記載のkは核酸の分子数を表す。また、図に記載のλは試料に含まれる核酸の分子数を表す。
【0017】
ウェルの既知分子数の情報は、上述したような実験を行い、標準物質に含まれている核酸の検出率の情報を予めデータベース(DB)に用意しておき、取得時にその予め用意されたDBから情報を取得することができる。
また、検出率の情報の取得にあたり、標準物質を用いることができる。
【0018】
<確率分布取得工程及び確率分布取得部>
確率分布取得工程は、試料に含まれる核酸を検出する際に、前記試料中の核酸の分子数により生じるばらつきを確率分布として取得する工程であり、確率分布取得部により実施される。
【0019】
ここで、確率分布としては、例えば、試料が低分子数であることにより生じる試料のサンプリングの際の誤差を除くことができる確率分布であれば、特に制限はなく使用することができる。例えば、確率分布としては、ポアソン分布、正規分布などが挙げられるが、本実施例においては、低分子数を含有する試料を想定するため、ポアソン分布を用いることが好ましい。
例えば、
図2に、試料中の核酸の分子数がポアソン分布に従う場合のヒストグラムの一例を示す。
図2で表されるポアソン分布の情報は、試料中の核酸の分子数に応じて、予め用意しておくことができ、確率分布取得工程では、取得時にその予め用意されたポアソン分布の情報を取得することができる。
【0020】
<検出精度能特定工程及び検出精度能特定部>
検出精度能特定工程は、既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて検査対象の核酸の検出精度能を特定する工程であり、検出精度能特定部により実施される。
検出精度能特定工程において、既知分子数の核酸が検出された確率と、確率分布とに基づいて検査対象の核酸の検出精度能が特定されることが好ましい。
既知分子数の核酸が検出された確率とは、標準物質に含まれている既知分子数の核酸の検出率を意味する。
検出率は、上述した検出率の情報取得工程及び検出率の情報取得部により取得することができる。
確率分布は、上述した確率分布取得工程及び確率分布取得により取得することができる。
【0021】
検出精度能とは、試料に含まれる検査対象の核酸が、検出される確率を示す。検出精度能は、検査対象の核酸の検出結果の信頼性を表している。
上記の検出結果は、純粋に装置及び試薬の性能だけを評価したものであり、実際には試料からサンプリングを行うときに発生する誤差が加わる。
試料サンプリング時に発生する誤差は、ランダムな確率分布に従うと考えられるため、特定分子数λ(分子数/サンプル)のときにはポアソン分布で表現される。
したがって、分子数kに対する不検出率をE(k)とすると、E(k)は本発明の標準物質を用いることにより実験的に求めることができる。このとき、kは0、1、2、3、・・・などの値である。
次に、特定の濃度λ(分子数/サンプル)の母集団からサンプル量だけサンプリングしたときに、試料中に含まれるDNAコピー数kは、下記数式(1)のポアソン分布P(k,λ)で表現される。
【数1】
よって、E(k)にサンプリングのばらつきP(k,λ)を、下記数式(2)に示すように重畳(畳み込み)積分することで、ある特定の濃度λにおける不検出精度能D(λ)が求まる。
【数2】
ただし、実際にはk=0からk=無限まで計算することは無く、ほとんどの場合k=5以上でP(k,λ)=0となるため、k=0から5程度まで計算すればよい。
【0022】
以上により、検出率の情報(
図1Bの結果)と、ポアソン分布(
図2の結果)とから、数式(2)を用いて、試料中の核酸の分子数毎の検出率を算出する。試料中の核酸の分子数に対する核酸の検出率の算出結果をプロットする。そのプロットした点を補完することにより、
図3に示すように、特定の濃度(サンプル中の平均分子数)と不検出精度能との関数としての検出精度能の曲線が得られる。このような検出精度能の曲線を、非特許文献2のようなPODの考え方に従って求めることは膨大な作業が必要であり現実的に不可能であった。しかし、本発明の手法により簡単に検出精度能の曲線を得ることができる。
【0023】
不検出精度能(又は検出精度能)が得られることにより、核酸の検出に際し、以下のように利用することができる。
不検出精度能の結果をもとに、検査対象の核酸が特定分子数で存在している確率が所定値であるときの検査対象の分子数を求める。
例えば、検出精度が95%以上の検出結果を特定しようとすると、
図4に示すように、不検出率が0.05のときの核酸の分子数を求めると、核酸の分子数は3.5という数値となる。
核酸の分子数が3.5以上であれば、その核酸の検出結果は、95%以上の精度であるということがいえる。つまり、所定の検出精度を有する核酸の検出結果を特定することができる。その所定の検出精度に対応する核酸の分子数は、その所定の検出精度を担保するための検出下限値を表している。上記の例でいえば、3.5分子数以上における検出結果に対して95%の検出精度を保証することができる。
【0024】
核酸の検出精度を評価する際、検出率(又は不検出率)の情報を利用することで、核酸や検査装置による誤差を除いた検出結果の評価を行うことができる。
また、核酸の検出精度を評価する際、確率分布を利用することで、試料のサンプリング時に発生する誤差を除いた検出結果の評価を行うことができる。
例えば、
図1Aに記載の結果からは、95%以上の検出率を有する細胞数は2であるという結果が得られる。しかし、これは検査装置及び試薬の性能だけを考慮して得られた結果となっており、試料のサンプリング時に発生する誤差は考慮されておらず、この検出結果の信頼性は十分とはいえない。また、性能の指標としての精度が非常に粗いことも問題として挙げられる。例えば、
図1Aに記載した結果に対して、細胞数1での検出率が90%で、細胞数2での検出率が100%のときにも、同じように95%以上の検出率を有する細胞数は2となってしまい、その違いを評価できない。
一方、
図4の結果から、95%以上の検出精度能を確保する核酸の分子数は、3.5分子数必要であることがわかる。つまり、核酸の分子数が3.5以上であれば、95%の検出精度を有する検出結果を高い信頼性で特定することができる。例えば、核酸の分子数が低分子数である場合、従来は、検出結果が信頼できるものであるか否か、それすら不明であったものが、本発明によれば、信頼性が高い結果を特定することができる。また、性能指標としての分解能も高く、分子数の検出下限値を小数点で算出することが可能である。
本発明によると、核酸の検出結果に対し、特に低分子数の核酸の検出結果に対しても、信頼性の高い検出結果、つまり、検出精度の高い結果を特定することができる。そして、低分子数の核酸の検出結果に対しても、特定した検出精度の高い結果に対して、その結果の信頼性を保証することができる。
【0025】
-核酸-
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、核酸の断片、あるいはこれら核酸又はその断片のアナログなども含まれる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNAなどが挙げられる。また、核酸としては、プラスミドも使用することができる。核酸は修飾又は変異されていてもよい。
核酸又は核酸断片のアナログとしては、核酸又は核酸断片に非核酸成分を結合させたもの、核酸又は核酸断片を蛍光色素や同位元素等の標識剤で標識したもの(例えば、蛍光色素や放射線同位体で標識されたプライマーやプローブ)、核酸又は核酸断片を構成するヌクレオチドの一部の化学構造を変化させたもの(例えば、ペプチド核酸など)などが挙げられる。これらは、生物から得られる天然物であっても又はそれらの加工物であってもよく、或いは、遺伝子組換技術を利用して製造されたものでも、また化学的に合成されたものでもよい。
【0026】
-担体-
核酸は、担体に担持された状態で扱うことが好ましい。担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、樹脂などが挙げられる。
細胞としては、遺伝子導入を行うことができる細胞であれば特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、前述の細胞種を問わず使用することができる。
核酸は、特定の塩基配列を有することが好ましい。特定とは、特に定められていることを意味する。
特定の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
核酸としては、使用する細胞由来の核酸であってもよく、遺伝子導入により導入された核酸であってもよい。核酸として、遺伝子導入により導入された核酸、及びプラスミドを使用する場合は、1細胞に1コピーの核酸が導入されていることを確認することが好ましい。1コピーの核酸が導入されていることの確認方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、PCR法、サザンブロット法などを用いて確認することができる。
【0028】
遺伝子導入の方法としては、特定の核酸配列が狙いの場所に狙いの分子数導入できれば特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、相同組換え、CRISPR/Cas9、TALEN、Zinc finger nuclease、Flip-in、Jump-inなどが挙げられる。これらの中でも、酵母菌の場合は、効率の高さ、及び制御のしやすさの点から、相同組換えが好ましい。
【0029】
--細胞--
細胞は、核酸を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
真核細胞としては、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、藻類、原生動物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞、真菌が好ましい。
【0031】
接着性細胞としては、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、組織や器官から直接採取した初代細胞を何代か継代させたものでもよく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分化した細胞、未分化の細胞などが挙げられる。
【0032】
分化した細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞;星細胞;クッパー細胞;血管内皮細胞;類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞;繊維芽細胞;骨芽細胞;砕骨細胞;歯根膜由来細胞;表皮角化細胞等の表皮細胞;気管上皮細胞;消化管上皮細胞;子宮頸部上皮細胞;角膜上皮細胞等の上皮細胞;乳腺細胞;ペリサイト;平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞;腎細胞;膵ランゲルハンス島細胞;末梢神経細胞、視神経細胞等の神経細胞;軟骨細胞;骨細胞などが挙げられる。
【0033】
未分化の細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞;単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞;iPS細胞などが挙げられる。
【0034】
真菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カビ、酵母菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞周期を調節することができ、1倍体を使用することができる点から、酵母菌が好ましい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
【0035】
酵母菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞周期をG1期に制御するフェロモン(性ホルモン)の感受性が増加したBar-1欠損酵母が好ましい。酵母菌がBar-1欠損酵母であると、細胞周期が制御できていない酵母菌の存在比率を低くすることができるため、ウェル内に収容された細胞の特定の核酸の数の増加等を防ぐことができる。
【0036】
原核細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真正細菌、古細菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
細胞としては、死細胞が好ましい。死細胞であると、分取後に細胞分裂が起こることを防ぐことができる。
細胞としては、光を受光したときに発光可能な細胞であることが好ましい。光を受光したときに発光可能な細胞であると、細胞の数を高精度に制御してウェル内に着弾させることができる。
受光とは、光を受けることを意味する。
光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
【0038】
--光を受光したときに発光可能な細胞--
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
【0039】
--蛍光色素--
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
【0040】
蛍光色素としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、商品名:EosinY(和光純薬工業株式会社製)、商品名:エバンスブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:トリパンブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン6G(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミンB(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン123(和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
--蛍光タンパク質--
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
--蛍光標識抗体--
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4-FITC、CD8-PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
細胞の体積平均粒径としては、遊離状態において、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。体積平均粒径が、100μm以下であれば、インクジェット法に好適に用いることができる。
【0044】
細胞の体積平均粒径としては、例えば、下記の測定方法で測定することができる。
作製した染色済み酵母分散液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せ、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いることにより体積平均粒径を測定することができる。なお、細胞数も同様の測定方法により求めることができる。
【0045】
細胞懸濁液における細胞の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5×104個/mL以上5×108個/mL以下が好ましく、5×104個/mL以上5×107個/mL以下がより好ましい。細胞数が、5×104個/mL以上5×108個/mL以下であると、吐出した液滴中に細胞を確実に含むことができる。細胞数としては、体積平均粒径の測定方法と同様にして、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いて測定することができる。
【0046】
核酸を有する細胞の細胞数は、複数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
本発明の検出精度特定プログラムによる処理は、検出精度特定装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行することができる。
以下、検出精度特定装置のハードウェア構成、及び機能構成について説明する。
【0048】
<検出精度特定装置のハードウェア構成>
図5は、検出精度特定装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5で示すように、検出精度特定装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、出力装置104、入力装置105、通信インターフェイス(通信I/F)106の各部を有する。これらの各部は、バス107を介してそれぞれ接続されている。
CPU101は、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU101は、主記憶装置102などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。即ち、CPU101は、本実施例では、検出精度特定プログラムを実行することにより、検出精度特定装置100の制御部130として機能する。
また、CPU101は、検出精度特定装置100全体の動作を制御する。尚、本実施例では、検出精度特定装置100全体の動作を制御する装置をCPU101としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。
【0049】
検出精度特定プログラムや各種データベースは、必ずしも主記憶装置102や、補助記憶装置103などに記憶されていなくともよい。インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを介して、検出精度特定装置100に接続される他の情報処理装置などに検出精度特定プログラムや各種データベースを記憶させてもよい。検出精度特定装置100がこれら他の情報処理装置から検出精度特定プログラムや各種データベースを取得して実行するようにしてもよい。
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶し、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。
主記憶装置102は、図示しない、ROM(Reed Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
ROMは、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶している。
RAMは、ROMに記憶された各種プログラムがCPU101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが挙げられる。また、補助記憶装置103は、例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。
【0050】
出力装置104は、ディスプレイやスピーカーなどを用いることができる。ディスプレイとしては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが挙げられる。
入力装置105は、検出精度特定装置100に対する各種要求を受け付けることができれば、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。
通信インターフェイス(通信I/F)106は、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
以上のようなハードウェア構成によって、検出精度特定装置100の処理機能を実現することができる。
【0051】
<検出精度特定装置の機能構成>
図6は、検出精度特定装置100の機能構成の一例を示す図である。
この
図6に示すように、検出精度特定装置100は、入力部110、出力部120、制御部130、記憶部140、を有する。
制御部130は、検出率の情報取得部131と、確率分布取得部132と、検出精度能特定部133と、を有する。制御部130は、検出精度特定装置100全体を制御する。
記憶部140は、検出率の情報データベース141と、確率分布データベース142と、検出精度能データベース143と、を有する。以下、「データベース」を「DB」と称することもある。
【0052】
検出率の情報取得部131は、記憶部140の検出率の情報DB141で記憶されている検出率の情報のデータを用い、検出率の情報を取得する。検出率の情報DB141には、例えば、上述したように予め実験により得られた検出率のデータが記憶されている。なお、後述する検査デバイスを用いる場合には、検査デバイスに紐付けられている検出率の情報が、検出率の情報DB141に記憶されていてもよい。DBへの入力は、検出精度特定装置100に接続される他の情報処理装置から行っても、作業者が行っても構わない。
確率分布取得部132は、記憶部140の確率分布DB142で記憶されている確率分布の情報のデータを用い、確率分布の情報を取得する。確率分布DB142には、例えば、予め用意された、ポアソン分布の情報が記憶されている。
検出精度能特定部133は、検出率の情報と、確率分布とを用いて、検査デバイスにおける試料中の検査対象を検出する際の検出精度能を特定する。なお、検出精度能を特定する具体的な手法は、上述したとおりである。
検出精度能特定部133において求められた検出精度能の算出結果(例えば、上記の例でいえば、
図3に示される検出精度能の結果)は、記憶部140の検出精度能DB143へ記憶される。
【0053】
次に、本発明の検出精度特定プログラムの処理手順を示す。
図7は、検出精度特定装置100の制御部130における検出精度特定プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS110では、検出精度特定装置100の制御部130の検出率の情報取得部131は、記憶部140の検出率の情報DB141に記憶された検出率の情報データを取得し、処理をS111に移行する。
ステップS111では、検出精度特定装置100の制御部130の確率分布取得部132は、記憶部140の確率分布DB142に記憶された確率分布の情報データを取得し、処理をS112に移行する。
ステップS112では、検出精度特定装置100の制御部130の検出精度能特定部133は、検出率の情報と、確率分布とを用いて、検査デバイスにおける試料中の検査対象の不検出率を算出し、検査対象を検出する際の検出精度能を特定し、処理をS113に移行する。
ステップS113では、検出精度特定装置100の制御部130は、検出精度能特定部133で得られた検出精度能の結果を、記憶部140の検出精度能DB143へ保存し、本処理を終了する。
【0055】
以下、本発明の検出精度特定プログラム、検出精度特定方法及び本発明の検出精度特定装置において用いられる検査デバイスについて説明する。
【0056】
<検査デバイス>
本発明で用いられる検査デバイスは、少なくとも1つのウェルを有し、識別手段、基材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0057】
<<ウェル>>
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、核酸を配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、基板上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、少なくとも1つであり、2以上の複数であることが好ましく、5以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
ウェルの数が2以上であるマルチウェルプレートが好適に用いられる。
マルチウェルプレートとしては、例えば、24、48、96、384、又は1,536のウェルプレートが挙げられる。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、10μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ウェルの色としては、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光などが挙げられる。
【0058】
<<基材>>
検査デバイスは、ウェルが基材に設けられたプレート状のものが好ましいが、8連チューブ等の連結タイプのウェルチューブであってもよい。
基材としては、その材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
プラスチックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板状、プレート状などが好ましい。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
【0059】
<<識別手段>>
検査デバイスは、検出率の情報を識別可能な識別手段を有することが好ましい。
識別手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
識別手段を設ける位置及び識別手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
識別手段に記憶させる情報としては、特定配列の核酸が各ウェルにおいて存在する分子数情報以外にも、例えば、細胞の数、作製日時、作製者の氏名などが挙げられる。
識別手段に記憶された情報は、各種読取手段を用いて読み取ることができ、例えば、識別手段がバーコードであれば読取手段としてバーコードリーダーが用いられる。
【0060】
識別手段に情報を書き込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手入力、ウェルに核酸を分注する際に核酸の個数を計数する液滴形成装置から直接データを書き込む方法、サーバに保存されているデータの転送、クラウドに保存されているデータの転送などが挙げられる。
【0061】
<<その他の部材>>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、密閉部材などが挙げられる。
【0062】
-密閉部材-
検査デバイスは、ウェルへの異物混入は充填物の流出などを防ぐために、密閉部材を有することが好ましい。
密閉部材としては、少なくとも1つのウェルを密閉可能であり、1つ1つのウェルを個別に密閉乃至開封できるように、切り取り線により切り離し可能に構成することが好ましい。
密閉部材の形状としては、ウェル内壁径と一致するキャップ状、又はウェル開口部を被覆するフィルム状であることが好ましい。
密閉部材の材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
密閉部材としては、全てのウェルを一度に密閉可能なフィルム状であることが好ましい。また、使用者の誤使用を低減化できるように再開封が必要なウェルと不必要なウェルとの接着強度が異なるように構成されていることが好ましい。
【0063】
ここで、既知分子数とは、ウェルに含まれる核酸のコピー数を意味する。なお、本発明における「既知分子数」の「既知」とは、各ウェル内の核酸の分子数が認識できる状態にあることを指す。
既知分子数は、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
既知分子数は、異なる2以上の整数であることが好ましい。
既知分子数としては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の場合、1、3、5、7、9の場合、2、4、6、8、10の場合などが挙げられる。
既知分子数は、異なる2水準以上が好ましく、10N水準(ただし、Nは連続した4以上の整数である)であることがより好ましく、例えば、1、10、100、1,000の4水準などが挙げられる。これにより、検査デバイスは検量線の作成が容易に行える。
【0064】
ウェルは、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基~30塩基の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、例えば、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5~9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる
【0065】
検査デバイスは、核酸の分子数が0のネガティブコントロールのウェル、核酸の分子数が10以上のポジティブコントロールのウェルを有していることが好ましい。
ネガティブコントロールで検出が検知されたとき、及びポジティブコントロールで不検出が検知されたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
【0066】
検査デバイスにより、特定分子の核酸の既知分子数が10以下においても、この検査デバイスを用いて核酸検出装置の不検出率を求めることができ、これまではできなかったPOD(Probability of Detection;検出能)、又は正確なLOD(limit of detection;検出限界)の算出が可能となる。
【0067】
ここで、
図8は、検査デバイス1の一例を示す斜視図である。
図9は、
図8の検査デバイス1の側面図である。検査デバイス1は、基材2に複数のウェル3が設けられており、ウェル3に特定分子の核酸4が既知分子数で充填されている。この検査デバイス1は既知分子数の情報が紐付けられている。なお、
図8及び
図9中5は、密閉部材である。
【0068】
図10は、検査デバイスの核酸を充填するウェルの位置の一例を示す図である。
図10中のウェル内の数字は核酸の既知分子数を表す。
図10中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
図11は、検査デバイスの核酸を充填するウェルの位置の他の一例を示す図である。
図11中のウェル内の数字は核酸の既知分子数を表す。
図11中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
【0069】
<検査デバイスの製造方法>
以下、特定の核酸を有する細胞を用いた検査デバイスの製造方法について説明する。
検査デバイスの製造方法は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を生成する細胞懸濁液生成工程と、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる液滴着弾工程と、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する細胞数計数工程と、ウェル内の細胞から核酸を抽出する核酸抽出工程と、検出率算出工程と、を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0070】
<<細胞懸濁液生成工程>>
細胞懸濁液生成工程は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を生成する工程である。
溶剤とは、細胞を分散させるために用いる液体を意味する。
細胞懸濁液における懸濁とは、細胞が溶剤中に分散して存在する状態を意味する。
生成とは、作り出すことを意味する。
【0071】
-細胞懸濁液-
細胞懸濁液は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含み、添加剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特定の核酸を有する複数の細胞については、上述したとおりである。
【0072】
--溶剤--
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、培養液、分離液、希釈液、緩衝液、有機物溶解液、有機溶剤、高分子ゲル溶液、コロイド分散液、電解質水溶液、無機塩水溶液、金属水溶液、及びこれらの混合液体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、緩衝液が好ましく、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris-EDTA緩衝液(TE)がより好ましい。
【0073】
--添加剤--
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、核酸、樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
界面活性剤は、細胞同士の凝集を防止し、連続吐出安定性を向上することができる。
【0075】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性及び失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0076】
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
【0077】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Triton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
【0078】
界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、細胞懸濁液全量に対して、0.001質量%以上30質量%以下が好ましい。含有量が、0.001質量%以上であると、界面活性剤の添加による効果を得ることができ、30質量%以下であると、細胞の凝集を抑制することができるため、細胞懸濁液中の核酸の分子数を厳密に制御することができる。
【0079】
核酸としては、検出対象の核酸の検出に影響しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ColE1 DNAなどが挙げられる。核酸であると、特定の塩基配列を有する核酸が、ウェルの壁面などに付着することを防ぐことができる。
【0080】
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンイミドなどが挙げられる。
【0081】
--その他の材料--
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、分散剤などが挙げられる。
【0082】
[細胞を分散する方法]
細胞を分散する方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーズミル等のメディア方式、超音波ホモジナイザー等の超音波方式、フレンチプレス等の圧力差を利用する方式などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから超音波方式がより好ましい。メディア方式では、解砕能力が強く、細胞膜や細胞壁を破壊する可能性やメディアがコンタミとして混入することがある。
【0083】
[細胞のスクリーニング方法]
細胞のスクリーニング方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式分級、セルソーター、フィルタによるスクリーニングなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから、セルソーター、フィルタによるスクリーニングが好ましい。
【0084】
細胞は、細胞の細胞周期を測定することにより、細胞懸濁液に含まれる細胞数から特定の配列を有する核酸の数を推定することが好ましい。
細胞周期を測定するとは、細胞分裂による細胞数を数値化することを意味する。
核酸の数を推定するとは、細胞数から、核酸のコピー数を求めることを意味する。
【0085】
計数対象が細胞数ではなく特定のDNA配列が何個入っているかであってもよい。通常は、特定のDNA配列は細胞1個につき1つの領域が入っていないものを選択する、あるいは遺伝子組み換えにより導入するため、特定のDNA配列の数は細胞数と等しいと考えてよい。ただし、細胞は特定の周期で細胞分裂を起こすために細胞内で核酸の複製が行われる。細胞周期は細胞の種類によって異なるが、細胞懸濁液から所定量の溶液を抜き取り複数細胞の周期を測定することによって、細胞1個中に含まれる特定の核酸数に対する期待値及びその確からしさを算出することが可能である。これは、例えば、核染色した細胞をフローサイトメーターによって観測することによって可能である。
確からしさとは、いくつかの事象の生じる可能性がある時、特定の1つの事象が起こる可能性の程度を事前に予測して、その事象の起こる確率を意味する。
算出とは、計算して求める数値を出すことを意味する。
【0086】
図12は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。
図12に示すように、ヒストグラム上でDNAの複製有無により2つのピークが現れるため、DNA複製済みの細胞がどの程度の割合で存在するかを算出することが可能である。この算出結果から1細胞中に含まれる平均的なDNA数を算出することが可能であり、前述の細胞数計数結果に乗じることにより、核酸の推定数を算出することが可能である。
また、細胞懸濁液を作製する前に細胞周期を制御する処理を行うことが好ましく、前述のような複製が起きる前、又は後の状態に揃えることによって、特定の核酸の数を細胞数からより精度良く算出することが可能になる。
【0087】
推定する核酸の数は、確からしさ(確率)を算出することが好ましい。確からしさ(確率)を算出することにより、これらの数値に基づき確からしさを分散又は標準偏差として表現して出力することが可能である。複数因子の影響を合算する場合には、一般的に用いられる標準偏差の二乗和平方根を用いることが可能である。例えば、因子として吐出した細胞数の正答率、細胞内のDNA数、吐出された細胞がウェル内に着弾する着弾率などを用いることができる。これらの中で影響の大きい項目を選択して算出することもできる。
【0088】
<<液滴着弾工程>>
液滴着弾工程は、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりウェルプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる工程である。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。
吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
順次とは、次々に順序どおりにすることを意味する。
着弾とは、液滴をウェルに到達させることを意味する。
【0089】
吐出手段としては、細胞懸濁液を液滴として吐出する手段(以下、「吐出ヘッド」とも称することがある)を好適に用いることができる。
【0090】
細胞懸濁液を液滴として吐出する方式としては、例えば、オンデマンド方式、コンティニュアス方式などが挙げられる。これらの中でもコンティニュアス方式の場合、安定的な吐出状態に至るまでの空吐出、液滴量の調整、ウェル間を移動する際にも連続的に液滴形成を行い続ける等の理由から、用いる細胞懸濁液のデッドボリュームが多くなる傾向にある。本発明では細胞数を調整する観点からデッドボリュームによる影響を低減させることが好ましく、そのため上記2つの方式では、オンデマンド方式の方がより好適である。
【0091】
オンデマンド方式としては、例えば、液体に圧力を加えることによって液体を吐出する圧力印加方式、加熱による膜沸騰によって液体を吐出するサーマル方式、静電引力によって液滴を引っ張ることによって液滴を形成する静電方式等の既知の複数の方式などが挙げられる。これらの中でも、以下の理由から、圧力印加方式が好ましい。
【0092】
静電方式は、細胞懸濁液を保持して液滴を形成する吐出部に対向して電極を設置する必要がある。デバイスの製造方法では、液滴を受けるためのプレートが対向して配置されており、プレート構成の自由度を上げるため電極の配置は無いほうが好ましい。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物やプレートの用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
【0093】
圧力印加方式としては、ピエゾ素子を用いて液体に圧力を加える方式、電磁バルブ等のバルブによって圧力を加える方式などが挙げられる。細胞懸濁液の液滴吐出に使用可能な液滴生成デバイスの構成例を
図13A~
図13Cに示す。
図13Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液室11a、細胞懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、
図13Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室11b、細胞懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、プレートの生成のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として
図13Cに示した構成などが挙げられる。
図13Cは、
図13Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。
図13Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室11c、細胞懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図13Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
【0094】
オンデマンド方式以外の方式としては、例えば、連続的に液滴を形成させるコンティニュアス方式などが挙げられる。コンティニュアス方式では、液滴を加圧してノズルから押し出す際に圧電素子やヒーターによって定期的なゆらぎを与え、それによって微小な液滴を連続的に作り出すことができる。更に、飛翔中の液滴の吐出方向を電圧を印加することによって制御することにより、ウェルに着弾させるか、回収部に回収するかを選ぶことも可能である。このような方式は、セルソーター、又はフローサイトメーターで用いられており、例えば、ソニー株式会社製の装置名:セルソーターSH800Zを用いることができる。
【0095】
図14Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。また、
図14Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。
図14Aは、液滴を形成するための駆動電圧を示す。電圧(V
A、V
B、V
C)の強弱により、液滴を形成することができる。
図14Bは、液滴の吐出を行わずに細胞懸濁液を撹拌するための電圧を示している。
【0096】
液滴を吐出しない期間中に、液滴を吐出するほどには強くない複数のパルスを入力することによって、液質内の細胞懸濁液を撹拌することが可能であり、細胞沈降による濃度分布の発生を抑制することができる。
【0097】
本発明において使用することができる吐出ヘッドの液滴形成動作に関して、以下に説明する。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。
図15A~
図15Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。
図15Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室11c内に保持された細胞懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。
次に、
図15Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。
最後に、
図15Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に細胞懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
【0098】
検査デバイスの生成方法では、ウェルが形成されたプレートを移動可能なステージ上に固定し、ステージの駆動と吐出ヘッドとからの液滴形成を組み合わせることにより、凹部に順次液滴を着弾させる。ここで、ステージの移動としてプレートを移動させる方法を示したが、当然のことながら吐出ヘッドを移動させてもよい。
【0099】
プレートとしては、特に制限はなく、バイオ分野において一般的に用いられるウェルが形成されたものを用いることが可能である。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
【0100】
図16は、プレートのウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置400の一例を示す概略図である。
図16に示すように、液滴を着弾させるための分注装置400は、液滴形成装置401と、プレート700と、ステージ800と、制御装置900とを有している。
【0101】
分注装置400において、プレート700は、移動可能に構成されたステージ800上に配置されている。プレート700には液滴形成装置401の吐出ヘッドから吐出された液滴310が着滴する複数のウェル710(凹部)が形成されている。制御装置900は、ステージ800を移動させ、液滴形成装置401の吐出ヘッドとそれぞれのウェル710との相対的な位置関係を制御する。これにより、液滴形成装置401の吐出ヘッドからそれぞれのウェル710中に順次、蛍光染色細胞350を含む液滴310を吐出することができる。
【0102】
制御装置900は、例えば、CPU、ROM、RAM、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、制御装置900の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。ただし、制御装置900の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御装置900は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0103】
吐出する液滴としては、ウェル内に細胞懸濁液を着弾させる際に、複数の水準を得るように液滴をウェル内に着弾させることが好ましい。
複数の水準とは、標準となる複数の基準を意味する。
複数の水準としては、ウェル内に特定の核酸を有する複数の細胞が所定の濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配を有することにより、検量線用試薬として好適に使用することができる。複数の水準は、センサによって計数される値を用いて制御することができる。
【0104】
プレートとしては、1穴マイクロチューブ、8連チューブ、96穴、384穴のウェルプレートなどを用いることが好ましいが、ウェルが複数である場合には、これらのプレートにおけるウェルには同じ個数の細胞を分注することも可能であるし、異なる水準の個数を入れることも可能である。また、細胞が含まれないウェルが存在していてもよい。特に核酸の量を定量的に評価するリアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の評価に用いるプレートを作成する際には、複数水準の数の核酸が分注されたものを用いることが好ましい。例えば、細胞(又は核酸)が、おおよそ1個、2個、4個、8個、16個、32個、64個の7水準で分注したプレートを作製することが考えられる。このようなプレートを用いることによって、リアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の定量性、線形性、評価下限値などを調べることが可能である。
【0105】
<<細胞数計数工程>>
細胞数計数工程は、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する工程である。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
計数とは、数を数えることを意味する。
【0106】
細胞数計数工程としては、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を含んでもよい。
【0107】
液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数の計数としては、液滴がプレートのウェルに確実に入ることが予測されるウェル開口部の直上の位置にあるタイミングにて液滴中の細胞を観測することが好ましい。
【0108】
液滴中の細胞を観測する方法としては、例えば、光学的に検出する方法、電気的・磁気的に検出方法などが挙げられる。
【0109】
-光学的に検出する方法-
図17、
図21、及び
図22を用いて、光学的に検出する方法に関して以下に述べる。
図17は、液滴形成装置401の一例を示す模式図である。
図21及び
図22は、液滴形成装置401A、401Bの他の一例を示す模式図である。
図17に示すように、液滴形成装置401は、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、光源30と、受光素子60と、制御手段70とを有する。
【0110】
図17では、細胞懸濁液として細胞を特定の色素によって蛍光染色した後に所定の溶液に分散した液を用いており、吐出ヘッドから形成した液滴に光源から発せられる特定の波長を有する光を照射し細胞から発せられる蛍光を受光素子によって検出することによって計数を行う。このとき、蛍光色素によって細胞を染色する方法に加え、細胞中に元々含まれる分子が発する自家蛍光を利用してもよいし、細胞に蛍光タンパク質(例えば、GFP(Green Fluorescent Protein))を生産するための遺伝子を予め導入しておき細胞が蛍光を発するようにしておいてもよい。
光を照射とは、光をあてることを意味する。
【0111】
吐出ヘッド10は、液室11と、メンブレン12と、駆動素子13とを有しており、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を液滴として吐出することができる。
【0112】
液室11は、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を保持する液体保持部であり、下面側には貫通孔であるノズル111が形成されている。液室11は、例えば、金属やシリコン、セラミック等から形成することができる。蛍光染色細胞350としては、蛍光色素によって染色された無機微粒子や有機ポリマー粒子などが挙げられる。
【0113】
メンブレン12は、液室11の上端部に固定された膜状部材である。メンブレン12の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
【0114】
駆動素子13は、メンブレン12の上面側に設けられている。駆動素子13の形状は、メンブレン12の形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12の平面形状が円形である場合には、円形の駆動素子13を設けることが好ましい。
【0115】
駆動素子13に駆動手段20から駆動信号を供給することにより、メンブレン12を振動させることができる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を、ノズル111から吐出させることができる。
【0116】
駆動素子13として圧電素子を用いる場合には、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段20から圧電素子の上下電極間に電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わり、メンブレン12を紙面上下方向に振動させることができる。圧電材料としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、或いはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
【0117】
光源30は、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。なお、飛翔中とは、液滴310が液滴吐出手段10から吐出されてから、着滴対象物に着滴するまでの状態を意味する。飛翔中の液滴310は、光Lが照射される位置では略球状となっている。また、光Lのビーム形状は略円形状である。
【0118】
ここで、液滴310の直径に対し、光Lのビーム直径が10倍~100倍程度であることが好ましい。これは、液滴310の位置ばらつきが存在する場合においても、光源30からの光Lを確実に液滴310に照射するためである。
【0119】
ただし、液滴310の直径に対し、光Lのビーム直径が100倍を大きく超えることは好ましくない。これは、液滴310に照射される光のエネルギー密度が下がるため、光Lを励起光として発する蛍光Lfの光量が低下し、受光素子60で検出し難くなるからである。
【0120】
光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましく、例えば、固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が好適に用いられる。光Lがパルス光である場合のパルス幅は10μs以下が好ましく、1μs以下がより好ましい。単位パルス当たりのエネルギーとしては、集光の有無等、光学系に大きく依存するが、概ね0.1μJ以上が好ましく、1μJ以上がより好ましい。
【0121】
受光素子60は、飛翔中の液滴310に蛍光染色細胞350が含有されていた場合に、蛍光染色細胞350が光Lを励起光として吸収して発する蛍光Lfを受光する。蛍光Lfは、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられるため、受光素子60は蛍光Lfを受光可能な任意の位置に配置することができる。この際、コントラストを向上するため、光源30から出射される光Lが直接入射しない位置に受光素子60を配置することが好ましい。
【0122】
受光素子60は、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光できる素子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液滴に特定の波長を有する光を照射して液滴内の細胞からの蛍光を受光する光学センサが好ましい。受光素子60としては、例えば、フォトダイオード、フォトセンサ等の1次元素子が挙げられるが、高感度な測定が必要な場合には、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードを用いることが好ましい。受光素子60として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCD等の2次元素子を用いてもよい。
【0123】
なお、光源30が発する光Lと比較して蛍光染色細胞350の発する蛍光Lfが弱いため、受光素子60の前段(受光面側)に光Lの波長域を減衰させるフィルタを設置してもよい。これにより、受光素子60において、非常にコントラストの高い蛍光染色細胞350の画像を得ることができる。フィルタとしては、例えば、光Lの波長を含む特定波長域を減衰させるノッチフィルタ等を用いることができる。
【0124】
また、前述のように、光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましいが、光源30から発せられる光Lを連続発振の光としてもよい。この場合には、連続発振の光が飛翔中の液滴310に照射されるタイミングで受光素子60が光を取り込み可能となるように制御し、受光素子60に蛍光Lfを受光させることが好ましい。
【0125】
制御手段70は、駆動手段20及び光源30を制御する機能を有している。また、制御手段70は、受光素子60が受光した光量に基づく情報を入手し、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する機能を有している。以下、
図18~
図20を参照し、制御手段70の動作を含む液滴形成装置401の動作について説明する。
【0126】
図18は、
図17の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。
図19は、
図17の液滴形成装置の制御手段の機能ブロックを例示する図である。
図20は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0127】
図18に示すように、制御手段70は、CPU71と、ROM72と、RAM73と、I/F74と、バスライン75とを有している。CPU71、ROM72、RAM73、及びI/F74は、バスライン75を介して相互に接続されている。
【0128】
CPU71は、制御手段70の各機能を制御する。記憶手段であるROM72は、CPU71が制御手段70の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM73は、CPU71のワークエリア等として使用される。また、RAM73は、所定の情報を一時的に記憶することができる。I/F74は、液滴形成装置401を他の機器等と接続するためのインターフェイスである。液滴形成装置401は、I/F74を介して、外部ネットワーク等と接続されてもよい。
【0129】
図19に示すように、制御手段70は、機能ブロックとして、吐出制御手段701と、光源制御手段702と、細胞数計数手段(細胞数検知手段)703とを有している。
【0130】
図19及び
図20を参照しながら、液滴形成装置401の粒子数計数について説明する。
まず、ステップS11において、制御手段70の吐出制御手段701は、駆動手段20に吐出の指令を出す。吐出制御手段701から吐出の指令を受けた駆動手段20は、駆動素子13に駆動信号を供給してメンブレン12を振動させる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310が、ノズル111から吐出される。
【0131】
次に、ステップS12において、制御手段70の光源制御手段702は、液滴310の吐出に同期して(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号に同期して)光源30に点灯の指令を出す。これにより、光源30が点灯し、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。
【0132】
なお、ここで、同期するとは、液滴吐出手段10による液滴310の吐出と同時に(駆動手段20が液滴吐出手段10に駆動信号を供給するのと同時に)発光することではなく、液滴310が飛翔して所定位置に達したときに液滴310に光Lが照射されるタイミングで、光源30が発光することを意味する。つまり、光源制御手段702は、液滴吐出手段10による液滴310の吐出(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号)に対して、所定時間だけ遅延して発光するように光源30を制御する。
【0133】
例えば、液滴吐出手段10に駆動信号を供給した際に吐出する液滴310の速度vを予め測定しておく。そして、測定した速度vに基づいて液滴310が吐出されてから所定位置まで到達する時間tを算出し、液滴吐出手段10に駆動信号を供給するタイミングに対して、光源30が光を照射するタイミングをtだけ遅延させる。これにより、良好な発光制御が可能となり、光源30からの光を確実に液滴310に照射することができる。
【0134】
次に、ステップS13において、制御手段70の細胞数計数手段703は、受光素子60からの情報に基づいて、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する。ここで、受光素子60からの情報とは、蛍光染色細胞350の輝度値(光量)や面積値である。
【0135】
細胞数計数手段703は、例えば、受光素子60が受光した光量と予め設定された閾値とを比較して、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。この場合には、受光素子60として1次元素子を用いても2次元素子を用いても構わない。
【0136】
受光素子60として2次元素子を用いる場合は、細胞数計数手段703は、受光素子60から得られた2次元画像に基づいて、蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積を算出するための画像処理を行う手法を用いてもよい。この場合、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。
【0137】
なお、蛍光染色細胞350は、細胞や染色細胞であってもよい。染色細胞とは、蛍光色素によって染色された細胞、又は、蛍光タンパク質を発現可能な細胞を意味する。
【0138】
染色細胞において、蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類、アゾ類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
このように、液滴形成装置401では、蛍光染色細胞350を縣濁した細胞懸濁液300を保持する液滴吐出手段10に、駆動手段20から駆動信号を供給して、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を吐出させ、飛翔中の液滴310に光源30から光Lを照射する。そして、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350が光Lを励起光として蛍光Lfを発し、蛍光Lfを受光素子60が受光する。更に、受光素子60からの情報に基づいて、細胞数計数手段703が、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を計数(カウント)する。
【0140】
つまり、液滴形成装置401では、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を実際にその場で観察するため、蛍光染色細胞350の個数の計数精度を従来よりも向上することが可能となる。又、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350に光Lを照射して蛍光Lfを発光させて蛍光Lfを受光素子60で受光するため、高いコントラストで蛍光染色細胞350の画像を得ることが可能となり、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を低減できる。
【0141】
図21は、
図17の液滴形成装置401の変形例を示す模式図である。
図21に示すように、液滴形成装置401Aは、受光素子60の前段にミラー40を配置した点が、液滴形成装置401(
図17参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0142】
このように、液滴形成装置401Aでは、受光素子60の前段にミラー40を配置したことにより、受光素子60のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0143】
例えば、ノズル111と着滴対象物を近づけた際に、
図17のレイアウトでは着滴対象物と液滴形成装置401の光学系(特に受光素子60)との干渉が発生するおそれがあるが、
図21のレイアウトにすることで、干渉の発生を回避することができる。
【0144】
図21に示すように、受光素子60のレイアウトを変更することにより、液滴310が着滴する着滴対象物とノズル111との距離(ギャップ)を縮めることが可能となり、着滴位置のばらつきを抑制することができる。その結果、分注の精度を向上することが可能となる。
【0145】
図22は、
図17の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。
図22に示すように、液滴形成装置401Bは、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lf
1を受光する受光素子60に加え、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lf
2を受光する受光素子61を設けた点が、液滴形成装置401(
図17参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0146】
ここで、蛍光Lf1及びLf2は、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられる蛍光の一部を示している。受光素子60及び61は、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる任意の位置に配置することができる。なお、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる位置に3つ以上の受光素子を配置してもよい。又、各受光素子は同一仕様としてもよいし、異なる仕様としてもよい。
【0147】
受光素子が1つであると、飛翔する液滴310に複数個の蛍光染色細胞350が含まれる場合に、蛍光染色細胞350同士が重なることに起因して、細胞数計数手段703が液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を誤計数する(カウントエラーが発生する)おそれがある。
【0148】
図23A及び
図23Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光染色細胞が含まれる場合を例示する図である。例えば、
図23Aに示すように、蛍光染色細胞350
1と350
2とに重なりが発生する場合や、
図23Bに示すように、蛍光染色細胞350
1と350
2とに重なりが発生しない場合があり得る。受光素子を2つ以上設けることで、蛍光染色細胞が重なる影響を低減することが可能である。
【0149】
前述のように、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光粒子の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光粒子の個数を計数することができる。
【0150】
受光素子を2つ以上設置する場合,それぞれの受光素子から得られる輝度値或いは面積値のうち、最大値を示すデータを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能である。これに関して、
図24を参照して、より詳しく説明する。
【0151】
図24は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。
図24に示すように、液滴内の粒子同士の重なりがない場合には、Le=Liとなる。例えば、細胞1個の輝度値をLuとすると、細胞数/滴=1個の場合はLe=Luであり、粒子数/滴=n個の場合はLe=nLuである(n:自然数)。
【0152】
しかし、実際には、nが2以上の場合には粒子同士の重なりが発生し得るため、実測される輝度値はLu≦Le≦nLu(
図24の網掛部分)となる。そこで、細胞数/滴=n個の場合、例えば閾値を(nLu-Lu/2)≦閾値<(nLu+Lu/2)と設定することができる。そして、複数の受光素子を設置する場合、それぞれの受光素子から得られたデータのうち最大値を示すものを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能となる。なお、輝度値に代えて面積値を用いてもよい。
【0153】
また、受光素子を複数設置する場合、得られる複数の形状データを基に、細胞数を推定するアルゴリズムにより粒子数を決定づけてもよい。
このように、液滴形成装置401Bでは、蛍光染色細胞350が異なる方向に発した蛍光を受光する複数の受光素子を有しているため、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を更に低減できる。
【0154】
図25は、
図17の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。
図25に示すように、液滴形成装置401Cは、液滴吐出手段10が液滴吐出手段10Cに置換された点が、液滴形成装置401(
図17参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0155】
液滴吐出手段10Cは、液室11Cと、メンブレン12Cと、駆動素子13Cとを有している。液室11Cは、液室11C内を大気に開放する大気開放部115を上部に有しており、細胞懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部115から排出可能に構成されている。
【0156】
メンブレン12Cは、液室11Cの下端部に固定された膜状部材である。メンブレン12Cの略中心には貫通孔であるノズル121が形成されており、液室11Cに保持された細胞懸濁液300はメンブレン12Cの振動によりノズル121から液滴310として吐出される。メンブレン12Cの振動の慣性により液滴310を形成するため、高表面張力(高粘度)の細胞懸濁液300でも吐出が可能である。メンブレン12Cの平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
【0157】
メンブレン12Cの材質としては特に限定はないが、柔らか過ぎるとメンブレン12Cが簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さがある材質を用いることが好ましい。メンブレン12Cの材質としては、例えば、金属材料やセラミック材料、ある程度硬さのある高分子材料等を用いることができる。
【0158】
特に、蛍光染色細胞350として細胞を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料であることが好ましい。細胞の付着性は一般的に材質の水との接触角に依存性があると言われており、材質の親水性が高い又は疎水性が高いときには細胞の付着性が低い。親水性の高い材料としては各種金属材料やセラミック(金属酸化物)を用いることが可能であり、疎水性が高い材料としてはフッ素樹脂等を用いることが可能である。
【0159】
このような材料の他の例としては、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム等や、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等を挙げることができる。これ以外にも、材料表面をコーティングすることで細胞接着性を低下させることも考えられる。例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば、日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることが可能である。
【0160】
ノズル121は、メンブレン12Cの略中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。この場合、ノズル121の径としては特に限定はないが、蛍光染色細胞350がノズル121に詰まることを避けるため、蛍光染色細胞350の大きさの2倍以上とすることが好ましい。蛍光染色細胞350が例えば動物細胞、特にヒトの細胞である場合、ヒトの細胞の大きさは一般的に5μm~50μm程度であるため、ノズル121の径を、使用する細胞に合わせて10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
【0161】
一方で、液滴が大きくなり過ぎると微小液滴を形成するという目的の達成が困難となるため、ノズル121の径は200μm以下であることが好ましい。つまり、液滴吐出手段10Cにおいては、ノズル121の径は、典型的には10μm~200μmの範囲となる。
【0162】
駆動素子13Cは、メンブレン12Cの下面側に形成されている。駆動素子13Cの形状は、メンブレン12Cの形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12Cの平面形状が円形である場合には、ノズル121の周囲に平面形状が円環状(リング状)の駆動素子13Cを形成することが好ましい。駆動素子13Cの駆動方式は、駆動素子13と同様とすることができる。
【0163】
駆動手段20は、メンブレン12Cを振動させて液滴310を形成する吐出波形と、液滴310を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させる撹拌波形とを駆動素子13Cに選択的に(例えば、交互に)付与することができる。
【0164】
例えば、吐出波形及び撹拌波形を何れも矩形波とし、吐出波形の駆動電圧よりも撹拌波形の駆動電圧を低くすることで、撹拌波形の印加により液滴310が形成されないようにすることができる。つまり、駆動電圧の高低により、メンブレン12Cの振動状態(振動の程度)を制御することができる。
【0165】
液滴吐出手段10Cでは、駆動素子13Cがメンブレン12Cの下面側に形成されているため、駆動素子13Cによりメンブレン12が振動すると、液室11Cの下部方向から上部方向への流れを生じさせることが可能である。
【0166】
この時、蛍光染色細胞350の動きは下から上への運動となり、液室11C内で対流が発生して蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300の撹拌が起きる。液室11Cの下部方向から上部方向への流れにより、沈降、凝集した蛍光染色細胞350が液室11Cの内部に均一に分散する。
【0167】
つまり、駆動手段20は、吐出波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300をノズル121から液滴310として吐出させることができる。又、駆動手段20は、撹拌波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300を撹拌することができる。なお、撹拌時には、ノズル121から液滴310は吐出されない。
【0168】
このように、液滴310を形成していない間に細胞懸濁液300を撹拌することにより、蛍光染色細胞350がメンブレン12C上に沈降、凝集することを防ぐと共に、蛍光染色細胞350を細胞懸濁液300中にムラなく分散させることができる。これにより、ノズル121の詰まり、及び吐出する液滴310中の蛍光染色細胞350の個数のばらつきを抑えることが可能となる。その結果、蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300を、長時間連続して安定的に液滴310として吐出することができる。
【0169】
また、液滴形成装置401Cにおいて、液室11C内の細胞懸濁液300中に気泡が混入する場合がある。この場合でも、液滴形成装置401Cでは、液室11Cの上部に大気開放部115が設けられているため、細胞懸濁液300中に混入した気泡を、大気開放部115を通じて外気に排出できる。これによって、気泡排出のために大量の液を捨てることなく、連続して安定的に液滴310を形成することが可能となる。
【0170】
即ち、ノズル121の近傍に気泡が混入した場合や、メンブレン12C上に多数の気泡が混入した場合には吐出状態に影響を及ぼすため、長い時間安定的に液滴の形成を行うためには、混入した気泡を排出する必要がある。通常、メンブレン12C上に混入した気泡は、自然に若しくはメンブレン12Cの振動によって上方に移動するが、液室11Cには大気開放部115が設けられているため、混入した気泡を大気開放部115から排出可能となる。そのため、液室11Cに気泡が混入しても不吐出が発生することを防止可能となり、連続して安定的に液滴310を形成することができる。
【0171】
なお、液滴を形成しないタイミングで、液滴を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させ、積極的に気泡を液室11Cの上方に移動させてもよい。
【0172】
-電気的又は磁気的な検出する方法-
電気的又は磁気的な検出する方法としては、
図26に示すように、液室11’から細胞懸濁液を液滴310’としてプレート700’に吐出する吐出ヘッドの直下に、細胞計数のためのコイル200がセンサとして設置されている。細胞は特定のタンパク質によって修飾され細胞に接着することが可能な磁気ビーズによって覆うことにより、磁気ビーズが付着した細胞がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の細胞の有無を検出することが可能である。一般的に、細胞はその表面に細胞特有のタンパク質を有しており、このタンパク質に接着することが可能な抗体を磁気ビーズに修飾することによって、細胞に磁気ビーズを付着させることが可能である。このような磁気ビーズとしては既製品を用いることが可能であり、例えば、株式会社ベリタス製のDynabeads(商標登録)が利用可能である。
【0173】
[吐出前に細胞を観測する処理]
吐出前に細胞を観測する処理としては、
図27に示すマイクロ流路250中を通過してきた細胞350’をカウントする方法や、
図28に示す吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法などが挙げられる。
図27はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800Zを用いることができる。
図27では、マイクロ流路250中に光源260からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ265を用いて検出器255により検出することによって細胞の有無や、細胞の種類を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路250中に通過した細胞の数から所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することが可能である。
また、
図28に示す吐出ヘッド10’としては、Cytena社製のシングルセルプリンターを用いることが可能である。
図28では、吐出前において、ノズル部近傍をレンズ265’を介して、画像取得部255’において画像取得した結果からノズル部近傍の細胞350”が吐出されたと推定することや、吐出前後の画像から差分により吐出されたと考えられる細胞の数を推定することによって、所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することができる。
図27に示すマイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法では、液滴が連続的に生成されるのに対して、
図28は、オンデマンドで液滴形成が可能であるため、より好ましい。
【0174】
[着弾後の細胞をカウントする処理]
着弾後の細胞をカウントする処理としては、プレートにおけるウェルを蛍光顕微鏡などにより観測することにより、蛍光染色した細胞を検出する方法を取ることが可能である。この方法は、例えば、Sangjun et al.,PLoS One,Volume 6(3),e17455などに記載されている。
【0175】
液滴の吐出前及び着弾後に、細胞を観測する方法では、以下に述べる問題があるが、生成するプレートの種類によっては吐出中の液滴内の細胞を観測することがもっとも好ましい。吐出前に細胞を観測する手法においては、流路中を通過した細胞数や吐出前(及び吐出後)の画像観測から、着弾したと思われる細胞数を計数するため、実際にその細胞が吐出されたのかどうかの確認は行われておらず、思いがけないエラーが発生することがある。例えば、ノズル部が汚れていることにより液滴が正しく吐出せず、ノズルプレートに付着し、それに伴い液滴中の細胞も着弾しない、といったケースが発生する。他にも、ノズル部の狭い領域に細胞が残留することや、細胞が吐出動作によって想定以上に移動し観測範囲外に出てしまうといった問題の発生も起こりうる。
また、着弾後のプレート上の細胞を検出する手法においても問題がある。まず、プレートとして顕微鏡観察が可能であるものを準備する必要がある。観測可能なプレートとして、一般的に底面が透明かつ平坦なプレート、特に底面がガラス製となっているプレートが用いられるが、特殊なプレートとなってしまうため、一般的なウェルを使用することができなくなる問題がある。また、細胞数が数十個など多いときには、細胞の重なりが発生するため正確な計数ができなくなる問題もある。そのため、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサ及び粒子数(細胞数)計数手段によって計数することに加えて、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を行うことが好ましい。
【0176】
また、受光素子としては1又は少数の受光部を有する受光素子、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管を用いることが可能であるし、その他に2次元アレイ状に受光素子が設けられたCCD(Charge Copuled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCDなど二次元センサを用いることも可能である。
1又は少数の受光部を有する受光素子を用いる際には、蛍光強度から細胞が何個入っているかを予め用意された検量線を用いて決定することも考えられるが、主として飛翔液滴中の細胞有無を二値的に検出することが行われる。細胞懸濁液の細胞濃度が十分に低く、液滴中に細胞が1個又は0個しかほぼ入らない状態で吐出を行う際には、二値的な検出で十分精度よく計数を行うことが可能である。細胞懸濁液中で細胞はランダムに配置していることを前提とすれば、飛翔液滴中の細胞数はポアソン分布に従うと考えられ、液滴中に細胞数が2個以上入る確率P(>2)は下記式(1)で表される。
図29は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。ここで、λは液滴中の平均細胞数であり、細胞懸濁液中の細胞濃度に吐出液滴の体積を乗じたものになる。
P(>2)=1-(1+λ)×e
-λ ・・・ 式(1)
【0177】
二値的な検出で細胞計数を行う場合には、確率P(>2)が十分小さい値であることが精度を確保する上では好ましく、確率P(>2)が1%以下となるλ<0.15であることが好ましい。光源としては、細胞の蛍光を励起できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水銀ランプやハロゲンランプなどの一般的なランプに特定の波長を照射するようにフィルタをかけたものや、LED(Light Emitting Diode)、レーザーなどを用いることが可能である。ただし、特に1nL以下の微小な液滴を形成するときには、狭い領域に高い光強度を照射する必要があるため、レーザーを用いるのが好ましい。レーザー光源としては、固体レーザーやガスレーザー、半導体レーザーなど一般的に知られている多種のレーザーを用いることが可能である。また、励起光源としては、液滴が通過する領域を連続的に照射したものであってもよいし、液滴の吐出に同期して液滴吐出動作に対して所定時間遅延を付けたタイミングでパルス的に照射するものであってもよい。
【0178】
<<細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程>>
細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程は、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程それぞれの工程における確からしさを算出する工程である。
当該推定する核酸の数の確からしさの算出は、細胞懸濁液生成工程における確からしさと同様に算出することができる。
なお、確からしさの算出タイミングは、細胞数計数工程の次工程で、纏めて算出してもよいし、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程の各工程の最後に算出し、細胞数計数工程の次工程で各不確かさを合成して算出してもよい。言い換えれば、上記各工程での確からしさは、合成算出までに適宜算出しておけばよい。
【0179】
<<出力工程>>
出力工程は、ウェル内に着弾した細胞懸濁液に含まれる細胞数を、センサにより測定された検出結果に基づいて粒子数計数手段にて計数された値を出力する工程である。
計数された値とは、センサにより測定された検出結果から、粒子数計数手段にて当該ウェルに含まれる細胞数を意味する。
出力とは、原動機、通信機、計算機などの装置が入力を受けて計数された値を外部の計数結果記憶手段としてのサーバに電子情報として送信することや、計数された値を印刷物として印刷することを意味する。
【0180】
出力工程は、プレートの生成時に、プレートにおける各ウェルの細胞数又は核酸数を観察又は推測し、観測値又は推測値、外部の記憶部に出力する。
出力は、細胞数計数工程と同時に行ってもよく、細胞数計数工程の後に行ってもよい。
【0181】
<<記録工程>>
記録工程は、出力工程において、出力された観測値又は推測値を記録する工程である。
記録工程は、記録部において好適に実施することができる。
記録は、出力工程と同時に行ってもよく、出力工程の後に行ってもよい。
記録とは、記録媒体に情報を付与することだけでなく、記録部に情報を保存することも含む意味である。
【0182】
<<核酸抽出工程>>
核酸抽出工程は、ウェル内の細胞から核酸を抽出する工程である。
抽出とは、細胞膜や細胞壁などを破壊し、核酸をぬき出すことを意味する。
【0183】
細胞から核酸を抽出する方法としては、90℃~100℃で熱処置する方法が知られている。90℃以下で熱処理するとDNAが抽出されない可能性があり、100℃以上で熱処理するとDNAが分解される可能性がある。このとき界面活性剤を添加し熱処理することが好ましい。
【0184】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性・失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0185】
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
【0186】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Totiton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
【0187】
界面活性剤の含有量としては、ウェル中の細胞懸濁液全量に対して、0.01質量%以上5.00質量%以下が好ましい。含有量が、0.01質量%以上であると、DNA抽出に対して効果を発揮でき、5.00質量%以下であると、PCRの際に増幅の阻害を防止することができるため、両方の効果を得られる数値範囲として上記0.01質量%以上5.00質量%以下が好適である。
細胞壁を保有している細胞に関しては、上記の方法で十分にDNA抽出されないことがある。その場合、例えば、浸透圧ショック法、凍結融解法、酵素消化法、DNA抽出用キットの使用、超音波処理法、フレンチプレス法、ホモジナイザーなどの方式などが挙げられる。これらの中でも、抽出DNAのロスが少ないことから、酵素消化法が好ましい。
【0188】
<<検出率算出工程>>
検出率の情報は、例えば、標準物質として、ウェルプレートを用いる場合に、そのウェルに含まれている核酸を増幅処理することにより、増幅処理後の核酸の分子数を検出し、その実験により得られた分子数と、既知の分子数とを比較することで得ることができる。
実験により、ウェルに含まれている核酸を検出できた場合は、ウェルプレートのウェルに核酸が存在しているとする。一方、核酸が検出できなかった場合は、ウェルプレートのウェルには核酸が存在していない(非検出である)とする。
【0189】
検出率算出は、具体的には、以下のようにして行うことができる。
ウェルプレートのウェルに含まれている1~4の細胞に対し、リアルタイムPCR(polymerase chain reaction)法によって、核酸の増幅及び検出を行った。検出結果を
図1Aに示す。なお、本実施例においては、1つの細胞に含まれている核酸は1つである。したがって、細胞の数=核酸の分子数=DNAのコピー数の関係が成り立っている。
21個の核酸を有するウェルプレートを用い、分子数が1~4の核酸に対し、核酸の検出を行い核酸の有無を確認する実験を行った。検出数を
図1Aに記載した。また、その検出数をもとに、検出率(%)を求めることができる。
【0190】
<<その他の工程>>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素失活工程などが挙げられる。
【0191】
-酵素失活工程-
酵素失活工程は、酵素を失活させる工程である。
酵素としては、例えば、DNase、RNase、核酸抽出工程において核酸を抽出するために使用した酵素などが挙げられる。
酵素を失活させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を好適に用いることができる。
【0192】
本発明の検査デバイスは、バイオ関連産業、ライフサイエンス産業、及び医療産業等において幅広く使用され、例えば、装置構成や検量線作成、検査装置の精度管理などに好適に用いることができる。
検査デバイスとしては、感染症に対して実施する場合は公定法や通知法などに定められている方法に適用することができる、
【実施例】
【0193】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0194】
<検査デバイスの作製>
以下のようにして、検査デバイスを作製した。
-遺伝子組換え酵母-
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。特定核酸配列は濃厚核酸試料 DNA600-G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205-a)とし、選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。
【0195】
-培養及び細胞周期制御-
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN-630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190-144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1-Mating Factor acetate salt(Sigma-Aldrich社製、T6901-5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次に、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR-23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。
【0196】
-固定化-
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO-50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062-01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより固定化済みの酵母懸濁液を得た。
【0197】
-核染色-
まず、固定化済みの酵母懸濁液は、固定化済み酵母懸濁液を200μL分取し、DPBSで一回洗浄した後、480μLのDPBSに再懸濁した。
次に、20μLの20mg/ml RNase A(株式会社ニッポンジーン製、318-06391)を添加後、バイオシェイカーを用いて37℃で2時間インキュベートした。
次に、25μLの20mg/mlプロテイナーゼK(タカラバイオ株式会社製、TKRー9034)を添加し、プチクール(ワケンビーテック株式会社製、プチクール MiniTーC)を用いて50℃で2時間インキュベートした。
最後に、6μLの5mM SYTOX Green Nucleic Acid Stain(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、S7020)を加えて、遮光下で30分間染色した。
【0198】
-分散-
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理して酵母懸濁インクを得た。
【0199】
-分注及び細胞計測-
以下のようにして、液滴中の酵母数を計数(カウント)して、細胞数が既知のプレートを作製した。具体的には、
図22に示す液滴形成装置を用いて、96プレート(商品名:MicroAmp 96-well Reaction plate、Thermofisher社製)の各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE-532-200-KE)を用い、撮影した画像の粒子計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、1~4細胞数の既知プレートを作製した。
【0200】
-核酸抽出-
Tris-EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312-00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665-55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、37.2℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、ウェルプレートを作製した。
【0201】
作製したウェルプレートを用いて、各細胞数の検出率の算出を行った。細胞数が1から4のそれぞれについて21個のサンプルに対してリアルタイムPCRで増幅及び検出を行った。リアルタイムPCRで測定するために、まず、ウェルプレート中の各サンプルに対して、マスターミックス(Thermo Fisher社製、TaqMan Universal PCR Master Mix)1μL、特定のDNA配列を増幅するためのフォワードプリマー及びリバースプライマーをそれぞれ0.5nmol、プローブ0.4nmolを加えた。その後、リアルタイムPCR装置(Thermo Fisher社製、QuantStudio 7Flex)を用いて増幅及び検出を行った。
リアルタイムPCRで細胞数の存在が確認できた検出数、及び検出率を、表1に示した。
【0202】
【0203】
<試料中の検査対象を検出する際の検出精度能の特定>
ただし、上記検出率の結果は純粋に装置及び試薬の性能だけを評価したものであり、現実的には試料からサンプリングを行うときに発生する誤差が加わる。
試料サンプリング時に発生する誤差は、ランダムな分布に従うと考えられるため、特定分子数λ(分子数/サンプル)のときにはポアソン分布で表現される。
したがって、分子数kに対する不検出率をE(k)とすると、E(k)は本発明の標準物質を用いることで実験的に求めることができる。このとき、kは0、1、2、3、・・・などの値である。
次に、特定の濃度λ(分子数/サンプル)の母集団からサンプル量だけサンプリングしたときに、試料中に含まれるDNAコピー数kは、下記数式(1)のポアソン分布P(k,λ)で表現される。
【数1】
よって、E(k)にサンプリングのばらつきP(k,λ)を、下記数式(2)に示すように重畳(畳み込み)積分することで、ある特定の濃度λにおける不検出精度能D(λ)が求まる。
【数2】
ただし、実際にはk=0からk=無限まで計算することは無く、ほとんどの場合k=5以上でP(k,λ)=0となるため、k=0から5程度まで計算すればよい。
【0204】
以上により、表1の検出率の情報と、ポアソン分布とを用いて、検査デバイスにおける試料中の検査対象の核酸を検出する際の検出精度能を特定した。結果を
図4に示した。
図4の結果から、95%以上の検出精度能を確保できる核酸の分子数は、3.5分子数必要であることがわかる。つまり、核酸の分子数が3.5以上であれば、95%の検出精度能を有する検出結果を高い信頼性で特定することができる。
【0205】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定方法であって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定工程を、
含むことを特徴とする検出精度特定方法である。
<2> 前記検出精度能特定工程において、前記既知分子数の核酸が検出された確率と、確率分布とに基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能が特定される前記<1>に記載の検出精度特定方法である。
<3> 前記確率分布が、ポアソン分布である前記<2>に記載の検出精度特定方法である。
<4> 前記既知分子数の核酸の分子数が、10以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の検出精度特定方法である。
<5> 前記既知分子数の核酸の分子数が、異なる2以上の整数である前記<1>から<4>のいずれかに記載の検出精度特定方法である。
<6> 前記既知分子数の核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<1>から<5>のいずれかに記載の検出精度特定方法である。
<7> 前記細胞が酵母である前記<6>に記載の検出精度特定方法である。
<8> 検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定装置であって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する検出精度能特定手段を
有することを特徴とする検出精度特定装置である。
<9> 前記検出精度能特定手段において、前記既知分子数の核酸が検出された確率と、確率分布とに基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能が特定される前記<8>に記載の検出精度特定装置である。
<10> 検査対象の核酸を検出する際の検出精度を特定する検出精度特定プログラムであって、
既知分子数の核酸が含まれる標準物質を用い、前記既知分子数の核酸が検出された確率に基づいて前記検査対象の核酸の検出精度能を特定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする検出精度特定プログラムである。
【0206】
前記<1>から<7>のいずれかに記載の検出精度特定方法、前記<8>から<9>のいずれかに記載の検出精度特定装置、及び前記<10>に記載の検出精度特定プログラムは、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0207】
1 検査デバイス
2 基材
3 ウェル
4 増幅可能な試薬
5 密閉部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0208】
【文献】特開2014-33658号公報
【文献】特開2015-195735号公報
【非特許文献】
【0209】
【文献】Chronicles of Young Scientists Vol.2|Issue|Jan-Mar 2011 [online],<https://cysonline.org.on Monday,June 01,2015
【文献】Journal of AOAC International,Volume 94,Issue 1,pp.335-347