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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020509843
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019009912
(87)【国際公開番号】W WO2019188240
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2018057847
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 守
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-330128(JP,A)
【文献】特開2014-32635(JP,A)
【文献】特開平11-237921(JP,A)
【文献】特開2013-65078(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流入口及び流出口が表面に設けられ且つ前記流入口と前記流出口とを連通する流路が内部に設けられたベースと、
前記流路に流れる前記ガスの流量を測定する流量センサと、
同一の仕様を有し且つ前記流路に流れる前記ガスの流量を制御する少なくとも2つの流量制御弁と、
を備える流量制御装置であって、
前記流路は、
前記流入口と連通する空間である流入路と、
前記流入路と連通し且つ前記ガスの流れを分岐させる空間である分岐部と、
前記分岐部と並列に連通する少なくとも2つの空間である支流路と、
前記支流路と連通し且つ前記ガスの流れを合流させる空間である合流部と、
前記合流部と前記流出口とを連通する空間である流出路と、
を備え、
前記流量センサは、前記流路に流れる前記ガスの総流量を検出するように構成されており、
少なくとも1つの前記流量制御弁が、前記支流路の各々に介装されている、
流量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された流量制御装置であって、
前記流量制御弁は、
弁体と、
筒状部材によって構成され且つ前記弁体が着座する環状の形状を有する平面である着座面が前記筒状部材の前記弁体側の端面に形成された弁座と、
前記筒状部材の外側に位置する空間である一次側流路と、
前記筒状部材の内側に位置する空間である二次側流路と、
を備える、
流量制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載された流量制御装置であって、
前記流量制御弁は、
弁体と、
第1の筒状部材によって構成され且つ前記弁体が着座する環状の形状を有する平面である第1の着座面が前記第1の筒状部材の前記弁体側の端面に形成された第1の弁座と、
前記第1の筒状部材を外側から取り囲むように配設された第2の筒状部材によって構成され且つ前記弁体が着座する環状の形状を有する平面である第2の着座面が前記第2の筒状部材の前記弁体側の端面に形成された第2の弁座と、
前記第1の筒状部材と前記第2の筒状部材との間に位置する空間である一次側流路と、
前記第1の筒状部材の内側に位置する空間である第1の二次側流路と、
前記第2の筒状部材の外側に位置する空間である第2の二次側流路と、
を備える、
流量制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載された流量制御装置であって、
前記第2の二次側流路と直接的に連通する少なくとも2つの流出経路を備え、
前記第2の二次側流路から前記流出経路を経由して前記支流路へと前記ガスが流出するように構成されている、
流量制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された流量制御装置であって、
前記流量制御弁が備える弁体は、ダイアフラムである、
流量制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された流量制御装置であって、
前記流路の少なくとも一部を加熱するように構成された加熱装置を更に備える、
流量制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載された流量制御装置であって、
少なくとも2つの前記流量制御弁のうち少なくとも2つの前記流量制御弁は、1つの共通の駆動機構によって駆動されて弁開度が変更されるように構成されている、
流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流量制御装置は、流量センサ及び流量制御弁を備え、流量センサによって測定されるガスの流量が目標値と一致するように流量制御弁の開度を調節する装置である。流量制御装置は、成膜材料としてのガスを半導体製造装置に定量供給することを目的として広く用いられている。半導体の製造に用いられるガスの中には腐食性を有するものがある。このため、流量制御装置においては、ガスの流路と弁の駆動機構とが金属製の隔膜(即ち、ダイアフラム)によって気密に分離されたダイアフラム弁が流量制御弁として用いられることが一般的である。
【0003】
流量制御装置において使用されるダイアフラム弁のダイアフラムは、典型的には、ステンレス鋼等の耐腐食性金属によって構成された円形状の薄板である。ダイアフラム弁の開閉動作は、弁の一次側流路と二次側流路とを隔てる弁座の着座面に、ダイアフラムの表面を接触させたり乖離させたりすることによって行われる。ダイアフラムの変位は、ダイアフラムを挟んでガスの流路とは反対側に設けられた押圧部材によって行われる。
【0004】
ダイアフラム弁の最大流量は、弁の一次側圧力Pと二次側圧力Pとの圧力差ΔP1及び弁座の着座面とダイアフラムの表面との間に形成されるギャップの断面積Sに依存する。典型的には、弁座は円筒状の形状を有し、そのダイアフラム側の環状の端面が着座面となる。従って、圧力差ΔP1が一定の場合、最大流量を増やすためには、弁座の着座面の周長lを長くするか、或いは弁座の着座面とダイアフラムの表面との距離dを拡げるか、の何れかの手段によって、ギャップの断面積S(=l×d)を増やすことが有効である。後者の手段における距離dの最大値は、ダイアフラムの押圧部材の可動域の大きさによって定まる。押圧部材を駆動する駆動装置が圧電素子である場合、押圧部材の可動域はたかだか50μmであり、距離dを拡げることは困難である。
【0005】
一方、前者の手段を採用して最大流量を増大させた流量制御弁としては、例えば、特許文献1に、ダイアフラムの平坦部の周縁の近傍にまで拡大された弁座の着座面を有する流量制御弁が記載されている。この構成によれば、一定の大きさの平坦部を有するダイアフラムに対して単一の着座面を有する弁座としては着座面の周長lが最も長くなる。また、特許文献2には、弁座部材の弁座面又は弁体部材の着座面の一方又は他方に複数の流入口が形成され、弁座面又は着座面の一方又は他方に複数の流出口が形成されており、それら流入口及び流出口が、着座状態において重ならないように形成された流量制御弁が記載されている。この構成によれば、単一の着座面を有する弁座に比べて、着座面の周長lの合計を長くすることができる。
【0006】
ところで、近年、半導体製造技術の進歩に伴って成膜材料としてのガスの種類も増えており、従来使われることの無かった特殊なガスが用いられるようになってきている。例えば、特許文献3には、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)に用いられる成膜材料として、例えば有機金属化合物及び/又は金属ハロゲン化物等の前駆体を含むガスが記載されている。これらの前駆体を最初に基板上に化学吸着させて単層を形成し、その後に他のガスと反応させることによって、金属又は金属酸化物等の原子層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-65670号公報
【文献】特開2010-230159号公報
【文献】国際公開第2006/101857号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した有機金属化合物及び金属ハロゲン化物等の前駆体は、一般に分子量が大きく、常温常圧において液体(又は固体)である。また、加熱によって気化させても、平衡蒸気圧が低いために、冷却又は圧力上昇によって容易に液化(又は固化)する。従って、これらのガスの液化(又は固化)を防ぎながら流量を制御して半導体製造装置に供給するためには、温度Tを高温に維持すると共に、一次側圧力P及び二次側圧力Pが温度Tにおける平衡蒸気圧P(T)を超えない状態を維持しつつ流量制御を行う必要がある。このことは、(平衡蒸気圧P(T)が低いため)一次側圧力Pと二次側圧力Pとの圧力差ΔP1を大きくすることができないことを意味する。従って、平衡蒸気圧の低いガスの流量制御において所期の流量を達成するためには、流量制御装置が備える流量制御弁のギャップの断面積Sを増やす必要がある。
【0009】
特許文献1に記載された、ダイアフラムの平坦部の周縁の近傍にまで拡大された弁座の着座面を有する流量制御弁においては、一定の大きさの平坦部を有するダイアフラムに対して単一の着座面を有する弁座としては、着座面の周長l及びギャップの断面積Sが最大である。しかしながら、ダイアフラムの押圧部材が設けられている側の圧力Pとその反対側の二次側圧力Pとの圧力差ΔP2が大きいとき、ダイアフラムは二次側流路に向かって変形する(二次側流路側が凸になるようにダイアフラムが撓む)場合がある。
【0010】
ダイアフラムの外周部は他の部材に固定されているので、ダイアフラムの中央に比べると、着座面に対応する位置における変形は小さい。それでも、圧力差ΔP2が十分に小さいときと比べて、ダイアフラムと弁座の着座面とのギャップの距離dは小さくなる。このようなダイアフラムの変形の結果、ギャップの断面積Sが小さくなり、ガスの流量が低下する。また、二次側流路の形状が複雑であるため、流体抵抗が大きく、容量係数(C値)が小さくなる。このため、ギャップの断面積Sは大きいにも拘わらず流量を大きくすることができない。
【0011】
更に、特許文献2に記載された流量制御弁は、弁座部材の弁座面又は弁体部材の着座面の一方又は他方に形成された複数の流入口及び複数の流出口の各々に連通するように分岐した一次側流路及び二次側流路が形成されている。このため、ギャップの断面積が大きいにも拘わらず、流体抵抗が大きい。一方、上述したように平衡蒸気圧が低いガスは圧力の上昇により容易に液化するため、一次側圧力と二次側圧力との圧力差を大きくすることができない。従って、このようなガスの流量制御に当該流量制御弁を使用する場合、流量を大きくすることが困難である。加えて、弁座面又は着座面に複数の流入口及び流出口が形成されているため、閉弁時に全てのギャップを完全に閉じることは困難であり、ガスが漏れる虞がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、例えば平衡蒸気圧P(T)が低いガスを使用する場合等、一次側圧力Pと二次側圧力Pとの圧力差ΔP1を大きくすることができない場合においても、ガスの最大流量を従来よりも大きくすることができる流量制御装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る流量制御装置(以降、「本発明装置」と称呼される場合がある。)は、ガスの流入口及び流出口が表面に設けられ且つ流入口と流出口とを連通する流路が内部に設けられたベースと、流路に流れるガスの流量を測定する流量センサと、流路に流れるガスの流量を制御する少なくとも2つの流量制御弁とを備える流量制御装置である。
【0014】
本発明装置においては、流路が、流入口と連通する空間である流入路と、流入路と連通し且つガスの流れを分岐させる空間である分岐部と、分岐部と並列に連通する少なくとも2つの空間である支流路と、支流路と連通し且つガスの流れを合流させる空間である合流部と、合流部と流出口とを連通する空間である流出路と、を備える。また、流量センサは流路に流れるガスの総流量を検出するように構成されている。更に、少なくとも1つの流量制御弁が支流路の各々に介装されている。
【0015】
本発明の1つの好ましい態様において、流量制御弁は、弁体と、筒状部材によって構成され且つ弁体が着座する環状の形状を有する平面である着座面が筒状部材の弁体側の端面に形成された弁座と、筒状部材の外側に位置する空間である一次側流路と、筒状部材の内側に位置する空間である二次側流路とを備える。また、本発明のもう1つの好ましい態様において、流量制御弁は、一次側流路の外側に位置する空間である第2の二次側流路を備える。これらの構成によれば、流量制御弁の二次側流路における流体抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明装置によれば、複数の流量制御弁を同時に使用してガスの流量を制御することができるので、流量制御弁の数に応じてギャップの断面積Sを大きくすることができる。その結果、例えば平衡蒸気圧P(T)が低いガスを使用する場合等、一次側圧力Pと二次側圧力Pとの圧力差ΔP1を大きくすることができない場合においても、ガスの最大流量を従来よりも大きくすることができる。従って、本発明装置を用いて、平衡蒸気圧の低いガスを大流量にて半導体製造装置等に安定的に供給することができる。
蒸気圧の低いガスを大流量にて半導体製造装置等に安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る流量制御装置(第1装置)の構成の一例を示す模式的なブロック図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る流量制御装置(第2装置)が備える流量制御弁の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る流量制御装置(第3装置)が備える流量制御弁の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る流量制御装置(第4装置)が備える流路の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図5】本発明の第7実施形態に係る流量制御装置(第7装置)の構成の一例を示す模式的なブロック図である。
図6】第7装置の構成の一例を示す模式的な右側面図である。
図7図6に示した第7装置の流入路及び流出路の軸を含む平面による模式的な断面図である。
図8図6に示した第7装置の模式的な正面図である。
図9図8に示した第7装置の一次側流路の軸を含む平面による模式的な断面図である。
図10図6に示した第7装置の模式的な斜視図である。
図11図6に示した第7装置が備える駆動装置の動きを流量制御弁の弁体へと伝達するためのロッカーアームを含む伝達機構の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態につき、図を参照しながら以下に詳細に説明する。尚、ここに記載された実施の形態はあくまで例示に過ぎず、本発明を実施するための形態はここに記載された形態に限定されない。
【0019】
《第1実施形態》
図1は、本発明の第1実施形態に係る流量制御装置(以降、「第1装置」と称呼される場合がある。)の構成の一例を示す模式的なブロック図である。第1装置1aは、流路2と、流路に流れるガスの流量を測定する流量センサ3と、流路2に流れるガスの流量を制御する2つの流量制御弁4と、を備える。尚、図1は、第1装置1aを構成する各要素の相対的な位置関係を例示する模式図であり、第1装置1aにおける各要素の実際の配置を示すものではない。
【0020】
流路2は、図示しないベースの内部に設けられており、当該ベースの表面に設けられたガスの流入口と流出口とを連通する。第1装置1aが備えるベースの内部においてガスと接する壁面によって画定され且つその内部にガスが流れる空間は何れも流路2に該当する。流路2は、例えば第1装置1aが備えるベースの本体に穿たれた孔であってもよい。また、流路2は、例えば第1装置1aの構成部材のガスと接する面によって構成された空間であってもよい。好ましくは、第1装置1aにおいて流路2を構成する面は、ガスと接したときにガスと反応しない材料によって構成されている。より好ましくは、例えばステンレス鋼等、耐腐食性を有する金属によって構成されている。流体抵抗をより小さくしてガスの流れを妨げないようにする観点からは、流路2は、全体として、断面積ができるだけ大きくなり且つ屈曲部ができるだけ少ないように構成されていることが好ましい。
【0021】
流量センサ3は、流路2を流れるガスの流量を検出することが可能である限り、特に限定されない。このような流量センサ3の具体例としては、例えば、熱式流量センサ、圧力式流量センサ及び差圧式流量センサ等を挙げることができる。これらの流量センサの構成及び作動については、当該技術分野において公知であるので、ここでの説明は省略する。
【0022】
流量制御弁4は、流路2を流れるガスの流量を制御する。第1装置1aが備える流量制御弁4は、弁座と弁体とそれらの駆動装置とを備え、流路2を流れるガスの流量を制御することが可能である限り、如何なる構成を有する流量制御弁であってもよい。具体的には、例えば、ダイアフラム弁、ベローズ弁、ボールバルブ及びニードルバルブ等、公知の構成を有する弁を流量制御弁4として使用することができる。好ましくは、流量制御弁4はダイアフラム弁である。この場合、当然のことながら、流量制御弁4を構成する弁体はダイアフラムである。
【0023】
また、弁体及び/又は弁座の駆動装置としては、例えば、電圧信号によって駆動される圧電素子、電流信号によって駆動されるソレノイドコイル、及び回転機とギア又はカムとの組み合わせ等の公知の駆動装置を使用することができる。また、駆動装置は、弁体及び/又は弁座に直接的に接触して弁体及び/又は弁座を駆動してもよく、或いは例えばロッカーアーム及び押圧部材等の別の部材を介して弁体及び/又は弁座に間接的に接触して弁体及び/又は弁座を駆動してもよい。
【0024】
第1装置1aは、流路2に流れるガスの流量を制御する少なくとも2つの流量制御弁4を備える。流量制御弁4の数は2つ以上であればよく、3つ又は4つ以上であってもよい。第1装置1aが備える複数の流量制御弁4は、それら全てが同一の仕様を有する流量制御弁であってもよく、或いは互いに異なる仕様を有する複数の流量制御弁の組み合わせであってもよい。流量制御弁4が設けられる支流路2cの構成(例えば、支流路2cの形状及び流路2における位置等)が同一である場合は、全ての流量制御弁4が同一の仕様を有する方がガスの流量の制御をより安定的に行うことができるので好ましい。
【0025】
流路2は、流入口2pと連通する空間である流入路2qと、流入路2qと連通し且つガスの流れを分岐させる空間である分岐部2aと、分岐部2aと並列に連通する少なくとも2つの空間である支流路2cと、支流路2cと連通し且つガスの流れを合流させる空間である合流部2bと、合流部2bと流出口2rとを連通する空間である流出路2sと、を備える。即ち、第1装置1aにおいて、流路2を流れるガスは、分岐部2aにおいて少なくとも2つの支流路2cに分かれ、その後、合流部2bにおいて合流する。第1装置1aにおける支流路2cの数は2つ以上であればよく、3つ又は4つ以上であってもよい。支流路2cの数が3つ以上である場合、全ての支流路2cが単一の分岐部2aにおいて分岐していてもよく、或いは、第1の分岐部2aにおいて分岐した支流路2cの一部又は全部が、第2の分岐部2aにおいて更に多くの支流路2cに分岐していてもよい。同様に、合流部2bの数もまた、単一であっても、或いは、複数であってもよい。
【0026】
流量センサ3の出力は、第1装置1aにおけるガスの流量の制御に使用される。このため、流量センサ3は、流路2に流れるガスの総流量を検出するように構成されている。換言すれば、流量センサ3は、分岐部2aと合流部2bとの間において分岐された個々の支流路2cに流れるガスの流量ではなく、全ての支流路2cを流れるガスの流量の合計を検出するように構成されている。具体的には、例えば、流路2のうち、流入路2q又は流出路2sの何れか一方に1台の流量センサ3を設けることにより、分岐される前のガスの流量又は合流された後のガスの流量を測定することができる。また、全ての支流路2cの各々に流量センサ3を設け、それら複数の流量センサ3によって測定された支流路2cに流れるガスの流量を合計することによっても、流路2に流れるガスの総流量を検出することができる。或いは、ある支流路2cに分岐されるガスの流量と他の支流路2cに分岐されるガスの流量との比率が判っている場合は、一部の支流路2cに流れるガスの流量に基づいて流路2に流れるガスの総流量を算出することができる。
【0027】
更に、少なくとも1つの流量制御弁4が支流路2cの各々に介装されている。具体的には、各々の支流路2cにおいて、流量制御弁4の一次側流路が支流路2cの上流側の部分と連通し、流量制御弁4の二次側流路が支流路2cの下流側の部分と連通するように、少なくとも1つの流量制御弁4が介装されている。このように全ての支流路2cが少なくとも1つの流量制御弁4を備えることにより、第1装置1aは、ガスを流したり、ガスの流れを止めたり、又はガスの流量を制御したりすることができる。第1装置1aにおいては、支流路2cに分岐させたガスの流量を、支流路2c毎に設けられた流量制御弁4を用いて制御することができる。
【0028】
このため、例えば前述した特許文献2に記載された流量制御弁のように弁座部材の弁座面又は弁体部材の着座面の一方又は他方に形成された複数の流入口及び複数の流出口の各々に連通するように分岐した一次側流路及び二次側流路が形成された複雑な構造を要すること無く、複数の流量制御弁4のギャップの断面積Sの合計を必要に応じて増大させることができる。第1装置1aにおいては、支流路2cの数が増やすほど、流量制御弁4の数が増え、流量制御弁4のギャップの断面積Sの合計を大きくすることができる。これにより、例えば平衡蒸気圧P(T)が低いガスを使用する場合等、一次側圧力Pと二次側圧力Pとの圧力差ΔP1を大きくすることができない場合においても、ガスの最大流量を従来よりも大きくすることができる。
【0029】
尚、上述したような第1装置1aが備える流量制御弁4の開閉動作及び弁開度の調節(増減)によるガスの流量制御は、図示しない制御部によって実行される。このような制御部としての機能は、例えば、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)によって実現することができる。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備え、流量センサ3からの検出信号を受信するための入力ポート及び図示しない駆動装置への制御信号を送信するための出力ポート等を備える。これにより、制御部は、流量センサ3から出力される検出信号に基づいて計測されるガスの流量が目標値として設定される設定流量と一致するように、駆動装置に制御信号を出力して流量制御弁4の弁開度を制御することができる。
【0030】
また、詳しくは後述するように、第1装置1aは、流路2の少なくとも一部を加熱するように構成された加熱装置(図示せず)を更に備えていてもよい。これによれば、前述した有機金属化合物及び金属ハロゲン化物等の前駆体のように平衡蒸気圧が低く冷却又は圧力上昇によって容易に液化(又は固化)する物質のガスの流量を第1装置1aによって制御しようとする場合等においても、当該ガスの液化(又は固化)を防止して、その流量制御を安定的に行うことができる。
【0031】
《第2実施形態》
一般に、流量制御弁においては、弁体が弁座へと着座する面(着座面)よりも上流側の空間である一次側流路におけるガスの圧力(一次側圧力P)よりも、着座面よりも下流側の空間である二次側流路におけるガスの圧力(二次側圧力P)の方が低い。従って、流体抵抗を小さく(容量係数(C値)を大きく)してガスの最大流量を大きくするためには、二次側流路の断面積をできる限り大きくし、屈曲部の数をできる限り少なくすることが好ましい。
【0032】
そこで、本発明の第2実施形態に係る流量制御装置(以降、「第2装置」と称呼される場合がある。)が備える流量制御弁は、二次側流路の断面積をできる限り大きくし、屈曲部の数をできる限り少なくすることができるように構成されている。
【0033】
具体的には、第2装置は、上述した第1装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係る流量制御装置であって、流量制御弁は、弁体と、筒状部材によって構成され且つ上記弁体が着座する環状の形状を有する平面である着座面が上記筒状部材の上記弁体側の端面に形成された弁座と、上記筒状部材の外側に位置する空間である一次側流路と、上記筒状部材の内側に位置する空間である二次側流路と、を備える、流量制御装置である。
【0034】
図2は、第2装置が備える流量制御弁の構成の一例を示す模式的な断面図である。ハッチングが施された部分は、流量制御弁4を構成する部材の断面を表す。但し、弁体4aの断面だけは太い線によって表されている。線及びハッチングの無い部分は、ガスの流路又は部材間の間隙を表す。矢印は、ガスの流れる方向を表す。
【0035】
図2に例示した流量制御弁4は、円形のダイアフラムによって構成された弁体4aと、弁座4bと、一次側流路4cと、二次側流路4dと、を備える。弁座4bは、筒状部材によって構成され且つ弁体4aが着座する環状の形状を有する平面である着座面が上記筒状部材の弁体4a側の端面に形成された弁座である。一次側流路4cは、弁座4bの外側に位置する空間である。一次側流路4cの一部は、弁座4bの外側の表面によって構成されていてもよい。二次側流路4dは、弁座4bの内側に位置する空間である。二次側流路4dの一部は、弁座4bの内側の表面によって構成されていてもよい。
【0036】
図2に例示した流量制御弁4においては、押圧部材4fを介して、図示しない駆動装置によって弁体4aが間接的に駆動されることにより、弁開度が調節(増減)される。このように図2に例示した流量制御弁4は、弁体4aがダイアフラムによって構成されたダイアフラム弁であるが、第1装置及び第2装置を含む本発明に係る流量制御装置(本発明装置)が備える流量制御弁4は、図2に例示したダイアフラム弁に限定されない。
【0037】
上述したように、一般的には、流量制御弁4のギャップよりも下流側に位置する二次側流路4dを流れるガスの圧力Pは、ギャップよりも上流側に位置する一次側流路4cを流れるガスの圧力Pに比べて低くなる。従って、流体抵抗を小さく(容量係数(C値)を大きく)してガスの最大流量を大きくするためには、二次側流路4dの断面積をできる限り大きくし、屈曲部の数をできる限り少なくすることが好ましい。一方、一次側流路4cの形状は、二次側流路4dに比べて、ある程度は、断面積が小さかったり、屈曲部の数が多かったりしてもよい。換言すれば、一次側流路4cは、二次側流路4dに比べて、やや複雑な形状を有していても、ガスの最大流量の低下に繋がり難い。
【0038】
ところが、筒状部材によって構成され且つ着座面が筒状部材の弁体側の端面に形成された弁座を備える従来技術に係る流量制御弁においては、弁座の内側に位置する比較的単純な形状を有する空間によって一次側流路を構成され、弁座の外側に位置する一次側流路よりも複雑な形状を有する空間によって二次側流路が構成されていることが一般的である。その結果、このような構成を有する従来技術に係る流量制御弁においては、流体抵抗を小さく(容量係数(C値)を大きく)してガスの最大流量を大きくすることが困難であった。
【0039】
一方、第2装置においては、上述したように、弁座4bの外側に位置する比較的複雑な形状を有する空間によって一次側流路4cが構成され、弁座4bの内側に位置する一次側流路4cよりも単純な形状を有する空間によって二次側流路4dが構成されている。即ち、第2装置に流れるガスは、弁座4bの外側に位置する空間である一次側流路4cを通って流量制御弁4に流入し、弁体4aと弁座4bとの間に形成されるギャップを外側から内側へと通過した後、弁座4bの内側に位置する空間である二次側流路4dに流出する。このようなガスが流れる方向は、上述した従来技術に係る流量制御弁においてガスが流れる方向とは逆になっている。結果として、第2装置によれば、流体抵抗を小さく(容量係数(C値)を大きく)してガスの最大流量を大きくすることができる。
【0040】
《第3実施形態》
前述したように、流量制御弁においてガスの最大流量を増やすためには、弁座の着座面と弁体の表面との間に形成されるギャップの断面積Sを増やすことが有効である。上述した第2装置が備える流量制御弁4においては、弁体4aと弁座4bとの間に形成されるギャップを介して、弁座4bの外側に位置する一次側流路4cから弁座4bの内側に位置する二次側流路4dへとガスが流れる。一次側流路4cの内側に位置する二次側流路4dに加えて第2の二次側流路を更に設けて、一次側流路4cと二次側流路4dとを連通するギャップを形成し得る着座面に加えて、一次側流路4cと第2の二次側流路とを連通するギャップを形成し得る着座面を更に設ければ、流量制御弁全体としてのギャップの断面積Sを増やし、ガスの最大流量を増やすことができる。
【0041】
そこで、本発明の第3実施形態に係る流量制御装置(以降、「第3装置」と称呼される場合がある。)が備える流量制御弁においては、一次側流路4cの内側に位置する二次側流路4dに加えて、一次側流路4cの外側に第2の二次側流路が設けられている。更に、第3装置が備える流量制御弁においては、一次側流路4cと二次側流路4dとを連通するギャップを形成し得る着座面に加えて、一次側流路4cと第2の二次側流路とを連通するギャップを形成し得る着座面が更に形成されている。
【0042】
具体的には、第3装置は、上述した第1装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係る流量制御装置であって、流量制御弁は、弁体と、第1の筒状部材によって構成され且つ上記弁体が着座する環状の形状を有する平面である第1の着座面が第1の筒状部材の上記弁体側の端面に形成された第1の弁座と、第1の筒状部材を外側から取り囲むように配設された第2の筒状部材によって構成され且つ上記弁体が着座する環状の形状を有する平面である第2の着座面が第2の筒状部材の上記弁体側の端面に形成された第2の弁座と、第1の筒状部材と第2の筒状部材との間に位置する空間である一次側流路と、第1の筒状部材の内側に位置する空間である第1の二次側流路と、第2の筒状部材の外側に位置する空間である第2の二次側流路と、を備える、流量制御装置である。
【0043】
図3は、第3装置が備える流量制御弁の構成の一例を示す模式的な断面図である。ハッチングが施された部分は、流量制御弁4を構成する部材の断面を表す。但し、弁体4aの断面だけは太い線によって表されている。線及びハッチングの無い部分は、ガスの流路又は部材間の間隙を表す。矢印は、ガスの流れる方向を表す。
【0044】
図3に例示した流量制御弁4は、円形のダイアフラムによって構成された弁体4aと、第1の弁座4bと、第2の弁座4bと、一次側流路4cと、第1の二次側流路4dと、第2の二次側流路4dと、を備える。第1の弁座4bは、第1の筒状部材によって構成され且つ弁体4aが着座する環状の形状を有する平面である第1の着座面が第1の筒状部材の弁体4a側の端面に形成された弁座である。第2の弁座4bは、第1の筒状部材を外側から取り囲むように配設された第2の筒状部材によって構成され且つ弁体4aが着座する環状の形状を有する平面である第2の着座面が第2の筒状部材の弁体4a側の端面に形成された弁座である。
【0045】
一次側流路4cは、第1の筒状部材と第2の筒状部材との間に位置する空間である。一次側流路4cの一部は、第1の弁座4bの外側の表面及び第2の弁座4bの内側の表面によって構成されていてもよい。第1の二次側流路4dは、第1の筒状部材の内側に位置する空間である。第1の二次側流路4dの一部は、第1の弁座4bの内側の表面によって構成されていてもよい。第2の二次側流路4dは、第2の筒状部材の外側に位置する空間である。第2の二次側流路4dの一部は、第2の弁座4bの外側の表面によって構成されていてもよい。
【0046】
図3に例示した第3装置が備える流量制御弁4においてもまた、図2に例示した流量制御弁4と同様に、押圧部材4fを介して、図示しない駆動装置によって弁体4aが間接的に駆動されることにより、弁開度が調節(増減)される。このように図3に例示した流量制御弁4は、弁体4aがダイアフラムによって構成されたダイアフラム弁であるが、第1装置乃至第3装置を含む本発明装置が備える流量制御弁4は、図2及び図3に例示したダイアフラム弁に限定されない。
【0047】
第3装置においては、上述したように、一次側流路4cの内側及び外側に第1の二次側流路4d及び第2の二次側流路4dがそれぞれ設けられている。即ち、第3装置に流れるガスは、第1の弁座4bと第2の弁座4bとの間に位置する空間である一次側流路4cを通って流量制御弁4に流入し、第1の弁座4bと弁体4aとの間に形成されるギャップを外側から内側へと通過して第1の二次側流路4dに流出すると共に、第2の弁座4bと弁体4aとの間に形成されるギャップを内側から外側へと通過して第2の二次側流路4dに流出する。このように、第3装置が備える流量制御弁4は、2つの弁座(即ち、第1の弁座4b及び第2の弁座4b)を備えるので、図2に例示した第2装置が備える流量制御弁4に比べて、ギャップの面積Sを約2倍にすることができる。
【0048】
更に、第3装置が備える流量制御弁4は、第1の筒状部材の内側に位置する空間である第1の二次側流路4dに加えて、第2の筒状部材の外側に位置する空間である第2の二次側流路4dを更に備える。第2の二次側流路4dは、外側に位置する第2の着座面よりも更に外側に形成されるので、第2の二次側流路4dの断面積は大きく、第2の二次側流路4dの追加に伴う二次側流路全体としての断面積の増大効果は大きい。
【0049】
従って、第3装置が備える流量制御弁4によれば、第2装置が備える流量制御弁4に比べて、流体抵抗を更に小さく(容量係数(C値)を更に大きく)してガスの最大流量を更に大きくすることができる。また、第1の弁座4bの第1の着座面と第2の弁座4bの第2の着座面とは互いに近い位置に配設することができるので、押圧部材4fによって駆動される弁体4aの表面を確実に接触(着座)させてガスの流れを確実に遮断することができる。
【0050】
《第4実施形態》
第3装置においては、上述したように、一次側流路4cに流れるガスが、第1の弁座4b及び第2の弁座4bのそれぞれの着座面におけるギャップを通過して、第1の二次側流路4d及び第2の二次側流路4dへと分岐(分流)される。このように分岐されたガスの流れは、最終的には、上述した合流部2bにおいて他の流量制御弁4から流出したガスの流れと合流されて、流出口2rを経由して第3装置から排出される。
【0051】
上記のように第1の二次側流路4d及び第2の二次側流路4dへと分岐されたガスの流れを合流させるための経路の構成は特に限定されない。しかしながら、第2の二次側流路4dは、図3を参照しながら上述したように、第2の弁座4bを挟んで一次側流路4cを外側から取り囲むように形成されており、流量制御弁4のベースの内部において広い範囲に分布している。
【0052】
このため、第2の二次側流路4dに流出して上記のように広い範囲に分布したガスを1つの経路を経由して(即ち、一箇所に集めて)支流路2c又は合流部2bへと導こうとすると、第2の二次側流路4dの内部におけるガスの道程が長くなったり、ガスの流れに乱流が生じて流体抵抗が大きくなったりする虞がある。
【0053】
そこで、本発明の第4実施形態に係る流量制御装置(以降、「第4装置」と称呼される場合がある。)は、第2の二次側流路と直接的に連通する少なくとも2つの流出経路を備え、第2の二次側流路から上記流出経路を経由して前記支流路又は前記合流部へとガスが流出するように構成されている。
【0054】
上記のように、第4装置においては、第2の二次側流路に流出して上記のように広い範囲に分布したガスが、1つの経路を経由して(即ち、一箇所に集められて)支流路又は合流部へと導かれるのではなく、第2の二次側流路と直接的に連通する少なくとも2つの流出経路を経由して支流路又は合流部へと導かれる。尚、ここで「少なくとも2つの流出経路を備える」とは、1つの流量制御弁について、少なくとも2つの流出経路を備えることを意味する。第2の二次側流路と直接的に連通する少なくとも2つの流出経路を経由して第2の二次側流路から流出したガスは、合流部と連通する支流路を経由して合流部へと導かれてもよく、支流路を経由すること無く合流部へと直接的に導かれてもよい。
【0055】
図4は、第4装置が備える流路の構成の一例を示す模式的な斜視図である。図4においては、流路2の構成を判り易く例示するために、2つの流量制御弁が備える弁体及び押圧部材等が省略されている。また、外側から見えない流路2の形状は破線によって示されている。図4に示す例においては、図示しない流入口から流入したガスは、分岐部2aにおいて2つの上流側支流路2cuへと分岐され、2つの流量制御弁が備える一次側流路4cへと導かれ、それぞれの流量制御弁において2つの着座面を乗り越えて第1の二次側流路4dと第2の二次側流路4d へと流出する。
【0056】
それぞれの流量制御弁において第1の二次側流路4dへと流出したガスは、第1の下流側支流路2cdへと流出し、合流部2bにおいて合流される。一方、それぞれの流量制御弁において第2の二次側流路4dへと流出したガスは、第2の二次側流路4dと直接的に連通する2つの流出経路2eを経由して、第2の下流側支流路2cdへと流出し、合流部2bにおいて合流される。
【0057】
上記のように、図4に例示した第4装置においては、第2の二次側流路4dに流出して上述したように広い範囲に分布したガスが、1つの経路を経由して(即ち、一箇所に集められて)支流路又は合流部へと導かれるのではなく、第2の二次側流路4dと直接的に連通する2つの流出経路2eを経由して第2の下流側支流路2cdへと導かれる。これにより、第2の二次側流路4dの内部におけるガスの道程が長くなったり、ガスの流れに乱流が生じて流体抵抗が大きくなったりする可能性が低減される。
【0058】
尚、上記のように少なくとも2つの流出経路2eもまた流入口と流出口とを連通する流路の一部であり、第4装置を構成するベースの内部に設けられる。従って、流路を構成する他の部分と同様に、流出経路2eもまた、断面積を大きくしたり、屈曲の少ない形状にしたりすることができる。これにより、例えば平衡蒸気圧P(T)が低いガスを使用する場合等、一次側圧力Pと二次側圧力Pとの圧力差ΔP1を大きくすることができない場合においても、ガスの最大流量を従来よりも大きくすることができる。
【0059】
《第5実施形態》
前述したように、本発明に係る流量制御装置(本発明装置)が備える流量制御弁は、弁座と弁体とそれらの駆動装置とを備え、流路を流れるガスの流量を制御することが可能である限り、如何なる構成を有する流量制御弁であってもよい。このような流量制御弁の具体例としては、例えば、ダイアフラム弁、ベローズ弁、ボールバルブ及びニードルバルブ等、公知の構成を有する弁を挙げることができ、好ましくは、本発明装置が備える流量制御弁はダイアフラム弁である。
【0060】
従って、本発明の第5実施形態に係る流量制御装置(以降、「第5装置」と称呼される場合がある。)は、上述した第1装置乃至第4装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係る流量制御装置であって、弁体がダイアフラムである流量制御装置である。図2及び図3に例示した第2装置及び第3装置が備える流量制御弁は、上述したように、弁体4aとしてダイアフラムを備えることから、第5装置が備える流量制御弁の2つの具体例でもある。
【0061】
即ち、第5装置が備える流量制御弁はダイアフラムを弁体として備える。典型的には、ダイアフラムは円形の形状を有する金属製の薄板によって構成された隔膜である。ダイアフラムの2つの主面の一方はガスの流路に面しており、他方は外気と連通する空間に面している。従って、ガスと外気とはダイアフラムによって隔離されている。ダイアフラムの外周部は着座面を含む平面である着座平面に対して所定の距離だけ離れた基準位置に固定されている。具体的には、ダイアフラムは、その外周部が他の部材に隙間無く固定されている。ダイアフラムと他の部材との固定部分は、ガスケットその他の手段によってガスが漏洩しないように気密に保たれていることが好ましい。ダイアフラムの固定部分よりも少し内側に、ダイアフラムの変形による流量制御弁の開閉動作及び弁開度の調節(増減)を容易にするための屈曲部が設けられていることが好ましい。ダイアフラムを弁体として採用することにより、単純な構造によってガスの流路の気密性と流量制御弁の駆動性能とを両立させることができる。
【0062】
ダイアフラムは、ステンレス鋼等の耐腐食性金属の薄板によって構成されることが好ましい。これにより、流量制御弁を用いて金属に対する腐食性を有するガスの流量を制御することが可能となる。ダイアフラムを構成する金属製の薄板の厚さは、0.2mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。ダイアフラムの厚さが0.2mm以上のときはダイアフラムの強度が十分となり、0.5mm以下のときは押圧部材によるダイアフラムの変形(駆動)が容易となる。ダイアフラムのより好ましい厚さは、0.3mm以上、0.4mm以下である。
【0063】
《第6実施形態》
前述したように、原子層堆積法(ALD)においては、例えば有機金属化合物及び/又は金属ハロゲン化物等の前駆体を、気化器等を用いて気化させたガスが成膜材料として用いられる。これらの前駆体は、一般に分子量が大きく、常温常圧において液体(又は固体)であり、平衡蒸気圧が低いために、冷却又は圧力上昇によって容易に液化(又は固化)する。従って、これらのガスの液化(又は固化)を防ぎながら流量を制御して半導体製造装置に供給するためには、温度Tを高温に維持すると共に、一次側圧力P及び二次側圧力Pが温度Tにおける平衡蒸気圧P(T)を超えない状態を維持しつつ流量制御を行う必要がある。
【0064】
そこで、本発明の第6実施形態に係る流量制御装置(以降、「第6装置」と称呼される場合がある。)は、上述した第1装置乃至第5装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係る流量制御装置であって、ガスの流路の少なくとも一部を加熱するように構成された加熱装置を更に備える、流量制御装置である。
【0065】
第6装置が備える加熱装置は、ガスの流路の少なくとも一部を加熱することが可能である限り、特に限定されない。このような加熱装置の具体例としては、例えば、第6装置を構成するベースに穿設された孔に挿入され且つ通電によって発熱するカートリッジヒータ等を挙げることができる。或いは、第6装置が備える加熱装置は、第6装置を構成するベースの表面の少なくとも一部の領域に熱伝導可能に接触するように配設された加熱ブロックであってもよい。このような加熱ブロックは、例えばアルミニウム等、高い熱伝導率を有する材料によって形成された塊状の部材と、当該塊状の部材に穿設された孔に挿入され且つ通電によって発熱するカートリッジヒータと、を備えることができる。
【0066】
第6装置によれば、上述したような加熱装置により、ガスの流路の少なくとも一部を加熱することができる。従って、上述した原子層堆積法(ALD)において用いられる前駆体のように平衡蒸気圧が低いために冷却又は圧力上昇によって容易に液化(又は固化)する物質のガスの流量を制御する場合においても、このようなガスの液化(又は固化)をより確実に防止することができる。
【0067】
尚、第6装置の変形例として、例えば、第6装置を構成するベースの露出面及び/又は上述した加熱ブロックを備える場合は当該加熱ブロックの露出面等、第6装置の露出面の少なくとも一部が断熱材によって覆われていてもよい。これによれば、例えば加熱装置によるガスの流路の加熱効率の向上及びガスの流路の温度の周囲環境による影響の低減等の効果を達成することができる。
【0068】
《第7実施形態》
ところで、前述したように、本発明に係る流量制御装置(本発明装置)は、ベースの内部において複数の支流路に分岐されたガスの流路を備え、これら複数の支流路の各々に少なくとも1つの流量制御弁が介装されている。即ち、本発明装置は、ガスの流路において並列に配設された複数の流量制御弁を備える。これら複数の流量制御弁の開閉動作並びに弁開度の調節(増減)は、本発明装置が備える駆動装置が弁体及び/又は弁座に直接的に接触して弁体及び/又は弁座を駆動することによって行うことができる。或いは、これら複数の流量制御弁の開閉動作並びに弁開度の調節(増減)は、本発明装置が備える駆動装置が例えばロッカーアーム及び押圧部材等の別の部材を介して弁体及び/又は弁座に間接的に接触して弁体及び/又は弁座を駆動することによって行うこともできる。
【0069】
上記のような弁体及び/又は弁座を駆動するための駆動機構(駆動装置、又は駆動装置と別の部材との組み合わせ)は、複数の流量制御弁の各々に設けることができる。しかしながら、流量制御装置の大型化、構成及び制御機構の複雑化、並びに製造コストの増大等の問題を低減する観点からは、複数の流量制御弁のうち少なくとも一部の流量制御弁が共通の駆動機構によって駆動されることが望ましい。
【0070】
そこで、本発明の第7実施形態に係る流量制御装置(以降、「第7装置」と称呼される場合がある。)は、上述した第1装置乃至第6装置を始めとする本発明の種々の実施形態に係る流量制御装置であって、少なくとも2つの流量制御弁のうち少なくとも2つの流量制御弁が1つの共通の駆動機構によって駆動されて弁開度が変更されるように構成されている流量制御装置である。
【0071】
第7装置において少なくとも2つの流量制御弁を駆動する1つの共通の駆動機構の具体的な構成は特に限定されない。例えば電圧信号によって駆動される圧電素子又は電流信号によって駆動されるソレノイドコイルを駆動装置として採用する場合は、例えばロッカーアーム及び押圧部材等の別の部材を複数の流量制御弁の弁体に接触するように配設することにより、これら複数の流量制御弁を同時に駆動することができる。或いは、例えば回転機とギア又はカムとの組み合わせを駆動装置として採用する場合は、例えば複数の流量制御弁の弁体に接触するように構成されたギア又はカムを回転機の出力軸に配設することにより、これら複数の流量制御弁を同時に駆動することができる。
【0072】
図5は、第7装置の構成の一例を示す模式的なブロック図である。第7装置1bは、流路2と、流路に流れるガスの流量を測定する流量センサ3と、流路2に流れるガスの流量を制御する2つの流量制御弁4と、を備える。尚、図5は、第7装置1bを構成する各要素の相対的な位置関係を例示する模式図であり、第7装置1bにおける各要素の実際の配置を示すものではない。
【0073】
第7装置1bは、2つの流量制御弁4が1つの共通の駆動機構5によって駆動されて弁開度が同時に変更されるように構成されている点を除き、図1に示した第1装置1aと同様の構成を有する。従って、以下の説明においては、主として駆動機構5の構成について説明し、その他の構成要素に関する説明は省略する。
【0074】
図6は第7装置1bの構成の一例を示す模式的な右側面図であり、図7図6に示した第7装置1bの流入路及び流出路の軸を含む平面による模式的な断面図である。また、図8図6に示した第7装置1bの模式的な正面図であり、図9図8に示した第7装置1bの一次側流路の軸を含む平面による模式的な断面図である。更に、図10は、図6に示した第7装置1bの模式的な斜視図である。加えて、図11は、図6に示した第7装置1bが備える駆動装置5aの動きを流量制御弁4の弁体へと伝達するためのロッカーアーム5rを含む第1の伝達機構5bの構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【0075】
図6乃至図8及び図10に示すように、第7装置1bが備える駆動機構5は、駆動装置5a、第1の伝達機構5b及び第2の伝達機構5cによって構成されている。第7装置1bが備える流量センサ3は、図7に示すように、ガスの流路2に設けられたバイパス3aと、バイパス3aの上流側においてガスの流路2から分岐してバイパス3aの下流側においてガスの流路2へと合流するセンサチューブ3bと、センサチューブ3bに巻き付けられたセンサワイヤ(図示せず)と、を備える熱式流量センサである。
【0076】
駆動装置5aは、電圧信号によって駆動される圧電素子である。第1の伝達機構5bは、駆動装置5aの動きを流量制御弁4の弁体を押圧する押圧部材4fへと伝達するロッカーアーム5rを含む。第2の伝達機構5cは、ロッカーアーム5rによって駆動されて流量制御弁4の弁体を押圧する押圧部材4fを含む。第7装置1bにおけるガスの流れは、図6及び7において白抜きの矢印によって示されている。また、第7装置1bにおいては、ガスの流れにおける上流側の端部である流入口及び下流側の端部である流出口に他の機器との接続用のジョイント部がそれぞれ設けられている。
【0077】
第7装置1bは、図9に示すように、2つの流量制御弁4が1つの共通の駆動機構5によって駆動されて弁開度が同時に変更されるように構成されている。具体的には、図11において太い実線の両矢印によって示すように、第1の伝達機構5bは、駆動装置5aによって駆動されてロッカーアーム5rが回転軸5sを中心として回動するように構成されている。即ち、図11に例示するロッカーアーム5rは、回転軸5sからなる支点と、駆動装置5aによって駆動される1つの力点と、2つのステム4sを駆動する2つの作用点と、を有する1種の梃子である。ロッカーアーム5rは第2の伝達機構5cの内部において流量制御弁4の弁体の変位方向に摺動可能に設けられた2つのステム4sと接触し、これら2つのステム4sを介して2つの流量制御弁4の押圧部材4fを駆動する。このようにして駆動される2つの押圧部材4fは2つの流量制御弁4の弁体をそれぞれ駆動して、2つの流量制御弁4の弁開度を調節する。
【0078】
尚、図5乃至図11に例示した第7装置は2つの流量制御弁を備え、これら2つの流量制御弁の両方が1つの共通の駆動機構によって駆動されるように構成されている。しかしながら、第7装置が備え得流量制御弁の数は2つに限定されず、第7装置は3つ以上の流量制御弁を備えることができる。この場合、3つ以上の流量制御弁の全てが1つの共通の駆動機構によって駆動されるように構成してもよく、或いは3つ以上の流量制御弁の一部(例えば、2つ)が1つの共通の駆動機構によって駆動されるように構成してもよい。
【0079】
上記のように、第7装置においては、少なくとも2つの流量制御弁のうち少なくとも2つの流量制御弁が1つの共通の駆動機構によって駆動されて弁開度が変更されるように構成されている。その結果、第7装置によれば、流量制御装置の大型化、構成及び制御機構の複雑化、並びに製造コストの増大等の問題を低減しつつ、複数の流量制御弁を備えることができる。
【0080】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0081】
1a,1b 質量流量制御装置
2 流路
2a 分岐部
2b 合流部
2c 支流路
2cu 上流側支流路
2cd 第1の下流側支流路
2cd 第2の下流側支流路
2e 流出経路
2p 流入口
2q 流入路
2r 流出口
2s 流出路
3 流量センサ
3a バイパス
3b センサチューブ
4 流量制御弁
4a 弁体
4b 弁座
4b1 第1の弁座
4b2 第2の弁座
4c 一次側流路
4d 二次側流路
4d1 第1の二次側流路
4d2 第2の二次側流路
4f 押圧部材
5 駆動機構
5a 駆動装置
5b 第1の伝達機構
5c 第2の伝達機構
5r ロッカーアーム
5s 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11