(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】オニウム塩、ネガ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 311/48 20060101AFI20220705BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220705BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20220705BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220705BHJP
C07C 381/12 20060101ALI20220705BHJP
C08F 12/24 20060101ALI20220705BHJP
C08F 20/30 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C07C311/48 CSP
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
G03F7/20 521
C07C381/12
C08F12/24
C08F20/30
(21)【出願番号】P 2018200797
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土門 大将
(72)【発明者】
【氏名】井上 直也
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】増永 恵一
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正晃
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-203644(JP,A)
【文献】特開2017-016068(JP,A)
【文献】特開2009-251037(JP,A)
【文献】特開2016-210761(JP,A)
【文献】特開2017-132827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表されるオニウム塩。
【化1】
[式中、R
1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。
環Rは、下記式(A1)で表される基である。
【化2】
(式中、破線は、結合手である。R
2は、分岐状又は環状の炭素数3~20の1価炭化水素基である。nは、2~5の整数である。)
Z
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化3】
(式中、R
3~R
7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、R
3、R
4及びR
5のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)]
【請求項2】
下記式(A)で表されるオニウム塩。
【化4】
[式中、R
1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。
環Rは、下記式(A1)で表される基である。
【化5】
(式中、破線は、結合手である。R
2は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R
2の少なくとも1つが、スルホニル基が結合している炭素原子のオルト位に結合している。nは、2~5の整数である。)
Z
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化6】
(式中、R
3~R
7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、R
3、R
4及びR
5のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)]
【請求項3】
下記式(A)で表されるオニウム塩。
【化7】
[式中、R
1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。
環Rは、下記式(A1)で表される基である。
【化8】
(式中、破線は、結合手である。R
2は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。nは、3~5の整数である。)
Z
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化9】
(式中、R
3~R
7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、R
3、R
4及びR
5のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)]
【請求項4】
(A)請求項1~3のいずれか1項記載のオニウム塩、及び
(B)式(B1)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含むベースポリマー
を含むネガ型レジスト組成物。
【化10】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。
A
1は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。
t
1は、0又は1である。x
1は、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x
1-bを満たす整数である。bは、1~5の整数である。)
【請求項5】
前記ポリマーが、更に下記式(B2)で表される繰り返し単位、下記式(B3)で表される繰り返し単位及び下記式(B4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項4記載のネガ型レジスト組成物。
【化11】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
12及びR
13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の1級アルコキシ基、炭素数2~8の2級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。
R
14は、アセチル基、アセトキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20の1級アルコキシ基、炭素数2~20の2級アルコキシ基、炭素数2~20のアシルオキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数2~20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。
A
2は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。
c及びdは、それぞれ独立に、0~4の整数である。eは、0~5の整数である。x
2は、0~2の整数である。t
2は、0又は1である。)
【請求項6】
前記ポリマーが、更に下記式(B5)で表される繰り返し単位を含む請求項4又は5記載のネガ型レジスト組成物。
【化12】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
15は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。
A
3は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。
W
1は、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
x
3は、0~2の整数である。t
3は、0又は1である。fは、0≦f≦5+2x
3-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。)
【請求項7】
前記ポリマーが、更に下記式(B6)で表される繰り返し単位、下記式(B7)で表される繰り返し単位及び下記式(B8)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項6記載のネガ型レジスト組成物。
【化13】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-又は-C(=O)-NH-Z
11-であり、Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
Z
2は、単結合、又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-であり、Z
31は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
R
21~R
28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。R
21とR
22とは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23、R
24及びR
25のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
26、R
27及びR
28のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
M
-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項8】
前記ポリマーが、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位、下記式(B5-1)で表される繰り返し単位及び下記式(B7)で表される繰り返し単位を含
むものである請求項4~7のいずれか1項記載のネガ型レジスト組成物。
【化14】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
Bは、水素原子又はメチル基である。
W
1は、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
Z
2は、単結合、又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基である。
R
23~R
25は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。R
23、R
24及びR
25のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
b'は、1~3の整数である。gは、1~3の整数である。)
【請求項9】
前記ベースポリマーが、更に、
下記式(B6)で表される繰り返し単位、
下記式(B7)で表される繰り返し単位及び
下記式(B8)で表される繰り返し単位を含まないポリマーを含む請求項7又は8記載のネガ型レジスト組成物。
【化15】
(式中、R
B
は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Z
1
は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11
-、-C(=O)-O-Z
11
-又は-C(=O)-NH-Z
11
-であり、Z
11
は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
Z
2
は、単結合、又は-Z
21
-C(=O)-O-であり、Z
21
は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基である。
Z
3
は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z
31
-、-C(=O)-O-Z
31
-又は-C(=O)-NH-Z
31
-であり、Z
31
は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
R
21
~R
28
は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。R
21
とR
22
とは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23
、R
24
及びR
25
のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
26
、R
27
及びR
28
のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
M
-
は、非求核性対向イオンである。)
【請求項10】
更に、(C)架橋剤を含む請求項6~9のいずれか1項記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項11】
架橋剤を含まない請求項6記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項12】
更に、酸発生剤を含む請求項4~11のいずれか1項記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか1項記載のネガ型レジスト組成物を塗布したフォトマスクブランク。
【請求項14】
請求項4~12のいずれか1項記載のネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記露光したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項15】
前記高エネルギー線が、極端紫外線又は電子線である請求項14記載のレジストパターン形成方法。
【請求項16】
前記基板が、フォトマスクブランクである請求項14又は15記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニウム塩、ネガ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の高集積化に伴いより微細な回路パターンの形成が求められている。このうち、0.2μm以下のパターンの加工では、もっぱら酸を触媒とした化学増幅レジスト組成物が使用されている。また、この際の露光源として紫外線、遠紫外線、電子線(EB)等の高エネルギー線が用いられており、特に超微細加工技術として利用されているEBリソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。
【0003】
酸性側鎖を有する芳香族骨格を多量に有するポリマー、例えばポリヒドロキシスチレンは、KrFエキシマレーザーを用いるKrFリソグラフィー用レジスト組成物として有用であるが、波長200nm付近の光に対して大きな吸収を示すため、ArFエキシマレーザーを用いるArFリソグラフィー用レジスト組成物としては使用されなかった。しかし、ArFエキシマレーザーによる加工限界よりも小さなパターンを形成するための有力な技術であるEBリソグラフィー用レジスト組成物や極端紫外線(EUV)リソグラフィー用レジスト組成物としては、高いエッチング耐性が得られる点で重要な材料となっている。
【0004】
このようなフォトリソグラフィーに用いるレジスト組成物としては、露光部を溶解させてパターンを形成するポジ型と、露光部を残してパターンを形成するネガ型とがあり、それらは必要とするレジストパターンの形態に応じて使い易い方のものが選択される。化学増幅ネガ型レジスト組成物は、通常、水性のアルカリ現像液に溶解するポリマーと、露光光により分解されて酸を発生する酸発生剤、及び酸を触媒としてポリマー間に架橋を形成してポリマーを前記現像液に不溶化させる架橋剤(場合によってはポリマーと架橋剤は一体化している)を含んでおり、更に、通常、露光で発生した酸の拡散を制御するためのクエンチャーが加えられる。
【0005】
水性アルカリ現像液に溶解するポリマーを構成するアルカリ可溶性単位としては、フェノール構造を有する単位が挙げられる。従来、このようなタイプのネガ型レジスト組成物は、特にKrFエキシマレーザー光による露光用として多数が開発されてきた。しかし、これらは露光光が150~220nmの波長である場合にフェノール構造を有する単位が光の透過性を持たないことから、ArFエキシマレーザー光用のものとしては使用されなかった。ところが、近年、より微細なパターンを得るための露光方法であるEBやEUVといった短波長の露光光用のネガ型レジスト組成物として再び注目されており、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3が報告されている。
【0006】
ところで、フォトリソグラフィーにおいて、レジスト感度やパターンプロファイルの制御のために、レジスト組成物に使用する材料の選択や組み合わせ、プロセス条件等の変更による種々の改良がなされてきた。その改良の焦点の1つとして、化学増幅レジスト組成物の解像性に重要な影響を与える酸の拡散の問題がある。
【0007】
クエンチャーは、酸拡散を抑制するものであり、レジスト組成物の性能、特に解像性を向上させるためには事実上必須成分である。クエンチャーはこれまで様々な検討がなされており、一般的にアミン類や弱酸オニウム塩が用いられている。弱酸オニウム塩の例として、特許文献4には、トリフェニルスルホニウムアセテートの添加によりT-トップの形成、孤立パターンと密集パターンの線幅の差、スタンディングウエーブのない良好なレジストパターンを形成することができると記載されている。特許文献5には、スルホン酸アンモニウム塩又はカルボン酸アンモニウム塩の添加により感度、解像性、露光マージンが改善したことが記載されている。また、特許文献6には、フッ素含有カルボン酸を発生する光酸発生剤を含むKrFレジスト組成物やEBレジスト組成物が、解像力に優れ、露光マージン、焦点深度等のプロセス許容性が改善されたと記載されている。更に、特許文献7には、フッ素原子含有カルボン酸を発生する光酸発生剤を含むF2レーザー光用レジスト組成物がラインエッジラフネス(LER)に優れ、裾引の問題が改善されたと述べられている。これら4件の提案は、KrFリソグラフィー、EBリソグラフィー又はF2リソグラフィーに用いられているものである。
【0008】
特許文献8には、カルボン酸オニウム塩を含むArFエキシマレーザー光用ポジ型感光性組成物が記載されている。これらは露光によって他の光酸発生剤から生じた強酸(スルホン酸)が弱酸オニウム塩と交換し、弱酸及び強酸オニウム塩を形成することで酸性度の高い強酸(スルホン酸)から弱酸(カルボン酸)に置き換わることによって酸不安定基の酸分解反応を抑制し、酸拡散距離を小さくする(制御する)ものであり、見かけ上クエンチャーとして機能する。
【0009】
しかしながら、前述したカルボン酸オニウム塩やフルオロカルボン酸オニウム塩を含有むレジスト組成物を用いてパターニングを行った際、LERが大きい問題があるため、よりLERを低減できるクエンチャーの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-201532号公報
【文献】特開2006-215180号公報
【文献】特開2008-249762号公報
【文献】特許第3955384号公報
【文献】特開平11-327143号公報
【文献】特許第4231622号公報
【文献】特許第4116340号公報
【文献】特許第4226803号公報
【文献】特開2001-330947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、パターン形成時の解像性を向上し、かつ、LERの低減されたパターンを得ることができるネガ型レジスト組成物を与えるクエンチャーとして有用な化合物、これを含むネガ型レジスト組成物、及びレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、嵩高い置換基を有するベンゼンスルホンイミド又は脂環構造を有するスルホンイミドのオニウム塩をクエンチャーとしてレジスト組成物に導入した場合、LERの小さなパターンが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記オニウム塩、ネガ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
1.下記式(A)で表されるオニウム塩。
【化1】
[式中、R
1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。
環Rは、下記式(A1)で表される基、又は脂環式構造を有する炭素数6~30の基であり、該脂環式構造を有する炭素数6~30の基の炭素原子の一部が、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を含む基で置換されていてもよい。
【化2】
(式中、破線は、結合手である。R
2は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。nは、2~5の整数である。)
Z
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化3】
(式中、R
3~R
7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、R
3、R
4及びR
5のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)]
2.環Rが、式(A1)で表される基である1のオニウム塩。
3.R
2が、分岐状又は環状の炭素数3~20の1価炭化水素基である2のオニウム塩。
4.R
2の少なくとも1つが、スルホニル基が結合している炭素原子のオルト位に結合している2又は3のオニウム塩。
5.nが、3~5の整数である2~4のいずれかのオニウム塩。
6.(A)1~5のいずれかのオニウム塩、及び
(B)式(B1)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含むベースポリマー
を含むネガ型レジスト組成物。
【化4】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。
A
1は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。
t
1は、0又は1である。x
1は、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x
1-bを満たす整数である。bは、1~5の整数である。)
7.前記ポリマーが、更に下記式(B2)で表される繰り返し単位、下記式(B3)で表される繰り返し単位及び下記式(B4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む6のネガ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
12及びR
13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の1級アルコキシ基、炭素数2~8の2級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。
R
14は、アセチル基、アセトキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20の1級アルコキシ基、炭素数2~20の2級アルコキシ基、炭素数2~20のアシルオキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数2~20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。
A
2は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。
c及びdは、それぞれ独立に、0~4の整数である。eは、0~5の整数である。x
2は、0~2の整数である。t
2は、0又は1である。)
8.前記ポリマーが、更に下記式(B5)で表される繰り返し単位を含む6又は7のネガ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
15は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。
A
3は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。
W
1は、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
x
3は、0~2の整数である。t
3は、0又は1である。fは、0≦f≦5+2x
3-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。)
9.前記ポリマーが、更に下記式(B6)で表される繰り返し単位、下記式(B7)で表される繰り返し単位及び下記式(B8)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む8のネガ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、R
Bは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-又は-C(=O)-NH-Z
11-であり、Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
Z
2は、単結合、又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-であり、Z
31は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
R
21~R
28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。R
21とR
22とは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
23、R
24及びR
25のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R
26、R
27及びR
28のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
M
-は、非求核性対向イオンである。)
10.前記ポリマーが、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位、下記式(B5-1)で表される繰り返し単位及び下記式(B7)で表される繰り返し単位を含ものである6~9のいずれかのネガ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、R
Aは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
Bは、水素原子又はメチル基である。
W
1は、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。
Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
Z
2は、単結合、又は-Z
21-C(=O)-O-であり、Z
21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基である。
R
23~R
25は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。R
23、R
24及びR
25のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
b'は、1~3の整数である。gは、1~3の整数である。)
11.前記ベースポリマーが、更に、式(B6)で表される繰り返し単位、式(B7)で表される繰り返し単位及び式(B8)で表される繰り返し単位を含まないポリマーを含む9又は10のネガ型レジスト組成物。
12.更に、(C)架橋剤を含む6~11のいずれかのネガ型レジスト組成物。
13.架橋剤を含まない8のネガ型レジスト組成物。
14.更に、酸発生剤を含む6~13のいずれかのネガ型レジスト組成物。
15.6~14のいずれかのネガ型レジスト組成物を塗布したフォトマスクブランク。
16.6~14のいずれかのネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記露光したレジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
17.前記高エネルギー線が、EUV又はEBである16のレジストパターン形成方法。
18.前記基板が、フォトマスクブランクである16又は17のレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のネガ型レジスト組成物は、露光された際の酸拡散を効果的に制御することができ、パターン形成時において極めて高い解像性を有し、LERの低減されたパターンを得ることができる。また、このようなネガ型レジスト組成物を用いたパターン形成方法であれば、高い解像性を有しつつLERの低減されたパターンを形成できるため、微細加工技術、特にEUVリソグラフィー技術やEBリソグラフィー技術に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0016】
[オニウム塩]
本発明のオニウム塩は、下記式(A)で表される。
【化9】
【0017】
式(A)中、R1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれもでもよい。また、前記1価炭化水素基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでもよい。
【0018】
前記ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1~20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数1~20の1価飽和環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6~10のアリール基;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロエチル基等のハロゲン原子で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0019】
環Rは、下記式(A1)で表される基、又は脂環式構造を有する炭素数6~30の基であり、該脂環式構造を有する炭素数6~30の基の炭素原子の一部が、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を含む基で置換されていてもよい。
【化10】
【0020】
式(A1)中、破線は、結合手である。R2は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれもでもよい。また、前記1価炭化水素基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでもよい。
【0021】
R2で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1~20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の炭素数1~20の1価飽和環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6~10のアリール基等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、R2としては、分岐状又は環状の炭素数3~20の1価炭化水素基が好ましい。このような構造であれば、中和後に発生するスルホンイミド酸が十分に嵩高い構造となる。したがって、中和後に発生するスルホンイミド酸が、わずかに不溶化に寄与する場合に、その反応性が抑制され、LERの向上に寄与する。
【0023】
また、式(A1)において、R2は、その少なくとも1つがスルホニル基が結合している炭素原子のオルト位に結合していることが好ましい。このような構造であれば、中和後に発生するスルホンイミド酸の活性部位がオルト位の置換基によって立体的に遮蔽されるため、反応性が抑制される。従って中和後に発生するスルホンイミド酸が、わずかに不溶化に寄与する場合に、その反応性が抑制され、LERの向上に寄与する。
【0024】
式(A1)中、nは、2~5の整数であるが、3~5の整数が好ましい。
【0025】
環Rで表される脂環式構造を有する炭素数6~30の基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化11】
(式中、破線は、結合手である(以下同じ)。)
【0026】
Z
+は、下記式(A2)で表されるスルホニウムカチオン又は下記式(A3)で表されるヨードニウムカチオンである。
【化12】
【0027】
式(A2)及び(A3)中、R3~R7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、R3、R4及びR5のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0028】
R3~R7で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、式(A)のR1として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0029】
式(A2)中、R
3、R
4及びR
5のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成する場合の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化13】
【0030】
式中、R8は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。前記ヘテロ原子を含んでいてもよい1価炭化水素基としては、式(A)のR1として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
式(A2)で表されるスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化14】
【0032】
式(A3)中、R6及びR7で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基として、好ましくはアリール基である。
【0033】
式(A3)で表されるヨードニウムカチオンとしては、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス[4-(1,1-ジメチルプロピル)フェニル]ヨードニウム、4-メトキシフェニルフェニルヨードニウム、4-tert-ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4-アクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム、4-メタクリロイルオキシフェニルフェニルヨードニウム等が好ましく、特にビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムがより好ましい。
【0034】
式(A)で表されるオニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化15】
【0035】
【0036】
本発明のオニウム塩の具体的な構造としては、例示したアニオンとカチオンとの任意の組み合わせが挙げられる。
【0037】
本発明のオニウム塩は、既知の有機化学的方法を組み合わせることで合成することができるが、一例として下記スキームに示す方法が挙げられる。
【化17】
(式中、環R、R
1及びZ
+は、前記と同じ。X
-は、ハロゲン化物イオンである。)
【0038】
まず、工程(i)として、スルホニルクロリド化合物(Aa)とアンモニアとを反応させてスルホンアミド化合物(Ab)を合成する。反応は、例えば、スルホニルクロリド化合物(Aa)を溶剤に溶解させ、そこへアンモニア水を加え、又はアンモニアガスを吹き込み、必要に応じ、冷却又は加熱して行うことができる。
【0039】
工程(i)の反応に用いることができる溶剤としては、水、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶剤類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
アンモニアの使用量は、スルホニルクロリド化合物(Aa)1モルに対し、1~30モルが好ましく、1~5モルがより好ましい。
【0041】
工程(i)の反応において、反応温度は-20~80℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。反応時間は5分~24時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
【0042】
次に、工程(ii)として、スルホンアミド化合物(Ab)とスルホニルクロリド化合物(Ac)とを反応させる。このとき使用可能な溶剤としては、THF、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶剤類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
また、反応を促進させるために、ピリジン、トリエチルアミン、2,6-ルチジン、コリジン等の塩基を共存させることが好ましい。反応を促進させるために、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を添加することも好ましい。
【0044】
スルホニルクロリド化合物(Ac)の使用量は、スルホンアミド化合物(Ab)1モルに対し、1~30モルが好ましく、1~5モルがより好ましい。
【0045】
工程(ii)の反応において、反応温度は-20~80℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。反応時間は5分~24時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
【0046】
最後に、工程(iii)として、工程(ii)の反応生成物とオニウム塩(Ad)とのイオン交換反応により、オニウム塩(A)を合成する。
【0047】
[ネガ型レジスト組成物]
本発明のネガ型レジスト組成物は、(A)前述した本発明のオニウム塩、及び(B)ベースポリマーを含むものである。
【0048】
本発明のオニウム塩は、本発明のネガ型レジスト組成物においてクエンチャーとして機能する。この機構としては、次のように考えられる。レジスト組成物中の酸発生剤より発生した酸は、ベースポリマーをアルカリ不溶性にするために強酸性である必要があり、例えばArFリソグラフィーではα位がフッ素化されたスルホン酸やイミド酸、メチド酸が使用される。ここで、レジスト組成物中に酸発生剤と本発明のオニウム塩を共存させると、酸発生剤から生じた酸は本発明のオニウム塩とイオン交換し、再びスルホニウム塩又はヨードニウム塩となり、かわりに本発明のオニウム塩のアニオンがカルボン酸となって放出される。言い換えれば、イオン交換によって、酸発生剤から発生した強酸は本発明のオニウム塩によって中和される。すなわち、本発明のオニウム塩はクエンチャーとして機能する。一方、本発明のスルホンイミド塩のカチオンが光分解してスルホンイミド酸が発生する機構も当然考えられるが、前記スルホンイミド酸は弱酸のため、ベースポリマーをアルカリ不溶性にする反応にはほとんど寄与しない。
【0049】
このオニウム塩型クエンチャーは、一般的にアミン化合物を用いたクエンチャーよりもレジストパターンのLERが小さくなる傾向にある。これは強酸と、オニウム塩型クエンチャーとの塩交換が数限りなく繰り返されることに起因すると推定される。すなわち、露光の最後に強酸が発生する場所は、最初の強酸発生型オニウム塩が存在している場所とは異なっている。高エネルギー線照射による酸の発生と塩交換のサイクルが何度も繰り返されることによって酸の発生ポイントが平均化され、これによって現像後のレジストパターンのLERが小さくなるものと推測される。
【0050】
更に、本発明のクエンチャーは当然未露光部にも存在しており、露光部より拡散してきた酸をイオン交換反応によってトラップすることができると考えられる。この効果で、未露光部へ拡散してきた酸を確実にクエンチすることができるため、露光部と未露光部とのコントラストがより強まり、解像性やLERを大きく改善することができる。
【0051】
同様の機構によるクエンチャー効果を有する材料として、例えば特許文献5や特許文献8にはカルボン酸オニウム塩、アルカンスルホン酸オニウム塩あるいはアレーンスルホン酸オニウム塩等をクエンチャーとして用いた報告がされている。しかし、アルカンスルホン酸オニウム塩やアレーンスルホン酸オニウム塩を用いた場合においては、発生酸の酸強度がある程度大きいので、高露光領域で一部はクエンチャーではなくベースポリマーのアルカリ不溶化反応を引き起こしてしまい、結果として酸拡散が大きくなり、解像性やLERといったレジスト性能が劣化する。
【0052】
また、アルカンカルボン酸オニウム塩の場合では、これより発生したカルボン酸は酸性度が弱く、ベースポリマーをアルカリ不溶化することはほぼない。しかし、未露光部に拡散してきた酸発生剤由来の強酸をトラップしきれず、解像性やLERは満足できるものではない。一方、本発明のクエンチャーは優れたクエンチ能を有していることから、アルカンカルボン酸オニウム塩よりも確実に未露光部へ拡散した酸をトラップできる。
【0053】
特許文献9にはビス(パラトルエンスルホニル)イミド塩が提示されているが、この化合物は、本発明のオニウム塩と比較して嵩高さの点で劣っていることに起因し、酸拡散制御能は本発明のオニウム塩と比較すると満足できるものではない。
【0054】
本発明のオニウム塩は、塩化合物であるため、EB描画時における酸によるケミカルフレアの抑制、及び大電流でのEB描画における局所的な熱によって揮発することがない。したがって、描画領域内にてクエンチャーとしての機能を発揮する。また、未描画領域でも揮発することなく存在するため不要なネガ化を抑制することができ、欠陥低減にも効果を発揮する。
【0055】
本発明のレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、後述する(B)ベースポリマー100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、0.5~30質量部がより好ましい。(A)成分の含有量が前記範囲であれば、クエンチャーとして十分に機能し、感度低下や溶解性不足で異物が発生したりする等の性能劣化を起こすおそれがない。(A)オニウム塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
[(B)ベースポリマー]
(B)成分のベースポリマーは、下記式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1ともいう。)を有するポリマー(以下、ポリマーBともいう。)を含むものである。
【化18】
【0057】
繰り返し単位B1は、エッチング耐性を与えるとともに、基板に対する密着性とアルカリ現像液に対する溶解性とを与える繰り返し単位である。
【0058】
式(B1)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であるが、水素原子又はメチル基が好ましい。R11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。A1は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。t1は、0又は1である。x1は、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x1-bを満たす整数である。bは、1~5の整数である。
【0059】
A1で表されるアルカンジイル基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルカンジイル基がエーテル結合を含む場合には、式(B1)中のt1が1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、t1が0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルカンジイル基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0060】
R11で表されるアシルオキシ基、アルキル基及びアルコキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0061】
式(B1)中、x1は0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。aは0≦a≦5+2x1-bを満たす整数であるが、x1が0の場合、好ましくは、aは0~3の整数であり、bは1~3の整数であり、x1が1又は2の場合、好ましくは、aは0~4の整数であり、bは1~3の整数である。
【0062】
t
1が0かつA
1が単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、すなわち、リンカー(-CO-O-A
1-)を有しない場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。これらのうち、より好ましくは下記式(B1-1)で表される繰り返し単位等である。
【化19】
(式中、R
Aは、前記と同じ。b'は、1~3の整数である。)
【0063】
また、t
1が1である場合、すなわち、リンカー(-CO-O-A
1-)を有する場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化20】
【0064】
ポリマーBは、エッチング耐性を向上させる目的で、下記式(B2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2ともいう。)、下記式(B3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B3ともいう。)及び下記式(B4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B4ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【化21】
【0065】
式中、RAは、前記と同じ。R12及びR13は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の1級アルコキシ基、炭素数2~8の2級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアルキルカルボニルオキシ基である。R14は、アセチル基、アセトキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20の1級アルコキシ基、炭素数2~20の2級アルコキシ基、炭素数2~20のアシルオキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、炭素数2~20のアルキルチオアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。A2は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。c及びdは、それぞれ独立に、0~4の整数である。eは、0~5の整数である。x2は、0~2の整数である。t2は、0又は1である。
【0066】
A2で表されるアルカンジイル基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルカンジイル基がエーテル結合を含む場合には、式(B4)中のt2が1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、t2が0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルカンジイル基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0067】
R12及びR13で表されるアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基及びアルキルカルボニルオキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0068】
R14として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基及びその構造異性体、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基及びその炭化水素部の構造異性体、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、特にメトキシ基及びエトキシ基が有用である。また、アシルオキシ基は、ポリマーの重合後でも容易に化学修飾法で導入することができ、ベースポリマーのアルカリ現像液に対する溶解性の微調整に有利に用いることができる。前記アシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。炭素数が20以下であれば、ベースポリマーとしてのアルカリ現像液に対する溶解性を制御・調整する効果(主に、下げる効果)を適切なものとすることができ、スカム(現像欠陥)の発生を抑制することができる。また、前述の好ましい置換基の中で、特にモノマーとして準備しやすく、有用に用いられる置換基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基が挙げられる。
【0069】
式(B4)中、x2は0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。x2が0の場合、好ましくはeは0~3の整数であり、x2が1又は2の場合、好ましくはeは0~4の整数である。
【0070】
式(B4)においてt2が0かつA2が単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、すなわち、リンカー(-CO-O-A2-)を有しない場合、繰り返し単位B4の好ましい例としては、スチレン、4-クロロスチレン、4-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、4-ブロモスチレン、4-アセトキシスチレン、2-ヒドロキシプロピルスチレン、2-ビニルナフタレン、3-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。
【0071】
また、式(B4)においてt
2が1である場合、すなわち、リンカー(-CO-O-A
2-)を有する場合、繰り返し単位B4の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
Aは、前記と同じである。
【化22】
【0072】
【0073】
前記ポリマーが、繰り返し単位B2~B4のうち少なくとも1種を含む場合、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際のEB照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0074】
繰り返し単位B2~B4は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
ポリマーBは、更に、下記式(B5)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B5ともいう。)を含んでもよい(以下、ポリマーBのうち、繰り返し単位B5を更に含むものをポリマーB'ともいう。)。
【化24】
【0076】
式中、RAは、前記と同じ。R15は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8のアシルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルコキシ基である。A3は、単結合、又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、炭素-炭素結合間にエーテル結合が介在していてもよい。W1は、水素原子、若しくは炭素-炭素結合間にエーテル結合、カルボニル基若しくはカルボニルオキシ基が介在していてもよい炭素数1~10の脂肪族1価炭化水素基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15のアルキル基、又は置換基を有してもよい1価芳香環基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。x3は、0~2の整数である。t3は、0又は1である。fは、0≦f≦5+2x3-gを満たす整数である。gは、1~3の整数である。
【0077】
繰り返し単位B5は、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用により酸脱離性基が脱離反応を起こし、アルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発する繰り返し単位である。
【0078】
W1で表される脂肪族1価炭化水素基又は1価芳香環基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、メチルカルボニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0079】
Rx又はRyとして、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びその構造異性体や、これらの水素原子の一部がヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0080】
x3は0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。
【0081】
A3で表されるアルカンジイル基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。前記アルカンジイル基がエーテル結合を含む場合には、式(B5)中のt3が1である場合にはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、t3が0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記アルカンジイル基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0082】
R15で表されるアシルオキシ基、アルキル基及びアルコキシ基の炭化水素部分の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0083】
繰り返し単位B5としては、下記式(B5-1)又は(B5-2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化25】
(式中、R
A、Rx、Ry、W
1及びgは、前記と同じ。)
【0084】
繰り返し単位B5の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記例中、R
Aは、前記と同じであり、Meはメチル基であり、Acはアセチル基である。
【化26】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
ポリマーB'は、更に、下記式(B6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B6ともいう。)、下記式(B7)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B7ともいう。)、及び下記式(B8)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B8ともいう。)から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【化31】
【0090】
式(B6)~(B8)中、RBは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Z1は、単結合、フェニレン基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z2は、単結合、又は-Z21-C(=O)-O-であり、Z21は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の2価炭化水素基である。Z3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6のアルカンジイル基、炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
【0091】
式(B6)~(B8)中、R21~R28は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子から選ばれるヘテロ原子と置き換わっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基から選ばれる基を形成又は介在してもよい。R21とR22とは、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R23、R24及びR25のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R26、R27及びR28のうちいずれか2つ以上は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0092】
式(B6)中、M-は、非求核性対向イオンである。
【0093】
式(B7)中、Z
2が-Z
21-C(=O)-O-である場合、Z
21で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい2価炭化水素基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化32】
【0094】
式(B7)及び(B8)中、R
23、R
24及びR
25のうちのいずれか2つ以上、又はR
26、R
27及びR
28のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成する場合、スルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化33】
(式中、R
29は、R
21~R
28で表される基と同じである。)
【0095】
式(B7)及び(B8)中、スルホニウムカチオンの具体的な構造としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化34】
【0096】
繰り返し単位B6~B8は、高エネルギー線の照射により酸を発生させる単位である。これらの単位がポリマー中に含まれることで、酸拡散が適度に抑制され、LERが低減されたパターンが得られると考えられる。また、これらの単位がポリマーに含まれていることで、真空中でのベーク時に、露光部から酸が揮発し、未露光部へ再付着するという現象が抑制され、LERの低減や、未露光部での望まないネガ化反応抑制による欠陥の低減等に効果的であると考えられる。繰り返し単位B6~B8の含有量は、ポリマーB'を構成する全繰り返し単位中、0.5~20モル%が好ましい。
【0097】
前記ポリマーは、レジスト膜の特性の微調整を行うために、更に、ラクトン構造等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位やその他の繰り返し単位を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0098】
ポリマーB中、繰り返し単位B1の含有量は、50~95モル%が好ましく、70~85モル%がより好ましい。繰り返し単位B2~B4の含有量は、5~50モル%が好ましく、15~30モル%がより好ましい。なお、他の繰り返し単位を好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%含んでもよい。
【0099】
ポリマーB'が繰り返し単位B6~B8を含まない場合、ポリマーB'中の繰り返し単位B1の含有量は、25~95モル%が好ましく、40~85モル%がより好ましい。繰り返し単位B2~B4の含有量は、0~30モル%が好ましく、5~20モル%がより好ましい。繰り返し単位B5の含有量は、5~45モル%が好ましく、10~40モル%がより好ましい。なお、他の繰り返し単位を好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%含んでもよい。
【0100】
ポリマーB'が繰り返し単位B6~B8を含む場合、ポリマーB'中の繰り返し単位B1の含有量は、25~94.5モル%が好ましく、50~85モル%がより好ましい。繰り返し単位B2~B4の含有量は、0~20モル%が好ましく、3~15モル%がより好ましい。繰り返し単位B5の含有量は、5~35モル%が好ましく、10~25モル%がより好ましい。繰り返し単位B6~B8の含有量は、0.5~20モル%が好ましく、2~10モル%がより好ましい。なお、他の繰り返し単位を好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%含んでもよい。
【0101】
前記ポリマーを構成する全繰り返し単位中、繰り返し単位B1~B5は、60モル%以上を占めることが好ましく、70モル%以上を占めることがより好ましい。これによって、本発明のネガ型レジスト組成物として必要となる特性が確実に得られる。
【0102】
ポリマーB'が繰り返し単位B6~B8を含む場合、ポリマーB'としては、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位、下記式(B5-1)で表される繰り返し単位及び繰り返し単位B7を含むものが好ましい。
【化35】
(式中、R
A、R
B、Z
2、R
23、R
24、R
25、Rx、Ry、W
1、b'及びgは、前記と同じ。)
【0103】
(B)ベースポリマーとしてポリマーB'を用いる場合、繰り返し単位B6~B8を含まないものと、繰り返し単位B6~B8を含むものとを併用してもよい。この場合、繰り返し単位B6~B8を含まないポリマーの含有量は、繰り返し単位B6~B8を含むポリマー100質量部に対し、2~5,000質量部が好ましく、10~1,000質量部がより好ましい。
【0104】
前記ポリマーは、公知の方法によって、必要に応じて保護基で保護した各単量体を共重合させ、その後必要に応じて脱保護反応を行うことで合成することができる。共重合反応としては、特に限定されないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については、国際公開第2006/121096号、特開2008-102383号公報、特開2008-304590号公報、特開2004-115630号公報を参考にすることができる。
【0105】
前記ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が2,000~50,000であることが好ましく、3,000~20,000であることがより好ましい。Mwが2,000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下するとともに、LERが劣化するといった現象が生じるおそれがない。一方、Mwが50,000以下であれば、LERが増大するおそれがない。特に、パターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には、Mwが20,000以下であることが好ましい。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0106】
前記ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~2.0、特に1.0~1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散である場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化したりすることがない。
【0107】
[(C)架橋剤]
本発明において、ベースポリマーとしてポリマーBのみを用いる場合、架橋剤を配合することが好ましい。一方、ベースポリマーがポリマーB'を含む場合は、架橋剤を配合しなくてもよい。
【0108】
本発明で使用可能な架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1種の基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、及びアルケニルエーテル基等の二重結合を含む化合物等が挙げられる。これらは、添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。
【0109】
前記架橋剤のうち、エポキシ化合物としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0110】
メラミン化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0111】
グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0112】
グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリル等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0113】
ウレア化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレア等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレア等が挙げられる。
【0114】
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0115】
アジド化合物としては、1,1'-ビフェニル-4,4'-ビスアジド、4,4'-メチリデンビスアジド、4,4'-オキシビスアジド等が挙げられる。
【0116】
アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0117】
(C)架橋剤の含有量は、(B)ベースポリマー100質量部に対し、2~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。前記範囲であれば、パターン間がつながり、解像度が低下するおそれが少ない。(C)架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0118】
[(D)有機溶剤]
本発明のネガ型レジスト組成物は、(D)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、各成分を溶解可能なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0119】
これらの有機溶剤の中でも、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0120】
(D)有機溶剤の含有量は、(B)ベースポリマー100質量部に対し、200~10,000質量部が好ましく、400~5,000質量部がより好ましい。(D)有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0121】
[(E)酸発生剤]
本発明のレジスト組成物は、化学増幅ネガ型レジスト組成物として機能させるために、(E)酸発生剤を含んでもよい。このような酸発生剤としては、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)が挙げられる。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシイミド、オキシム-O-スルホネート型酸発生剤等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
酸発生剤の具体例としては、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載されているものが挙げられる。これらの中でも、アレーンスルホネート型の光酸発生剤が、(C)成分の架橋剤と、ポリマーを反応させるのに適度な強度の酸を発生させるために、好ましい。また、発生酸を(A)成分のオニウム塩と組み合わせて交換反応を起こすことによりLERを改善するという効果を奏するために、光酸発生剤から発生する酸のpKaは-3.0~1.5の範囲にあることが好ましく、-1.0~1.5の範囲にあることがより好ましい。
【0123】
光酸発生剤としては、特に、以下に示す構造のスルホネートアニオンを有するスルホニウム塩が好ましい。このとき、対をなすカチオンとしては、式(B7)及び(B8)中のスルホニウムカチオンの具体例として前述したものが好ましい。
【化36】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
(E)酸発生剤の含有量は、(B)ベースポリマー100質量部に対し、2~20質量部が好ましく、5~15質量部がより好ましい。なお、ベースポリマーとして繰り返し単位B6~B8を含むものを使用する場合は、光酸発生剤の配合を省略してもよい。
【0130】
[(F)塩基性化合物]
本発明のレジスト組成物は、パターンの形状補正等を目的に、(A)成分以外のクエンチャーとして(F)塩基性化合物を含んでもよい。塩基性化合物を添加することにより、酸拡散を効果的に制御することができ、かつ、被加工基板として、最表面がクロムを含む材料からなる基板を用いた場合でも、レジスト膜内に発生する酸によるクロムを含む材料への影響を抑えることができる。
【0131】
前記塩基性化合物としては多数が知られており、第1級、第2級又は第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が挙げられる。これらの具体例は、例えば特許第4575479号公報に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができ、また、2つ以上の塩基性化合物を選択し、混合して使用することもできる。特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミンN-オキシド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0132】
(F)塩基性化合物の含有量は、(B)ベースポリマー100質量部に対し、0~10質量部が好ましく、0~5質量部がより好ましい。(F)塩基性化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0133】
[(G)界面活性剤]
本発明のレジスト組成物には、被加工基板への塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。(G)界面活性剤の含有量は、(B)ベースポリマー100質量部に対し、0~2質量部が好ましい。
【0134】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は、基板上に、前述したレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程を含む。
【0135】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、Si、SiO、SiO2等)等の被加工基板上に、スピンコーティング等の方法で膜厚が0.03~2μmとなるように前述したレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0136】
前記レジスト膜の上に、導電性高分子を含む帯電防止膜を設けてもよい。これにより、EBによる帯電現象(チャージアップ)を防ぐことができ、描画位置精度が格段に向上する。前記帯電防止膜としては、ポリアニリン系高分子やポリチオフェン系高分子等の導電性高分子を含むものが好ましく、例えば、特開2016-200634号公報に記載されたものを使用することができる。
【0137】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー(KrF、ArF等)、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線、EB等が挙げられる。前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線等を用いる場合は、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2、より好ましくは10~100mJ/cm2となるように、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて照射する。高エネルギー線としてEBを用いる場合は、露光量が好ましくは1~300μC/cm2、より好ましくは10~200μC/cm2となるように、直接又は目的のパターンを形成するためのマスクを用いて描画する。なお、本発明のレジスト組成物は、EUV又はEBリソグラフィーに特に有用である。
【0138】
露光は、通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジスト膜との間に液体を挿入する液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0139】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1~3分間、好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0140】
本発明のレジスト組成物は、特に解像性が良好でLERが小さいパターンを形成することができるため、有用である。また、本発明のレジスト組成物は、レジストパターンの密着性が取り難いことからパターン剥がれやパターン崩壊を起こしやすい材料を表面に持つ基板のパターン形成に特に有用である。このような基板として、金属クロムや酸素、窒素及び炭素から選ばれる1以上の軽元素を含むクロム化合物を最表面にスパッタリング成膜した基板、SiOxを最表層に含む基板等が挙げられる。本発明のレジスト組成物は、特に、基板としてフォトマスクブランクを用いたパターン形成に有用である。
【実施例】
【0141】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、共重合組成比はモル比であり、Mwは、THFを溶剤として用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【0142】
[1]オニウム塩の合成
[実施例1-1]Salt-1の合成
【化41】
【0143】
2,4,6-トリシクロへキシルベンゼンスルホニルクロリド(1)100gをTHF1,000gに溶解させた後、28質量%NH3水溶液28.7gを加え、室温で12時間攪拌した。次いで、塩化メチレン3,000gを加え、有機層を分取し、水洗を行った後、減圧濃縮することで、目的物である2,4,6-トリシクロへキシルベンゼンスルホンアミド(2)90.1gを白色固体として得た(収率95%)。
得られた2,4,6-トリシクロへキシルベンゼンスルホンアミド(2)20gを、塩化メチレン(CH2Cl2)200gに溶解させた後、p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl)11.3g及びDMAP1.2gを加え、氷冷下、トリエチルアミン(Et3N)7.5gを滴下し、室温で6時間攪拌した。その後、5質量%HCl水溶液180g、塩化メチレン200gを加え、有機層を分取し、水洗を行った。得られた有機層に6質量%10-フェニルフェノキサチイニウムクロリド水溶液(3)517gを加えて、再び有機層を分取し、水洗を行った後、減圧濃縮した。濃縮液にトルエンを加え、再び濃縮を行い、析出した固体をジイソプロピルエーテルで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで、目的物である10-フェニルフェノキサチイニウム=2,4,6-トリシクロへキシル-N-(パラトルエンスルホニル)ベンゼンスルホンアミダート(4)27.3gを白色固体として得た(収率66%)。これをSalt-1とした。
【0144】
[実施例1-2]Salt-2の合成
2,4,6-トリシクロへキシルベンゼンスルホニルクロリドを2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリドにかえ、p-トルエンスルホニルクロリドをベンゼンスルホニルクロリドにかえた以外は、実施例1-1と同様の方法で、10-フェニルフェノキサチイニウム=2,4,6-トリイソプロピル-N-(ベンゼンスルホニル)ベンゼンスルホンアミダートを合成した。これをSalt-2とした。
【0145】
[実施例1-3]Salt-3の合成
2,4,6-トリシクロへキシルベンゼンスルホニルクロリドを2,5-ジメチルベンゼンスルホニルクロリドにかえ、p-トルエンスルホニルクロリドをメタンスルホニルクロリドにかえ、10-フェニルフェノキサチイニウムクロリド水溶液をトリフェニルスルホニウムクロリド水溶液にかえた以外は、実施例1-1と同様の方法で、トリフェニルスルホニウム=2,5-ジメチル-N-(メタンスルホニル)ベンゼンスルホンアミダートを合成した。これをSalt-3とした。
【0146】
[実施例1-4]Salt-4の合成
2,4,6-トリシクロへキシルベンゼンスルホニルクロリドを2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリドにかえ、p-トルエンスルホニルクロリドをトリフルオロメタンスルホニルクロリドにかえ、10-フェニルフェノキサチイニウムクロリド水溶液をトリフェニルスルホニウムクロリド水溶液にかえた以外は、実施例1-1と同様の方法で、トリフェニルスルホニウム=2,4,6-トリイソプロピル-N-(トリフルオロメタンスルホニル)ベンゼンスルホンアミダートを合成した。これをSalt-4とした。
【0147】
[実施例1-5]Salt-5の合成
メタンスルホンアミド14.3gを水100gに溶解し、10-カンファースルホニルクロリド25.1gを加え、更に水酸化カリウム8.4gを加えた。室温で3時間攪拌した後、塩化メチレン1,000gを加え、そこへトリフェニルスルホニウムクロリド水溶液を加えて30分攪拌した。有機層を分取し、有機層を水300gで2回洗浄した。有機層を濃縮し、クロマトグラフィーによって生成を行い、目的物を22.4g(収率40%)得た。これをSalt-5とした。
【0148】
[2]ポリマーの合成
[合成例1]ポリマー1の合成
3Lのフラスコに、4-アセトキシスチレン314.4g、4-クロロスチレン22.0g、インデン190.7g及び溶剤としてトルエン675gを添加した。この反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-65、和光純薬工業(株)製)を40.5g加えた。45℃まで昇温し、20時間反応させ、更に55℃まで昇温し、20時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール15.0L溶液中に加えて沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、40℃で減圧乾燥し、白色重合体309gを得た。
この重合体をメタノール488g及びTHF540gの混合溶剤に再度溶解し、トリエチルアミン162g及び水32gを加え、60℃で40時間脱保護反応を行った。この反応溶液を濃縮した後、酢酸エチル870gに溶解し、水250g及び酢酸98gの混合溶液で中和分液洗浄を1回、更に水225g及びピリジン75gの混合溶剤で1回、水225gで4回の分液洗浄を行った。この後、上層の酢酸エチル溶液を濃縮し、アセトン250gに溶解し、これを水15Lに加えて沈殿させた。沈殿を濾別し、50℃、40時間の真空乾燥を行い、白色重合体223gを得た。
得られた重合体を
13C-NMR、
1H-NMR及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化42】
Mw=4,500
Mw/Mn=1.65
これをポリマー1とした。
【0149】
[合成例2]ポリマー7の合成
窒素雰囲気下、3,000mLの滴下シリンダーに4-ヒドロキシスチレンの50.0質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液890g、アセナフチレン47.7g、4-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)スチレンの54.7質量%PGMEA溶液310g、トリフェニルスルホニウム-1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メタクリロイルオキシプロパン-1-スルホネート87.0g、ジメチル-2,2'-アゾビス-(2-メチルプロピオネート)(V-601、和光純薬工業(株)製)96.1g及び溶剤としてγ-ブチロラクトン360gとPGMEA220gとを加え、溶液を調製した。更に、窒素雰囲気下とした別の5,000mL重合用フラスコにγ-ブチロラクトンを580g加え、80℃に加熱した状態で、前記溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら18時間攪拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を22.5kgのジイソプロピルエーテルに滴下すると共重合体が凝集した。デカンテーションによりジイソプロピルエーテルを除去し、共重合体をアセトン2,250gに溶解した。このアセトン溶液を22.5kgのジイソプロピルエーテルに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体を再度アセトン2,250gに溶解し、このアセトン溶液を22.5kgの水に滴下し、析出した共重合体を濾別した。その後、40℃で40時間乾燥し、白色重合体を700g得た。
得られた重合体を
13C-NMR、
1H-NMR及びGPCで測定したところ、以下の分析結果となった。
【化43】
Mw=13,000
Mw/Mn=1.62
これをポリマー7とした。
【0150】
[合成例3~13]ポリマー2~6、8~13の合成
各単量体の種類、導入比(モル比)をかえた以外は、合成例1と同じ方法で表1に示したポリマー2~6を合成し、合成例2と同じ方法で表1に示したポリマー8~13を合成した。
表1に、ポリマー1~13の単量体の種類と導入比をまとめて示す。また、ポリマーに導入した繰り返し単位の構造を表2~5に示す。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
[3]ネガ型レジスト組成物の調製
[実施例2-1~2-23、比較例1-1~1-7]
ベースポリマーとしてポリマー1~13、酸発生剤(PAG-1~PAG-4)、クエンチャーとして本発明のオニウム塩(Salt-1~Salt-5)又は比較例用クエンチャー(Q-1~Q-3)、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(TMGU)を、それぞれ表6及び7に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、更に各組成物を0.2μmサイズのフィルター又は0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ネガ型レジスト組成物を調製した。なお、用いた溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)である。
また、全ての組成物に、界面活性剤としてPF-636(OMNOVA SOLUTIONS社製)を、0.075質量部添加した。
【0157】
【0158】
【0159】
なお、表6及び7中、Salt-1~Salt-5、Q-1~Q-3、及びPAG-1~PAG-4の構造は、以下のとおりである。
【化44】
【0160】
【0161】
【0162】
[4]EB描画解像性評価
[実施例3-1~3-23、比較例2-1~2-7]
ネガ型レジスト組成物R-1~R-23及びCR-1~CR-7を、それぞれACT-M(東京エレクトロン(株)製)を用いて152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして膜厚80nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定は、ブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM-5000 plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、120℃で600秒間PEBを施し、2.38質量%TMAH水溶液で現像を行い、ネガ型のレジストパターンを得た。
【0163】
得られたレジストパターンを次のように評価した。作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、400nmの1:1のラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、400nmのLSを1:1で解像する露光量における最小寸法をLS解像度(限界解像性)、200nmLSのLERをSEMで測定した。また、アイソライン(IL)、アイソスペース(IS)についての限界解像性(IL解像度、IS解像度)も測定した。なお、ILは、孤立した一本のラインパターンの解像性であり、ISは、孤立した一本のスペースパターンの解像性である。パターン形状については矩形か否かを目視にて判定した。各レジスト組成物の評価結果を表8に示す。
【0164】
【0165】
本発明のオニウム塩を含むレジスト組成物(実施例3-1~3-23)はいずれも良好な解像性、良好なパターン矩形性を示し、LERも良好な値を示した。一方、比較例2-1~2-7のレジスト組成物は、解像性とLERが実施例と比べて劣っていた。
【0166】
以上説明したことから明らかなように、本発明のレジスト組成物を用いれば、描画により解像性が良好でLERが小さいパターンを形成することができる。また、大電流描画時に発生するケミカルフレアや局所的な熱に対してもパターン欠陥、現像残渣なくパターンを形成することができる。これを用いたレジストパターン形成方法は、半導体素子製造、特にフォトマスクブランクの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。