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特許7100844共振装置、電力伝送装置、及び電力伝送方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-06
(45)【発行日】2022-07-14
(54)【発明の名称】共振装置、電力伝送装置、及び電力伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20220707BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20220707BHJP
【FI】
H02J50/12
H01P5/02 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018096151
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019201518
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504221107
【氏名又は名称】株式会社レーザーシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰夫
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213304(JP,A)
【文献】特開2008-067012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0052501(US,A1)
【文献】特開昭59-191902(JP,A)
【文献】特開2002-261539(JP,A)
【文献】特開2004-320351(JP,A)
【文献】特開平04-170804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板内において閉曲線線路の一部が開放された構造を呈するように形成され、自身と対向して配された自身と相似形の他の共振器との間で、電磁結合を利用して非接触で高周波の電力又は信号の授受を行う共振器と、
前記誘電体基板と対向するように配設された回路基板と、
前記回路基板内において前記共振器と対向する位置に形成され、前記共振器との間で前記電力又は信号の授受を行う入出力線路と、
を備え、
前記誘電体基板は、前記入出力線路と前記共振器との間の位置関係又は前記入出力線路と前記共振器との間に形成される容量を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
共振装置。
【請求項2】
前記入出力線路は、平面視で、前記共振器の外側から前記共振器の側部まで延在し、前記共振器の前記側部において、前記共振器と電気的に接続するように形成されている
請求項1に記載の共振装置。
【請求項3】
前記誘電体基板は、平面視における、前記共振器と前記入出力線路との電気的な接続位置と、前記共振器の開放端との位置関係を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
請求項2に記載の共振装置。
【請求項4】
前記入出力線路は、前記共振器と非接触状態で配設され、容量結合により、前記共振器との間で前記電力又は信号の授受を行う
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の共振装置。
【請求項5】
前記誘電体基板は、前記共振器と前記入出力線路とが誘電体材料を介して対向するように、前記回路基板に取り付けられている
請求項4に記載の共振装置。
【請求項6】
前記誘電体基板は、前記共振器と前記入出力線路とが対向する方向における前記共振器と前記入出力線路との間の距離を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
請求項4又は5に記載の共振装置。
【請求項7】
前記誘電体基板は、前記共振器と前記入出力線路との間の比誘電率を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の共振装置。
【請求項8】
前記入出力線路は、平面視で前記共振器と重なる電極部を有し、当該電極部を介して、前記共振器との間で前記電力又は信号の授受を行う
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の共振装置。
【請求項9】
前記誘電体基板と前記回路基板とは、平面視における、前記共振器の開放端と前記電極部の開放端との位置関係を調整可能に取り付けられている
請求項8に記載の共振装置。
【請求項10】
前記共振器と前記他の共振器とは、平面視で、前記共振器の中心点と前記他の共振器の中心点とが重なるように配され、且つ、前記共振器における前記中心点と開放端とを結ぶ線と、前記他の共振器における前記中心点と開放端とを結ぶ線との間のなす角度が90°以上の角度を有するように配される
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の共振装置。
【請求項11】
第1及び第2の共振装置を有し、当該第1及び第2の共振装置それぞれが有する共振器の間で、非接触で電力又は信号の授受を行う電力伝送装置であって、
前記第1及び第2の共振装置は、それぞれ、
誘電体基板と、
前記誘電体基板内において閉曲線線路の一部が開放された構造を呈するように形成され、自身と対向して配された自身と相似形の他の共振器との間で、電磁結合を利用して非接触で前記電力又は信号の授受を行う共振器と、
前記誘電体基板と対向するように配設された回路基板と、
前記回路基板内において前記共振器と対向する位置に形成され、前記共振器との間で前記電力又は信号の授受を行う入出力線路と、
を備え、
前記誘電体基板が、前記入出力線路と前記共振器との間の位置関係又は前記入出力線路と前記共振器との間に形成される容量を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
電力伝送装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電力伝送装置を用いた電力伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共振装置、電力伝送装置、及び電力伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのオープンリング共振器を用いて、非接触で高周波の電力や信号(以下、「高周波電力」と総称する)を送受する電力伝送装置が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。
【0003】
この種の電力伝送装置は、互いに対向するように配設された送電側のオープンリング共振器と受電側のオープンリング共振器とによって構成される。そして、送電側のオープンリング共振器と受電側のオープンリング共振器とを電磁結合(例えば、磁界共鳴)させることによって、送電側のオープンリング共振器から受電側のオープンリング共振器に高周波電力を送出する。
【0004】
オープンリング共振器は、一般に、送電側のオープンリング共振器と受電側のオープンリング共振器とが、同一の周波数で共振するように構成されており、典型的には、リングの線路長が共振周波数から換算されるλ/2程度となるように構成される。
【0005】
このように構成された電力伝送装置は、非接触で高い伝送効率を得られるため、電子機器が内蔵するバッテリ等への非接触電力伝送の用途、及び、異なる回路基板間での非接触信号伝送の用途等への応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4835334号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】I.Awai and A.K.Saha, “Open Ring Resonators Applicable to Wide-band BPF”, Proceedings of Asia-Pacific Microwave Conference 2006, ISBN:978-4-902339-08-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種の電力伝送装置において、一方の共振器と他方の共振器を電磁結合させて非接触で高周波電力を伝送することは、2つの共振器を用いたバンドパスフィルタと等価である。
【0009】
2つのオープンリング共振器を近接して配設した場合、電磁的な相互作用で、オープンリング共振器の基本共振周波数から、高周波側と低周波側に共振周波数の分離が起こることが知られている。つまり、2つのオープンリング共振器の電磁結合の状態により、一方の共振器から他方の共振器に高周波電力を通過させ得る周波数帯域が決まり、当該周波数帯域は、一般に、分離した高周波側の共振周波数と低周波側の共振周波数が、それぞれ、通過帯域の上限と下限になる。但し、当該周波数帯域内で必ずしも均一な伝送効率(即ち、透過率)が実現されるわけではなく、接続条件により当該周波数帯域の中間領域の伝送効率が低下(双峰型の周波数特性とも称される)したり、中間領域にピークを持ち両側で伝送効率の低下が起こる。
【0010】
この点、オープンリング共振器を用いた電力伝送装置においては、送電側の入出力線路から見た共振器のインピーダンス(以下、「共振器の入力インピーダンス」と称する)、及び受電側の入出力線路から見た共振器のインピーダンス(以下、「共振器の出力インピーダンス」と称する)を適切に設定することによって、分離した高周波側の共振周波数と低周波側の共振周波数の間の広帯域に亘って、高い伝送効率で高周波電力の伝送を行うことが可能となる(特許文献1、及び非特許文献1を参照)。これは、いわゆる最大平坦型(バターワース型とも称される)の周波数特性を有するバンドパスフィルタである。
【0011】
この種の電力伝送装置においては、種々の観点から、最大平坦型のバンドパスフィルタのように、広帯域に亘って高い伝送効率を示す周波数特性を実現する要請がある。例えば、広帯域に亘って高い伝送効率を示す周波数特性が得られれば、共振器の使用環境が変化して、分離した高周波側の共振周波数及び低周波側の共振周波数がシフトした態様でも、高い伝送効率で電力伝送を実行することができる。又、これによって、電力伝送の際に使用する周波数を、適宜変化させることも可能となる。
【0012】
特許文献1及び非特許文献1には、オープンリング共振器に対する入出力線路の接続位置を適切に設定することによって、最大平坦型の周波数特性を有する透過特性を実現できることが記載されている。しかしながら、透過特性を双峰型の周波数特性から最大平坦型の周波数特性に変化させるための共振器の入力インピーダンスは、実際には、使用環境等、共振器間の電磁結合の状態(即ち、共振器間の結合係数)に起因して変化する。そのため、特許文献1のように、オープンリング共振器と入出力線路とを同一の回路基板上に作り込む構成では、このような変化に対応することができないという課題がある。
【0013】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、共振器間の電磁結合の状態の変化に対応可能とする共振装置、電力伝送装置、及び電力伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
誘電体基板と、
前記誘電体基板内において閉曲線線路の一部が開放された構造を呈するように形成され、自身と対向して配された自身と相似形の他の共振器との間で、電磁結合を利用して非接触で高周波の電力又は信号の授受を行う共振器と、
前記誘電体基板と対向するように配設された回路基板と、
前記回路基板内において前記共振器と対向する位置に形成され、前記共振器との間で前記電力又は信号の授受を行う入出力線路と、
を備え、
前記誘電体基板は、前記入出力線路と前記共振器との間の位置関係又は前記入出力線路と前記共振器との間に形成される容量を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
共振装置である。
【0015】
又、他の局面では、
第1及び第2の共振装置を有し、当該第1及び第2の共振装置それぞれが有する共振器の間で、非接触で電力又は信号の授受を行う電力伝送装置であって、
前記第1及び第2の共振装置は、それぞれ、
誘電体基板と、
前記誘電体基板内において閉曲線線路の一部が開放された構造を呈するように形成され、自身と対向して配された自身と相似形の他の共振器との間で、電磁結合を利用して非接触で前記電力又は信号の授受を行う共振器と、
前記誘電体基板と対向するように配設された回路基板と、
前記回路基板内において前記共振器と対向する位置に形成され、前記共振器との間で前記電力又は信号の授受を行う入出力線路と、
を備え、
前記誘電体基板が、前記入出力線路と前記共振器との間の位置関係又は前記入出力線路と前記共振器との間に形成される容量を調整可能に、前記回路基板に取り付けられている
電力伝送装置である。
【0016】
又、他の局面では、
上記の電力伝送装置を用いた電力伝送方法である。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る共振装置によれば、共振器間の電磁結合を利用して非接触で高周波電力の授受を行う際に、共振器間の電磁結合の状態の変化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る電力伝送装置の全体構成を示す図
図2】第1の実施形態に係る共振装置の構成の一例を示す側面断面図
図3】第1の実施形態に係る共振装置の構成の一例を示す斜視図
図4】第1の実施形態に係る共振装置を誘電体基板の表面側から平面視した図
図5A】従来技術に係る共振装置における、共振器と入出力線路の接続状態の一例を示す図
図5B】従来技術に係る共振装置における、共振器と入出力線路の接続状態の一例を示す図
図6A】第1の実施形態に係る電力伝送装置における、接続角度と透過率の関係の一例を示す図
図6B】第1の実施形態に係る電力伝送装置における、接続角度と反射率の関係の一例を示す図
図6C】第1の実施形態に係る電力伝送装置における、接続角度と反射特性に係るスミスチャートの一例を示す図
図7】第2の実施形態に係る共振装置の構成の一例を示す側面断面図
図8】第2の実施形態に係る共振装置の構成の一例を示す斜視図
図9】第2の実施形態に係る共振装置を誘電体基板の表面側から平面視した図
図10】第2の実施形態に係る共振装置を簡易化したモデル図
図11図10のモデル図を用いた電力伝送装置において、電力伝送を行った際の透過率(S21)及び反射率(S11)を算出したシミュレーション結果
図12図10のモデル図を用いた電力伝送装置において、電力伝送を行った際の透過率(S21)及び反射率(S11)を算出したシミュレーション結果
図13A】第2の実施形態に係る電力伝送装置において、高周波電力を伝送した際に観察される透過特性を、電磁界解析シミュレーションによって算出したシミュレーション結果
図13B】第2の実施形態に係る電力伝送装置において、高周波電力を伝送した際に観察される反射特性を、電磁界解析シミュレーションによって算出したシミュレーション結果
図13C】第2の実施形態に係る電力伝送装置において、高周波電力を伝送した際に観察される反射特性を、電磁界解析シミュレーションによって算出したシミュレーション結果
図14A】第1の実施形態に係る共振装置において、接続角度の調整により、共振器の入力インピーダンスを調整した際に観察される透過特性を示す図
図14B】第2の実施形態に係る共振装置において、電極間距離の調整により、共振器の入力インピーダンスを調整した際に観察される透過特性を示す図
図15】第3の実施形態に係る共振装置の構成の一例を示す側面断面図
図16】第3の実施形態に係る共振装置を誘電体基板の表面側から平面視した図
図17】第4の実施形態に係る共振装置の構成の一例を示す斜視図
図18】第4の実施形態に係る共振装置において、共振器と電極部の間の電極間距離及び共振器と電極部の間の電極間距離それぞれを調整した際の透過特性及び反射特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
[電力伝送装置の全体構成]
以下、図1図4を参照して、本実施形態に係る電力伝送装置の構成の一例について説明する。本実施形態に係る電力伝送装置は、電気負荷に対する電力伝送に適用されている。
【0021】
図1は、電力伝送装置Uの全体構成を示す図である。
【0022】
本実施形態に係る電力伝送装置Uは、送電装置100が有する共振装置1と、受電装置200が有する共振装置2と、により構成される。
【0023】
送電装置100は、例えば、電源100a(例えば、バッテリ)、当該電源100aから供給される電力に基づいて高周波電力を生成する発振器100b(例えば、ガン発振器又はインバータ等)、及び、当該発振器100bから高周波電力を取得して受電装置200側の共振装置2に送出する共振装置1等を有している。
【0024】
受電装置200は、例えば、共振装置1から高周波電力を受電する共振装置2、当該共振装置2が受電した高周波電力を整流する整流回路200a、及び、整流回路200aで整流された直流電力を使用する電気負荷(例えば、バッテリ)200b等を有している。
【0025】
図2は、共振装置1と共振装置2の構成の一例を示す側面断面図である。図3は、共振装置1と共振装置2の構成の一例を示す斜視図である。図4は、共振装置1を誘電体基板11の表面側から平面視した図である。尚、図3では、説明の便宜として、共振器12と入出力線路14の構成のみを図示している。
【0026】
共振装置1は、誘電体基板11、誘電体基板11内に配設された共振器12、回路基板13、回路基板13内に配設された入出力線路14、及び、誘電体基板11と回路基板13とを固定する固定部材15を備えている。
【0027】
共振装置2は、同様に、誘電体基板21、誘電体基板21内に配設された共振器22、回路基板23、回路基板23内に配設された入出力線路24、及び、誘電体基板21と回路基板23とを固定する固定部材25を備えている。
【0028】
以下では、共振装置1と共振装置2とは、同様の構成を有するものとして、共振装置1の構成についてのみ、説明する。
【0029】
誘電体基板11は、共振器12を保持する保持体である。誘電体基板11を構成する素材は、本発明では特に限定されないが、例えば、セラミック基板やプラスチック基板等が用いられる。
【0030】
共振器12は、受電側の共振器22が対向して配された際に、当該共振器22と電磁結合して、当該共振器22との間で、非接触で高周波電力の授受を行う。
【0031】
共振器12は、誘電体基板11の基板面内に形成された導体パターンである。共振器12は、閉曲線線路の一部に開放部12aを有する構造を呈している。即ち、共振器12は、長手方向の両端が開放端とされている。共振器12は、例えば、金属線をリング状に配して両端を近接させて構成されている(「オープンリング共振器」とも称される)。共振器12の金属線は、例えば、電位差の最大となる両端が近接するように、送受する高周波電力の波長の1/2の奇数倍の長さ程度に設定される。
【0032】
共振器12は金属配線で出来ており、回路基板13に配設されたやはり金属配線で形成された入出力線路14と電気的に直接接続するように配設され、入出力線路14から入力される高周波電力を共振器22に対して送出する。本実施形態に係る共振器12は、例えば、誘電体基板11の裏面(又、共振装置1と共振装置2とが対向する側とは逆側の基板面を表す。以下同じ)側において、回路基板13に配設された入出力線路14と接触するように配設されている。
【0033】
送電側の共振器12と受電側の共振器22とは、典型的には、同一の共振周波数を有する共振器が用いられる(図3を参照)。そして、電力伝送の際には、共振器12と共振器22とは、平面視で、互いの中心点C0が重なるように対向して配される。又、この際、共振器12と共振器22とは、平面視で、共振器12における開放部12aと中心点C0とを結ぶ線12alと、共振器22における開放部22aと中心点C0とを結ぶ線22alとの間のなす角度(即ち、共振器12の開放端と共振器22の開放端との間のリングの周方向における角度差)が、例えば、90°以上、より好適には180°の角度を有するように配設される。これによって、磁界の共振及び電界の共振の両方が、共振器12と共振器22の間で同相となり、共鳴が最も強くなる(調相結合とも称される)。これにより、波長の1/4程度の距離でもほぼ100%の電力伝送が可能となる。
【0034】
共振器12と共振器22とは、空間、誘電体材料、又はこれらの両方を介して、対向するように配設される。本実施形態では、共振器12と共振器22とが、ガラス基板Tを介在して、対向するように配設されている。
【0035】
尚、共振器12と共振器22とは、典型的には、分離可能に配設されるが、互いに固定された状態で配設されてもよい。換言すると、共振装置1と共振装置2とは、電力伝送を実行していないときにはそれぞれが分離可能に配設されてもよいし、一体的に配設されていてもよい。
【0036】
回路基板13は、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板である。回路基板13には、例えば、入出力線路14及び発振器100bとのインターフェース部品等が配設されている。又、回路基板13の裏面全面には、接地導体14bが形成されている。尚、回路基板13としては、多層基板や、又は信号処理ICを内蔵した半導体基板等が用いられてもよい。
【0037】
回路基板13は、誘電体基板11の裏面側において、誘電体基板11と対向して配設されている。
【0038】
入出力線路14は、発振器100bから高周波電力を受電し、当該高周波電力を共振器12に対して入力する。入出力線路14は、回路基板13内に形成された導体パターンである。入出力線路14は、例えば、回路基板13の表面(共振装置1と共振装置2とが対向する側の基板面を表す。以下同じ)側に配設され、回路基板13の裏面に形成された接地導体14bと共に、所定の特性インピーダンス(例えば、50Ω)となるように調整されたマイクロストリップ線路として構成されている。
【0039】
入出力線路14は、先端部が開放端とされ、当該先端部において、共振器12と電気的に接続する電極部14aが形成されている。即ち、入出力線路14は、電極部14aを介して、共振器12と電気的に接続する。本実施形態に係る電極部14aは、共振器12に接触するように配設されている(図4を参照)。尚、電極部14aの形状は、例えば、共振器12の周方向の略3°~45°に対応する扇形状を呈している。
【0040】
より詳細には、入出力線路14は、平面視において、共振器12の外側から共振器12の側部(オープンリング形状の外縁を形成する部分を表す。以下同じ)まで延在し、電極部14aが、共振器12の当該側部において、当該共振器12と電気的に接続するように配設されている(タップ結合とも称される)。尚、以下では、平面視において、共振器12の側部の中心位置から開放部12a(即ち、開放端)側への角度θ1を、「接続角度θ1」と称して説明する(図4を参照)。例えば、接続角度θ1が0°の位置が共振器12のリング状の金属線の中心位置に相当し、接続角度θ1が略90°の位置が共振器12のリング状の金属線の開放部12a側の位置に相当する。
【0041】
但し、電極部14aは、高周波信号を伝送するため必ずしも共振器12と直接接触する必要はなく、誘電体膜を介した容量結合によって、共振器12と電気的に接続されてもよい(第2の実施形態で後述)。
【0042】
尚、共振装置2の入出力線路24も、入出力線路14と同様に、回路基板23の裏面全体に形成された接地導体24bと共に、マイクロストリップ線路を構成する。又、入出力線路24も、入出力線路14と同様に、電極部24aを有している。そして、入出力線路24は、共振器22から高周波電力を取得して、当該高周波電力を整流回路200aに対して出力する。
【0043】
固定部材15は、誘電体基板11と回路基板13とを固定する。固定部材15は、例えば、ボルトとナットとにより構成される。本実施形態に係る固定部材15は、誘電体基板11及び回路基板13を貫通するように形成された貫通溝(図4には、誘電体基板11に形成された貫通溝11aのみを示す)にボルトを挿通してナットで締結することで、誘電体基板11と回路基板13とを固定する。
【0044】
[誘電体基板と回路基板の取り付け状態について]
次に、図4図6Cを参照して、本実施形態に係る共振装置1における誘電体基板11と回路基板13の取り付け状態について説明する。
【0045】
本実施形態に係る第1の共振装置1において、誘電体基板11と回路基板13とは、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を調整可能に固定されている(図4を参照)。換言すると、誘電体基板11と回路基板13とは、平面視で、共振器12と入出力線路14との電気的な結合位置が、共振器12の開放部12aの位置から離間する方向に調整可能に取り付けられている。又、同様に、共振装置2において、誘電体基板21と回路基板23とは、共振器22に対する入出力線路24の接続角度θ1を調整可能に固定されている。
【0046】
尚、本実施形態においては、共振装置1の接続角度θ1と共振装置2の接続角度θ1とは、同一に設定されるものとして、以下では、共振装置1の構成についてのみ説明する。
【0047】
図5A図5Bは、従来技術に係る共振装置P1、P2における、共振器P12、P22と入出力線路P14、P24の接続状態の一例を示す図である。図5Aは、共振器P12と共振器P22の側面断面図である。図5Bは、共振器P1を平面視した図である。
【0048】
従来技術に係る共振装置P1、P2においては、図5A図5Bに示すように、共振器P12は、入出力線路P14と共に回路基板P13内に配設され、入出力線路P14から延設する導体パターンによって構成されている。又、同様に、共振器P22は、入出力線路P24と共に回路基板P23内に配設され、入出力線路P24から延設する導体パターンによって構成されている。
【0049】
当該共振器P1と共振器P2の間で高周波電力の授受を行う際の透過率に係る周波数特性は、2つの共振器が近接している場合には、共振器P1と共振器P2の間での電磁的な結合により、共振器固有の共振周波数f0(以下、基本モード周波数f0と称する)から、高周波側の共振周波数f1及び低周波側の共振周波数f2の2つに分離したものとなる(図6Aを参照)。そして、二つの共振器が強く結合するほど、高周波側の共振周波数f1及び低周波側の共振周波数f2は、それぞれ、基本モード周波数f0から離れる側へシフトする。
【0050】
尚、共振器間の電磁結合の状態は、一般に、結合係数kとして以下の式(1)のように表される。
【数1】
【0051】
但し、この高周波側の共振周波数f1から低周波側の共振周波数f2の間の帯域内では、必ずしも均一な伝送効率(透過率)を持つわけではなく、一般に、当該周波数帯域の中間領域の伝送効率が低下する(双峰型の周波数特性)。
【0052】
そこで、従来技術に係る共振装置P1、P2においては、共振器P12に対する入出力線路P14の接続角度θ1を適切に設定することで、共振器P12の入力インピーダンス(又は共振器P12の出力インピーダンス)、即ち外部Q値を変化させ、入出力線路P14と共振器P12の間でインピーダンス整合を行っている。これによって、共振装置P1と共振装置P2の間で高周波電力の授受を行う際の透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることが可能である(例えば、特許文献1又は非特許文献1を参照)。
【0053】
尚、共振器P12に対する入出力線路P14の接続角度θ1を大きくするほど信号の出入りが大きくなり、共振器P12の入力インピーダンス(典型的にはリアクタンス成分)及び外部Q値は小さくなる。一方、接続角度θ1を0°に近づけるほど、共振器P12の入力インピーダンス(典型的にはリアクタンス成分)及び外部Q値は大きくなる。
【0054】
しかしながら、透過率に係る周波数特性を双峰型から最大平坦型に変化させるために適切な共振器P12の入力インピーダンス及び共振器P22の出力インピーダンス(即ち、インピーダンス整合条件)は、実際には、共振器P12と共振器P22の間の電磁結合の状態に起因して変化し、例えば、共振器P12と共振器P22の間の距離、又は共振器P12と共振器P22の間の媒質の誘電率等に応じて変化する。そのため、従来技術に係る共振装置P1のように接続角度θ1を固定した態様では、対応できない場合がある。
【0055】
そこで、本実施形態に係る共振装置1においては、図4に示すように、共振器12を、入出力線路14が配設される回路基板13とは別体の誘電体基板11に配設する。そして、平面視における回路基板13に対する誘電体基板11の取り付け角度を変更可能とすることによって、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を調整可能とする。
【0056】
固定部材15(ここでは、ボルト)が挿通される誘電体基板11の貫通溝11aは、共振器12のリングの中心点C0を中心として、当該共振器12のリングの外形に沿うように周方向に延在する形状を呈している。これによって、当該貫通溝11aにおける固定部材15の固定位置の調整によって、平面視における回路基板13に対する誘電体基板11の固定角度を調整し、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を調整することが可能となっている。例えば、固定部材15の固定位置を、図4の矢印の示す方向に移動させることによって、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を小さくすることが可能である。
【0057】
本実施形態に係る共振装置1は、このように、共振器12と共振器22の間の電磁結合の状態に対応させるように、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を変化させ、電力伝送時における透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることを可能とする。
【0058】
尚、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を設定変更する際には、例えば、作業者が、共振器間の距離又は媒質等に基づいて、接続角度θ1が予め規定された位置になるように、手作業で固定部材15の固定位置を調整する態様であってもよい。他方、制御装置(図示せず)が、共振器間における高周波電力の授受の状態を検知して、電力伝送時における透過率に係る周波数特性が最大平坦型になるように、駆動モータ等により固定部材15を移動させる態様であってもよい。
【0059】
図6A図6Cは、本実施形態に係る電力伝送装置Uにおける、接続角度θ1と透過特性及び反射特性の関係の一例を示す図である。
【0060】
図6A図6Cは、それぞれ、共振装置1から共振装置2に対して高周波電力を送出した際に観察される透過特性及び反射特性を、電磁界解析シミュレーションによって算出したシミュレーション結果である。図6Aは透過率(S21)、図6Bは反射率(S11)、図6C図6Bの反射率をスミスチャートにして表したものである。
【0061】
図6A図6Cの各グラフは、以下の態様における透過率及び反射率を表す。
点線:接続角度θ1を16°と設定した態様
実線:接続角度θ1を22°と設定した態様
一点鎖線:接続角度θ1を28°と設定した態様
【0062】
具体的なシミュレーション条件は、以下の通りである。共振器12と共振器22の間には、比誘電率:3.9、厚さ:25mmのガラス基板Tを配設している。又、回路基板13を比誘電率:4、厚さ:1mmと設定し、共振器12を内径:9.3mm、外径:19.3mmと設定し、入出力線路14を特性インピーダンス:50Ω、幅:2mmのマイクロストリップ線路と設定した。
【0063】
図6Aから分かるように、接続角度θ1を22°と設定した場合、透過特性は、915MHzを中心に3dB帯域幅15.8MHzのほぼ最大平坦型の周波数特性となる。ここで、接続角度θ1を16°とすると、共振器12の入力インピーダンスが増すためインピーダンス整合が失われ、透過特性は、ピーク位置が基本モード周波数f0から高周波側の周波数f1と低周波側の周波数f2に分離した双峰型の周波数特性に変化する。一方、接続角度θ1を28°とすると、共振器12の入力インピーダンスが過度に低下するため、透過特性は、基本モード周波数f0において1つのピークを持つ周波数特性に変化する。尚、図6Bの反射率は、図6Aの透過率を反転した特性を示している。
【0064】
図6Cから分かるように、スミスチャート上では、接続角度θ1が22°の場合、ほぼ原点にループが描かれ、反射率が低くなっている。一方、接続角度θ1が16°の場合、原点の右側にループが描かれ、曲線は2回原点付近を通過する。つまり、接続角度θ1が16°の場合、反射率の低い周波数が2つ有り、それに対応して透過率に2つのピークが発生することを示している。一方、接続角度θ1が28°の場合、ループを描かずに原点付近を通過するため、反射率の低下は1回のみで、その結果、透過率のピークも一つであることを示している。
【0065】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る共振装置1は、誘電体基板11と、誘電体基板11内において閉曲線線路の一部が開放された構造を呈するように形成され、自身と対向して配された自身と相似形の他の共振器22との間で、電磁結合を利用して非接触で高周波の電力又は信号の授受を行う共振器12と、誘電体基板11と対向するように配設された回路基板13と、回路基板13内において共振器12と対向する位置にパターン形成され、共振器12との間で電力又は信号の授受を行う入出力線路14と、を備え、誘電体基板11は、入出力線路14と共振器12との間の位置関係を、調整可能に回路基板13に取り付けられている。
【0066】
従って、本実施形態に係る共振装置1、2によれば、入出力線路14、24と共振器12、22との間の位置関係(ここでは、共振器12、22に対する入出力線路14、24の接続角度θ1)を変更することによって、共振器12、22の入力インピーダンス(又は、出力インピーダンス)を調整することが可能である。これによって、共振器12、22間の電磁結合の状態に対応させるように、当該共振器12の入力インピーダンス(又は、当該共振器22の出力インピーダンス)を調整して、透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることができる。
【0067】
又、本実施形態に係る電力伝送装置Uにおいては、共振装置1、2が、それぞれ、誘電体基板11、21と、誘電体基板11、21内において閉曲線線路の一部が開放された構造を呈するように形成され、自身と対向して配された自身と相似形の他の共振器22との間で、電磁結合を利用して非接触で高周波の電力又は信号の授受を行う共振器12、22と、誘電体基板11、21と対向するように配設された回路基板13、23と、回路基板13、23内において共振器12、22と対向する位置にパターン形成され、共振器12、22との間で高周波電力の授受を行う入出力線路14、24と、を備え、誘電体基板11、21が、入出力線路14、24と共振器12、22との間の位置関係を、調整可能に回路基板13、23に取り付けられている。
【0068】
これによって、共振器12、22間の電磁結合の状態に対応させるように、共振器12の入力インピーダンス及び共振器22の出力インピーダンスを調整して、電力伝送時の透過率に係る周波数特性を、より確実に、双峰型から最大平坦型に変化させることができる。
【0069】
尚、上記実施形態では、共振装置1と共振装置2とが同一な構成を有するものとして、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1と共振器22に対する入出力線路24の接続角度θ1とを同一に設定する態様を示した。しかしながら、共振装置1と共振装置2とで異なる構成とされてもよく、当該場合には、共振装置1における共振器12の入力インピーダンスの調整と共振装置2における共振器22の入力インピーダンスの調整とは、個別に実行されることになる(後述する第4の実施形態を参照)。
【0070】
(第2の実施形態)
次に、図7図14Bを参照して、第2の実施形態に係る共振装置1、2の構成の一例について説明する。
【0071】
図7は、第2の実施形態に係る共振装置1と共振装置2の構成の一例を示す側面断面図である。図8は、第2の実施形態に係る共振装置1と共振装置2の構成の一例を示す斜視図である。図9は、共振装置1を誘電体基板11の表面側から平面視した図である。尚、図8では、入出力線路14、24と共振器12、22のみを図示している。
【0072】
本実施形態に係る共振装置1、2は、それぞれ、入出力線路14、24と共振器12、22とを容量結合により電気的に接続し、入出力線路14、24と共振器12、22の間に形成される容量を調整可能とする点で、第1の実施形態と相違する。尚、第1の実施形態と共通する構成については、説明を省略する(以下、他の実施形態についても同様)。
【0073】
本実施形態に係る共振装置1、2は、それぞれ、誘電体基板11、21と回路基板13、23の間に介在するように配設された誘電体材料16、26を有している。尚、本実施形態においても、共振装置1と共振装置2とは、同様の構成を有するものとして、共振装置1の構成についてのみ、説明する。
【0074】
誘電体材料16は、誘電体基板11と回路基板13の間の距離を調整するための材料であり、例えば、固定部材15の締め付け圧力によって厚さを変形し得る軟性の材料(例えば、シリコーンゴム等の絶縁樹脂)が用いられる。
【0075】
尚、誘電体材料16及び誘電体部材11としては、より好適には、比誘電率が回路基板13の比誘電率よりも小さい材料を用いる。これによって、共振器12と入出力線路14の間の距離Lを変更した際に、共振器12のリングの電気長に影響が出て共振周波数が変化するのを抑制することができる。
【0076】
本実施形態に係る共振器12は、例えば、誘電体基板11の表面に配設され、誘電体基板11及び誘電体材料16を挟んで、入出力線路14と対向する。即ち、共振器12と入出力線路14とは、非接触状態で配設されている。そして、共振器12と入出力線路14とは、平面視において、電極部14aの領域において対向する。つまり、共振器12は、誘電体基板11及び誘電体材料16を介して、入出力線路14の電極部14aと容量結合し、かかる状態で入出力線路14との間で高周波電力の授受を行う。
【0077】
尚、電極部14aの形状は、第1の実施形態と同様に、例えば、平面視において、共振器12の周方向の略3°~45°に対応する扇形状を呈している。但し、電極部14aは、実効的なリングサイズが変わって共振周波数にずれが生じることを抑制するため、平面視において、共振器12の内径側の側部より中心点C0側に飛び出さないのが望ましい。
【0078】
本実施形態に係る共振装置1においては、固定部材15の締め付け圧力によって誘電体材料16の厚さを調整可能とし、これによって、誘電体基板11と回路基板13の間の距離、即ち、共振器12と入出力線路14の間の距離(図8にLで示す。以下、「電極間距離L」と称する)を調整可能とする。換言すると、これによって、電極部14aと共振器12の間に形成される容量を調整可能とする。そして、電極部14aと共振器12の間に形成される容量の調整によって、共振器12の入力インピーダンスを調整し、透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることが可能となる。
【0079】
尚、本実施形態においても、共振装置1の電極間距離Lと共振装置2の電極間距離Lとは、同一に設定されるものとして、以下では、共振装置1の構成についてのみ説明する。
【0080】
まず、図10図12を参照して、本実施形態に係る電力伝送装置Uにおいて、入出力線路14と共振器12の間に形成される容量を調整した際における、透過率及び反射率の周波数特性について説明する。
【0081】
図10は、本実施形態に係る共振装置1を簡易化したモデル図である。図11図12は、図10のモデル図を用いた電力伝送装置Uにおいて、電力伝送を行った際の透過率(S21)及び反射率(S11)を算出したシミュレーション結果である。
【0082】
図10の共振装置1は、共振器12と入出力線路14の間に容量C1を介在させた点以外には、第1の実施形態に係る共振装置1と同様の構造を有する。ここで、共振器12と共振器22の間の高周波電力の授受は電磁界解析を用いてシミュレーションを行い、信号源S1からポート位置S2までの間の高周波電力の授受は回路解析を用いてシミュレーションを行っている。
【0083】
図11は、図10において、容量C1を変化させた場合の透過率(S21)及び反射率(S11)を示している。尚、このシミュレーションにおいては、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を、150度と設定した。
【0084】
図11の各グラフは、以下の態様における透過率及び反射率を表す。尚、透過率を示すグラフには、○印を付している。
点線:容量C1を0.75pFと設定した態様
実線:容量C1を0.85pFと設定した態様
一点鎖線:容量C1を0.95pFと設定した態様
【0085】
図11から分かるように、透過率に係る周波数特性は、容量C1が0.85pFの場合には最大平坦型、容量C1が0.75pFの場合には双峰型、容量C1が0.95pFの場合には単峰型の周波数特性を示している。
【0086】
図12は、図11との対比のため、図10において、容量C1を変化させる代わりに、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を変化させた場合の透過率(S21)及び反射率(S11)を示している。尚、このシミュレーションにおいては、容量C1は無く直結としている。
【0087】
図12の各グラフは、以下の態様における透過率及び反射率を表す。尚、透過率を示すグラフには、○印を付している。
点線:接続角度θ1を20.5°と設定した態様
実線:接続角度θ1を25.5°と設定した態様
一点鎖線:接続角度θ1を30.5°と設定した態様
【0088】
図12から分かるように、透過率に係る周波数特性は、接続角度θ1が25.5°の場合には最大平坦型、接続角度θ1が20.5°の場合には双峰型、接続角度θ1が30.5°の場合には単峰型の周波数特性を示している。
【0089】
このように、図11図12を対比すると、共振器12に対する入出力線路14の接続角度θ1を変更することと、入出力線路14と共振器12の間の容量を変更することとは、共振器12の入力インピーダンスの調整の態様としては、等価であると言える。
【0090】
次に、図7図9に示した共振装置1、2において、電極間距離Lを変更した場合の透過率に係る周波数特性を示す。
【0091】
図13A図13Cは、それぞれ、本実施形態に係る電力伝送装置Uにおいて、高周波電力を伝送した際に観察される透過特性及び反射特性を、電磁界解析シミュレーションによって算出したシミュレーション結果である。
【0092】
図13Aは透過率(S21)、図13Bは反射率(S11)、図13C図13Bの反射率(S11)をスミスチャートにして表したものである。
【0093】
図13A図13Cの各グラフは、以下の態様における透過率及び反射率を表す。尚、透過率を示すグラフには、○印を付している。
実線:電極間距離Lを1.5mm、接続角度θ1を145°と設定した態様
点線:電極間距離Lを1mm、接続角度θ1を145°と設定した態様
一点鎖線:電極間距離Lを2mm、接続角度θ1を145°と設定した態様
二点鎖線:電極間距離Lを1.5mm、接続角度θ1を85°と設定した態様
【0094】
尚、具体的なシミュレーション条件は、図6A図6Cで行った電磁界解析シミュレーションと同様である。ここでは、電極部14aの面積を50mmと設定し、誘電体基板11及び誘電体材料16の比誘電率を回路基板13の比誘電率4よりも小さい3.4と設定した。
【0095】
本シミュレーションにおいて、電極間距離Lを1mm~2mmの間で変化させることは、入出力線路14と共振器12の間の容量を1.7pF~0.85pFの間で変化させることに相当する。
【0096】
図13Aから分かるように、電極間距離Lを1.5mmとした場合、入出力線路14と共振器12とがインピーダンス整合して、透過率に係る周波数特性は、最大平坦型となる。又、電極間距離Lを1.5mmから1.0mmに小さくすると、共振器12の入力インピーダンスが小さくなり、透過率に係る周波数特性は、単峰型となる。
【0097】
一方、電極間距離Lを1.5mmから2mmに大きくすると、共振器12の入力インピーダンスが大きくなり、透過率に係る周波数特性は、双峰型となる。又、電極間距離Lを1.5mmにしたまま、接続角度θ1を145°から85°に小さくすると、共振器12の入力インピーダンスが大きくなるため、透過率に係る周波数特性は、同様に、双峰型となる。
【0098】
次に、図14A図14Bを参照して、共振器12と共振器22の間の距離(以下、「共振器間距離t」と称する)が25mmから30mmに変更となった場合における、透過率に係る周波数特性の変化について、説明する。
【0099】
図14Aは、第1の実施形態に係る共振装置1、2において、接続角度θ1の調整により、共振器12の入力インピーダンス(及び共振器22の出力インピーダンス)を調整した際に観察される透過特性及び反射特性を示す図である。
【0100】
図14Bは、本実施形態に係る共振装置1、2において、電極間距離Lの調整により、共振器12の入力インピーダンス(及び共振器22の出力インピーダンス)を調整した際に観察される透過特性及び反射特性を示す図である。
【0101】
尚、図14A図14Bは、いずれも、電磁界解析シミュレーションによって算出したシミュレーション結果である。
【0102】
図14Aの各グラフは、以下の態様における透過率を表す。
実線:接続角度θ1を16°、共振器間距離tを30mmと設定した態様
点線:接続角度θ1を22°、共振器間距離tを25mmと設定した態様
一点鎖線:接続角度θ1を22°、共振器間距離tを30mmと設定した態様
【0103】
図14Bの各グラフは、以下の態様における透過率を表す。
実線:電極間距離Lを2mm、接続角度θ1を145°、共振器間距離tを30mmと設定した態様
点線:電極間距離Lを1.5mm、接続角度θ1を85°、共振器間距離tを30mmと設定した態様
一点鎖線:電極間距離Lを1.5mm、接続角度θ1を145°、共振器間距離tを30mmと設定した態様
【0104】
図14A図14Bのいずれにおいても、共振器間距離tを25mmから30mmに変更した場合には、結合係数が低下する。そのため、入出力線路14と共振器12の間でインピーダンス整合を行うためには、共振器12の入力インピーダンスの増大が必要である。
【0105】
図14Aでは、共振器間距離tが25mmのときには、接続角度θ1が22°の状態でインピーダンス整合し、透過率に係る周波数特性は、最大平坦型を示している(点線)。そして、共振器間距離tを25mmから30mmに変更した場合に、接続角度θ1が22°の状態では、共振器12の入力インピーダンスが小さすぎるため、透過率に係る周波数特性はピークが一つの単峰型となり、透過率も大幅に低下する(一点鎖線)。この際には、接続角度θ1を22°から16°へ小さくすることによって、共振器12の入力インピーダンスが増加するため、透過率に係る周波数特性を最大平坦型に変化させることができる(実線)。
【0106】
一方、図14Bでは、共振器間距離tが25mmのときには、電極間距離Lを1.5mmの状態でインピーダンス整合し、透過率に係る周波数特性は、最大平坦型を示している(図示せず)。そして、共振器間距離tを25mmから30mmに変更した場合に、電極間距離Lを1.5mmの状態では、共振器12の入力インピーダンスが小さすぎるため、透過率に係る周波数特性は、ピークが一つの単峰型となり、透過率も大幅に低下する(一点鎖線)。この際には、電極間距離Lを1.5mmから2mmへ増加することによって、共振器12の入力インピーダンスを増加させ、透過率に係る周波数特性を最大平坦型に変化させることができる(実線)。尚、図14Bでは、図14Aと同様に、膜厚を1.5mmとしたまま接続角度θ1を145°から85°へ変更することでも、透過率に係る周波数特性を最大平坦型に変化させることができる(点線)。
【0107】
図14Bの実線と点線を比較すると分かるように、接続角度θ1を変更することでインピーダンス整合を行うよりも、電極間距離Lを変更することでインピーダンス整合を行った方が、結合係数が大きい状態を維持することが可能であり、即ち、最大平坦型を示す透過率に係る周波数特性の通過帯域の幅を更に広く確保することが可能である。従って、接続角度θ1を変更して入力インピーダンスを調整するよりも、電極間距離Lを変更して入力インピーダンスを調整する方が、好適である。
【0108】
このような現象が生じる理由としては、図14Aのように接続角度θ1を小さくすることでインピーダンス整合を行った場合、入出力線路14と共振器12の電気的な接続位置が、電気的振幅が大きい共振器12の中心付近となり、その結果、共振器12の共振特性の低下を引き起こすためと推定される。この点、図14Bのように電極間距離Lを変更することでインピーダンス整合を行う場合には、入出力線路14と共振器12の電気的な接続位置をリングの端部(開放部12a付近)に設定することができ、共振器12の共振特性の低下を引き起こさないためと考えられる。
【0109】
以上のように、本実施形態に係る共振装置1、2において、誘電体基板11、21と回路基板13、23とは、誘電体基板11、21と回路基板13、23とが対向する方向における共振器12、22と入出力線路14、24との間の距離を調整可能に取り付けられている。これによって、入出力線路14、24と共振器12、22との間に直列に形成される容量を変更することが可能となり、透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることができる。
【0110】
尚、本実施形態に係る共振装置1、2において、誘電体基板11と回路基板13の間の距離を調整するための手法としては、誘電体材料16の厚みを変形させる態様に代えて、厚さの異なる誘電体材料16を用意しておき、当該誘電体材料16を取り替える態様であってもよい。
【0111】
(第3の実施形態)
次に、図15図16を参照して、第3の実施形態に係る共振装置1、2の構成の一例について説明する。
【0112】
図15は、本実施形態に係る共振装置1、2の構成の一例を示す側面断面図である。図16は、本実施形態に係る共振装置1を誘電体基板11の表面側から平面視した図である。
【0113】
本実施形態に係る共振装置1、2は、それぞれ、誘電体基板11、21と回路基板13、23の間に配設する誘電体材料16、26を変更可能とすることによって、電極部14a、24aと共振器12、22の間に形成される容量を調整可能とする点で、第2の実施形態と相違する。
【0114】
本実施形態に係る誘電体材料16、26は、平面視において、共振器12、22と電極部14a、24aとが対向する領域の中心位置を境界にして、一方側の第1の領域16a、26aが第1の比誘電率となるように形成され、他方側の第2の領域16b、26bが第2の比誘電率となるように形成されている。尚、本実施形態においても、共振装置1と共振装置2とは、同様の構成を有するものとして、共振装置1の構成についてのみ、説明する。
【0115】
尚、誘電体材料16の比誘電率を領域毎に調整する手法としては、例えば、誘電体材料16の含有物の調整する方法を用いることができる。例えば、誘電体材料16としてテフロン(登録商標)を用いた場合、当該テフロンの比誘電率は約2であるが、比誘電率が高いセラミックのパウダーを混ぜることにより、誘電体材料16の比誘電率を10程度まで変化させることができる。
【0116】
又、本実施形態に係る誘電体材料16は、誘電体基板11と回路基板13の間において、固定位置を横方向(誘電体基板11と回路基板13とが対向する方向と直交する方向を表す。以下同じ)にスライド移動することが可能に構成されている。図15に示すように、誘電体材料16には、固定部材15を挿通するための貫通溝16cが横方向に延在するように形成されている。そして、固定部材15は、当該貫通溝16cに沿って横方向にスライド移動可能とされている。
【0117】
これによって、共振器12と電極部14aの間に介在する領域における、誘電体材料16の第1の領域16aと第2の領域16bの割合を変化させることが可能となっている。そして、これにより、電極部14aと共振器12の間に形成される容量を変化させ、透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることが可能となる。
【0118】
尚、本実施形態においても、共振装置1の誘電体材料16の第1の領域16aと第2の領域16bの割合と、共振装置2の誘電体材料26の第1の領域26aと第2の領域26bの割合とは、同一に設定される。
【0119】
以上のように、本実施形態に係る共振装置1、2において、誘電体基板11、21と回路基板13、23とは、共振器12、22と入出力線路14、24の間に介在する誘電体材料16、26の比誘電率を調整可能に取り付けられている。これによって、入出力線路14と共振器12との間に直列に形成される容量を変更することが可能となり、透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に変化させることができる。
【0120】
尚、本実施形態に係る共振装置1において、誘電体基板11と回路基板13の間の形成される容量を変化させる手法としては、誘電体基板11と回路基板13の間に配設する誘電体材料16を、比誘電率の異なる誘電体材料16に変更する手法を用いてもよい。
【0121】
(第4の実施形態)
次に、図17図18を参照して、第4の実施形態に係る共振装置1、2の構成の一例について説明する。上記各実施形態では、共振装置1と共振装置2とが同一な構成を有する態様を示したが、共振装置1と共振装置2とで異なる構成とされてもよい。
【0122】
図17は、本実施形態に係る共振装置1、2の構成の一例を示す斜視図である。尚、図17では、入出力線路14、24と共振器12、22のみを図示している。
【0123】
本実施形態においては、共振器12のリング状の金属線の配線幅に比して、共振器22のリング状の金属線の配線幅の方が太く形成されている点で、第2の実施形態に係る共振装置1、2と相違する。
【0124】
かかる態様においては、透過率に係る周波数特性を、双峰型から最大平坦型に調整するためには、共振器12の入力インピーダンスと共振器22の出力インピーダンスとを別個に調整すればよい。
【0125】
図18は、本実施形態に係る共振装置1、2において、共振器12と電極部14aの間の電極間距離L1及び共振器22と電極部24aの間の電極間距離L2それぞれを調整した際の透過特性及び反射特性を示す図である。
【0126】
尚、図18は、電磁界解析シミュレーションによって算出された透過特性及び反射特性である。図18の実線グラフは透過率(S21)、点線グラフは反射率(S11)を表す。
【0127】
本シミュレーションでは、共振器12のリング状の金属線の配線幅を10mmと設定し、共振器22のリング状の金属線の配線幅を12mmと設定した。この場合、共振器12と共振器22とで配線幅が互いに異なるため、共振器12の入力インピーダンスと共振器22の出力インピーダンスとが異なる状態となる。
【0128】
従って、かかる状態に対応させるため、本実施形態においては、第2の実施形態では両者の電極間距離Lを1.5mmと設定していた構成を、電極間距離L1を1.55mm、電極間距離L2を1.25mmと変更した。このように、共振装置1と共振装置2とで、別個に共振器12、22の入力インピーダンス(又は出力インピーダンス)を調整することで、図18に示すように、透過率に係る周波数特性を最大平坦型に変化させることが可能である。
【0129】
尚、共振装置1と共振装置2とが異なる構成の態様としては、共振器12、22のリング状の金属線の配線幅の他、例えば、入出力線路14、24の線路幅、誘電体基板11、21の材料等が挙げられる。かかる態様においても、同様に、透過率に係る周波数特性を最大平坦型に調整することが可能である。
【0130】
(第5の実施形態)
上記各実施形態では、共振装置1、2を電力伝送に適用する態様を示したが、信号伝送に適用されてもよい。
【0131】
例えば、本発明に係る共振装置1、2は、回路基板間での信号伝送にも適用可能である。従来技術においては、ボンディングパッドやボンディングワイアを使用すると反射や輻射のため、高周波電力を半導体チップの外に取り出すことができなかった。しかしながら、上記のように、本発明に係る共振装置1、2を用いれば、半導体チップで生成した高周波電力を、損失なく、回路基板間で高周波電力を伝送する際に使用することができる。又、当該高周波電力をアンテナへ導くことで、極めて低コストのミリ波無線通信が実現できる。
【0132】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0133】
上記実施形態では、共振装置1、2の構成の一例を種々に示した。但し、各実施形態で示した態様を種々に組み合わせた共振装置1、2としてもよいのは勿論である。
【0134】
又、上記実施形態では、誘電体基板11と回路基板13とを固定する手法の一例として、ボルトとナットからなる固定部材15を用いる態様を示した。しかしながら、誘電体基板11と回路基板13とを固定する手法は、任意である。例えば、回路基板13の表面に凹部を設けると共に、誘電体基板11の裏面に凸部を設け、凹部と凸部を嵌合させるようにして、誘電体基板11と回路基板13とを固定してもよい。又、クリップ部材等を用いて誘電体基板11と回路基板13とを固定してもよい。
【0135】
又、上記実施形態では、共振器12、22の形状の一例として、リング状の閉曲線線路の一部に開放部12a、22aが形成された形状を示した。しかしながら、共振器12、22の形状は、種々に変形可能であり、例えば、一部に開放部12a、22aが形成された略矩形状にループする形状であってもよい。
【0136】
又、上記実施形態では、入出力線路14、24の電極部14a、24aの形状の一例として、略扇形状を示した。しかしながら、電極部14a、24aの形状は、種々に変形可能であり、例えば、共振器12、22と相似形のオープンリング形状としてもよい。
【0137】
又、上記実施形態では、送電装置100の共振器12と受電装置200の共振器22とを電磁結合する態様の一例として、両者が直接的に電磁結合する態様を示した。しかしながら、共振器12と共振器22との間に一個又は複数個の中継用共振器を配して、当該中継用共振器を介して、共振器12と共振器22との間で電磁結合する構成としてもよい。その場合、中継用共振器は、共振器12、22と相似形のオープンリング共振器とするのが望ましい。これによって、中継用共振器と共振器12の間及び中継用共振器と共振器22の間それぞれにおいて、強い電磁結合を確保し、高効率な電力伝送を実現することができる。
【0138】
又、上記実施形態では、入出力線路14、24の一例として、マイクロストリップ線路を用いる態様を示したが、コプレナー線路等が用いられてもよい。
【0139】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示に係る共振装置によれば、共振器間の電磁結合を利用して非接触で高周波電力の授受を行う際に、共振器間の電磁結合の状態の変化に対応することができる。
【符号の説明】
【0141】
U 電力伝送装置
1 共振装置
2 共振装置
11、21 誘電体基板
12、22 共振器
12a、22a 開放部
13、23 回路基板
14、24 入出力線路
14a、24a 電極部
15、25 固定部材
100 送電装置
100a 電源
100b 発振器
200 受電装置
200a 整流回路
200b 電気負荷
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18