(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】成形品及び表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220705BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20220705BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B32B15/08 A
G02B5/08 A
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2020505577
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2018009553
(87)【国際公開番号】W WO2019175941
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森原 潤美
(72)【発明者】
【氏名】岩永 将博
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189983(JP,A)
【文献】特開2012-143955(JP,A)
【文献】特開2003-001737(JP,A)
【文献】特開2006-234849(JP,A)
【文献】特開2007-147665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 5/00- 5/136
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀鏡層と、
前記銀鏡層の両面に設けられる樹脂層と、
前記樹脂層のうちの少なくとも一方の外表面に設けられる基材と、を有し、
前記樹脂層のうちの少なくとも一方が充填材を含有し、
前記充填材の平均粒子径は、0.3μm~50μmであり、
前記充填材を含有する前記樹脂層中の前記充填材の含有率が、0.001質量%以上であり、
前記充填材を含有する前記樹脂層が、前記銀鏡層よりも視認側に設けられてなる、
光透過性を有する成形品。
【請求項2】
前記銀鏡層の厚みが100nm以下である、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記基材が、視認側の外表面に設けられてなる、請求項1又は請求項2に記載の成形品。
【請求項4】
前記銀鏡層よりも視認側から遠い側に、遮光画像層がさらに設けられてなる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の成形品と、
バックライトと、
を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の表面には、意匠的な観点から金属調の加飾を施すことがある。金属調の加飾法としては、電解めっき法、真空蒸着法、ホットスタンピング法等が挙げられる。バンパー等の車両部品の加飾には、電解めっき法が広く用いられており、例えば、電解めっき法により、部品の表面にニッケル層を被覆し、さらにクロム層を被覆する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、電解めっき法による金属調の加飾では、部品の重量が重くなるという問題がある。また、電気メッキ法、真空蒸着法及びホットスタンピング法は、いずれも特定の装置を必要とし、操作も煩雑である。
【0004】
そこで、銀鏡反応を利用して銀鏡層を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。この方法では、基材の上に、下塗り層(アンダーコート層)、銀鏡層、及び上塗り層(トップコート層)を順次形成する。銀鏡反応を利用する方法は、簡易な装置によって加飾することができ、部品の重量増加も電解めっき法に比べて極めて低く抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-216783号公報
【文献】特開2003-19765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、銀鏡層を有する成形品は、多層構造であり、かつ視認側の最表面にトップコート層等の樹脂層が設けられているため、各層での反射光が互いに干渉しあうことで、成形品の表面に干渉縞による虹色が発現する場合がある。なお、電解めっきの場合、最表面に樹脂層を設けないため、このような干渉縞は生じず、銀鏡層を有する成形品で特有の課題である。この干渉縞により発現した虹色は色むらのように見えることもあり、好ましいものではない。また、車両用の成形品では、異物が入っているように見えることがあってはならない。
【0007】
上記状況に鑑み、本発明は、銀鏡層を有し、表面での干渉縞による虹色の発現が抑制される成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する手段は、以下の実施形態を含む。
<1> 銀鏡層と、
前記銀鏡層の両面に設けられる樹脂層と、
前記樹脂層のうちの少なくとも一方の外表面に設けられる基材と、を有し、
前記樹脂層のうちの少なくとも一方が充填材を含有し、光透過性を有する成形品。
<2> 前記銀鏡層の厚みが100nm以下である、<1>に記載の成形品。
<3> 前記充填材を含有する前記樹脂層が、前記銀鏡層よりも視認側に設けられてなる、<1>又は<2>に記載の成形品。
<4> 前記基材が、視認側の外表面に設けられてなる、<1>~<3>のいずれか1項に記載の成形品。
<5> 前記銀鏡層よりも視認側から遠い側に、遮光画像層がさらに設けられてなる、<1>~<4>のいずれか1項に記載の成形品。
<6> <1>~<5>のいずれか1項に記載の成形品と、
バックライトと、
を有する表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、銀鏡層を有し、表面での干渉縞による虹色の発現が抑制される成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の成形品の構成の一例について説明する概略断面図である。
【
図2】本開示の成形品の構成の一例について説明する概略断面図である。
【
図3】本開示の成形品の構成の一例について説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。層中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、層中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。層中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、層中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0013】
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0014】
本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0015】
〔成形品〕
本開示の成形品は、銀鏡層と、前記銀鏡層の両面に設けられる樹脂層と、前記樹脂層のうちの少なくとも一方の外表面に設けられる基材と、を有し、前記樹脂層のうちの少なくとも一方が充填材を含有する。そして、本開示の成形品は光透過性を有する。本開示の成形品は、さらに他の部材を有していてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、成形品の表面での干渉縞による虹色の発現が抑制される。また、電解めっき法に比べて、成形品の重量増加が抑えられる。
また、電解めっき法では製造困難な、光透過性を有するいわゆるハーフミラーを製造することができる。さらに、電解めっき法で付与した金属調の加飾部分は、気温の低い環境下で触れると冷たく感じるが、銀鏡層を有する成形品では冷たさが抑えられる。
【0017】
以下、図面を参照しながら本開示の成形品の構成の一例について説明する。但し、本開示の成形品は、これらの態様に限定されない。
【0018】
図1は、成形品100の概略断面図である。成形品100は、視認側(図中の矢印)から順に、基材10、アンダーコート層20、銀鏡層30、及びトップコート層40が設けられている。成形品100では、基材10が、視認側の外表面に設けられている。アンダーコート層20とトップコート層40は、樹脂層である。
【0019】
成形品100では、アンダーコート層20に充填材が含有されている。アンダーコート層20に充填材が含有されることで、銀鏡層30による反射光が拡散し、光干渉が抑えられ、成形品100の表面での干渉縞による虹色の発現が抑制される。図示しないが、トップコート層40にも充填材が含有されていてもよい。
【0020】
図2は、成形品110の概略断面図である。成形品110は、視認側から順に、トップコート層40、銀鏡層30、アンダーコート層20、及び基材10が設けられている。成形品110では、トップコート層40に充填材が含有されている。トップコート層40に充填材が含有されることで、銀鏡層30による反射光が拡散し、光干渉が抑えられ、成形品110の表面での干渉縞による虹色の発現が抑制される。図示しないが、アンダーコート層20にも充填材が含有されていてもよい。
【0021】
図1及び
図2のように、充填材を含有する樹脂層が、銀鏡層30よりも視認側となるように、成形品を配置して使用することが好ましい。このような配置で使用することにより、光干渉が効果的に抑えられ、干渉縞による虹色の発現が効果的に抑制される。
【0022】
なお、
図1のように、最外層ではないアンダーコート層20に充填材を含有させた場合には、より光沢が増し、金属感が高くなる。
他方、
図2のように、最外層であるトップコート層40に充填材を含有させた場合には、反射率が抑制され、落ち着いた雰囲気になり、また充填材の感触を得ることができる。さらに、傷付きが防止され、指紋の付着、べたつき等が抑えられる。
【0023】
図1の成形品100及び
図2の成形品110は、光透過性を有する。よって、基材10、アンダーコート層20、銀鏡層30、及びトップコート層40は、それぞれ光透過性を有する。そのため、成形品100又は成形品110を介して、視認側とは反対側に置かれた物品を確認することができる。
【0024】
なお、本開示において、光透過性を有するとは、可視光の透過性(少なくとも波長400nmの可視光の透過性)が10%以上であることをいう。遮光画像層が設けられた成形品の場合には、非遮光部が光透過性を有すればよい。
【0025】
図3は、成形品120の概略断面図である。成形品120は、視認側から順に、基材10、アンダーコート層20、銀鏡層30、トップコート層40、及び遮光画像層50が設けられている。つまり、成形品120では、前述の成形品100において、視認側とは反対側の最外面に、遮光画像層50が配置されている。
【0026】
成形品100に遮光画像層50を設け、視認側とは反対側に光源60を配置すると、光源60からの光は、遮光画像層50の遮光部では遮られるが、成形品100は光透過性を有するため非遮光部では透過する。よって、視認側から成形品120を観察すると、成形品120の基材10の表面に遮光画像層50の画像が表示される。
【0027】
遮光画像層50は、銀鏡層30よりも視認側から遠い側に設けられていることが好ましく、例えば、
図3における遮光画像層50の配置位置を、銀鏡層30とトップコート層40との間に変更してもよい。
また、図示しないが、視認側から遠い側に基材10が設けられる
図2の成形品110に、遮光画像層50を設けてもよい。この場合も、遮光画像層50は、銀鏡層30よりも視認側から遠い側に設けることが好ましい。
【0028】
なお、
図1~
図3では、アンダーコート層20及びトップコート層40は、それぞれ単層となっているが、二層以上の複数層としてもよい。例えば、
図2において視認側の最外層であるトップコート層40が複数層であると、見た目に深みを増したものとなり、光沢感を出しやすい。
例えば、アンダーコート層20及びトップコート層40の少なくとも一方が二層以上の複数層である場合、これらのうちの少なくとも一層が充填材を含有していればよく、充填材を含有していないアンダーコート層20及びトップコート層40はクリア層であってもよい。
【0029】
また、
図1~
図3では、基材10は、成形品において一方の外表面に設けられているが、両面の外表面に設けられていてもよい。この場合には、基材10、アンダーコート層20、銀鏡層30、アンダーコート層20、基材10の順に設けられていることが好ましく、2つのアンダーコート層20のうち少なくとも一方に充填材が含有されていればよい。
以下、各材料について説明する。
【0030】
<基材>
基材の材質は特に限定されず、金属、ガラス等の無機材料、及び樹脂等の有機材料を用いることができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エストラマー等が挙げられる。
【0032】
熱硬化性樹脂としては、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
【0033】
成形品を自動車部品に用いる場合には、基材の材質としては、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)-ブタジエン(Butadiene)-スチレン(Styrene)共重合樹脂)等を用いることが好ましい。ポリプロピレンは、樹脂の中でも比重が軽く、加工しやすく、引張強度、衝撃強度及び圧縮強度が高く、耐候性及び耐熱性にも優れている。ABS樹脂は、プラスチック素材の中でも比較的表面処理を施しやすく、よって塗装等を成形後に施しやすい樹脂であり、耐薬品性及び剛性に優れ、耐衝撃性、耐熱性、及び耐寒性にも強い。ポリカーボネートは、プラスチック素材の中でも耐衝撃性が高く、耐候性及び耐熱性にも優れ、透明性にも長けている、また、ポリカーボネートは、加工もしやすく、プラスチック素材の中でも比較的軽く、丈夫な素材である。
【0034】
基材の厚みは、成形品の用途に応じて適宜設計できる。基材の形状も特に制限されない。
【0035】
<アンダーコート層>
アンダーコート層は、基材と銀鏡層との密着性を向上させる観点から、及び基材に平滑面を形成する観点から設けられる。
【0036】
アンダーコート層の形成には、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等を用いてもよく、アクリルシリコン樹脂塗料、及びアクリルウレタン樹脂塗料を用いることが好ましい。アクリルシリコン樹脂塗料は、基材に対する付着性に優れ、光沢保持性及び保色性が高く、耐薬品性、耐油性及び耐水性にも優れている。アクリルウレタン樹脂塗料は、塗膜が柔らかく、密着性に優れ、耐久性、耐候性及び耐薬品性にも優れている。これらの樹脂塗料は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
アンダーコート層の厚みは特に制限されず、平滑面を確保する観点からは、5μm~25μm程度であることが好ましい。
【0038】
アンダーコート層と基材との密着性を高めるために、アンダーコート層と基材との間にプライマー層を設けてもよい。
【0039】
<銀鏡層>
銀鏡層は、銀鏡反応により形成された層である。銀鏡反応により銀鏡層を形成する方法は、従来公知の方法を適宜採用することができる。
銀鏡層の厚みは特に制限されず、50nm~200nm程度であることが好ましい。銀鏡層の厚みが50nm以上であると、金属調の加飾効果が得られやすい傾向にあり、200nm以下であると、銀色の変色が抑えられる傾向にある。
本開示の成形品は、例えば、ハーフミラーの製造に用いることができ、銀鏡層の厚みを調製することで、成形品をハーフミラーとして用いるときの透過視認性を調節することができる。
【0040】
<トップコート層>
トップコート層は、最外面に設けられる層であり、トップコート層によって銀鏡層が保護されやすくなる。トップコート層としては、銀鏡層を隠蔽しない透明性を有することが好ましく、無色クリア(無色透明)であっても、着色されたカラークリア(有色透明)であってもよい。
【0041】
トップコート層の形成には、樹脂塗料を用いることができ、熱硬化性樹脂を用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、シリコン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等が挙げられ、アクリルシリコン樹脂塗料、又はアクリルウレタン塗料を用いることが好ましい。アクリルシリコン樹脂塗料は、基材に対する付着性、光沢保持性、保色性、耐薬品性、耐油性及び耐水性に優れている。アクリルウレタン樹脂塗料は、塗膜が柔らかく、密着性に優れ、耐久性、耐候性及び耐薬品性にも優れている。これらの樹脂塗料は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
トップコート層の厚みは特に限定されず、20μm~40μm程度であることが好ましい。トップコート層の厚みが20μm以上であると、銀鏡層を充分保護できる傾向にあり、40μm以下であると、経時変化によるクラック、剥がれ、密着不良等が発生しにくい傾向にある。
【0043】
<充填材>
充填材の材質は特に制限されず、無機物であっても有機物であってもよい。無機物としては、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸塩鉱物(タルク、マイカ等)、珪酸アルミニウム(クレー)、酸化アルミニウム(アルミナ)、セラミック(酸化チタン等)などが挙げられる。有機物としては、ポリイミド、ポロテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、アクリル酸エステル、スチレン等が挙げられる。充填材として、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
充填材は、無色でも有色でもよく、充填材を含有する樹脂層の内側に存在する銀鏡層を意匠として生かす観点からは、無色透明又は白濁色であることが好ましい。充填材を無色透明又は白濁色とすることで、充填材が視認側から透けて見えることが抑えられる。
なお、有色の充填材を用いる場合には、充填材を含有する樹脂層は、充填材と同色系のカラークリア(有色透明)とすることが好ましい。また、充填材を含有する樹脂層の上にさらに層が設けられる場合には、この層を充填材と同色系のカラークリアとしてもよい。
このように本開示の成形品は樹脂層の色を変えることができ、例えば、自動車ボデーの色に合わせることができる。
【0045】
充填材の大きさは特に制限されない。成形品の表面における虹色の発現を効果的に抑制する観点からは、平均粒子径は、0.3μm~50μmであることが好ましく、0.5μm~35μmであることがより好ましく、3μm~30μmであることがさらに好ましい。
充填材の平均粒子径は、微粉砕、造粒等により調節することができる。
【0046】
本開示において、平均粒子径は、レーザ回折散乱粒度分布測定装置を用いて、充填材にレーザ光を照射して体積累積分布曲線を測定し、小径側から累積50%となる50%粒子径(メディアン径)を意味する。
【0047】
充填材を含有する樹脂層における充填材の含有率は特に制限されず、目的とする意匠に応じて適宜設計することができる。
成形品の表面における虹色の発現を効果的に抑制する観点からは、アンダーコート層又はトップコート層40中の充填材の含有率は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以上であることがさらに好ましい。また、トップコート層中の充填材の含有率は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0048】
また、成形品の光透過性を確保する観点からは、充填材の含有率は、視認側から観察したときの面積(100%)に対して、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
なお、アンダーコート層又はトップコート層が複数層の場合には、上記含有率は、1層中の充填材の含有率を意味する。
また、アンダーコート層又はトップコート層が複数層の場合には、少なくとも1つの層が充填材を含有していればよく、充填材を含有しないアンダーコート層及びトップコート層をさらに設けてもよい。
【0050】
〔表示装置〕
本開示の表示装置は、上述の本開示の成形品と、バックライトと、を有する。
図3に示すように、遮光画像層50を有する成形品に対して、視認側とは反対側に光源60であるバックライトを配置すると、バックライトから発せられた光が、遮光画像層50を介して視認側に到達する。よって、視認側から成形品120を観察すると、遮光画像層50の非遮光部で形成された画像が、成形品120の表面に表示される。遮光画像層50における遮光画像はデザインを変えることができ、意匠性に優れる。
バックライトの種類は限定されず、LED等を用いてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
(アンダーコート層の形成)
縦:70mm、横:150mm、厚み:3mmの平面状ポリカーボネート基材を準備し、IPA(イソプロピルアルコール)を含ませたウエスで基材の表面を脱脂及び洗浄し、油膜、汚れ、及び塵埃を除去し、その後、基材を乾燥した。
また、大橋化学工業株式会社製のMSPS用アンダーコートクリアDと、MSPS用アンダーコートシンナーNo.15と、MSPS用アンダーコート添加剤Lと、MSPS用アンダーコート硬化剤Nとを25:35:0.5:4(質量部基準)で配合し、ここに充填材a(積水化成品工業株式会社製:MBX-30、平均粒子径30μm、略球形状)を0.3質量部を添加して、これを撹拌し、アンダーコート層用組成物を調製した。
調製したアンダーコート層用組成物を基材にスプレーガンで吹き付け、80℃に設定した乾燥炉内にて1時間乾燥し、平均厚み15μmのアンダーコート層を形成した。
【0053】
(銀鏡層の形成)
アンダーコート層が形成された基材を純水でスプレー洗浄した後、三菱製紙株式会社製のMSPS-Sa1A(商品名)をスプレー塗布し、純水による充分なスプレー洗浄の後、三菱製紙株式会社製のMSPS-Sa2A(商品名)を塗布して、銀鏡析出の活性化処理を施した。そして、2頭スプレーガンにて、三菱製紙株式会社製のMSPS-Ag(商品名)とMSPS-Do(商品名)の2液を塗布し、銀鏡反応による銀鏡層を形成した。その後、純水でスプレー洗浄を行ない、三菱製紙株式会社製のMSPS-R1Aを塗布し、さらに純水によるスプレー洗浄を行った。そして、銀鏡層の水分を除去するため、圧縮空気(エアブロー)を吹き付けた後、45℃に設定した乾燥炉内で30分間乾燥した。
【0054】
(トップコート層の形成)
大橋化学工業株式会社製のMSPS用トップコートクリヤーMと、MSPS用トップコートシンナーP-7と、MSPS用トップコート硬化剤Wと、MSPS用色剤ブラックとを、20:20:5:0.4(質量部基準)で配合し、撹拌して、トップコート層用組成物を調製した。
【0055】
銀鏡層を乾燥した後、自然冷却して、成形品の温度が室温(25℃)になったことを確認した後、調製したトップコート層用組成物をスプレーガンで吹き付け、80℃に設定した乾燥炉内にて45分乾燥し、平均厚み25μmのトップコート層を形成した。
【0056】
<実施例2>
充填材aを充填材b(丸尾カルシウム株式会社製:R重炭 平均粒子径20μm、不定形)に代えた以外は実施例1と同様にして、成形品を得た。
【0057】
(実施例3)
充填材aを充填材c(積水化成品工業株式会社製:MBX-50、平均粒子径50μm、略球形状)に代えた以外は実施例1同様に形成した。
【0058】
<実施例4>
(アンダーコート層の形成)
実施例1におけるアンダーコート層の形成において、充填材aを添加せずにアンダーコート層用組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、アンダーコート層を形成した。
【0059】
(銀鏡層の形成)
実施例1における銀鏡層の形成と同様の方法で、上記アンダーコート層の上に銀鏡層を形成した。
【0060】
(トップコート層の形成)
大橋化学工業株式会社製のMSPS用トップコートクリヤーMと、MSPS用トップコートシンナーP-7と、MSPS用トップコート硬化剤Wと、MSPS用色剤ブラックとを、20:20:5:0.4(質量部基準)で配合して、ここに充填材(積水化成品工業株式会社製:MBX-30、平均粒子径30μm、略球形状)を0.3質量部添加し、撹拌して、組成物を調製した。
調製した組成物をスプレーガンで吹き付け、80℃に設定した乾燥炉内にて45分乾燥し、平均厚み25μmのトップコート層を形成した。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、充填材aを添加せずにアンダーコート層用組成物を調製した以外は実施例1と同様にして、成形品を得た。
【0062】
[評価]
<光透過性(ハーフミラー性)>
実施例及び比較例の成形品について、波長400nmの可視光の透過率を、紫外可視分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス、U-3310 Spectrophotometer)を用いた紫外可視吸収スペクトル法によって測定した。
【0063】
<干渉縞(虹色)の発現>
実施例及び比較例の成形品について、被験者50名により、目視により、干渉縞(虹色)の発生の有無を確認し、下記評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:40名以上が発生なしと判断
B:30名~39名が発生なしと判断
C:20名~29名が発生なしと判断
D:19名以下が発生なしと判断
【0064】
<金属質感の評価>
実施例及び比較例の成形品について、被験者50名により、目視により、金属質感の有無を確認し、下記評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:40名以上が金属質感ありと判断
B:30名~39名が金属質感ありと判断
C:20名~29名が金属質感ありと判断
D:19名以下が金属質感ありと判断
【0065】
【0066】
表1の結果より、比較例1では、多くの被験者において干渉縞による虹色の発現が確認された。
これに対し、実施例1~4では、干渉縞による虹色の発現が抑えられることが確認された。また、光透過性を有しており、ハーフミラーとして使用可能であることが確認された。
【0067】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。