(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ヘッド支持機構、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220705BHJP
B41J 25/34 20060101ALI20220705BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220705BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J25/34
B05C5/00 101
B41J2/155
(21)【出願番号】P 2018129433
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 亮
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204135(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/012364(WO,A1)
【文献】特開2011-131435(JP,A)
【文献】特開2001-191610(JP,A)
【文献】特開2017-154338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 25/34
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッド、又は、前記ヘッドが複数設置されたヘッドアレイ、を支持するヘッド支持機構であって、
前記ヘッド又は前記ヘッドアレイを鉛直方向に対して所定の傾斜角で傾斜した状態で位置決め固定可能に形成された第1支持部材と、
前記第1支持部材による位置決め固定が解除された前記ヘッド又は前記ヘッドアレイが倒れる側であって、前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対して斜め下方に、設置された第2支持部材と、
前記ヘッド又は前記ヘッドアレイと、前記第2支持部材と、の間に設置された弾性部材と、
を備
え、
前記ヘッド又は前記ヘッドアレイと、前記第2支持部材と、の間に設置される前記弾性部材の上下方向の位置を調整可能に構成されたことを特徴とするヘッド支持機構。
【請求項2】
複数の前記ヘッド又は複数の前記ヘッドアレイと、
前記複数のヘッド又は前記複数のヘッドアレイにそれぞれ対応する、複数の前記第1支持部材と、複数の前記第2支持部材と、複数の前記弾性部材と、
を備え、
前記傾斜角が大きい前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対応する前記弾性部材の弾性率が、前記傾斜角が小さい前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対応する前記弾性部材の弾性率に比べて、大きいことを特徴とする請求項1に記載のヘッド支持機構。
【請求項3】
複数の前記ヘッド又は複数の前記ヘッドアレイと、
前記複数のヘッド又は前記複数のヘッドアレイにそれぞれ対応する、複数の前記第1支持部材と、複数の前記第2支持部材と、複数の前記弾性部材と、
を備え、
前記傾斜角が大きい前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対応する前記第2支持部材における前記弾性部材の位置が、前記傾斜角が小さい前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対応する前記第2支持部材における前記弾性部材の位置に比べて、斜め上方の位置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘッド支持機構。
【請求項4】
前記ヘッド又は前記ヘッドアレイと、前記第2支持部材と、の対向距離が、斜め上方の位置になるほど減少するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載のヘッド支持機構。
【請求項5】
前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対向する前記第2支持部材の対向面上における前記弾性部材の保持位置を前記対向面に沿って斜め上下方向に可変できるように構成されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のヘッド支持機構。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記第2支持部材に設置されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載のヘッド支持機構。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに設置されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載のヘッド支持機構。
【請求項8】
前記第1支持部材と前記第2支持部材とが一体的に設置されたことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載のヘッド支持機構。
【請求項9】
前記第1支持部材は、前記ヘッドの吐出面の側であって前記吐出面に対して略平行に設置され、
前記第2支持部材は、前記第1支持部材に対して略直交するように設置されたことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載のヘッド支持機構。
【請求項10】
前記ヘッドが複数設置されたヘッドアレイであって、
請求項1~請求項9のいずれかに記載のヘッド支持機構が複数設置されて、前記複数のヘッド支持機構によって前記複数のヘッドがそれぞれ支持されたことを特徴とするヘッドアレイ。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれかに記載のヘッド支持機構を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を吐出するヘッドやヘッドアレイを支持するヘッド支持機構と、それを備えた画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタなどの画像形成装置において、液体を吐出するヘッドが鉛直方向に対して傾斜した状態で位置決め固定されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、画像形成装置では、シートを搬送する搬送ドラムに対向するように複数色のヘッドが放射状に配列されている。そのため、複数色のヘッドのうち、ほとんどのヘッドが、傾斜した状態で位置決め固定されている。
そして、搬送ドラムによって搬送されるシートに向けて、複数色のヘッドからそれぞれ液体が吐出されて、シート上に所望のカラー画像が形成される。
【0004】
一方、特許文献1には、振動ムラによる画質劣化を低減することを目的として、板バネ(与圧付与手段)によってヘッドを水平方向であって幅方向に付勢して、ヘッドを固定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、ヘッドやヘッドアレイの位置調整時やメンテナンス時などに、傾斜した状態で位置決め固定されているヘッドやヘッドアレイの位置決め固定を解除すると、ヘッドやヘッドアレイが倒れてしまって、それらの作業を難しくしていた。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、傾斜した状態で位置決め固定されているヘッドやヘッドアレイの位置調整やメンテナンスを、簡単におこなうことができる、ヘッド支持機構、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明におけるヘッド位置調整機構は、液体を吐出するヘッド、又は、前記ヘッドが複数設置されたヘッドアレイ、を支持するヘッド支持機構であって、前記ヘッド又は前記ヘッドアレイを鉛直方向に対して所定の傾斜角で傾斜した状態で位置決め固定可能に形成された第1支持部材と、前記第1支持部材による位置決め固定が解除された前記ヘッド又は前記ヘッドアレイが倒れる側であって、前記ヘッド又は前記ヘッドアレイに対して斜め下方に、設置された第2支持部材と、前記ヘッド又は前記ヘッドアレイと、前記第2支持部材と、の間に設置された弾性部材と、を備え、前記ヘッド又は前記ヘッドアレイと、前記第2支持部材と、の間に設置される前記弾性部材の上下方向の位置を調整可能に構成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、傾斜した状態で位置決め固定されているヘッドやヘッドアレイの位置調整やメンテナンスを、簡単におこなうことができる、ヘッド支持機構、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図4】従来のヘッド支持機構とヘッドとを示す図である。
【
図5】ヘッド支持機構にヘッドが装着される状態を示す図である。
【
図6】変形例1としての、ヘッド支持機構とヘッドとを示す図である。
【
図7】変形例2としての、ヘッド支持機構とヘッドとを示す図である。
【
図8】変形例3としての、ヘッド支持機構とヘッドとを示す図である。
【
図9】変形例4としての、(A)ヘッド支持機構とヘッドアレイとを示す図と、(B)ヘッドアレイを吐出面の側からみた図と、である。
【
図10】変形例5としての、ヘッドアレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
まず、
図1にて、画像形成装置1の全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのインクジェットプリンタ、2はシートPを搬送する搬送ドラム、3は印刷前のシートPが積載された給紙カセット、5は搬送ドラム2上でシートPを把持するクリッパ、を示す。
また、6は搬送ドラム2からシートPを分離する分離部材、7は搬送ドラム2から分離されたシートPを搬送する搬送ベルト、8は印刷後のシートPが排紙・積載される排紙トレイ、を示す。
10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2はインクジェット方式により印字・印画するための画像形成部がユニット化されたヘッド(印字モジュール)、30は梁部材35やヘッド支持機構20(
図3参照)を保持するためのベースフレーム、を示す。
【0012】
ここで、本実施の形態における画像形成装置1は、カラー画像を形成するためのものであって、
図1に示すように、黒色用のヘッド10Kと、カラー用の3色(イエロー、マゼンタ、シアン)のヘッド10Y、10M、10Cと、コーティング用(特殊色用)の2色のヘッド10S1、10S2と、が設置されている。これらの6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、搬送ドラム2に微小な隙間をあけて対向して、搬送ドラム2の回転方向に沿うように放射状に並設されている。
なお、6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2は、印刷に用いられるインクの色(種類)が異なる以外はほぼ同一構造であるため、
図2、
図3等では、ヘッド10に付した符号のアルファベット(Y、M、C、K、S1、S2)を除して図示する。
図2に示すように、ヘッド10は、略長方体状のユニットであって、その主部が圧電アクチュエータで構成されていて、液体(液滴)としてのインクを吐出するノズル10aや、インクが充填されたインクタンク10bや、制御基板(制御部)などが設けられている。
【0013】
図1を参照して、画像形成装置1の動作について簡単に説明する。
まず、パソコンなどから画像形成装置1の制御部に画像情報とともにプリント指令が入力されると、給紙ローラによって給紙カセット3からシートPが給送される。給紙カセット3から給送されたシートPは、搬送ローラ4によって、搬送ドラム2に向けて搬送される。他方、各色のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2では、入力された画像情報に基づいて各色の書込み情報に変換される。
そして、搬送ドラム2に搬送されたシートPは、クリッパ5に把持された状態で搬送ドラム2上に位置決めされて、搬送ドラム2の反時計方向に回転に沿うように搬送される。
そして、搬送ドラム2の回転によって
図1の矢印方向に搬送されるシートP上に、各色のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2から書込み情報に基づいて液体としてのインクが順次吹き付けられて、シートP上に所望の画像が形成される。
その後、所望の画像が形成されたシートPは、分離部材6によって搬送ドラム2から分離される。そして、搬送ドラム2から分離されたシートPは、搬送ベルト7によって搬送されて、排紙トレイ8上に排出されることになる。
【0014】
以下、このように構成された画像形成装置1において、インク(液体)を吐出するヘッド10を支持するヘッド支持機構20について詳述する。
先に
図1を用いて説明したように、本実施の形態における画像形成装置1には、複数のヘッド10(10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2)が、搬送ドラム2に対向するように放射状に配列されている。
詳しくは、複数のヘッド10は、それぞれ、ノズル10aからインクが搬送ドラム2上のシートPの表面に垂直に吐出されるように、搬送ドラム2の回転中心にノズル10aが向くように配置されている。したがって、複数のヘッド10は、そのほとんどが、鉛直方向(Z方向)に対して傾いた状態で装置本体に保持されている。本実施の形態では、最上流のヘッド10Kと最下流のヘッド10S2とが最も大きな傾斜角θで装置本体に保持され、それらの内側の2つのヘッド10C、10S1がそれよりも小さな傾斜角θで装置本体に保持され、最も内側の2つのヘッド10M、10Yが最も小さな傾斜角θで装置本体に保持されている。
【0015】
図3(A)を参照して、複数のヘッド10は、それぞれ、ヘッド支持機構20によって傾斜した状態で着脱可能に支持されている。ヘッド支持機構20は、梁部材35を介してベースフレーム30に保持されている。
ここで、
図3(A)に示すように、ヘッド支持機構20は、第1支持部材21、第2支持部材22、弾性部材23、固定ネジ25、調整ピン27などで構成されている。他方、ヘッド10には、固定ネジ25のネジ部を挿通させるための貫通穴部と、固定ネジ25の頭部を当接させるための座部と、が設けられている。
なお、調整ピン27は、後述するように、ヘッド10の位置調整時に用いるものであるため、ヘッド10の位置決め固定がされた後に、ヘッド支持機構20から取り外して、サービスマンなどの作業者が保管するようにしても良い。
【0016】
第1支持部材21は、ヘッド10を鉛直方向(Z方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜した状態で位置決め固定可能に形成されている。
詳しくは、第1支持部材21は、板金からなり、ヘッド10(ノズル10a)の吐出面の側であって吐出面に対して略平行に設置されている。したがって、第1支持部材21は、水平方向(X方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜した状態でベースフレーム30に保持されている。複数のヘッド10のそれぞれの傾斜角θは、上述したように、放射状に配列された位置によって異なることになる。
【0017】
第1支持部材21は、その中央部にヘッド10のノズル10a側を挿入するための開口が形成されていて、その開口の縁部近傍に固定ネジ25を螺合するための雌ネジ部が形成されている。第1支持部材21の開口は、搬送ドラム2の回転方向(搬送方向)に対応したヘッド10(ノズル10a)の位置の微調整をおこなえるように、斜め方向の長さがヘッド10のものよりも長く設定されている。ヘッド10は、
図5に示すように、第1支持部材21(ヘッド支持機構20)に対して所定方向(第1支持部材21の対向面に直交する方向である。)に着脱可能に構成されている。
また、
図3(A)を参照して、第1支持部材21の斜め上方には、円柱状の突当部27aを備えた調整ピン27を嵌合するための嵌合穴が形成されている。調整ピン27は、工員やサービスマンなどの作業者によって、突当部27aの外径が異なる複数のものが用意される。
【0018】
そして、作業者によって、ヘッド10は、そのノズル10a側が第1支持部材21の開口に挿入されて、調整ピン27の突当部27aに突き当てられた状態で、第1支持部材21の雌ネジ部に固定ネジ25が螺合されて、第1支持部材21(ヘッド支持機構20)に固定(位置決め固定)されることになる。
また、搬送ドラム2に対するヘッド10の位置を精度良く調整するために、テスト用のシートP(チャート)を搬送して画像位置を確認して、ヘッド10の位置調整が必要であると判断された場合に、突当部27aの外径が異なる他の調整ピン27に交換されて、同じような位置決め作業が繰り返されることになる。その際、第1支持部材21の雌ネジ部に締められていた固定ネジ25は、調整ピン27の交換時に、一旦、
図3(B)に示すように緩められることになる。すなわち、チャートの画像位置を確認しながら、固定ネジ25を、
図3(A)に示すように締めたり、
図3(B)に示すように緩めたりしながら、調整ピン27を交換する作業をおこない、ヘッド10の位置が最適化されることになる。さらに換言すると、ヘッド10を、
図3(A)に示すように位置決め固定したり、
図3(B)に示すように位置決め固定の解除をしながら、調整ピン27を交換する作業をおこない、ヘッド10の位置が最終的に定められることになる。
そして、そのようにヘッド10の位置が精度良く調整されることで、位置ズレのない良好な画像をシートP上に形成することができる。このようなヘッド10の位置調整は、画像形成装置1の製造時や、ヘッド10の交換時やメンテナンス時などにおこなわれる。
なお、本実施の形態では、ヘッド10の位置を搬送ドラム2の回転方向に沿う方向に調整できるように構成したが、ヘッド10の位置を幅方向(Y方向)に調整できるように構成したり、双方の方向にそれぞれ調整できるように構成したりすることもできる。
【0019】
ここで、ヘッド支持機構20において、第2支持部材22は、
図3(B)に示すように第1支持部材21による位置決め固定が解除されたヘッド10が倒れる側であって、ヘッド10に対して斜め下方に、設置されている。換言すると、第2支持部材22は、ヘッド10の下方を向く側面(ヘッド10の重心が向く側の側面である。)に対向する側に設置されている。
詳しくは、第2支持部材22は、板金からなり、第1支持部材21に対して略直交するように設置されている。したがって、第2支持部材22は、鉛直方向(Z方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜した状態でベースフレーム30に保持されている。この第2支持部材22は、ヘッド10に対して隙間をあけて対向するように設置されていて、第1支持部材21による位置決め固定が解除されたヘッド10が脱落しないようにするためのものである。
【0020】
そして、
図3(A)に示すように、本実施の形態におけるヘッド支持機構20には、ヘッド10と第2支持部材22との間に、弾性部材23が設置されている。
詳しくは、弾性部材23は、発泡ポリウレタンなどからなるスポンジであって、
図5(A)に示すように第2支持部材22に両面テープを介して設置(貼着)されている。すなわち、弾性部材23は、第2支持部材22の対向面(ヘッド10に対向する面である。)に設置されている。
なお、本実施の形態では、弾性部材23としてスポンジを用いたが、弾性部材23としてバネやゴムなどを用いることもできる。
【0021】
このように弾性部材23を設けることで、
図3(B)に示すように、傾斜した状態で位置決め固定されていたヘッド10の位置決め固定が解除されても(固定ネジ25が緩められても)、ヘッド10が
図4に示すように第2支持部材22の側(黒矢印方向)に大きく倒れることなく、ヘッド10が弾性部材23を介して第2支持部材22に支持されて、その姿勢がある程度維持されることになる。
そのため、
図4に示すようにヘッド10が大きく倒れてしまう場合に比べて、上述したようにヘッド10の位置調整をおこなう場合の作業性や、ヘッド10のメンテナンスや交換などをおこなうときの作業性が、向上することになる。
【0022】
ここで、本実施の形態におけるヘッド支持機構20では、それぞれ板状に形成された第1支持部材21と第2支持部材22とが溶接やネジ締結などによって接続されている。これに対して、第1支持部材21と第2支持部材22とを一体的に設置することもできる。具体的に、板状部材にL字状の曲げ加工を施すなどして、第1支持部材21と第2支持部材22とを一体的に設けることができる。そのような場合には、ヘッド支持機構20における部品点数を低減することができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、
図5(A)に示すように、弾性部材を第2支持部材22に設置した。これに対して、
図5(B)に示すように、弾性部材23を、ヘッド10の側面(第2支持部材22に対向する面である。)に設置することもできる。
【0024】
<変形例1>
図6は、変形例1としての、ヘッド支持機構20とヘッド10とを示す図である。
変形例1におけるヘッド支持機構20は、ヘッド10の傾斜角θが大きい場合に、ヘッド10の傾斜角θが小さい場合に比べて、弾性部材23の弾性率が大きくなるように設定している。
換言すると、複数のヘッド10が設置されていて、その複数のヘッド10に対応する、複数の第1支持部材21と、複数の第2支持部材22と、複数の弾性部材23と、がそれぞれ設置されている。そして、傾斜角θ1が大きいヘッド10に対応する弾性部材23Aの弾性率が、傾斜角θ2が小さいヘッド10に対応する弾性部材23Bの弾性率に比べて、大きくなるように設定している。
詳しくは、
図6(A)に示すヘッド10の傾斜角θ1は、
図6(B)に示すヘッド10の傾斜角θ2に比べて大きい(θ1>θ2)。このような場合に、
図6(A)に示すヘッド支持機構20に設置された弾性部材23Aの弾性率が、
図6(B)に示すヘッド支持機構20に設置された弾性部材23Bの弾性率よりも、大きくなるように設定する。
したがって、
図1に示すように、6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2が配列された場合、最上流のヘッド10Kと最下流のヘッド10S2とをそれぞれ支持するヘッド支持機構20の弾性部材23の弾性率が最も大きく設定され、それらの内側の2つのヘッド10C、10S1をそれぞれ支持するヘッド支持機構20の弾性部材23の弾性率がそれよりも小さく設定され、最も内側の2つのヘッド10M、10Yをそれぞれ支持するヘッド支持機構20の弾性部材23の弾性率が最も小さく設定される。そして、いずれの弾性部材23の変形量もほぼ同等になるように、それぞれの弾性率が設定される。
このように構成するのは、傾斜角θが大きくなるほど、
図3(B)に示すように固定ネジ25が緩められて固定解除されたときに、弾性部材23にかかるヘッド10の荷重が大きくなるためである。したがって、変形例1のように、傾斜角θの大きさに応じて弾性部材23の弾性率を変化させることで、傾斜角θの異なる複数のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2の固定解除時の姿勢(弾性部材23を介して第2支持部材22によって支持される姿勢である。)のバラツキを小さくすることができる。したがって、ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2の位置調整やメンテナンスなどをおこなう場合の作業性が、さらに向上することになる。
【0025】
<変形例2>
図7は、変形例2としてのヘッド支持機構20とヘッド10とを示す図であって、前記変形例1における
図6に対応する図である。
変形例2におけるヘッド支持機構20は、ヘッド10の傾斜角θが大きい場合に、ヘッド10の傾斜角θが小さい場合に比べて、第2支持部材22において弾性部材23が斜め上方の位置に配置されるように設定している。
換言すると、複数のヘッド10が設置されていて、その複数のヘッド10に対応する、複数の第1支持部材21と、複数の第2支持部材22と、複数の弾性部材23と、がそれぞれ設置されている。そして、傾斜角θ1が大きいヘッド10に対応する第2支持部材22における弾性部材23Aの位置が、傾斜角θ2が小さいヘッド10に対応する第2支持部材22における弾性部材23Bの位置に比べて、斜め上方の位置になるように設定している。
詳しくは、
図7(A)に示すヘッド10の傾斜角θ1は、
図7(B)に示すヘッド10の傾斜角θ2に比べて大きい(θ1>θ2)。このような場合に、
図7(A)に示す第2支持部材22における弾性部材23Aの相対的な位置が、
図7(B)に示す第2支持部材22における弾性部材23Bの相対的な位置よりも、斜め上方なるように設定する。すなわち、
図7(A)に示す弾性部材23Aの第2支持部材22の下端(第1支持部材21との接続部である。)からの距離H1は、
図7(B)に示す弾性部材23Bの第2支持部材22の下端からの距離H2よりも、長くなる(H1>H2)。
したがって、
図1に示すように、6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2が配列された場合、最上流のヘッド10Kと最下流のヘッド10S2とをそれぞれ支持するヘッド支持機構20の弾性部材23の距離Hが最も長く設定され、それらの内側の2つのヘッド10C、10S1をそれぞれ支持するヘッド支持機構20の弾性部材23の距離Hがそれよりも短く設定され、最も内側の2つのヘッド10M、10Yをそれぞれ支持するヘッド支持機構20の弾性部材23の距離Hが最も短く設定される。
このように構成するのは、傾斜角θが大きくなるほど、
図3(B)に示すように固定ネジ25が緩められて固定解除されたときに、弾性部材23にかかるヘッド10の荷重が大きくなるとともに、その荷重の方向が第2支持部材22側に向きやすくなるためである。したがって、変形例2のように、傾斜角θの大きさに応じて第2支持部材22における弾性部材23の位置(距離H)を変化させることで、傾斜角θの異なる複数のヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2の固定解除時の姿勢(弾性部材23を介して第2支持部材22によって支持される姿勢である。)のバラツキを小さくすることができる。したがって、ヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2の位置調整やメンテナンスなどをおこなう場合の作業性が、さらに向上することになる。
なお、変形例2において、ヘッド10と第2支持部材22との間に設置される弾性部材23の上下方向の位置を調整可能に構成することもできる。すなわち、第2支持部材22の対向面上のおける弾性部材23の保持位置を、自由に可変できるように構成することができる。そのように構成することにより、傾斜角θが異なるヘッド10をそれぞれ支持するヘッド支持機構20を共通化することができるとともに、弾性部材23の保持位置の微調整をおこなうことが可能になる。
【0026】
<変形例3>
図8は、変形例3としてのヘッド支持機構20とヘッド10とを示す図であって、前記変形例2における
図7に対応する図である。
変形例3におけるヘッド支持機構20は、ヘッド10と第2支持部材22との対向距離が、斜め上方の位置(搬送ドラム2から離れた位置である。)になるほど減少するように構成されている。具体的に、
図8に示すように、第2支持部材22の下端(第1支持部材21との接続部である。)から上端に向けて対向距離が漸減するように、第2支持部材22の対向面22aがテーパ状に形成されている。
このように構成することにより、
図8(A)に示す弾性部材23Aの弾性率と、
図8(B)に示す弾性部材23Bの弾性率と、が同等であっても(弾性部材23A、23Bが共通化された場合であっても)、
図8に示すようにヘッド10の傾斜角θによって弾性部材23の位置(距離H)を変化させることで、前記変形例1、2のものと同様の効果を得やすくなる。
【0027】
<変形例4>
図9(A)は変形例4としてのヘッド支持機構20とヘッドアレイ50とを示す図であって、
図9(B)はヘッドアレイ50を吐出面50aの側からみた図(
図9(A)のヘッドアレイ50をA視方向からみた概略図)である。
図9(B)に示すように、ヘッドアレイ50には、複数のヘッド10が略千鳥状に設置されている。また、ヘッドアレイ50は、略直方体状に形成されている。
そして、変形例4では、ヘッドアレイ50を支持するヘッド支持機構20が、ヘッドアレイ50を傾斜した状態で位置決め固定可能に形成された第1支持部材21、固定解除時にヘッドアレイ50が倒れる側に設置された第2支持部材22、ヘッドアレイ50と第2支持部材22との間に設置された弾性部材23、などで構成されている。すなわち、実施の形態におけるヘッド10の代わりにヘッドアレイ50を支持するようにヘッド支持機構20が構成されている。したがって、ヘッドアレイ50の位置調整やメンテナンスなどをおこなう場合の作業性が向上することになる。
なお、変形例1~3におけるヘッド10の代わりにヘッドアレイ50を支持するようにヘッド支持機構20を構成することもできる。
【0028】
<変形例5>
図10は、変形例5としてのヘッドアレイ50を示す図である。
図10に示すように、ヘッドアレイ50には、複数のヘッド10A、10Bが設置されている。そして、変形例5におけるヘッドアレイ50には、複数のヘッド10A、10Bをそれぞれ支持する複数のヘッド支持機構20A、20Bが設置されている。そして、それらのヘッド支持機構20A、20Bは、それぞれ、実施の形態1(又は、変形例1~3)のもののように構成されている。
このようにヘッドアレイ50を構成した場合であっても、ヘッド10の位置調整やメンテナンスなどをおこなう場合の作業性が向上することになる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態におけるヘッド支持機構20(画像形成装置1)は、ヘッド10(又は、ヘッドアレイ50)を鉛直方向に対して所定の傾斜角θで傾斜した状態で位置決め固定可能に形成された第1支持部材21が設置されている。また、第1支持部材21による位置決め固定が解除されたヘッド10(又は、ヘッドアレイ50)が倒れる側であって、ヘッド10(又は、ヘッドアレイ50)に対して斜め下方に、第2支持部材22が設置されている。そして、ヘッド10(又は、ヘッドアレイ50)と第2支持部材22との間に、弾性部材23が設置されている。
これにより、傾斜した状態で位置決め固定されているヘッド10やヘッドアレイ50の位置調整やメンテナンスを、簡単におこなうことができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、6つのヘッド10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2が設置された画像形成装置1に対して本発明を適用したが、ヘッド10の数はこれに限定されることはない。
また、本実施の形態では、オフィス用や商用印刷用のインクジェットヘッドを支持するヘッド支持機構20に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、例えば、生体適合材料や3次元造形用材料を吐出するヘッド(又は、ヘッドアレイ)を支持するヘッド支持機構に対しても本発明を適用することができる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0032】
なお、本願明細書等において、「ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品のすべてを含むものと定義する。また、ヘッドから吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、液体を吐出するエネルギー発生源として、本実施の形態では圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)を用いているが、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 画像形成装置(インクジェットプリンタ)、
2 搬送ドラム、
10、10Y、10M、10C、10K、10S1、10S2 ヘッド、
20 ヘッド支持機構、
21 第1支持部材、
22 第2支持部材、
22a 対向面、
23 弾性部材、
25 固定ネジ、
27 調整ピン、
50 ヘッドアレイ、
P シート。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】