IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許7098664被記録媒体の製造方法、及び、画像記録方法
<>
  • 特許-被記録媒体の製造方法、及び、画像記録方法 図1
  • 特許-被記録媒体の製造方法、及び、画像記録方法 図2
  • 特許-被記録媒体の製造方法、及び、画像記録方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】被記録媒体の製造方法、及び、画像記録方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/04 20060101AFI20220704BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B05D5/04
B41M5/52 110
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019568949
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048356
(87)【国際公開番号】W WO2019150878
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018018590
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】宮戸 健志
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-025504(JP,A)
【文献】特開2014-076619(JP,A)
【文献】特開2017-114934(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159124(WO,A1)
【文献】特開2017-222833(JP,A)
【文献】特開2017-013349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B41J 2/01,
11/00-11/70
B41M 5/00,
5/50- 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)~(c)
(a)カルボキシ基を有する有機化合物である酸
(b)有機酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は、チオシアン酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩である多価金属化合物
(c)ジルコニウム、アルミニウム、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体
からなる群から選択される少なくとも1種である凝集剤並びに水を含む液体Aを準備する工程と、
ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリスチレン樹脂からなる群から選択され、アニオン性基又はノニオン性基を有する少なくとも1種の樹脂及び水を含む液体Bを準備する工程と、
前記液体Aと前記液体Bとを、5℃~40℃の雰囲気温度下にて混合して混合液を得る工程と、
前記混合液を、5℃~40℃の雰囲気温度下にて保管する工程と、
前記保管後の前記混合液を、前記液体Aと前記液体Bとの混合を開始した時点から30分以降であって30日以内に、非浸透性基材上に付与して被記録媒体を得る工程と、
を有する被記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記被記録媒体を得る工程は、前記保管後の前記混合液を、前記液体Aと前記液体Bとの混合を開始した時点から30分以降であって10日以内に、非浸透性基材上に付与して被記録媒体を得る工程である請求項1に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記混合液を得る工程は、前記液体Aと前記液体Bとを、前記液体Bに対する前記液体Aの混合容積比が0.5~2.5となる比率で混合して混合液を得る工程である請求項1又は請求項2に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記凝集剤が、(a)カルボキシ基を有する有機化合物である酸を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記液体Bに含まれる前記少なくとも1種の樹脂が、アニオン性基又はノニオン性基を有するポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記液体Bに含まれる前記少なくとも1種の樹脂がアニオン性基を有する樹脂を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記液体Bに含まれる前記少なくとも1種の樹脂がノニオン性基を有する樹脂を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記液体Bを準備する工程の後であって前記混合液を得る工程の前の時点における前記液体B中の前記樹脂の重量平均分子量をMw1とし、かつ、前記混合液を前記非浸透性基材上に付与する直前における前記混合液中の樹脂の重量平均分子量をMw2とした場合に、Mw2/Mw1が、0.70以上1.00以下である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の被記録媒体の製造方法によって被記録媒体を製造する工程と、
製造された被記録媒体上に、着色剤及び水を含むインクを付与して画像を記録する工程と、
を有する画像記録方法。
【請求項10】
前記インクの付与は、前記保管後の前記混合液の前記非浸透性基材上への付与を完了した時点から60日以内に開始する請求項9に記載の画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被記録媒体の製造方法、及び、画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被記録媒体上に、インクを含む複数の液体を用いて画像を記録する技術に関し、様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無機微粒子の分散状態を長期間にわたり維持可能な分散剤が含まれた塗布液を用いることなく、所望の光沢を有する印刷物を一般的な印刷用紙を使用して長期間にわたり安定して印刷できる技術として、光反射性を有する無機微粒子が分散された分散液とバインダー水溶液とを、インクジェット装置の内部で混合して塗布液を生成する塗布液生成工程と、上記塗布液の生成後、上記塗布液中における上記無機微粒子の凝集時間に応じて定まる予め設定された時間内に、上記インクジェット装置の内部で上記塗布液を上記基材に塗布する塗布工程と、上記塗布液が塗布された上記基材に、上記インクジェット装置の内部でインクを吐出する吐出工程と、を備えるインクジェット方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、混合することにより反応が開始する2種の液剤を用いて高密度なパターン形成を行うのに好適な方法として、第1ノズル及び第2ノズルを有するインクジェット式液滴吐出装置を用いて基材上にパターンを形成する方法であって、第1ノズルから第1液を吐出して基材に着弾させる第1液吐出工程と、第2ノズルから第1液と反応する第2液を吐出して第1液吐出工程における第1液の着弾位置と同一位置に着弾させる第2液吐出工程と、を備えるパターン形成方法が開示されている。
特許文献2には、第2液は硫酸アンモニウムをアンモニア水に溶解した溶液を含むことも開示されている。
【0005】
特許文献1:特開2013-43364号公報
特許文献2:特開2007-229705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被記録媒体上に記録される画像の画質、及び、画像と被記録媒体との密着性(以下、単に「画像の密着性」又は「密着性」ともいう)を向上させる観点から、被記録媒体として、非浸透性基材の一方の面(以下、「オモテ面」ともいう)上に、酸、多価金属化合物、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種である凝集剤(以下、「特定凝集剤」ともいう)と、樹脂と、を付与して製造された被記録媒体を用いる場合がある。ここで、特定凝集剤は、画像の画質向上に寄与する成分であり、樹脂は、画像の密着性に寄与する成分である。
しかし、このような被記録媒体を用いた場合、被記録媒体のオモテ面側の成分(例えば特定凝集剤)が、上記オモテ面側に接触している物体に転写する場合がある。ここで、被記録媒体のオモテ面側とは、基材のオモテ面に対応する側を指す。
特許文献1には、印刷用紙に対し光沢を有する印刷物を形成するための技術が開示されているが、非浸透性基材及び特定凝集剤に関する記載はない。従って、非浸透性基材及び特定凝集剤を用いた場合における成分の転写については一切考慮されていない。
【0007】
本開示における一態様の課題は、記録される画像の画質及び密着性に優れ、かつ、成分の転写が抑制された被記録媒体を製造できる、被記録媒体の製造方法を提供することである。
また、本開示における別の一態様の課題は、画質及び密着性に優れた画像を記録でき、かつ、被記録媒体の成分の転写を抑制できる画像記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 酸、多価金属化合物、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種である凝集剤並びに水を含む液体Aを準備する工程と、
樹脂及び水を含む液体Bを準備する工程と、
液体Aと液体Bとを、5℃~40℃の雰囲気温度下にて混合して混合液を得る工程と、
混合液を、5℃~40℃の雰囲気温度下にて保管する工程と、
保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に、非浸透性基材上に付与して被記録媒体を得る工程と、
を有する被記録媒体の製造方法。
<2> 被記録媒体を得る工程は、保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30分以降であって10日以内に、非浸透性基材上に付与して被記録媒体を得る工程である<1>に記載の被記録媒体の製造方法。
<3> 混合液を得る工程は、液体Aと液体Bとを、液体Bに対する液体Aの混合容積比が0.5~2.5となる比率で混合して混合液を得る工程である<1>又は<2>に記載の被記録媒体の製造方法。
<4> 凝集剤が、有機酸を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の被記録媒体の製造方法。
<5> 樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の被記録媒体の製造方法。
<6> 液体Bを準備する工程の後であって混合液を得る工程の前の時点における液体B中の樹脂の重量平均分子量をMw1とし、かつ、混合液を非浸透性基材上に付与する直前における混合液中の樹脂の重量平均分子量をMw2とした場合に、Mw2/Mw1が、0.70以上1.00以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の被記録媒体の製造方法。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の被記録媒体の製造方法によって被記録媒体を製造する工程と、
製造された被記録媒体上に、着色剤及び水を含むインクを付与して画像を記録する工程と、
を有する画像記録方法。
<8> インクの付与は、保管後の混合液の非浸透性基材上への付与を完了した時点から60日以内に開始する<7>に記載の画像記録方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示における一態様によれば、記録される画像の画質及び密着性に優れ、かつ、成分の転写が抑制された被記録媒体を製造できる、被記録媒体の製造方法が提供される。
また、本開示における別の一態様によれば、画質及び密着性に優れた画像を記録でき、かつ、被記録媒体の成分の転写を抑制できる画像記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の被記録媒体の製造方法及び画像記録方法の実施に好適な、画像記録機能を備えた被記録媒体製造装置の一例を示す概略構成図である。
図2】実施例における、画質の評価に用いた文字画像を概念的に示す図である。
図3】実施例における、画質の評価基準の詳細を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、非浸透性基材の「オモテ面」とは、混合液が付与される側の面を指し、「ウラ面」とは、オモテ面とは反対側の面を意味する。被記録媒体のオモテ面及びウラ面についても同様である。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
〔被記録媒体の製造方法〕
本開示の被記録媒体の製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう)は、
酸、多価金属化合物、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種である凝集剤(以下、「特定凝集剤」ともいう)並びに水を含む液体Aを準備する工程と、
樹脂及び水を含む液体Bを準備する工程と、
液体Aと液体Bとを、5℃~40℃の雰囲気温度下にて混合して混合液を得る工程と、 混合液を、5℃~40℃の雰囲気温度下にて保管する工程と、
保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に、非浸透性基材上に付与して被記録媒体を得る工程と、
を有する。
【0013】
本開示において、「保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に、非浸透性基材上に付与」とは、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から混合液の非浸透性基材上への付与を開始するまでの時間が30日以下であることを意味する。
即ち、本開示の製造方法では、上記30日以内に混合液の付与が開始されればよく、必ずしも、上記30日以内に混合液の付与が完了される必要はない。
【0014】
また、本開示において、「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」とは、目的とする量の混合液を得るために必要な量の液体A及び液体Bの混合を開始した時点を意味する。
言い換えれば、「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」は、液体Aと液体Bとの混合を行うための容器内に、上記必要な量の液体A及び液体Bをすべて供給し終わった時点である。
従って、例えば、上記容器内に、必要な量の液体Aのうちの一部のみと、必要な量の液体Bの全部又は一部と、を供給した時点は、「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」には該当しない。同様に、上記容器内に、必要な量の液体Bのうちの一部のみと、必要な量の液体Aの全部又は一部と、を供給した時点は、「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」には該当しない。これら2つのケースは、いずれも、必要な量の液体A及び液体Bをすべて供給し終わった時点に該当しないためである。
また、「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」は、混合液の調製が完了した時点(液体Aと液体Bとの混合が完了した時点)とは同義ではない。具体的には、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点が、混合液の調製が完了した時点よりも前である場合がある。
【0015】
本開示の製造方法によれば、記録される画像の画質及び密着性に優れた被記録媒体であって、かつ、成分の転写が抑制された被記録媒体を製造できる。
かかる効果が奏される理由は、以下のように推測される。但し、本開示の製造方法は、以下の理由によって限定されることはない。
【0016】
本開示の製造方法における混合液は、液体A中の成分である特定凝集剤及び液体B中の成分である樹脂を含む。
上記特定凝集剤は、画像の画質向上に寄与する成分であり、上記樹脂は、画像の密着性に寄与する成分である。
混合液は、特定凝集剤及び水を含む液体Aと、樹脂及び水を含む液体Bとを混合することによって調製される。
【0017】
しかし、本発明者等の検討により、特定凝集剤及び水を含む液体Aと樹脂及び水を含む液体Bとを混合することによって混合液を調製し、得られた混合液を非浸透性基材上に付与して被記録媒体を製造する場合、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から混合液の非浸透性基材上への付与を開始するまでの時間(以下、「混合開始から混合液付与開始までの時間」ということがある)が30日を超えると、被記録媒体のオモテ面側の成分が、上記オモテ面側に接触する物体に転写する場合があることが判明した。ここでいう、「オモテ面側に接触する物体」としては、被記録媒体を巻き取ったロールにおいて、被記録媒体のオモテ面側に接触する被記録媒体等が挙げられる。転写される成分は、主として特定凝集剤であると考えられる。
上述した成分の転写の原因としては、混合液中における樹脂の分散状態が壊れ、その結果、混合液の造膜性が損なわれ、特定凝集剤と非浸透性基材とを結着させることができなくなるためと考えられる。また、樹脂がポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂である場合には、混合液中における樹脂が加水分解することにより、混合液の造膜性が損なわれ、特定凝集剤と非浸透性基材とを結着させることができなくなるためとも考えられる。
【0018】
上述の成分の転写を抑制するために、本開示の製造方法では、保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に、非浸透性基材上に付与する。即ち、混合開始から混合液付与開始までの時間を30日以下に制限する。これにより成分の転写が抑制される。かかる効果が奏される理由は、混合液中における樹脂の分散状態が保たれ、また、樹脂がポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂である場合には、樹脂の加水分解が抑制され、その結果、混合液の造膜性が維持されるためと考えられる。
即ち、本開示の製造方法では、混合開始から混合液付与までの時間を30日以下に制限することにより、混合液中の樹脂が、特定凝集剤と非浸透性基材とを結着させ、かつ、特定凝集剤同士を結着させる機能(即ち、バインダーの機能)を発揮し、その結果、特定凝集剤等の成分の転写が抑制されると考えられる。
【0019】
以下、本開示の製造方法の各工程について説明する。
【0020】
<液体Aを準備する工程>
液体Aを準備する工程は、特定凝集剤(即ち、酸、多価金属化合物、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種)及び水を含む液体Aを準備する工程である。
液体Aを準備する工程は、予め調製された液体Aを単に準備するだけの工程であってもよいし、液体Aを調製する工程であってもよい。
【0021】
(特定凝集剤)
液体Aは、特定凝集剤(即ち、酸、多価金属化合物、及び金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種)を含む。
特定凝集剤は、被記録媒体に着色剤及び水を含有されるインクが付与された場合において、インク中の成分を凝集させる機能を発揮する。これにより、インクによって記録される画像の画質が向上する。
【0022】
特定凝集剤の含有量は、液体Aの全量に対し、好ましくは4質量%~50質量%であり、より好ましくは4質量%~40質量%であり、更に好ましくは4質量%~30質量%であり、特に好ましくは10質量%~30質量%である。
【0023】
-酸-
酸は、無機酸(例えば、硝酸、チオシアン酸等)であっても有機酸であってもよい。
画像の画質をより向上させる観点から、酸としては、有機酸が好ましい。
有機酸としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシ基等を挙げることができる。
上記酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
なお、上記酸性基は、液体A及び混合液中において、少なくとも一部が解離していることが好ましい。
【0024】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、蟻酸、安息香酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL-リンゴ酸)、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4-メチルフタル酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0025】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、インクの凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう。)が好ましく、ジカルボン酸又はトリカルボン酸がより好ましい。
多価カルボン酸としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4-メチルフタル酸、又はクエン酸がより好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸が更に好ましい。
【0026】
有機酸は、pKaが低い(例えば、1.0~5.0)ことが好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク中の顔料やポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
【0027】
有機酸は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク中の粒子を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基等)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
【0028】
-多価金属化合物-
多価金属化合物としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。
これらの金属の塩としては、前述した有機酸の塩、硝酸塩、塩化物、又はチオシアン酸塩が好適である。
中でも、好ましくは、有機酸(ギ酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は、チオシアン酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩である。
多価金属化合物は、液体A中において、少なくとも一部が多価金属イオンと対イオンとに解離していることが好ましい。
【0029】
-金属錯体-
金属錯体としては、金属元素として、ジルコニウム、アルミニウム、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体が好ましい。
金属錯体としては、配位子として、アセテート、アセチルアセトネート、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、オクチレングリコレート、ブトキシアセチルアセトネート、ラクテート、ラクテートアンモニウム塩、及びトリエタノールアミネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体が好ましい。
【0030】
金属錯体としては、様々な金属錯体が市販されており、本開示においては、市販の金属錯体を使用してもよい。また、様々な有機配位子、特に金属キレート触媒を形成し得る様々な多座配位子が市販されている。そのため、市販の有機配位子と金属とを組み合わせて調製した金属錯体を使用してもよい。
【0031】
金属錯体としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-150」)、ジルコニウムモノアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル工業(株)製「オルガチックスZC-540」)、ジルコニウムビスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-550」)、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-560」)、ジルコニウムアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-115」)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-100」)、チタンテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-401」)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-200」)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-750」)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-700」)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-540」)、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-570」))、ジルコニウムジブトキシ ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-580」)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス AL-80」)、チタンラクテートアンモニウム塩(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-300」)、チタンラクテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-310、315」)、チタントリエタノールアミネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-400」)、塩化ジルコニル化合物(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-126」)が挙げられる。
これらの中で、チタンラクテートアンモニウム塩(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-300」)、チタンラクテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-310、315」)、チタントリエタノールアミネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-400」)、塩化ジルコニル化合物(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-126」)が好ましい。
【0032】
画像の画質をより向上させる観点から、特定凝集剤は、有機酸を含むことが好ましい。
【0033】
特定凝集剤が有機酸を含む場合、特定凝集剤全体に占める有機酸の比率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0034】
(水)
液体Aは、水を含有する。
液体Aにおける水の含有量としては、液体Aの全量に対し、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。
水の含有量の上限は、他の成分の量にもよるが、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0035】
(水溶性溶剤)
液体Aは、水溶性溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本開示において、「水溶性」とは、水に一定濃度以上溶解できる性質を指す。
本開示における「水溶性」としては、25℃の水100gに対して5g以上(より好ましくは10g以上)溶解する性質が好ましい。
水溶性溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性溶剤としては、例えば、
グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等)、ポリアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)などの多価アルコール;
ポリアルキレングリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル等)などの多価アルコールエーテル;
特開2011-42150号公報の段落0116に記載の、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1~4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドン;
等が挙げられる。
中でも、成分の転写の抑制の観点から、多価アルコール、又は、多価アルコールエーテルが好ましく、アルカンジオール、ポリアルキレングリコール、又は、ポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0036】
液体Aにおける水溶性溶剤の含有量としては、液体Aの全量に対し、好ましくは1質量%~50質量%であり、より好ましくは5質量%~40質量%であり、更に好ましくは10質量%~30質量%である。
【0037】
(界面活性剤)
液体Aは、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤又は消泡剤として用いることができる。
表面張力調整剤又は消泡剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0038】
界面活性剤としては、特開昭59-157636号公報の第37~38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003-322926号、特開2004-325707号、特開2004-309806号の各公報に記載の、フッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0039】
液体Aにおける界面活性剤(例えば消泡剤)の含有量としては特に制限はないが、液体Aの全量に対し、好ましくは0.001質量%~1質量%であり、より好ましくは0.001質量%~0.2質量%であり、更に好ましくは0.005質量%~0.1質量%である。
【0040】
(その他の成分)
液体Aは、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0041】
<液体Bを準備する工程>
液体Bを準備する工程は、樹脂及び水を含む液体Bを準備する工程である。
液体Bを準備する工程は、予め調製された液体Bを単に準備するだけの工程であってもよいし、液体Bを調製する工程であってもよい。
【0042】
(樹脂)
液体Bは、樹脂を含む。
液体Bは、樹脂を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
樹脂は、画像と被記録媒体との密着性を向上させる機能を有する。また、樹脂は、非浸透性基材上において、特定凝集剤及び非浸透性基材を結着させ、かつ、特定凝集剤同士を結着させる機能(即ち、バインダーの機能)を有する。
【0043】
液体B中の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
【0044】
成分の転写抑制及び画像の密着性向上の観点から、液体B中の樹脂は、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0045】
また、液体B中の樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む場合において、混合開始から混合液付与開始までの時間(液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から混合液の非浸透性基材上への付与を開始するまでの時間)が30日を超えると、混合液中における樹脂が加水分解することにより、混合液の造膜性が損なわれ、その結果、被記録媒体の成分の転写がより起こりやすくなり、また、画像の密着性が低下する場合がある。
しかし、本開示の製造方法では、混合開始から混合液付与開始までの時間が30日以下であるため、ポリエステル樹脂及び/又はポリウレタン樹脂による効果(成分の転写抑制及び画像の密着性向上の効果)が維持される。
従って、液体B中の樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む場合には、混合開始から混合液付与開始までの時間を30日以下とすることによる改善幅が大きい(後述する、実施例4と比較例1との対比(ポリエステル樹脂)、実施例15と比較例2との対比(ポリウレタン樹脂)、実施例21と比較例3との対比(アクリル樹脂)参照)。
【0046】
液体B中の樹脂がポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む場合、液体B中の樹脂全体に占めるポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の合計の比率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0047】
液体B中の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~300000であることが好ましく、2000~200000であることがより好ましく、5000~100000であることが更に好ましい。
【0048】
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、特別な記載がない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0049】
液体B中の樹脂は、脂環式構造又は芳香環式構造を有することが好ましく、芳香環式構造を有することがより好ましい。
脂環式構造としては、炭素数5~10の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン環構造、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、又は、アダマンタン環構造が好ましい。
芳香環式構造としては、ナフタレン環又はベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
脂環式構造又は芳香環式構造の量としては、特に限定されず、例えば、樹脂100gあたり0.01mol~1.5molであることが好ましく、0.1mol~1molであることがより好ましい。
【0050】
液体B中の樹脂は、構造中にイオン性基を有することが好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基であってもカチオン性基であってもよいが、導入の容易性の観点から、アニオン性基が好ましい。
アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、又は、スルホ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
イオン性基の量としては、特に限定されず、樹脂100gあたり0.001mol~1.0molであることが好ましく、0.01mol~0.5molであることがより好ましい。
【0051】
液体B中の樹脂の形態としては、粒子が好ましい。
即ち、液体Bは、樹脂からなる粒子(以下、「樹脂粒子」ともいう)を含むことが好ましい。
液体Bが樹脂粒子を含む場合、樹脂粒子における樹脂は、水不溶性の樹脂であることが好ましい。
本開示において、「水不溶性」とは、25℃の水100gに対する溶解量が1.0g未満(より好ましくは0.5g未満)である性質を指す。
【0052】
上述した樹脂粒子の体積平均粒径は、1nm~300nmであることが好ましく、3nm~200nmであることがより好ましく、5nm~150nmであることが更に好ましい。
【0053】
本開示において、体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定された値を意味する。
測定装置としては、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)が挙げられる。
【0054】
樹脂粒子の具体例としては、ペスレジンA124GP、ペスレジンA645GH(以上、高松油脂(株)製)、Eastek1100、Eastek1200(以上、Eastman Chemical社製)、プラスコートRZ570、プラスコートZ687、プラスコートZ565、プラスコートRZ570、プラスコートZ690(以上、互応化学工業(株)製)、バイロナールMD1200(東洋紡(株)製)、EM57DOC(ダイセルファインケム社製)等が挙げられる。
【0055】
液体B中の樹脂としては、水不溶性の樹脂(例えば、前述の樹脂粒子)と、水溶性の樹脂とを併用してもよい。
水溶性の樹脂としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性樹脂を用いることができる。
また、水溶性樹脂としては、特開2013-001854号公報の段落0026~0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
【0056】
液体B中における樹脂の含有量は、液体Bの全量に対し、好ましくは5質量%~50質量%であり、より好ましくは5質量%~45質量%であり、更に好ましくは10質量%~30質量%である。
【0057】
(水)
液体Bは、水を含有する。
液体Bにおける水の含有量としては、液体Bの全量に対し、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。
水の含有量の上限は、他の成分の量にもよるが、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0058】
(その他の成分)
液体Bは、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、水溶性溶剤、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
液体Bに含有され得る水溶性溶剤の好ましい態様は、液体Aに含有され得る水溶性溶剤の好ましい態様と同様である。
【0059】
<混合液を得る工程>
混合液を得る工程は、液体Aと液体Bとを、5℃~40℃の雰囲気温度下にて混合して混合液を得る工程である。
【0060】
混合液を得る工程で得られた混合液は、後述の混合液を保管する工程において、5℃~40℃の雰囲気温度下にて保管された後、後述の被記録媒体を得る工程において、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に、非浸透性基材上に付与される。
ここで、「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」の意味については前述したとおりである。
【0061】
混合液を得る工程において、液体Aと液体Bとの混合を行うための容器内に、液体A及び液体Bを供給する態様(例えば供給順序)には特に制限はない。
上記容器内に液体A及び液体Bを供給する態様としては、例えば、
上記容器内に、必要な量の液体Aの全部を供給し、次いで必要な量の液体Bの全部を供給する態様;
上記容器内に、必要な量の液体Bの全部を供給し、次いで必要な量の液体Aの全部を供給する態様;
上記容器内に、必要な量の液体Aの一部を供給し、次いで必要な量の液体Bの全部を供給し、次いで液体Aの残りを供給する態様;
上記容器内に、必要な量の液体Bの一部を供給し、次いで必要な量の液体Aの全部を供給し、次いで液体Bの残りを供給する態様;
上記容器内に、必要な量の液体Aの一部を供給し、次いで必要な量の液体Bの一部を供給し、次いで液体Aの残りを供給し、次いで液体Bの残りを供給する態様;
上記容器内に、必要な量の液体Bの一部を供給し、次いで必要な量の液体Aの一部を供給し、次いで液体Bの残りを供給し、次いで液体Aの残りを供給する態様;
等が挙げられる。
また、上記容器内に液体A及び液体Bを供給する態様としては、必要な量の液体A及び/又は必要な量の液体Bを、3回以上にわけて供給する態様も挙げられる。
【0062】
上記容器内に液体A及び液体Bを供給する態様としては、上記容器内に、必要な量の液体Bの全部を供給し、次いで必要な量の液体Aの全部を供給する態様が好ましい。この態様の場合、上記必要な量の液体Aの全部を、少量ずつゆっくりと供給することが好ましい。
上記好ましい態様である場合には、液体B中の樹脂が受けるダメージをより低減することができる。
【0063】
液体Aと液体Bとを混合する方法としては、液体A及び液体Bが供給された上記容器をそのまま静置する方法、液体A及び液体Bが供給された上記容器を振盪する方法、液体A及び液体Bが供給された上記容器内で液体A及び液体Bを攪拌する方法、これらを2つ以上組み合わせた方法、等が挙げられる。
容器の振盪及び/又は容器内の攪拌は、必要な量の液体A及び液体Bをすべて供給し終わった時点以降に開始してもよいし、この時点よりも前から開始してもよい。
なお、容器の振盪及び/又は容器内の攪拌を、必要な量の液体A及び液体Bをすべて供給し終わった時点よりも前に開始した場合においても、本開示における「液体Aと液体Bとの混合を開始した時点」は、必要な量の液体A及び液体Bをすべて供給し終わった時点である。
【0064】
液体A及び液体Bを混合する際の雰囲気温度は5℃~40℃であり、好ましくは10℃~30℃である。
【0065】
液体A及び液体Bを混合する際の液体A及び液体Bの各々の液温については特に制限はないが、それぞれ、好ましくは5℃~40℃であり、より好ましくは10℃~30℃である。
液体A及び液体Bを混合する際の雰囲気にも特に制限はなく、大気雰囲気であっても、大気雰囲気以外の雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気)であってもよい。
【0066】
液体A及び液体Bを混合する際の雰囲気の湿度にも特に制限はない。
湿度は、好ましくは10%~90%であり、より好ましくは20%~80%であり、更に好ましくは30%~70%である。
本開示において、湿度は、相対湿度を意味する。
【0067】
混合液を得る工程における、液体Bに対する液体Aの混合容積比(以下、混合容積比〔液体A/液体B〕ともいう)には特に制限はないが、成分の転写をより抑制する観点から、好ましくは0.3~4.0である。
混合容積比〔液体A/液体B〕が0.3以上であることによって成分の転写がより抑制される理由は明らかではないが、特定凝集剤の量に対する樹脂の量がある程度低減されることにより、樹脂の分散性がより向上するためと考えられる。
混合容積比〔液体A/液体B〕が4.0以下であることによって成分の転写がより抑制される理由は明らかではないが、樹脂の量に対する特定凝集剤の量がある程度低減されることにより、特定凝集剤による樹脂のダメージをより抑制できるためと考えられる。
混合容積比〔液体A/液体B〕は、より好ましくは0.3~3.0であり、更に好ましくは0.5~3.0であり、更に好ましくは0.5~2.5である。
混合容積比〔液体A/液体B〕は、言うまでも無いが、目的とする量の混合液を得るために必要な量の液体Bに対する、目的とする量の混合液を得るために必要な量の液体Aの容積比である。
【0068】
<混合液を保管する工程>
混合液を保管する工程は、混合液を得る工程で得られた混合液を、5℃~40℃の雰囲気温度下にて保管する工程である。
本開示において、「混合液を、5℃~40℃の雰囲気温度下にて保管する」とは、混合液を5℃~40℃の雰囲気温度下に存在させておくことを意味し、その他には特に制限はない。
混合液を保管する場所については特に制限はない。混合液の保管は、被記録媒体を製造するための被記録媒体製造装置の内部で行ってもよいし、被記録媒体製造装置の外部で(即ち、被記録媒体製造装置とは独立した容器内で)行ってもよい。
混合液を保管する時間は、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から混合液の非浸透性基材上への付与を開始するまでの時間に応じて適宜調整される。
混合液を保管する工程における雰囲気温度は、10℃~30℃が好ましい。
【0069】
混合液を保管する工程における混合液の液温は、好ましくは5℃~40℃であり、より好ましくは10℃~30℃である。
【0070】
混合液を保管する雰囲気には特に制限はなく、大気雰囲気であっても、大気雰囲気以外の雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気)であってもよい。
【0071】
混合液を保管する雰囲気の湿度にも特に制限はない。
湿度(即ち、相対湿度)は、好ましくは10%~90%であり、より好ましくは20%~80%であり、更に好ましくは30%~70%である。
【0072】
混合液の保管は、開放系で行ってもよいし、閉鎖系で行ってもよい。
開放系としては、混合液を収容した容器の内部空間が、容器外の空間に連通している状態が挙げられる。
閉鎖系としては、混合液を収容した容器の内部空間が、容器外の空間に連通していない状態が挙げられる。
【0073】
<被記録媒体を得る工程>
被記録媒体を得る工程は、混合液を保管する工程における保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に、非浸透性基材上に付与して被記録媒体を得る工程である。
【0074】
本開示において、「非浸透性基材」とは、水の吸収が少ないか又は水を吸収しない基材を意味し、具体的には、水の吸収量が0.3g/m以下である基材を意味する。
基材の水の吸収量(g/m)は、以下のようにして測定する。
基材のオモテ面(即ち、混合液を付与する面)における100mm×100mmの領域に水を接触させ、この状態で25℃にて1分間保持する。この1分間の保持によって吸収された水の質量(吸収量(g))を求め、得られた吸収量(g)を単位面積当たりの吸収量(g/m)に換算する。
【0075】
非浸透性基材としては特に制限はないが、樹脂基材が好ましい。
樹脂基材としては特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂からなる基材が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、熱可塑性樹脂をシート状に成形した基材が挙げられる。
樹脂基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、又は、ポリイミドを含むことが好ましい。
【0076】
樹脂基材は、透明な樹脂基材であっても、着色された樹脂基材であってもよいし、少なくとも一部に金属蒸着処理等がなされていてもよい。
樹脂基材の形状は、特に限定されないが、シート状の樹脂基材であることが好ましく、被記録媒体の生産性の観点から、巻き取りによってロールを形成可能なシート状の樹脂基材であることがより好ましい。
樹脂基材の厚さとしては、10μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。
【0077】
樹脂基材は、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 例えば、インクを付与して画像を記録する前に、予め樹脂基材の表面にコロナ処理を施すと、樹脂基材の表面エネルギーが増大し、樹脂基材の表面の湿潤及び樹脂基材へのインクの接着が促進される。コロナ処理は、例えば、コロナマスター(信光電気計社製、PS-10S)等を用いて行なうことができる。コロナ処理の条件は、樹脂基材の種類、インクの組成等、場合に応じて適宜選択すればよい。例えば、下記の処理条件としてもよい。
・処理電圧:10~15.6kV
・処理速度:30~100mm/s
【0078】
混合液の非浸透性基材上への付与を開始した時点における雰囲気温度は、好ましくは5℃~40℃であり、より好ましくは10℃~30℃である。
混合液の非浸透性基材上への付与を開始した時点における雰囲気には特に制限はなく、大気雰囲気であっても、大気雰囲気以外の雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気)であってもよい。
混合液の非浸透性基材上への付与を開始した時点における雰囲気の温度にも特に制限はないが、湿度(即ち、相対湿度)は、好ましくは10%~90%であり、より好ましくは20%~80%であり、更に好ましくは30%~70%である。
【0079】
本開示の製造方法では、保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から10分以降であって30日以内に、非浸透性基材上に付与する(即ち、非浸透性基材上への付与を開始する)ことが好ましい。これにより、被記録媒体の成分の転写がより抑制される。この理由は明らかではないが、非浸透性基材上への付与を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から10分以降に開始する場合には、非浸透性基材上に付与されるまでの間に、混合液中において液体A由来の成分と液体B由来の成分とをより馴染ませることができるためと考えられる。
【0080】
本開示の製造方法では、
保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30分以降であって30日以内に、非浸透性基材上に付与する(即ち、非浸透性基材上への付与を開始する)ことが更に好ましく、
保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30分以降であって20日以内に、非浸透性基材上に付与する(即ち、非浸透性基材上への付与を開始する)ことが更に好ましく、
保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30分以降であって10日以内に、非浸透性基材上に付与する(即ち、非浸透性基材上への付与を開始する)ことが更に好ましい。
【0081】
非浸透性基材への混合液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、後述する画像を記録する工程におけるインクジェット法と同様である。
【0082】
単位面積当たりの混合液の付与質量(g/m)としては、インク中の成分を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは0.1g/m~10g/m、より好ましくは0.5g/m~6.0g/m、さらに好ましくは1.0g/m~4.0g/mである。
【0083】
また、被記録媒体を得る工程において、混合液の付与前に非浸透性基材を加熱してもよい。
加熱温度としては、非浸透性基材の種類や混合液の組成に応じて適宜設定すればよいが、非浸透性基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
【0084】
被記録媒体を得る工程では、混合液を非浸透性基材上に付与し、乾燥させることにより被記録媒体を得ることが好ましい。
乾燥の態様としては、加熱乾燥が好ましい。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
非浸透性基材の混合液が付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
非浸透性基材の混合液が付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
非浸透性基材の混合液が付与された面又は混合液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0085】
加熱乾燥時の加熱温度は、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましく、70℃がより好ましい。
ここで、加熱温度は、非浸透性基材の混合液が付与された面の温度を意味する。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.5秒~60秒が好ましく、0.5秒~20秒がより好ましく、0.5秒~10秒が特に好ましい。
【0086】
本開示の製造方法において、液体Bを準備する工程の後であって混合液を得る工程の前の時点における液体B中の樹脂の重量平均分子量をMw1とし、かつ、混合液を非浸透性基材上に付与する直前における混合液中の樹脂の重量平均分子量をMw2とした場合に、Mw2/Mw1が、0.70以上1.00以下であることが好ましい。
【0087】
ここで、混合液を非浸透性基材上に付与する直前とは、混合液の非浸透性基材上への付与を開始した時点(以下、「T1」とする)の1分前以降であってT1より前までの間を指す。
【0088】
Mw1は、液体Bを準備する工程の後であって混合液を得る工程の前の時点における液体Bから、サンプル液を採取し、採取したサンプル液を用いて測定する。Mw1の測定は、サンプル液を採取した時点から60分以内に完了させる。
Mw2は、非浸透性基材上に付与する直前における混合液から、サンプル液を採取し、採取したサンプル液を用いて測定する。Mw2の測定は、サンプル液を採取した時点から60分以内に完了させる。
ここで、混合液が、凝集剤として酸を含む場合には、混合液から採取したサンプル液中の酸を中和し、中和完了後のサンプル液を用いてMw2の測定を行う。この場合においても、Mw2の測定は、サンプル液を採取した時点から60分以内に完了させる。また、この場合、サンプル液中の酸の中和は、サンプル液を採取した時点から3分以内に完了させる。ここで、サンプル液中の酸の中和は、サンプル液のpHをpHメーターで確認しながらサンプル液に塩基を投入することにより行い、サンプル液のpHが7.0となった時点を中和完了とする。
【0089】
本開示の製造方法の全部又は一部は、装置を用いて実施してもよいし、手作業によって実施してもよい。
【0090】
<液体混合装置、被記録媒体製造装置>
本開示の製造方法の全部又は一部を実施するための装置としては、例えば、混合液を得る工程を実施するための液体混合装置、被記録媒体を得る工程を実施するための被記録媒体製造装置、等が挙げられる。
【0091】
液体混合装置は、複数の液体を混合する装置であれば特に制限はない。
液体混合装置は、好ましくは、液体Aを貯留する貯留部Aと、液体Bを貯留する貯留部Bと、貯留部Aから供給された液体Aと貯留部Bから供給された液体Bとを混合する混合部と、を備える。
【0092】
被記録媒体製造装置は、好ましくは、混合液付与部及び混合液乾燥部を備える。
被記録媒体製造装置は、液体混合装置を備えていてもよいし、液体混合装置を備えていなくてもよい。
被記録媒体製造装置が液体混合装置を備えていない場合には、被記録媒体製造装置の外部で調製された混合液を、被記録媒体製造装置の混合液付与部に供給する。
【0093】
液体混合装置を備える被記録媒体製造装置、及び、液体混合装置の構造については、例えば、特開2013-43364号公報(例えば段落0019~0050)に記載のインクジェット装置の構造等、公知技術を参照できる。
【0094】
被記録媒体製造装置は、画像記録の機能を備える装置であってもよい。
画像記録の機能を備える被記録媒体製造装置として、好ましくは、非浸透性基材を搬送させる搬送機構を備え、かつ、非浸透性基材の搬送方向上流側からみて、混合液付与部、混合液乾燥部、インク付与部、及びインク乾燥部をこの順に備える装置である。
この態様の被記録媒体製造装置によれば、被記録媒体の製造と、製造された被記録媒体上への画像記録と、を連続して実施できる。
画像記録の機能を備える被記録媒体製造装置の具体例については、後述する(図1参照)。
【0095】
〔画像記録方法〕
本開示の画像記録方法は、上述した本開示の被記録媒体の製造方法によって被記録媒体を製造する工程と、
製造された被記録媒体上に、着色剤及び水を含むインクを付与して画像を記録する工程と、
を有する。
【0096】
本開示の画像記録方法は、上述した本開示の被記録媒体の製造方法を含むため、本開示の画像記録方法によれば、画質及び密着性に優れた画像を記録でき、かつ、被記録媒体の成分の転写を抑制できる。
被記録媒体を製造する工程の好ましい態様は、上述した本開示の被記録媒体の製造方法の好ましい態様と同様である。
【0097】
画像を記録する工程は、被記録媒体を製造する工程で製造された被記録媒体上に、着色剤及び水を含むインクを付与して画像を記録する工程である。
【0098】
画像を記録する工程では、被記録媒体における混合液が付与された領域上の全体にインクを付与し、上記全体に画像を記録してもよいし、被記録媒体における混合液が付与された領域上の一部にインクを付与し、上記一部に画像を記録してもよい。上記一部に画像を記録した場合には、被記録媒体における混合液が付与された領域上に、画像と、画像非記録領域(即ち、インクが付与されていない領域)と、が形成される。
また、画像を記録する工程では、被記録媒体上にインクを1種のみ付与して画像を記録してもよいし、インクを2種以上付与して画像を記録してもよい。画像を記録する工程において、2色以上のインクを付与した場合には、2色以上の画像を記録することができる。
【0099】
画像を記録する工程におけるインクの付与方法としては、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用できる。
中でも、インクジェット法が好ましい。
インクジェット法におけるインクの吐出方式には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
インクジェット法としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
インクジェット法として、特開2003-306623号公報の段落番号0093~0105に記載の方法も適用できる。
【0100】
インクジェット法によるインクの付与は、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出することにより行う。
インクジェットヘッドの方式としては、短尺のシリアルヘッドを、非浸透性基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、非浸透性基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式と、がある。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に非浸透性基材を走査させることで非浸透性基材の全面に画像を記録することができる。ライン方式では、シャトル方式における、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、ライン方式では、シャトル方式と比較して、キャリッジの移動と非浸透性基材との複雑な走査制御が不要になり、非浸透性基材だけが移動する。このため、ライン方式によれば、シャトル方式と比較して、画像記録の高速化が実現できる。
【0101】
インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1pL(ピコリットル)~10pLが好ましく、1.5pL~6pLがより好ましい。
また、画像のムラ、連続階調のつながり等を改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効である。
【0102】
画像を記録する工程におけるインクの付与は、被記録媒体を製造する工程において非浸透性基材上への混合液の付与が完了した時点から65日以内に開始することが好ましく、上記時点から60日以内に開始することがより好ましく、上記時点から30日以内に開始することが更に好ましい。
インクの付与を、上記時点から65日以内に開始した場合には、画像の画質及び密着性をより向上させることができる。この理由は、インクの付与を上記時点から65日以内に開始した場合には、特定凝集剤による画像の画質向上の機能、及び、樹脂による画像の密着性向上の機能が、より効果的に発揮されるためと考えられる。
非浸透性基材上への混合液の付与が完了した時点からインクの付与を開始するまでの時間の下限には特に制限はないが、下限としては、1秒が好ましく、3秒がより好ましい。
【0103】
画像を記録する工程では、被記録媒体上にインクを付与し、付与されたインクを加熱乾燥させることにより、画像を記録することが好ましい。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
インクの加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
被記録媒体のインクが付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
被記録媒体のインクが付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
被記録媒体のインクが付与された面又は混合液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0104】
加熱乾燥時の加熱温度は、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上が特に好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましい。
インクの加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒~60秒が好ましく、5秒~60秒がより好ましく、10秒~45秒が特に好ましい。
【0105】
また、画像を記録する工程では、インクの付与前に、被記録媒体を加熱してもよい。
加熱温度としては、被記録媒体中の非浸透性基材の種類、インクの組成等に応じて適宜設定すればよいが、被記録媒体中の非浸透性基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
なお、非記録媒体を製造する工程において、混合液を加熱乾燥させる場合には、混合液の加熱乾燥のための加熱が、インク付与前の被記録媒体の加熱を兼ねていてもよい。
【0106】
<インク>
画像を記録する工程におけるインクは、着色剤及び水を含む。
インクは着色剤及び水を含むこと以外には特に制限はない。
インクは、何色のインクであってもよい。
インクとしては、ブラックインク(即ち、ブラック色のインク)、シアンインク(即ち、シアン色のインク)、マゼンタインク(即ち、マゼンタ色のインク)、イエローインク(即ち、イエロー色のインク)、ホワイトインク(即ち、ホワイト色のインク)、オレンジインク(即ち、オレンジ色のインク)、グリーンインク(即ち、グリーン色のインク)、パープルインク(即ち、パープル色のインク)、ライトシアンインク(即ち、ライトシアン色のインク)、ライトマゼンタインク(即ち、マゼンタ色のインク)、等が挙げられる。
インクの色は、インク中の着色剤の種類によって調整される。
【0107】
(着色剤)
インクは、着色剤を少なくとも1種含有する。
着色剤としては、特に限定されず、公知の着色剤が使用可能であるが、有機顔料又は無機顔料が好ましい。
【0108】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
色材としては、特開2009-241586号公報の段落0096~0100に記載の着色剤が好ましく挙げられる。
【0109】
着色剤の含有量としては、インクの全量に対して、1質量%~25質量%が好ましく、2質量%~20質量%がより好ましく、2質量%~15質量%が特に好ましい。
【0110】
(分散剤)
インクは、着色剤を分散するための分散剤を含有してもよい。分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
分散剤としては、例えば、特開2016-145312号公報の段落0080~0096に記載の分散剤が好ましく挙げられる。
【0111】
着色剤(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06~1:3の範囲が好ましく、1:0.125~1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125~1:1.5である。
【0112】
(水)
インクは、水を含有する。
水の含有量は、インクの全量に対して、好ましくは50質量%~90質量%であり、より好ましくは60質量%~80質量%である。
【0113】
(樹脂粒子)
インクは、樹脂粒子の少なくとも1種を含有してもよい。
インクが樹脂粒子を含有することにより、主にインクの被記録媒体への定着性及び耐擦過性をより向上させることができる。また、インクに含有され得る樹脂粒子は、被記録媒体上で、前述の特定凝集剤と接触した際に凝集又は分散不安定化してインクを増粘させ、インク(すなわち画像)を被記録媒体に固定化させる機能を有する。このような樹脂粒子は、水及び含水有機溶媒に分散されているものが好ましい。
樹脂粒子としては、例えば、特開2016-188345号公報の段落0062~0076に記載の樹脂粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)が好ましく挙げられる。
得られる画像の耐擦性の観点から、インクに含まれる樹脂粒子のTgは、前述した液体B中の樹脂のTgよりも高いことが好ましい。
【0114】
(水溶性溶剤)
インクは、水溶性溶剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
これにより、インクの乾燥抑制又はインクの湿潤の効果を得ることができる。
インクに含有され得る水溶性溶剤は、例えば、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ得る。
乾燥抑制及び湿潤の観点から、インクに含有される水溶性溶剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性溶剤が好ましい。
また、水溶性溶剤の1気圧(1013.25hPa)における沸点は、80℃~300℃が好ましく、120℃~250℃がより好ましい。
【0115】
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性溶剤であることが好ましい。
このような水溶性溶剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類が挙げられる。
このうち、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク全量に対し、10~50質量%の範囲とするのが好ましい。
【0116】
水溶性溶剤は、上記以外にもインクの粘度の調整のために用いられてもよい。
粘度の調整に用いることができる水溶性溶剤の具体例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
この場合、水溶性溶剤は1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
【0117】
(その他の添加剤)
インクは、上記成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0118】
〔画像記録の機能を備える被記録媒体製造装置の一例〕
以下、本開示の画像記録方法に好適に用いることができる、画像記録の機能を備える被記録媒体製造装置の一例について、図1を参照しながら説明する。
【0119】
図1は、画像記録の機能を備える被記録媒体製造装置の一例を概念的に示す図である。
図1に示されるように、本一例に係る被記録媒体製造装置は、ロール状に巻き取られている長尺形状の非浸透性基材S1を、巻き出し装置W1によって巻き出し、巻き出された非浸透性基材S1をブロック矢印の方向に搬送させ、混合液付与装置A1、混合液乾燥ゾーンDry1、インクジェットインク付与装置IJ1、及びインク乾燥ゾーンDry2をこの順に通過させ、最後に巻取り装置W2にて巻き取る装置である。
なお、図1は、概念図であるため、非浸透性基材S1の搬送経路を簡略化し、非浸透性基材S1が一方向に搬送されるかのように図示している。実際には、非浸透性基材S1の搬送経路は蛇行していてもよいことは言うまでもない。非浸透性基材S1の搬送方式としては、胴、ローラー等の各種ウェブ搬送方式を適宜選択することができる。
【0120】
混合液付与装置A1及び混合液乾燥ゾーンDry1により、上述した被記録媒体を製造する工程(即ち、被記録媒体の製造方法)が実施される。混合液乾燥ゾーンDry1は省略されていてもよい。
混合液付与装置A1における混合液の付与の方法及び条件については、「被記録媒体の製造方法」の項で例示した方法及び条件を適用できる。
混合液乾燥ゾーンDry1における乾燥の方法及び条件についても、「被記録媒体の製造方法」の項の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
また、混合液付与装置A1に対して非浸透性基材S1の搬送方向上流側には、非浸透性基材S1に表面処理(好ましくはコロナ処理)を施すための表面処理部(不図示)が設けられていてもよい。
【0121】
また、本一例に係る被記録媒体製造装置は、更に、液体Aと液体Bとを混合するための液体混合装置(不図示)であって、混合液付与装置A1に接続された液体混合装置を備えていてもよい。
液体混合装置は、例えば、液体Aを貯留する貯留部Aと、液体Bを貯留する貯留部Bと、貯留部Aから供給された液体Aと貯留部Bから供給された液体Bとを混合する混合部と、を備える。この場合、液体混合装置における混合部を、混合液付与装置A1に接続する。
【0122】
また、本一例に係る被記録媒体製造装置は、液体混合装置を備えていなくてもよい。
この場合には、被記録媒体製造装置とは別の液体混合装置を用い、また、格別の液体混合装置を用いずに手作業にて、液体Aと液体Bとを混合する。
【0123】
インク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2により、上述した画像を記録する工程が実施される。インク乾燥ゾーンDry2は省略されていてもよい。
インク付与装置IJ1における混合液の付与の方法及び条件については、画像を記録する工程の項で例示した方法及び条件を適用できる。
インク乾燥ゾーンDry2における乾燥の方法及び条件についても、画像を記録する工程の項で例示した方法及び条件を適用できる。
【0124】
図示は省略したが、インク付与装置IJ1の構造は、少なくとも1つのインクジェットヘッドを備える構造とすることができる。
インクジェットヘッドは、シャトルヘッドでも構わないが、画像記録の高速化の観点から、長尺形状の非浸透性基材の幅方向にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたラインヘッドが好ましい。
画像記録の高速化の観点から、インク付与装置IJ1の構造として、好ましくは、ブラック(K)インク用のラインヘッド、シアン(C)インク用のラインヘッド、マゼンタ(M)インク用のラインヘッド、及びイエロー(Y)インク用のラインヘッドのうちの少なくとも1つを備える構造である。
インク付与装置IJ1の構造として、より好ましくは、上記4つのラインヘッドのうちの少なくとも2つを備え、これら2つ以上のラインヘッドが、非浸透性基材の搬送方向(ブロック矢印の方向)に配列されている構造である。
インク付与装置IJ1は、更に、ホワイトインク用のラインヘッド、オレンジインク用のラインヘッド、グリーンインク用のラインヘッド、パープルインク用のラインヘッド、ライトシアンインク用のラインヘッド、及びライトマゼンタインク用のラインヘッドのうちの少なくとも1つのラインヘッドを備えていてもよい。
【0125】
本一例に係る被記録媒体製造装置により、ロール状に巻き取られている長尺形状の非浸透性基材S1を、巻き出し装置W1によって巻き出し、巻き出された非浸透性基材S1をブロック矢印の方向に搬送させ、混合液付与装置A1及び混合液乾燥ゾーンDry1によって上述した被記録媒体を製造する工程(即ち、被記録媒体の製造方法)を実施し、得られた被記録媒体(即ち、図1における混合液乾燥ゾーンDry1を通過した後の非浸透性基材S1)に対し、インクジェットインク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2により、インクの付与及び乾燥を行うことにより、画像を記録することができる。画像が記録された被記録媒体は、巻取り装置W2によって巻き取られる(以上の画像記録の態様を、以下、「態様X」とする)。
この態様Xの画像記録においては、非浸透性基材の搬送速度を調整することにより、非浸透性基材上に混合液を付与した時点からインクを付与するまでの時間を調整することができる。
【0126】
非浸透性基材上に混合液を付与した時点からインクを付与するまでの時間は、以下の態様Yの画像記録によっても調整できる。
態様Yの画像記録では、本一例に係る被記録媒体製造装置を用い、混合液付与装置A1及び混合液乾燥ゾーンDry1によって被記録媒体を製造し、得られた被記録媒体に対し、インクジェットインク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2におけるインクの付与及び乾燥を行わず、インクジェットインク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2を素通りさせ、最後に巻取り装置W2によって巻き取ることにより、画像が記録されていない被記録媒体のロール体を得る。
次に、被記録媒体のロール体を巻き出し装置W1にセットし、巻き出し装置W1によって被記録媒体を巻き出し、巻き出された被記録媒体に対し、混合液付与装置A1及び混合液乾燥ゾーンDry1における混合液の付与及び乾燥を行わず、混合液付与装置A1及び混合液乾燥ゾーンDry1を素通りさせ、次いで、インクジェットインク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2におけるインクの付与及び乾燥を行って画像を記録することにより、画像が記録された被記録媒体を得る。
態様Yの画像記録では、非浸透性基材の搬送速度に加えて、または、非浸透性基材の搬送速度に代えて、被記録媒体のロール体を得てから再び巻き出し装置W1によって被記録媒体を巻き出すまでの時間を調整することにより、非浸透性基材上に混合液を付与した時点からインクを付与するまでの時間を調整することができる。
【0127】
上述した態様Yの画像記録で説明したとおり、本一例に係る被記録媒体製造装置は、画像が記録されていない被記録媒体の製造にも用いることができる。
【0128】
また、本一例に係る被記録媒体製造装置において、インクジェットインク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2を設けなかった場合にも、画像が記録されていない被記録媒体の製造を行うことができる。この場合の被記録媒体製造装置は、画像記録の機能を備えない被記録媒体製造装置の一例である。
【実施例
【0129】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0130】
〔実施例1〕
<被記録媒体の製造>
下記組成の液体A、及び、下記組成の液体Bを、それぞれ調製した。
【0131】
-液体Aの組成-
・マロン酸(和光純薬工業(株)製;有機酸)
… 20質量%
・1,2-プロパンジオール(以下、「PG」ともいう)(和光純薬工業社製)
… 20質量%
・消泡剤1(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA-739(15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
… 消泡剤の固形分量として0.02質量%
・水
… 液体A全体で100質量%となる残部
【0132】
-液体Bの組成-
・PE1(Eastman Chemical社製のポリエステル樹脂粒子(体積平均粒径30nm)の水分散液「EastekTM1200」)
… 樹脂の量として15質量%
・水
… 全体で100質量%となる残量
【0133】
まず、液体Bを容積5Lの容器(収容される液体の液面の面積は0.05m)に供給し、ここに、液体Aを供給して混合することにより、混合液3Lを得た。混合容積比[液体A/液体B]は、表1に示すとおりとした。液体A及び液体Bの混合は、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃、雰囲気湿度55%の条件下にて行った。
得られた混合液を、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃、雰囲気湿度55%の条件下にて保管した。
混合液の保管は、上記容器を閉鎖系とした状態で行った。
【0134】
保管後の混合液、非浸透性基材としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)基材、及び、図1に示す画像記録の機能を備える被記録媒体製造装置を用い、非浸透性基材上に上記保管後の混合液を塗布し、乾燥させることにより、被記録媒体を得た。
以下、図1中の符号を用い、詳細な操作を説明する。
以下の操作も、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃、雰囲気湿度55%の条件下にて行った。但し、混合液乾燥ゾーンDry1及びインク乾燥ゾーンDry2における非浸透性基材S1の膜面温度は、以下で説明する温度(例えば80℃)となっている。
【0135】
まず、厚さ25μm、幅500mm、長さ2000mの非浸透性基材S1(フタムラ化学社製のPET基材「FE2001」)がロール状に巻き取られたロール体(以下、「ロール体1」ともいう)を準備した。このロール体1を、巻き出し装置W1にセットした。更に、混合液付与装置A1に上述の保管後の混合液を供給した。
巻き出し装置W1により、ロール体1から非浸透性基材S1を巻き出し、巻き出した非浸透性基材S1を搬送速度500mm/秒にて搬送した。
搬送中の非浸透性基材S1の片面全体に、上述の保管後の混合液を、混合液付与装置A1(実施例では、ワイヤーバーコーターとした)により、単位面積当たりの付与質量が1.7g/mとなるように塗布した。塗布された混合液に対し、混合液乾燥ゾーンDry1にて、温風を吹きつけることにより、膜面温度80℃で20秒間乾燥させた。
以上により、図1における混合液乾燥ゾーンDry1を通過した後の非浸透性基材S1として、被記録媒体を得た。
得られた被記録媒体を、インク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2をインクの付与及び乾燥を行うことなく通過させ、次いで巻取り装置W2により、巻き圧(面圧)が50kPaとなる条件で巻取った。巻取った被記録媒体(以下、「ロール体2」ともいう)を室温(25℃)で1日間放置した。
【0136】
以上の操作において、液体A及び液体Bの混合を開始した時点から非浸透性基材上への混合液の塗布を開始するまでの時間は、表1の「混合開始から混合液付与開始までの時間」の欄に示すとおりとした。
また、非浸透性基材上への混合液の塗布は、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃、雰囲気55%の条件下で行った。
【0137】
また、Mw2/Mw1は、表1に示すとおりであった。
Mw1は、液体Aと混合する前の液体B中の樹脂の重量平均分子量であり、Mw2は、混合液を非浸透性基材上に塗布する直前(詳細には、混合液を塗布する時点の1分前以降であって塗布する時点よりも前の時点)における混合液中の樹脂の重量平均分子量である。
【0138】
<成分の転写の評価>
上記室温(25℃)で1日間放置した被記録媒体(ロール体2)の巻取りをほどき、被記録媒体のウラ面(即ち、混合液が付与された面とは反対側の面)への成分の転写の有無を目視により確認し、また、下記測定方法に従い成分の転写量を評価した。
具体的には、巻取りの終端部から長さ方向に1000mの位置において、A4サイズ(被記録媒体の長さ方向に29.7cm、被記録媒体の幅方向に21cm)の長方形状のサンプルを切り出し、切り出したサンプルにおける成分の転写量を下記方法により測定し、転写量の算術平均値を算出した。
被記録媒体からA4サイズのサンプルを切り出す位置は、A4サイズのサンプルの長さ方向の中心と上記1000mの位置とが一致し、かつ、A4サイズのサンプルの幅方向の中心と被記録媒体の幅方向の中心とが一致する位置とした。
【0139】
(成分の転写量の測定方法)
FABES Forschungs社製MigraCell(登録商標) MC150を用い、成分の転写量を測定した。
具体的には、サンプルの裏面が抽出面となるようにMC150にセットし、溶媒(メタノール/水=1:1(体積比))を20mL加えて蓋をして1日間放置した。セットした位置は、サンプルの中央とMC150における抽出領域の中央とが目視で重なる位置とした。
上記放置の終了後に、溶媒を取り出し乾燥させた。溶媒の乾燥物の質量を抽出面積(2.0dm)で除算することにより被記録媒体の単位面積当たりの抽出量(成分の転写量、mg/dm)を算出し、下記評価基準に従って、成分の転写を評価した。
結果を表1に示す。
下記評価基準において、成分の転写がもっとも抑制されているランクは「5」である。
【0140】
-成分の転写の評価基準-
5:転写物は視認できず、転写量が0.01mg/dm以下であった
4:転写物は視認できず、転写量が0.01mg/dmを超え、0.5mg/dm以下であった
3:転写物は視認できず、転写量が0.5mg/dmを超え、5mg/dm以下であった
2:部分的に転写物が視認できた
1:全面に転写物が視認できた
【0141】
<画質の評価>
非浸透性基材上に混合液を塗布し、乾燥させて被記録媒体を製造し、製造された被記録媒体のオモテ面(混合液が塗布された側の面)に、インクを付与し、乾燥させて画像を記録した。
具体的には、以下の点を変更したこと以外は上述した「被記録媒体の製造」と同様の操作を行った。
【0142】
(上述した「被記録媒体の製造」に対する変更点の概要)
・非浸透性基材S1の搬送速度635mm/秒に変更した。
・混合液の乾燥条件を、膜面温度50℃、2秒間に変更した。
・混合液乾燥ゾーンDry1を通過した後の非浸透性基材S1(被記録媒体)に対し、インク付与装置IJ1においてインク(詳細には、後述するシアンインク1)の付与を行い、インク乾燥ゾーンDry2においてインクの乾燥を行って文字画像を記録した。
・非浸透性基材S1上への混合液の付与が完了してから、インクが付与されるまでの時間は、表1の「混合液付与完了からインク付与開始までの時間」欄に示すとおりとした。
【0143】
(インク)
画質の評価におけるインクとしては、以下の組成のシアンインク1を用いた。
-シアンインク1の組成-
・Projet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製、シアン顔料分散液、顔料濃度:12質量%)
… 固形分量として2.4質量%
・1,2-PD(有機溶剤A;1,2-プロパンジオール、20℃蒸気圧(表1中では「20℃VP」)0.01kPa、SP値35MPa1/2、和光純薬工業(株)製)
… 20質量%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製)
… 1質量%
・以下のようにして合成された自己分散性ポリマー粒子B-01(樹脂粒子)
… 8質量%
・スノーテックス(登録商標)XS(日産化学(株)製、コロイダルシリカ)
… シリカの固形分量として0.06質量%
・水
… 全体で100質量%となる残量
【0144】
-自己分散性ポリマー粒子B-01の合成-
自己分散性ポリマー粒子B-01は、以下のようにして作製した。
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。次いで反応容器内の還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流状態を保った)、反応容器内のメチルエチルケトンに対し、メチルメタクリレート220.4g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V-601」(和光純薬工業(株)製の重合開始剤;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間撹拌した後に、この1時間撹拌後の溶液に対し、下記工程(1)の操作を行った。
工程(1) … 「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間撹拌を行った。
続いて、上記工程(1)の操作を4回繰り返し、次いで、さらに「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間撹拌を続けた(ここまでの操作を、「反応」とする)。
反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷することにより、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=38/52/10[質量比])共重合体を含む重合溶液(固形分濃度41.0%)を得た。
上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が63000であり、酸価が65.1(mgKOH/g)であった。
次に、得られた重合溶液317.3g(固形分濃度41.0質量%)を秤量し、ここに、イソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3質量%相当)、及び2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内の液体の温度を70℃に昇温した。
次に、70℃に昇温された溶液に対し、蒸留水380gを10ml/分の速度で滴下し、水分散化を行った。
その後、減圧下、反応容器内の液体の温度を70℃で1.5時間保つことにより、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)。得られた液体に対し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)を0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン-3-オンとして440ppm)添加した。
得られた液体を、1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収することにより、固形分濃度26.5質量%の自己分散性ポリマー粒子B-01の水性分散物を得た。
【0145】
(インク付与条件の詳細)
・インク付与装置IJ1におけるインクジェットヘッド:1,200dpi(dot per inch、1 inchは2.54cm)/20inch幅ピエゾフルラインヘッドを4色分配置したヘッドを用いた。
・インク滴量:各2.4pLとした。
・駆動周波数:30kHz(基材搬送速度635mm/秒)とした。
【0146】
(インクの乾燥条件の詳細)
・インク乾燥ゾーンDry2における乾燥方法:温風による加熱乾燥
・乾燥条件:80℃、30秒
【0147】
(記録された文字画像の詳細)
被記録媒体上に記録された文字画像は、図2に示す文字画像(unicode:U+9DF9;2pt、3pt、4pt、及び5pt)とした。ここで、ptはフォントサイズを表すDTPポイントを意味し、1ptは1/72inchである。
【0148】
(画質の評価方法)
被記録媒体上に記録された文字画像を観察し、下記評価基準により、画質の評価を行った。
結果を表1に示す。
下記評価基準において、画質がもっとも優れるランクは「5」である。
【0149】
-画質の評価基準-
5: 2pt文字が再現可能
4: 3pt文字が再現可能であったが、2ptの文字は再現できなかった。
3: 4pt文字が再現可能であったが、3pt以下の文字は再現できなかった。
2: 5pt文字が再現可能であったが、4pt以下の文字は再現できなかった。
1: 5pt文字が再現できなかった。
なお、上記「再現可能」とは、0.5m離れた場所から確認した場合に、図2に記載の文字画像において、図3に記載の11で表された横線と、図3に記載の12で表された横線とが、分離されていることを意味する。
【0150】
<密着性の評価>
文字画像ではなくベタ画像を記録したこと以外は上記画質の評価と同様の条件で、被記録媒体上にベタ画像(シアンベタ画像)を記録した。
記録されたベタ画像上に、セロテープ(登録商標、No.405、ニチバン(株)製、幅12mm、以下、単に「テープ」ともいう。)のテープ片を貼り付け、次いでテープ片を剥離することにより、画像の密着性を評価した。
テープの貼り付け及び剥離は、具体的には、下記の方法により行った。
一定の速度でテープを取り出し、約75mmの長さにカットし、テープ片を得た。
得られたテープ片をベタ画像上に重ね、テープ片の中央部の幅12mm、長さ25mmの領域を指で貼り付け、指先でしっかりこすった。
テープ片を貼り付けてから5分以内に、テープ片の端をつかみ、できるだけ60°に近い角度で0.5~1.0秒で剥離した。
剥離したテープ片における付着物の有無と、被記録媒体上のベタ画像の剥がれの有無と、を目視で観察し、下記評価基準に従い、画像の密着性を評価した。
結果を表1に示す。
下記評価基準において、密着性がもっとも優れるランクは「5」である。
【0151】
-密着性の評価基準-
5: テープ片に付着物が認められず、被記録媒体上の画像の剥がれも認められない。
4: テープ片に若干の色付きの付着物が認められたが、被記録媒体上の画像の剥がれは認められない。
3: テープ片に若干の色付きの付着物が認められ、被記録媒体上の画像に若干の剥がれが認められるが、実用上許容できる範囲内である。
2: テープ片に色付きの付着物が認められ、被記録媒体上の画像に剥がれも認められ、実用上許容できる範囲を超えている。
1: テープ片に色付きの付着物が認められ、被記録媒体上の画像がほとんど剥がれ、被記録媒体が視認される。
【0152】
〔実施例2~24〕
液体Aの組成、液体Bの組成、混合容積比[液体A/液体B]、及び、混合開始から混合液付与開始までの時間のうちの少なくとも1つを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0153】
〔実施例25及び26〕
以下の点以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0154】
-実施例1からの変更点-
画質の評価及び密着性の評価は、実施例1における「被記録媒体の製造」で得られた被記録媒体(ロール体2)を用いて行った。
ロール体2を、雰囲気温度25℃、雰囲気湿度55%の条件下にて保管した。ロール体2を保管する時間は、混合液付与完了からインク付与開始までの時間が表1に示す時間となるように調整した。
保管後のロール体2から被記録媒体を巻き出し、巻き出された被記録媒体に対し、実施例1と同様の条件で、画質の評価用の文字画像及び密着性の評価用のベタ画像をそれぞれ記録した。記録された文字画像及びベタ画像について、画質の評価及び密着性の評価を行った。
【0155】
〔比較例1~6〕
液体Aの組成、液体Bの組成、混合容積比[液体A/液体B]、及び、混合開始から混合液付与開示までの時間の組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
-特定凝集剤-
・金属錯体1
… マツモトファインケミカル(株)製の「オルガチックスTC-310」(チタンラクテート)
・CaCl2
… 和光純薬工業(株)製のCaCl
・マロン酸
… 和光純薬工業(株)製のマロン酸
・リンゴ酸
… 和光純薬工業(株)製のリンゴ酸
-溶剤-
・PG
… プロピレングリコール(和光純薬工業(株)社製)
-消泡剤-
・消泡剤1
… モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「TSA-739」(エマルジョン型シリコーン消泡剤の水分散液、固形分15%)(表1中の量は固形分としての量)
【0158】
-樹脂-
・PE1
… Eastman Chemical社製「Eastek1200」(ポリエステル樹脂粒子(体積平均粒径30nm)の水分散物)(表1中の量は固形分としての量)
・PU1
… 第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス500M」(ノニオン性ポリウレタン樹脂粒子(体積平均粒径140nm)の水分散液)(表1中の量は固形分としての量)
・AC1
… ダイセルファインケム社製の「EM57DOC」(アクリル樹脂粒子(体積平均粒径70nm)の水分散物)
【0159】
表1に示すように、混合開始から混合液付与開始までの時間が30日以下である実施例1~26、即ち、保管後の混合液を、液体Aと液体Bとの混合を開始した時点から30日以内に非浸透性基材上に付与した実施例1~26では、成分の転写が抑制され、かつ、記録される画像の画質に優れていた。更に、画像の密着性にも優れていた。
これに対し、混合開始から混合液付与開始までの時間が30日超である比較例1~6では、成分の転写を抑制できなかった。
特に、液体B中の樹脂として、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂を用い、混合開始から混合液付与開始までの時間が30日超である比較例1、2、4及び5では、それぞれ、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂を用い、混合開始から混合液付与開始までの時間が30日以下である実施例1、13、22、及び23と比較して、成分の転写が著しくなり、また、画像の密着性も低下した。このことから、比較例1、2、4及び5では、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂の加水分解が起こり、樹脂の機能が著しく劣化していると考えられる。
【0160】
実施例1及び2の結果から、混合開始から混合液付与開始までの時間が30分以上である場合(実施例2)には、成分の転写がより抑制されることがわかる。
実施例4及び5の結果から、混合開始から混合液付与開始までの時間が10日以下である場合(実施例4)には、成分の転写がより抑制されることがわかる。
【0161】
実施例7及び8の結果から、混合容積比[液体A/液体B]が0.5以上である場合(実施例7)には、成分の転写がより抑制されることがわかる。
実施例9及び10の結果から、混合容積比[液体A/液体B]が2.5以下である場合(実施例9)には、成分の転写がより抑制されることがわかる。
【0162】
実施例4、11、12、及び22の結果から、液体A中の特定凝集剤が有機酸である場合(実施例4及び11)には、画質により優れることがわかる。
【0163】
実施例4、15、及び21の結果から、液体B中の樹脂がポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む場合(実施例4及び15)には、成分の転写がより抑制され、かつ、密着性がより向上することがわかる。
更に、実施例4と比較例1との対比(ポリエステル樹脂)、実施例15と比較例2との対比(ポリウレタン樹脂)、及び、実施例21と比較例3との対比(アクリル樹脂)から、液体B中の樹脂がポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくとも一方を含む場合(実施例4及び15)には、実施例21と比較して、成分の転写及び密着性向上の改善幅がより大きいことがわかる。
【0164】
実施例5及び6の結果から、Mw2/Mw1が0.70以上1.00以下である場合(実施例5)には、成分の転写がより抑制されることがわかる。
【0165】
実施例25及び26の結果から、混合液付与からインク付与までの時間が60日以内である場合(実施例25)には、成分の転写がより抑制され、かつ、密着性がより向上することがわかる。
【0166】
以上、インクとして、シアンインクを用いた実施例群について説明したが、これらの実施例群において、シアンインクをシアンインク以外のインク(例えば、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク等)に変更した場合、又は、シアンインクに加えてシアンインク以外のインクの少なくとも1つを用いて多色の画像を記録した場合にも、上述した実施例群と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0167】
2018年2月5日に出願された日本国特許出願2018-018590号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3