(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】粘着剤層付き偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220705BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220705BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220705BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J133/00
C09J7/38
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021115251
(22)【出願日】2021-07-12
(62)【分割の表示】P 2019160538の分割
【原出願日】2015-01-09
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008019(JP,A)
【文献】特開2014-067040(JP,A)
【文献】特開2014-043557(JP,A)
【文献】特開2010-066756(JP,A)
【文献】特開2014-025006(JP,A)
【文献】国際公開第2013/077271(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/018794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する粘着剤層付き偏光板であって、
前記粘着剤ポリマーが、アクリル系ポリマーであり、
前記帯電防止剤として、融点が25℃~50℃であり、温度25℃で固体であるイオン性化合物を含有し、前記イオン性化合物が、カチオンとアニオンからなり、有機ヨウ素化合物を含有してなることを特徴とする粘着剤層付き偏光板。
【請求項2】
偏光板が、ヨウ素分子を含むポリビニルアルコール層を偏光子とすることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性能に優れた粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイを構成する部材である偏光板、位相差板などの光学部材においては、光学部材の表面を一時的に保護するための表面保護フィルムや、光学部材を光学部材同士又は他の部材と貼り合わせる貼り合わせ用フィルムが使用されている。これらの粘着フィルムは、光学部材を製造する工程のみに使用される場合と、液晶ディスプレイ等の最終製品に組み込まれる場合とがある。
【0003】
偏光板、位相差板などの光学部材から粘着フィルムを剥がすとき、静電気が発生すると、静電気に伴って生じる剥離帯電が、液晶ディスプレイの電気制御回路の故障に影響することが懸念され、粘着剤層に対して優れた帯電防止性能が求められている。
【0004】
優れた帯電防止性能については、表面保護フィルムに帯電防止性能を付与するための方法として、基材フィルムに帯電防止剤を練り込む方法などが示されている。帯電防止剤としては、例えば、(a)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~3級アミノ基などのカチオン性基を有する各種のカチオン性帯電防止剤、(b)スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性帯電防止剤、(c)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性帯電防止剤、(d)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性帯電防止剤、(e)上記の様な帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤、などが開示されている(特許文献1)。
また、近年では、このような帯電防止剤を基材フィルムに含有させたり、あるいは基材フィルムの表面に塗布するのではなく、直接に粘着剤層に含有させたりすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶ディスプレイなどに使用される偏光板は、ヨウ素分子(I2)を含むポリビニルアルコール(PVA)層を偏光子とし、その両側に、トリアセチルセルロース(TAC)、COP(シクロオレフィンポリマー)、アクリル、ポリプロピレン(PP)等の光学特性(透明性など)の優れた材料を用いた樹脂フィルムを、保護層(偏光子の保護フィルムと呼ばれることもある)として積層した構成が一般に使用されている。さらに、保護層の樹脂フィルムが、位相差フィルムの機能を兼ねる場合もある。
【0007】
近年、液晶ディスプレイなどの厚みが薄型化されるのに伴い、偏光板、及び偏光板を構成する保護フィルムであるTACフィルム等が、薄膜化する傾向にある。TACフィルム等が薄膜化することで、帯電防止性能を有する粘着フィルムを偏光板に貼り合わせたとき、粘着剤組成物に含まれる添加剤成分中のイオン性化合物と、偏光子に含まれるヨウ素との相互作用の影響が出ている。その結果、偏光子内でヨウ素化合物が析出して、偏光板(偏光子)が退色するという問題が発生している。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、偏光板の偏光子に含まれるヨウ素と反応しないで、偏光板の退色を抑制でき、帯電防止性に優れた粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤として、温度25℃で固体であり、有機ヨウ素化合物を含有するイオン性化合物を使用することにより、優れた帯電防止性能を得ると共に、偏光板に粘着剤層を貼り合せた場合において、偏光板の偏光子含まれるヨウ素と帯電防止剤とが反応しないことから、偏光板の退色を抑制できることを技術思想とする。
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、粘着剤ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記粘着剤ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性ビニルモノマーとを含有する共重合体組成物であり、前記帯電防止剤として、融点が25℃~50℃であり、温度25℃で固体であるイオン性化合物を含有し、前記イオン性化合物が、カチオンとアニオンからなり、有機ヨウ素化合物を含有することを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0011】
前記有機ヨウ素化合物が、前記カチオンまたは前記アニオンのどちらか、若しくは前記カチオン、前記アニオンの両方に含まれることが好ましい。
【0012】
前記粘着剤ポリマーの他の共重合性ビニルモノマーが、(B)カルボキシル基を含まず、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーと、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種であり、前記共重合体組成物の100重量部に対して、(C)前記イオン性化合物を0.1~10重量部と、架橋剤として2官能以上のイソシアネート化合物を0.01~5重量部と、を必須成分として含有することが好ましい。
【0013】
前記粘着剤ポリマーの他の共重合性ビニルモノマーが、芳香族系モノマーの少なくとも1種であり、前記共重合体組成物の100重量部に対して、(C)前記イオン性化合物を0.1~10重量部と、架橋剤として2官能以上のイソシアネート化合物を0.01~5重量部と、を必須成分として含有することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物を積層して形成された粘着剤層の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物を用いて粘着剤層が形成された粘着フィルムを、前記粘着剤層を介して被着体に貼り合わせ後に70℃×10日の養生をした後、前記粘着剤層の粘着力が1.5~10N/25mmであることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤組成物を用いて粘着剤層が形成されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、離型フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を用いて粘着剤層が形成されてなり、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層であり、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合わせに用いられる粘着剤層を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0020】
また、本発明は、偏光板保護フィルムとしての構成材料として、トリアセテート系材料またはCOP系材料からなる位相差フィルムの厚みが40μm以下であり、且つ、偏光板の両面に積層される2枚以上の前記偏光板保護フィルムまたは位相差フィルムと、その間に含まれる層との合計の厚みが150μm以下である偏光板に用いられる、前記粘着剤層を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板を構成する材料の貼り合わせ用フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粘着剤組成物によって耐久性条件等で粘着性能を損なわず、かつ、偏光子の退色を抑制でき、帯電防止性能に優れた粘着剤組成物及びそれを用いた粘着フィルムを提供することができる。従って、従来技術における、イオン性化合物の帯電防止剤を含有する粘着剤組成物が抱えていた、上記の課題を解決することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、粘着剤ポリマーと、架橋剤と、帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記帯電防止剤として、融点が25℃~50℃であり、温度25℃で固体であるイオン性化合物を含有し、前記イオン性化合物が、カチオンとアニオンからなり、有機ヨウ素化合物を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明に係わるイオン性化合物は、アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物であることが好ましく、有機アニオンと有機カチオンとからなるイオン性化合物であることがより好ましい。
【0025】
本発明に係わるイオン性化合物に含まれる有機ヨウ素化合物は、炭素とヨウ素との結合(C-I結合)を有する有機化合物である。有機ヨウ素化合物としては、有機ヨウ化物(R-I)、ヨードシル化合物(R-IO)、ヨードニウム化合物(R2I+X-)等が挙げられる。ここで、Rは有機基を表す。Xはヨードニウムカチオンに対するアニオンを表す。有機ヨウ素化合物中のヨウ素は、イオン性化合物中の置換基として含まれることが好ましく、特に、一価の単原子ヨード基(化学式はI-、英語名はiodo-)が好ましい。ヨウ素置換基は、アルキル基等の脂肪族基、ベンゼン等の芳香環、ピリジンやイミダゾール等のヘテロ環など、いずれの部分に含まれていてもよい。
【0026】
また、有機ヨウ素化合物が、イオン性化合物のカチオンまたはアニオンのどちらか、若しくはカチオン、アニオンの両方に含まれることが好ましい。イオン性化合物は、C-I結合を有する有機アニオンと、C-I結合を有しない有機カチオン又は無機カチオンとの組み合わせでもよく、C-I結合を有する有機カチオンと、C-I結合を有しない有機アニオン又は無機アニオンとの組み合わせでもよく、C-I結合を有する有機アニオンと、C-I結合を有する有機カチオンとの組み合わせでもよい。
【0027】
また、融点が25℃~50℃の、温度25℃で固体であるイオン性化合物としては、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等である化合物が挙げられる。具体的には、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF6
-)、チオシアン酸塩(SCN-)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RC6H4SO3
-)、過塩素酸塩(ClO4
-)、四フッ化ホウ酸塩(BF4
-)、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩(FSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(TFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸塩(TF)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。常温(例えば25℃)で固体であることが好ましく、アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が25℃~50℃のイオン性化合物を得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1-アルキルピリジニウム(2~6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオン、や1,3-ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0028】
ヨウ素を含む有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等の有機カチオンが、I-置換基を1つまたは2つ以上有すればよく、ヨードピリジニウムカチオン、ヨードイミダゾリウムカチオン、ヨードピリミジニウムカチオン、ヨードピラゾリウムカチオン、ヨードピロリジニウムカチオン、ヨードアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0029】
ヨウ素を含む有機アニオンとしては、芳香族スルホン酸アニオン、脂肪族スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン等の有機アニオンが、I-置換基を1つまたは2つ以上有すればよく、ヨードベンゼンスルホン酸アニオン、ヨードアルカンスルホン酸アニオン、ヨードカルボン酸アニオン等が挙げられる。
【0030】
本発明に係わる粘着剤組成物は、粘着剤ポリマーを構成する共重合体組成物(主剤ポリマー)の100重量部に対して、0.1~10重量部の割合で、有機ヨウ素化合物を含有する融点が25℃~50℃の、温度25℃で固体であるイオン性化合物を含有することが好ましい。これらのイオン性化合物は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル共重合体との親和性は高いと推測される。このため、帯電防止剤として、帯電防止性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。
【0031】
粘着剤ポリマーとしては、アクリル共重合体(アクリル系ポリマー)が好ましく、特に(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種を、共重合体組成物の100重量部に対して、50重量部以上を含有する共重合体が好ましい。
【0032】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの割合は、共重合体組成物の100重量部のうち、50重量部以上であることが好ましい。
【0033】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに、共重合される共重合性モノマーとしては、ビニル基等の不飽和重合性基を有する共重合性ビニルモノマーが挙げられる。共重合性ビニルモノマーは、他の官能基として、水酸基、アミノ基、アミド基、エーテル基、芳香族基等を有してもよい。重合性基以外の官能基は、各モノマーの1分子中に2個以上含まれてもよい。
【0034】
(B)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーは、カルボキシル基を含まないことが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリルアミドとしては、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
(B)水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの割合は、共重合体組成物の100重量部のうち、0.1~10重量部が好ましい。
【0035】
芳香族基を有する共重合性ビニルモノマーとしては、芳香族基を有する(メタ)アクリレートの他、スチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマーが挙げられる。
芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。屈折率が高い粘着剤層を得るためには、芳香族系モノマーの少なくとも1種以上を配合することが好ましい。
【0036】
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエーテル基を有する共重合性ビニルモノマー、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有共重合性ビニルモノマーが挙げられる。
【0037】
粘着剤成分を構成する共重合体における共重合性ビニルモノマーの組み合わせは、特に限定されないが、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とからなる共重合体、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、他のビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とからなる共重合体、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、他のビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とからなる共重合体、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種とからなる共重合体、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とからなる共重合体、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、他のビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種とからなる共重合体、等が挙げられる。
【0038】
共重合性ビニルモノマーは、架橋剤と反応することが可能な官能基として、水酸基等の官能基を有するモノマーを少なくとも1種以上含有することが好ましい。アクリル系共重合体は、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを含有することが好ましい。官能基含有モノマーとして、水酸基含有共重合性ビニルモノマーのみを用いてもよい。
【0039】
架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物が好ましい。2官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物から選択される、少なくとも1種または2種以上であればよい。ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。2官能イソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて生成された、イソシアネート基を有するポリウレタン化合物であってもよい。
【0040】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。2官能以上のイソシアネート化合物として、3官能イソシアネート化合物のみ、または2官能イソシアネート化合物のみを用いることも可能である。また、3官能イソシアネート化合物と、2官能イソシアネート化合物を併用することも可能である。
【0041】
2官能以上のイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネート化合物や、これらの変性体(アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等)からなる3官能以上のイソシアネート化合物が挙げられる。
【0042】
本発明に係わる粘着剤組成物は、共重合体組成物の100重量部に対して、0.01~5重量部の割合で、架橋剤として2官能以上のイソシアネート化合物を含有することが好ましい。
【0043】
本発明に係わる粘着剤組成物は、上記以外成分として、金属キレート化合物等の架橋触媒、ケトエノール互変異性体化合物等の架橋抑制剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することが出来る。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いられる。
【0044】
本発明の粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を用いて形成することができる。粘着剤層を介して被着体に貼り合わせ後に70℃×10日の養生をした後、粘着剤層の粘着力が1.5~10N/25mmであることが好ましい。被着体としては、無アルカリガラス等の光学ガラス板が挙げられる。
【0045】
基材の片面上に、前記粘着剤組成物を積層して形成された粘着剤層において、前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。粘着剤層の表面抵抗率が大きいと、剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0046】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0047】
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0048】
本発明の粘着フィルムは、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合わせに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【0049】
本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合わせに好適に用いられる。ディスプレイパネルとしては、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルが挙げられる。本発明の粘着フィルムは、粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として好適に用いることができる。偏光板の構成材料として、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられてもよい。位相差フィルムと偏光板との貼り合わせに、本発明の粘着剤層を使用することができる。位相差フィルムとしては、TAC等のトリアセテート系材料、COP系材料等が挙げられる。偏光板は、「位相差フィルム/偏光子/位相差フィルム」のような構成を有してもよい。この場合、「保護層/偏光子/保護層」の偏光板に、位相差フィルムをさらに貼り合わせる場合に比べて、薄型化が可能である。偏光板の両面又は片面には、剥離により除去可能な保護フィルムを設けてもよい。
【0050】
本発明によれば、偏光板に粘着フィルムを貼り合わせても、偏光子に含まれるヨウ素分子が抜け出すことによる、偏光特性の劣化を抑制することができる。偏光板の薄型化の観点からは、位相差フィルムの厚みが40μm以下であり、且つ、偏光板の両面に積層される2枚以上の偏光板保護フィルムまたは位相差フィルムと、その間に含まれる層との合計の厚み(偏光板の総厚)が150μm以下であることが好ましい。2枚以上の偏光板保護フィルムまたは位相差フィルムの間には、ヨウ素を含むPVA層等からなる偏光子のほか、接着層等を含んでもよい。偏光板の総厚は、液晶ディスプレイ等の最終製品に組み込まれる部分の厚み(組み込まれない部分を除外した厚み)であってもよく、ポリエステル保護フィルム等を含まなくてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0052】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート100重量部、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート3.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
[実施例2~4及び比較例1~3]
単量体の組成を各々、表1の(A)及び(B)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液と同様にして、実施例2~4及び比較例1~3に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
【0053】
<粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル共重合体溶液に対して、1-ノニルピリジニウム 2-ヨードベンゼンスルホン酸塩2.0重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)1.0重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着シートを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~4及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表2の「架橋剤」及び(C)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~4及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0054】
表1において、各成分の配合比は、(A)群の合計を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。(A)群は、アルキル基の炭素数がC1~C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー又は芳香族系モノマーからなる。(B)群は、水酸基又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーからなる。(C)群は、イオン性化合物からなる。
【0055】
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名である。
【0056】
【0057】
【0058】
<試験方法及び評価>
実施例1~4及び比較例1~3における粘着フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた粘着フィルムを、粘着剤層を介して偏光板の表面に貼り合わせたものを、粘着力の測定試料とした。
【0059】
<表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
【0060】
<粘着力>
粘着剤層(フィルム)を偏光板に貼り合わせた後、粘着剤層付き偏光板をコーニング社製無アルカリガラス(商品名:イーグルXG)に貼り合わせた。その後70℃の雰囲気下に10日間放置後、室温に取り出し、さらに1時間放置した後、試料を300mm/minの引張速度で180°剥離した際の粘着力(N/25mm)を測定した。
<退色性>
粘着剤層(フィルム)を偏光板に貼り合わせた後、粘着剤層付き偏光板をコーニング社製無アルカリガラス(商品名:イーグルXG)に貼り合わせた。その後、85℃85%RHの雰囲気下に100時間放置後、室温に取り出し、1時間放置した後に偏光板の退色具合を観察した。評価目標基準は、偏光板の退色が無い場合を「○」、偏光板が一部分退色している場合を「△」、偏光板が退色している場合を「×」と評価した。
【0061】
表3に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
偏光板の種類は、次のとおりである。
偏光板A(総厚135μm、位相差フィルム:厚みが40μmのTAC)
偏光板B(総厚115μm、位相差フィルム:厚みが25μmのTAC)
偏光板C(総厚 90μm、位相差フィルム:厚みが20μmのTAC)
偏光板D(総厚135μm、位相差フィルム:厚みが40μmのCOP)
偏光板E(総厚180μm、位相差フィルム:厚みが80μmのTAC)
【0062】
【0063】
実施例1~4の粘着フィルムは、表面抵抗率が低く、適度な粘着力を有し、偏光板が薄くても退色が無かった。すなわち、(1)耐久性条件等で粘着性能を損なわないこと、(2)偏光板の退色を抑制できること、(3)帯電防止性に優れることの、全ての要求性能を、同時に満たしている。
【0064】
比較例1,3の粘着フィルムは、有機ヨウ素化合物のイオン性化合物を含有しないため、偏光板の退色を抑制できなかった。
比較例2の粘着フィルムは、イオン性化合物を含有しないため、表面抵抗率が高く、帯電防止性を具備しなかった。また、粘着剤成分の共重合体が、カルボキシル基を含む共重合性ビニルモノマーを共重合したものであるためか、被着体に貼り合わせ後に70℃×10日の養生をした後、粘着剤層の粘着力が非常に強くなった。
このように、比較例1~3の粘着フィルムは、(1)耐久性条件等で粘着性能を損なわないこと、(2)偏光板の退色を抑制できること、(3)帯電防止性に優れることの、全ての要求性能を、同時に満たすことができなかった。