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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20220705BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20220705BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220705BHJP
【FI】
C07C67/03
C07C69/54 B
C07B61/00 300
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018045595
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2018154619
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2017051025
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃宏
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011292(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098699(WO,A1)
【文献】特開2010-126502(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148386(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/090258(WO,A1)
【文献】特開2000-191590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物と、フェノールであるアリールアルコールとを、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、トリフェニルホスフィン、ポリスチレンに固定したトリフェニルホスフィン(PS-PPh )、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)およびポリスチレンに固定した1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(PS-TBD)からなる群から選択されるいずれか1種の化合物である触媒の存在下で反応させる、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法であって、
式(I)で表される化合物の使用量が、前記アリールアルコールの1モル当たり、10モル以下である、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【化1】
[式(I)中、Rは、HまたはCHを表し、Rは、CH(CH またはC(CH を表す。]
【請求項2】
下記式(I)で表される化合物と、フェノールおよび1-ナフトールから選択される1種のアリールアルコールとを、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、フッ化セシウムおよび酢酸セシウムからなる群から選択されるいずれか1種金属化合物である触媒、または酸化カルシウム及びメタクリル酸である触媒、の存在下で反応させる、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法であって、
式(I)で表される化合物の使用量が、前記アリールアルコールの1モル当たり、10モル以下である、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【化2】
[式(I)中、Rは、HまたはCHを表し、Rは、CH(CH またはC(CH を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、高反応性の(メタ)アクリル酸誘導体とアリールアルコールとを反応させる方法が知られている。
特許文献1には、メタクリロイルクロリドとアリールアルコールとを反応させて、(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法が記載されている。
特許文献2には、(メタ)アクリル酸無水物とアリールアルコールとを反応させて、(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-215413号公報
【文献】特開2000-191590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、多量の溶媒を使用するため、経済的に不利であり、非効率である。また、メタクリロイルクロリドを基質として用いるため、合成過程において、等モル量の塩酸塩が副生する。さらには、それらを除去するために洗浄工程が組み込まれる。結果として、廃棄物が多量に副産されることから、経済的に不利であり、環境への影響の観点からも問題がある。加えて、メタクリロイルクロリドを、別途調製した10℃以下の反応溶液に添加する必要があるため、操作が複雑になり、反応効率の観点からも不利である。
特許文献2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、(メタ)アクリル酸無水物を基質として用いるため、合成過程において、等モル量の(メタ)アクリル酸が副生する。また、副生した(メタ)アクリル酸が(メタ)アクリル酸エステルの二重結合に付加した化合物が生成するため、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの収率と純度は低下する。さらには、それらを除去するために洗浄工程と精製工程が組み込まれる。結果として、廃棄物が多量に副産されることから、経済的に不利であり、環境への影響の観点からも問題がある。
したがって、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法について、更なる改良が望まれている。本発明の目的は、(メタ)アクリル酸エステルを効率よく製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の原料および触媒の存在下で反応を行うことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]である。
[1]下記式(I)で表される化合物と、アリールアルコールとを、反応させる、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。なお、式(I)中、Rは、HまたはCHを表し、Rは、炭素数1~20の炭化水素基を表す。
【化1】
[2]第1族金属化合物および第2族金属化合物から選択される1種以上の金属化合物の触媒の存在下で反応させる、[1]に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[3]触媒として、さらに(メタ)アクリル酸を含む、[2]に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[4]スルホン酸、アミンおよび有機リン化合物から選択される1種以上の化合物の触媒の存在下で反応させる、[1]に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[5]触媒が高分子に固定化された化合物である、[4]に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[6]RがCH(CHまたはC(CHである、[1]~[5]のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、従来のような副生物などに由来する廃棄物が多量に副産されることなく、(メタ)アクリル酸エステルを高収率で得ることができる。本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、特定の触媒を用いることにより、常温・常圧(25℃、1atm)下であっても、(メタ)アクリル酸エステルを高収率で得ることができる。これにより、従来の方法と比べて、(メタ)アクリル酸エステルを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書中では、アクリル酸およびメタクリル酸を併せて(メタ)アクリル酸と記載する。アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを併せて(メタ)アクリル酸エステルと記載する。
〔式(I)で表される化合物〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法においては、原料として、下記式(I)で表される化合物が使用される。
【化2】
式(I)において、Rは、HまたはCHを表し、Rは、炭素数1~20の炭化水素基を表す。Rは、炭化水素基であれば、その種類および構造は限定されない。該炭化水素基は、直鎖状でも、分岐状でも、あるいは環構造を有してもよい。また、該炭化水素基中に、不飽和結合またはエーテル結合を含んでいてもよい。
で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基が挙げられる。式(I)で表される化合物の入手容易性の観点から、これらの炭化水素基の炭素数は1~20であり、2~10であることが好ましく、3~6であることがより好ましい。
で表される炭化水素基としては、より詳細には、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、sec-へキシル基、シクロへキシル基、およびフェニル基などを挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルを効率よく合成できることから、Rがイソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基であることが好ましく、イソプロピル基およびt-ブチル基であることがより好ましい。
式(I)で表される化合物としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。また、式(I)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法における式(I)で表される化合物の使用量は、アリールアルコール1モル当たり、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。式(I)で表される化合物の使用量を、アリールアルコール1モル当たり、0.1モル以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。また、式(I)で表される化合物の使用量を、アリールアルコール1モル当たり、10モル以下とすることにより、反応後の後処理工程への負荷を軽減することができ、経済性を良くすることができる。
【0008】
〔アリールアルコール〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、(メタ)アクリル酸エステルの原料となるアリールアルコールの種類および構造は限定されない。例えば、アリールアルコールは、「ROH」と表すことができ、アリールアルコールの入手容易性の観点から、Rは、置換基を有していてもよい炭素数4~30のアリール基であり、6~20のアリール基であることが好ましい。なお、置換基を有していてもよいとは、任意の置換基を1つ以上有していてもよいという意味であり、例えば、以下の結合、基および原子などを1つ以上有していてもよいという意味である。エステル結合、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子など。さらに、アリールアルコールは、多環式アルコールおよび2種以上の元素により構成される複素環式アルコールなどを用いることができる。
で表されるアリール基としては、より詳細には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、およびピリジル基などを挙げることができる。またアリールアルコールとしては、具体的には、例えば、フェノール、2-フェニルフェノール、1-ナフトール、および3-ヒドロキシピリジンなどが挙げられる。
アリールアルコールは、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。また、アリールアルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、アリールアルコールとして、2,2’-ジヒドロキシビフェニルなどの多価アルコールを用いてもよい。
【0009】
〔触媒〕
式(I)で表される化合物とアリールアルコールとを反応させる際、触媒は使用しても、使用しなくてもよいが、反応速度を高めることができるので、触媒を使用することが好ましい。
触媒を使用する場合、触媒の種類は、(メタ)アクリル酸エステルが効率よく得られる限り、特に限定されないが、反応速度の観点から、第1族金属化合物および第2族金属化合物から選択される1種以上の金属化合物が好ましい。該触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、触媒として、前述の金属化合物と(メタ)アクリル酸を併用することがより好ましい。また、触媒の種類は、反応選択率の観点から、スルホン酸、アミンおよび有機リン化合物から選択される1種以上の化合物が好ましい。該触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、触媒の回収と再使用の観点から、スルホン酸、アミン、有機リン化合物は、固体に固定化されることがより好ましい。ここで、「固定化される」とは、スルホン酸、アミンまたは有機リン化合物が、該固体と結合して不溶・不動化された状態になることを意味するものであり、また、スルホン酸、アミン、有機リン化合物が、該固体に付着している状態とする「担持」も含まれる。
該固体としては、水や有機溶媒などに不溶で、固体表面に化学結合可能な官能基を有するものであれば、特に制限されない。該固体としては、より詳細には、多孔質粒子、有機高分子、無機高分子、および金属酸化物などを挙げることができ、具体的には、例えば、活性炭、ポリスチレン、ポリエチレン、シリカゲル、およびアルミナなどを挙げることができる。
固定化された化合物としては、例えば、スルホン酸、アミン、有機リン化合物が該固体の表面に直接、またはスペーサー基を介して結合したものであれば、特に制限されない。
固定化する方法としては、特に制限されないが、例えば、スルホン酸、アミン、有機リン化合物と該固体とが共有結合、イオン結合、配位結合などの結合様式で固定化する方法が挙げられ、触媒構造の安定性の観点から、共有結合で固定化する方法が好ましい。
該固体に対するスルホン酸、アミン、有機リン化合物の固定化量は、(メタ)アクリル酸エステルが効率よく得られる限り、特に限定されないが、該固体1gに対して、0.01~20ミリモルが好ましく、0.1~10ミリモルがより好ましい。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法においては、式(I)で表される化合物とアリールアルコールとを、前述の触媒の存在下で反応させる。ここで、「触媒の存在下」とは、触媒が、反応過程の少なくとも一部の段階で存在することを意味するものであり、反応過程のすべての段階で常に存在している必要はない。したがって、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法においては、触媒が反応系内に加えられれば、「触媒の存在下」という要件は満たされる。例えば、触媒を反応系内に加えた後、反応過程で触媒に何らかの変化が生じたとしても、「触媒の存在下」という要件は満たされる。
【0010】
(第1族金属化合物)
第1族金属化合物中に含まれる金属としては、特に限定されないが、周期表の第1族に属する金属のうち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムが好ましい。
第1族金属化合物としては、水素化塩、酸化物塩、ハロゲン化物塩(塩化物塩など)、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、およびチオシアン酸塩などの無機酸との塩;アルコキシド塩、カルボン酸塩(酢酸塩、(メタ)アクリル酸塩など)、およびスルホン酸塩(トリフルオロメタンスルホン酸塩など)などの有機酸との塩;アミド塩、スルホンアミド塩、およびスルホンイミド塩(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩など)などの有機塩基との塩;アセチルアセトン塩、ヘキサフルオロアセチルアセトン塩、ポルフィリン塩、フタロシアニン塩、およびシクロペンタジエン塩などの錯塩が挙げられる。これらの塩は、水和物および無水物のいずれでもよく、特に限定されない。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルの収率をより高めることができる点から、ハロゲン化物塩、水酸化物塩、炭酸塩、およびカルボン酸塩が好ましい。
第1族金属化合物としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第1族金属化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルを製造できる限り、特に限定されない。触媒として、第1族金属化合物のみを用いる場合、第1族金属化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。また、触媒として、第1族金属化合物と、後述する第2族金属化合物を併用する場合、第1族金属化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。また、触媒として、第1族金属化合物と、後述する(メタ)アクリル酸を併用する場合、第1族金属化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.01~1000モル%が好ましく、0.05~500モル%がより好ましい。第1族金属化合物の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、0.01モル%以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。第1族金属化合物の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、1000モル%以下とするのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。なお、第1族金属化合物を2種以上用いる場合、それらの合計の使用量が上記範囲内であればよい。
【0011】
(第2族金属化合物)
第2族金属化合物中に含まれる金属としては、特に限定されないが、周期表の第2族に属する金属のうち、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムが好ましい。
第2族金属化合物としては、酸化物塩、ハロゲン化物塩(塩化物塩など)、水酸化物塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、および次亜ハロゲン酸塩などの無機酸との塩;カルボン酸塩(酢酸塩、(メタ)アクリル酸塩など)、過カルボン酸塩、およびスルホン酸塩などの有機酸との塩;アセチルアセトン塩、ヘキサフルオロアセチルアセトン塩、ポルフィリン塩、フタロシアニン塩、およびシクロペンタジエン塩などの錯塩が挙げられる。これらの塩は、水和物および無水物のいずれでもよく、特に限定されない。
第2族金属化合物としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第2族金属化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルを製造できる限り、特に限定されない。触媒として、第2族金属化合物のみを用いる場合、第2族金属化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。また、触媒として、第2族金属化合物と、前述した第1族金属化合物を併用する場合、第2族金属化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。また、触媒として、第2族金属化合物と、後述する(メタ)アクリル酸を併用する場合、第2族金属化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.01~1000モル%が好ましく、0.05~500モル%がより好ましい。第2族金属化合物の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、0.01モル%以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。第2族金属化合物の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、1000モル%以下とするのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。なお、第2族金属化合物を2種以上用いる場合、それらの合計の使用量が上記範囲内であればよい。
【0012】
((メタ)アクリル酸)
(メタ)アクリル酸としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。
(メタ)アクリル酸の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルを製造できる限り、特に限定されない。触媒として、(メタ)アクリル酸と、前述した第1族金属化合物や第2族金属化合物を併用する場合、(メタ)アクリル酸の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.01~500モル%が好ましく、0.05~100モル%がより好ましく、0.1~50モル%がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、0.01モル%以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。(メタ)アクリル酸の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、500モル%以下とするのは、500モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。なお、アクリル酸とメタクリル酸を併用する場合、
それらの合計の使用量が上記範囲内であればよい。
【0013】
(スルホン酸)
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、使用される酸触媒は、ブレンステッド酸やルイス酸が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高めることができる点から、スルホン酸が好ましい。
スルホン酸の種類および構造は、特に限定されないが、より詳細には、無機スルホン酸および有機スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸など)などを挙げることができる。
スルホン酸としては、具体的には、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)、p-トルエンスルホン酸(TsOH)、および該スルホン酸をポリスチレンなどの高分子に固定化した化合物などが挙げられる。これらのスルホン酸は、水和物および無水物のいずれでもよく、特に限定されない。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルの収率をより高めることができる点から、メタンスルホン酸およびTsOHがより好ましく、生成物と触媒とがろ過だけで分離でき、回収して再利用することができる点から、ポリスチレンに固定したp-トルエンスルホン酸(PS-TsOH)がさらに好ましい。
スルホン酸としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スルホン酸の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルを製造できる限り、特に限定されない。スルホン酸の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。スルホン酸の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、0.1モル%以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。スルホン酸の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、1000モル%以下とするのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。なお、スルホン酸を2種以上用いる場合、それらの合計の使用量が上記範囲内であればよい。
【0014】
(アミン)
アミンの種類および構造は、特に限定されないが、より詳細には、無機アミンおよび有機アミン(脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、アミジン、グアニジンなど)などを挙げることができる。
アミンとしては、具体的には、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO),1-メチルイミダゾール,ピリジン,4-ジメチルアミノピリジン(DMAP),2,6-ルチジン,2,4,6-コリジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、および該アミンをポリスチレンなどの高分子に固定化した化合物などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルの収率をより高めることができる点から、トリエチルアミン、DIEA、DBU、およびMTBDがより好ましく、生成物と触媒とがろ過だけで分離でき、回収して再利用することができる点から、ポリスチレンに固定したDIEA(PS-DIEA)およびポリスチレンに固定したTBD(PS-TBD)がさらに好ましい。
アミンとしては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アミンの使用量は、(メタ)アクリル酸エステルを製造できる限り、特に限定されない。アミンの使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。アミンの使用量を、アリールアルコール1モルに対して、0.1モル%以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。アミンの使用量を、アリールアルコール1モルに対して、1000モル%以下とするのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。なお、アミンを2種以上用いる場合、それらの合計の使用量が上記範囲内であればよい。
【0015】
(有機リン化合物)
有機リン化合物の種類および構造は、特に限定されないが、より詳細には、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスホン酸モノエステル、ホスホン酸ジエステル、ホスフィン酸、ホスフィンオキシド、ホスフィン、およびホスホニウム塩などを挙げることができる。
有機リン化合物としては、具体的には、例えば、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸二ナトリウム水和物、(2-エチルヘキシル)ホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、および水酸化テトラブチルホスホニウム、酢酸テトラブチルホスホニウム、および該有機リン化合物をポリスチレンなどの高分子に固定化した化合物などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルの収率をより高めることができる点から、トリフェニルホスフィンがより好ましく、 生成物と触媒とがろ過だけで分離でき、回収して再利用することができる点から、ポリスチレンに固定したトリフェニルホスフィン(PS-PPh)がさらに好ましい。
有機リン化合物としては、市販されているものを使用することもでき、公知の方法などにより製造したものを使用することもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機リン化合物の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルを製造できる限り、特に限定されない。有機リン化合物の使用量は、アリールアルコール1モルに対して、0.1~1000モル%が好ましく、0.5~500モル%がより好ましい。有機リン化合物の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、0.1モル%以上とすることにより、(メタ)アクリル酸エステルの収率を高くすることができる。有機リン化合物の使用量を、アリールアルコール1モルに対して、1000モル%以下とするのは、1000モル%超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。なお、有機リン化合物を2種以上用いる場合、それらの合計の使用量が上記範囲内であればよい。
【0016】
〔反応条件〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法における反応条件は、特に限定されず、反応過程で反応条件を適宜変更することもできる。反応に用いる反応容器の形態は、特に限定されない。
反応温度は、特に限定されないが、例えば、-20~180℃とすることができ、0~100℃が好ましい。反応温度を-20℃以上とすることにより、反応を効率よく進行させることができる。また、反応温度を180℃以下とすることにより、副生成物の量や反応液の着色を抑制することができる。
反応時間は、特に限定されないが、例えば、0.5~48時間とすることができ、2~24時間とすることが好ましい。反応時間を0.5時間以上とすることにより、反応を十分に進行させることができる。また、反応時間を48時間以下とするのは、48時間超としても効果の飛躍的な向上が考えられにくいためである。
反応雰囲気および反応圧力も特に限定されない。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造は、無溶媒(溶媒を用いない)で行うことができる。反応液の粘度が高いなどの場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、炭素数1~25の有機化合物を用いることができ、反応条件に応じて適宜選択することができる。炭素数1~25の有機化合物としては、例えば、テトラヒドロフランおよび1,4-ジオキサンなどのエーテルや、n-ヘキサンおよびトルエンなどの炭化水素や、ジクロロメタンおよびクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。溶媒の使用量も特に限定されず、適宜選択することができる。
反応に用いる原料(式(I)で表される化合物およびアリールアルコール)や触媒、溶媒などの反応容器内への導入方法については、特に制限されないが、すべての原料などを一括で導入してもよく、一部またはすべての原料などを段階的に導入してもよく、一部またはすべての原料などを連続的に導入してもよい。また、これらの方法を組み合わせた導入方法でもよい。
【0017】
〔(メタ)アクリル酸エステル〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法で得られる生成物は、重合しやすい化合物であるため、重合を防止するために、予め重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を添加するタイミングは特に限定されないが、操作のしやすさの観点から、反応開始時に添加することが好ましい。
使用する重合禁止剤の種類としては、特に限定されず、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカルなどの公知の重合禁止剤を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合禁止剤を添加する場合、重合禁止剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して0.001~0.5質量部とすることが好ましく、0.01~0.1質量部とすることがより好ましい。また、空気などの、酸素を含有するガスの吹き込みを行ってもよい。当該ガスの吹き込み量は、反応条件などに応じて適宜選択することができる。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、得られた(メタ)アクリル酸エステルは、そのまま次の反応に使用してもよく、また、必要に応じて精製してもよい。精製条件は、特に限定されず、反応過程および反応終了時において、精製条件を適宜変更することができる。例えば、反応終了後、得られた反応混合液から、ろ過、減圧蒸留、クロマトグラフィー、および再結晶などの方法によって(メタ)アクリル酸エステルを精製することができる。これらの精製方法は、単独でまたは組み合わせて行うことができる。
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、得られた(メタ)アクリル酸エステルの保存容器は、特に限定されず、例えば、ガラス製容器、樹脂製容器、金属製容器などを用いることができる。
【実施例
【0018】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
実施例において、アリールアルコール、(メタ)アクリル酸エステルなどの分析は、テトラデカンを内部標準物質として、ガスクロマトグラフィーにより行った。
(メタ)アクリル酸エステルの収率(%)は、下記式(1)より算出した。
(メタ)アクリル酸エステルの収率(%)=(P/S)×100 (1)
:生成した(メタ)アクリル酸エステルの物質量(モル)
:使用したアリールアルコールの物質量(モル)
また、選択率(%)は、下記式(2)より算出した。
選択率(%)={P/(S-R)}×100 (2)
:生成した(メタ)アクリル酸エステルの物質量(モル)
:使用したアリールアルコールの物質量(モル)
:反応で残存したアリールアルコールの物質量(モル)
また、アリールアルコールの転化率(%)は、下記式(3)より算出した。
アリールアルコールの転化率(%)={(S-R)/S1}×100 (3)
:使用したアリールアルコールの物質量(モル)
:反応で残存したアリールアルコールの物質量(モル)
また、触媒の添加量(モル%)は、下記式(4)より算出した。
触媒の添加量(モル%)=(C/S)×100 (4)
:使用した触媒の物質量(モル)
:使用したアリールアルコールの物質量(モル)
また、原料として用いた式(I)で表される化合物のモル当量は、下記式(5)より算出した。
式(I)で表される化合物のモル当量=(S/S) (5)
:使用した式(I)で表される化合物の物質量(モル)
:使用したアリールアルコールの物質量(モル)
式(I)で表される化合物は、三菱ケミカル株式会社において製造した、純度が99.9質量%のものを使用した。PS-PPhは、バイオタージ・ジャパン株式会社から購入した、容量が2.2ミリモル/gのものを使用した。PS-DIEAは、バイオタージ・ジャパン株式会社から購入した、容量が3.7ミリモル/gのものを使用した。PS-TBDは、バイオタージ・ジャパン株式会社から購入した、容量が1.3ミリモル/gのものを使用した。
【0019】
[実施例1]
容量25mL(Φ18×L195mm)の試験管内に、フェノール0.226g(2.4ミリモル、関東化学株式会社製)および式(I)で表される化合物(RはCH、RはCH(CH)0.413g(2.4ミリモル)を順次加え、撹拌下、80℃で反応を行い、メタクリル酸フェニルを製造した。反応開始から7時間後における反応結果を表1に示す。
【0020】
[実施例2~39]
表1~4に記載の原料および触媒を用いて、同表に記載の使用量(触媒はアリールアルコールに対するモル%)、条件に変更したこと以外は実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸エステルを製造した。反応開始から1~7時間後における反応結果を、それぞれ表1~4に示す。
ここで、3-ヒドロキシピリジン、2-フェニルフェノール、および1-ナフトールは、東京化成工業株式会社製である。
実施例26において、反応終了後、減圧ろ過により反応混合液から触媒を分離し、触媒をn-ヘキサンで洗浄した。得られた粉粒体を乾燥させ(10Torr、30℃、5時間)、実施例27の触媒として全量使用した。また、触媒を取り除いた反応溶液から、エバポレーターを使用して、低揮発成分を留去し(30Torr、30℃)、メタクリル酸フェニルを粗体として回収した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン(東京化成工業株式会社製)
【0023】
【表3】
DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(東京化成工業株式会社製)
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(東京化成工業株式会社製)
PS-PPh:ポリスチレンに固定したトリフェニルホスフィン(バイオタージ・ジャパン株式会社製)エラー! リンクが正しくありません。
【0024】
【表4】
MTBD:7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(東京化成工業株式会社製)
PS-DIEA:ポリスチレンに固定したN,N-ジイソプロピルエチルアミン(バイオタージ・ジャパン株式会社製)
PS-TBD:ポリスチレンに固定した1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(バイオタージ・ジャパン株式会社製)
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、従来の方法と比べて、環境への負荷が少なく、効率的かつ経済的に(メタ)アクリル酸エステルを高収率で得ることができる。本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法では、特定の触媒を用いることにより、常温・常圧(25℃、1atm)下であっても、(メタ)アクリル酸エステルを高収率で得ることができる。