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特許7099146画像読取装置、画像形成装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/409 20060101AFI20220705BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20220705BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H04N1/409
H04N1/10
G06T5/00 705
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018144279
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020010306
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2018127180
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中重 文宏
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 卓治
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-283773(JP,A)
【文献】特開平07-023226(JP,A)
【文献】特開2004-227225(JP,A)
【文献】特開2011-191918(JP,A)
【文献】特開2011-109318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/409
H04N 1/10
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象の原稿に対して照明光を照射して撮像素子で撮影する画像読取装置において、
撮影画像の注目画像領域に対する周辺画像の濃度の影響を、当該周辺画像の読取値と第1の関数との累積演算値を係数とし、前記周辺画像の読取値と第2の関数の累積演算値とを加算値として、前記注目画像領域の読取画像信号を補正し、
前記第1の関数は、前記注目画像領域に対する前記周辺画像の濃度による照明光量の増加分を表す関数である、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
撮影対象の原稿に対して照明光を照射して撮像素子で撮影する画像読取装置において、
撮影画像の注目画像領域に対する周辺画像の濃度の影響を、当該周辺画像の読取値と第1の関数との累積演算値を係数とし、前記周辺画像の読取値と第2の関数の累積演算値とを加算値として、前記注目画像領域の読取画像信号を補正し、
前記第2の関数は、前記注目画像領域に相当する前記撮像素子に対する前記周辺画像の濃度による読取光量分を表す関数である、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
前記第1の関数は、
前記注目画像領域に対する前記周辺画像の濃度による照明光量の増加分を表す関数である、
ことを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取った撮影画像の画像形成を行う画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
撮影対象の原稿に対して照明光を照射して撮像素子で撮影する画像読取装置を制御するコンピュータを、
撮影画像の注目画像領域に対する周辺画像の濃度の影響を、当該周辺画像の読取値と第1の関数との累積演算値を係数とし、前記周辺画像の読取値と第2の関数の累積演算値とを加算値として、前記注目画像領域の読取画像信号を補正する手段として機能させ
前記第1の関数は、前記注目画像領域に対する前記周辺画像の濃度による照明光量の増加分を表す関数である、
プログラム。
【請求項6】
撮影対象の原稿に対して照明光を照射して撮像素子で撮影する画像読取装置を制御するコンピュータを、
撮影画像の注目画像領域に対する周辺画像の濃度の影響を、当該周辺画像の読取値と第1の関数との累積演算値を係数とし、前記周辺画像の読取値と第2の関数の累積演算値とを加算値として、前記注目画像領域の読取画像信号を補正する手段として機能させ、
前記第2の関数は、前記注目画像領域に相当する前記撮像素子に対する前記周辺画像の濃度による読取光量分を表す関数である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スキャナと呼ばれる画像読取装置においては、原稿画像を正確に量子化して階調値にデータ化することが求められる。一方で、画像読取装置において、フレア現象と呼ばれる読取階調値誤差が生じることが知られている。読取階調値誤差は、周辺画像濃度の違いによって、撮影画像の注目画像領域における読取階調値に発生する誤差である。
【0003】
従来、このような読取階調値誤差を画像処理的に補正する技術がある。特許文献1には、画像読取装置の原稿面付近でフレア状態を検出し、その検出したフレア状態(関数)を用いて、フレア現象による誤差を補正する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術によれば、原稿画像の白画像に影響される白フレア現象をソフトウェアで補正する手段として有効である。しかしながら、従来の技術によれば、補正に必要なフレア分布の取得に手間がかかり、さらに読取画像の濃度が高い時に影響される黒フレア現象の補正ができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、白フレア現象および黒フレア現象に対する補正を行い、より高精度に原稿の画像濃度を読み取ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、撮影対象の原稿に対して照明光を照射して撮像素子で撮影する画像読取装置において、撮影画像の注目画像領域に対する周辺画像の濃度の影響を、当該周辺画像の読取値と第1の関数との累積演算値を係数とし、前記周辺画像の読取値と第2の関数の累積演算値とを加算値として、前記注目画像領域の読取画像信号を補正し、前記第1の関数は、前記注目画像領域に対する前記周辺画像の濃度による照明光量の増加分を表す関数である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、白フレア現象および黒フレア現象に対する補正を行い、より高精度に原稿の画像濃度を読み取ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる画像形成装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、画像読取装置の構成を概略的に示す図である。
図3図3は、画像読取装置における黒フレア現象を示す説明図である。
図4図4は、フレア現象が発生している読取画像を例示的に示す図である。
図5図5は、画像読取装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図6図6は、画像読取装置における基本的な用語について解説する図である。
図7図7は、白フレア補正のためのデータを示すグラフである。
図8図8は、黒フレア補正のためのデータを示すグラフである。
図9図9は、黒フレア補正データ取得、および、白フレア補正データ取得に用いる基準チャート例を示す図である。
図10図10は、評価領域読取値分布を示すグラフである。
図11図11は、黒フレア補正データ取得、および、白フレア補正データ取得に用いる基準チャート例を示す図である。
図12図12は、補正計算の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像読取装置、画像形成装置およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる画像形成装置1の構成を概略的に示す図である。図1において、画像形成装置1は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機(MFP:Multifunction Peripheral/Printer/Product)と称されるものである。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置1は、本体2と原稿自動送り装置(以下、ADFという)3とを有する。本体2は、原稿の画像を読み取る画像読取装置5と、書込ユニット6とエンジン部7及び給紙ユニット8とからなる画像形成部9を有する。ADF3は読み取る原稿を画像読取装置5に送り、画像読取装置5で読み取った原稿を回収する。画像形成部9は、画像読取装置5で読み取った撮影画像の画像形成を行う。
【0012】
次に、画像読取装置5について説明する。
【0013】
図2は、画像読取装置5の構成を概略的に示す図である。図2に示すように、画像読取装置5は、フラットベット方式の画像読取装置を適用したものである。図2に示すように、画像読取装置5は、第1の走行体15と、第2の走行体17と、レンズ20と、ラインセンサ21とを備えている。
【0014】
第1の走行体15は、コンタクトガラス10に載置された原稿11に読取用の光を照射する光源12とリフレクタ13及び第1ミラー14を有する。
【0015】
第2の走行体17は、第2ミラー16a、第3ミラー16bを有する。読取レンズ20は、第2の走行体17の第3ミラー16bからの光を集光する。ラインセンサ21は、読取レンズ20で集光した光を入射する。ラインセンサ21には、CMOS(Complementary MOS)やCCD(Charge Coupled Device)が撮像素子として用いられる。
【0016】
第1の走行体15と第2の走行体17とは、駆動モータの回転によりコンタクトガラス10と平行に移動する。
【0017】
フラットベット方式の画像読取装置5には、大別すると2つの読み取り方式がある。第1の方式は、読取対象である原稿11をADF3が1方向に移動させながらラインセンサ21が原稿画像を2次元に読み取る方式である。第2の方式は、原稿11がコンタクトガラス10に載置され、1方向にラインセンサ21を含む読取系が移動することによって原稿画像を2次元読み取る方式である。さらに、光学系には縮小光学系と、等倍光学系の2種類が知られている。これらの何れの方式の画像読取装置においても、原稿面を照明する光源12を内蔵している。本実施の形態は、これらいずれの方式を含む画像読取装置も対象とする。
【0018】
画像読取装置においては、原稿画像を正確に量子化して階調値にデータ化することが求められる。一方で、画像読取装置において、フレア現象と呼ばれる読取階調値誤差が生じることが知られている。読取階調値誤差は、周辺画像濃度の違いによって、撮影画像の注目画像領域における読取階調値に発生する誤差である。本現象は以下の2つの物理現象によって生じている。
(1)原稿面での照明光の照り返しによる注目画像領域の照明光量の変動
(2)撮像素子内部での撮影光の拡散による撮影光の変動
【0019】
(1)の物理現象は、図2に示すように、原稿11を照明している光(1次照明光)が、原稿11の反射率に応じて反射した光(2次照明光)によって再度原稿11を照明する再照明現象により発生する。注目画像領域の反射率が高いほどこの照明光量変動の影響が大きい。本現象に対する補正方法については、特許文献1(特許第4159867号公報)などに示されるソフトウェアによる補正が提案されている。
【0020】
以下に、図2の説明と共に、白フレアの物理現象を解説する。
【0021】
光源12から原稿11に1次照明光として直接またはリフレクタ13を経由して照射され、読取領域の反射光の一部が読取光軸に従って、第1ミラー14、第2ミラー16a、第3ミラー16bを経由して読取レンズ20により、ラインセンサ21の撮像素子面に結像する。原稿11の表面を反射した1次照明光の一部が画像読取装置5の構成要素で反射して再度読取領域を照明する光を、2次照明光と呼ぶ。この2次照明光の強度は原稿11の表面での反射率(画像濃度)によって大きく変化することになる。つまり、本現象では、注目画像領域の周辺画像濃度によって、その照明光量が変化し、さらに注目画像領域の反射率が高いほど(濃度が低いほど)影響されることになる。このような現象は、原稿11の白画像に強く影響されることから、白フレア現象と呼ばれる。
【0022】
次に、(2)の物理現象である黒フレア現象について説明する。図3は、画像読取装置5における黒フレア現象を示す説明図である。
【0023】
(2)の物理現象は、図3に示すように、原稿11の画像から読取レンズ20によって生じた結像光がラインセンサ21の撮像素子21bにまで到達して、ラインセンサ21のガラス21aでその一部が反射し、乱反射光として再度ラインセンサ21の撮像素子21bに到達することにより生じる。
【0024】
この現象の場合、乱反射光が入射した部位への結像光の入射光量には無関係に、乱反射光が生じた部位への入射光量だけで決定される。また、本現象により生じる読取値変動は、白フレア現象によるものに対しては相対的に小さいことが知られている。また、注目画像領域の濃度に関係なく周囲原稿濃度の違いにより生じている。
【0025】
画像読取装置5に搭載するラインセンサ21の撮像素子21bは基本的に入射した光量に比例して信号値を出力するのに対して、人の認識は濃度や明度などの指標があるとおり、光量の対数や1/3乗と比例すると言われている。そのため特に人の眼は暗い側の画像(高濃度)に感度が高く、光量リニアな画像読取値のわずかな値の差で、濃度値換算すると大きな違いが生じてしまう。つまり、本現象では、読取画像が黒いとき(濃度が高いとき)大きく影響することから、黒フレア現象と呼ばれている。
【0026】
上述したような2つのフレア現象に共通しているのは、読取対象の画像に対してその周辺濃度で読取値が変動してしまうということであり、特に正確に画像読取が必要な画像検査装置などでは、大きな撮影誤差となってしまうことが、分かっている。
【0027】
図4は、フレア現象が発生している読取画像を例示的に示す図である。
【0028】
図4に示すように、原稿画像に対して、白フレアの発生部位は中央が黒ずみ、黒フレアの発生部位はやや白みがかる。周辺が黒く中央部が黒ずんでしまう白フレア現象は、全面が白の基準画像を対象に画像読取装置5がシェーディング処理を行っているためである。このシェーディング状態は白フレアが最大限に発生する。この状態を基準とするため、両側が黒い原稿の中央部は2次照明光がほとんど無いことによる暗さとなり、黒ずんでしまうことになる。逆に下段黒パッチ部には黒フレア現象が発生し、周辺の白部の照明光がラインセンサ21の撮像素子内部で多重反射して、黒パッチをやや白く読み取っている。
【0029】
次に、画像読取装置5が備える制御系について説明する。
【0030】
図5は、画像読取装置5の制御部41の構成を示すブロック図である。図5に示すように、画像読取装置5の制御部41は、中央制御部42と、A/D変換部43と、シェーディング補正部44、画像信号生成部45と、演算処理部46と、プログラム記憶部47と、データ記憶部48と、補正データ記憶部49と、画像処理部50と、外部出力部51と、外部記憶媒体制御部52と、を有する。
【0031】
中央制御部42は、画像読取装置5全体の動作を制御するCPUを有し、原稿11の画像を読み取り印刷するときに操作表示部53から入力する各種印刷条件で装置全体の動作を管理する。
【0032】
A/D変換部43は、ラインセンサ21から送られた信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をシェーディング補正部44に送る。
【0033】
シェーディング補正部44は、A/D変換部43で変換したデジタル信号についてシェーディング補正を実行する。
【0034】
画像信号生成部45は、画像データをデータ記憶部48に格納する。
【0035】
演算処理部46は、データ記憶部48に格納した画像データに対して所定の演算処理を実行する。
【0036】
プログラム記憶部47は、例えば、フレア補正データの計測とフレア補正の処理プログラムを記憶する。
【0037】
本実施の形態の画像形成装置1で実行されるフレア補正データの計測とフレア補正の処理プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0038】
また、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるフレア補正データの計測とフレア補正の処理プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるフレア補正データの計測とフレア補正の処理プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0039】
本実施の形態の画像形成装置1で実行されるフレア補正データの計測とフレア補正の処理プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0040】
データ記憶部48は、画像データなどを記憶する。補正データ記憶部49は、例えばフレア補正データを記憶する。
【0041】
画像処理部50は、画像認識部54と変倍部55とフィルタ部56とγ補正部57及び階調処理部58を有する。
【0042】
外部記憶媒体制御部52は、フレキシブルディスクや光ディスク等の外部記憶媒体59からの入出力を制御する。
【0043】
次に、上述した白フレアおよび黒フレアを補正するための処理を説明する。
【0044】
演算処理部46は、プログラム記憶部47に格納されたフレア補正データの計測の処理プログラムに従って動作することにより、白フレアおよび黒フレアを補正するためのフレア補正データをあらかじめ計測し、補正データ記憶部49に格納する。また、演算処理部46は、プログラム記憶部47に格納されたフレア補正の処理プログラムに従って動作することにより、補正データ記憶部49に格納されたフレア補正データに基づいて白フレアおよび黒フレアを補正する。
【0045】
まず、白フレアおよび黒フレアに対する基本的な補正に対する考え方を以下に示す。図6は、画像読取装置5における基本的な用語について解説する図である。画像読取装置5の画像読取領域は、ライン読取する「主走査」と、ライン読取動作が走査する「副走査」の2つの方向が定義される。画像読取装置5に内蔵される光源12は、ライン読取領域のみ照明し、これが走査されるとともに移動して、その位置関係を維持する。
【0046】
次に、白フレアの補正方法について説明する。図7は、白フレア補正のためのデータを示すグラフである。図7(a)は白フレア関数範囲の分布を示し、図7(b)は白フレア関数強度値の分布を示すものである。図7において、Hwは主走査方向のフレア範囲を示す。Aは副走査方向における後側フレア範囲、Bは副走査方向における前側フレア範囲を示す。
【0047】
図7(a)に示すグラフの横軸は副走査方向、縦軸は主走査方向を示している。図7(a)におけるひし形中央を注目読取位置とする。図7(a)に示すグラフは、その注目読取位置に対するフレアの影響度(%)を階調で示しているフレア分布グラフとなる(黒ほど影響度が高い)。
【0048】
フレアの影響度とは、読取位置に対する照明光量変動量を示しており、中央の注目読取位置に対して、ひし形内部の各ポイントでの原稿読取値が、その影響度に応じて読取値に影響するということになる。このひし形形状は、一般的に主走査方向は対称だが、図7(a)のA,Bのように副走査方向はフレアに影響する光学系が対象ではないため異なるものとなっている。
【0049】
さらに、図7(b)に示すグラフに示される総体積(Wmax)が白フレアの影響度の総量となる。
【0050】
次に、黒フレアの補正方法について説明する。図8は、黒フレア補正のためのデータを示すグラフである。図8(a)は黒フレア関数範囲の分布を示し、図8(b)は黒フレア関数強度値の分布を示すものである。図8において、Hbは主走査方向のフレア範囲を示す。Cは副走査方向における前側フレア範囲、Dは副走査方向における後側フレア範囲を示す。
【0051】
図8(a)に示すグラフの横軸は副走査方向、縦軸は主走査方向を示している。図8(a)におけるひし形中央を注目読取位置とする。その注目読取位置に対するフレアの影響度(%)を階調で示しているフレア分布グラフとなる(黒ほど影響度が高い)。
【0052】
フレアの影響度とは、読取位置に対する周辺からの入射光量を示しており、中央の注目読取位置に対して、ひし形内部の各ポイントでの原稿読取値が、その影響度に応じて読取値に影響するということになる。このひし形形状は、一般的に主走査方向は対称だが、図8(a)のC,Dのように副走査方向はフレアに影響する光学系が対象ではないため異なるものとなっている。
【0053】
さらに、図8(b)に示すグラフに示される総体積(Bmax)が黒フレアの影響度の総量となる。
【0054】
この両者のフレア現象は、前述の通り白フレア現象は“掛け算”であり、黒フレア現象は“足し算”であることから、統一した処理はできない。この現象を元にした簡易的な読み取り画像信号値の計算モデル式を以下に示す。
読取画像信号=(白フレア影響度+1.0)×真の読取画像信号+黒フレア影響値
真の読取画像信号=(読取画像信号-黒フレア影響値)/(白フレア影響度+1.0)
【0055】
白フレア影響度(白フレア関数:第1の関数)は、原稿読取位置周辺で反射したフレア照明光比である。すなわち、白フレア影響度(白フレア関数:第1の関数)は、周辺画像濃度による照明光量の増加分を表す関数である。
【0056】
黒フレア影響値(黒フレア関数:第2の関数)は、読取撮像素子周辺で反射したフレア光による加算値である。すなわち、黒フレア影響値(黒フレア関数:第2の関数)は、注目画像領域に相当する撮像素子に対する、周辺画像濃度による読取光量分を表す関数である。
【0057】
上記の白フレア影響度と黒フレア影響値は、周辺データの総和である。この周辺範囲は、白フレア現象と、黒フレア現象とで、範囲(主走査方向の画像範囲)は異なることから、これらを統合した各フレアを補正する計算式(1)は、以下の通りとなる。
【0058】
【数1】
【0059】
次に、白フレアおよび黒フレアについての各フレア補正データの取得方法について、以下に説明する。
【0060】
図9は、黒フレア補正データ取得、および、白フレア補正データ取得に用いる基準チャート例を示す図である。なお、図9には寸法が記載されているが、A3画像を例にとった一例である。
【0061】
図9に示すように、白フレア補正データ取得には、主走査フレア分布用の基準チャートX1と、副走査フレア分布用の基準チャートYとが用いられる。主走査フレア分布用の基準チャートX1は、副走査方向に開いていく白三角形パターンである。副走査フレア分布用の基準チャートYは、副走査方向に対して交互に表れる白黒帯パターンである。
【0062】
一方、図9に示すように、黒フレア補正データ取得には、主走査フレア分布用の基準チャートX2と、副走査フレア分布用の基準チャートYとが用いられる。主走査フレア分布用の基準チャートX2は、副走査方向に開いていく黒三角形パターンである。副走査フレア分布用の基準チャートYは、白フレアで用いるものと同じである。
【0063】
演算処理部46は、これらのチャートX1,Y,X2を読み取った画像データを用いて、図7(a)に示すHw/A/B、及び、図8(a)に示すHb/C/Dの値を算出する。
【0064】
作業者は、フレア分布を取得したい画像読取装置5に上記チャートX1,Y,X2を読み取らせる。演算処理部46は、その読取画像データから、評価領域Oのデータを取り出し、評価領域読取値を算出する。
【0065】
ここで、図10は評価領域読取値分布を示すグラフである。演算処理部46は、図10中に示す範囲で、白フレア関係の特性値Hw/A/B及び、黒フレア関係の特性値Hb/C/D値を導出する。
【0066】
具体的には、白フレアの主走査フレア範囲(Hw)は、図10に示す評価領域読取値分布の傾斜部分(副走査方向の白フレア影響範囲)の幅に該当する主走査サイズである。また、白フレアの副走査フレア範囲(A,B)は、図10に示す評価領域読取値分布の画像信号が高い部分の傾斜部分(主走査方向の白フレア影響範囲)の幅に該当する副走査サイズである。
【0067】
黒フレアの主走査フレア範囲(Hb)は、図10に示す評価領域読取値分布の傾斜部分(副走査方向の黒フレア影響範囲)の幅に該当する主走査サイズである。また、黒フレアの副走査フレア範囲(C,D)は、図10に示す評価領域読取値分布の画像信号が低い部分の傾斜部分(主走査方向の白フレア影響範囲)の幅に該当する副走査サイズである。
【0068】
続いて、Wmax及びBmaxの算出手法について説明する。
【0069】
図11は、黒フレア補正データ取得、および、白フレア補正データ取得に用いる基準チャート例を示す図である。
【0070】
図11に示すように、Wmax及びBmaxのデータ取得には、基準チャートZが用いられる。基準チャートZは、副走査方向(搬送方向)において白エリアZ1と黒エリアZ2とが別々に形成されたパターンである。図11に示すように、白エリアZ1である黒フレア評価領域には、黒地の小エリアJが設けられている。なお、エリアHは、白エリアZ1の所定の領域である。また、図11に示すように、黒エリアZ2である白フレア評価領域には、白地の小エリアIが設けられている。なお、エリアKは、黒エリアZ2の所定の領域である。
【0071】
作業者は、フレア分布を取得したい画像読取装置5に上記チャートZを読み取らせる。Wmax及びBmaxは最大フレア量と考えれば良いことから、演算処理部46は、基準チャートZにおけるH,I,J,Kのポイントの読取値を用いて、以下の計算式でWmax及びBmaxを求める。
Wmax=H/I
Bmax=J-K
【0072】
以上の処理によって、白フレア及び黒フレアのフレア補正データを算出する。
【0073】
なお、本算出処理は、生産する画像読取装置(スキャナ)の1台ごとに実施しても良いが、画像読取装置の品質が安定していれば、特に1台ごとに実施する必要は無く、代表の数台の平均値で十分である。
【0074】
また、本補正関数は、補正対象の画像読取装置がRGB読取のカラー画像読取装置である場合、RGB画像ごとに補正関数を持つことになる。
【0075】
実際の補正計算の概要を図12に示す。図12は、補正計算の概要を示す図である。図12に示すように、真の読取画像信号は下記式により表すことができる。
V´=(V-B)/(W+1.0)
V´:真の読取画像信号
V :読取画像信号
B :黒フレア影響値
W :白フレア影響度
【0076】
なお、注目画素が端の場合、関数範囲内に画像データが無い場合、画像データがグレー値(60/255など)で補完する。本来、撮影範囲外は照明が当たらず、さらに金属フレーム等であることが多いため、この程度で対応が可能である。
【0077】
このように本実施の形態によれば、画像濃度の低いところと、高いところに対するフレアの影響を同時に補正できることで、画像の全階調を補正できるようになり、さらに異なる関数を用いることで、原因の異なる条件でも適用が可能になる。これにより、原稿面付近でのフレア現象の補正とともに、撮像素子内で発生するフレア現象に対する補正を、異なる2つの関数を用いて1つの式で行い、より高精度に原稿の画像濃度を読み取ることができる。
【0078】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置1を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 画像形成装置
5 画像読取装置
9 画像形成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【文献】特許第4159867号公報
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図12