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特許7099539LEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びLEDヘッドランプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】LEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びLEDヘッドランプ
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220705BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220705BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20220705BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20220705BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/3477
H01L33/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020552980
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036664
(87)【国際公開番号】W WO2020080028
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2018194807
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 重揮
(72)【発明者】
【氏名】飯野 幹夫
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-48214(JP,A)
【文献】特開2008-291124(JP,A)
【文献】特開2008-101056(JP,A)
【文献】特開平7-41679(JP,A)
【文献】特開平7-331079(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173945(WO,A1)
【文献】特開2005-325211(JP,A)
【文献】特開2016-84385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A-1)平均重合度が2,000未満で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、及び
(A-2)平均重合度が2,000以上で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:10~100質量部、
(B)R2 3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2 2SiO2/2単位(D単位)、及びR2SiO3/2単位(T単位)(各単位中、R2は炭素数1~6の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)から選択される単位からなり、これら全構成単位のうち、M単位及びQ単位の合計量が80モル%以上であり、M単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位)が0.5~1.5であって、かつ1分子(全構成単位)中に少なくとも2個のアルケニル基を含むシリコーンレジン:10~150質量部、
(C)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(Si-H基)を含有し、該Si-H基量が0.0085モル/g以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(C)成分中のSi-H基の数が、(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基の合計1個当たり、1~3個となる量、
(D)白金族金属系触媒:触媒量、
(E)トリアリルイソシアヌレート:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対し、0.01質量部以上0.05質量部未満
を含有するLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A-2)成分のアルケニル基含有量が0.03ミリモル/gを超えるものである請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(A-1)成分が、分子鎖両末端にのみケイ素原子に結合したアルケニル基を有するものである請求項1又は2記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物で封止され、該硬化物が、JIS K 6249:2003記載の方法で測定したタイプA硬度計による硬さが65以上のものであるLEDヘッドランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンを主成分とし、付加反応によって硬化する液状シリコーンゴム組成物及びLEDヘッドランプに関し、さらに詳述すると、150℃長期耐熱試験において、高透明を保持しつつ、黄変が少ない硬化物を与えるLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及び該組成物の硬化物で封止されたLEDヘッドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDチップや各種液晶モニター画面の耐候性向上、光導波などの目的で、高硬度で高透明なシリコーン系樹脂が注目され、中でもシリカを全く含まないために、高透明かつ低温でも弾性を損なわず、熱硬化による成形も比較的容易な付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物が使用されるようになった。LEDヘッドランプ用集光レンズとして、初期の硬さタイプAが65~75度品の硬化物を与える高透明付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が採用されたが、150℃長期耐熱試験において、黄変問題があった。
なお、本発明に関する先行技術文献は、以下の通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-59321号公報
【文献】特開2002-265787号公報
【文献】特開2006-202952号公報
【文献】特開2006-342200号公報
【文献】特開2008-101056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、150℃長期耐熱試験において、高透明性を保持しつつ、黄変が少ない硬化物を与えるLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及び該組成物で封止されたLEDヘッドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、後述する所定の(A)~(D)成分を含有する付加硬化型液状シリコーンゴム組成物に、(E)トリアリルイソシアヌレートを微量添加することで、150℃長期耐熱試験において、高透明を保持しつつ、黄変が少ない硬化物を与えるLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、下記LEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びLEDヘッドランプを提供するものである。
1. (A)(A-1)平均重合度が2,000未満で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、及び
(A-2)平均重合度が2,000以上で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサン:10~100質量部、
(B)R2 3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2 2SiO2/2単位(D単位)、及びR2SiO3/2単位(T単位)(各単位中、R2は炭素数1~6の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)から選択される単位からなり、これら全構成単位のうち、M単位及びQ単位の合計量が80モル%以上であり、M単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位)が0.5~1.5であって、かつ1分子(全構成単位)中に少なくとも2個のアルケニル基を含むシリコーンレジン:10~150質量部、
(C)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(Si-H基)を含有し、該Si-H基量が0.0085モル/g以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(C)成分中のSi-H基の数が、(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基の合計1個当たり、1~3個となる量、
(D)白金族金属系触媒:触媒量、
(E)トリアリルイソシアヌレート:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対し、0.01質量部以上0.05質量部未満
を含有するLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
2. (A-2)成分のアルケニル基含有量が0.03ミリモル/gを超えるものである1記載のシリコーンゴム組成物。
3. (A-1)成分が、分子鎖両末端にのみケイ素原子に結合したアルケニル基を有するものである1又は2記載のシリコーンゴム組成物。
4. 1~3のいずれかに記載のシリコーンゴム組成物の硬化物で封止され、該硬化物が、JIS K 6249:2003記載の方法で測定したタイプA硬度計による硬さが65以上のものであるLEDヘッドランプ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、150℃長期耐熱試験において、高透明性を保持しつつ、黄変の少ない硬化物を与えるLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及び該組成物で封止されたLEDヘッドランプが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
<付加硬化型液状シリコーンゴム組成物>
本発明のLEDヘッドランプ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、以下の(A)~(E)成分を含有してなるものであって、室温(25℃)で液状のものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0009】
〔(A)成分〕
(A)成分は、下記(A-1)及び(A-2)成分からなる。
(A-1)成分は、平均重合度が2,000未満で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する25℃で液状のオルガノポリシロキサンであり、通常、ヒドロシリル化硬化型液状シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして使用されている公知のものである。(A-1)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0010】
(A-1)成分の25℃で液状のオルガノポリシロキサンは、平均重合度が1,500以下であることが好ましく、より好ましくは150~1,500、さらに好ましくは150~1,000である。
【0011】
また、(A-1)成分のJIS K 6249:2003記載の回転粘度計による25℃での粘度は好ましくは1~100Pa・s、より好ましくは5~100Pa・sである。
【0012】
一方、(A-2)成分は、平均重合度が2,000以上で、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合したアルケニル基を含有する25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンであり、通常、ミラブルタイプのシリコーンゴムコンパウンドのベースポリマーとして使用されている公知のものである。(A-2)成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
(A-2)成分の平均重合度は、好ましくは2,000~100,000であり、より好ましくは3,000~10,000である。
【0014】
(A-1)成分と(A-2)成分混合後の平均重合度は、好ましくは3,500~8,000である。
なお、本発明中で言及する平均重合度とは、数平均重合度のことを指し、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした平均重合度を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:1mL/min.
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:KF-805L×2(Shodex社製)
カラム温度:25℃
試料注入量:30μL(濃度0.2質量%のトルエン溶液)
【0015】
上記(A-1)成分及び(A-2)成分は、共にアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであるが、違いは分子量(重合度)である。これらは、通常、下記平均組成式(1)で表され、直鎖状であっても分岐していてもよい。
1 aSiO(4-a)/2 (1)
【0016】
式中、R1は炭素数1~6、特に1~3の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基等のアリール基等の非置換1価炭化水素基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換1価炭化水素基などが挙げられる。
【0017】
複数の置換基は異なっていても同一であってもよいが、1分子中にアルケニル基を2個以上含んでいることが必要である。アルケニル基としては、ビニル基が好ましく、ビニル基は、分子鎖末端にあっても側鎖にあってもよいが、特に(A-1)成分については、ビニル基は、分子鎖両末端にそれぞれ1個又は2個含有するものが好ましく、特に分子鎖両末端のみに1個ずつ、合計2個含有するものが好ましい。
【0018】
aは1.9~2.4、好ましくは1.95~2.05を満足する正数である。
【0019】
特に、(A-1)成分の平均組成式(1)中の複数のR1は同じでも異なってもよいが、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性の観点から、(A-1)成分のR1の80モル%以上がメチル基であることが好ましい。これは、各成分の相溶性が悪化すると、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の透明性が低下するためである。また、アルケニル基としてはビニル基が好ましいが、これも他の成分との相溶性を保つことがその理由である。
【0020】
また、(A-1)成分の25℃で液状オルガノポリシロキサンのアルケニル基量は、0.01~0.8ミリモル/gが好ましく、より好ましくは0.02~0.6ミリモル/gである。
【0021】
(A-2)成分の25℃で生ゴム状のオルガノポリシロキサンのアルケニル基量については、0.03ミリモル/gを超えるものが好ましく、特に0.04~15ミリモル/gであるものが好ましく、より好ましくは0.04~1ミリモル/g、さらに好ましくは0.05~0.1ミリモル/gである。アルケニル基量が0.03ミリモル/g以下の場合、ゴム硬度のバラツキの他、ゴムを加熱硬化する速度(即ち、硬化性)もバラツキが大きくなる場合がある。
【0022】
(A-1),(A-2)成分としては、主鎖がジオルガノポリシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(M単位)で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンが好ましく、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の置換基はメチル基又はフェニル基が好ましい。具体例としては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物などが挙げられる。
【0023】
〔(B)成分〕
(B)成分のシリコーンレジンは、R2 3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、R2 2SiO2/2単位(D単位)、及びR2SiO3/2単位(T単位)から選択される単位からなり、これらの全構成単位のうち、M単位及びQ単位の合計量が80モル%以上であり、かつM単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位)が0.5~1.5である。ここで、各単位中、R2は炭素数1~6の1価炭化水素基であり、かつ1分子(全構成単位)中に少なくとも2個のアルケニル基を含む。
【0024】
2は炭素数1~6、特に1~3の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基等のアリール基等の非置換1価炭化水素基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換1価炭化水素基などが挙げられる。アルケニル基としてはビニル基が好ましく、アルケニル基以外の置換基としてはメチル基又はフェニル基が好ましい。
【0025】
(B)成分中のアルケニル基量は、0.01~5ミリモル/gが好ましく、より好ましくは0.1~1ミリモル/gである。
【0026】
(B)成分のシリコーンレジンにおいて、上記4種の構成単位のうち、R2 3SiO1/2単位(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)が必須である。付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さを向上させるためには、全構成単位に占めるこの2種の構成単位の割合が80モル%以上であり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0027】
また、R2 3SiO1/2単位(M単位)のSiO4/2単位(Q単位)に対するモル比(M単位/Q単位)が、0.5より小さいと付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の他の成分との相溶性が悪化し、1.5より大きいと付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物の硬さが低下してしまう。従って、M単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位)は0.5~1.5であり、好ましくは0.7~1.2である。
【0028】
なお、R2 2SiO2/2単位(D単位)及びR2SiO3/2単位(T単位)は含まれていてもいなくてもよい。R2 2SiO2/2単位(D単位)及び/又はR2SiO3/2単位(T単位)が含まれる場合、これらの合計含有割合は全構成単位に対して20モル%以下が好ましく、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下であり、D単位及びT単位の両方が含まれる場合、その割合はD単位/T単位がモル比で0.01~0.15が好ましい。
【0029】
このような(B)成分のシリコーンレジンとして、具体的には、例えば、ビニルジメチルシロキシ基含有M単位とQ単位とからなる共重合体、ビニルジメチルシロキシ基含有M単位とトリメチルシロキシ基含有M単位とQ単位とからなる共重合体、ビニルジメチルシロキシ基含有M単位とジメチルシロキサンとQ単位とからなる共重合体、ビニルジメチルシロキシ基含有M単位とフェニルシルセスキオキサンとQ単位とからなる共重合体、ビニルジメチルシロキシ基含有M単位とジメチルシロキサンとフェニルシルセスキオキサンとQ単位とからなる共重合体、トリメチルシロキシ基含有M単位とビニルメチルシロキサンとQ単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0030】
本発明の(A-1),(A-2),(B)成分の配合比としては、(A-1)成分100質量部に対して、(A-2)成分は10~100質量部であり、好ましくは30~80質量部であって、(B)成分は10~150質量部であり、好ましくは20~120質量部である。組成物の粘度の点から、この範囲が成形加工に好適である。(A-2)成分、(B)成分共に、この範囲外では、150℃長期耐熱試験において、硬化物が脆くなってしまい、割れが発生する。また、柔らかく表面粘着性のある硬化物となるため、成形加工には適さなくなる。
【0031】
〔(C)成分〕
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(Si-H基)を含有するもので、下記平均組成式(2)で示されるものを使用することができる。
3 bcSiO(4-b-c)/2 (2)
【0032】
式中、R3は炭素数1~6、特に1~3の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基等の非置換1価炭化水素基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記1価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換1価炭化水素基などが挙げられるが、アルケニル基は含まれない方が好ましい。
bは0.7~2.1、cは0.18~1、かつb+cは0.88~3の正数であり、好ましくは、bは0.8~2、cは0.2~1、かつb+cは1~2.5を満足する正数である。
【0033】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2~300個、特に4~200個程度の25℃で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端にあっても、側鎖にあっても、その両方にあってもよい。
【0034】
(C)成分中のSi-H基量としては、0.0085モル/g以下であり、0.003~0.0085モル/gが好ましい。(C)成分のSi-H基量が、0.0085モル/gを超えると、硬化物の150℃長期耐熱試験で硬さ変化が大きくなり、割れが発生する。
【0035】
このような(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0036】
(C)成分は、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)の数を、(A)成分及び(B)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基の合計1個当たり、1~3個、好ましくは1.5~2.5個となるように、配合量を調整する。つまり、この範囲下限未満では、柔らかく、表面粘着性のある硬化物となり、この範囲上限超過では、成形加工時の金型密着又は固着が発生する。
【0037】
〔(D)成分〕
(D)成分の白金族金属系触媒は、付加反応触媒として公知のものが使用可能で、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがあるが、白金系のものが好ましく、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒などが挙げられる。
【0038】
白金族金属系触媒の配合量は、触媒量とすることができ、白金族金属として、(A)成分に対し、通常0.5~1,000ppmが好ましく、より好ましくは1~200ppm程度とすることができる。
【0039】
〔(E)成分〕
(E)成分のトリアリルイソシアヌレートは微量添加で150℃長期耐熱試験において黄変を低減する効果がある。添加量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100質量部に対し、0.01質量部以上0.05質量部未満であり、好ましくは0.02~0.04質量部である。0.01質量部未満では、黄変の低減効果が不十分であり、0.05質量部以上では、初期及び150℃/4000時間後の硬さ変化が大きくなり、ゴム特性にも影響が出る。
【0040】
〔その他の成分〕
本発明の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記(A)、(B)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン以外のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンや、アルコキシシリル基を含有するアルコキシシラン系化合物、シランカップリング剤、チタン系やジルコニウム系等の縮合触媒などを架橋補助剤として配合してもよい。
【0041】
また、例えば、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等の多官能アルケニル化合物、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール誘導体などの付加反応制御剤を、ポットライフの確保のために添加してもよい。また、例えば、トリメチルクロロシランやオクタメチルテトラシクロシロキサンで表面処理した表面処理シリカ等の無機充填材を、硬化物の硬さや強度を向上させるために配合してもよい。さらに、染料、顔料、難燃剤、離型剤等の配合も、本発明の効果を損なわない範囲ならば可能である。
これらの各任意成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
なお、付加反応制御剤((F)成分)を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01~1質量部が好ましく、より好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0043】
〔組成物の調製方法〕
本発明の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、ニーダー、プラネタリーミキサー等の通常の混合撹拌器、混練器等を用いて、上記(A)~(E)成分の他、必要に応じてその他の成分を均一に混合することにより調製することができる。
【0044】
〔硬化方法〕
得られた付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させることにより、硬化物を作製することができる。この硬化は、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様の硬化条件で行えばよく、例えば、常温(25℃)でも十分硬化するが、必要に応じて加熱してもよく、80~220℃、特に120~200℃で3秒~10分間、特に5秒~3分間加熱することにより硬化させることができる。
【0045】
〔成形方法〕
成形方法は、公知の熱硬化樹脂についての成形法を用いることができ、例えば、プレス成形法ならば、2枚のライナーの間に付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を流し込み、所定の金型、条件で加圧加硫させればよい。あるいは、2液混合型の液状射出成形機では、任意の金型を用いて望みの形状の硬化物を得て、例えば、光学用途に適した成形品を得ることができる。さらには、他の樹脂との二色成形も可能である。他にもコンプレッション成形、トランスファー成形などが可能である。また、延伸成形法の例としては、2枚の連続樹脂フィルムの間に付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を供給しながら、ロールにより一定厚みに延伸し、加熱炉に連続的に供給して常圧熱気加硫させる。硬化後、冷却してからライナーを剥離すれば、シート状の透明硬化物が得られる。
【0046】
<LEDヘッドランプ>
LEDヘッドランプは、上記成形方法を用い、LEDを付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化物で封止してなるものである。該硬化物は、JIS K 6249:2003記載の方法で測定したタイプA硬度計による硬さが65以上であり、特に65~85であることが好ましい。硬化物の硬さが65未満になると、成形品の変形による歪みが発生するためである。本発明のLEDヘッドランプは自動車、電車、航空機等の輸送用機器などに使用できる。
【実施例
【0047】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各例に係る成分の配合量の単位は質量部である。
【0048】
[実施例1,2及び比較例1,2]
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の各例について、下記(A-1)液状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(A-2)生ゴム状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(B)シリコーンレジン、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(D)白金族金属系触媒、(E)トリアリルイソシアヌレート、及び(F)付加反応制御剤の配合量を表1に示す割合で常法により混合し、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を調製した。
【0049】
〔使用した材料〕
(A-1)25℃で液状であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:
両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン
平均重合度:約750
粘度:約30Pa・s
1分子当たりのビニル基数:2個(ビニル基含有量:0.036ミリモル/g)
【0050】
(A-2)25℃で生ゴム状であるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン:
両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体
平均重合度:約8,000
1分子当たりのビニル基数:40個(ビニル基含有量:0.067ミリモル/g)
【0051】
(B)シリコーンレジン:
(CH33SiO1/2(M)単位、(CH2=CH)(CH32SiO1/2(M)単位、SiO4/2(Q)単位からなる共重合体
1分子当たりのビニル基数:4.0個(ビニル基含有量:0.84ミリモル/g)
1分子中のM単位のQ単位に対するモル比(M単位/Q単位):0.85
【0052】
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(C-1) 両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン
1分子当たりのSi-H基数:20個(Si-H基含有量0.0073モル/g)
(C-2) 両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン
1分子当たりのSi-H基数:50個(Si-H基含有量0.0081モル/g)
【0053】
(D)白金族金属系触媒:白金触媒 Pt濃度:1質量%
【0054】
(E)トリアリルイソシアヌレート
【0055】
(F)付加反応制御剤:1-エチニルシクロヘキサノール
【0056】
〔硬化成形〕
プレス板上に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ライナー、厚さ2.2mmの枠を重ね、この枠内に各例に係る付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を流し込み、この上にさらにPETライナー、プレス板を積層して120℃で10分間プレス成型した。二枚のPETライナーごと取り出して、冷却後、PETライナーを剥離して厚さ約2mmのシリコーンゴム製透明フィルムを得た。このシリコーンゴム製透明フィルムを150℃/1時間熱風循環乾燥機内で加熱硬化した。
【0057】
〔評価〕
これら各例について、下記の物性を評価し、表1に示した。
・硬化物硬さ:JIS K 6249:2003(2mmシート×3枚重ね)記載のタイプA硬度計により、初期及び150℃/4,000時間後の硬さを測定した。
・透明性:初期及び150℃/4,000時間後の前記2mmシートの全光線透過率(%)とヘイズ(%)を測定した。
・黄変:初期及び150℃/4,000時間後の前記2mmシートの色彩色差計でb*値(黄色の度合い)を測定した。
【0058】
【表1】
注)Si-H基/Si-Vi基比率:(A),(B)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基の合計1個当たりの(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の数。