(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】硬化性有機ケイ素樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220706BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220706BHJP
C08K 5/1539 20060101ALI20220706BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220706BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220706BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220706BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20220706BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/1539
C08K3/00
H01L23/30 F
H01L33/56
(21)【出願番号】P 2019045767
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】水梨 友之
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-327777(JP,A)
【文献】特開2012-251087(JP,A)
【文献】特開2006-335854(JP,A)
【文献】特開2011-137103(JP,A)
【文献】特開2017-088644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 5/1539
C08K 3/00
H01L 23/29
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する、アルケニル基含有有機ケイ素化合物
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対して(B)成分中のSiH基が0.1~4モルとなる量
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)少なくとも1の酸無水物基が置換又は非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素の炭素環に結合して環を形成している芳香族環状酸無水物、少なくとも1の酸無水物基が炭素数3~10の置換又は非置換の脂環式炭化水素の炭素環に結合して環を形成している脂環式環状酸無水物、または、前記芳香族環状酸無水物又は脂環式環状酸無水物の構造を有する一価の基を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物から選ばれる、酸無水物化合物:(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部
を含
み、
前記(A)成分が、(A1)SiO
4/2
単位、もしくはR
1
SiO
3/2
単位のいずれか、もしくは両方を含むオルガノポリシロキサン(式中、R
1
は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基)であり、該(A1)成分は、SiO
4/2
単位0~60mol%、R
1
SiO
3/2
単位0~90mol%、(R
1
)
2
SiO
2/2
単位0~50mol%、及び(R
1
)
3
SiO
1/2
単位10~50mol%からなり、全シロキサン単位の合計モルに対してSiO
4/2
単位とR
1
SiO
3/2
単位の和が50mol%以上であり、前記(A1)成分は、重量平均分子量1,000~5,000を有し、ケイ素原子に結合した水酸基を0.001~1.0mol/100gで有し、及び、ケイ素原子に結合した炭素数1~10のアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であるオルガノポリシロキサンである、硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)成分において、芳香族環状酸無水物が下記式(1)で表される、請求項1
に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
2は水素原子、炭素数1~4のアルコキシシリル基、又はカルボキシ基を有する炭素数1~4の有機基である)
【請求項3】
前記(D)成分において、脂環式環状酸無水物が下記式(2)、(3)又は(4)で表される、請求項1
に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【化2】
(式中、R
2は、水素原子、炭素数1~4のアルコキシシリル基、又はカルボキシ基を有する炭素数1~4の有機基であり、xは0~5の整数であり、x1及びx2は、互いに独立に0~6の整数であり、かつ0≦x1+x2≦6であり、Aはメチレン基または酸素原子である)
【請求項4】
前記(D)成分が、下記式(a)で表される芳香族環状酸無水物構造を有する一価の基、及び、下記式(b)又は(c)で表される脂環式環状酸無水物構造を有する一価の基のうち少なくとも1を有する有機ケイ素化合物である、請求項1
に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【化3】
(式中、xは0~5の整数であり、Aはメチレン基または酸素原子であり、各式において*で示される部分は有機ケイ素化合物のケイ素原子との結合手である)。
【請求項5】
さらに(E)下記式(5)で表される環状シロキサン
【化4】
(上記式中、R
3は互いに独立に、水素原子、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であり、nは1もしくは2である)
を前記(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.1~30質量部で含み、組成物中の全アルケニル基の合計個数に対する組成物中の全ヒドロシリル基の合計個数の比が0.1~4である、請求項1~
4のいずれか1項記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分として更に(A2)炭素数6~10のケイ素原子結合アリール基を1分子中に1個以上有し、炭素数2~10のアルケニル基を1分子中に2個以上有し、及び、JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定される25℃での粘度10~100,000mPa・sを有する、直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンを、前記(A1)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~100質量部で含有し、組成物中の全アルケニル基の合計個数に対する組成物中の全ヒドロシリル基の合計個数の比が0.1~4である、請求項
1~5のいずれか1項に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【請求項7】
少なくとも1の無機白色顔料をさらに含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物を硬化して成る硬化物と半導体素子とを備える半導体装置。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性有機ケイ素樹脂組成物を硬化して成る硬化物と半導体素子とを備える半導体装置であって、前記硬化物が、波長450nmにおける厚さ1mmでの直達光透過率が70%以上を有する、半導体装置。
【請求項10】
前記半導体素子が発光素子である、請求項
8または
9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性有機ケイ素樹脂組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED用封止材には、耐熱性、耐光性、作業性、接着性、ガスバリア性、及び硬化特性に優れた材料が求められており、従来はエポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が多用されてきた。しかしながら、近年のLED発光装置の高出力化に伴い、長期にわたる高温環境下では、これらの熱可塑性樹脂を使用した場合に耐熱性、耐変色性の問題が発生することが分かってきた。
【0003】
また、最近では光学素子を基板に半田付けする際に、鉛フリー半田が使用されることが多くなっている。この鉛フリー半田は、従来の半田に比べ溶融温度が高く、通常260℃以上の温度をかけて半田付けを行う必要があるが、このような温度で半田付けを行った場合、上記のような従来の熱可塑性樹脂の封止材では変形が起こる、又は高温によって封止材が黄変する等の不具合が発生することも分かってきた。
【0004】
このように、LED発光装置の高出力化や鉛フリー半田の使用に伴い、封止材にはこれまで以上に優れた耐熱性が求められている。これまでに、耐熱性向上を目的として熱可塑性樹脂にナノシリカを充填した光学用樹脂組成物等が提案されてきたが(特許文献1及び2)、熱可塑性樹脂では耐熱性に限界があり、十分な耐熱性が得られなかった。
【0005】
熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂は、耐熱性、耐光性、及び光透過性に優れることから、LED用封止材として検討されてきた(特許文献3~5)。しかしながら、このシリコーン樹脂はエポキシ樹脂等と比較すると、LEDリフレクタ―材料など他基材との接着強度が弱いという欠点があった。他基材との接着を向上させるために酸無水物骨格を有するシランを接着助剤として用いた例も報告されているが、耐熱性が悪化するという問題がある(特許文献6及び7)。
【0006】
また、例えばシリケート系蛍光体を含有するシリコーン樹脂をLED用封止材として使用すると、水蒸気がガスバリア性の低いシリコーン樹脂の封止材中に侵入し、蛍光体表面で水が反応して蛍光体が分解し、蛍光特性が著しく低下してしまうという問題もある。このように、従来のシリコーン樹脂をLED用封止材に用いると、電極の硫化等による輝度低下の問題に加えて、高湿下でのLEDの長期信頼性が低下してしまうという問題もあり、シリコーン樹脂のガスバリア性改善の要求が高まっている。
【0007】
この対策として、フェニル基等の芳香族系置換基の導入による高屈折率化及びガスバリア性の向上が検討されているが(特許文献8、9)、芳香族系置換基を導入すると、耐熱性が悪化するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-214554号公報
【文献】特開2013-204029号公報
【文献】特開2006-213789号公報
【文献】特開2007-131694号公報
【文献】特開2011-252175号公報
【文献】特開2011-137103号公報
【文献】再公表WO2015-056725号公報
【文献】特開2014-88513号公報
【文献】再公表WO2013-005859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって耐熱性が高く、接着性、ガスバリア性に優れた付加硬化型オルガノポリシロキサン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物に、少なくとも1の酸無水物基(-CO-O-CO-)が芳香族炭化水素又は脂環式炭化水素の炭素環に結合して環を形成している構造を有する酸無水物化合物または有機ケイ素化合物を所定量添加することによって、耐硫化性、耐熱性、及び接着性に優れた硬化物を提供できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
(A)アルケニル基を1分子中に少なくとも2個有する、アルケニル基含有有機ケイ素化合物
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対して(B)成分中のSiH基が0.1~4モルとなる量
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)少なくとも1の酸無水物基が置換又は非置換の炭素数6~12の芳香族炭化水素の炭素環に結合して環を形成している芳香族環状酸無水物、少なくとも1の酸無水物基が炭素数3~10の置換又は非置換の脂環式炭化水素の炭素環に結合して環を形成している脂環式環状酸無水物、または、前記芳香族環状酸無水物又は脂環式環状酸無水物の構造を有する一価の基を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物から選ばれる、酸無水物化合物:(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部
を含み、
前記(A)成分が、(A1)SiO
4/2
単位、もしくはR
1
SiO
3/2
単位のいずれか、もしくは両方を含むオルガノポリシロキサン(式中、R
1
は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基)であり、該(A1)成分は、SiO
4/2
単位0~60mol%、R
1
SiO
3/2
単位0~90mol%、(R
1
)
2
SiO
2/2
単位0~50mol%、及び(R
1
)
3
SiO
1/2
単位10~50mol%からなり、全シロキサン単位の合計モルに対してSiO
4/2
単位とR
1
SiO
3/2
単位の和が50mol%以上であり、前記(A1)成分は、重量平均分子量1,000~5,000を有し、ケイ素原子に結合した水酸基を0.001~1.0mol/100gで有し、及び、ケイ素原子に結合した炭素数1~10のアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であるオルガノポリシロキサンである、硬化性有機ケイ素樹脂組成物、及び該組成物の硬化物を備える半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、優れた耐硫化性、及び耐熱性を有する硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0014】
[(A)アルケニル基含有有機ケイ素化合物]
(A)成分はアルケニル基含有有機ケイ素化合物であり、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~5個のアルケニル基を有することを特徴とする。該アルケニル基は後述する(B)成分のヒドロシリル基と付加反応して架橋構造を形成する。該(A)成分は(A1)分岐鎖状又はレジン状のオルガノポリシロキサン及び/または(A2)直鎖状オルガノポリシロキサンであるのがよい。本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、好ましくは(A1)分岐鎖状またはレジン状のオルガノポリシロキサンを必須とする。
【0015】
(A1)分岐鎖状又はレジン状オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量(Mw)1,000~5,000を有することが好ましく、より好ましくは重量平均分子量(Mw)1,100~3,000である。重量平均分子量(Mw)が1,000以上であれば組成物が脆くなる恐れがなく、5,000以下であれば組成物の粘度が高くなり流動しなくなる恐れがないため好ましい。
【0016】
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolomn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0017】
(A1)成分に含まれる、ケイ素原子結合アルケニル基の量は、通常0.01~0.5mol/100gであり、好ましくは0.05~0.3mol/100gであり、より好ましくは0.10~0.25mol/100gである。ケイ素原子に結合したアルケニル基の量が上記下限値以上であれば、該組成物は硬化するのに十分な架橋点を有し、上記上限値未満であれば、架橋密度が上がり過ぎて靱性を失ってしまう恐れがないため好ましい。
【0018】
(A1)成分に含まれるケイ素原子に結合した水酸基の量は、通常0.001~1.0mol/100gであり、好ましくは0.005~0.8mol/100gであり、より好ましくは0.008~0.6mol/100gである。ケイ素原子に結合した水酸基の量が上記下限値以上であれば、組成物が硬化するのに十分な架橋点を有し、上記上限値以下であれば架橋密度が上がり過ぎて靱性を失ってしまう恐れがないため好ましい。
【0019】
(A1)成分は炭素数1~10、好ましくは1~5の、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有してもよい。該ケイ素原子結合アルコキシ基の量は1.0mol/100g以下であり、好ましくは0.8mol/100g以下であり、より好ましくは0.5mol/100g以下である。アルコキシ基の量が前記上限値以下であれば、硬化時に副生成物のアルコールガスが発生しづらく、硬化物にボイドが残る恐れもないため好ましい。なお、本発明におけるケイ素原子に結合した水酸基量、アルコキシ基量は1H-NMR及び29Si-NMRによって測定された値を指すこととする。
【0020】
(A1)成分は、より詳細には、0~60mol%、好ましくは0~50mol%のSiO4/2単位(Q単位)、0~90mol%、好ましくは30~80mol%のR1SiO3/2単位(T単位)、0~50mol%、好ましくは0~20mol%の(R1)2SiO2/2単位(D単位)、及び0~50mol%、好ましくは10~30mol%の(R1)3SiO1/2単位(M単位)からなる分岐鎖状又はレジン構造のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。さらには、SiO4/2単位とR1SiO3/2単位の和が50mol%以上であることが好ましい。上記式中、R1は互いに独立に、炭素数1~10、好ましくは炭素数2~5の、置換または非置換のアルキル基、または炭素数6~10、好ましくは炭素数6~8のアリール基である。前記(A)成分のR1SiO3/2単位(T単位)に結合した置換基R1のうち、少なくとも1つはフェニル基であり、(R1)3SiO1/2単位(M単位)に結合した置換基R1の少なくとも1つが炭素数2~10のアルケニル基であることが好ましい。
【0021】
M単位、D単位、及びT単位中のR1は、互いに独立に、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10の置換または非置換の1価アルキル基、または炭素数6~10のアリール基である。詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子やシアノ基等で置換した基、例えばクロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0022】
SiO4/2単位(Q単位)を得るための原料化合物としては、例えば、ケイ酸ソーダ、テトラアルコキシシラン、またはその縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【0023】
R
1SiO
3/2単位(T単位)を得るための原料化合物としては、例えば、下記構造式で表されるオルガノトリクロロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物、又はこれらの縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化1】
(上記式中、Meはメチル基を示す)
【0024】
R
1
2SiO
2/2単位(D単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるジオルガノジクロロシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化2】
(上記式中、Meはメチル基を示し、nは5~80の整数、mは5~80の整数であり、ただしn+m≦78である)
【化3】
(上記式中、Meはメチル基を示す)
【0025】
R
1
3SiO
1/2単位(M単位)を得るための原料化合物としては、例えば、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化4】
(上記式中、Meはメチル基を示す)
【0026】
(A2)直鎖状オルガノポリシロキサン
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、上記(A)成分として、(A2)直鎖状オルガノポリシロキサンを含んでいてもよい。好ましくは、上記(A1)分岐状又はレジン状オルガノポリシロキサンと併せて含有するのがよい。(A2)成分は、炭素数6~10のケイ素原子結合アリール基を1分子中に1個以上有し、及び炭素数2~10のアルケニル基を1分子中に2個以上有する、直鎖状のオルガノポリシロキサンである。該オルガノポリシロキサンは、JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した25℃での粘度10~100,000mPa・sを有するのが好ましい。本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は(F)成分をさらに含有することにより、粘度及び硬化物の硬度を用途に合わせて最適化することができる。該直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐を有していてもよい。
【0027】
炭素数6~10、好ましくは6~8のアリール基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。中でも、フェニル基が好ましい。前記アリール基は、1分子中に1個以上有することが好ましく、2~100個がより好ましい。
【0028】
炭素数2~10、好ましくは炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、及びオクテニル基等が挙げられ、中でもビニル基が好ましい。(A2)成分は前記アルケニル基を1分子中に2個以上有することが好ましく、2~5個がより好ましい。該オルガノポリシロキサンはJIS K 7117-1:1999に準拠する方法で測定した25℃での粘度10~100,000mPa・sを有することが好ましく、より好ましくは100~50,000mPa・s、さらに好ましくは1,000~30,000mPa・sを有するのがよい。粘度が上記下限値以上であれば、組成物が脆くなる恐れがなく、上記下限値以下であれば作業性が悪くなる恐れがないため好ましい。
【0029】
(A2)オルガノポリシロキサンとしては、例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
(式中、x、y、zはそれぞれ0以上の整数であり、かつx+y≧1を満たす数である)
【化9】
(上記式において、s、t、u、pはそれぞれ0以上の整数であり、かつs+t+u+p≧1を満たす数である)
【0030】
硬化性有機ケイ素樹脂組成物において(A2)オルガノポリシロキサン含有量は、上記(A1)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、0.1~100質量部がより好ましい。さらに、前記(A2)成分が、アルケニル基及び/またはヒドロシリル基を有する場合は、本発明の組成物におけるアルケニル基の合計個数に対する、組成物中のヒドロシリル基の合計個数の比が0.1~4、好ましくは0.5~2.0となる量であることが好ましい。
【0031】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2個~5個含有するのがよい。該(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用し、上記、(A)成分のアルケニル基と反応して架橋構造を形成する。本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物において該(B)成分の配合量は、上記(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、該(B)成分中のSiH基のモル比が0.1~4、好ましくは0.5~2.0、さらに好ましくは0.7~1.5となる量である。
【0032】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(6)で示される。
R4
aHbSiO(4-h-i)/2 …(6)
(式(6)中、R4は互いに独立に、非置換もしくは置換の炭素原子数1~10の1価炭化水素基であり、aおよびbは、好ましくは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0かつ0.8≦a+b≦3.0を満たす数であり、より好ましくは1.0≦a≦2.0、0.01≦b≦1.0、かつ1.5≦a+b≦2.5を満たす数である)
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、上述の通りケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に2個以上有し、且つ、ケイ素結合アリール基を1分子中に1個以上有するのが好ましい。
【0033】
R4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基等の飽和脂肪族炭化水素基であり、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の飽和環式炭化水素基、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基、又は、これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、又は塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。これらの中では、炭素数1~5のメチル基、エチル基、及びプロピル基等の飽和炭化水素基、並びにフェニル基が好ましい。
【0034】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、及び三次元網目状(レジン状)等の、いずれの分子構造でもよく、ヒドロシリル基の結合箇所も特に制限されるものでない。例えば、線状構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの場合、ヒドロシリル基は、分子鎖末端および分子鎖側鎖のどちらか一方又はその両方に結合していてもよい。また、1分子中のケイ素原子の数(または重合度)は、通常、2~200個、好ましくは3~100個程度であり、室温(25℃)において液状又は固体状であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればよい。
【0035】
上記平均組成式(6)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、及び(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0036】
また、下記構造で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【化10】
【化11】
【化12】
(p、q、rは正の整数である)
【0037】
(B)成分の添加量は、有機ケイ素樹脂組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、(B)成分中のヒドロシリル基の量が0.1~4.0モル、好ましくは0.5~3.0モル、より好ましくは0.8~2.0モルとなる量である。(B)成分の添加量が、(B)成分中のヒドロシリル基の量が0.1モルより少なくなる量であると、本発明の組成物の硬化反応が進行せず、シリコーン硬化物を得ることが困難である。また得られる硬化物も架橋密度が低くなりすぎ、機械強度が不足し、耐熱性が悪影響を受ける。一方、添加量が上記ヒドロシリル基の量が4.0モルより多くなる量であると、未反応のヒドロシリル基が硬化物中に多数残存するために、物性の経時変化の発現や硬化物の耐熱性の低下などを引き起こす。更に、硬化物中に脱水素反応による発泡が生じる原因となる。
【0038】
[(C)白金族金属系触媒]
(C)成分の白金族金属系触媒は、本発明の組成物の付加硬化反応を生じさせるため配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがある。該触媒としてはヒドロシリル化反応を促進するものとして従来公知であるいずれのものも使用することができる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H2PtCl6・pH2O,K2PtCl6,KHPtCl6・pH2O,K2PtCl4,K2PtCl4・pH2O,PtO2・pH2O,PtCl4・pH2O,PtCl2,H2PtCl4・pH2O(ここで、pは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができる。これらの触媒は1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0039】
硬化性有機ケイ素樹脂組成物において(C)白金族金属系触媒の配合量は、触媒量(いわゆる、硬化を促進させる有効量)でよい。通常、前記(A)成分及び(B)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1~500ppm、特に好ましくは0.5~100ppmの範囲である。
【0040】
[(D)環状酸無水物化合物]
(D)成分は、少なくとも1の酸無水物基(-CO-O-CO-)が炭素数6~12の芳香族炭化水素の炭素環に結合して環を形成している構造を有する芳香族環状酸無水物、少なくとも1の酸無水物基(-CO-O-CO-)が炭素数3~10の脂環式炭化水素の炭素環に結合して環を形成している構造を有する脂環式環状酸無水物、または、少なくとも1の酸無水物基(-CO-O-CO-)が炭素数6~12の芳香族炭化水素又は炭素数3~10の脂環式炭化水素の炭素環に結合して環を形成している構造を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物から選ばれる、酸無水物化合物である。すなわち、炭素数3~12、好ましくは5~8の環状炭化水素基(芳香族炭化水素又は脂環式炭化水素)に、少なくとも1個、好ましくは1個または2個の酸無水物(-CO-O-CO-)が結合して環を形成している構造を有する環状酸無水物化合物である。本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、該(D)酸無水物化合物を含有することにより、シリコーン組成物の高い耐熱性を維持したまま、優れた耐硫化性及び接着性を硬化物に付与することができる。
【0041】
少なくとも1の酸無水物基(-CO-O-CO-)が炭素数6~12の、好ましくは炭素数6~10の芳香族炭化水素の炭素環に結合して環を形成している構造を有する芳香族環状酸無水物は、芳香族ジ又はテトラカルボン酸の酸無水物であり、例えば下記式で表すことができる。
【化13】
(式中、R
2は水素原子、炭素数1~4のアルコキシシリル基、又はカルボキシ基を有する炭素数1~4の有機基である)
【0042】
少なくとも1の酸無水物基(-CO-O-CO-)が炭素数3~10の、好ましくは炭素数4~8の脂環式炭化水素の炭素環に結合して環を形成している構造を有する脂環式環状酸無水物は、脂環式ジ又はテトラカルボン酸の酸無水物であり、例えば、下記式(2)、(3)又は(4)で表すことができる。
【化14】
(式中、R
2は、水素原子、炭素数1~4のアルコキシシリル基、又はカルボキシ基を有する炭素数1~4の有機基であり、xは0~5の整数であり、x1及びx2は、互いに独立に0~6の整数であり、かつ0≦x1+x2≦6であり、Aはメチレン基または酸素原子である)
【0043】
上記R2において、炭素数1~4のアルコキシシリル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、又はt-ブトキシ基等を有するシリル基が挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、又はイソプロポキシ基を有するシリル基が好ましい。カルボキシ基を有する炭素数1~4の有機基としては、カルボキシ基、メチルカルボキシ基、2-カルボキシエチル基、及び3-カルボキシプロピル基などが挙げられる。中でも、カルボキシ基、又はメチルカルボキシ基が好ましい。また、前記xは0~5の整数であり、好ましくは0~3の整数であり、前記x1及びx2は、互いに独立に、0~6の整数であり、かつ0≦x1+x2≦6である。好ましくは、x1及びx2は、互いに独立に、0~4の整数であり、より好ましくはx1及びx2は0、1または2であり、かつ1≦x1+x2≦3である。Aはメチレン基または酸素原子である。
【0044】
上記環状酸無水物としては、例えば下記に示される化合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【化15】
【0045】
また、前記(D)成分の環状酸無水物は、オルガノポリシロキサンの側鎖及び/または末端に酸無水物基が変性されたようなオルガノポリシロキサンを用いても良い。すなわち、前記芳香族環状酸無水物構造又は脂環式環状酸無水物構造を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物とは、例えば、下記式(a)で表される芳香族環状酸無水物構造、及び下記式(b)又は(c)で表される脂環式環状酸無水物構造のうち少なくとも1を有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンはシロキサン数1~120、好ましくは1~50の直鎖状オルガノポリシロキサンであるのが好ましい。下記(a)~(c)の結合箇所は特に制限されるものでない。
【化16】
(式中、xは0~5の整数であり、Aはメチレン基または酸素原子であり、各式において*で示される部分はシロキサンのケイ素原子との結合手である)。
【0046】
例えば、下記式(6)~(8)で示される環状酸無水物基変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【化17】
【化18】
【化19】
(式中、R
5は互いに独立に、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、Qは単結合、または炭素数1~10のアルキレン基であり、sは1~100の整数、tは0~100の整数である)
【0047】
前記R5の炭素数1~10、好ましくは1~5のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、炭素数2~10、好ましくは2~6のアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられ、炭素数6~10、好ましくは6~8の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。R5としては、中でも水素原子、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましいが、水素原子とビニル基は1分子中に同時に存在しない。sは1~100の整数、好ましくは1~10の整数であり、tは0~100の整数、好ましくは0~20の整数であり、さらに、s+tが1~30の範囲であることが特に好ましい。
【0048】
より詳細には、下記式で表される環状酸無水物基変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【化20】
【化21】
(s、tは前記と同じ)
【0049】
上記(D)環状酸無水物化合物は1種単独であっても、2種以上の併用であっても良い。硬化性有機ケイ素樹脂組成物における(D)成分の量は、前記(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましい。(D)成分の量が上記下限値未満では、硬化物の接着性及び耐硫化性が悪化するため好ましくない。また上記上限値超では、硬化物の耐熱性が悪化するため好ましくない。尚、上記(D)成分のうち有機ケイ素化合物が、アルケニル基及び/またはヒドロシリル基を有する場合は、本発明の組成物におけるアルケニル基の合計個数に対する、組成物中のヒドロシリル基の合計個数の比が0.1~4.0、好ましくは0.5~2.0となる量であることが好ましい。
【0050】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は前記(A)~(D)成分に加えて、下記(E)~(G)成分をさらに含有することができる。
【0051】
[(E)環状ポリシロキサン]
(E)成分は、下記式(4)で示される環状ポリシロキサンである。この環状ポリシロキサンは、本発明の組成物に添加することによって粘度、硬化性及び硬化特性の調整効果を付与するものである。
【化22】
(上記式(4)中、R
3は互いに独立に、水素原子、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基であり、nは1又は2である)
【0052】
R3において、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基などが挙げられる。炭素数2~10、好ましくは2~8のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、及びオクテニル基等が挙げられる。炭素数6~10、好ましくは6~8の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、及びキシリル基等のアリール基、並びにベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられる。R3としては、水素原子、ビニル基、メチル基、及びフェニル基がより好ましいが、水素原子とビニル基は1分子中に同時に存在しない。
【0053】
硬化性有機ケイ素樹脂組成物において該(E)環状ポリシロキサンの含有量は、前記(A)成分100質量部に対し、0.1~30質量部であることが好ましく、0.2~20質量部であることがより好ましい。さらに、前記(E)成分が、アルケニル基及び/またはヒドロシリル基を有する場合は、本発明の組成物中の全アルケニル基の個数に対する、組成物中の全ヒドロシリル基の個数の比が0.1~4.0、好ましくは0.5~2.0となる量比であるのが好ましい。
【0054】
上記式(4)で表される環状オルガノポリシロキサンとしては、例えば下記に示される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化23】
(Meはメチル基を示す)
【0055】
[(G)蛍光体]
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、更に(G)蛍光体を含有してもよい。本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は耐熱耐光性に優れるため、蛍光体を含有する場合であっても、従来のような蛍光特性の著しい低下が起こる恐れがない。蛍光体の配合量としては、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し0~500質量部が好ましく、0.01~300質量部がより好ましい。
【0056】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物には、上記の(A)~(G)成分以外に、必要に応じて、公知の接着付与剤や硬化抑制剤、及び白色顔料などの添加剤をさらに配合することができる。
【0057】
接着付与剤としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、及びそれらのオリゴマー等が挙げられる。なお、これらの接着付与剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
また、接着付与剤の量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0~10質量部であるのがよく、好ましくは0.01~5質量部となる量であるのがよい。
【0058】
硬化抑制剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン変性物及びシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、及びベンゾトリアゾール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物等が挙げられる。前記硬化抑制剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0059】
硬化抑制剤の量は(A)成分及び(B)成分の合計100質量部当り通常0.001~1.0質量部であればよく、好ましくは0.005~0.5質量部であるのがよい。
【0060】
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、及び硫酸バリウムなどの無機白色顔料が挙げられる。これらを、上記の(A)~(E)成分の合計100質量部当たり600質量部以下(例えば0~600質量部、通常、1~600質量部、好ましくは10~400質量部)の量で適宜配合することができる。
【0061】
その他の添加剤としては、例えば、シリカ、グラスファイバー、ヒュームドシリカ等の補強性無機充填材、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、セリウム脂肪酸塩、バリウム脂肪酸塩、セリウムアルコキシド、バリウムアルコキシド等の非補強性無機充填材、二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化鉄(FeO2)、四酸化三鉄(Fe3O4)、酸化鉛(PbO2)、酸化すず(SnO2)、酸化セリウム(Ce2O3、CeO2)、酸化カルシウム(CaO)、四酸化三マンガン(Mn3O4)、酸化バリウム(BaO)などのナノフィラーが挙げられ、これらを、上記の(A)~(E)成分の合計100質量部当たり600質量部以下(例えば0~600質量部、通常、1~600質量部、好ましくは10~400質量部)の量で適宜配合することができる。
【0062】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。硬化条件は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱して硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60~200℃とすることができる。
【0063】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。硬化条件は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱して硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60~200℃とすることができる。
【0064】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物から得られる硬化物は、厚さ1mmにて、波長400~800nm、特には波長450nmにおける直達光透過率70%以上、好ましくは80%以上を有することが好ましい。なお、直達光透過率の測定には、例えば日立製分光光度計U-4100を用いることができる。
【0065】
また、本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物の硬化物は、JIS K 7142:2014 A法によって測定される、589nmにおける23℃での屈折率1.43~1.57を有することが好ましい。
【0066】
上記のような直達光透過率及び屈折率を有する硬化物は透明性に優れるため、LEDの封止材などの光学用途に特に好適に用いることができる。また、本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、機械特性、透明性、耐クラック性、及び耐熱性に優れた硬化物を与えることができる。
【0067】
<半導体装置>
本発明は、さらに、硬化性有機ケイ素樹脂組成物の硬化物で半導体素子が封止された半導体装置を提供する。上述のように、本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は、透明性や耐熱性に優れた硬化物を与えるため、発光半導体装置のレンズ用素材、保護コート剤、モールド剤等に好適であり、特に青色LED、白色LED、紫外LED等のLED素子封止用として有用なものである。また、本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物の硬化物は耐熱性に優れるため、シリケート系蛍光体や量子ドット蛍光体を添加して波長変換フィルム用素材として使用する際にも、高湿下での長期信頼性が確保でき、耐湿性、長期演色性が良好な発光半導体装置を提供することができる。
【0068】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物でLED等の発光半導体素子を封止する場合は、例えば熱可塑性樹脂からなるプレモールドパッケージに搭載されたLED素子上に本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物を塗布し、LED素子上で組成物を硬化させることにより、LED素子を硬化性有機ケイ素樹脂組成物の硬化物で封止することができる。また、組成物をトルエン、キシレン、PGMEA等の有機溶媒に溶解させて調製したワニスの状態で、LED素子上に塗布することができる。
【0069】
本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物の硬化物は、耐熱性、耐紫外線性、透明性、耐クラック性、及び長期信頼性等に優れた特性を有するため、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、及び半導体集積回路周辺材料等の光学用途に最適である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、部は質量部を示し、Meはメチル基、Viはビニル基、及びPhはフェニル基を示す。
【0071】
[実施例1]
(A1)成分として、PhSiO
3/2単位75mol%、ViPhMeSiO
1/2単位25mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(Mw=2,500、ケイ素原子に結合した水酸基量0.04mol/100g、ケイ素原子に結合したアルコキシ基量0.06mol/100g)を30部、
(B)成分として、(A1)及び(D)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(9)
【化24】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部、及び
(D)成分として下記式(10)
【化25】
を0.1部加え、よく撹拌して、硬化性有機ケイ素樹脂組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を得た。
【0072】
[実施例2]
(A1)成分として、実施例1で用いたオルガノポリシロキサンを30部、
(B)成分として、(A1)及び(D)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(9)
【化26】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部、
(D)成分として、下記式(11)
【化27】
を0.3部、及び(E)成分として、下記式(12)
【化28】
で示される有機ケイ素化合物2部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を得た。
【0073】
[実施例3]
(A1)成分として、SiO
4/2単位50mol%、ViPhSiO
2/2単位0.1mol%、ViPhMeSiO
1/2単位25mol%、PhMe
2SiO
1/2単位24.9mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(Mw=4,900、ケイ素原子に結合した水酸基量、0.3mol/100g、ケイ素原子に結合したアルコキシ基量0.3mol/100g)を30部、
(B)成分として、(A1)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(9)
【化29】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部、及び
(D)成分として、下記式(13)
【化30】
を0.3部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を得た。
【0074】
[実施例4]
(A1)成分として、SiO
4/2単位5mol%、PhSiO
3/2単位70mol%、ViMeSiO
2/2単位5mol%、ViMe
2SiO
1/2単位20mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(Mw=2,600、ケイ素原子に結合した水酸基量、0.2mol/100g、ケイ素原子に結合したアルコキシ基量1.0mol/100g)30部、
(B)成分として、(A1)及び(D)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(9)
【化31】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部、
(D)成分として、下記式(14)
【化32】
を0.3部、及び(E)成分として下記式(12)
【化33】
で示される有機ケイ素化合物2部を加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を得た。
【0075】
[実施例5]
実施例2で用いた(D)成分の代わりに、下記式(15)
【化34】
で示される酸無水物1部を用いたこと以外は、実施例2を繰り返して硬化物を得た。
【0076】
[実施例6]
(A1)成分として、PhSiO
3/2単位75mol%、ViPhSiO
2/2単位2mol%、ViPhMeSiO
1/2単位23mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(Mw=2,300、ケイ素原子に結合した水酸基量1.0mol/100g、ケイ素原子に結合したアルコキシ基量0.5mol/100g)を30部、
(B)成分として、(A1)、(D)及び(E)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(16)
【化35】
(式中、p=2である)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部、
(D)成分として、下記式(17)
【化36】
で示される酸無水物0.3部、及び
(A2)成分として、下記式(16)
【化37】
(式中、p=30である)
で示されるオルガノポリシロキサンを10部加え、よく撹拌して、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を得た。
【0077】
[比較例1]
(A1)成分として、PhSiO
3/2単位75mol%、ViPhMeSiO
1/2単位25mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(Mw=2,500、ケイ素原子に結合した水酸基量0.04mol/100g、ケイ素原子に結合したアルコキシ基量0.06mol/100g)を30部、
(B)成分として、(A1)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(9)
【化38】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)を0.01部加え、よく撹拌して、硬化性有機ケイ素樹脂組成物を調製した。該組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を得た。
【0078】
[比較例2]
実施例1で用いた(D)成分の代わりに、下記式(18)
【化39】
で示される酸無水物0.5部を用いたこと以外は、実施例1を繰り返して硬化物を得た。
【0079】
[比較例3]
実施例1で用いた(D)成分の代わりに、下記式(19)
【化40】
で示される酸無水物0.5部を用いたこと以外は、実施例1を繰り返して硬化物を得た。
【0080】
[比較例4]
実施例1で用いた(D)成分の代わりに、下記式(20)
【化41】
で示される酸無水物0.5部を用いたこと以外は、実施例1を繰り返して硬化物を得た。
【0081】
[比較例5]
実施例1で用いた(D)成分の添加量を、0.001部に変更したこと以外は、実施例1繰り返して硬化物を得た。
【0082】
[比較例6]
実施例1で用いた(D)成分の添加量を7部に変更したこと以外は、実施例1を繰り返して硬化物を得た。
【0083】
上記実施例1~6及び比較例1~6で得た組成物及びその硬化物について下記の方法に従い各種の物性を測定した。結果を表2及び3に示す。
【0084】
(1)性状
硬化前の各組成物の流動性を確認した。100mlのガラス瓶に50gの組成物を加え、ガラスビンを横に倒して25℃で10分間静置した。その間に樹脂が流れ出せば液状であると判断した。
(2)粘度
25℃における硬化前の各組成物の粘度をJIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した。
(3)外観
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物(厚さ1mm)の色と透明性を目視にて確認した。
(4)屈折率
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の589nm、25℃における屈折率を、JIS K 7142:2008に準拠して、アッベ型屈折率計により測定した。
(5)硬さ(タイプA)
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の硬さを、JIS K 6249:2003に準拠して、デュロメータD硬度計を用いて測定した。
(6)切断時伸び及び引張強さ
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の切断時伸び及び引張強さを、JIS K 6249:2003に準拠して測定した。
(7)成形性
各組成物0.25gを、面積180mm2の銀板に底面積が45mm2となるように120℃180秒で成形し、金型から離形する際に、剥離やクラックがなく、基板と密着しているか判定した。
(判定基準)
○:成形性が良好である(成形物にクラックがない)
×:成形性が不良である(成形物にクラックが生じる)
(8)接着性
各組成物0.25gを、面積180mm2の銀板に底面積が45mm2となるように成形し、150℃で4時間硬化させた後、ミクロスパチュラを用いて硬化物を破壊し、銀板から剥ぎ取る際に、凝集破壊の部分と剥離部分との割合を求めて、その接着性を判定した。
(判定基準)
○:接着性が良好である(凝集破壊の割合60%以上)
×:接着性が不良である(凝集破壊の部分60%未満)
(9)耐硫化性試験
銀メッキ板(1cm2、深さ0.6mm)に硬化性有機ケイ素樹脂組成物を封入し、150℃で4時間硬化させて得たサンプルを、硫黄粉末3gと共に密封容器に入れ80℃の恒温槽に50時間放置し銀メッキ板の反射率を測定した。初期の反射率はいずれも90%であった。以下の基準に従い判定した。
(判定基準)
○:反射率が90%以上
△:反射率が85%以上90%未満
×:反射率が85%未満
(10)耐熱性(光透過率保持率)
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物(厚さ1mm)の波長450nmにおける光透過率を、日立製分光光度計U-4100を用いて23℃で測定した(初期透過率)。次いで、この硬化物を200℃で1,000時間熱処理した後、同様に光透過率を測定して、初期透過率(100%)に対する熱処理後の光透過率を求め、以下の基準に従い判定した。
○:初期透過率を100%としたときの熱処理後透過率が90%以上
△:初期透過率を100%としたときの熱処理後透過率が90%未満80%以上
×:初期透過率を100%としたときの熱処理後透過率が80%未満
【0085】
尚、上記実施例及び比較例で用いた環状酸無水物の構造をまとめると下記表1の通りである。
【表1】
【0086】
【0087】
【0088】
上記表3に示される通り、酸無水物を含まない比較例1の組成物から得られる硬化物では、耐硫化性、接着性が悪化した。また、本発明の(D)成分に替えて環状炭化水素構造を有さない酸無水物を使用した比較例2及び3の組成物から得られる硬化物は耐熱性が悪く、耐熱性試験にて光透過率が著しく低下した。また、(D)成分の添加量が少ない比較例5の組成物から得られる硬化物は、接着性、及び耐硫化性に劣り、(D)成分の添加量が多い比較例6の組成物から得られる硬化物は耐熱性が悪く、耐熱性試験にて光透過率が著しく低下した。これに対し、表2に示す通り、本発明の硬化性有機ケイ素樹脂組成物は流動性を有し、速やかに硬化物を得ることができ、且つ、接着性に優れ、高い耐熱性及び耐硫化性を有する硬化物を与えることができる。また、上記レジン構造を有する(A)成分を有することにより、概ね透明であり、十分な硬さ、切断時伸び、引張強さ、良好な屈折率、耐熱性、及び接着性を有し、表面タック性による埃付着のない硬化物を与える。