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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】制御装置、画像形成装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20220705BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G03G21/00 398
G03G15/20 555
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018141848
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020016866
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】中島 幹夫
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173364(JP,A)
【文献】特開2004-037699(JP,A)
【文献】特開2005-257831(JP,A)
【文献】特開2012-006375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置の制御装置であって、
前記画像形成装置において消費される直流電力値である消費直流電力値を取得する取得部と、
少なくとも1つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性を推定する推定部と、
前記記録媒体に画像を定着させる前記画像形成装置の定着部に供給される電力である定着電力の制限値を、前記消費直流電力値の特性に対応する周期性を有するように決定する決定部とを備え、
前記推定部は、前記少なくとも1つの記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の振幅及び周期を推定し、
前記決定部は、前記消費直流電力値の振幅及び周期に対応する前記定着電力の制限値の振幅及び周期を決定する
制御装置。
【請求項2】
前記定着電力は周期性を有し、
前記定着電力の制限値の1周期は、前記定着電力の周期の整数倍である
請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記推定部は、少なくとも2つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性を推定する
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記推定部が前記消費直流電力値の特性を推定する対象の期間における前記定着電力の制限値を、予め設定された制限値に決定する
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記消費直流電力値と前記定着電力の制限値との和が前記画像形成装置の定格電力を超える場合、少なくとも1つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性を新たに推定し、
前記決定部は、新たに推定された前記消費直流電力値の特性に基づき、前記定着電力の制限値を新たに決定する
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の制御装置を備える画像形成装置。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成装置において消費される直流電力値である消費直流電力値を取得し、
少なくとも1つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性として振幅及び周期を推定し、
前記記録媒体に画像を定着させる前記画像形成装置の定着部に供給される電力である定着電力の制限値の振幅及び周期を、前記消費直流電力値の振幅及び周期に対応するように決定し、
前記定着電力の制限値を上限として、前記定着電力を前記定着部に供給する指令を出力する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、画像形成装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、画像は記録媒体上に形成された後に熱定着される。
【0003】
例えば、画像形成装置に接続されたステープルソート可能なフィニッシャの状態に基づき、熱定着を行う定着ヒータの電力を制御する画像形成装置がある(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置では、多くの消費電力を必要とするステープルの動作中、定着ヒータの一部又は全部が消灯される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1の画像形成装置では、定着ヒータが使用可能な電力は、画像形成装置の定格電力内で予め配分されている。しかしながら、他の装置の電力消費量にばらつきが生じ得るため、定着ヒータは配分されている電力の全てを使用できない場合がある。特に、特許文献1のように定着ヒータの一部又は全部が消灯されると、熱定着に要する時間が長くなり、画像の形成完了が遅延する可能性がある。
【0005】
本開示の技術は、定着ヒータが使用可能な電力を増大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による制御装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の制御装置であって、前記画像形成装置において消費される直流電力値である消費直流電力値を取得する取得部と、少なくとも1つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性を推定する推定部と、前記記録媒体に画像を定着させる前記画像形成装置の定着部に供給される電力である定着電力の制限値を、前記消費直流電力値の特性に対応する周期性を有するように決定する決定部とを備え、前記推定部は、前記少なくとも1つの記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の振幅及び周期を推定し、
前記決定部は、前記消費直流電力値の振幅及び周期に対応する前記定着電力の制限値の振幅及び周期を決定する
【0007】
本発明の一実施形態による画像形成装置は、本発明の一実施形態による制御装置を備える。
【0008】
本発明の一実施形態による制御方法は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、前記画像形成装置において消費される直流電力値である消費直流電力値を取得し、少なくとも1つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性として振幅及び周期を推定し、前記記録媒体に画像を定着させる前記画像形成装置の定着部に供給される電力である定着電力の制限値の振幅及び周期を、前記消費直流電力値の振幅及び周期に対応するように決定し、前記定着電力の制限値を上限として、前記定着電力を前記定着部に供給する指令を出力する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、定着ヒータが使用可能な電力を増大させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る画像形成装置の構成の一例を示す側面図
図2図1の画像形成装置の印刷部の構成の一例を示す側面図
図3】実施の形態1に係る画像形成装置における定着電力の一例を示す図
図4】実施の形態1に係る画像形成装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
図5】実施の形態1に係る画像形成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図
図6】実施の形態1に係る画像形成装置における印刷時の直流電力の経時的変化の一例を示す図
図7】実施の形態1に係る画像形成装置によって決定される制限定着電力の一例を示す図
図8】実施の形態1に係る画像形成装置の動作の一例を示すフローチャート
図9A】実施の形態1に係る画像形成装置の実施例における印刷時の定着温度の経時的変化の一例を示す図
図9B】比較例の画像形成装置における印刷時の定着温度の経時的変化の一例を示す図
図10】実施の形態2に係る画像形成装置の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することによって重複した説明を省く。
【0012】
(実施の形態1)
<画像形成装置1の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1の構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る画像形成装置1の構成の一例を示す側面図である。本実施の形態に係る画像形成装置1は、電子写真方式の画像形成装置であり、記録媒体上に画像を形成する複合機能複写機であるとして説明する。つまり、複合機能複写機は、画像形成装置の一例である。なお、画像形成装置は、記録媒体上に画像を形成するいかなる装置であってもよく、例えば、単なる複写機又は印刷機であってもよい。記録媒体は、その表面上に画像が形成されることができればよい。記録媒体の例は、紙、布、フィルム又は板等のシート材であるが、これに限定されない。
【0013】
本実施の形態に係る画像形成装置1は、紙等の記録媒体から読み取った情報のデータを生成する又は当該情報の画像を記録媒体上に形成することができる。さらに、画像形成装置1は、PC(Personal Computer)等のコンピュータ装置2から取得された情報の画像、及び、PBX(構内交換機:Private Branch eXchanger)3等を介して電話回線を通じて取得された情報の画像を記録媒体上に形成することができる。つまり、画像形成装置1は、スキャナ機能、複写機能、プリンタ機能及びファクシミリ機能を備える。後述する操作ボード10へのユーザの入力に応じて、画像形成装置1は、各機能を切り替え、切り替えられた機能のモードで動作する。
【0014】
画像形成装置1は、操作ボード10と、画像読取部20と、印刷部30と、制御装置40とを備える。操作ボード10は、ユーザから画像形成装置1の操作に関する指令を受け付けるインタフェースであり、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及びボタン等で構成される。画像読取部20は、記録媒体上の情報を読み取り、画像データとして印刷部30等に出力する。印刷部30は、画像データに基づきトナー像を形成し、画像形成装置1に格納された記録媒体に印刷する。本実施の形態では、記録媒体は紙である。印刷部30が取得する画像データは、画像読取部20によって取得された画像データ、コンピュータ装置2から取得された画像データ、又は、PBX3を介して取得された画像データである。
【0015】
画像読取部20は、ADF(自動原稿送り装置:Auto Document Feeder)21及び画像読取装置22を備える。ADF21は、その上に配置された紙原稿を順次、画像読取装置22に送る。画像読取装置22は、ADF21から送られる各紙原稿の表面から画像データを取得し、印刷部30又は制御装置40に出力する。印刷部30は、画像データを紙に印刷し、制御装置40は、画像データを、PBX3を介して外部の送信先に送る、又は、コンピュータ装置2に送る。操作ボード10、ADF21、画像読取装置22及び印刷部30は、互いに結合及び分離可能に構成されている。
【0016】
また、制御装置40は、画像形成装置1の全体の動作を制御する。例えば、制御装置40は、マイクロコンピュータ等のコンピュータで構成される。制御装置40は、画像読取部20及び印刷部30の動作を制御する。制御装置40は、操作ボード10に入力される指令に基づき、スキャナ機能、複写機能、プリンタ機能及びファクシミリ機能それぞれでの画像形成装置1の動作を制御する。
【0017】
さらに、印刷部30の詳細な構成を説明する。本実施の形態では、印刷部30は、レーザカラープリンタであるとして説明する。図2は、図1の画像形成装置1の印刷部30の構成の一例を示す側面図である。図2では、印刷部30は内部を透視して描かれている。図2に示すように、印刷部30は、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)及びブラック(K)それぞれの色の画像を形成するための4組のトナー像形成ユニット301a~301dと、第一転写ベルト311と、第二転写ベルト312と、露光装置320と、給紙ユニット371及び372とを備える。
【0018】
露光装置320は、画像読取装置22等から取得される画像データに対応して、トナー像形成ユニット301a~301dそれぞれの帯電された感光体302に光を照射することで、感光体302それぞれの表面上に静電潜像を形成する。露光装置320の例は、レーザ光を照射するレーザ走査方式、又は、LED(Light Emitting Diode)光を照射するLED書き込み方式の露光装置である。露光装置320は、フルカラー画像の形成に対応した光を、一様に帯電された感光体302それぞれの表面に潜像として照射する。
【0019】
第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312はそれぞれ、複数のローラに掛け渡された無端ベルトであり、複数のローラの周りを周回移動する。第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312はそれぞれ、回転可能な支持ローラ及び駆動ローラ間に支持及び張架されている。第一転写ベルト311は、そのループの内側に配置された4つの第一転写ローラ311aによって、トナー像形成ユニット301a~301dの4つの感光体302に押し付けられている。第二転写ベルト312は、そのループの内側に配置された第二転写ローラ312aによって、第一転写ベルト311及びその支持ローラ又は駆動ローラに押し付けられ、第一転写ベルト311と接触している。このような第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312は、予め定められた転写ニップを形成する。
【0020】
第一転写ベルト311には、トナー像形成ユニット301a~301dの感光体302それぞれの潜像がトナー像として転写され、第二転写ベルト312には、第一転写ベルト311上のトナー像が転写される。第二転写ベルト312は、その上のトナー像を給紙ユニット371又は372に収容された紙である転写用紙(以下、単に「用紙」とも呼ぶ)に転写する。
【0021】
トナー像形成ユニット301a~301dは、第一転写ベルト311の周回移動方向に沿って、この順に配置されている。本実施の形態では、トナー像形成ユニット301a~301dは、第一転写ベルト311の下方に配置され、露光装置320は、トナー像形成ユニット301a~301dの下方に配置されている。本明細書において、「上方」及び「下方」は、水平な支持面上に画像形成装置1が配置されたときの方向を示す。このような画像形成装置1は、4連ドラム方式(「タンデム方式」とも呼ぶ)のフルカラー画像形成装置を構成する。
【0022】
トナー像形成ユニット301a~301dはそれぞれ、回転可能に支持された感光体302と、帯電装置303と、現像装置304とを備える。帯電装置303及び現像装置304は、感光体302の外周面に配置されている。
【0023】
各感光体302は、第一転写ローラ311aと共に第一転写ベルト311を挟み、第一転写ベルト311と接触している。例えば、感光体302は、ドラム状の部材である。帯電装置303は、感光体302の表面にトナーが付着しやすくなるように、表面を一様に帯電させる。現像装置304は、帯電された感光体302の表面にトナーを供給することで、露光により形成された潜像にトナーを付着させる。これにより、潜像は顕像化されトナー像を形成する。トナー像形成ユニット301a~301dそれぞれの現像装置304が扱う色は互いに異なり、マゼンダ、シアン、イエロー及びブラックである。帯電装置303と現像装置304との間には、露光装置320から出射される光が感光体302に入射するスペースが確保されている。
【0024】
用紙は、給紙ユニット371及び372に収容されている。給紙ユニット371又は372の最上部の用紙は、給紙ローラで1枚づつ取り出され、複数の用紙ガイドを経てレジストローラ313に搬送される。レジストローラ313は、搬送された用紙を、第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312の間に搬送する。本明細書において、このような給紙ユニット371又は372から第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312への用紙の搬送を給紙と呼ぶ。
【0025】
また、印刷部30は、第二転写ベルト312の上方に、定着装置330と、排紙ガイド332と、排紙ローラ340と、排紙スタック350とを備える。
【0026】
定着装置330は、定着部の一例であり、トナー像が転写された用紙に熱を加えることによって、トナー像を当該用紙に定着させる。定着装置330は、外周面が互いに対向する2つの定着ローラ331a及び331bを備え、定着ローラ331a及び331bはそれぞれ、定着ヒータ51及び52を含む。定着ローラ331a及び331bは、これらの間を用紙が通る際に、定着ヒータ51及び52により当該用紙を加熱し、加熱後の用紙を排紙ガイド332を通って排紙ローラ340に送る。排紙ローラ340は、送られた用紙を排紙スタック350に排出する、つまり排紙する。
【0027】
印刷部30は、用紙の両面に印刷することができる。このような両面印刷のときの印刷部30の動作を説明する。まず、印刷部30は、画像読取装置22等から用紙の両面に印刷すべき2つの画像のデータを取得すると、感光体302等を用いて、用紙の一方の面に印刷すべき画像のトナー像を形成する。具体的には、不図示のLED光源を備える露光装置320は、1つの画像のデータから、トナー像形成ユニット301a~301dのトナーの4つの色それぞれの像を形成するために、光を照射する。露光装置320は、そのLED光源から上記4つの色の像を形成するための4つの光をそれぞれ、トナー像形成ユニット301a~301dの4つの感光体302に向かって出射する。
【0028】
例えば、出射された光は、不図示の光学部品を経て、帯電装置303により一様に帯電されたトナー像形成ユニット301aの感光体302上に至り、例えば、画像においてマゼンダ色が形成する像に対応した潜像を形成する。さらに、感光体302上の潜像は現像装置304によって顕像化され、マゼンダ色のトナーによるトナー像が感光体302の表面に形成され保持される。このトナー像は、第一転写ローラ311aにより、感光体302と同期して移動する第一転写ベルト311の表面に転写される。第一転写ベルト311は、表面に転写されたマゼンダ色のトナー像を坦持し、図2で反時計回りの矢印の方向に移動する。
【0029】
また、トナー像形成ユニット301bの感光体302には、シアン色が形成する像に対応する潜像が書き込まれ、当該潜像はシアン色のトナー像に顕像化される。このトナー像は、すでに第一転写ベルト311に担持されているマゼンダ色のトナー像に重ねられる。同様の動作が、トナー像形成ユニット301c及び301dにおいても行われ、最終的には、第一転写ベルト311上に4色のトナー像が重ねられる。なお、例えば、白黒の画像の形成の場合、単色の黒のトナー像のみが形成される場合もある。
【0030】
また、第二転写ベルト312は、第一転写ベルト311と同期して、図2で時計回りの矢印方向に移動する。そして、第二転写ローラ312aの作用によって、第二転写ベルト312の表面には、第一転写ベルト311の表面に形成され且つ4色のトナー像が重ねられたトナー像が転写される。いわゆるタンデム方式である4つのトナー像形成ユニット301a~301dそれぞれの感光体302上でトナー像が形成されつつ、第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312が移動し、これらのベルト上へのトナー像の形成が進められるので、形成時間の短縮が可能である。
【0031】
第一転写ベルト311が、所定の位置まで移動すると、用紙の他方の面に印刷される画像のトナー像が、上述と同様にして、感光体302等により形成される。このとき、第一転写ベルト311及び第二転写ベルト312への給紙が開始される。具体的には、給紙ユニット371又は372内の最上部にある用紙が引き出され、レジストローラ313に搬送される。
【0032】
用紙は、レジストローラ313を経て、第一転写ベルト311と第二転写ベルト312との間に送られる。当該用紙の一方の面には、第一転写ベルト311の表面上のトナー像が、第二転写ローラ312aにより転写される。さらに、用紙は上方に搬送され、第二転写ベルト312の表面上のトナー像が、不図示のチャージャにより用紙の他方の面に転写される。転写に際して、用紙は画像の位置が正規の位置となるように、タイミングがとられて搬送される。
【0033】
両面にトナー像が転写された用紙は、定着装置330に送られる。定着装置330は、用紙の両面上のトナー像を一緒に溶融し、当該用紙に定着させた後、当該用紙を、排紙ガイド332を介して排紙ローラ340に搬送する。排紙ローラ340は、送られた用紙を排紙スタック350に排出する。
【0034】
なお、片面印刷の場合、第一転写ベルト311に形成されたトナー像は、第二転写ベルト312に転写され、さらに用紙の一方の面に転写される。又は、第一転写ベルト311のトナー像は、第二転写ベルト312に転写されずに用紙の一方の面に直接転写される。
【0035】
さらに、制御装置40を説明する。制御装置40は、画像形成装置1の全体の動作を制御する。例えば、制御装置40は、定着装置330の定着ヒータ51及び52に供給する電力を制御する。以下において、制御装置40における定着ヒータ51及び52の電力を制御する構成を中心に説明する。
【0036】
本実施の形態では、定着ヒータ51及び52に供給される電力(以下、「定着電力」とも呼ぶ)は、パルス波状の電力である。例えば、制御装置40は、図3に示すように、制御周期に従って電力供給をON又はOFFすることによって、定着ヒータ51及び52を周期的に点灯及び消灯する。つまり、制御装置40は、定着電力をデューティ制御する。図3は、実施の形態1に係る画像形成装置1における定着電力の一例を示す図であり、横軸は経過時間(単位:秒)を示し、縦軸は電力(単位:W)を示す。
【0037】
このように、制御装置40は、定着ヒータ51及び52に周期性を有する電力を供給する。なお、定着電力は、周期性を有する電力であればよく、図3のような矩形波の他、例えば三角波、台形波又は正弦波等を形成する電力であってもよい。さらに、本実施の形態では、定着電力には、交流電力が用いられるが、直流電力が用いられてもよい。
【0038】
画像形成装置1には、定格電力が設定されている。制御装置40は、定格電力以下の範囲内において、定着ヒータ51及び52と、定着ヒータ51及び52以外の画像形成装置1の構成要素とに、電力を配分する。本実施の形態では、定着ヒータ51及び52が消費する電力を、「一次側電力」と呼び、定着ヒータ51及び52以外の構成要素が消費する電力を、「二次側電力」と呼ぶ。例えば、二次側電力は、画像読取部20のスキャナ動作、印刷部30の印刷動作及びその他の周辺機器の動作等によって、消費される。なお、一次側電力は定着ヒータ51及び52以外の構成要素の消費電力を含んでもよい。一次側電力は交流電力であり、二次側電力は直流電力であるが、これに限定されない。制御装置40は、一次側電力及び二次側電力の和が定格電力以下となるように電力制御する。
【0039】
制御装置40の詳細を説明する。図4は、実施の形態1に係る画像形成装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図5は、実施の形態1に係る画像形成装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。まず、制御装置40の機能的な構成を説明する。
【0040】
図4に示すように、制御装置40は、取得部401と、推定部402と、決定部403と、出力部404と、記憶部405とを、機能的な構成要素として備える。さらに、制御装置40は、画像形成装置1が備えるDC(直流:Direct Current)電力検出装置60、並びに、定着ヒータ51及び52と接続されている。DC電力検出装置60は、二次側電力を検出する装置である。DC電力検出装置60の動作は、制御装置40によって制御されてもよく、画像形成装置1が備える他の制御装置によって制御されてもよい。
【0041】
取得部401は、画像形成装置1において消費される直流電力値である消費直流電力値の一例である二次側電力値を取得する。具体的には、取得部401は、DC電力検出装置60から、DC電力検出装置60によって検出される二次側電力値とその検出時間とを含む二次側電力値の時系列データを取得する。取得部401は、時系列データの二次側電力値及び検出時間を対応付けて記憶部405に記憶させる。
【0042】
記憶部405は、様々な情報を記憶し、記憶した情報を取り出すことができる。記憶部405は、取得部401によって取得された二次側電力値の時系列データ、及び、決定部403によって決定される定着ヒータ51及び52の電力の制限値等を記憶する。
【0043】
推定部402は、画像形成装置1が少なくとも1枚の用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性、具体的には変動特性を推定する。推定部402は推定結果を決定部403に出力する。
【0044】
例えば、図6は、実施の形態1に係る画像形成装置1における印刷時の直流電力、つまり二次側電力の経時的変化の一例を示す図である。図6において、横軸は経過時間(単位:秒)を示し、縦軸は電力(単位:W)を示す。画像形成装置1は、スキャナ機能、複写機能、プリンタ機能又はファクシミリ機能における画像データの取得及び/又は画像形成のための稼働をしていない状態では、消費電力を抑えるために、その機能を制限している状態である待機状態又はスリープ状態になる。例えば、待機状態の画像形成装置1は、上記稼働をしていない状態が所定時間以上継続すると、スリープ状態になる。画像形成装置1によっては、スリープ状態において上記稼働をしていない状態が所定時間以上継続すると、ディープスリープ状態になるものもある。
【0045】
画像形成装置1は、スリープ状態のとき、待機状態よりも機能が制限された状態であり、ディープスリープ状態のとき、スリープ状態よりも機能が制限された状態である。スリープ状態での消費電力は、待機状態よりも小さく、ディープスリープ状態での消費電力はスリープ状態よりも小さい。定着ヒータ51及び52は待機状態において作動され得る。
【0046】
図6の例では、画像形成装置1は、印刷ジョブを未だ受信していないとき、スリープ状態にある。印刷ジョブは、印刷対象のデータ及び印刷実行の指令等を含む情報である。画像形成装置1は、コンピュータ装置2、PBX3又は操作ボード10等から印刷を指令する印刷ジョブを受信すると、スリープ状態からの復帰を開始する。具体的には、画像形成装置1は、スリープ状態から待機状態へ移行し、移行完了後、定着ヒータ51及び52を通電し、定着装置330の定着ローラ331a及び331bを昇温する。定着ローラ331a及び331bが目標温度まで昇温すると、復帰が完了する。画像形成装置1は、復帰完了後、1枚目の用紙の給紙及び印刷を開始する。図6の例では、印刷ジョブは複数の用紙への印刷の指令を含み、画像形成装置1は複数の用紙を順次印刷する。印刷開始時点から排紙スタック350への用紙の排出が完了するまでの各用紙の印刷過程において、経時的に変化する二次側電力値が描く波形は、ピークを有する山型の形状である。推定部402はこのような二次側電力の波形の特性を推定する。
【0047】
図7は、実施の形態1に係る画像形成装置1によって決定される制限定着電力の一例を示す図であり、図6の一部を拡大した図である。図7に示すように、推定部402は、記憶部405を参照することによって、少なくとも1枚の用紙に画像を形成する期間内における二次側電力の波形の最大値、最小値及びそれらの発生時間を抽出する。本実施の形態では、上記期間は、印刷の開始時点から少なくとも2枚の用紙への画像の形成が完了し、当該少なくとも2枚の用紙の排出が完了するまでの期間であり、具体的には、2枚目の用紙の排出が完了するまでの期間である。印刷の開始時点は給紙開始時点でもある。
【0048】
図7の例では、推定部402は、印刷の開始時点から2枚目の用紙の排出完了までの期間の二次側電力の波形(以下、「対象電力波形」とも呼ぶ)において、2つの最大値と、2つの最小値と、各値が検出された時間とを抽出する。具体的には、推定部402は、印刷の開始時点から1枚目の用紙の排出完了時点までの期間と、1枚目の用紙の排出完了時点から2枚目の用紙の排出完了時点までの期間とのそれぞれにおいて、1つの最大値と1つの最小値とを抽出する。つまり、推定部402は、対象電力波形の各ピークについて、1つの最大値と1つの最小値とを抽出する。本実施の形態では、推定部402は、対象電力波形の極大点V2及びV4、並びに、極小点V1及びV3での電力値をそれぞれ、最大値及び最小値として抽出するが、単なる最大値及び最小値を抽出してもよい。
【0049】
さらに、推定部402は、2つの最大値と、2つの最小値と、それらの検出時間とから、二次側電力の波形の振幅A1及び周期T1を、二次側電力の特性として推定する。振幅及び周期の推定は、既知のいかなる方法で行われてもよい。例えば、極大点V2及びV4、並びに、極小点V1及びV3と、正弦波又は矩形波等の周期性を有する波形とをパターンマッチングすることによって、振幅及び周期が推定されてもよい。又は、極大点V2及び極小点V1から推定される振幅及び周期と、極大点V4及び極小点V3から推定される振幅及び周期とが平均化されることによって、振幅及び周期が推定されてもよい。又は、電力値が最も大きい極大点V4と、電力値が最も小さい極小点V1とから、振幅及び周期が推定されてもよい。
【0050】
決定部403は、推定された二次側電力の特性に基づき、定着ヒータ51及び52に供給される定着電力の制限値(以下、「制限定着電力値」とも呼ぶ)を、二次側電力の特性に対応する周期性を有するように決定する。具体的には、決定部403は、二次側電力の振幅A1及び周期T1に対応する制限定着電力値の振幅A2及び周期T2を決定する。
【0051】
ここで、定着電力の制御周期をT3とすると、決定部403は、周期T2が周期T1の近傍且つ周期T3以上であるように、周期T2を決定する。さらに、決定部403は、周期T2が周期T3の整数倍となるように、周期T2を決定する。図7の例では、決定部403は、周期T3の4倍の周期を周期T2に決定する。
【0052】
さらに、決定部403は、振幅A1の近傍且つ振幅A1以上の振幅A4と周期T2とを有する矩形波状の電力波形L1(図7で一点鎖線表示)を算出する。電力波形L1の極大値L1aは、極大点V2及びV4の電力値以上であり、電力波形L1の極小値L1bは、極小点V1及びV3の電力値以下である。電力波形L1の形状は、対象電力波形の形状に沿う。つまり、電力波形L1の山及び谷の位置はそれぞれ、対象電力波形の山及び谷の位置に対応する。
【0053】
さらに、決定部403は、電力波形L1において極小値L1bを変更して得られる電力波形L2(図7で破線表示)を算出する。電力波形L2は、電力波形L1と同じ周期T2及び極大値L1aを有し、且つ、電力波形L1の極小値L1bよりも大きい極小値L2bを有する。決定部403は、極小値L2bを、極大値L1aよりも小さく、且つ電力波形L2が対象電力波形と交差しないようにする値に決定する。電力波形L2は、対象電力波形と接してもよく、対象電力波形から間隔をあけて離れていてもよいが、交差しない。
【0054】
さらに、決定部403は、電力波形L2と画像形成装置1の定格電力の波形とを用いて制限定着電力の波形を算出する。定格電力の波形は、電力値が時間の経過にかかわらず一定の定格電力値NRPである直線状の波形である。決定部403は、定格電力の波形から電力波形L2を減算して得られる電力波形を、制限定着電力の波形(以下、「制限電力波形」とも呼ぶ)に決定する。つまり、(制限電力波形)=(定格電力波形)-(電力波形L2)である。
【0055】
このような制限電力波形は、二次側電力の電力波形L2と相補する関係にあり、制限電力波形の山及び谷の位置はそれぞれ、電力波形L2の谷及び山の位置に対応する。例えば、制限電力波形の形状は、位相を1/2周期ずらした電力波形L2の波形と同じになる場合もある。図7において、制限電力波形の形状は、矩形波状であり、電力波形L2を振幅方向に反転した波形と同じである。よって、定格電力波形と電力波形L2との距離は制限定着電力を示す。なお、制限電力波形の形状は、三角波、台形波又は正弦波等の他の形状であってもよい。
【0056】
このような制限電力波形の周期は、周期T2であり、電力波形L2の周期と同じT3×4である。制限電力波形の極大値は、NRP-L2bであり、制限電力波形の極小値は、NRP-L1aである。制限電力波形の振幅は、振幅A2であり、具体的には、(L1a-L2b)/2である。
【0057】
決定部403は、算出された制限電力波形の情報を記憶部405に記憶させる。つまり、決定部403は、振幅A2(=(L1a-L2b)/2)と、周期T2(=T3×4)と、極大値(NRP-L2b)と、極小値(NRP-L1a)と、周期T2内の極大値及び極小値の時間とを対応付けて、記憶部405に記憶させる。なお、図7において、極大値及び極小値の時間は、T3×2である。図7における上側制限定着電力は極大値に対応し、下側制限定着電力は極小値に対応する。
【0058】
出力部404は、定着電力の制御信号を定着ヒータ51及び52に出力する。具体的には、印刷開始時点から2枚目の用紙の排出完了までの期間、出力部404は、予め設定され且つ記憶部405に記憶されている制限定着電力に従い、制限定着電力を上限とする定着電力の制御信号を出力する。印刷開始時点から2枚目の用紙の排出完了までの期間は、推定部402が二次側電力値の特性を推定する対象の期間である。例えば、時間の経過に関係なく一定である制限定着電力値V0が予め設定されてもよい。このような制限定着電力値V0は、極小値(NRP-L1a)以下となり得る。なお、出力部404は、画像形成装置1が待機状態になった後、印刷開始時点よりも前に、定着装置330を昇温するために定着ヒータ51及び52を起動する場合がある。この場合も、出力部404は、上記の予め設定された制限定着電力に従った電力制御を行ってもよい。
【0059】
2枚目の用紙の排出完了後、出力部404は、決定部403によって決定され且つ記憶部405に記憶されている制限定着電力に従い、当該制限定着電力を上限とする定着電力の制御信号を出力する。例えば、図7に示すように、出力部404は、制限電力波形に従って、上側制限定着電力値又は下側制限定着電力値を上限とする定着電力の制御信号を出力する。
【0060】
上述したように、制限電力波形の形状は、二次側電力の波形と相補する形状である。このため、制限定着電力と二次側電力との和を定格電力以下に維持しつつ、制限定着電力をできる限り大きくすることができる。言い換えれば、定格電力内において、制限定着電力及び二次側電力に用いられない電力の低減が可能である。特に、制限定着電力への上側制限定着電力の適用は、制限定着電力の増大に大きく貢献する。
【0061】
さらに、出力部404は、取得部401を介して二次側電力の検出値をリアルタイムに取得し、二次側電力値と定着電力値との和が定格電力値を超えないように、定着電力を制御する。例えば、図7において、4枚目の用紙の排出完了後、上側制限定着電力が適用されるときに、二次側電力値と制限定着電力値との和が定格電力値を超過する場合がある。例えば、電力波形L2と二次側電力の波形とが交差する部分が、超過部分に相当する。このような場合、出力部404は、例えば、周期T3単位等で一時的に、定着電力値の上限を上側制限定着電力値から下側制限定着電力値に変更することで、超過を回避する。
【0062】
次いで、制御装置40のハードウェア構成を説明する。図5に示すように、制御装置40は、第一制御基板410及び第二制御基板420を、ハードウェア的な構成要素として備える。第一制御基板410は、画像形成装置1の各装置の動作を制御する回路基板であり、第二制御基板420は、定着ヒータ51及び52への電力供給を制御する回路基板である。
【0063】
第一制御基板410は、プロセッサ等であるCPU(Central Processing Unit)411と、不揮発性半導体記憶装置等であるROM(Read Only Memory)412と、揮発性半導体記憶装置等であるRAM(Random Access Memory)413とを含む。制御装置40を動作させるプログラムは、ROM412に予め保持されている。プログラムは、CPU411によって、ROM412からRAM413に読み出されて展開される。CPU411は、RAM413に展開されたプログラム中のコード化された各命令を実行する。なお、プログラムは、ROM412に限らず、例えば記録ディスク等の記録媒体に格納されていてもよい。また、プログラムは、有線ネットワーク、無線ネットワーク又は放送等を介して伝送され、RAM413に取り込まれてもよい。なお、制御装置40は、ハードディスク等の他の記憶装置を備えてもよい。
【0064】
CPU411は、DC電力検出装置60と接続され、DC電力検出装置60から二次側電力の検出結果を取得し、検出結果をROM412に記憶させる。CPU411は、DC電力検出装置60の検出動作を制御してもよい。さらに、CPU411は、DC電力検出装置60の検出結果に基づき、定着ヒータ51及び52の制限定着電力を決定し、ROM412に記憶させる。CPU411は、制限定着電力に基づき定着電力を制限する指令を第二制御基板420に出力する。なお、CPU411は、時刻を計測するタイマを備え、時刻に基づく適切なタイミングで指令を出力してもよい。
【0065】
第二制御基板420は、集積回路(Integrated Circuit)421を備える。集積回路421は、CPU411から取得される指令に従って、第一制御回路91及び第二制御回路92それぞれへ、制限定着電力を上限とする定着電力を定着ヒータ51及び52に供給するための制御信号を出力する。第一制御回路91及び第二制御回路92はそれぞれ、電源200から電力供給を受け、制御信号に対応する駆動電力を定着ヒータ51及び52に供給する。本実施の形態では、電源200は商用交流電源であるが、これに限定されない。
【0066】
電源200の交流電力は、画像形成装置1のフィルタ回路70を通過してノイズ除去を受けた後、AC-DC(交流-直流)変換器80、第一制御回路91及び第二制御回路92に供給される。AC-DC変換器80は、交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を二次側電力として、画像形成装置1における直流電力で駆動する各装置に供給する。AC-DC変換器80の例は、AC-DC変換回路である。
【0067】
DC電力検出装置60は、直流電流検出装置と、電圧検出装置とを含む。直流電流検出装置及び電圧検出装置は、回路又は素子で構成されてもよい。直流電流検出装置は、画像形成装置1の二次側電力系統の直流電流値を検出する。例えば、直流電流検出装置は、AC-DC変換器80よりも電源200側の一次側回路に配置され、一次側回路で電流を検出することによって二次側電力系統の直流電流値を演算等により検出してもよい。このとき、例えば、直流電流検出装置はAC-DC変換器80における電流値を検出してもよい。又は、直流電流検出装置はAC-DC変換器80よりも直流電力で駆動する装置側の二次側回路に配置され、直流電流値を検出してもよい。
【0068】
電圧検出装置は、画像形成装置1の一次側電力系統及び二次側電力系統のいずれの電圧値を検出してもよい。例えば、電圧検出装置は、AC-DC変換器80における二次側電力系統の電圧値を検出してもよく、定着ヒータ51及び52が接続される回路における一次側電力系統の電圧値を検出してもよい。DC電力検出装置60は、画像形成装置1の定格電力と、直流電流検出装置及び電圧検出装置の検出結果とから、直流電力を検出することができる。
【0069】
例えば、制御装置40の取得部401、推定部402及び決定部403は、CPU411等によって実現され、出力部404は、CPU411及び集積回路421等によって実現される。記憶部405は、ROM412及びRAM413等によって実現される。
【0070】
なお、取得部401、推定部402、決定部403及び出力部404の各構成要素は、CPU411等のプログラム実行部によって実現されてもよく、回路によって実現されてもよく、プログラム実行部及び回路の組み合わせによって実現されてもよい。例えば、これらの構成要素は、集積回路であるLSI(大規模集積回路:Large Scale Integration)として実現されてもよい。これらの構成要素は個別に1チップ化されてもよく、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。LSIとして、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続及び/又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサ、又は、特定用途向けに複数の機能の回路が1つにまとめられたASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が利用されてもよい。記憶部405は、ハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置として実現されてもよい。
【0071】
<画像形成装置1の動作>
実施の形態1に係る画像形成装置1の動作を説明する。図8は、実施の形態1に係る画像形成装置1の動作の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、制御装置40は、印刷ジョブを受信すると、画像形成装置1を待機状態に移行させ、定着ヒータ51及び52を起動させた後、印刷ジョブの実行を開始する。つまり、制御装置40は、1枚目の用紙の給紙及び印刷を開始する(ステップS1)。
【0072】
次いで、制御装置40は、印刷の過程において、予め設定され且つ記憶部405に記憶されている一定の制限定着電力値V0に基づく電力制御に従って、定着ヒータ51及び52の定着電力を制御する(ステップS2)。
【0073】
さらに、制御装置40は、DC電力検出装置60から二次側電力の検出値及びその検出時刻を、例えばリアルタイムに取得する。そして、制御装置40は、二次側電力値の時系列データから、その電力波形の各ピーク及びその周辺における電力の極大値、極小値及びその検出時刻を、最大値、最小値及びその時間として抽出する(ステップS3)。
【0074】
次いで、制御装置40は、所定数の用紙の印刷が完了したか否かを判定する(ステップS4)。本実施の形態では、所定数は「2」であり、印刷の完了は排紙完了を意味する。制御装置40は、完了している場合(ステップS4でYes)、ステップS5に進み、未完了の場合(ステップS4でNo)、ステップS2に戻る。
【0075】
ステップS5において、制御装置40は、所定数の用紙の印刷が完了するまでに検出された二次側電力の特性を、極大値、極小値及びその検出時刻に基づき推定する。具体的には、制御装置40は、二次側電力の波形の振幅及び周期を推定する。
【0076】
次いで、制御装置40は、二次側電力の波形の振幅及び周期と、画像形成装置1の定格電力とに基づき、定着ヒータ51及び52の定着電力の制限量及び制御周期を決定する(ステップS6)。具体的には、制御装置40は、定着電力の制限電力波形を算出し、当該制限電力波形が示す制限定着電力値及び周期を、定着電力の制限量及び制御周期として決定する。
【0077】
次いで、制御装置40は、決定結果である定着電力の制限量及び制御周期に従った定着電力の制御信号を、定着ヒータ51及び52に出力することで、定着ヒータ51及び52の定着電力を制御する(ステップS7)。
【0078】
本実施の形態では、制御装置40は、新たな印刷ジョブを受信し、新たに印刷を開始する度に、ステップS1~S7の処理を行う。なお、ステップS1~S7の処理頻度は、上記頻度に限定されず、2回以上の所定の印刷回数毎、又は所定の時間毎等の予め定められた周期であってもよい。これらの場合、制御装置40は、ステップS1~S7において決定された定着電力の制限量及び制御周期を保持し、ステップS1~S7の処理を行わない印刷時に使用してもよい。
【0079】
<実施例>
実施の形態1に係る実施例の画像形成装置1により複数枚の用紙を連続的に印刷するケースと、比較例の画像形成装置により複数枚の用紙を連続的に印刷するケースとについて、定着装置の定着ローラの温度である定着温度の状態を比較検討した結果を示す。
【0080】
実施例の画像形成装置1は、1枚目の給紙開始時点までに定着ヒータ51及び52により定着ローラ331a及び331bを目標温度まで昇温し、昇温後から2枚目の排紙完了まで、予め設定された一定の制限定着電力値を上限とする定着電力の制御を行う。その後、画像形成装置1は、2枚目の排紙完了までの二次側電力の検出結果から算出された周期性のある制限定着電力値を上限とする定着電力の制御を行う。
【0081】
比較例の画像形成装置は、1枚目の給紙開始時点までに定着ヒータにより定着ローラを目標温度まで昇温し、昇温後、一定の制限定着電力値を上限とする定着電力の制御を行う。このような制限定着電力値は、二次側電力値との和が画像形成装置の定格電力を超えないようにマージンをとって設定されるため、実施例における制限電力波形の極小値(NRP-L1a)以下となる。
【0082】
図9Aは、実施の形態1に係る画像形成装置1の実施例における印刷時の定着温度の経時的変化の一例を示す図である。図9Bは、比較例の画像形成装置における印刷時の定着温度の経時的変化の一例を示す図である。図9A及び図9Bにおいて、横軸は経過時間(単位:秒)を示し、縦軸は定着温度(単位:℃)を示す。
【0083】
図9Bに示すように、比較例では、定着ローラの実温度である定着の実温度は、定着ローラの熱が用紙に吸収されるため、給紙開始直後から下降を続け、3枚目の排紙完了以後、目標温度を下回る。これにより、用紙への定着が不完全になる可能性があるため、印刷速度を低下させる必要がある。
【0084】
一方、図9Aに示すように、実施例では、定着の実温度は、給紙開始後から2枚目の排紙完了までは下降するが、定着電力の制御が変わる2枚目の排紙完了以後、下降をやめ、目標温度以上で略一定の温度を維持する。これにより、用紙への定着が良好且つ安定する。これは、二次側電力の変動にあわせて、できるだけ大きい定着電力が確保されるためである。
【0085】
また、画像形成装置の比較例として、定着温度の低下を抑制するために、定着ローラ温度が目標温度に達しても即座に給紙を行わず、定着ローラでの蓄熱を一定時間行った後に給紙を行うものもある。この画像形成装置では、1枚目の排紙完了までに要する時間が長くなる傾向がある。一方、実施例の画像形成装置1は、1枚目の排紙完了までの時間を短縮しつつ、複数の用紙への印刷中、定着温度を目標温度以上に維持することができる。
【0086】
<効果等>
上述したように実施の形態1に係る制御装置40は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成装置1の制御装置である。制御装置40は、画像形成装置1において消費される消費直流電力値としての二次側電力値を取得する取得部401と、少なくとも1つの用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性を推定する推定部402と、用紙に画像を定着させる画像形成装置1の定着部としての定着装置330に供給される定着電力の制限値を、二次側電力値の特性に対応する周期性を有するように決定する決定部403とを備える。また、実施の形態1に係る画像形成装置1は、上記のような制御装置40を備える。
【0087】
上記構成によると、制御装置40は、定着電力の制限値を、一定値ではなく、二次側電力値の特性に対応する周期性を有するように決定する。このような定着電力の制限値は、二次側電力値の増減に合わせて周期的に変化するように決定されることができる。例えば、一般的に、画像形成装置1には定格電力が設定され、画像形成装置1の全ての構成要素は、定格電力内で配分された電力を消費することができる。二次側電力値の増減に合わせて変化する定着電力の制限値は、定格電力内における配分量を大きくすることできる。よって、定着ヒータ51及び52が使用可能な電力の増大が可能になる。
【0088】
また、実施の形態1に係る制御装置40において、推定部402は、少なくとも1つの用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の振幅及び周期を推定し、決定部403は、二次側電力値の振幅及び周期に対応する定着電力の制限値の振幅及び周期を決定してもよい。上記構成によると、定着電力の制限値の決定処理が簡略になる。さらに、例えば、画像形成装置1の定格電力内において、二次側電力値の電力波形と相補するように、定着電力の制限値の電力波形を決定することができる。よって、定着電力の制限値の増大が可能になる。
【0089】
また、実施の形態1に係る制御装置40において、定着電力は周期性を有し、定着電力の制限値の1周期は、定着電力の周期の整数倍であってもよい。上記構成によると、制御装置40は、定着電力の制限値の1周期内に含まれる整数個の周期の定着電力を、定着電力の制限値を上限値として決定することができる。このとき、定着電力の周期を変更せずに、定着電力の大きさを調節することが可能である。よって、制限値に合わせた定着電力の調整処理が簡略になる。
【0090】
また、実施の形態1に係る制御装置40において、推定部402は、少なくとも2つの用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性を推定してもよい。上記構成によると、推定部402が二次側電力値の特性を推定する対象の期間が長くなるため、推定精度の向上が可能になる。
【0091】
また、実施の形態1に係る制御装置40において、決定部403は、推定部402が二次側電力値の特性を推定する対象の期間における定着電力の制限値を、予め設定された制限値に決定してもよい。上記構成によると、制御装置40は、二次側電力値の特性を推定する対象の期間においても、制限値に従って制御する定着電力を、定着ヒータ51及び52に供給することができる。よって、制御装置40は、用紙への画像の形成を遅延なく行うことができる。
【0092】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る制御装置40は、複数枚の用紙を連続して印刷している間、二次側電力に基づく制限定着電力の決定後、二次側電力と定着電力との和が定格電力を超えないように、定着電力を制御する。実施の形態2に係る制御装置は、複数枚の用紙を連続して印刷している間、二次側電力と制限定着電力との和が定格電力を超えると、新たな制限定着電力を決定する点で、実施の形態1と異なる。以下、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を中心に説明し、実施の形態1と同様の点の説明を適宜省略する。
【0093】
実施の形態2に係る画像形成装置及び制御装置の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態2に係る画像形成装置、制御装置及びこれらの構成要素の符号を、実施の形態1と同じとする。以下において、実施の形態2に係る画像形成装置1及び制御装置40の構成の説明を省略し、制御装置40の動作を説明する。図10は、実施の形態2に係る画像形成装置1の動作の一例を示すフローチャートである。図10は、複数枚の用紙を連続して印刷するケースを示す。図10に示すように、実施の形態2に係る制御装置40は、実施の形態1と同様に、ステップS1~S7の処理を行い、さらに、ステップS7の処理に引き続いて、ステップS21~S29の処理を行う。
【0094】
ステップS21において、制御装置40は、複数枚の用紙を連続して印刷している間、DC電力検出装置60から二次側電力の検出値及びその検出時刻をリアルタイムに取得する。
【0095】
次いで、ステップS22において、制御装置40は、同じ時刻の二次側電力の検出値と制限定着電力値との和が画像形成装置1の定格電力を超過する否かを判定する(ステップS22)。制御装置40は、超過する場合(ステップS22でYes)、ステップS23に進み、超過しない場合(ステップS22でNo)、ステップS28に進む。
【0096】
ステップS23において、制御装置40は、現在設定されている制限定着電力に基づく電力制御に従って、定着ヒータ51及び52の定着電力を制御する。
【0097】
そして、制御装置40は、実施の形態1のステップS3~S6と同様のステップS24~S27の処理を行うことによって、上記超過時点から所定数の用紙の印刷が完了するまでの間の二次側電力の検出値に基づき、定着ヒータ51及び52の定着電力の制限量及び制御周期を算出し、これらを新たな定着電力の制限量及び制御周期に決定する。なお、ステップS25における所定数は、ステップS4における所定数と同じであるが、異なっていてもよい。また、定着電力の制限量及び制御周期の算出に用いる二次側電力の検出値は、上記超過時点よりも前の時点又は後の時点から所定数の用紙の印刷が完了するまでの期間の検出値であってもよい。これにより、算出結果の出力時期を調節することができる。
【0098】
さらに、ステップS28において、制御装置40は、現在設定されている制限定着電力に基づく電力制御に従って、定着ヒータ51及び52の定着電力を制御する。
【0099】
次いで、ステップS29において、制御装置40は、予定されている枚数の用紙の印刷が完了したか否か、つまり印刷が終了したか否かを判定する。制御装置40は、終了している場合(ステップS29でYes)、一連の処理を終了し、終了していない場合(ステップS29でNo)、ステップS21に戻る。
【0100】
上述のような実施の形態2に係る制御装置40によると、実施の形態1と同様の効果が得られる。さらに、実施の形態2に係る制御装置40は、二次側電力値と定着電力の制限値との和が画像形成装置1の定格電力を超える場合、少なくとも1つの用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性を新たに推定し、新たに推定された二次側電力値の特性に基づき、定着電力の制限値を新たに決定してもよい。上記構成によると、制御装置40は、高い精度で制限定着電力を二次側電力に対応させることができる。よって、定着電力の増大が可能になる。
【0101】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態の例について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば、各種変形を実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0102】
例えば、実施の形態に係る制御装置40は、2枚の用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性に基づき、定着電力の制限値を決定していたが、これに限定されない。制御装置40は、1枚の用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性に基づき、又は、3枚以上の用紙に画像を形成する期間における二次側電力値の特性に基づき、定着電力の制限値を決定してもよい。
【0103】
また、実施の形態に係る制御装置40は、画像形成装置1の定格電力から二次側電力を減算したものを定着電力の制限値としていたが、これに限定されない。画像形成装置1において、定着ヒータ以外に交流電力を消費する構成要素がある場合、当該構成要素の消費電力も考慮に入れてもよい。
【0104】
また、本発明は、制御方法も含む。例えば、制御方法は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、前記画像形成装置において消費される直流電力値である消費直流電力値を取得し、少なくとも1つの前記記録媒体に画像を形成する期間における前記消費直流電力値の特性を推定し、前記記録媒体に画像を定着させる前記画像形成装置の定着部に供給される電力である定着電力の制限値を、前記消費直流電力値の特性に対応する周期性を有するように決定し、前記定着電力の制限値を上限として、前記定着電力を前記定着部に供給する指令を出力する。この制御方法によれば、実施の形態に係る制御装置40と同様の効果が得られる。このような制御方法は、CPU、LSIなどの回路、ICカード又は単体のモジュール等によって、実現されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 画像形成装置
40 制御装置
51,52 定着ヒータ
60 DC電力検出装置
330 定着装置(定着部)
331a,331b 定着ローラ
401 取得部
402 推定部
403 決定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【文献】特開2004-249855号公報
図1
図2
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図4
図5
図6
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図8
図9A
図9B
図10