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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】非水系インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20220705BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20220705BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20220705BHJP
【FI】
C09D11/36
C08G61/12
C09D11/52
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019525611
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2018023165
(87)【国際公開番号】W WO2018235783
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2017120896
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017126611
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】東 将之
(72)【発明者】
【氏名】村梶 春香
(72)【発明者】
【氏名】柴田 知佳
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031501(JP,A)
【文献】特開2010-055899(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171935(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/141903(WO,A1)
【文献】特開2012-048099(JP,A)
【文献】特開2014-103290(JP,A)
【文献】特開2016-181355(JP,A)
【文献】特表2006-502254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/36
C08G 61/12
C09D 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I):
【化36】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、又は-O-[Z-O]-R(式中、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1以上であり、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである)である]に従う繰り返し単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子
を含み、平均一次粒子径dとdがd<dの関係にある金属酸化物ナノ粒子
(c)1種以上の有機溶媒を含む液体担体;及び
(d)1種以上のアミン化合物;を含む非水系インク組成物であって、
前記アミン化合物が、第三級アルキルアミン化合物と、第三級アルキルアミン化合物以外のアミン化合物とを含む、非水系インク組成物
【請求項2】
前記平均一次粒子径dが15nmより小さく、前記平均一次粒子径dが10nm以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記平均一次粒子径dが3nm以上15nm未満であり、前記平均一次粒子径dが10nm以上30nm以下である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>1.5で表される関係を満足する、請求項1~3のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項5】
前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>2.0で表される関係を満足する、請求項1~4のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物ナノ粒子(b)の量が、金属酸化物ナノ粒子(b)と、前記ポリチオフェン(a)とを合わせた重量に対して、1重量%~98重量%である、請求項1~5のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物ナノ粒子(b)において、前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)と前記第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の重量比(b-1)/(b-2)が、0.001~1000の範囲である、請求項1~6のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項8】
前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)及び第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)が、各々独立に、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、TeO、SnO、SnO、又はこれらの混合物を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項9】
前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)及び第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の両者が、SiOを含む、請求項8記載の非水系インク組成物。
【請求項10】
前記液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む液体担体である、請求項1~9のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項11】
前記グリコール系溶媒(A)が、グリコールエーテル類、グリコールモノエーテル類またはグリコール類である、請求項10記載の非水系インク組成物。
【請求項12】
前記有機溶媒(B)が、ニトリル類、アルコール類、芳香族エーテル類、または芳香族炭化水素類である、請求項10または11記載の非水系インク組成物。
【請求項13】
及びRが、それぞれ独立に、H、フルオロアルキル、-O[C(R)-C(R)-O]-R、-ORであり;ここで、各々のR、R、R、及びRが、それぞれ独立に、H、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり;Rが、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり;pが、1、2、又は3であり;そしてRが、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである、請求項1~12のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項14】
が、Hであり、そしてRが、H以外である、請求項13記載の非水系インク組成物。
【請求項15】
及びRが、両方ともH以外である、請求項13記載の非水系インク組成物。
【請求項16】
及びRが、それぞれ独立に、-O[C(R)-C(R)-O]-R、又は-ORである、請求項15記載の非水系インク組成物。
【請求項17】
及びRが、両方とも-O[C(R)-C(R)-O]-Rである、請求項15記載の非水系インク組成物。
【請求項18】
各々のR、R、R、及びRが、それぞれ独立に、H、(C-C)アルキル、(C-C)フルオロアルキル、又はフェニルであり;そしてRが、(C-C)アルキル、(C-C)フルオロアルキル、又はフェニルである、請求項16または17記載の非水系インク組成物。
【請求項19】
前記ポリチオフェンが、下記式:
【化37】

で示される基、及びこれらの組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項20】
前記ポリチオフェンが、スルホン化されている、請求項1~12のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項21】
前記ポリチオフェンが、スルホン化ポリ(3-MEET)である、請求項20記載の非水系インク組成物。
【請求項22】
前記ポリチオフェンが、式(I)に従う繰り返し単位を、繰り返し単位の総重量に基づいて50重量%より多い、典型的には80重量%より多い、更に典型的には90重量%より多い、更になお典型的には95重量%より多い量で含む、請求項1~21のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項23】
1種以上の酸性基を含む合成ポリマーを更に含む、請求項1~22のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項24】
前記合成ポリマーが、少なくとも1個のフッ素原子及び少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基により置換されている、少なくとも1個のアルキル又はアルコキシ基であって、場合により少なくとも1個のエーテル結合(-O-)基により中断されているアルキル又はアルコキシ基を含む1個以上の繰り返し単位を含むポリマー酸である、請求項23記載の非水系インク組成物。
【請求項25】
前記ポリマー酸が、式(II)に従う繰り返し単位及び式(III)に従う繰り返し単位:
【化38】

[式中、
各々のR、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、H、ハロゲン、フルオロアルキル、又はペルフルオロアルキルであり;そして
Xは、-[OC(R)-C(R)]-O-[CR-SOHであって、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、フルオロアルキル、又はペルフルオロアルキルであり;qは、0~10であり;そしてzは、1~5である]を含む、請求項24記載の非水系インク組成物。
【請求項26】
前記合成ポリマーが、少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基を含む1個以上の繰り返し単位を含むポリエーテルスルホンである、請求項23記載の非水系インク組成物。
【請求項27】
第三級アルキルアミン化合物以外のアミン化合物が、第一級アルキルアミン化合物である、請求項1~26のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【請求項28】
第一級アルキルアミン化合物が、エチルアミン、n-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-デシルアミン及びエチレンジアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項27記載の非水系インク組成物。
【請求項29】
第一級アルキルアミン化合物が、2-エチルヘキシルアミンまたはn-ブチルアミンである、請求項28記載の非水系インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ポリチオフェン、(b)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子及び平均一次粒子径d(d<d)を有する第二の金属酸化物ナノ粒子を少なくとも含む金属酸化物ナノ粒子並びに(c)液体担体を含む非水系インク組成物、並びに平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子及び平均一次粒子径d(d<d)を有する第二の金属酸化物ナノ粒子を少なくとも含む金属酸化物ナノ粒子からなるパイルアップ抑制剤及び有機EL素子用の寿命延長剤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機系の有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、燐光有機発光ダイオード(PHOLED)、及び有機光起電デバイス(OPV)のような、省エネデバイスにおける有用な進歩があるが、商業化のためのより良い材料加工及び/又はデバイス性能を提供するには更なる改良がなお必要とされている。例えば、有機エレクトロニクスにおいて使用される材料の1つの有望なタイプは、例えば、ポリチオフェン類を含む導電性ポリマーである。しかし、これらの中性及び/又は導電性状態における、ポリマーの純度、加工性、及び不安定性により問題が起こり得る。また、種々のデバイスのアーキテクチャの交互に重なった層に使用されるポリマーの溶解度を非常に良好に制御できること(例えば、特定のデバイスアーキテクチャにおける隣接層間の直交又は交互溶解度特性(orthogonal or alternating solubility properties))が重要である。例えば、正孔注入層(HIL)及び正孔輸送層(HTL)としても知られている、これらの層は、競合する要求、そして非常に薄いが高品質の薄膜の必要性を考慮すると、困難な問題を提起することがある。
【0003】
典型的なOLEDデバイス積層において、PEDOT:PSSを含むHILのような、大抵のp型ドープポリマーHILの屈折率は、1.5前後であるが、発光材料は一般に、大幅により大きな(1.7以上)屈折率を有する。結果として、EML/HIL(又はHTL/HIL)及びHIL/ITO界面では加算的内部全反射が起こるため、光抽出効率が低下する。
【0004】
溶解性、熱/化学安定性及び電子エネルギー準位(HOMO及びLUMOなど)などの正孔注入層及び正孔輸送層の特性を制御することによって、これらの化合物を異なる用途に適合させ、かつ発光層、光活性層及び電極などの異なる化合物と共に機能するように適合させることができるようにするための、良好なプラットフォームシステムに対する解決していないニーズが高まっている。良好な溶解度、溶媒抵抗性(intractability)、及び熱安定性の特性が重要である。また重要なのは、特性の中でも、高い透明度、低い吸収率、低い内部反射、OLEDシステム内における低い作動電圧、及びより長い寿命などを保持しながら、HILの抵抗及びHIL層の厚さを調整できることである。特定の応用のためのシステムを構築できること、及びこのような特性の必要バランスを提供できることも重要である。
【0005】
前記のような導電性ポリマーを用いて、HIL及びHILを初めとする、有機EL素子の電荷輸送性薄膜を形成する方法の1つとして、主として導電性ポリマーを分散または溶解させた液体担体からなるインク組成物を、基板上(多くの場合、正確には、基板上に形成された薄膜電極上)に塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させて液体担体を除去することにより、電荷輸送性薄膜を形成する方法が知られている。有機EL素子は水分との接触により劣化するため、このインク組成物は非水系であることが好ましい。更に、電荷輸送性薄膜や、それを用いた有機EL素子の種々の特性を改善すること等を目的として、種々の組成を有する非水系インク組成物が提案されている。
【0006】
特許文献1には、アミン化合物が添加された非水系インク組成物が開示されている。該非水系インク組成物中のアミン化合物の存在が、良好な貯蔵寿命と安定性を有する非水系インク組成物をもたらすだけでなく、該非水系インク組成物から形成される薄膜は、優れた均質性を示し、そして該非水系インク組成物から形成されるHILを含むOLEDデバイスは、良好な性能を示す。
【0007】
特許文献2および3には、金属および/または半金属ナノ粒子が添加された非水系インク組成物が開示されている。これらのナノ粒子は、有機EL素子における輝度、熱安定性、正孔注入性等の特性改善や、製品毎の特性のばらつき低減等に有用である。
【0008】
このような非水系インク組成物を塗布するための方法は種々知られている。そのような方法の一例として、非水系インク組成物を微小な液滴としてノズルから吐出させ、被塗布物に付着させるインクジェット法(液滴吐出法)を挙げることができる。有機EL素子の製造を目的として、インクジェット法を用いて電荷輸送性薄膜を基板上に形成する場合、基板上に形成された薄膜電極(多くの場合、パターニングされた薄膜電極)上にバンク(隔壁)を形成して、薄膜電極上の必要な領域が、バンクで囲まれた膜形成領域となるようにし、その膜形成領域のみに、インクジェット法により非水系インク組成物を塗布して電荷輸送性薄膜を形成する、という方法がしばしば採用される。
【0009】
以上のようにして形成される電荷輸送性薄膜は、その厚みが薄膜全体にわたって均一な状態であることが好ましい。しかし現実には、特に上記のようなバンクを用いる方法により形成された場合、電荷輸送性薄膜が厚みの不均一な状態となることがある。そのような状態の一例として、形成された電荷輸送性薄膜の周辺部の厚みが、薄膜の中央から端に向かう方向に沿って増大した状態を挙げることができる。これは、前記膜形成領域内に塗布された非水系インク組成物がバンクの側面を這い上がることにより、形成される塗膜の周囲の厚みが、塗膜の中央から端(換言すれば、塗膜がバンクの側面と接触する部分)に向かう方向に沿って増大した状態になることに起因し、この状態にある塗膜から形成された電荷輸送性薄膜は、前記の如く厚みの不均一な状態になる。本明細書では、このように非水系インク組成物がバンクの側面を這い上がる現象を「パイルアップ現象」又は単に「パイルアップ」と称する。
【0010】
塗布された非水系インク組成物が、バンクの側面に付着することなく、膜形成領域で厚みの均一な塗膜を形成するようにするため、バンクの、非水系インク組成物(塗膜)と接触する側面を、非水系インク組成物に対し撥液性を示すようにするための処理(例えば、所定のプラズマ処理)に付し、また膜形成領域となる基板(薄膜電極)表面を、非水系インク組成物に対し親液性を示すようにするための処理(例えば、別の所定のプラズマ処理)に付すことが、しばしば行われる。本明細書では、このような処理に付された基板を「撥液バンク付基板」と称する。しかし、撥液バンク付基板を用いてもなお、パイルアップ現象が十分抑制されない場合がある。
【0011】
前記の通り、電荷輸送性薄膜や、それを用いた有機EL素子の種々の特性の改善等を目的として、非水系インク組成物に種々の付加的な成分がしばしば添加されるが、添加される成分によっては、パイルアップ現象が誘発される場合がある。実際、後述するように、本発明者らは、ある特定の条件下では、非水系インク組成物に金属酸化物ナノ粒子を添加すると、パイルアップ現象の発生が著しくなることを見出している。
【0012】
パイルアップ現象によって生じる、電荷輸送性薄膜における厚みの不均一性は、薄膜の厚みが増大している部分を通じての電気的欠陥(リーク電流の発生、短絡等)を生じるおそれがあり、これは有機EL素子の寿命短縮につながる。また、このような電荷輸送性薄膜における厚みの不均一性は、これと隣接する発光層における厚みの不均一性をもたらし、これが前記電気的欠陥とも相まって、有機EL素子の発光ムラを引き起こす可能性がある。
【0013】
パイルアップ現象を抑制する手段としては、例えば、インク組成物の液体担体の組成を適切に調節することが提案されている(特許文献4及び5を参照)。しかし、この場合のインク組成物は、液体担体と導電性物質のみからなるものであり、前記の如く付加的な成分が添加されたインク組成物におけるパイルアップ現象の抑制を意図するものではない。
【0014】
即ち、電荷輸送性薄膜や有機EL素子の特性の改善等を目的とする付加的な成分が添加された非水系インク組成物におけるパイルアップ現象を抑制する手段は、これまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2016/171935号
【文献】国際公開第2017/014945号
【文献】国際公開第2017/014946号
【文献】国際公開第2016/140205号
【文献】特開2015-185640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
かかる状況下において、本発明者らは、前記のような付加的な成分が添加された非水系インク組成物におけるパイルアップ現象を抑制する手段を開発すべく、鋭意研究を行った。その結果意外にも、本発明者らは、特定のポリチオフェン(導電性ポリマー)と液体担体の組み合わせに、金属酸化物ナノ粒子が添加されてなる非水系インク組成物において、同組成物中における金属酸化物ナノ粒子の分散状態とパイルアップ現象の発生の間に相関があり、分散状態が均一であるほど、パイルアップ現象の発生が顕著になる傾向にあることを見出した。
【0017】
本発明者らはまた、非水系インク組成物中における金属酸化物ナノ粒子の分散状態には、金属酸化物ナノ粒子の粒度分布が反映されており、粒度分布が狭いほど、金属酸化物ナノ粒子の分散状態がより均一になると考えられることから、金属酸化物ナノ粒子の粒度分布を適度に広くすることで、分散状態が適切に制御され、パイルアップ現象を抑制することが可能になることを見出した。
【0018】
本発明者らはまた、そのような適度に広い粒度分布を有する金属酸化物ナノ粒子として、一次粒子径が互いに異なる金属酸化物ナノ粒子を少なくとも2種含む金属酸化物ナノ粒子を用いることにより、パイルアップ現象を大幅に抑制し、厚みの均一な電荷輸送性薄膜を容易に得ることが可能になることを見出した。
【0019】
本発明者らは更に、前記のような金属酸化物ナノ粒子を用いない場合、パイルアップ現象が抑制されても、得られる有機EL素子のある種の特性、例えば電流効率が却って低下する傾向があったのに対し、前記のような金属酸化物ナノ粒子を用いると、意外にも有機EL素子の特性が過度に低下しないことを見出した。
以上の新たな知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0020】
従って、本発明の主な目的は、有機EL素子の特性を過度に低下させることなく、厚みの均一な電荷輸送性薄膜を与える非水系インク組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、有機EL素子の特性を過度に低下させることのない、非水系インク組成物用のパイルアップ抑制剤及び有機EL素子用の寿命延長剤を提供することにある。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら行なう以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
【0021】
すなわち、本発明は、下記の発明を提供する。
【0022】
1.非水系インク組成物であって、
(a)式(I):
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、又は-O-[Z-O]-R(式中、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1以上であり、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである)である]に従う繰り返し単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子
を含み、平均一次粒子径dとdがd<dの関係にある金属酸化物ナノ粒子;及び
(c)1種以上の有機溶媒を含む液体担体
を含む、非水系インク組成物。
【0023】
2.前記平均一次粒子径dが15nmより小さく、前記平均一次粒子径dが10nm以上である、前項1記載の組成物。
【0024】
3.前記平均一次粒子径dが3nm以上15nm未満であり、前記平均一次粒子径dが10nm以上30nm以下である、前項1または2記載の組成物。
【0025】
4.前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>1.5で表される関係を満足する、前項1~3のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0026】
5.前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>2.0で表される関係を満足する、前項1~4のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0027】
6.前記金属酸化物ナノ粒子(b)の量が、金属酸化物ナノ粒子(b)と、前記ポリチオフェン(a)とを合わせた重量に対して、1重量%~98重量%である、前項1~5のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0028】
7.前記金属酸化物ナノ粒子(b)において、前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)と前記第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の重量比(b-1)/(b-2)が、0.001~1000の範囲である、前項1~6のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0029】
8.前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)及び第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)が、各々独立に、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、TeO、SnO、SnO、又はこれらの混合物を含む、前項1~7のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0030】
9.前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)及び第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の両者が、SiOを含む、前項8記載の非水系インク組成物。
【0031】
10.前記液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む液体担体である、前項1~9のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0032】
11.前記グリコール系溶媒(A)が、グリコールエーテル類、グリコールモノエーテル類またはグリコール類である、前項10記載の非水系インク組成物。
【0033】
12.前記有機溶媒(B)が、ニトリル類、アルコール類、芳香族エーテル類、または芳香族炭化水素類である、前項10または11記載の非水系インク組成物。
【0034】
13.R及びRが、それぞれ独立に、H、フルオロアルキル、-O[C(R)-C(R)-O]-R、-ORであり;ここで、各々のR、R、R、及びRが、それぞれ独立に、H、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり;Rが、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり;pが、1、2、又は3であり;そしてRが、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである、前項1~12のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0035】
14.Rが、Hであり、そしてRが、H以外である、前項13記載の非水系インク組成物。
【0036】
15.R及びRが、両方ともH以外である、前項13記載の非水系インク組成物。
【0037】
16.R及びRが、それぞれ独立に、-O[C(R)-C(R)-O]-R、又は-ORである、前項15記載の非水系インク組成物。
【0038】
17.R及びRが、両方とも-O[C(R)-C(R)-O]-Rである、前項15記載の非水系インク組成物。
【0039】
18.各々のR、R、R、及びRが、それぞれ独立に、H、(C-C)アルキル、(C-C)フルオロアルキル、又はフェニルであり;そしてRが、(C-C)アルキル、(C-C)フルオロアルキル、又はフェニルである、前項16または17記載の非水系インク組成物。
【0040】
19.前記ポリチオフェンが、下記式:
【化2】

で示される基、及びこれらの組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む、前項1~12のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0041】
20.前記ポリチオフェンが、スルホン化されている、前項1~12のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0042】
21.前記ポリチオフェンが、スルホン化ポリ(3-MEET)である、前項20記載の非水系インク組成物。
【0043】
22.前記ポリチオフェンが、式(I)に従う繰り返し単位を、繰り返し単位の総重量に基づいて50重量%より多い、典型的には80重量%より多い、更に典型的には90重量%より多い、更になお典型的には95重量%より多い量で含む、前項1~21のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0044】
23.1種以上の酸性基を含む合成ポリマーを更に含む、前項1~22のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0045】
24.前記合成ポリマーが、少なくとも1個のフッ素原子及び少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基により置換されている、少なくとも1個のアルキル又はアルコキシ基であって、場合により少なくとも1個のエーテル結合(-O-)基により中断されているアルキル又はアルコキシ基を含む1個以上の繰り返し単位を含むポリマー酸である、前項23記載の非水系インク組成物。
【0046】
25.前記ポリマー酸が、式(II)に従う繰り返し単位及び式(III)に従う繰り返し単位:
【化3】

[式中、
各々のR、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、H、ハロゲン、フルオロアルキル、又はペルフルオロアルキルであり;そして
Xは、-[OC(R)-C(R)]-O-[CR-SOHであって、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、フルオロアルキル、又はペルフルオロアルキルであり;qは、0~10であり;そしてzは、1~5である]を含む、前項24記載の非水系インク組成物。
【0047】
26.前記合成ポリマーが、少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基を含む1個以上の繰り返し単位を含むポリエーテルスルホンである、前項23記載の非水系インク組成物。
【0048】
27.1種以上のアミン化合物を更に含む、前項1~26のいずれか一項記載の非水系インク組成物。
【0049】
28.アミン化合物が、第三級アルキルアミン化合物と、第三級アルキルアミン化合物以外のアミン化合物とを含む、前項27記載の非水系インク組成物。
【0050】
29.第三級アルキルアミン化合物以外のアミン化合物が、第一級アルキルアミン化合物である、前項28記載の非水系インク組成物。
【0051】
30.第一級アルキルアミン化合物が、エチルアミン、n-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-デシルアミン及びエチレンジアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、前項29記載の非水系インク組成物。
【0052】
31.第一級アルキルアミン化合物が、2-エチルヘキシルアミンまたはn-ブチルアミンである、前項30記載の非水系インク組成物。
【0053】
32.金属酸化物ナノ粒子からなり、非水系インク組成物に添加されると、該非水系インク組成物を撥液バンク基板に塗布して乾燥させ、電荷輸送性薄膜を形成する際のパイルアップ現象が抑制されるパイルアップ抑制剤であって、
該金属酸化物ナノ粒子が、少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子
を含み、平均一次粒子径dとdがd<dの関係にある金属酸化物ナノ粒子である、パイルアップ抑制剤。
【0054】
33.前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>1.5で表される関係を満足する、前項32記載のパイルアップ抑制剤。
【0055】
34.前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>2.0で表される関係を満足する、前項32または33記載のパイルアップ抑制剤。
【0056】
35.前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)及び第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)が、各々独立に、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、TeO、SnO、SnO、又はこれらの混合物を含む、前項32~34のいずれか一項記載のパイルアップ抑制剤。
【0057】
36.前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)及び第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の両者が、SiOを含む、前項35記載のパイルアップ抑制剤。
【0058】
37.非水系インク組成物であって、
(a)式(I):
【化4】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、又は-O-[Z-O]-R(式中、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1以上であり、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである)である]に従う繰り返し単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子
を含み、平均一次粒子径dとdがd<dの関係にある金属酸化物ナノ粒子;及び
(c)1種以上の有機溶媒を含む液体担体
(d)1種以上の酸性基を含む合成ポリマー
(e)1種以上のアミン化合物
を含む、非水系インク組成物。
【0059】
38.金属酸化物ナノ粒子からなる有機EL素子用の寿命延長剤であって、
該金属酸化物ナノ粒子が、少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子
を含み、平均一次粒子径dとdがd<dの関係にある金属酸化物ナノ粒子である、寿命延長剤。
【0060】
39.前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>1.5で表される関係を満足する、前項38記載の寿命延長剤。
【0061】
40.前記平均一次粒子径d及びdが、式d/d>2.0で表される関係を満足する、前項38または39記載の寿命延長剤。
【発明の効果】
【0062】
本発明の非水系インク組成物を用いると、これを撥液バンク基板に塗布して乾燥させ、電荷輸送性薄膜を形成する際のパイルアップ現象が抑制されるので、厚みの均一な電荷輸送性薄膜が容易に得られる。更に、本発明の非水系インク組成物は、有機EL素子の特性を過度に低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】実施例1及び比較例1で得られた電荷輸送性薄膜の断面の形状を比較するグラフである。
図2】実施例2~5及び比較例2~3で得られた電荷輸送性薄膜の断面の形状を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本明細書に使用されるとき、「a」、「an」、又は「the」という用語は、特に断りない限り「1つ(1個)以上」又は「少なくとも1つ(1個)」を意味する。
【0065】
本明細書に使用されるとき、「~を含む(comprises)」という用語は、「本質的に~からなる」及び「~からなる」を包含する。「~を含む(comprising)」という用語は、「本質的に~からなる」及び「~からなる」を包含する。
【0066】
「~がない(free of)」という句は、この句により修飾される材料の外部添加がないこと、及び当業者には公知の分析手法(例えば、ガス又は液体クロマトグラフィー、分光光度法、光学顕微鏡法など)により観測できる検出可能な量のこの材料が存在しないことを意味する。
【0067】
本発明を通して、種々の刊行物が参照により取り込まれる。参照により本明細書に取り込まれる該刊行物における任意の言語の意味が、本発明の言語の意味と矛盾するならば、特に断りない限り、本発明の言語の意味が優先するものである。
【0068】
本明細書に使用されるとき、有機基に関して「(C-C)」(ここで、x及びyは、それぞれ整数である)という用語は、この基が、1個の基に炭素原子x個から炭素原子y個までを含んでよいことを意味する。
【0069】
本明細書に使用されるとき、「アルキル」という用語は、一価の直鎖又は分岐の飽和炭化水素基、更に典型的には、一価の直鎖又は分岐の飽和(C-C40)炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ベヘニル、トリアコンチル、及びテトラコンチルなどを意味する。
【0070】
本明細書に使用されるとき、「フルオロアルキル」という用語は、1個以上のフッ素原子で置換されている、本明細書中と同義のアルキル基、更に典型的には(C-C40)アルキル基を意味する。フルオロアルキル基の例は、例えば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロアルキル、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル、ペルフルオロエチル、及び-CHCFを含む。
【0071】
本明細書に使用されるとき、「ヒドロカルビレン」という用語は、炭化水素、典型的には(C-C40)炭化水素から2個の水素原子を除去することにより形成される二価の基を意味する。ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐又は環状であってよく、そして飽和又は不飽和であってよい。ヒドロカルビレン基の例は、メチレン、エチレン、1-メチルエチレン、1-フェニルエチレン、プロピレン、ブチレン、1,2-ベンゼン、1,3-ベンゼン、1,4-ベンゼン、及び2,6-ナフタレンを含むが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書に使用されるとき、「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル(ここで、アルキル基は、本明細書中と同義である)として示される一価の基を意味する。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、及びtert-ブトキシを含むが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書に使用されるとき、「アリール」という用語は、1個以上の6員炭素環を含有する一価の不飽和炭化水素基であって、この不飽和が、3個の共役二重結合により表されうる基を意味する。アリール基は、単環式アリール及び多環式アリールを含む。多環式アリールとは、2個以上の6員炭素環を含有する一価の不飽和炭化水素基であって、この不飽和が、3個の共役二重結合により表されうる基であって、隣接する環が、1個以上の結合若しくは二価の架橋基により相互に結合しているか、又は一緒になって縮合している基のことをいう。アリール基の例は、フェニル、アントラセニル、ナフチル、フェナントレニル、フルオレニル、及びピレニルを含むが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書に使用されるとき、「アリールオキシ」という用語は、-O-アリール(ここで、アリール基は、本明細書中と同義である)として示される一価の基を意味する。アリールオキシ基の例は、フェノキシ、アントラセノキシ、ナフトキシ、フェナントレノキシ、及びフルオレノキシを含むが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書に記載の任意の置換基又は基は、1個以上の炭素原子で、1個以上の同じか又は異なる本明細書に記載の置換基によって、場合により置換されていてもよい。例えば、ヒドロカルビレン基は、アリール基又はアルキル基で更に置換されていてもよい。本明細書に記載の任意の置換基又は基はまた、1個以上の炭素原子で、例えば、F、Cl、Br、及びIのようなハロゲン;ニトロ(NO)、シアノ(CN)、並びにヒドロキシ(OH)からなる群より選択される1個以上の置換基によって、場合により置換されていてもよい。
【0076】
本明細書に使用されるとき、「正孔キャリア化合物」とは、正孔の移動を容易にすることができる(即ち、正電荷キャリア)か、かつ/又は例えば、電子デバイスにおいて電子の移動をブロックできる任意の化合物のことをいう。正孔キャリア化合物は、電子デバイスの、典型的には有機電子デバイス(例えば、有機発光デバイスなど)の層(HTL)、正孔注入層(HIL)及び電子ブロック層(EBL)中で有用な化合物を含む。
【0077】
本明細書に使用されるとき、正孔キャリア化合物、例えば、ポリチオフェンに関する「ドープされた」という用語は、この正孔キャリア化合物が、ドーパントにより促進される、化学変換、典型的には酸化又は還元反応、更に典型的には酸化反応を受けたことを意味する。本明細書に使用されるとき、「ドーパント」という用語は、正孔キャリア化合物、例えば、ポリチオフェンを酸化又は還元する、典型的には酸化する物質のことをいう。本明細書で、正孔キャリア化合物が、ドーパントにより促進される、化学変換、典型的には酸化又は還元反応、更に典型的には酸化反応を受けるプロセスは、「ドーピング反応」又は単純に「ドーピング」と呼ばれる。ドーピングは、ポリチオフェンの特性を変えるが、この特性は、電気的特性(抵抗率及び仕事関数など)、機械的特性、及び光学的特性を含んでよいが、これらに限定されない。ドーピング反応の過程で、正孔キャリア化合物は、帯電し、そしてドーパントは、ドーピング反応の結果として、ドープされた正孔キャリア化合物に対して逆荷電した対イオンになる。本明細書に使用されるとき、物質は、ドーパントと称されるためには、正孔キャリア化合物を化学反応させるか、酸化するか、又は還元し、典型的には酸化しなければならない。正孔キャリア化合物と反応しないが、対イオンとして作用しうる物質は、本発明ではドーパントとはみなされない。したがって、正孔キャリア化合物、例えば、ポリチオフェンに関する「ドープされていない」という用語は、この正孔キャリア化合物が、本明細書に記載のドーピング反応を受けていないことを意味する。
【0078】
本発明は、非水系インク組成物であって、
(a)式(I):
【化5】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、又は-O-[Z-O]-R(式中、
Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、
pは、1以上であり、そして
は、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである)である]に従う繰り返し単位を含むポリチオフェン;
(b)少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子
を含み、平均一次粒子径dとdがd<dの関係にある金属酸化物ナノ粒子;及び
(c)1種以上の有機溶媒を含む液体担体
を含む、非水系インク組成物に関する。
【0079】
本発明のインク組成物は、非水系である。本明細書に使用されるとき、「非水系」は、本発明の非水系インク組成物中の水の総量が、非水系インク組成物の総量に対して0~2重量%であることを意味する。典型的には、非水系インク組成物中の水の総量は、非水系インク組成物の総量に対して0~1重量%、更に典型的には0~0.5重量%である。ある実施態様において、本発明の非水系インク組成物には水が実質的に存在しない。
【0080】
本開示の使用に適したポリチオフェンは、式(I):
【0081】
【化6】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、又は-O-[Z-O]-R(式中、Zは、場合によりハロゲン化されているヒドロカルビレン基であり、pは、1以上であり、そしてRは、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである)である]に従う繰り返し単位を含む。
【0082】
ある実施態様において、R及びRは、それぞれ独立に、H、フルオロアルキル、-O[C(R)-C(R)-O]-R、-ORであり;ここで、各々のR、R、R、及びRは、それぞれ独立に、H、ハロゲン、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり;Rは、H、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールであり;pは、1、2、又は3であり;そしてRは、アルキル、フルオロアルキル、又はアリールである。
【0083】
ある実施態様において、Rは、Hであり、そしてRは、H以外である。このような実施態様において、繰り返し単位は、3-置換チオフェンから誘導される。
【0084】
ポリチオフェンは、レジオランダム型又はレジオレギュラー型化合物であってよい。その非対称構造のため、3-置換チオフェンの重合から、繰り返し単位間の3種の可能性ある位置化学結合を含有するポリチオフェン構造の混合物が生成する。2個のチオフェン環が結合するとき利用可能なこの3種の配向は、2,2’、2,5’、及び5,5’カップリングである。2,2’(即ち、頭-頭)カップリング及び5,5’(即ち、尾-尾)カップリングは、レジオランダム型カップリングと呼ばれる。対照的に、2,5’(即ち、頭-尾)カップリングは、レジオレギュラー型カップリングと呼ばれる。位置規則性(regioregularity)の程度は、例えば、約0~100%、又は約25~99.9%、又は約50~98%でありうる。位置規則性は、例えば、NMR分光法を用いるなどの、当業者には公知の標準法により決定することができる。
【0085】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、レジオレギュラー型である。幾つかの実施態様において、ポリチオフェンの位置規則性は、少なくとも約85%、典型的には少なくとも約95%、更に典型的には少なくとも約98%であってよい。幾つかの実施態様において、位置規則性の程度は、少なくとも約70%、典型的には少なくとも約80%であってよい。更に他の実施態様において、レジオレギュラー型ポリチオフェンは、少なくとも約90%の位置規則性の程度を、典型的には少なくとも約98%の位置規則性の程度を有する。
【0086】
3-置換チオフェンモノマー(該モノマーから誘導されるポリマーを含む)は、市販されているか、又は当業者には公知の方法により製造することができる。側基を持つレジオレギュラー型ポリチオフェンを含む、合成方法、ドーピング法、及びポリマー特性評価は、例えば、McCulloughらの米国特許第6,602,974号及びMcCulloughらの米国特許第6,166,172号に提供される。
【0087】
別の実施態様において、R及びRは、両方ともH以外である。このような実施態様において、繰り返し単位は、3,4-二置換チオフェンから誘導される。
【0088】
ある実施態様において、R及びRは、それぞれ独立に、-O[C(R)-C(R)-O]-R、又は-ORである。ある実施態様において、R及びRは、両方とも-O[C(R)-C(R)-O]-Rである。R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0089】
ある実施態様において、各々のR、R、R、及びRは、それぞれ独立に、H、(C-C)アルキル、(C-C)フルオロアルキル、又はフェニルであり;そしてRは、(C-C)アルキル、(C-C)フルオロアルキル、又はフェニルである。
【0090】
ある実施態様において、R及びRは、それぞれ-O[CH-CH-O]-Rである。ある実施態様において、R及びRは、それぞれ-O[CH(CH)-CH-O]-Rである。
【0091】
ある実施態様において、Rは、メチル、プロピル、又はブチルである。
【0092】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、下記式:
【0093】
【化7】

で示される基、及びこれらの組合せからなる群より選択される繰り返し単位を含む。
【0094】
当業者には明らかであろうが、下記式:
【0095】
【化8】

で示される繰り返し単位は、下記式:
【0096】
【化9】

3-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン[本明細書では3-MEETと呼ばれる]
で示される構造により表されるモノマーから誘導され;下記式:
【0097】
【化10】

で示される繰り返し単位は、下記式:
【0098】
【化11】

3,4-ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン[本明細書では3,4-ジBEETと呼ばれる]
で示される構造により表されるモノマーから誘導され;そして下記式:
【0099】
【化12】

で示される繰り返し単位は、下記式:
【0100】
【化13】

3,4-ビス((1-プロポキシプロパン-2-イル)オキシ)チオフェン[本明細書では3,4-ジPPTと呼ばれる]
で示される構造により表されるモノマーから誘導される。
【0101】
3,4-二置換チオフェンモノマー(該モノマーから誘導されるポリマーを含む)は、市販されているか、又は当業者には公知の方法により製造することができる。例えば、3,4-二置換チオフェンモノマーは、3,4-ジブロモチオフェンを、式:HO-[Z-O]-R又はHOR[式中、Z、R、R及びpは、本明細書中と同義である]で与えられる化合物の金属塩、典型的にはナトリウム塩と反応させることにより生成させることができる。
【0102】
3,4-二置換チオフェンモノマーの重合は、最初に3,4-二置換チオフェンモノマーの2及び5位を臭素化して、対応する3,4-二置換チオフェンモノマーの2,5-ジブロモ誘導体を形成することにより実施される。次にニッケル触媒の存在下での3,4-二置換チオフェンの2,5-ジブロモ誘導体のGRIM(グリニャールメタセシス)重合により、ポリマーを得ることができる。このような方法は、例えば、米国特許第8,865,025号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。チオフェンモノマーを重合する別の既知の方法は、酸化剤として、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)のような金属非含有有機酸化剤を用いるか、又は、例えば塩化鉄(III)、塩化モリブデン(V)、及び塩化ルテニウム(III)のような遷移金属ハロゲン化物を用いる、酸化重合によるものである。
【0103】
金属塩、典型的にはナトリウム塩に変換され、そして3,4-二置換チオフェンモノマーを生成させるのに使用されうる、式:HO-[Z-O]-R又はHORを有する化合物の例は、トリフルオロエタノール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルセロソルブ)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol DPnB)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(フェニルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol DPM)、ジイソブチルカルビノール、2-エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol Eph)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol PnP)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(Dowanol PPh)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2-エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol DPnP)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol TPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)を含むが、これらに限定されない。
【0104】
本開示の式(I)に従う繰り返し単位を有するポリチオフェンは、重合によるその形成に続いて、更に修飾することができる。例えば、3-置換チオフェンモノマーから誘導される1種以上の繰り返し単位を有するポリチオフェンは、水素が、スルホン化によるスルホン酸基(-SOH)のような置換基によって置換されうる、1個以上の部位を有していてもよい。
【0105】
本明細書に使用されるとき、ポリチオフェンに関連する「スルホン化」という用語は、そのポリチオフェンが、1個以上のスルホン酸基(-SOH)を含むことを意味する。典型的には、-SOH基の硫黄原子は、ポリチオフェンの基本骨格に直接結合しており、側基には結合していない。本開示の目的には、側基は、理論的に又は実際にポリマーから脱離されても、ポリマー鎖の長さを縮めない一価基である。スルホン化チオフェンポリマー及び/又はコポリマーは、当業者には公知の任意の方法を用いて製造することができる。例えば、ポリチオフェンは、ポリチオフェンを、例えば、発煙硫酸、硫酸アセチル、ピリジンSOなどのような、スルホン化試薬と反応させることによりスルホン化することができる。別の例では、モノマーをスルホン化試薬を用いてスルホン化し、次に既知の方法及び/又は本明細書に記載の方法により重合することができる。当業者には明らかであろうが、スルホン酸基は、塩基性化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアルキルアミン(例えば、モノ-、ジ-及びトリアルキルアミン、例えば、トリエチルアミンなど)の存在下で、対応する塩又は付加体の形成をもたらし得る。よって、ポリチオフェンに関連する「スルホン化」という用語は、このポリチオフェンが、1個以上の-SOM基(ここで、Mは、アルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど)、アンモニウム(NH )、モノ-、ジ-、及びトリアルキルアンモニウム(トリエチルアンモニウムなど)であってよい)を含んでもよいという意味を含む。
【0106】
共役ポリマーのスルホン化及びスルホン化共役ポリマー(スルホン化ポリチオフェンを含む)は、Seshadriらの米国特許第8,017,241号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0107】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、スルホン化されている。
【0108】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、スルホン化ポリ(3-MEET)である。
【0109】
本開示に使用されるポリチオフェンは、ホモポリマー又はコポリマー(統計的、ランダム、勾配、及びブロックコポリマーを含む)であってよい。モノマーA及びモノマーBを含むポリマーとしては、ブロックコポリマーは、例えば、A-Bジブロックコポリマー、A-B-Aトリブロックコポリマー、及び-(AB)-マルチブロックコポリマーを含む。ポリチオフェンは、他のタイプのモノマー(例えば、チエノチオフェン、セレノフェン、ピロール、フラン、テルロフェン、アニリン、アリールアミン、及びアリーレン(例えば、フェニレン、フェニレンビニレン、及びフルオレンなど)など)から誘導される繰り返し単位を含んでもよい。
【0110】
ある実施態様において、ポリチオフェンは、式(I)に従う繰り返し単位を、繰り返し単位の総重量に基づいて50重量%より多い、典型的には80重量%より多い、更に典型的には90重量%より多い、更になお典型的には95重量%より多い量で含む。
【0111】
当業者には明らかであろうが、重合に使用される出発モノマー化合物の純度に応じて、形成されるポリマーは、不純物から誘導される繰り返し単位を含有してもよい。本明細書に使用されるとき、「ホモポリマー」という用語は、1つのタイプのモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーを意味するものであるが、不純物から誘導される繰り返し単位を含有してもよい。ある実施態様において、ポリチオフェンは、基本的に全ての繰り返し単位が、式(I)に従う繰り返し単位である、ホモポリマーである。
【0112】
ポリチオフェンは、典型的には約1,000~1,000,000g/molの間の数平均分子量を有する。更に典型的には、この共役ポリマーは、約5,000~100,000g/molの、更になお典型的には約10,000~約50,000g/molの間の数平均分子量を有する。数平均分子量は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーのような、当業者には公知の方法により決定することができる。
【0113】
一実施態様においては、前記のポリチオフェンを、還元剤で処理した後に用いる。
ポリチオフェン等の共役ポリマーでは、それらを構成する繰り返し単位の一部において、その化学構造が「キノイド構造」と呼ばれる酸化型の構造となっている場合がある。用語「キノイド構造」は、用語「ベンゼノイド構造」に対して用いられるもので、芳香環を含む構造である後者に対し、前者は、その芳香環内の二重結合が環外に移動し(その結果、芳香環は消失する)、環内に残る他の二重結合と共役する2つの環外二重結合が形成された構造を意味する。当業者にとって、これらの両構造の関係は、ベンゾキノンとヒドロキノンの構造の関係から容易に理解できるものである。種々の共役ポリマーの繰り返し単位についてのキノイド構造は、当業者にとって周知である。前記式(I)で表されるポリチオフェンの繰り返し単位に対応するキノイド構造を、下記式(I’)に示す。
【化14】

[式中、R及びRは、式(I)において定義された通りである。]
【0114】
このキノイド構造は、前記のドーピング反応によって生じ、ポリチオフェン等の共役ポリマーに電荷輸送性を付与する「ポーラロン構造」及び「バイポーラロン構造」と称される構造の一部を成すものである。これらの構造は公知である。有機EL素子の作成において、「ポーラロン構造」及び/又は「バイポーラロン構造」の導入は必須であり、実際、有機EL素子作成時、電荷輸送性ワニスから形成された電荷輸送性薄膜を焼成処理するときに、前記のドーピング反応を意図的に起こさせて、これを達成している。このドーピング反応を起こさせる前の共役ポリマーにキノイド構造が含まれているのは、共役ポリマーが、その製造過程(特に、共役ポリマーをスルホン化する場合、そのスルホン化工程)において、ドーピング反応と同等の、意図しない酸化反応を起こしたためと考えられる。
【0115】
ポリチオフェンに含まれるキノイド構造の量と、ポリチオフェンの有機溶媒に対する分散性の間には相関があり、キノイド構造の量が多くなると、分散性は低下する。このため、非水系インク組成物から電荷輸送性薄膜が形成された後でのキノイド構造の導入は問題を生じないが、前記の意図しない酸化反応により、ポリチオフェンにキノイド構造が過剰に導入されていると、非水系インク組成物の製造に支障をきたす。ポリチオフェンにおいて、有機溶媒に対する分散性が製品毎にばらつくことがあることが知られているが、その原因の1つは、前記の意図しない酸化反応によりポリチオフェンに導入されたキノイド構造の量が、各々のポリチオフェンの製造条件の差に応じて変動することであると考えられる。
そこで、ポリチオフェンを、還元剤を用いる還元処理に付すと、ポリチオフェンにキノイド構造が過剰に導入されていても、還元によりキノイド構造が減少し、ポリチオフェンの有機溶媒に対する分散性が向上するため、均質性に優れた電荷輸送性薄膜を与える良好な非水系インク組成物を、安定的に製造することが可能になる。
【0116】
この還元処理に用いる還元剤は、前記式(I’)で表される、ポリチオフェンのキノイド構造を還元して、非酸化型の構造、即ち、前記式(I)で表される、ポリチオフェンのベンゼノイド構造に変換することができるものである限り特に制限はなく、例えば、アンモニア水、ヒドラジン等を使用することが好ましい。還元剤の量は、処理すべきポリチオフェン100重量部に対し、通常0.1~10重量部、好ましくは0.5~2重量部である。
【0117】
還元処理の方法及び条件に特に制限はない。例えば、適当な溶媒の存在下又は非存在下、単にポリチオフェンを還元剤と接触させることにより、この処理を行うことができる。通常、ポリチオフェンを28%アンモニア水中で撹拌する(例えば、室温にて終夜)などの、比較的温和な条件下での還元処理により、ポリチオフェンの有機溶媒に対する分散性は十分に向上する。
ポリチオフェンがスルホン化されている場合、必要であれば、スルホン化ポリチオフェンを対応するアンモニウム塩、例えばトリアルキルアンモニウム塩(スルホン化ポリチオフェンアミン付加体)に変換した後に、還元処理に付してもよい。
【0118】
なお、この還元処理によりポリチオフェンの溶媒に対する分散性が変化する結果、処理の開始時には反応系に溶解していなかったポリチオフェンが、処理の完了時には溶解している場合がある。そのような場合には、ポリチオフェンと非相溶性の有機溶剤(アセトン,イソプロピルアルコールなど)を反応系に添加して、ポリチオフェンの沈殿を生じさせ、濾過する等の方法により、ポリチオフェンを回収することができる。
【0119】
本開示の非水系インク組成物は、場合により他の正孔キャリア化合物を更に含んでいてもよい。
【0120】
オプションの正孔キャリア化合物は、例えば、低分子量化合物又は高分子量化合物を含む。オプションの正孔キャリア化合物は、非ポリマーであってもポリマーであってもよい。非ポリマー正孔キャリア化合物は、架橋性低分子及び架橋していない低分子を含むが、これらに限定されない。非ポリマー正孔キャリア化合物の例は、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン(CAS # 65181-78-4);N,N’-ビス(4-メチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン;N,N’-ビス(2-ナフタレニル)-N,N’-ビス(フェニルベンジジン)(CAS # 139255-17-1);1,3,5-トリス(3-メチルジフェニルアミノ)ベンゼン(m-MTDABとも呼ばれる);N,N’-ビス(1-ナフタレニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン(CAS # 123847-85-8、NPB);4,4’,4”-トリス(N,N-フェニル-3-メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATAとも呼ばれる、CAS # 124729-98-2);4,4’N,N’-ジフェニルカルバゾール(CBPとも呼ばれる、CAS # 58328-31-7);1,3,5-トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;1,3,5-トリス(2-(9-エチルカルバジル-3)エチレン)ベンゼン;1,3,5-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]ベンゼン;1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン;1,4-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル;4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル;4-(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド-N,N-ジフェニルヒドラゾン;4-(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;4-(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;9-エチル-3-カルバゾールカルボキシアルデヒド ジフェニルヒドラゾン;銅(II)フタロシアニン;N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン;N,N’-ジ[(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル]-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン;N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-p-トリルベンゼン-1,4-ジアミン;テトラ-N-フェニルベンジジン;チタニル フタロシアニン;トリ-p-トリルアミン;トリス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アミン;及びトリス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]アミンを含むが、これらに限定されない。
【0121】
オプションのポリマー正孔キャリア化合物は、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)];ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1’-ビフェニレン-4,4’-ジアミン)];ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFBとも呼ばれる)及びポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン](一般にポリ-TPDと呼ばれる)を含むが、これらに限定されない。
【0122】
他のオプションの正孔キャリア化合物は、例えば、2010年11月18日に公開の米国特許公開2010/0292399号;2010年5月6日に公開の2010/010900号;及び2010年5月6日に公開の2010/0108954号に記載されている。本明細書に記載のオプションの正孔キャリア化合物は、当該分野において公知であり、そして市販されている。
【0123】
式(I)に従う繰り返し単位を含むポリチオフェンは、ドープされていてもドープされていなくともよい。
【0124】
ある実施態様において、式(I)に従う繰り返し単位を含むポリチオフェンは、ドーパントでドープされている。ドーパントは当該分野において公知である。例えば、米国特許第7,070,867号;米国公開2005/0123793号;及び米国公開2004/0113127号を参照のこと。ドーパントは、イオン性化合物であってよい。ドーパントは、カチオン及びアニオンを含むことができる。式(I)に従う繰り返し単位を含むポリチオフェンをドープするために、1種以上のドーパントを使用してもよい。
【0125】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、又はAuであってよい。
【0126】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、金、モリブデン、レニウム、鉄、及び銀カチオンであってよい。
【0127】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、アルキル、アリール、及びヘテロアリールスルホナート又はカルボキシラートを含む、スルホナート又はカルボキシラートを含んでもよい。本明細書に使用されるとき、「スルホナート」とは、-SOM基(ここで、Mは、H又はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);又はアンモニウム(NH )であってよい)のことをいう。本明細書に使用されるとき、「カルボキシラート」とは、-COM基(ここで、Mは、H又はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);又はアンモニウム(NH )であってよい)のことをいう。スルホナート及びカルボキシラートドーパントの例は、ベンゾアート化合物、ヘプタフルオロブチラート、メタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、p-トルエンスルホナート、ペンタフルオロプロピオナート、及びポリマースルホナート類、ペルフルオロスルホナート含有アイオノマー類などを含むが、これらに限定されない。
【0128】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、スルホナートもカルボキシラートも含まない。
【0129】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、スルホニルイミド(例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど);アンチモナート(例えば、ヘキサフルオロアンチモナートなど);アルセナート(例えば、ヘキサフルオロアルセナートなど);リン化合物(例えば、ヘキサフルオロホスファートなど);及びボラート(例えば、テトラフルオロボラート、テトラアリールボラート、及びトリフルオロボラートなど)を含んでよい。テトラアリールボラート類の例は、テトラキスペンタフルオロフェニルボラート(TPFB)のようなハロゲン化テトラアリールボラート類を含むが、これらに限定されない。トリフルオロボラート類の例は、(2-ニトロフェニル)トリフルオロボラート、ベンゾフラザン-5-トリフルオロボラート、ピリミジン-5-トリフルオロボラート、ピリジン-3-トリフルオロボラート、及び2,5-ジメチルチオフェン-3-トリフルオロボラートを含むが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書に開示されるとおり、ポリチオフェンは、ドーパントでドープされていてもよい。ドーパントは、例えば、ポリチオフェンとの、例えば、1つ以上の電子移動反応を受けることによって、ドープされたポリチオフェンが生成する材料であってよい。ドーパントは、適切な電荷均衡する対アニオンを提供するように選択することができる。反応は、当該分野において公知のとおり、ポリチオフェンとドーパントの混合により起こり得る。例えば、ドーパントは、ポリマーからカチオン-アニオンドーパント(金属塩など)への自発電子移動を受けて、共役ポリマーを、アニオンが会合しているその酸化型の形態で、遊離金属と共に残すことができる。例えば、LebedevらのChem. Mater., 1998, 10, 156-163を参照のこと。本明細書に開示されるとおり、ポリチオフェン及びドーパントとは、反応することによりドープされたポリマーを形成する成分のことをいう場合がある。ドーピング反応は、電荷キャリアが生成される電荷移動反応であってよく、この反応は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。幾つかの実施態様において、銀イオンは、銀金属及びドープされたポリマーへの又はこれらからの電子移動を受けることができる。
【0131】
最終配合物において、組成物は、元の成分の組合せとは明確に異なるものであってよい(即ち、ポリチオフェン及び/又はドーパントは、混合前と同じ形態で最終組成物中に存在してもしなくともよい)。
【0132】
幾つかの実施態様では、ドーピングプロセスから反応副産物を除去してもよい。例えば、銀のような金属は、濾過によって除去することができる。
【0133】
例えば、ハロゲン及び金属を除去するために、材料を精製することができる。ハロゲンは、例えば、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含む。金属は、例えば、ドーパントのカチオン(ドーパントのカチオンの還元型を含む)、又は触媒若しくは開始剤残留物から残された金属を含む。金属は、例えば、銀、ニッケル、及びマグネシウムを含む。量は、例えば、100ppm未満、又は10ppm未満、又は1ppm未満であってよい。
【0134】
銀含量を含む金属含量は、特に50ppmを超える濃度では、ICP-MSにより測定することができる。
【0135】
ある実施態様において、ポリチオフェンがドーパントでドープされるとき、ポリチオフェンとドーパントを混合することにより、ドープされたポリマー組成物が形成される。混合は、当業者には公知の任意の方法を用いて達成されうる。例えば、ポリチオフェンを含む溶液を、ドーパントを含む別の溶液と混合することができる。ポリチオフェン及びドーパントを溶解するのに使用される溶媒は、1種以上の本明細書に記載の溶媒であってよい。反応は、当該分野において公知のとおり、ポリチオフェンとドーパントの混合により起こり得る。生じるドープされたポリチオフェン組成物は、組成物に基づいて、約40重量%~75重量%のポリマー及び約25重量%~55重量%のドーパントを含む。別の実施態様において、ドープされたポリチオフェン組成物は、組成物に基づいて、約50重量%~65重量%のポリチオフェン及び約35重量%~50重量%のドーパントを含む。典型的には、ポリチオフェンの重量は、ドーパントの重量よりも大きい。典型的には、ドーパントは、約0.25~0.5m/ruの量のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸銀のような銀塩であってよい(ここで、mは、銀塩のモル量であり、そしてruは、ポリマー繰り返し単位のモル量である)。
【0136】
ドープされたポリチオフェンは、当業者には公知の方法により(例えば、溶媒の回転蒸発などにより)単離されて、乾燥又は実質乾燥材料(粉末など)が得られる。残留溶媒の量は、乾燥又は実質乾燥材料に基づいて、例えば、10重量%以下、又は5重量%以下、又は1重量%以下であってよい。乾燥又は実質乾燥粉末は、1種以上の新しい溶媒に再分散又は再溶解することができる。
【0137】
本発明の非水系インク組成物は、金属酸化物ナノ粒子を含む。本発明において用いる前記金属酸化物ナノ粒子(b)は、少なくとも下記(b-1)及び(b-2):
(b-1)平均一次粒子径dを有する第一の金属酸化物ナノ粒子(以降、「成分(b-1)」と称する場合がある)
(b-2)平均一次粒子径dを有する第二の金属酸化物ナノ粒子(以降、「成分(b-2)」と称する場合がある)
を含み、平均一次粒子径dとdはd<dの関係にある。
【0138】
本明細書において「半金属」とは、金属と非金属との化学的及び/又は物理的性質の中間の又は混合物の性質を有する元素のことをいう。本明細書において、「半金属」とは、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)のことをいう。
本明細書において、「金属酸化物」とは、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びW(タングステン)などの金属並びに上述した半金属のうち、1種または2種以上の組み合わせの酸化物のことをいう。
【0139】
本明細書に使用されるとき、「ナノ粒子」という用語は、ナノスケールの粒子であって、その一次粒子の平均径(平均一次粒子径)が、典型的には500nm以下である粒子のことをいう。一次粒子の平均径は、BET法による比表面積から換算する方法を利用することができる。
【0140】
BET法により比表面積から換算する場合は、粒子を真球と見なして、以下の式で平均粒子径を計算することができる。
d=6000/(S×ρ)
d:平均粒子径(nm)
S:比表面積(m/g)
ρ:真比重(g/cm
【0141】
BET法は、粒子表面への気体分子の吸着を利用した方法であり、粒子表面全体に気体分子が吸着することを前提としている。従って、粒子表面に気体分子が吸着できない領域がある場合には、BET法の適用は困難である。このような例としては、凝集が著しいナノ粒子を用いる場合を挙げることができ、粒子径が小さいとき(例えば7nm以下)にしばしばこのような状態となる。このような場合には、一次粒子の平均径をBET法以外の方法で測定してもよい。そのような方法の例としては、水酸化ナトリウムによる滴定法を挙げることができる(例えば、George W. Sears Jr., Anal. Chem. 28(12) p1981-3 (1956)等を参照)。
本明細書において、特に断りがない場合は、金属酸化物ナノ粒子の一次粒子の平均粒径は、BET法による比表面積から換算する方法で測定した数値を表す。
【0142】
本明細書に記載の金属酸化物ナノ粒子の一次粒子の平均粒径は、500nm以下;250nm以下;100nm以下;又は50nm以下;又は25nm以下である。典型的には、金属酸化物ナノ粒子は、約1nm~約100nm、更に典型的には約2nm~約30nmの数平均一次粒子径を有する。ただし前記の通り、本発明において用いる金属酸化物ナノ粒子(b)に少なくとも含まれる前記成分(b-1)及び成分(b-2)に関し、前者の平均一次粒子径dと、後者の平均一次粒子径dは、d<dの関係にある。
【0143】
先に述べたように、非水系インク組成物をインクジェット法で基板に塗布して電荷輸送性薄膜を形成する際、基板として撥液バンク付基板を用いてもなお、パイルアップ現象により、得られる電荷輸送性薄膜が厚みの不均一な状態となることがある。このようなパイルアップ現象は特に、金属酸化物ナノ粒子が添加された非水系インク組成物において発生しやすいことが、本発明者らにより確認された。その原因は明らかになっていないが、非水系インク組成物中に分散している金属酸化物ナノ粒子が、組成物中の他の成分、基板表面又はバンク側面との何らかの相互作用の結果、乾燥過程中にバンク側面へ移動し、更にバンクに沿って這い上がるために、パイルアップ現象が発生すると考えられている。
【0144】
そこで、非水系インク組成物中における金属酸化物ナノ粒子の挙動と、パイルアップ現象の関連性を本発明者らが検討した結果、非水系インク組成物中における金属酸化物ナノ粒子の分散状態が均一であるほど、パイルアップ現象の発生が顕著になる傾向にあること、即ち、非水系インク組成物中における金属酸化物ナノ粒子の分散状態とパイルアップ現象の発生の間に相関があることが認められた。このことは、この分散状態を適切に制御することで、パイルアップ現象を抑制することが可能になることを示唆するものである。
【0145】
非水系インク組成物中における金属酸化物ナノ粒子の分散状態には、金属酸化物ナノ粒子の粒度分布が反映されており、粒度分布が狭いほど、金属酸化物ナノ粒子の分散状態がより均一になると考えられる。このことから、金属酸化物ナノ粒子の粒度分布が過度に狭いとパイルアップ現象が発生しやすくなり、粒度分布を適度に広くすることで、分散状態が適切に制御され、パイルアップ現象を抑制することが可能になると推定された。
【0146】
この推定に基づき、種々の特性を有する金属酸化物ナノ粒子を用いて本発明者らが更に検討した結果、意外にも、金属酸化物ナノ粒子が、粒子径約4nm~80nm、より好ましくは約5nm~40nm、より好ましくは約10~20nmの粒子が含まれる粒度分布を有するようにすることが、パイルアップ現象の抑制に有効であることが見出された。そのような、金属酸化物ナノ粒子の適度に広い粒度分布は、平均一次粒子径の異なる金属酸化物ナノ粒子を2種以上併用することによって得ることができる。パイルアップ現象抑制の詳細な機序は明らかになっていないが、前記の条件下で、前記成分(b-1)と(b-2)が、平均一次粒子径の差に伴いそれぞれ異なる挙動を示すことや、前記成分(b-1)と(b-2)の間での、それらを併用しない時には生じない相互作用(例えば凝集)などが寄与している可能性がある。
【0147】
また前記の通り、前記のような金属酸化物ナノ粒子を用いずにパイルアップ現象を抑制しようとすると、有機EL素子のある種の特性が却って低下する傾向がみられる場合がある。ところが、前記のような金属酸化物ナノ粒子を含む本発明の非水系インク組成物、特に、アミン化合物が添加された非水系インク組成物を用いて電荷輸送性薄膜を形成し、それを有機EL素子の作成に用いると、意外にも、従来の金属酸化物ナノ粒子を用いた場合に比して、得られる有機EL素子の特性低下がさほど顕著でなく、特に電流効率の低下が抑制されることが、本発明者らにより確認された。その詳細な機序は明らかになっていないが、前記のような金属酸化物ナノ粒子を含む非水系インク組成物にアミン化合物が添加された場合、得られる電荷輸送性薄膜におけるアミン化合物の残留が、従来の金属酸化物ナノ粒子を用いた場合に比して少ないことが本発明者らにより確認されており、そのことが、有機EL素子における特性(例えば電流効率)低下の抑制に寄与していると推定されている。そしてこれは、前記成分(b-1)と(b-2)の間での、それらを併用しない時には生じない相互作用によりもたらされている可能性がある。
【0148】
このように、特定のポリチオフェンと液体担体の組み合わせに、平均一次粒子径の互いに異なる金属酸化物ナノ粒子を2種以上含む金属酸化物ナノ粒子が添加された本発明の非水系インク組成物を用いることで、有機EL素子の特性の過度の低下を回避しつつ、パイルアップを抑制することができる。換言すれば、前記のような金属酸化物ナノ粒子(b)をパイルアップ抑制剤として用いることができ、これが非水系インク組成物に添加されると、前記非水系インク組成物を撥液バンク基板に塗布して乾燥させ、電荷輸送性薄膜を形成する際のパイルアップ現象が抑制される。前記の通り、パイルアップ現象により電荷輸送性薄膜の厚みが不均一になると、有機EL素子の寿命が短縮される恐れがあるが、このパイルアップ現象の抑制により、有機EL素子の寿命を延長させることができる。
【0149】
前記金属酸化物ナノ粒子(b)は場合により、前記成分(b-1)及び前記成分(b-2)に加え、他の金属酸化物ナノ粒子を更に含んでいてもよい。また、それらの金属酸化物ナノ粒子は、同一の化学種からなるものであっても、各々異なる化学種からなるものであってもよい。本発明においては、平均一次粒子径が互いに異なる金属酸化物ナノ粒子を2種組み合わせることが好ましく、同一の化学種からなり、平均一次粒子径のみが互いに異なる金属酸化物ナノ粒子を2種組み合わせることがより好ましい。
【0150】
前記金属酸化物ナノ粒子(b)に少なくとも含まれる、前記第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)の平均一次粒子径d及び前記第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の平均一次粒子径d(d<d)に関し、dが15nmより小さく、平均一次粒子径dが10nm以上であることが好ましく、dが3nm以上15nm未満であり、平均一次粒子径dが10nm以上30(又は50)nm以下であることがより好ましい。
【0151】
また、前記金属酸化物ナノ粒子(b)に少なくとも含まれる前記成分(b-1)及び前記成分(b-2)は、前者の平均一次粒子径dに対する後者の平均一次粒子径d(d<d)の比、即ちd/dが、特定の式で表される関係にあることが好ましい。d及びdは、式d/d>1.5で表される関係を満足することが好ましく、式d/d>2.0で表される関係を満足することがより好ましい。なお、この比d/dの値に特に上限はないが、d及びdは、好ましくは、式d/d<1000で表される関係を満足し、より好ましくは、式d/d<100で表される関係を満足する。
【0152】
前記金属酸化物ナノ粒子(b)において、第一の金属酸化物ナノ粒子(b-1)と第二の金属酸化物ナノ粒子(b-2)の重量比(b-1)/(b-2)が、0.001~1000の範囲であることが好ましく、0.01~100の範囲であることがより好ましい。
【0153】
本発明の使用に適した金属酸化物ナノ粒子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びW(タングステン)などの酸化物、またはこれらを含む混合酸化物のナノ粒子が挙げられる。適切な金属酸化物ナノ粒子の非限定的な特定の例は、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、Sb、TeO、SnO、ZrO、Al、ZnO及びこれらの混合物を含むナノ粒子を含むが、これらに限定されない。
【0154】
ある実施態様において、前記成分(b-1)及び成分(b-2)は、各々独立に、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、SnO、SnO、Sb、TeO、又はこれらの混合物を含む。
【0155】
ある実施態様において、前記成分(b-1)及び成分(b-2)の両者は、SiOを含む。
【0156】
金属酸化物ナノ粒子は、1種以上の有機キャッピング基を含んでもよい。このような有機キャッピング基は、反応性であっても非反応性であってもよい。反応性有機キャッピング基は、例えば、UV線又はラジカル開始剤の存在下で、架橋できる有機キャッピング基である。
【0157】
ある実施態様において、金属酸化物ナノ粒子は、1種以上の有機キャッピング基を含む。
【0158】
適切な金属酸化物ナノ粒子の例は、日産化学工業(株)により販売されている、種々の溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、2-プロパノール、メタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートなど)中の分散液として利用できるSiOナノ粒子を含む。
【0159】
本明細書に記載の非水系インク組成物中に使用される金属酸化物ナノ粒子の量は、金属酸化物ナノ粒子と、ドープされているかドープされていないポリチオフェンとを合わせた重量に対する重量百分率として、調節及び測定することができる。ある実施態様において、金属酸化物ナノ粒子の量は、金属酸化物ナノ粒子とドープされているかドープされていないポリチオフェンとを合わせた重量に対して、1重量%~98重量%、典型的には約2重量%~約95重量%、更に典型的には約5重量%~約90重量%、更になお典型的には約10重量%~約90重量%である。ある実施態様において、金属酸化物ナノ粒子の量は、金属酸化物ナノ粒子とドープされているかドープされていないポリチオフェンとを合わせた重量に対して、約20重量%~約98%、典型的には約25重量%~約95重量%である。
【0160】
本発明の非水系インク組成物において使用される液体担体は、1種以上の有機溶媒を含む。ある実施態様において、液体担体は、1種以上の有機溶媒から本質的になるか、又はそれからなる。液体担体は、有機溶媒であっても、あるいはアノード又は発光層のようなデバイス中の他の層との使用及び加工に適応させた2種以上の有機溶媒を含む溶媒混合物であってもよい。
【0161】
液体担体における使用に適した有機溶媒は、脂肪族及び芳香族ケトン類、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び2,3,4,5-テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(テトラメチレンスルホン;スルホラン)のような有機硫黄溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、テトラメチル尿素(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、アルキル化ベンゼン類(キシレン及びその異性体など)、ハロゲン化ベンゼン類、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジオキサン類、酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、3-メトキシプロピオニトリル、3-エトキシプロピオニトリル、又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0162】
脂肪族及び芳香族ケトン類は、アセトン、アセトニルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、メチルイソブテニルケトン、2-ヘキサノン、2-ペンタノン、アセトフェノン、エチルフェニルケトン、シクロヘキサノン、及びシクロペンタノンを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施態様において、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びアセトンのような、ケトンに対してα位に位置する炭素上にプロトンを有するケトン類は回避される。
【0163】
ポリチオフェンを完全に若しくは部分的に可溶化するか、又はポリチオフェンを膨潤させる、他の有機溶媒もまた考慮されよう。このような他の溶媒は、湿潤性、粘度、形態制御のようなインク特性を調節するために、種々の量で液体担体に含まれていてもよい。液体担体は、ポリチオフェンの非溶媒として作用する1種以上の有機溶媒を更に含んでもよい。
【0164】
本発明に係る使用に好適な他の有機溶媒は、エーテル、例えば、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン及びグリコールジエーテル(グリコールジエーテル類)、例えば、エチレングリコールジエーテル(1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン及び1,2-ジブトキシエタンなど);ジエチレングリコールジエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルなど);プロピレングリコールジエーテル(プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールジブチルエーテルなど);ジプロピレングリコールジエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及びジプロピレングリコールジブチルエーテルなど);並びに本明細書に言及されるエチレングリコール及びプロピレングリコールエーテルのより高次の類似体(すなわち、トリ-及びテトラ-類似体、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等)を含む。
【0165】
エチレングリコールモノエーテルアセタート及びプロピレングリコールモノエーテルアセタートなど(グリコールエステルエーテル類)のさらに他の溶媒を考慮することができ、ここで、エーテルは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル及びシクロヘキシルから選択されることができる。また、上記リストのより高次のグリコールエーテル類似体(ジ-、トリ-及びテトラ-など)を含む。
例は、限定されないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、2-エトキシエチルアセタート、2-ブトキシエチルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む。
【0166】
エチレングリコールジアセテートなど(グリコールジエステル類)のさらに他の溶媒を考慮することができ、また、より高次のグリコールエーテル類似体(ジ-、トリ-及びテトラ-など)を含む。
例は、限定されないが、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセタートを含む。
【0167】
例えば、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール及びアルキレングリコールモノエーテル(グリコールモノエーテル類)などのアルコールもまた液体担体中での使用に考慮され得る。好適なグリコールモノエーテル類の例は、限定されないが、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルセロソルブ)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(Dowanol DPnB)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol DPM)、ジイソブチルカルビノール、2-エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol PnP)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2-エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol DPnP)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol TPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)を含む。
【0168】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される有機溶媒は、例えば、基板湿潤性、溶媒除去の容易性、粘性、表面張力及び出射性などのインク特性を改善するために、液体担体中に種々の割合で使用されることができる。
【0169】
いくつかの実施態様において、非プロトン非極性溶媒の使用は、プロトンに感受性であるエミッター技術を備えるデバイス(例えば、PHOLEDなど)の寿命を延ばす追加の利益を提供することができる。
【0170】
ある実施態様において、液体担体は、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール(グリコール類)、テトラメチルウレア又はそれらの混合物を含む。
好適なグリコール類の例は、限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
【0171】
上記、グリコールジエーテル類、グリコールエステルエーテル類、グリコールジエステル類、グリコールモノエーテル類およびグリコール類等を総称して、「グリコール系溶媒」とする。即ち、本発明にいう「グリコール系溶媒」とは、式R-O-(R-O)-R(式中、それぞれのRは、各々独立に、直鎖状C-C非置換アルキレン基であり、R及びRは、各々独立に、水素原子、直鎖状、分岐状又は環状C-C非置換アルキル基或いは直鎖状又は分岐状C-C非置換脂肪族アシル基であり、nは、1~6の整数である)で表される、1種以上の芳香族構造を有していない有機溶媒である。前記Rは、C又はC非置換アルキレン基であることが特に好ましい。また前記nは、1~4の整数であることが特に好ましい。前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状C-C非置換アルキル基が好ましく、直鎖状C-C非置換アルキル基がより好ましく、メチル基及びn-ブチル基が特に好ましい。前記アシル基としては、直鎖状又は分岐状C-C非置換脂肪族アシル基が好ましく、直鎖状C-C非置換アシル基がより好ましく、アセチル基及びプロピオニル基が特に好ましい。このグリコール系溶媒は、例えば以下の溶媒を包含する。
・エチレングリコール、プロピレングリコール又はそのオリゴマー(2量体~4量体、例えばジエチレングリコール)であるグリコール類
・前記グリコール類のモノアルキルエーテルであるグリコールモノエーテル類
・前記グリコール類のジアルキルエーテルであるグリコールジエーテル類
・前記グリコール類の脂肪族カルボン酸モノエステルであるグリコールモノエステル類
・前記グリコール類の脂肪族カルボン酸ジエステルであるグリコールジエステル類
・前記グリコールモノエーテル類の脂肪族カルボン酸モノエステルであるグリコールエステルエーテル類
インクジェット法による塗布性を考慮すると、グリコール系溶媒を含む液体担体を使用することが好ましい。
以降の記載において、便宜上、前記グリコール系溶媒とこれに該当しない有機溶媒を対比して、前者を(A)、後者を(B)で示すことがある。
ある実施態様において、液体担体は、1種以上のグリコール系溶媒(A)からなる液体担体である。
【0172】
液体担体が1種類以上のグリコール系溶媒(A)からなる液体担体である場合、前記グリコール系溶媒(A)として、好ましくは、グリコールジエーテル類、グリコールモノエーテル類またはグリコール類が挙げられ、これらは混合してもよい。例は、限定されないが、グリコールモノエーテル類、グリコールジエーテル類およびグリコール類の3種類を混合させることが挙げられる。
具体例としては、上述のグリコールモノエーテル類、グリコールジエーテル類およびグリコール類の具体例が挙げられるが、好ましくは、グリコールモノエーテル類として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリコールジエーテル類として、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0173】
液体担体が、1種以上のグリコール系溶媒(A)からなる液体担体である場合、グリコール類は液体担体に対して30%以上が好ましく、ポリチオフェンの溶解性の観点から、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。
【0174】
ある実施態様において、液体担体は、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む液体担体である。この場合、グリコール系溶媒(A)として、好ましくは、前述したものが挙げられるが、より好ましくはグリコールジエーテル類、グリコール類が挙げられ、これらは混合してもよい。例は、限定されないが、グリコールジエーテル類とグリコール類の2種類を混合させることが挙げられる。
具体例としては、上述のグリコールジエーテル類およびグリコール類の具体例が挙げられるが、好ましくは、グリコールジエーテル類として、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。
【0175】
前記有機溶媒(B)として、好ましくは、ニトリル類、アルコール類、芳香族エーテル類、芳香族炭化水素類が挙げられる。
例は、限定されないが、ニトリル類として、メトキシプロピオニトリル、エトキシプロピオニトリル、アルコール類として、ベンジルアルコール、2-(ベンジルオキシ)エタノール、芳香族エーテル類として、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソール、フェノキシトルエン、芳香族炭化水素類として、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼンまたはテトラリンが挙げられる。
これらの中でも、アルコール類がより好ましく、アルコール類の中でも2-(ベンジルオキシ)エタノールがより好ましい。
グリコール系溶媒(A)に有機溶媒(B)を添加することにより、インクジェット塗布による成膜時に、インク固形分の溶解性を保ったまま金属酸化物ナノ粒子の凝集を適切に制御し、より平坦な膜を形成することができる。
【0176】
グリコール系溶媒(A)に有機溶媒(B)を添加する場合、前記グリコール系溶媒(A)の含有量:wtA(重量)と、前記有機溶媒(B)の含有量(重量):wtB(重量)とが、式(1-1)を満たすことが好ましく、式(1-2)を満たすことがより好ましく、式(1-3)を満たすことが最も好ましい。
0.05≦wtB/(wtA+wtB)≦0.50 (1-1)
0.10≦wtB/(wtA+wtB)≦0.40 (1-2)
0.10≦wtB/(wtA+wtB)≦0.30 (1-3)
(本発明の組成物にグリコール系溶媒(A)が2種以上含有されている場合、wtAはグリコール系溶媒(A)の合計含有量(重量)を示し、有機溶媒(B)が2種以上含有されている場合、wtBは有機溶媒(B)の合計含有量(重量)を示す。)
【0177】
本発明の非水系インク組成物中の液体担体の量は、インク組成物の総量に対して、約50重量%~約99重量%、典型的には約75重量%~約98重量%、更に典型的には約90重量%~約95重量%である。
なお後述するように、本発明の非水系インク組成物は、ポリチオフェン等の各成分を、有機溶媒中の溶液又は分散液(ストック溶液)の形態で混合することにより調製することができる。この操作の結果非水系インク組成物に添加された有機溶媒は、液体担体の一部と見なされる。
【0178】
一実施態様において、本発明の非水系インク組成物は、1種以上のアミン化合物を更に含む。
本発明の非水系インク組成物における使用に適したアミン化合物は、エタノールアミン類及びアルキルアミン類を含むが、これらに限定されない。
【0179】
適切なエタノールアミン類の例は、ジメチルエタノールアミン[(CHNCHCHOH]、トリエタノールアミン[N(CHCHOH)]、及びN-tert-ブチルジエタノールアミン[t-CN(CHCHOH)]を含む。
【0180】
アルキルアミン類は、第一級、第二級、及び第三級アルキルアミン類を含む。第一級アルキルアミン類の例は、例えば、エチルアミン[CNH]、n-ブチルアミン[CNH]、t-ブチルアミン[CNH]、n-ヘキシルアミン[C13NH]、2-エチルヘキシルアミン[C17NH]、n-デシルアミン[C1021NH]、及びエチレンジアミン[HNCHCHNH]を含む。第二級アルキルアミン類は、例えば、ジエチルアミン[(CNH]、ジ(n-プロピルアミン)[(n-CNH]、ジ(イソプロピルアミン)[(i-CNH]、及びジメチルエチレンジアミン[CHNHCHCHNHCH]を含む。第三級アルキルアミン類は、例えば、トリメチルアミン[(CHN]、トリエチルアミン[(CN]、トリ(n-ブチル)アミン[(CN]、及びテトラメチルエチレンジアミン[(CHNCHCHN(CH]を含む。
【0181】
ある実施態様において、アミン化合物は、第三級アルキルアミンである。ある実施態様において、アミン化合物は、トリエチルアミンである。
【0182】
ある実施態様において、アミン化合物は、第三級アルキルアミン化合物と、第三級アルキルアミン化合物以外のアミン化合物との混合物である。ある実施態様において、第三級アルキルアミン化合物以外のアミン化合物は、第一級アルキルアミン化合物である。該第一級アルキルアミン化合物としては、2-エチルヘキシルアミンまたはn-ブチルアミンが好ましい。
【0183】
アミン化合物の量は、非水系インク組成物の総量に対する重量百分率として調節及び測定することができる。ある実施態様において、アミン化合物の量は、非水系インク組成物の総量に対して、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.10重量%、少なくとも1.00重量%、少なくとも1.50重量%、又は少なくとも2.00重量%である。ある実施態様において、アミン化合物の量は、非水系インク組成物の総量に対して、約0.01~約2.00重量%、典型的には約0.05重量%~約1.50重量%、更に典型的には約0.1重量%~約1.0重量%である。このアミン化合物の少なくとも一部が、スルホン化共役ポリマーとのアンモニウム塩、例えばトリアルキルアンモニウム塩(スルホン化ポリチオフェンアミン付加体)の形態で存在していてもよい。
【0184】
なお、このアミン化合物は通常、最終的な非水系インク組成物を調製する際に添加するが、それ以前の時点で予め添加しておいてもよい。例えば、先に述べたように、スルホン化共役ポリマーにアミン化合物を添加して、対応するアンモニウム塩、例えばトリアルキルアンモニウム塩(スルホン化ポリチオフェンアミン付加体)に変換した後に、還元処理に付してもよいし、還元処理されたスルホン化共役ポリマーの溶液にアミン化合物(例えばトリエチルアミン)を添加して、スルホン化共役ポリマーをアンモニウム塩(例えばトリエチルアンモニウム塩)として、粉末の形態で沈殿させ、これを回収してもよい。
このような処理の方法に特に制限はないが、例えば、還元処理されたスルホン化ポリチオフェンに水およびトリエチルアミンを加えて溶解し、これを加熱下(例えば60℃)に撹拌した後、得られた溶液にイソプロピルアルコールおよびアセトンを添加して、スルホン化共役ポリマーのトリエチルアンモニウム塩の沈殿を生じさせ、これを濾過して回収する等の方法を採用し得る。
【0185】
本発明の非水系インク組成物は、正孔注入層(HIL)又は正孔輸送層(HTL)中で有用であることが知られている1種以上のマトリックス化合物を場合により更に含んでもよい。
【0186】
オプションのマトリックス化合物は、低分子量又は高分子量化合物であってよく、そして本明細書に記載のポリチオフェンとは異なる。マトリックス化合物は、例えば、ポリチオフェンとは異なる、合成ポリマーであってよい。例えば、2006年8月10日に公開の米国特許公開2006/0175582号を参照のこと。合成ポリマーは、例えば、炭素基本骨格を含むことができる。幾つかの実施態様において、合成ポリマーは、酸素原子又は窒素原子を含む少なくとも1個のポリマー側基を有する。合成ポリマーは、ルイス塩基であってもよい。典型的には、合成ポリマーは、炭素基本骨格を含み、そして25℃を超えるガラス転移点を有する。合成ポリマーはまた、25℃以下のガラス転移点及び/又は25℃を超える融点を有する、半結晶性又は結晶性ポリマーであってもよい。合成ポリマーは、1種以上の酸性基、例えば、スルホン酸基を含んでもよい。
【0187】
ある実施態様において、合成ポリマーは、少なくとも1個のフッ素原子及び少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基により置換されている、少なくとも1個のアルキル又はアルコキシ基であって、場合により少なくとも1個のエーテル結合(-O-)基により中断されているアルキル又はアルコキシ基を含む、1個以上の繰り返し単位を含むポリマー酸である。
【0188】
ある実施態様において、ポリマー酸は、式(II)に従う繰り返し単位及び式(III)に従う繰り返し単位:
【0189】
【化15】

[式中、各々のR、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、H、ハロゲン、フルオロアルキル、又はペルフルオロアルキルであり;そしてXは、-[OC(R)-C(R)]-O-[CR-SOHであって、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立に、H、ハロゲン、フルオロアルキル、又はペルフルオロアルキルであり;qは、0~10であり;そしてzは、1~5である]を含む。
【0190】
ある実施態様において、各々のR、R、R、及びRは、独立に、Cl又はFである。ある実施態様において、各々のR、R、及びRは、Fであり、そしてRは、Clである。ある実施態様において、各々のR、R、R、及びRは、Fである。
【0191】
ある実施態様において、各々のR、R10、及びR11は、Fである。
【0192】
ある実施態様において、各々のR、R、R、R、R及びRは、独立に、F、(C-C)フルオロアルキル、又は(C-C)ペルフルオロアルキルである。
【0193】
ある実施態様において、各々のR及びRは、Fであり;qは、0であり;そしてzは、2である。
【0194】
ある実施態様において、各々のR、R、及びRは、Fであり、そしてRは、Clであり;そして各々のR及びRは、Fであり;qは、0であり;そしてzは、2である。
【0195】
ある実施態様において、各々のR、R、R、及びRは、Fであり;そして各々のR及びRは、Fであり;qは、0であり;そしてzは、2である。
【0196】
式(II)に従う繰り返し単位の数(「n」)対式(III)に従う繰り返し単位の数(「m」)の比は、特に限定されない。n:m比は、典型的には9:1~1:9、更に典型的には8:2~2:8である。ある実施態様において、n:m比は、9:1である。ある実施態様において、n:m比は、8:2である。
【0197】
本発明の使用に適したポリマー酸は、当業者には公知の方法を用いて合成されるか、又は商業的供給元から得られる。例えば、式(II)に従う繰り返し単位及び式(III)に従う繰り返し単位を含むポリマーは、式(IIa)により表されるモノマーを式(IIIa)により表されるモノマー:
【0198】
【化16】

[式中、Zは、-[OC(R)-C(R)]-O-[CR-SOFであって、R、R、R、R、R及びR、q、及びzは、本明細書中と同義である]と、公知の重合方法により共重合し、続いてスルホニルフルオリド基の加水分解によりスルホン酸基に変換することによって製造されうる。
【0199】
例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)は、スルホン酸の前駆体基を含む1種以上のフッ素化モノマー(例えば、FC=CF-O-CF-CF-SOF;FC=CF-[O-CF-CR12F-O]-CF-CF-SOF(ここで、R12は、F又はCFであり、そしてqは、1~10である);FC=CF-O-CF-CF-CF-SOF;及びFC=CF-OCF-CF-CF-CF-SOFなど)と共重合されうる。
【0200】
ポリマー酸の当量は、ポリマー酸に存在する酸基1モル当たりのポリマー酸の質量(グラム)として定義される。ポリマー酸の当量は、約400~約15,000gポリマー/mol酸、典型的には約500~約10,000gポリマー/mol酸、更に典型的には約500~8,000gポリマー/mol酸、更になお典型的には約500~2,000gポリマー/mol酸、更にいっそう典型的には約600~約1,700gポリマー/mol酸である。
【0201】
このようなポリマー酸は、例えば、E.I. DuPontにより商品名 NAFION(登録商標)の下で販売されているもの、Solvay Specialty Polymersにより商品名 AQUIVION(登録商標)の下で販売されているもの、又はAsahi Glass Co.により商品名 FLEMION(登録商標)の下で販売されているものである。
【0202】
ある実施態様において、合成ポリマーは、少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基を含む1個以上の繰り返し単位を含むポリエーテルスルホンである。
【0203】
ある実施態様において、ポリエーテルスルホンは、式(IV):
【0204】
【化17】

に従う繰り返し単位、並びに式(V)に従う繰り返し単位及び式(VI)に従う繰り返し単位:
【0205】
【化18】

[式中、R12~R20は、それぞれ独立に、H、ハロゲン、アルキル、又はSOHであるが、ただし、R12~R20の少なくとも1個は、SOHであり;そしてR21~R28は、それぞれ独立に、H、ハロゲン、アルキル、又はSOHであるが、ただし、R21~R28の少なくとも1個は、SOHであり、そしてR29及びR30は、それぞれH又はアルキルである]からなる群より選択される繰り返し単位を含む。
【0206】
ある実施態様において、R29及びR30は、それぞれアルキルである。ある実施態様において、R29及びR30は、それぞれメチルである。
【0207】
ある実施態様において、R12~R17、R19、及びR20は、それぞれHであり、そしてR18は、SOHである。
【0208】
ある実施態様において、R21~R25、R27、及びR28は、それぞれHであり、そしてR26は、SOHである。
【0209】
ある実施態様において、ポリエーテルスルホンは、式(VII):
【0210】
【化19】

[式中、aは、0.7~0.9であり、そしてbは、0.1~0.3である]により表される。
【0211】
ポリエーテルスルホンは、スルホン化されていてもいなくともよい、他の繰り返し単位を更に含んでもよい。
【0212】
例えば、ポリエーテルスルホンは、式(VIII):
【0213】
【化20】

[式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、H又はアルキルである]で示される繰り返し単位を含んでもよい。
【0214】
本明細書に記載の任意の2個以上の繰り返し単位は、一緒になって繰り返し単位を形成することができ、そしてポリエーテルスルホンは、このような繰り返し単位を含んでもよい。例えば、式(IV)に従う繰り返し単位は、式(VI)に従う繰り返し単位と合わせられて、式(IX):
【0215】
【化21】

に従う繰り返し単位を与えうる。
【0216】
同様に、例えば、式(IV)に従う繰り返し単位は、式(VIII)に従う繰り返し単位と合わせられて、式(X):
【0217】
【化22】

に従う繰り返し単位を与えうる。
【0218】
ある実施態様において、ポリエーテルスルホンは、式(XI):
【0219】
【化23】

[式中、aは、0.7~0.9であり、そしてbは、0.1~0.3である]により表される。
【0220】
少なくとも1個のスルホン酸(-SOH)残基を含む1個以上の繰り返し単位を含むポリエーテルスルホンは、市販されており、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホンは、Konishi Chemical Ind. Co., Ltd.によりS-PESとして販売されている。
【0221】
オプションのマトリックス化合物は、平坦化剤であってもよい。マトリックス化合物又は平坦化剤は、例えば、有機ポリマー(例えば、ポリ(スチレン)又はポリ(スチレン)誘導体;ポリ(酢酸ビニル)又はその誘導体;ポリ(エチレングリコール)又はその誘導体;ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル);ポリ(ピロリドン)又はその誘導体(例えば、ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル));ポリ(ビニルピリジン)又はその誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)又はその誘導体;ポリ(アクリル酸ブチル);ポリ(アリールエーテルケトン);ポリ(アリールスルホン);ポリ(エステル)又はその誘導体;あるいはこれらの組合せなど)のような、ポリマー又はオリゴマーからなっていてよい。
【0222】
ある実施態様において、マトリックス化合物は、ポリ(スチレン)又はポリ(スチレン)誘導体である。
【0223】
ある実施態様において、マトリックス化合物は、ポリ(4-ヒドロキシスチレン)である。
【0224】
オプションのマトリックス化合物又は平坦化剤は、例えば、少なくとも1種の半導体マトリックス成分からなっていてよい。この半導体マトリックス成分は、本明細書に記載のポリチオフェンとは異なる。半導体マトリックス成分は、典型的には主鎖及び/又は側鎖に正孔運搬単位を含む繰り返し単位からなる、半導体低分子又は半導体ポリマーであってよい。半導体マトリックス成分は、中性型であっても、又はドープされていてもよく、典型的には有機溶媒(例えば、トルエン、クロロホルム、アセトニトリル、シクロヘキサノン、アニソール、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、安息香酸エチル及びこれらの混合物など)に可溶性及び/又は分散性である。
【0225】
オプションのマトリックス化合物の量は、ドープされているかドープされていないポリチオフェンの量に対する重量百分率として調節及び測定することができる。ある実施態様において、オプションのマトリックス化合物の量は、ドープされているかドープされていないポリチオフェンの量に対して、0~約99.5重量%、典型的には約10重量%~約98重量%、更に典型的には約20重量%~約95重量%、更になお典型的には約25重量%~約45重量%である。0重量%である実施態様において、この非水系インク組成物には、マトリックス化合物がない。
【0226】
ある実施態様において、式(I)に従う繰り返し単位を含むポリチオフェンは、ドーパントでドープされている。ドーパントは当該分野において公知である。例えば、米国特許第7,070,867号;米国公開2005/0123793号;及び米国公開2004/0113127号を参照のこと。ドーパントは、イオン性化合物であってよい。ドーパントは、カチオン及びアニオンを含むことができる。式(I)に従う繰り返し単位を含むポリチオフェンをドープするために、1種以上のドーパントを使用してもよい。
【0227】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、又はAuであってよい。
【0228】
イオン性化合物のカチオンは、例えば、金、モリブデン、レニウム、鉄、及び銀カチオンであってよい。
【0229】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、アルキル、アリール、及びヘテロアリールスルホナート又はカルボキシラートを含む、スルホナート又はカルボキシラートを含んでもよい。本明細書に使用されるとき、「スルホナート」とは、-SOM基(ここで、Mは、H又はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);又はアンモニウム(NH )であってよい)のことをいう。本明細書に使用されるとき、「カルボキシラート」とは、-COM基(ここで、Mは、H又はアルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど);又はアンモニウム(NH )であってよい)のことをいう。スルホナート及びカルボキシラートドーパントの例は、ベンゾアート化合物、ヘプタフルオロブチラート、メタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、p-トルエンスルホナート、ペンタフルオロプロピオナート、及びポリマースルホナート類、ペルフルオロスルホナート含有アイオノマー類などを含むが、これらに限定されない。
【0230】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、スルホナートもカルボキシラートも含まない。
【0231】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、スルホニルイミド(例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど);アンチモナート(例えば、ヘキサフルオロアンチモナートなど);アルセナート(例えば、ヘキサフルオロアルセナートなど);リン化合物(例えば、ヘキサフルオロホスファートなど);及びボラート(例えば、テトラフルオロボラート、テトラアリールボラート、及びトリフルオロボラートなど)を含んでよい。テトラアリールボラート類の例は、テトラキスペンタフルオロフェニルボラート(TPFB)のようなハロゲン化テトラアリールボラート類を含むが、これらに限定されない。トリフルオロボラート類の例は、(2-ニトロフェニル)トリフルオロボラート、ベンゾフラザン-5-トリフルオロボラート、ピリミジン-5-トリフルオロボラート、ピリジン-3-トリフルオロボラート、及び2,5-ジメチルチオフェン-3-トリフルオロボラートを含むが、これらに限定されない。
【0232】
ドーパントは、例えば、共役ポリマーとの、例えば、1つ以上の電子移動反応を受けることによって、ドープされたポリチオフェンが生成する材料であってよい。ドーパントは、適切な電荷均衡する対アニオンを提供するように選択することができる。反応は、当該分野において公知のとおり、ポリチオフェンとドーパントの混合により起こり得る。例えば、ドーパントは、ポリマーからカチオン-アニオンドーパント(金属塩など)への自発電子移動を受けて、共役ポリマーを、アニオンが会合しているその酸化型の形態で、遊離金属と共に残すことができる。例えば、LebedevらのChem. Mater., 1998, 10, 156-163を参照のこと。本明細書に開示されるとおり、ポリチオフェン及びドーパントとは、反応することによりドープされたポリマーを形成する成分のことをいう場合がある。ドーピング反応は、電荷キャリアが生成される電荷移動反応であってよく、この反応は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。幾つかの実施態様において、銀イオンは、銀金属及びドープされたポリマーへの又はこれらからの電子移動を受けることができる。
【0233】
最終配合物において、組成物は、元の成分の組合せとは明確に異なるものであってよい(即ち、ポリチオフェン及び/又はドーパントは、混合前と同じ形態で最終組成物中に存在してもしなくともよい)。
ドーパントとしては、無機酸、有機酸、有機または無機酸化剤等が用いられる。
有機酸としては、ポリマー有機酸及び/又は低分子有機酸(非ポリマー有機酸)が用いられる。
一実施形態では、有機酸はスルホン酸であり、その塩(-SOM(ここで、Mは、アルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど)、アンモニウム(NH )、モノ-、ジ-、及びトリアルキルアンモニウム(トリエチルアンモニウムなど))でもよい。該スルホン酸のなかでも、アリールスルホン酸が好ましい。
【0234】
幾つかの実施態様において、ドーパントの具体例としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機強酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl)、四塩化チタン(IV)(TiCl)、三臭化ホウ素(BBr)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF・OEt)、塩化鉄(III)(FeCl)、塩化銅(II)(CuCl)、五塩化アンチモン(V)(SbCl)、五フッ化砒素(V)(AsF)、五フッ化リン(PF)、トリス(4-ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等のルイス酸;ポリスチレンスルホン酸等のポリマー有機酸;ベンゼンスルホン酸、トシル酸、カンファースルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4-ベンゾジオキサンジスルホン酸誘導体、国際公開第2006/025342号に記載されているアリールスルホン酸誘導体、特開2005-108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸誘導体等の低分子有機酸(非ポリマー有機酸);7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)、ヨウ素、ヘテロポリ酸化合物等の有機または無機酸化剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0235】
幾つかの実施態様において、ドーパントは、アリールスルホン酸化合物、ヘテロポリ酸化合物、長周期型周期表の第13族または15族に属する元素を含むイオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
特に好ましいドーパントとしては、ポリスチレンスルホン酸等のポリマー有機酸、5-スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4-ベンゾジオキサンジスルホン酸誘導体、特開2005-108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸誘導体等の低分子有機酸(非ポリマー有機酸)を挙げることができる。また、下記式(2)で示されるスルホン酸誘導体も、好適に用いることができる。
【0236】
【化24】

〔式中、Xは、O、SまたはNHを表し、Aは、Xおよびn個の(SOH)基以外の置換基を有していてもよいナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、非置換もしくは置換の炭化水素基、1,3,5-トリアジン基、または非置換もしくは置換の下記式(3)もしくは(4):
【化25】

で示される基(式中、WおよびWは、それぞれ独立して、O、S、S(O)基、S(O)基、または非置換もしくは置換基が結合したN、Si、P、P(O)基を示す。Wは単結合でもよい。R46~R59はそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。)を表し、nは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、1≦qを満たす整数である。〕
【0237】
式(3)または(4)のR46~R59は好ましくはフッ素原子であり、全てフッ素原子であることがより好ましい。式(3)のWは単結合が好ましい。最も好ましいのは式(3)におけるWが単結合であり、R46~R53が全てフッ素原子である。
【0238】
本発明に係るアリールスルホン酸化合物は、更に下記式(6)で示されるものを用いることもできる。
【化26】

(式中、Xは、O、SまたはNHを表し、Arは、アリール基を表し、nは、スルホン基数を表し、1~4を満たす整数である。)
【0239】
前記式(6)中、Xは、O、SまたはNHを表すが、合成が容易であることから、特に、Oが好ましい。
nは、ナフタレン環に結合するスルホン基数を表し、1~4を満たす整数であるが、当該化合物に高電子受容性および高溶解性を付与することを考慮すると、n=1または2が好ましい。中でも、下記式(7)で示される化合物が、好適である。
【化27】

(式中、Arは、アリール基を表す。)
【0240】
式(6)および式(7)におけるアリール基としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられ、これらのアリール基は置換基を有していてもよい。
この置換基としては、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基、ハロゲン原子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのアリール基の中でも特に下記式(8)で示されるアリール基が好適に用いられる。
【化28】

(式中、R60~R64は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基を示す。)
【0241】
式(8)中、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素原子のいずれでもよいが、本発明においては、特にフッ素原子が好適である。
炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1~10のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基(アリル基)、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。
これらの中でも、有機溶剤に対する溶解性をより高めることを考慮すると、特に、下記式(9)で示されるアリール基を用いることが好ましい。
【化29】

(式中、R62は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基を示す。)
【0242】
式(9)中、R62は特に、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキニル基、ニトロ基が好ましく、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基、ニトロ基がより好ましい。
【0243】
更に、下記式(5a)またはZで表されるアニオンと、その対カチオンからなるイオン化合物も、ドーパントとして好適に用いることができる。
【化30】

(式中、Eは長周期型周期表の第13族または15族に属する元素を表し、Ar~Arは、各々独立に、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い芳香族複素環基を表わす。)
【0244】
式(5a)中、Eは長周期型周期表の第13族または15族に属する元素の中でもホウ素、ガリウム、リン、アンチモンが好ましく、ホウ素がより好ましい。
【0245】
式(5a)中、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、5又は6員環の単環又は2~4縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
更に、Ar~Arのうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、Ar~Arの水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが最も好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ-2-ナフチル基、テトラフルオロ-4-ピリジル基等が挙げられる。
【0246】
としては、下記式(5b)で表されるイオン、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t-ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられる。
【化31】

(式中、Eは、長周期型周期表の第15族に属する元素を表わし、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。)
【0247】
式(5b)中、E2は、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子が好ましい。
Xは化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点からフッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが最も好ましい。
【0248】
上述した中でも、下記式(10)、(11)、(12)、(13):
【化32】

で示されるアニオンとカチオンの組合せであるイオン化合物(特許第5381931号(特許文献5)参照)を好適に用いることができる。
【0249】
また、ヘテロポリ酸化合物も、ドーパントとして特に好ましい。ヘテロポリ酸化合物は、代表的に式(A)で示されるKeggin型あるいは式(B)で示されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
【化33】
【0250】
ヘテロポリ酸化合物の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングステン酸等が挙げられるが、得られる薄膜を備えた有機EL素子の特性を考慮すると、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸が好適であり、リンタングステン酸がより好ましい。
なお、これらのヘテロポリ酸化合物は、公知の合成法によって合成して用いてもよいが、市販品としても入手可能である。例えば、リンタングステン酸(Phosphotungstic acid hydrate、または12-Tungstophosphoric acid n-hydrate,化学式:H(PW1240)・nHO)や、リンモリブデン酸(Phosphomolybdic acid hydrate、または12-Molybdo(VI)phosphoric acid n-hydrate,化学式:H3(PMo1240)・nHO(n≒30))は、関東化学(株)、和光純薬(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)、日本無機化学工業(株)、日本新金属(株)等のメーカーから入手可能である。
【0251】
ある実施態様においては、ドーパントとしてその前駆体である、下記式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物を用いることもできる。
【化34】
【0252】
式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基を表す。
【0253】
前記直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
【0254】
前記炭素数2~20の1価炭化水素基としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
【0255】
~Rのうち、R又はRが、炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが、水素原子であることが好ましい。更に、Rが、炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、R~Rが、水素原子であることが好ましい。前記炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、R5としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0256】
式(1)中、Aは、-O-又は-S-を表すが、-O-が好ましい。Aは、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基を表すが、ナフタレンから誘導される基が好ましい。Aは、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基を表す。
【0257】
式(1)中、mは、2≦m≦4を満たす整数を表すが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数を表すが、2が好ましい。
【0258】
幾つかの実施態様では、ドーピングプロセスから反応副産物を除去してもよい。例えば、銀のような金属は、濾過によって除去することができる。
【0259】
例えば、ハロゲン及び金属を除去するために、材料を精製することができる。ハロゲンは、例えば、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含む。金属は、例えば、ドーパントのカチオン(ドーパントのカチオンの還元型を含む)、又は触媒若しくは開始剤残留物から残された金属を含む。金属は、例えば、銀、ニッケル、及びマグネシウムを含む。量は、例えば、100ppm未満、又は10ppm未満、又は1ppm未満であってよい。
【0260】
銀含量を含む金属含量は、特に50ppmを超える濃度では、ICP-MSにより測定することができる。
【0261】
ある実施態様において、ポリチオフェンがドーパントでドープされるとき、ポリチオフェンとドーパントを混合することにより、ドープされたポリマー組成物が形成される。混合は、当業者には公知の任意の方法を用いて達成されうる。例えば、ポリチオフェンを含む溶液を、ドーパントを含む別の溶液と混合することができる。ポリチオフェン及びドーパントを溶解するのに使用される溶媒は、1種以上の本明細書に記載の溶媒であってよい。反応は、当該分野において公知のとおり、ポリチオフェンとドーパントの混合により起こり得る。生じるドープされたポリチオフェン組成物は、組成物に基づいて、約40重量%~75重量%のポリマー及び約25重量%~55重量%のドーパントを含む。別の実施態様において、ドープされたポリチオフェン組成物は、組成物に基づいて、約50重量%~65重量%のポリチオフェン及び約35重量%~50重量%のドーパントを含む。典型的には、ポリチオフェンの重量は、ドーパントの重量よりも大きい。典型的には、ドーパントは、約0.25~0.5m/ruの量のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸銀のような銀塩であってよい(ここで、mは、銀塩のモル量であり、そしてruは、ポリマー繰り返し単位のモル量である)。
【0262】
本発明の非水系インク組成物中の全固形分(%TS)は、非水系インク組成物の総量に対して、約0.1重量%~約50重量%、典型的には約0.3重量%~約40重量%、更に典型的には約0.5重量%~約15重量%、更になお典型的には約1重量%~約5重量%である。
【0263】
本明細書に記載の非水系インク組成物は、当業者には公知の任意の適切な方法により調製することができる。例えば、1つの方法において、最初の水性混合物は、本明細書に記載のポリチオフェンの水性分散液を、必要に応じてポリマー酸の水性分散液、必要に応じて別のマトリックス化合物、及び必要に応じて追加の溶媒と混合することにより調製される。混合物中の水を含む溶媒を、典型的には蒸発により次に除去する。生じる乾燥生成物を、ジメチルスルホキシドのような1種以上の有機溶媒に溶解又は分散させ、加圧下で濾過することにより、非水性混合物が生成する。このような非水性混合物に、場合によりアミン化合物を加えてもよい。この非水性混合物を次に金属酸化物ナノ粒子の非水性分散液と混合することにより、最終の非水系インク組成物が生成する。
【0264】
別の方法において、本明細書に記載の非水系インク組成物は、ストック溶液から調製することができる。例えば、本明細書に記載のポリチオフェンのストック溶液は、水性分散液からポリチオフェンを乾燥状態で、典型的には蒸発により単離することによって調製することができる。乾燥されたポリチオフェンは、次に1種以上の有機溶媒、及び場合によりアミン化合物と合わせられる。必要に応じて、本明細書に記載のポリマー酸のストック溶液は、水性分散液からポリマー酸を乾燥状態で、典型的には蒸発により単離することによって調製することができる。乾燥されたポリマー酸は、次に1種以上の有機溶媒と合わせられる。他のオプションのマトリックス材料のストック溶液は、同様に製造することができる。金属酸化物ナノ粒子のストック溶液は、例えば、市販の分散液を、1種以上の有機溶媒であって、市販の分散液に含まれる溶媒(単数又は複数)と同一であっても異なっていてもよい有機溶媒で希釈することにより、製造することができる。各ストック溶液の所望の量を次に合わせることにより、本発明の非水系インク組成物を形成する。
【0265】
更に別の方法において、本明細書に記載の非水系インク組成物は、本明細書に記載のとおり乾燥状態で個々の成分を単離するが、ストック溶液を調製する代わりに、乾燥状態の成分を合わせて、次に1種以上の有機溶媒に溶解することにより非水系インク組成物を提供することによって、調製することができる。
【0266】
本発明の非水系インク組成物は、基板上の薄膜として注型及びアニーリングすることができる。
【0267】
よって、本発明はまた、正孔運搬薄膜の形成方法であって、
1)基板を本明細書に開示の非水系インク組成物でコーティングすること;及び
2)基板上のコーティングをアニーリングすることにより、正孔運搬薄膜を形成すること
を含む方法に関する。
【0268】
基板上の非水系インク組成物のコーティングは、例えば、回転注型、スピンコーティング、ディップ注型、ディップコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、グラビアコーティング、ドクターブレード法、及び例えば、有機電子デバイスの作製のための当該分野において公知の任意の他の方法を含む、当該分野において公知の方法によって実行することができる。インクジェット印刷により基板を非水系インク組成物でコーティングすることが好ましい。
【0269】
基板は、可撓性であっても剛性であっても、有機であっても無機であってもよい。適切な基板化合物は、例えば、ガラス(例えば、ディスプレイガラスを含む)、セラミック、金属、及びプラスチック薄膜を含む。
【0270】
本明細書に使用されるとき、「アニーリング」という用語は、本発明の非水系インク組成物でコーティングされた基板上に硬化層、典型的には薄膜を形成するための任意の一般的プロセスのことをいう。一般的アニーリングプロセスは、当業者には公知である。典型的には、非水系インク組成物でコーティングされた基板から溶媒を除去する。溶媒の除去は、例えば、大気圧未満の圧力にコーティングされた基板を付すことにより、かつ/又は基板に積層されたコーティングをある温度(アニーリング温度)まで加熱し、この温度をある期間(アニーリング時間)維持し、そして次に生じた層、典型的には薄膜をゆっくり室温まで冷却させることにより達成できる。
【0271】
アニーリングの工程は、非水系インク組成物でコーティングされた基板を、当業者には公知の任意の方法を用いて加熱することにより、例えば、オーブン中又はホットプレート上で加熱することにより実行することができる。アニーリングは、不活性環境、例えば、窒素雰囲気又は希ガス(例えば、アルゴンガスなど)雰囲気下で実行することができる。アニーリングは、空気雰囲気で実行してもよい。
【0272】
ある実施態様において、アニーリング温度は、約25℃~約350℃、典型的には150℃~約325℃、更に典型的には約200℃~約300℃、更になお典型的には約230~約300℃である。
【0273】
アニーリング時間は、アニーリング温度が維持される時間である。アニーリング時間は、約3~約40分間、典型的には約15~約30分間である。
【0274】
ある実施態様において、アニーリング温度は、約25℃~約350℃、典型的には150℃~約325℃、更に典型的には約200℃~約300℃、更になお典型的には約250~約300℃であり、そしてアニーリング時間は、約3~約40分間、典型的には約15~約30分間である。
【0275】
本発明は、本明細書に記載の方法により形成される正孔運搬薄膜に関する。
【0276】
可視光の透過は重要であり、そして薄膜の厚さが大きいところでの良好な透過(低い吸光)は特に重要である。例えば、本発明の方法により製造された薄膜は、約380~800nmの波長を有する光の、少なくとも約85%、典型的には少なくとも90%の透過率(典型的には、基板を伴う)を示すことができる。ある実施態様において、透過率は少なくとも約90%である。
【0277】
1つの実施態様において、本発明の方法により製造された薄膜は、約5nm~約500nm、典型的には約5nm~約150nm、更に典型的には約50nm~120nmの厚さを有する。
【0278】
ある実施態様において、本発明の方法により製造された薄膜は、少なくとも約90%の透過率を示し、そして約5nm~約500nm、典型的には約5nm~約150nm、更に典型的には約50nm~120nmの厚さを有する。ある実施態様において、本発明の方法により製造された薄膜は、少なくとも約90%の透過率(%T)を示し、そして約50nm~120nmの厚さを有する。
【0279】
本発明の方法により製造された薄膜は、最終デバイスの電子的特性を向上させるのに使用される電極又は追加の層を場合により含有する基板上に製造することができる。得られる薄膜は、1種以上の有機溶媒に対して抵抗性である場合が有り、これらの溶媒は、その後デバイスの作製中にコーティング又は堆積される層のための、インク中の液体担体として使用される溶媒になり得る。薄膜は、例えば、トルエンに対して抵抗性であり、トルエンは、その後デバイスの作製中にコーティング又は堆積される層のためのインク中の溶媒になり得る。
【0280】
本発明はまた、本明細書に記載の方法により調製される薄膜を含むデバイスに関する。本明細書に記載のデバイスは、例えば、溶解法を含む当該分野において公知の方法により製造することができる。標準法によりインクを適用し、そして溶媒を除去することができる。本明細書に記載の方法により調製される薄膜は、デバイス中のHIL及び/又はHTL層であってよい。
【0281】
方法は、当該分野において公知であり、そして例えば、OLED及びOPVデバイスを含む、有機電子デバイスを作製するために利用することができる。当該分野において公知の方法は、輝度、効率、及び寿命を測定するために利用することができる。有機発光ダイオード(OLED)は、例えば、米国特許第4,356,429号及び4,539,507号(Kodak)に記載されている。発光する導電性ポリマーは、例えば、米国特許第5,247,190号及び5,401,827号(Cambridge Display Technologies)に記載されている。デバイスアーキテクチャ、物理的原理、溶解法、多層化、混合、並びに化合物の合成及び配合は、Kraftら、“Electroluminescent Conjugated Polymers-Seeing Polymers in a New Light,” Angew. Chem. Int. Ed., 1998, 37, 402-428に記載されており、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0282】
Sumationから入手できる化合物、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources (ADS)から、Kodak(例えば、A1Q3など)から、及び実にAldrichから入手できる化合物(BEHP-PPVなど)のような、種々の導電性ポリマー、さらには有機分子を含む、当該分野において公知であり、かつ市販されている発光体を使用することができる。このような有機エレクトロルミネセント化合物の例は、以下を含む:
(i)ポリ(p-フェニレンビニレン)及びフェニレン残基上の種々の位置で置換されているその誘導体;
(ii)ポリ(p-フェニレンビニレン)及びビニレン残基上の種々の位置で置換されているその誘導体;
(iii)ポリ(p-フェニレンビニレン)及びフェニレン残基上の種々の位置で置換されており、そしてまたビニレン残基上の種々の位置で置換されているその誘導体;
(iv)ポリ(アリーレンビニレン)であって、アリーレンが、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾールなどのような残基であってよい、ポリ(アリーレンビニレン);
(v)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体であって、アリーレンが、上記(iv)中と同様であってよく、そして更にアリーレン上の種々の位置に置換基を有する、誘導体;
(vi)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体であって、アリーレンが、上記(iv)中と同様であってよく、そして更にビニレン上の種々の位置に置換基を有する、誘導体;
(vii)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体であって、アリーレンが、上記(iv)中と同様であってよく、そして更にアリーレン上の種々の位置に置換基を、及びビニレン上の種々の位置に置換基を有する、誘導体;
(viii)(iv)、(v)、(vi)、及び(vii)中の化合物のような、アリーレンビニレンオリゴマーと非共役オリゴマーとのコポリマー;並びに
(ix)ポリ(p-フェニレン)及びフェニレン残基上の種々の位置で置換されているその誘導体(ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)などのようなラダーポリマー誘導体を含む);
(x)ポリ(アリーレン)であって、アリーレンが、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾールなどのような残基であってよい、ポリ(アリーレン);及びアリーレン残基上の種々の位置で置換されているその誘導体;
(xi)(x)中の化合物のようなオリゴアリーレンと非共役オリゴマーとのコポリマー;
(xii)ポリキノリン及びその誘導体;
(xiii)ポリキノリンと、可溶性を提供するために、フェニレン上で例えば、アルキル又はアルコキシ基により置換されているp-フェニレンとのコポリマー;
(xiv)ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスチアゾール)、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾイミダゾール)、及びその誘導体のような、リジッドロッドポリマー、並びにその誘導体;
(xv)ポリフルオレン単位を持つポリフルオレンポリマー及びコポリマー。
【0283】
好ましい有機発光ポリマーは、緑色、赤色、青色、若しくは白色光を放射するSUMATIONの発光ポリマー(Light Emitting Polymers)(「LEP」)又はそのファミリー、コポリマー、誘導体、又はこれらの混合物を含み;SUMATIONのLEPは、Sumation KKから入手できる。他のポリマーは、Covion Organic Semiconductors GmbH, Frankfurt, Germany(今やMerck(登録商標)に所有されている)から入手できるポリスピロフルオレン様ポリマーを含む。
【0284】
あるいは、ポリマーよりむしろ、蛍光又は燐光を放射する有機低分子が有機エレクトロルミネセント層として使える。低分子有機エレクトロルミネセント化合物の例は、(i)トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq);(ii)1,3-ビス(N,N-ジメチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(OXD-8);(iii)オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリナト)アルミニウム;(iv)ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム;(v)ビス(ヒドロキシベンゾキノリナト)ベリリウム(BeQ);(vi)ビス(ジフェニルビニル)ビフェニレン(DPVBI);及びアリールアミン置換ジスチリルアリーレン(DSAアミン)を含む。
【0285】
このようなポリマー及び低分子化合物は、当該分野において周知であり、そして例えば、米国特許第5,047,687号に記載されている。
【0286】
デバイスは、多くの場合、例えば、溶解法又は真空法、更には印刷法及びパターン形成法により調製できる多層構造を用いて作製することができる。詳しくは、正孔注入層(HIL)のための本明細書に記載の実施態様であって、正孔注入層としての使用のために本組成物が配合される実施態様の利用を、効果的に実行することができる。
【0287】
デバイス中のHILの例は以下を含む:
1)PLED及びSMOLEDを含むOLED中の正孔注入;例えば、PLED中のHILには、共役が炭素又はケイ素原子を巻き込む、全ての分類の共役ポリマー発光体を使用することができる。SMOLED中のHILでは、以下が例である:蛍光発光体を含有するSMOLED;燐光発光体を含有するSMOLED;HIL層に加えて1種以上の有機層を含むSMOLED;及び低分子層が、溶液若しくはエアゾール噴霧から、又は任意の他の処理方法により処理されているSMOLED。さらに、他の例は、以下を含む:デンドリマー又はオリゴマー有機半導体系のOLED中のHIL;両極性発光FETであって、HILが、電荷注入を調節するため又は電極として使用されるFET中のHIL;
2)OPV中の正孔抽出層;
3)トランジスタ中のチャネル材料;
4)論理ゲートのような、トランジスタの組合せを含む回路中のチャネル材料;
5)トランジスタ中の電極材料;
6)コンデンサ中のゲート層;
7)化学センサーであって、ドーピングレベルの調節が、感知すべき種と導電性ポリマーとの関係により達成されるセンサー;
8)バッテリー中の電極又は電解質材料。
【0288】
種々の光活性層をOPVデバイスに使用することができる。光起電デバイスは、例えば、米国特許第5,454,880号;6,812,399号;及び6,933,436号に記載されるような、例えば、導電性ポリマーと混合されたフラーレン誘導体を含む光活性層により調製することができる。光活性層は、導電性ポリマーの混合物、導電性ポリマーと半導体ナノ粒子との混合物、及びフタロシアニン、フラーレン、及びポルフィリンのような低分子の二重層を含むことができる。
【0289】
一般的電極化合物及び基板、さらには封入化合物を使用することができる。
【0290】
1つの実施態様において、カソードは、Au、Ca、Al、Ag、又はこれらの組合せを含む。1つの実施態様において、アノードは、酸化インジウムスズを含む。1つの実施態様において、発光層は、少なくとも1種の有機化合物を含む。
【0291】
例えば、中間層のような界面修飾層、及び光学スペーサー層を使用することができる。
【0292】
電子輸送層を使用することができる。
【0293】
本発明はまた、本明細書に記載のデバイスの製造方法に関する。
【0294】
ある実施態様において、デバイスの製造方法は、以下を含む:基板を提供すること;例えば、酸化インジウムスズのような透明導電体を基板上に積層すること;本明細書に記載の非水系インク組成物を提供すること;透明導電体上に非水系インク組成物を積層することにより、正孔注入層又は正孔輸送層を形成すること;正孔注入層又は正孔輸送層(HTL)上に活性層を積層すること;及び活性層上にカソードを積層すること。
【0295】
本明細書に記載されるとおり、基板は、可撓性であっても剛性であっても、有機であっても無機であってもよい。適切な基板化合物は、例えば、ガラス、セラミック、金属、及びプラスチック薄膜を含む。
【0296】
別の実施態様において、デバイスの製造方法は、本明細書に記載の非水系インク組成物を、OLED、光起電デバイス、ESD、SMOLED、PLED、センサー、超コンデンサ、カチオン変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミック素子、トランジスタ、電界効果トランジスタ、電極モディファイア、有機電界トランジスタ用の電極モディファイア、アクチュエータ、又は透明電極中の、HIL又はHTL層の一部として適用することを含む。
【0297】
HIL又はHTL層を形成するための非水系インク組成物の積層は、当該分野において公知の方法(例えば、回転注型、スピンコーティング、ディップ注型、ディップコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、グラビアコーティング、ドクターブレード法、及び例えば、有機電子デバイスの作製のための当該分野において公知の任意の他の方法を含む)により実行することができる。インクジェット印刷により非水系インク組成物を積層することが好ましい。
【0298】
1つの実施態様において、HIL層は、熱的にアニーリングされる。1つの実施態様において、HIL層は、約25℃~約350℃、典型的には150℃~約325℃の温度で熱的にアニーリングされる。1つの実施態様において、HIL層は、約25℃~約350℃、典型的には150℃~約325℃の温度で、約3~約40分間、典型的には約15~約30分間熱的にアニーリングされる。
【0299】
1つの実施態様において、HIL層は、約5nm~約500nm、典型的には約5nm~約150nm、更に典型的には約50nm~120nmの厚さを有する。
【0300】
ある実施態様において、HIL層は、少なくとも約90%の透過率を示し、そして約5nm~約500nm、典型的には約5nm~約150nm、更に典型的には約50nm~120nmの厚さを有する。ある実施態様において、HIL層は、少なくとも約90%の透過率(%T)を示し、そして約50nm~120nmの厚さを有する。
【0301】
本発明の非水性インク組成物、パイルアップ抑制剤及び有機EL素子用の寿命延長剤は、以下の非限定例により更に説明される。
【実施例
【0302】
以下の実施例で用いる略号の意味は、次の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
HPMA-QD:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート1molと、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド1.1molの縮合反応によって合成される化合物
CHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
PFHMA:2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AIBN:α、α’-アゾビスイソブチロニトリル
QD1:α、α、α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン1molと、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド1.5molの縮合反応によって合成される化合物
GT-401:ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(商品名:エポリードGT-401(株式会社ダイセル製))
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CHN:シクロヘキサノン
【0303】
以下の実施例において使用される成分を、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0304】
[1]電荷輸送性物質の調製
[製造例1]
S-ポリ(3-MEET)アミン付加物の調製
S-ポリ(3-MEET)の水性分散液(水中0.598%固形物)500gを、トリエチルアミン0.858gと混合し、得られた混合物を回転蒸発により蒸発乾固した。次いで得られた残留物を、真空オーブンを用いて50℃で一晩更に乾燥して、S-ポリ(3-MEET)アミン付加物を、黒色粉末の生成物3.8gとして得た。
【0305】
[製造例2]
製造例1で得られたS-ポリ(3-MEET)アミン付加物2.00gを、28%アンモニア水(純正化学(株)製)100mLに溶解させ、得られた溶液を室温にて終夜撹拌した。得られた反応混合物を、アセトン1500mLによる再沈殿処理に付し、析出物をろ過にて回収した。得られた析出物を、水20mL及びトリエチルアミン(東京化成工業(株)製)7.59gに再度溶解させ、60℃で1時間撹拌した。得られた反応混合物を冷却後、イソプロピルアルコール1000mLとアセトン500mLの混合溶媒による再沈殿処理に付し、析出物をろ過にて回収した。得られた析出物を、0mmHg、50℃にて1時間真空乾燥し、アンモニア水で処理した電荷輸送性物質であるS-ポリ(3-MEET)-A 1.30gを得た。
【0306】
[2]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例1]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)1.13g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)1.95g、トリエチレングリコールジメチルエーテル(東京化成工業(株)製)4.88g、2-(ベンジルオキシ)エタノール(関東化学(株)製)0.98g及びブチルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.75g、EGシリカゾル(2)を0.15g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0307】
[実施例2]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSが10wt%のエチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)1.13g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)0.98g、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)2.93g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(関東化学(株)製)3.91g及び2-エチルヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.75g、EGシリカゾル(2)を0.15g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0308】
[実施例3]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)1.20g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)0.98g、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)2.93g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(関東化学(株)製)3.91g及び2-エチルヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.82g、EGシリカゾル(2)を0.02g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0309】
[実施例4]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)1.20g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)0.98g、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)2.93g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(関東化学(株)製)3.91g及び2-エチルヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.75g、EGシリカゾル(1)を0.08g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0310】
[実施例5]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)0.41g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)0.98g、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)2.93g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(関東化学(株)製)3.91g及び2-エチルヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.01g、EGシリカゾル(2)を1.62g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0311】
[比較例1]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)1.20g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)1.95g、トリエチレングリコールジメチルエーテル(東京化成工業(株)製)4.88g、2-(ベンジルオキシ)エタノール(関東化学(株)製)0.98g及びブチルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.83g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0312】
[比較例2]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃、1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)1.20g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)0.98g、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)2.93g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(関東化学(株)製)3.91g及び2-エチルヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EG-STを0.83g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0313】
[比較例3]
初めに、D66-20BS水溶液の溶媒をエバポレーターにて留去し、得られた残留物を減圧乾燥機にて80℃で1時間減圧乾燥させ、D66-20BSの粉末を得た。得られた粉末を用いて、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を作製した。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、400rpm、90℃での1時間の撹拌により行った。
次に、別の容器を用意し、製造例2にて得たS-ポリ(3-MEET)-A 0.020gを、エチレングリコール(関東化学(株)製)0.40g、ジエチレングリコール(関東化学(株)製)0.98g、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)2.93g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(関東化学(株)製)3.91g及び2-エチルヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.032gに溶解させた。溶液の調製は、ホットスターラーを用いる、80℃での1時間の撹拌により行った。次いで、得られた溶液に、D66-20BSの10wt%エチレングリコール溶液を0.10g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で1時間撹拌した。最後に、EGシリカゾル(2)を1.64g加え、得られた混合物を、ホットスターラーを用いて400rpm、80℃で10分間撹拌し、得られた分散液を孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過して、2wt%の電荷輸送性ワニスを得た。
【0314】
[3]ポジ型感光性樹脂組成物の調製
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
以下の合成例に従い得られた共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を、島津製作所(株)製GPC装置(LC-20AD)、昭和電工製ShodexカラムKF-804Lおよび803Lを用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1ml/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表される。
【0315】
<合成例1>
MMA 10.0g、HEMA 12.5g、CHMI 20.0g、HPMA 2.50g、MAA 5.00g、AIBN 3.20gをPGME 79.8gに溶解し、60℃乃至100℃にて20時間反応させることにより、アクリル重合体溶液(固形分濃度40質量%)を得た(P1)。得られたアクリル重合体P1のMnは3,700、Mwは6,100であった。
<合成例2>
HPMA-QD 2.50g、PFHMA 7.84g、MAA 0.70g、CHMI 1.46g、AIBN 0.33gをCHN 51.3gに溶解し、110℃にて20時間撹拌して反応させることにより、アクリル重合体溶液(固形分濃度20質量%)を得た(P2)。得られたアクリル重合体P2のMnは4,300、Mwは6,300であった。
【0316】
合成例1で得られたP1 5.04g、合成例2で得られたP2 0.05g、QD1 0.40g、GT-401 0.09g、PGMEA 6.42gを混合し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とすることにより、ポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0317】
[4]バンク付基板の作製
(株)テクノビジョン製UV-312を用いて10分間オゾン洗浄したITO-ガラス基板上に、スピンコーターを用いて、前記工程[3]にて得られたポジ型感光性樹脂組成物を塗布した後、基板をホットプレート上でのプリベーク(温度100℃で120秒間加熱)に付して、膜厚1.2μmの薄膜を形成した。この薄膜に、長辺200μm、短辺100μmの長方形が多数描かれたパターンのマスクを介して、キヤノン(株)製紫外線照射装置PLA-600FAにより、紫外線(365nmにおける光強度:5.5mW/cm)を一定時間照射した。その後、薄膜を1.0%TMAH水溶液に120秒間浸漬して現像を行った後、超純水による薄膜の流水洗浄を20秒間行った。次いで、この長方形パターンが形成された薄膜をポストベーク(温度230℃で30分間加熱)に付して硬化させ、バンク付基板を作製した。
【0318】
[5]成膜性評価
前記工程[4]にて得られたバンク付基板上の長方形の開口部(膜形成領域)に、クラスターテクノロジー(株)製 Inkjet Designerを用いて、実施例1~5、比較例1~3で得られた電荷輸送性ワニスを吐出し、得られた塗膜を、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分減圧乾燥し、その後ホットプレートにて230℃で30分乾燥させて、電荷輸送性薄膜を形成した。
実施例1~5及び比較例1~3で得られた電荷輸送性薄膜の断面の形状を、微細形状測定機ET4000A((株)小坂研究所製)にて測定した。得られた結果を、開口部のそれぞれ図1(実施例1及び比較例1)及び図2(実施例2~5及び比較例2~3)に示す。
【0319】
更に、実施例1~5及び比較例1~3において用いた非水系インク組成物の組成と、得られた電荷輸送性薄膜における厚みの変化を下記表2に示す。
【表2】
【0320】
実施例1を比較例1と(図1)、また実施例2~5を比較例2~3と(図2)比較すると、実施例にて得られた電荷輸送性薄膜断面の形状は、比較例で得られた薄膜断面のそれと比較して、バンク近傍での膜の這い上がり(膜厚の増加)が明らかに少ない。即ち実施例では、比較例に比してパイルアップが抑制されている。特に、比較例3における1.64gのEGシリカゾル(2)を、0.01gのEG-STと1.62gのEGシリカゾル(2)の組み合わせに置き換えたものに相当する実施例5において、比較例3に対して顕著なパイルアップの抑制が認められた。
以上の結果から、本発明の非水系インク組成物を用いることにより、電荷輸送性薄膜形成時のパイルアップの抑制が可能となることが確認された。そしてこのことにより、本発明の非水系インク組成物を用いて得られる有機EL素子において、電気的欠陥に伴う寿命短縮や、発光層の不均一な厚みに伴う発光ムラが、他の特性を過度に低下させることなく、大幅に改善されることが期待される。
【0321】
[3]有機EL素子の作製および特性評価
実施例1及び比較例1で得られたワニスを、各々スピンコーターを用いてバンク付ITO基板に塗布した後、大気下、120℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた基板をグローブボックス内に挿入し、大気下、230℃で15分間焼成し、基板上に30nmの薄膜を形成した。バンク付ITO基板としては、パターニングされた膜厚150nmの酸化インジウム錫(ITO)薄膜電極が表面に形成された25mm×25mm×0.7tのガラス基板の電極面に、膜厚1.1μmのポリイミド樹脂膜を形成し、この膜をパターニング(2×2mm角の正方形が多数描かれたパターン)してバンクを形成することにより作成したバンク付ITO基板を用い、その使用前に、Oプラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したバンク付ITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いてα-NPD(N,N'-ジ(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニルベンジジン)を0.2nm/秒にて30nm成膜した。次いで、Alq、フッ化リチウムおよびアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、Alqおよびアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ40nm、0.5nmおよび80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点-76℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤(((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカット WB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製,HD-071010W-40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。
【0322】
【化35】
【0323】
輝度5000cd/mで駆動した場合における駆動電圧、電流密度および発光効率、並びに輝度の半減期(初期輝度5000cd/mが半分に達するのに要する時間)を測定した。結果を表3に示す。
【0324】
【表3】

以上の結果から明らかなように、本発明の非水系インク組成物を用いて作成した有機EL素子において、特性の過度の低下は認められず、特に電流効率の低下が抑制されている。更に、この有機EL素子では輝度の半減期、即ち素子寿命が延長されており、パイルアップの抑制が反映されている。即ち、本発明の非水系インク組成物を用いることで、有機EL素子の特性の過度の低下を回避しつつ、パイルアップを抑制し、これにより有機EL素子の寿命を延長することができる。
図1
図2