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特許7099453封止用フィルム、封止構造体及び封止構造体の製造方法
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  • 特許-封止用フィルム、封止構造体及び封止構造体の製造方法 図1
  • 特許-封止用フィルム、封止構造体及び封止構造体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】封止用フィルム、封止構造体及び封止構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20220705BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220705BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220705BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220705BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20220705BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08L63/00 C
C08K3/013
H01L23/28 C
C08G59/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019514667
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017256
(87)【国際公開番号】W WO2018199306
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2017090351
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 裕介
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊
(72)【発明者】
【氏名】石毛 紘之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052290(WO,A1)
【文献】特開2013-082785(JP,A)
【文献】特開平06-322348(JP,A)
【文献】特開2015-089940(JP,A)
【文献】特開2012-182407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G59/00- 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有する熱硬化性樹脂と、エポキシ樹脂と、無機充填材と、を含有する樹脂組成物からなり、
前記熱硬化性樹脂における前記式(1)で表される構造単位の含有量は、前記熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、20モル%以上であり、
基板上にバンプを介して設けられた被封止体を封止するために用いられる、封止用フィルム。
【化1】

[式(1)中、Xは、水酸基を示し、Rは、炭素数2~25の炭化水素基を示す。]
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、下記式(2)で表される構造単位を更に有する、請求項1に記載の封止用フィルム。
【化2】

[式(2)中、Xは、反応性官能基を示し、Rは、水素原子又はフェニル基を示す。]
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量は500以上である、請求項1又は2に記載の封止用フィルム。
【請求項4】
膜厚は20~250μmである、請求項1~のいずれか一項に記載の封止用フィルム。
【請求項5】
基板と、当該基板上にバンプを介して設けられた被封止体と、を備え、前記基板と前記被封止体との間に中空領域が設けられている、中空構造体を用意し、
請求項1~のいずれか一項に記載の封止用フィルムにより前記被封止体を封止する、封止構造体の製造方法。
【請求項6】
前記被封止体は、前記中空領域側に電極を有するSAWデバイスである、請求項に記載の封止構造体の製造方法。
【請求項7】
基板と、当該基板上にバンプを介して設けられた被封止体と、当該被封止体を封止する請求項1~のいずれか一項に記載の封止用フィルムの硬化物と、を備え、
前記基板と前記被封止体との間に中空領域が設けられている、封止構造体。
【請求項8】
前記被封止体は、前記中空領域側に電極を有するSAWデバイスである、請求項に記載の封止構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用フィルム、封止構造体及び封止構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等に代表される、持ち運ぶことを前提に作られた電子機器の発達に伴い、半導体装置の小型化、薄型化が進行している。同様に、そこで用いられる電子部品装置の小型化、薄型化の要求が高まっている。そのため、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイスのような可動部を有する電子部品をパッケージ化する技術が種々検討されている。SAWデバイスは、圧電体の薄膜又は圧電基板上に規則性のある櫛型電極が形成された電子部品であり、表面弾性波を利用して、特定の周波数帯域の電気信号を取り出すことができる電子部品である。
【0003】
このような可動部を有する電子部品をパッケージ化する場合、可動部の可動性を確保するための空間を設ける必要がある。例えば、SAWデバイスでは、くし型電極を形成している面に他の物質が付着すると所望の周波数特性が得られないことから、中空構造の形成が必須となっている。
【0004】
従来、中空構造を形成するために、圧電基板上にリブ等を形成したのちに蓋をする封止方法が行われてきた(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では、工程数が増加すること、及び、封止部分の高さが高いことから、電子部品装置の薄型化が難しいといった課題があった。
【0005】
そこで、くし形電極が形成されたチップがバンプを介して基板にフリップチップ実装された中空構造体を用意し、基板とチップとの間に中空領域を設けた状態でチップの封止を行う方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-16466号公報
【文献】特許第4989402号
【文献】特開2016-175976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板と被封止体との間に中空領域を設けた状態で被封止体を封止する場合、被封止体に対する優れた埋め込み性を確保しつつ、中空領域への封止材料(封止用フィルムを構成する樹脂組成物)の流入を充分抑制することは困難である。例えば、特許文献2及び3の技術では、充分な埋め込み性を確保しようとした場合、基材と被封止体との間の中空領域に封止材料が入り込む場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、被封止体に対する埋め込み性に優れると共に、基板と被封止体との間の中空領域への封止材料の流入を充分抑制することができる封止用フィルム、当該封止用フィルムを用いた封止構造体及び当該封止構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、まず、封止用フィルムを構成する樹脂組成物の溶融粘度を所望の範囲に調整することを考え、樹脂組成物に対しエラストマー成分を添加すること、無機充填剤の配合量を調整すること等を検討した。しかしながら、これらの手法により溶融粘度を所望の範囲に調整することのみで上記課題を解決することは困難であった。本発明者らは、熱硬化性樹脂に着目し、更に検討を行ったところ、特定の熱硬化性樹脂の主骨格中に特定の側鎖基を導入することで、封止用フィルムの流動性の制御が容易となり、被封止体に対する優れた埋め込み性を確保しつつ、基板と被封止体との間の中空領域への封止材料(封止用フィルムを構成する樹脂組成物)の流入を充分抑制することができることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明の一側面は、下記式(1)で表される構造単位を有する熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する樹脂組成物からなる、封止用フィルムに関する。
【化1】
[式(1)中、Xは、反応性官能基を示し、Rは、炭素数2~25の炭化水素基を示す。]
【0011】
上記封止用フィルムによれば、被封止体に対する優れた埋め込み性を確保しつつ、基板と被封止体との間の中空領域への封止材料の流入を充分抑制することができる。すなわち、上記封止用フィルムによれば、埋め込み性と中空非充填性とを両立することができる。さらに、上記封止用フィルムによれば、硬化後のガラス転移温度(Tg)が充分となりやすく、封止構造体の信頼性(熱信頼性)を向上させやすい。
【0012】
上記熱硬化性樹脂は、下記式(2)で表される構造単位を更に有してよい。この場合、中空非充填性を充分維持しつつ、被封止体に対する埋め込み性を更に向上させることができる。
【化2】
[式(2)中、Xは、反応性官能基を示し、Rは、水素原子又はフェニル基を示す。]
【0013】
上記Xは水酸基であってよい。この場合、耐熱性及び難燃性に優れる。また、このような熱硬化性樹脂は安価に作製できる。
【0014】
上記樹脂組成物は、エポキシ樹脂を更に含有してよい。この場合、機械的強度に優れると共に、硬化時の収縮が少なく、寸法安定性に優れる。また、耐熱性、耐水性及び耐薬品性に優れ、電気絶縁性に優れる。
【0015】
上記熱硬化性樹脂における上記式(1)で表される構造単位の含有量は、上記熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、20モル%以上であってよい。この場合、埋め込み性と中空非充填性とをより高水準で両立することができる。
【0016】
上記熱硬化性樹脂の重量平均分子量は500以上であってよい。この場合、被封止体に対する埋め込み性と中空非充填性とをより高水準で両立することができる。
【0017】
上記封止用フィルムの膜厚は20~250μmであってよい。
【0018】
上記封止用フィルムは、基板上にバンプを介して設けられた被封止体を封止する用途に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の一側面は、基板と、当該基板上にバンプを介して設けられた被封止体と、を備え、上記基板と上記被封止体との間に中空領域が設けられている、中空構造体を用意し、上記本発明の封止用フィルムにより上記被封止体を封止する、封止構造体の製造方法に関する。この方法によれば、被封止体が充分に埋め込まれていると共に、中空領域が充分に確保された封止構造体得ることができる。
【0020】
上記製造方法において、被封止体は、中空領域側に電極を有するSAWデバイスであってよい。上記製造方法では、SAWデバイスを充分に埋め込むことができると共に、SAWデバイスの電極を有する面に封止材料が付着することを充分に抑制することができる。そのため、上記製造方法によれば、SAWデバイスの信頼性を向上させることができる。また、同様の理由から、上記製造方法では、このような被封止体を備える封止構造体(中空封止構造体)の製造における歩留まりを向上させることができる。
【0021】
本発明の一側面は、基板と、当該基板上にバンプを介して設けられた被封止体と、当該被封止体を封止する上記本発明の封止用フィルムの硬化物と、を備え、上記基板と上記被封止体との間に中空領域が設けられている、封止構造体に関する。この封止構造体では、被封止体が充分に埋め込まれていると共に、中空領域が充分に確保されている。
【0022】
上記封止構造体において、被封止体は、中空領域側に電極を有するSAWデバイスであってよい。この封止構造体では、SAWデバイスが充分に埋め込まれていると共に、SAWデバイスの電極を有する面への封止材料の付着が充分に抑制されている。そのため、SAWデバイスの信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被封止体に対する埋め込み性に優れると共に、基板と被封止体との間の中空領域への封止材料の流入を充分抑制することができる封止用フィルム、当該封止用フィルムを用いた封止構造体及び当該封止構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態の封止用フィルムを備える支持体付き封止用フィルムを示す模式断面図である。
図2図2は、中空封止構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書中に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本明細書中において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0027】
<封止用フィルム>
本実施形態の封止用フィルムは、熱硬化性成分及び無機充填材を含有するフィルム状の樹脂組成物である。本実施形態の封止用フィルムは、熱硬化性成分として、下記式(1)で表される構造単位を有する熱硬化性樹脂を含有する。
【化3】
[式(1)中、Xは、反応性官能基を示し、Rは、炭素数2~25の炭化水素基を示す。]
【0028】
本実施形態の封止用フィルムは、基板と、該基板上に設けられた被封止体(例えば、SAWデバイス等の電子部品)と、該基板と該被封止体との間に設けられた中空領域と、を備える中空構造体に対して好適に用いられる。本実施形態の封止フィルムによれば、被封止体に対する埋め込み性と中空非充填性とを両立することができる。このような効果が得られる理由は、明らかではないが、本発明者らは次のように推察している。すなわち、本実施形態の封止用フィルムでは、上記式(1)で表される構造単位中のRが立体障害となることで、熱硬化性樹脂の封止フィルム中での流動が抑制され、中空領域への樹脂組成物の流れ込みが抑制される。一方、Rが適度な大きさであり、封止時の剪断応力によって立体障害が緩和されるため、被封止体に対する埋め込み性が阻害されない。このような理由から、本実施形態の封止フィルムによれば、上記効果が得られると推察される。
【0029】
ところで、封止用フィルムに過剰量のエラストマーを添加することにより封止材料(特に熱硬化性樹脂)の中空領域への流れ込みを防止することも考えられるが、この手法では、埋め込み性が低下する場合があるだけでなく、硬化後のTgが低下する場合があり、封止構造体の信頼性(熱信頼性)の確保が困難となりうる。一方、本実施形態の封止用フィルムでは、過剰量のエラストマーを用いる必要がなく、また、上記式(1)で表される構造単位を有するため、硬化後のTgを充分に確保することができる。
【0030】
(熱硬化性成分)
熱硬化性成分としては、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤等が挙げられる。熱硬化性成分は、硬化剤及び/又は硬化促進剤を含むことなく、熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。また、熱硬化性成分は、少なくとも上記式(1)で表される構造単位を有する熱硬化性樹脂(以下、「第1の熱硬化性樹脂」ともいう。)を含有するが、第1の熱硬化性樹脂以外の熱硬化性樹脂(以下、「第2の熱硬化性樹脂」ともいう。)を更に含有していてもよい。
【0031】
[第1の熱硬化性樹脂]
第1の熱硬化性樹脂は少なくとも上記式(1)で表される構造単位を有する。
【0032】
で表される反応性官能基は、他の反応性官能基と熱により反応することができる官能基であればよい。本実施形態では、例えば、第1の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基が他の反応性官能基と熱により反応することで三次架橋構造が形成され、封止用フィルムが硬化される。反応性官能基としては、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、安価に作製できる観点、並びに、耐熱性及び難燃性に優れる観点から、水酸基(フェノール性水酸基)であることが好ましい。換言すれば、第1の熱硬化性樹脂はフェノール樹脂を含むことが好ましい。なお、反応性官能基と反応する他の反応性官能基は、第1の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基であってよく、第2の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基であってもよく、硬化剤が有する反応性官能基であってもよい。
【0033】
で表される炭化水素基は、直鎖状又は分枝状のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。炭化水素基が不飽和炭化水素基である場合、不飽和炭化水素基は、2以上の不飽和結合を有していてもよい。
【0034】
炭化水素基の炭素数は、中空非充填性がより良好となる観点から、4以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましく、15以上であることが特に好ましい。特に、炭化水素基の炭素数が15以上である場合、弾性率を低減できると共に、割れ性及び反り性を向上させることができる。炭化水素基の炭素数は、埋め込み性がより良好となる観点から、22以下であってよく、20以下であってもよく、18以下であってもよい。上述の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。したがって、炭化水素基の炭素数は、例えば、4~22であってよく、8~20であってもよく、10~18であってもよく、15~18であってもよい。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0035】
本実施形態では、炭化水素基の主鎖が長いほど中空非充填性が良好となりやすく、硬化後のTgが充分となりやすい。このような観点から、炭化水素基が分枝状である場合、分枝状の炭化水素基の主鎖の炭素数は、2以上であってよく、4以上であってもよく、6以上であってもよい。分枝状の炭化水素基の主鎖の炭素数は、埋め込み性がより良好となる観点から、22以下であってよく、20以下であってもよく、18以下であってもよい。
【0036】
直鎖状の炭化水素基としては、例えば、-(CH14CH、-(CHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCH、-(CHCH=CHCHCH=CHCH=CHCH、-(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH等が挙げられる。
【0037】
分枝状の炭化水素基としは、例えば、-C(CHCH、-C(CHCHC(CHCH等が挙げられる。
【0038】
上記式(1)におけるRの位置は、-Xに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。立体障害を起こしにくく、反応性に優れる観点から、Rの位置は、-Xに対し、パラ位であることが好ましい。
【0039】
結合手(-*及び-CH-*)の位置は、-Xに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。Rが及ぶ範囲が広くなる観点から、結合手の位置は、Xに対し、オルト位であることが好ましい。例えば、式(1)で表される構造単位は、下記式(1a)で表される構造単位を含んでいてよい。
【化4】
[式(1a)中、上記式(1)中のXと同一であり、Rは、上記式(1)中のRと同一である。]
【0040】
第1の熱硬化性樹脂は、上記式(1)で表される構造単位のみからなっていてよい。この場合、上記式(1)で表される構造単位は複数であってよい。上記式(1)で表される構造単位が複数である場合、複数のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。第1の熱硬化性樹脂は、例えば、異なる複数の構造単位からなるランダム共重合体であってよく、ブロック共重合であってもよい。
【0041】
上記式(1)で表される構造単位が複数である場合、第1の熱硬化性樹脂は、Rが炭素数6以上の炭化水素基である構造単位(1A)と、Rが炭素数5以下の炭化水素基である構造単位(1B)と、を含むことが好ましい。
【化5】
[式(1A)中、Xは、上記式(1)中のXと同一であり、R1Aは、炭素数6以上の炭化水素基を示す。]
【化6】
[式(1B)中、Xは、上記式(1)中のXと同一であり、R1Bは、炭素数5以下の炭化水素基を示す。]
【0042】
第1の熱硬化性樹脂における上記式(1)で表される構造単位のうち、構造単位(1A)の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、20モル%以上であってよく、30モル%以上であってもよく、40モル%以上であってもよい。構造単位(1A)の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、100モル%以下であってよく、90モル%以下であってもよく、80モル%以下であってもよい。これらの観点から、構造単位(1A)の含有量は、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、20~100モル%であってよく、30~90モル%であってもよく、40~80モル%であってもよい。
【0043】
第1の熱硬化性樹脂における上記式(1)で表される構造単位のうち、構造単位(1B)の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、0モル%超であってよく、10モル%以上であってもよく、20モル%以上であってもよい。構造単位(1B)の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、80モル%以下であってよく、70モル%以下であってもよく、60モル%以下であってもよい。これらの観点から、構造単位(1B)の含有量は、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、0モル%超80モル%以下であってよく、10~70モル%であってもよく、20~60モル%であってもよい。
【0044】
構造単位(1B)に対する構造単位(1A)のモル比は、被封止体に対する埋め込み性と中空非充填性とをより高水準で両立することができる観点から、0.5以上であってよく、また、3.0以下であってよい。したがって、構造単位(1B)に対する構造単位(1A)のモル比は、例えば、0.5~3.0であってよい。
【0045】
第1の熱硬化性樹脂は、上記式(1)で表される構造単位以外の他の構造単位を更に有していてもよい。他の構造単位としては、例えば、下記式(2)で表される構造単位が挙げられる。
【化7】
[式(2)中、Xは、反応性官能基を示し、Rは、水素原子又はフェニル基を示す。式(2)で表される構造単位が複数である場合、複数のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0046】
で表される反応性官能基の例としては、Xの例と同じものをあげることができ、好ましいものの例も同じである。
【0047】
上記式(2)におけるRの位置は、-Xに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。立体障害を起こしにくく、反応性に優れる観点から、Rの位置は、-Xに対し、パラ位であることが好ましい。
【0048】
結合手(-*及び-CH-*)の位置は、-Xに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。熱硬化性樹脂の体積が小さくなり、反応性が向上する観点から、結合手の位置は、-Xに対し、オルト位であることが好ましい。例えば、式(2)で表される構造単位は、下記式(2b)で表される構造単位を含んでいてよい。
【化8】
[式(2b)中、Xは、上記式(2)中のXと同一であり、Rは、上記式(2)中のRと同一である。]
【0049】
第1の熱硬化性樹脂における上記式(1)で表される構造単位の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、20モル%以上であってよく、30モル%以上であってもよく、40モル%以上であってもよい。第1の熱硬化性樹脂における上記式(1)で表される構造単位の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、100モル%以下であってよく、90モル%以下であってもよく、80モル%以下であってもよい。これらの観点から、第1の熱硬化性樹脂における上記式(1)で表される構造単位の含有量は、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、20~100モル%であってよく、30~90モル%であってもよく、40~80モル%であってもよい。
【0050】
第1の熱硬化性樹脂における上記式(2)で表される構造単位の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、0モル%超であってよく、10モル%以上であってもよく、20モル%以上であってもよい。第1の熱硬化性樹脂における上記式(2)で表される構造単位の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、80モル%以下であってよく、70モル%以下であってもよく、60モル%以下であってもよい。これらの観点から、第1の熱硬化性樹脂における上記式(2)で表される構造単位の含有量は、熱硬化性樹脂を構成する構造単位の全量を基準として、0モル%超80モル%以下であってよく、10~70モル%であってもよく、20~60モル%であってもよい。
【0051】
第1の熱硬化性樹脂における上記式(2)で表される構造単位に対する上記式(1)で表される構造単位のモル比は、被封止体に対する埋め込み性と中空非充填性とをより高水準で両立することができる観点から、0.5以上であってよく、また、3.0以下であってよい。したがって、上記式(2)で表される構造単位に対する上記式(1)で表される構造単位のモル比は、例えば、0.5~3.0であってよい。
【0052】
第1の熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、被封止体に対する埋め込み性と中空非充填性とをより高水準で両立することができる観点から、500~1000000であってよく、500~500000であってもよく、500~300000であってもよい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0053】
第1の熱硬化性樹脂の反応性官能基当量は、樹脂の架橋点が多くなり、硬化後のTgが高くなる観点から、100g/eq.以上、110g/eq.以上、120g/eq.以上又は130g/eq.以上であってよく、また、同様の観点から、250g/eq.以下、240g/eq.以下、210g/eq.以下又は200g/eq.以下であってよい。したがって、第1の熱硬化性樹脂の反応性官能基当量は、例えば、100~250g/eq.であってよく、110~240g/eq.であってもよく、120~210g/eq.であってもよく、130~200g/eq.であってもよい。なお、「反応性官能基当量」とは、熱硬化性樹脂が有する反応性官能基1当量(1eq.)あたりの熱硬化性樹脂の質量(g/eq.)を意味する。反応性官能基当量は、例えば、反応性官能基がエポキシ基である場合には、熱硬化性樹脂をクロロホルムに溶解させた後、得られた溶液に、酢酸及び臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、過塩素酸酢酸標準液により電位差滴定し、全てのエポキシ基が反応した終点を検出することによって測定される。また、反応性官能基当量が水酸基である場合には、熱硬化性樹脂にアセチル化試薬を加え、グリセリン浴中で加熱し、放冷した後、指示薬として、フェノールフタレイン溶液を加えて、水酸化カリウムエタノール溶液で滴定することによって測定される。
【0054】
第1の熱硬化性樹脂は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、25℃で液状であってよい。なお、「25℃で液状」とは、E型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であることを指す。
【0055】
上記式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、例えば、下記式(3)で表される化合物を従来公知の方法により重合させることで得ることができる。また、上記式(1)で表される構造単位と、上記式(2)で表される構造単位と、を有する樹脂は、下記式(3)で表される化合物と、下記式(4)で表される化合物と、を従来公知の方法により共重合させることにより得ることができる。
【化9】
[式(3)中、Xは、上記式(1)中のXと同一であり、Rは、上記式(1)中のRと同一である。Rの位置は、-Xに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。]
【化10】
[式(4)中、Xは、上記式(2)中のXと同一であり、Rは、上記式(2)中のRと同一である。Rの位置は、-Xに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。]
【0056】
例えば、Xが水酸基である場合、第1の熱硬化性樹脂は、下記式(3a)で表される置換基含有フェノールと、ホルムアルデヒドと、場合により下記式(4a)で表される置換基含有フェノールと、を反応させることにより得ることができる。本実施形態では、式(3a)で表される置換基含有フェノール及び式(4a)で表される置換基含有フェノールの使用量を調整すること等により、第1の熱硬化性樹脂が有する各構造単位の含有量を調整することができる。
【化11】
[式(3a)中、Rは、上記式(1)中のRと同一である。Rの位置は、-OHに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。]
【化12】
[式(4a)中、Rは、上記式(2)中のRと同一である。Rの位置は、-OHに対し、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよい。]
【0057】
また、例えば、Xがエポキシ基である場合、第1の熱硬化性樹脂は、上記式(3a)で表される置換基含有フェノールと、エピクロルヒドリンとを、30%NaOH溶液中で反応させることにより得ることができる。本実施形態では、式(3a)で表される置換基含有フェノール及び式(4a)で表される置換基含有フェノールの使用量を調整すること等により、第1の熱硬化性樹脂が有する各構造単位の含有量を調整することができる。
【0058】
第1の熱硬化性樹脂の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、1質量%以上であってよく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。第1の熱硬化性樹脂の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。したがって、第1の熱硬化性樹脂の含有量は、封止用フィルムの総質量を基準として、例えば、1~50質量%であってよく、3~30質量%であってもよく、5~10質量%であってもよい。
【0059】
[第2の熱硬化性樹脂]
第2の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。第2の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基は、第1の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基と熱により反応する官能基であることが好ましい。例えば、第1の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基が水酸基(フェノール性水酸基)である場合、第2の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基はエポキシ基であることが好ましい。換言すれば、第1の熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である場合、第2の熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることが好ましい。この場合、機械的強度に優れると共に、硬化時の収縮が少なく、寸法安定性に優れる。また、耐熱性、耐水性及び耐薬品性に優れ、電気絶縁性に優れる。第2の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基は、第1の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基と同一であってよい。例えば、第1の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基が水酸基(フェノール性水酸基)である場合、第2の熱硬化性樹脂が有する反応性官能基は水酸基(フェノール性水酸基)であってよい。この場合、熱硬化性成分として硬化剤を用いることができる。
【0060】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であれば特に制限なく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂(ビキシレノールジグリシジルエーテル等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等)、及びこれらの樹脂の二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、エポキシ樹脂は、25℃で液状のエポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂)であってよい。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型のグリシジルエーテル、ビスフェノールS型のグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン等が挙げられる。
【0062】
市販のエポキシ樹脂としては、例えば、三菱化学株式会社製の商品名「jER825」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:175g/eq.)、三菱化学株式会社製の商品名「jER806」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160g/eq.)、DIC株式会社製の商品名「HP-4032D」(ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:141g/eq.)、DIC株式会社製の商品名「EXA-4850」等の柔軟強靭性エポキシ樹脂、DIC株式会社製の商品名「HP-4700」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、商品名「HP-4750」(3官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、商品名「HP-4710」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、商品名「エピクロンN-770」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、商品名「エピクロンN-660」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)及び商品名「エピクロンHP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の商品名「EPPN-502H」(トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)及び商品名「NC-3000」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学株式会社製の商品名「ESN-355」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学株式会社製の商品名「YX-8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、住友化学株式会社製の商品名「ESCN-190-2」(o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に制限なく公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、キシリレン変性ナフトール樹脂等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ナフトール類としては、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
【0064】
市販のフェノール樹脂としては、旭有機材工業株式会社製の商品名「PAPS-PN2」(ノボラック型フェノール樹脂)、エア・ウォーター株式会社製の商品名「SKレジンHE200C-7」(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂)、商品名「HE910-10」(トリスフェニルメタン型フェノール樹脂)、明和化成株式会社製の商品名「MEH-7000」、「DL-92」、「H-4」及び「HF-1M」、群栄化学工業株式会社製の商品名「LVR-8210DL」、「ELP」シリーズ及び「NC」シリーズ、新日鉄住金化学株式会社製の商品名「SN-100、SN-300、SN-395、SN-400」(ナフタレン型フェノール樹脂)、並びに、日立化成株式会社製の商品名「HP-850N」(ノボラック型フェノール樹脂)等が挙げられる。
【0065】
第2の熱硬化性樹脂の反応性官能基当量は、樹脂同士の架橋点を少なくし、硬化収縮を低減することにより、反り性及び割れ性を改善できる観点から、100g/eq.以上、120g/eq.以上又は140g/eq.以上であってよく、また、同様の観点から、500g/eq.以下、400g/eq.以下又は300g/eq.以下であってよい。したがって、第2の熱硬化性樹脂の反応性官能基当量は、例えば、100~500g/eq.であってよく、120~400g/eq.であってもよく、140~300g/eq.であってもよい。
【0066】
第2の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、1質量%以上であってよく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。エポキシ樹脂の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。したがって、エポキシ樹脂の含有量は、封止用フィルムの総質量を基準として、例えば、1~50質量%であってよく、3~30質量%であってもよく、5~10質量%であってもよい。
【0067】
第2の熱硬化性樹脂が液状エポキシ樹脂を含む場合、液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましく、7質量%以上が極めて好ましく、9質量%以上が非常に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、13質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、液状エポキシ樹脂の含有量は、封止用フィルムの総質量を基準として、0.5~20質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、3~20質量%が更に好ましく、5~20質量%が特に好ましく、7~15質量%が極めて好ましく、9~13質量%が非常に好ましい。
【0068】
液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、第2の熱硬化性樹脂の総質量を基準として、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、第2の熱硬化性樹脂の総質量を基準として、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、液状エポキシ樹脂の含有量は、第2の熱硬化性樹脂の総質量を基準として、20~95質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、50~80質量%が更に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、第2の熱硬化性樹脂の総質量を基準として100質量%であってもよい。
【0069】
第2の熱硬化性樹脂がフェノール樹脂を含む場合、フェノール樹脂の含有量は、埋め込み性がより良好となる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、1質量%以上であってよく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。フェノール樹脂の含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、50質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。したがって、フェノール樹脂の含有量は、封止用フィルムの総質量を基準として、例えば、1~50質量%であってよく、3~30質量%であってもよく、5~10質量%であってもよい。
【0070】
本実施形態では、被封止体に対する埋め込み性と中空非充填性とをより高水準で両立することができる観点から、熱硬化成分がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含むことが好ましく、第1の熱硬化性樹脂がフェノール樹脂を含み、且つ、第2の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量及びフェノール樹脂の含有量は、樹脂組成物中のフェノール性水酸基のモル数M1に対するエポキシ基のモル数M2の比を基準として設定することができる。
【0071】
樹脂組成物中のフェノール性水酸基のモル数M1に対するエポキシ基のモル数M2の比(M2/M1)は、0.7以上、0.8以上又は0.9以上であってよく、また、2.0以下、1.8以下又は1.7以下であってよい。したがって、比(M2/M1)は、例えば、0.7~2.0であってよく、0.8~1.8であってもよく、0.9~1.7であってもよい。
【0072】
[硬化剤]
硬化剤(熱硬化性樹脂に該当する成分は除く)としては、特に限定されないが、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂の硬化性に優れる観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、1~20質量%であってよく、2~15質量%であってもよく、3~10質量%であってもよい。
【0074】
[硬化促進剤]
硬化促進剤としては、特に制限なく用いることができるが、アミン系の硬化促進剤及びリン系の硬化促進剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。硬化促進剤としては、特に、優れた熱伝導率を有する硬化物が得られやすい観点、誘導体が豊富である観点、及び、所望の活性温度が得られやすい観点から、アミン系の硬化促進剤が好ましく、イミダゾール化合物、脂肪族アミン及び脂環族アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、イミダゾール化合物が更に好ましい。イミダゾール化合物としては、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の市販品としては、四国化成工業株式会社製の「2P4MZ」及び「1B2MZ」等が挙げられる。
【0075】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂の合計量を基準として、下記の範囲が好ましい。硬化促進剤の含有量は、充分な硬化促進効果が得られやすい観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましい。硬化促進剤の含有量は、封止用フィルムを製造する際の工程(例えば塗工及び乾燥)中、又は、封止用フィルムの保管中に硬化が進行しにくく、封止用フィルムの割れ、及び、溶融粘度の上昇に伴う成形不良を防止しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、硬化促進剤の含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.3~1.5質量%が更に好ましい。
【0076】
(無機充填材)
無機充填剤としては、従来公知の無機充填剤を使用でき、特に限定されない。無機充填剤の構成材料としては、シリカ類(無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、合成シリカ、中空シリカ等)、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。表面改質(例えば、シラン化合物による表面処理)等により、樹脂組成物中での分散性の向上効果、及び、ワニス中での沈降抑制効果が得られやすい観点、並びに、比較的小さい熱膨張率を有するために所望の硬化膜特性が得られやすい観点では、シリカ類を含む無機充填材が好ましい。高い熱伝導性が得られる観点では、酸化アルミニウムを含む無機充填材が好ましい。無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
無機充填材は、表面改質されていてもよい。表面改質の手法は特に限定されない。処理が簡便であり、官能基の種類が豊富であり、所望の特性を付与しやすい観点から、シランカップリング剤を用いた表面改質が好ましい。
【0078】
シランカップリング剤としては、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が挙げられる。
【0079】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン(フェニルアミノシラン等)等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
無機充填材の平均粒子径は、無機充填材の凝集を抑制しやすく、無機充填材の分散が容易である観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。無機充填材の平均粒子径は、ワニス中で無機充填材が沈降することが抑制されやすく、均質な封止用フィルムを作製しやすい観点から、25μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。これらの観点から、無機充填材の平均粒子径は、0.01~25μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.1~10μmが更に好ましく、0.3~5μmが特に好ましく、0.5~5μmが極めて好ましい。無機充填材の平均粒子径は、10~18μmであってもよい。
【0081】
樹脂組成物の流動性に優れる観点から、互いに異なる平均粒子径を有する複数の無機充填材を組み合わせて用いることが好ましい。無機充填材の組み合わせの中でも、最も大きい平均粒子径を有する無機充填材の平均粒子径が15~25μmである組み合わせが好ましい。平均粒子径が15~25μmの無機充填材と、平均粒子径が0.5~2.5μmの無機充填材と、平均粒子径が0.1~1.0μmの無機充填材と、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0082】
「平均粒子径」とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径であり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。組み合わせた各無機充填材の平均粒子径は、混合時の各無機充填材の平均粒子径から確認できると共に、粒度分布を測定することで確認することができる。
【0083】
無機充填材の市販品としては、デンカ株式会社製の「DAW20」、株式会社アドマテックス製の商品名「SC550O-SXE」及び「SC2050-KC」等が挙げられる。
【0084】
無機充填材の含有量は、熱伝導率を向上させる観点、及び、被封止体との熱膨張率の差によって封止構造体(例えば、半導体装置等の電子部品装置)の反りが大きくなることが抑制されやすい観点から、封止用フィルムの総質量を基準として70質量%以上であってよく、75質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、84質量%以上であってもよい。無機充填材の含有量は、封止用フィルムの作製の際の乾燥工程において封止用フィルムが割れてしまうことが抑制されやすい観点、及び、封止用フィルムの溶融粘度の上昇により流動性が低下することが抑制され、被封止体(電子部品等)を充分に封止しやすい観点から、封止用フィルムの総質量を基準として、93質量%以下であってよく、91質量%以下であってもよく、88質量%以下であってもよい。これらの観点から、無機充填材の含有量は、封止用フィルムの総質量を基準として、70~93質量%であってよく、75~91質量%であってもよく、80~91質量%であってもよく、84~91質量%であってもよく、84~88質量%であってもよい。なお、上記含有量は、表面処理剤の量を除いた無機充填材の含有量である。
【0085】
(エラストマー)
本実施形態の封止用フィルムは、必要に応じて、エラストマー(可とう剤)を含有してもよい。エラストマーは、分散性及び溶解性に優れる観点から、ポリブタジエン粒子、スチレンブタジエン粒子、アクリル系エラストマー、シリコーンパウダ、シリコーンオイル及びシリコーンオリゴマからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
エラストマーが粒子状である場合、エラストマーの平均粒子径に特に制限はない。eWLB(Embedded Wafer-Level Ball Grid Array)用途では、半導体素子間を埋め込む必要があることから、封止用フィルムをeWLB用途に用いる場合には、エラストマーの平均粒子径は、50μm以下であることが好ましい。エラストマーの平均粒子径は、エラストマーの分散性に優れる観点から、0.1μm以上であることが好ましい。
【0087】
エラストマーの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社製のアクリル系エラストマーである「SG-280 EK23」、「SG-70L」、「WS-023 EK30」等が挙げられる。また、市販のエラストマー成分の中には、エラストマー単体ではなく、予め液状樹脂(例えば、液状エポキシ樹脂)中に分散しているものもあるが、問題なく用いることができる。このような市販品としては、株式会社カネカ製の「MX-136」及び「MX-965」等が挙げられる。
【0088】
エラストマーの含有量は、中空非充填性がより良好となる観点から、熱硬化性成分とエラストマーの合計量を基準として、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。エラストマーの含有量は、埋め込み性がより良好となる観点、及び、硬化後に充分なTgが得られやすく、封止構造体の信頼性(熱信頼性)を向上させすい観点から、熱硬化性成分とエラストマーの合計量を基準として、30質量%以下であってよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。以上のことから、エラストマーの含有量は、熱硬化性成分とエラストマーの合計量を基準として、1~30質量%であってよく、5~25質量%であってもよく、10~20質量%以下であってもよい。
【0089】
(その他の成分)
本実施形態の封止用フィルムは、他の添加剤を更に含有することができる。このような添加剤の具体例としては、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等を挙げることができる。
【0090】
また、本実施形態の封止用フィルムは、溶剤(例えば、封止用フィルムの製造に用いた溶剤)を含有してもよい。溶剤としては、従来公知の有機溶剤であってよい。有機溶剤としては、無機充填材以外の成分を溶解できる溶剤であってよく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、ハロゲン類、エステル類、ケトン類、アルコール類、アルデヒド類等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
溶剤としては、環境負荷が小さい観点、及び、熱硬化性成分を溶解しやすい観点から、エステル類、ケトン類及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。その中でも、溶剤がケトン類である場合、熱硬化性成分を特に溶解しやすい。溶剤としては、室温(25℃)での揮発が少なく、乾燥時に除去しやすい観点から、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0092】
封止用フィルムに含まれる溶剤(有機溶剤等)の含有量は、封止用フィルムの総質量を基準として、下記の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量は、封止用フィルムが脆くなり封止用フィルムの割れ等の不具合が生じること、及び、最低溶融粘度が高くなり、埋め込み性が低下することを抑制しやすい観点から、0.2質量%以上であってよく、0.3質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよく、0.6質量%以上であってもよく、0.7質量%以上であってもよい。溶剤の含有量は、封止用フィルムの粘着性が強くなりすぎて取扱い性が低下する不具合、及び、封止用フィルムの熱硬化時における溶剤(有機溶剤等)の揮発に伴う発泡等の不具合を抑制しやすい観点から、1.5質量%以下であってよく、1質量%以下であってもよい。これらの観点から、溶剤の含有量は、0.2~1.5質量%がであってよく、0.3~1質量%であってもよく、0.5~1質量%であってもよく、0.6~1質量%であってもよく、0.7~1質量%であってもよい。
【0093】
封止用フィルムの厚さ(膜厚)は、塗工時における面内の厚みのバラつきが抑制されやすい観点から、20μm以上であってよく、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。封止用フィルムの厚さは、塗工時に深さ方向で一定の乾燥性が得られやすい観点から、250μm以下であってよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。これらの観点から、封止用フィルムの厚さは、20~250μmであってよく、30~250μmであってもよく、50~200μmであってもよく、100~150μmであってもよい。また、封止用フィルムを複数枚積層して、厚さ250μmを超える封止用フィルムを製造することもできる。
【0094】
封止用フィルムの硬化後のガラス転移温度Tgは、得られる封止構造体の信頼性(熱信頼性)の観点から、80~180℃であってよく、80~165℃であってもよく、80~150℃であってもよい。封止用フィルムの硬化後のガラス転移温度Tgは、熱硬化性成分の種類及び含有量、エラストマー成分の種類及び含有量等により調整することができる。ガラス転移温度Tgは、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0095】
封止用フィルムの35~200℃における溶融粘度の最低値(最低溶融粘度)は、埋め込み性がより良好となる観点から、100~10000Pa・sであってよく、250~8500Pa・sであってもよく、500~7000Pa・sであってもよい。封止用フィルムの70~90℃における溶融粘度の最大値(最大溶融粘度)は、中空非充填性がより良好となる観点から、500~25000Pa・sであってよく、4000~20000Pa・sであってもよく、6000~15000Pa・sであってもよい。上記最低溶融粘度及び最大溶融粘度は、実施例に記載の方法により封止用フィルムの溶融粘度を測定することにより求めることができる。
【0096】
上述したように、本実施形態の封止用フィルムは、中空構造体における被封止体を封止するために好適に用いられるが、封止対象となる構造体は中空構造を有していなくてもよい。本実施形態の封止用フィルムは、例えば、半導体デバイスの封止、プリント配線板に配置された電子部品の埋め込み等に用いることもできる。
【0097】
本実施形態の封止用フィルムは、例えば、支持体付き封止用フィルムとして用いることもできる。図1に示す支持体付き封止用フィルム10は、支持体1と、支持体1上に設けられた封止用フィルム2と、を備える。
【0098】
支持体1としては、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等のビニルフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどが挙げられる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0099】
支持体1の厚さは、特に限定されるものではないが、作業性及び乾燥性に優れる観点から、2~200μmであってよい。支持体1の厚さが2μm以上である場合、塗工時に支持体が切れる不具合、ワニスの重さで支持体がたわむ不具合等を抑制しやすい。支持体1の厚さが200μm以下である場合、乾燥工程において、塗工面及び裏面の両面から熱風が吹きつけられる場合に、ワニス中の溶剤乾燥が妨げられる不具合を抑制しやすい。
【0100】
本実施形態では、支持体1を用いなくてもよい。また、封止用フィルム2の支持体1とは反対側に、封止用フィルムの保護を目的とした保護層を配置してもよい。封止用フィルム2上に保護層を形成することで、取扱い性が向上し、巻き取りした場合に、支持体の裏面に封止用フィルムが張り付くといった不具合を回避することができる。
【0101】
保護層としては、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等のビニルフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどを例示することができる。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等を例示することができる。
【0102】
<封止用フィルムの製造方法>
本実施形態の封止用フィルムは、具体的には、次のようにして作製することができる。
【0103】
まず、本実施形態の樹脂組成物の構成成分(熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、溶剤等)を混合することでワニス(ワニス状樹脂組成物)を作製する。混合方法は、特に限定されず、ミル、ミキサ、撹拌羽根を使用できる。溶剤(有機溶剤等)は、封止用フィルムの材料である樹脂組成物の構成成分を溶解及び分散してワニスを調製するため、又は、ワニスを調製することを補助するために用いることができる。塗工後の乾燥工程で溶剤の大部分を除去することができる。
【0104】
このようにして作製したワニスを、支持体(フィルム状の支持体等)に塗布した後、熱風吹き付け等によって加熱乾燥することで、封止用フィルムを作製することができる。塗布(コーティング)方法としては、特に限定されないが、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の塗工装置を用いることができる。
【0105】
<封止構造体及びその製造方法>
本実施形態に係る封止構造体は、被封止体と、当該被封止体を封止する封止部と、を備える。封止部は、本実施形態の封止用フィルムの硬化物であり、本実施形態の樹脂組成物の硬化物を含んでいる。封止構造体は、中空構造を有する中空封止構造体であってよい。中空封止構造体は、例えば、基板と、基板上に設けられた被封止体と、基板と被封止体との間に設けられた中空領域と、被封止体を封止する封止部と、を備える。本実施形態の封止構造体は、複数の被封止体を備えていてもよい。複数の被封止体は、互いに同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。
【0106】
封止構造体は、例えば、電子部品装置である。電子部品装置は、被封止体として電子部品を備える。電子部品としては、半導体素子;半導体ウエハ;集積回路;半導体デバイス;SAWフィルタ等のフィルタ;センサ等の受動部品などが挙げられる。半導体ウエハを個片化することにより得られる半導体素子を用いてもよい。電子部品装置は、電子部品として半導体素子又は半導体ウエハを備える半導体装置;プリント配線板等であってもよい。電子部品装置が中空構造を有する場合、すなわち、電子部品装置が中空封止構造体である場合、被封止体は、例えば、中空領域側(基板側)の表面に可動部を有するように、バンプを介して基板上に設けられている。このような被封止体としては、例えば、SAWフィルタ等のSAWデバイスなどの電子部品が挙げられる。被封止体がSAWフィルタである場合、圧電基板の表面のうち、電極(例えば一対のくし形電極であるIDT(Inter Digital Transducer))が取り付けられた側の表面が可動部となる。
【0107】
次に、本実施形態の封止用フィルムを用いた中空封止構造体の製造方法について説明する。ここでは、中空封止構造体が電子部品装置であり、被封止体がSAWデバイスである場合について説明する。
【0108】
図2は、中空封止構造体の製造方法の一実施形態として、電子部品装置である半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態の製造方法では、まず、被封止体(被埋め込み対象)として、基板30と、基板30上にバンプ40を介して並べて配置された複数のSAWデバイス20と、を備える中空構造体を用意した後、基板30のSAWデバイス20側の面と、支持体付き封止用フィルム10の封止用フィルム2側の面とを対向させる(図2の(a))。ここで、中空構造体60は、中空領域50を有しており、SAWデバイス20は、中空領域50側(基板30側)の表面20aに可動部を有している。
【0109】
次に、SAWデバイス20に封止用フィルム2を加熱下で押圧(ラミネート)することにより、封止用フィルム2にSAWデバイス20を埋め込んだ後、SAWデバイス20が埋め込まれた封止用フィルム2を硬化させて封止用フィルムの硬化物(樹脂組成物の硬化物を含む封止部)2aを得る(図2の(b))。これにより、電子部品装置100を得ることができる。
【0110】
ラミネートに使用するラミネータとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ロール式、バルーン式等のラミネータが挙げられる。ラミネータは、埋め込み性に優れる観点から、真空加圧が可能なバルーン式であってもよい。
【0111】
ラミネートは、通常、支持体の軟化点以下で行う。ラミネート温度(封止温度)は、封止用フィルムの最低溶融粘度付近であることが好ましい。ラミネート温度は、例えば、60~140℃である。ラミネート時の圧力は、埋め込む被封止体(例えば、半導体素子等の電子部品)のサイズ、密集度等によって異なる。ラミネート時の圧力は、例えば、0.2~1.5MPaの範囲であってもよく、0.3~1.0MPaの範囲であってもよい。ラミネート時間は、特に限定されるものではないが、20~600秒であってもよく、30~300秒であってもよく、40~120秒であってもよい。
【0112】
封止用フィルムの硬化は、例えば、大気下又は不活性ガス下で行うことができる。硬化温度(加熱温度)は、特に限定されるものではなく、80~280℃であってもよく、100~240℃であってもよく、120~200℃であってもよい。硬化温度が80℃以上であれば、封止用フィルムの硬化が充分に進み、不具合の発生を抑制することができる。硬化温度が280℃以下である場合は、他の材料への熱害の発生を抑制することができる傾向にある。硬化時間(加熱時間)は、特に限定されるものではなく、30~600分であってもよく、45~300分であってもよく、60~240分であってもよい。硬化時間がこれらの範囲である場合、封止用フィルムの硬化が充分に進み、より良好な生産効率が得られる。また、硬化条件は、複数の条件を組み合わせてもよい。
【0113】
本実施形態では、さらに、ダイシングカッター等により、電子部品装置100を個片化することにより、複数の電子部品装置200を得てよい(図2の(c))。
【0114】
上記本実施形態の中空封止構造体の製造方法では、被封止体(例えばSAWデバイス20)に対する優れた埋め込み性を確保しつつ、基板30と被封止体との間の中空領域50への封止材料の流入を充分抑制することができる。
【0115】
本実施形態では、ラミネート法によってSAWデバイス20を封止用フィルム2によって封止した後、封止用フィルム2を熱硬化することで、硬化物2aに埋め込まれたSAWデバイス20を備える中空封止構造体(電子部品装置)を得ているが、コンプレッションモールド装置を用いたコンプレッションモールドにより封止構造体を得てもよく、油圧プレス機を用いたプレス成形により封止構造体を得てもよい。コンプレッションモールド及び油圧プレスにより被封止体を封止する際の温度(封止温度)は、上述のラミネート温度と同じであってよい。
【0116】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【実施例
【0117】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0118】
実施例及び比較例では以下の材料を用いた。
【0119】
(熱硬化性樹脂)
A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「jER806」、エポキシ基当量:160g/eq.)
B1:炭化水素基含有フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量:140g/eq.、重量平均分子量:12万)
B2:炭化水素基含有フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量:185g/eq.、重量平均分子量:12万)
B3:炭化水素基含有フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量:243g/eq.、重量平均分子量:12万)
B4:炭化水素基含有フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量:205g/eq.、重量平均分子量:12万)
B5:ノボラック型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名「DL-92」、フェノール性水酸基当量:103g/eq.、重量平均分子量:5万)
【0120】
(硬化促進剤)
C1:イミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2P4MZ」)
【0121】
(エラストマー)
D1:アクリル酸エステルポリマー(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「SG-280 EK23」、分子量90万)
【0122】
(無機充填材)
E1:シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名「5μm SX-E2」、フェニルアミノシラン処理、平均粒径:5.8μm)
【0123】
B1~B4は特開2015-89949に記載の方法にしたがって調製した。具体的には以下の方法により調製した。
【0124】
(合成例1)
まず、カルダノールと、メタノールと、50%ホルムアルデヒド水溶液とを混合して、混合液を得た。次いで、得られた混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して反応させた後、得られた反応液に35%塩酸を添加して水酸化ナトリウムを中和した。次いで、反応液にフェノールを添加した後、更にシュウ酸を添加した。次いで、反応液の水洗を行った後、過剰のフェノールを留去した。これにより、下記式(5)で表される構造単位40モル%と、下記式(6)で表される構造単位60モル%とからなる樹脂B1を得た。
【化13】
【化14】
【0125】
(合成例2)
まず、4-tert-ブチルフェノールと、メタノールと、50%ホルムアルデヒド水溶液とを混合して、混合液を得た。次いで、得られた混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して反応させた後、得られた反応液に35%塩酸を添加して水酸化ナトリウムを中和した。次いで、反応液に4-フェニルフェノールを添加した後、更にシュウ酸を添加した。次いで、反応液の水洗を行った後、過剰の4-フェニルフェノールを留去した。これにより、下記式(7)で表される構造単位50モル%と、下記式(8)で表される構造単位50モル%とからなる樹脂B2を得た。
【化15】
【化16】
【0126】
(合成例3)
まず、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールと、メタノールと、50%ホルムアルデヒド水溶液とを混合して、混合液を得た。次いで、得られた混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して反応させた。これにより、下記式(9)で表される構造単位からなる樹脂B3を得た。
【化17】
【0127】
(合成例4)
まず、カルダノールと、メタノールと、50%ホルムアルデヒド水溶液とを混合して、混合液を得た。次いで、得られた混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して反応させた後、得られた反応液に35%塩酸を添加して水酸化ナトリウムを中和した。次いで、反応液にペンチルフェノールを添加した後、更にシュウ酸を添加した。次いで、反応液の水洗を行った後、過剰のペンチルフェノールを留去した。これにより、上記式(5)で表される構造単位75モル%と、下記式(10)で表される構造単位25モル%からなる樹脂B4を得た。
【化18】
【0128】
<封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)の作製>
(実施例1)
0.5Lのポリエチレン容器に、表1に示す量(質量部)のA1、B1、D1、及びE1を加えて、撹拌羽で撹拌し、無機充填材E1を分散した。その後、表1に示す量(質量部)のC1を加えて、更に30分撹拌した。得られた混合液をナイロン製#150メッシュ(開口106μm)でろ過して、ろ液を採取した。これによりワニス状エポキシ樹脂組成物を得た。このワニス状エポキシ樹脂組成物を、塗工機を使用してPETフィルム上に、以下の条件で塗布した。これにより、厚さ110μmの封止用フィルムを支持体(PETフィルム)上に作製した。
・塗布ヘッド方式:コンマ
・塗布及び乾燥速度:1m/分
・乾燥条件(温度/炉長):80℃/1.5m、100℃/1.5m
・支持体:厚さ38μmのPETフィルム
【0129】
封止用フィルムにおける支持体とは反対側に保護層(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)を配置することにより封止用フィルムの表面を保護した。なお、下記の各評価においては、支持体及び保護層を剥離した上で評価を行った。以下の実施例及び比較例についても同様である。
【0130】
(実施例2~4及び比較例1~2)
使用した材料(A1、B1、C1、D1、及びE1)の種類及び配合量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~2のワニス状エポキシ樹脂組成物を得た。次いで、実施例1のワニス状エポキシ樹脂に代えて、実施例2~4及び比較例1~2のワニス状エポキシ樹脂組成物をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~2の封止用フィルム(厚さ110μm)を得た。
【0131】
<評価方法>
以下の方法で、封止用フィルムの溶融粘度、埋め込み性及び中空非充填性、並びに、封止用フィルムの硬化後の弾性率及びガラス転移温度の評価を行った。
【0132】
(1)評価A:封止用フィルム(フィルム状エポキシ樹脂組成物)の溶融粘度
封止用フィルム0.6gを量り取り、圧縮成型機にて直径2cmのタブレット状に成形した。得られた成形物を評価用サンプルとし、以下の条件にて、封止用フィルムの溶融粘度を測定した。測定は、温度を40℃から200℃まで昇温することにより行った。
測定装置:レオメータ製品名:TAインスツルメントジャパン株式会社製ARES-G2
測定モード:Dynamic Temperature Ramp
周波数:1.0Hz
温度範囲:40℃~200℃
昇温速度:5℃/分
【0133】
(2)評価B:封止温度70℃における埋め込み性及び中空非充填性
以下の方法で、封止温度70℃における封止用フィルムの埋め込み性及び中空非充填性を評価した。まず、主面の中央に貫通孔(直径1mm)を設けた基板(5cm×5cm)を用意した。次いで、当該基板の一方の主面上における上記貫通孔の縁から2cm離れた位置に両面テープを張り付け、両面テープを介して基板上にガラス板を貼り付けた。得られた積層体を、ガラス板側の面を下にして配置し、基板のガラス板とは反対側の面上に、貫通孔を塞ぐように、1cm角サイズの封止用フィルムを配置した。次いで、封止フィルム上に100gの重りを載せた後70℃のオーブン(エスペック株式会社製、商品名「SAFETY OVEN SPH-201」)内で1時間加熱した。
【0134】
加熱後、封止フィルムの溶融により貫通孔からガラス板側へ流れ込んだ樹脂の有無及び樹脂の流れ込み量(流れ込み面積)を目視にて観察し、以下の基準に基づき、埋め込み性及び中空非充填性を評価した。
[埋め込み性]
A:ガラス基板まで樹脂が到達
B:ガラス基板まで樹脂が未到達
[中空非充填性]
A:流れ込み面積≦2.5mm
B:流れ込み面積≦5mm、>2.5mm
C:流れ込み面積>5mm
【0135】
(3)評価C:溶融粘度7000Pa・sにおける埋め込み性及び中空非充填性
評価Aの溶融粘度の測定結果に基づき、封止用フィルムの溶融粘度が7000Pa・sとなる温度で封止を行ったこと以外は、評価Bと同様の方法で埋め込み性及び中空非充填性を評価した。
【0136】
(4)評価D:封止フィルムの硬化後の弾性率及びガラス転移温度Tg
以下の条件で、実施例及び比較例の封止用フィルムを銅箔にラミネートし、銅箔付き封止用フィルムを得た。
・ラミネータ装置:名機製作所製真空加圧ラミネータMVLP-500
・ラミネート温度:110℃
・ラミネート圧力:0.5MPa
・真空引き時間:30秒
・ラミネート時間:40秒
【0137】
銅箔付き封止用フィルムをSUS板に張り付け、以下の条件で封止用フィルムを硬化させ、銅箔付き封止用フィルムの硬化物(銅箔付きエポキシ樹脂硬化体)を得た。
・オーブン:エスペック株式会社製SAFETY OVEN SPH-201
・オーブン温度:140℃
・時間:120分
【0138】
銅箔付き封止用フィルムの硬化物から銅箔を剥離した後、封止フィルムの硬化物を、4mm×30mmに切断し試験片を作製した。以下の条件で、作製した試験片の弾性率及びガラス転移温度を測定した。
・測定装置:DVE(株式会社レオロジ製DVE-V4)
・測定温度:25~300℃
・昇温速度:5℃/min
【0139】
弾性率が高い場合、封止構造体に反り及び割れが発生しやすくなるため、以下の判断基準にしたがって弾性率を評価した。
A:弾性率(30℃)≦15GPa
B:弾性率(30℃)>15GPa
【0140】
ガラス転移温度Tgが低い場合、封止構造体の熱信頼性が悪化することから、以下の判断基準にしたがってガラス転移温度を評価した。
A:ガラス転移温度(℃)≧100
B:ガラス転移温度(℃)<100
【0141】
<評価結果>
結果を表1に示す。なお、表1中の各成分の配合量は、固形分量(溶剤の量を除いた量)である。
【0142】
【表1】
【0143】
表1に示すとおり、実施例では封止温度70℃において埋め込み性と中空非充填性とを両立することができた。また、溶融粘度を7000Pa・sとなる温度で封止を行った場合にも埋め込み性と中空非充填性とを両立することができた。一方、比較例1では、封止温度70℃では所望の埋め込み性が得られず、溶融粘度が7000Pa・sとなる温度でも、所望の中空非充填性が得られなかった。また、比較例2では、評価A(封止温度が70℃)及び評価B(溶融粘度が7000Pa・s)のいずれにおいても所望の中空非充填性は得られなかった。
【符号の説明】
【0144】
1…支持体、2…封止用フィルム、2a…封止用フィルムの硬化物(封止部)、10…支持体付き封止用フィルム、20…SAWデバイス(被封止体)、30…基板、40…バンプ、50…中空領域、60…中空構造体、100,200…中空封止構造体(封止構造体)。
図1
図2