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特許7098972行動認識装置、行動認識システム、行動認識方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】行動認識装置、行動認識システム、行動認識方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20220705BHJP
   G06F 16/73 20190101ALI20220705BHJP
   G06F 16/903 20190101ALI20220705BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
G06F16/73
G06F16/903
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018044782
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019159726
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】牧 隆史
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 -7/90
G06F 3/01
G06F 3/048-3/04895
G06F 16/73
G06F 16/903
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の動きを検出する複数の動き検出部と、
前記動き検出部の各検出結果に基づいて、検出結果の種類に応じた固定的な信頼度を付与する信頼度算出部と、
前記動き検出部の各検出結果と前記信頼度とに基づいて、前記対象物の行動を認識する行動認識部と、
を備える行動認識装置。
【請求項2】
前記動き検出部は、前記対象物を撮像する少なくとも1つの第1のセンサと、
当該第1のセンサが撮像した画像を分析することによって前記対象物の動きを分析する画像分析部と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の行動認識装置。
【請求項3】
前記動き検出部は、前記対象物に装着された、少なくとも加速度センサを備えて、当該対象物の動きに応じた検出結果を出力する第2のセンサと、
当該第2のセンサの出力を分析することによって、前記対象物の動きを分析するセンサデータ分析部と、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の行動認識装置。
【請求項4】
前記行動認識部は、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサによる前記対象物の動きの検出結果に対する信頼度のうち、同一時刻において、より高い信頼度を有する検出結果に基づく行動を、当該対象物の行動として認識する、
ことを特徴とする請求項に記載の行動認識装置。
【請求項5】
前記信頼度算出部は、前記画像分析部の分析結果に対して、動的に算出した信頼度を付与する、
ことを特徴とする請求項に記載の行動認識装置。
【請求項6】
前記信頼度算出部は、前記画像分析部の分析結果に対して、前記対象物の観測サイズに応じて、当該観測サイズが大きいほど高い信頼度を付与する、
ことを特徴とする請求項に記載の行動認識装置。
【請求項7】
前記信頼度算出部は、前記動き検出部の各検出結果と前記対象物の標準動作との類似度に応じて、当該類似度が高いほど高い信頼度を付与する、
ことを特徴とする請求項に記載の行動認識装置。
【請求項8】
前記信頼度算出部は、前記信頼度を、予め設定した値の範囲内で算出する、
ことを特徴とする請求項5から請求項のいずれか1項に記載の行動認識装置。
【請求項9】
対象物の動きを検出する複数の動き検出装置と、前記動き検出装置の各検出結果に基づいて前記対象物の行動を認識するサーバ装置と、を備える行動認識システムであって、
前記サーバ装置は、
前記動き検出装置の各検出結果に基づいて、検出結果の種類に応じた固定的な信頼度を付与する信頼度算出部と、
前記動き検出装置の各検出結果と前記信頼度とに基づいて、前記対象物の行動を認識する行動認識部と、
を備える行動認識システム。
【請求項10】
複数の動き検出部によって対象物の動きを検出する動き検出ステップと、
前記動き検出ステップの各検出結果に基づいて、検出結果の種類に応じた固定的な信頼度を付与する信頼度算出ステップと、
前記動き検出ステップの各検出結果と前記信頼度とに基づいて、前記対象物の行動を認識する行動認識ステップと、
を含む行動認識方法。
【請求項11】
コンピュータに、
対象物の動きを検出する複数の動き検出部と、
前記動き検出部の各検出結果に基づいて、検出結果の種類に応じた固定的な信頼度を付与する信頼度算出部と、
前記動き検出部の各検出結果と前記信頼度とに基づいて、前記対象物の行動を認識する行動認識部と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動認識装置、行動認識システム、行動認識方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の行動を分析するための手段として、画像認識技術を用いる方法が知られている。特に、画像認識と被験者に装着したセンサが検出した加速度等の情報との組み合わせによって、行動分析の精度を向上させる行動認識システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の行動認識システムでは、人の行動を検出するための検出手段として、センサとカメラを備えて、センサの検出結果と、カメラで撮像した画像からの検出結果と、を単に補完する目的で組み合わせていた。したがって、それぞれの検出手段によって認識された人の行動の種類に齟齬が生じた場合についての扱いが明確でないという問題があった。例えば、行動検出対象の人が歩行状態、或いは静止状態にあることは、センサと画像認識のどちらでも認識することが可能である。ところが、センサは歩行状態を検出しているにも関わらず、画像認識では静止状態と認識される場合、どちらの検出結果を採用すべきかを判断するための基準を設けることが望まれていた。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数のセンサで検出した情報を統合して活用しているが、どのセンサの検出結果を採用するかは、ユーザが入力したテキスト情報に基づいて決定している。そのため、ユーザが介在しない状態であっても、行動の認識精度を高めることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ユーザの介在なしに、複数の検出手段の検出結果に基づく、対象物の行動の推定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の行動認識装置は、対象物の動きを検出する複数の動き検出部と、前記動き検出部の各検出結果に基づいて、検出結果の種類に応じた固定的な信頼度を付与する信頼度算出部と、前記動き検出部の各検出結果と前記信頼度とに基づいて、前記対象物の行動を認識する行動認識部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの介在なしに、対象物の行動の認識精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る行動認識装置のシステム構成を示すブロック図である。
図2図2は、行動認識装置のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。
図3図3は、行動認識装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、センサタグの出力に基づく分析結果の一例を示す図である。
図5図5は、カメラが撮像した画像の分析結果の一例を示す図である。
図6図6は、2台のカメラで同一時刻に撮像される画像の一例を示す図である。
図7図7は、行動認識装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(行動認識装置の構成の説明)
図1は、本実施形態の行動認識装置1のシステム構成を示すブロック図である。行動認識装置1は、行動を認識される検出対象である人10に装着されたセンサタグ2と、無線AP(アクセスポイント)3と、複数のカメラ4a、4b、4cと、サーバ5とを備える。なお、カメラの台数は3台に限定されるものではない。また、検出対象である人10は1人とは限らない。したがって、人10に装着されるセンサタグ2は、検出対象となる人10の人数分が使用される。なお、行動認識装置1は、サーバ装置の一例としてのサーバ5と、動き検出装置としての動き検出部20(図3参照)と、を備える行動認識システムの一例である。
【0011】
センサタグ2は、検出対象である人10の動きを検出する。そして、センサタグ2は、検出したデータを、所定の時間間隔で無線AP3に送信する。なお、センサタグ2は、少なくとも、加速度検出機能と、角速度検出機能と、気圧計測機能と、地磁気検出機能と、無線通信機能と、を備える。なお、センサタグ2は第2のセンサの一例である。
【0012】
無線AP3は、無線LANとしてのWi-Fi(登録商標)や、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格を用いてセンサタグ2と接続されている。無線AP3は、センサタグ2が検出したデータを受信する。また、無線AP3は、センサタグ2から受信したデータをサーバ5に送信する。
【0013】
カメラ4a、4b、4cは、いずれも、人10を含む画像Ia、Ib、Icを、例えば、サーバ5の指示により、所定の時間間隔で、略同時刻に撮像する(外部同期による撮像動作)。なお、画像Ii(i=a、b、c)はカメラ4i(i=a、b、c)で撮像された画像であるとする。そして、カメラ4a、4b、4cは、撮像した画像Ia、Ib、Icをサーバ5に送信する。なお、カメラ4a、4b、4cは、第1のセンサの一例である。ここで、カメラ4a、4b、4cは、例えば、カメラ4aの指示により、所定の時間間隔で、略同時刻に画像Ia、Ib、Icを撮像する構成であってもよい(内部同期による撮像動作)。
【0014】
サーバ5は、画像Ia、Ib、Icと、無線AP3から送信されたデータと、を受信する。また、サーバ5は、画像Ia、Ib、Icと、無線AP3から送られてきたデータと、を分析する処理を行う。そして、サーバ5は、分析結果を時系列で記録する。なお、センサタグ2が検出したデータの分析は、サーバ5が行う代わりに、センサタグ2が備えるCPU(Central Processing Unit)2a(図2参照)が行ってもよい。
【0015】
(行動認識装置のハードウェア構成の説明)
図2は、行動認識装置1のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。
【0016】
センサタグ2は、CPU2aと、RAM(Random Access Memory)2bと、ROM(Read Only Memory)2cと、加速度センサ2dと、角速度センサ2eと、気圧センサ2fと、地磁気センサ2gと、無線通信I/F(Interface)2hとを備える。
【0017】
CPU2aは、ROM2cに記憶された制御プログラムP1を読み出して、RAM2bに展開して実行する。これによって、CPU2aは、センサタグ2の動作を制御して、加速度センサ2dと、角速度センサ2eと、気圧センサ2fと、地磁気センサ2gと、の出力を、略同時刻に取得する。このように、センサタグ2は、一般のコンピュータの構成を有する。
【0018】
加速度センサ2dは、例えば、xyz3軸方向に沿う梁を備えて、各梁に貼り付けられた歪ゲージの撓み量に基づいて、当該加速度センサ2dが装着された人10の3軸各方向の加速度、すなわち、直線運動の大きさと向きを検出する。なお、加速度を検出する方法としては、その他にも、圧電素子を用いる方法、静電容量を用いる方法等が提案されており、加速度センサ2dは、そのいずれの方法に基づくセンサであってもよい。
【0019】
角速度センサ2eは、例えばジャイロセンサで構成されて、当該角速度センサ2eが装着された人10の角速度、すなわち、回転運動の大きさと向きを検出する。
【0020】
気圧センサ2fは、例えば大気圧に応じて変化する静電容量の大きさ、または大気圧に応じて変化する抵抗値の大きさを計測することによって、当該気圧センサ2fが装着された人10に作用する大気圧の大きさを検出する。
【0021】
地磁気センサ2gは、例えば、磁界の変化に応じて出力電圧値が変化する、いわゆるホール効果を有する素子(ホール素子)を用いて、当該地磁気センサ2gが装着された人10に作用する地磁気の大きさを検出する。
【0022】
なお、センサタグ2が備えるセンサの種類は、図2に記載したものに限定されない。すなわち、センサタグ2には、行動認識装置1の認識対象となる人10がとる行動の種類に対応する出力を得ることができるセンサが、適宜備えられる。例えば、センサタグ2は、GPS衛星からの電波を受信することによって、受信者の現在位置を検出するGPS(Global Positioning Sensor)受信機等を備えていてもよい。
【0023】
無線通信I/F2hは、無線AP3との間で無線通信を確立させる。無線通信I/F2hは、センサタグ2が備える各センサ(加速度センサ2d、角速度センサ2e、気圧センサ2f、地磁気センサ2g)の出力を、無線AP3に送信する。
【0024】
無線AP3は、無線通信I/F3aを備える。無線通信I/F3aは、センサタグ2から、前記した各センサの出力を受信する。また、無線AP3は、受信した各センサの出力を、サーバ5に送信する。
【0025】
カメラ4a、4b、4cは、予め設定された範囲の画像を撮像して、撮像した画像Ia、Ib、Icを、それぞれ、サーバ5に送信する。カメラ4a、4b、4cは、一般的に使用されている、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを受光素子とするカメラである。
【0026】
サーバ5は、CPU5aと、RAM5bと、ROM5cと、HDD5dと、キーボード5eと、モニタ5fと、を備える。
【0027】
CPU5aは、ROM5cに記憶された制御プログラムP2を読み出して、RAM5bに展開して実行する。これによって、CPU5aは、サーバ5の動作を制御して、センサタグ2の出力を無線AP3の無線通信I/F3aから受信する。また、CPU5aは、サーバ5の動作を制御して、カメラ4a、4b、4cが撮像した画像Ia、Ib、Icを受信する。そして、CPU5aは、センサタグ2の出力、および画像Ia、Ib、Icを用いて、人10の行動認識を行い、さらに、認識された行動に対する信頼度を算出する。なお、信頼度について詳しくは後述する。
【0028】
さらに、CPU5aは、センサタグ2の出力に基づいて認識された人10の行動および信頼度を、センサタグ2の出力を受信した日付および時刻とともに、HDD5dに記憶する。また、CPU5aは、画像Ia、Ib、Icに基づいて認識された人10の行動および信頼度を、画像Ia、Ib、Icを受信した日付および時刻とともに、HDD5dに記憶する。なお、センサタグ2の出力を受信した日付および時刻と、画像Ia、Ib、Icを受信した日付および時刻とは、CPU5aが備える計時手段としてのタイマの出力を参照することによって取得される。このように、サーバ5は、一般のコンピュータの構成を有する。
【0029】
HDD5dは、認識された人10の行動を、データベースDBに記憶する。なお、HDD5dは、さらに、センサタグ2の出力および画像Ia、Ib、Icを記憶してもよい。
【0030】
キーボード5eは、ユーザの操作を受け付けて、受け付けた操作情報をCPU5aに伝達する。
【0031】
モニタ5fは、キーボード5eの操作に応じた情報を表示する。
【0032】
(行動認識装置の機能構成の説明)
図3は、行動認識装置1の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0033】
サーバ5のCPU5aは、ROM5cに記憶された制御プログラムP2を読み出して、RAM5bに展開する。そして、CPU5aは、RAM5bに展開された制御プログラムP2を実行することによって、図3に示す動き検出部20と、信頼度算出部30と、行動認識部40と、を機能部として実現する。
【0034】
動き検出部20は、人10の動きを検出する。なお、人10は、対象物の一例である。動き検出部20は、人10を含む画像Ii(i=a、b、c)を撮像する複数のカメラ4i(i=a、b、c)と、人10の動きに伴って発生する信号を検出する、人10に装着されたセンサタグ2と、を備える。センサタグ2は、前記した異なる複数のセンサ(例えば、加速度センサ2d、角速度センサ2e、気圧センサ2f、地磁気センサ2g等)を備える(図2参照)。なお、カメラ4i(i=a、b、c)は第1のセンサの一例である。また、センサタグ2は、第2のセンサの一例である。
【0035】
また、動き検出部20は、カメラ4i(i=a、b、c)の出力である画像Ii(i=a、b、c)に基づいて、人10の動きに伴って発生する挙動を分析する画像分析部24と、センサタグ2の出力に基づいて、人10の動きに伴って発生する信号を分析するセンサデータ分析部22と、を備える。
【0036】
信頼度算出部30は、センサデータ分析部22の分析結果に対する信頼度32aを算出する。また、信頼度算出部30は、画像分析部24の分析結果に対する信頼度32bを算出する。
【0037】
行動認識部40は、センサデータ分析部22の分析結果と、当該分析結果に対する信頼度32aと、画像分析部24の分析結果と、当該分析結果に対する信頼度32bと、に基づいて、人10の行動を認識する。
【0038】
(信頼度の説明)
次に、図4図5を用いて、本実施形態の行動認識装置1で利用する信頼度32a、32bについて説明する。図4は、センサタグ2の出力に基づく分析結果の一例を示す図である。なお、図4に示すデータは、HDD5d(図2参照)に記憶される。また、図5は、カメラ4i(i=a、b、c)が撮像した画像Ii(i=a、b、c)の分析結果の一例を示す図である。なお、図5に示すデータも、HDD5dに記憶される。ここで、図4図5は、フォークリフトを用いて作業を行っている人10の行動分析に、行動認識装置1を適用した例を示すものである。
【0039】
図4において、センサタグ2の出力に基づく分析結果は、センサタグ2の出力を取得した日付D1と、センサタグ2の出力を取得した時刻T1と、認識された人10の行動B1と、信頼度32aとを含む。
【0040】
行動認識装置1は、センサタグ2の出力を分析することによって、「歩行状態」、「停止状態」、「フォーリフトに乗車した状態」、「フォークリフトで移動している状態」等の人10の行動B1を認識する。
【0041】
信頼度32aは、行動B1をどの程度の確からしさで認識したかを示す値である。より具体的には、信頼度32aは、行動B1を最も信頼できる状態で認識した状態を100、全く信頼できない状態で認識した状態を0として、100段階で数値化した値である。図4の例では、例えば、歩行の信頼度が70、停止の信頼度が90であることを示している。
【0042】
例えば、人10が「停止状態」であることは、センサタグ2が備える加速度センサ2dの出力がゼロに近い所定値以下の状態が継続していることを検出することによって認識することができる。
【0043】
また、人10が「歩行状態」であることは、人10の歩行に起因する所定の時間間隔毎の加速度の推移パターンをモデルとして、加速度センサ2dの出力と、加速度の推移パターンのモデルとの相関を取ることによって認識することができる。しかしながら、「歩行状態」において発生する加速度には個人差が存在する。すなわち、歩行行動自体のぶれ(急いでいるかゆっくり歩いているか)が存在するため、信頼度32aは、一般には高くない。そのため、行動認識装置1は、画像Iiから分析した人10の行動B2の信頼度32bと、センサタグ2の出力から分析した人10の行動B1の信頼度32aと、の両者に基づいて、人10の行動を認識する。
【0044】
なお、図4に示す、「フォークリフトに乗車」する行動は、例えば、人10が上方へ移動していることに基づいて検出することができる。すなわち、上方に移動する加速度を検出することによって、フォークリフトに乗車したことを検出することができる。また、「フォークリフトで移動」する行動は、例えば、人10の存在位置が、時間の経過とともに、歩行動作を超える速度で移動していることに基づいて検出することができる。
【0045】
図5において、カメラ4i(i=a、b、c)が撮像した画像Ii(i=a、b、c)に基づく分析結果は、画像Iiを取得した日付D2と、画像Iiを取得した時刻T2と、認識された人10の行動B2と、信頼度32bとを含む。
【0046】
画像認識に基づく行動検出では、センサタグ2によると識別が困難な細かい手の動き等を検出することが可能である。認識の手段としては、例えば、画像Ii(i=a、b、c)から抽出した特徴量の時間変化と、モデルとなる行動の特徴量の時間変化と、を比較する方法を用いる。この方法は、センサタグ2による「歩行状態」の検出と同様、モデルとなる加速度の推移パターンとの比較によるため、モデルとの類似度によって検出結果の信頼度32bは変動する。
【0047】
次に、図6を用いて、複数のカメラで同一時刻に撮像される画像の違いについて説明する。図6は、2台のカメラ4a、4bで同一時刻に撮像される画像Ia、Ibの一例を示す図である。図6に示すように、カメラ4a、4bの設置位置と人10との位置関係に応じて、画像Ia、Ibに映る人10の大きさや向きが変化する。例えば、図6の例では、人10とカメラ4aとの距離d1は、人10とカメラ4bとの距離d2よりも大きくなっている。したがって、人10は、画像Iaよりも画像Ibにおいて大きく観測される。
【0048】
図6の状態にあっては、人10が異なる大きさで観測されるため、一般に、画像Iaから検出した特徴量に基づく人10の動きに伴う挙動(標準動作)の信頼度は、画像Ibから検出した同じ挙動の信頼度よりも小さくなる。そのため、行動認識を行う過程で算出した、人10の動きに伴う挙動と当該挙動のモデルとの類似度を信頼度32bに反映させる際に、人10の大きさを考慮するのが望ましい。具体的には、人10がより大きく観測された画像Ibから算出した挙動とモデルとの類似度には、より高い信頼度を与える。すなわち、信頼度32bの値を、人10の観測サイズに応じて動的に決定する。
【0049】
具体的には、撮像された画像(図6の例では、画像Ia、Ib)の中から、人10の動きを特徴付ける特徴量を検出する際に、まず、画像Ia、Ibの中に人10がどの位の大きさで観測されているかを見積もる。そして、人10が大きく観測された画像ほど、当該画像から検出した人10の動きを特徴付ける特徴量(例えば類似度)に高い信頼度32bを付与する。なお、単にモデルとの類似度に応じて、類似度が高いほど高い信頼度32bを付与するようにしてもよい。
【0050】
そして、同一被写体に対して複数のカメラ4i(i=a、b、c)、すなわち同種の検出原理に基づく複数のカメラ4i(第1のセンサ)が撮像した画像Ii(i=a、b、c)に基づく検出結果の中から、信頼度32bが最も高い検出結果を採用することで、総合的に高い信頼度32bの検出結果を得ることができる。
【0051】
ここで、加速度センサ2d(センサタグ2)とカメラ4i(i=a、b、c)とは、ともに、人10の同一の行動を検出することができる。例えば、図4図5に示すように、「歩行状態」は、加速度センサ2dとカメラ4a、4b、4cのいずれでも検出可能である。しかしながら、加速度センサ2dとカメラ4iでは検出原理が異なるため、検出結果に対する信頼度32a、32bは異なる。「歩行状態」の検出については、一般に、加速度センサ2dの出力に基づく検出結果の方が高い信頼度が得られることが知られている。このため、信頼度32a、32bとして、予め評価した結果に基づく固定値を割り当てるのが望ましい。
【0052】
例えば、図4の例では、加速度センサ2dの出力に基づく「歩行状態」との検出結果には、信頼度32aとして、一律に70を割り当てている。一方、図5に示すように、画像Ii(i=a、b、c)に基づく「歩行状態」との検出結果には、信頼度32bとして、70よりも低い40を一律に割り当てている。
【0053】
なお、同一時刻におけるカメラ4i(第1のセンサ)が撮像した画像Iiに基づく分析結果と、センサタグ2(第2のセンサ)の出力に基づく分析結果と、が等しい場合は、いずれのセンサの出力に基づく分析結果を採用しても問題ない。しかし、両者が異なる分析結果であった場合には、例えば、信頼度32a、32bの高い方の分析結果を採用するものとする。具体的には、図5において、時刻「15:33:37」のとき、画像Iiに基づく分析結果は「歩行状態」であるが、図4において、同一時刻における加速度センサ2dの出力に基づく分析結果は「停止状態」を示している。このときの信頼度32a、32bを比較すると、画像Iiに基づく信頼度32bが40、加速度センサ2dに基づく信頼度32aが90であるため、時刻「15:33:37」における人10の行動B2として、加速度センサ2dに基づく検出結果である「停止状態」を採用するのが望ましい。
【0054】
(行動認識装置が行う処理の流れの説明)
次に、図7を用いて、行動認識装置1が行う処理の流れについて説明する。図7は、行動認識装置1が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、センサタグ2は、人10に装着された各センサ(加速度センサ2d、角速度センサ2e、気圧センサ2f、地磁気センサ2g)の出力を取得する(ステップS10)。
【0056】
次に、カメラ4i(i=a、b、c)(第1のセンサ)は、人10を含む画像Ii(i=a、b、c)を撮像する(ステップS12)。
【0057】
サーバ5は、無線AP3を介して、センサタグ2の出力を受信する(ステップS14)。
【0058】
また、サーバ5は、カメラ4iが撮像した画像Iiを受信する(ステップS16)。
【0059】
センサデータ分析部22は、センサタグ2の出力を分析する(ステップS18)。
【0060】
信頼度算出部30は、センサタグ2の出力の分析結果に信頼度32aを付与する(ステップS20)。
【0061】
画像分析部24は、画像Iiを分析する(ステップS22)。
【0062】
信頼度算出部30は、画像Iiの分析結果に信頼度32bを付与する(ステップS24)。
【0063】
行動認識部40は、センサタグ2の出力の分析結果と、画像Iiの分析結果と、に基づいて、人10の行動を認識する(ステップS26)。
【0064】
行動認識部40は、人10の行動の認識結果を、データベースDBに蓄積する(ステップS28)。
【0065】
行動認識部40は、処理を終了するかを判定する。処理を終了すると判定される(S30:Yes)と、図7の処理を終了する。一方、処理を終了すると判定されない(S30:No)と、ステップS10に戻って、前記した一連の処理を繰り返す。なお、処理の終了の判定は、例えば、予め設定した所定時間が経過したことを条件として処理を終了すると判定してもよいし、画像Iiの中から人10が検出できなくなったら処理を終了すると判定してもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、動き検出部20が、カメラ4i(i=a、b、c)(第1のセンサ)が撮像した画像Ii(i=a、b、c)を分析して、人10(対象物)の動きを検出する。また、動き検出部20が、センサタグ2(第2のセンサ)の出力を分析して、人10の動きを検出する。そして、信頼度算出部30が、センサタグ2の出力に基づく人10の動きの検出結果に対して信頼度32aを付与する。また、信頼度算出部30が、画像Iiに基づく人10の動きの検出結果に対して信頼度32bを付与する。さらに、行動認識部40が、動き検出部20が検出した人10の動きの検出結果と当該検出結果の信頼度32a、32bとに基づいて、ユーザの介在なしに、人10の行動を認識する。したがって、ユーザの介在なしに、複数の検出手段の検出結果に基づく、人10の行動の認識精度を向上させることができる。
【0067】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、動き検出部20は、人10(対象物)を撮像する少なくとも1つのカメラ4i(i=a、b、c、…)(第1のセンサ)と、カメラ4iが撮像した画像Ii(i=a、b、c、…)を分析することによって人10の動きを検出する画像分析部24と、を含む。したがって、人10の、例えば手の動きのような細かい動作を検出することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、複数の動き検出部20は、人10(対象物)に装着された、少なくとも加速度センサ2dを備えて、人10の動きに応じた検出結果を出力するセンサタグ2(第2のセンサ)と、センサタグ2の出力を分析することによって、人10の動きを分析するセンサデータ分析部22と、を含む。したがって、人10の歩行状態、停止状態、フォークリフトへの乗車状態等のおおまかな行動を精度よく検出することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、行動認識部40は、カメラ4i(第1のセンサ)による人10(対象物)の動きの検出結果に対する信頼度32bと、センサタグ2(第2のセンサ)による人10の動きの検出結果に対する信頼度32aと、のうち、同一時刻において、より高い信頼度を有する検出結果に基づく行動を、人10の行動として認識する。したがって、カメラ4iとセンサタグ2とが、人10の行動を互いに異なる行動として認識した場合であっても、信頼度32a、32bの大小に応じて人10の正しい行動を容易に認識することができる。
【0070】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、信頼度算出部30は、動き検出部20の各検出結果に対して、該検出結果の種類に応じた固定的な信頼度32a、32bを付与する。したがって、認識された人10の行動種別に応じて、信頼度32a、32bを即座に付与することができるため、行動認識の結果を素早く出力することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、信頼度算出部30は、画像分析部24の分析結果に対して、人10の観測サイズが大きいほど高い(観測サイズが小さいほど低い)信頼度32bを付与する。したがって、画像分析部24の分析結果に基づいて、適応的に(動的に)信頼度32bを付与することにより、信頼度32bに人10の状態を反映することができる。これにより、人10の行動推定の精度を高めることができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、信頼度算出部30は、動き検出部20の各検出結果と人10の標準動作との類似度に応じて、類似度が高いほど高い信頼度32a、32bを付与する。したがって、信頼度32a、32bを定量的に算出することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係る行動認識装置1によれば、信頼度算出部30は、予め設定した値の範囲内で信頼度32a、32bを算出する。したがって、動き検出部20の各検出結果に突発的な変動が発生した場合に、それに伴って信頼度32a、32bが突発的に変動するのを抑止することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、前記した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0075】
例えば、本実施の形態の例では、行動認識装置1は、CPU5a(2a)が、各種処理を制御プログラムP2(P1)で実現することとしたが、その一部または全部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。また、制御プログラムP2(P1)は、インストール可能な形式、または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリ等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。DVDは、「Digital Versatile Disc」の略記である。また、制御プログラムP2(P1)は、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形態で提供してもよい。また、制御プログラムP2(P1)は、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 行動認識装置(行動認識システム)
2 センサタグ(第2のセンサ)
2d 加速度センサ
2e 角速度センサ
2f 気圧センサ
2g 地磁気センサ
3 無線AP
4a、4b、4c、4i カメラ(第1のセンサ)
5 サーバ(サーバ装置)
10 人(対象物)
20 動き検出部(動き検出装置)
22 センサデータ分析部
24 画像分析部
30 信頼度算出部
32a、32b 信頼度
40 行動認識部
Ia、Ib、Ic、Ii 画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【文献】特許第5904021号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7