(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】放熱シートおよび放熱シート付きデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20220708BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220708BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220708BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20220708BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220708BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220708BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
C08L101/00
C08K3/28
C08K3/22
C08L63/00
C08L33/06
(21)【出願番号】P 2019544505
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2018033090
(87)【国際公開番号】W WO2019065150
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2017187504
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】國安 諭司
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴之
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039060(JP,A)
【文献】特開2015-019051(JP,A)
【文献】特開2016-014090(JP,A)
【文献】特開2017-043655(JP,A)
【文献】特開2010-285569(JP,A)
【文献】特開2001-230353(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132691(WO,A1)
【文献】特許第4152920(JP,B2)
【文献】特開2012-017421(JP,A)
【文献】PolarTherm Boron Nitride Powder Grade PT110,MOMENTIVE perfomance materials,2007年,http://www.pingyiao.com/en/momentive/m2/pdf/Momentive%20PT110.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01L23/29
H01L23/34 - 23/36
H01L23/373- 23/427
H01L23/44
H01L23/467- 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂バインダーと、無機粒子とを含有する放熱シートであって、
前記無機粒子が、少なくとも、粒径100μm超の無機粒子Bを含み、
前記放熱シートの一方および他方の表面の平均高さRcが、いずれも0.3μm以上0.8μm以下であ
り、
前記無機粒子が、更に、粒径100μm以下の無機粒子Aを含有し、
前記無機粒子Bの含有量が、前記樹脂バインダー100質量部に対して50~500質量部である、放熱シート。
【請求項2】
厚みが200~300μmである、請求項1に記載の放熱シート。
【請求項3】
前記無機粒子Aの含有量が、前記樹脂バインダー100質量部に対して5~150質量部である、請求項1または2に記載の放熱シート。
【請求項4】
前記無機粒子が、無機窒化物および無機酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の無機物である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項5】
前記無機窒化物が、窒化ホウ素および窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項
4に記載の放熱シート。
【請求項6】
前記無機酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項
4に記載の放熱シート。
【請求項7】
前記樹脂バインダーが、重合性モノマーを含有する硬化性組成物を硬化した硬化物である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項8】
前記重合性モノマーが、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキシラニル基およびビニル基からなる群から選択される少なくとも1種の重合性基を有する、請求項
7に記載の放熱シート。
【請求項9】
デバイスと、前記デバイス上に配置された請求項1~
8のいずれか1項に記載の放熱シートとを有する、放熱シート付きデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱シートおよび放熱シート付きデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や半導体の小型化、高密度化、高出力化に伴って、それを構成する部材の高集積化が進んでいる。高集積化されたデバイス(機器)の内部には、限られたスペースに様々な部材が隙間なく配置されているため、デバイス内部で生じた熱を放熱し難くなり、デバイス自体が比較的高温となる場合がある。特に、CPU(Central Processing Unit)、パワーデバイスなどの半導体素子;LED(Light Emitting Diode)バックライト;バッテリー;等には、およそ150℃以上の熱を発するものもあり、その熱がデバイス内部に蓄積すると、熱に起因してデバイスが誤作動を引き起こす等の不具合が生じる場合が知られている。
【0003】
デバイス内部の熱を放熱する方法としては、ヒートシンクを使用する方法が知られており、また、ヒートシンクを使用する際に、デバイス内部の熱をヒートシンクに効率的に伝えるため、デバイスとヒートシンクとを放熱シートで接着する方法が知られている。
【0004】
このような放熱シートとしては、例えば、特許文献1には、樹脂と、粒径分布の山が二つ以上の透明または白色の微粒子を含む透明熱伝導接着フィルムが記載されている([請求項1])。
また、特許文献2には、半硬化状態の樹脂と、所定の平均粒子径を満たすフィラーと、を含有する高熱伝導性半硬化樹脂フィルムが記載されている([請求項6])。
また、特許文献3には、熱接着剤(a1)と熱伝導性充填剤(a2)とを含有する熱接着層(A)を有する熱接着シートが記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-197185号公報
【文献】特開2013-189625号公報
【文献】特開2016-014090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1~3について検討したところ、高集積化された昨今のデバイスに対しては、放熱性に改善の余地があることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、優れた放熱性を有する放熱シートおよびそれを用いた放熱シート付きデバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の粒径を有する無機粒子を含有し、2つの主面の平均高さRcを所定の範囲とすることにより、優れた放熱性を有する放熱シートとなることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0009】
[1] 樹脂バインダーと、無機粒子とを含有する放熱シートであって、
無機粒子が、少なくとも、粒径100μm超の無機粒子Bを含み、
放熱シートの一方および他方の表面の平均高さRcが、いずれも0.1μm以上2.0μm未満である、放熱シート。
[2] 厚みが200~300μmである、[1]に記載の放熱シート。
[3] 無機粒子が、更に、粒径100μm以下の無機粒子Aを含有し、無機粒子Aの含有量が、樹脂バインダー100質量部に対して5~150質量部である、[1]または[2]に記載の放熱シート。
[4] 無機粒子Bの含有量が、樹脂バインダー100質量部に対して50~500質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の放熱シート。
[5] 無機粒子が、無機窒化物および無機酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の無機物である、[1]~[4]のいずれかに記載の放熱シート。
[6] 無機窒化物が、窒化ホウ素および窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[5]に記載の放熱シート。
[7] 無機酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[5]に記載の放熱シート。
[8] 樹脂バインダーが、重合性モノマーを含有する硬化性組成物を硬化した硬化物である、[1]~[7]のいずれかに記載の放熱シート。
[9] 重合性モノマーが、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキシラニル基およびビニル基からなる群から選択される少なくとも1種の重合性基を有する、[8]に記載の放熱シート。
[10] デバイスと、デバイス上に配置された[1]~[9]のいずれかに記載の放熱シートとを有する、放熱シート付きデバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた放熱性を有する放熱シートおよびそれを用いた放熱シート付きデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の放熱シートの一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[放熱シート]
本発明の放熱シートは、樹脂バインダーと、無機粒子とを含有する放熱シートである。
また、本発明の放熱シートは、無機粒子が、少なくとも、粒径100μm超の無機粒子Bを含む。
また、本発明の放熱シートは、放熱シートの一方および他方の表面、すなわち2つの主面の平均高さRcが、いずれも0.1μm以上2.0μm未満である。
ここで、平均高さRcは、JIS B 0601-2001(ISO4287-1997)に規定される粗さ曲線要素の平均高さをいい、各主面が露出している場合には、レーザー顕微鏡を用いて測定することができ、また、放熱シートの主面が基材と接している場合には、基材を剥離して主面を露出させて測定するか、主面と基材との断面を電子顕微鏡で撮影し、汎用ソフト(例えば、WinROOF、MATLAB等)による画像処理を施して放熱シートと基材との界面(線分)を抽出し、抽出した線分から算出することができる。
【0014】
本発明の放熱シートは、樹脂バインダーおよび無機粒子Bを含有し、2つの主面の平均高さRcがいずれも0.1μm以上2.0μm未満であることにより、放熱性が良好となる。
このような効果を奏する理由は、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、粒径100μm超の無機粒子Bを含有することにより、樹脂バインダーと無機粒子とが接する界面が少なくなり、無機粒子B自体が主要な熱伝経路となり、デバイスからの熱を効率よく伝導させることができたと考えられる。
また、2つの主面の平均高さRcを0.1μm以上2.0μm未満とすることにより、デバイスまたはヒートシンクと接合する際に隙間が生じ難くなり、効率よく熱を伝導させることができたと考えられる。
【0015】
図1に、本発明の放熱シートの一例を示す模式的な断面図を示す。
図1に示す放熱シート10は、樹脂バインダー1と、粒径100μm超の無機粒子B3とを含有する。
また、
図1に示す放熱シート10は、放熱シート10の一方の表面4および他方の表面5の平均高さRcが、いずれも0.1μm以上2.0μm未満である。
以下に、本発明の放熱シートに含まれる樹脂バインダーおよび無機粒子について詳述する。
【0016】
〔樹脂バインダー〕
本発明の放熱シートに含まれる樹脂バインダーは特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、クレゾール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂を用いることができる。これらの樹脂の中でも、熱膨張率が小さく、耐熱性および接着性に優れたエポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;などが挙げられる。
【0018】
一方、本発明においては、耐熱性などの機能を付加しやすいという理由から、樹脂バインダーが、重合性モノマーを含有する硬化性組成物を硬化した硬化物であることが好ましい。
ここで、重合性モノマーは、重合性基を有し、熱または光等を用いた所定の処理によって硬化する化合物である。
また、重合性モノマーが有する重合性基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキシラニル基およびビニル基からなる群から選択される少なくとも1種の重合性基が挙げられる。
なお、重合性モノマーに含まれる重合性基の数は特に限定されないが、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性が優れる観点から、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、8個以下の場合が多い。
【0019】
重合性モノマーの種類は特に限定されず、公知の重合性モノマーを用いることができる。例えば、特許第4118691号の[0028]段落に記載のエポキシ樹脂モノマーおよびアクリル樹脂モノマー;特開2008-13759号公報の[0006]~[0011]段落に記載のエポキシ化合物;特開2013-227451号公報の[0032]~[0100]段落に記載のエポキシ樹脂混合物;等が挙げられる。
【0020】
硬化性組成物中における重合性モノマーの含有量は特に限定されず、硬化性組成物の用途に応じて適宜最適な含有量が選ばれる。なかでも、重合性モノマーの含有量は、硬化性組成物中の全固形分に対して、10~90質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~60質量%が更に好ましい。
硬化性組成物は、重合性モノマーを1種含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
【0021】
〔無機粒子〕
本発明の放熱シートに含まれる無機粒子は、少なくとも、粒径100μm超の無機粒子Bを含む。また、粒径100μm以下の無機粒子Aを含んでいてもよい。
ここで、粒径とは、放熱シートの厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で撮影し、得られたSEM画像に写る無機粒子の断面の直径(真円でない場合は長径)をいう。
【0022】
また、本発明においては、得られる放熱シートの放熱性がより良好となる理由から、無機粒子が、無機窒化物および無機酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の無機物であることが好ましい。
【0023】
無機窒化物は、特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化炭素(C3N4)、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化クロム(Cr2N)、窒化銅(Cu3N)、窒化鉄(Fe4N又はFe3N)、窒化ランタン(LaN)、窒化リチウム(Li3N)、窒化マグネシウム(Mg3N2)、窒化モリブデン(Mo2N)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(W2N、WN2またはWN)、窒化イットリウム(YN)、および、窒化ジルコニウム(ZrN)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、無機窒化物は、得られる放熱シートの放熱性が更に良好となる理由から、ホウ素原子、アルミニウム原子およびケイ素原子からなる群から選択される少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。より具体的には、無機窒化物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウムおよび窒化珪素からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、窒化ホウ素および窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0024】
無機酸化物は、特に限定されないが、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe3O4)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In2O3、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化タングステン(WO3、W2O5)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2、Ce2O3)、酸化アンチモン(Sb2O3、Sb2O5)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La2O3)、および、酸化ルテニウム(RuO2)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機酸化物は、得られる放熱シートの放熱性が更に良好となる理由から、酸化チタン、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
なお、無機酸化物としては、非酸化物として用意された金属が、環境下などで酸化したことにより生じている酸化物であってもよい。
【0025】
本発明においては、このような無機粒子のうち、粒径100μm以下の無機粒子Aを含有する場合、無機粒子Aの含有量は、得られる放熱シートの放熱性がより良好となる理由から、上述した樹脂バインダー100質量部に対して5~150質量部であることが好ましい。
【0026】
また、本発明においては、このような無機粒子のうち、粒径100μm超の無機粒子Bの含有量は、得られる放熱シートの放熱性がより良好となる理由から、上述した樹脂バインダー100質量部に対して50~500質量部であることが好ましく、75~300質量部であることがより好ましい。
【0027】
本発明の放熱シートは、接着性がより良好となり、かつ、放熱性もより良好となる理由から、厚みが、200~300μmであることが好ましく、200~280μmであることがより好ましく、200~250μmであるのが更に好ましい。
ここで、放熱シートの厚みは、放熱シートの任意の10点の厚みを測定して、算術平均した値である。
また、本発明の放熱シートは、放熱シートの一方および他方の表面の平均高さRcが、いずれも0.1~1.0μmであることが好ましい。
【0028】
〔作製方法〕
本発明の放熱シートの作製方法としては、例えば、
基板または剥離ライナー(以下、これらをまとめて「基材」とも略す。)上に、上述した樹脂バインダーおよび無機粒子Bを含有する樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した後に硬化させ、硬化膜を形成する工程と、形成した硬化膜上に、上述した樹脂バインダーを含有し、無機粒子Bを含有しない樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した後に硬化させ、硬化膜を形成する第1方法;
上述した樹脂バインダーおよび無機粒子Bを含有する樹脂組成物と、上述した樹脂バインダーを含有し、無機粒子Bを含有しない樹脂組成物とを、2層型ダイコーターを用いて基材上に同時重層し、塗膜を形成した後に硬化させ、硬化膜を形成する第2方法;
基材上に、上述した樹脂バインダーおよび無機粒子Bを含有する樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した後に硬化させ、硬化膜を形成する工程と、基材と硬化膜とを有する積層体を対向して配置された一対のカレンダローラーを通し、基材と硬化膜とを加圧する第3方法;
基材上に、上述した樹脂バインダーおよび無機粒子Bを含有する樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した後に硬化させ、基材と硬化膜と有する積層体を2個作製する工程と、作製した2個の積層体を用い、互いの硬化膜を貼り合わせた状態で、減圧および加熱条件下で加圧する第4方法;
などが挙げられる。
【0029】
<基材>
(基板)
上記基板としては、具体的には、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム含有合金、アルミニウム含有合金等の金属基板が好適に挙げられる。なかでも、銅基板であることが好ましい。
【0030】
(剥離ライナー)
上記剥離ライナーとしては、具体的には、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;上述した紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙;上述した紙にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面もしくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したもの;等を用いることができる。
【0031】
<樹脂組成物>
上述した樹脂組成物は、樹脂バインダーおよび無機粒子とともに、上述した重合性モノマー、ならびに、後述する硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤および溶媒を含有していてもよい。
【0032】
(硬化剤)
任意の硬化剤の種類は特に限定されず、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、イソシアネート基、カルボキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、および、無水カルボン酸基からなる群より選ばれる官能基を有する化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、および、チオール基からなる群より選ばれる官能基を有することがより好ましい。
硬化剤は、上記官能基を2個以上含むことが好ましく、2または3個含むことがより好ましい。
【0033】
硬化剤としては、具体的には、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、アクリル系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、および、シアネートエステル系硬化剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール系硬化剤、アクリル系硬化剤、フェノール系硬化剤、および、アミン系硬化剤が好ましい。
【0034】
硬化剤を含有する場合、樹脂組成物中における硬化剤の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の全固形分に対して、1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0035】
(硬化促進剤)
任意の硬化促進剤の種類は限定されず、例えば、トリフェニルホスフィン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、三フッ化ホウ素アミン錯体、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、および、特開2012-67225号公報の[0052]段落に記載のものが挙げられる。
硬化促進剤を含有する場合、樹脂組成物中における硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.1~20質量%が好ましい。
【0036】
(重合開始剤)
樹脂組成物は、上述した重合性モノマーを含有する場合、重合開始剤を含有することが好ましい。
特に、上述した重合性モノマーが、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する場合には、樹脂組成物は、特開2010-125782号公報の[0062]段落および特開2015-052710号公報の[0054]段落に記載の重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤を含有する場合、樹脂組成物中における重合開始剤の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。
【0037】
溶媒の種類は特に限定されず、有機溶媒であることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、および、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0038】
<塗布方法>
樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
なお、塗布後、塗膜を形成する際に、必要に応じて乾燥処理を施してもよく、例えば、基材上に塗布された樹脂組成物に対して、40~140℃の温風を1~30分間、付与する方法などが挙げられる。
【0039】
<硬化方法>
塗膜の硬化方法は特に限定されず、上述した樹脂バインダーおよび任意の重合性モノマーの種類によって適宜最適な方法が選ばれる。
硬化方法は、例えば、熱硬化反応および光硬化反応のいずれであってもよく、熱硬化反応が好ましい。
熱硬化反応における加熱温度は特に限定されず、例えば、50~200℃の範囲で適宜選択すればよい。また、熱硬化反応を行う際には、温度の異なる加熱処理を複数回にわたって実施してもよい。
また、硬化反応は、半硬化反応であってもよい。つまり、得られる硬化物が、いわゆるBステージ状態(半硬化状態)であってもよい。
【0040】
[放熱シート付きデバイス]
本発明の放熱シート付きデバイスは、デバイスと、デバイス上に配置された上述した本発明の放熱シートとを有する。
ここで、デバイスとしては、具体的には、例えば、CPU、パワーデバイスなどの半導体素子が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0042】
〔比較例1〕
特開2009-197185号公報の[0094]および[0095]段落に記載された方法で、樹脂バインダー(バインダ樹脂)を調製した。
次いで、調製した樹脂バインダーに、SGPS(窒化ホウ素、平均粒径:12μm、デンカ社製)を、樹脂バインダー14.4gに対して24gとなるように添加して混錬し、樹脂組成物を調製した。
次いで、アプリケーターを用いて、銅箔フィルム(C1020、厚み:100μm、西田金属社製)上に、調製した樹脂組成物を乾燥厚みが300μmになるように塗布し、130℃の温風で5分間乾燥させて塗膜を形成し、その後、180℃で1時間加熱して硬化させることにより、銅箔フィルム付き放熱シートを作製した。
【0043】
〔比較例2〕
樹脂組成物を、ポリエステルフィルム(NP-100A、膜厚100μm、パナック社製)の離型面上に塗布した以外は、比較例1と同様の方法で、放熱シートを作製した。
【0044】
〔実施例1〕
<無機粒子の調製>
孔径100μmの金属メッシュを用いて、24gのSGPS(窒化ホウ素、平均粒径:12μm、デンカ社製)を分級し、粒径が100μm以下の無機粒子Aと、粒径が100μm超の無機粒子Bとを、別々に回収した。
【0045】
<樹脂組成物の調製>
比較例1と同様の方法で調製した樹脂バインダー7.2gに、40.0gのメチルエチルケトン(MEK)と、12.0gの無機粒子Bとを添加して混錬し、樹脂組成物(以下、「樹脂組成物B-1」とも略す。)を調製した。
また、比較例1と同様の方法で調製した樹脂バインダー7.2gに、20.0gのメチルエチルケトン(MEK)を添加して混錬し、無機粒子Bを含有しない樹脂組成物(以下、「樹脂組成物X-1」とも略す。)を調製した。
【0046】
<放熱シートの作製>
アプリケーターを用いて、銅箔フィルム(C1020、厚み:100μm、西田金属社製)上に、調製した樹脂組成物B-1を乾燥厚みがμ250mになるように塗布し、130℃の温風で5分間乾燥させて塗膜Yを形成した。
次いで、アプリケーターを用いて、塗膜Y上に、調製した樹脂組成物Xを乾燥厚みが50μmになるように塗布し、130℃の温風で5分間乾燥させて塗膜Xを形成した。
その後、180℃、1時間の条件で硬化させ、硬化膜を形成することにより、銅箔フィルム付き放熱シートを作製した。
【0047】
〔実施例2〕
樹脂組成物B-1を、ポリエステルフィルム(NP-100A、膜厚100μm、パナック社製)の離型面上に塗布した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルム付き放熱シートを作製した。
【0048】
〔実施例3〕
樹脂組成物X-1に代えて、以下の方法で調製した樹脂組成物A-1を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、ポリエステルフィルム付き放熱シートを作製した。
<樹脂組成物A-1の調製>
比較例1と同様の方法で調製した樹脂バインダー7.2gに、40.0gのメチルエチルケトン(MEK)と、0.43gの無機粒子Aとを添加して混錬し、樹脂組成物A-1を調製した。
【0049】
〔実施例4〕
比較例1と同様の方法で銅箔フィルム上に硬化膜を形成した後、カレンダー処理装置(ユリーロール株式会社製ミニスチールマッチカレンダーMSC161、上側ロール(ハードクロム鍍金):駆動、下側ロール(樹脂ロール):駆動フリー)を用い、カレンダー処理を温度25℃、線圧150kgf/cm、速度1m/minの条件で行った以外は、比較例1と同様に放熱シートを作製した。
【0050】
〔実施例5〕
樹脂組成物B-1を、ポリエステルフィルム(NP-100A、膜厚100μm、パナック社製)の離型面上に、乾燥厚みが150μmになるように塗布した以外は実施例2と同様の方法で塗膜を形成し、180℃、1時間の条件で硬化させ、ポリエステルフィルム付き硬化膜を形成した。
ポリエステルフィルム付き硬化膜を2個作製し、各サンプルからポリエステルフィルムを剥離した後、互いの剥離面と反対側の面同士を、ボールドウィン製減圧プレス機にて、温度65℃、圧力15MPaの条件で、1分間でプレス処理を行って、放熱シートを得た。
【0051】
作製した各放熱シートについて、レーザー変位計(LT9010M、キーエンス社製)を用いて、上述した方法により、表面の平均高さRcを測定した。結果を下記表1に示す。なお、下記表1中、「空気界面側」とあるのは、基材上に設けた放熱シートの露出した表面のRcを意味し、「基材界面側」とは、基材が剥がれるものについては基材を剥がして露出させた放熱シートの表面のRcを意味し、基材が剥がれないものについては基材との界面から算出されるRcを意味する。
【0052】
〔放熱性〕
放熱性の評価は、作製した各放熱シートについて、銅箔フィルムまたはポリエステルフィルムを剥離した後に、以下の方法で熱伝導率を測定し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。
<熱伝導率の測定>
(1)アイフェイズ社製の「アイフェイズ・モバイル1u」を用いて、各放熱シートの厚み方向の熱拡散率を測定した。
(2)メトラー・トレド社製の天秤「XS204」(「固体比重測定キット」使用)を用いて、各放熱シートの比重を測定した。
(3)セイコーインスツル社製の「DSC320/6200」を用い、10℃/分の昇温条件の下、25℃における各放熱シートの比熱をDSC7のソフトウエアを用いて比熱を求めた。
(4)得られた熱拡散率に比重及び比熱を乗じることで、各放熱シートの熱伝導率を算出した。
(評価基準)
「A」: 14W/m・K以上
「B」: 10W/m・K以上14W/m・K未満
「C」: 6W/m・K未満
【0053】
【0054】
表1に示す結果から、粒径100μm超の無機粒子Bを含有する場合であっても、表面の平均高さRcが2.0μm超である場合は、放熱性が劣ることが分かった(比較例1および2)。
一方、粒径100μm超の無機粒子Bを含有し、表面の平均高さRcが0.1μm以上2.0μm未満である場合は、放熱性が良好となることが分かった(実施例1~5)。
そして、これらの結果、特に、比較例1と実施例4との対比から、2つの主面の平均高さRcを0.1μm以上2.0μm未満であると、熱伝導率測定装置を用いた評価結果のみならず、放熱シートをデバイスやヒートシンクと接合する際においても、隙間が生じ難くなり、放熱性が良好となることが推察できる。
【符号の説明】
【0055】
1 樹脂バインダー
3 無機粒子B
4 一方の表面
5 他方の表面
10 放熱シート