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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】画像投写装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220708BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220708BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20220708BHJP
   G02B 26/10 20060101ALN20220708BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
H04N5/74 A
G02B26/10 C
G02B26/10 104Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018050930
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019164215
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】荻野 心平
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197173(JP,A)
【文献】特開2016-206612(JP,A)
【文献】特開2017-219623(JP,A)
【文献】特開2017-016455(JP,A)
【文献】特開2016-218181(JP,A)
【文献】特開2018-018034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0320952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光によって中間画像が形成される中間画像形成部材と、前記中間画像を形成した画像光が入射される複数膜光学部材とを備え、前記複数膜光学部材に入射した画像光を用いて画像を投写する画像投写装置において、
投写される画像と前記中間画像との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が互いにずれるように構成され、
前記中間画像は、該中間画像の横方向と一致しない偏光軸をもって中間画像形成部材から出射され、
前記複数膜光学部材は、該複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように配置されていることを特徴とする画像投写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投写装置において、
前記複数膜光学部材は、入射光から赤外光成分をカットした反射光を反射する赤外光カット反射部材であることを特徴とする画像投写装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像投写装置において、
前記中間画像形成部材に入射する前の光の偏光面を調整して、前記複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように構成されていることを特徴とする画像投写装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像投写装置において、
前記光源として、特定の偏光面をもつ偏光を射出するものを用い、
前記光源は、前記複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように、該光源の射出する前記偏光の光軸回りの回転位置が調整されていることを特徴とする画像投写装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像投写装置において、
前記光源と前記中間画像形成部材との間の光路上に、前記複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように偏光面が調整された偏光を射出する偏光調整部材を配置したことを特徴とする画像投写装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像投写装置において、
前記複数膜光学部材を経た画像光を透過反射部材へ投写する投写光学系を有することを特徴とする画像投写装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像投写装置と、前記透過反射部材としてのウィンドシールドとを備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投写装置及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの光によって中間画像形成部材に形成される中間画像を、複数の光学膜が積層された複数膜光学部材を経て、画像を投写する画像投写装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光源からの光によって中間画像を形成する液晶パネル(中間画像形成部材)と、液晶パネルからの画像光を車両のウィンドシールドに向けて反射させるコールドミラー(複数膜光学部材)とを備えたヘッドアップディスプレイ(HUD)装置(画像投写装置)が開示されている。このHUD装置は、液晶パネルとコールドミラーとの間の光路上に、コールドミラーへ入射させる画像光をs波(コールドミラーでの反射においてs偏光となる画像光)に変換する位相差フィルム等の位相子を備えている。これによれば、p波(コールドミラーでの反射においてp偏光となる画像光)のコールドミラーへの入射が抑制される結果、コールドミラーへ入射するs波とp波の偏光成分間の位相差によってコールドミラーから出射する偏光状態が波長ごとに変化することが抑制され、中間画像で形成された色に近い色で投写画像を視認させることができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像投写装置は、前記特許文献1に開示のHUD装置を含め、通常、投写画像と中間画像との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が一致するように配置される。そのため、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸(電場ベクトルの向き)をもつ偏光画像光を投写したい場合、中間画像に対しても同じ相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光が中間画像形成部材から射出されるように構成すれば、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光を投写することができる。例えば、投写画像の横方向に平行な偏光軸をもつ偏光画像光を投写したい場合、中間画像の横方向に平行な偏光軸をもつ画像光が中間画像形成部材から射出されるように構成すればよい。
【0005】
一方、車両のウィンドシールドのように非対称曲面の領域に対して画像を投写させる場合などの特定の状況下においては、投写画像と中間画像との間の画像回転位置関係が互いにずれるように配置することが、投写画像の高画質等においてメリットがある。しかしながら、特にこの配置においては、中間画像形成部材から射出される偏光画像光を、複数の光学膜が積層されたコールドミラー等の複数膜光学部材を経て投写させる場合、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光を投写することができず、投写画像の輝度低下などの不具合を引き起こすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、光源からの光によって中間画像が形成される中間画像形成部材と、前記中間画像を形成した画像光が入射される複数膜光学部材とを備え、前記複数膜光学部材に入射した画像光を用いて画像を投写する画像投写装置において、投写される画像と前記中間画像との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が互いにずれるように構成され、前記中間画像は、該中間画像の横方向と一致しない偏光軸をもって中間画像形成部材から出射され、前記複数膜光学部材は、該複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中間画像形成部材から射出される偏光画像光が複数膜光学部材を経て投写される場合であっても、投写画像の輝度低下などの不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における中間画像形成装置の一例を示す概略図。
図2】同中間画像形成装置の一例のハードウェア構成図。
図3】同中間画像形成装置の制御装置の一例の機能ブロック図。
図4】同中間画像形成装置に係る処理の一例のフローチャート。
図5】同中間画像形成装置の光偏向器の一例を+Z方向から見たときの平面図。
図6図5に示す光偏向器のP-P’断面図。
図7図5に示す光偏向器のQ-Q’断面図。
図8】光偏向器の第二駆動部の変形を模式的に表した模式図。
図9】(a)は、光偏向器の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形の一例を示すグラフ図。(b)は、光偏向器の圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bの波形の一例を示すグラフ図。(c)は、(a)の駆動電圧の波形と(b)の駆動電圧の波形を重ね合わせた一例を示すグラフ図。
図10】同中間画像形成装置による光走査を説明する図。
図11】同中間画像形成装置を適用したヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図。
図12】同ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図。
図13】中間画像がコールドミラー及び投写ミラーを経てフロントガラスで反射し、ユーザーである観察者に向かう画像光の光路を示す説明図。
図14】(a)及び(b)は、中間画像の画像面と投写画像の画像面とが平行となるように、図13に示す光路を光学的に等価の状態で変更した等価光路を示す説明図。
図15図14(a)及び(b)に示す等価光路において、投写画像と中間画像とを重ねて、両者の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
まず、図面を参照して、本実施形態に係る画像投写装置について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における画像投写装置に備わった中間画像形成装置の一例を示す概略図である。
図1に示すように、中間画像形成装置10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を光走査部材としての光偏向器13が有する反射面14により偏向して中間画像形成部材としての中間スクリーン部材15を光走査して中間画像を形成する。光偏向器13により光走査可能な領域である走査可能領域16は、有効走査領域17を含む。
【0011】
中間画像形成装置10は、制御装置11、光源装置12、光偏向器13、第一受光器18、第二受光器19により構成される。
【0012】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。光源装置12は、例えばレーザ光を照射するレーザ装置である。光偏向器13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。中間スクリーン部材15は、例えば光拡散部材であり、具体的には、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイである。なお、中間スクリーン部材15は、光拡散板など他の部材であってもよく、また必ずしも光拡散部材である必要はない。第一受光器18及び第二受光器19は、例えば光を受光して受光信号を出力するPD(Photo Diode)である。
【0013】
制御装置11は、外部装置等から取得した光走査情報(画像情報)に基づいて光源装置12及び光偏向器13の制御信号を生成し、制御信号に基づいて光源装置12及び光偏向器13に駆動信号を出力する。また、光源装置12から出力される信号、光偏向器13から出力される信号、第一受光器18から出力される第一受光信号、第二受光器19から出力される第二受光信号に基づいて、光源装置12と光偏向器13の同期や制御信号の生成を行う。
【0014】
光源装置12は、制御装置11から入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。
【0015】
光偏向器13は、制御装置11から入力された駆動信号に基づいて反射面14を一軸方向(一次元方向)又は二軸方向(二次元方向)の少なくともいずれかに可動させ、光源装置12からの光を偏向する。なお、駆動信号は、所定の駆動周波数を有する信号である。光偏向器13は、所定の固有振動数(共振周波数とも呼ぶ。)を有している。
【0016】
これにより、例えば、光走査情報(画像情報)に基づいた制御装置11の制御によって、光偏向器13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光を偏向して光走査することにより、中間スクリーン部材15に任意の中間画像を形成(投影)することができる。
【0017】
本実施形態では、中間画像形成方式が、光走査方式であるが、液晶ディスプレイ(LCD)や蛍光表示管(VFD)を利用した方式でもよい。
【0018】
なお、光偏向器13の詳細及び制御装置11による制御の詳細については後述する。
【0019】
次に、図2を参照して、中間画像形成装置の一例のハードウェア構成について説明する。
図2は、中間画像形成装置の一例のハードウェア構成図である。
図2に示すように、中間画像形成装置10は、制御装置11、光源装置12、光偏向器13、第一受光器18、第二受光器19を備え、それぞれが電気的に接続されている。その中でも制御装置11の詳細について以下に説明する。
【0020】
制御装置11は、CPU20、RAM(Random Access Memory)21、ROM(Read Only Memory)22、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26を備えている。
【0021】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0022】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が中間画像形成装置10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0023】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25及び光偏向器ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。また、光源装置ドライバ25及び光偏向器ドライバ26を介して光源装置12及び光偏向器13の出力信号を取得し、さらに第一受光器18及び第二受光器19から受光信号を取得し、出力信号及び受光信号に基づいて制御信号を生成する。
【0024】
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、車車間通信、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続又は通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0025】
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0026】
光偏向器ドライバ26は、入力された制御信号に従って光偏向器13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0027】
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0028】
ここで、光走査情報とは、光源装置12と光偏向器13により中間スクリーン部材15にどのように光走査させるかを示した情報であり、具体的には、例えば、光走査により中間画像を表示する場合の画像データである。
【0029】
次に、図3を参照して、中間画像形成装置10の制御装置11の機能構成について説明する。
図3は、中間画像形成装置の制御装置の一例の機能ブロック図である。
本実施形態に係る制御装置11は、CPU20の命令及び図2に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0030】
図3に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現される制御手段であり、光走査情報や各デバイスからの信号を取得し、それらに基づいて制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
【0031】
例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。また、制御部30は、駆動信号出力部31を介して光源装置12、光偏向器13の各出力信号を取得し、各出力信号に基づいて制御信号を生成する。さらに、制御部30は、第一受光器18及び第二受光器19の各受光信号を取得し、各受光信号に基づいて制御信号を生成する。
【0032】
駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12又は光偏向器13に駆動信号を出力する。駆動信号出力部31は例えば駆動電圧を光源装置12又は光偏向器13に印加する印加手段として機能する。駆動信号出力部31は、駆動信号を出力する対象ごとに設けられてもよい。
【0033】
なお、駆動信号は、光源装置12又は光偏向器13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミング及び照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、光偏向器13においては、光偏向器13の有する反射面14を可動させるタイミング及び可動範囲を制御する駆動電圧である。
【0034】
次に、図4を参照して、中間画像形成装置10が中間スクリーン部材15を光走査する処理について説明する。
図4は、中間画像形成装置に係る処理の一例のフローチャートである。
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。また、制御部30は、駆動信号出力部31を介して光源装置12、光偏向器13の各出力信号をそれぞれ取得し、第一受光器18及び第二受光器19の各受光信号をそれぞれ取得する。
【0035】
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報、各出力信号、各受光信号から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。このとき、起動時は各出力信号、各受光信号を取得できない場合があるため、起動時は別ステップにより所定動作を行ってもよい。
【0036】
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12及び光偏向器13に出力する。
【0037】
ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12及び光偏向器13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0038】
なお、本実施形態の中間画像形成装置10では、1つの制御装置11が光源装置12及び光偏向器13を制御する装置及び機能を有しているが、光源装置用の制御装置と光偏向器用の制御装置を別体に設けてもよい。
【0039】
また、本実施形態の中間画像形成装置10では、一つの制御装置11に光源装置12及び光偏向器13の制御部30の機能及び駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。
【0040】
次に、図5図7を参照して、光偏向器について詳細に説明する。
図5は、2軸方向に光偏向可能な両持ちタイプの光偏向器の平面図である。
図6は、図5のP-P’断面図である。
図7図5のQ-Q’断面図である。
【0041】
図5に示すように、光偏向器13は、入射した光を反射するミラー部101と、ミラー部に接続され、ミラー部をY軸に平行な第一軸周りに駆動する第一駆動部110a,110bと、ミラー部及び第一駆動部を支持する第一支持部120と、第一支持部に接続され、ミラー部及び第一支持部をX軸に平行な第二軸周りに駆動する第二駆動部130a,130bと、第二駆動部を支持する第二支持部140と、第一駆動部及び第二駆動部及び制御装置に電気的に接続される電極接続部150と、を有する。
【0042】
光偏向器13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板上に反射面14や第一圧電駆動部112a,112b、第二圧電駆動部131a~131f、132a~132f、電極接続部150等を形成した後にエッチング処理等で基板を成形することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、前記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
【0043】
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第一シリコン層の上に酸化シリコン層162が設けられ、その酸化シリコン層162の上にさらに単結晶シリコンからなる第二シリコン層が設けられている基板である。以降、第一シリコン層をシリコン支持層161、第二シリコン層をシリコン活性層163とする。なお、SOI基板は、焼結してシリコン活性層163の表面に酸化シリコン層164を形成した後に使用される。
【0044】
シリコン活性層163は、X軸方向又はY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163、又はシリコン活性層163と酸化シリコン層164で構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。なお、本実施形態では、シリコン活性層163と下部電極201の電気的接触を抑制するために酸化シリコン層164を設けているが、酸化シリコン層164は絶縁性を有する別の材質に置き換えてもよい。
【0045】
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば光偏向器13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
【0046】
ミラー部101は、例えば、円形状のミラー部基体102と、ミラー部基体の+Z側の面上に形成された反射面14とから構成される。ミラー部基体102は、例えば、シリコン活性層163と酸化シリコン層164から構成される。
【0047】
反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、ミラー部101は、ミラー部基体102の-Z側の面にミラー部補強用のリブが形成されていてもよい。
【0048】
リブは、例えば、シリコン支持層161及び酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制することができる。
【0049】
第一駆動部110a,110bは、ミラー部基体102に一端が接続し、第一軸方向にそれぞれ延びてミラー部101を可動可能に支持する2つのトーションバー111a,111bと、一端がトーションバーに接続され、他端が第一支持部の内周部に接続される第一圧電駆動部112a,112bと、から構成される。
【0050】
図6に示すように、トーションバー111a,111bは、シリコン活性層163と酸化シリコン層164から構成される。また、第一圧電駆動部112a,112bは、弾性部であるシリコン活性層163と酸化シリコン層164の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。
【0051】
上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)又は白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
【0052】
図5に戻り、第一支持部120は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163、酸化シリコン層164から構成され、ミラー部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。
【0053】
第二駆動部130a,130bは、例えば、折り返すように連結された複数の第二圧電駆動部131a~131f、132a~132fから構成されており、第二駆動部130a,130bの一端は第一支持部120の外周部に接続され、他端は第二支持部140の内周部に接続されている。このような蛇行状構造をミアンダ構造と呼ぶ。また、第二圧電駆動部のように1つの梁と駆動力を有する部材で構成されている構造を駆動カンチレバーとも呼ぶ。
【0054】
このとき、第二駆動部130aと第一支持部120の接続箇所及び第二駆動部130bと第一支持部120の接続箇所、さらに第二駆動部130aと第二支持部140の接続箇所及び第二駆動部130bと第二支持部140の接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。
【0055】
図7に示すように、第二駆動部130a,130bは、弾性部であるシリコン活性層163、酸化シリコン層164の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)又は白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
【0056】
図5に戻り、第二支持部140は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163、酸化シリコン層164から構成され、ミラー部101、第一駆動部110a,110b、第一支持部120及び第二駆動部130a,130bを囲うように形成された矩形の支持体である。
【0057】
電極接続部150は、例えば、第二支持部140の+Z側の面上に形成され、第一圧電駆動部112a,112b、第二圧電駆動部131a~131fの各上部電極203及び各下部電極201,及び制御装置11にアルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続されている。
【0058】
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163、酸化シリコン層164の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば-Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面及び他面の双方に設けても良い。
【0059】
また、ミラー部101を第一軸周り又は第二軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a,111bや第一圧電駆動部112a,112bが曲率を有した形状を有していてもよい。
【0060】
さらに、第一駆動部110a,110bの上部電極203の+Z側の面上、第一支持部の+Z側の面上、第二駆動部130a,130bの上部電極203の+Z側の面上、第二支持部の+Z側の面上の少なくともいずれかに酸化シリコン膜からなる絶縁層が形成されていてもよい。このとき、絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極203又は下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットに、開口部として部分的に絶縁層を除去又は絶縁層を形成しないことにより、第一駆動部110a,110b、第二駆動部130a,130b及び電極配線の設計自由度をあげ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。なお、絶縁層は絶縁性を有する部材であればよく、また、薄膜化等により反射防止材としての機能を備えさせてもよい。
【0061】
次に、光偏向器の第一駆動部及び第二駆動部を駆動させる制御装置の制御の詳細について説明する。
第一駆動部110a,110b、第二駆動部130a,130bが有する圧電部202は、分極方向に正又は負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば、伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第一駆動部110a,110b,第二駆動部130a,130bは、前記の逆圧電効果を利用してミラー部101を可動させる。このとき、ミラー部101の反射面14に入射した光束が偏向される角度を振れ角とよぶ。振れ角は光偏向器13による偏向度合いを示している。圧電部202に電圧を印加していないときの振れ角をゼロとし、その角度よりも偏向角度が大きい場合を正の振れ角、小さい場合を負の振れ角とする。
【0062】
まず、第一駆動部110a,110bを駆動させる制御装置11の制御について説明する。
第一駆動部110a,110bでは、第一圧電駆動部112a,112bが有する圧電部202に、上部電極203及び下部電極201を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部202が変形する。この圧電部202の変形による作用により、第一圧電駆動部112a,112bが屈曲変形する。
【0063】
その結果、2つのトーションバー111a,111bのねじれを介してミラー部101に第一軸周りの駆動力が作用し、ミラー部101が第一軸周りに可動する。第一駆動部110a,110bに印加される駆動電圧は、制御装置11によって制御される。
【0064】
このとき、制御装置11によって、第一駆動部110a,110bが有する第一圧電駆動部112a,112bに所定波形の駆動電圧を並行して印加することで、ミラー部101を、第一軸周りに所定の正弦波形の駆動電圧の周期で可動させることができる。さらに、例えば、所定波形電圧の周波数がトーションバー111a,111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a,111bのねじれによる共振が生じるのを利用して、ミラー部101を約20kHzで共振振動させることができる。
【0065】
次に、図8を参照して、第二駆動部を駆動させる制御装置の制御について説明する。
図8は、光偏向器の第二駆動部130a,130bの駆動を模式的に表した模式図である。斜線で表されている領域がミラー部101等である。
【0066】
第二駆動部130aが有する複数の第二圧電駆動部131a~131fのうち、最もミラー部に距離が近い第二圧電駆動部131aから数えて偶数番目の第二圧電駆動部、すなわち第二圧電駆動部131b,131d,131fを圧電駆動部群A(第一アクチュエータとも呼ぶ。)とする。
【0067】
また、さらに第二駆動部130bが有する複数の第二圧電駆動部132a~132fのうち、最もミラー部に距離が近い第二圧電駆動部132aから数えて奇数番目の第二圧電駆動部、すなわち第二圧電駆動部132a,132c,132eを同様に圧電駆動部群Aとする。圧電駆動部群Aは、駆動電圧が並行に印加されると、図8(a)に示すように、圧電駆動部群Aが同一方向に屈曲変形し、正の振れ角となるようにミラー部101が第二軸周りに可動する。
【0068】
また、第二駆動部130aが有する複数の第二圧電駆動部131a~131fのうち、最もミラー部に距離が近い第二圧電駆動部131aから数えて奇数番目の第二圧電駆動部、すなわち第二圧電駆動部131a,131c,131eを圧電駆動部群B(第二アクチュエータとも呼ぶ。)とする。
【0069】
また、さらに第二駆動部130bが有する複数の第二圧電駆動部132a~132fのうち、最もミラー部に距離が近い第二圧電駆動部132aから数えて偶数番目の第二圧電駆動部、すなわち第二圧電駆動部132b,132d,132fを同様に圧電駆動部群Bとする。圧電駆動部群Bは、駆動電圧が並行に印加されると、図8(c)に示すように、圧電駆動部群Bが同一方向に屈曲変形し、負の振れ角となるようにミラー部101が第二軸周りに可動する。
【0070】
また、図8(b)に示すように、電圧が印加されていない、又は、電圧印加による圧電駆動部群Aによるミラー部101の可動量と電圧印加による圧電駆動群Bによるミラー部101の可動量が釣り合っている時は、振れ角はゼロとなる。
【0071】
図8(a)、(c)に示すように、第二駆動部130a,130bでは、圧電駆動部群Aが有する複数の圧電部202又は圧電駆動部群Bが有する複数の圧電部202を屈曲変形させることにより、屈曲変形による可動量を累積させ、ミラー部101の第二軸周りの振れ角を大きくすることができる。また、図8(a)~図8(c)を連続的に繰り返すように第二圧電駆動部に駆動電圧を印加することにより、ミラー部を第二軸周りに駆動させることができる。
【0072】
第二駆動部130a,130bに印加される駆動信号(駆動電圧)は、制御装置11によって制御される。
図9を参照して、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧(以下「駆動電圧A」という。)、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧(以下「駆動電圧B」という。)について説明する。また、駆動電圧A(第一駆動電圧)を印加する印加手段を第一印加手段、駆動電圧B(第二駆動電圧)を印加する印加手段を第二印加手段とする。
【0073】
図9(a)は、光偏向器の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形の一例である。図9(b)は、光偏向器の圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bの波形の一例である。図9(c)は、駆動電圧Aの波形と駆動電圧Bの波形を重ね合わせた図である。
【0074】
図9(a)に示すように、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形は、例えば、ノコギリ波状の波形であり、周波数は、例えば60Hzである。また、駆動電圧Aの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrA、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfAとしたとき、例えば、TrA:TfA=8.5:1.5となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTrAの比率を駆動電圧Aのシンメトリという。
【0075】
図9(b)に示すように、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bの波形は、例えば、ノコギリ波状の波形であり、周波数は、例えば60Hzである。また、駆動電圧Bの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrB、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfBとしたとき、例えば、TfB:TrB=8.5:1.5となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTfBの比率を駆動電圧Bのシンメトリという。
【0076】
また、図9(c)に示すように、例えば、駆動電圧Aの波形の周期TAと駆動電圧Bの波形の周期TBは、同一となるように設定されている。このとき、駆動電圧Aと駆動電圧Bは位相差dを有している。
【0077】
なお、駆動電圧A及び駆動電圧Bのノコギリ波状の波形は、例えば、正弦波の重ね合わせによって生成される。また、駆動電圧A及び駆動電圧Bの周波数(駆動周波数fs)は、光偏向器13の最低次の固有振動数(f(1))の半整数倍であることが望ましい。例えば、fsをf(1)の1/5.5倍、1/6.5倍、1/7.5倍のいずれかにするのが望ましい。これにより、半整数倍にすることで駆動周波数の高調波成分による振動を抑制できる。このような光走査にとって悪影響をおよぼす振動を不要振動とよぶ。
【0078】
また、本実施形態では、駆動電圧A,Bとしてノコギリ波状の波形の駆動電圧を用いているが、これに限らず、ノコギリ波状の波形の頂点を丸くした波形の駆動電圧や、ノコギリ波状の波形の直線領域を曲線とした波形の駆動電圧など、光偏向器のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。この場合、シンメトリは、一周期に対する立ち上がり時間の比率、又は一周期に対する立ち下がり時間の比率となる。このとき、立ち上がり時間、立ち下がり時間のどちらを基準にするかは、任意に設定してもよい。
【0079】
図10を参照して、中間画像形成装置10による光走査方式について説明する。
図10は、中間画像形成装置における光走査を説明する図である。
中間画像形成装置10は、光源装置12からの光を光偏向器13によって2方向に光を偏向し、図10に示すように中間スクリーン部材15上の有効走査領域17を含む走査可能領域16を光走査する。上述したように、2方向のうち、1方向(以下「X軸方向」という。)には正弦波駆動信号によって光偏向器の反射面を共振による高速駆動を用いて光走査し、もう1方向(以下「Y軸方向」という。)にはノコギリ波状駆動信号によって光偏向器の反射面を非共振による低速駆動を用いて光走査する。このような2方向の光走査によりジグザグに光走査する駆動方式はラスタースキャン方式ともよばれる。
【0080】
前記駆動方式においては、有効走査領域17ではY軸方向は一定の速度で光走査できることが望ましい。これは、Y軸方向の走査速度が一定でないと、例えば光走査による画像投写を行う際に、投写画像の輝度ムラや揺らぎ等が生じ、投写画像の劣化を招くためである。このようなY軸方向の走査速度は、光偏向器13の反射面14の第二軸周りの可動速度、すなわち、反射面14の第二位軸周りの振れ角の時間変化を有効走査領域17において一定にすることが求められる。
【0081】
次に、図11及び図12を参照して、本実施形態の中間画像形成装置10を説明するとともに、この中間画像形成装置10を適用した画像投写装置について詳細に説明する。
図11は、画像投写装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した移動体としての車両である自動車400の実施形態に係る概略図である。
図12はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0082】
図11に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投写光(画像光)Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投写された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドと同様に透過反射部材としての機能を有するものであれば、他の構成を採用することもできる。例えば、ウインドシールドの内壁面に透過反射部材としてのコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する画像光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0083】
図12に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する光偏向器13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、平面ミラー509を経て中間スクリーン部材15に結像されて中間画像を形成する。中間画像を形成するレーザ光は、中間スクリーン部材15を透過して、複数膜光学部材としてのコールドミラー510及び投写ミラー511から構成される投写光学系により投写される。中間スクリーン部材15には、第一受光器18、第二受光器19が設けられており、各受光信号を用いて中間画像形成装置10の調整が行われる。
【0084】
コールドミラー510は、透光性基材に光学多層膜を形成してなるミラーである。本実施形態の透光性基材は、透光性の合成樹脂あるいはガラスにより、平面板状に形成されている。光学多層膜は、透光性基材上の反射面側に蒸着等により形成されている干渉膜である。光学多層膜は、具体的に、2種類以上の複素屈折率の異なる光学材料からなる薄膜を、透光性基材上の反射面側に積層して形成されている。これら光学膜に用いられる光学材料の複素屈折率は、波長依存性を有する実部及び虚部を含む。
【0085】
光学膜としては、誘電体膜や金属膜を採用することができる。本実施形態における光学多層膜は、例えば二酸化ケイ素(SiO)や二酸化チタン(TiO)等からなる誘電体膜を含む、10層以上の多層膜となっている。各光学膜における各膜厚は、赤外光に対して可視光での反射率が高くなるような分光特性(換言すると、赤外光の少なくとも一部を透過する分光特性)を得るために、例えばコンピュータによる計算によって適宜設定される。
【0086】
なお、前記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメータレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0087】
本実施形態の中間画像形成装置は、光源ユニット530、光偏向器13、制御装置11、平面ミラー509及び中間スクリーン部材15にて構成されている。
【0088】
前記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン部材15に表示される中間画像を自動車400のフロントガラス401に投写することで、その中間画像を運転者402に虚像として視認させる。
【0089】
レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502,503,504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する光偏向器13によって二次元走査される。光偏向器13で二次元走査された投写光(画像光)Lは、平面ミラー509で反射した後、中間スクリーン部材15に集光され、中間画像を形成する。
【0090】
中間スクリーン部材15は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン部材15に入射してくる画像光Lをマイクロレンズ単位で発散させ、拡大する。
【0091】
光偏向器13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投写光Lを二次元走査する。この光偏向器13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0092】
以上、画像投写装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投写装置は、光源からの光によって中間画像形成部材に形成される中間画像を複数膜光学部材を経て画像を投写する装置であればよい。例えば、表示スクリーン上に画像を投写するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着する装着部材上に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投写、又は眼球をスクリーンとして画像を投写するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0093】
また、画像投写装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0094】
次に、本発明の特徴部分である、画像光の偏光特性に関する構成について説明する。
なお、以下の説明において、自動車400の前後方向に対して直交する方向であって水平方向に平行な方向をx方向とし、鉛直方向をy方向とし、自動車400の前後方向をz方向と定義する。
【0095】
図13は、中間画像G’がコールドミラー510及び投写ミラー511を経てフロントガラス401で反射し、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう画像光の光路を示す説明図である。
【0096】
フロントガラス401は、自動車400の左右方向(x方向)の中心位置から右(自動車400の前方に向かって右)のドア側にかけて後退するように緩やかに湾曲し、かつ自動車400の上下方向(y方向)に対して上側ほど後側に傾斜するように湾曲している。そして、フロントガラス401で投写ミラー511からの画像光が反射する画像光反射領域は、本実施形態では、フロントガラス401の運転席側(自動車400の前方に向かって右側)へ偏った箇所に位置する。この場合、画像光反射領域で反射して視認される投写画像(虚像)Gには、自動車400の左右方向(x方向)の中心位置から自動車400の左右方向外側へ向かうにつれて下方へ歪むような光学的歪み要因が内在する。
【0097】
図14(a)及び(b)は、中間画像の画像面と投写画像(虚像)Gの画像面とが平行となるように、図13に示す光路を光学的に等価の状態で変更した等価光路を示す説明図である。
図15は、図14(a)及び(b)に示す等価光路において、投写画像(虚像)Gと中間画像G’とを重ねて、両者の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係を示した説明図である。
なお、図14(a)及び(b)に示す等価光路では、投写ミラー511を光透過部材に置き換えてある。また、図15において、投写画像(虚像)Gの縦方向はy方向に一致し、投写画像(虚像)の横方向はx方向に一致する。一方、中間画像G’の縦方向をy’方向とし、投写画像(虚像)の横方向をx’方向として図示してある。
【0098】
本実施形態においては、投写画像(虚像)Gと中間画像G’との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が互いにずれるように構成されている。図15に示すように、投写画像(虚像)Gに対し、中間画像G’は、画像中心軸回りに傾き角θ1だけ回転した位置関係となっている。なお、θ1の範囲は、おおよそ、5°≦θ1≦30°である。このような画像回転位置関係となるように予め中間画像G’を形成することで、フロントガラス401の画像光反射領域で反射して視認される投写画像(虚像)Gに内在する光学的歪み要因をキャンセルすることが可能となり、中間画像G’の形状を正しく反映した投写画像(虚像)Gを運転者402に視認させることができる。
【0099】
なお、投写画像(虚像)Gに対し、中間画像G’を上述した画像回転位置関係(傾き角θ1)となるようにする場合、例えば、画像データとして予め傾き角θ1だけ傾いた画像の画像データを用いる方法であってもよい。また、画像データ自体は傾いていない画像の画像データとし、光源装置12及び光偏向器13の制御情報によって傾き角θ1の中間画像G’を得るようにしてもよい。
【0100】
ここで、本実施形態においては、投写ミラー511からフロントガラス401へ入射する画像光の入射角がおおよそブリュースター角となるように設定されているため、フロントガラス401での反射におけるp偏光成分の反射率は、非常に小さいものとなっている。したがって、より多くの画像光をフロントガラス401で反射させて高輝度の投写画像Gを得るためには、フロントガラス401での反射におけるs偏光成分が相対的に多い偏光画像光をフロントガラス401へ入射させることが重要となる。
【0101】
本実施形態において、投写ミラー511からフロントガラス401へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面は、ほぼyz平面に平行となるように構成されている。したがって、フロントガラス反射時のs偏光成分は、投写ミラー511からフロントガラス401へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対して電場ベクトルが垂直である偏光を意味する。すなわち、本実施形態においては、投写画像G(縦方向がy方向に一致し、横方向がx方向に一致する画像)に対して横方向(x方向)に沿った偏光軸(電場ベクトルの向き)をもつ偏光画像光をフロントガラス401へ投写することが望ましい。
【0102】
ここで、通常の構成であれば、投写画像Gと中間画像G’との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が一致するように配置される。すなわち、傾き角θ1がゼロ°となるように、投写画像Gに対して中間画像G’を形成する。そして、中間画像G’に対しても同じく横方向(x’方向)に一致する偏光軸をもつ偏光画像光が中間スクリーン部材15から射出されるように構成することで、中間スクリーン部材15と投写ミラー511との間の光路上にコールドミラー510が配置されていても、投写画像Gの横方向(x方向)に一致する偏光軸をもつ偏光画像光をフロントガラス401へ投写することが可能である。
【0103】
詳しく説明すると、仮に、中間スクリーン部材15からコールドミラー510へ入射する画像光中に、コールドミラー510での反射におけるs偏光成分とp偏光成分とが混在している場合、これらの偏光成分間の位相差によってコールドミラー510から出射される画像光の偏光状態が変化してしまう。しかも、この変化後の偏光状態は、コールドミラー510の個体差による分散が大きく、不規則である。そのため、コールドミラー510へ入射する画像光中にs偏光成分とp偏光成分とが混在していると、コールドミラー510から出射される画像光中に、すなわち、フロントガラス401へ入射する画像光中に、投写画像Gの横方向(x方向)に偏光軸が一致していない偏光成分(フロントガラス反射時のp偏光成分)が許容値を超えて存在し得る。この場合、フロントガラス401へ入射する画像光中に存在するフロントガラス反射時のs偏光成分が相対的に少なくなり、フロントガラス401で反射される光量が減り、高輝度の投写画像Gを得ることができない。
【0104】
ただし、上述した通常の構成であれば、中間スクリーン部材15からコールドミラー510へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対し、中間スクリーン部材15からの画像光(横方向(x’方向)に一致する偏光軸をもつ偏光画像光)の偏光軸が垂直になるようにコールドミラー510を配置すれば、コールドミラー反射時のp偏光成分がコールドミラー510へ入射しない。よって、偏光成分間の位相差によってコールドミラー510から出射する画像光の偏光状態が変化することを抑制でき、投写画像Gの横方向(x方向)に一致する偏光軸をもつ偏光画像光(フロントガラス反射時のs偏光)をフロントガラス401へ投写することが可能である。
【0105】
しかしながら、本実施形態は、上述した通常の構成ではなく、投写画像Gと中間画像G’との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係がずれるように配置されている。すなわち、傾き角θ1がゼロ°ではなく、投写画像G上のxy方向と中間画像G’上のx’y’方向とが一致しないように、投写画像Gに対して中間画像G’を形成する。この場合、中間スクリーン部材15からコールドミラー510へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対し、中間スクリーン部材15からの画像光(横方向(x’方向)に一致する偏光軸をもつ偏光画像光)の偏光軸が垂直になるように、コールドミラー510を配置することはできない。
【0106】
そこで、本実施形態においては、中間スクリーン部材15からコールドミラー510へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対して中間スクリーン部材15から射出される画像光の偏光面(当該画像光の光軸方向と電場ベクトルの方向とを含む面)が垂直である偏光画像光(コールドミラー反射時のs偏光)を、コールドミラー510へ入射させるようにしている。すなわち、中間画像の横方向(x’方向)に一致しない偏光軸をもつ偏光画像光が中間スクリーン部材15から出射し、コールドミラー510へ入射するように構成している。
【0107】
このような構成は、中間スクリーン部材15から射出された画像光の偏光面を偏光子等の偏光調整部材によって調整するよりも、中間スクリーン部材15に入射する前の光の偏光面を調整するのが好ましい。中間スクリーン部材15に入射する前の光の偏光面を調整する方が、偏光調整による投写画像の輝度低下を抑制しやすいためである。
【0108】
中間スクリーン部材15に入射する前の光の偏光面を調整する方法としては、例えば、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bの射出するレーザ光の光軸回りにレーザ光源501R,501G,501Bを回転させて、レーザ光の偏光面を調整する方法が挙げられる。レーザ光源501R,501G,501Bから射出されるレーザ光は、特定方向の偏光面をもつ偏光であるため、この方法により、中間スクリーン部材15から射出される偏光画像光がコールドミラー反射時のs偏光となるように、調整することが可能である。
【0109】
また、例えば、レーザ光源501R,501G,501Bと中間スクリーン部材15との間の光路上に、偏光子等の偏光調整部材を配置する方法が挙げられる。この方法によっても、中間スクリーン部材15から射出される偏光画像光がコールドミラー反射時のs偏光となるように、調整することが可能である。
【0110】
本実施形態によれば、コールドミラー510へ入射する画像光には、コールドミラー反射時のp偏光成分を含ませないようにすることができるため、偏光成分間の位相差によってコールドミラー510から出射する画像光の偏光状態が変化することを抑制することができる。これにより、コールドミラー510から出射する画像光中に、投写画像Gの横方向(x方向)に偏光軸が一致しない偏光成分(フロントガラス反射時のp偏光成分)が許容値を超えて存在し得る事態を回避することができる。
【0111】
ただし、本実施形態においては、投写画像Gと中間画像G’との間の画像回転位置関係が傾き角θ1だけずれているので、上述のように中間スクリーン部材15から射出される偏光画像光をコールドミラー反射時のs偏光としたことで、中間スクリーン部材15から射出される偏光画像光の偏光軸は、投写画像Gの横方向(x方向)に一致しない。そのため、コールドミラー510から出射する画像光中には、投写画像Gに対して横方向(x方向)からずれた偏光軸をもつ偏光画像光(フロントガラス反射時のp偏光成分を含む偏光画像光)がフロントガラス401へ投写されることになる。すなわち、投写ミラー511からフロントガラス401へ投写される画像光には、フロントガラス401で反射しないp偏光成分(不要な偏光成分)も含まれることになる。したがって、このp偏光成分の分だけ、フロントガラス401で反射するs偏光成分(必要な偏光成分)が相対的に少なくなり、投写画像Gの輝度低下を余儀なくされる。
【0112】
しかしながら、コールドミラー510から出射する画像光中に含まれる不要なp偏光成分は、投写画像(虚像)Gと中間画像G’との間の画像回転位置関係(傾き角θ1)に応じて決まるもので、規則的な値を示す。しかも、本実施形態で取り得る傾き角θ1の角度範囲内においては、これにより生じる不要なp偏光成分は十分に許容値を下回るものである。
【0113】
したがって、本実施形態によれば、投写画像Gにとって不要なp偏光成分(フロントガラス反射時のp偏光成分)が許容値を下回る程度含まれることを許容しつつ、コールドミラー510から出射する偏光状態が不規則に変化して投写画像Gにとって不要なp偏光成分が許容値を上回るような事態を抑制することができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明の一適用例を示したものである。本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。
【0115】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、光源からの光によって中間画像G’が形成される中間画像形成部材(例えば中間スクリーン部材15)と、前記中間画像を形成した画像光が入射される複数膜光学部材(例えばコールドミラー510)とを備え、前記複数膜光学部材に入射した画像光を用いて画像(例えば虚像)Gを投写する画像投写装置(例えばヘッドアップディスプレイ装置500)において、投写される画像Gと前記中間画像G’との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が互いにずれるように構成され(例えば傾き角θ1がゼロでない。)、前記複数膜光学部材は、該複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように配置されていることを特徴とする。
投写される画像と中間画像との間の画像中心軸回りの回転方向における画像回転位置関係が一致している通常の構成においては、上述のように、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光を投写したい場合、中間画像に対しても同じく所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光が中間画像形成部材から射出されるように構成することで、複数膜光学部材が配置されていても、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光を投写することが可能である。
中間画像形成部材から複数膜光学部材へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対して、中間画像形成部材から射出される画像光の偏光面(当該画像光の光軸方向と電場ベクトルの振動方向とを含む面)が平行(p偏光)又は垂直(s偏光)となるような配置することが可能である。したがって、このように配置することで、複数膜光学部材へ入射する画像光には他方の偏光成分が実質的に含まれないようになり、複数膜光学部材へ入射するs波とp波の偏光成分間の位相差によって複数膜光学部材から出射する偏光状態が変化することを抑制することができる。この場合、複数膜光学部材から出射される画像光の偏光状態は、複数膜光学部材への入射前の画像光と同様の偏光状態を維持できるので、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつように偏光した画像光を投写することができる。
詳しく説明すると、仮に、中間画像形成部材から複数膜光学部材へ入射する画像光中に、複数膜光学部材におけるs偏光成分とp偏光成分とが混在している場合、これらの偏光成分間の位相差によって複数膜光学部材から出射される画像光の偏光状態が変化してしまう。しかも、この変化後の偏光状態は、複数膜光学部材の個体差による分散が大きく、不規則である。そのため、複数膜光学部材へ入射する画像光中にs偏光成分とp偏光成分とが混在していると、複数膜光学部材から出射される画像光中に、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸からずれた偏光軸をもつ偏光成分が許容値を超えて存在し得る。この場合、複数膜光学部材から出射される画像光中に存在する必要な偏光成分(投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光成分)が相対的に少なくなり、投写画像の輝度低下などの不具合を引き起こすおそれがある。ただし、上述した通常の構成であれば、中間画像形成部材から複数膜光学部材へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対し、中間画像形成部材からの偏光画像光の偏光軸が平行又は垂直になるように複数膜光学部材を配置すれば、他方の偏光軸をもつ偏光成分が複数膜光学部材へ入射しない。よって、偏光成分間の位相差によって複数膜光学部材から出射する画像光の偏光状態が変化することを抑制でき、複数膜光学部材から出射される画像光中に必要な偏光成分(投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光成分)をより多くすることができる。
ただし、本態様においては、上述した通常の構成ではなく、投写画像と中間画像との間の画像回転位置関係が互いにずれるように配置されている。この場合、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光を投写したいとき、中間画像に対しても同じく所定の相対方向の偏光軸をもつ偏光画像光が中間画像形成部材から射出されるように構成すると、中間画像形成部材から複数膜光学部材へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対し、中間画像形成部材からの画像光の偏光軸が平行又は垂直になるように、複数膜光学部材を配置することはできない。
そこで、本態様においては、中間画像形成部材から複数膜光学部材へ入射する画像光の光軸によって形成される入射面に対して中間画像形成部材から射出される画像光の偏光面(当該画像光の光軸方向と電場ベクトルの方向とを含む面)が平行又は垂直である偏光画像光を、複数膜光学部材へ入射させるようにしている。これにより、複数膜光学部材には、他方の偏光軸をもつ偏光成分を入射させないようにすることができるため、偏光成分間の位相差によって複数膜光学部材から出射する画像光の偏光状態が変化することを抑制することができる。これにより、複数膜光学部材から出射する画像光中に、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸とは偏光軸が一致しない不要な偏光成分が許容値を超えて存在し得る事態を回避することができる。
一方、本態様においては、投写画像と中間画像との間の画像回転位置関係が互いにずれているので、中間画像形成部材から射出される偏光画像光を上述のようにしたことで、中間画像形成部材から射出される偏光画像光の偏光軸は、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸とは一致しない。そのため、複数膜光学部材から出射される画像光中には、投写画像に対して所定の相対方向の偏光軸とは偏光軸が一致しない不要な偏光成分が含まれることになる。すなわち、投写される画像光には、投写画像にとって不要な偏光成分も含まれることになる。したがって、この不要な偏光成分の分だけ、投写画像にとって必要な偏光成分が相対的に少なくなり、投写画像の輝度低下等を余儀なくされる。
しかしながら、複数膜光学部材から出射する画像光中に含まれる不要な偏光成分は、投写画像と中間画像との間の画像回転位置関係に応じて決まるもので、規則的な値を示す。しかも、本態様で取り得る画像回転位置関係の範囲内においては、これにより生じる不要な偏光成分は十分に許容値を下回るものである。
したがって、本態様によれば、投写画像にとって不要な偏光成分が許容値を下回る程度含まれることを許容しつつ、複数膜光学部材から出射する偏光状態が不規則に変化して投写画像にとって不要な偏光成分が許容値を上回るような事態を抑制することができる。
【0116】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記複数膜光学部材は、入射光から赤外光成分をカットした反射光を反射する赤外光カット反射部材(例えばコールドミラー510)であることを特徴とする。
これによれば、前記複数膜光学部材として赤外光カット反射部材を用いた構成において、投写画像にとって不要な偏光成分が許容値を下回る程度に含まれることを許容しつつ、複数膜光学部材から出射する偏光状態が不規則に変化して投写画像にとって不要な偏光成分が許容値を上回るような事態を抑制することができる。
【0117】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記中間画像形成部材に入射する前の光の偏光面を調整して、前記複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように構成されていることを特徴とする。
これによれば、偏光面の調整による投写画像の輝度低下を抑制しやすい。
【0118】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記光源として、特定の偏光面をもつ偏光を射出するもの(例えばレーザ光源501R,501G,501B)を用い、前記光源は、前記複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように、該光源の射出する前記偏光の光軸回りの回転位置が調整されていることを特徴とする。
これによれば、偏光面を容易に調整することができる。
【0119】
[第5態様]
第5態様は、第3態様において、前記光源と前記中間画像形成部材との間の光路上に、前記複数膜光学部材に入射する画像光の偏光軸が該複数膜光学部材についての入射面に対して平行又は垂直となるように偏光面が調整された偏光を射出する偏光調整部材(例えば偏光子)を配置したことを特徴とする。
これによれば、偏光面を容易に調整することができる。
【0120】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記複数膜光学部材を経た画像光を透過反射部材(例えばフロントガラス401)へ投写する投写光学系(例えば投写ミラー511)を有することを特徴とする。
これによれば、移動体のウィンドシールドやコンバイナ等の透過反射部材を介してユーザーに高輝度の投写画像を視認させることができる。
【0121】
[第7態様]
第7態様は、移動体(例えば自動車400)であって、第1乃至第6態様のいずれかの画像投写装置と、前記透過反射部材としてのウィンドシールド(例えばフロントガラス401)とを備えることを特徴とするものである。
これによれば、高輝度の投写画像を視認させることのできる移動体を実現することができる。
【符号の説明】
【0122】
10 :中間画像形成装置
11 :制御装置
12 :光源装置
13 :光偏向器
14 :反射面
15 :中間スクリーン部材
30 :制御部
400 :自動車
401 :フロントガラス
402 :運転者
500 :ヘッドアップディスプレイ装置
501 :レーザ光源
510 :コールドミラー
511 :投写ミラー
530 :光源ユニット
G :投写画像
G’ :中間画像
θ1 :傾き角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【文献】特開2016-197173号公報
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