(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】圧力測定用シートセット、圧力測定用シート、圧力測定用シートセットの製造方法、圧力測定用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20220705BHJP
G01L 1/00 20060101ALI20220705BHJP
B41M 5/165 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01L5/00 101A
G01L1/00 E
B41M5/165 200
(21)【出願番号】P 2021563845
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020043998
(87)【国際公開番号】W WO2021117496
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019225497
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】八田 政宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 宏和
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-58536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0302613(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0104973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00 - 5/28
G01L 1/00 - 1/26
B41M 5/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートと、
顕色剤を含む第2層を有する第2シートと、を備える圧力測定用シートセットであって、
前記マイクロカプセルのうち少なくとも一部のマイクロカプセルが、カプセル壁に窪みを有し、
前記マイクロカプセル全数に対する、前記窪みを有するマイクロカプセルの割合が、20%以上である、圧力測定用シートセット。
【請求項2】
前記窪みの深さ方向と直交する方向における前記窪みを有するマイクロカプセルの最大長さLに対する、前記窪みを有するマイクロカプセルの前記窪みの底部から前記窪みと対向するカプセル壁の外面までの距離Hの比の平均値が0.90以下である、請求項1に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項3】
前記比の平均値が0.50~0.90である、請求項2に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項4】
前記窪みを有するマイクロカプセルが、1つの窪みを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項5】
前記マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、
前記カプセル壁のガラス転移温度が、50~160℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項6】
前記マイクロカプセルの数平均壁厚が0.02μm超2μm未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項7】
前記マイクロカプセルが式(1)の関係を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
式(1) 0.100>δ/Dm>0.001
δは、前記マイクロカプセルの数平均壁厚(μm)を表す。Dmは、前記マイクロカプセルの平均粒径(μm)を表す。
【請求項8】
前記第1シートの算術平均粗さRaが2.5~7.0μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項9】
前記第2シートの算術平均粗さRaが1.2μm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項10】
前記第1シートが、更に支持体を有し、
前記窪みを有するマイクロカプセルの前記窪みが、前記支持体側とは反対側に位置する、請求項1~9のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項11】
前記支持体が、樹脂フィルムである、請求項10に記載の圧力測定用シートセット。
【請求項12】
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層と、
前記第1層上に配置された、顕色剤を含む第2層と、を有する、圧力測定用シートであって、
前記マイクロカプセルのうち少なくとも一部のマイクロカプセルが、カプセル壁に窪みを有し、
前記マイクロカプセル全数に対する、前記窪みを有するマイクロカプセルの割合が、20%以上である、圧力測定用シート。
【請求項13】
前記窪みの深さ方向と直交する方向における前記窪みを有するマイクロカプセルの最大長さLに対する、前記窪みを有するマイクロカプセルの前記窪みの底部から前記窪みと対向するカプセル壁の外面までの距離Hの比の平均値が0.90以下である、請求項12に記載の圧力測定用シート。
【請求項14】
前記比の平均値が0.50~0.90である、請求項13に記載の圧力測定用シート。
【請求項15】
前記窪みを有するマイクロカプセルが、1つの窪みを有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の圧力測定用シート。
【請求項16】
前記マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、
前記カプセル壁のガラス転移温度が、50~160℃である、請求項12~15のいずれか1項に記載の圧力測定用シート。
【請求項17】
前記マイクロカプセルの数平均壁厚が0.02μm超2μm未満である、請求項12~16のいずれか1項に記載の圧力測定用シート。
【請求項18】
前記マイクロカプセルが式(1)の関係を満たす、請求項12~17のいずれか1項に記載の圧力測定用シート。
式(1) 0.100>δ/Dm>0.001
δは、前記マイクロカプセルの数平均壁厚(μm)を表す。Dmは、前記マイクロカプセルの平均粒径(μm)を表す。
【請求項19】
更に支持体を有し、
前記窪みを有するマイクロカプセルの前記窪みが、前記支持体側とは反対側に位置する、請求項12~18のいずれか1項に記載の圧力測定用シート。
【請求項20】
前記支持体が、樹脂フィルムである、請求項19に記載の圧力測定用シート。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか1項に記載の圧力測定用シートセットの製造方法であって、
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して、得られた塗膜に対して60℃以上の加熱処理を施し、第1層を形成する工程を有する、圧力測定用シートセットの製造方法。
【請求項22】
請求項12~20のいずれか1項に記載の圧力測定用シートの製造方法であって、
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して、得られた塗膜に対して60℃以上の加熱処理を施し、第1層を形成する工程を有する、圧力測定用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力測定用シートセット、圧力測定用シート、圧力測定用シートセットの製造方法、及び、圧力測定用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の高機能化及び高精細化により、圧力の分布を測定する必要性が増す傾向にある。
例えば、特許文献1においては、電子供与性無色染料前駆体と電子受容性化合物との発色反応を利用した圧力測定用材料(圧力測定用シート)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、圧力測定用シートにおいては、圧力分布を測定する場所に圧力測定用シートをセットする際に僅かな擦れが発生すると、擦れが発生した部分が発色してしまい、正確な面圧分布を測定することが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、擦れによる発色が抑制された圧力測定用シートセット、及び、圧力測定用シートを提供することを課題とする。
また、本発明は、圧力測定用シートセットの製造方法、及び、圧力測定用シートの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートと、
顕色剤を含む第2層を有する第2シートと、を備える圧力測定用シートセットであって、
マイクロカプセルのうち少なくとも一部のマイクロカプセルが、カプセル壁に窪みを有し、
マイクロカプセル全数に対する、窪みを有するマイクロカプセルの割合が、20%以上である、圧力測定用シートセット。
(2) 窪みの深さ方向と直交する方向における窪みを有するマイクロカプセルの最大長さLに対する、窪みを有するマイクロカプセルの窪みの底部から窪みと対向するカプセル壁の外面までの距離Hの比の平均値が0.90以下である、(1)に記載の圧力測定用シートセット。
(3) 比の平均値が0.50~0.90である、(2)に記載の圧力測定用シートセット。
(4) 窪みを有するマイクロカプセルが、1つの窪みを有する、(1)~(3)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(5) マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、
カプセル壁のガラス転移温度が、50~160℃である、(1)~(4)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(6) マイクロカプセルの数平均壁厚が0.02μm超2μm未満である、(1)~(5)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(7) マイクロカプセルが後述する式(1)の関係を満たす、(1)~(6)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(8) 第1シートの算術平均粗さRaが2.5~7.0μmである、(1)~(7)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(9) 第2シートの算術平均粗さRaが1.2μm以下である、(1)~(8)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(10) 第1シートが、更に支持体を有し、
窪みを有するマイクロカプセルの窪みが、支持体側とは反対側に位置する、(1)~(9)のいずれかに記載の圧力測定用シートセット。
(11) 支持体が、樹脂フィルムである、(10)に記載の圧力測定用シートセット。
(12) 発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層と、
第1層上に配置された、顕色剤を含む第2層と、を有する、圧力測定用シートであって、
マイクロカプセルのうち少なくとも一部のマイクロカプセルが、カプセル壁に窪みを有し、
マイクロカプセル全数に対する、窪みを有するマイクロカプセルの割合が、20%以上である、圧力測定用シート。
(13) 窪みの深さ方向と直交する方向における窪みを有するマイクロカプセルの最大長さLに対する、窪みを有するマイクロカプセルの窪みの底部から窪みと対向するカプセル壁の外面までの距離Hの比の平均値が0.90以下である、(12)に記載の圧力測定用シート。
(14) 比の平均値が0.50~0.90である、(13)に記載の圧力測定用シート。
(15) 窪みを有するマイクロカプセルが、1つの窪みを有する、(12)~(14)のいずれかに記載の圧力測定用シート。
(16) マイクロカプセルのカプセル壁が、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、
カプセル壁のガラス転移温度が、50~160℃である、(12)~(15)のいずれかに記載の圧力測定用シート。
(17) マイクロカプセルの数平均壁厚が0.02μm超2μm未満である、(12)~(16)のいずれかに記載の圧力測定用シート。
(18) マイクロカプセルが後述する式(1)の関係を満たす、(12)~(17)のいずれかに記載の圧力測定用シート。
(19) 更に支持体を有し、
窪みを有するマイクロカプセルの窪みが、支持体側とは反対側に位置する、(12)~(18)のいずれかに記載の圧力測定用シート。
(20) 支持体が、樹脂フィルムである、(19)に記載の圧力測定用シート。
(21) (1)~(11)のいずれかに記載の圧力測定用シートセットの製造方法であって、
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して、得られた塗膜に対して60℃以上の加熱処理を施し、第1層を形成する工程を有する、圧力測定用シートセットの製造方法。
(22) (12)~(20)のいずれかに記載の圧力測定用シートの製造方法であって、
発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して、得られた塗膜に対して60℃以上の加熱処理を施し、第1層を形成する工程を有する、圧力測定用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、擦れによる発色が抑制された圧力測定用シートセット、及び、圧力測定用シートを提供できる。
また、本発明によれば、圧力測定用シートセットの製造方法、及び、圧力測定用シートの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】圧力測定用シートセットの一実施形態の断面図である。
【
図2】圧力測定用シートセットの使用形態を説明するための図である。
【
図3】窪みを有するマイクロカプセルを説明するための外観図である。
【
図4】窪みを有するマイクロカプセルの断面図である。
【
図5】窪みを有するマイクロカプセルを含む第1層中の一実施形態を示す拡大図である。
【
図6】圧力測定用シートの一実施形態の断面図である。
【
図7】窪みを有するマイクロカプセルの走査型電子顕微鏡による拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
後述する各種成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。例えば、後述するポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
本発明の圧力測定用シートセット及び圧力測定用シートの特徴点としては、窪みを有するマイクロカプセル(以下、単に「特定マイクロカプセル」ともいう。)を使用している点が挙げられる。発明のメカニズムの詳細は不明だが、特定マイクロカプセルは擦れに対して割れにくく、結果として、特定マイクロカプセルを含む第1層を使用すると、擦れによる発色が抑制される。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1は、圧力測定用シートセットの一実施形態の断面図である。
圧力測定用シートセット10は、第1支持体12及び第1支持体12上に配置されたマイクロカプセルを含む第1層14を有する第1シート16と、第2支持体18と第2支持体18上に配置された顕色剤を含む第2層20を有する第2シート22とを備える。なお、上記マイクロカプセルの少なくとも一部は、特定マイクロカプセルである。
圧力測定用シートセット10を使用する際には、
図2に示すように、第1シート16中の第1層14と第2シート22中の第2層20とが対向するように、第1シート16と第2シート22とを積層して使用する。得られた積層体中の第1シート16の第1支持体12側及び第2シート22の第2支持体18側の少なくとも一方側から加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセルが壊れて、マイクロカプセルに内包されている発色剤がマイクロカプセルから出てきて、第2層20中の顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0013】
なお、後述するように、第1シート16は第1層14を有していればよく、第1支持体12を有していてなくてもよい。また、第2シート22は第2層20を有していればよく、第2支持体18を有していてなくてもよい。
更に、
図1においては、第1支持体12と第1層14とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、第1支持体12と第1層14との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。また、
図1においては、第2支持体18と第2層20とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、第2支持体18と第2層20との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。
【0014】
以下では、圧力測定用シートセット10を構成する第1シート16及び第2シート22の構成について詳述する。
【0015】
<<第1シート>>
図1に記載の第1シート16は、第1支持体12と、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層14とを有する。
以下では、各部材について詳述する。
【0016】
<第1支持体>
第1支持体は、第1層を支持するための部材である。なお、第1層自体で取り扱いが可能な場合には、第1シートは第1支持体を有していなくてもよい。
【0017】
第1支持体は、シート状、フィルム状、及び、板状のいずれの形状であってもよい。
第1支持体としては、樹脂フィルム、及び、合成紙が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体フィルム、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、並びに、ポリスチレンフィルムが挙げられる。
合成紙としては、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレート等を二軸延伸してミクロボイドを多数形成したもの(ユポ等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリアミド等の合成繊維を用いて作製したもの、並びに、これらを紙の一部、片面又は両面に積層したもの、等が挙げられる。
なかでも、擦れによる発色がより抑制される点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)、及び、加圧により生じる発色濃度をより高める点から、樹脂フィルム、又は、合成紙が好ましく、樹脂フィルムがより好ましい。支持体は、支持体側から視認した際でも発色性を視認できる点から、透明であることが好ましい。
【0018】
第1支持体の厚みは、本発明の効果がより優れる点から、10~200μmが好ましい。
【0019】
<第1層>
第1層は、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む。なお、マイクロカプセルのうち少なくとも一部のマイクロカプセルが、カプセル壁に窪みを有する。つまり、第1層に含まれる発色剤を内包するマイクロカプセル全数のうちの少なくとも一部が、特定マイクロカプセルである。
以下、まず、マイクロカプセルを構成する材料について詳述する。
【0020】
マイクロカプセルは、一般的に、コア部と、コア部をなすコア材(内包されるもの(内包成分ともいう。))を内包するためのカプセル壁と、を有する。
本発明においては、マイクロカプセルは、コア材(内包成分)として、発色剤を内包する。発色剤がマイクロカプセルに内包されているため、加圧されてマイクロカプセルが破壊されるまで、発色剤は安定的に存在できる。
【0021】
マイクロカプセルは、コア材を内包するカプセル壁を有する。
マイクロカプセルのカプセル壁の材料(壁材)としては、感圧複写紙又は感熱記録紙の用途において発色剤を内包するマイクロカプセルの壁材として従来から使用されている公知の樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、具体的には、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及び、ゼラチンが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点から、マイクロカプセルのカプセル壁は、ポリウレタンウレア、ポリウレタン、及び、ポリウレアからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0022】
マイクロカプセルのカプセル壁は、実質的に、樹脂で構成されることが好ましい。実質的に樹脂で構成されるとは、カプセル壁全質量に対する、樹脂の含有量が90質量%以上であることを意味し、100質量%が好ましい。つまり、マイクロカプセルのカプセル壁は、樹脂で構成されることが好ましい。
なお、ポリウレタンとはウレタン結合を複数有するポリマーであり、ポリオールとポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。
また、ポリウレアとはウレア結合を複数有するポリマーであり、ポリアミンとポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。なお、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなることを利用して、ポリイソシアネートを用いて、ポリアミンを使用せずに、ポリウレアを合成することもできる。
また、ポリウレタンウレアとはウレタン結合及びウレア結合を有するポリマーであり、ポリオールと、ポリアミンと、ポリイソシアネートとを含む原料から形成される反応生成物であることが好ましい。なお、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際に、ポリイソシアネートの一部が水と反応してポリアミンとなり、結果的にポリウレタンウレアが得られることがある。
また、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂とは、メラミンとホルムアルデヒドの重縮合から形成される反応生成物であることが好ましい。
【0023】
なお、上記ポリイソシアネートとは、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、芳香族ポリイソシアネート、及び、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能のポリイソシアネートとのアダクト体(付加体)であってもよい。
また、上記ポリオールとは、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、低分子ポリオール(例:脂肪族ポリオール、芳香族ポリオール。なお、「低分子ポリオール」とは、分子量が400以下のポリオールを意図する。)、ポリビニルアルコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、及び、水酸基含有アミン系化合物(例えば、アミノアルコールが挙げられる。アミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイド付加物である、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン等が挙げられる。)が挙げられる。
また、上記ポリアミンとは、2つ以上のアミノ基(第1級アミノ基又は第2級アミノ基)を有する化合物であり、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-プロピレンジアミン、及び、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族多価アミン;脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物;ピペラジン等の脂環式多価アミン;3,9-ビス-アミノプロピル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-(5,5)ウンデカン等の複素環式ジアミンが挙げられる。
【0024】
マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度は特に制限されないが、第1層を形成する際に、第1層中において特定マイクロカプセルが形成されやすい点で、50~160℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。
上記カプセル壁のガラス転移温度の測定方法としては、以下の通りである。
縦1cm×横1cmの第1層(マイクロカプセル層)を50枚用意し、10mlの水にすべて浸漬し24時間静置し、マイクロカプセルの水分散液を得る。なお、第1シートが第1支持体を含む場合、第1シートを50枚の縦1cm×横1cmを用意し、浸漬してもよい。
得られたマイクロカプセルの水分散液を15000rpmにて30分間遠心分離し、マイクロカプセルを分取する。分取されたマイクロカプセルに酢酸エチルをいれて、更に、25℃で24時間撹拌する。その後、得られた溶液をろ過し、得られた残渣を60℃で48時間真空乾燥することで、内部に何も内包されていないマイクロカプセル(以後、単に「測定材料」ともいう。)が得られる。つまり、ガラス転移温度の測定対象である、マイクロカプセルのカプセル壁材が得られる。
次に、熱重量示差熱分析装置TG-DTA(装置名:DTG-60、(株)島津製作所)を用いて、得られた測定材料の熱分解温度を測定する。なお、熱分解温度とは、大気雰囲気の熱重量分析(TGA)において、測定材料を一定の昇温速度(10℃/min)で室温から昇温し、加熱前の測定材料の質量に対し、5質量%減量した時の温度をもって熱分解温度(℃)とする。
次に、測定材料のガラス転移温度を、示差走査熱量計DSC(装置名:DSC-60a Plus、(株)島津製作所)を用いて、密閉パンを使用し、昇温速度5℃/minで25℃~(熱分解温度(℃)-5℃)の範囲で測定する。マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度としては、2サイクル目の昇温時の値を使用する。
【0025】
マイクロカプセルの平均粒径は特に制限されないが、1~80μmが好ましく、5~70μmがより好ましく、10~50μmが更に好ましい。
マイクロカプセルの平均粒径は、マイクロカプセルの製造条件等を調整することにより制御できる。
マイクカプセルの平均粒径の測定方法としては、光学顕微鏡(OLYMPUS BX60、視野の大きさ:320μm×450μm)で第1層の表面から撮影した画像を画像解析し、最も大きいマイクロカプセルから順番に30個のマイクロカプセルの長径(粒径)を計測し、これらを算術平均して平均値を求める。この操作を、第1層の任意の5か所(5視野)で実施して、各箇所で得られた平均値の平均を求めて、得られた値を上記マイクロカプセルの平均粒径とする。なお、長径とは、マイクロカプセルを観察した際に、最も長い径を意味する。
【0026】
マイクロカプセルのカプセル壁の数平均壁厚は特に制限されないが、0.01μm以上2μm以下が好ましく、0.02μm超2μm未満がより好ましく、0.05μm以上1.5μm以下が更に好ましい。
なお、マイクロカプセルの壁厚とは、マイクロカプセルのカプセル粒子を形成するカプセル壁の厚み(μm)を指し、数平均壁厚とは、20個のマイクロカプセルの個々のカプセル壁の厚み(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。より具体的には、マイクロカプセルを含む第1層を有する第1シートの断面切片を作製し、その断面をSEMにより15000倍にて観察し、(マイクロカプセルの平均粒径の値)×0.9~(マイクロカプセルの平均粒径の値)×1.1の範囲の長径を有する任意の20個のマイクロカプセルを選択の上、選択した個々のマイクロカプセルの断面を観察してカプセル壁の厚みを求めて平均値を算出する。なお、長径とは、マイクロカプセルを観察した際に、最も長い径を意味する。
【0027】
マイクロカプセルの平均粒径Dmに対する、マイクロカプセルの数平均壁厚δの比(δ/Dm)は特に制限されず、0.001以上の場合が多い。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、式(1)の関係を満たすことが好ましい。
式(1) 0.100>δ/Dm>0.001
つまり、上記比(δ/Dm)は、0.001より大きく、0.100未満であることが好ましい。式(1)の関係を満たすと、圧力に応じて発色濃度階調を認識しやすい範囲にすることができる。
【0028】
(窪みを有するマイクロカプセル(特定マイクロカプセル))
マイクロカプセルのうち少なくとも一部のマイクロカプセルは、カプセル壁に窪みを有する。つまり、第1層には、窪みを有するマイクロカプセル(特定マイクロカプセル)が含まれる。
特定マイクロカプセルは、カプセル壁に窪みを有する。
図3は、特定マイクロカプセルの一例の外観を示す図である。
図4は、
図3に示す特定マイクロカプセルの断面図である。
図3に示すように、特定マイクロカプセル(窪みを有するマイクロカプセル)24は、カプセル壁に窪み26を有する。
本明細書において、窪みとはその周囲よりも凹んだ領域を意味する。窪みは、通常、側面及び/又は底部を有する。言い換えると、窪みとは、マイクロカプセルの内部(より具体的には、マイクロカプセルの中心部)に向かって凸状になっている領域を意味する。なお、上記マイクロカプセルの中心部とは、マイクロカプセルに外接する外接球の中心を意味する。
なお、
図3において、特定マイクロカプセル24は1つの窪み26を有するが、特定マイクロカプセルは2つ以上の窪みを有していてもよい。
【0029】
図3においては、窪み26の開口部の形状は円形状であるが、この態様に制限されず、例えば、多角形状、楕円状、及び、無定形状が挙げられる。
なお、窪み26の開口部の形状は、第1層の表面方向から観察することにより確認できる。
【0030】
図4においては、特定マイクロカプセル24の窪み26(窪み26の底部)を通り、かつ、窪み26の深さ方向に沿って切断した断面を示す。
図4に示すように、白矢印で示される窪み26の深さ方向と直交する方向における、特定マイクロカプセル24の長さのうち最大の長さを、最大長さLとする。
また、
図4に示すように、窪み26の底部から、窪み26と対向するカプセル壁28の外面までの距離を、距離Hとする。なお、上記窪み26の底部とは、窪み26の深さ方向(
図4中に白矢印で示す方向)において最も深い位置にある位置を意味する。また、窪み26と対向するカプセル壁28とは、窪み26と深さ方向に沿って対向する位置にあるカプセル壁28を意味する。
図4に示すような、窪み26の深さ方向(窪み方向)と直交する方向における特定マイクロカプセル24の最大長さLに対する、特定マイクロカプセル24の窪み26の底部から窪み26と対向するカプセル壁28の外面までの距離Hの比(H/L)の平均値は、本発明の効果がより優れる点、及び、発色濃度がより優れる点で、0.90以下が好ましく、0.50~0.90がより好ましい。
上記最大長さLの測定方法としては、光学顕微鏡(OLYMPUS BX60、視野の大きさ:320μm×450μm)で第1層の表面から撮影した画像を画像解析し、視野内に観察される特定マイクロカプセルの最大長さLをそれぞれ計測し、それらを平均した値を、上記比(H/L)を求める際の「特定マイクロカプセルの最大長さL」とする。
また、上記距離Hの測定方法としては、第1層の任意の位置の表面方向からレーザー顕微鏡(KEYENCE VK-8510、視野の大きさ:100μm×150μm)にて観察し、視野内に観察される特定マイクロカプセルのそれぞれの高さ、及び、窪みの深さを計測して、得られた高さの値から窪みの深さの値を引いて、各特定マイクロカプセルの距離Hを求めて、それらを平均した値を、上記比(H/L)を求める際の「特定マイクロカプセルの窪みの底部から窪みと対向するカプセル壁の外面までの距離H」とする。
【0031】
第1層中に含まれるマイクロカプセル全数に対する、特定マイクロカプセルの割合は、20%以上であり、本発明の効果がより優れる点で、40%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100%が挙げられる。
上記特定マイクロカプセルの割合の測定方法としては、まず、第1層の任意の位置の表面方向からレーザー顕微鏡(KEYENCE VK-8510、視野の大きさ:100μm×150μm)にて観察し、視野内に観察されるマイクロカプセルの全数を測定すると共に、視野内に観察される特定マイクロカプセルの数を測定し、マイクロカプセル全数に対する、特定マイクロカプセルの割合を求める。この操作を、第1層の任意の5か所(5視野)で実施して、各箇所で得られた割合の平均を求めて、得られた値を上記「第1層中に含まれるマイクロカプセル全数に対する、特定マイクロカプセルの割合」とする。
【0032】
窪みの開口部の大きさは特に制限されないが、
図4で示すように、上述した最大長さLに対する、窪み26の開口部の最大幅Wの比(最大幅W/最大長さL)は、本発明の効果がより優れる点で、0.10~0.95が好ましく、0.30~0.85がより好ましい。
上記最大幅Wの測定方法としては、光学顕微鏡(OLYMPUS BX60、視野の大きさ:320μm×450μm)で第1層の表面から撮影した画像を画像解析し、視野内に観察される特定マイクロカプセルの開口部の最大幅Wをそれぞれ計測し、それらを平均した値を、上記比(最大幅W/最大長さL)を求める際の「開口部の最大幅W」とする。
【0033】
窪み26の深さは特に制限されないが、上述した距離Hに対する、窪み26の開口部から窪み26の底部までの深さD(窪みの深さ)の比(深さD/距離H)は、本発明の効果がより優れる点で、0.10以上が好ましく、0.10~1.00がより好ましい。
上記深さDの測定方法としては、第1層の任意の位置の表面方向からレーザー顕微鏡(KEYENCE VK-8510、視野の大きさ:100μm×150μm)にて観察し、視野内に観察される特定マイクロカプセルの深さをそれぞれ計測して、それらを平均した値を、上記比(深さD/距離H)を求める際の「深さD」とする。
【0034】
特定マイクロカプセルも、上述したように、発色剤を含むコア材を内包するカプセル壁を有する。
また、特定マイクロカプセルは、窪みを有する点以外、各種特性(例えば、カプセル壁の材料、カプセル壁の数平均壁厚、平均粒径、及び、カプセル壁のガラス転移温度)は、上述した通りである。
【0035】
第1シートが支持体を含む場合、本発明の効果がより優れる点で、
図5に示すように、第1支持体12と、第1支持体12上に配置される第1層14中において、特定マイクロカプセル24の窪み26が第1支持体12側とは反対側に位置することが好ましい。なお、
図5は第1層14の拡大図であり、
図5に示すように、第1層14中には特定マイクロカプセル24が複数含まれていてもよい。
【0036】
なお、第1層に含まれるマイクカプセルは、特定マイクロカプセル以外に、窪みを有さないマイクロカプセルを含んでいてもよい。
【0037】
(発色剤)
マイクロカプセル内には、発色剤が内包される。
発色剤とは、無色の状態から、後述する顕色剤と接することにより、発色する化合物である。発色剤としては、電子供与性の色素前駆体(発色する色素の前駆体)が好ましい。つまり、発色剤としては、電子供与性無色染料が好ましい。
発色剤は、感圧複写紙又は感熱記録紙の用途において公知のものを使用できる。発色剤としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、アザインドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、及び、フルオレン系化合物が挙げられる。
上記の化合物としては、特開平5-257272号公報の記載の化合物、国際公開第2009/8248号の段落0030~0033に記載の化合物、3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン、及び、3,3-ビス(2-メチル-1-オクチル-3-インドリル)フタリドが挙げられる。
発色剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
発色剤の分子量は特に制限されず、300以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1000以下が好ましい。
【0039】
(その他の成分)
マイクロカプセルは、上述した発色剤以外の他の成分を内包していてもよい。
例えば、マイクロカプセルは、溶媒を内包することが好ましい。
溶媒は特に制限されず、例えば、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン系化合物、1-フェニル-1-キシリルエタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、及び、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、及び、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、及び、魚油等の天然動植物油等、並びに、鉱物油等の天然物高沸点留分等が挙げられる。
溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
マイクロカプセル内に溶媒が内包される場合、溶媒と発色剤との質量比(溶媒の質量/発色剤の質量)としては、発色性の点で、98/2~30/70の範囲が好ましく、97/3~40/60の範囲がより好ましい。
【0041】
マイクロカプセルは、上述した成分以外に、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、及び、臭気抑制剤等の添加剤を1種以上内包していてもよい。
【0042】
(マイクロカプセルの製造方法)
マイクロカプセルの製造方法は特に制限されず、例えば、界面重合法、内部重合法、相分離法、外部重合法、及び、コアセルベーション法等の公知の方法が挙げられる。なかでも、界面重合法が好ましい。
以下において、カプセル壁がポリウレア又はポリウレタンウレアであるマイクロカプセルの製造方法を一例として、界面重合法について説明する。
界面重合法としては、発色剤、沸点が100℃以上の溶媒、及び、カプセル壁材(例えば、ポリイソシアネートと、ポリオール及びポリアミンからなる群から選択される少なくとも1種とを含む原料。なお、ポリイソシアネートと水を反応させてポリアミンを系中で製造する場合、ポリオール及びポリアミンは使用しなくてもよい。)とを含む油相を、乳化剤を含む水相に分散して乳化液を調製する工程(乳化工程)と、カプセル壁材を油相と水相との界面で重合させてカプセル壁を形成し、発色剤を内包するマイクロカプセルを形成する工程(カプセル化工程)と、を含む界面重合法が好ましい。
なお、上記原料中における、ポリオール及びポリアミンの合計量と、ポリイソシアネートの量との質量比(ポリオール及びポリアミンの合計量/ポリイソシアネートの量)は特に制限されないが、0.1/99.9~30/70が好ましく、1/99~25/75がより好ましい。
【0043】
また、上記乳化工程で使用される乳化剤の種類は特に制限されず、例えば、分散剤、及び、界面活性剤が挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0044】
第1層は、上述したマイクロカプセル以外にも他の成分(例えば、バインダー、界面活性剤)を含んでいてもよい。
【0045】
また、第1層の単位面積当たりの質量(g/m2)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~30g/m2が好ましい。
【0046】
<第1層の形成方法>
上記第1層の形成方法は、特に制限されない。
例えば、マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を第1支持体上に塗布して、得られた塗膜に対して所定温度以上の加熱処理を施す方法が挙げられる。所定温度以上の加熱処理を施すことにより、マイクロカプセル中の溶媒が揮発して、第1支持体上に供給されたマイクロカプセルのうちの少なくとも一部において窪みが生じて、特定マイクロカプセルを含む第1層が形成される。
なお、上記以外にも、特定マイクロカプセルを別途作製して、特定マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を第1支持体上に塗布する方法も挙げられる。
以下では、所定温度以上で加熱する態様について詳述する。
【0047】
第1層形成用組成物には、少なくともマイクロカプセルと溶媒とが含まれることが好ましい。なお、上述した界面重合法によって得られるマイクロカプセル分散液を、第1層形成用組成物として用いてもよい。
第1層形成用組成物には、上述した第1層に含まれていてもよい他の成分が含まれていてもよい。
【0048】
第1層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、塗布の際に用いられる塗工機としては、例えば、エアーナイフコーター、ロッドコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エクストルージョンコーター、ダイコーター、スライドビードコーター、及び、ブレードコーターが挙げられる。
【0049】
第1層形成用組成物を第1支持体上に塗布後、得られた塗膜に対して、所定温度以上の加熱処理を施す。
加熱処理の温度条件としては、使用されるマイクロカプセルのカプセル壁の材料に応じて最適な温度が選択されるが、本発明の効果がより優れる点で、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、180℃以下の場合が多く、発色濃度がより優れる点で、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
加熱時間は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点及び生産性の点から、1.0~20分間が好ましく、3.0~10分間がより好ましい。
【0050】
上記方法により得られた第1層においては、上述したように、特定マイクロカプセルの窪みが、支持体側とは反対側に位置しやすい。
つまり、本発明の圧力測定用シートセットの製造方法は、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して、得られた塗膜に対して60℃以上の加熱処理を施し、第1層を形成する工程を有することが好ましい。なお、上記工程にて第1層を含む第1シートを作製し、得られた第1シートと、後述する手順によって作製される第2シートとを組み合わせて、圧力測定用シートセットを作製することが好ましい。
【0051】
なお、上記では第1支持体上に第1層を形成する方法について述べたが、上記態様に制限されず、例えば、仮支持体上に第1層を形成した後、仮支持体を剥離して、第1層からなる第1シートを形成してもよい。
仮支持体としては、剥離性の支持体であれば特に制限されない。
【0052】
<他の部材>
第1シートは上述した第1支持体及び第1層以外の他の部材を有していてもよい。
例えば、第1シートは、第1支持体と第1層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層の厚みは特に制限されず、0.005~0.2μmが好ましく、0.01~0.1μmがより好ましい。
【0053】
第1シートの算術平均粗さRaは特に制限されず、0.1μm以上の場合が多く、本発明の効果がより優れる点、及び、発色濃度がより優れる点で、2.5~7.0μmであるのが好ましい。なお、第1シートの算術平均粗さRaは、圧力測定用シートセットを使用する際に、第1シートの第2シートと対向する側(接触する側)の表面の算術平均粗さRaを意図する。第1シート中の第2シートと対向する側の最表面に第1層が位置する場合、上記算術平均粗さRaは、第1層の第1支持体側とは反対側の表面の算術平均粗さRaに該当する。
なお、本明細書における算術平均粗さRa(第1シートの算術平均粗さRa、及び、後述する第2シートの算術平均粗さRa)は、JIS B 0681-6:2014で規定される算術平均粗さRaを意味する。なお、測定装置としては、光干渉方式を用いた走査型白色干渉計(詳細には、Zygo社製のNewView5020;対物レンズ×50倍;中間レンズ×0.5倍)を用いる。上記走査型白色干渉計を用いて第1シートの算術平均粗さRaを測定する場合の測定モードはStichモードであり、第2シートの算術平均粗さRaを測定する場合の測定モードはMicroモードである。
【0054】
<<第2シート>>
図1に記載の第2シート22は、第2支持体18と第2支持体18上に配置された顕色剤を含む第2層20とを有する。
以下では、各部材について詳述する。
【0055】
<第2支持体>
第2支持体は、第2層を支持するための部材である。なお、第2層自体で取り扱いが可能な場合には、第2シートは第2支持体を有していなくてもよい。
第2支持体の態様は、上述した第1支持体の態様と同じであるため、説明を省略する。
【0056】
<第2層>
第2層は、顕色剤を含む層である。
顕色剤とは、それ自身では発色機能はないが、発色剤と接触することにより発色剤を発色される性質を有する化合物である。顕色剤としては、電子受容性の化合物が好ましい。
顕色剤としては、無機化合物及び有機化合物が挙げられ、国際公開第2009/008248号の段落0055~0056に記載の無機化合物及び有機化合物が好ましい。発色濃度及び発色後の画質がより優れる点で、酸性白土、活性白土、又は、芳香族カルボン酸の金属塩が好ましい。
【0057】
第2層中における顕色剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第2層全質量に対して、20~95質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましい。
顕色剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
第2層中における顕色剤の含有量は特に制限されないが、0.1~30g/m2が好ましい。顕色剤が無機化合物である場合には顕色剤の含有量は、3~20g/m2が好ましく、5~15g/m2がより好ましい。顕色剤が有機化合物である場合には顕色剤の含有量は、0.1~5g/m2が好ましく、0.2~3g/m2がより好ましい。
【0059】
第2層は、上述した顕色剤以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、高分子バインダー、顔料、蛍光増白剤、消泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、及び、防腐剤が挙げられる。
高分子バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、無水マレイン酸-スチレン共重合体、オレフィン樹脂、変性アクリル酸エステル共重合体、デンプン、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース又はその塩、及び、メチルセルロース等の合成高分子及び天然高分子が挙げられる。
顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、及び、二酸化チタン等が挙げられる。
【0060】
第2層の厚みは特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1~50μmが好ましく、2~30μmがより好ましい。
また、第2層の単位面積当たりの質量(g/m2)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.5~30g/m2が好ましい。
【0061】
<第2層の形成方法>
上記第2層の形成方法は、特に制限されない。
例えば、顕色剤を含む第2層形成用組成物を第2支持体上に塗布して、必要に応じて、得られた塗膜に乾燥処理を施す方法が挙げられる。
第2層形成用組成物は、顕色剤を水等に分散した分散液でもよい。顕色剤を分散した分散液は、顕色剤が無機化合物である場合は無機化合物を機械的に水に分散処理させることにより調製できる。また、顕色剤が有機化合物である場合は、有機化合物を機械的に水に分散処理するか、又は、有機溶媒に溶解することにより調製できる。
第2層形成用組成物には、上述した第2層に含まれていてもよい他の成分が含まれていてもよい。
【0062】
第2層形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、上述した第1層形成用組成物を塗布する際に用いる塗工機を用いる方法が挙げられる。
【0063】
第2層形成用組成物を第2支持体上に塗布後、必要に応じて、塗膜に対して乾燥処理を施してもよい。乾燥処理としては、加熱処理が挙げられる。
【0064】
なお、上記では第2支持体上に第2層を形成する方法について述べたが、上記態様に制限されず、例えば、仮支持体上に第2層を形成した後、仮支持体を剥離して、第2層からなる第2シートを形成してもよい。
仮支持体としては、剥離性の支持体であれば特に制限されない。
【0065】
<他の部材>
第2シートは上述した第2支持体及び第2層以外の他の部材を有していてもよい。
例えば、第2シートは、第2支持体と第2層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層の態様は、上述した第1シートが有していてもよい易接着層の態様が挙げられる。
【0066】
上述したように、第1シートと第2シートとは、第1シートの第1層と第2シートの第2層とが対向するように、第1シートと第2シートとを積層させて積層体を得て、その積層体に対して加圧することにより使用される。
【0067】
第2シートの算術平均粗さRaは、本発明の効果がより優れる点、及び、発色濃度がより優れる点で、1.2μm以下であるのが好ましい。なお、第2シートの算術平均粗さRaは、圧力測定用シートセットを使用する際に、第2シートの第1シートと対向する側(接触する側)の表面の算術平均粗さRaを意図する。第2シート中の第1シートと対向する側の最表面に第2層が位置する場合、上記算術平均粗さRaは、第2層の第2支持体側とは反対側の表面の算術平均粗さRaに該当する。
【0068】
〔第2実施形態〕
図6は、圧力測定用シートの一実施形態の断面図である。
圧力測定用シート30は、支持体32と、顕色剤を含む第2層20と、マイクロカプセルを含む第1層14とをこの順で備える。第1層は、上述したように、特定マイクロカプセルを含む。
圧力測定用シート30を使用する際には、支持体32側及び第1層14側の少なくとも一方側から加圧することにより、加圧された領域においてマイクロカプセルが壊れて、マイクロカプセルに内包されている発色剤がマイクロカプセルから出てきて、第2層20中の顕色剤との間で発色反応が進行する。結果として、加圧した領域において、発色が進行する。
【0069】
なお、後述するように、圧力測定用シート30は第1層14及び第2層20を有していればよく、支持体32を有していてなくてもよい。
更に、
図6においては、支持体32と第2層20とが直接積層しているが、この態様に制限されず、後述するように、支持体32と第2層20との間には他の層(例えば、易接着層)が配置されていてもよい。
また、
図6においては、支持体32と、第2層20と、第1層14とをこの順で有する圧力測定用シート30を開示しているが、この態様に制限されず、支持体32と、第1層14と、第2層20とをこの順で有する圧力測定用シートであってもよい。
【0070】
圧力測定用シート30中における第1層14及び第2層20は、上述した第1実施形態で説明した第1層14及び第2層20と同じ部材であるため、説明を省略する。
以下では、主に、支持体32について詳述する。
【0071】
<<支持体>>
支持体は、第1層及び第2層を支持するための部材である。なお、第1層及び第2層の積層体自体で取り扱いが可能な場合には、圧力測定用シートは支持体を有していなくてもよい。
支持体の好適態様は、上述した第1支持体の好適態様と同じであるため、説明を省略する。
【0072】
<<圧力測定用シートの製造方法>>
圧力測定用シートの製造方法は、特に制限されない。
例えば、顕色剤を含む第2層形成用組成物を支持体上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を施して、支持体上に第2層を形成した後、更に、マイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を第2層上に塗布して、得られた塗膜に対して所定温度の加熱処理を施して第1層を形成する方法が挙げられる。
第1層形成用組成物を用いた第1層の形成方法は、第1実施形態で説明した通りである。また、第2層形成用組成物を用いた第2層の形成方法も、第1実施形態で説明した通りである。
つまり、本発明の圧力測定用シートの製造方法は、上述した圧力測定用シートセットの製造方法と同様に、発色剤を内包するマイクロカプセルを含む第1層形成用組成物を塗布して、得られた塗膜に対して60℃以上の加熱処理を施し、第1層を形成する工程を有することが好ましい。よって、例えば、顕色剤を含む第2層形成用組成物を支持体上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を施して、支持体上に第2層を形成した後、上記工程を実施して、圧力測定用シートを作製してもよい。
【0073】
<<他の部材>>
圧力測定用シートは支持体、第2層及び第1層以外の他の部材を含んでいてもよい。
例えば、圧力測定用シートは、支持体と第2層との間に、両者の密着性を高めるための易接着層を有していてもよい。
易接着層の態様は、上述した第1シートが有していてもよい易接着層の態様が挙げられる。
【0074】
上述したように、圧力測定用シートは、その表面に対して加圧することにより使用される。
【0075】
なお、圧力測定用シートが支持体を含む場合、本発明の効果がより優れる点で、第1層中の特定マイクロカプセルの窪みが、支持体側とは反対側に位置することが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0077】
〔実施例1〕
<発色剤内包マイクロカプセルの調製>
1,2-ジメチル-4-(1-フェニルエチル)ベンゼン、1,3-ジメチル-4-(1-フェニルエチル)ベンゼン、1,4-ジメチル-2-(1-フェニルエチル)ベンゼン、及び1-(エチルフェニル)-1-フェニルエタンの混合物(烟台金正精細化工有限公司製、SRS-101)50部に、発色剤として3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン(保土谷化学工業(株)製、Pink-DCF)3部、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン(保土谷化学工業(株)製、Orange-DCF)4部を溶解し、溶液Aを得た。次に、合成イソパラフィン(出光興産(株)、IPソルベント1620)13部、メチルエチルケトン2.5部に溶解したN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン((株)アデカ、アデカポリエーテルEDP-300)0.3部を、攪拌している溶液Aに加えて溶液Bを得た。更に、酢酸エチル6部に溶解したトリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)、バーノックD-750)2.5部を、攪拌している溶液Bに加えて溶液Cを得た。そして、水140部にポリビニルアルコール(PVA-217E、(株)クラレ)7部を溶解した溶液中に上記の溶液Cを加えて、乳化分散した。乳化分散後の乳化液に水200部を加え、攪拌しながら70℃まで加温し、1時間攪拌後、冷却した。更に、水を加えて濃度を調整し、固形分濃度20%の発色剤内包マイクロカプセル液を得た。
得られた発色剤内包マイクロカプセルの平均粒径は、20μmであった。平均粒径は、光学顕微鏡により上述した方法で測定した。
【0078】
[圧力測定用シートセットの作製]
(第1シートの作製)
得られた発色剤内包マイクロカプセル液18部、水10部、コロイダルシリカ(日産化学工業、スノーテックス30、固形分含有量30%)1.8部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、セロゲン5A)の1%水溶液2部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、セロゲンEP)の1%水溶液4.5部、側鎖アルキルベンゼンスルホン酸アミン塩(第一工業製薬、ネオゲンT)の15%水溶液1部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエ-テル(第一工業製薬、ノイゲンLP-70)の1%水溶液0.2部、ナトリウム-ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル)-2-スルフイナトオキシスクシナート(富士フイルム、W-AHE)の1%水溶液0.2部を混合し、第1層形成用塗布液を得た。
【0079】
得られた第1層形成用組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートの上に、乾燥後の質量が6.0g/m
2となるように、バーコーターにより塗布した。次いで、得られた塗膜を80℃で5分間加熱して第1層を形成し、第1シートを作製した。
なお、
図7は、第1層を走査型電子顕微鏡で観察した拡大写真であり、
図7に示すように、第1層中のマイクロカプセルは窪みを有していた。
【0080】
(第2シートの作製)
顕色剤である活性白土(水澤化学、シルトンF-242)100部、ヘキサメタリン酸Na(日本化学工業、ヘキサメタリン酸ソーダ)0.5部、10%水酸化ナトリウム水溶液15部、及び水240部を加え、得られた分散液に対し、オレフィン樹脂(荒川化学工業、ポリマロン482、固形分濃度25質量%)30部、変性アクリル酸エステル共重合体(日本ゼオン、ニッポールLX814、固形分濃度46質量%)35部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、セロゲンEP)の1%水溶液80部、アルキルベンゼンスルホン酸Na(第一工業製薬、ネオゲンT)の15%水溶液18部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル(第一工業製薬、ノイゲンLP-70)の1%水溶液20部、ナトリウム-ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル)-2-スルフイナトオキシスクシナート(富士フイルム、W-AHE)の1%水溶液20部を混合し、顕色剤を含む第2層形成用組成物を調製した。
顕色剤を含む第2層形成用組成物を、厚さ75μmのPETシートの上に、固形分塗布量が7.0g/m2になるように塗布した。次いで、得られた塗膜を乾燥させて第2層を形成し、第2シートを得た。
【0081】
〔実施例2~9、比較例1〕
マイクロカプセルの数平均壁厚、δ/Dm、第1層を形成する際の加熱温度、及び、第1層の乾燥後の質量を後述する表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、第1シート及び第2シートを作製した。
なお、マイクロカプセルの数平均壁厚は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン((株)アデカ、アデカポリエーテルEDP-300)とトリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパン付加物(DIC(株)、バーノックD-750)の使用量を調整して、変更した。
なお、比較例1においては、特定マイクロカプセルは観察されなかった。
【0082】
[測定及び評価]
〔耐擦過性〕
15cm×25cmの平滑なガラス板上に、10cm×20cmに裁断した第2シートを、第2面を上にして(PETシートがガラス板に接触するようにして)固定した。その上に、5cm×5cmに裁断した第1シートを、第1層面を下にして(第1層面と第2層が接するようにして)重ねた。第1シート上から0.001MPaの荷重をかけながら、第1シートを3m/分の速度で5cm水平に5往復移動させた。その後、重ね合わせた両シートを剥離し、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて、第2シートに形成された発色部の濃度(DA)を支持体(PETシート)面側から測定した。
また、これとは別に、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて、未使用の第2シートの初期濃度(DB)を支持体(PETシート)面側から測定した。
そして、濃度DAから初期濃度DBを減算し、発色濃度ΔD1を求め、下記の評価基準に従って評価した。なお、「B」が実使用上許容できる範囲である。
「A」:ΔD1が、0.00である(擦れによる発色は認めらなかった)。
「B」:ΔD1が、0.00超0.01以下である(擦れによる発色が僅かに認められた)。
「C」:ΔD1が、0.01超である(擦れによる発色が明確に認められた)。
【0083】
〔発色濃度評価〕
各実施例及び比較例にて作製した第1シートと第2シートとを使用し、圧力測定用シートセットの評価を実施した。具体的には、第1シートと、5cm×5cmのサイズに裁断した第2シートとを、第1シートの第1層の表面と第2シートの第2層の表面とを接触させて重ね合わせて積層体を得た。次に、加圧プレス機(DSF-C1-A、アイダエンジニアリング(株)製)によって1.0MPaの圧力で積層体を加圧し、発色させた。その後、積層体を構成する第1シートと第2シートを剥離し、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて、第2シートに形成された発色部の濃度(DA)を支持体(PETシート)面側から測定した。
また、これとは別に、濃度計RD-19(グレタグマクベス社製)を用いて、未使用の第2シートの初期濃度(DB)を支持体(PETシート)面側から測定した。
そして、濃度DAから初期濃度DBを減算し、発色濃度ΔD2を求め、下記の評価基準に従って評価した。なお、「B」が実使用上許容できる範囲である。
「A」:ΔD2が、0.7以上である(発色が明確に認められた)。
「B」:ΔD2が、0.2以上0.7未満である(発色が微かに認められた)。
「C」:ΔD2が、0.2未満である(発色がほとんど認められなかった)。
【0084】
マイクロカプセルの数平均壁厚(μm)、マイクロカプセルの平均粒径(μm)、及び、マイクロカプセルのカプセル壁のガラス転移温度の測定方法は、上述した通りである。
第1シートの算術平均粗さRa(第1層のPETシート側とは反対側の表面の算術平均粗さRaに該当)及び第2シートの算術平均粗さRa(第2層のPETシート側とは反対側の表面の算術平均粗さRaに該当)の測定方法も、上述した通りである。
【0085】
また、特定マイクロカプセルの比(距離H/最大長さL)の平均値の測定方法も上述した通りであり、以下の評価基準に従って、評価した。
【0086】
なお、実施例1~9において、第1層中には窪みを有するマイクロカプセルが観察され、窪みを有するマイクロカプセルの窪みは支持体側とは反対側に位置していた。
【0087】
表1中、「カプセル壁厚[μm]」は、マイクロカプセルの数平均壁厚(μm)を表す。
表1中、「平均粒径[μm]」は、マイクロカプセルの平均粒径(μm)を表す。
表1中、「δ/Dm」中は、δはマイクロカプセルの数平均壁厚(μm)を表し、Dmは、マイクロカプセルの平均粒径(μm)を表す。
表1中、「加熱温度(℃)」は、第1層を形成する際の加熱温度を表す。
表1中、「乾燥後の質量(g/m2)」は、第1層の乾燥後の質量(g/m2)を表す。
表1中、「H/L」は、特定マイクロカプセルの窪みの深さ方向(窪み方向)と直交する方向における特定マイクロカプセルの最大長さLに対する、特定マイクロカプセルの窪みの底部から窪みと対向するカプセル壁の外面までの距離Hの比を表す。
表1中、「W/L」は、上記最大長さLに対する、特定マイクロカプセルの窪みの開口部の最大幅Wの比を表す。
表1中、「D/H」は、上記距離Hに対する、特定マイクロカプセルの窪みの開口部から窪みの底部までの深さD(窪みの深さ)の比を表す。
表1中、「特定マイクロカプセルの割合(%)」は、マイクロカプセル全数に対する、特定マイクロカプセルの割合(%)を表す。測定方法は、上述した通りである。
【0088】
【0089】
表1に示すように、本発明の圧力測定用シートセットを用いた場合、所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、実施例1、4~6の比較より、第1シートの算術平均粗さRaが2.5~7.0μmの場合、擦れによる発色がより抑制され、かつ、発色濃度もより優れていた。
実施例1~3、7~9の比較より、比(H/L)の平均値が0.5~0.9である場合、擦れによる発色がより抑制され、かつ、発色濃度もより優れていた。また、実施例1~3、8、9の比較より、式(1)(0.100>δ/Dm>0.001)の関係を満たすことにより、擦れによる発色がより抑制され、かつ、発色濃度もより優れていた。
実施例1~3、8、9の比較より、マイクロカプセルの数平均壁厚が0.02μm超2μm未満であることにより、擦れによる発色がより抑制され、かつ、発色濃度もより優れていた。
【0090】
なお、上記では第1シート及び第2シートを有する圧力測定用シートセットを用いた態様について示したが、支持体上に第2層及び第1層をこの順で積層させた圧力測定用シートを作製して、上記と同様の試験を行ったところ、各実施例と同様の結果が得られた。
具体的には、ポリエチレンテレフタレートシートの上に、上記実施例1で作製した第2層及び第1層をこの順に配置して、支持体、第2層及び第1層をこの順で有する圧力測定用シートを作製して、上記評価(耐擦過性評価、発色濃度評価)を実施したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
なお、圧力測定用シートを用いて耐擦過性評価を実施する場合、圧力測定用シート上から0.001MPaの荷重をかけながら、圧力測定用シートを3m/分の速度で5cm水平に移動させて、評価を行った。
【符号の説明】
【0091】
10 圧力測定用シートセット
12 第1支持体
14 第1層
16 第1シート
18 第2支持体
20 第2層
22 第2シート
24 特定マイクロカプセル
26 窪み
28 カプセル壁
30 圧力測定用シート
32 支持体