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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/28 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B41J3/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018050285
(22)【出願日】2018-03-17
(65)【公開番号】P2019155890
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】西井 敏兼
(72)【発明者】
【氏名】石井 洋
(72)【発明者】
【氏名】西岡 国彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 光孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 章喜
(72)【発明者】
【氏名】原田 泰成
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0170900(US,A1)
【文献】特開平09-123537(JP,A)
【文献】特開2001-225512(JP,A)
【文献】特開平05-116380(JP,A)
【文献】特開平02-003358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0223982(US,A1)
【文献】特開2002-307756(JP,A)
【文献】特開平10-035032(JP,A)
【文献】特開昭55-083369(JP,A)
【文献】実開昭63-197158(JP,U)
【文献】特開2003-103873(JP,A)
【文献】実開昭63-198264(JP,U)
【文献】特開昭62-104359(JP,A)
【文献】実開平02-051456(JP,U)
【文献】特開2016-087880(JP,A)
【文献】特開2008-094101(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1822882(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に設けられた回転可能なローラを記録材の表面上で接触回転させるように画像形成装置本体を走査方向に移動せしめられながら記録材に画像を形成する画像形成装置において、
走査方向に移動せしめられて記録材に画像を形成するときの形態について、前記ローラを記録材の表面に接触させるローラ接触形態と、前記ローラの全てを記録材の表面に接触させないローラ非接触形態とに切替可能であり、
前記ローラ接触形態と前記ローラ非接触形態とで切り替える形態切替手段を設け、
前記形態切替手段が、画像形成装置本体に装着された状態で、画像形成装置本体と記録材の表面との間に介在して前記ローラを前記表面から浮かせる着脱可能なスペーサー部材であることを特徴とする画像形成装置
【請求項2】
求項の画像形成装置において、
画像形成装置本体を点支持するための複数の突起を前記スペーサー部材の表面に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項の画像形成装置において、
画像形成装置本体の複数の面のうち、記録材に画像を記録する記録部を露出させる面である記録面に沿いつつ、走査方向に直交する走査直交方向にて、前記記録部の位置から外れた位置を、前記複数の前記突起におけるそれぞれの配設位置としたことを特徴とする画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型画像形成装置本体に設けられた回転可能なローラを記録材の表面上で接触回転させるように携帯型画像形成装置本体を走査方向に移動せしめられながら記録材に画像を形成する携帯型画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のペン型プリンタ装置は、走査方向と直交する装置幅方向の両端それぞれにローラを備えている。これら二つのローラは装置の走査中、車輪のように記録材と接触回転する。一方のローラは、本体内部のインクリボンを巻き取るための回転力を得るためのものである。また、他方のローラは、記録材の表面上におけるペン型プリンタ装置の移動量を検知するためのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このペン型プリンタ装置においては、走査方向に真っ直ぐに移動せしめられるときに高い直進走行性を発揮する一方で、湾曲軌道に沿って移動せしめられるときに高い湾曲走行性を発揮するというように直進走行性と湾曲走行性とを両立させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、画像形成装置本体に設けられた回転可能なローラを記録材の表面上で接触回転させるように画像形成装置本体を走査方向に移動せしめられながら記録材に画像を形成する画像形成装置において、走査方向に移動せしめられて記録材に画像を形成するときの形態について、前記ローラを記録材の表面に接触させるローラ接触形態と、前記ローラの全てを記録材の表面に接触させないローラ非接触形態とに切替可能であり、前記ローラ接触形態と前記ローラ非接触形態とで切り替える形態切替手段を設け、前記形態切替手段が、画像形成装置本体に装着された状態で、画像形成装置本体と記録材の表面との間に介在して前記ローラを前記表面から浮かせる着脱可能なスペーサー部材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、直進走行性と湾曲走行性とを両立させることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るHMPを斜め上方から示す外観斜視図。
図2】移動操作中の同HMPを記録材及び形成直後画像部分とともに示す斜視図。
図3】上部ユニットを下部ユニットに対して開いた状態の同HMPを示す斜視図。
図4】同HMPを記録面側から示す底面図。
図5】同HMPの電気回路の一部を示すブロック図。
図6】同HMPのプリントボタンと記録部との位置関係を説明するための斜視図。
図7】記録材に画像を形成しているときの同HMPを記録材P及び形成直後画像部分とともに示す平面図。
図8】プリントボタンを発光させた同HMPを示す斜視図。
図9】ローラユニットを取り外した状態の同HMPを示す底面図。
図10】左側ローラユニット17を取り付けた状態の同HMPの下部ユニットを示す部分縦断面図。
図11】左側ローラユニッ7を加圧板バネによって加圧する方向と、右側ローラユニットを加圧板バネによって加圧する方向とを互いに逆にした例の各ローラ部の位置を説明するための模式図。
図12】同HMPにおける各ローラの位置を説明するための模式図。
図13】同HMPを移動操作しているユーザーの掌を示す側面図。
図14】湾曲軌道に沿って移動操作されているローラ非接触形態の同HMPを示す斜視図。
図15】第一変形例に係るHMPの下部ユニットと、スペーサー部材とを記録面側から示す斜視図。
図16】同スペーサー部材を装着した状態の同下部ユニットを示す斜視図。
図17】第二変形例に係るHMPの下部ユニット3を示す部分背面図。
図18】第三変形例に係るHMPの下部ユニット3を示す部分背面図。
図19】第四変形例に係るHMPを示す底面図。
図20】第五変形例に係るHMPを示す底面図。
図21】第六変形例に係るHMPを示す底面図。
図22】ローラ部と軸部材とを同じ材料で一体形成したローラユニットを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、携帯型画像形成装置であるハンディモバイル型インクジェットプリンタ(以下、HMPという)に適用した一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るHMPの基本的な構成について説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係るHMP1を斜め上方から示す外観斜視図である。同図に示されるHMP1は、上部ユニット2と下部ユニット3とから主に構成されている。HMP1は、全体的に直方体形状を有しており、その走査方向(=印字方向:図中矢印X方向)の幅は、ユーザーが掌で掴める程度である。
【0010】
HMP1の筐体は、後述するインクジェットヘッドの記録部を用紙などの記録材に対面させる面である記録面30、これの反対面である上面31、走査直交方向(図中矢印Y方向)に延在する左側面32などを有している。また、走査直交方向(図中矢印Y方向)に延在する右側面33、走査方向(図中矢印X方向)に延在する背面34、走査方向に延在する正面35なども有している。なお、走査直交方向は、記録材を主体にした場合における走査直交方向は、記録材の表面において走査方向と直交する方向である。また、HMP1を主体にした場合における走査直交方向は、記録面30の表面において走査方向と直交する方向である。
【0011】
同図に示されるHMP1は、記録面30を鉛直方向下方に向けつつ、記録反対面である上面31を鉛直方向上方に向ける姿勢になっている。上面31の外縁内(枠内)には、プリントボタン14と、電源ボタン15とが設けられている。また、上部ユニット2の左側面32には、USB接続口6が設けられている。
【0012】
USB接続口6にはUSBケーブルを接続するためのものである。HMP1の中に装着された充電式のバッテリー(図3の51)に対し、USB接続口6に接続したUSBケーブルを介して外部の電源から電力を供給することで、バッテリーを充電することができる。
【0013】
下部ユニット3の正面35側の端部は、下部ユニット3の前記端部以外の部分よりも幅の広い把持部36になっている。ユーザーは、画像形成のためにHMP1を記録材の表面上で走査方向(図中矢印X方向)に移動させるときには、把持部36を持ってHMP1を移動操作する。走査直交方向において、把持部36が他の部分に比べて幅広になっているのは、手で持ち易くするための他、把持部36が後述するバッテリー収容部になっているからである。
【0014】
ユーザーは電源ボタン15を長押しすることによってHMP1の電源の入切(ON/OFF)を切り替えることができる。電源を入れた状態では、スマートフォンなどとのBluetooth(登録商標)通信により、HMP1の上部ユニット2内に設けられた制御基板に対して画像情報を取得させることができる。その後、記録面30を記録材の表面に対面させる姿勢でHMP1を記録材の表面上に置いた後、プリントボタン14を一度押してから、図2に示されるようにHMP1を走査方向に沿って移動させることで、記録材Pの表面に画像を形成することができる。なお、このHMP1は、ユーザーの移動操作によって走査方向(図中矢印X方向)に沿って往移動せしめられるときと、復移動せしめられるときとのそれぞれで、記録材の表面に画像を形成することができる。
【0015】
記録材は、用紙などの紙類に限定されるものではなく、OHP、布、段ボール、包装容器、ガラス、基板などが含まれる。
【0016】
図3は、上部ユニット2を下部ユニット3に対して開いた状態のHMP1を示す斜視図である。図示のように、上部ユニット2は下部ユニット3に対して開閉するように下部ユニット3に保持されている。下部ユニット3の把持部36の内部空間には、HMP1の各機器に電源供給するためのバッテリー51が装着されている。
【0017】
下部ユニット3の把持部36とは異なる部分の中には、インクタンク一体型のインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)が着脱されるようになっている。図3に示されるように、インクジェットヘッド40すなわちインクカートリッジは、記録部とインクタンクとを一体で備えるとともに、HMP1の下部ユニット3に対して着脱可能である。このとき、インクの液滴を吐出する記録部が鉛直方向下方に向けられる。このインクジェットヘッド40は、記録部からインクの液滴を吐出して記録を行うものである。
【0018】
上部ユニット2の内面には、下部ユニット3内に装着されたインクジェットヘッド40を押さえて係止するためのヘッド押さえ板バネ37が固定されている。
【0019】
このHMP1では、下部ユニット3内において、バッテリー51をインクジェットヘッド40の側方に位置させているため、上方に位置させる構成に比べてHMP1の高さを低くしている。これにより、HMP51の重心位置を低くすることで、移動操作時におけるHMP1を転倒を抑えることができている。
【0020】
HMP1は、走査方向の大きさ(装置幅)をできるだけ小さくするように設計している。インクジェットヘッド40よりも僅かに幅広になっている程度である。装置幅が大きくなるほど、記録材Pの表面上においてHMP1を走査方向に移動操作できる範囲が小さくなって、記録可能範囲も狭くなってしまう。装置幅をできるだけ小さくすることで、記録材Pの表面上における記録可能範囲をできるだけ広くすることができる。
【0021】
図4は、HMP1を記録面側から示す底面図である。同図において、HMP1の記録面としての記録面30には、下部ユニット(図3の3)内に装着されたインクジェットヘッド40の記録部41を外部に露出させるための開口30aが設けられている。記録部41は、複数の吐出孔41aを有しており、圧電素子の駆動によってそれぞれの吐出孔41aからインクの液滴を個別に吐出することが可能である。
【0022】
記録部41は、インクジェットヘッド40の基板のうち、基板面方向において吐出孔41aを囲むように設けられている複数のインナーリードよりも内側(吐出孔41aの側)の領域である。このHMP1では、基板における記録部41の領域を白色に塗装して、周囲の黒色の領域とはっきり区別できるようにしている。つまり、白色の領域は、記録部41であることを示す目印になっている。この目印の形は、図示のように矩形状になっている。
【0023】
インクジェットヘッド40は、インクを吐出するための駆動源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子又は薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を具備する、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを用いるものである。
【0024】
記録部41の吐出孔41aから吐出される「液体」は、吐出孔41aから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。具体的には、「液体」は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等である。これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0025】
記録面30の外縁内には、記録材上におけるHMP1の位置を検知する検知手段としての位置検知センサー8、回転可能な左側第一ローラ部17a、左側第二ローラ部17b、右側第一ローラ部18a、右側第二ローラ部18bなどが設けられている。
【0026】
HMP1はユーザーによって走査方向に移動操作されるときに、記録材の表面上に接触している前述した四つのローラ部をタイヤのように回転させる。このようなローラ部が設けられていることで、ユーザーはHMP1を走査方向に沿って直進させることができる。このとき、記録材の表面に接触させているのは、HMP1の四つのローラ部だけであり、記録面30を記録材の表面に接触させていない。このため、インクジェットヘッド40の記録部41と記録材の表面との距離を一定に保って、所望の高画質の画像を形成することができる。
【0027】
位置検知センサー8は、記録材の表面までの距離や表面状態(例えば凹凸)を検知したり、HMP1の移動距離を検知したりするセンサーであり、例えばパソコンの光学式マウス(ポインティングデバイス)などで使用されているのと同類のものである。位置検知センサー8は、置かれている場所(記録材)に光を照射し、その部分の状態を「模様」として読み取る。そして、位置検知センサー8の動きに対してその「模様」がどのように移動するのかを連続して捉えることで、移動量を算出する。
【0028】
図5は、HMP1の電気回路の一部を示すブロック図である。
制御基板57は、各種の演算処理やプログラム実行を行うCPU55、Bt(Bluetooth)基板52、データを一時記憶するRAM53、ROM54、記録制御部56などを有している。この制御基板57は、上部ユニット(図1の2)の中空内において、USB接続口(図2の6)の裏側の位置に固定されている。
【0029】
Bt基板52は、スマートフォンやタブレット端末などの外部機器とのBluetooth通信によってデータ交信を行うものである。また、ROM54は、HMP1のハードウェア制御を行うファームウェアや、インクジェットヘッド40の駆動波形データ等を格納するものである。また、記録制御部56は、インクジェットヘッド40を駆動させるためのデータ処理を実行したり、駆動波形を生成したりするものである。
【0030】
制御基板57には、ジャイロセンサー58、位置検知センサー8、LEDランプ59、インクジェットヘッド40、プリントボタン14、電源ボタン15、バッテリー51などが電気接続されている。
【0031】
ジャイロセンサー58は、周知の技術により、HMP1の傾きや回転角度を検知して、その結果を制御基板57に送信するものである。LEDランプ59は、プリントボタン14における光透過性の材料からなる外装カバーの内部に設けられ、プリントボタン14を発光させるものである。
【0032】
電源ボタン15を押してHMP1の電源を入れると、各モジュールに電力が供給され、CPU55はROM54に格納されているプログラムに基づいて起動動作を開始し、プログラムや各データをRAM53に展開する。形成対象の画像データを外部機器からBluetooth通信によって受信すると。記録制御部56は、画像データに応じた駆動波形を生成する。そして、位置検知センサー8によって検知された記録材の表面上の位置に応じた画像を形成するようにインクジェットヘッド40のからのインクの吐出を制御する。
【0033】
図6は、HMP1のプリントボタン14と記録部41との位置関係を説明するための斜視図である。同図において、プリントボタン14は、記録反対面としての上面31の面内に設けられている。また、記録部41は、記録面30の面内に設けられている。そして、プリントボタン14は、記録面30と上面31との対向方向におけるプリントボタン14の投影像を記録部41に重ねる位置に配設されている。つまり、プリントボタン14は記録部41の真上に配設されている。
【0034】
プリントボタン14の平面形状及び平面サイズは、記録部41であることを示す上述の目印(図中の点線)の平面形状及び平面サイズと同じになっている。ここで、平面形状及び平面サイズと同じであるとは、厳密に一致するときのみならず多少の寸法差がある場合を含む。
【0035】
プリントボタン14は、ユーザーからのプリント命令操作がなされるボタンに加えて、上面31を見るユーザーに対して記録部41による記録位置を案内する案内手段として兼用されている。ユーザーは、HMP1の上面31に注目することで、記録材の表面に対する走査方向(図中矢印X方向)の記録位置と、走査直交方向(図中矢印Y方向)の記録位置とを知ることができる。
【0036】
図7は、記録材Pに画像を形成しているときのHMP1を記録材P及び形成直後画像部分とともに示す平面図である。ユーザーは、記録材Pの表面上に置いたHMP1を図中矢印方向に移動操作して、HMP1に画像形成プロセスを実行させている。このとき、案内手段としてのプリントボタン14に注目する視線は、図に示されるようにHMP1を真っ直ぐに見下ろすアングルになる。すると、記録材Pの左手側の辺と、右手側の辺とを容易に視認することができるため、HMP1の長手方向(図中矢印Y方向)と、記録材Pにおける左手側の辺、又は右手側の辺とを平行にするHMP1の姿勢を容易に維持することが可能になる。よって、画像を記録材Pの横方向や縦方向に真っ直ぐ沿わせて形成することを容易に実現することができる。
【0037】
命令操作手段としてのプリントボタン14が案内手段を兼ねていることから、ユーザーは、プリントを開始するためにプリントボタン14を押したときに、記録部41による記録位置を視覚的だけでなく、触覚的にも認識する。これにより、ユーザーに対して容易に記録位置を把握してもらうことができる。
【0038】
先に図5に示した制御基板57は、外部機器とのBluetooth通信によって画像データを取得すると、LEDランプ59を点滅させることで、光透過性のあるプリントボタン14を発光点滅させる。これを見たユーザーは、HMP1の画像データ取得が終了したことを知る。その後、HMP1を記録材P上に置いて、プリントボタン14を押す。
【0039】
一方、制御基板57は、LEDランプ59の点滅制御を開始すると、プリントボタン14が押されるのを待機する。そして、プリントボタン14が押されると、LEDランプ59を連続点灯させることで、図8に示されるようにプリントボタン14を連続発光させる。これを見たユーザーは、HMP1の走査方向への移動操作を開始する。このとき、プリントボタン14が連続発光しているので、ユーザーによる記録位置の把握をより促すことができる。
【0040】
HMP1の移動操作を終えたユーザーは、HMP1を記録材Pから取り上げて卓上などに置く。位置検知センサー8は、HMP1が記録材P上から取り上げられたとき、位置の検知ができなくなる。制御基板57は、位置検知センサー8が位置を検知しなくなったタイミングで、LEDランプ59を消灯させて、プリントボタン14の発光を停止させる。これを見たユーザーは、HMP1のプリント用の処理が終了したことを把握することができる。
【0041】
なお、移動操作中にプリントボタン14を押し続ける必要はない。移動操作に先立ってプリントボタン14を押して離せば、位置検知センサー8による検知結果に基づく画像形成処理が、画像形成の終了まで、もしくは位置検知センサー8による位置検知不能まで継続される。
【0042】
次に、特許文献1に記載のペン型プリンタ装置における不具合について説明する。このペン型プリンタ装置は、走査方向と直交する装置幅方向の両端それぞれにローラを備えている。これら二つのローラは装置の走査中、車輪のように記録材と接触回転する。二つのローラを記録材の表面上で接触回転させることで、ペン型プリンタ装置の直進走行性をある程度向上させることが可能である。しかしながら、ペン型プリンタ装置を湾曲軌道に沿って移動させるときには、二つのローラが邪魔になって良好な湾曲走行性を発揮させることができなかった。
【0043】
次に、実施形態に係るHMP1の特徴的な構成について説明する。
図9は、ローラユニットを取り外した状態のHMP1を示す底面図である。このHMP1は、左側ローラユニット17と、右側ローラユニット18とを有している。左側ローラユニット17は、HMP1の走査方向(図中矢印X方向)における左側面32側の端部に取り付けられる。また、右側ローラユニット18は、HMP1の走査方向における右側面33側の端部に取り付けられる。
【0044】
左側ローラユニット17は、金属製の軸部材17cと、これの長手方向における一端側に固定された左側第一ローラ部17aと、他端側に固定された左側第二ローラ部17bとを具備している。左側第一ローラ部17a、左側第二ローラ部17bのそれぞれは、ゴムなどの摩擦抵抗の大きな材料からなる。
【0045】
右側ローラユニット18は、金属製の軸部材18cと、これの長手方向における一端側に固定された右側第一ローラ部18aと、他端側に固定された右側第二ローラ部18bとを具備している。右側第一ローラ部18a、右側第二ローラ部18bのそれぞれも、ゴムなどの摩擦抵抗の大きな材料からなる。
【0046】
左側ローラユニット17は、軸部材17cの長手方向における両端付近のそれぞれがHMP1に固定された滑り軸受け73に係合することで、滑り軸受け73に回転可能に保持される。滑り軸受け73は、周方向において切り欠き部を具備しており、この切り欠き部を通じて軸部材17cが軸受け内部に挿入される。このとき、軸部材17cを押し込められる力によって一時的に歪むことで、通常時には軸部材17cの直径よりも小さい幅の切り欠き部を、軸部材17cの直径とほぼ同じ値まで拡げる。軸部材17cが滑り軸受け73内に完全に押し込まれると、滑り軸受け73の歪みが解消されて、切り欠き部の幅が軸部材17cの直径よりも小さくなる。これにより、左側ローラユニット17が滑り軸受け73に回転可能に保持される。
【0047】
左側ローラユニット17について説明したが、右側ローラユニット18も左側ローラユニット17と同様にして、HMP1に固定された滑り軸受け72に回転可能に保持される。
【0048】
左側ローラユニット17や右側ローラユニット18は、HMP1の走査方向(図中の矢印X方向)への直進走行性を高めるためのものである。互いに軸部材17cに固定された左側第一ローラ部17aと左側第二ローラ部17bとが一体的に回転しつつ、互いに軸部材18cに固定された右側第一ローラ部18aと右側第二ローラ部18bとが一体的に回転することで、直進走行性を高める。
【0049】
より詳しくは、左側ローラユニット17の左側第一ローラ部17aと左側第二ローラ部17bとは同一軸心で一体となって回転することから、それぞれのローラ部に線速差が生じたり、それぞれのローラ部が互いに逆方向に回転したりすることがない。この左側ローラユニット17が搭載されたHMP1をユーザーが走査方向に沿って移動操作している時に、HMP1に対して走査方向に沿った力に加えて、走査方向から外れる方向への力をかけたとする。後者の力(走査方向から外れる方向への力)は、二つのローラ部(17a、17b)を線速差をもたせて回転させたり、互いに回転させたりしようとするが、一体となって回転する二つのローラ部がそのように回転することはない。同じ方向且つ同じ線速で回転することから、HMP1は走査方向に沿った力に追従して走査方向に直進する。よって、ユーザーは、HMP1を容易に走査方向に沿って真っ直ぐに移動操作することができる。
【0050】
なお、左側ローラユニット17がHMP1の直進走行性を高めることについて説明したが、右側ローラユニット18も同様にして、HMP1の直進走行性を高めることができる。また、ローラユニット(17、18)の二つのローラ部(17a及び17b)(18a及び18b)を互いに独立させて回転させたとしても、ローラ部によって直進走行性をある程度向上させることが可能である。よって、二つのローラ部(17a及び17b)(18a及び18b)を一体的に回転させることは必須ではなく、互いに独立させて回転させてもよい。但し、一体的に回転させる方が、直進走行性をより高めることができる。
【0051】
このHMP1では、走査直交方向(図中矢印Y方向)において、記録部41の位置から外れた位置を、ローラユニット(17、18)における二つのローラ部(17a及び17b、18a及び18b)の配設位置にしている。具体的には、四つのローラ部(17a、17b、18a、18b)は何れも、記録材Pの上に置かれた記録部41と記録材Pとの対向方向における記録部41の投影像と、ローラ部の走査方向における投影像とを重ねない位置に配設されている。このような配設位置では、往復走査可能なHMP1を往移動操作しているときに、形成直後画像部分に対して左側ローラユニット17の左側第一ローラ部17aや左側第二ローラ部17bを接触させることがない。加えて、HMP1を復移動操作しているときに、形成直後画像部分に対して右側ローラユニット18の右側第一ローラ部18aや右側第二ローラ部18bを接触させることもない。よって、形成直後画像部分にローラ部(17a、17b、18a、18b)を接触させることによる画像の乱れを回避することができる。
【0052】
ローラユニット(17、18)は、二つのローラ部(17a及び17b、18a及び18b)の回転軸線方向における距離が大きくなるほど、HMP1の直進走行性を高めることができる。そこで、このHMP1では、走査直交方向にて、記録部41の位置よりも一端側(正面35側)にずれた位置を第一ローラ部(17a、18a)の配設位置としている。加えて、記録部41の位置よりも他端側(背面34側)にずれた位置を第二ローラ部(17b、18b)の配設位置としている。かかる構成では、一端側又は他端側の何れかに二つのローラ部をまとめて配設する構成に比べて、二つのローラ部における走査直交方向の距離を大きくしてHMP1の直進走行性を高めることができる。
【0053】
ローラユニット(17、18)の軸部材(17c、18c)としては、上述したように金属製のものを用いている。非金属製のものを用いる構成に比べて、HMP1の移動操作中における軸部材の撓みを抑えることで、軸部材の撓みでHMP1の走行を不安定化させることによる画像の乱れを抑えることができる。更には、軸部材として小径のものを用いてHMP1の小型化を図ることもできる。
【0054】
このHMP1では、左側ローラユニット17だけでなく、右側ローラユニット18を左側ローラユニット17に対して走査方向に並べて配設している。かかる構成では、上述した、走査方向から外れる力に対して、二つのローラユニット(17、18)が互いに走査方向の異なる位置で抵抗することで、HMP1の直進走行性をより高めることができる。
【0055】
図10は、左側ローラユニット17を取り付けた状態のHMP1の下部ユニット3を示す部分縦断面図である。同図では、記録面(図9の30)を上方に向けた状態の下部ユニット3を示している。下部ユニット3の壁には、加圧板バネ74が固定されている。この加圧板バネ74は、左側ローラユニット17の軸部材の長手方向における一端を他端側に向けて軸線方向に加圧することで、軸部材の長手方向における他端を下部ユニット3のケーシング内壁に押し当てている。
【0056】
このように加圧板バネ74によって左側ローラユニット17の軸部材17cを軸線方向に加圧して、左側第一ローラ部17a及び左側第二ローラ部17bの軸線方向へのガタツキを抑える(ガタツキを許容する空間を無くす)。左側ローラユニット17に着目すると、左側ローラユニット17がHMP1のケーシングに対して軸線方向にがたつくことになるが、移動操作中には、ケーシングが左側ローラユニット17に対してがたつくことになる。筐体は、具体的には、上部ユニット2や下部ユニット3のケーシングである。下部ユニット3のケーシング内には、記録部41が固定されているので、移動操作中に下部ユニット3のケーシングががたつくと、画像が乱れてしまう。加圧板バネ74によって軸部材17cを軸線方向に加圧することで、移動操作中における下部ユニット3のケーシングのガタツキを抑えて、ガタツキに起因する画像の乱れを抑えることができる。
【0057】
なお、左側ローラユニット17の軸部材17cを加圧板バネ74によって軸線方向に加圧する例について説明したが、右側ローラユニット18の軸部材18cも同様にして、加圧板バネによって軸線方向に加圧している。
【0058】
図11は、左側ローラユニット17を加圧板バネ74によって加圧する方向と、右側ローラユニット18を加圧板バネによって加圧する方向とを互いに逆にした例の各ローラ部の位置を説明するための模式図である。
【0059】
図中の矢印は、加圧板バネによる加圧方向を示している。図示のように、二つの加圧板バネの加圧方向を互いに逆方向にした場合、左側ローラユニット17をケーシングに押し付けてガタツキを無くす方向と、右側ローラユニット18をケーシングに押し付けてガタツキを無くす方向とを互いに逆にしてしまう。これにより、左側ローラユニット17の左側第一ローラ部17aと、右側ローラユニット18の右側第一ローラ部18aとで、軸線方向の位置をずらしてしまう。また、左側ローラユニット17の左側第二ローラ部17bと、右側ローラユニット18の右側第二ローラ部18bとについても、同様にして軸線方向の位置を互いにずらしてしまう。これにより、HMP1の直進走行性を低下させてしまう。
【0060】
そこで、このHMP1においては、加圧板バネ74が左側ローラユニット17の軸部材17cを加圧する方向と、右側ローラユニット18用の加圧板バネが右側ローラユニット18の軸部材を加圧する方向とを同じにするように、それら加圧板バネを配設している。
【0061】
かかる構成では、図12に示されるように、左側ローラユニット17のローラ部(17a、17b)と、右側ローラユニット18のローラ部(18a、18b)とを軸線方向においてほぼ同じ位置に存在させることが可能である。これにより、ローラユニット間でローラ部の位置を異ならせることによるHMP1の直進走行性の低下を抑えることができる。
【0062】
加圧板バネ74や、右側ローラユニット18用の加圧板バネの加圧方向については、軸線方向における把持部(図1の36)の側から反対側に向かう方向にしている。つまり、ローラユニット(17、18)よりも把持部の側に加圧板バネを固定している。これにより、ユーザーが机上に肘をつけながらHMP1を移動操作するときにおけるHMP1の直進走行性の低下を抑えることができる。
【0063】
具体的には、把持部(36)を把持したユーザーが机上に肘をつけると、肘を回転支点としてHMP1を湾曲軌道で移動操作し易くなる。このとき、ローラユニット(18、18)のガタツキを許容している場合には、ローラユニットの軸部材(17c、18c)を軸線方向における把持部の側とは反対側のケーシングに突き当てる。加圧板バネの加圧力でローラユニットのガタツキを抑えている場合であっても、その加圧力が把持部の側に向かう方向であると、ローラユニットが加圧力に打ち勝って把持部とは反対側に移動する可能性がある。そこで、把持部の側から反対側に加圧力を付与するようにしている。これにより、ローラユニットを把持部の側とは反対側に移動させる余地をなくすことで、ユーザーが机上に肘をつけながらHMP1を移動操作するときにおけるHMP1の直進走行性の低下を抑えることができる。
【0064】
なお、加圧板バネをケーシングに固定する代わりに、ローラユニット(17、18)の軸部材(17c、18c)の端部に固定してもよい。加圧板バネをケーシングに組み付ける工程をなくして、組み立て費用を低減することができる。
【0065】
図13は、HMP1を移動操作しているユーザーの掌を示す側面図である。HMP1において、ユーザーに把持される把持部36は、HMP1本体の走査直交方向(図中矢印Y方向)における一端側に設けられている。また、記録部動作命令の操作がなされる命令操作部としてのプリントボタン14は、走査直交方向における他端側の上面31に設けられている。つまり、走査直交方向において、把持部36とプリントボタン14とは、互いに反対側に設けられている。
【0066】
かかる構成では、ユーザーがHMP1を移動操作するのに先立って、HMP1の把持部36に親指を引っ掛けるようにしてHMP1を把持しながら、人差し指でプリントボタン14を押すと、自然に手首を宙に浮かせるようになる。これにより、移動操作中に手首を机上に置いて回転支点とし、この回転支点を中心にした手の動きによってHMP1の移動方向を直線軌道から逸らしてしまうことを防止することができる。
【0067】
既に説明したように、このHMP1では、二つのローラ部(17a及び17b、18a及び18b)を一体的に回転させるローラユニット(17、18)を設けていることで、HMP1の走査方向における直進走行性を高めている。しかし、湾曲軌道に沿ってHMP1を移動させたい場合もある。この場合、ローラユニットが湾曲軌道に沿ったHMP1の移動操作を阻害してしまう。
【0068】
そこで、このHMP1では、図9に示されるように、ローラユニット(17、18)の軸部材(17c、18c)を、保持手段としての滑り軸受け(73、72)に対して回転可能且つ着脱可能に保持させている。これにより、ユーザーは、HMP1を移動操作して記録材Pに画像を形成するときのHMP1の形態を、次のように切り替えることができる。即ち、ローラユニット(17、18)における二つのローラ部(17a及び17b、18a及び18b)のそれぞれを記録材Pの表面に接触させるローラ接触形態と、接触させないローラ非接触形態とで切り替えることができる。ローラ非接触形態は、ローラユニット(17、18)を滑り軸受け(73、72)から取り外すことで実現される。
【0069】
記録面30には、HMP1本体の三点支持を可能にする三つの突起71を記録面30に設けている。プラスチックなどからなるそれら突起71の先端は、上述したローラ接触形態におけるローラ部(17a及び17b、18a及び18b)と記録材Pとの接触位置よりも記録面30に近い位置にある。このため、ローラ接触形態では記録材Pに接触しないが、ローラ非接触形態では記録材Pに接触してHMP1の記録面30を宙に浮かせる。これにより、ローラ非接触形態での画像形成時に形成直後画像部分を記録面30で擦って画像を乱してしまうことを防止することができる。
【0070】
三つの突起71は何れも、走査直交方向(図中矢印Y方向)にて、記録部41の位置から外れた位置に配設されている。より詳しくは、突起71の走査方向(図中矢印X方向)における投影像と、記録部41と記録材Pとの対向方向における記録部41の投影像とを重ねない位置に、三つの突起71のそれぞれを配設している。
【0071】
かかる構成では、ローラ非接触形態での画像形成時に形成直後画像部分を突起71で擦って画像を乱してしまうことを防止することができる。
【0072】
図14は、湾曲軌道に沿って移動操作されているローラ非接触形態のHMP1を示す斜視図である。ローラ非接触形態では、三つの突起(71)による三点支持であることから、ローラ接触形態に比べて、HMP1の湾曲走行性が向上する。よって、湾曲軌道に沿ったHMP1の移動操作を容易に行うことができる。
【0073】
次に、実施形態に係るHMP1の一部の構成を他の構成に変形した各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るHMP1の構成は実施形態と同様である。
[第一変形例]
実施形態に係るHMP1では、HMP1の状態をローラ接触形態とローラ非接触形態とで切り替える形態切替手段として、滑り軸受け(73、72)を採用していたが、第一変形例では、スペーサー部材を採用している。
【0074】
図15は、HMP1の下部ユニット3と、スペーサー部材75とを記録面30側から示す斜視図である。スペーサー部材75は、下部ユニット3の記録面30に対して磁石で着脱されるようになっている。
【0075】
図16は、スペーサー部材75を装着した状態の下部ユニット3を示す斜視図である。スペーサー部材75の表面には、HMP1を三点支持するための三つの突起76が設けられている。下部ユニット3の記録面(図15の30)に装着されたスペーサー部材75の突起76の先端は、ローラ部(17a、17b、18a、18b)の表面よりも記録面30に対して遠い位置にある。このため、HMP1が記録材Pの表面に置かれると、突起76の先端は、記録面(30)と記録材Pの表面との間に介在してのローラ部を記録材Pの表面から浮かせる。これにより、ローラ非接触形態を実現する。
【0076】
三つの突起76は何れも、走査直交方向(図中矢印Y方向)にて、記録部41の位置から外れた位置に配設されている。より詳しくは、突起76の走査方向(図中矢印X方向)における投影像と、記録部41と記録材Pとの対向方向における記録部41の投影像とを重ねない位置に、三つの突起76のそれぞれを配設している。
【0077】
かかる構成では、ローラ非接触形態での画像形成時に形成直後画像部分を突起76で擦って画像を乱してしまうことを防止することができる。
【0078】
実施形態に係るHMP1では、二つのローラユニット(17、18)の着脱によって状態を切り替えるが、第一変形例に係るHMP1では、スペーサー部材75だけの着脱によって状態を切り替える。このため、実施形態に比べて状態を容易に切り替えることができる。これに対し、実施形態では、部品点数を増やすことなく(滑り軸受けは状態の切り替えにかかわらず必要である)状態の切り替えを実現して低コスト化を図ることができる。
【0079】
[第二変形例]
図17は、第二変形例に係るHMP1の下部ユニット3を示す部分背面図である。下部ユニット3の背面34には、ローラユニット移動機構が設けられている。ローラ移動手段としてのローラユニット移動機構は、屈折アーム(77、78)やアーム係止部材などから構成される。屈折アームを回動軸(77a、78a)を中心に回動させることで、ローラユニット(17、18)を記録材Pに接触させる位置と接触させない位置との間で移動させることが可能である。移動後には、アーム係止部材で屈折アーム(78、78)の回動を係止することで、ローラユニットの移動も係止する。
【0080】
同図では、ローラ接触形態になっているが、レバー(77、78)を回転させることで、ローラユニット(17、18)のローラ部をより上面に近づけると、ローラユニット(17、18)を記録材Pから引き離してローラ非接触形態にすることができる。
【0081】
かかる構成では、着脱可能なローラユニット(17、18)やスペーサー部材(75)の紛失を回避しつつ、HMP1の形態切り替えを行うことができる。
【0082】
[第三変形例]
図18は、第三変形例に係るHMP1の下部ユニット3を示す部分背面図である。下部ユニット3の背面34には、ピン移動機構が設けられている。支持部材移動手段としてのピン移動機構は、支持部材たるピン(82、83)、これを収容するようにケーシングに設けられた溝(3a、3b)、ピン(82、83)が固定されたアーム(79、80)、これを操作するためのハンドル(81)などから構成される。
【0083】
ハンドル81を上下動させると、それに伴ってピン(82、83)が上下動して、ローラユニット(17、18)よりも記録材Pから遠ざかる位置と、ローラユニット(17、18)よりも記録材Pに近づく位置との間を移動する。図示の状態では、ローラ接触形態になっているが、ハンドル(81)を引っ掛け爪84の位置まで移動させて引っ掛け爪84に引っ掛けると、ピン(82、83)がローラユニット(17、18)よりも記録材Pに近づいて、HMP1を持ち上げる。これにより、ローラユニット(17、18)が記録材Pから離間してローラ非接触形態になる
【0084】
かかる構成においても、着脱可能なローラユニット(17、18)スペーサー部材(75)の紛失を回避しつつ、HMP1の形態切り替えを行うことができる。
【0085】
[第四変形例]
図19は、第四変形例に係るHMP1を示す底面図である。このHMP1では、走査直交方向(図中矢印Y方向)において、記録部41の位置よりも一端側に外れた領域と、記録部41の位置よりも他端側に外れた領域とのうち、前者の領域に、左側ローラユニット17の二つのローラ部(17a、17b)を配設している。また、右側ローラユニット18も同様に、二つのローラ部(18a、18b)を一端側に外れた領域に配設している。
【0086】
かかる構成では、走査直交方向の端部にローラ部を設けることができないというレイアウト上の制約に対応することができる。
【0087】
[第五変形例]
図20は、第五変形例に係るHMP1を示す底面図である。このHMP1の左側ローラユニット17は、ローラ部として長尺ローラ部17dだけを具備している。また、右側ローラユニット18も、ローラ部として長尺ローラ部18dだけを具備している。それら長尺ローラ部17d、18dは何れも、走査直交方向(図中矢印Z方向)において、記録部41の位置よりも一端側に外れた領域に配設されている。
【0088】
走査直交方向において記録部41の位置よりも一端側に外れた領域にローラ部を設けるという制約の上で、装置のレイアウトによっては、ローラ部を複数設けるよりも一つの長尺ローラ部を設ける方が、ローラ部の総延長を長くできる場合がある。ローラ部の総延長を長くすることで、HMP1の直進走行性をより高めることができる。
【0089】
記録部41については、走査直交方向において、HMP1の中心よりもできるだけ離れた位置に設けることが望ましい。図示の例では、走査直交方向の端部に記録部41を配設しており、これによって長尺ローラ部17d、18dを十分に長く確保することができている。
【0090】
長尺ローラ部17d、18dの長さについては、20[mm]以上にすることが望ましい。より好ましくは30[mm]以上、更に好ましくは40[mm]以上である。このHMP1では、40[mm]以上にしている。
【0091】
[第六変形例]
図21は、第六変形例に係るHMP1を示す底面図である。このHMP1では、ローラユニット(17、18)の第一ローラ部(17a、18a)が長尺ローラ部になっている。これにより、HMP1の直進走行性をより高めることができる。
【0092】
これまで、金属製の軸部材(17c、18c)にゴム製のローラ部(17a、17b、17d、18a、18b、18d)を固定した例について説明したが、図22に示されるように、軸部材とローラ部とを同じ材料で一体成型してもよい。
【0093】
以上、インクジェット方式のHMP1に本発明を適用した例について説明したが、本発明の構成は他の画像形成方法による装置にも適用できる。例えば、感熱方式、又は熱転写方式など適宜な方式の記録装置に適用できる。熱転写方式のHMPは、液体を収納する収納容器としてのインクリボンを備えるため、インクリボンの底部に凹所を形成し、凹所により形成されたスペースに記録材を検知する検知手段としての位置検知センサを収容すればよい。
【0094】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、携帯型画像形成装置本体(例えば下部ユニット3のケーシング)に設けられた回転可能なローラ(例えば左側ローラユニット17、右側ローラユニット18)を記録材(例えば記録材P)の表面上で接触回転させるように携帯型画像形成装置本体を走査方向に移動せしめられながら記録材に画像を形成する携帯型画像形成装置(例えばHMP1)において、走査方向(例えば矢印X方向)に移動せしめられて記録材に画像を形成するときの形態について、前記ローラを記録材の表面に接触させるローラ接触形態と、接触させないローラ非接触形態とで切り替える形態切替手段を設けたことを特徴とするものである。
【0095】
第1態様においては、形態切替手段によってローラ接触形態に設定してローラを記録材の表面に接触させながら回転させることで、携帯型画像形成装置を良好に直進走行させることができる。この一方で、形態切替手段によってローラ非接触形態に設定して形態型画像形成装置を移動操作すると、携帯型画像形成装置をローラに邪魔されることなく良好に湾曲軌道に沿って移動させることができる。よって、直進走行性と湾曲走行性とを両立させることができる。
【0096】
[第2態様]
第2態様は、第1態様であって、前記形態切替手段が、前記ローラを回転可能且つ着脱可能に保持する保持手段(例えば滑り軸受け72、73)であることを特徴とするものである。
【0097】
第2態様においては、部品点数を増やすことなく、ローラ接触形態と非ローラ接触形態との形態切り替えを行うことができる。
【0098】
[第3態様]
第3態様は、第1態様において、前記ローラが取り外された携帯型画像形成装置本体を点支持するための複数の突起(例えば71)を携帯型画像形成装置本体に設けたことを特徴とするものである。
【0099】
第3態様においては、ローラ非接触形態で携帯型画像形成装置本体を点支持することで、面支持する構成に比べて、携帯型画像形成装置の湾曲走行性を高めることができる。
【0100】
[第4態様]
第4態様は、第1態様であって、前記形態切替手段が、携帯型画像形成装置本体に装着された状態で、携帯型画像形成装置本体と記録材の表面との間に介在して前記ローラを前記表面から浮かせる着脱可能なスペーサー部材(例えばスペーサー部材75)であることを特徴とするものである。
【0101】
第4態様においては、第3態様に比べて、ローラ接触形態とローラ非接触形態との切り替えを容易に行うことができる。
【0102】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、携帯型画像形成装置本体を点支持するための複数の突起(例えば突起76)を前記スペーサー部材の表面に設けたことを特徴とするものである。
【0103】
第5態様においては、ローラ非接触形態で携帯型画像形成装置本体を点支持することで、面支持する構成に比べて、携帯型画像形成装置の湾曲走行性を高めることができる。
【0104】
[第6態様]
第6態様は、第3又は第5態様において、携帯型画像形成装置本体の複数の面のうち、記録材に画像を記録する記録部を露出させる面である記録面に沿いつつ、走査方向に直交する走査直交方向にて、前記記録部の位置から外れた位置を、前記複数の前記突起におけるそれぞれの配設位置としたことを特徴とするものである。
【0105】
第6態様においては、記録部によって記録材に記録された形成直後画像部分に対して突起を接触させることがないので、形成直後画像部分に突起を接触させることによる画像の乱れを回避することができる。
【0106】
[第7態様]
第7態様は、第1態様において、前記形態切替手段が、前記ローラを記録材に接触させる位置と接触させない位置との間で移動させるローラ移動手段(例えばローラユニット移動機構)であることを特徴とするものである。
【0107】
第7態様においては、着脱可能なローラユニット(17、18)やスペーサー部材(75)の紛失を回避しつつ、携帯型画像形成装置の形態切り替えを行うことができる。
【0108】
[第8態様]
第8態様は、第1態様において、前記形態切替手段が、携帯型画像形成装置を支持する複数の支持部材(例えばピン82、83)を、前記ローラよりも記録材に近づく位置と、前記ローラよりも記録材から遠ざかる位置との間で移動させる支持部材移動手段(例えばピン移動機構)であることを特徴とするものである。
【0109】
第8態様においても、着脱可能なローラユニットやスペーサー部材の紛失を回避しつつ、携帯型画像形成装置の形態切り替えを行うことができる。
【0110】
[第9態様]
第9態様は、回転可能なローラが設けられた携帯型画像形成装置本体と、記録材に画像を記録し且つ携帯型画像形成装置本体に対して着脱可能な記録部とを有し、前記ローラを記録材の表面上で接触回転させるように携帯型画像形成装置本体を走査方向に移動せしめられながら記録材に画像を形成する携帯型画像形成装置における携帯型画像形成装置本体において、走査方向に移動せしめられて記録材に画像を形成するときの形態について、前記ローラを記録材の表面に接触させるローラ接触形態と、接触させないローラ非接触形態とで切り替える形態切替手段を設けたことを特徴とするものである。
【0111】
第9態様においては、携帯型画像形成装置の直進走行性と湾曲走行性とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0112】
P:記録材
X:走査方向
Y:走査直交方向
Z:対向方向
1:HMP(携帯型画像形成装置)
2:上部ユニット
3:下部ユニット
14:プリントボタン(命令操作部)
17:左側ローラユニット(ローラユニット)
17a:左側第一ローラ部(ローラ部)
17b:左側第二ローラ部(ローラ部)
17c:軸部材
17d:長尺ローラ部
18:右側ローラユニット(ローラユニット)
18a:右側第一ローラ部(ローラ部)
18b:右側第二ローラ部(ローラ部)
18c:軸部材
18d:長尺ローラ部
30:記録面
31:上面
32:左側面
33:右側面
34:背面
35:正面
36:把持部
71:突起
72:滑り軸受け(形態切替手段、保持手段)
73:滑り軸受け(形態切替手段、保持手段)
74:加圧バネ(加圧手段)
75:スペーサー部材(形態切替手段)
76:突起
82:ピン(支持部材)
83、ピン(支持部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【文献】特開平1-271263号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22