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特許7098121グラフト共重合体の製造方法及びグラフト共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】グラフト共重合体の製造方法及びグラフト共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 285/00 20060101AFI20220704BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20220704BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20220704BHJP
   C08L 33/18 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
C08F285/00
C08J3/16 CER
C08J3/16 CEY
C08L51/00
C08L33/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020547190
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2019011009
(87)【国際公開番号】W WO2020050544
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0106053
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】アン、ポン-クン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン-チョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ワン-レ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヨン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チャン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チ-ユン
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入し重合してシードを製造するステップ;
2)前記シードの存在下に、アルキルアクリレート系単量体を投入し重合してコアを製造するステップ;及び
3)前記コアの存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入し重合してシェルを製造するステップを含み、
前記シードは平均粒径が145から255nmであり、
前記3)ステップにおいて、下記化学式1で表される化合物を含む活性化剤を投入し、
前記3)ステップでは、アルキル(メタ)アクリレート系単量体が投入されず、
前記コアは平均粒径が320から520nmである、グラフト共重合体の製造方法であって、
グラフト共重合体の平均粒径が450から600nmである、方法:
【化1】
前記化学式1において、
及びRは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、CからC10のアルキル基、または*-(C=O)OMであるが、R及びRが全て水素ではなく、
及びMは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【請求項2】
前記コアは、平均粒径が330から500nmである、請求項1に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記化学式1において、R及びRは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、または-(C=O)OMである、請求項1または2に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記化学式1において、M及びMは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してNaまたはKである、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記活性化剤は、下記化学式2で表される化合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【化2】
【請求項6】
前記活性化剤を連続投入する、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記活性化剤は、溶媒と混合された状態で投入される、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記活性化剤は、前記アルキルアクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体の合計100重量部に対して、0.01から1重量部で投入される、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記活性化剤は、前記アルキルアクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体の合計100重量部に対して、0.1から0.8重量部で投入される、請求項1~のいずれか一項に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【請求項10】
シードに、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を4から15重量%含み;
コアに、アルキルアクリレート系単量体単位を40から60重量%含み;
シェルに、芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を30から55重量%含むグラフト共重合体であって、
下記化学式1で表される化合物誘導体を含み、
シェルには、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位が含まれず、
シードは平均粒径が145から255nmであり、
コアは平均粒径が320から520nmであ
グラフト共重合体の平均粒径が450から600nmである、グラフト共重合体:
【化3】
前記化学式1において、
及びRは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、CからC10のアルキル基、または*-(C=O)OMであるが、R及びRが全て水素ではなく、
及びMは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【請求項11】
前記コアは、平均粒径が330から500nmである、請求項1に記載のグラフト共重合体。
【請求項12】
前記グラフト共重合体は、揮発性有機化合物の総量が640ppm以下である、請求項1または1に記載のグラフト共重合体。
【請求項13】
前記グラフト共重合体は、熱重量分析値が98.6重量%以上である、請求項1~1のいずれか一項に記載のグラフト共重合体。
【請求項14】
請求項1から請求項1のいずれか一項に記載のグラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含むマトリックス共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物で製造され、
衝撃強度は21.3kg・cm/cm以上であり、
滞留熱安定性は4.5以下である、熱可塑性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2018年9月5日に出願された韓国特許出願第10-2018-0106053号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、グラフト共重合体の製造方法及びグラフト共重合体に関し、耐衝撃性、熱安定性、表面鮮明性、白色度、外観品質及び耐候性に優れたグラフト共重合体及びグラフト共重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
ABSグラフト共重合体は、耐衝撃性、剛性、耐薬品性、加工性に優れるので、電気電子、建築、自動車などの多様な分野で多様な用途に幅広く用いられている。しかし、ABSグラフト共重合体は、ブタジエン重合体をゴムで用いることによって、耐候性が弱いため、室外用には使用が制限された。
【0004】
このような耐候性の問題を解消できるだけでなく、基本物性及び耐老化性に優れた物質としてASAグラフト共重合体が代表的に知られている。
【0005】
ASAグラフト共重合体は、シェルの製造時に、アクリル系重合体に開始剤及び活性化剤として硫酸第一鉄/デキストロース/ピロリン酸ナトリウム(FeS/DX/SPP)や、硫酸第一鉄/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート/ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート(FeS/SFS/EDTA)システムを用いることになるが、FeS/DX/SPPシステムにおいて、還元剤として用いられるデキストロースは、熱変色が容易な物質であって、グラフト共重合体内に残留するようになると、熱安定性の低下を誘発した。FeS/SFS/EDTAシステムにおいて、還元剤として用いられるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートは、熱分解されるとアルデヒドが形成され、これはグラフト共重合体内に残留すると、加工過程でガス発生物質になった。さらに、共通に用いられる硫酸第一鉄は、グラフト共重合体内に残留すると、グラフト共重合体の性能の低下を誘発するものとして知られている。
【0006】
最近、ASAグラフト共重合体の適用範囲が、外装用資材(siding)、シート(sheet)及び共押出フィルム等で薄膜化されることによって、ASAグラフト共重合体内の残留物の減少を介したガス発生の減少及び熱安定性の向上に対する要求が増加されている。また、華麗な美観を有する外装用資材に対する要求が増加されている。
【0007】
よって、熱安定性が改善されながらも、外観品質及び着色性も優れたASAグラフト共重合体に対する研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基本物性を維持しながらも、耐衝撃性、熱安定性、表面鮮明性、白色度、外観品質及び耐候性が特に改善されたグラフト共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するために、本発明は、1)アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し重合してシードを製造するステップ;2)前記シードの存在下に、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し重合してコアを製造するステップ;及び3)前記コアの存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入し重合してシェルを製造するステップを含み、前記3)ステップにおいて、下記化学式1で表される化合物を含む活性化剤を投入し、前記コアは平均粒径が320から520nmである、グラフト共重合体の製造方法を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
前記化学式1において、
1及びR2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、C1からC10のアルキル基、または*-(C=O)OM2であるが、R1及びR2が全て水素ではなく、
1及びM2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【0012】
また、本発明は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位;芳香族ビニル系単量体単位;ビニルシアン系単量体単位;及び下記化学式1で表される化合物誘導体を含み、コアは平均粒径が320から520nmであるグラフト共重合体を提供する:
【0013】
【化2】
【0014】
前記化学式1において、
1及びR2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、C1からC10のアルキル基、または*-(C=O)OM2であるが、R1及びR2が全て水素ではなく、
1及びM2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【0015】
また、本発明は、前述したグラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含むマトリックス共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物で製造され、衝撃強度は21.3kg・cm/cm以上であり、滞留熱安定性は4.5以下である熱可塑性樹脂成形品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のグラフト共重合体の製造方法によれば、流動性などの基本物性を既存と同等水準に維持しながらも、耐衝撃性、熱安定性、表面鮮明性、白色度、外観品質及び耐候性を顕著に改善させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0019】
本発明におけるシード、コア及びグラフト共重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定してよく、詳しくはNicomp380装備(製品名、製造社:PSS)を用いて測定してよい。
【0020】
本明細書における平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径を意味することができる。算術平均粒径は、散乱強度(Intensity Distribution)平均粒径、体積(Volume Distribution)平均粒径、及び個数(Number Distribution)平均粒径として測定してよく、このうち散乱強度平均粒径を測定することが好ましい。
【0021】
本発明における揮発性有機化合物の総量は、HS-GC/FIDを用いてグラフト共重合体1gを230℃、60分、20mlの条件で出る揮発性有機化合物の成分を分析した結果、総含量をppm単位で分析してよい。
【0022】
本発明における熱重量分析(TGA)は、グラフト共重合体の粉末0.1gを窒素雰囲気下で30℃から250℃まで20℃/minで昇温させ、250℃で1時間維持しながら行ってよく、減量分を測定して残留量(重量%)で示してよい。
【0023】
本発明における衝撃強度は、熱可塑性樹脂組成物を押出及び射出して製造した試片をASTM256に基づいて測定してよい。
【0024】
本発明における滞留熱安定性は、押出した熱可塑性樹脂組成物を射出成形機に投入し、260℃の射出成形機内に5分間滞留させた後、260℃の温度で射出して滞留試片を製造し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を射出成形機に投入し、滞留なしに260℃の温度で射出して無滞留試片を製造した後、滞留試片及び無滞留試片のL、a、b値を分光色差計で測定した後、下記式を用いて変色の程度(△E)を算出した。
【0025】
【数1】
【0026】
本発明において、「前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等」は、「シード、コア及びシェルの製造で投入されるアルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体」を意味することができる。
【0027】
1.グラフト共重合体の製造方法
本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法は、1)アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し重合してシードを製造するステップ;2)前記シードの存在下に、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し重合してコアを製造するステップ;及び3)前記コアの存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入し重合してシェルを製造するステップを含み、前記3)ステップにおいて、下記化学式1で表される化合物を含む活性化剤を投入し、前記コアは平均粒径が320から520nmである。
【0028】
【化3】
【0029】
前記化学式1において、
1及びR2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、C1からC10のアルキル基、または*-(C=O)OM2であるが、R1及びR2が全て水素ではなく、
1及びM2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【0030】
以下、本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法に対して詳しく説明する。
【0031】
1)ステップ
先ず、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を投入し重合してシードを製造する。
【0032】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちブチルメタクリレートが好ましい。
【0033】
前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、p-メチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちスチレンが好ましい。
【0034】
前記ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、及びエタクリロニトリルのうち選択される1種以上であってよく、このうちアクリロニトリルが好ましい。
【0035】
前記1)ステップで投入される単量体等の総量は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の総重量に対して、1から20重量%または4から15重量%で投入されてよく、このうち4から15重量%で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、着色性、耐衝撃性及び耐化学性が改善されたグラフト共重合体を製造することができる。
【0036】
前記1)ステップでは、耐衝撃性に優れたグラフト共重合体を製造するために、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入し重合してシードを製造することが好ましい。
【0037】
この場合、前記1)ステップでは、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体が60:40から80:20または65:35から75:25の重量比で投入されてよく、このうち65:35から75:25の重量比で投入されてよい。前述した範囲を満たすと、耐衝撃性及び着色性に優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0038】
前記シードは、平均粒径が145から255nm、150から250nmまたは170から230nmであってよく、このうち170から230nmが好ましい。前述した範囲を満たすと、重合時の安定性に優れ、耐衝撃性及び表面光沢特性に優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0039】
前記重合は、乳化重合であってよく、50から85℃または60から80℃で行われてよく、このうち60から80℃で行われることが好ましい。前述した範囲を満たすと、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0040】
前記1)ステップでは、開始剤、乳化剤、架橋剤、グラフティング剤、電解質及び水からなる群から選択される1種以上がさらに投入されてよい。
【0041】
前記開始剤はラジカル開始剤であってよく、前記開始剤は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、及びアゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルからなる群から選択された1種以上であってよく、このうち、無機過酸化物が好ましく、過硫酸カリウムがより好ましい。
【0042】
前記開始剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から1重量部または0.02から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.02から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、重合を容易に行うことができる。
【0043】
前記乳化剤は、アルキルスルホコハク酸金属塩、アルキル硫酸エステル金属塩、ロジン酸金属塩及び二量体酸の金属塩からなる群から選択される1種以上が投入されてよく、このうちアルキル硫酸エステル金属塩が投入されることが好ましい。
【0044】
前記アルキルスルホコハク酸金属塩は、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸カリウム塩、及びジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0045】
前記アルキル硫酸エステル金属塩は、ナトリウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルベンゼンサルフェート、ナトリウムオクタデシルサルフェート、ナトリウムオレイックサルフェート、カリウムドデシルサルフェート及びカリウムオクタデシルサルフェートからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0046】
前記ロジン酸金属塩は、ロジン酸カリウム塩及びロジン酸ナトリウム塩からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0047】
前記乳化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から5重量部または0.05から4.5重量部で投入されてよく、このうち0.05から4.5重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、目的とする平均粒径を有するシードを容易に製造することができる。
【0048】
前記架橋剤は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、ヘキサンジオールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシランからなる群から1種以上であってよく、このうちエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
【0049】
前記架橋剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から1重量部または0.02から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.02から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、前記1)ステップで投入される単量体等の一部は、架橋重合されて架橋物として製造することができ、残りは、前記架橋物にグラフト重合されて目的とする平均粒径を有するシードとして製造することができる。
【0050】
前記グラフティング剤は、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルアミン及びトリアリルアミンからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちアリルメタクリレートが好ましい。
【0051】
前記グラフティング剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.001から3重量部、0.005から2.5重量部で投入されてよく、このうち0.005から2.5重量部で投入されることが最も好ましい。前述した範囲を満たすと、前記1)ステップで投入される単量体等の一部は、架橋重合されて架橋物として製造することができ、残りは、前記架橋物にグラフト重合されて目的とする平均粒径を有するシードとして製造することができる。
【0052】
前記電解質は、KCl、NaCl、KHCO3、NaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KHSO3、NaHSO4、Na227、K427、K3PO4、Na3PO4またはNa2HPO4、KOH及びNaOHからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、KOHが好ましい。
【0053】
前記電解質は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.001から1重量部または0.01から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.01から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、重合溶液のpHは高めながら、乳化重合時にシードラテックスの安定性を維持することができる。また、目的とする平均粒径を有するシードを安定的に収得することができる。
【0054】
前記水は、蒸留水またはイオン交換水であってよい。
【0055】
2)ステップ
次いで、前記シードの存在下に、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入し重合してコアを製造する。
【0056】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体の種類は、前述した通りである。
【0057】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の総重量に対して、40から60重量%または45から55重量%で投入されてよく、このうち45から55重量%で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、耐衝撃性及び耐候性がより改善されたグラフト共重合体を製造することができる。
【0058】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、重合時に除熱及び適切な平均粒径を有するコアを容易に制御するために、一定の速度で連続投入されてよい。
【0059】
前記重合は、乳化重合であってよく、50から85℃または60から80℃で行われてよく、このうち60から80℃で行われることが好ましい。前述した範囲を満たすと、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0060】
前記コアは、平均粒径が320から520nmであり、好ましくは330から500nmであり、より好ましくは350から450nmであってよい。前述した範囲を満たすと、重合時の安定性に優れ、耐候性、耐衝撃性及び表面光沢特性に優れたグラフト共重合体を製造することができる。前述した範囲未満であれば、耐衝撃性が低下され、前述した範囲を超過すれば、表面光沢特性が低下される。
【0061】
前記2)ステップでは、開始剤、乳化剤、架橋剤、グラフティング剤、及び水からなる群から選択される1種以上がさらに投入されてよく、重合時に除熱及び適切な平均粒径を有するコアを容易に制御するために、アルキル(メタ)アクリレート系単量体と共に一定の速度で連続投入されてよい。
【0062】
前記開始剤の種類は、前述した通りであり、このうち無機過酸化物が好ましく、過硫酸カリウムがより好ましい。
【0063】
前記開始剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から3重量部または0.02から2.5重量部で投入されてよく、このうち0.02から2.5重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、重合を容易に行うことができる。
【0064】
前記乳化剤の種類は、前述した通りであり、このうちアルキル硫酸エステル金属塩が投入されることが好ましい。
【0065】
前記乳化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から5重量部または0.05から4.5重量部で投入されてよく、このうち0.05から4.5重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、乳化重合は容易に行われながら、目的とする平均粒径を有するコアを容易に製造することができる。
【0066】
前記架橋剤の種類は、前述した通りである。
【0067】
前記架橋剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から1重量部または0.02から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.02から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、コアが適切な架橋度を有することができる。
【0068】
前記グラフティング剤の種類は、前述した通りである。
【0069】
前記グラフティング剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から1重量部または0.02から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.02から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、コアが適切な平均粒径を有することができる。
【0070】
前記水は、蒸留水またはイオン交換水であってよい。
【0071】
3)ステップ
次いで、前記コアの存在下に、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を投入し重合してシェルを製造する。
【0072】
このとき、前記3)ステップにおいては、下記化学式1で表される化合物を含む活性化剤を投入する:
【0073】
【化4】
【0074】
前記化学式1において、
1及びR2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、C1からC10のアルキル基、または*-(C=O)OM2であるが、R1及びR2が全て水素ではなく、
1及びM2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【0075】
前記化学式1で表される化合物は、グラフト共重合体の耐衝撃性、熱安定性、表面鮮明性及び白色度を顕著に改善させることができる。
【0076】
また、前記化学式1で表される化合物は、既存の活性化剤として用いられるナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとは異なり、分解時にホルムアルデヒドが生成されないので、グラフト共重合体内の揮発性有機化合物の総量が顕著に低くなる。これによって、グラフト共重合体の加工時に、揮発性有機化合物由来のガス発生が顕著に低減されるので、表面にガスマークが最小化され、外観品質に優れた熱可塑性樹脂成形品を製造することができる。
【0077】
一方、通常の活性化剤は、硫酸第一鉄と、キレート剤であるピロリン酸ナトリウムまたはナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、還元剤であるデキストロースまたはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを含む。硫酸第一鉄は、グラフト共重合体内に残留すると、グラフト共重合体の性能低下を誘発する。デキストロースは、熱変色が容易な物質なので、グラフト共重合体内に残留することになると、グラフト共重合体の熱安定性を低下させる。ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートは、熱分解されるとアルデヒドを形成し、アルデヒドはグラフト共重合体の射出過程でガスを発生させる。
【0078】
前記化学式1で表される化合物は、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、デキストロース、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどの投入がなくとも、単独で活性化剤の役割を行うことができるので、前述した問題が惹起されない。
【0079】
前記化学式1において、M1及びM2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してNaまたはKであるのが好ましく、Naであるのがより好ましい。
【0080】
前記化学式1において、R1及びR2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、または-(C=O)OM2であることが好ましい。
【0081】
前述した条件を満たすと、グラフト共重合体の耐衝撃性、熱安定性、表面鮮明性、白色度、外観品質及び耐候性がより改善され得る。
【0082】
前記活性化剤は、下記化学式2で表される化合物を含むことができる。
【0083】
【化5】
【0084】
前記活性化剤は、優れた活性度を均一に維持し、グラフト共重合体の流動性と耐衝撃性を改善させるために連続投入されることが好ましい。そして、前記活性化剤は、連続投入のために溶媒と混合された状態で投入されることが好ましい。前記溶媒は水であってよい。
【0085】
前記活性化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から1重量部または0.1から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.1から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した含量を満たすと、重合開始を促進することができる。
【0086】
一方、前記活性化剤は、直接製造するか、市販される物質のうちBruggolite (登録商標) FF6M(商品名、製造社:BrueggemannChemical)を用いることができる。
【0087】
前記芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体の種類は、前述した通りである。
【0088】
前記芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体の合計は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の総重量に対して、30から55重量%または35から50重量%で投入されてよく、このうち35から50重量%で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、グラフト共重合体の耐候性、流動性及び耐化学性のバランスに優れるという利点がある。
【0089】
前記芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体は、65:35から85:15または70:30から80:20の重量比で投入されてよく、このうち70:30から80:20の重量比で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、グラフト共重合体の流動性及び耐化学性のバランスに優れるという利点がある。
【0090】
前記芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体は、一定の速度で連続投入されてよく、前述した方法で投入されると、重合時に除熱及び優れた物性バランスを有するグラフト共重合体を容易に製造することができる。
【0091】
前記3)ステップでは、グラフト共重合体の着色性、耐衝撃性、加工性及び表面光沢の低下を発生させ得るので、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を投入しないことが好ましい。
【0092】
前記重合は、乳化重合であってよく、50から85℃または60から80℃で行われてよく、このうち60から80℃で行われることが好ましい。前述した範囲を満たすと、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0093】
前記グラフト共重合体は、平均粒径が400から700nmまたは450から600nmであってよく、このうち450から600nmが好ましい。前述した範囲を満たすと、重合時の安定性に優れ、耐衝撃性、流動性及び耐化学性に優れたグラフト共重合体を製造することができる。
【0094】
前記3)ステップでは、開始剤、乳化剤、分子量調節制、及び水からなる群から選択される1種以上がさらに投入されてよく、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体と共に一定の速度で連続投入されてよい。
【0095】
前記開始剤の種類は、前述した通りであり、このうち有機過酸化物が好ましく、クメンヒドロパーオキサイドがより好ましい。
【0096】
前記開始剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.01から3重量部または0.02から2.5重量部で投入されてよく、このうち0.02から2.5重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、優れた機械的物性と加工性を有するグラフト共重合体の重合を容易に行うことができる。
【0097】
前記乳化剤の種類は、前述した通りであり、このうちロジン酸金属塩が投入されることが好ましい。
【0098】
前記乳化剤は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.1から2.5重量部または0.5から2重量部で投入されてよく、このうち0.5から2重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、目的とする平均粒径を有するグラフト共重合体を容易に製造することができる。
【0099】
前記分子量調節剤は、a-メチルスチレンダイマー;t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンのようなメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンのようなハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドのような硫黄含有化合物であってよい。好ましくは、t-ドデシルメルカプタンであってよい。
【0100】
前記分子量調節制は、前記グラフト共重合体の製造方法で投入される単量体等の合計100重量部に対して、0.001から1重量部または0.01から0.8重量部で投入されてよく、このうち0.01から0.8重量部で投入されることが好ましい。前述した範囲を満たすと、シェルの重量平均分子量を適宜維持してグラフト共重合体の機械的特性及び表面特性をより改善させることができる。
【0101】
前記水は、蒸留水またはイオン交換水であってよい。
【0102】
本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法は、前記アルキルアクリレート系重合体の投入が完了すると、凝集工程をさらに行うことができる。そして、凝集工程後に、熟成、脱水、洗浄、乾燥工程などをさらに行うことで、グラフト共重合体粉末を製造することができる。
【0103】
2.グラフト共重合体
本発明の他の一実施形態によるグラフト共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位;芳香族ビニル系単量体単位;ビニルシアン系単量体単位;及び下記化学式1で表される化合物誘導体を含み、コアは平均粒径が320から520nmである:
【0104】
【化6】
【0105】
前記化学式1において、
1及びR2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立して水素、C1からC10のアルキル基、または*-(C=O)OM2であるが、R1及びR2が全て水素ではなく、
1及びM2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立してアルカリ金属である。
【0106】
前記化学式1で表される化合物の誘導体は、前記化学式1で表される化合物がグラフト共重合体の製造過程で分解された産物であってよい。
【0107】
前記化学式1で表される化合物に対する説明は、前述した通りである。
【0108】
前記コアは、好ましくは330から500nmであってよく、より好ましくは350から450nmであってよい。前述した範囲を満たすと、重合時の安定性に優れ、耐候性、耐衝撃性及び表面光沢特性に優れたグラフト共重合体を製造することができる。前述した範囲未満であれば、耐衝撃性が低下され、前述した範囲を超過すれば、表面光沢特性が低下される。
【0109】
前記グラフト共重合体は、揮発性有機化合物の総量が640ppm以下または600ppm以下であってよく、このうち600ppm以下であることが好ましい。前述した範囲を満たすと、環境にやさしいグラフト共重合体を製造できるだけでなく、熱可塑性樹脂組成物の加工過程でガス発生物質が顕著に低減されるので、外観特性に優れた成形品を製造することができる。
【0110】
前記グラフト共重合体は、熱重量分析値が98.6重量%以上または99重量%以上であってよく、このうち99重量%以上であることが好ましい。
【0111】
前述した範囲を満たすと、グラフト共重合体の熱安定性が顕著に改善され得る。
【0112】
この他、前記グラフト共重合体に対する説明は、「1.グラフト共重合体の製造方法」で前述した通りであり、本発明の他の一実施形態によるグラフト共重合体は、本発明の一実施形態によるグラフト共重合体の製造方法によって製造することができる。
【0113】
3.熱可塑性樹脂組成物
本発明のまた他の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、本発明の他の一実施形態によるグラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含むマトリックス共重合体を含む。
【0114】
前記マトリックス共重合体は、芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位を60:40から80:20または65:35から75:25の重量比で含んでよく、このうち65:35から75:25の重量比で含むことが好ましい。前述した含量を満たすと、耐熱性、流動性及び耐化学性が全て優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0115】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体とマトリックス共重合体を35:65から55:45または40:60から50:50の重量比で含んでよく、このうち40:60から50:50の重量比で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、着色性、耐候性、耐熱性、流動性、耐化学性、熱安定性及び外観特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0116】
前記熱可塑性樹脂組成物は、用途に応じて染料、顔料、滑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、発泡剤、可塑剤または無光沢剤などの添加剤をさらに含んでよい。
【0117】
4.熱可塑性樹脂成形品
本発明のまた他の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物で製造された熱可塑性樹脂成形品は、衝撃強度は21.3kg・cm/cm以上であり、滞留熱安定性は4.5以下であり、好ましくは衝撃強度が21.5kg・cm/cm以上であり、滞留熱安定性が3.9以下であってよい。
【0118】
前述した条件を満たすと、耐衝撃性及び熱安定性がより優れた熱可塑性樹脂成形品が製造され得る。
【0119】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【0120】
[実施例1]
<シードの製造>
窒素置換された反応器に、スチレン5重量部、アクリロニトリル2重量部、及び乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.2重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.04重量部、グラフティング剤としてアリルメタクリレート0.02重量部、電解質としてKOH0.1重量部及び蒸留水50重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、開始剤として過硫酸カリウム0.04重量部を一括投入して反応を開始させた。その後、2時間重合した後、終了してシードを収得した。
【0121】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器に、ブチルアクリレート50重量部、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.2重量部、グラフティング剤としてアリルメタクリレート0.2重量部、蒸留水15重量部、及び開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を均一に混合した混合物を、70℃で4時間一定の速度で一定の速度で連続投入しながら重合し、連続投入が完了した後、1時間さらに重合した後、終了してコアを収得した。
【0122】
<シェルの製造>
前記コアが収得された反応器に、蒸留水23重量部、スチレン31.5重量部、アクリロニトリル11.5重量部、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.5重量部、及び開始剤としてクメンヒドロパーオキサイド0.1重量部を均一に混合した混合物と、活性化剤としてBruggolite (登録商標) FF6M(商品名、製造社:BrueggemannChemical)0.25重量部を含む水溶液(濃度:5重量%)を、それぞれ75℃で3.5時間連続投入しながら重合反応を行った。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに重合した後、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、グラフト共重合体ラテックスを製造した。
【0123】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記グラフト共重合体ラテックスに塩化カルシウム水溶液(濃度:23重量%)0.8重量部を投入して70℃で常圧凝集を行った後、93℃で熟成し、脱水及び洗浄して、90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0124】
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
前記グラフト共重合体粉末44重量部、及び硬質のマトリックス共重合体(商品名:90HR、製造社:LG化学)56重量部を含む熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0125】
[実施例2]
シェルの製造において、Bruggolite (登録商標) FF6M(商品名、製造社:BrueggemannChemical)0.25重量部を含む水溶液(濃度:5重量%)を、重合開始前、重合開始後1時間経過後、重合開始後2時間経過後、重合開始後3時間経過後に同一の量で分割投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0126】
[実施例3]
シェルの製造において、開始剤としてクメンヒドロパーオキサイドの代わりに、t-ブチルヒドロパーオキサイドを投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0127】
[実施例4]
シードの製造において、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.275重量部を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0128】
[実施例5]
シードの製造において、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.25重量部を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0129】
[実施例6]
シードの製造において、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.18重量部を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0130】
[実施例7]
シードの製造において、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.15重量部を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0131】
[比較例1]
シェルの製造において、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.09重量部、デキストロース0.12重量部、及び硫化第一鉄0.002重量部を含む水溶液(濃度:5重量%)を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0132】
[比較例2]
シェルの製造において、活性化剤としてエチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)0.02重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.08重量部、硫化第一鉄0.002重量部を含む水溶液(濃度:5重量%)を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0133】
[比較例3]
シードの製造において、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.3重量部を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0134】
[比較例4]
シードの製造において、乳化剤としてナトリウムドデシルサルフェート0.125重量部を投入したことを除き、実施例1と同様の方法でグラフト共重合体粉末と熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0135】
[実験例1]
実施例及び比較例のグラフト共重合体の物性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表1及び2に示した。
【0136】
(1)平均粒径(nm):動的光散乱法を用いて粒度分析機(particlesize analyzer:NICOMP 380)で測定した。
【0137】
(2)重合転換率:{(実際に収得されたグラフト共重合体ラテックスの固形分重量)/(処方上投入された単量体の固形分重量)}×100
(3)揮発性有機化合物の総量(TVOC):HS-GC/FIDを用いてグラフト共重合体粉末1gを230℃、60分、20mlの条件で出る揮発性有機化合物の成分を分析した結果、総含量をppm単位で分析した。
【0138】
(4)熱重量分析(TGA):グラフト共重合体粉末0.1gを窒素雰囲気下で30℃から250℃まで20℃/minで昇温させ、250℃で1時間維持しながら減量分を測定し、残留量(重量%)で示した。このとき、残留量が高いほど、熱安定性が良いことを意味する。
【0139】
【表1】
【0140】
表1を参照すれば、実施例1から7のグラフト共重合体は、比較例1から4のグラフト共重合体に比べて揮発性有機化合物の総量も顕著に減少され、熱重量の分析時に残留樹脂量が顕著に高いことが確認できた。
【0141】
このような結果から実施例1から7のグラフト共重合体は、製造過程で特定の活性化剤を投入したことと、コアの平均粒径のシナジー作用により、グラフト共重合体が環境にやさしく、耐衝撃性及び熱安定性に優れることが類推できた。
【0142】
[実験例2]
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物に、滑剤(商品名:EBS、製造社:LG生活健康)1.5重量部、酸化防止剤(商品名:IR1076、製造社:BASF)1.0重量部、及び紫外線安定剤(商品名:Tinuvin 770、製造社:BASF)1.0重量部を均一に混合した後、220℃で36Φ押出混練機を用いてペレットを製造した。ペレットの流動性を下記のような方法で測定し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0143】
(5)流動指数(MI:melt flow index,g/10 mins):ASTM D-1238に基づいて220℃、10kgの下で測定した。
【0144】
[実験例3]
実験例2で製造されたペレットを射出して試片を製造した。試片の物性を下記のような方法で測定し、その結果を表2及び3に示した。
【0145】
(6)滞留熱安定性:ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を射出成形機に投入し、260℃の射出成形機内に5分間滞留させた後、260℃の温度で射出して滞留試片を製造し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を射出成形機に投入し、滞留なしに260℃の温度で射出して無滞留試片を製造した後、滞留試片及び無滞留試片のL、a、b値を分光色差計で測定した後、下記式を用いて変色の程度(△E)を算出した。
【0146】
【数2】
【0147】
(7)アイゾッド衝撃強度(kg・cm/cm):試片の厚さを1/4inとして、ASTM256に基づいて測定した。
【0148】
(8)L、a、b:CIA LAB色座標を用いて測定した。
【0149】
(9)表面光沢:-45゜角度でASTM D528基づいて測定した。
【0150】
(10)白色度:スガ色度計(Suga colorimetor)を用いて測定した。
【0151】
(11)耐候性(△E)-促進耐候性試験装置(weather-o-meter、ATLAS社 Ci4000、キセノンアークランプ、Quartz(inner)/S.Boro(outer)フィルター、irradiznce 0.55W/m2 at 340nm)を用いて、ASTM G115-1に基づいて試片を2,000時間放置した後、色差計で変色の程度を測定しており、下記式に適用して△E値を算出した。
【0152】
ここで、△Eは、耐候性の実験前後のCIE L、a、b値の算術平均値であり、値が0に近いほど耐候性が良いことを意味する。
【0153】
【数3】
【0154】
(12)突起個数:熱可塑性樹脂組成物を220℃で0.01mmのフィルムで押出加工後、未溶融突起を数えた。突起の個数が少ないほど、薄膜加工時に外観が優れることを示す。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
表2及び3を参照すれば、実施例1から7は、比較例1から4に比べて滞留熱安定性、衝撃強度、鮮明度、色相特性、光沢特性、白色度、外観特性及び耐候性が全般的に優れることが確認できた。
【0158】
特に、実施例1から実施例3と比較例1及び2は、グラフト共重合体の製造工程中に投入される活性化剤のみ異なるが、実施例1から実施例3が全ての物性において優れることが確認できた。
【0159】
また、本発明のグラフト共重合体のコアの平均粒径より小さいグラフト共重合体を含む比較例3は、衝撃強度が顕著に落ちるだけでなく、滞留熱安定性、色相特性、白色度及び外観特性も低下されることが確認できた。
【0160】
また、本発明のグラフト共重合体のコアの平均粒径より大きいグラフト共重合体を含む比較例4は、衝撃強度が実施例と同等水準であったが、滞留熱安定性、鮮明度、色相特性、白色度、外観特性及び耐候性が顕著に低下されることが確認できた。