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特許7101344液体吐出ヘッド組立装置および液体吐出ヘッド組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド組立装置および液体吐出ヘッド組立方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/16 305
B41J2/16 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018127761
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020006538
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】木田 仁司
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-034340(JP,A)
【文献】特開平11-138828(JP,A)
【文献】特開2015-163477(JP,A)
【文献】特開2017-130536(JP,A)
【文献】特許第5023525(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材間の接合を行なって液体吐出ヘッドを組み立てる液体吐出ヘッド組立装置において、
前記液体吐出ヘッドが載置される載置台を備え、
前記載置台の前記液体吐出ヘッドの液体吐出孔と対向するエリアに流体が流れる孔部を有し、
記液体吐出孔に前記流体を流しながら、部材間の接合を行なうことを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記孔部から前記流体を吸引することを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記液体吐出ヘッドの部材間の接合部と前記液体吐出孔との間の部分に対向する前記載置台のエリアに前記液体吐出ヘッドを吸引する吸引孔を設けたことを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記吸引孔は、長孔形状であることを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記吸引孔は、前記接合部と対向するエリアには及ばないことを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項6】
請求項1乃至いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記液体吐出孔に通じる液体吐出ヘッドの液体流路に前記流体を流し込むことを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記流体の温度を制御する温度制御手段を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項8】
請求項1乃至いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記流体の流量を制御する流量制御手段を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項9】
請求項1乃至いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド組立装置において、
前記流体が、液体または気体であることを特徴とする液体吐出ヘッド組立装置。
【請求項10】
部材間の接合を行なう工程を有する液体吐出ヘッド組立方法において、
液体吐出ヘッドが載置される載置台の前記液体吐出ヘッドの液体吐出孔と対向するエリアに流体が流れる孔部を設け
前記液体吐出孔に前記流体を流しながら、部材間の接合をおこなうことを特徴とする液体吐出ヘッド組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド組立装置および液体吐出ヘッド組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、部材間の接合を行なって液体吐出ヘッドを組み立てる液体吐出ヘッド組立装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記液体吐出ヘッド組立装置として、半田などの接合材を加熱溶融させて部材としての信号電極と、部材としてフレキシブル配線板(FPC)との接合を行なうものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部材間の接合を行なう際の熱で液体吐出ヘッドのノズル面の撥水膜から揮発した撥水成分などの異物が、液体吐出ヘッドの液体吐出孔内に付着するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、部材間の接合を行なって液体吐出ヘッドを組み立てる液体吐出ヘッド組立装置において、前記液体吐出ヘッドが載置される載置台を備え、前記載置台の前記液体吐出ヘッドの液体吐出孔と対向するエリアに前記流体が流れる孔部を有し、記液体吐出孔に流体を流しながら、部材間の接合を行なうことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、部材間の接合時に液体吐出孔内に異物が付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】液体吐出ヘッドの概略断面図。
図2】上記液体吐出ヘッドの電極と、FPCとを接合する接合装置の概略構成図。
図3】FPCを電極に接合する様子を示す図。
図4】接合装置の要部拡大断面図。
図5】変形例1の接合装置を示す要部拡大断面図。
図6】変形例2の接合装置を示す要部拡大断面図。
図7】変形例3の接合装置を示す要部拡大断面図。
図8】変形例3の接合装置のヘッド載置台と、FPC載置台とを示す平面図。
図9】変形例4の接合装置を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、液体吐出ヘッド1の概略断面図である。
液体吐出ヘッド1は、ノズル板2と、アクチュエータ部材としてのアクチュエータ基板11と、保護基板8とを積層している。アクチュエータ基板11は、液室基板3と、アクチュエータ7とで構成されており、アクチュエータ7は、振動板4、圧電素子5、引き出し配線6などで構成されている。
【0009】
ノズル板2は、例えば、厚さ30~50[μm]のSUS(ステンレス鋼)基板からなり、プレス加工と研磨加工とによりノズル2aが形成されている。このノズル2aはノズル板2と液室基板3とを組み付けたときに、液室基板3の加圧液室3aと対向し、加圧液室3aと外部空間とを連通するように形成される。また、ノズル板2の液室基板3と対向する面と反対側の面(液体吐出側の面)には、撥水処理により撥水膜が形成されている。
【0010】
ノズル板2に積層される液室基板3は、例えば、100~600[μm]のシリコン単結晶基板からなり、エッチング処理などにより加圧液室3aなどのインク流路12となる孔や溝が形成されている。ノズル2aに連通する加圧液室3a(加圧室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)は、ノズル板2、液室基板3、及び振動板4により形成されている。
【0011】
液室基板3に積層されるアクチュエータ7を構成する振動板4は、例えば、Si、SiO、SiをCVD法により作製したものが用いられ、加圧液室3aの一壁面を形成している。
【0012】
振動板4上に積層される圧電素子5は、主に下部電極と圧電体薄膜と上部電極とが積層形成されたものであり、圧電体薄膜としては、一般的にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が使用される。PZTとは、ジルコン酸鉛(PbTiO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)O、一般にはPZT(53/47)と示されるPZT等を使用することができる。
【0013】
また、振動板4上には、圧電素子5の下部電極や上部電極に電位を印加するための引き出し配線6が形成されている。引き出し配線6は、液体吐出ヘッド1の一端(図中右端)に引き出されており、液体吐出ヘッド1の一端に引き出された引き出し配線6の端部には、部材としての電極9が形成されている。この電極9には、配線部材としてFPC(Flexible printed circuits)10の一端が接合されている。FPC10は、ACF接続、ACP接続、NCF接続、NCP接続、半田付け、超音波接続、ESC工法などといった方法で電極9に接合される。
【0014】
保護基板8には、加圧液室3aへインクを流すためのインク供給路8aと、圧電素子5の保護及び変位を妨げないための圧電素子保護空間8bとが形成されている。
【0015】
液体吐出ヘッド1においては、インク供給路8aや加圧液室3aなどで構成されるインク流路12に液体たるインクが満たされた状態で、圧電素子5の上部電極と下部電極との間に所定の周波数及び振幅の駆動電圧信号が印加される。この駆動電圧信号が印加された圧電素子5が変形、非変形を繰り返すことで、振動板4が振動し、その振動板4の振動に応じて加圧液室3a内のインクに圧力変化を引き起す。これにより、ノズル2aからインク滴を吐出させたり、加圧液室3a内にインクを補充したりすることができる。
【0016】
図2は、上記液体吐出ヘッドの電極9と、FPC10とを接合する接合装置100の概略構成図である。
なお、以下の説明では、鉛直方向をZ軸方向、図中左右方向を、X軸方向、紙面と直交する方向をY軸方向として説明する。
液体吐出ヘッド組立装置たる接合装置100は、液体吐出ヘッド1が載置されるヘッド載置台114、FPC10が載置されるFPC載置台110を有している。FPC載置台110には、FPC10を吸引してFPC載置台110の載置面に密着させる吸引手段が設けられている。また、FPC載置台110は、FPC載置台110のX軸方向の位置と、Y軸方向の位置とを微調整するための微調整ステージ112に設けられている。そして、微調整ステージ112と、ヘッド載置台114は、ステージ支持部材107に固定されており、ステージ支持部材107は、X軸移動機構113にX軸方向に移動可能に支持されている。
【0017】
X軸移動機構113は、例えば、ステージ支持部材107はX軸方向にガイドするガイドロッド、ステージ支持部材107をX軸方向に移動させる送りネジなどで構成され、送りネジを回転駆動してステージ支持部材107をX軸方向へ移動させる。
【0018】
また、接合装置100は、内部にヒータ104を備えた熱圧着部材117を有しており、熱圧着部材117は、圧着支持部材103に固定されている。この圧着支持部材103は、Z軸移動機構102にZ軸方向に移動可能に支持されている。このZ軸移動機構102は、支柱101に固定されている。
【0019】
また、接合装置100は、カメラ108と、カメラ108で撮影した映像を写すモニタ109とを備えている。さらには、FPC10と電極9とを接合するときに、熱圧着部材117とFPC10との間に介在し、接合部に熱と圧力を均一に加えるための緩衝材106と、この緩衝材106を送る緩衝材送り機構105とを有している。緩衝材送り機構105は、供給リール105aと巻き取りリール105bとを備えており、接合後に巻き取りリール105bを回転させて緩衝材106を巻き取り、未使用の緩衝材106を、接合部に対向させる。緩衝材106としては、テフロン(登録商標)テープやシリコーンテープを用いることができる。
【0020】
また、ヘッド載置台114のノズル2aと対向するエリアには冷却媒体としての流体たる空気が流れ込む流入孔116が形成されている。流入孔116は、ヘッド載置台114内に設けられたチャンバー室118に連通している。本実施形態では、流入孔116は、ノズル2aの並び方向に延びる長孔状であり、ノズル列に対応させて設けているが、流入孔116をすべてのノズル2aが対向する四角い孔として、ひとつの流入孔116ですべてのノズル2aに対応させるようにしてもよい。また、これに限らず、流入孔116を、ノズル2aひとつずつに対応させてもよい。
【0021】
また、チャンバー室118内の空気を吸引して負圧にする吸引装置115が連通路119を介して接続されている。吸引装置115としては、吸引ファンや吸引ポンプなどを挙げることができる。
【0022】
図3は、FPC10を電極9に接合する様子を示す図である。
まず、ヘッド載置台114の規定の位置に液体吐出ヘッド1をセットし、FPC載置台110の規定の位置にFPC10をセットする。次に、モニタ109に写されたカメラ108の撮影映像を見ながら、接合位置の位置合わせを行う。具体的には、アクチュエータ基板11に設けられたアライメントマークと、FPC10に設けられたアライメントマークをモニタ109で認識しながら、微調整ステージ112によりFPC載置台110をX軸方向、Y軸方向に移動させ、FPC10の位置の微調整を行うことで、接合位置を合わせる。
【0023】
次に、X軸移動機構113によりヘッド載置台114およびFPC載置台110を図中矢印B方向へ移動させ、電極9とFPC10とを接合する箇所を、熱圧着部材117と対向させる。次に、熱圧着部材117を下降(図中矢印A方向)させ、緩衝材106を介して熱圧着部材117をFPC10に押し当てて加熱・加圧することで、電極9とFPC10とを接合する。そして、一定時間経過後、熱圧着部材117を上昇させる。
【0024】
電極9とFPC10とを接合する際、接合箇所を150℃~300℃程度加熱するため、液体吐出ヘッド1が温度上昇してしまい、圧電素子5のPZTの分極特性が変化するおそれがあった。また、ノズル板2に撥水処理が施してある場合は、液体吐出ヘッド1の温度上昇により異物としての撥水膜の成分(フッ素など)が揮発し、その揮発成分がノズル2aや加圧液室3aなどに付着するおそれがある。ノズル2aの内周面に上記揮発成分が付着すると、その付着箇所が撥水性を有してしまいインク滴吐出方向が曲がったり、ノズル2aから気泡を巻き込み易くなったりするおそれがある。また、加圧液室3aなどのインク流路12の壁面に上記揮発成分が付着すると、インクの充填性が悪くなるおそれがある。そのため、液体吐出ヘッド1を載置するヘッド載置台114を冷却して液体吐出ヘッド1の温度上昇を抑制することも考えられるが、接合箇所まで冷却してしまい、接合箇所を高温にするのが難しくなるおそれがある。また、上記特許文献1では、溶融した半田などの接合材の溶融状態をコントロールする目的で、液体吐出ヘッド1の電極9の近傍に水などの冷却媒体を流す流路を設けて、電極9とFPC10との接合のときに上記流路に冷却媒体を流している。よって、特許文献1に記載の構成のものも接合箇所を高温にするのが難しくなるおそれがある。さらに、特許文献1に記載のものは、液体吐出ヘッド1に冷却媒体を流す流路を別途設けるため、液体吐出ヘッド1の寸法拡大に繋がるという課題もある。
【0025】
そこで、本実施形態では、ノズル2aに流体であり冷却媒体である空気を流しながら、FPC10と電極9との接合を行なうようにした。
図4は、接合装置100の要部拡大断面図である。
図4に示すように、熱圧着部材117により電極9とFPC10との接合を行なうとき、制御部200は、吸引装置115を駆動して、チャンバー室118内の空気を吸引し、チャンバー室118を負圧にする。これにより、図4の矢印に示すように、インク供給路8aのインクが供給されるための開口から空気が取り込まれ、取り込まれた空気がノズル2aから流入孔116へ流れる。このように、引き出し配線の電極9とFPC10との接合時に、ノズル2aに空気を流すことで、接合時の熱で揮発した撥水膜の成分が、ノズル内に進入するのを抑制することができ、撥水膜の成分がノズル内周面やインク流路12などに付着するのを抑制することができる。
【0026】
また、ノズル2aに空気を流しながら接合を行なうことで、液体吐出ヘッド1のインク流路12の周辺が空冷され、液体吐出ヘッド1のインク流路12の近傍の温度を、インク流路12に流れる空気の温度に近い温度に保つことができ、温度上昇を抑制することができる。よって、インク流路12の近傍(加圧液室3aの近傍)に設けられた圧電素子5の温度上昇が抑制され、PZTの分極特性が変化するのを抑制することができる。また、ノズル2a周辺の温度上昇も抑制することができ、ノズル周辺の撥水膜の成分が揮発するのを抑制することができる。
【0027】
また、図4に示すように、電極9とFPC10との接合部は、液体吐出ヘッド1の一端側にあり、インク流路12から離れた位置に設けられている。これにより、電極9とFPC10との接合部の温度低下を抑制することができ、電極9とFPC10とを良好に接合することができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、液体吐出ヘッド1のインク流路12を、空気の流路として用いることで、インク流路12とは別に空気を流す流路を設けるものに比べて、液体吐出ヘッド1の寸法拡大を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態では、チャンバー室118に温度センサ201を設けている。制御部200は、この温度センサ201が検知した温度に基づいて、吸引装置115の吸引量を制御してインク流路12に流す空気の流量を制御し、インク流路に流す空気の温度を適切にコントロールしている。具体的には、温度センサ201が検知した温度が、規定の温度よりも高いときは、空気の吸引量を増加させ、インク流路12に流す空気の流量を増加させる。これにより、インク流路周辺の温度上昇を抑制することができる。一方、規定の温度よりも低いときは、インク流路12に流す空気の流量を低下させることで、電極9とFPC10との接合部の温度低下を抑制することができ、電極9とFPC10とを良好に接合することができる。なお、本実施形態では、チャンバー室118に温度センサ201を設けているが、温度センサ201は、チャンバー室118に限られるものではない。
【0030】
また、インク供給路8aのインクが供給されるための開口から取り込まれる空気は、クリーン度が高いクリーンルーム内の空気や、フィルタを通した空気である。
【0031】
[変形例1]
図5は、変形例1の接合装置を示す要部拡大断面図である。
図5に示す変形例1は、送風装置120を設け、送風装置120により空気をインク供給路8aに送り込むことで、ノズル2aに空気を流すようにしたものである。この変形例1の構成でも、撥水膜の揮発成分などの異物がノズル内に進入するのを抑制でき、かつ、圧電素子5や、ノズル2a周辺の温度上昇を抑制することができる。また、この変形例1においても、冷却媒体たる空気が流れる流路に温度センサを設け、温度センサ201に基づいて、送風装置120を制御してインク流路12に流す流量を制御することでインク流路12に流す空気の温度を適切にコントロールするのが好ましい。これにより、圧電素子5や、ノズル2a周辺の温度上昇を抑制でき、かつ、接合箇所の温度低下を抑制することができる。
【0032】
また、図5に示す送風装置120と、図4に示す吸引装置115を両方備えた構成でもよい。
【0033】
[変形例2]
図6は、変形例2の接合装置を示す要部拡大断面図である。
この変形例2の接合装置は、ワイヤボンディングによって電極9とFPC10とを接合するものである。
この変形例2の接合装置は、内部にヒータ130aを備えたヒートステージ130を有しており、液体吐出ヘッド1の電極9および電極9よりも端部側が、このヒートステージ130に載置されている。そして、このヒートステージ130によって電極9および液体吐出ヘッド1の端部に設けられたFPC10の一端とを加熱しながらワイヤ131の一端を電極9に接合し他端をFPC10に接合することで、ワイヤ131を介して電極9とFPC10とを接合する。
【0034】
この変形例2においても、ワイヤボンディングによる電極9とFPC10との接合時にノズル2aに空気を流すことで、撥水膜の揮発成分などの異物がノズル内に進入するのを抑制することができ、かつ、インク流路周辺の圧電素子5やノズル2a周辺の温度上昇を抑制することができる。また、この変形例2では、空気が流れるヘッド載置台114とは別にヒートステージ130を設けることで、ヒートステージ130の温度低下を抑制することができる。また、ヒートステージ130の熱がヘッド載置台114を介してインク流路周辺に移動するのを抑制することができ、圧電素子5やノズル2a周辺の温度上昇を抑制することができる。
【0035】
[変形例3]
図7は、変形例3の接合装置を示す要部拡大断面図であり、図8は、変形例3の接合装置のヘッド載置台114と、FPC載置台110とを示す平面図である。
この変形例3は、ヘッド載置台114に液体吐出ヘッド1を吸引する吸引孔141を設けたものである。吸引孔141は、ノズル2aとFPC10との接合部である電極9との間の部分と対向するヘッド載置台114のエリアに設けられている。吸引孔141は、流入孔116の並び方向(図中上下方向)に延びる長孔形状である。吸引孔141から空気を吸引する吸引装置は、インク流路12に空気を流すための吸引装置115とは、別でもよいし、吸引孔141を、連通路119またはチャンバー室118に接続して、インク流路12に空気を流すための吸引装置115を用いてもよい。
【0036】
また、この例では、吸引孔141は、流入孔116に平行な長孔であるが、丸孔の吸引孔141を、ノズル2aの並び方向に等間隔で複数設けてもよい。
【0037】
この変形例3では、吸引ポンプや吸引ファンなどの吸引装置により吸引孔141から液体吐出ヘッド1を吸引することで、液体吐出ヘッド1をヘッド載置台114に吸着固定する。これにより、接合時に液体吐出ヘッド1の位置がずれてしまうのを抑制することができる。
【0038】
また、ヘッド載置台114が吸引孔141により、ノズル2a側と電極側に分断される。よって、接合時に液体吐出ヘッド1を介してヘッド載置台114に伝導した熱圧着部材117の熱が、ヘッド載置台114のノズル側へ伝わり難くできる。これにより、ヘッド載置台114のノズル側の温度上昇を抑制することができ、ノズル2a周辺の温度上昇を良好に抑制することができる。また、ヘッド載置台114の電極側の熱が逃げ難くなることで、ヘッド載置台114の電極側の温度低下を抑制することができ、FPC10と電極9とを熱圧着により良好に接合することができる。
【0039】
なお、吸引孔141が、ヘッド載置台114の電極9と対向する箇所(接合部)にかかっていると、接合時に接合部の温度のバラツキが出やすくなるおそれがある。また、電極9と対向する箇所にかかった部分は、熱圧着部材117が圧着した際に、液体吐出ヘッド1の接合部を支えられないため、所定の圧力が得られなくなり、接合不良が生じるおそれがある。また、接合部の吸引孔141がかかっていない部分に熱圧着部材117の圧力が集中し、アクチュエータ基板11が破損するおそれもある。従って、吸引孔141は、接合部にかからないように設けることが好ましい。
【0040】
[変形例4]
図9は、変形例4の接合装置を示す要部拡大断面図である。
この変形例4の接合装置は、接合時に冷却液を流して、ノズル内の異物進入と、インク流路周辺の温度上昇とを抑制するものである。
この変形例4の接合装置には、送液ポンプ151、ラジエータ153、リザーブタンク152、冷却液を通す管路であるチューブ155、ラジエータ153の放熱効率を高めるためのファン154などで構成された液冷装置150を有している。
【0041】
送液ポンプ151の駆動によって送られた冷却液は、液体吐出ヘッド1のインク供給路8a、加圧液室3aなどで構成されるインク流路12に流れた後ノズル2aへ流れ、流入孔116へと流れる。この冷却液の流れにより、撥水膜の揮発成分などの異物がノズル内に進入するのを抑制することができる。また、液体吐出ヘッド1のインク流路周辺およびノズル2a周辺が、冷却液により冷却され、圧電素子5やノズル2a周辺の温度上昇を抑制することができる。
【0042】
また、送液ポンプ151は、制御部200により冷却液の流量が適切にコントロールされる。また、冷却液の流路に温度センサ156を設けており、制御部200は、温度センサ156の検知結果に基づいて、ファン154の回転数を制御し、ラジエータ153の放熱効率を制御している。これにより、冷却液の温度を適切にコントロールすることができ、良好にインク流路やノズル2aの温度上昇を抑制し、かつ、接合部周辺の温度低下を抑制することができる。
【0043】
また、上述では、空気や冷却液をノズル2aから排出する例について、説明したが、ノズル2aから空気や冷却液を供給して、ノズル2aに流体を流すようにしてもよい。このように構成しても、空気や冷却液の流れによって、撥水膜から揮発した撥水成分が、ノズル2aの内周面に付着するの抑制することができ、かつ、インク流路12の周辺の温度上昇を抑制することができる。
【0044】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
部材間の接合(本実施形態では、電極9とFPC10との接合)を行なって液体吐出ヘッドを組み立てる接合装置100などの液体吐出ヘッド組立装置において、液体吐出ヘッド1のノズル2aなどの液体吐出孔に流体(本実施形態では、空気または冷却液)を流しながら、部材間の接合を行なう。
態様1は、液体吐出孔に流体を流すことで、部材間の接合時に液体吐出孔内に異物が付着するのを抑制することができる。
また、液体吐出孔に流体を流すことで、液体吐出ヘッド1の液体流路たるインク流路12にも空気などの流体が流れ、この流体の流れにより液体吐出ヘッド1の液体流路周辺の温度上昇を抑制することができる。これにより、液体流路近傍に配置された圧電素子5などの部材の接合時の熱によるダメージを抑制することができる。
【0045】
(態様2)
態様1において、液体吐出ヘッド1が載置されるヘッド載置台114などの載置台を備え、載置台のノズル2aなどの液体吐出孔と対向するエリアに流体が流れる流入孔116などの孔部を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、ノズル2aなどの液体吐出孔から流入孔116などの孔部へ流体を流すことができ、良好に液体吐出孔に流体を流すことができる。
【0046】
(態様3)
態様2において、流入孔116などの孔部から流体を吸引する。
これによれば、実施形態で説明したように、流入孔116などの孔部から流体を吸引することで、ノズル2aなどの液体吐出孔に流体を流すことができる。
【0047】
(態様4)
態様2または3において、液体吐出ヘッドの電極9とFPC10との接合部などの部材間の接合部とノズル2aなどの液体吐出孔との間の部分に対向する載置台のエリアに液体吐出ヘッド1を吸引する吸引孔141を設けた。
これによれば、変形例3で説明したように、液体吐出ヘッド1をヘッド載置台114などの載置台に吸着固定することができ、接合時に液体吐出ヘッド1の位置がずれてしまうのを抑制することができる。また、吸引孔141を接合部とノズル2aとの間に設けることで、接合時に載置台に伝導した熱が載置台のノズル2aなどの液体吐出孔周辺に対向するエリアへ移動するのを抑制することができる。これにより、液体吐出孔周辺の温度上昇を抑制することができ、液体吐出孔周辺の撥水膜の成分が揮発するのを抑制することができる。また、接合時に載置台に伝導した熱の移動が抑制されることで、載置台の接合部と対向する領域の温度低下を抑制することができ、良好に部材間の接合を行なうことができる。
【0048】
(態様5)
態様4において、吸引孔141は、長孔形状である。
これによれば、変形例3を用いて説明したように、吸引孔141により、載置台を液体吐出孔側と接合部側とに分断することができ、接合時に載置台に伝導した熱が、載置台の液体吐出孔側へ移動するのを良好に抑制することができる。
【0049】
(態様6)
態様4または5において、吸引孔141は、接合部と対向するエリアには及ばない。
これによれば、変形例3で説明したように、接合部に均一に圧力をかけることができ、良好に部材同士を接合することができる。
【0050】
(態様7)
態様1乃至6いずれかにおいて、ノズル2aなどの液体吐出孔に通じる液体吐出ヘッド1の液体流路などのインク流路(本実施形態では、加圧液室3aやインク供給路8aにより構成)に流体を流し込む。
これによれば、変形例1で説明したように、液体流路などのインク流路に流し込まれた流体が、液体流路を経てノズル2aなどの液体吐出孔に流すことができる。
【0051】
(態様8)
態様1乃至7いずれかにおいて、流体の温度を制御する制御部200などの温度制御手段を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、インク流路などの液体流路周辺の温度上昇を抑制することができ、液体流路近傍に設けられた圧電素子5などの部材の接合時の熱によるダメージを抑制することができる。また、冷やしすぎによる接合部の温度低下は抑制することができる。
【0052】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、流体の流量を制御する制御部200などの流量制御手段を備える。
これによれば、適切な流体の流量をコントロールすることができ、インク流路周辺の温度上昇を抑制することができ、かつ、冷やしすぎによる接合部の温度低下は抑制することができる。
【0053】
(態様10)
態様1乃至9いずれかにおいて、流体が、液体または気体である。
これによれば、良好に流体をノズル2aなどの液体吐出孔に流すことができる。
【0054】
(態様11)
部材間の接合を行なう工程を有する液体吐出ヘッド組立方法において、液体吐出ヘッドの液体吐出孔に流体を流しながら、部材間の接合をおこなう。
これによれば、実施形態で説明したように、液体吐出孔に流体を流すことで、部材間の接合時に液体吐出孔内にノズル面の撥水膜の揮発成分などの異物が付着するのを抑制することができる。
また、液体吐出孔に流体を流すことで、液体吐出ヘッド1の液体流路たるインク流路12にも空気などの流体が流れ、流体の流れにより液体吐出ヘッド1の液体流路周辺の温度上昇を抑制することができる。これにより、液体流路近傍に配置された圧電素子5などの部材の接合時の熱によるダメージを抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 :液体吐出ヘッド
2 :ノズル板
2a :ノズル
3 :液室基板
3a :加圧液室
4 :振動板
5 :圧電素子
6 :引き出し配線
7 :アクチュエータ
8 :保護基板
8a :インク供給路
8b :圧電素子保護空間
9 :電極
10 :FPC
11 :アクチュエータ基板
12 :インク流路
100 :接合装置
101 :支柱
102 :Z軸移動機構
103 :圧着支持部材
104 :ヒータ
105 :緩衝材送り機構
105a :供給リール
105b :巻き取りリール
106 :緩衝材
107 :ステージ支持部材
108 :カメラ
109 :モニタ
110 :FPC載置台
112 :微調整ステージ
113 :X軸移動機構
114 :ヘッド載置台
115 :吸引装置
116 :流入孔
117 :熱圧着部材
118 :チャンバー室
119 :連通路
120 :送付装置
130 :ヒートステージ
130a :ヒータ
131 :ワイヤ
141 :吸引孔
150 :液冷装置
151 :送液ポンプ
152 :リザーブタンク
153 :ラジエータ
154 :ファン
155 :チューブ
156 :温度センサ
200 :制御部
201 :温度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【文献】特許第5023525号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9