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特許7101522制電性熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】制電性熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20220708BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20220708BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20220708BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20220708BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20220708BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220708BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20220708BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220708BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C08L67/02
C08G63/672
C08K3/105
C08K3/22
C08K3/32
C08K3/34
C08K5/3492
C08L71/02
C08L101/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018079255
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019183085
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 達人
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰也
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114927(JP,A)
【文献】特開2016-044225(JP,A)
【文献】特開2016-060784(JP,A)
【文献】特開2016-023254(JP,A)
【文献】特開2017-128680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08G 63/672
C08K 3/105
C08K 3/22
C08K 3/32
C08K 3/34
C08K 5/3492
C08L 71/02
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100質量部に対し、高分子化合物(A)の一種以上を40質量部超90質量部以下、アルカリ金属の塩(B)を2.5~9.0質量部、およびリン酸塩系難燃剤(C)を35~100質量部、含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記高分子化合物(A)が、ジオールと、ジカルボン酸と、下記一般式(1)、
で示される基を一つ以上有し、両末端に水酸基を有する化合物(D)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、エステル結合を介して結合してなる構造を有する高分子化合物であり、かつ、
前記高分子化合物(A)と前記アルカリ金属の塩(B)との質量比が、(B)/(A)=3.0/97.0~14.0/86.0であり、
前記高分子化合物(A)が、ジオールとジカルボン酸とから構成されるポリエステル(G)と、前記化合物(D)と、前記化合物(E)と、がエステル結合を介して結合してなる構造を有する ことを特徴とする制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記リン酸塩系難燃剤(C)が、下記一般式(2)、
で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)-1成分と、下記一般式(4)、
で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)-2成分と、の混合物からなり、
前記一般式(2)中、nは1~100の数を表し、pは0<p≦n+2を満たす数を表し、Xはアンモニアまたは下記一般式(3)、
で表されるトリアジン誘導体を表し、
前記一般式(3)中、ZおよびZは、同一でも異なっていてもよく、-NR基、水酸基、メルカプト基、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルキル基、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルコキシ基、フェニル基、またはビニル基を表し、前記-NR基中のRおよびRは各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~6のアルキル基、または、メチロール基を表し、
前記一般式(4)中、rは1~100の数を表し、Yは、RN-(CH-NR、ピペラジン、またはピペラジン環を含むジアミンを表し、R、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~5のアルキル基を表し、kは1~10の整数を表し、qは、0<q≦r+2を満たす数を表す請求項1記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物(A)が、前記ポリエステル(G)から構成されたブロックおよび前記化合物(D)から構成されたブロックがエステル結合を介して繰り返し交互に結合してなる両末端にカルボキシル基を有するブロックポリマー(H)と、前記化合物(E)と、がエステル結合を介して結合してなる構造を有する請求項1または2記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記高分子化合物(A)における、前記ポリエステル(G)から構成されたブロックの数平均分子量がポリスチレン換算で800~8,000であり、前記化合物(D)から構成されたブロックの数平均分子量がポリスチレン換算で400~6,000であり、かつ、前記ブロックポリマー(H)の数平均分子量が、ポリスチレン換算で5,000~25,000である請求項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル(G)が、両末端にカルボキシル基を有する構造を有する請求項1~4のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(E)が、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)、および水酸基を3個以上有する多価アルコール化合物(E-2)からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~5のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記化合物(D)が、ポリエチレングリコールである請求項1~6のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、エーテルエステル系可塑剤(J)の一種以上を、前記リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.01~1.0質量部含有する請求項1~7のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、ドリップ防止剤の一種以上を、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.005~5質量部含有する請求項1~8のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、金属酸化物、シリコーンオイルまたはシランカップリング剤からなる群から選択される一種以上を、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.01~10質量部含有する請求項1~9のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選択される一種以上を含む請求項1~10のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか一項記載の制電性熱可塑性樹脂組成物から得られることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称す)およびその成形体に関し、詳しくは、持続性を有した充分な制電性と難燃性とを両立させた成形体を提供することができる制電性熱可塑性樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、成形加工性・低比重等、種々の物性に応じて、建材、自動車材料、家電機・電子用材料、繊維材料、包装用資材、農業用資材、家電製品のハウジング材料、生活雑貨用品、フィルム、シートおよび構造部品等の各種成形体に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂は絶縁性で静電気を蓄積しやすい性質があり、埃や塵を引きつけて製品外観を損ねる場合がある。また、成形品が電子製品である場合、静電気によって回路が正常に作動できなくなる場合がある。さらに静電気を蓄積した樹脂部材から電撃が発生する場合があり、電撃を受けると不快感を感じるだけでなく、可燃性気体や粉塵があるところでは、電撃に起因する爆発事故を起こす可能性がある。
【0004】
そこで、樹脂部材の静電気蓄積を防止するために、熱可塑性樹脂に制電剤を添加する等の処置がなされている。このような制電剤には、樹脂部材表面に塗布する塗布型と、樹脂と一緒に混練して用いる練り込み型があるが、塗布型のものは制電の持続性に劣ることに加え、表面に触れて制電剤が拭き取られてしまう問題がある。
【0005】
このような状況の中、特許文献1では、ポリエーテルエステル系高分子型の制電剤を配合した樹脂組成物が提案されている。一方、多くの熱可塑性樹脂は、可燃性物質であるので、用途によっては難燃化することが不可欠である。難燃化する方法としては、例えば、特許文献2では、エチレン共重合体に水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物を添加する方法が提案されている。また、特許文献3では、二種のエチレン-α-オレフィンの共重合体100質量部に対して、無機水酸化物難燃剤を80~300質量部配合した難燃性重合体組成物が提案されている。
【0006】
しかしながら、無機水酸化物によって熱可塑性樹脂を難燃化するためには、無機水酸化物の多量添加が必要であり、多量添加によって熱可塑性樹脂の成形性を損なう問題があった。また、無機水酸化物が制電剤を吸着したり、分解したりするため、制電性能とその持続性が充分でない問題を抱えていた。このような問題に対して、特許文献4では、ポリエーテルエステル系高分子型の制電剤と2種類の(ポリ)リン酸塩化合物とを配合した樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-023254号公報
【文献】特開平8-316508号公報
【文献】特開平9-137010号公報
【文献】特開2017-128680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、安全への配慮から静電気にまつわる要求は厳しくなっており、低湿度環境下における電荷減衰が高速である等、より高い制電性能が求められている。このような要求に対し、特許文献4における樹脂組成物では、その要求を必ずしも十分に応えることはできず、さらなる改良が求められているのが現状である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、持続性を有した充分な制電性と難燃性とを両立させた成形体を提供することができる制電性熱可塑性樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解消するために鋭意検討をした結果、特定の構造を有する制電性の高分子化合物、アルカリ金属の塩および難燃剤を、特定の配合で併用することで、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、高分子化合物(A)の一種以上を40質量部超90質量部以下、アルカリ金属の塩(B)を2.5~9.0質量部、およびリン酸塩系難燃剤(C)を35~100質量部、含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
前記高分子化合物(A)が、ジオールと、ジカルボン酸と、下記一般式(1)、
で示される基を一つ以上有し、両末端に水酸基を有する化合物(D)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、エステル結合を介して結合してなる構造を有する高分子化合物であり、かつ、
前記高分子化合物(A)と前記アルカリ金属の塩(B)との質量比が、(B)/(A)=3.0/97.0~14.0/86.0であり、
前記高分子化合物(A)が、ジオールとジカルボン酸とから構成されるポリエステル(G)と、前記化合物(D)と、前記化合物(E)と、がエステル結合を介して結合してなる構造を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、前記リン酸塩系難燃剤(C)が、下記一般式(2)、
で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)-1成分と、下記一般式(4)、
で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)-2成分と、の混合物からなり、
前記一般式(2)中、nは1~100の数を表し、pは0<p≦n+2を満たす数を表し、Xはアンモニアまたは下記一般式(3)、
で表されるトリアジン誘導体を表し、
前記一般式(3)中、ZおよびZは、同一でも異なっていてもよく、-NR基、水酸基、メルカプト基、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルキル基、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルコキシ基、フェニル基、またはビニル基を表し、前記-NR基中のRおよびRは各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~6のアルキル基、または、メチロール基を表し、
前記一般式(4)中、rは1~100の数を表し、Yは、RN-(CH-NR、ピペラジン、またはピペラジン環を含むジアミンを表し、R、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~5のアルキル基を表し、kは1~10の整数を表し、qは、0<q≦r+2を満たす数を表すことが好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、前記ポリエステル(G)から構成されたブロックおよび前記化合物(D)から構成されたブロックがエステル結合を介して繰り返し交互に結合してなる両末端にカルボキシル基を有するブロックポリマー(H)と、前記化合物(E)と、がエステル結合を介して結合してなる構造を有することが好ましく、前記高分子化合物(A)における、前記ポリエステル(G)から構成されたブロックの数平均分子量がポリスチレン換算で800~8,000であり、前記化合物(D)から構成されたブロックの数平均分子量がポリスチレン換算で400~6,000であり、かつ、前記ブロックポリマー(H)の数平均分子量が、ポリスチレン換算で5,000~25,000であることが、さらに好ましく、前記ポリエステル(G)は、両末端にカルボキシル基を有する構造を有することが特に好ましい。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物は、前記化合物(E)は、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)、および水酸基を3個以上有する多価アルコール化合物(E-2)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。さらに、本発明の樹脂組成物は、前記化合物(D)は、ポリエチレングリコールであることが好ましい。さらにまた、本発明の樹脂組成物は、さらに、エーテルエステル系可塑剤(J)の一種以上を、前記リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.01~1.0質量部含有することが好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、さらに、ドリップ防止剤の一種以上を、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.005~5質量部含有することが好ましい。さらに、本発明の樹脂組成物は、さらに、金属酸化物、シリコーンオイルまたはシランカップリング剤からなる群から選択される一種以上を、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.01~10質量部含有することが好ましい。さらにまた、本発明の樹脂組成物においては、前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の成形体は、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物から得られることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、持続性を有した充分な制電性と難燃性とを両立させた成形体を提供することができる制電性熱可塑性樹脂組成物およびその成形体ことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、高分子化合物(A)の一種以上を40質量部超90質量部以下、アルカリ金属の塩(B)を2.5~9.0質量部、およびリン酸塩系難燃剤(C)を35~100質量部、含有する熱可塑性樹脂組成物である。本発明の樹脂組成物においては、高分子化合物(A)が、ジオールと、ジカルボン酸と、下記一般式(1)、
で示される基を一つ以上有し、両末端に水酸基を有する化合物(D)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、エステル結合を介して結合してなる構造を有する高分子化合物であり、かつ、高分子化合物(A)とアルカリ金属の塩(B)との質量比が、(B)/(A)=3.0/97.0~14.0/86.0である。
【0017】
まず、本発明の樹脂組成物に係る熱可塑性樹脂について説明する。本発明の樹脂組成物で使用する樹脂については、熱可塑性樹脂であれば制限はないが、特に、制電性能の持続性と、成形性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂のうちの1種以上を含むものが好ましい。
【0018】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ランダムコポリマーポリプロピレン、ブロックコポリマーポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン、シクロオレフィンポリマー、ステレオブロックポリプロピレン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ペンテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン重合体、エチレン-プロピレンのブロックまたはランダム共重合体、インパクトコポリマーポリプロピレン、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のα-オレフィン共重合体、ポリフルオロオレフィン、さらにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらの2種以上の共重合体でもよい。
【0019】
上記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ビニル基含有芳香族炭化水素単独、および、ビニル基含有芳香族炭化水素と、他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、(メタ)アクリロニトリル等)との共重合体が挙げられ、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂、耐熱ABS樹脂、アクリロニトリル-アクリレート-スチレン(AAS)樹脂、スチレン-無水マレイン酸(SMA)樹脂、メタクリレート-スチレン(MS)樹脂、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)樹脂、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン(AES)樹脂、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)樹脂、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)樹脂等の熱可塑性樹脂、並びに、これらのブタジエンあるいはイソプレンの二重結合を水素添加したスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)樹脂、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)樹脂、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)樹脂等の水素添加スチレン系エラストマー樹脂が挙げられる。
【0020】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等の芳香族ポリエステルおよびポリテトラメチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル;ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサン、ポリ(2-オキセタノン)等の分解性脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0021】
上記ポリエーテル系樹脂としては、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0022】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート等が挙げられる。
【0023】
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ε-カプロラクタム(ナイロン6)、ウンデカンラクタム(ナイロン11)、ラウリルラクタム(ナイロン12)、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、9-アミノノナン酸、α-ピロリドン、α-ピペリドン等の重合物;ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、ノナンメチレンジアミン、メチルペンタジアミン、ウンデカンメチレンジアミン、ドデカンメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等のジアミンと、アジビン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸等のジカルボン酸等のカルボン酸化合物とを共重合させて得られる共重合体、または、これらの重合体または共重合体の混合物等が挙げられる。また、デュポン社製商品名“ケブラー”、デュポン社製商品名“ノ-メックス”、株式会社帝人製主商品名“トワロン”、“コーネックス”等のアラミド系樹脂が挙げられる。
【0024】
さらに熱可塑性樹脂の例を挙げると、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂;石油樹脂、クマロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルフォン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂およびこれらのブレンド物を用いることができる。
【0025】
また、これらの熱可塑性樹脂は、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ナイロン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等のエラストマーであってもよく、併用してもよい。
【0026】
本発明の樹脂組成物においては、これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併せて使用してもよい。また、アロイ化されていてもよい。なお、これらの熱可塑性樹脂は、分子量、重合度、密度、軟化点、溶媒への不溶分の割合、立体規則性の程度、触媒残渣の有無、原料となるモノマーの種類や配合比率、重合触媒の種類(例えば、チーグラー触媒、メタロセン触媒等)等に関わらず使用することができる。
【0027】
次に、本発明の樹脂組成物に係る高分子化合物(A)について説明する。高分子化合物(A)は、本発明の樹脂組成物に制電性を付与するために配合される。
【0028】
本発明の樹脂組成物で用いる高分子化合物(A)は、ジオールと、ジカルボン酸と、下記一般式(1)で示される基を一つ以上有し、両末端に水酸基を有する化合物(D)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、エステル結合を介して結合してなる構造を有する高分子化合物である。
【0029】
高分子化合物(A)は、ジオールと、ジカルボン酸と、上記一般式(1)で示される基を一つ以上有し、両末端に水酸基を有する化合物(D)と、反応性官能基を有する化合物(E)とを、エステル化反応させることにより、得ることができる。
【0030】
本発明の樹脂組成物で用いられるジオールとしては、脂肪族ジオール、芳香族基含有ジオールが挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、ジオールは、2種以上の混合物でもよい。
【0031】
脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、1,2-、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオール、シクロドデカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。これら脂肪族ジオールの中でも、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAが、制電性とその持続性、難燃性の点から好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
【0032】
また、脂肪族ジオールは、制電性とその持続性の点から、疎水性を有することが好ましいので、親水性を有するポリエチレングリコールの使用は好ましくない。
【0033】
芳香族基含有ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、1,2-ヒドロキシベンゼン、1,3-ヒドロキシベンゼン、1,4-ヒドロキシベンゼン、1,4-ベンゼンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ピロカテコール等の単核2価フェノール化合物のポリヒドロキシエチル付加物等が挙げられる。これら芳香族基を有するジオールの中でも、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが好ましい。
【0034】
また、芳香族ジオールは、制電性とその持続性、難燃性の点から、疎水性を有することが好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物の高分子化合物(A)に係るジカルボン酸は、制電性とその持続性、難燃性の点から、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の両者を併用することが好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物において、脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸の誘導体(例えば、酸無水物、アルキルエステル、アルカリ金属塩、酸ハライド等)であってもよい。また、脂肪族ジカルボン酸およびその誘導体は、2種以上の混合物でもよい。
【0037】
脂肪族ジカルボン酸としては、好ましくは炭素原子数2~20の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。これら脂肪族ジカルボン酸の中でも、制電性とその持続性、難燃性の点から、炭素原子数4~16のジカルボン酸が好ましく、炭素原子数6~12のジカルボン酸がより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物において、芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸の誘導体(例えば、酸無水物、アルキルエステル、アルカリ金属塩、酸ハライド等)であってもよい。また、芳香族ジカルボン酸およびその誘導体は、2種以上の混合物でもよい。
【0039】
芳香族ジカルボン酸としては、好ましくは炭素原子数8~20の芳香族ジカルボン酸が挙げられ、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウムおよび3-スルホイソフタル酸カリウム等が挙げられる。これら芳香族ジカルボン酸の中でも、制電性とその持続性、難燃性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸(無水フタル酸を含む)が好ましく、フタル酸(無水フタル酸を含む)がより好ましい。
【0040】
次に、本発明の樹脂組成物の高分子化合物(A)に係る化合物(D)について説明する。化合物(D)は、上記一般式(1)で示される基を一つ以上有し両末端に水酸基を有するものであり、化合物(D)としては、親水性を有する化合物が好ましく、上記一般式(1)で示される基を有するポリエーテルがより好ましく、制電性とその持続性、難燃性の点から、ポリエチレングリコールがさらにより好ましく、下記一般式(5)で表されるポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0041】
ここで、一般式(5)中、mは5~250の数を表す。mは、制電性とその持続性、難燃性の点から、20~200が好ましく、40~180がより好ましい。
【0042】
化合物(D)としては、エチレンオキサイドを付加反応させて得られるポリエチレングリコール以外に、エチレンオキサイドと、他のアルキレンオキサイド(例えば、プロピレンオキサイド、1,2-、1,4-、2,3-または1,3-ブチレンオキサイド等)の1種以上とを付加反応させたポリエーテルが挙げられ、このポリエーテルはランダムでもブロックでもいずれでもよい。
【0043】
化合物(D)の例をさらに挙げると、活性水素原子含有化合物にエチレンオキサイドが付加した構造の化合物や、エチレンオキサイドおよび他のアルキレンオキサイド(例えば、プロピレンオキサイド、1,2-、1,4-、2,3-または1,3-ブチレンオキサイド等)の1種以上が付加した構造の化合物が挙げられる。これらはランダム付加およびブロック付加のいずれでもよい。
【0044】
活性水素原子含有化合物としては、グリコール、2価フェノール、1級モノアミン、2級ジアミンおよびジカルボン酸等が挙げられる。
【0045】
グリコールとしては、炭素原子数2~20の脂肪族グリコール、炭素原子数5~12の脂環式グリコールおよび炭素原子数8~26の芳香族グリコール等が使用できる。
【0046】
脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびチオジエチレングリコール等が挙げられる。
【0047】
脂環式グリコールとしては、例えば、1-ヒドロキシメチル-1-シクロブタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1-メチル-3,4-シクロヘキサンジオール、2-ヒドロキシメチルシクロヘキサノール、4-ヒドロキシメチルシクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび1,1’-ジヒドロキシ-1,1’-ジシクロヘキシル等が挙げられる。
【0048】
芳香族グリコールとしては、例えば、ジヒドロキシメチルベンゼン、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2-フェニル-1,3-プロパンジオール、2-フェニル-1,4-ブタンジオール、2-ベンジル-1,3-プロパンジオール、トリフェニルエチレングリコール、テトラフェニルエチレングリコールおよびベンゾピナコール等が挙げられる。
【0049】
2価フェノールとしては、炭素原子数6~30のフェノールが使用でき、例えば、カテコール、レゾルシノール、1,4-ジヒドロキシベンゼン、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、ビナフトールおよびこれらのアルキル(炭素原子数1~10)またはハロゲン置換体等が挙げられる。
【0050】
1級モノアミンとしては、炭素原子数1~20の脂肪族1級モノアミンが挙げられ、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、s-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-アミルアミン、イソアミルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-オクタデシルアミンおよびn-イコシルアミン等が挙げられる。
【0051】
2級ジアミンとしては、炭素原子数4~18の脂肪族2級ジアミン、炭素原子数4~13の複素環式2級ジアミン、炭素原子数6~14の脂環式2級ジアミン、炭素原子数8~14の芳香族2級ジアミンおよび炭素原子数3~22の2級アルカノールジアミン等が使用できる。
【0052】
脂肪族2級ジアミンとしては、例えば、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジブチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルプロピレンジアミン、N,N’-ジエチルプロピレンジアミン、N,N’-ジブチルプロピレンジアミン、N,N’-ジメチルテトラメチレンジアミン、N,N’-ジエチルテトラメチレンジアミン、N,N’-ジブチルテトラメチレンジアミン、N,N’-ジメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジエチルヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジブチルヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジメチルデカメチレンジアミン、N,N’-ジエチルデカメチレンジアミンおよびN,N’-ジブチルデカメチレンジアミン等が挙げられる。
【0053】
複素環式2級ジアミンとしては、例えば、ピペラジン、1-アミノピペリジン等が挙げられる。
【0054】
脂環式2級ジアミンとしては、例えば、N,N’-ジメチル-1,2-シクロブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,2-シクロブタンジアミン、N,N’-ジブチル-1,2-シクロブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-シクロヘキサンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-シクロヘキサンジアミン、N,N’-ジブチル-1,4-シクロヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-シクロヘキサンジアミン、N,N’-ジブチル-1,3-シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0055】
芳香族2級ジアミンとしては、例えば、N,N’-ジメチル-フェニレンジアミン、N,N’-ジメチル-キシリレンジアミン、N,N’-ジメチル-ジフェニルメタンジアミン、N,N’-ジメチル-ジフェニルエーテルジアミン、N,N’-ジメチル-ベンジジンおよびN,N’-ジメチル-1,4-ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0056】
2級アルカノールジアミンとしては、例えば、N-メチルジエタノールアミン、N-オクチルジエタノールアミン、N-ステアリルジエタノールアミンおよびN-メチルジプロパノールアミン等が挙げられる。
【0057】
ジカルボン酸としては、炭素原子数2~20のジカルボン酸が使用でき、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸等が用いられる。
【0058】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、β-メチルグルタル酸、エチルコハク酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、トリデカンジ酸、テトラデカンジ酸、ヘキサデカンジ酸、オクタデカンジ酸およびイコサンジ酸が挙げられる。
【0059】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウムおよび3-スルホイソフタル酸カリウム等が挙げられる。
【0060】
脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジ酢酸、1,3-シクロヘキサンジ酢酸、1,2-シクロヘキサンジ酢酸およびジシクロヘキシル-4、4’-ジカルボン酸等が挙げられる。
【0061】
これらの活性水素原子含有化合物は、1種でも2種以上の混合物でも使用することができる。
【0062】
次に、本発明の樹脂組成物の高分子化合物(A)に係る化合物(E)について説明する。化合物(E)は、反応性官能基を有する化合物であり、化合物(E)の反応性官能基としては、カルボキシル基とエステル結合を介して結合できるものであればよく、かかる官能基としては、エポキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂組成物において、反応性官能基を有する化合物(E)としては、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)、または3個以上の水酸基を有する多価アルコール化合物(E-2)が、制電性とその持続性、難燃性の点から好ましく、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)が特に好ましい。
【0064】
本発明の樹脂組成物に用いられるエポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)としては、エポキシ基を2個以上有するものであれば特に制限されず、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物、ジシクロペンタジエンジメタノール等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物、エポキシ化大豆油等が挙げられる。また、これらのエポキシ化合物は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの、あるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)を用いて高分子量化したものであってもよい。かかる多価エポキシ化合物(E-1)は、2種以上を使用してもよい。
【0065】
また、多価エポキシ化合物(E-1)のエポキシ当量は、制電性とその持続性、難燃性の点から、70~2000が好ましい。
【0066】
本発明の樹脂組成物に用いられる3個以上の水酸基を有する多価アルコール化合物(E-2)としては、水酸基を3個以上有するものであれば特に制限されず、例えば、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ソルビタン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;さらには、トリペンタエリスリトールが挙げられる。また、ポリオール化合物の分子量には特に制限はなく、ポリペンタエリスリトールやポリビニルアルコール等の高分子量のポリオールも使用でき、ポリエステルポリオール等も使用できる。かかる多価アルコール化合物は、2種以上を使用してもよい。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物に係る高分子化合物(A)は、制電性とその持続性、難燃性の観点から、ジオールとジカルボン酸とから構成されるポリエステル(G)と、化合物(D)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、エステル結合を介して結合してなる構造を有することが好ましい。ここでポリエステル(G)を構成するジカルボン酸は、制電性とその持続性、難燃性の点から、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を併用することが好ましい。
【0068】
さらに、高分子化合物(A)は、制電性とその持続性、難燃性の観点から、ジオールとジカルボン酸とから構成されるポリエステル(G)から構成されたブロック、および、化合物(D)から構成されたブロックがエステル結合を介して繰り返し交互に結合してなる両末端にカルボキシル基を有するブロックポリマー(H)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、エステル結合を介して結合してなる構造を有することが好ましい。ここでポリエステル(G)を構成するジカルボン酸は、制電性とその持続性、難燃性の点から、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を併用することが好ましい。
【0069】
ポリエステル(G)は、例えば、上記ジカルボン酸、好ましくは脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸と、上記ジオールとを重縮合反応させることにより得ることができる。
【0070】
重縮合反応には、エステル化反応を促進する触媒を使用してもよく、触媒としては、ジブチル錫オキサイド、テトラアルキルチタネート、酢酸ジルコニウム、酢酸亜鉛等、従来公知のものが使用できる。
【0071】
脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸の誘導体、例えば、酸無水物、アルキルエステル、アルカリ金属塩、酸ハライド等であってもよく、誘導体を使用してポリエステル(G)を得た場合は、最終的に両末端を処理してカルボキシル基にすればよく、そのままの状態で、次の、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)を得るための反応に進んでもよい。また、脂肪族ジカルボン酸およびその誘導体は、2種以上の混合物であってもよい。
【0072】
芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸の誘導体、例えば、酸無水物、アルキルエステル、アルカリ金属塩、酸ハライド等であってもよく、誘導体を使用してポリエステル(G)を得た場合は、最終的に両末端を処理してカルボキシル基にすればよく、そのままの状態で、次の、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)を得るための反応に進んでもよい。また、芳香族ジカルボン酸およびその誘導体は、2種以上の混合物であってもよい。
【0073】
脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を使用する場合の、ポリエステル(G)中の、脂肪族ジカルボンのカルボキシル基を除いた残基と、芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基を除いた残基との比は、制電性とその持続性、難燃性の点からモル比で90:10~99.9:0.1が好ましく、93:7~99.9:0.1がより好ましい。
【0074】
ポリエステル(G)は、制電性とその持続性、難燃性の観点から、両末端にカルボキシ基を有する構造であるのが好ましい。
【0075】
両末端にカルボキシル基を有するポリエステル(G)は、例えば、上記ジカルボン酸またはその誘導体、好ましくは、上記脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体、および上記芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、上記ジオールとを重縮合反応させることにより得ることができる。
【0076】
ジカルボン酸またはその誘導体、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体、および芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、ジオールとの反応比は、両末端がカルボキシル基となるように、ジカルボン酸またはその誘導体、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体、および芳香族ジカルボン酸またはその誘導体を過剰に使用することが好ましく、モル比で、ジオールに対して1モル過剰に使用することが好ましい。
【0077】
重縮合反応時の脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体と芳香族ジカルボン酸またはその誘導体との配合比は、モル比で90:10~99.9:0.1が好ましく、93:7~99.9:0.1がより好ましい。
【0078】
また、配合比や反応条件によっては、ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸のみから構成されるポリエステルや、ジオールおよび芳香族ジカルボン酸からのみ構成されるポリエステルが生成する場合もあるが、本発明の樹脂組成物では、ポリエステル(G)に、それらが混入していてもよく、そのままそれらを化合物(D)と反応させて、ブロックポリマー(H)を得てもよい。
【0079】
ジオールと、ジカルボン酸、好ましくは、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなり、末端に、好ましくは両末端にカルボキシル基を有するポリエステル(G)は、化合物(D)と反応することでエステル結合を形成しブロックポリマー(H)の構造を形成するものであればよく、末端の、好ましくは両末端のカルボキシル基は、保護されていてもよく、修飾されていてもよく、また、前駆体の形であってもよい。また、反応時に生成物の酸化を抑えるために、反応系にフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤を添加してもよい。
【0080】
前記化合物(D)は、ポリエステル(G)と反応することでエステル結合を形成し、ブロックポリマー(H)の構造を形成するものであればよく、両末端の水酸基は、保護されていてもよく、修飾されていてもよく、また、前駆体の形であってもよい。
【0081】
本発明の樹脂組成物に係る両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)は、上記ポリエステル(G)から構成されたブロックと、上記化合物(D)から構成されたブロックとを有し、これらのブロックが、カルボキシル基と水酸基とにより形成されたエステル結合を介して繰り返し交互に結合してなる構造を有する。かかるブロックポリマー(H)の一例を挙げると、好ましくは、下記一般式(6)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0082】
上記一般式(6)中、(G)は、両末端にカルボキシル基を有するポリエステル(G)から構成されたブロックを表し、(D)は、両末端に水酸基を有する化合物(G)から構成されたブロックを表し、tは繰り返し単位の繰り返しの数であり、制電性とその持続性、難燃性の点から好ましくは1~10の数を表す。tは、より好ましくは1~7の数であり、最も好ましくは1~5の数である。
【0083】
ポリエステル(G)に脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を使用する場合、ブロックポリマー(H)中の、ポリエステル(G)から構成されたブロックの一部は、ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸のみから構成されたポリエステルからなるブロック、または、ジオールおよび芳香族ジカルボン酸のみから構成されたポリエステルからなるブロックに置き換えられていてもよい。
【0084】
両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)は、両末端にカルボキシル基を有するポリエステル(G)と、両末端に水酸基を有する化合物(D)とを、重縮合反応させることによって得ることができるが、ポリエステル(G)と化合物(D)とが、カルボキシル基と水酸基とにより形成されたエステル結合を介して繰り返し交互に結合してなる構造を有するものと同等の構造を有するものであれば、必ずしも上記ポリエステル(G)と上記化合物(D)とから合成する必要はない。
【0085】
ポリエステル(G)と化合物(D)との反応比は、上記化合物(D)がXモルに対して、上記ポリエステル(G)がX+1モルとなるように調整すれば、両末端にカルボキシル基を有するブロックポリマー(H)を好ましく得ることができる。
【0086】
反応に際しては、上記ポリエステル(G)の合成反応の完結後に、上記ポリエステル(G)を単離せずに、上記化合物(D)を反応系に加えて、そのまま反応させてもよい。
【0087】
重縮合反応には、エステル化反応を促進する触媒を使用してもよく、触媒としては、ジブチル錫オキサイド、テトラアルキルチタネート、酢酸ジルコニウム、酢酸亜鉛等、従来公知のものが使用できる。また、反応時に生成物の酸化を抑えるために、反応系にフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤を添加してもよい。
【0088】
また、ポリエステル(G)に脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を使用する場合、ポリエステル(G)には、ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸のみから構成されるポリエステルや、ジオールおよび芳香族ジカルボン酸からのみ構成されるポリエステルが混入していてもよく、それらをそのまま化合物(D)と反応させ、ブロックポリマー(H)を得てもよい。
【0089】
ブロックポリマー(H)は、ポリエステル(G)から構成されるブロックと化合物(D)から構成されるブロック以外に、ジオールと脂肪族ジカルボン酸のみから構成されるポリエステルから構成されるブロックや、ジオールと芳香族ジカルボン酸からのみ構成されるポリエステルから構成されるブロックが構造中に含まれていてもよい。
【0090】
本発明の樹脂組成物に係る高分子化合物(A)は、好ましくは、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)と、反応性官能基を有する化合物(E)とが、ブロックポリマー(H)の末端のカルボキシル基と反応性官能基を有する化合物(E)の反応性官能基とにより形成されたエステル結合を介して結合してなる構造を有する。反応性官能基を有する化合物(E)は、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)、または3個以上の水酸基を有する多価アルコール化合物(E-2)が、制電性とその持続性、難燃性の点から好ましく、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)が特に好ましい。
【0091】
まず、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)を使用した場合、本発明の樹脂組成物に係る高分子化合物(A)は、好ましくは、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)と、エポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)とが、ブロックポリマー(H)の末端のカルボキシル基とエポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)のエポキシ基とにより形成されたエステル結合を介して結合してなる構造を有する。
【0092】
また、かかる高分子化合物(A)は、さらに、上記ポリエステル(G)のカルボキシル基と上記多価エポキシ化合物(E-1)のエポキシ基とにより形成されたエステル結合を含んでいてもよい。また、かかる高分子化合物(A)は、さらに、上記ポリエステル(G)の水酸基または上記化合物(D)の水酸基と、上記多価エポキシ化合物(E-1)のエポキシ基とにより形成されたエーテル結合を含んでいてもよい。
【0093】
高分子化合物(A)を得るためには、上記ブロックポリマー(H)のカルボキシル基と、上記多価エポキシ化合物(E-1)のエポキシ基とを反応させればよい。多価エポキシ化合物(E-1)のエポキシ基の数は、反応させるブロックポリマー(H)のカルボキシル基の数の、0.5~5当量が好ましく、0.5~1.5当量がより好ましい。また、上記反応は、各種溶媒中で行ってもよく、溶融状態で行ってもよい。
【0094】
反応させるエポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(D)は、反応させるブロックポリマー(H)のカルボキシル基の数の、0.1~2.0当量が好ましく、0.2~1.5当量がより好ましい。
【0095】
反応に際しては、上記ブロックポリマー(H)の合成反応の完結後に、ブロックポリマー(H)を単離せずに、反応系に多価エポキシ化合物(E-1)を加えて、そのまま反応させてもよい。その場合、ブロックポリマー(H)を合成するときに過剰に使用した未反応のポリエステル(G)のカルボキシル基と、多価エポキシ化合物(E-1)の一部のエポキシ基とが反応して、エステル結合を形成してもよい。
【0096】
本発明の樹脂組成物に係る好ましい高分子化合物(A)は、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)とエポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物(E-1)とが、それぞれのカルボキシル基とエポキシ基とにより形成されたエステル結合を介して結合した構造を有するものと同等の構造を有するものであれば、必ずしも上記ブロックポリマー(H)と上記多価エポキシ化合物(E-1)とから合成する必要はない。
【0097】
次に、3個以上の水酸基を有する多価アルコール化合物(E-2)を使用した場合、本発明に係る高分子化合物(A)は、好ましくは、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)と、水酸基を3個以上有する多価アルコール化合物(E-2)とが、ブロックポリマー(H)の末端のカルボキシル基と水酸基を3個以上有する多価アルコール化合物(E-2)の水酸基とにより形成されたエステル結合を介して結合してなる構造を有する。
【0098】
また、かかる高分子化合物(A)は、さらに、上記ポリエステル(G)のカルボキシル基と上記多価アルコール化合物(E-2)の水酸基とにより形成されたエステル結合を含んでいてもよい。
【0099】
高分子化合物(A)を得るためには、上記ブロックポリマー(H)のカルボキシル基と、上記多価アルコール化合物(E-2)の水酸基とを反応させればよい。多価アルコール化合物(E-2)の水酸基の数は、反応させるブロックポリマー(H)のカルボキシル基の数の、0.5~5当量が好ましく、0.5~1.5当量がより好ましい。また、上記反応は、各種溶媒中で行ってもよく、溶融状態で行ってもよい。
【0100】
反応させる3個以上の水酸基を有する多価アルコール化合物(E-2)は、反応させるブロックポリマー(H)のカルボキシル基の、0.1~2.0当量が好ましく、0.2~1.5当量がより好ましい。
【0101】
反応に際しては、上記ブロックポリマー(H)の合成反応の完結後に、ブロックポリマー(H)を単離せずに、反応系に多価アルコール化合物(E-2)を加えて、そのまま反応させてもよい。その場合、ブロックポリマー(H)を合成するときに過剰に使用した未反応のポリエステル(G)のカルボキシル基と、多価アルコール化合物(E-2)の一部の水酸基とが反応して、エステル結合を形成してもよい。
【0102】
本発明の樹脂組成物に係る好ましい高分子化合物(A)は、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)と水酸基を3個以上有する多価アルコール化合物(E-2)とが、それぞれのカルボキシル基と水酸基とにより形成されたエステル結合を介して結合した構造を有するものと同等の構造を有するものであれば、必ずしも上記ブロックポリマー(H)と上記多価アルコール化合物(E-2)とから合成する必要はない。
【0103】
本発明の樹脂組成物において、高分子化合物(A)における、ポリエステル(G)から構成されるブロックの数平均分子量は、好ましくはポリスチレン換算で800~8,000であり、より好ましくは1,000~6,000であり、さらに好ましくは2,000~4,000である。また、高分子化合物(A)における、上記一般式(1)で示される基を一つ以上有し両末端に水酸基を有する化合物(D)から構成されるブロックの数平均分子量は、好ましくはポリスチレン換算で400~6,000であり、より好ましくは1,000~5,000であり、さらに好ましくは2,000~4,000である。
【0104】
さらに、高分子化合物(A)における、両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)から構成されるブロックの数平均分子量は、好ましくはポリスチレン換算で5,000~25,000であり、より好ましくは7,000~17,000であり、より好ましくは9,000~13,000である。
【0105】
また、本発明の樹脂組成物に係る高分子化合物(A)は、ジオール、ジカルボン酸(好ましくは脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸)からポリエステル(G)を得たのち、ポリエステル(G)を単離せずに、上記化合物(D)および/または上記反応性官能基を有する化合物(D)と反応させてもよい。
【0106】
本発明の樹脂組成物において、高分子化合物(A)の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して40質量部超90質量部以下であり、制電性とその持続性、難燃性の点から、41~85質量部以下が好ましく、41~80質量部がより好ましくい。40質量部以下だと、充分な制電性とその持続性が得られず、90質量部を超えると難燃性が不充分となる。
【0107】
次に、本発明の樹脂組成物に係るアルカリ金属の塩(B)について説明する。
アルカリ金属の塩としては有機酸または無機酸の塩が挙げられ、アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム等が挙げられる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等の炭素原子数1~18の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等の炭素原子数1~12の脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の炭素原子数1~20のスルホン酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、硝酸、過塩素酸等が挙げられる。中でも、制電性とその持続性、生体や環境に対する安全性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩が好ましく、ナトリウムがより好ましい。また、制電性とその持続性、難燃性の点から、酢酸の塩、過塩素酸の塩、p-トルエンスルホン酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩がより好ましい。アルカリ金属の塩は2種以上でもよい。
【0108】
アルカリ金属の塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、p-トルエンスルホン酸リチウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム等が挙げられる。これらの中で、制電性とその持続性、難燃性、生体や環境に対する安全性の点から、好ましいのは、p-トルエンスルホン酸リチウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等であり、最も好ましいのはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0109】
本発明の樹脂組成物において、アルカリ金属の塩(B)の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部にたいして、2.5~9.0質量部であり、制電性とその持続性の点から、3.0~9.0質量部が好ましく、4.0~9.0質量部がより好ましく、5.0~9.0質量部がさらにより好ましい。2.5質量部よりも少ないと、充分な制電性が得られず、9.0質量部を超えると制電性の持続性が不充分となる。
【0110】
本発明の樹脂組成物において、制電性とその持続性の点から、高分子化合物(A)とアルカリ金属の塩(B)の質量比は、(B)/(A)=3.0/97.0~14.0/86.0であり、4.0/96.0~14.0/86.0であることが好ましく、4.5/95.5~11.0/89.0であることがより好ましく、5.0/95.0~11.0/89.0であることがさらにより好ましく、7.0/93.0~11.0/89.0であることがさらにより好ましく、7.5/92.5~10.0/90.0がさらにより好ましく、8.0/92.0~10.0/90.0がさらにより好ましい。
【0111】
本発明の樹脂組成物において、アルカリ金属の塩(B)は、あらかじめ高分子化合物(A)に配合しておいてから、熱可塑性樹脂に配合してもよいし、個別に熱可塑性樹脂に配合してもよい。またアルカリ金属の塩(B)を、あらかじめ高分子化合物(A)に配合する場合、配合のタイミングは問わず、高分子化合物(A)の製造時にアルカリ金属(B)を配合しても、高分子化合物(A)の製造後に押出機や混練機を用いてアルカリ金属(B)を配合してもよい。
【0112】
次に、本発明の樹脂組成物に係るリン酸塩系難燃剤(C)について説明する。
本発明の樹脂組成物において、リン酸塩系難燃剤(C)は、下記(ポリ)リン酸塩化合物(C)-1成分の1種以上、または(ポリ)リン酸塩化合物(C)-2成分の1種以上を含有することが好ましく、制電性とその持続性、特に難燃性の点から、(ポリ)リン酸塩化合物(C)-1成分の1種以上と、(ポリ)リン酸塩化合物(C)-2成分の1種以上の、(C)-1成分と(C)-2成分の両方を含む混合物であることがより好ましい。
【0113】
本発明の樹脂組成物において、好適に使用される難燃剤である、下記一般式(2)で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)-1は、(ポリ)リン酸とアンモニアまたは下記一般式(3)で表わされるトリアジン誘導体との塩である。
【0114】
ここで、一般式(2)中のnは1~100の数を表し、Xはアンモニアまたは下記一般式(3)で表されるトリアジン誘導体を表し、pは0<p≦n+2を満たす数を表す。
【0115】
ここで、式(3)中のZおよびZは、-NR基、水酸基、メルカプト基、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルキル基、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルコキシ基、フェニル基、または、ビニル基を表し、ZおよびZは同一であっても異なるものであってもよい。また、RおよびRは各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~6のアルキル基、または、メチロール基を表す。
【0116】
一般式(3)におけるZおよびZで表される直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられる。
【0117】
一般式(3)におけるZおよびZで表される直鎖または分岐を有する炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、上記のアルキル基から誘導される基が挙げられる。
【0118】
およびZがとり得る-NR基におけるRおよびRで表される直鎖または分岐を有する炭素原子数1~6のアルキル基としては、上記に挙げたアルキル基のうち炭素原子数1~6のものが挙げられる。
【0119】
一般式(3)で表されるトリアジン誘導体としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-エトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-プロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0120】
一般式(2)で表される(ポリ)リン酸塩化合物の中でも、制電性とその持続性、難燃性の点から、好ましく使用される化合物としては、例えば、(ポリ)リン酸とメラミンとの塩または(ポリ)リン酸アンモニウム化合物が挙げられ、(ポリ)リン酸とメラミンとの塩がより好ましい。
【0121】
上記(ポリ)リン酸とメラミンとの塩としては、例えば、オルトリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン等が挙げられ、これらの中でも、制電性とその持続性、難燃性の点から、上記一般式(1)におけるnが2、pが2、Xがメラミンであるピロリン酸メラミンが特に好ましい。
【0122】
上記(ポリ)リン酸とメラミンとの塩は、例えば、ピロリン酸メラミンの場合、ピロリン酸ナトリウムとメラミンとを任意の反応比率で塩酸を加えて反応させ、水酸化ナトリウムで中和することにより得ることができる。あるいはオルトリン酸メラミンを加熱縮合させることにより、ピロリン酸メラミンを得ることもできる。ポリリン酸メラミンを使用する場合は、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、その他のポリリン酸の混合物からなるポリリン酸とメラミンとから得られた塩でもよい。この場合、原料の(ポリ)リン酸の構成は特に限定されない。あるいはオルトリン酸メラミンを加熱縮合させることにより、ポリリン酸メラミンを得てもよい。
【0123】
上記(ポリ)リン酸アンモニウム化合物は、(ポリ)リン酸アンモニウム単体若しくは(ポリ)リン酸アンモニウムを主成分とする化合物である。上記(ポリ)リン酸アンモニウム単体としては、クラリアント社製商品名「エキソリット-422」、「エキソリット-700」、モンサント社製商品名「フォスチェク-P/30」、「フォスチェク-P/40」、住友化学株式会社製商品名「スミセーフ-P」、チッソ株式会社製商品名「テラージュ-S10」、「テラージュ-S20」等が挙げられる。
【0124】
上記(ポリ)リン酸アンモニウムを主成分とする化合物としては、例えば、(ポリ)リン酸アンモニウムを熱硬化性樹脂で被覆若しくはマイクロカプセル化したものや、メラミンモノマーや他の含窒素有機化合物等で(ポリ)リン酸アンモニウム表面を被覆したもの、界面活性剤やシリコン処理を行ったもの、(ポリ)リン酸アンモニウムを製造する過程でメラミン等を添加し難溶化したもの等が挙げられる。(ポリ)リン酸アンモニウムを主成分とする化合物としては、クラリアント社製商品名「エキソリット-462」、住友化学株式会社製商品名「スミセーフ-PM」、チッソ株式会社製商品名「テラージュ-C60」、「テラージュ-C70」、「テラージュ-C80」等が挙げられる。
【0125】
また、本発明の樹脂組成物において、好適に使用される難燃剤である、下記一般式(4)で表される(ポリ)リン酸塩化合物(C)-2は、(ポリ)リン酸とYで表されるジアミンとの塩である。Yで表されるジアミンは、RN-(CH-NR、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンである。
【0126】
ここで、一般式(4)式中、rは1~100を表し、Yは、RN-(CH-NR、ピペラジン、または、ピペラジン環を含むジアミンを表し、R、R、RおよびRは各々独立して、水素原子、直鎖または分岐を有する炭素原子数1~5のアルキル基を表し、kは1~10の整数を表し、qは、0<q≦r+2を満たす数を表す。
【0127】
~Rで表される直鎖または分岐を有する炭素原子数1~5のアルキル基としては、例えば、上記ZおよびZで表されるアルキル基の具体例として挙げたもののうちの炭素原子数1~5のものが挙げられる。
【0128】
ピペラジン環を含むジアミンとしては、例えば、ピペラジンの2、3、5、6位の1箇所以上をアルキル基、好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基で置換した化合物;ピペラジンの1位および/または4位のアミノ基を、アミノ基で置換されたアルキル基、好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基で置換した化合物が挙げられる。
【0129】
一般式(4)におけるYの具体例としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-ジエチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1、7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、ピペラジン、trans-2,5-ジメチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
【0130】
一般式(4)で表される(ポリ)リン酸塩化合物の中で、制電性とその持続性、難燃性の点から、好ましく使用される化合物としては、(ポリ)リン酸とピペラジンとの塩が挙げられ、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジンが好ましい。これらの中でも、制電性とその持続性、難燃性の点から、一般式(4)におけるqが1、Yがピペラジンであるポリリン酸ピペラジン、特にピロリン酸ピペラジンが好ましい。
【0131】
(ポリ)リン酸とピペラジンとの塩は、例えば、ピロリン酸ピペラジンの場合は、ピペラジンとピロリン酸とを水中またはメタノール水溶液中で反応させて、水難溶性の沈殿として容易に得られる。あるいはオルトリン酸ピペラジンを加熱縮合させることにより、ピロリン酸ピペラジンを得ることもできる。ポリリン酸ピペラジンを使用する場合は、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、その他のポリリン酸の混合物からなるポリリン酸とピペラジンとから得られた塩でもよい。この場合、原料の(ポリ)リン酸の構成は特に限定されない。あるいはオルトリン酸メラミンを加熱縮合させることにより、ポリリン酸メラミンを得てもよい。
【0132】
また、リン酸塩系難燃剤(C)として好適に使用することができる(C)-1成分と(C)-2成分との含有比率(質量基準)は、制電性とその持続性、難燃性の点から、(C)-1/(C)-2=20/80~50/50が好ましく、(C)-1/(C)-2=30/70~50/50がより好ましく、(C)-1/(C)-2=35/65~45/55がさらに好ましい。
【0133】
本発明の樹脂組成物において、リン酸塩系難燃剤(C)の含有量、好ましくは(C)-1成分と(C)-2成分の合計の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、35~100質量部であり、制電性とその持続性、難燃性の点から、40~70質量部が好ましく、45~65質量部がより好ましい。35質量部未満では十分な難燃化効果が得られず、100質量部を超えると樹脂の特性を低下させる場合がある。
【0134】
本発明の樹脂組成物は、制電性とその持続性、難燃性の点から、エーテルエステル系可塑剤(J)の1種以上を含有することが好ましい。
【0135】
エーテルエステル系可塑剤(J)は特に限定されないが、制電性とその持続性、難燃性の点から、脂肪族ジカルボン酸エーテルエステル可塑剤が好ましく、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤が特に好ましい。
【0136】
また、エーテルエステル系可塑剤(J)は、制電性とその持続性、難燃性の点から、下記一般式(7)で表される脂肪族ジカルボン酸エーテルエステル化合物が好ましい。
【0137】
ここで、一般式(7)中、nは2~6の整数を表し、mは1~3の整数を表し、Rは炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0138】
一般式(7)において、炭素原子数1~6のアルキル基としては、直鎖のアルキル基でも分岐のアルキル基でもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル基等が挙げられる。Rは、制電性とその持続性、難燃性の点から、ブチル基が好ましい。
【0139】
上記一般式(7)において、制電性とその持続性、難燃性の点から、nは4が好ましい。また、上記一般式(7)において、制電性とその持続性、難燃性の点から、mは2が好ましい。
【0140】
エーテルエステル系可塑剤は市販品を使用してもよいし、従来公知の方法で製造できる。
【0141】
脂肪族ジカルボン酸エーテルエステル可塑剤の製造方法の例を挙げると、例えば、炭素原子数4~8の脂肪族ジカルボン酸と、アルキル基の炭素原子数1~6のジエチレングリコールモノアルキルエーテルまたはエチレングリコールモノアルキルエーテルまたはトリエチレングリコールモノアルキルエーテルとを、エステル化反応すればよい。エステル化反応には、通常使用される触媒を使用してもよい。
【0142】
製造に使用される炭素原子数4~8の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸が挙げられる。これら脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸の誘導体、例えば、酸無水物、アルキルエステル、アルカリ金属塩、酸ハライド等であってもよい。
【0143】
製造に使用される、アルキル基の炭素原子数1~6のジエチレングリコールモノアルキルエーテルの例を挙げると、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数1~6のエチレングリコールモノアルキルエーテルの例を挙げると、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数1~6のトリエチレングリコールモノアルキルエーテルの例を挙げると、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0144】
例えば、下記化合物No.1を製造する場合は、1molのアジピン酸と2molのジエチレングリコールモノブチルエーテルをエステル化反応させることで得ることができる。
【0145】
本発明の樹脂組成物においては、脂肪族ジカルボン酸エーテルエステル可塑剤としては、例えば、下記の化合物No.1~No.22等の化合物が挙げられるが、制電性とその持続性、難燃性の点から化合物No.1のアジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]が好ましい。
【0146】
【0147】
本発明の樹脂組成物において、エーテルエステル系可塑剤(J)の含有量は、制電性とその持続性、難燃性の点から、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して、0.01~1.0質量部が好ましく、0.05~0.3質量部がより好ましく、0.08~0.22質量部がさらにより好ましい。
【0148】
本発明の樹脂組成物において、エーテルエステル系可塑剤(J)は、あらかじめリン酸塩系難燃剤(C)に配合しておいてから、熱可塑性樹脂に配合してもよいし、個別に熱可塑性樹脂に配合してもよい。
【0149】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、難燃助剤である金属酸化物を含有することが好ましい。金属酸化物の例としては酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素等が挙げられ、その中でも、酸化亜鉛が好ましい。金属酸化物は表面処理されていてもよい。金属酸化物の添加量は、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部がより好ましく、1.2~5質量部がさらにより好ましい。0.01質量部未満であると難燃助剤効果が十分ではなく、10質量部を超えると、樹脂の特性を低下させる場合がある。
【0150】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、ドリップ防止剤を含有することが好ましい。ドリップ防止剤としては、フッ素系ドリップ防止剤やシリコンゴム類、層状ケイ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、フッ素系ドリップ防止剤、層状ケイ酸塩が好ましい。
【0151】
フッ素系のドリップ防止剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ-n-ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ-t-ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ-2-エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物、またはパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、ドリップ防止性の点から、ポリテトラフルオロエチレンが特に好ましい。
【0152】
層状ケイ酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、タルク等が挙げられる。また、層間に、有機カチオン、第4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンがインターカレートされているものであってもよい。
【0153】
ドリップ防止剤の含有量は、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して0.005~5質量部であることが好ましく、0.01~5質量部がより好ましく、0.05~3質量部がさらにより好ましく、0.1~1質量部がさらにより好ましい。0.005質量部未満であるとドリップ防止効果が十分ではなく、5質量部を超えると、樹脂の特性を低下させる場合がある。
【0154】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、配合時における二次凝集の抑制や耐水性を改良するためにシリコーンオイルを配合することが好ましい。シリコーンオイルの例としては、ポリシロキサンの側鎖、末端が全てメチル基であるジメチルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーンオイル、ポリシロキサンの側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイル等や、これらのコポリマーが挙げられ、またこれらの側鎖および/または末端の一部に有機基を導入した、アミン変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メルカプト変性、ポリエーテル変性、長鎖アルキル変性、フロロアルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、シラノール変性、ジオール変性、フェノール変性および/またはアラルキル変性した変性シリコーンオイルを使用してもよい。
【0155】
シリコーンオイルの具体例をあげると、ジメチルシリコーンオイルとして、KF-96(信越化学(株)製)、KF-965(信越化学(株)製)、KF-968(信越化学(株)製)等が挙げられ、メチルハイドロジェンシリコーンオイルまたはメチルハイドロジェンポリシロキサン構造を有するシリコーンオイルとして、KF-99(信越化学(株)製)、KF-9901(信越化学(株))、HMS-151(Gelest社製)、HMS-071(Gelest社製)、HMS-301(Gelest社製)、DMS-H21(Gelest社製)等が挙げられ、メチルフェニルシリコーンオイルの例としては、KF-50(信越化学(株)製)、KF-53(信越化学(株)製)、KF-54(信越化学(株)製)、KF-56(信越化学(株)製)等が挙げられ、エポキシ変性品としては、例えば、X-22-343(信越化学(株)製)、X-22-2000(信越化学(株)製)、KF-101(信越化学(株)製)、KF-102(信越化学(株)製)、KF-1001(信越化学(株)製)、カルボキシル変性品としては、例えば、X-22-3701E(信越化学(株)製)、カルビノール変性品としては、例えば、X-22-4039(信越化学(株)製)、X-22-4015(信越化学(株)製)、アミン変性品としては、例えば、KF-393(信越化学(株)製)等が挙げられる。
【0156】
本発明の樹脂組成物においては、シリコーンオイルの含有量は、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらにより好ましい。0.01質量部未満であると二次凝集の抑制や耐水性が十分でない場合があり、10質量部を超えると、樹脂の特性を低下させる場合がある。
【0157】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤とは、有機官能基と共に加水分解性基を有する化合物であり、例えば、一般式Q-(CH)s-Si(ORで表される。Qは有機官能基であり、sは1~3の数を表し、Rはメチル基またはエチル基を表す。Qの有機官能基としては、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、シランカップリング剤としては、エポキシ基を有するものが特に好ましい。
【0158】
本発明の樹脂組成物においては、シランカップリング剤の含有量は、リン酸塩系難燃剤(C)100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部がさらにより好ましい。0.01質量部未満であると二次凝集の抑制や耐水性を改良が十分ではなく、10質量部を超えると、樹脂の特性を低下させる場合がある。
【0159】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記金属酸化物以外の難燃助剤を配合することもできる。難燃助剤としては例えば多価アルコール化合物が挙げられる。
【0160】
多価アルコール化合物とは、複数のヒドロキシル基が結合している化合物であり、上述の多価アルコール化合物と重複する場合があるが、難燃性を向上させる難燃助剤として添加する化合物である。難燃助剤の多価アルコール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等の、ペンタエリスリトール、または、ペンタエリスリトールの縮合物が好ましく、ペンタエリスリトールの縮合物がより好ましく、ジペンタエリスリトールが特に好ましい。また、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートおよびソルビトールも好適に使用することができる。
【0161】
ペンタエリスリトールの縮合物は、ペンタエリスリトールとペンタエリスリトールの縮合物の混合物でもよい。
【0162】
難燃助剤、ドリップ防止剤、シリコーンオイルおよびシランカップリング剤を熱可塑性樹脂に配合するタイミングは特に制限されず、例えば、あらかじめリン酸塩系難燃剤(C)とワンパック化して熱可塑性樹脂に配合してもよく、または各々の成分を熱可塑性樹脂に対して配合してもよい。ワンパック化する場合は、各成分は、各々粉砕してから混合してもよく、または混合してから粉砕してもよい。
【0163】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに第2族元素の塩を含有してもよい。
【0164】
第2族元素の塩としては、有機酸または無機酸の塩が挙げられ、第2族元素の例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等の炭素原子数1~18の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等の炭素原子数1~12の脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の炭素原子数1~20のスルホン酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、硝酸、過塩素酸等が挙げられる。
【0165】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤としては、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を使用することができる。
【0166】
非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤;ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット若しくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0167】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0168】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0169】
両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0170】
界面活性剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.3~4質量部がより好ましい。
【0171】
さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、高分子型制電剤を配合してもよい。高分子型制電剤としては、例えば、公知のポリエーテルエステルアミド等の高分子型制電剤を使用することができ、公知のポリエーテルエステルアミドとしては、例えば、特開平7-10989号公報に記載のビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミドが挙げられる。また、ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックとの結合単位が2~50の繰り返し構造を有するブロックポリマーを使用することができ、例えば、米国特許第6552131号明細書記載のブロックポリマーを挙げることができる。
【0172】
高分子型制電剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0173】
さらにまた、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、イオン性液体を配合してもよい。イオン性液体の例としては、室温以下の融点を有し、イオン性液体を構成するカチオンまたはアニオンのうち少なくとも一つが有機物イオンであり、初期電導度が好ましくは1~200ms/cm、より好ましくは10~200ms/cmである常温溶融塩であって、例えば、国際公開第95/15572号に記載の常温溶融塩が挙げられる。
【0174】
イオン性液体を構成するカチオンとしては、アミジニウム、ピリジニウム、ピラゾリウムおよびグアニジニウムカチオンからなる群から選ばれるカチオンが挙げられる。
【0175】
アミジニウムカチオンとしては、下記のものが挙げられる。
(1)イミダゾリニウムカチオン
炭素原子数5~15のものが挙げられ、例えば、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチルイミダゾリニウム;
(2)イミダゾリウムカチオン
炭素原子数5~15のものが挙げられ、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム;
(3)テトラヒドロピリミジニウムカチオン
炭素原子数6~15のものが挙げられ、例えば、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム;
(4)ジヒドロピリミジニウムカチオン
炭素原子数6~20のものが挙げられ、例えば、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウム、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウム、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7,9-ウンデカジエニウム、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7,10-ウンデカジエニウム。
【0176】
ピリジニウムカチオンとしては、炭素原子数6~20のものが挙げられ、例えば、3-メチル-1-プロピルピリジニウム、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムが挙げられる。
【0177】
ピラゾリウムカチオンとしては、炭素原子数5~15のものが挙げられ、例えば、1、2-ジメチルピラゾリウム、1-n-ブチル-2-メチルピラゾリウムが挙げられる。
【0178】
グアニジニウムカチオンとしては、下記のものが挙げられる。
(1)イミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
炭素原子数8~15のものが挙げられ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム、2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム;
(2)イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
炭素原子数8~15のものが挙げられ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリウム、2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリウム;
(3)テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
炭素原子数10~20のものが挙げられ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウム;
(4)ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
炭素原子数10~20のものが挙げられ、例えば、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウム、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウム、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,4-ジヒドロピリミジニウム、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,6-ジヒドロピリミジニウム。
【0179】
カチオンは1種を単独で用いても、また、2種以上を併用しても、いずれでもよい。これらのうち、制電性の観点から好ましくはアミジニウムカチオン、より好ましくはイミダゾリウムカチオン、特に好ましくは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0180】
イオン性液体において、アニオンを構成する有機酸または無機酸としては、下記のものが挙げられる。有機酸としては、例えば、カルボン酸、硫酸エステル、スルホン酸およびリン酸エステル;無機酸としては、例えば、超強酸(例えば、ホウフッ素酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸および六フッ化ヒ素酸)、リン酸およびホウ酸が挙げられる。上記有機酸および無機酸は、1種を単独で用いても、また、2種以上を併用しても、いずれでもよい。
【0181】
有機酸および無機酸のうち、イオン性液体の制電性の観点から好ましいのは、イオン性液体を構成するアニオンのHammett酸度関数(-Ho)が12~100である、超強酸の共役塩基、超強酸の共役塩基以外のアニオンを形成する酸およびこれらの混合物である。
【0182】
超強酸の共役塩基以外のアニオンとしては、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素および臭素)イオン、アルキル(炭素原子数1~12)ベンゼンスルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸)イオンおよびポリ(n=1~25)フルオロアルカンスルホン酸(例えば、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸)イオンが挙げられる。
【0183】
また、超強酸としては、プロトン酸およびプロトン酸とルイス酸との組み合わせから誘導されるもの、およびこれらの混合物が挙げられる。超強酸としてのプロトン酸としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン、過塩素酸、フルオロスルホン酸、アルカン(炭素原子数1~30)スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等)、ポリ(n=1~30)フルオロアルカン(炭素原子数1~30)スルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸およびトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)、ホウフッ素酸および四フッ化ホウ素酸が挙げられる。これらのうち、合成の容易さの観点から好ましいのはホウフッ素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸およびビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸である。
【0184】
ルイス酸と組合せて用いられるプロトン酸としては、例えば、ハロゲン化水素(例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素)、過塩素酸、フルオロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸およびこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、イオン性液体の初期電導度の観点から好ましいのはフッ化水素である。
【0185】
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化タンタルおよびこれらの混合物が挙げられる。これらのうちでも、イオン性液体の初期電導度の観点から好ましいのは三フッ化ホウ素および五フッ化リンである。
【0186】
プロトン酸とルイス酸との組み合わせは任意であるが、これらの組み合わせからなる超強酸としては、例えば、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、六フッ化タンタル酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化タンタルスルホン酸、四フッ化ホウ素酸、六フッ化リン酸、塩化三フッ化ホウ素酸、六フッ化ヒ素酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0187】
上記のアニオンのうち、イオン性液体の制電性の観点から好ましいのは超強酸の共役塩基(プロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸とルイス酸との組合せからなる超強酸)であり、さらに好ましいのはプロトン酸からなる超強酸およびプロトン酸と、三フッ化ホウ素および/または五フッ化リンとからなる超強酸の共役塩基である。
【0188】
イオン性液体のうち、制電性の観点から好ましいのは、アミジニウムカチオンを有するイオン性液体、より好ましいのは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンを有するイオン性液体、特に好ましいのは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0189】
イオン性液体を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0190】
さらにまた、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、相溶化剤を配合してもよい。相溶化剤を配合することで、制電剤成分と他成分や樹脂成分との相溶性を向上させることができる。相溶化剤としては、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基およびポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(極性基)を有する変性ビニル重合体、例えば、特開平3-258850号公報に記載の重合体や、特開平6-345927号公報に記載のスルホニル基を有する変性ビニル重合体、あるいはポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分とを有するブロック重合体等が挙げられる。
【0191】
特に好ましい相溶化剤としては、制電性とその持続性、難燃性の点から、酸無水物変性ポリオレフィンが挙げられる。酸無水物変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンに無水マレイン酸等の酸無水物をグラフト化させた重合体である。
【0192】
酸無水物変性ポリオレフィンのポリオレフィン部分は、エチレン、プロピレン、α-オレフィンまたはジエンが、重合または共重合したもので挙げられ、α-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられ、ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、1,11-ドデカジエン等が挙げられる。またこれら以外に他の共重合成分が含まれていてもよい。さらに具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、およびそれらの混合物等が挙げられる。上記のうち、制電性とその持続性、力学特性の点から、エチレン、プロピレン、炭素原子数4~12のα-オレフィン、ブタジエン、イソプレンが重合または共重合したものが好ましく、エチレン、プロピレン、炭素原子数4~8のα-オレフィン、ブタジエンが重合または共重合したものがより好ましく、エチレン、プロピレン、ブタジエンが重合または共重合したものがさらにより好ましい。
【0193】
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、制電性とその持続性、難燃性の点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0194】
相溶化剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性樹脂および高分子化合物(A)100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0195】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の各種添加剤をさらに添加することができ、これにより、本発明の樹脂組成物を安定化させることができる。
【0196】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第三ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第三ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-第三ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらのフェノール系酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。
【0197】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらのリン系酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。
【0198】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、および、ペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルチオプロピオン酸)エステル類が挙げられる。これらのチオエーテル系酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。
【0199】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。これらのヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~30質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましい。
【0200】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第三ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第三ブチルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第三アミルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.001~30質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましい。
【0201】
さらに、必要に応じてさらに、熱可塑性樹脂中の残渣触媒を中和するために、公知の中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩、または、エチレンビス(ステアロアミド)、エチレンビス(12-ヒドロキシステアロアミド)、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド化合物が挙げられ、これら中和剤は混合して用いてもよい。
【0202】
さらにまた、本発明の樹脂組成物には、必要に応じてさらに、芳香族カルボン酸金属塩、脂環式アルキルカルボン酸金属塩、p-第三ブチル安息香酸アルミニウム、ジベンジリデンソルビトール類、芳香族リン酸エステル金属塩等の造核剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、金属水酸化物、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、無機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、その他の有機系難燃助剤等を添加してもよい。
【0203】
リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0204】
縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ナフタレン-2,5-ジイル-テトラフェニル ビス(ホスフェート)、[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル-テトラフェニル ビス(ホスフェート)、[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル-テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)ビス(ホスフェート)、テトラフェニル(チオビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスフェート)、テトラフェニル(スルホニルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスフェート)等が挙げられる。
【0205】
その他の無機系難燃助剤としては、例えば、ハイドロタルサイト、タルク、モンモリロナイト等の無機化合物、およびその表面処理品が挙げられ、例えば、DHT-4A(ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)、アルカマイザー4(亜鉛変性ハイドロタルサイト:協和化学工業(株)製)、等の種々の市販品を用いることができる。
【0206】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて通常熱可塑性樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、可塑剤、滑剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、染料、加工助剤、充填剤、発泡剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0207】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、熱可塑性樹脂に、高分子化合物(A)、アルカリ金属の塩(B)、リン酸塩系難燃剤(C)およびその他の任意成分を配合すればよく、その方法は、通常使用されている任意の方法を用いることができる。例えば、ロール混練り、バンパー混練り、押し出し機、ニーダー等により混合、練り込みして配合すればよい。
【0208】
また、高分子化合物(A)は、そのまま添加してもよいが、必要に応じて、担体に含浸させてから添加してもよい。担体に含浸させるには、そのまま加熱混合してもよいし、必要に応じて、有機溶媒で希釈してから担体に含浸させ、その後に溶媒を除去する方法でもよい。こうした担体としては、合成樹脂のフィラーや充填剤として知られているもの、または、常温で固体の難燃剤や光安定剤が使用でき、例えば、ケイ酸カルシウム粉末、シリカ粉末、タルク粉末、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、または、これら担体の表面を化学修飾したもの、上記の難燃剤や酸化防止剤の中で固体のもの等が挙げられる。これらの担体の中でも担体の表面を化学修飾したものが好ましく、シリカ粉末の表面を化学修飾したものがより好ましい。これらの担体は、平均粒径が0.1~100μmのものが好ましく、0.5~50μmのものがより好ましい。
【0209】
さらに、高分子化合物(A)の樹脂成分への配合方法としては、ブロックポリマー(H)と、反応性官能基を有する化合物(E)とを樹脂成分に練り込みながら高分子化合物(A)を合成して配合してもよく、そのときにアルカリ金属の塩(B)、リン酸塩系難燃剤(C)を同時に練り込んでもよく、また、射出成型等の成型時に高分子化合物(A)、アルカリ金属の塩(B)、リン酸塩系難燃剤(C)、樹脂成分とを混合して成形品を得る方法で配合してもよく、さらに、あらかじめ熱可塑性樹脂と、アルカリ金属の塩、リン酸塩系難燃剤(C)とのマスターバッチを製造しておき、このマスターバッチを配合してもよい。
【0210】
次に、本発明の成形体について説明する。本発明の成形体は、本発明の制電性熱可塑性樹脂組成物が成形されてなるものである。本発明の樹脂組成物を成形することにより、制電性の持続性および優れた難燃性を有する成形品を製造することができる。成形方法としては、特に限定されるものではなく、押出加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形、回転成形等が挙げられ、樹脂板、シート、フィルム、ボトル、繊維、異形品等の種々の形状の成形品が製造できる。
【0211】
本発明の成形体は、優れた制電性とその持続性、優れた難燃性を有する。通常、制電剤を配合した場合は物性が低下する場合が多いが、本発明の成形体は、制電性およびその持続性に優れるものであり、物性低下が少ない。また、成形体表面の拭き取りや、水拭き取りに対する耐性も有する。
【0212】
本発明の樹脂組成物およびその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用できる。
【0213】
より具体的には、本発明の樹脂組成物およびその成形体は、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品および通信機器、自動車用内外装材、インターメディエイト・バルク・コンテナ、人工芝、製版用フィルム、粘着フィルム、ボトル、食品用容器、食品包装用フィルム、製薬・医薬用ラップフィルム、製品包装フィルム、農業用フィルム、農業用シート、温室用フィルム等の用途に用いられる。
【0214】
さらに、本発明の樹脂組成物およびその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組および繰形、窓およびドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅および建築用材料や土木材料、衣料、カーテン、シーツ、不織布、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品等の各種用途に使用することができる。
【実施例
【0215】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明する。
下記の製造例に従い、高分子化合物(A)、(ポリ)リン酸塩化合物(C-1)、および(ポリ)リン酸塩化合物(C-2)を製造した。また、下記の製造例において数平均分子量は、下記の方法で測定した。
【0216】
〔分子量測定方法〕
数平均分子量(以下、「Mn」と称する)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定した。Mnの測定条件は以下の通りである。
装置 :日本分光(株)製GPC装置
溶媒 :テトラヒドロフラン
基準物質 :ポリスチレン
検出器 :示差屈折計(RI検出器)
カラム固定相 :昭和電工(株)製Shodex KF-804L
カラム温度 :40℃
サンプル濃度 :1mg/1mL
流量 :0.8mL/min.
注入量 :100μL
【0217】
〔製造例1〕(高分子化合物(A)-1の製造)
セパラブルフラスコに、ジオールとして、1,4-シクロヘキサンジメタノールを656g(4.55モル)、脂肪族ジカルボン酸として、アジピン酸を708g(4.85モル)、芳香族ジカルボン酸として、無水フタル酸を0.7g(4.73×10-3モル)、酸化防止剤(テトラキス[3-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン;株式会社ADEKA製商品名「アデカスタブAO-60」)を0.7g仕込み、160℃から210℃まで徐々に昇温しながら常圧で5時間、その後210℃、減圧下で3時間重合してポリエステル(G)-1を得た。ポリエステル(G)-1の酸価は28、数平均分子量Mnはポリスチレン換算で5,400であった。
【0218】
次に得られたポリエステル(G)-1を600g、前記一般式(1)で表される基を一つ以上有し、両末端に水酸基を有する化合物(D)として、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール(D)-1を300g、酸化防止剤(アデカスタブAO-60)0.5g、オクチル酸ジルコニウム0.8gを仕込み、210℃で7時間、減圧下で重合して、両末端にカルボキシル基を有するブロックポリマー(H)-1を得た。このブロックポリマー(H)-1の酸価は9、数平均分子量Mnはポリスチレン換算で12,000であった。
【0219】
得られた両末端にカルボキシル基を有するブロックポリマー(H)-1の360gに、多価エポキシ化合物(E-1)-1としてビスフェノールFジグリシジルエーテルを6g仕込み、240℃で3時間、減圧下で重合して、高分子化合物(A)-1を得た。
【0220】
〔製造例2〕(高分子化合物(A)-2の製造)
セパラブルフラスコに、ジオールとして、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを370g(1.87モル)、脂肪族ジカルボン酸として、アジピン酸を289g(1.98モル)、芳香族ジカルボン酸として、イソフタル酸を8g(0.05モル)、酸化防止剤(アデカスタブAO-60)を0.5g仕込み、180℃から220℃まで徐々に昇温しながら常圧で5時間重合した。その後、テトライソプロポキシチタネートを0.5g仕込み、220℃、減圧下で5時間重合して、ポリエステル(G)-2を得た。ポリエステル(G)-2の酸価は56、数平均分子量Mnは、ポリスチレン換算で4,900であった。
【0221】
得られたポリエステル(G)-2を300g、一般式(1)で表される基を一つ以上有し両末端に水酸基を有する化合物(D)として、数平均分子量4,000のポリエチレングリコール(D)-1を150g、酸化防止剤(アデカスタブAO-60)を0.5g、酢酸ジルコニウムを0.5g仕込み、220℃で7時間、減圧下で重合して、両末端にカルボキシルを有するブロックポリマー(H)-2を得た。このブロックポリマー(H)-2の酸価は11、数平均分子量Mnはポリスチレン換算で12,300であった。
【0222】
得られたブロックポリマー(H)-2の300gに、多価エポキシ化合物(E-1)-2としてジシクロペンタジエンメタノールジグリシジルエーテルを11g仕込み、240℃で4時間、減圧下で重合して、高分子化合物(A)-2を得た。
【0223】
〔製造例3〕(高分子化合物(A)-3の製造)
セパラブルフラスコに、ジオールとして、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を591g、脂肪族ジカルボン酸として、セバシン酸を235g(1.16モル)、芳香族ジカルボン酸として、イソフタル酸を8g(0.05モル)、一般式(1)で表される基を一つ以上有し両末端に水酸基を有する化合物(D)として、数平均分子量2,000のポリエチレングリコール(D)-2を300g、酸化防止剤(アデカスタブAO-60)を0.8g仕込み、180℃から220℃まで徐々に昇温しながら常圧で5時間重合した。その後、テトライソプロポキシチタネートを0.6g仕込み、220℃、減圧下で7時間重合して、両末端にカルボキシルを有するポリマーを得た。このポリマーの酸価は10、数平均分子量Mnはポリスチレン換算で10,100であった。
【0224】
得られたポリマーの300gに、多価エポキシ化合物(E-1)-3として、エポキシ化大豆油を7g、酢酸ジルコニウムを0.5g仕込み、240℃で5時間、減圧下で重合して、高分子化合物(A)-3を得た。
【0225】
〔製造例4〕(高分子化合物(A)-4の製造)
製造例1で得られた両末端にカルボキシル基を有する構造を有するブロックポリマー(H)-1の300gに多価アルコール化合物(E-2)-1としてペンタエリスリトールを1.7g仕込み、240℃で5時間、減圧下で重合して、高分子化合物(A)-4を得た。
【0226】
〔製造例5〕(難燃剤(C)-1の製造)
ピロリン酸とメラミンとをモル比1:1で反応させて、(ポリ)リン酸塩化合物であるピロリン酸メラミン(C)-1-1を得た。
【0227】
〔製造例6〕(難燃剤(C)-2の製造)
ピロリン酸とピペラジンとをモル比1:1で反応させて、(ポリ)リン酸塩化合物であるピロリン酸ピペラジン(C)-2-1を得た。
【0228】
〔実施例1~23、参考例1~3、比較例1~18〕
下記の表1~7に記載の樹脂組成物に、フェノール系酸化防止剤(株式会社ADEKA製商品名「アデカスタブAO-60」)0.1質量部、リン系酸化防止剤(株式会社ADEKA製商品名「アデカスタブ2112」)0.05質量部、ステアリン酸カルシウム0.05質量部、および、下記の表1~7に記載した配合量(質量部)に基づいてブレンドした樹脂組成物を用いて、下記に示す試験片作製条件に従い、試験片を得た。得られた試験片を用いて、下記に従い、電荷半減期の測定、耐水拭き性試験、および難燃性UL-94V試験を行った。
【0229】
また、表1~7には高分子化合物(A)とアルカリ金属の塩(B)の質量比、(B)/(A)も記載した。
【0230】
<試験片作製条件>
得られた各樹脂組成物を、(株)日本製鋼所製の2軸押出機(TEX30α)を用いて、225℃、10kg/時間の条件で造粒し、ペレットを得た。得られたペレットを、横型射出成形機(NEX80:日精樹脂工業(株)製)を用い、樹脂温度230℃、金型温度40℃の加工条件で成形し、電荷半減期測定用試験片(40mm×40mm×3mm)および難燃性UL-94V試験用試験片(127mm×12.7mm×1.6mm)を得た。
【0231】
<電荷半減期測定方法>
得られた電荷半減期測定用試験片(40mm×40mm×3mm)を、成形加工後直ちに、温度25℃、湿度20%RHの条件下に保存し、成形加工の2日保存後に、同雰囲気下で、シシド静電気株式会社製電荷減衰度測定器(STATIC HONESTMETER H-0110)を用い、JIS-L-1094に準拠して測定した。試験片にコロナ放電で生成した空気イオンを照射して電荷を蓄積させ、空気イオンの照射を停止した後、電荷蓄積値が1/2に減衰するまでの時間(半減期)を測定した。測定は5回行い、その平均値を求めた。半減期が短いほど制電性が優れている。
【0232】
<耐水拭き性試験>
得られた電荷半減期測定用試験片(40mm×40mm×3mm)の表面を流水中ウエスで20回拭いた後、25℃、湿度20%に調整された恒温恒湿槽内に2日間静置し、その後、シシド静電気株式会社製電荷減衰度測定器(STATIC HONESTMETER H-0110)を用い、JIS-L-1094に準拠して測定した。測定は5点で行い、その平均値を求めた。
【0233】
<難燃性UL-94V試験>
得られた難燃性UL-94V試験用試験片(127mm×12.7mm×1.6mm)を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。1回目と2回目の燃焼時間、および綿着火の有無等から、UL-94V規格にしたがって燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV-0が最も難燃性に優れ、V-1、V-2となるにしたがって難燃性は低下し、NRが最も難燃性に劣る。
【0234】
【表1】
*1:熱可塑性樹脂1;ブロックポリプロピレン(メルトフローレート=14g/10min)、株式会社プライムポリマー製 商品名「J-754HP」
*2:熱可塑性樹脂2;高密度ポリエチレン(メルトフローレート=7g/10min)、日本ポリエチレン株式会社製、商品名 HJ560
*3:グリセリンモノステアレート
*4:ポリエーテルエステルアミド型制電剤、BASF社製、商品名「イルガスタットP18」
*5:ポリエーテルポリオレフィン型制電剤、三光化学工業株式会社製、商品名「サンコノールTBX-25」
*6:NaDBS;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
*7:LiOTs;p-トルエンスルホン酸リチウム
*8水酸化アルミニウム
*9:アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]
*10:酸化亜鉛
*11:ポリテトラフルオロエチレン、三井・デュポンフロロケミカル(株)社製 商品名「PTFE-6J」
*12:メチルシリコーンオイル、信越化学(株)製 商品名「KF-99」
*13:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0235】
【表2】
【0236】
【表3】
【0237】
【表4】
【0238】
【表5】
【0239】
【表6】
【0240】
【表7】
【0241】
比較例11、12、13は、成形性が極めて悪く、ペレットを得ることができず、試験不能であった。また、比較例15は、試験片の表面が荒れるとともに、シルバーストリークが発生し、成形体として不良品となったため試験を行わなかった。
【0242】
表1~7の結果から、本発明によれば、優れた制電性とその持続性、難燃性を有する熱可塑性樹脂組成物およびその成形体が得られることは明らかである。