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特許7100144合成処理システム、合成処理装置、及び合成処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】合成処理システム、合成処理装置、及び合成処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20220705BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220705BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220705BHJP
   G06T 7/30 20170101ALI20220705BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H04N5/232 290
H04N5/232 300
H04N5/232 380
H04N5/232 930
H04N7/18 U
G06T7/00 Q
G06T7/30
G06T3/00 750
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020545977
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019035055
(87)【国際公開番号】W WO2020054584
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2018170761
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】松本 一磨
(72)【発明者】
【氏名】堀田 修平
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-2892(JP,A)
【文献】特開2016-5263(JP,A)
【文献】特開2017-11687(JP,A)
【文献】特開2018-90982(JP,A)
【文献】特開2017-167969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 7/18
G06T 7/00
G06T 7/30
G06T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置、第1のコンピュータ、及び第2のコンピュータで構成される合成処理システムであって、
前記第1のコンピュータは、
前記撮像装置により、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像を取得する第1の画像取得部と、
前記複数の分割画像に基づいて、前記構造物の広域の点検範囲に対応する第1の広域画像を合成するための合成付帯情報を取得する合成付帯情報取得部と、
前記分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成する縮小分割画像生成部と、
前記縮小分割画像を前記合成付帯情報に基づいて合成し、第2の広域画像を生成する第2の広域画像生成部と、
前記第2の広域画像を表示する画像表示部と、
を備え、
前記第2のコンピュータは、
前記第1のコンピュータから前記合成付帯情報が付加された前記複数の分割画像を取得する第2の画像取得部と、
前記合成付帯情報に基づいて前記複数の分割画像を合成し、前記第1の広域画像を生成する第1の広域画像生成部と、
を備える合成処理システム。
【請求項2】
前記第1の画像取得部は、前記画像表示部に前記第2の広域画像が表示された後に、前記撮像装置で撮影された追加の分割画像を取得する請求項1に記載の合成処理システム。
【請求項3】
前記第1のコンピュータは、前記分割画像の画質を調査する画質調査部を有する請求項1又は2に記載の合成処理システム。
【請求項4】
前記画像表示部は、前記画質調査部の調査結果を前記第2の広域画像に重畳表示する請求項3に記載の合成処理システム。
【請求項5】
前記合成付帯情報取得部は、前記分割画像をパノラマ合成するための射影変換行列を取得する請求項1から4のいずれか1項に記載の合成処理システム。
【請求項6】
前記第2のコンピュータは、ネットワークを介して、生成した前記第1の広域画像を出力する請求項1から5のいずれか1項に記載の合成処理システム。
【請求項7】
前記第2のコンピュータは、クラウドサーバである請求項1から6のいずれか1項に記載の合成処理システム。
【請求項8】
前記第1のコンピュータと前記第2のコンピュータとはネットワークにより通信可能であり、
前記第1のコンピュータは、ネットワークへの接続状態が良好な場合に、前記合成付帯情報が付加された前記複数の分割画像を前記第2のコンピュータに送信する請求項1から7のいずれか1項に記載の合成処理システム。
【請求項9】
前記第2のコンピュータは、前記第1の広域画像における損傷を検出する損傷検出部を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の合成処理システム。
【請求項10】
前記第2のコンピュータは、前記損傷検出部で検出された前記損傷の大きさを推定し、前記損傷の大きさを定量評価する損傷定量部を備える請求項9に記載の合成処理システム。
【請求項11】
前記第2のコンピュータは、前記損傷検出部で検出された前記損傷の修正を受け付ける損傷修正受付部を備える請求項9又は10に記載の合成処理システム。
【請求項12】
前記第2のコンピュータは、前記損傷検出部で検出された前記損傷の検出結果を出力する検出結果出力部を備える請求項9から11のいずれか1項に記載の合成処理システム。
【請求項13】
撮像装置により、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像を取得する第1の画像取得部と、
前記複数の分割画像に基づいて、前記構造物の広域の点検範囲に対応する第1の広域画像を合成するための合成付帯情報を取得する合成付帯情報取得部と、
前記分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成する縮小分割画像生成部と、
前記縮小分割画像を前記合成付帯情報に基づいて合成し、第2の広域画像を生成する第2の広域画像生成部と、
前記第2の広域画像を表示する画像表示部と、
前記合成付帯情報が付加された前記複数の分割画像を出力する出力部と、
を備える合成処理装置。
【請求項14】
撮像装置、第1のコンピュータ、及び第2のコンピュータにより行われる合成処理方法であって、
前記第1のコンピュータにおいて、
前記撮像装置により、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像を取得するステップと、
前記複数の分割画像に基づいて、前記構造物の広域の点検範囲に対応する第1の広域画像を合成するための合成付帯情報を取得するステップと、
前記分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成するステップと、
前記縮小分割画像を前記合成付帯情報に基づいて合成し、第2の広域画像を生成するステップと、
前記第2の広域画像を表示するステップと、
が行われ、
前記第2のコンピュータにおいて、
前記第1のコンピュータから前記合成付帯情報が付加された前記複数の分割画像を取得するステップと、
前記合成付帯情報に基づいて前記複数の分割画像を合成し、前記第1の広域画像を生成するステップと、
が行われる合成処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成処理システム、合成処理装置、及び合成処理方法に関し、特に分割画像を取得して、その分割画像を合成して広域画像を生成する合成処理システム、合成処理装置、及び合成処理方法である。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の分割画像を取得し、取得した分割画像を合成することにより、広域画像(パノラマ画像)を取得するための技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載されている技術では、合成結果の画像が非常に大きな画像となる場合についても、処理装置の備えるメモリの多少に関わらず、精度よく画像合成を行うことを目的とした技術が記載されている。具体的には、特許文献1に記載された技術では、画像合成対象となる複数の画像データの各縮小画像を作成して、各縮小画像の重複領域を抽出し、抽出された重複領域に基づいて各縮小画像の仮の位置合わせを行うことにより、重複領域とその周辺領域に関する情報を算出し、算出された情報に基づいて各画像データを合成して1枚の画像を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-358194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、橋梁、道路、ビル等の建造物の点検を、撮影画像を使用して行われている。例えば、点検対象である橋梁の複数の分割画像を合成処理して、1枚の広域画像を取得し、その広域画像におけるひび割れ等の損傷を検出することにより、橋梁の点検が行われる。
【0006】
ここで、分割画像の合成処理には計算能力の高い計算機(コンピュータ)が必要である。したがって、点検者(ユーザ)は、撮影現場で点検対象を分割撮影し、分割撮影の終了後、インターネットに接続可能な環境下に移動してサーバ(計算能力の高い計算機)に分割画像を送信し、サーバに分割画像の合成処理を行わすことが行われている。このような場合に、分割画像を合成処理することにより得られた広域画像において、撮影漏れ領域があることを撮影現場から離れた後に点検者は知ることとなる。撮影漏れ領域があった場合には、改めて撮影現場に戻って撮影を行わなければならず、効率的な点検作業を行うことができない。
【0007】
また撮影現場において、特許文献1に記載された技術のように、分割画像の縮小画像を使用して仮の合成処理を行い、撮影漏れ領域の有無の確認を行うことが考えられる。この場合には、撮影現場で仮の合成処理を行って、その後にサーバに改めて分割画像の合成処理を行わすことになる。この場合に、撮影現場で仮の合成処理を行う際に合成に使用する情報を算出し、サーバにおける合成処理においても改めて合成に使用する情報を算出することは、撮影現場での仮の合成処理の処理結果が無駄になってしまい非効率的である。
【0008】
上述した特許文献1には、撮影現場での仮の合成処理に関しては言及されていなく、また、仮の合成処理の処理結果を後で利用することは言及されていない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ネットワークに接続することが困難な状況下において、分割画像の撮影漏れの確認を行うことができ、撮影現場を離れた後の分割画像の撮り直しを抑制し、分割画像の撮影漏れの確認で生成された合成付帯情報を後の広域画像の合成処理に利用して効率的な点検を行うことができる合成処理システム、合成処理装置、及び合成処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一の態様である合成処理システムは、撮像装置、第1のコンピュータ、及び第2のコンピュータで構成される合成処理システムであって、第1のコンピュータは、撮像装置により、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像を取得する第1の画像取得部と、複数の分割画像に基づいて、構造物の広域の点検範囲に対応する第1の広域画像を合成するための合成付帯情報を取得する合成付帯情報取得部と、分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成する縮小分割画像生成部と、縮小分割画像を合成付帯情報に基づいて合成し、第2の広域画像を生成する第2の広域画像生成部と、第2の広域画像を表示する画像表示部と、を備え、第2のコンピュータは、第1のコンピュータから合成付帯情報が付加された複数の分割画像を取得する第2の画像取得部と、合成付帯情報に基づいて複数の分割画像を合成し、第1の広域画像を生成する第1の広域画像生成部と、を備える。
【0011】
本態様によれば、第1のコンピュータにより、分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成し、縮小分割画像により簡易的な広域画像である第2の広域画像が生成されるので、ユーザはこの第2の広域画像を確認することにより、撮影現場において撮影漏れを確認することができる。また、第2の広域画像を生成する際に第1のコンピュータで算出された合成付帯情報を利用して、第2のコンピュータは分割画像を合成して第1の広域画像を合成するので、効率的な分割画像の合成を行うことができる。
【0012】
好ましくは、第1の画像取得部は、画像表示部に第2の広域画像が表示された後に、撮像装置で撮影された追加の分割画像を取得する。
【0013】
好ましくは、第1のコンピュータは、分割画像の画質を調査する画質調査部を有する。
【0014】
好ましくは、画像表示部は、画質調査部の調査結果を第2の広域画像に重畳表示する。
【0015】
好ましくは、合成付帯情報取得部は、分割画像をパノラマ合成するための射影変換行列を取得する。
【0016】
好ましくは、第2のコンピュータは、ネットワークを介して、生成した第1の広域画像を出力する。
【0017】
好ましくは、第2のコンピュータは、クラウドサーバである。
【0018】
好ましくは、第1のコンピュータと第2のコンピュータとはネットワークにより通信可能であり、第1のコンピュータは、ネットワークへの接続状態が良好な場合に、合成付帯情報が付加された複数の分割画像を第2のコンピュータに送信する。
【0019】
好ましくは、第2のコンピュータは、第1の広域画像における損傷を検出する損傷検出部を備える。
【0020】
好ましくは、第2のコンピュータは、損傷検出部で検出された損傷の大きさを推定し、損傷の大きさを定量評価する損傷定量部を備える。
【0021】
好ましくは、第2のコンピュータは、損傷検出部で検出された損傷の修正を受け付ける損傷修正受付部を備える。
【0022】
好ましくは、第2のコンピュータは、損傷検出部で検出された損傷の検出結果を出力する検出結果出力部を備える。
【0023】
本発明の他の態様である合成処理装置は、撮像装置により、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像を取得する第1の画像取得部と、複数の分割画像に基づいて、構造物の広域の点検範囲に対応する第1の広域画像を合成するための合成付帯情報を取得する合成付帯情報取得部と、分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成する縮小分割画像生成部と、縮小分割画像を合成付帯情報に基づいて合成し、第2の広域画像を生成する第2の広域画像生成部と、第2の広域画像を表示する画像表示部と、合成付帯情報が付加された複数の分割画像を出力する出力部と、を備える。
【0024】
本発明の他の態様である合成処理方法は、撮像装置、第1のコンピュータ、及び第2のコンピュータにより行われる合成処理方法であって、第1のコンピュータにおいて、撮像装置により、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像を取得するステップと、複数の分割画像に基づいて、構造物の広域の点検範囲に対応する第1の広域画像を合成するための合成付帯情報を取得するステップと、分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成するステップと、縮小分割画像を合成付帯情報に基づいて合成し、第2の広域画像を生成するステップと、第2の広域画像を表示するステップと、が行われ、第2のコンピュータにおいて、第1のコンピュータから合成付帯情報が付加された複数の分割画像を取得するステップと、合成付帯情報に基づいて複数の分割画像を合成し、第1の広域画像を生成するステップと、が行われる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第1のコンピュータにより、分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成し、縮小分割画像により簡易的な広域画像である第2の広域画像が生成されるので、ユーザは第2の広域画像を確認することにより、撮影現場において撮影漏れを確認し抑制することができ、また、第2の広域画像を生成する際に第1のコンピュータで算出された合成付帯情報を利用して、第2のコンピュータは分割画像を合成して第1の広域画像を合成するので、効率的な分割画像の合成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、合成処理システムを構成する、撮像装置、ユーザ端末、及び損傷検出サーバを概念的に示す図である。
図2図2は、ユーザ端末に搭載される合成処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3図3は、合成処理装置で行われる縮小分割画像を合成して簡易広域画像を得ることを説明する図である。
図4図4は、簡易広域画像を示す図である。
図5図5は、濃度ヒストグラムの例を示す図である。
図6図6は、調査結果が簡易広域画像に重畳表示される例を示す図である。
図7図7は、調査結果が簡易広域画像に重畳表示される例を示す図である。
図8図8は、損傷検出サーバの機能構成例を示すブロック図である。
図9図9は、広域画像でのひび割れの損傷検出の結果の例を示す図である。
図10図10は、検出された損傷の修正に関して説明する図である。
図11図11は、検出された損傷の修正に関して説明する図である。
図12図12は、損傷の検出結果の出力例を示す図である。
図13図13は、損傷の検出結果の出力例を示す図である。
図14図14は、合成処理工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面にしたがって本発明にかかる合成処理システム、合成処理装置、及び合成処理方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の合成処理システムを構成する、撮像装置A、ユーザ端末B(第1のコンピュータ)、及び損傷検出サーバC(第2のコンピュータ)を概念的に示す図である。
【0029】
撮像装置A及びユーザ端末Bは、インターネット等のネットワークに接続できない環境(ローカル環境F)に置かれている。例えば、ローカル環境Fは、トンネル内や電波の届かない山間部等の屋外の環境である。点検対象である構造物が例えばトンネル内の壁である場合や、山間部の橋梁である場合に、撮像装置Aによりローカル環境Fで点検対象の構造物の分割画像Eが取得される。構造物の分割画像Eが取得されると、ユーザ端末Bに分割画像Eが送られる。この場合、撮像装置Aとユーザ端末Bは、ローカル環境Fに存在し、ローカル通信により分割画像Eの送受信が行われる。ユーザ端末Bは、分割画像Eを受信すると、受信した分割画像Eに基づいて簡易広域画像(第2の広域画像)を合成しモニタ9に表示する。ユーザ(点検者)は、モニタ9に表示された簡易広域画像を確認することにより、撮影漏れ領域や低画質領域の存在の有無を撮影現場(ローカル環境F)でチェックすることができる。
【0030】
このように、ユーザ端末Bにより簡易広域画像がモニタ9に表示されるので、ユーザはローカル環境Fにおいて、撮影漏れ領域及び低画質領域の存在の有無を確認することができる。ここで、分割画像Eにより合成されて得られる広域画像(第1の広域画像:簡易広域画像ではなく、画像サイズが低減されていない広域画像)は、データ量が大きく処理するコンピュータには、非常に高い計算能力が要求される。例えばユーザが撮影現場に持っていくような、容易に移動可能な小型のコンピュータ(ユーザ端末B)を使用して、広域画像を撮影現場で合成することはユーザ端末Bの計算能力を考慮すると、不可能であったり、また可能であったとしても時間がかかりすぎて実用的ではない。ユーザ端末Bは、モニタ9がそれぞれ接続されており、ユーザはキーボード5を介して指令を入力する。なお、図示されたコンピュータの形態は一例である。例えば、図示したコンピュータの代わりにタブレット端末を使用することも可能である。
【0031】
分割画像Eに撮影漏れ領域及び低画質領域が無いことを確認したユーザは、分割画像Eの撮影を終了し、ユーザ端末BをインターネットDに接続可能(通信可能)な環境(インターネット環境G)に移動させる。インターネット環境Gに移動したユーザ端末Bは、インターネットDに接続し、分割画像E及び合成付帯情報Hを損傷検出サーバCに送信する。なお、ユーザ端末BはインターネットDへの接続状態が良好となった場合に、合成付帯情報Hが付加された複数の分割画像を損傷検出サーバCに自動的に送信してもよい。分割画像E及び合成付帯情報Hを受信した損傷検出サーバCは、分割画像E及び合成付帯情報Hを利用して広域画像を合成する。また、損傷検出サーバCは、広域画像においてひび割れ等の損傷を検出し、ユーザ端末Bに広域画像と共に送信する。なお、損傷検出サーバCによる広域画像と損傷検出結果はユーザ端末Bとは別の端末に送信してもよい。ここで、別の端末とは、損傷検出サーバCに分割画像E及び合成付帯情報Hを送信したユーザ端末Bとは別の、広域画像及び損傷検出結果を表示可能な端末である。ここで、損傷検出サーバCは、大型のコンピュータで構成されており、広域画像の合成を行うには十分な計算能力を有する。損傷検出サーバCは、サーバとしての機能を有し、ユーザ端末Bとの間でインターネットDを介してデータの送受信を行うことができ、クラウドサーバとして機能する。
【0032】
図2は、ユーザ端末Bに搭載される合成処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。合成処理装置10の各種制御を実行するハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の制御部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0033】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の制御部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の制御部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の制御部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の制御部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の制御部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0034】
合成処理装置10は、第1の画像取得部11、合成付帯情報取得部13、縮小分割画像生成部15、簡易広域画像生成部(第2の広域画像生成部)17、画質調査部19、送信部21、表示制御部25、記憶部26及びモニタ9を備える。記憶部26には、プログラム及び合成処理装置10の各種制御にかかる情報等が記憶される。また、表示制御部25は、モニタ9による表示を制御する。表示制御部25及びモニタ9により画像表示部が構成されている。
【0035】
第1の画像取得部11は、撮像装置Aにより、点検対象である構造物を分割して撮影された複数の分割画像Eを取得する。損傷検出を行う場合には、構造物の損傷が画像処理により検出可能な程度の解像度で構造物を撮影する必要がある。したがって、損傷検出が可能な程度の解像度で構造物の分割画像Eを取得し、その後に合成して広域画像を生成し損傷検出が行われる。また、取得した分割画像Eにおいて損傷検出を行い、その後に広域画像を合成してもよい。なお、第1の画像取得部11は無線及び有線により撮像装置Aから分割画像を取得する。
【0036】
合成付帯情報取得部13は、分割画像Eに基づいて、構造物の点検範囲に対応する広域画像(第1の広域画像)を合成するための合成付帯情報Hを取得する。合成付帯情報取得部13は、縮小分割画像ではなく分割画像Eの合成付帯情報Hを取得する。
【0037】
縮小分割画像生成部15は、分割画像の画像サイズを縮小した縮小分割画像を生成する。縮小分割画像は簡易広域画像(第2の広域画像)を構成する画像であり、縮小分割画像を合成して簡易広域画像が生成される。ここで画像サイズの縮小とは、例えば画像を構成するピクセル数を減じる処理のことである。
【0038】
簡易広域画像生成部(第2の広域画像生成部)17は、縮小分割画像を合成付帯情報Hに基づいて合成し、簡易広域画像を生成する。簡易広域画像は、縮小分割画像により構成されているので、合成処理に要する計算能力は軽減されている。したがって、簡易広域画像は、計算能力が高くないユーザ端末Bでも、短時間により生成される。ユーザは、表示部に表示された簡易広域画像を確認することにより、撮影漏れ領域や低画質領域の存在を確認することができる。
【0039】
画質調査部19は分割画像の画質を調査する。画質調査部19は、第1の画像取得部11で取得された分割画像Eの画質を調査して、低画質の分割画像Eがあった場合には、ユーザにそのことを報知し、撮影し直しをユーザに喚起する。画質調査部19の具体的な画質調査の手法は後で詳しく説明する。
【0040】
送信部21は分割画像E及び合成付帯情報Hを損傷検出サーバCに送信する。送信部21は、ユーザの指令により分割画像E及び合成付帯情報Hを損傷検出サーバCに送信してもよいし、インターネットDに接続可能な状況であることを判定して、接続可能と判定した場合に自動的に分割画像E及び合成付帯情報Hを損傷検出サーバCに送信してもよい。
【0041】
図3は、合成処理装置10で行われる縮小分割画像Mを合成して簡易広域画像101を得ることを説明する図である。
【0042】
合成処理装置10は、分割画像Eに基づいて縮小分割画像Mを生成し、その縮小分割画像Mをパノラマ合成することにより、簡易広域画像101を生成する。
【0043】
具体的には、合成付帯情報取得部13は、各分割画像Eの特徴点を抽出し、分割画像E間において特徴点のマッチング(対応点の抽出)を行う。ここで、合成付帯情報取得部13が行う、特徴点の抽出及び特徴点のマッチングは、公知の技術が使用される。そして、合成付帯情報取得部13は、分割画像Eのうちで決定された基準画像に対しての各分割画像Eの射影変換行列を算出する。このように算出された射影変換行列は、合成付帯情報取得部13で取得される合成付帯情報Hの一例である。
【0044】
縮小分割画像生成部15は、分割画像Eから縮小分割画像Mを生成する。そして、簡易広域画像生成部17は、縮小分割画像Mをパノラマ合成することにより簡易広域画像101を生成する。例えば、縮小分割画像生成部15は、簡易広域画像の画像サイズが所定の最大値(例えば画像の長辺が3,000ピクセル)以下になるように各分割画像Eの画像サイズを縮小して縮小分割画像Mを生成する。画像サイズを縮小していない分割画像Eにより広域画像を合成した場合には、例えば画像の長辺が30,000ピクセルの広域画像となってしまうが、縮小分割画像Mで簡易広域画像101を合成した場合には画像の長辺が3,000ピクセルの画像サイズとなり、1/100での画像サイズでの合成を行うことができる。これにより、簡易広域画像101を合成するための計算負荷を軽減することができ、計算能力が高くない小型のコンピュータであるユーザ端末Bでも十分に合成を行うことができる。一方、撮影現場での撮影漏れ領域の確認は、画像サイズを落とした簡易広域画像でも十分に行うことができる。また、簡易広域画像では、縮小分割画像の重複領域の境界を馴染ませる処理を省くことが好ましい。これも撮影漏れ領域を確認できればよいので、境界を馴染ませる処理は特段必要とはならない。
【0045】
図4は、ユーザ端末Bのモニタ9に表示される簡易広域画像103を示す図である。
【0046】
簡易広域画像103は、縮小分割画像Mをパノラマ合成することにより得られた簡易広域画像103である。簡易広域画像103には撮影漏れ領域105が示されている。ユーザは、モニタ9に表示された簡易広域画像103を確認することによって、撮影漏れ領域105を確認し、撮影漏れ領域105に対応する分割画像を撮影現場で直ぐに撮影することができる。これにより、ローカル環境Fのように損傷検出サーバCに接続できない状況でも、ユーザは撮影漏れ領域を把握して追加の分割画像Eを取得することができる。
【0047】
次に、画質調査部19で行われる分割画像の画質調査に関して説明する。
【0048】
画質調査部19は、第1の画像取得部11で取得された点検画像の画質を調査する。ここで、画質調査部19が行う調査は、様々な手法を採用することができる。以下に画質調査部19の調査手法の具体例を説明する。
【0049】
先ず、機械学習による画質の調査に関して説明する。画質調査部19が行う第1の画質調査手法としては、機械学習が施された画質調査器による調査手法がある。すなわち、画質調査部19は機械学習による画質調査器(画質調査AI(artificial intelligence))により構成され、画質調査器により点検画像の画質を調査する。
【0050】
次に、空間周波数スペクトルによる画質調査について説明する。画質調査部19は、点検画像中の領域の空間周波数スペクトルにおける高周波領域のスペクトル最大値、平均値、又はスペクトルの和等で画質を定量化して調査する。具体的には、空間周波数スペクトル画像(撮影画像を高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)して得られる)の四隅から特定の画素数半径内(rピクセル半径)の成分の最大値、平均値、又は和が大きいほど高周波成分が強い(多い)のでボケ、ブレが少なく、画質がよりよい。
【0051】
次に、ヒストグラムによる画質調査について説明する。画質調査部19が行うヒストグラム(画質を示す指標の一例)による判断では、画質調査部19は個別画像(R,G,Bの成分で構成されるカラー画像)をグレースケール画像に変換する。例えば、グレースケール(濃度)=R×0.30+G×0.59+B×0.11である(R,G,Bはそれぞれ赤色信号、緑色信号、青色信号の値)。画質調査部19は、変換したグレースケール画像のヒストグラム(濃度ヒストグラム;図5の例を参照)を計算する。ヒストグラムの計算及び以下の判断は、個別画像の全体ではなく一部の領域について行ってもよい。画質調査部19は、G(i){i=0,1,…,255}を各濃度値(0に近いほど暗く、255に近いほど明るい)のヒストグラムとして、以下の式(1),(2)により個別画像が明るすぎるかどうか、あるいは暗すぎるかどうかを調査する。調査の閾値(kb,hb,kd,hd)は既定値(例えば、kb=205,hb=0.5,kd=50,hd=0.5)でもよいし、キーボード5などの操作部を介したユーザの入力に応じて画質調査部19が設定してもよい。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
画質調査部19は、上述した式(1)において濃度値がkb以上の割合が全体のhb以上であれば「明るすぎる」と調査する。この場合、画質調査部19は「(明るすぎるため)画質が低い」と判断して、個別画像を確認対象画像とする。同様に、画質調査部19は式(2)において濃度値がkd以下の割合が全体のhd以上であれば「(暗すぎるため)画質が低い」と判断して、個別画像を確認対象画像とする。
【0055】
ヒストグラムに基づき、階調がつぶれているか否かの調査を行うこともできる。例えば、画質調査部19は、G(i){i=0,1,…,255}を各濃度値のヒストグラムとして、G(0)>Tdの場合は「シャドー側の階調がつぶれている」と調査し、またG(255)>Tbの場合は「ハイライト側の階調がつぶれている」と判断する。これらの場合、画質調査部19は「画質が低い」と判断して、個別画像を確認対象画像とする。調査の閾値(Td,Tb)は既定値(例えば、Td=0,Tb=0)でもよいし、操作部(キーボード5)を介したユーザの入力に応じて画質調査部19が設定してもよい。
【0056】
以上で説明したように、画質調査部19は、様々な手法で分割画像Eの画質を調査する。
【0057】
図6及び図7は、画質調査部19の調査結果が簡易広域画像に重畳表示される例を示す図である。
【0058】
図6及び図7に示したモニタ9の表示形態では、簡易広域画像107と共に、分割画像Eのサムネイル表示113が行われている。サムネイル表示113における分割画像Eを選択することにより、簡易広域画像107における選択された分割画像Eが強調表示される。そして、この強調表示される際に同時に、画質調査部19の調査結果も併せて表示される。
【0059】
図6では、サムネイル表示113において選択された分割画像110は、簡易広域画像107においては領域115に対応しているので、領域115は強調表示されている。また、分割画像110は、画質調査部19の画質調査の結果が高画質であるので、高画質であることを示す強調表示が領域115によって行われている。一方図7では、サムネイル表示113において選択された分割画像111は、簡易広域画像107においては領域117に対応しているので、領域117は強調表示されている。また、分割画像111は、画質調査部19の画質調査の結果が低画質であるので、低画質であることを示す強調表示が領域117によって行われている。なお、図6及び図7では、サムネイル表示113において選択された分割画像110に対応している簡易広域画像の領域が強調表示される例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、サムネイル表示113の選択がされていなくても、画質調査部19の画質調査の結果が低画質である分割画像に対応する領域(広域画像における領域)を強調表示してユーザに報知してもよい。
【0060】
以上説明したように、画質調査部19で調査された調査結果を簡易広域画像107に重畳表示することにより、ユーザに分割画像の画質を報知することができ、ユーザは低画質の分割画像の撮り直しを撮影現場で行うことができる。
【0061】
次に、損傷検出サーバCに関して説明する。
【0062】
図8は、損傷検出サーバCの機能構成例を示すブロック図である。なお、損傷検出サーバCも、上述した合成処理装置10と同様に、各機能を例えばCPU等のプロセッサで実現される。
【0063】
損傷検出サーバCは、第2の画像取得部31、広域画像生成部(第1の広域画像生成部)33、損傷検出部35、損傷定量部37、損傷修正受付部39、検出結果出力部41、及び記憶部43を備える。
【0064】
記憶部43には、プログラム及び損傷検出サーバCの各種制御にかかる情報等が記憶される。
【0065】
第2の画像取得部31は、ユーザ端末Bから合成付帯情報Hが付加された分割画像を取得する。具体的には、ユーザ端末Bと損傷検出サーバCがインターネットDで接続可能な状況下において、第2の画像取得部31は、インターネットDを介して分割画像Eと合成付帯情報Hを取得する。
【0066】
広域画像生成部33は、合成付帯情報Hに基づいて分割画像Eを合成し、広域画像を生成する。広域画像生成部33は、ユーザ端末Bの合成付帯情報取得部13で取得された合成付帯情報Hを利用して、分割画像Eをパノラマ合成して広域画像を生成する。損傷検出サーバCは、大型のコンピュータで構成されており、計算能力が高いので分割画像Eをパノラマ合成して広域画像の生成を行うことができる。また、広域画像生成部33は、ユーザ端末Bの合成付帯情報取得部13で取得された合成付帯情報Hを使用して、分割画像Eを合成するので、改めて合成付帯情報Hを取得する必要がなく、効率的な広域画像の合成を行うことができる。
【0067】
損傷検出部35は、広域画像における損傷を検出する。損傷検出部35は公知の技術を使用して、様々な損傷を検出することができる。損傷検出部35により検出される損傷の具体例としては、腐食、亀裂、ゆるみ又は脱落、破断、防食機能の劣化、ひびわれ、剥離又は鉄筋露出、漏水又は遊離石灰、抜け落ち、補修又は補強材の損傷、床版ひびわれ、うき、遊間の異常、路面の凹凸、舗装の異常、支承部の機能障害、その他(火災損傷など)、定着部の異常、変色又は劣化、漏水又は滞水、異常な音又は振動、異常なたわみ、変形又は欠損、土砂つまり、沈下又は移動又は傾斜、洗堀である。なお、損傷検出部35は、分割画像Eにおいて損傷検出を行い、その後に広域画像が生成されてもよい。
【0068】
損傷定量部37は、損傷検出部35で検出された損傷の大きさを推定し、損傷の大きさを定量評価する。損傷定量部37は、公知の技術を使用して損傷の大きさを推定して損傷の大きさを定量評価する。損傷定量部37が行う定量化の具体例は、腐食の面積、腐食の深さ、亀裂の長さ、ひび割れの長さ、ひび割れの幅、ゆるみの箇所の個数、脱落(ナットやボルト)の箇所の個数、ひび割れの間隔、ひび割れの方向、漏水又は遊離石灰の面積、剥離又は鉄筋露出の面積である。
【0069】
損傷修正受付部39は、損傷検出部35で検出された損傷の修正を受け付ける。例えば、損傷修正受付部39は、ユーザ端末Bのモニタ9に表示された損傷の検出結果に関して、ユーザがユーザ端末Bの操作部(キーボード5及びマウス(不図示))を介して入力する修正を受け付ける。
【0070】
検出結果出力部41は、損傷検出部35で検出された損傷の検出結果を出力する。検出結果出力部41は、様々な態様により、検出結果を出力することができる。例えば検出結果出力部41は、損傷定量部37の定量評価を積算して出力してもよい。具体的には、検出した損傷の寸法をCSV(comma-separated values)ファイルに出力する。また、検出結果出力部41は、CAD(computer-assisted drafting)図に重畳して検出結果を出力してもよいし、広域画像に重畳して検出結果を出力してもよい。
【0071】
図9は、損傷検出サーバCで行われる広域画像でのひび割れの損傷検出の結果の例を示す図である。
【0072】
ユーザ端末Bのモニタ9に表示される広域画像109は、損傷検出部35によりひび割れが検出されている。ひび割れの検出結果はひび割れ線Iで表示され、広域画像109に重畳表示されている。また、ひび割れ線Iに対応するひび割れの幅が、損傷定量部37により推定され、推定された定量評価(ひび割れの幅)が広域画像109に表示Jにより重畳的に表示されている。なお、表示Jには、ひび割れの幅以外にひび割れの識別番号も表示されている。ユーザは、表示Jを確認することにより、ひび割れ線Iに対応するひび割れの幅についての情報を得ることができる。
【0073】
図10及び図11は、検出された損傷の修正に関して説明する図である。図10は、ユーザ端末Bのモニタ9に表示される、広域画像119が示されている。広域画像119には、損傷検出部35で行われた損傷検出の結果がひび割れ線Iにより示されている。広域画像119では、ひび割れKが存在するが損傷検出部35はひび割れKが上手く検出できていないので、ひび割れKに対してのひび割れ線Iが存在しない。
【0074】
図11は、ユーザがユーザ端末Bにおいて、モニタ9に表示される広域画像119に対して、修正を行う場合を説明する図である。図11に示すように、ユーザは、損傷検出部35で検出されなかったひび割れKに対して、トレース線Lを追加して損傷検出の結果を修正している。この修正は、例えばユーザ端末Bの操作部(キーボード5及びマウス(不図示))で行われて、損傷検出サーバCの損傷修正受付部39にトレース線Lで行われた修正が受け付けられる。損傷検出部35は、損傷修正受付部39で受け付けられた修正を損傷の検出結果に反映させる。なお、図10及び図11では、ユーザ端末Bのモニタ9に関して説明をしたが、これに限定されるものではない。別の端末においても図10及び図11で説明したように損傷検出の結果の確認及び損傷検出の結果の修正を行ってもよい。
【0075】
このように、損傷検出部35で検出された結果に対してユーザは、修正を行うことができるので、より正確な損傷の検出結果を取得することができる。
【0076】
次に、検出結果出力部41の出力例に関して説明する。検出結果出力部41は、様々な形態により、広域画像の損傷検出の結果を出力することができる。図12及び図13は、検出結果出力部41で出力される損傷の検出結果の出力例を示す図である。図12は、損傷の検出結果がCAD図に重畳的に表示される例を示す図である。また図13は、損傷の検出結果が広域画像に重畳的に表示される例を示す図である。このように、合成された広域画像に基づいて損傷検出が行われその検出結果が様々な形態で出力される。
【0077】
図14は、合成処理システムを使用した合成処理工程(合成処理方法)を示すフローチャートである。
【0078】
先ず、撮像装置Aにより点検対象である構造物の分割画像が取得される(ステップS10)。その後、撮像装置Aからユーザ端末Bに分割画像が送信される(ステップS11)。この場合、例えば撮影現場は、インターネットDに接続ができないローカル環境Fであるので、撮像装置Aからユーザ端末Bへの分割画像の送信は、ローカル環境Fでも可能な送信手段が使用される。
【0079】
ユーザ端末Bは、第1の画像取得部11により分割画像を受信する(ステップS12)。その後、合成付帯情報取得部13により合成付帯情報Hを取得する(ステップS13)。例えば、合成付帯情報取得部13は、分割画像をパノラマ合成するための射影変換行列を取得する。そして、縮小分割画像生成部15は、取得した分割画像の画像サイズを小さくした縮小分割画像を生成する(ステップS14)。その後、簡易広域画像生成部17は、簡易広域画像を生成する(ステップS15)。そして、ユーザ端末Bはモニタ9に生成された簡易広域画像を表示する(ステップS16)。ユーザはモニタ9に表示された簡易広域画像を確認しながら、撮り漏れ領域や低画質領域が無いかを確認し、撮り漏れ領域や低画質領域があった場合には、その領域に対応する分割画像の撮り直しを行う。撮り漏れ領域や低画質領域が無かった場合には、ユーザはユーザ端末Bをインターネット環境Gに移動させ、インターネットDに接続して、取得した分割画像及び合成付帯情報Hを損傷検出サーバCに送信する(ステップS17)。
【0080】
損傷検出サーバCは、第2の画像取得部31により、ユーザ端末BからインターネットDを介して送信された分割画像及び合成付帯情報Hを受信する(ステップS18)。損傷検出サーバCは、分割画像及び合成付帯情報Hにより広域画像を生成する(ステップS19)。
【0081】
上述の各構成及び機能は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の処理ステップ(処理手順)をコンピュータに実行させるプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはそのようなプログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することが可能である。
【0082】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
5 :キーボード
9 :モニタ
10 :合成処理装置
11 :第1の画像取得部
13 :合成付帯情報取得部
15 :縮小分割画像生成部
17 :簡易広域画像生成部
19 :画質調査部
21 :送信部
25 :表示制御部
26 :記憶部
31 :第2の画像取得部
33 :広域画像生成部
35 :損傷検出部
37 :損傷定量部
39 :損傷修正受付部
41 :検出結果出力部
43 :記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14