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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】RF用途のための構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220705BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20220705BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L29/78 613Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019538653
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 FR2018050196
(87)【国際公開番号】W WO2018142052
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】1750870
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デボネ, エリック
(72)【発明者】
【氏名】アスパー, ベルナード
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-058844(JP,A)
【文献】特表2014-509087(JP,A)
【文献】特開2016-164951(JP,A)
【文献】特表2009-502042(JP,A)
【文献】特開平10-041512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面(1a)が主平面を規定する高抵抗支持基板(1)と、
前記支持基板(1)の前記上面(1a)に設けられた電荷トラップリッチ層(2)と、
前記トラップリッチ層(2)上に設けられた第1の誘電体層(3)と、
前記第1の誘電体層(3)上に設けられた活性層(4)と、
を備える、RF用途のための構造体(100)であって、
前記構造体(100)が、
前記トラップリッチ層(2)の内部に設けられた少なくとも1つの埋め込み電極(10)を備え、前記電極(10)は導電層(11)と第2の誘電体層(13)とを備えることを特徴とする、構造体(100)。
【請求項2】
上面(1a)が主平面を規定する高抵抗支持基板(1)と、
前記支持基板(1)の前記上面(1a)に設けられた電荷トラップリッチ層(2)と、
前記トラップリッチ層(2)上に設けられた第1の誘電体層(3)と、
前記第1の誘電体層(3)上に設けられた活性層(4)と、
を備える、RF用途のための構造体(100)であって、
前記構造体(100)が、
前記トラップリッチ層(2)の上方又は内部に設けられた少なくとも1つの埋め込み電極(10)を備え、前記電極(10)は導電層(11)と第2の誘電体層(13)とを備え、
前記導電層(11)が前記主平面に平行な2つの表面(11a,11b)を有し、一方の面が前記第1の誘電体層(3)と接触し、他方の面が前記第2の誘電体層(13)と接触しており、
前記電極(10)が複数の絶縁壁(14)を備え、前記複数の絶縁壁(14)は前記第1の誘電体層(3)と前記第2の誘電体層(13)の間に延在し、前記複数の絶縁壁(14)は、前記導電層(11)を複数の導電性ブロック(12)に分割すると共に、前記絶縁壁(14)により互いに絶縁されており、
前記電極(10)が、前記第1の誘電体層(3)と前記電荷トラップリッチ層(2)との間に設けられ、前記第2の誘電体層(13)が前記主平面に平行な前記電荷トラップリッチ層(2)と接触しており、
前記電極(10)が前記主平面内で不連続であり、複数の電荷トラップエリア(22)が前記第1の誘電体層(3)と前記電荷トラップリッチ層(2)との間に延在し、前記トラップエリア(22)は前記絶縁壁(14)により前記導電性ブロック(12)から絶縁されていることを特徴とする、RF用途のための構造体(100)。
【請求項3】
上面(1a)が主平面を規定する高抵抗支持基板(1)と、
前記支持基板(1)の前記上面(1a)に設けられた電荷トラップリッチ層(2)と、
前記トラップリッチ層(2)上に設けられた第1の誘電体層(3)と、
前記第1の誘電体層(3)上に設けられた活性層(4)と、
を備える、RF用途のための構造体(100)であって、
前記構造体(100)が、
前記トラップリッチ層(2)の上方又は内部に設けられた少なくとも1つの埋め込み電極(10)を備え、前記電極(10)は導電層(11)と第2の誘電体層(13)とを備え、
前記電極(10)が前記電荷トラップリッチ層(2)内に設けられ、前記第2の誘電体層(13)が前記主平面に沿って前記支持基板(1)の前記上面(1a)と接触し、前記電極(10)が複数の絶縁壁(14)を備え、前記複数の絶縁壁(14)は、前記第1の誘電体層(3)と前記第2の誘電体層(13)との間に延在すると共に、前記導電層(11)の複数の導電性ブロック(12)を画定し、各導電性ブロック(12)は、前記絶縁壁(14)により、前記トラップリッチ層(2)を形成する少なくとも1つトラップエリア(23)から絶縁されていることを特徴とする、RF用途のための構造体(100)。
【請求項4】
前記第2の誘電体層(13)が、5nm~100nmの厚さを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のRF用途のための構造体(100)。
【請求項5】
前記導電層(11)が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及び非晶質シリコンの中から選択される材料を備える、請求項1~のいずれか一項に記載のRF用途のための構造体(100)。
【請求項6】
前記導電層(11)が、50nm~500nmの厚さを有する、請求項1~のいずれか一項に記載のRF用途のための構造体(100)。
【請求項7】
前記導電層が、数Ω・cm~数1000Ω・cmの抵抗率を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のRF用途のための構造体(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF用途のための構造体に関する。特に、トラップリッチ層及び埋め込み電極を備えるシリコンオンインシュレータ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
集積化デバイスは、通常、ウェハ形状の基板上に製造され、基板は主として集積化デバイスの製造のためのハンドルとして機能する。これらデバイスの集積度及び期待される性能が向上し、集積化デバイスの性能と集積化デバイスが形成される基板の特性とが、いまだかつてなく強くカップリングするようになった。これは、特に電気通信(携帯電話、Wi-Fi、Bluetoothなど)の分野で使用される、約3kHzから300GHzの周波数で信号を処理する無線周波数(RF)デバイスの場合である。
【0003】
デバイス/基板カップリングの例として、デバイス中を伝搬する高周波信号からの電磁場は基板の深さに侵入し、基板に含まれうるあらゆる電荷キャリアと相互作用する。これが、信号の非線形の歪み(高調波)、挿入損失による信号からのエネルギーの一部の無用な消費、及び構成要素間で影響を及ぼす可能性という問題をもたらす。
【0004】
RFデバイスの製造に適した基板の中で、支持基板と、支持基板上に設けられたトラップリッチ層と、トラップリッチ層上に設けられた誘電体層と、誘電体層上に設けられた半導体層とを備える高抵抗シリコン基板が知られている。支持基板は、通常、1kΩ・cmより高い抵抗率を有する。トラップリッチ層は、ノンドープの多結晶シリコンを備えることがある。従来技術によれば、高抵抗支持基板とトラップリッチ層とを組み合わせることにより、前述のデバイス/基板カップリングを低減でき、したがってRFデバイスの良好な性能が保証される。このことについては、当業者ならば「Silicon-on-insulator (SOI) Technology,manufacture and applications」、第10.7節及び第10.8節(Oleg Kononchuk、Bich-Yen Nguyen、Woodhead Publishing)における従来技術から知られる、高抵抗半導体基板上に製造されたRFデバイスの性能に関する報告に行き当たるであろう。
【0005】
さらに、特に携帯電話に含まれる、たとえばアンテナスイッチングユニットなどのRFデバイスを製造するために、スイッチングユニットの端子に印加される、個々のトランジスタのブレークダウン電圧より高い最大電圧を維持するために、複数のトランジスタ(たとえば電界効果トランジスタ「FET」)を直列に接続することが一般的である。しかしながら、複数のトランジスタの直列構成は、RFデバイスの直列抵抗を増加させ、特にRFデバイスの直線性性能を劣化させかねないという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の欠点のすべて又は一部を解決しようとするものである。本発明の具体的な目的の1つは、高性能なRFデバイスの製造を可能にするRF用途のための構造体を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、RF用途のための構造体に関し、構造体は
上面が主平面を規定する高抵抗支持基板と、
支持基板の上面に設けられた電荷トラップリッチ層と、
トラップリッチ層上に設けられた第1の誘電体層と、
第1の誘電体層上に設けられた活性層とを備える。
【0008】
構造体は、トラップリッチ層の上方又は内部に設けられた埋め込み電極を少なくとも1つ備え、電極は導電層と第2の誘電体層とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の好都合且つ非制限的な特徴に従って、以下を個別に、又は技術的に可能な組合せで採用する。
【0010】
導電層が主平面に平行な2つの表面を有し、一方の表面が第1の誘電体層と接触し、他方の表面が第2の誘電体層と接触している。
【0011】
電極が複数の絶縁壁を備え、絶縁壁は、第1及び第2の誘電体層間に延在すると共に、導電層を複数の導電性ブロックに分割し、前記ブロックは絶縁壁により互いに絶縁されている。
【0012】
電極が活性層と第1の誘電体層との間に設けられ、第2の誘電体層が主平面に平行な活性層と接触している。
【0013】
電極が第1の誘電体層と電荷トラップリッチ層との間に設けられ、第2の誘電体層が主平面に平行なトラップリッチ層と接触している。
【0014】
埋め込み電極が主平面内で不連続であって、複数の電荷トラップエリアが第1の誘電体層と電荷トラップリッチ層との間に延在し、トラップエリアは絶縁壁により導電性ブロックから絶縁されている。
【0015】
構造体が電荷トラップリッチ層と支持基板の上面との間に第3の誘電体層を備える。
【0016】
電極が電荷トラップリッチ層内に設けられ、第2の誘電体層が主平面に沿って支持基板の上面と接触している。電極は複数の絶縁壁を備え、絶縁壁は、第1の誘電体層と第2の誘電体層との間に延在すると共に、導電層の複数の導電性ブロックを画定している。各導電性ブロックは、トラップリッチ層を形成する少なくとも1つのトラップエリアから絶縁壁により絶縁されている。
【0017】
少なくとも1つの導電性ブロックが、構造体の一部を貫通して導電性ブロックからコンタクトパッドに到る導電性ビアにより、活性層の開放面上に設けられたコンタクトパッドに電気的に接続されている。
【0018】
構造体が少なくとも1つのトランジスタを含むデバイスを活性層内及び/又は活性層上にさらに備え、活性層の開放面上に設けられたゲート電極は埋め込み電極の少なくとも1つの導電性ブロックの反対側に配置されている。
【0019】
第2の誘電体層が5nm~100nmの厚さを有する。
【0020】
導電層が単結晶シリコン、多結晶シリコン及び非晶質シリコンの中から選択される材料を含む。
【0021】
導電層が数Ω・cm~数1000Ω・cmの抵抗率を有する。
【0022】
導電層が50nm~500nmの厚さを有する。
【0023】
導電層が高温処理適合性のある材料で形成されている。
【0024】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図を参照してなされる詳細な説明により明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】本発明の第1の実施形態による構造体を示す。
図1b】本発明の第1の実施形態による構造体を示す。
図2a】本発明の第2の実施形態による構造体を示す。
図2b】本発明の第2の実施形態による構造体を示す。
図3】本発明の第3の実施形態による構造体を示す。
図4】本発明の第4の実施形態による構造体を示す。
図5a】本発明による構造体を示す。
図5b】本発明による構造体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本説明部では、図中、同類の要素に対しては、同じ参照符号が使用されることがある。
【0027】
図は読みやすさのために模式的に表現しており、一定の比率になっていない。特にZ軸に沿った層の厚さは、X軸及びY軸に沿った横方向寸法に対して一定の比率でない。
【0028】
本発明は、RF用途のための、高抵抗支持基板1を備える構造体100に関する。高抵抗率とは、1000Ω・cmよりも高い抵抗率を意味すると理解されており、4~10kΩ・cmの間の抵抗率であると有利である。支持基板1は、マイクロエレクトロニクス、光学、オプトエレクトロニクス又は電池の産業で一般的に使用される材料にて製造することができる。特に支持基板1は、以下のグループから選択される材料のうち少なくとも1つを備える:シリコン、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなど。
【0029】
支持基板1の上面1aは、図1aに示すように主平面(x,y)を規定する。有利なことに、支持基板1は、150、200、300又は450mmの直径をもつ円形ウェハの形状である。
【0030】
構造体100は、同様に、支持基板1の上面1a上に設けられた電荷トラップリッチ層2を備える。設けられたとは、支持基板1の上面1aに直接接するか、1つ又は複数の中間層を介して支持基板1と強固に接続されるかのいずれかでありうることを意味すると理解される。以下本明細書で使用する「設けられた」という用語は、同様に解釈できる。
【0031】
有利なことに、トラップリッチ層2は、支持基板1内に発生しうる自由電荷を捕獲するのに好適な欠陥密度をもつ多結晶シリコン材料を備える。明らかに、トラップリッチ層2は、同様に捕獲作用を提供することができ、構造体100及び構造体100の使用と相性が良い他の種類の材料を備えてもよい。トラップリッチ層2は、数10ナノメートルから数ミクロン、たとえば50nmから3ミクロンの厚さを有する。
【0032】
構造体100は、トラップリッチ層2上に設けられた第1の誘電体層3をさらに備える。本発明によるいくつかの実施形態において、第1の誘電体層3は構造体100の埋め込み絶縁層を構成し、特に活性層4を支持基板1から電気的に絶縁する。有利なことに、このことによるいかなる制限作用なしに、第1の誘電体層3は、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどから選定される材料の少なくとも1つを備えることになる。誘電体層3の厚さは、たとえば10nmから3μmに及ぶことがある。
【0033】
構造体100は、同様に、第1の誘電体層3上に設けられた活性層4を備える。活性層4は、RF構成要素が層内に、及び/又は層上に作製される層に該当する。活性層4は、開放面すなわち上面4a、及び下方層に強固に接続された背面4bを含む。活性層4は、有利なことに半導体材料及び/又は圧電性材料から製造することができる。有利なことに、このことによるいかなる制限作用なしに、活性層4は、シリコン、炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、石英、窒化アルミニウムなどから選定される材料の少なくとも1つを備える。活性層4は、数ナノメートル(たとえば10nm)から数ミクロン、又は製造される構成要素によっては数10ミクロン(たとえば50μm)の厚さを有することもある。
【0034】
最後に、本発明による構造体100は、トラップリッチ層2の上方又は内部に設けられた少なくとも1つの埋め込み電極10を備える。図1aは、埋め込み電極10がトラップリッチ層2の上方に位置し、特に埋め込み電極10が活性層4の直下に位置する実施形態を示す。
【0035】
埋め込み電極10は、導電層11及び誘電体層13(以下、第2の誘電体層13と呼ぶ)を備える。埋め込み電極10は、導電層11に電圧を印加してバイアスされ、活性層4の電気的キャリアに作用効果を発生するためものである。
【0036】
好ましいことにこのことによるいかなる制限作用なしに、導電層11が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンなど、又はゲート電極又はマイクロエレクトロニクス用の抵抗器の作製のために一般的に使用される他の材料、の中から選択される材料を備える。導電層11を形成する材料は、有利なことに、数Ω・cmから数1000Ω・cmの抵抗率を有する。高温処理に適合することが好ましくは選定され、構造体100はRF構成要素の製造のためにそのような処理にさらされる傾向がある。導電層11は、50nmから500nmの典型的な厚さを有する。
【0037】
第2の誘電体層13は、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの材料のうち少なくとも1つを備えうることが好ましい。5nmから100nmの厚さを有すると有利である。それにもかかわらず、その厚さは、本発明の実施形態によっては1nmと3ミクロンの間を変化することがある。
【0038】
導電層11は、主平面(x,y)に平行な2つの表面11a、11bを有する。図1aの例では、第1の表面11aが第2の誘電体層13と接触し、第2の表面11bが第1の誘電体層3と接触する。
【0039】
有利なことに、電極10は、第1の誘電体層3と第2の誘電体層13との間に延在する、複数の電気的絶縁壁14を備える(図1b及び図2b)。前記絶縁壁14は、導電層11を、前記絶縁壁14により互いに絶縁された、複数の導電性ブロック12に分割する。
【0040】
したがって本発明によれば、埋め込み電極10は、構造体100の他の層、特に活性層4及び支持基板1から電気的に絶縁されており、埋め込み電極10の導電性ブロック12のうち、少なくとも1つに電圧を印加することが可能となる。導電性ブロック12は、活性層4に作製されるトランジスタの活性領域の少なくとも反対側に位置すると有利である。その後、前記トランジスタは、ゲート電極による通常のゲート電極バイアスに加え、活性層4の背面4bへのバイアスから利益を得ることができる。バックバイアスを使用すれば、トランジスタのブレークダウン電圧を増加させることが可能になり、したがってRFデバイス(たとえばスイッチングユニット)の端子に印加される電圧に耐えるために直列に配置されるトランジスタ数を制限する。デバイスの直列抵抗を低減することができ、デバイスの直線性は改善される。
【0041】
第1の実施形態によれば、図1a及び図1bに示すように、電極10が活性層4と第1の誘電体層3との間に設けられ、第2の誘電体層13が主平面(x,y)に平行な活性層4と接触する。
【0042】
この事例において、埋め込み電極10の導電層11に印加される電圧が活性層4の電気的キャリアに作用効果を有することができるように、第2の誘電体層13は、400nmよりも小さい、好ましくは50~100nmのオーダーの厚さを有する。
【0043】
図1aに提示される構造体100は、様々な方法を用いて製造することができる。これらの製造変形態のうちのいくつかについて以下に説明する。
【0044】
最初に電荷トラップリッチ層2を支持基板1上に堆積する。たとえば、トラップリッチ層2を構成する多結晶シリコン層は、化学気相又は液相堆積法、さもなければエピタキシャル成長によってシリコン製支持基板1上に堆積することができる。トラップリッチ層2は前記の範囲に含まれる厚さ、たとえば2ミクロンのオーダーの厚さを有する。
【0045】
活性層4は、分子結合による接着に基づく薄層移転法の1種によって、トラップリッチ層2を含む支持基板1に追加される。実際に、そのような直接接着は高温処理に完全に適合しているという利点を有する。これらの薄層移転法は特に以下のものが含まれる:
【0046】
軽水素イオン及び/又はヘリウムイオンをドナー基板(活性層4が形成される)に注入し、前記ドナー基板を支持基板1と分子結合により組み合わせることに基づくスマートカット(Smart Cut)(商標)法。そして剥離ステップが、イオン注入の深さによって規定された脆弱面で、ドナー基板(活性層4)から薄層を分離することを可能にする。多分に高温熱処理を含む仕上げステップが、最終的に活性層4に必要とされる結晶品質及び表面品質を回復させる。シリコン層として、たとえば数ナノメートルから約1.5ミクロンの厚さの薄い活性層の製造に、この方法は特によく適している。
【0047】
スマートカット法と、その後のエピタキシーステップ。より厚い、たとえば数10nmから20ミクロンの活性層を得ることを可能にする。
【0048】
直接接着及び機械、化学及び/又は機械化学薄層化のための方法は、分子結合によりドナー基板(活性層4が形成される)を支持基板1と組み合わせること、及び続いてドナー基板を活性層4の所望の厚さまで、たとえば研削及び研磨(CMPすなわちchemical mechanical polishing:化学的機械的研磨)により薄層化することからなる。これらの方法は、たとえば数ミクロンから数10ミクロン、そして最大数100ミクロンまでの厚い層の移転に特に好適である。
【0049】
前述の層移転法を考察すると、結合界面での2つの基板を分子結合によって組み合わせる前に、第1の誘電体層3、導電層11、電極10の第2の誘電体層13(図1a)などの中間層が形成される、(活性層4が形成される)ドナー基板又は(トラップリッチ層2が堆積される)支持基板1の間で基板を画定することが好都合である。
【0050】
第1のアセンブリオプションによれば、結合界面は第2の誘電体層13と導電層11との間に位置する。これは、第2の誘電体層13がドナー基板上に形成されたということを意味し、たとえば、この層はドナー基板上に熱成長させたシリコン酸化物層から構成される。加えてトラップリッチ層2上に、第1の誘電体層3、次いで導電層11が連続して堆積される。第1の誘電体層3は、たとえばトラップリッチ層2上に熱成長又は化学堆積法により堆積させたシリコン酸化物層からなり、導電層11は、数Ω・cmから数kΩ・cmの抵抗率をもつ多結晶シリコン層からなる。図1bに示されている構成において、導電層11は複数の導電性ブロック12を画定する絶縁壁14を備える。当業者には一般に知られるように、導電層11を形成するときは、平面(x,y)内に導電性ブロック12及び絶縁壁14の配置を定め、続いて導電性ブロック12及び絶縁壁14とを直列に形成するために、少なくともリソグラフィ及びエッチングの1ステップが必要となる。
【0051】
第2のアセンブリオプションによれば、結合界面は導電層11と第1の誘電体層3との間に位置する。この事例では、導電層11が第2の誘電体層13上に形成されるので、第2の誘電体層13はドナー基板上に形成される。さらに、第1の誘電体層3は、支持基板1に強固に接続されるトラップリッチ層2上に堆積される。
【0052】
第3のアセンブリオプションによれば、結合界面は第1の誘電体層3とトラップリッチ層2との間に位置する。この事例では、最初に第2の誘電体層13がドナー基板上に形成され、次いで導電層11が第2の誘電体層13上に形成され、最後に第1の誘電体層3が導電層11上に形成される。
【0053】
他のアセンブリオプションが明らかに存在し、そのオプションに対して特に接着界面は、たとえば第1の誘電体層3の中央など、中間層のうちの1つの中に配置されることもある。たとえば、下方層の形成後に、第1の誘電体層3の第1の部分は(活性層4が形成される)ドナー基板上に形成され、第1の誘電体層3の第2の部分は支持基板1の側に形成される。
【0054】
前述のアセンブリオプションの各々において、それぞれの層とともに提供されたドナー基板及び支持基板は、分子結合によって組み合わされる。前述の層移転技法のいずれかを実行した後、活性層4の形成に進む。
【0055】
図2a及び図2bに示された第2の実施形態によれば、電極10は第1の誘電体層3と電荷トラップリッチ層2との間に堆積され、第2の誘電体層13は主平面(x,y)に平行なトラップリッチ層と接触する。導電層11の第1の表面11aは第1の誘電体層3と接触し、導電層11の第2の表面11bは第2の誘電体層13と接触する。
【0056】
この事例では、第1の誘電体層3の厚さを、400nm、好ましくは200nmよりも小さくすることにより、埋め込み電極10の導電層11に印加される電圧が、活性層4の電気的キャリアに作用効果をもつことができる。他方、第2の誘電体層13は、アプリケーションが必要とする場合、数ミクロンまでの厚さを有することが可能である。
【0057】
第1の実施形態で述べた、層を移転し、及び導電層11内に絶縁壁14を製造する技法を、この第2の実施形態にも同様に適用する。構造体100(第1の誘電体層3、導電層11及び第2の誘電体層13)の中間層の形成がドナー基板上又は支持基板1の上で実行されるかにより、異なるアセンブリオプションが実行される。
【0058】
図3に示される第3の実施形態によれば、電極10が、前述のように第1の誘電体層3と電荷トラップリッチ層2との間に設けられ、電極10は絶縁壁14により互いに電気的に絶縁された導電性ブロック12を含み、さらに、埋め込み電極10は主平面(x,y)内で不連続であり、複数の電荷トラップエリア22が第1の誘電体層3と電荷トラップリッチ層2との間に延在している。トラップエリア22は、絶縁壁14により導電性ブロック12から絶縁されている。
【0059】
トラップエリア22は、電荷トラップ特性を有すれば、トラップリッチ層2と同じ材料から又は異なる材料から形成することができる。
【0060】
本発明のこの第3の実施形態では、第1の誘電体層3の厚さを、400nmより小さく、好ましくは200nmよりも小さくすることにより、埋め込み電極10の導電層11に印加される電圧が、活性層4の電気的キャリアに作用効果をもつことができる。
【0061】
第1の実施形態について説明した層移転技法は、この第3の実施形態についても適用される。第1の誘電体層3内に接着界面を配置することよりなるアセンブリオプションを実行するのが有利である。下方層の形成後に、第1の誘電体層3の第1の部分が(活性層4が形成される)ドナー基板上に形成され、第1の誘電体層3の第2の部分が、下方層形成後に支持基板1の側から形成される。トラップリッチ層2が最初に支持基板1上に生成される。第2の誘電体層13が次いで堆積される(化学堆積法又は熱成長)。リソグラフィ及びエッチングのステップにより、将来のトラップエリア22から第2の誘電体層13を取り除くことが可能になる。次いで、引き続く他のマスキング、堆積及びエッチングのステップにて、導電性ブロック12、絶縁壁14及びトラップエリア22が形成可能になる。次いで、第1の誘電体層3の第2の部分が、導電性ブロック12、絶縁壁14及びトラップエリア22の上方に堆積される。第1の誘電体層3の前記第2の部分を平坦化するステップにて、直接接着を目的とした良好な表面状態を得ることが可能になる。
【0062】
次いで、それぞれの層とともに提供されるドナー基板及び支持基板は、分子結合により組み合わされる。次いで、前述の層移転技法のいずれかを実行した後、活性層4の形成に進む。
【0063】
図4に示された第4の実施形態によれば、電極10は電荷トラップリッチ層2内に設けられている。第2の誘電体層13は、主平面(x,y)に沿って支持基板1の上面1aと接触している。電極10は複数の絶縁壁14を備え、複数の絶縁壁14は第1の誘電体層3と第2の誘電体層13との間に延在し、導電層11の複数の導電性ブロック12を画定し、複数の導電性ブロック12は前記絶縁壁14により互いに絶縁されている。各導電性ブロック12は、トラップリッチ層2を形成する少なくとも1つの電荷トラップエリア23から、絶縁壁14により電気的に絶縁されている。電荷トラップエリア23は、第1の誘電体層3と支持基板1との間に延在している。
【0064】
前述の様々な実施形態に適用可能な変形態によれば、構造体100は、トラップリッチ層2(又は電荷トラップエリア23)と支持基板1との間に設けられる第3の誘電体層30を備えることができる。構造体100は、以下の材料のうちの少なくとも1つを備えることができる:二酸化シリコン、シリコン窒化物、アルミニウム酸化物など。本発明による構造体を製造するためによく使用される高温熱処理中に、トラップリッチ層2の再結晶化を防止、又は少なくとも大幅に制限することは、(トラップリッチ層2が、たとえば多結晶シリコンで形成されるとき)特に有益である。
【0065】
前述のいずれの実施形態による構造体100においても、少なくとも1つの導電性ブロック12は、導電性ビア41によりコンタクトパッド40に電気的に接続することができる。導電性ビア2は構造体100の一部を貫通し、導電性ブロック12から前記コンタクトパッド40まで走る。図5aの例では、導電性ビア41が、特に活性層4及び第2の誘電体層13を貫く。コンタクトパッド40は活性層4の開放面4a上に設けられており、開放面4aから電気的に絶縁されている。
【0066】
コンタクトパッド40は導電性材料で形成され、埋め込み電極10の導電性ブロック12に電圧を印加することができる。導電性ビア41は、当業者に知られている技法を用いて、トレンチを作製することによって形成され、このトレンチでは、トレンチが貫通する層から壁が電気的に絶縁されており、トレンチは、導電性材料、たとえばドープされた多結晶シリコンで充填される。
【0067】
複数の導電性ビア41は、埋め込み導電性ブロック12がそれぞれ単独でコンタクトパッド40に接続するように作製可能である。
【0068】
位置合わせマークは、有利なことに、導電性ブロック12を製造する間、支持基板1上(又は活性層4が作製されるドナー基板上)に形成されている。これらの位置合わせマークは、導電性ブロック12の並びに沿って垂直にビアを形成するために、導電性ビア41を製造するステップの間使用される。
【0069】
構造体100は、同様に活性層4内及び/又は活性層4上にデバイスを備えることができ、デバイスは少なくとも1つのトランジスタ50を含み、活性層4の開放面4a上に設けられたゲート電極51は、埋め込み電極10の少なくとも1つの導電性ブロック12の反対側にある(図5b)。埋め込み電極10の導電性ブロック12の製造時に形成された位置合わせマークは、活性層4上の電子デバイスの製造ステップの間、同様に使用される。
【0070】
本発明による構造体100は、RFデバイス、特に携帯電話のためのアンテナアダプター又はスイッチングユニットなどに特に好適である。構造体100に埋め込み電極10を統合すれば、バックバイアス付きトランジスタを備えるデバイスを容易に製造することができる。埋め込み電極10を使用して、背面によりトランジスタ50の活性領域52にバイアス(バックバイアス)を印加すれば、トランジスタのブレークダウン電圧を増加させ、したがって各デバイス内に同時に設けられるトランジスタの数を制限することができる。最後に、構造体100に電荷トラップリッチ層2が存在することにより、支持基板1の高い抵抗率を維持することが保証される。
【0071】
したがって、本発明によれば、構造体100は、高周波数アプリケーションの分野で高い性能を達成できる。
【0072】
本発明は、説明した実施形態に限定されないことは明らかであり、特許請求の範囲によって定義されているように、本発明の文脈から逸脱することなく、代替実施形態が提供可能である。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b