(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】電子部品用洗浄水製造システム及び電子部品用洗浄水製造システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220705BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
C02F1/68 510A
C02F1/68 530K
C02F1/68 530L
C02F1/68 520B
C02F1/68 520C
(21)【出願番号】P 2018156688
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-76589(JP,A)
【文献】特開2016-76588(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042933(WO,A1)
【文献】特開2003-136077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C02F 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水供給部とユースポイントとを連通する移送ラインと、
前記移送ラインの下流側にある分岐点で分岐し、上流側にある合流点で合流する返送ラインと、
前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続され、前記移送ラインへ供給した原料水に機能性物質を添加して洗浄水を製造する機能性物質添加装置と、
前記移送ラインにおいて前記合流点の下流側に接続され、前記洗浄水の物性を測定する物性測定装置と、
前記返送ラインに設けられ、前記洗浄水を貯留可能な貯留タンクと、
前記洗浄水の流通経路を制御する制御手段とを備える電子部品用洗浄水製造システム。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合には、前記洗浄水を前記返送ラインを経由して前記貯留タンクに貯留するように制御し、
前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記貯留タンクに貯留された前記洗浄水を前記移送ラインへ供給するように制御する請求項1に記載の電子部品用洗浄水製造システム。
【請求項3】
前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続される第一流量計と、
前記返送ラインにおいて前記貯留タンクの下流側に接続される第二流量計とをさらに備え、
前記制御手段が、前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記第一流量計の測定値及び前記第二流量計の測定値に基づき、前記移送ラインで製造する洗浄水の量を制御する請求項1又は請求項2に記載の電子部品用洗浄水製造システム。
【請求項4】
前記機能性物質と前記物性測定装置との組み合わせが、導電性付与物質と導電率計、酸化還元電位調整物質とORP計、pH調整物質とpH計、ガスとガス濃度計からなる群より選ばれる一種又は二種以上である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子部品用洗浄水製造システム。
【請求項5】
原料水供給部とユースポイントとを連通する移送ラインと、
前記移送ラインの下流側にある分岐点で分岐し、上流側にある合流点で合流する返送ラインと、
前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続され、前記移送ラインへ供給した原料水に機能性物質を添加して洗浄水を製造する機能性物質添加装置と、
前記移送ラインにおいて前記合流点の下流側に接続され、前記洗浄水の物性を測定する物性測定装置と、
前記返送ラインに設けられ、前記洗浄水を貯留可能な貯留タンクと、
前記洗浄水の流通経路を制御する制御手段とを備える電子部品用洗浄水製造システムの運転方法であって、
前記ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、前記洗浄水を前記移送ラインを経由して前記ユースポイントへ移送することを特徴とする電子部品用洗浄水製造システムの運転方法。
【請求項6】
前記制御手段が、
前記ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合には、前記洗浄水を前記返送ラインを経由して前記貯留タンクに貯留するように制御し、
前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記貯留タンクに貯留された前記洗浄水を前記移送ラインへ供給するように制御する請求項5に記載の電子部品用洗浄水製造システムの運転方法。
【請求項7】
前記電子部品用洗浄水の製造システムが、
前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続される第一流量計と、
前記返送ラインにおいて前記貯留タンクの下流側に接続される第二流量計とをさらに備え、
前記制御手段が、前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記第一流量計の測定値及び前記第二流量計の測定値に基づき、前記移送ラインで製造する洗浄水の量を制御する請求項5又は請求項6に記載の電子部品用洗浄水製造システムの運転方法。
【請求項8】
前記機能性物質と前記物性測定装置との組み合わせが、導電性付与物質と導電率計、酸化還元電位調整物質とORP計、pH調整物質とpH計、ガスとガス濃度計からなる群より選ばれる一種又は二種以上である請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の電子部品用洗浄水製造システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶、有機EL等の電子部品の製造工程において用いられる電子部品用洗浄水製造システム及び電子部品用洗浄水製造システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、有機EL等の電子部品の製造工程においては、半導体基板の材料となるシリコンウエハやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板等に付着したパーティクルや有機物等を除去するための洗浄が極めて重要である。シリコンウエハ等の洗浄方法としては、従来、原料水としての超純水にアンモニア等の導電性付与物質や過酸化水素等の酸化還元電位調整物質又は水素ガス等を溶解させた溶解水が使用されている。例えば、特許文献1には、密閉系で純水又は超純水に水素を溶解する水素溶解装置を備え、該装置により得られた水素溶解水を用いて半導体デバイスの洗浄、浸漬を行う製造装置が開示されている。また、特許文献2には、超純水に二酸化炭素やアンモニア等の導電性付与物質を溶解させた導電性水溶液を製造するにあたり、濃度の安定した導電性水溶液を製造することができる導電性水溶液製造装置が開示されている。
【0003】
製造された洗浄水は、洗浄水の製造装置からシリコンウエハ等の製造工場の複数のユースポイントに移送され、ウエハ処理に使用される。しかしながら、
図3に示すような従来の電子部品用洗浄水の製造装置では、ウエハ処理をしていないときでも洗浄水を製造しユースポイントへ移送し続けているのが通常である。そのため、添加する導電性付与物質等が大量に消費され、かつ膨大な量の廃液が生じてしまうという問題がある。
【0004】
上記問題を解決するために、ウエハ処理をしているときにのみ洗浄水を製造するという方法が考えられる。しかしながら、ウエハ処理をしているときにのみ洗浄水を製造してユースポイントへ移送することとした場合、洗浄水を設定条件で安定させるまでに数分から数十分の時間が必要となるため、その間にユースポイントへ移送された洗浄水はすべて廃棄されることになり、ウエハ処理をしていないときでもユースポイントへ洗浄水を移送し続ける場合ほどではないにしても、大量の廃液が生じてしまう。
【0005】
一方で、
図4に示すような、ウエハ処理に使用しない洗浄水を一旦タンクに貯留し、このタンクにウエハ処理に使用して減少した分の洗浄水を製造して補給する洗浄水の製造装置も提案されている。しかしながら、このような装置では、タンクに返送した洗浄水の溶液濃度が設定した溶液濃度と異なっていることが多く、返送した洗浄水が貯留されているタンクに新たに製造した洗浄水を補給すると、溶液濃度のばらつきが大きくなるという問題、すなわち溶液濃度の制御性が悪いという問題がある。そのため、例えば、タンクに混合のためのミキサー等を設ける必要があり、洗浄水の製造コストが増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-136077号公報
【文献】特開2016-076590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制しつつも、ユースポイントで使用する洗浄水の準備時間(洗浄水が設定条件で安定するまでの時間)を短縮することができる電子部品用洗浄水製造システム及び電子部品用洗浄水製造システムの運転方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、原料水供給部とユースポイントとを連通する移送ラインと、前記移送ラインの下流側にある分岐点で分岐し、上流側にある合流点で合流する返送ラインと、前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続され、前記移送ラインへ供給した原料水に機能性物質を添加して洗浄水を製造する機能性物質添加装置と、前記移送ラインにおいて前記合流点の下流側に接続され、前記洗浄水の物性を測定する物性測定装置と、前記返送ラインに設けられ、前記洗浄水を貯留可能な貯留タンクと、前記洗浄水の流通経路を制御する制御手段とを備える電子部品用洗浄水製造システムを提供する(発明1)。
【0009】
かかる発明(発明1)によれば、ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、製造した洗浄水をユースポイントへ移送し続けつつも、制御手段によって、ユースポイントで洗浄水を使用していない場合には、洗浄水を返送ラインを経由して一時的に貯留タンクに貯留するよう制御し、ユースポイントで洗浄水を使用している場合には、貯留タンクに貯留された洗浄水を移送ラインへ供給するよう制御することができる。これにより、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制できるとともに、ユースポイントで使用する洗浄水の準備時間(洗浄水が設定条件で安定するまでの時間)を短縮することができる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記制御手段が、前記ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合には、前記洗浄水を前記返送ラインを経由して前記貯留タンクに貯留するように制御し、前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記貯留タンクに貯留された前記洗浄水を前記移送ラインへ供給するように制御することが好ましい(発明2)。
【0011】
かかる発明(発明2)によれば、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制できることに加えて、貯留タンクから移送ラインへ供給された洗浄水と移送ラインで新たに製造された洗浄水とを移送ライン上で混合した上でその物性を定量的に測定することができるので、常に一定の物性値を有する洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続される第一流量計と、前記返送ラインにおいて前記貯留タンクの下流側に接続される第二流量計とをさらに備え、前記制御手段が、前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記第一流量計の測定値及び前記第二流量計の測定値に基づき、前記移送ラインで製造する洗浄水の量を制御することが好ましい(発明3)。
【0013】
かかる発明(発明3)によれば、制御手段によって、貯留タンクから移送ラインへ供給された洗浄水と移送ラインで新たに製造された洗浄水との合計量が、ユースポイントでの必要量に対して不足している場合には、その不足分を補充するよう、移送ラインで製造する洗浄水の量を制御することができるので、常に一定の流量の洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0014】
上記発明(発明1-3)においては、前記機能性物質と前記物性測定装置との組み合わせが、導電性付与物質と導電率計、酸化還元電位調整物質とORP計、pH調整物質とpH計、ガスとガス濃度計からなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい(発明4)。
【0015】
第二に本発明は、原料水供給部とユースポイントとを連通する移送ラインと、前記移送ラインの下流側にある分岐点で分岐し、上流側にある合流点で合流する返送ラインと、前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続され、前記移送ラインへ供給した原料水に機能性物質を添加して洗浄水を製造する機能性物質添加装置と、前記移送ラインにおいて前記合流点の下流側に接続され、前記洗浄水の物性を測定する物性測定装置と、前記返送ラインに設けられ、前記洗浄水を貯留可能な貯留タンクと、前記洗浄水の流通経路を制御する制御手段とを備える電子部品用洗浄水製造システムの運転方法であって、前記ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、前記洗浄水を前記移送ラインを経由して前記ユースポイントへ移送することを特徴とする電子部品用洗浄水製造システムの運転方法を提供する(発明5)。
【0016】
かかる発明(発明5)によれば、ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、製造した洗浄水をユースポイントへ移送し続けつつ、制御手段によって、ユースポイントで洗浄水を使用していない場合には、洗浄水を返送ラインを経由して一時的に貯留タンクに貯留するよう制御し、ユースポイントで洗浄水を使用している場合には、貯留タンクに貯留された洗浄水を移送ラインへ供給するよう制御することができる。よって、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制できるとともに、ユースポイントで使用する洗浄水の準備時間(洗浄水が設定条件で安定するまでの時間)を短縮することができる。
【0017】
上記発明(発明5)においては、前記制御手段が、前記ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合には、前記洗浄水を前記返送ラインを経由して前記貯留タンクに貯留するように制御し、前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記貯留タンクに貯留された前記洗浄水を前記移送ラインへ供給するように制御することが好ましい(発明6)。
【0018】
かかる発明(発明6)によれば、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制できることに加えて、貯留タンクから移送ラインへ供給された洗浄水と移送ラインで新たに製造された洗浄水とを移送ライン上で混合した上でその物性を定量的に測定することができるので、常に一定の物性値を有する洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0019】
上記発明(発明5,6)においては、前記電子部品用洗浄水製造システムが、前記移送ラインにおいて前記合流点の上流側に接続される第一流量計と、前記返送ラインにおいて前記貯留タンクの下流側に接続される第二流量計とをさらに備え、前記制御手段が、前記ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合には、前記第一流量計の測定値及び前記第二流量計の測定値に基づき、前記移送ラインで製造する洗浄水の量を制御することが好ましい(発明7)。
【0020】
かかる発明(発明6)によれば、制御手段によって、貯留タンクから移送ラインへ供給された洗浄水と移送ラインで新たに製造された洗浄水との合計量が、ユースポイントでの必要量に対して不足している場合には、その不足分を補充するよう、移送ラインで製造する洗浄水の量を制御することができるので、常に一定の流量の洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0021】
上記発明(発明5-7)においては、前記機能性物質と前記物性測定装置との組み合わせが、導電性付与物質と導電率計、酸化還元電位調整物質とORP計、pH調整物質とpH計、ガスとガス濃度計からなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい(発明8)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電子部品用洗浄水製造システム及び電子部品用洗浄水製造システムの運転方法によれば、ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、製造した洗浄水をユースポイントへ移送し続けつつも、制御手段によって、ユースポイントで洗浄水を使用していない場合には、洗浄水を返送ラインを経由して一時的に貯留タンクに貯留するよう制御し、ユースポイントで洗浄水を使用している場合には、貯留タンクに貯留された洗浄水を移送ラインへ供給するよう制御することができる。これにより、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制できるとともに、ユースポイントで使用する洗浄水の準備時間(洗浄水が設定条件で安定するまでの時間)を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における電子部品用洗浄水製造システムを示す模式的説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の電子部品用洗浄水製造システムにおける洗浄水の流通状態を示す模式的説明図であって、(a)はユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず洗浄水をユースポイントへ移送している状態、(b)はユースポイントで洗浄水を使用していない場合、(c)は(b)の後にユースポイントで洗浄水を使用している場合を示している。
【
図3】
図3は、比較例1-10で使用した従来の電子部品用洗浄水製造システムを示す模式的説明図である。
【
図4】
図4は、比較例11で使用した従来の電子部品用洗浄水製造システムを示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の電子部品用洗浄水製造システム及びこのシステムの運転方法の実施の形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。なお、
図2では、図面の簡略化のため、符号の表示を一部省略している。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0025】
〔電子部品用洗浄水製造システム〕
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品用洗浄水製造システム100を示す模式的説明図である。
図1に示す電子部品用洗浄水製造システム100は、原料水供給部とユースポイントとを連通する移送ラインL1と、移送ラインL1の下流側にある分岐点8で切替三方弁81を介して分岐し、上流側にある合流点9で合流する返送ラインL2とを備える。電子部品用洗浄水製造システム100は、
図2(a)に示すように、ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、洗浄水を移送ラインL1を経由してユースポイントへ移送し続けるものである。移送ラインL1には流通方向に沿って、第一流量計1、機能性物質添加装置2、物性測定装置3がこの順に設けられており、返送ラインL2には流通方向に沿って、貯留タンク4、第二流量計5、給水ポンプ6がこの順に設けられている。また、電子部品用洗浄水製造システム100は、洗浄水の流通経路を制御する制御手段7(不図示)を備えている。なお、原料水供給部から移送ラインL1への原料水の供給量は、移送ラインL1において第一流量計1より上流側に設けられた第一開閉弁10によって調整することができる。
【0026】
(原料水)
原料水としては、半導体、液晶、有機EL等の電子部品の洗浄に適する水質であるものが好ましく、例えば不純物を極限まで除去した超純水又は純水が好適に用いられる。本実施形態においては、原料水として超純水Wを使用している。
【0027】
〈機能性物質添加装置〉
機能性物質添加装置2は、移送ラインL1へ供給した超純水Wに機能性物質を添加して洗浄水W1を製造するものであって、移送ラインL1において合流点9の上流側に、第二開閉弁11を介して接続されている。なお、機能性物質は、導電性付与物質、酸化還元電位調整物質、pH調整物質、ガスからなる群より選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0028】
上記導電性付与物質としては、アンモニアや炭酸が挙げられるが、比較的安全性が高いアンモニアを用いることが好ましい。上記酸化還元電位調整物質としては、過酸化水素水等の液体やオゾンガス等のガス体が挙げられるが、酸素量の制御が比較的容易であることから過酸化水素水を用いることが好ましい。上記pH調整物質としては、アンモニアや炭酸が挙げられるが、比較的調整のし易いアンモニアを用いることが好ましい。上記ガスとしては、水素ガスや窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられるが、比較的安全性が高い水素ガスを用いることが好ましい。
【0029】
機能性物質添加装置2としては、超純水Wに機能性物質を添加して洗浄水W1を製造することができればよく、その方法は特に限定されるものではない。例えば、機能性物質が液体である場合には、移送ラインを流通する超純水Wにポンプを用いて添加する方法等を採用することができ、機能性物質がガス体である場合には、移送ラインを流通する超純水Wに直接バブリングする方法等を採用することができる。
【0030】
〈物性測定装置〉
物性測定装置3は、製造された洗浄水W1の物性を定量的に測定するものであって、移送ラインL1において合流点9の下流側に接続されている。物性測定装置3が合流点9の下流側に接続されていることにより、貯留タンクから移送ラインへ供給された洗浄水W1’と移送ラインで新たに製造された洗浄水W1’’とを移送ラインL1上で混合した上でその物性を定量的に測定することができるので、常に一定の物性値を有する洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0031】
物性測定装置3は、移送ラインL1を流通する洗浄水W1の物性を定量的に測定することができればよいため、機能性物質添加装置2が添加する機能性物質に合わせて採用すればよい。すなわち、添加する機能性物質が導電性付与物質である場合には、物性測定装置3として導電率計を採用し、酸化還元電位調整物質である場合にはORP計を、pH調整物質である場合にはpH計、ガスである場合にはガス濃度計を、それぞれ採用すればよい。これら導電率計、ORP計、pH計、ガス濃度計としては、それぞれ目的を達成することができればよく、特に限定されることなく例えば市販のものを使用することができる。
【0032】
〈貯留タンク〉
貯留タンク4は、返送ラインL2によって返送される洗浄水W1を貯留可能であるように構成されている。貯留タンク4に貯留された洗浄水W1’の移送ラインL1への供給量は、返送ラインL2において貯留タンク4より下流側に設けられた第三開閉弁12によって調整することができる。貯留タンク4は、ユースポイントで使用されずに返送される洗浄水W1’を一時的に貯留可能な容量を備えていればよく、その構成は特に限定されるものではない。
【0033】
〈流量計〉
第一流量計1は、移送ラインL1を流通する超純水Wの流量、つまり、電子部品用洗浄水製造システム100の入口流量を測定するものであって、合流点9の上流側に設けられている。第一流量計1が合流点9の上流側に設けられていることにより、第一流量計1の測定値に基づき、移送ラインL1で製造される洗浄水W1(又は洗浄水W1’’)の流量、つまり、貯留タンク4から移送ラインへL1供給される洗浄水W1’を含まない洗浄水W1(又は洗浄水W1’’)の流量を把握することができる。なお、本実施形態においては、第一流量計1は、機能性物質添加装置2の上流側に設けられている。
【0034】
第二流量計5は、貯留タンク4から移送ラインL1へ供給される洗浄水W1’の流量を測定するものである。第二流量計5は、貯留タンク4から移送ラインL1へ供給される洗浄水W1’の流量を測定することができればよく、本実施形態においては、貯留タンク4の下流側の返送ラインL2において第三開閉弁12と給水ポンプ6との間に設けられている。
【0035】
第一流量計1及び第二流量計5としては、特に限定されることなく例えば市販のものを使用することができる。
【0036】
〈制御手段〉
制御手段7(不図示)は、洗浄水W1の流通経路を制御するものである。本実施形態において、制御手段7は、ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合(
図2(b)の場合)には、切替三方弁81を切り替えることにより、洗浄水W1を返送ラインL2を経由して貯留タンク4に一時的に貯留するよう制御し、ユースポイントで洗浄水を使用していると判断した場合(
図2(c)の場合)には、給水ポンプ6を駆動させることにより、貯留タンク4に貯留されている洗浄水W1’を移送ラインL1へ供給するように制御する。なお、このときの移送ラインL1への供給量は、制御手段7によって、第三開閉弁12の開閉を制御することにより調整することができる。このように制御手段7は、ユースポイントで洗浄水を使用していない場合(
図2(b)の場合)に、洗浄水W1を返送ラインL2によって返送するよう制御することができるので、製造した洗浄水W1を移送ラインL1を経由してユースポイントへ移送し続けつつも、大量の廃液が生じるのを防ぐことができる。
【0037】
また、本実施形態において、制御手段7は、第一流量計1の測定値及び第二流量計5の測定値に基づき、貯留タンク4から移送ラインL1へ供給された洗浄水W1’と移送ラインL1で新たに製造された洗浄水W1’’との合計量が、ユースポイントでの必要量に対して不足している場合には、その不足分を補充するよう、移送ラインL1で製造する洗浄水W1’’の量を制御することができる。これにより、常に一定の流量の洗浄水W1をユースポイントに供給することができる。
【0038】
制御手段7としては、少なくとも上述の制御を行うことができれば特に限定されるものではなく、例えば手動によって行ってもよいし、公知のコンピューター等を利用して行ってもよい。
【0039】
〔電子部品用洗浄水製造システムの運転方法〕
次に、上述したような本実施形態の電子部品用洗浄水製造システム100の運転方法について
図2を参照しつつ詳説する。
【0040】
まず、移送ラインL1へ供給された原料水Wに対して、機能性物質添加装置2により機能性物質が添加されて洗浄水W1が製造される(機能性物質添加工程)。次に、移送ラインL1において機能性物質添加装置2の下流側に設けられている物性測定装置3により、製造された洗浄水W1の物性が定量的に測定される(物性測定工程)。物性が測定された洗浄水W1は、
図2(a)に示すように、ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、ユースポイントに連続的に移送される。
【0041】
そして、制御手段7が、ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合(
図2(b)の場合)には、切替三方弁81を切り替えることにより、製造した洗浄水W1を返送ラインL2を経由して貯留タンク4に貯留するよう制御が行われる。このとき、廃棄されることになるのは、既にユースポイントへ移送されてしまった洗浄水W1のみであり、大半の洗浄水W1は返送されるので、大量の廃液が生じるのを防ぐことができる。なお、ユースポイントで洗浄水を使用していない時間が長い場合には、切替三方弁81を上述のように切り替えるとともに、第一開閉弁10及び第二開閉弁11を閉栓することにより、貯留タンク4を介して洗浄水W1を循環させればよい。これにより、ユースポイントで洗浄水を使用していない時間が長い場合であっても、容量以上の洗浄水W1が貯留タンク4に流入するのを防ぐことができる。
【0042】
一方、制御手段7が、ユースポイントで洗浄水を使用していないと判断した場合(
図2(b)の場合)には、給水ポンプ6を駆動させることにより、貯留タンク4に貯留されている洗浄水W1’を移送ラインL1へ供給するよう制御が行われる。このとき、制御手段7は、第三開閉弁12の開閉を制御することにより移送ラインL1への洗浄水W1’の供給量を調整することができる。また、制御手段7は、第一流量計1の測定値及び第二流量計5の測定値に基づき、貯留タンク4から移送ラインL1へ供給された洗浄水W1’と移送ラインL1で新たに製造された洗浄水W1’’との合計量が、ユースポイントでの必要量に対して不足している場合には、その不足分を補充するよう、移送ラインL1で製造する洗浄水W1’’の量を制御することができる。
【0043】
上述のように電子部品用洗浄水製造システム100を運転することにより、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制できるとともに、ユースポイントで使用する洗浄水の準備時間(洗浄水が設定条件で安定するまでの時間)を短縮することができる。そして、物性測定工程において、貯留タンク4から移送ラインへL1供給された洗浄水W1’と移送ラインL1で新たに製造された洗浄水W1’’とを移送ラインL1上で混合した上でその物性を定量的に測定することができるので、常に一定の物性値を有する洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【0044】
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、
図1では、機能性物質添加装置2を一つの装置として示しているが、機能性物質が酸化還元電位調整物質としての過酸化水素水である場合には、機能性物質添加装置2は水素供給装置とこれに連結する水素溶解装置とにより構成されるものであってもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳説するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
以下の実施例1-5において、
図1に示す電子部品用洗浄水製造システム100を用いて、電子部品用洗浄水の製造を行った。
【0047】
〔実施例1〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間は、使用されない洗浄水を返送ラインを経由して貯留タンクに貯留した。ユースポイントでの洗浄水の使用が再開したら、貯留タンクに貯留している洗浄水を移送ラインへ供給した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。
【0048】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであり、1時間あたりの廃液量は20Lであった。洗浄水の水質は、導電率が30μS/cmであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0049】
〔実施例2〕
超純水に酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間は、使用されない洗浄水を返送ラインを経由して貯留タンクに貯留した。ユースポイントでの洗浄水の使用が再開したら、貯留タンクに貯留している洗浄水を移送ラインへ供給した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。
【0050】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであり、1時間あたりの廃液量は20Lであった。洗浄水の水質は、酸化還元電位が600mVであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0051】
〔実施例3〕
超純水に水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間は、使用されない洗浄水を返送ラインを経由して貯留タンクに貯留した。ユースポイントでの洗浄水の使用が再開したら、貯留タンクに貯留している洗浄水を移送ラインへ供給した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。
【0052】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであり、1時間あたりの廃液量は20Lであった。洗浄水の水質は、水素ガス濃度が10ppmであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0053】
〔実施例4〕
超純水にpHが9.0となるようアンモニアを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間は、使用されない洗浄水を返送ラインを経由して貯留タンクに貯留した。ユースポイントでの洗浄水の使用が再開したら、貯留タンクに貯留している洗浄水を移送ラインへ供給した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。
【0054】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであり、1時間あたりの廃液量は20Lであった。洗浄水の水質は、pHが9.0であり、ばらつきは±10%以内であった。
【0055】
〔実施例5〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを、酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を、水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを、pHが9.0となるようアンモニアをそれぞれ添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間は、使用されない洗浄水を返送ラインを経由して貯留タンクに貯留した。ユースポイントでの洗浄水の使用が再開したら、貯留タンクに貯留している洗浄水を移送ラインへ供給した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。
【0056】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであり、1時間あたりの廃液量は20Lであった。洗浄水の水質は、導電率が30μS/cm、酸化還元電位が600mV、水素ガス濃度が10ppm、pHが9.0であり、ばらつきは±10%以内であった。
【0057】
以下の比較例1-10において、
図3に示す電子部品用洗浄水の製造システム200を用いて、電子部品用洗浄水の製造を行った。電子部品用洗浄水の製造システム200は、原料水供給部とユースポイントとを連通する移送ラインL21を備え、移送ラインL21には流通方向に沿って、流量計21、機能性物質添加装置22、物性測定装置23がこの順に設けられている。原料水供給部から移送ラインL21への超純水の供給量は、移送ラインL21において流量計21より上流側に設けられた開閉弁24によって調整される。機能性物質添加装置22は開閉弁25を介して、移送ラインL21へ接続されている。
【0058】
〔比較例1〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間も、上記洗浄液を製造してユースポイントへ移送し続けた。
【0059】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであったが、1時間あたりの廃液量は3000Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、導電率30μS/cmであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0060】
〔比較例2〕
超純水に酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間も、上記洗浄液を製造してユースポイントへ移送し続けた。
【0061】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであったが、1時間あたりの廃液量は3000Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、酸化還元電位が600mVであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0062】
〔比較例3〕
超純水に水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間も、上記洗浄液を製造してユースポイントへ移送し続けた。
【0063】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであったが、1時間あたりの廃液量は3000Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、水素ガス濃度が10ppmであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0064】
〔比較例4〕
超純水にpHが9.0となるようアンモニアを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間も、上記洗浄液を製造してユースポイントへ移送し続けた。
【0065】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであったが、1時間あたりの廃液量は3000Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、pHが9.0であり、ばらつきは±10%以内であった。
【0066】
〔比較例5〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを、酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を、水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを、pHが9.0となるようアンモニアをそれぞれ添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送し続けた。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ユースポイントでの洗浄水の使用が中断している間も、上記洗浄液を製造してユースポイントへ移送し続けた。
【0067】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであったが、1時間あたりの廃液量は3000Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、導電率が30μS/cm、酸化還元電位が600mV、水素ガス濃度が10ppm、pHが9.0であり、ばらつきは±10%以内であった。
【0068】
〔比較例6〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送した。ウエハの洗浄処理時以外は、ユースポイントへの洗浄水の移送を停止した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ウエハの連続洗浄処理が終了した後、ユースポイントへの洗浄水の供給を停止した。
【0069】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)は20minであって、1時間あたりの廃液量は2500Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、導電率が30μS/cmであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0070】
〔比較例7〕
超純水に酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送した。ウエハの洗浄処理時以外は、ユースポイントへの洗浄水の移送を停止した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ウエハの連続洗浄処理が終了した後、ユースポイントへの洗浄水の供給を停止した。
【0071】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)は20minであって、1時間あたりの廃液量は2500Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、酸化還元電位が600mVであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0072】
〔比較例8〕
超純水に水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送した。ウエハの洗浄処理時以外は、ユースポイントへの洗浄水の移送を停止した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ウエハの連続洗浄処理が終了した後、ユースポイントへの洗浄水の供給を停止した。
【0073】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)は20minであって、1時間あたりの廃液量は2500Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、水素ガス濃度が10ppmであり、ばらつきは±10%以内であった。
【0074】
〔比較例9〕
超純水にpHが9.0となるようアンモニアを添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送した。ウエハの洗浄処理時以外は、ユースポイントへの洗浄水の移送を停止した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ウエハの連続洗浄処理が終了した後、ユースポイントへの洗浄水の供給を停止した。
【0075】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)は20minであって、1時間あたりの廃液量は2500Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、pHが9.0であり、ばらつきは±10%以内であった。
【0076】
〔比較例10〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを、酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を、水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを、pHが9.0となるようアンモニアをそれぞれ添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送した。ウエハの洗浄処理時以外は、ユースポイントへの洗浄水の移送を停止した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ウエハの連続洗浄処理が終了した後、ユースポイントへの洗浄水の供給を停止した。
【0077】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)は20minであって、1時間あたりの廃液量は2500Lとなり、膨大な量の廃液がでた。洗浄水の水質は、導電率が30μS/cm、酸化還元電位が600mV、水素ガス濃度が10ppm、pHが9.0であり、ばらつきは±10%以内であった。
【0078】
以下の比較例11においては、
図4に示す従来の電子部品用洗浄水の製造システム300を用いて、電子部品用洗浄水の製造を行った。電子部品用洗浄水の製造システム300は、ユースポイントで使用されなかった洗浄水を一旦タンクに貯留し、このタンクにユースポイントでの使用により減少した分の洗浄水を製造して補給するものである。電子部品用洗浄水の製造システム300は、原料水供給部と貯留タンク34とを連通する第一移送ラインL31と、貯留タンク34とユースポイントとを連通する第二移送ラインL32と、第二移送ラインL32の下流側にある分岐点で分岐し、貯留タンク34に連通する返送ラインL33とを備える。第一移送ラインL31には流通方向に沿って、流量計31、機能性物質添加装置32がこの順に設けられており、第二移送ラインL32には、分岐点より上流側に物性測定装置33が設けられている。原料水供給部から第一移送ラインL31への超純水の供給量は、第一移送ラインL31において流量計31より上流側に設けられた開閉弁36によって調整される。機能性物質添加装置32は開閉弁37を介して、第一移送ラインL31へ接続されている。第二移送ラインL32において貯留タンク34の下流側には、流通方向に沿って、開閉弁38、給水ポンプ35がこの順に設けられている。
【0079】
〔比較例11〕
超純水に導電率が30μS/cmとなるようアンモニアを、酸化還元電位が600mVとなるよう過酸化水素水を、水素ガス濃度が10ppmとなるよう水素ガスを、pHが9.0となるようアンモニアをそれぞれ添加して洗浄水を製造した後、50L/minでユースポイントへ移送した。ウエハの洗浄処理時以外は、ユースポイントへの洗浄水の移送を停止した。ウエハは、上記洗浄水を用いて、1枚あたり2L/minで1min洗浄した。ウエハ1枚を処理するのに要する全体の時間は3分であった。当該洗浄処理をウエハ10枚に対して続けて行った。ウエハの連続洗浄処理が終了した後、ユースポイントへの洗浄水の供給を停止した。
【0080】
その結果、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであり、1時間あたりの廃液量は20Lであった。洗浄水の水質は、導電率が30μS/cm、酸化還元電位が600mV、水素ガス濃度が10ppm、pHが9.0であり、ばらつきは±30%以内であった。
【0081】
〔結果〕
実施例1-5及び比較例1-11の結果をまとめて表1に示す。実施例1-5では、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)がゼロであり、1時間あたりの廃液量も20Lと少なかった。一方、比較例1-5では、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)はゼロであるものの、1時間あたりの廃液量は3000Lと、膨大な量であった。比較例6-10では、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)は20minであって、1時間あたりの廃液量は2500Lと、膨大な量であった。また、比較例11では、ウエハを洗浄処理するための準備時間(洗浄水が安定するまでの時間)がゼロであり、1時間あたりの廃液量も20Lと少なかったが、洗浄水の水質のばらつきが大きかった。
【0082】
【0083】
以上説明したように、本発明の電子部品用洗浄水の製造システム及び電子部品用洗浄水の製造方法によれば、ユースポイントでの洗浄水の使用の有無にかかわらず、製造した洗浄水をユースポイントへ移送しつつも、制御手段によって、ユースポイントで洗浄水を使用していない場合には、洗浄水を返送ラインに返送して一時的に貯留タンクに貯留するよう制御し、ユースポイントで洗浄水を使用している場合には、貯留タンクに貯留された洗浄水を移送ラインへ供給するよう制御することにより、製造した洗浄水の廃液量を大幅に抑制しつつも、ユースポイントで使用する洗浄水の準備時間(洗浄水が設定条件で安定するまでの時間)を短縮することができる。そして、貯留タンクから移送ラインへ供給された洗浄水と移送ラインで新たに製造された洗浄水とを移送ライン上で混合した上でその物性を定量的に測定することができるので、常に一定の物性値を有する洗浄水をユースポイントに供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、半導体、液晶、有機EL等の電子部品の製造工程において用いられる電子部品用洗浄水の製造システム及びこれを用いた電子部品用洗浄水の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0085】
100 電子部品用洗浄水製造システム
1 第一流量計
2 機能性物質添加装置
3 物性測定装置
4 貯留タンク
5 第二流量計
6 給水ポンプ
7 制御手段
8 分岐点
81 切替三方弁
9 合流点
10 第一開閉弁
11 第二開閉弁
12 第三開閉弁
L1 移送ライン
L2 返送ライン
W 超純水
W1,W1’,W1’’ 洗浄水