IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像方法及び撮像プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20220704BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20220704BHJP
   G03B 9/36 20210101ALI20220704BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220704BHJP
   H04N 5/235 20060101ALI20220704BHJP
   H04N 5/243 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H04N5/232
G03B5/00 J
G03B9/36 E
H04N5/225 400
H04N5/232 480
H04N5/235
H04N5/243
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021520744
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019250
(87)【国際公開番号】W WO2020235440
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019094859
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 康一
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 竜生
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125587(WO,A1)
【文献】特開2015-148646(JP,A)
【文献】特開2007-251382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G03B 5/00
G03B 9/36
H04N 5/225
H04N 5/235
H04N 5/243
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子と、
前記撮像素子を移動させることでぶれを補正する移動機構と、
前記列方向に走行することで前記撮像素子に対する入射光を遮断する幕と、
前記移動機構が前記撮像素子を移動させている状態で、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、前記指示を受け付けたタイミングでの前記撮像素子の移動量よりも、前記タイミングが経過してから前記撮像素子に対する露光が開始されるまでに前記撮像素子を移動させる移動量を低減させる移動量低減制御を行い、前記移動量低減制御を行っている状態で、前記撮像素子に含まれる前記複数の画素を前記行方向のライン毎に前記列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始し、前記リセット制御を開始してから前記露光時間に相当する時間経過後に、前記幕を前記列方向に走行させるプロセッサと、
を含む撮像装置であって、
前記移動量低減制御は、予め定められた第1タイミングの前記撮像素子の移動目標位置を目標位置とし、前記撮像素子を前記目標位置を含む目標範囲に停止させる停止制御を含み、
前記プロセッサは、前記撮像素子の前記目標位置に基づいて前記列方向に沿った前記リセットのタイミングを導出し、導出した前記タイミングで前記列方向に沿って前記リセットを行う
撮像装置。
【請求項10】
複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子を移動させることでぶれを補正するぶれ補正中に、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、前記指示を受け付けたタイミングでの前記撮像素子の移動量よりも、前記タイミングが経過してから前記撮像素子に対する露光が開始されるまでに前記撮像素子を移動させる移動量を低減させること、
前記移動量を低減させている状態で、前記撮像素子に含まれる前記複数の画素を前記行方向のライン毎に前記列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始すること、
前記リセット制御を開始してから前記露光時間に相当する時間経過後に、前記撮像素子に対する入射光を遮断する幕を走行させること、
予め定められた第1タイミングの前記撮像素子の移動目標位置を目標位置とし、前記撮像素子を前記目標位置を含む目標範囲に停止させること、及び
前記撮像素子の前記目標位置に基づいて前記列方向に沿った前記リセットのタイミングを導出し、導出した前記タイミングで前記列方向に沿って前記リセットを行うこと
を含む撮像方法。
【請求項11】
コンピュータに、
複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子を移動させることでぶれを補正するぶれ補正中に、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、前記指示を受け付けたタイミングでの前記撮像素子の移動量よりも、前記タイミングが経過してから前記撮像素子に対する露光が開始されるまでに前記撮像素子を移動させる移動量を低減させること、
前記移動量を低減させる手順を行っている状態で、前記撮像素子に含まれる前記複数の画素を前記行方向のライン毎に前記列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始すること、
前記リセット制御を開始してから前記露光時間に相当する時間経過後に、前記撮像素子に対する入射光を遮断する幕を走行させること、
予め定められた第1タイミングの前記撮像素子の移動目標位置を目標位置とし、前記撮像素子を前記目標位置を含む目標範囲に停止させること、及び
前記撮像素子の前記目標位置に基づいて前記列方向に沿った前記リセットのタイミングを導出し、導出した前記タイミングで前記列方向に沿って前記リセットを行うこと
を実行させるための撮像プログラム。
【請求項12】
複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子と、
前記撮像素子を移動させることでぶれを補正する移動機構と、
前記列方向に走行することで前記撮像素子に対する入射光を遮断する幕と、
前記移動機構が前記撮像素子を移動させている状態で、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、予め定められた第1タイミングの前記撮像素子の移動目標位置を目標位置とし、前記撮像素子を前記目標位置を含む目標範囲に停止させる移動量低減制御を行い、前記移動量低減制御を行っている状態で、前記目標位置に基づいて導出したリセットタイミングで、前記撮像素子に含まれる前記複数の画素を前記行方向のライン毎に前記列方向に沿って順次にリセットするプロセッサと、
を含む撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、撮像装置、撮像方法及び撮像プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-129588号公報には、複数の画素からなる撮像素子と、撮像素子への光の入射を遮断するために走行するメカ後幕と、メカ後幕の走行に先行して撮像素子をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、振れの検出結果に基づき移動させた撮像素子の移動量に基づき、リセット部によるライン毎のリセット走査のタイミングを補正する補正制御部と、を備える撮像装置が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングでの撮像素子の移動量よりも、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングが経過してから撮像素子に対する露光が開始されるまでに撮像素子を移動させる移動量を低減させない場合に比べ、撮像されることで得られた画像内の露出のむらを低減することができる撮像装置、撮像方法及び撮像プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の技術に係る第1の態様は、複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子と、撮像素子を移動させることでぶれを補正する補正部と、列方向に走行することで撮像素子に対する入射光を遮断する幕と、補正部が撮像素子を移動させている状態で、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、指示を受け付けたタイミングでの撮像素子の移動量よりも、タイミングが経過してから撮像素子に対する露光が開始されるまでに撮像素子を移動させる移動量を低減させる移動量低減制御を行い、移動量低減制御を行っている状態で、撮像素子に含まれる複数の画素を行方向のライン毎に列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始し、リセット制御を開始してから露光時間に相当する時間経過後に、幕を列方向に走行させる制御部と、を含む撮像装置である。
【0005】
本開示の技術に係る第2の態様は、移動量低減制御は、予め定められた第1タイミングの撮像素子の移動目標位置を目標位置とし、撮像素子を目標位置を含む目標範囲に停止させる停止制御である第1の態様に係る撮像装置である。
【0006】
本開示の技術に係る第3の態様は、制御部は、撮像素子の目標位置に基づいて列方向に沿ったリセットのタイミングを導出し、導出したタイミングで列方向に沿ってリセットを行う第2の態様に係る撮像装置である。
【0007】
本開示の技術に係る第4の態様は、制御部は、幕の走行速度特性に応じてリセットのタイミングを導出する第3の態様に係る撮像装置である。
【0008】
本開示の技術に係る第5の態様は、停止制御は、指示が1回行われることに応じて複数フレーム分の静止画像用の撮像が行われている間、撮像素子を目標範囲に停止させる制御である第2の態様から第4の態様のいずれか一つに係る撮像装置である。
【0009】
本開示の技術に係る第6の態様は、制御部は、撮像素子の停止制御を行う場合、停止制御における撮像素子の目標位置を示す情報を平滑化する処理を行う第2の態様から第5の態様のいずれか一つに係る撮像装置である。
【0010】
本開示の技術に係る第7の態様は、制御部は、撮像素子の停止制御を行う場合、停止制御を開始したタイミングで、停止制御における撮像素子の目標位置を示す情報を平滑化して得た出力値を固定する制御を行う第6の態様に係る撮像装置である。
【0011】
本開示の技術に係る第8の態様は、制御部は、撮像素子の移動量が予め定められた値以下に低下した場合にリセット制御を開始する第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る撮像装置である。
【0012】
本開示の技術に係る第9の態様は、制御部は、予め定められた第2タイミングで、撮像素子のロール回転量を初期位置に戻す制御を補正部に対して行う第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る撮像装置である。
【0013】
本開示の技術に係る第10の態様は、制御部は、指示を受け付けたタイミング以降は、撮像素子の初期位置での行方向のみ、撮像素子を移動させることにより行方向のぶれを補正させる制御を補正部に対して行う第1の態様から第9の態様のいずれか一つに係る撮像装置である。
【0014】
本開示の技術に係る第11の態様は、制御部は、さらに、撮像されることで得られた画像に対して、列方向にシェーディング補正を行う第1の態様から第10の態様のいずれか一つに係る撮像装置である。
【0015】
本開示の技術に係る第12の態様は、複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子を移動させることでぶれを補正するぶれ補正中に、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、指示を受け付けたタイミングでの撮像素子の移動量よりも、タイミングが経過してから撮像素子に対する露光が開始されるまでに撮像素子を移動させる移動量を低減させる工程と、移動量を低減させる工程を行っている状態で、撮像素子に含まれる複数の画素を行方向のライン毎に列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始する工程と、リセット制御を開始してから露光時間に相当する時間経過後に、撮像素子に対する入射光を遮断する幕を走行させる工程と、を含む撮像方法である。
【0016】
本開示の技術に係る第13の態様は、コンピュータに、複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子を移動させることでぶれを補正するぶれ補正中に、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、指示を受け付けたタイミングでの撮像素子の移動量よりも、タイミングが経過してから撮像素子に対する露光が開始されるまでに撮像素子を移動させる移動量を低減させる手順と、移動量を低減させる手順を行っている状態で、撮像素子に含まれる複数の画素を行方向のライン毎に列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始する手順と、リセット制御を開始してから露光時間に相当する時間経過後に、撮像素子に対する入射光を遮断する幕を走行させる手順と、を実行させるための撮像プログラムである。
【0017】
本開示の技術に係る第14の態様は、複数の画素が行方向及び列方向に配置された撮像素子と、撮像素子を移動させることでぶれを補正する補正部と、列方向に走行することで撮像素子に対する入射光を遮断する幕と、補正部が撮像素子を移動させている状態で、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始する指示を受け付けた場合に、指示を受け付けたタイミングでの撮像素子の移動量よりも、タイミングが経過してから撮像素子に対する露光が開始されるまでに撮像素子を移動させる移動量を低減させる移動量低減制御を行い、移動量低減制御を行っている状態で、撮像素子に含まれる複数の画素を行方向のライン毎に列方向に沿って順次にリセットするリセット制御を開始し、リセット制御を開始してから露光時間に相当する時間経過後に、幕を列方向に走行させるプロセッサと、を含む撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る撮像装置の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る撮像装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る撮像装置の補正部と撮像素子の移動方向を示す概略図である。
図4】初期位置における撮像素子の位置と、撮像素子の先幕と後幕を説明する概略図である。
図5A図4のA-A断面図であり、撮像素子のリセットラインと後幕の位置関係を説明する図である。
図5B図4のA-A断面図であり、露光途中の受光量を説明する図である。
図5C図4のA-A断面図であり、図5Bからさらに露光が進んだ段階での受光量を説明する図である。
図6】第1実施形態に係る撮像装置のCPUの機能ブロック図である。
図7】第1実施形態に係る撮像装置の撮像制御処理を時系列で示した説明図である。
図8】第1実施形態に係る撮像装置の撮像制御処理のフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る撮像装置のぶれ補正制御処理のフローチャートである。
図10】第1実施形態において目標位置の平滑化のために用いられるローパスフィルタの回路ブロック図である。
図11】第1実施形態に係る撮像装置の移動量低減制御処理のフローチャートである。
図12A】ローパスフィルタの入力と出力の波形の一例を示す概略図である。
図12B】第2実施形態に係るローパスフィルタの入力と出力の波形の一例を示す概略図である。
図13A】撮像素子のロール回転量を初期位置に戻す概略図である。
図13B】第3実施形態に係る移動量低減制御処理のフローチャートである。
図14】第4実施形態に係る移動量低減制御処理のフローチャートである。
図15】第5実施形態に係る移動量低減制御処理のフローチャートである。
図16】第6実施形態に係る画像のシェーディング補正方法を示す図である。
図17】記憶媒体から撮像装置にプログラムをインストールする概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、本明細書で使用される略称について説明する。「AE」とは、「Auto Exposure」の略称を指す。「AF」とは、「Auto Focus」の略称を指す。「MF」とは、「Manual Focus」の略称を指す。「VCM」とは、「Voice Coil Motor」の略称を指す。「CMOS」とは、「Complementary Metal Oxide Semiconductor」の略称を指す。「CPU」とは、「Central Processing Unit」の略称を指す。「I/F」とは、「InterFace」の略称を指す。「TTL」とは、「Through The Lens」の略称を指す。「ROM」とは、「Read Only Memory」の略称を指す。「RAM」とは、「Random Access Memory」の略称を指す。「LAN」とは、「Local Area Network」の略称を指す。「EEPROM」とは、「Electrically Erasable Programmable Read Only Memory」の略称を指す。「SSD」とは、「Solid State Drive」の略称を指す。「USB」とは、「Universal Serial Bus」の略称を指す。「DVD-ROM」とは、「Digital Versatile Disc Read Only Memory」の略称を指す。「FPGA」とは、「Field Programmable Gate Array」の略称を指す。「PLD」とは、「Programmable Logic Device」の略称を指す。「ASIC」とは、「Application Specific Integrated Circuit」の略称を指す。「SoC」とは、「System on Chip」の略称を指す。「PID」とは、「Proportional-Integral-Differential」の略称を指す。「fps」とは、「frame per second」の略称を指す。
【0020】
以下の説明において「ぶれ」とは、被写体を示す被写体光が光学系を介して受光面に結像される撮像装置において、被写体光が受光面に結像されることで得られる被写体像が、撮像装置に与えられた振動に起因して光学系の光軸と受光面との位置関係が変化することで変動する現象を指す。
【0021】
撮像装置に与えられる振動には、屋外であれば、自動車の通行による振動、風による振動、及び道路工事による振動等があり、屋内であれば、エアコンディショナーの動作による振動、及び人の出入りによる振動等がある。
【0022】
(第1実施形態)
以下、本開示の技術に係る第1実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図面中の部材又は構成の説明において上下左右方向の概念を用いる場合は、特記しない限り単に図における上下左右方向を意味し、絶対的な方向を意味するものではない。また、以下の説明において、「平行」の意味には、完全な平行の意味の他に、設計上及び製造上において許容される誤差を含む略平行の意味も含まれる。更に、以下の説明において、「垂直」の意味には、完全な垂直の意味の他に、設計上及び製造上において許容される誤差を含む略垂直の意味も含まれる。
【0023】
図1は、第1実施形態に係る撮像装置100の外観の一例を示す斜視図である。撮像装置100は、静止画像を取得し記録するデジタルカメラであり、カメラ本体200と、カメラ本体200に交換可能に装着される交換レンズ300と、を含む。
【0024】
カメラ本体200と交換レンズ300とは、カメラ本体200に備えられたマウント256と、マウント256に対応する交換レンズ300側のマウント346(図2参照)とが結合されることにより交換可能に装着される。
【0025】
カメラ本体200は、撮像素子20を備えている。交換レンズ300は、撮像レンズ16を含み、交換レンズ300がカメラ本体200に装着されると、被写体を示す被写体光が撮像レンズ16に入射され、撮像レンズ16に入射された被写体光が撮像レンズ16によって撮像素子20に結像される。
【0026】
カメラ本体200の前面には、ファインダー窓241が設けられている。また、カメラ本体200の上面には、レリーズボタン211及びダイヤル212が設けられている。カメラ本体200の背面には、ディスプレイ34(図2参照)が設けられている。
【0027】
撮像装置100では、動作モードとして撮像モードと再生モードとが選択的に設定される。ダイヤル212は、撮像モード及び再生モード等の各種モードの設定を行う場合に操作される。撮像モードでは、MFの実行が可能なMFモードと、AFの実行が可能なAFモードとがユーザの指示に応じて選択的に設定される。MFモードとAFモードとの切り替えは、例えば、ダイヤル212等を含む受付デバイス14(図2参照)によってユーザからの指示が受け付けられることで実現される。
【0028】
レリーズボタン211は、撮像準備指示状態と撮像指示状態との2段階の押圧操作が検出可能に構成されている。撮像準備指示状態とは、例えば待機位置から中間位置(半押し位置)まで押下される状態を指し、撮像指示状態とは、中間位置を超えた最終押下位置(全押し位置)まで押下される状態を指す。なお、以下では、「待機位置から半押し位置まで押下される状態」を「半押し状態」といい、「待機位置から全押し位置まで押下される状態」を「全押し状態」という。
【0029】
撮像装置100に対してAFモードが設定された状態では、例えばレリーズボタン211を半押し状態にすることにより撮像条件の調整が行われ、その後、引き続き全押し状態にすると本露光が行われる。つまり、レリーズボタン211を半押し状態にすることによりAE機能が働いて露出状態が設定された後、AF機能が働いて合焦制御され、レリーズボタン211を全押し状態にすると撮像が行われる。
【0030】
撮像レンズ16は、フォーカスレンズ302を備えている(図2も参照)。被写体光は、フォーカスレンズ302によって撮像素子20の受光面21に結像され、撮像素子20によって光電変換される。ここでは、撮像素子20の一例として、CMOSイメージセンサを適用している。光電変換されることで得られた信号電荷は撮像素子20に蓄積され、蓄積された信号電荷は、後述のCPU12によって信号電荷(電圧)に応じたデジタル信号として、既定のフレームレート(例えば、60fps)に従って読み出される。なお、ここでは、撮像素子20の一例として、CMOSイメージセンサを例示しているが、本開示の技術はこれに限定されず、撮像素子20として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の他種類のイメージセンサを用いてもよい。
【0031】
一例として図2に示すように、撮像装置100は、CPU12、受付デバイス14、撮像素子20、一次記憶部26、二次記憶部27、画像処理部28、測光センサ29、ぶれセンサ30、位置センサ31、ディスプレイ34、表示制御部36、及び外部I/F39を含む。CPU12、受付デバイス14、撮像素子20、一次記憶部26、二次記憶部27、画像処理部28、表示制御部36、及び外部I/F39は、バス40を介して相互に接続されている。CPU12は、撮像装置100の全体を制御する。
【0032】
CPU12は、ぶれを補正するぶれ補正制御(以下、単に「ぶれ補正制御」とも称する)、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングでの撮像素子20の移動量よりも、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングが経過してから撮像素子20に対する露光が開始されるまでに撮像素子20を移動させる移動量を低減させる移動量低減制御(以下、単に「移動量低減制御」とも称する)、露光時間を調整する露光制御(以下、単に「露光制御」とも称する)、及び取得した画像の各種補正等を行う。CPU12は、本開示の技術に係る「制御部(プロセッサ)」の一例である。
【0033】
受付デバイス14は、レリーズボタン211及びダイヤル212を含み、撮像装置100に対するユーザからの指示を受け付ける。ディスプレイ34は、表示制御部36に接続されている。ディスプレイ34は、撮像素子20によって撮像されることで得られた画像(以下、単に「画像」とも称する)を表示する。
【0034】
一次記憶部26は、各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。一次記憶部26の一例としては、RAMが挙げられる。
【0035】
二次記憶部27は、各種プログラムを記憶している。二次記憶部27は、不揮発性のメモリである。二次記憶部27の一例としては、EEPROM又はフラッシュメモリ等が挙げられる。
【0036】
画像処理部28は、画像に対してシェーディング補正を行う。また、画像処理部28は、画像に対してホワイトバランス調整及びガンマ補正等の各種の画像処理を行う。画像処理部28によって画像処理が施されることで、ライブビュー画像、記録用の静止画像、及び記録用の動画像等が選択的に生成される。画像処理部28によって画像処理が施された画像は、CPU12によって取得される。
【0037】
CPU12は、表示制御部36に対してライブビュー画像等の画像を出力する。表示制御部36は、CPU12から入力された画像を、ディスプレイ34に対して表示させる。
【0038】
外部I/F39は、LAN及び/又はインターネットなどの通信網に接続され、通信網を介して、サーバ、パーソナルコンピュータ、及び/又はプリンタ等の外部装置とCPU12との間の各種情報の送受信を司る。
【0039】
測光センサ29は、TTL方式のセンサである。本開示の技術はこれに限らず、測光センサ29として、撮像素子20が用いられるようにしてもよい。ぶれセンサ30は、撮像装置100のぶれを検出する。ぶれセンサ30としては、例えばジャイロセンサが挙げられる。なお、ぶれセンサ30は、ジャイロセンサに限らず、加速度センサ等であってもよい。位置センサ31としては、例えばホール素子を用いたデバイスが挙げられる。
【0040】
撮像素子20は、電子シャッタ機能を有しており、電子シャッタにより撮像素子20のリセットを開始することで露光を開始する。第1実施形態では、撮像素子20の一例として、複数の画素、即ち光電変換素子が行方向と列方向に2次元的に配列されているCMOSセンサが採用されている。
【0041】
一例として図3に示すように、カメラ本体200は、移動枠50と、支持部60と、複数のボイスコイルモータ52と、を備える。以下、「ボイスコイルモータ」を「VCM」とも称する。撮像素子20は、移動枠50に固定されている。移動枠50は、支持部60によって移動可能に支持されている。支持部60は、カメラ本体200に対して固定されている。VCM52は、一例として移動枠50に固定された永久磁石と支持部60に固定されたコイルを含んで構成される。
【0042】
撮像装置100は、ぶれを補正する機能(以下、「ぶれ補正機能」とも称する)を有する。図2に示すように、撮像装置100は、モータドライバ51を備えており、ぶれ補正機能は、CPU12、モータドライバ51、及びVCM52等によって実現される機能である。モータドライバ51は、CPU12及びVCM52に接続されている。モータドライバ51は、CPU12の制御下で、VCM52を駆動させる。CPU12は、VCM52を駆動させることで生成された動力を移動枠50に付与することによって、移動枠50に固定された撮像素子20を移動させる。撮像装置100は、可動範囲22を有する。可動範囲22は、撮像素子20が移動可能な範囲である。可動範囲22は、例えば、受光面21に対して平行な面内で撮像素子20の正面視外枠よりも広い矩形状の範囲である。VCM52は、本開示の技術に係る「補正部(移動機構)」の一例である。なお、撮像素子20を移動させる補正部は、ボイスコイルモータに限られず、例えばステッピングモータ、又はピエゾアクチュエータ等を用いてもよい。
【0043】
撮像素子20は、受光面21に対して平行な面内、換言すると、撮像レンズ16の光軸に対して垂直な面内を移動することで、ぶれを補正する。ぶれ補正機能を働かせていない場合は、図3に示すように、撮像素子20は、初期位置に配置されている。初期位置とは、ぶれ補正機能を働かせていない場合の撮像素子20の位置を指す。ぶれ補正機能を働かせていない場合の撮像素子20の位置とは、例えば、交換レンズ300の光軸L1が撮像素子20の中心CTを通過する位置を指す。
【0044】
撮像素子20は、複数のVCM52により、図3に示すH方向、V方向、及びR回転方向に移動される。H方向とは、初期位置における撮像素子20の画素の行方向に相当する方向を指す。V方向とは、初期位置における撮像素子20の画素の列方向に相当する方向を指す。R回転方向とは、光軸L1を回転軸とする回転方向を指す。なお、本書でいうH方向、V方向、及びR回転方向の方向は両方向を含む。
【0045】
本明細書においては、H方向のぶれを補正するために撮像素子20をH方向に移動させることを「水平シフト」とも称する。また、V方向のぶれを補正するために撮像素子20をV方向に移動させることを「垂直シフト」とも称する。また、R回転方向のぶれを補正するために撮像素子20をR回転方向に移動させることを「ロール回転」とも称する。また、撮像素子20のH方向の位置を「水平位置」と称する。また、V方向の位置を「垂直位置」と称する。更に、R回転方向の回転量を「ロール回転量」と称する。
【0046】
一例として図4に示すように、初期位置では、撮像素子20が可動範囲22の中央に配置される。撮像素子20は、複数の画素を有しており、初期位置において、複数の画素は、行方向及び列方向に配置されている。ここで言う「画素」とは、光電変換素子を指す。撮像素子20において、1つの行方向の画素全体を画素ライン24と称する。撮像素子20は、複数の画素ライン24が列方向に配列されている。
【0047】
撮像装置100は、先幕として機能する電子シャッタを用い、後幕として機械式の幕を用いるフォーカルプレーンシャッタ方式で露光を行う。一例として図4に示すように、被写体を撮像する場合、撮像素子20の画素ライン24が、列方向に沿って1行目から最終行にかけて順次にリセットされる。図4に示す例では、複数の画素ライン24のうち、現時点でリセットが開始される対象とされた画素ライン24がリセットライン23として示されている。画素のリセットとは、光によって画素に蓄積された電荷を排出することである。リセットを開始することにより、露光が開始される。撮像装置100では、後述の移動量低減制御を行っている状態で、CPU12によってリセット制御が行われる。リセット制御とは、撮像素子20に含まれる複数の画素を行方向のライン毎に列方向、即ちQ方向に沿って1行目から順次にリセットする制御を指す。なお、図4においては、画素ライン24は一部のみ図示されている。
【0048】
また、撮像装置100は、後幕65を有する。後幕65は、本開示の技術に係る「幕」の一例である。後幕65は、機械式の幕であり、受光面21よりも被写体側に配置されている。後幕65は、ばね等によって付勢力を受けて図の上部から矢印Sの方向、即ち列方向に走行することで、受光面21に対する入射光を遮断する。後幕65は、撮像素子20を固定する移動枠50とは独立にカメラ本体200に固定されている。そのため、後幕65は撮像素子20の移動に連動して移動することはない。そのため、後幕65は、撮像素子20の可動範囲22をカバーする範囲を走行する。後幕65は、リセット制御が開始されてから露光時間に相当する時間経過後に、V方向に走行するように制御される。つまり、リセットのタイミングと後幕65の走行タイミングとの差が露光時間である。リセットのタイミングとは、各画素ライン24をリセットするタイミングである。後幕65の走行タイミングとは、リセットを行った画素ライン24の位置を後幕65が通過するタイミングである。
【0049】
ところで、一例として図5Aに示すように、受光面21と後幕65とは距離Dだけ離れている。撮像装置100は、ユーザから撮像の指示を受け付けると、1列目の画素ライン24からリセットを開始する。次に、露光時間だけ遅れて後幕65の走行が開始される。なお、図5Aから図5Cでは、リセットした画素ライン24が太実線で示されており、リセットされていない画素ライン24が点線で示されている。一例として図5Aに示すように、リセットライン23と後幕65の下端との間の間隔Zは、露光時間の間に後幕65が走行する距離である。間隔Zは、先幕と後幕がともに機械式の幕である場合に先幕と後幕との間で生じる隙間であるスリット幅に相当する。
【0050】
一例として図5Bに示すように、リセットライン23と後幕65の下端が撮像素子20の中央付近にさしかかった場合は、P点を通る角度αの範囲の被写体光のうち、角度βの範囲の被写体光がリセット済の画素ライン24に到達し、リセット済の画素ライン24が露光される。しかし、一例として図5Cに示すように、リセットライン23と後幕65の下端がさらに列方向に進んだ場合は、P点を通る角度αの被写体光のうち、一部の被写体光が後幕65にケラレて角度γ(<角度β)の範囲がリセット済の画素ライン24に到達し、リセット済の画素ライン24が露光される。このように、受光面21と後幕65とが離間している場合、リセットライン23と後幕65の下端との間隔が一定の露光時間に対応するように画素ライン24のリセットと後幕65の走行とが制御されたとしても、一例として図5Bに示す時点での露光量は、一例として図5Cに示す時点での露光量よりも多い。そのため、被写体が撮像されたことにより得られる1枚の画像内で露出のむらが発生する。ここでいう「露出」とは、露光時間に依存した画像内の明るさである。また、「露出のむら」とは、例えば、画像内の区域毎に露出が異なることを意味する。
【0051】
後幕65の位置に応じて露光量が変化するという問題を解決する方法として、後幕65の位置によってリセットライン23の位置を変更するという方法が考えられる。具体的には、後幕65が撮像素子20の上部にある場合は、リセットライン23のリセット速度を遅くする。リセット速度を遅くすることにより、間隔Zが小さくなる。また、後幕65が撮像素子20の下部にある場合は、リセットライン23のリセット速度を速くする。リセット速度を速くすることにより、間隔Zが大きくなる。このように制御することにより、後幕65の位置によらず、受光される光量の変化が低減され、露出のむらを低減することができる。これを、露出むらの補正とも称する。
【0052】
一方、撮像素子20の位置は、ぶれ補正機能を働かせることで変化する。撮像素子20がH方向に移動する場合は、リセットライン23の後幕65に対する垂直位置に変化がないため、露出むらの補正に影響を与えない。しかし、撮像素子20がV方向に移動する場合は、リセットライン23の後幕65に対する垂直位置が変化し、露光量が変化するため、露出むらの補正が設計通り行われず、露出のむらが発生する。露出むらの補正は、撮像素子20が予め定められた位置、例えば初期位置にあることを前提として行われるからである。
【0053】
そこで、一例として図6に示すように、撮像装置100では、二次記憶部27が、撮像制御プログラム130を記憶している。CPU12は、二次記憶部27から撮像制御プログラム130を読み出し、読み出した撮像制御プログラム130を一次記憶部26に展開し、展開した撮像制御プログラム130に従って撮像制御処理(図8参照)を実行する。CPU12が、撮像制御プログラム130に従って、ぶれ補正制御部112、移動量低減制御部116、露光時間判定部118、及び露光制御部120として動作することで、撮像制御処理(図8参照)が実現される。
【0054】
ぶれ補正制御部112は、ぶれセンサ30から受信した信号に基づいてVCM52を制御する。VCM52は、ぶれ補正制御部112の指示に従って撮像素子20を移動させることで、ぶれを補正する。ぶれ補正制御部112は、露光時間判定部118からぶれ補正制御の中止の指令を受けた場合、ぶれ補正制御を中止する。
【0055】
移動量低減制御部116は、VCM52が撮像素子20を移動させている状態で、露光時間が予め定められた時間以下での撮像を開始するユーザからの指示を受け付けた場合に、指示を受け付けたタイミングでの撮像素子20の移動量よりも、指示を受け付けたタイミングが経過してから撮像素子20に対する露光が開始されるまでに撮像素子20を移動させる移動量を低減させる制御を行う。この制御を「移動量低減制御」と称する。
【0056】
露光時間の「予め定められた時間」は、例えば、ぶれ補正制御を行わない場合に、露光時間を変えて取得された画像に残るぶれが許容できるか否かの官能試験等が行われること等によって予め定められている。予め定められた露光時間は、二次記憶部27に記憶させる。又は、撮像装置100は、移動量低減制御を開始する基準となる露光時間をユーザが設定できるように構成されてもよい。
【0057】
移動量低減制御部116は、露光時間判定部118から移動量低減制御を開始する指令を受けた場合、移動量低減制御を開始する。
【0058】
本書でいう「移動量低減制御」とは、停止制御を含む。「停止制御」とは、予め定められたタイミングの撮像素子20の移動目標位置を目標位置とし、目標位置を含む目標範囲に撮像素子20を停止させる制御である。「目標範囲」とは、露出のむらを抑制でき、かつ撮像素子20を目標位置に移動させる制御の位置決めの誤差を含んだ範囲を指す。「予め定められたタイミング」とは、例えば、移動量低減制御部116が、露光時間判定部118から移動量低減制御を開始する指令を受けたタイミングを指す。なお、「予め定められたタイミング」は、これに限らず、移動量低減制御部116が移動量低減制御を開始するタイミング、又は受付デバイス14がユーザから撮像を開始するとの指示を受け付けたタイミング等であってもよい。ここでいう「予め定められたタイミング」は、本開示の技術に係る「予め定められた第1タイミング」の一例である。以下、撮像素子20の「予め定められたタイミングの移動目標位置」を「特定タイミング位置」とも称する。即ち、特定タイミング位置は、撮像素子20を停止させる目標位置である。第1実施形態では、移動量低減制御部116は、撮像素子20の少なくとも列方向における位置を目標位置とし、目標位置を含む目標範囲に撮像素子20を停止させるように制御する。
【0059】
露光時間判定部118は、ユーザから撮像を開始する指示を受け付けた場合、指示を受け付けたタイミングで、測光センサ29から受信した信号に基づいて、撮像に要する露光時間を導出する。そして、露光時間判定部118は、導出した露光時間を露光制御部120に通知する。また、露光時間判定部118は、導出した露光時間が、予め定められた時間以下であるか否かを判定する。露光時間判定部118は、導出した露光時間が、予め定められた時間以下であると判定した場合、ぶれ補正制御部112にぶれ補正制御の中止を指令する。また、露光時間判定部118は、導出した露光時間が、予め定められた時間以下であると判定した場合、移動量低減制御部116に、移動量低減制御の開始を指令する。
【0060】
露光制御部120は、特定タイミング位置の情報と、露光時間判定部118から通知された露光時間とに基づいて、撮像素子20のリセットのタイミングと、後幕65の走行を開始させるタイミングとを導出する。そして、露光を開始する条件が満たされた場合に、導出したリセットのタイミングと後幕65の走行を開始するタイミングで露光制御を行う。露光を開始する条件とは、例えば、撮像素子20の移動量が予め定められた値以下に低下した場合である。
【0061】
次に、ぶれ補正制御部112、移動量低減制御部116、露光時間判定部118、及び露光制御部120が行う一連の撮像制御処理の流れについて、時系列に沿って説明する。ここでは、撮像装置100の電源がオンされた段階で、ぶれ補正制御部112によるぶれ補正制御が開始されていることを前提として説明する。一例として図7に示すように、露光時間判定部118は、露光時間を導出する。具体的には、露光時間判定部118は、ユーザから撮像を開始する指示が受け付けられると、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングで露光時間を導出する。撮像を開始する指示とは、例えば、ユーザによるレリーズボタンの全押しを指す。
【0062】
次に、露光時間判定部118は、ぶれ補正制御中止判定を行う。具体的には、露光時間判定部118は、導出した露光時間に基づいて、ぶれ補正制御を中止するか否かの判定を行う。露光時間判定部118は、露光時間が予め定められた時間以下であると判定した場合、ぶれ補正制御部112にぶれ補正制御中止指令を出し、かつ移動量低減制御部116に移動量低減制御開始指令を出す。
【0063】
次に、移動量低減制御部116は、撮像素子20の目標位置情報を取得する。具体的には、移動量低減制御部116は、ぶれセンサ30からの情報に基づいて、撮像素子20を停止させる目標位置の情報を取得し、かつ移動量低減制御を開始する。
【0064】
次に、露光制御部120は、リセット制御用の先幕レジスタを設定する。具体的には、露光制御部120は、撮像素子20の目標位置情報を取得する。露光制御部120は、取得した目標位置情報のうち、V方向の目標位置情報に基づいて各画素ラインの列方向に沿ったリセットのタイミングを導出する。そして露光制御部120は、導出したリセットのタイミングを一次記憶部26の先幕レジスタにタイミングデータとして格納する。
【0065】
各画素ラインの列方向に沿ったリセットのタイミングの導出方法を具体的に説明する。後幕65の位置による受光面21での受光量(以下、単に「受光量」と称する)の変化の度合いは、光束の入射角度と撮像素子20のV方向の位置とに応じた計算によって予め定められている。図5Aから図5Cで説明したように、撮像素子20のV方向の位置が高いほど、受光量の変化の度合いが大きくなる。そこで、露光制御部120は、撮像素子20のV方向の位置に基づいて、受光量の変化の度合いを低減するように、スリットの大きさを変えるリセットのタイミングを導出する。
【0066】
又は、各画素ラインの列方向に沿ったリセットのタイミングを、撮像素子20のV方向の位置をパラメータとするタイミングテーブルとして二次記憶部27に記憶させておいてもよい。この場合、露光制御部120は、取得した撮像素子20のV方向の位置に対応するリセットのタイミングをタイミングテーブルから読み出してリセット制御を行う。
【0067】
次に、露光制御部120は、先幕制御パルスを生成することにより撮像素子20のリセットを開始する。各画素ラインのリセットは、先幕レジスタに格納されたタイミングデータに従って列方向に沿って行われる。撮像素子20のリセットの開始が即ち露光の開始である。
【0068】
次に、露光制御部120は、露光時間に相当する時間が経過した後、後幕制御パルスを生成することにより後幕65を走行させる。図7においては、先幕のリセット方向及び後幕65の走行方向を、図に示す点線の方向で示している。図7に示す例では、先幕のリセット速度と後幕65の走行速度は、次第に増加する。ばね等によって付勢力を受ける後幕65は、位置による走行速度の変化の特性、つまり走行速度特性が決まっている。そのため、露光制御部120は、後幕65の走行速度特性に応じてリセットのタイミングを導出し、導出したリセットのタイミングでリセットを行う。
【0069】
次に、CPU12は、先幕のリセット開始後、つまり露光開始後、予め定められた時間が経過した後、露光した画素のデジタル信号の読み出しを行い、読み出したデジタル信号を一次記憶部26に記憶させる。読み出しは必ずしもすべての画素の露光が終了するまで待つ必要はなく、露光が終了した画素から順次に読み出してもよい。
【0070】
なお、図7において、撮像素子20を停止させる目標位置に関する情報の取得から先幕レジスタの設定まで、待ち時間が存在するが、これは露光を開始する条件が満たされるまでの時間である。露光開始までの待ち時間の間は、スルー画像をディスプレイ34に表示し続ける。
【0071】
次に、撮像装置100の作用について図8図15を参照しながら説明する。
【0072】
図8は、撮像装置100の電源がオンされた場合に、CPU12が撮像制御プログラム130に従って実行する撮像制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0073】
一例として図8に示す撮像制御処理では、先ず、ステップS32で、ぶれ補正制御部112は、一例として図9に示すぶれ補正制御を開始し、その後、撮像制御処理はステップS34へ移行する。
【0074】
図9に示すぶれ補正制御処理では、先ず、ステップS320で、ぶれ補正制御部112は、ぶれセンサ30からぶれ情報を取得し、その後、ぶれ補正制御処理はステップS321へ移行する。ぶれセンサ30は、例えばジャイロセンサであり、ぶれ情報は、例えば角速度情報である。以下、ぶれ情報は角速度情報を示す角速度であるとして説明する。
【0075】
ステップS321で、ぶれ補正制御部112は、取得した角速度のゼロ点補正等を行った後、ゼロ点補正できない角速度の低周波成分を除去するためハイパスフィルタ処理を行い、その後、ぶれ補正制御処理はステップS322へ移行する。
【0076】
ステップS322で、ぶれ補正制御部112は、角速度のゲイン調整を行い、その後、ぶれ補正制御処理はステップS323へ移行する。
【0077】
ステップS323で、ぶれ補正制御部112は、角速度を積分することにより、ぶれを打ち消すために撮像素子20を移動させるべき位置に換算し、その後、ぶれ補正制御処理はステップS324へ移行する。演算時間あたりの角速度の積分値が位置の変化量に相当する。
【0078】
ステップS324で、ぶれ補正制御部112は、移動量に対するシフト量制限を行い、その後、ぶれ補正制御処理はステップS325へ移行する。シフト量制限は、撮像素子20の可動範囲22を超える移動を制限する処理である。
【0079】
ステップS325で、ぶれ補正制御部112は、シフト量制限した移動量に基づいて、撮像素子20を移動させる移動目標位置を導出し、移動目標位置として設定する。
【0080】
ステップS325で設定される移動目標位置は、ぶれセンサ30からの角速度をサンプリングする毎に演算され、設定される。また、ステップS326で取得される現在位置情報は、位置センサ31からの情報をサンプリングする毎に取得され、フィードバック制御のための演算に用いられる。この場合、移動目標位置演算の周期と、フィードバック制御演算の周期とが異なる場合がある。移動目標位置演算と、フィードバック制御の演算周期とが異なる場合、リサンプリングに伴う偽信号、即ち折り返し雑音が発生する場合がある。
【0081】
第1実施形態では、上述の偽信号の発生を抑制するため、撮像素子20のぶれ補正制御を行う場合、移動量低減制御部116は、撮像素子20の目標位置を示す情報を平滑化する処理を行う。具体的には、移動量低減制御部116は、ステップS325で目標位置を設定する場合に、ローパスフィルタ70を用いる。移動目標位置演算の周期がフィードバック制御演算の周期よりも短い場合、すなわちダウンサンプリングとなる場合、ローパスフィルタ70を移動目標位置演算の周期にて行い、移動目標位置演算の周期がフィードバック制御演算の周期以上の場合、すなわちアップサンプリングとなる場合、ローパスフィルタ70をフィードバック制御演算周期にて行う。
【0082】
CPU12は、ローパスフィルタ70を有する。一例として図10に示すように、ローパスフィルタ70は、遅延回路71、第1フィルタ回路72、第2フィルタ回路73、及び加算器74としての機能を有する。このローパスフィルタ70は、入力X(t)に対して下記の式で表される出力Y(t)を出力する機能を有する。
【0083】
Y(t)=B×Y(t-1)+A×(X(t)+X(t-1))
【0084】
ここで、X(t)は、サンプリング時刻tでの平滑化前の目標位置、Y(t)は平滑化後の目標位置である。(t-1)で表される時刻は、tの1つ前のサンプリング時刻である。また、Aは第1フィルタ回路72が有するフィルタ係数であり、Bは第2フィルタ回路73が有するフィルタ係数である。これらは、ユーザの指示に従って変更可能な可変値であってもよいし、固定値であってもよい。
【0085】
なお、例えば、移動目標位置演算の周期とフィードバック制御演算の周期が同じ場合は、必ずしもローパスフィルタ70を設ける必要はない。
【0086】
次のステップS326で、ぶれ補正制御部112は、位置センサ31から撮像素子20の現在位置情報を取得し、その後、ぶれ補正制御処理はステップS327へ移行する。現在位置情報は、位置センサ31から受信した情報に基づいて導出される。
【0087】
ステップS327で、ぶれ補正制御部112は、ステップS325で設定した移動目標位置と、ステップS326で取得した現在位置情報とに基づいて、移動目標位置へ撮像素子20を移動させるフィードバック制御を行う。フィードバック制御は、例えばPID制御である。
【0088】
次のステップS328で、ぶれ補正制御部112は、ぶれ補正制御処理終了条件を満足したか否かを判定する。ここで、「ぶれ補正制御処理終了条件」とは、例えば、電源がオフされたとの条件、又は露光時間判定部118から、ぶれ補正制御処理を終了する指令を受けたとの条件を指す。ステップS328において、ぶれ補正制御処理終了条件を満足した場合は、判定が肯定されて、ぶれ補正制御部112はぶれ補正制御処理を終了する。ステップS328において、ぶれ補正制御処理終了条件を満足していない場合は、判定が否定されて、ぶれ補正制御処理はステップS320へ移行する。
【0089】
図8の撮像制御処理に戻り、ステップS34で、露光時間判定部118は、レリーズボタン211が全押し状態であるか否かを判定する。ステップS34において、レリーズボタン211が全押し状態の場合は、判定が肯定されて、撮像制御処理はステップS36へ移行する。ステップS34において、レリーズボタン211が全押し状態でない場合は、判定が否定されて、ステップS34の判定が再び行われる。
【0090】
ステップS36で、露光時間判定部118は、測光センサ29からの情報に基づいて露光時間を導出し、その後、撮像制御処理はステップS38へ移行する。
【0091】
ステップS38で、露光時間判定部118は、導出した露光時間が予め定められた時間以下であるか否かを判定する。ステップS38において、ステップS36で導出した露光時間が予め定められた時間以下ではない場合は、判定が否定されて、撮像制御処理はステップS48へ移行する。ステップS38において、ステップS36で導出した露光時間が予め定められた時間以下である場合は、判定が肯定されて、撮像制御処理はステップS39へ移行する。
【0092】
ステップS39で、露光時間判定部118は、移動量低減制御部116に移動量低減制御を開始する指令を出す。また、ステップS39で、露光時間判定部118は、ぶれ補正制御部112にぶれ補正制御を中止する指令を出す。その後、撮像制御処理はステップS40へ移行する。
【0093】
ステップS40で、移動量低減制御部116は、一例として図11に示す移動量低減制御処理の実行を開始する。その後、撮像制御処理は、ステップS42に移行する。
【0094】
図11に示す移動量低減制御処理のうち、ステップS320からステップS324までの処理は、図9に示すぶれ補正制御処理のステップS320からステップS324までの処理と同様である。具体的には、ステップS320で、移動量低減制御部116は、ぶれセンサ30から角速度を取得する。ステップS321で、移動量低減制御部116は、取得した角速度のハイパスフィルタ処理を行う。ステップS322で、移動量低減制御部116は、角速度のゲイン調整を行う。ステップS323で、移動量低減制御部116は、角速度を積分し移動量に換算する。ステップS324で、移動量低減制御部116は、移動量に対するシフト量制限を行う。
【0095】
次に、ステップS401で、移動量低減制御部116は、撮像素子20を停止させる目標位置を設定する。具体的には、移動量低減制御部116は、ぶれセンサ30からの情報に基づいて、撮像素子20の特定タイミング位置を取得する。そして、移動量低減制御部116は、特定タイミング位置を、撮像素子20を停止させる目標位置として設定する。具体的には、図11に示すステップS322において、ぶれセンサ30からの角速度を処理するゲインをゼロに調整する。これにより、角速度積分を行う入力値がゼロとなり、角速度積分の出力値(位置)が一定となる。これにより、特定タイミング位置が撮像素子20を停止させる目標位置として固定される。その後、移動量低減制御処理はステップS403へ移行する。
【0096】
ステップS403で、移動量低減制御部116は、位置センサ31からの情報に基づいて、撮像素子20の現在位置情報を取得し、その後、移動量低減制御処理はステップS405へ移行する。
【0097】
ステップS405で、移動量低減制御部116は、ステップS401で設定した目標位置と、ステップS403で取得した現在位置情報とから、目標位置を含む目標範囲に撮像素子20を停止させるフィードバック制御を行い、その後、ステップS406へ移行する。
【0098】
ステップS406で、移動量低減制御部116は、移動量低減制御処理終了条件を満足したか否かを判定する。ステップS406において、移動量低減制御処理終了条件を満足した場合は、判定が肯定されて、移動量低減制御部116は、移動量低減制御処理を終了する。ステップS406において、移動量低減制御処理終了条件を満足しない場合は、判定が否定されて、移動量低減制御処理はステップS320に移行する。ここで、「移動量低減制御処理終了条件」とは、例えば、露光処理が開始されたとの条件を指す。
【0099】
図8に示す撮像制御処理に戻り、ステップS42で、露光制御部120は、移動量低減制御部116から撮像素子20の目標位置の情報を取得し、その後、撮像制御処理はステップS44に移行する。
【0100】
ステップS44で、露光制御部120は、取得した目標位置情報のうち、V方向の目標位置情報に基づいて先幕レジスタを設定し、その後、撮像制御処理はステップS46に移行する。
【0101】
ステップS46で、露光制御部120は、露光開始条件を満足したか否かを判定する。ステップS46において、露光開始条件を満足した場合は、判定が肯定されて、撮像制御処理はステップS48へ移行する。露光開始条件を満足していない場合は、判定が否定されて、撮像制御処理はステップS46の判定が再び行われる。
【0102】
ここで、「露光開始条件」とは、例えば、撮像素子20の移動量が予め定められた値以下に低下したとの条件を指す。この場合、ステップS46で、露光制御部120は、位置センサ31からの情報に基づいて撮像素子20の目標位置からの移動量を導出し、撮像素子20の移動量が予め定められた値以下に低下したか否かを判定する。ステップS46において、撮像素子20の移動量が予め定められた値以下に低下した場合は、判定が肯定されて、撮像制御処理はステップS48へ移行する。ステップS46において、撮像素子20の移動量が予め定められた値以下に低下していない場合は、判定が否定されて、ステップS46の判定が再び行われる。
【0103】
なお、「露光開始条件」は上記の例に限定されない。例えば、「露光開始条件」は、移動量低減制御を開始してから予め定められた時間が経過した条件としてもよい。
【0104】
ステップS48で、露光制御部120は、露光を行う。具体的には、露光制御部120は、ステップS44で設定された撮像素子20のリセットのタイミングで、撮像素子20のリセット制御を行い、露光時間が経過した後、後幕65の走行を開始させる。その後、撮像制御処理はステップS50へ移行する。
【0105】
ステップS50で、移動量低減制御部116は、撮像制御処理終了条件を満足するか否かを判定する。ステップS50において、撮像制御処理終了条件を満足する場合は、判定が肯定されて、移動量低減制御部116は、撮像制御処理を終了する。撮像制御処理終了条件を満足していない場合は、判定が否定されて、撮像制御処理はステップS32へ戻る。ここで、「撮像制御処理終了条件」とは、例えば電源がオフされたとの条件を指す。
【0106】
以上の構成を有する撮像装置100により、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングでの撮像素子の移動量よりも、撮像を開始する指示を受け付けたタイミングが経過してから撮像素子に対する露光が開始されるまでに撮像素子を移動させる移動量を低減させることができる。そのため、撮像素子の移動量を低減させない場合に比べ、撮像されることで得られた画像内の露出のむらを低減することができる。
【0107】
また、移動量低減制御部116は、予め定められた第1タイミングの撮像素子20の移動目標位置を目標位置として、撮像素子20を目標位置を含む目標範囲に停止させる停止制御を行うことにより、撮像素子20の初期位置を目標に停止制御を行う場合よりも速やかに撮像素子20を停止させることができる。
【0108】
また、露光制御部120は、撮像素子20の目標位置に基づいて、撮像素子20の列方向に沿ったリセットのタイミングを導出し、導出したタイミングで列方向に沿ってリセットを行うことにより、撮像素子20の目標位置に基づいて、撮像素子20の列方向に沿ったリセットのタイミングを導出しない場合に比べ、得られた画像内の露出のむらをより低減することができる。
【0109】
また、露光制御部120は、後幕65の走行速度特性に応じてリセットのタイミングを導出し、導出したリセットのタイミングでリセットを行う。これにより、後幕65の走行速度の変化の特性に応じた画素ライン24のリセットを行わない場合に比べ、得られた画像内の露出のむらをより低減することができる。
【0110】
移動量低減制御部116は、ローパスフィルタ70を用いる。ローパスフィルタ70を用いることにより、撮像素子20の移動目標位置演算と、フィードバック制御の演算周期とが異なる場合に、リサンプリングに伴う偽信号、即ち折り返し雑音が発生することを抑制することができる。
【0111】
また、露光制御部120は、撮像素子20の目標位置からの移動量を導出し、撮像素子20の移動量が予め定められた値以下に低下した場合にリセット制御を開始する。これにより、移動量低減制御を開始してから予め定められた時間が経過した場合にリセット制御を開始する場合よりも早く露光を開始できる。
【0112】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。第1実施形態では、特定タイミング位置を撮像素子20を停止させる目標位置として固定するために、ぶれセンサ30からの角速度を処理するゲインをゼロにする。これにより、角速度積分を行う入力値がゼロとなり、角速度積分の出力値が一定となり、目標位置が固定される。また、移動量低減制御部116は、折り返し雑音を抑制するためにローパスフィルタ70を用いる。その結果、移動目標位置を示す情報が平滑化される。このような場合で、角速度積分の出力値が一定となった場合、一例として図12Aに示すように、ローパスフィルタ70への入力が図中の実線で示すように一定値となったタイミングで、図中の点線で示すようにローパスフィルタ70の出力が過渡応答によって変動する。ローパスフィルタ70の出力が変動すると、撮像素子20の移動量が低下するまで時間がかかるおそれがある。
【0113】
そこで、第2実施形態では、移動量低減制御部116は、撮像素子20の停止制御を行う場合、例えば停止制御を開始したタイミングで、停止制御における撮像素子20の目標位置を示す情報を平滑化することにより得られた出力値を固定する制御を行う。例えば、一例として図12Bに示すように、移動量低減制御部116は、ローパスフィルタ70の出力値を固定する。具体的には、移動量低減制御部116は、移動量低減制御を開始したタイミングでのローパスフィルタ70からの出力値を保持しておき、保持した値を撮像素子20の目標位置としてフィードバック制御の入力値とする。これにより、撮像素子20の目標位置を示す情報を平滑化することにより得られた出力値を固定することができる。この方法により、撮像素子20の移動量低減制御において、ローパスフィルタ70の出力変動の影響を受けることを防止することができる。
【0114】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。撮像素子20は、ぶれ補正のためにH方向、V方向、及びR回転方向に駆動される。そのため、ぶれ補正制御を中止して移動量低減制御を開始した場合に、一例として図13Aに示すように、点線で示す撮像素子20の光軸回りのロール回転量が、実線で示す初期位置のロール回転量とは異なる場合がある。
【0115】
撮像素子20の光軸回りのロール回転量が初期位置のロール回転量とは異なる状態で露光されると、撮像素子20のリセットの方向と後幕65の走行方向が一致しない。そのため、撮像素子20の受光面21に入射する光量が設計された光量と異なり、露出の調整が設計通り行われない。そこで、第実施形態では、移動量低減制御部116は、移動量低減制御において、撮像素子20のロール回転量を初期位置のロール回転量に戻す制御を行う。
【0116】
一例として図13Bを用いて第3実施形態に係る移動量低減制御処理について説明する。なお、ステップS320からステップS403までは、図11と同じステップであるので説明を省略する。次に、ステップS404で、移動量低減制御部116は、予め定められたタイミングで、撮像素子20のロール回転量を初期位置に戻す制御をVCM52に対して行い、その後、移動量低減制御処理は、ステップS405へ移行する。
【0117】
ここで「予め定められたタイミング」とは、例えば移動量低減制御部116が撮像素子20の現在位置情報を取得したタイミングを指す。しかし、予め定められたタイミングはこれに限定されず、移動量低減制御部116が移動量低減制御を開始するタイミング、又は受付デバイス14がユーザから撮像を開始するとの指示を受け付けたタイミング等でもよい。ここでいう「予め定められたタイミング」は、本開示の技術に係る「予め定められた第2タイミング」の一例である。
【0118】
ステップS405で、移動量低減制御部116は、撮像素子20を目標範囲に停止させるフィードバック制御を行い、その後、ステップS406へ移行する。ステップS406は、図11で説明したステップと同じである。
【0119】
図13Aに示すように、ロール回転量を初期位置に戻す前の撮像素子20の配置が点線で示す配置であるとする。この場合、撮像素子20の露光時のリセットの方向は矢印P1で示す方向である。しかし、後幕65の走行方向は矢印Sの方向であるため、リセットの方向と後幕65の走行方向が一致しない。しかし、撮像素子20を図の矢印R1の方向に回転させて、実線で示すようにロール回転量が初期位置と同じロール回転量となるように戻した場合のリセットの方向は、実線で示す矢印P2の方向となる。つまり、リセットの方向と後幕65の走行方向を一致させることができ、露出むらの補正を設計通りに行うことができる。
【0120】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図面を参照して説明する。取得した画像の露出のむらは、撮像素子20の列方向の位置が初期位置から変化することにより発生する。撮像素子20が行方向に移動しても露出のむらの原因とはならない。そこで、第4実施形態では、ぶれ補正制御部112は、予め定められた露光時間以下の撮像を開始する指示を受け付けたタイミング以降は、撮像素子20の初期位置での列方向の移動は停止させ、行方向のみ、撮像素子20を移動させることにより行方向のぶれを補正させる制御をVCM52に対して行う。
【0121】
一例として図14を用いて第4実施形態に係る移動量低減制御について説明する。なお、ステップS320からステップS403までは、図11と同じステップであるので説明を省略する。次に、ステップS405で、移動量低減制御部116は、撮像素子20を目標位置に移動させるフィードバック制御を行い、次に移動量低減制御はステップS407へ移行する。
【0122】
ステップS407で、移動量低減制御部116は、水平シフト駆動が必要か否かを判定する。つまり、H方向のぶれを検出したか否かを判定する。より具体的には、ぶれセンサ30の出力信号からH方向の成分が検出されたか否かを判定する。
【0123】
ステップS407において、水平シフト駆動が必要ではない場合は、判定が否定され、移動量低減制御処理はステップS411へ移行する。ステップS407において、水平シフト駆動が必要な場合は、判定が肯定され、移動量低減制御処理はステップS409へ移行する。
【0124】
ステップS409で、移動量低減制御部116は、撮像素子20を水平シフト駆動する。その後、移動量低減制御処理はステップS411へ移行する。
【0125】
ステップS411で、移動量低減制御部116は、移動量低減制御処理終了条件を満足したか否かを判定する。ステップS411において、移動量低減制御処理終了条件を満足した場合は、判定が肯定されて、移動量低減制御部116は、移動量低減制御処理を終了する。ステップS411において、移動量低減制御処理終了条件を満足しない場合は、判定が否定されて、移動量低減制御処理はステップS320に移行する。ここで、「移動量低減制御処理終了条件」とは、例えば、露光処理が開始されたとの条件を指す。
【0126】
以上のように、撮像素子20を行方向へぶれ補正のために移動させることにより、撮像素子20を行方向へ移動させない場合に比べ、行方向のぶれを補正することができる。
【0127】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図面を参照して説明する。ユーザは、静止画の撮像モードとして、連写モード及びブラケット撮像モード等の特殊撮像モードを設定可能である。連写モードは、例えば、シャッタボタンを全押ししている間、複数のフレーム分の画像が自動的に連続して撮像されるモードである。ブラケット撮像モードは、予め定められた異なる複数の露出で複数フレーム分の画像が撮像されるモードである。第5実施形態は、移動量低減制御部116は、このような特殊撮像モードの間、つまり撮像を開始する指示が1回行われることに応じて複数フレーム分の静止画像用の撮像が行われている間、撮像素子20を目標範囲に停止させる制御を行う。
【0128】
一例として図15を用いて第5実施形態に係る移動量低減制御処理について説明する。なお、ステップS320からステップS405までは、図11と同じステップであるので説明を省略する。
【0129】
ステップS420で、移動量低減制御部116は、現在の撮像モードが特殊撮像モードであるか否かを判定する。ステップS420において、現在の撮像モードが特殊撮像モードではない場合は、判定が否定されて、移動量低減制御処理はステップS320へ移行する。ステップS420において、現在の撮像モードが特殊撮像モードである場合は、判定が肯定されて、移動量低減制御処理はステップS422へ移行する。
【0130】
ステップS422で、移動量低減制御部116は、露光が開始されたか否かを判定する。ステップS422において、露光が開始されていない場合は、判定が否定されて再びステップS422の判定を行う。ステップS422において、露光が開始されている場合は、判定が肯定されて、移動量低減制御処理はステップS424に移行する。
【0131】
ステップS424で、露光制御部120は、全ての露光が終了したか否かを判定する。ステップS424において、全ての露光が終了していない場合は、判定が否定されて再びステップS424の判定を行う。ステップS424において、全ての露光が終了した場合は、判定が肯定されて、移動量低減制御処理はステップS426に移行する。
【0132】
ステップS426で、移動量低減制御部116は、特殊撮像モードが終了したか否かを判定する。ステップS426において、特殊撮像モードが終了した場合、判定が肯定されて、移動量低減制御部116は移動量低減制御処理を終了し、図8に示すステップS32へ移行する。ステップS426において、特殊撮像モードが終了していない場合、判定が否定されて、移動量低減制御処理はステップS320に戻る。ここで、「特殊撮像モードが終了」とは、例えばユーザが特殊撮像モードを解除した場合を指す。
【0133】
複数フレーム分の静止画像用の撮像を行う場合、1フレーム毎にぶれを補正し、その都度撮像素子を停止させ、また再開すると、撮像素子20の移動量が予め定められた移動量以下に低下するまでに時間がかかる。それに比べて、複数フレーム分の撮像が終了するまで撮像素子を目標範囲に停止させておくことにより、複数フレームの撮像の時間間隔を小さくすることができる。
【0134】
(第6実施形態)
上記の各実施形態で説明したように、露光時間が予め定められた時間以下である場合、撮像素子20を停止させることにより、得られた画像内の露出のむらを抑制することができる。しかしそのような制御を行っても画像内に露出のむらが残る場合がある。そのような場合に備えて、画像処理部28は、さらに、撮像されることで得られた画像に対して、列方向にシェーディング補正を行ってもよい。
【0135】
具体的には、図16に示すように、画像処理部28は、スルー画像の中から撮像時に近い静止画像を抽出し、列方向の明るさのプロファイル(1)を取得する。同様に、画像処理部28は、上述した撮像方法で得られた画像の列方向の明るさのプロファイル(2)を取得する。次に、画像処理部28は、プロファイル(1)をプロファイル(2)で割った補正パラメータを取得する。次に、画像処理部28は、上述した撮像方法で得られた画像に補正パラメータを乗じて明るさを補正した画像を取得する。
【0136】
以上のようにシェーディング補正を行うことにより、先幕のリセットタイミングを調整する方法で得られた画像に露出のむらが発生したとしても、シェーディング補正が行われない場合に比べ、露出のむらを抑制することができる。
【0137】
上記の各実施形態に係る撮像装置はデジタルカメラであるが、本開示の技術はこれに限らず、デジタルビデオカメラ等の撮像装置、並びに電子内視鏡及びカメラ付携帯電話機等に搭載される撮像モジュール等に適用可能である。
【0138】
以上の各実施形態で説明した、本開示の技術に係る撮像制御処理、ぶれ補正制御処理、移動量低減制御処理、及び露光制御処理の各処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0139】
以上の説明では、本開示の技術に係る各種処理がCPU12によって実行される形態例を示したが、本開示の技術はこれに限定されず、CPU12以外のCPUによって本開示の技術に係る各種プログラムが実行されるようにしてもよい。
【0140】
ここで言う「本開示の技術に係る各種プログラム」とは、撮像制御プログラム等を指す。これらのプログラムを「プログラムPG」と称する。一例として図17に示すように、プログラムPGは、SSD、USBメモリ、又はDVD-ROM等の任意の可搬型の記憶媒体700に記憶させておいてもよい。記憶媒体700は、非一時的記憶媒体である。この場合、記憶媒体700のプログラムPGが撮像装置100にインストールされ、インストールされたプログラムPGがCPU12によって実行される。
【0141】
また、通信網(図示省略)を介して撮像装置100に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶部にプログラムPGを記憶させておき、プログラムPGが撮像装置100の要求に応じてダウンロードされるようにしてもよい。この場合、ダウンロードされたプログラムPGは撮像装置100のCPU12によって実行される。
【0142】
上記実施形態において、例えば、本開示の技術に係る各種処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、上述したように、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、本開示の技術に係る各種処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA、PLD、又はASICなどの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路が挙げられる。
【0143】
本開示の技術に係る各種処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、本開示の技術に係る各種処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
【0144】
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、本開示の技術に係る各種処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoCなどに代表されるように、本開示の技術に係る各種処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、本開示の技術に係る各種処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
【0145】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路を用いることができる。
【0146】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0147】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17