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特許7100198フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の未知の影響を評価するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の未知の影響を評価するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20220705BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220705BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20220705BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220705BHJP
【FI】
G03F1/84
H01L21/30 502D
H01L21/30 502V
G06N3/02
G06N20/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021514481
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2019062646
(87)【国際公開番号】W WO2019219826
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102018207880.7
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】フレイタグ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュースマン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】サイデル ディルク
(72)【発明者】
【氏名】シュミット カーステン
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-354251(JP,A)
【文献】特開平03-068845(JP,A)
【文献】特表2017-514294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0121592(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345140(US,A1)
【文献】米国特許第07379924(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
H01L 21/027
G06N 3/02
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィプロセスの要素(450)の欠陥(650、660)の少なくとも1つの未知の影響(250)を決定するための方法(1000)であって、前記方法(1000)が、
a.像(600)、前記像(600)に関連付けられた設計データ(240)、および前記像(600)から生じる前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の前記欠陥(650、660)の少なくとも1つの影響(250)の間の関係に対する機械学習のモデル(200、300)提供するステップと、
b.トレーニングの目的に使用される多数の像(830)、トレーニングの目的に使用される前記像(830)に関連付けられた設計データ(240)、および前記欠陥(650、660)の対応する影響(250)を使用して、前記機械学習のモデル(800)をトレーニングするステップと、
c.前記機械学習のトレーニング済みモデル(200、300)を測定された像(600)および前記測定された像(600)に関連付けられた前記設計データ(240)に適用することによって、前記欠陥(650、660)の前記少なくとも1つの未知の影響(250)を決定するステップとを含み、
前記像(600)が、光学的結像システム(420)によって記録された像を含み、
前記光学的結像システム(420)によって記録された前記像(600)が、空間像(600)を含み、および/または前記空間像(600)が、空間像の焦点スタックを含む、方法(1000)。
【請求項2】
前記像(600)が、走査粒子顕微鏡によって記録された像、および走査プローブ顕微鏡によって記録された像の群からの少なくとも1つの要素をさらに含む、請求項1に記載の方法(1000)。
【請求項3】
前記機械学習のモデル(200、300)が、パラメトリックマッピング、人工ニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、時間遅延ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク、および/または発生モデルの群からの少なくとも1つの要素を含む、請求項1または2に記載の方法(1000)。
【請求項4】
前記機械学習のモデル(200、300)が、
a.像(600)の情報を伝達する特徴および前記像(600)に関連付けられた前記設計データ(240)を決定するための少なくとも1つのエンコーダブロックと、
b.前記決定された情報を伝達する特徴から前記欠陥(650、660)の少なくとも1つの影響(250)を生成するための少なくとも1つのデコーダブロックとを含み、前記欠陥(650、660)の前記少なくとも1つの影響(250)が、参照像(500)との前記像(600)の重ね合わせがどのように見えるかを示す、請求項3に記載の方法(1000)。
【請求項5】
前記欠陥(650、660)が、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素の1つまたは複数のパターン要素の配置誤差、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素の1つまたは複数のパターン要素の臨界寸法誤差、および2つ以上のフォトリソグラフィマスク(450)の重ね合わせ誤差の群からの少なくとも1つの要素を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(1000)。
【請求項6】
前記機械学習のモデル(800)の前記トレーニングが、トレーニングの目的に使用される前記複数の像(600)およびトレーニングの目的に使用される前記像(600)に関連付けられた前記複数の設計データ(240)を入力データとして提供することと、トレーニングの目的に使用される前記像に対応する前記欠陥(650、660)の前記複数の影響(250)を、前記機械学習のモデル(800)の出力データに対する比較データとして提供することとを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(1000)。
【請求項7】
トレーニングの目的に使用される像(600)が、測定された像(600)および/またはシミュレートされた像を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(1000)。
【請求項8】
シミュレートされた像を生成する目的で、前記フォトリソグラフィプロセスのための前記要素(450)の設計データ(240)および/または修正された設計データをシミュレートするステップをさらに含む、請求項7に記載の方法(1000)。
【請求項9】
シミュレートされた像を生成することが、マクスウェル方程式を数値的に解くことによって厳密なシミュレーションを実行することであって、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の設計データ(240)および/または修正された設計データが入力データとして使用される、実行することと、キルヒホフモデルを用いてシミュレーションを実行することであって、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の前記設計データ(240)および/または前記修正された設計データが入力データとして使用される、実行することと、粒子線に基づく結像シミュレーションを実行することであって、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の設計データ(240)および/または修正された設計データが入力データとして使用される、実行することと、走査プローブに基づく結像シミュレーションを実行することであって、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の設計データ(240)および/または修正された設計データが入力データとして使用される、実行することとの群からの少なくとも1つの要素を含む、請求項8に記載の方法(1000)。
【請求項10】
前記機械学習のモデル(800)をトレーニングする目的での前記欠陥(650、660)の対応する影響(250)の前記提供が、像(600)に対応する前記欠陥(650、660)の前記少なくとも1つの影響(250)を生成するために、トレーニングの目的に使用される前記像(600)を参照像(500)に重ね合わせるステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法(1000)。
【請求項11】
前記機械学習のモデル(800)をトレーニングする目的での前記欠陥(650、660)の対応する影響(250)の前記提供が、前記測定された像(600)の領域と同じパターン要素(510、520、530、540)を含む前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の実質的に欠陥のない領域を結像すること、および/または前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の前記測定された像(600)の前記領域に関して前記設計データ(240)をシミュレートすることによって、参照像(500)を決定するステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法(1000)。
【請求項12】
前記像(600)を前記参照像(500)に重ね合わせることが、前記像(600)と前記参照像(500)の間の差分を形成することを含む、請求項10または11に記載の方法(1000)。
【請求項13】
前記差分を形成することが、臨界寸法の誤差を決定することと、コントラストの誤差を決定することと、1つまたは複数のパターン要素(510、520、530、540)の配置誤差を決定することとの群からの少なくとも1つの要素を含む、請求項12に記載の方法(1000)。
【請求項14】
前記機械学習のモデル(800)の前記トレーニングが、
a.第1の段階において、第1の数のシミュレートされた像(500)、前記シミュレートされた像(500)に関連付けられた設計データ(240)を、前記欠陥(650、660)の対応する影響(250)と共に使用して、前記機械学習のモデル(800)をトレーニングすることと、
b.第2の段階において、第2の数の測定された像(600)、前記測定された像(600)に関連付けられた設計データ(240)を、前記欠陥(650、660)の対応する影響(250)と共に使用して、前記機械学習のモデル(800)をトレーニングすることとを含み、前記第1の段階が前記第2の段階の前に実行される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法(1000)。
【請求項15】
前記第1の数のシミュレートされた像が前記第2の数の測定された像(600)よりも大きい、請求項14に記載の方法(1000)。
【請求項16】
ステップa.およびb.が少なくとも2回遂行される、請求項14または15に記載の方法(1000)。
【請求項17】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令がコンピュータシステムによって実行されたときに、請求項1~16の前記方法のステップを前記コンピュータシステムに実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項18】
フォトリソグラフィプロセスの要素(450)の欠陥(650、660)の少なくとも1つの未知の影響(250)を決定するための装置(490)であって、前記装置(490)が、
a.像(600)、前記像(600)に関連付けられた設計データ(240)、および前記像(600)から生じる前記欠陥(650、660)の少なくとも1つの影響(250)の間の関係に対する機械学習のモデル(200、300)提供するための手段と、
b.トレーニングの目的に使用される多数の像(830)、トレーニングの目的に使用される前記像(830)に関連付けられた設計データ(240)、および前記欠陥(650、660)の対応する影響(250)を使用して、前記機械学習のモデル(200、300)をトレーニングするための手段と、
c.前記機械学習のトレーニング済みモデル(200、300)を測定された像(600)および前記測定された像(600)に関連付けられた前記設計データ(240)に適用することによって、前記欠陥(650、660)の前記未知の影響(250)を決定するための手段とを備え、
前記像(600)が、光学的結像システム(420)によって記録された像を含み、
前記光学的結像システム(420)によって記録された前記像(600)が、空間像(600)を含み、および/または前記空間像(600)が、空間像の焦点スタックを含む、装置(490)。
【請求項19】
前記装置(490)が、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)のための露光システムと、前記フォトリソグラフィプロセスの前記要素(450)の一部を光検知器上に結像するように具現化された拡大レンズとを備える、請求項18に記載の装置(490)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月18日に出願されたドイツ特許出願第DE 10 2018 207 880.7号に対する優先権を主張し、このドイツ特許出願の内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の未知の影響を評価するための方法および装置に関する。特に、本発明は、像、像に関連付けられた設計データ、および像から生じる欠陥の影響の間の関係を確立する機械学習のモデルを適用することによって、フォトリソグラフィプロセスの1つまたは複数の要素の欠陥の未知の影響を評価するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業における集積密度の向上の結果として、フォトリソグラフィマスクまたはナノインプリントリソグラフィのテンプレートは、ますます小さい構造をウェーハ上に結像する(image)ことが必要になっている。半導体ウェーハ上の構造の微細化における進歩は(したがって、ウェーハを露光するために使用されるフォトリソグラフィマスク、フォトマスク、または単にマスク上の構造の微細化における進歩も)、フォトリソグラフィマスクの検査、フォトマスクの計測、およびマスクの欠陥の解析に対して、広範囲にわたる影響を与えている。通常、フォトマスクは、マスクの一部の空間像(aerial image)を測定し、マスクの一部の参照空間像と比較することによって解析される。専門的な分野では、この手順は、ダイツーダイ方式と呼ばれる。この比較に基づいて、マスクの一部の欠陥の欠陥確率マップ、欠陥マップ、または欠陥影響マップを確定することができる。
【0004】
例えば、光近接効果補正(OPC:optical proximity corrections)のより頻繁な適用によって増幅されるフォトマスク上の構造の複雑さの増大は、フォトマスク上の特定の構造が繰り返されなくなること、またはまれにしか繰り返されなくなること(いわゆる、シングルダイマスク)につながることがある。したがって、そのようなマスクの品質評価(例えば、欠陥検査または欠陥レビュー)は、不可能になるか、または大きな出費を伴って(すなわち、前述したダイツーダイ方式を用いた、適切な参照位置の長時間の検索の後に)ようやく可能になる。
【0005】
そのような場合に(ただし、そのような場合とは無関係でも)使用できる方法は、いわゆるダイツーデータベース方式であり、この方式では、光学的結像シミュレーション(レンダリング)を用いて、設計データから(例えば、レイアウトデータから)参照空間像が取得される。参照像がマスクの設計データから生成される方法は、前述の問題とは無関係に使用され得る。
【0006】
シミュレーションを用いたマスクの参照空間像は、以前は2つの方法で生成することができた。第1に、参照空間像は、最初からのシミュレーションまたは厳密なシミュレーションを用いて計算され得る。しかし、数値的にマクスウェル方程式を解く最初からのシミュレーションに基づいて、欠陥を解析するためおよび/または欠陥を修正するための参照空間像を生成することは、非常に時間がかかり、したがって、現在および近い将来の製造環境では、ほとんど実用的でない。
【0007】
第2に、シミュレーションを用いて設計データから参照空間像を生成する目的で、「キルヒホフモデル」または「スカラー結像モデル」として知られている、マスク構造が2次元であること、および回折波が自由に伝搬することを仮定する簡略化されたモデルを使用することができる。キルヒホフモデルに基づく参照空間像のシミュレーションは、厳密なシミュレーションよりも数桁速いが、すべてのマスクの影響を十分正確に結像することができない。したがって、キルヒホフモデルを用いて生成される参照空間像の品質は、多くの場合、不十分である。
【0008】
新しいさらに別の方法では、機械学習(ML:machine learning)モデルを用いて、フォトマスクの品質評価における多数の課題に取り組むための試みが現在行われている。この手順に関して、例示的な方法で、次の文書が指定される:WO 2017/087 653 A1、WO 2017/117 568 A1、WO 2017/120 253 A1、WO 2017/123 555 A1、WO 2017/123 561 A1、WO 2017/117 573 A1、WO 2017/123 555 A1、およびWO 2017/205 537 A1。
【0009】
前述したように、フォトリソグラフィマスクの参照空間像の生成は、測定による生成およびシミュレーションを用いる生成のいずれの場合も、複雑なプロセスになる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明は、フォトリソグラフィマスクの品質を評価する際に、前述した不利益を少なくとも部分的に回避する方法および装置を規定するという目的に基づく。
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの態様によれば、請求項1に従う方法によって、この問題が解決される。
【0012】
フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の少なくとも1つの未知の影響を決定するための方法は、(a)像、像に関連付けられた設計データ、および像から生じるフォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の少なくとも1つの影響の間の関係に対する機械学習のモデル提供するステップと、(b)トレーニングの目的に使用される多数の像、トレーニングの目的に使用される像に関連付けられた設計データ、および欠陥の対応する影響を使用して機械学習のモデルをトレーニングするステップと、(c)機械学習のトレーニング済みモデルを測定された像および測定された像に関連付けられた設計データに適用することによって、欠陥の少なくとも1つの未知の影響を決定するステップとを含んでよい。
【0013】
本発明に従う方法は、フォトリソグラフィマスクおよび/またはウェーハの品質を評価できるようにするための参照像の複雑な生成を回避する。さらに、本発明に従う方法は、余分な参照像との測定された像の比較を行う。
【0014】
例として、機械学習のモデルまたはMLモデルの複雑なトレーニングプロセスを、特定のマスクタイプおよび特定の光学的測定システムに対して1回実行することができ、それによって空間像を生成する。例として、トレーニングプロセスを、この目的のために最適に備えられている中心の位置で実行することができる。次に、異なるマスクタイプのトレーニング済みMLモデルを、製造環境内の光学的測定または結像システムおよび設計データと共に提供することができる。トレーニング済みMLモデルを測定された空間像に適用することによって、および関連する設計データを提供することによって、測定された空間像によって表されたマスクの一部における欠陥の以前は不明だった影響を、直接的にまたは最小限の適合の後に、決定することができる。
【0015】
機械学習のモデルは、経験から知識を生成する。機械学習のモデルは、学習段階またはトレーニング段階においてトレーニングデータまたは学習データの形態でモデルに提供される例から学習する。この学習を使用して、トレーニングデータ内の関係を表すことができるようにするために、モデルの内部変数(例えば、パラメトリックマッピングのパラメータ)が、適切な値によって占められ得る。その結果、トレーニング段階におけるMLモデルは、概して、単に記憶することによってトレーニングデータを学習するだけでなく、トレーニングデータ内のパターンおよび/またはルールを識別する。学習された関係の品質は、新しいデータ(すなわち、トレーニング中に知られていないデータ)に対するトレーニング済みモデルの一般化可能性を評価するために、通常、検証データに基づいて評価される。関連する設計データが提供された場合に、MLモデルに知られていない像内の欠陥の可能性のある影響を予測するために、トレーニング済みMLモデルをフォトリソグラフィプロセスの要素に適用できる。したがって、トレーニング段階の完了後に、関連する設計データが提供された場合に、良好な一般化可能性を有する正常にトレーニングされたMLモデル(すなわち、トレーニング済みMLモデル)は、MLモデルに知られていないデータ(すなわち、未知の像)を評価することができる。
【0016】
像は、光学的測定システムによって記録された像、走査粒子顕微鏡によって記録された像、および走査プローブ顕微鏡によって記録された像の群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。
【0017】
光学的測定システムは、AIMS(商標)、PROVE(登録商標)、および/またはWLCDツールを含んでよい。走査粒子顕微鏡は、走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)および/または走査イオン顕微鏡を含んでよい。走査プローブ顕微鏡は、走査トンネル顕微鏡、走査フォース顕微鏡、磁気力顕微鏡、近接場走査光学顕微鏡、および走査近接場音響顕微鏡の群からの要素を含んでよい。
【0018】
本発明に従う方法の適用は、光学的測定システムによって記録された像に制限されない。むしろ、本発明に従う方法は、異なる結像方法によって生成された像に使用できる。
【0019】
設計データは、レイアウトデータおよびコンピュータ支援設計(CAD:computer-aided design)データの群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。設計データは、ピクセルデータおよび/または多角形もしくは多角形チェーンの形態で利用可能であることができる。
【0020】
機械学習のモデルは、サブシンボリック(sub-symbolic)システムを含んでよい。
【0021】
シンボリックシステムの場合、知識、すなわち、トレーニングデータおよび発生したルールは、明示的に表される。サブシンボリックシステムの場合、計算可能な動作をモデルが学習するが、学習された解経路への詳細な見通しが存在しない。
【0022】
機械学習のモデルは、パラメトリックマッピング、人工ニューラルネットワーク(ANN:artificial neural network)、深層ニューラルネットワーク(DNN:deep neural network)、時間遅延ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:convolutional neural network)、回帰型ニューラルネットワーク(RNN:recurrent neural network)、長短期記憶(LSTM:long short-term memory)ネットワーク、および発生モデルの群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。
【0023】
識別モデルは、入力データから出力データを生成することができ、発生モデルは、入力データから出力データを生成することができ、さらに、入力データを再現することができる。
【0024】
機械学習のモデルは、(a)像の情報を伝達する特徴および像に関連付けられた設計データを決定するための少なくとも1つのエンコーダ(符号器)ブロックと、(b)決定された情報を伝達する特徴から欠陥の少なくとも1つの影響を生成するための少なくとも1つのデコーダ(復号器)ブロックとを含んでよい。
【0025】
さらに、機械学習のモデルは、(a)像の情報を伝達する特徴および像に関連付けられた設計データを決定するための少なくとも1つのエンコーダ層と、(b)決定された情報を伝達する特徴から欠陥の少なくとも1つの影響を生成するための少なくとも1つのデコーダ層とを含んでよく、欠陥の影響は、参照像との像の重ね合わせ(overlay)がどのように見えるかを示す。
【0026】
機械学習のモデルは、少なくとも2つの層を含んでよく、10~1500の層を含むのが好ましく、15~1000の層を含むのがさらに好ましく、30~100の層を含むのが最も好ましい。
【0027】
機械学習のモデルの層は、さまざまなパラメータ化された関数およびパラメータ化されていない関数を実現することができる。したがって、人工ニューラルネットワークは、2つ以上の畳み込み層および2つ以上のデコンボリューション層(deconvolutional layers)を含んでよい。ここで、処理中に十分多いデータを用いることができるようにするために、畳み込みフィルタのサイズは、特に小さい数の畳み込み層の場合に、より大きくなるように選択されてよい。さらに、人工ニューラルネットワークは、2つ以上のプーリング層(pooling layers)および2つ以上のデプーリング層(de-pooling layers)を含んでよい。さらに、複雑な関係を実現するために、機械学習のモデルは、2つ以上の非線形活性化(nonlinear activation)関数(例えば、双曲線正接(hyperbolic tangent)関数、シグモイド(sigmoid)関数、および/または区分的に線形な(piecewise linear)関数)を含んでよい。それとは無関係に、機械学習のモデルは、2つ以上の適応正規化(adaptive normalization)層(例えば、バッチ正規化(batch normalization))を含んでよい。
【0028】
本発明に従う方法は、機械学習のモデルの複数の層を空間像の既定の精度または要求された精度に適合させるステップをさらに含んでよい。特に、本発明に従う方法は、複数のエンコーダ層および/またはデコーダ層を像の既定の精度に適合させるステップを含むことができる。
【0029】
人工ニューラルネットワーク(ANN:artificial neural network)は、通常、複数の層のリンクから成り、したがって、例えば入力から出力への連続的な変換を実現する。ネットワークのトポロジー、すなわち、層の数、各層の関数の選択、層の各々のパラメータまたはモデルパラメータ(フィルタカーネルの数およびサイズなど)、および個々の層間の接続が、達成される目的に応じて選択される。ここで、ANNの1つの層の出力を、その後の層へだけではない入力として、提供することができる。
【0030】
フォトリソグラフィプロセスの要素は、フォトリソグラフィマスク、ナノインプリント技術のテンプレート、およびウェーハの群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。フォトリソグラフィマスクは、透過マスクまたは反射マスクを含むことができる。
【0031】
本発明に従う方法は、フォトリソグラフィマスクの欠陥の配置を決定することに制限されない。むしろ、本発明に従う方法は、ナノインプリント技術の分野のテンプレートおよびウェーハを解析するために使用されてもよい。
【0032】
欠陥は、フォトリソグラフィプロセスの1つまたは複数の要素の1つまたは複数のパターン要素の配置誤差、フォトリソグラフィプロセスの要素の1つまたは複数のパターン要素の臨界寸法誤差、およびフォトリソグラフィプロセスの要素の材料欠陥の群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。
【0033】
欠陥の少なくとも1つの未知の影響を決定することは、次の質問のうちの1つに対する少なくとも1つの回答を含んでよい。欠陥の影響が既定のしきい値未満であるか?欠陥がウェーハ上で見えるか?ウェーハ上で見える欠陥が修正可能であるか?
【0034】
光学的結像システムによって記録された像は、空間像を含んでよく、および/または空間像は、空間像の焦点スタック(aerial image focus stack:空間像焦点を積み重ねたもの)を含んでよい。
【0035】
同じ設計データが、焦点スタックのさまざまな空間像の基礎になる。フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の影響の予測精度は、個々の空間像の代わりに空間像の焦点スタックを使用してMLモデルを少なくとも部分的にトレーニングすることによって、向上させることができる。この目的に必要なMLモデルは、例えば、空間像の焦点スタックまたは個々の空間像のいずれかからデータを入力として受け取る共通モデルとして、実現可能である。しかし、例えば、共通のパラメータ値を介して結合された2つの別々のMLモデルを使用することも可能である。
【0036】
機械学習のモデルのトレーニングは、トレーニングの目的に使用される多数の空間像およびトレーニングの目的に使用される空間像に関連付けられた多数の設計データを入力データとして提供することと、トレーニングの目的に使用される空間像に対応する欠陥の多数の影響を、機械学習のモデルの出力データに対する比較データとして提供することとを含んでよい。
【0037】
トレーニング段階および使用段階の両方の間に、各ケースにおいて、2つのデータソースからのデータがMLモデルに提示されることが本出願の独自性であり、前述のデータソースは、相互に接続を有する。
【0038】
トレーニングの目的に使用される空間像は、測定された空間像および/またはシミュレートされた空間像を含んでよい。
【0039】
トレーニングの目的に必要な空間像がすべて測定される必要はないということが、本発明に従う方法の利点である。
【0040】
本発明に従う方法は、シミュレートされた像を生成する目的で、フォトリソグラフィプロセスの要素の設計データおよび/または修正された設計データをシミュレートするステップをさらに含んでよい。さらに、本発明に従う方法は、シミュレートされた空間像を生成する目的で、フォトリソグラフィマスクの設計データおよび/または修正された設計データをシミュレートするステップを含むことができる。
【0041】
トレーニングデータレコード(training data record)は、欠陥のない像または空間像、すなわち、参照像および参照空間像としてそれぞれ使用できる像または空間像を含む必要がある。しかし、さらに、トレーニングデータレコードは、フォトリソグラフィプロセスの要素の多数の公知の関連する欠陥を有する像/空間像も含む必要があり、またはフォトマスクの場合、多数の公知の関連するマスクの欠陥も含む必要がある。トレーニングの目的に使用される像/空間像が、シミュレーションツールを用いて部分的に、または全体として生成された場合、シミュレートされた像/空間像がフォトリソグラフィプロセスの要素の公知の関連する欠陥(例えば、公知の関連するマスクの欠陥)を示すような方法で、シミュレートされた像/空間像の基礎になる設計データが変更または修正されてよい。
【0042】
シミュレートされた像/空間像を生成することは、マクスウェル方程式を数値的に解くことによって厳密なシミュレーションを実行することであって、フォトリソグラフィプロセスの要素の設計データおよび/または修正された設計データが入力データとして使用される、ことと、キルヒホフモデルを用いてシミュレーションを実行することであって、フォトリソグラフィプロセスの要素の設計データおよび/または修正された設計データが入力データとして使用される、実行することと、粒子線に基づく結像シミュレーションを実行することであって、フォトリソグラフィプロセスの要素の設計データおよび/または修正された設計データが入力データとして使用される、実行することと、走査プローブに基づく結像シミュレーションを実行することであって、フォトリソグラフィプロセスの要素の設計データおよび/または修正された設計データが入力データとして使用される、実行することとの群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。
【0043】
機械学習のモデルのトレーニングは、機械学習のモデルの学習可能なパラメータを決定することを含んでよい。畳み込み層の場合、機械学習のモデルのトレーニングは、フィルタマスクの重みを決定することを含んでよい。
【0044】
畳み込み層およびデコンボリューション層の場合、学習可能なパラメータは、通常、個々の畳み込み層のフィルタマスクの重みである。モデルの複雑さを増大させるために、層の畳み込み結果が、通常、非線形の方法でさらに変換される。この目的で、上ですでに参照されたように、離散畳み込みを用いて確定された各ニューロンの入力が、活性化関数を用いて(すなわち、例えば、シグモイド関数(sig(t)=0.5・(1+ tanh(t/2))または正規化線形ユニット(ReLU,f(x)=max(o,x))の適用によって)畳み込み層内で出力に変換される。それぞれ活性化関数を含んでいる複数の畳み込み層の連結は、認知の目的のため、およびさまざまなデータ様式間(例えば、設計データと像データの間)で変換するために、提供されたデータからの複雑なパターンの学習を可能にする。
【0045】
本出願において採用されているMLモデルは、2つの入力データレコード(具体的には、像および設計データ)に基づいて出力(具体的には、フォトリソグラフィプロセスの要素の少なくとも1つの欠陥の少なくとも1つの影響)を予測するという独自性を有する。第1の実施形態では、2つの入力データレコードを連結して、単一の入力を形成することができる。この実施形態では、MLモデルのアーキテクチャは、従来の実施形態例と異ならない。
【0046】
しかし、第2の実施形態では、MLモデルが、2つの分離した分岐、またはMLモデル内で結合される2つの像および設計データの入力に関する、入力側での入力の分岐を含むことも可能である。この第2の実施形態は、MLモデルの1つまたは複数の共通の層内の共通の処理のための対象の方法で2つの入力を準備するために、2つの入力の別々の処理を容易にする。MLモデルの2つの分離した入力分岐は、同じ数の層を含んでよい。しかし、MLモデルの2つの入力分岐の層の数を、各入力データの仕様に合わせることが、現在は好ましい。2つの分離した入力分岐の個々の層は、互いに接続されてよい。
【0047】
前述したように、MLモデルの第2の実施形態は、次のようなさまざまな方法でトレーニングされ得る。初期モデルパラメータは、(I)ランダムに選択されてよく、(II)類似する目的をすでに実行したMLモデルから採用されてよく、および/または(III)教師なしの方法で事前に学習されてよい。
【0048】
(I)に関して、モデルパラメータの初期数値がランダムに選択される場合、MLモデルの2つの入力分岐に対して、同じランダムな分配または異なるランダムな分配が選択されてよい。
【0049】
(II)に関して、トレーニングにおけるMLモデルの2つの入力分岐と同じまたは類似するアーキテクチャを有する他のMLモデルがすでに使用されている場合、そのMLモデルのモデルパラメータが、トレーニング段階の初期モデルパラメータとして使用され得る。その結果、トレーニングプロセスのモデルパラメータの初期数値が、MLモデルの2つの分離した入力分岐に対して別々に設定され得る。MLモデルのトレーニングプロセスは、初期モデルパラメータのモジュール式の決定によって簡略化され得る。
【0050】
(III)に関して、例えば、入力分岐がエンコーダ/デコーダアーキテクチャの形態で実現される場合のように、MLモデルの2つの入力分岐が自動エンコーダとして具現化される(すなわち、入力分岐の入力データがMLモデルの出力で再現され得る)場合、入力データの再現から決定されたモデルパラメータが、MLモデルの開始パラメータとして使用され得る。このようにして、トレーニング済みの2つの入力分岐のモデルパラメータは、多くの場合、トレーニング段階においてMLモデル全体の初期化に役立つ。
【0051】
機械学習のモデルをトレーニングするための欠陥の対応する影響の提供は、像に対応する欠陥の少なくとも1つの影響を生成するために、トレーニングの目的に使用される像を参照像に重ね合わせるステップをさらに含んでよい。
【0052】
機械学習のモデルをトレーニングするための欠陥の対応する影響の提供は、測定された像の領域と同じパターン要素を含むフォトリソグラフィプロセスの要素の実質的に欠陥のない領域を結像する(imaging)こと、および/またはフォトリソグラフィプロセスの要素の測定された像の領域に関して設計データをシミュレートすることによって、参照像を決定するステップをさらに含んでよい。機械学習のモデルをトレーニングするための欠陥の対応する影響の提供は、測定された空間像の領域と同じパターン要素を含むフォトリソグラフィマスクの実質的に欠陥のない領域を結像する(imaging)こと、および/またはフォトリソグラフィマスクの測定された空間像の領域に関して設計データをシミュレートすることによって、参照空間像を決定するステップをさらに含んでよい。
【0053】
像を参照像に重ね合わせることは、像と参照像の間の差分(difference)を形成することを含んでよい。さらに、空間像を参照空間像に重ね合わせることは、空間像と参照空間像の間の差分を形成することを含んでよい。
【0054】
差分を形成することは、臨界寸法(CD:critical dimension)の逸脱(deviation:それること、外れること)を決定することと、コントラストの逸脱を決定することと、1つまたは複数のパターン要素の配置逸脱を決定することとの群からの少なくとも1つの要素を含んでよい。
【0055】
通常、参照像のような測定された像は、2次元ピクセル配置の形態で存在する。各ピクセルは、グレースケール値のステップとして表すことができるように、通常、特定のビット深度に関連付けられる。参照空間像空間像の重ね合わせによって、欠陥の影響を示す差分像が生じる。
【0056】
フォトリソグラフィプロセスの要素(例えば、フォトマスク)の欠陥の影響は、欠陥影響マップにおいて捕捉され得る。欠陥影響マップは、前述したように、参照像に対する測定された像の逸脱の影響を表す。例として、1つまたは複数のしきい値条件を事前に決定することによって、その後、印刷可能な欠陥(すなわち、ウェーハ上のマスクまたはマスクの一部の上に見える欠陥)の配置が、欠陥影響マップから直接確定され得る。さらに、MLモデルは、欠陥の予測された影響に加えて、印刷可能な欠陥が修正可能であるかどうかも予測するようにトレーニングされ得る。
【0057】
このトレーニングは、トレーニングにおいて機械学習のモデルによってトレーニングの目的に使用される像から決定された欠陥の少なくとも1つの影響を、トレーニングの目的に使用される像に対応する欠陥の少なくとも1つの影響と比較するステップをさらに含んでよい。
【0058】
機械学習のモデルのトレーニングは、教師あり学習を含んでよい。教師あり学習は、文献"Pattern Recognition and Machine Learning" by C.M, Bishop, Springer 2006, ISBN-10: 0-387-31073-8に記載されている。
【0059】
機械学習のモデルのトレーニングは、(a)第1の段階において、第1の数のシミュレートされた像、シミュレートされた像に関連付けられた設計データを、欠陥の対応する影響と共に使用して、機械学習のモデルをトレーニングすることと、(b)第2の段階において、第2の数の測定された像、測定された像に関連付けられた設計データを、欠陥の対応する影響と共に使用して、機械学習のモデルをトレーニングすることとを含んでよく、第1の段階は、第2の段階の前に実行される。第1の数のシミュレートされた像は、第2の数の測定された像よりも大きくなることができる。第1の数のシミュレートされた像は、第2の数の測定された像よりも10倍大きくなることができる。
【0060】
機械学習のモデルのトレーニングは、前述のステップ(a)および(b)を少なくとも2回実行するステップをさらに含んでよい。
【0061】
MLモデルをトレーニングするために必要な多数の像(例えば、数千の像)(例えば、空間像)を測定するのは、複雑であることがある。本発明に従う方法は、第1のステップで、シミュレートされた像および関連する設計データに基づいてMLモデルをトレーニングすることを可能にする。シミュレートされた像は、シミュレーションツールを用いて大量に生成され得る。第2のステップで、シミュレートされた像を用いて事前にトレーニングされたMLモデルが、限定された数の測定された像を用いて使用するために、最終的に準備される。
【0062】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されたときに、上で規定された態様の方法のステップをコンピュータシステムに実行させる、命令を含んでよい。
【0063】
本発明のさらに別の態様によれば、請求項18に従う装置によって、上で規定された問題が解決される。
【0064】
フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の少なくとも1つの未知の影響を決定するための装置は、(a)像、像に関連付けられた設計データ、および像から生じる欠陥の少なくとも1つの影響の間の関係に対する機械学習のモデル提供するための手段と、(b)トレーニングの目的に使用される多数の像、トレーニングの目的に使用される像に関連付けられた設計データ、および欠陥の対応する影響を使用して機械学習のモデルをトレーニングするための手段と、(c)機械学習のトレーニング済みモデルを測定された像および測定された像に関連付けられた設計データに適用することによって、欠陥の少なくとも1つの未知の影響を決定するための手段とを備えてよい。
【0065】
この装置は、フォトリソグラフィプロセスの要素のための露光システムと、フォトリソグラフィプロセスの要素の一部を光検知器上に結像するように具現化された拡大レンズとを備えてよい。この装置は、AIMS(商標)ツールを備えてよい。
【0066】
以下の詳細な説明では、図面を参照して本発明の現在の好ましい実施形態例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】フォトリソグラフィプロセスの要素の品質を評価するために現在頻繁に使用されているワークフローを概略的に再現する図である。
図2】入力層、出力層、ならびに関連する入力データおよび出力データを含む機械学習のモデルの例を概略的に示す図である。
図3】2つの分離した入力分岐を含む機械学習のモデルの第2の例の断面を概略的に示す図である。
図4】本出願に記載された方法を実行することができる装置の断面を概略的に示す図である。
図5】フォトリソグラフィプロセスの要素の一部の参照空間像を概略的に示す図である。
図6】フォトリソグラフィプロセスの要素の一部の空間像を概略的に示す図である。
図7】欠陥確率マップの一部を概略的に示す図である。
図8】機械学習のモデルのトレーニング段階のトレーニングサイクルを概略的に説明する図である。
図9】フォトリソグラフィプロセスの要素の品質を評価するためのワークフローを概略的に再現する図であり、トレーニング済みモデルがこの目的に使用された場合、前述のトレーニング済みモデルは、測定された空間像と関連する設計データの間の関係を確立し、それによって、フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥分布の予測を容易にする。
図10】フォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の未知の配置を決定するための方法のフローチャートを最後に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下では、本発明に従う方法および本発明に従う装置の現在の好ましい実施形態が、フォトリソグラフィマスクの欠陥の未知の影響を決定することに基づいて、さらに詳細に説明される。しかし、本発明に従う方法および本発明に従う装置の適用は、フォトマスクに限定されない。むしろ、前述の装置および方法は、フォトリソグラフィプロセスのその他の要素に適用することができ、例えば、フォトマスクの代わりに使用できるナノインプリントリソグラフィ(nanoimprint lithography)のテンプレート(template)またはモールド(mould)に適用できる。さらに、本発明に従う方法および本発明に従う装置を使用して、ウェーハの処理中にウェーハの品質を評価することができる。一般に、物体の設計データが存在し、物体の欠陥が結像され得る場合に、本出願に記載された方法を使用して、その物体の品質を評価することができる。
【0069】
図1は、フォトマスクの品質を評価するために現在使用されるのが好ましいワークフローを概略的に示している。フォトリソグラフィマスクの欠陥影響マップを確定するために現在頻繁に使用されている方法は、第1のステップで検査されるマスクの領域に対して、参照空間像を決定する。マスクが、パターン要素の同じ配置を含んでいる多くの領域もしくは部分領域、または少なくとも複数の領域もしくは部分領域を含んでいる場合、参照空間像を記録するために、マスクの欠陥のない領域が選択され得る。空間像を測定する目的でも、したがって、参照空間像を測定する目的で、例えば、配置誤差を決定するためにAIMS(商標)(空間像計測システム)ツールおよび/もしくはPROVE(登録商標)ツールを利用することができ、または臨界寸法(CD)を決定するためにWLCDを利用することができる。
【0070】
半導体技術およびマイクロシステム技術では、臨界寸法の略語「CD」は、試験構造物において定義されたサイズを示し、CDの測定は、プロセスステップの製造品質に関する記述を可能にする。
【0071】
パターン要素の同一の配置を含む領域または部分領域がマスク上で繰り返されないか、または非常に長い間隔でしか繰り返されない場合、参照空間像を決定するための前述した方法(いわゆる、ダイツーダイ方式)は、使用できないか、または大きな出費を伴って(すなわち、適切な参照位置の比較的長い検索の後に)ようやく使用可能になる。参照空間像を生成する目的で、そのような場合に(ただし、そのような場合とは無関係でも)使用できる方法は、いわゆるダイツーデータベース方式であり、この方式では、光学的結像シミュレーション(レンダリング)を用いて、設計データから(例えば、レイアウトデータから)参照空間像が取得される。
【0072】
マスクの理想的な参照空間像は、最初からのシミュレーションまたは厳密なシミュレーションを用いて計算される。最初からのシミュレーションは、光学的結像システムの照明放射(すなわち、フォトマスク上の電磁波入射)の光学的相互作用(散乱、回折、吸収、反射)を、フォトマスクの構造、ならびにマスクの上流もしくは下流に透過および/または反射した電磁場の、光学的解析システムの検出器の平面へのその後の伝搬と共に、マクスウェル方程式に基づいて数値的に厳密な方法で考慮する。つまり、適切な数値的方法によって、各境界条件に対して、3次元内でマクスウェル方程式が解かれる。これによって、特に、フォトマスクのさまざまな材料のために照明放射に対して3次元的に現れる構造またはパターンを有するマスクに関して、特定の課題を表現する。
【0073】
マスクの構造が2次元であること、および回折波が自由に伝搬することを仮定する簡略化されたモデルは、「キルヒホフモデル(Kirchhoff’s model)」または「スカラー結像モデル(scalar imaging model)」と呼ばれる。キルヒホフモデルに基づく参照空間像のシミュレーションは、複数桁(orders of magnitude)速いが、すべてのマスクの影響を十分正確に結像することができない。
【0074】
(シミュレーションによって、または欠陥のないマスクの一部を測定することによって)参照空間像を決定した後に、第2のステップで、フォトマスクの(または一般的に、フォトリソグラフィプロセスの要素の)解析される領域の空間像が測定される。この場合も、上で規定したように、この測定は、例えば前述のツールのうちの1つを用いて実施され得る。
【0075】
その結果、第3のステップで、例えば、各パターン要素の位置またはCDデータが、2つの像(すなわち、測定された空間像および参照空間像)から抽出される。
【0076】
その後、第4のステップで、2つの像から抽出された2つのデータレコードを比較することによって、検査される領域に関して、またはフォトマスクの活性表面全体に関して、欠陥影響マップが作成される。ここで、2つの像から抽出された2つのデータレコードの比較は、差分を形成することによって実施され得る。
【0077】
最後に、必要に応じて、1つまたは複数のしきい値(図1に示されていない)に基づいて、マスクの一部において、またはマスク全体にわたって、欠陥影響マップから欠陥の影響(例えば、印刷可能な欠陥)が確定され得る。
【0078】
図2の線図290は、空間像230と、空間像230に関連付けられた設計データ240と、空間像230から現れるフォトリソグラフィプロセスの要素の欠陥の1つまたは複数の影響250との間の関係を示す、機械学習のモデル20oまたはMLモデル200を概略的に示している。MLモデル200は、人工ニューラルネットワーク(ANN)を含んでよい。ANNは、深層ニューラルネットワークを含んでよい。機械学習のモデル200を必要な予測精度に適合させるのは、目的にかなっている。例として、モデル200の適合は、層の数の適切な選択によって実施され得る。それに対する代替または追加として、MLモデル200の関数の記述を、達成される目的(具体的には、欠陥の1つまたは複数の影響の予測250)、またはフォトリソグラフィマスクの欠陥影響マップ250に適合させることは、有利である。
【0079】
MLモデル200は、入力層210を含んでいる。入力データ230、240は、動作中に入力層210を介してトレーニング済みMLモデル200に提供される。本明細書に記載された適用では、動作中の入力データ230、240は、第1に、測定された像または空間像230であり、第2に、測定された像または空間像230に関連付けられた設計データ240である。例として、設計データ240は、マスクのレイアウトデータまたはCAD(コンピュータ支援設計)データであってよく、例えばピクセルデータの形態で、または例えば多角形もしくは多角形チェーンとして、存在してよい。設計データが多角形として使用可能である場合、多角形チェーンをピクセルデータに変換する必要がある。
【0080】
さらに、MLモデル200は出力層220を含んでおり、機械学習のトレーニング済みモデル200は、出力層220を用いて、出力で出力データ250(具体的には、欠陥影響マップ250)を提供する。図2に示されている例では、出力データは、フォトリソグラフィマスク、またはフォトマスクの一部の1つまたは複数の欠陥の影響の予測250である。
【0081】
図3の線図390は、機械学習のモデル300を概略的に示しており、機械学習のモデル300のアーキテクチャは、達成される目的に具体的に適合されている。図3の例示的なMLモデル300は、6つの層310、320、330、340、350、360を有する第1の入力分岐380を含んでおり、第1の層310が入力層として構成されており、第1の層310を用いて、空間像230がMLモデル300に提供される。MLモデル300の第1の入力分岐380の層310~360は、第1の入力分岐380の出力をMLモデル300の主要部分370の第1の共通層375の入力として提供できるように、空間像230を前処理する。
【0082】
さらに、図3に例示的な方法で示されているMLモデル300は、4つの層315、325、335、345を有する第2の入力分岐385を含んでいる。第1の入力分岐380に類似する方法で、第2の入力分岐385の第1の層315が入力層として具現化され、第1の層315は、設計データ240をMLモデル300に提供するのに役立つ。MLモデル300の第2の入力分岐385の層315~345は、第2の入力分岐385の出力を、第1の入力分岐380の入力と並列に、MLモデル300の主要部分370の第1の共通層375の入力として提供できるように、設計データ240を処理する。MLモデル200と同様に、MLモデル300は、主要部分370の出力層395を介して、出力データ250(具体的には、欠陥影響マップ250)を出力する。
【0083】
MLモデル200、300は、予測の目的に使用可能になる前に、できるだけ包括的なデータレコードを使用してトレーニングされなければならない。図4は、空間像230を測定するために使用できる装置490の断面を概略的に示している。さらに、装置490は、空間像の測定に使用することができ、その測定結果が、モデル200、300をトレーニングするためのトレーニングデータレコードの一部として使用される。
【0084】
装置490はコンピュータシステム400を備えており、コンピュータシステム400は、接続410によって測定デバイス420にリンクされる。接続410は、有線方式または無線方式で具現化されてよい。図4に示されている例では、測定デバイス420は、相互作用430を用いてフォトリソグラフィマスク450を検査する。マスク450は、透過マスクまたは反射マスクであることができる。図4のフォトマスク450は、フォトリソグラフィプロセスの要素450の例である。測定デバイス420は、結像測定デバイス420であることができる。例として、測定デバイス420は、AIMS(商標)またはAIMS(商標)EUV(すなわち、極端紫外波長域用のAIMS)であることができる。さらに、測定デバイス420は、PROVE(登録商標)ツールおよび/またはWLCDツールを含んでよい。測定デバイス420を使用して、焦点面を変えることによって、空間像の焦点スタックを生成することができる。その結果、測定デバイス420は、マスク450の空間像の焦点スタックの測定を容易にする。
【0085】
ただし、光子の相互作用を用いてマスク450を解析し、空間像230を生成する光学的測定デバイス420に加えて、測定デバイス420は、中性または荷電部分ビーム(neutral or charged partial beam)を用いてマスク450と相互作用(330)してもよく、反射および/または透過した中性および/または荷電粒子に基づいてサンプル(すなわち、フォトリソグラフィマスク450)の像を生成してよい。測定デバイス420は、特にフォトリソグラフィプロセスの要素がウェーハ(図4に示されていない)を表す場合、走査電子顕微鏡を備えてよい。
【0086】
ただし、測定デバイス420は、マスク450の表面を探査し、マスク450(またはさらに一般的には、フォトリソグラフィプロセス(図4に示されていない)の要素450)の表面の凹凸の像を結果として生成する、走査プローブ顕微鏡を備えてもよい。走査プローブ顕微鏡は、例えば走査フォース顕微鏡を含んでよい。さらに、測定デバイス420は、結像測定デバイスおよび、例えば追加として、走査プローブ顕微鏡を備えることができる。マスク450の3次元像は、結像測定デバイスの測定データおよび走査プローブ顕微鏡の測定データに基づいて生成され得る。
【0087】
コンピュータシステム400は、接続410によって測定デバイス420を制御する。さらに、コンピュータシステム400は、接続410によって測定デバイス420の測定データを受信する。図4のコンピュータシステム400は、測定デバイス420の測定データから空間像230を生成することができる。さらに、図4に示されている例では、コンピュータシステム400は、MLモデル200、300を備えている。コンピュータシステム400は、トレーニング済みMLモデル200、300を実行するように設計される。さらに、コンピュータシステム400は、後述されるMLモデル200、300のトレーニングを実行できるように構成される。グラフィックプロセッサ(GPU:graphical processor unit)は、機械学習のモデル200、300の実行に特に適している。したがって、コンピュータシステム400が1つまたは複数の優れたグラフィックプロセッサまたは別の目的に合わせて最適化されたコンピュータハードウェア(例えば、Googleが提供するテンソルプロセッシングユニット(TPU:tensor processing unit)(図4に示されていない))を含んでいる場合は、有利である。
【0088】
さらに、コンピュータシステム400は、インターフェース460を備えている。コンピュータシステム400は、測定デバイス420によって解析される、マスク450に属する設計データ240またはレイアウトデータ240を、インターフェース460を介して受信することができる。インターフェース460は、イントラネットまたはインターネットへの無線通信インターフェースまたは有線通信インターフェースであることができる。さらに、インターフェース460は、は、データ媒体ドライブを備えてよい。
【0089】
以下の図5~8に基づく例示的な方法で、図2および3のMLモデル200、300のトレーニングが説明される。モデル200、300は、図4の装置490を用いてトレーニングされ得る。ただし、MLモデル200、300のトレーニングを実行する目的では、この目的のために特に設計されたコンピュータシステムを提供することも可能であり、入力データ230、240、および対応する出力データが前述のコンピュータシステムに提供される。
【0090】
図5は、フォトリソグラフィマスク450の一部の参照空間像500の平面図を概略的に示している。例示的な方法で図5に示されている参照空間像500は、4つのストリップ510、520、530、540を含む垂直なストリップ構造を示しており、これらのストリップは、フォトリソグラフィマスク450の化学線波長を吸収する材料を含む。図5の参照空間像500のストリップ構造は、実質的に欠陥を含まない。ここでは、本出願の他の部分と同様に、「実質的に」という表現は、従来技術に従う測定装置が測定に利用される場合に、既定の設計に関して検出可能な変化を含まない測定を意味する。
【0091】
例として、図5の参照空間像500は、装置490の測定デバイス420によって測定され得る。この目的で、マスク450上の位置が選択され、この位置は、図5において再現されているストリップ構造510、520、530、540を含み、マスク450が欠陥を含んでいない位置であることが分かっている。
【0092】
しかし、マスク450が、欠陥のないストリップ構造510、520、530、540を、検査されるマスク450の領域の近くに含んでいない場合、または参照空間像500において再現されているストリップ構造がフォトマスク450上に1回しか存在しない場合、参照空間像500は、シミュレーションツールを用いて、参照空間像500に対応するマスク450の設計データ240から生成される。上ですでに説明されたように、参照空間像500を生成するためのシミュレーションは、参照空間像500によって再現されているフォトマスク500の一部に対するマクスウェル方程式の数値解法によって、設計データ240の厳密なシミュレーションまたは最初からのシミュレーションに基づいて実行され得る。厳密なシミュレーションの実行は、高精度な参照空間像500を提供するが、多くの場合、非常に時間がかかる処理になる。
【0093】
したがって、参照空間像500によって必要とされる精度に応じて、いわゆる「キルヒホフモデル」または「スカラー結像モデル」に基づいて参照空間像500を実装することが、代替手段になってよい。このシミュレーションプロセスは、厳密なシミュレーションと比較して、必要な出費が大幅に少ない。
【0094】
図6は、図5と同じマスク450の一部に関してフォトマスク450の測定された空間像600を示している。図6に示されている例では、ストリップ520は、欠落している吸収体材料という欠陥650を含んでいる。さらに、第3のストリップ530は、測定された例示的な空間像600内で、過剰な吸収材料という欠陥660を含んでいる。測定された空間像600は、トレーニングデータレコードの一部であってよい。しかし、測定された空間像600は、欠陥650、660の影響250を予測する目的で、関連する設計データ240と共に、トレーニング済みモデル200、300に入力されてもよい。最後に、シミュレーションツールを用いて修正された設計データに基づいて生成された、トレーニングデータレコードのシミュレートされた空間像は、測定された空間像600に非常によく似た外観を有することができる。
【0095】
図7は、欠陥影響マップ700の特殊な発現の一部710を示している。欠陥影響マップ700の一部710は、参照空間像500を測定された空間像600と比較することによって形成される。詳細には、欠陥影響マップ700の一部710は、参照空間像500と測定された空間像600の間の差分を形成することによって形成され得る。上ですでに説明されたように、差分像は、参照空間像500および測定された空間像600のグレースケール値に基づいて実施される。差分像は参照空間像500および測定された空間像600よりも大きいビット深度を有するため、欠落している吸収体材料650および過剰な吸収体材料660という欠陥650、660が、欠陥影響マップ700の一部710において区別され得る。マスク450全体にわたって、またはマスク450の関連するすべての領域にわたって欠陥影響マップ700の一部710が決定されることによって、フォトリソグラフィマスク450の(または一般的に、フォトリソグラフィプロセスの要素450の)欠陥影響マップ700を生成することができる。欠陥影響マップ700の一部710は、欠陥650、660の対応する影響として、モデル200、300のトレーニングデータレコードに組み込まれ得る。
【0096】
一貫性のある代表的なトレーニングデータの十分な可用性は、トレーニングプロセスにおいてMLモデル200、300の内部モデルパラメータを決定することにとって重要である。図8は、モデル800のトレーニングサイクルの例を概略的に示している。設計に関して、および機能的特徴に関して、図8のモデル800は、図2および3のモデル200、300と同一である。しかし、モデル200、300とは異なり、モデル800はまだトレーニングされていない。図8に示された例では、測定された空間像600および関連する設計データ240が、機械学習のモデル800の入力層210へのトレーニングシーケンスの入力データとして提供される。出力層220で、トレーニング中のモデル800は、これらの入力データから、欠陥850および860を含む欠陥影響マップの一部810を予測する。欠陥影響マップの一部810は、図7の欠陥影響マップ700の一部710と比較される。図8では、この比較が両矢印870によって示されている。
【0097】
選択されたMLモデル800に応じて、トレーニング段階の間にMLモデル800のモデルパラメータを決定するためのさまざまな方法が存在する。例として、深層ニューラルネットワークの形態でMLモデル800で利用可能な「確率的勾配降下法」反復手法または対応する変形が、確立されている。このトレーニング方法では、トレーニングデータ(すなわち、トレーニングの目的に使用される空間像830(例えば、測定された空間像600)および関連する設計データ240)が、モデル800に繰り返し提示される。すなわち、モデル800は、現在のモデルパラメータを使用して欠陥影響マップの一部810を計算し、計算された一部810を欠陥影響マップ700の測定された一部710と比較する。2つの一部710と810の間に逸脱がある場合、MLモデル800のモデルパラメータが修正される。通常、一部810が(局所)最適に達したときに(つまり、一部710と810の間の逸脱が、すべての像の対(ペア)にわたってそれ以上ほとんど変化しなくなったか、または既定の時間間隔が過ぎた後に、もしくは既定の数のトレーニングステップを遂行した後に)、入力データレコードのトレーニング段階が終了される。代替として、別個の検証データレコードが利用される場合、検証精度が大幅に向上したときに、MLモデル800のトレーニングプロセスが完了することができ、このことは、MLモデル800の過学習を示している。
【0098】
モデル800は、2つのステップでトレーニングされ得る。第1のステップで、トレーニングの目的に使用されるシミュレートされた空間像の形態での空間像830が、関連する設計データ240と共にモデル800の入力層210に提供され得る。その後、第2のステップで、測定された空間像600が、対応する設計データ240と共に、トレーニングの目的に使用される空間像830としてモデル800に提示される。
【0099】
トレーニング済みMLモデル200、300が使用される前に、トレーニング済みモデル200、300の予測能力が、検証ステップを用いて解析され得る。トレーニング済みモデル200、300を検証するときに、独立した検証データレコードに基づいて、トレーニング済みモデル200、300の予測の精度が解析される。
【0100】
図9の線図900は、測定された空間像600との参照空間像500の比較の代わりに、トレーニング済みモデル200、300がプロセスにおいて使用される場合に、フォトリソグラフィプロセスの要素450の品質を評価するためのワークフローを示している。最初に、ステップ910で、フォトリソグラフィマスク450の空間像600が測定される。その結果、ステップ920で、測定された空間像600に属する設計データ240が機械学習のトレーニング済みモデル200、300に提供される。ステップ930で、トレーニング済みMLモデル200、300が、測定された空間像600および関連する設計データ240に基づいて、空間像600の欠陥650、660の影響250を直接確定する。図9において再現されたワークフローは、参照空間像500の決定を回避する。
【0101】
最後に、図10のフローチャート1000は、フォトリソグラフィプロセスの要素450の欠陥650、660の少なくとも1つの未知の影響を決定するための方法のワークフローを示している。ステップ1010で、この方法が開始する。ステップ1020で、空間像600、空間像600に関連付けられた設計データ240、および空間像600から生じるフォトリソグラフィプロセスの要素450の欠陥650、660の影響の間の関係に対する機械学習のモデル200、300提供される。
【0102】
次のステップ1030で、トレーニングの目的に使用される多数の空間像830、トレーニングの目的に使用される空間像830に関連付けられた設計データ240、および欠陥650、660の対応する影響710を使用して、機械学習のモデル200、300がトレーニングされる。
【0103】
その結果、ステップ1040で、トレーニング済みモデル200、300を測定された空間像600および測定された空間像600に関連付けられた設計データ240に適用することによって、欠陥650、660の未知の影響が決定される。最後に、ステップ1050で、この方法が終了する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10