(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220704BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220704BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/44 E
(21)【出願番号】P 2020054334
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】稲田 哲明
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181149(JP,A)
【文献】特開2013-065791(JP,A)
【文献】特開2017-034013(JP,A)
【文献】特開2011-135003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板が載置される載置部を複数有する基板支持部と、を備え、
前記処理室は、前記基板に処理ガスを供給する処理領域と、前記基板をパージするパージ領域と、を有し、
前記パージ領域は、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、
前記基板支持部と対向し、前記第1パージ領域と前記第2パージ領域に連続して設けられる天井と、を有し、
前記第1パージ領域における前記天井の高さは、前記第2パージ領域における前記天井の高さよりも低く構成される
基板処理装置。
【請求項2】
前記パージ領域には
、前記天井と連続して形成され、前記第1パージ領域と前記第2パージ領域とを仕切る仕切
部が設けら
れる請求項1
に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1パージ領域に接続される排気配管の径は、前記第2パージ領域に接続される排気配管の径よりも大きく構成される請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理室を構成する処理容器の天板の下面により前記天井が構成され、
前記第1パージ領域の天板の上面の高さは、前記第2パージ領域の天板の上面の高さよりも低く構成される請求項
1又は2
に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2パージ領域における圧力は、前記処理領域における圧力よりも低く構成される請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1パージ領域における前記基板の移動距離は、前記第2パージ領域における前記基板の移動距離よりも長くなるよう構成される請求項1から5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記パージ領域は、第3の圧力でパージする第3パージ領域をさらに有し、
前記第2パージ領域と前記第3パージ領域に、パージガスを供給するパージガス供給部と、
前記第3パージ領域における圧力が、前記処理領域における圧力よりも低く、前記第2パージ領域における圧力よりも高くなるように、前記第2パージ領域と前記第3パージ領域における排気量と、前記パージガス供給部によるパージガスの供給流量のいずれか又は両方を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板が載置される載置部を複数有する基板支持部を備え、処理ガスを供給する処理領域と、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、
前記基板支持部と対向し、前記第1パージ領域と前記第2パージ領域に連続して設けられる天井と、を備え、前記第1パージ領域における前記天井の高さは、前記第2パージ領域における前記天井の高さよりも低く構成される処理室内で、
前記基板に対して、前記処理ガスを供給する工程と、
前記基板に対して、前記第1の圧力でパージする工程と、
前記基板に対して、前記第1の圧力の少なくとも前または後に、前記第2の圧力でパージする工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板が載置される載置部を複数有する基板支持部を備え、処理ガスを供給する処理領域と、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、
前記基板支持部と対向し、前記第1パージ領域と前記第2パージ領域に連続して設けられる天井と、を備え、前記第1パージ領域における前記天井の高さは、前記第2パージ領域における前記天井の高さよりも低く構成される基板処理装置の処理室内で、
前記基板に対して、前記処理ガスを供給する手順と、
前記基板に対して、前記第1の圧力でパージする手順と、
前記基板に対して、前記第1の圧力の少なくとも前または後に、前記第2の圧力でパージする手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を処理する装置として、複数の基板を基板載置台上に周方向に配置し、その基板載置台を回転させて複数の基板に複数種類のガスを供給する回転型装置(特許文献1参照)が知られている。また、複数の基板が積載された状態で、基板の積載方向に延在する原料ガスノズルを用いて複数の基板に原料ガスを供給する縦型装置(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-34013号公報
【文献】特開2017-147262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイスの3次元構造化に伴い、高いアスペクト比の溝内にカバレッジよく成膜処理を行うことが求められている。回転型装置では、処理室が複数の処理領域に仕切られて、各処理領域で各処理が為される。そのため、成膜ガスにより生成された副生成物を溝内から除去する必要がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するものであり、高いアスペクト比の溝内の副生成物を除去してパーティクルの発生を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板が載置される載置部を複数有する基板支持部と、を備え、
前記処理室は、前記基板に処理ガスを供給する処理領域と、前記基板をパージするパージ領域と、を有し、
前記パージ領域は、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、
を有する技術を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、副生成物を除去してパーティクルの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの横断面概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの縦断面概略図であり、
図1に示すリアクタのA-A'線断面図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る基板支持機構を説明する説明図である。
【
図4】
図4(A)は、本開示の一実施形態に係る原料ガス供給部を説明する説明図である。
図4(B)は、本開示の一実施形態に係る反応ガス供給部を説明する説明図である。
図4(C)は、本開示の一実施形態に係る不活性ガス供給部を説明する説明図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの縦断面概略図であり、
図1に示すリアクタのB-B'線断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るコントローラを説明する説明図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る成膜工程を説明するフロー図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの縦断面概略図であり、
図1に示すリアクタのB-B'線断面図の変形例である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの縦断面概略図であり、
図1に示すリアクタのB-B'線断面図の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1および
図2に示されているように、リアクタ200は、円筒状の気密容器である処理容器203を備えている。処理容器203は、例えばステンレス(SUS)やアルミ合金等で構成されている。処理容器203内には、基板Sを処理する処理室201が構成されている。処理容器203にはゲートバルブ205が接続されており、ゲートバルブ205を介して基板Sが搬入出される。
【0010】
処理室201は、処理ガスを供給する処理領域206と領域内をパージするパージ領域207を有する。すなわち、処理室201は、基板Sに処理ガスを供給する処理領域206と、基板Sをパージするパージ領域207と、を有する。ここでは処理領域206とパージ領域207は、円周状に交互に配される。例えば、第1処理領域206a、パージ領域207a、第2処理領域206bおよびパージ領域207bの順に配される。後述するように、第1処理領域206a内には原料ガスが供給され、第2処理領域206b内には反応ガスが供給される。これにより、第1処理領域206aと第2処理領域206b内に供給されるガスに応じて、基板Sに対して所定の処理が施される。
【0011】
パージ領域207aとパージ領域207bは、それぞれ第1処理領域206aと第2処理領域206bとを空間的に切り分ける領域である。パージ領域207a,207bの天井208は、詳細には後述するが、天板209の下面である処理領域206の天井よりも低くなるよう構成されている。パージ領域207a,207bには、基板支持部としての回転テーブル217と対向する位置にそれぞれ天井208a,208bが設けられている。この空間をパージすることで、基板S上の余分なガスを除去している。また、この空間をパージすることで、隣り合う処理領域206を区画している。
【0012】
処理容器203の中央には、例えば処理容器203の中心に回転軸を有し、回転自在に構成される回転テーブル217が設けられている。回転テーブル217は、基板Sへの金属汚染の影響が無いように、例えば、石英、カーボンまたはSiC等の材料で形成されている。
【0013】
回転テーブル217は、処理容器203内に、複数枚(例えば5枚)の基板Sを同一面上に、且つ回転方向に沿って同一円周上に並べて支持するよう構成される。ここでいう「同一面」とは、完全な同一面に限られるものではなく、回転テーブル217を上面から見たときに、複数枚の基板Sが互いに重ならないように並べられていればよい。
【0014】
回転テーブル217表面における基板Sの支持位置には、基板Sが載置される載置部としての凹部217bが複数設けられている。処理する基板Sの枚数と同数の凹部217bが回転テーブル217の中心から同心円上の位置に互いに等間隔(例えば72°の間隔)で配置されている。なお、
図1においては、説明の便宜上図示を省略している。
【0015】
それぞれの凹部217bは、例えば回転テーブル217の上面から見て円形状であり、側面から見て凹形状である。凹部217bの直径は基板Sの直径よりもわずかに大きくなるように構成することが好ましい。この凹部217bの底には基板載置面が設けられており、凹部内に基板Sを載置することにより、基板Sを基板載置面に載置できる。各凹部217bには、後述するピン219が貫通する貫通孔217aが複数設けられている。
【0016】
処理容器203のうち、回転テーブル217下方であってゲートバルブ205と向かい合う箇所には、
図3に記載の基板保持機構218が設けられている。基板保持機構218は、基板Sの搬入・搬出時に、基板Sを突き上げて、基板Sの裏面を支持するピン219を複数有する。ピン219は延伸可能な構成であって、例えば基板保持機構218本体に収納可能である。基板Sを移載する際には、ピン219が延伸され貫通孔217aを貫通すると共に、基板Sを保持する。その後、ピン219の先端が下方に移動することで、基板Sは凹部217bに載置される。基板保持機構218は、例えば処理容器203に固定する。基板保持機構218は、基板載置時にピン219を孔217aに挿入可能な構成であればよく、後述する内周凸部282や外周凸部283に固定してもよい。
【0017】
回転テーブル217はコア部221に固定される。コア部221は回転テーブル217の中心に設けられ、回転テーブル217を固定する役割を有する。回転テーブル217を支持する構造であることから、重量に耐えられるよう金属が用いられる。コア部221の下方にはシャフト222が配される。シャフト222はコア部221を支持する。
【0018】
シャフト222の下方は、処理容器203の底部に設けられた孔223を貫通し、処理容器203外で気密可能な容器204で覆われている。また、シャフト222の下端は回転部224に接続される。回転部224は回転軸やモータ等を搭載し、後述するコントローラ300の指示によって回転テーブル217を回転可能に構成される。すなわち、コントローラ300が、基板S外のある点であるコア部221を中心として、回転部224が回転テーブル217を回転させることにより第1処理領域206a、パージ領域207a、第2処理領域206bおよびパージ領域207bの順に基板Sを順次通過させる。
【0019】
コア部221を覆うように石英カバー225が設けられる。すなわち、石英カバー225はコア部221と処理室201との間に設けられている。石英カバー225は、空間を介してコア部221を覆うよう構成される。石英カバー225は基板Sへの金属汚染の影響が無いように、例えば、石英やSiC等の材料で形成されている。コア部221、シャフト222、回転部224、石英カバー225をまとめて支持部と呼ぶ。
【0020】
回転テーブル217の下方には、加熱部としてのヒータ280を内包するヒータユニット281が配される。ヒータ280は、回転テーブル217に載置した各基板Sを加熱する。ヒータ280は、処理容器203の形状に沿って円周状に構成される。
【0021】
ヒータユニット281は、処理容器203の底部上であって、処理容器203の中心側に設けられた内周凸部282と、ヒータ280よりも外周側に配される外周凸部283と、ヒータ280とで主に構成される。内周凸部282、ヒータ280、外周凸部283は、同心円状に配される。内周凸部282と外周凸部283の間には空間284が形成される。ヒータ280は空間284に配される。内周凸部282、外周凸部283は処理容器203に固定されるものでもあるので、処理容器203の一部として考えてもよい。
【0022】
ここでは円周状のヒータ280と説明したが、基板Sを加熱できればそれに限るものではなく、複数分割した構造としてもよい。また、回転テーブル217内に、ヒータ280を内包した構造としてもよい。
【0023】
内周凸部282の上部であってヒータ280側にはフランジ282aが形成される。窓285はフランジ282aと外周凸部283の上面で支持される。窓285はヒータ280から発生する熱を透過する材質であり、例えば石英で構成される。窓285は後述する排気構造286の上部286aと内周凸部282によって挟まれることで固定される。
【0024】
ヒータ280には、ヒータ温度制御部287が接続される。ヒータ280は後述するコントローラ300に電気的に接続され、コントローラ300の指示によってヒータ280への電力供給を制御し、温度制御を行う。
【0025】
処理容器203の底部には、空間284と連通する不活性ガス供給管275が設けられる。不活性ガス供給管275は後述する不活性ガス供給部270に接続される。不活性ガス供給部270から供給された不活性ガスは、不活性ガス供給管275を介して空間284に供給される。空間284を不活性ガス雰囲気とすることで、処理ガスが窓285付近の隙間等から侵入することを防ぐ。
【0026】
外周凸部283の外周面と処理容器203の内周面との間には、金属製の排気構造286が配される。排気構造286は、排気溝288と排気バッファ空間289を有する。排気溝288、排気バッファ空間289は、処理容器203の形状に沿って円周状に構成される。
【0027】
排気構造286のうち外周凸部283と接触しない箇所を上部286aと呼ぶ。前述のように、上部286aは、内周凸部282と共に窓285を固定する。
【0028】
本実施形態のような回転型基板処理装置においては、基板Sの高さと排気口とを同じ高さにするか、あるいは高さを近づけることが望ましい。仮に排気口の高さが低い場合、回転テーブル217の端部でガスの乱流が発生する恐れがある。これに対して、同じ高さとするか、あるいは高さを近づけることで、排気口側の基板エッジにおいても乱流が発生しないようにする。
【0029】
本実施形態においては排気構造286の上端を回転テーブル217と同じ高さとしている。この場合、
図2のように上部286aが窓285からはみ出す部分が発生するため、パーティクル拡散防止の観点から、その部分には石英カバー290を設ける。仮に石英カバー290が無い場合、上部286aにガスが接触して上部286aが腐食し、処理室201内にパーティクルを発生させる恐れがある。石英カバー290と上部286aとの間には空間299を設ける。
【0030】
排気構造286の底には、第1の排気部としての排気口291、排気口292が設けられる。排気口291は第1処理領域206aに供給される原料ガスを主に排気する。排気口292は処理空間206bに供給される反応ガスを主に排気する。各ガスは排気溝288、排気バッファ空間289を介して排気口291、排気口292から排気される。
【0031】
続いて
図1及び
図4(A)を用いて原料ガス供給部240を説明する。
図1に記載のように、処理容器203の側方には処理容器203の中心方向に向かって延在するノズル245が挿入される。ノズル245は、第1処理領域206aに配される。ノズル245には、ガス供給管241の下流端が接続される。
【0032】
ガス供給管241には、上流方向から順に、原料ガス供給源242、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243、及び開閉弁であるバルブ244が設けられている。
【0033】
原料ガスは、MFC243、バルブ244、ガス供給管241を介して、ノズル245から第1処理領域206a内に供給される。
【0034】
ここでいう「原料ガス」とは、処理ガスの一つであり、薄膜形成の際の原料になるガスである。原料ガスは、薄膜を構成する元素として、例えばシリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、およびタングステン(W)、モリブデン(Mo)の少なくともいずれか一つを含む。
【0035】
具体的には、本実施形態では、原料ガスは、例えば、ジクロロシラン(Si2H2Cl2)ガスである。原料ガスの原料が常温で気体である場合、MFC243は気体用のマスフローコントローラである。
【0036】
主に、ガス供給管241、MFC243、バルブ244、ノズル245により、原料ガス供給部(第1ガス供給系、もしくは原料ガス供給部と呼んでもよい。)240が構成される。なお、原料ガス供給源242を原料ガス供給部240に含めて考えてもよい。
【0037】
続いて
図1及び
図4(B)を用いて反応ガス供給部250を説明する。
図1に記載のように、処理容器203の側方には処理容器203の中心方向に向かって延在するノズル255が挿入される。ノズル255は第2処理領域206bに配される。
【0038】
ノズル255には、ガス供給管251が接続されている。ガス供給管251には、上流方向から順に、反応ガス供給源252、MFC253、及びバルブ254が設けられている。
【0039】
反応ガスは、MFC253、バルブ254、ガス供給管251を介して、ノズル255から第2処理領域206b内に供給される。
【0040】
ここでいう「反応ガス」とは、処理ガスの一つであり、基板S上に原料ガスによって形成された第1層と反応するガスである。反応ガスは、例えばアンモニア(NH3)ガス、窒素(N2)ガス、水素(H2)ガス、および酸素(O2)ガスの少なくともいずれか一つである。ここでは、反応ガスは、例えばNH3ガスである。
【0041】
主に、ガス供給管251、MFC253、バルブ254、ノズル255により反応ガス供給部(第2ガス供給部)250が構成される。なお、反応ガス供給源252を反応ガス供給部250に含めて考えてもよい。
【0042】
続いて
図2及び
図4(C)を用いて不活性ガス供給部270を説明する。不活性ガス供給管275には、不活性ガス供給管271の下流端が接続されている。不活性ガス供給管271には、上流方向から順に、不活性ガス供給源272、MFC273、及びバルブ274が設けられている。不活性ガスは、MFC273、バルブ274、不活性ガス供給管271を介して、不活性ガス供給管275から空間284、容器204に供給される。
【0043】
容器204に供給された不活性ガスは、回転テーブル217と窓285の間の空間を介して、排気溝288から排気される。このような構造とすることで、原料ガスや反応ガスが回転テーブル217と窓285の間の空間に回り込むことを防ぐ。
【0044】
主に、不活性ガス供給管271、MFC273、バルブ274、不活性ガス供給管275により不活性ガス供給部270が構成される。なお、不活性ガス供給源272を不活性ガス供給部270に含めて考えてもよい。
【0045】
ここで「不活性ガス」は、例えば、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスの少なくともいずれか一つである。ここでは、不活性ガスは、例えばN2ガスである。
【0046】
図1及び
図2に示されているように、処理容器203には排気口291と、排気口292が設けられている。
【0047】
排気口291は、第1処理領域206aの回転方向Rの下流側の回転テーブル217よりも外側に設けられる。これにより、熱分解されて基板Sに供給された原料ガスを第1処理領域206aから排出し、熱分解された原料ガスによる基板への影響を抑制することができる。主に原料ガスを排気する。排気口291と連通するよう、排気部234の一部である排気管234aが設けられる。排気管234aには、開閉弁としてのバルブ234d、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ234cを介して、真空排気装置としての真空ポンプ234bが接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0048】
排気管234a、バルブ234d、APCバルブ234cをまとめて排気部234と呼ぶ。なお、真空ポンプ234bを排気部234に含めてもよい。
【0049】
また、
図1及び
図2に示されているように、排気口292と連通するよう、排気部235が設けられる。排気口292は、第2処理領域206bの回転方向Rの下流側の回転テーブル217よりも外側に設けられる。主に反応ガスを排気する。
【0050】
排気口292と連通するよう、排気部235の一部である排気管235aが設けられる。排気管235aには、バルブ235d、APCバルブ235cを介して、真空ポンプ235bが接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0051】
排気管235a、バルブ235d、APCバルブ235cをまとめて排気部235と呼ぶ。なお、真空ポンプ235bを排気部235に含めてもよい。
【0052】
次に、パージ領域207a,207bの詳細を
図1と
図5を用いて説明する。なお、パージ領域207bは、パージ領域207aと同様の構成であるため、説明を省略する。
図5は、
図1に示すリアクタのB-B'線断面図であって、
図2のC方向から見た断面図である。
【0053】
パージ領域207aは、回転テーブル217の回転方向であるR方向(基板Sの搬送方向ともいう)上流側から第1領域207a-1と、第2領域207a-2と、第3領域207a-3の順に3つの領域に区画されている。なお、第2領域207a-2は、第1の圧力でパージする第1パージ領域として用いられる。また、第1領域207a-1、第3領域207a-3は、第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域として用いられる。
【0054】
パージ領域207aには、回転テーブル217と対向して天井208aが設けられている。第1領域207a-1、第2領域207a-2、第3領域207a-3の天井208aは、それぞれ高さが異なるよう構成されている。天井208aは、処理室201を構成する処理容器203の天板209の下面に接続されて構成されている。
【0055】
第1処理領域206aと第1領域207a-1の間には、第1処理領域206aと第1領域207a-1とを仕切る仕切部402が形成されている。また、第1領域207a-1と第2領域207a-2の間には、第1領域207a-1と第2領域207a-2とを仕切る仕切部403が形成されている。また、第2領域207a-2と第3領域207a-3の間には、第2領域207a-2と第3領域207a-3とを仕切る仕切部404が形成されている。また、第3領域207a―3と第2処理領域206bの間には、第3領域207a-3と第2処理領域206bとを仕切る仕切部405が形成されている。仕切部402~405は、それぞれ天井208aの一部であり、天井208aと連続して形成されている。仕切部402~405の高さ(回転テーブル217の上面から各仕切部の下端までの距離)は、凹部217bに載置された基板Sが通過可能な高さであって、例えば3mm~5mmである。
【0056】
第1領域207a―1の天井208aの高さ(回転テーブル217の上面から天井208aの下面までの距離)は、第1処理領域206aの天井の高さ(回転テーブル217の上面から天板209の下面までの距離)よりも低くなるよう構成されている。また、第2領域207a―2の天井208aの高さは、第1領域207a―1の天井208aの高さよりも低く、仕切部403の下端位置以上の高さになるよう構成されている。また、第2領域207a―2の天井208aの高さは、第3領域207a―3の天井208aの高さよりも低く、仕切部404の下端位置以上の高さになるよう構成されている。また、第3領域207a-3の天井208aの高さは、第2処理領域206bの天井の高さよりも低くなるよう構成されている。ここでは、第1領域207a―1の天井208aの高さと第3領域207a―3の天井208aの高さを同等とする。
【0057】
天井208aと天板209には、第1領域207a-1、第2領域207a―2及び第3領域207a-3にそれぞれ連通する排気路401a-1,401a-2,401a-3が形成されている。排気路401a-1,401a-2,401a-3は、それぞれ排気配管236a,236b,236cに接続されている。排気配管236a,236b,236cは、それぞれバルブ236e,236f,236gを介して排気配管236dに接続されている。排気配管236dは、真空装置としての真空ポンプ236jに接続されている。また、排気配管236bのバルブ236fの上流側には、分岐路236hが接続されている。分岐路236hは、バルブ236i、補助ポンプ236k、排気配管236dを介して真空ポンプ236jに接続されている。バルブ236e,236f,236g,236iとして、例えばエアバルブやAPCバルブ、またはそれら両方を用いることができる。第1領域207a-1、第2領域207a-2、第3領域207a-3内の圧力がそれぞれ所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0058】
また、第2領域207a-2の排気路401a-2に接続される排気配管236bの内径は、第1領域207a-1、第3領域207a-3の、排気路401a-1,401a-3にそれぞれ接続される排気配管236a,236cの内径よりも大きく構成される。
【0059】
すなわち、第1領域207a-1、第2領域207a-2、第3領域207a-3内のガスを、各領域の上方から真空排気するよう構成されている。また、第2領域207a-2においては、さらに補助ポンプ236kを使用して、他の領域よりさらに減圧し、真空度を高めて第2領域207a-2内のガスを真空排気するよう構成されている。
【0060】
排気配管236a~236d、バルブ236e~236g、分岐路236h、バルブ236iをまとめて排気部236と呼ぶ。なお、真空ポンプ236jと補助ポンプ236kを排気部236に含めてもよい。
【0061】
同様に、パージ領域207bにおける各領域に接続される排気配管237a~237d、バルブ237e~237g、分岐路237h、バルブ237iをまとめて排気部237と呼ぶ。なお、真空ポンプ237jと補助ポンプ237kを排気部237に含めてもよい。
【0062】
本実施形態では、第1領域207a-1の天井208aの高さを、第1処理領域206aの天井の高さよりも低くすることにより、第1領域207a-1における圧力を、第1処理領域206aにおける圧力よりも低くしている。また、第2領域207a-2の天井208aの高さを、第1領域207a-1の天井208aの高さよりも低くすることにより、第1領域207a-1における圧力よりも第2領域207a-2における圧力を低くしている。また、第3領域207a-3の天井208aの高さを、第2領域207a-2の天井208aの高さよりも高くすることにより、第2領域207a-2における圧力よりも第3領域207a-3における圧力を高くしている。また、第2処理領域207bの天井の高さを、第3領域207a-3の天井208aの高さよりも高くすることにより、第3領域207a-3における圧力を、第2処理領域206bにおける圧力よりも低くしている。
【0063】
以上のように、パージ領域207a内を、第1処理領域206aにおける圧力よりも第1領域207a-1における圧力を低くし、第1領域207a-1における圧力よりも第2領域207a-2における圧力を低くして(高真空にして)、第2領域207a-2における圧力よりも第3領域207a-3における圧力を高くするように構成し、第1領域207a-1、第2領域207a-2及び第3領域207a-3をパージして真空引きすることで、パージ領域207a内を搬送される基板Sに対して圧力差を交互につけながら真空排気(パージ)する。これにより、基板S上の未反応のガスや副生成物を除去することができる。
【0064】
また、第2領域207a-2における基板Sの移動距離L2は、第1、第3領域207a-1,207a-3における基板Sの移動距離L1、L3よりも長くなるよう構成される。低圧で高真空の第2領域207a-2における移動距離を長くすることにより、基板S上の未反応のガスや副生成物をより効果的に除去することができる。
【0065】
なお、第1領域207a-1、第3領域207a-3内にN2ガス等のパージガスを供給するパージガス供給部を設けて、第1領域207a-1、第3領域207a-3内にパージガスを供給しながら真空排気するようにしてもよい。
【0066】
また、上述した第1領域207a-1はなくてもよく、パージ領域207aを、回転テーブル217の回転方向であるR方向(基板Sの搬送方向ともいう)上流側から第1の圧力でパージする第2領域207a-2と、第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第3領域207a-3の順に2つの領域に区画するようにしてもよい。
【0067】
リアクタ200は、各部の動作を制御するコントローラ300を有している。コントローラ300は、
図6に記載のように、演算部(CPU)301、一時記憶部としてのRAM302、記憶部303、送受信部304を少なくとも有する。コントローラ300は、送受信部304を介して基板処理装置10の各構成に接続され、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部303からプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御する。なお、コントローラ300は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)312を用意し、外部記憶装置312を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ300を構成できる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置312を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置320から送受信部311を介して情報を受信し、外部記憶装置312を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、キーボードやタッチパネル等の入出力装置313を用いて、コントローラ300に指示をしても良い。
【0068】
なお、記憶部303や外部記憶装置312は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部303単体のみを含む場合、外部記憶装置312単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0069】
CPU301は、記憶部303から制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置313からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部303からプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU301は、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、各部品を制御するように構成されている。
【0070】
(2)基板処理工程
次に、
図7および
図8を用い、本開示の一実施形態に係る基板処理工程について説明する。
図7は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図8は、本実施形態に係る成膜工程を示すフロー図である。以下の説明において、基板処理装置10のリアクタ200の構成各部の動作は、コントローラ300により制御される。
【0071】
ここでは、原料ガスとしてSi2H2Cl2ガスを用い、反応ガスとしてNH3ガスを用い、基板S上に薄膜としてシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。
【0072】
基板搬入・載置工程S110を説明する。リアクタ200では、ピン219を上昇させて、回転テーブル217の貫通孔217aにピン219を貫通させる。その結果、ピン219が、回転テーブル217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ205を開き、図示しない基板移載機を用いて、
図3のようにピン219上に基板Sを載置する。載置後、ピン219を下降させ、凹部217b上に基板Sを載置する。
【0073】
そして、基板Sが載置されていない凹部217bがゲートバルブ205と向かい合うよう、回転テーブル217を回転させる。その後、同様に凹部217bに基板Sを載置する。すべての凹部217bに基板Sが載置されるまで繰り返す。
【0074】
凹部217bに基板Sを搬入したら、基板移載機をリアクタ200の外へ退避させ、ゲートバルブ205を閉じて処理容器203内を密閉する。
【0075】
なお、基板Sを処理室201内に搬入する際には、排気部234,235により処理室201内を排気しつつ、パージ領域207a、207bをパージすることが好ましい。これにより、処理室201内へのパーティクルの侵入や、基板S上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。真空ポンプ234b,235b,236j,237j及び補助ポンプ236k,237kは、少なくとも基板搬入・載置工程(S110)から後述する基板搬出工程(S170)が終了するまでの間は、常に作動させた状態とする。
【0076】
基板Sを回転テーブル217に載置する際は、予めヒータ280に電力を供給し、基板Sの表面が所定の温度となるよう制御される。基板Sの温度は、例えば室温以上650℃以下であり、好ましくは、室温以上であって400℃以下である。ヒータ280は、少なくとも基板搬入・載置工程(S110)から後述する基板搬出工程(S170)が終了するまでの間は、常に通電させた状態とする。
【0077】
それと並行して、不活性ガス供給部270から処理容器203、ヒータユニット281に不活性ガスが供給される。不活性ガスは、少なくとも基板搬入・載置工程(S110)から後述する基板搬出工程(S170)が終了するまでの間供給する。
【0078】
回転テーブル回転開始工程S120を説明する。基板Sが各凹部217bに載置されたら、回転部224は回転テーブル217をR方向に回転するよう制御される。回転テーブル217を回転させることにより、基板Sは、第1処理領域206a、パージ領域207a、第2処理領域206b、パージ領域207bの順に移動する。
【0079】
ガス供給開始工程S130を説明する。基板Sを加熱して所望とする温度に達し、回転テーブル217が所望とする回転速度に到達したら、バルブ244を開けて第1処理領域206a内にSi2H2Cl2ガスの供給を開始する。それと併行して、バルブ254を開けて第2処理領域206b内にNH3ガスを供給する。
【0080】
このとき、Si2H2Cl2ガスの流量が所定の流量となるように、MFC243を調整する。なお、Si2H2Cl2ガスの供給流量は、例えば50sccm以上500sccm以下である。
【0081】
また、NH3ガスの流量が所定の流量となるように、MFC253を調整する。なお、NH3ガスの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。
【0082】
なお、基板搬入・載置工程S110後、継続して、排気部234、235により処理室201内が排気されるとともに、パージ領域207a内およびパージ領域207b内がパージされている。また、APCバルブ234c、APCバルブ235cの弁開度を適正に調整することにより、処理室201内の圧力を所定の圧力とする。
【0083】
成膜工程S140を説明する。ここでは成膜工程S140の基本的な流れについて説明し、詳細は後述する。成膜工程S140では、各基板Sは、第1処理領域206aにてシリコン含有層が形成され、更に回転後の第2処理領域206bにて、シリコン含有層とNH3ガスとが反応し、基板S上にSiN膜を形成する。所望の膜厚となるよう、回転テーブル217を所定回数回転させる。
【0084】
ガス供給停止工程S150を説明する。所定回数回転させた後、バルブ244,254を閉じ、第1処理領域206aへのSi2H2Cl2ガスの供給、第2処理領域206bへのNH3ガスの供給を停止する。
【0085】
回転テーブル回転停止工程S160を説明する。ガス供給停止工程S150の後、回転テーブル217の回転を停止する。
【0086】
基板搬出工程S170を説明する。ゲートバルブ205と対向する位置に基板Sを移動するよう回転テーブル217を回転させる。その後、基板搬入時と同様にピン219上に基板Sを支持させる。支持後ゲートバルブ205を開き、図示しない基板移載機を用いて基板Sを処理容器203の外へ搬出する。これを処理した基板Sの枚数分繰り返し、すべての基板Sを搬出する。搬出後、不活性ガス供給部270による不活性ガスの供給を停止する。
【0087】
続いて、
図8を用いて成膜工程S140の詳細を説明する。尚、第1処理領域通過工程S210から第2パージ領域通過工程S240までは、回転テーブル217上に載置された複数の基板Sの内、一枚の基板Sを主として説明する。
【0088】
図8に示されているように、成膜工程S140では、回転テーブル217の回転によって、複数の基板Sを、第1処理領域206a、パージ領域207a、第2処理領域206b、およびパージ領域207bを順次通過させる。
【0089】
第1処理領域通過工程S210を説明する。基板Sが第1処理領域206aを通過する際に、Si2H2Cl2ガスが基板Sに供給される。このとき、第1処理領域206a内には反応ガスが無いため、Si2H2Cl2ガスは反応ガスと反応することなく、直接基板Sの表面に接触(付着)する。これにより、基板Sの表面には、第1層が形成される。
【0090】
次に、パージ領域通過工程S220を説明する。基板Sは、第1処理領域206aを通過した後に、パージ領域207aの第1領域207a-1に移動する。第1領域207a-1では、第1処理領域206aよりも低い圧力で真空引きされ、第1処理領域206aにおいて基板S上で強固な結合を形成できなかったSi2H2Cl2の成分が、基板S上から除去される。
【0091】
そして、基板Sは、第1領域207a-1を通過した後に、第2領域207a-2に移動する。第2領域207a-2では、第1領域207a-1よりも低い圧力で真空引きされ、第1領域207a-1において除去しきれなかった基板S上に付着した副生成物が、基板S上から除去される。
【0092】
そして、基板Sは、第2領域207a-2を通過した後に、第3領域207a-3に移動する。第3領域207a-3では、第2領域207a-2よりも高い圧力で真空引きされ、第2領域207a-2において基板上から浮かび上がって除去しきれなかった副生成物が、基板S上から除去される。
【0093】
すなわち、パージ領域207aにおいて、基板Sを、圧力差のある(真空度の異なる)複数の領域を通過させることにより、高いアスペクト比の溝内の副生成物を除去し、パーティクルの発生を抑制することが可能となる。
【0094】
次に、第2処理領域通過工程S230を説明する。基板Sは、パージ領域207aを通過した後に第2処理領域206bに移動する。基板Sが第2処理領域206bを通過するときに、第2処理領域206bでは、第1層が反応ガスとしてのNH3ガスと反応する。これにより、基板Sの上には、少なくともSiおよびNを含む第2層が形成される。
【0095】
次に、パージ領域通過工程S240を説明する。基板Sは、第2処理領域206bを通過した後に、上述したパージ領域通過工程S220と同様に、パージ領域207bの第1領域、第2領域及び第3領域を通過する。すなわち、パージ領域207bにおいて、基板Sを、圧力差のある(真空度の異なる)複数の領域を通過させる。基板Sがパージ領域207bの各領域を通過するときに、第2処理領域206bにおいて基板S上の第2層から脱離したHClや、余剰となったH2ガス等が、基板S上から除去される。
【0096】
このようにして、基板Sに対して、互いに反応する少なくとも2つのガスを順番に供給する。以上の第1処理領域通過工程S210、パージ領域通過工程S220、第2処理領域通過工程S230、およびパージ領域通過工程S240を1サイクルとする。
【0097】
判定S250を説明する。コントローラ300は、上記1サイクルを所定回数実施したか否かを判定する。具体的には、コントローラ300は、回転テーブル217の回転数をカウントする。
【0098】
上記1サイクルを所定回数実施していないとき(S250でNoの場合)、さらに回転テーブル217の回転を継続させて、第1処理領域通過工程S210、パージ領域通過工程S220、第2処理領域通過工程S230、パージ領域通過工程S240を有するサイクルを繰り返す。このように積層することにより薄膜を形成する。
【0099】
上記1サイクルを所定回数実施したとき(S250でYesの場合)、成膜工程S140を終了する。このように、上記1サイクルを所定回数回実施することにより、積層した所定膜厚の薄膜が形成される。
【0100】
(3)本実施形態による効果
上述の実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0101】
(a)基板上の副生成物を除去してパーティクルの発生を抑制することが可能となる。
(b)パージ領域において、基板Sを、圧力差のある(真空度の異なる)複数の領域を通過させることにより、高いアスペクト比の溝内の副生成物を除去し、パーティクルの発生を抑制することが可能となる。
(c)パージ領域において、圧力の低い(高真空の)領域における移動距離を長くすることにより、基板S上の副生成物をより効果的に除去することができる。
(d)パージ領域において、圧力の低い(高真空の)領域に連通される排気路に接続される排気配管の内径を、他の領域に連通される排気路に接続される排気配管の内径よりも大きくすることにより、真空引きしやすくして、基板S上の副生成物を排出させやすくすることができる。
(e)パージ領域において、圧力の低い(高真空の)領域に連通される排気路に連通される排気配管に補助ポンプを設けることにより、真空ポンプのみ設けた場合と比較して、真空引きしやすくして、基板S上の副生成物を排出させやすくすることができる。
【0102】
(4)変形例
パージ領域207a,207bを構成する天井の形状等は、上述した実施形態に示す態様に限定されない。例えば、以下に示す実施形態のように変更することも可能である。以下では、主に、上述した実施形態と異なる箇所について記載する。以下の実施形態によっても、上述の実施形態に示す態様と同様の効果が得られる。
【0103】
(変形例1)
図9は、上述した
図1に示すリアクタ200のB-B'線断面図の変形例である。本変形例では、パージ領域207a,207bにおける第2領域が異なる。ここでは、パージ領域207aを用いて説明する。
【0104】
本変形例では、上述した実施形態における第1領域207a-1と第2領域207a-2を仕切る仕切部403と、第2領域207a-2と第3領域207a-3を仕切る仕切部404が設けられていない。言い換えれば、本変形例は、第2領域207a-2の天井208aの高さが、上述した実施形態における仕切部403、404の下端位置である例を示している。さらに、本変形例では、第2領域207a-2の天板209の上面の高さ(回転テーブル217の上面から天板209の上面までの距離)が、第1領域207a-1、第3領域207a-3の天板209の上面の高さ(回転テーブル217の上面から天板209の上面までの距離)よりも低くするように構成されている。
【0105】
このように、第2領域207a―2の天板209の上面の高さを他の領域の天板209の上面の高さと比較して低くすることにより、第2領域207a-2に連通する排気路401a-2の長さを短くして、真空排気しやすくすることができる。すなわち、パージ領域において、圧力の低い(高真空の)領域に連通される排気路の長さを短くすることにより、真空引きしやすくして、基板S上の副生成物を排出させやすくすることができる。
【0106】
(変形例2)
図10は、上述した
図1に示すリアクタ200のB-B'線断面図の変形例である。本変形例では、パージ領域207a,207bが、それぞれ4つの領域に区画されている。ここでは、パージ領域207aを用いて説明する。
【0107】
本変形例では、パージ領域207aは、回転テーブル217の回転方向であるR方向(基板Sの搬送方向ともいう)上流側から第1領域407a-1と、第2領域407a-2と、第3領域407a-3と、第4領域407a-4の順に4つの領域に区画されている。なお、本変形例では、第3領域407a-3が、第1の圧力でパージする第1パージ領域として用いられる。また、第2領域407a-2、第4領域407a-4が、第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域として用いられる。また、第1領域407a-1が、第3の圧力でパージする第3パージ領域として用いられる。
【0108】
第1処理領域206aと第1領域407a-1の間には、第1処理領域206aと第1領域407a-1とを仕切る仕切部502が形成されている。また、第1領域407a-1と第2領域407a-2の間には、第1領域407a-1と第2領域407a-2とを仕切る仕切部503が形成されている。また、第2領域407a-2と第3領域407a-3の間には、第2領域407a-2と第3領域407a-3とを仕切る仕切部504が形成されている。また、第3領域407a―3と第4領域407a-4の間には、第3領域407a-3と第4領域407a-4とを仕切る仕切部505が形成されている。また、第4領域407a-4と第2処理領域206bの間には、第4領域407a-4と第2処理領域206bとを仕切る仕切部506が形成されている。仕切部502~506は、それぞれ天井208aの一部であり、連続して形成されている。
【0109】
天井208aと天板209には、第1領域407a-1、第2領域407a―2、第3領域407a-3、第4領域407a-4にそれぞれ連通する排気路507a-1,507a-2,507a-3,507a-4が形成されている。排気路507a-1,507a-2,507a-3,507a-4は、それぞれ排気配管を介して真空ポンプに接続され、第1領域407a-1、第2領域407a-2、第3領域407a-3及び第4領域407a-4内の圧力がそれぞれ所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0110】
また、天井208aと天板209には、第1領域407a-1、第2領域407a-2、第4領域407a-4にそれぞれ連通する供給路501a-1,501a-2,501a-3が形成されている。供給路501a-1,501a-2,501a-3には、それぞれ不図示のバルブを介してパージガスを供給するパージガス供給部が接続されている。パージガス供給部は、例えば天井209に固定される。なお、ここでは、パージガスとしてN2ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0111】
本変形例では、圧力の低い(高真空の)第3領域407a-3の基板Sの搬送方向上流側に第3領域407a-3よりも圧力の高い第2領域407a-2と、第2領域407a-2よりも圧力の高い第1領域407a-1の2つの領域を設けている。第1領域407a-1の天井208aの高さと、第2領域407a-2の天井208aの高さは、同等であるが、第1領域407a-1は、第1処理領域206aと隣接しているため、第1領域407a-1における圧力よりも第2領域407a-2における圧力の方が低くなる。すなわち、第1領域407a-1における圧力は、第1処理領域206aにおける圧力よりも低く、第2領域407a-2における圧力よりも高くなる。
【0112】
また、本変形例では、第1領域407a-1、第2領域407a-2及び第4領域407a-4内にパージガスを供給しながら各領域を真空排気するため、仕切部503と回転テーブル217との間の空間をN2ガスが高速で流れる。すなわち、圧力の高い領域と圧力の低い領域の仕切りにより流速の高い領域が形成される。そして、仕切部503下方のN2ガスの高速の流れにより基板上の、高いアスペクト比の溝内のガス分子を排出することができる。
【0113】
そして、CPU300が、第1領域407a-1における圧力が、第1処理領域206aにおける圧力よりも低く、第2領域407a-2における圧力よりも高くなるように、第2領域407a-2と第1領域407a-1における排気量と、パージガス供給部によるパージガスの供給流量のいずれか又は両方を制御する。これにより、仕切部503の下方にN2ガスの高速の流れを形成し、基板上の、特に高いアスペクト比の溝内のガス分子を排出することができる。すなわち、パージ領域207a,207bにおいて、基板Sを、圧力差のある(真空度の異なる)複数の領域をパージガスを供給しながら通過させることにより、高いアスペクト比の溝内の副生成物を効率的に除去することができる。
【0114】
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0115】
なお、上述では、半導体装置の製造工程の一工程として成膜工程について記したが、他の処理にも適用することができる。例えば、基板に対して、サイクル毎に熱処理、プラズマ処理を行う工程であっても良い。溝内で生成される副生成物や、既に基板に形成されている膜中から脱離するガス(分子)を効率的に除去することが可能となる。また、これらの処理に限らず、基板に形成された膜を原子層(分子層)毎にエッチングする処理にも適用することができる。エッチングガスを上述の様にパージすることにより、エッチングにより生成される溝内の副生成物や、溝内に存在するエッチングガス等を効率的に除去することが可能となる。
【0116】
(本開示の好ましい態様)
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
(付記1)
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ、前記基板が載置される載置部を複数有する基板支持部と、を備え、
前記処理室は、前記基板に処理ガスを供給する処理領域と、前記基板をパージするパージ領域と、を有し、
前記パージ領域は、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、
を有する基板処理装置。
(付記2)
付記1記載の基板処理装置であって、
前記パージ領域には、前記基板支持部と対向して設けられた天井と、前記天井と連続して形成され、前記第1パージ領域と前記第2パージ領域とを仕切る仕切部と、が設けられ、
前記第1パージ領域の天井の高さは、前記第2パージ領域の天井の高さよりも低く、前記仕切部の下端位置以上の高さに構成される。
(付記3)
付記1又は付記2に記載の基板処理装置であって、
前記第1パージ領域に接続される排気配管の径は、前記第2パージ領域に接続される排気配管の径よりも大きく構成される。
(付記4)
付記2記載の基板処理装置であって、
前記処理室を構成する処理容器の天板の下面により前記天井が構成され、
前記第1パージ領域の天板の上面の高さは、前記第2パージ領域の天板の上面の高さよりも低く構成される。
(付記5)
付記1から付記4のいずれか記載の基板処理装置であって、
前記第2パージ領域における圧力は、前記処理領域における圧力よりも低く構成される。
(付記6)
付記1から付記5のいずれか記載の基板処理装置であって、
前記第1パージ領域における前記基板の移動距離は、前記第2パージ領域における前記基板の移動距離よりも長くなるよう構成される。
(付記7)
付記1から付記6のいずれか記載の基板処理装置であって、
前記パージ領域は、第3の圧力でパージする第3パージ領域をさらに有し、
前記第2パージ領域と前記第3パージ領域に、パージガスを供給するパージガス供給部と、
前記第3パージ領域における圧力が、前記処理領域における圧力よりも低く、前記第2パージ領域における圧力よりも高くなるように、前記第2パージ領域と前記第3パージ領域における排気量と、前記パージガス供給部によるパージガスの供給流量のいずれか又は両方を制御するよう構成される制御部と、
を有する。
(付記8)
基板が載置される載置部を複数有する基板支持部を備え、処理ガスを供給する処理領域と、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、を備える処理室内で、
前記基板に対して、前記処理ガスを供給する工程と、
前記基板に対して、前記第1の圧力でパージする工程と、
前記基板に対して、前記第1の圧力の少なくとも前または後に、前記第2の圧力でパージする工程と、を有する
半導体装置の製造方法。
(付記9)
基板が載置される載置部を複数有する基板支持部を備え、処理ガスを供給する処理領域と、第1の圧力でパージする第1パージ領域と、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でパージする第2パージ領域と、を備える基板処理装置の処理室内で、
前記基板に対して、前記処理ガスを供給する手順と、
前記基板に対して、前記第1の圧力でパージする手順と、
前記基板に対して、前記第1の圧力の少なくとも前または後に、前記第2の圧力でパージする手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0117】
S 基板
200 リアクタ
201 処理室
203 処理容器
206a 第1処理領域、
206b 第2処理領域、
207a,207b パージ領域
217 回転テーブル(基板支持部)
217b 凹部(載置部)
300 コントローラ(制御部)