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特許7101738ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体、それを製造するための有機亜鉛化合物及びポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体、それを製造するための有機亜鉛化合物及びポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/00 20060101AFI20220708BHJP
   C08F 4/76 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
C08F297/00
C08F4/76
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020181144
(22)【出願日】2020-10-29
(62)【分割の表示】P 2019553813の分割
【原出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2021021079
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2017-0042191
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0093822
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0104226
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、プン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン-ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン-ソル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン-モ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン-トン
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505945(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1732418(KR,B1)
【文献】KIM, CHUNG et al.,Polystyrene chain growth from di-end-functional polyolefins for polystyrene-polyolefin-polystyrene block copolymers,Polymers,2017年,9,481/1-481/14,DOI:10.3390/polym9100481
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 297/00
C08F 4/76
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式2で表される有機亜鉛化合物。
[化学式2]
CH2=CH-A-CH2CH2-{[CH(R)-CH2ap-Zn-{[CH(R)-CH2aq-CH2CH2-A-CH=CH2
前記化学式2において、
Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;
aの平均値は10~10,000であり;
Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つであり;
p及びqはそれぞれ0または1である。
【請求項2】
前記有機亜鉛化合物は、下記の化学式2-1で表されるものである、請求項1に記載の有機亜鉛化合物。
[化学式2-1]
CH2=CH-A-CH2CH2-Zn-CH2CH2-A-CH=CH2
前記化学式2-1において、Aはメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基である。
【請求項3】
前記有機亜鉛化合物は、下記の化学式2-2で表されるものである、請求項1に記載の有機亜鉛化合物。
[化学式2-2]
CH2=CH-A-CH2CH2-[CH(R)-CH2a-Zn-[CH2-CH(R)]a -CH2CH2-A-CH=CH2
前記化学式2-2において、Aはメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;aの平均値は10~10,000であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン鎖の両末端にポリスチレン鎖が付着される構造のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体、それを製造するための有機亜鉛化合物及びポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体、例えば、Styrene-Ethylene/Butylene-Styrene(SEBS)またはStyrene-Ethylene/Propylene-Styrene(SEPS)は、現在世界的に数十万トン規模の市場が形成されている。また、これらはStyrene-Butadiene-Styrene(SBS)またはStyrene-Isoprene-Styrene(SIS)に比べて耐熱性及び耐光性に優れた利点があり、グリップ及びハンドルの柔らかくて強いタッチ感のための素材、オムツの弾力性素材、医療及び通信材料に使用されるオイル-ゲル、エンジニアリングプラスチックの衝撃補強剤、透明ポリプロピレンの可塑剤(plasticizer)または強靭化剤(toughener)等として使用されている。従来のSEBSは、スチレンとブタジエンをアニオン重合して得られたSBSを水素化反応させる二つのステップの反応を経て製造される。従来のSEPSも同様に、スチレンとイソプレンをアニオン重合して得られたSISを水素化反応させる二つのステップの反応を経て製造される。このように、高分子主鎖に含まれた二重結合を水素化反応させて全て飽和させる工程は工程コストが高く、SEBS及びSEPSの単価が水素化反応前のSBS及びSISに比べて非常に高くなる。このような点は市場の拡大に限界として作用し得る。また、水素化反応により、高分子鎖中の二重結合を全て飽和させることは事実上不可能であり、商業化されたSEBS及びSEPSは残りの二重結合を若干含むことになり、この存在がしばしば問題となることもある。
【0003】
そこで、本発明者は、オレフィン及びスチレン単量体からワン-ポット(one-pot)工程でポリオレフィン-ポリスチレンジブロック共重合体を製造する技術を開発した(特許文献1及び非特許文献1)。
【0004】
産業的にさらに有用なブロック共重合体は、前記SEBSのようなトリブロック以上のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体であって、このような多重ブロック構造により熱可塑性エラストマー性質が具現され、固有の活用範囲を有することができる。しかしながら、現在までオレフィン及びスチレン単量体からワン-ポットでポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造することができる技術は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第1657925号
【非特許文献】
【0006】
【文献】JOURNAL OF POLYMER SCIENCE,PART A:POLYMER CHEMISTRY 2016,54,3110-3118.
【文献】J.AM.CHEM.SOC.2005,127,9913-9923.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一つの目的は、ポリオレフィン鎖の両末端にポリスチレン鎖が付着された構造のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造に容易に使用され得る有機亜鉛化合物を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体をオレフィン単量体とスチレン単量体から直接製造するワン-ポット(one-pot)製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のまた他の目的は、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体をワン-ポット反応で製造することにより生産単価が画期的に低いながらも、ジブロック及びホモポリマーの生成を抑制して熱可塑性エラストマー物性の具現に適合した製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の前記及びその他の目的は、下記に説明される本発明によって全て達成されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一具現例は、下記の化学式1で表される繰り返し単位体を含むポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体に関するものである。
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1において、Arは置換または非置換の炭素数6~20のアリール基であり;nは0または平均値が10~1,000であり;mの平均値は10~1,000であり;Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つであり;aの平均値は10~10,000であり;*は繰り返し単位の末端部位であるか、又はZ部分と共有結合により連結される部位であり;Zはアニオン重合開始剤から由来し、ケイ素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含まない炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含む炭素数7~20のアリールアルキル基、ケイ素原子を含まない炭素数7~20のアリールアルキル基、または前記*と共有結合により連結される結合部位である。
【0015】
前記化学式1において、Zはアニオン重合開始剤から由来し、ケイ素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含む炭素数7~20のアリールアルキル基、または前記*と共有結合により連結される結合部位である。
【0016】
前記化学式1において、Arは非置換のフェニル基であり;Aは非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;Zは(CH33SiCH2-または前記*と共
有結合により連結される結合部位である。
【0017】
本発明の他の具現例は、下記の化学式2で表される有機亜鉛化合物に関するものである。
【0018】
【化2】
【0019】
前記化学式2において、Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;aの平均値は10~10,000であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つであり;p及びqはそれぞれ0または1である。
【0020】
前記有機亜鉛化合物は、下記の化学式2-1で表されるものであってもよい。
【0021】
【化3】
【0022】
前記有機亜鉛化合物は、下記の化学式2-2で表されるものであってもよい。
【0023】
【化4】
【0024】
前記化学式2-1及び2-2において、Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;aの平均値は10~10,000であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つである。
【0025】
本発明のまた他の具現例は、オレフィン単量体を、前記化学式2-1で表される有機亜鉛化合物の存在下で、遷移金属触媒で配位重合して前記化学式2-2で表される化合物を製造する第1ステップと、連続してケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入してアニオン重合を行う第2ステップと、を含む前述の化学式1で表されるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法に関するものである。
【0026】
前記ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、化学式3で表されるものであってもよい。
【0027】
【化5】
【0028】
前記トリアミン化合物は、下記の化学式4で表されるものであってもよい。
【0029】
【化6】
【0030】
前記オレフィン単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン又はこれらの混合物であり、スチレン系単量体はスチレンであってもよい。
【0031】
前記第1ステップの重合は、イソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンのうち1種以上を含む溶媒を使用した溶液重合により行われるものであってもよい。
【0032】
前記第1ステップで投入した化学式2-1で表される有機亜鉛化合物と、第2ステップで投入されるケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物のモル比は(すなわち、[Li]/[Zn])は0.5~2であってもよい。
【0033】
前記第2ステップで投入されるトリアミン化合物とケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物のモル比は1:0.5~1:1であってもよい。
【0034】
反応溶液内の亜鉛原子と前記第2ステップで投入されるスチレン単量体のモル比([Styrene]/[Zn])は250~1,000であってもよい。
【0035】
本発明のまた他の具現例は、下記の化学式7で表されるポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体に関するものである。
【0036】
【化7】
【0037】
前記化学式7において、Arは炭素数6~20のアリール基であり;mの平均値は20~10,000であり;Y及びY´はそれぞれ独立して水素、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル及びオクチルのうち何れか一つであり、Y及びY´は互いに同一でなく;p及び1-pは繰り返し単位体nを構成する各繰り返し単位のモル分率であり、pは0~1の値であり;nの平均値は40~10,000であり;R2~R3はそれぞれ独立して水素または炭素数1~20のヒドロカルビルであり;zは0~10の整数である。
【0038】
前記化学式7において、Arはフェニルであり;mの平均値は20~200であり;Yは水素であり;Y´はメチル、エチル、ブチルまたはヘキシルであり;R2~R3は水素であり;zは0または2であってもよい。
【0039】
前記ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体はPDIが1.2~1.5であってもよい。
【0040】
本発明のまた他の具現例は、多核性亜鉛化合物を鎖移動剤としてオレフィン系単量体を連鎖移動重合反応させてポリオレフィンブロックを形成するステップと、連続してケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入し、アニオン重合してポリスチレンブロックを形成するステップと、を含むポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造方法に関するものである。
【0041】
前記多核性亜鉛化合物は、下記の化学式8で表されるものであってもよい。
【0042】
【化8】
【0043】
前記化学式8において、R1は、炭素数1~20のヒドロカルビルであり;R2~R3はそれぞれ独立して水素または炭素数1~20のヒドロカルビルであり;aの平均値は1~10であり;zは0~10の整数である
【0044】
前記多核性亜鉛化合物は、下記の化学式8-1または化学式8-2のうち何れか一つで表されるものであってもよい。
【0045】
【化9】
【0046】
【化10】
【0047】
前記式2-1及び式2-2において、aの平均値は1~10である。
【0048】
前記ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、前記化学式3で表されるものであってもよい。
【0049】
前記トリアミン化合物は、前記化学式4で表されるものであってもよい。
【0050】
前記ポリスチレンブロックを形成するステップにおいて、亜鉛原子当たり投入されるスチレン単量体のモル比([Styrene]/[Zn])は250~1,000であってもよい。
【0051】
前記ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体は、亜鉛原子当たり生成されたポリスチレン高分子鎖の数([PS-chains]/[Zn])が2.0~3.0であってもよい。
【発明の効果】
【0052】
本発明は、商業的に有用な構造のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体、それを製造するための有機亜鉛化合物及び前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体をワン-ポット(one-pot)でオレフィン単量体とスチレン単量体から直接製造する方法を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の製造例1で製造された化学式2-1で表される有機亜鉛化合物の1H NMRスペクトルである。
図2】本発明の実施例5で製造されたブロック共重合体のGPC分析結果を示すグラフである。
図3】本発明の実施例3で製造されたブロック共重合体のTEMイメージである。
図4】本発明の実施例4で製造されたブロック共重合体のTEMイメージである。
図5】本発明の実施例5で製造されたブロック共重合体のTEMイメージである。
図6】本発明の実施例8で製造されたブロック共重合体のTEMイメージである。
図7】本発明の実施例2、実施例3、実施例5及び実施例8で製造されたブロック共重合体と比較例1で使用された共重合体の繰り返し引張テスト結果を示したものである。
図8】本発明の実施例9で製造されたトリブロック共重合体に対してGPC分析結果を示したものである。
図9】本発明の実施例19(e)、実施例11(a)、実施例12(c)、実施例13(b)、実施例15(d)及び比較例1(f)で製造されたトリブロック共重合体の透過電子顕微鏡イメージを示したものである。
図10】本発明の実施例9、10、12、15に対する引張試験結果のうち応力測定結果を示したグラフである。
図11】本発明の実施例12で製造したトリブロック共重合体の繰り返された引張テスト結果を示したものである。
図12】本発明の比較例1トリブロック共重合体の繰り返された引張テスト結果を示したものである。
図13】本発明の実施例12で製造されたトリブロック共重合体の1H NMRスペクトルを示したものである。
図14】本発明の実施例10で製造されたトリブロック共重合体のDSC分析結果を示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本出願書に記載された化学式のうちアルファベット記号は、特に断らない限り、当該記号で表される元素を意味し、Meはメチル、Etはエチル、POはポリオレフィン、PSはポリスチレン、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレンを意味する。
【0055】
本出願書に記載された「重合体」は、特に断らない限り、オリゴマー、単一重合体、共重合体を全て含む意味として使用される。
【0056】
本出願書に記載された記号「*」は、高分子鎖の末端基を意味する。
【0057】
ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体
【0058】
【化11】
【0059】
前記化学式1において、Arは置換または非置換の炭素数6~20のアリール基であり;nは0または平均値が10~1,000であり;mの平均値は10~1,000であり;Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つであり;aの平均値は10~10,000であり;*はそれぞれ独立して繰り返し単位の末端部位であるか、またはZ部分と共有結合により連結される部位であり;Zはアニオン重合開始剤から由来し、ケイ素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含まない炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含む炭素数7~20のアリールアルキル基、ケイ素原子を含まない炭素数7~20のアリールアルキル基、または前記*と共有結合により連結される結合部位である。
【0060】
前記化学式1で表される構造の繰り返し単位を含むポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、本発明の製造方法により最初に公開される化合物である。
【0061】
本明細書において、繰り返し単位体aは化学式1の多重ブロック共重合体に構造的に含まれるポリオレフィンブロックを意味する。同様に、繰り返し単位体n及び繰り返し単位体mは化学式1の多重ブロック共重合体に構造的に含まれるそれぞれのポリスチレンブロックを意味する。同時にa、n及びmは化学式1においてそれぞれの繰り返し単位体が繰り返される程度を示す値であってもよい。
【0062】
通常の高分子合成において、a、n及びmの値は単一整数ではない一定の分布を有する混合物が得られ、従って、本出願書ではその平均値を測定して論じる。
【0063】
前記化学式1において、Arはそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数6~20のアリール基である。前記炭素数6~20のアリール基が置換された場合、置換基は特に制限されないが、具体的には炭素数1~5のヒドロカルビル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びこれらの異性体などが挙げられる。また、前記置換基として用いられるヒドロカルビルは、環状(cyclic)、非環状(acyclic)、分岐状(branched)または直鎖(straight-chained)の形態であってもよい。
【0064】
具体的に、前記炭素数6~20のアリール基は、単環式アリール基、多環式アリール基またはヘテロアリール基を含むことができ、例えば、ベンジル、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、トリルなどの単環式アリール基;ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルなどの多環式アリール基;などを含むことができる。
【0065】
前記化学式1において、ポリスチレンブロックを示す繰り返し単位体n(化学式1の-[CH2-CH(Ar)]n-)及び繰り返し単位体m(化学式1の-[CH2-CH(A
r)]m-)それぞれの長さは、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体
の製造時に反応物質として投入されるスチレン単量体の量によって調節することができる。
【0066】
前記化学式1のnは0または平均値が10~1,000である。nが0である場合、ポリオレフィン鎖の末端基(すなわち、-[CH(R)CH2a-*)が同一分子の化学式1のZ部分または他の分子の化学式1のZ部分と共有結合することができる。このような構造は、後述するポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法の第2ステップでポリオレフィン鎖の末端基が投入したスチレン単量体と反応する以前に有機亜鉛化合物に含まれているスチレン基と反応して形成されることができる。
【0067】
また、n及びmのそれぞれの平均値は10~1,000であってもよい。下限に特別な制限はないが、n及びmのそれぞれの平均値が1,000超過であると、粘度が大きくて、前記化学式1の構造を有する化合物を具現することが容易でない。具体的に、化学式1のn及びmはそれぞれの平均値が100~500であってもよい。前記範囲内で、化学式1の多重ブロック共重合体の製造においてさらに効率的であり、製造された多重ブロック共重合体がさらに多様な分野に適用可能である。
【0068】
前記化学式1において、Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基である。前記メタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基が置換された場合、置換基は特に制限されないが、具体的には炭素数1~5のヒドロカルビル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びこれらの異性体などが挙げられる。また、前記置換基として用いられるヒドロカルビルは、環状(cyclic)、非環状(acyclic)、分岐状(branched)または直鎖(straight-chained)の形態であってもよい。
【0069】
前記化学式1のaの平均値は、後述する製造方法において反応物質として投入されるオレフィン単量体及び有機亜鉛化合物の含量に応じて調節することができる。aの平均値は1以上で下限に制限はないが、aの平均値が10,000超過であると、粘度が大きく、前記化学式1の構造を有する化合物を具現することが容易でない。具体的に、化学式1のaは、平均値は10~10,000であってもよい。
【0070】
具体的に、繰り返し単位体a(化学式1の-[CH(R)-CH2a-)は、製造方法においてエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むオレフィン単量体を反応物質として使用することにより製造されることができる。
【0071】
具体例において、繰り返し単位体aは、製造方法においてエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むオレフィン単量体のうち1種を反応物質として使用することにより製造可能であり、またはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むオレフィン単量体のうち2種を反応物質として使用することにより製造可能である。具体的に化学式1の繰り返し単位体aは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、
ポリ(エチレン-co-1-ブテン)、ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)、またはポリ(エチレン-co-1-オクテン)であってもよい。
【0072】
前記化学式1において、*はそれぞれ独立して化学式1の末端基部位であるか、またはZ部分と共有結合により連結される部位である。具体的に、前記化学式1において、*が末端基部位である場合、製造方法における反応後に終結する条件によって異なり得る。例えば、*は終結条件によって酸素と反応して-OHとなることができ、または水と反応して-Hとなることができる。また、一部は、後述する製造方法のスチレン重合ステップで有機亜鉛化合物に含まれているスチレン部位と反応して同一分子の化学式1のZ部位または互いに異なる分子の化学式1のZ部位と共有結合により連結されることができる。
【0073】
前記化学式1において、Zはアニオン重合開始剤から由来するものであって、ケイ素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含まない炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含む炭素数7~20のアリールアルキル基、ケイ素原子を含まない炭素数7~20のアリールアルキル基、または前記*と共有結合により連結される結合部位であってもよい。
【0074】
具体的に、前記化学式1において、Zはアニオン重合開始剤のうちケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物から由来するものであって、ケイ素原子を含む炭素数1~20のアルキル基、ケイ素原子を含む炭素数7~20のアリールアルキル基、または前記*と共有結合により連結される結合部位であってもよい。
【0075】
より具体的に、前記化学式1のArは非置換のフェニル基であり;Aは非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;Zは(CH33SiCH2-であるか、
他の分子の繰り返し単位または同一分子の繰り返し単位の*部位と共有結合により連結された結合部位であってもよい。このような場合、経済性に優れながらも商業的有用性にさらに優れており、製造の際、反応活性度にさらに優れることができる。
【0076】
具体例において、前記化学式1で表される繰り返し単位からなる共重合体は、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレン五重ブロック共重合体、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレン七重ブロック共重合体又はこれらの混合体であってもよい。
【0077】
例えば、化学式1のZが開始剤から由来したアルキルまたはアリールアルキル基であり、*部分が全て末端基である場合、化学式1はトリブロック共重合体であってもよい。
【0078】
例えば、化学式1のZが、nが0である他の分子の化学式1の繰り返し単位のうちポリオレフィン鎖の末端の*と共有結合により連結されると、五重ブロック共重合体の構造を
形成することができる。
【0079】
例えば、前記五重ブロック共重合体の末端Zが、nが0であるまた他の分子の化学式1の繰り返し単位のうちポリオレフィン鎖の末端の*と共有結合により連結されると、七重ブロック共重合体の構造を形成することができる。
【0080】
有機亜鉛化合物
本発明の他の具現例は、下記の化学式2で表される有機亜鉛化合物に関するものである。このような化学式2の有機亜鉛化合物は、本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系ブロック共重合体を製造するのに非常に優れた適合性を有する。
【0081】
【化12】
【0082】
前記化学式2において、Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;aの平均値は10~10,000であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つであり;p及びqはそれぞれ0または1である。
【0083】
一具体例において、前記化学式2の有機亜鉛化合物は化学式2-1または化学式2-2で表示される化合物であってもよい。このような化学式2-1または2-2で表される化合物は本発明により最初に公開される化合物であって、原料の需給が容易であり、工程単価が低く、生産性に優れており、大量の生産工程に対する商業的な活用可能性に非常に優れている。
【0084】
【化13】
【0085】
【化14】
【0086】
前記化学式2-1及び2-2において、Aは炭素数6~20の置換または非置換のメタ-フェニレン基またはパラ-フェニレン基であり;aの平均値は10~10,000であり;Rは水素、メチル基、エチル基、ブチル基及びヘキシル基のうち何れか一つである。
【0087】
具体的に、前記化学式2-1の有機亜鉛化合物は、例えば、下記の反応式1のような過
程で過量のCH2=CH-C64-CH=CH2をEt2BHと反応させた後、Et2Zn反応させて製造することができる。このように、反応式1によりCH2=CH-C64-C
2CH2-Zn-CH2CH2-C64-CH=CH2化合物を製造する場合、収率に優れ
ており、特に精製過程なしで製造された有機亜鉛化合物を直接的に使用することができるという利点がある。また、前記化学式2-1の有機亜鉛化合物は重合防止剤の役割をし、目的としないスチレン基との重合を防止して保管及び移送に問題を惹起しないという利点もある。
【0088】
【化15】
【0089】
この時、反応式1において、反応物質として使用されるCH2=CH-C64-CH=
CH2及びEt2Zn化合物は、現在、産業界において大量に使用している物質であって原料の需給が有利であり、工程単価を下げて商業的生産性をさらに向上させることができる。また、反応式1で反応物質として使用されるEt2BHはBH3とEt3Bを単純混合し
て得られる物質であり、BH3は市販で簡単に大量に購入可能である物質であり、Et3Bは本反応の副産物として生成されるものであって、これを回収して使用することもでき、原料の需給に非常に有利であり、工程単価を下げて商業的生産性をさらに向上させる効果がさらに向上し得る。
【0090】
具体的に、前記化学式2-2の有機亜鉛化合物は、例えば、前記化学式2-1を用いて後述するポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法の第1ステップを介して製造されることができる。このように製造される前記化学式2-2で表される有機亜鉛化合物は、ポルオレフィン系繰り返し単位体の一方の末端基が亜鉛に連結されており、他方の末端基はスチレン系繰り返し単位体が連結されている。このような構造的な特徴を通じて化学式2-2の有機亜鉛化合物は、化学式1のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造時にポリオレフィンのブロックの製造及びポリオレフィン末端基の機能化に非常に有用に使用することができる特徴がある。
【0091】
例えば、商業的に大量に生産されているジエチルジンクのような有機亜鉛化合物の存在下でオレフィン配位重合してオレフィンを亜鉛-エチル基の間に挿入してポリオレフィン基が付着された有機亜鉛化合物の製造方法は既に公知された方法(非特許文献2)であるが、本発明の化学式2の有機亜鉛化合物のようにスチレン基を含む有機亜鉛化合物(Zn-[CH2CH2-C64-CH=CH22)を前駆体として使用して、一端はスチレン基があり、他端は亜鉛が付着されている構造を製造することは報告された例がない。
【0092】
具体的に、化学式2の繰り返し単位体a(-[CH(R)-CH2a-)は、製造方法においてエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むオレフィン単量体を反応物質として使用することにより製造されることができる。
【0093】
具体例において、化学式2の繰り返し単位体aは、製造方法においてエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むオレフィン単量
体のうち1種を反応物質として使用することにより製造されることができ、またはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むオレフィン単量体のうち2種を反応物質として使用することにより製造されることができる。
【0094】
具体的に化学式2の繰り返し単位体aは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)、ポリ(エチレン-co-1-ブテン)、ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)、またはポリ(エチレン-co-1-オクテン)であってもよい。
【0095】
ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法
本発明のまた他の具現例は、オレフィン単量体を、前記化学式2-1で表される有機亜鉛化合物の存在下で、遷移金属触媒で配位重合して前記化学式2-2で表される化合物を製造する第1ステップと、連続してケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入してアニオン重合を行う第2ステップと、を含む前述の化学式1で表されるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法に関するものである。
【0096】
このような製造方法により製造された化学式1で表されるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、前記化学式2-1の有機亜鉛化合物から目的とするポリオレフィン鎖が成長された化学式2-2で表される有機亜鉛化合物を形成した後、次いでスチレンアニオン重合を行ってポリオレフィン鎖の末端基にポリスチレンブロックを形成することにより、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の熱可塑性エラストマー性質の具現性をさらに高めることができる。
【0097】
第1ステップ
前記第1ステップは、オレフィン単量体を、前述の化学式2-1で表される有機亜鉛化合物の存在下で、遷移金属触媒で配位重合して前述の化学式2-2で表される化合物を製造する。
【0098】
具体的に、第1ステップで反応物質として投入するオレフィン単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン又はこれらの混合物で形成された単量体などを例示することができる。前記オレフィン単量体は1種を単独で使用することができ、2種以上を混合して使用することもできる。
【0099】
第1ステップにおいて、オレフィン単量体として沸点が比較的低いエチレン、プロピレン、1-ブテンなどを使用する場合、所定の圧力下で重合反応を進めることができる。
【0100】
一具体例において、第1ステップで反応物質として投入するオレフィン単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンのうち2種以上の混合物を含む単量体であってもよい。このような場合、製造された化学式2-2の有機亜鉛化合物は、例えば、繰り返し単位体aがHDPE、MDPE、LLDPE、VLDPE、POE、EPなどの構造を含むことになり得る。
【0101】
第1ステップで使用する遷移金属触媒は、一定の制限があるものではないが、通常的に主触媒である遷移金属触媒及び/または助触媒である有機アルミニウムまたはボロン化合物を含む均一系(メタロセン)触媒、もしくは非均一系のチーグラー触媒が使用されることができる。具体例において、均一系触媒を使用する場合、触媒活性にさらに優れているため好ましい。
【0102】
具体的に、前記遷移金属触媒は、下記の化学式5または化学式6で表される化合物を含むことができる。
【0103】
【化16】
【0104】
前記化学式5において、R51は水素またはメチルであり、R52は水素またはフェニルである。
【0105】
前記遷移金属触媒として、前記化学式5で表される化合物を使用する場合、有機亜鉛化合物からポリオレフィン鎖を成長させるのにさらに効率的であり得る。また、前記遷移金属触媒は、メチルアルミノキサン(MAO)、メチルアルミノキサン(MAO)またはボロン系助触媒で活性化させたものを使用することができる。
【0106】
【化17】
【0107】
前記遷移金属触媒として、前記化学式6で表される化合物を使用する場合、不要に発生するベータ-消去反応を(beta-elimination process)防止し、有機亜鉛化合物から均一なポリオレフィン鎖を成長させるのにさらに効率的であり得る。また、前記遷移金属触媒は[(C18372MeNH]+[B(C654-、メチルアルミノキサン(MAO)、メチルアルミノサン(MAO)またはボロン系助触媒で活性化させたものを使用することができる。
【0108】
前記第1ステップは、例えば、均一溶液状態で行われることができる。この時、溶媒としては炭化水素溶媒またはオレフィン単量体自体を媒質として使用することもできる。前記炭化水素溶媒としては、炭素数4~20の脂肪族炭化水素溶媒、具体的にイソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどを例示することができる。前記溶媒は1種を単独で使用することができ、2種以上を混合して使用することもできる。
【0109】
第1ステップの重合温度は、反応物質、反応条件などによって変わり得るが、具体的に摂氏70度~170度で行われることができる。前記範囲内で、高分子の溶解度を高めながらも、触媒を熱的に安定させることができる。
【0110】
第1ステップの重合はバッチ式、半連続式または連続式で行われることができ、また異なる反応条件を有する二つ以上のステップでも行われることができる。
【0111】
前述の実施例の第1ステップにより製造された前記化学式2-1で表される化合物は、後述する第2ステップのアニオン重合反応により前述の化学式1で表されるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造するための前駆体の役割を行うことができる。
【0112】
第2ステップ
前述の第1ステップに連続的にアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入し、アニオン重合するステップを行うことにより、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造することができる。
【0113】
前記第2ステップは、前述の第1ステップにより形成された化学式2-2の化合物が含んでいる亜鉛-炭素結合の間にスチレン系単量体を連続的に挿入することができ、また同時に化学式2-2で表される化合物の末端基に存在するスチレン基がスチレン系単量体との共重合部位に参加してポリスチレン鎖に連結されることができる。これにより、ワン-ポット製造方法で前述の化学式1のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造することができる。
【0114】
具体的に、前記スチレン系単量体は、炭素数6~20のスチレン系単量体であってもよい。さらに具体的に、炭素数6~20のアリール基が置換されたエチレン、フェニル基が置換されたエチレンなどを含むスチレン系単量体、例えば、スチレンであってもよい。
【0115】
有機亜鉛化合物が自体的にスチレン重合において開始剤の役割を果たせないということは周知の事実である。すなわち、第1ステップの配位重合後、スチレン系単量体のみ投入すると、重合反応が全く進まない。また、炭化水素溶媒において有機亜鉛化合物の存在下でケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物を開始剤として使用してスチレン重合を行うと、ポリスチレンブロックはポリオレフィンブロックが形成された方向の亜鉛-炭素結合の間でのみ形成され、ケイ素原子が存在する末端基側の亜鉛-炭素結合の間にはスチレン系単量体が挿入されない。この場合、有機亜鉛化合物は高分子鎖の形成反応に参加せずそのまま残存し、これも周知の事実である。
【0116】
本発明の第2ステップは、前述の第1ステップに連続的にケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入してアニオン重合を行うことにより、スチレン系単量体が第1ステップで形成された化学式2-2の亜鉛-炭素結合の間を介して挿入されて結果的に前述の化学式1で表される多重ブロック共重合体が得られる。前記第2ステップでは、ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物とトリアミン化合物が複合的に作用して開始剤として使用される。これにより、従来の開始剤の使用時に発生し得るポリスチレンホモポリマーの生成量を減らすことができる。
【0117】
具体的に、前記ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、下記の化学式3で表される化合物であってもよい。
【0118】
【化18】
【0119】
このようなケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、アニオン重合の開始剤として広く使用される物質であって入手が容易であり、本発明への活用が容易である。
【0120】
具体的に、前記トリアミン化合物は、下記の化学式4で表される、化合物であってもよい。
【0121】
【化19】
【0122】
このような化学式4の化合物は、リチウムへの配位が容易であり、ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物の塩基としての反応性または求核体としての反応性を向上させる目的で使用される化合物であって入手が容易であり、単価が安い。
【0123】
本発明者は、有機亜鉛化合物の亜鉛-炭素結合からポリスチレン鎖を成長させる方法を開発して公知した(特許文献1及び非特許文献1)。このような先行発明では、nBuLi・(TMEDA)(TMEDA;tetramethylethylenediamine)を開始剤として投入してスチレン重合を行った。この時、初期の観察されるスチリルアニオンの独特なオレンジ色が次第に黄褐色に変わり、最終的に不透明な黒色になって高分子鎖が成長するアニオンが破壊される現象が観察され、併せて、製造されたポリスチレンの分子量分布がやや広い弱点(Mw/Mn、~1.5)がある。また、先行発明では、有機亜鉛化合物中の亜鉛原子と投入したスチレン系単量体のモル比(すなわち、[styrene]/[Zn])が500以下で小さいと、存在する有機亜鉛化合物の全てのZn-C結合からポリスチレン鎖が成長することができず、一部分からのみポリスチレン鎖が成長する弱点がある。このように有機亜鉛化合物中の一部のZn-C結合からのみポリスチレン鎖が成長すると、ポリスチレン-ポリオレフィンジブロック又はポリオレフィンホモポリマーが生成されて熱可塑性エラストマー成質を具現するのに妨げとなる。
【0124】
本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法では、前記化学式3及び化学式4の例示的な化合物であるMe3SiCH2Li・(PMDETA)(PMDETA:pentamethyldiethylenetriamine)を開始剤として投入してアニオン重合することにより、重合過程中、色の変化なく黄色を保持することを確認することができ、これにより高分子鎖の成長点アニオンが破壊されずに生きていることが分かる。これにより、製造されるポリスチレン鎖の分子量分布を相対的に下げることができる。このような場合、製造される多重ブロック共重合体の分子量分布(PDI)値は具体的に、1.2~1.5、より具体的にMw/Mn1.3であってもよい。
【0125】
後述する本発明の実施例及び実験例では、前記化学式3及び化学式4の化合物を開始剤
として用いる場合、投入された亜鉛化合物の全てのZn-C結合からポリスチレン鎖が成長することを確認しており、これにより、ポリスチレン-ポリオレフィンジブロックまたはポリオレフィンホモポリマーの生成が抑制されて多重ブロックの選択性がさらに向上することを確認することができる。
【0126】
また、ケイ素原子を含むリチウム化合物からは、極めて一部のみポリスチレン鎖が成長したことを確認しており、これにより、所望しないポリスチレンホモポリマーの生成も一部抑制されたことを確認した(Zn-C結合から成長したポリスチレン鎖はブロック共重合体であり、Me3SiCH2Liから成長したポリスチレン鎖は、所望しないポリスチレンホモポリマーである)。
【0127】
すなわち、本発明は、前記化学式3及び化学式4の化合物(例えば、 Me3SiCH2
Li・(PMDETA)を開始剤として新たに使用することにより、PSホモポリマー、POホモポリマー、PO-PSジブロック共重合体の生成量を抑制しながら、本発明の目的であるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の生成を極大化して熱硬化性エラストマー性質を確実に具現することができる。
【0128】
通常的に第1ステップでポリオレフィンブロックの形成時にオレフィン重合に使用される遷移金属触媒は、第2ステップでポリスチレンブロック形成のために投入されるアルキルリチウム化合物に比べて極微量であり、第2ステップのアニオン重合に影響を与えない。一方、第1ステップでオレフィン重合時に有機アルミニウム系助触媒をさらに使用する場合、この量は第2ステップで投入するアルキルリチウム化合物に比べて無視できない。
【0129】
通常的に有機アルミニウム化合物は、アルキルリチウム化合物と1:1の比(Al:Liの比)でコンプレックスを形成し、これはアニオン重合を開始できない。しかし、Li/Alの比が1以上であると、アニオン重合が開始され、この時1:1でコンプレックスを形成したアルキルリチウムを含む、投入した全てのアルキルリチウム化合物からスチレン鎖が成長することができる。
【0130】
すなわち、有機アルミニウム化合物を助触媒として使用して第1ステップを行った後、第2ステップのアニオン重合を行う場合、投入するケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物のモル数は第1ステップで投入した有機アルミニウム化合物に含まれたアルミニウムのモル数以上でなければならない。反応速度を考慮して有機-亜鉛結合の間でポリスチレン鎖を効率よく成長させるために有機アルミニウムと反応して残ったケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物のモル数(すなわち、「Liのモル数-Alのモル数」)は化学式2の亜鉛化合物のモル数の0.2倍以上であってもよい。
【0131】
一具体例において、Me3SiCH2Li・(PMDETA)に対し、第1ステップで投入した有機亜鉛化合物のモル比(すなわち、[Li]/[Zn])は0.5~2.0であってもよい。このような場合、Me3SiCH2LiとPMDETAを混合してMe3Si
CH2Li・(PMDETA)複合体を形成して反応器に投入することもでき、またはそ
れぞれを反応器に順次に投入することもできる。
【0132】
他の具体例において、前記化学式4の化合物は、化学式3のケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物に対し、1:0.5~1:1.0、例えば、1:1のモル比で投入して使用することができる。
【0133】
また、他の具体例において、反応溶液内の亜鉛原子と第2ステップで投入されたスチレン単量体のモル比([Styrene]/[Zn])は250~1,000、より具体的に250~500であってもよい。
【0134】
具体的に、化学式3のケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物と化学式4の化合物は、脂肪族炭化水素溶媒で混合して投入することもでき、または反応器に化学式3のケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物と化学式4の化合物を順次に投入することもできる。
【0135】
前記ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合温度は、反応物質、反応条件などによって変わり得るが、具体的に摂氏40度~170度、より具体的に100℃~110℃で行われることができる。前記範囲内で、化学式1で表される多重ブロック共重合体が効率よく生成される。
【0136】
前記ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合は、バッチ式、半連続式または連続式で行われることができ、また異なる反応条件を有する二つ以上のステップでも行われることができる。
【0137】
前記ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合時間は、反応物質、反応条件などによって変わり得るが、具体的に0.5~10時間、0.5~8時間、0.5~5時間、または0.5~2時間であってもよい。前記範囲内で、投入されるスチレン系単量体を全量多重ブロック共重合体に転換するのに有利である。
【0138】
本発明の特徴は、前述の化学式2で表される有機亜鉛化合物を用いて、オレフィン重合を介してポリオレフィン鎖を成長させた後、連続でスチレンアニオン重合を次いで行う方法を通じて、化学式1で表される特定構造のブロック共重合体を製造し、この時、従来より向上した製造方法を通じて、製造単価において経済性に優れながらも商業的有用性にさらに優れており、製造の際に反応活性度を向上させることである。
【0139】
また、本発明は、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体をワン-ポット反応で製造することにおいて、選択性が高く、高分子鎖の成長点として作用するアニオンの分解を防止して、より高い水率を具現する製造方法を提供することができる。
【0140】
ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体
本発明のまた他の具現例は、下記の化学式7で表されるポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体に関するものである。
【0141】
【化20】
【0142】
前記化学式7において、Arは炭素数6~20のアリール基であり;mの平均値は20~10,000であり;Y及びY´はそれぞれ独立して水素、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル及びオクチルのうち何れか一つであり、Y及びY´は互いに同一でなく;p及び1-pは繰り返し単位体nを構成する各繰り返し単位のモル分率であり、pは0~1の値であり;nの平均値は40~10,000であり;R2~R3はそれぞれ独立して水素または炭素数1~20のヒドロカルビルであり;zは0~10の整数である。
【0143】
具体的に、前記炭素数6~20のアリール基は置換されるか、または非置換の形態であってもよく、置換された場合、置換基は特に制限されないが、具体的には炭素数1~5のヒドロカルビル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びこれらの異性体などが挙げられる。また、前記置換基として用いられるヒドロカルビルは、環状(cyclic)、非環状(acyclic)、分岐状(branched)または直鎖(straight-chained)の形態であってもよい。
【0144】
具体的に、前記炭素数6~20のアリール基は単環式アリール基、多環式アリール基またはヘテロアリール基を含むことができ、例えば、ベンジル、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、トリルなどの単環式アリール基;ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルなどの多環式アリール基;などを含むことができる。
【0145】
具体的に、前記m及びnは、化学式7で表された各繰り返し単位を区分する記号として使用されることができ、同時に各繰り返し単位の繰り返し個数を意味する記号として使用されることができる。通常的な高分子合成においてm及びnの値は、単一整数ではない一定の分布を有する混合物が得られ、従って、その平均値を測定して論じる。
【0146】
前記mの平均値が20未満であると、投入した亜鉛化合物に比べて生成された高分子量が少なく、経済性に問題が発生し、mの平均値が10,000超過で大き過ぎると、粘度が大きくて製造方法が容易でないため、前記化学式7の構造を有する化合物を具現することが容易でない。具体的に、化学式7のmの平均値は20~10,000であってもよい。
【0147】
前記nの平均値が40未満であると、投入した亜鉛化合物に比べて生成された高分子量が少なく、経済性に問題が発生し、nの平均値が10,000超過で過度に大き過ぎると、粘度が大きくて製造方法が容易でないため、前記化学式7の構造を有する化合物を具現することが容易でない。具体的に、化学式7のnの平均値は40~10,000であってもよい。
【0148】
具体的に、繰り返し単位体nは、オレフィン繰り返し単位p及び1-pを含むことができる。本出願書においてp及び1-pは、前記繰り返し単位体nを構成するオレフィン繰り返し単位を区分する記号として使用されると共に、繰り返し単位p及び繰り返し単位1-pのそれぞれが繰り返し単位体n内に存在するそれぞれのモル分率を示す。ポリオレフィン鎖内の前記繰り返し単位(p及び1-p)の組成は、後述する製造方法においてオレフィン重合(連鎖移動重合)の際に投入するオレフィン単量体の量を調節して調節することができる。 前記オレフィン単量体の投入組成を反応中に変化させて形成されたポリオ
レフィン鎖内で、前記繰り返し単位(p及び1-p)の組成をランダム、グラジエント、ブロックに調節することができる。
【0149】
具体的に、前記ヒドロカルビルは置換されるか、または非置換の形態であってもよく、置換された場合、置換基は特に制限されないが、具体的には炭素数1~5のヒドロカルビル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びこれらの異性体などが挙げられる。また、前記ヒドロカルビルは環状(cyclic)、非環状(acyclic)、分岐状(branched)または直鎖(straight-chained)の形態であってもよい。
【0150】
より具体的に、前記炭素数1~20のヒドロカルビルは、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数2~20のアルキニル、より具体的に炭素数2~10のアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル及びこれらの異性体などを含むことができる。
【0151】
具体的に、前記zは特に制限されないが、0~10の整数であってもよい。前記zの値が10以上の整数である化合物を使用しても関係ないが、このような大きい分子を使用して得る利益が少なく、本発明はzの値を0~10の一定の整数値に限定する。前記範囲内で、製造方法上、効率性の増大及び反応を精密に制御する効果がさらに向上することができる。前記zは、例えば、0~8、0~6、0~4、0、1、2、3、4であってもよい。前記範囲内で、多核性亜鉛化合物の製造に必要な反応物の需給が容易である。
【0152】
具体例において、前記化学式7でArはフェニルであり;mの平均値は20~200であり;Yは水素であり;Y´はメチル、エチル、ブチルまたはヘキシルであり;R2~R3は水素であり;zは0または2であってもよい。このような場合、ポリオレフィンブロッ
クに炭素-炭素二重結合が全く存在せず、産業的にさらに有用なポリスチレン-block-ポリオレフィン-block-ポリスチレントリブロック共重合体を提供することができる。
【0153】
前記ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体はPDIが1.2~1.5であってもよい。このような場合、前記ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体は、従来のアニオン重合及び水素化反応の二つの工程により製造されて分子量分布が1.2以下のものと差別されるポリオレフィンブロックに炭素-炭素二重結合が全く存在せず、産業的にさらに有用なポリスチレン-block-ポリオレフィン-block-ポリスチレントリブロック共重合体を提供することができる。
【0154】
前記化学式7で表されるトリブロック共重合体は、例えば、nポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-block-ポリスチレン、ポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-1-ブテン)-block-ポリスチレン、ポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)-block-ポリスチレン、ポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-1-オクテン)-block-ポリスチレンなどのトリブロック(triblock)共重合体であってもよい。
【0155】
本発明のまた他の具現例は、多核性亜鉛化合物を鎖移動剤としてオレフィン系単量体を連鎖移動重合反応させてポリオレフィンブロックを形成するステップと、連続してケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入し、アニオン重合してポリスチレンブロックを形成するステップと、を含むポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造方法に関するものである。
【0156】
これにより、目的とする構造のポリオレフィンブロックが安定的に形成され、形成されたポリオレフィン構造の両末端にポリスチレンブロックがやはり安定的に形成されて、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体に対する選択性に優れた製造方法を提供することができる。
【0157】
また、前記ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体をオレフィン単量体とスチレン単量体から直接製造するワン-ポット(one-pot)製造方法を提供することが可能であり、ジブロック及びホモポリマーの生成を抑制して熱可塑性エラストマー物性を具現するのに適合したポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造方法を提供することができる。
【0158】
ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造方法
<ポリオレフィンブロック形成ステップ>
まず、前記ポリオレフィンブロックを形成するステップは、多核性亜鉛化合物を鎖移動
剤としてオレフィン系単量体を連鎖移動重合反応させてポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体を成すポリオレフィンブロックを形成することができる。
【0159】
具体的に、前記多核性亜鉛化合物は、アルカンジイル基を含む有機亜鉛化合物であって、より具体的に下記の化学式8で表される化合物であってもよい。
【0160】
【化21】
【0161】
前記化学式8において、R1は炭素数1~20のヒドロカルビルであり;R2~R3はそれぞれ独立して水素または炭素数1~20のヒドロカルビルであり;aの平均値は1~10であり;zは0~10の整数である
【0162】
前記ヒドロカルビルは置換されるか、または非置換の形態であってもよく、置換された場合、置換基は特に制限されないが、具体的には炭素数1~5のヒドロカルビル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びこれらの異性体などが挙げられる。また、前記ヒドロカルビルは、環状(cyclic)、非環状(acyclic)、分岐状(branched)または直鎖(straight-chained)の形態であってもよい。
【0163】
前記炭素数1~20のヒドロカルビルは、具体的には炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキニル、より具体的に炭素数1~10のアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘキチル、オクチル、ノニル、デカニル及びこれらの異性体などを含むことができる。
【0164】
前記化学式8において、zは特に制限されないが、具体的に0~10の整数であってもよい。前記zの値が10以上の整数である多核性亜鉛化合物を使用しても関係ないが、このような大きい分子を使用して得る利益が少なく、本発明はzの値を0~10の一定の整数値に限定する。前記zは、例えば、0~8、0~6、0~4、0、1、2、3、4であってもよい。前記範囲内で、多核性亜鉛化合物の製造に必要な反応物の需給が容易である。
【0165】
前記化学式8において、aは0を超える自然数に特に制限されないが、前記化学式8で表される多核性亜鉛化合物は、aの値が単一の定数ではない一定の分布を有する混合物であって、例えば、1~10の平均値を有するものとして示すことができる。前記化学式8においてaの平均値が10を超える場合、オレフィン重合に適用の際に生成される多核性亜鉛化合物の分子量が大きくなり過ぎて粘度が高く、反応の制御が容易でないという問題が発生し得る。
【0166】
一具体例において、前記多核性化合物は、下記の化学式8-1または化学式8-2で表される化合物であってもよい。このような化学式8-1または8-2で表される化合物は、商業的に大量に製造されて使用されているEt2ZnまたはMe2Znを原料物質として使用して製造することができ、有利である。
【0167】
【化22】
【0168】
【化23】
【0169】
前記式8-1及び8-2において、aの平均値は1~10である。
【0170】
本発明のポリオレフィンブロックを形成するステップにおいて、反応物質として投入するオレフィン単量体は特に制限されないが、具体的に炭素数~10のオレフィン、より具体的に炭素数2~10のα-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどを含むことができる。
【0171】
具体例において、オレフィン単量体として沸点が比較的低いエチレン、プロピレン、1-ブテンなどを使用する場合、一定の圧力下で重合反応を進めることができる。
【0172】
本発明のポリオレフィンブロックを形成するステップにおいて、連鎖移動重合反応のためにオレフィン重合用の遷移金属触媒を用いることができる。遷移金属触媒の種類に一定の制限があるものではないが、通常的に主触媒である遷移金属触媒及び/または助触媒である有機アルミニウムまたはボロン化合物を含む均一系(メタロセン)触媒、もしくは非均一系のチーグラー触媒が使用されることができる。具体例において、均一系触媒を使用する場合、触媒活性にさらに優れているため好ましい。
【0173】
具体的に、前記遷移金属触媒は、前述の化学式5または化学式6で表される化合物を含むことができる。これに対する説明は前述の通りである。
【0174】
前記ポリオレフィンブロックを形成するステップは、例えば、均一な溶液状態で行われることができる。この時、溶媒としては炭化水素溶媒またはオレフィン単量体自体を媒質として使用することができる。前記炭化水素溶媒としては、炭素数4~20の脂肪族炭化水素溶媒、具体的にイソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどを例示することができる。前記溶媒は1種を単独で使用することができ、2種以上を混合して使用することもできる。
【0175】
前記ポリオレフィンブロックを形成するステップの重合温度は、反応物質、反応条件などによって変わり得るが、具体的に摂氏40度~170度、具体的に95℃~125℃で行われることができる。前記範囲内で、高分子の溶解度を高めながらも、触媒を熱的に安定させることができる。
【0176】
前記ポリオレフィンブロックを形成するステップのオレフィン重合は、バッチ式、半連続式または連続式で行われることができ、また異なる反応条件を有する二つ以上のステップでも行われることができる。
【0177】
前記化学式8で表される多核性亜鉛化合物は特に制限されないが、ジエン(diene)化合物をボロン系無機化合物と反応させてハイドロボレーションを行った後、生成物をジアルキル亜鉛化合物と反応させてアルキル基交換反応を行う方法により製造可能である。
【0178】
さらに具体的に、前記化学式8で表される多核性亜鉛化合物の製造方法は、下記の反応式3のような方法により行われることができる。
【0179】
【化24】
【0180】
前記反応式3においては、出発物質であるジエン(diene)化合物は、目的とする化学式8のR2~R3の構造及びz値に応じて選択し、多様なものを使用することができる。前記反応式3においてzの値は、出発物質であるジエン化合物の構造から由来する値であって、化学式8のzの値を決定することができる。反応式3においてzが10以上の整数値を有する化合物を使用しても関係ないが、zの値を0~10、一定の整数値に限定する場合、製造される化学式8の多核性亜鉛化合物の構造的均一性にさらに優れており、原料の需給が容易である。
【0181】
前記反応式3においてジエン化合物は、具体的にzの値が0~10であるジエン化合物、例えば、1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、イソプレンなどを使用することができる。
【0182】
具体例において、前記反応式3の出発物質として1,3-ブタジエンまたは1,5-ヘキサジエン(R2~R3は水素であり、zは0または2である化合物)を使用する場合、原料の単価が低く、大量に購入することができ、経済的、産業的な面で有利な利点がある。
【0183】
前記反応式3においてボロン系無機化合物は、ジエン化合物にハイドロボレーション反応を起こすことができれば、特に制限されないが、具体的にトリヒドロボラン(trihydridoboron)であってもよい。このような場合、製造される化学式8の多核性亜鉛化合物の
構造的均一性にさらに優れており、生産効率がさらに向上することができる。
【0184】
前記反応式3においては、ハイドロボレーション反応後、生成された生成物にジアルキル亜鉛(R1 2Zn)化合物を反応させた後、ボロンと亜鉛との間のアルキル基交換反応により暫く生成されるトリアルキルボロン(R1 3B)化合物を蒸留(または真空蒸留)で連続的に除去して、前記化学式8の化合物を合成することができる。
【0185】
前記反応式3においてアルキル基交換反応は、亜鉛とボロンとの間に起こるだけでなく、亜鉛とまた他の亜鉛との間にも迅速に進み、前記反応式により製造される多核性亜鉛化合物は単一種の化合物ではない、化学式8においてaの値が一定の分布を有する混合物として製造されることができる。
【0186】
また、前記反応式3において投入されるジアルキル亜鉛(R1 2Zn)化合物の量を調節
して化学式8のaの平均値を調節することができる。前記化学式8においてaの平均値は、反応遂行で最終的に残存するジアルキル亜鉛(R1 2Zn)化合物の量により決定される。
【0187】
前記反応式3において投入するジアルキル亜鉛(R1 2Zn)が、R1が炭素数1~20
のヒドロカルビルまたは少なくとも一つの炭素原子がケイ素原子に置換された炭素数1~20のヒドロカルビルであるものに特に制限されない。
【0188】
具体例において、前記反応式3のジアルキル亜鉛(R1 2Zn)としてMe2Znまたは
Et2Znを使用する場合、現在産業界で大量に製造されており、原料の需給が容易であ
る。特にMe2Znを使用する場合、副産物として生成されるMe3Bの沸点が-20℃であって除去が容易であり、Et2Znを使用する場合、副産物として生成されるEt3Bの沸点が95℃であり、Et2Znの沸点が117℃であって蒸留または真空蒸留で選択的
にEt3Bを除去することができ、化学式8の化合物の製造工程にさらに有利に作用する
ことができる。
【0189】
前記方法で製造された化学式8の多核性亜鉛化合物は、製造時に使用された有機金属触媒及びアルミニウムまたは臭素元素で構成された助触媒の除去が有利であり、THF及び多量のマグネシウム塩などの不純物を含んでおらず、高純度で提供することが可能であり、これにより鎖移動剤として使用されることができ、オレフィン重合に使用するのに有利である。
【0190】
前記ポリオレフィン鎖を含む多核性亜鉛化合物を製造するためのオレピン重合の際、具体的な重合条件は特に制限さないが、例えば、以下の通りであってもよい。
【0191】
<ポリスチレンブロック形成ステップ>
前述のポリオレフィンブロックを形成するステップに連続的にアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入し、アニオン重合してポリスチレンブロックを形成するステップを行うことにより、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体を製造することができる。
【0192】
前記ポリスチレンブロック形成ステップは、前述のポリオレフィンブロック形成ステップによりポリオレフィンブロックが形成された化学式8の化合物が含んでいる亜鉛-炭素結合の間にスチレン系単量体を連続的に挿入することができる。また、前記工程を介して生成されたトリブロック共重合体は、末端が水、酸素または有機酸と反応して簡単に焼入れされることができ、これにより産業的に有用なポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体に転換される。
【0193】
具体的に、前記スチレン系単量体は、炭素数6~20のα-スチレン系単量体(ArCH=CH2)であってもよい。さらに具体的に、炭素数6~20のアリール基が置換され
たエチレン、フェニル基が置換されたエチレンなどを含むスチレン系単量体、例えば、スチレンであってもよい。
【0194】
本発明のポリスチレンブロック形成ステップは、ポリオレフィンブロック形成ステップに連続的にケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物、トリアミン化合物及びスチレン系単量体を投入してアニオン重合を行うことにより、スチレン系単量体がポリオレフィンブロック形成ステップで形成された(ポリオレフィン)2Znの亜鉛-炭素結合の間を介し
て挿入されて、結果的に前述の化学式7で表されるトリブロック共重合体が得られる。このような反応は、例示的に下記の反応式4で示すことができる。
【0195】
【化25】
【0196】
具体的に、前記ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、前述の化学式3で表される化合物であってもよい。前記化学式3は、前述の通りである。
【0197】
これらのアルキルリチウム化合物は入手または製造が容易であり、本発明への活用が容易である。
【0198】
具体的に、前記トリアミン化合物は、前述の化学式4で表される化合物であってもよい。前記化学式4は前述の通りである。
【0199】
本発明者は、有機亜鉛化合物の亜鉛-炭素結合からポリスチレン鎖を成長させる方法を開発して公知した(特許文献1及び非特許文献1)。先行発明では、nBuLi・(TMEDA)(TMEDA;tetramethylethylenediamine)を開始剤として投入してスチレン重合を行った。この時、初期の観察されるスチリルアニオンの独特なオレンジ色が次第に黄褐色に変わり、最終的に不透明な黒色になって高分子鎖が成長するアニオンが破壊される現象が観察され、併せて、製造されたポリスチレンの分子量分布がやや広い(Mw/Mn、~1.5)弱点がある。また、先行発明では、有機亜鉛化合物中、亜鉛原子と投入したスチレン単量体のモル比(すなわち、[styrene]/[Zn])が500以下で小さいと、存在する有機亜鉛化合物の全てのZn-C結合からポリスチレン鎖が成長することができず、一部からのみポリスチレン鎖が成長する弱点がある。このように有機亜鉛化合物の全てのZn-C結合からポリスチレン鎖が成長することができず、一部分からのみポリスチレン鎖が成長すると、ポリスチレン-ポリオレフィンジブロックまたはポリオレフィンホモポリマーが生成されて熱可塑性エラストマー性質を具現するのに妨げとなる。
【0200】
本発明のポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造方法では、前記化学式3及び化学式4の化合物であるMe3SiCH2Li・(PMDETA)(PMDETA:pentamethyldiethylenetriamine)を開始剤として投入してアニオン重合することにより、重合過程で色の変化なく黄色を保持することを確認することができ、これにより高分子鎖の成長点アニオンが破壊されず、生きていることが分かる。これにより、製造されるポリスチレン鎖の分子量分布を相対的に下げることができる。このような場合、製造されるポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の分子量分布(PDI)の値は具体的に、1.2~1.5、より具体的にMw/Mn1.3であってもよい。
【0201】
前記化学式3及び化学式4の化合物を開始剤として用いる場合、投入された多核性亜鉛化合物の全てのZn-C結合からポリスチレン鎖が成長したことを確認しており、これによりポリスチレン-ポリオレフィンジブロックまたはポリオレフィンホモポリマーの生成が抑制され、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロックの選択性がさら
に向上することを確認することができる。
【0202】
また、開始剤として投入したMe3SiCH2Liからは、一部のみポリスチレン鎖が成長することを確認しており、これにより、所望しないポリスチレンホモポリマーの生成も一部抑制されたことを確認した(Zn-C結合から成長したポリスチレン鎖はブロック共重合体であり、Me3SiCH2Liから成長したポリスチレン鎖は、所望しないポリスチレンホモポリマーである)。
【0203】
すなわち、前記化学式3及び化学式4の化合物であるMe3SiCH2Li・(PMDETA)を開始剤として新たに使用することにより、PSホモポリマー、POホモポリマー、PO-PSジブロック共重合体の生成量を抑制しながら、本発明の目的であるPS-PO-PSトリブロック共重合体の生成を極大化して熱硬化性エラストマー性質を確実に具現することができる。
【0204】
通常的にポリオレフィンブロック形成ステップにおいて、オレフィン重合に使用される遷移金属触媒は、ポリスチレンブロック形成ステップで投入するケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物に比べて極微量であり、ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合に影響を与えない。一方、ポリオレフィンブロック形成ステップのオレフィン重合に投入する有機アルミニウム系の助触媒をさらに使用する場合、その量はポリスチレンブロック形成ステップで投入するアルキルリチウム化合物に比べて無視できない。通常的に有機アルミニウム化合物は、アルキルリチウム化合物と1:1の比(Al:Liの比)でコンプレックスを形成し、これはアニオン重合を開始することができない。しかし、Li/Alの比が1以上であると、アニオン重合が開始され、この時1:1でコンプレックス形成したアルキルリチウムを含む、投入した全てのアルキルリチウム化合物からスチレン鎖が成長する。
【0205】
すなわち、有機アルミニウム化合物を助触媒として使用してポリオレフィンブロック形成ステップを行った後、ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合を行う場合、投入するアルキルリチウム化合物のモル数は、ポリオレフィンブロック製造ステップで投入した有機アルミニウム化合物に含まれたアルミニウムのモル数以上でなければならない。反応速度を考慮して有機-亜鉛結合の間でポリスチレン鎖を効率よく成長させるために、有機アルミニウムと反応して残ったケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物のモル数(すなわち、「Liのモル数-Alのモル数」)は、化学式8の多核性亜鉛化合物のモル数の0.2倍の値以上であってもよい。
【0206】
一具体例において、前記化学式4の化合物は、化学式3のケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物に対し1:0.5~1:1.5、例えば、1:1のモル比で投入して使用することができる。
【0207】
他の具体例において、ポリスチレンブロックを形成するステップで亜鉛原子と投入されたスチレン単量体のモル比([Styrene]/[Zn])は250~1,000、より具体的に250~500であってもよい。
【0208】
また、他の具体例において、前記ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体は、亜鉛原子当たり生成されたポリスチレン高分子鎖の数([PS-chains]/[Zn])が2.0~3.0であってもよい。
【0209】
具体的に、化学式3のケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物と化学式4の化合物は、脂肪族炭化水素溶媒で混合して投入することもでき、または反応器に化学式3のケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物と化学式4の化合物を順次に投入することもできる。
【0210】
前記ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合温度は、反応物質、反応条件などによって変わり得るが、具体的に摂氏40度~170度、より具体的に100℃~110℃で行われることができる。前記範囲内で、化学式7で表されるトリブロック共重合体が効率よく生成される。
【0211】
前記ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合は、バッチ式、半連続式または連続式で行われることができ、また異なる反応条件を有する二つ以上のステップでも行われることができる。
【0212】
前記ポリスチレンブロック形成ステップのアニオン重合時間は、反応物質、反応条件などによって変わり得るが、具体的に0.5~10時間、0.5~8時間、0.5~5時間、または0.5~2時間であってもよい。前記範囲内で、投入されるスチレン系単量体を全量トリブロック共重合体に転換することができる。
【0213】
本発明の特徴は、ポリオレフィンブロック形成ステップにおけるオレフィン重合後、連続してスチレンアニオン重合を次いで行うポリスチレンブロック形成ステップを含む方法により、トリブロック共重合体の製造方法を単純化し、製造単価を下げて商業工程への適用が容易であるものである。また、ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体をスチレン及びオレピン単量体からワン-ポット反応で製造することができ、生産単価が低いながらも、ジブロック及びホモポリマーの生成を抑制して熱可塑性エラストマー物性を具現するのに適合した製造方法を提供することができる。
【0214】
実施例
以下、本発明の好ましい実施例を通じて、本発明の構成及び作用をより詳細に説明することとする。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、如何なる意味としても、これにより本発明が制限されるものと解釈されてはならない。
【0215】
製造例1:化学式2-1で表される有機亜鉛化合物の製造
【0216】
【化26】
【0217】
ボランジメチルスルフィド(1.6mL、3.2mmol)を攪拌中のトリエチルボラン(0.6g)に徐々に投入した後、90分間反応させた。-20℃に冷却されている無水ジエチルエーテル(10mL)に溶かしたジビニルベンゼン(3.8g)に徐々に投入した後、一晩中攪拌した。真空ポンプで溶媒を除去した後、ジエチルジンク(0.8g)を添加した。5時間の間0℃で減圧蒸留により生成されるトリエチルボランを除去しながら反応を進めた。40℃で余分のジビニルベンゼン及びジエチルジンクを減圧蒸留で除去した。メチルシクロヘキサン(150mL)を添加して産物を再び溶解した後、副生成物として生成された固体化合物をセルライトを使用して濾過して除去した。濾過液をそのまま後述の実施例に使用しており、一部は取って溶媒を除去して1H NMR分析を行い、
その結果のスペクトルを図1に示した。
【0218】
製造例2:アルカンジイル(organodiyl)基を含む多核性亜鉛化合物の製造
【0219】
【化27】
【0220】
グローブボックス内で2口フラスコにソジウムボロヒドリド(5.55g、146.1mmol)を投入し、ジグライム(73mL)を投入した。また、他の2口フラスコには1,5-ヘキサジエン(6.0g、73mmol)を投入し、ジエチルエーテル(17g)とヘキサン(24g)を投入した。2口フラスコの一方の入り口はゴムセプタで塞ぎ、蒸留管を連結した。この反応は、気体であるジボランと溶媒に溶けている1,5-ヘキサジエン間の反応であるため、蒸留管の入り口が溶媒に浸っていることが効率的である。連結した蒸留管を外へ持ち出してシュランクラインに連結した。1口フラスコにヨウ素(18.5g、73mmol)を投入し、ゴムセプタで塞いだ後、真空を短く30秒保持して窒素雰囲気とした後、ボックスから出たジグライム(73mL)を注射器を用いて注入した。ヨウ素を完全に溶かした後、ヨウ素をソジウムボロヒドリドが入っている2口フラスコに5時間にかけて注入した。この時、NMRを介して1,5-ヘキサジエンの二重結合が全て消えたことを確認した。 全て消えなかったら、ソジウムボロヒドリドをさらに入
れて定量どおりにヨウ素を再度さらに入れることにより、反応を終結させることができる。その後、生成物をエチレン20barの下で一晩中反応させて黄色の液体bis-1,6-(1-boracyloheptyl)hexaneを得た。シュレンクフラスコから得た生成物とジエチルジンク(15.7g、127mmol)を投入し、副生成物を除去するために0℃で4時間にかけて蒸留を行った。この時、副生成物を受けるフラスコを-78℃に冷却した。副生成物であるトリエチルボロンの氷点は-78℃より低く、ジエチルジンクの氷点は-78℃より高いため、経時的に液体が生成されることで、反応が進行されることが分かった。その後、1時間の間、副生成物を受けるフラスコを液体窒素で冷却して蒸留管に残存する副生成物を冷却させた。反応を終結させ、グローブボックスへ反応器を移してヘキサン溶解し、フィルタをして灰色の液体を得た。高純度のために前記のように同一質量のジエチルジンクを入れ、二回の蒸留をさらに進めた。最後の三回目の蒸留では、前記化学式8-1の化合物のaを増加させるために、固体になるまで真空蒸留を介して揮発性物質を極力除去して暗い灰色の固体生成物を得た。1H NMR分析結果
aの平均値が6.5であることを確認することができた。前記製造した化合物3.0gを取ってジエチル亜鉛0.396gを添加した後、加熱して混合させてaの平均値が3である化合物を製造した。
【0221】
実験例1:アニオン重合過程における開始剤の性能評価
ジヘキシル亜鉛化合物の存在下でMe3SiCH2Li・(PMDETA)開始剤を用いたスチレン重合を行い、アニオン重合過程で開始剤の性能を評価した。
【0222】
1口フラスコにジヘキシル亜鉛化合物(22.6mg、0.096mmol)、Me3
SiCH2Li(6.3mg、0.067mmol、[Li]/[Zn]=0.70)、
PMDETA(11.7mg、0.067mmol)をメチルシクロヘキサン(27g)に溶解して投入した。90℃恒温槽で15分間攪拌後、スチレン単量体(5.0g、48.0mmol、[Styrene]/[Zn]=500)を投入し、90℃で3時間の間アニオン重合を行った。
【0223】
重合の途中、溶液の色が変化なく初期の黄色に引き続き保持された。スチレンが全てポ
リスチレンに転換されたものをNMRスペクトルで確認した後、HCl 2N水溶液(0.3mL)を投入して生成されたポリスチレンを含む有機亜鉛化合物及びケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物を分解した後、トルエンに溶かしてシリカゲルパッドを通過させ、純粋なポリスチレンを得た。得られた純粋なポリスチレンの質量は投入したスチレン単量体の量と一致した。得られたポリスチレンの分子量をゲル透過クロマトグラフィを用いて測定した時、数平均分子量(Mn)の値が23,000であった。測定されたMn値から有機亜鉛化合物の一分子当たり生成されたポリスチレン高分子鎖の数を次の方程式である式1により計算することができる。
【0224】
【数1】
【0225】
実験例2~6及び比較実験例1~2:アニオン重合過程における開始剤の性能評価
実験条件のうち[Styrene]/[Zn]及び[Me 3 SiCH 2 Li・(PMDETA)]/[Zn]の比に変化を与えながら実験した結果と、比較実験例として[Me 3 SiCH 2 Li・(TMEDA)]を投入して実験した結果を下記の表1に示した。それぞれの実験条件は、下記の表1に表された内容によって変更したことを除いて、実験例1と同じ方法で行った。
【0226】
また、前記実験例1~6、比較実験例1及び2の結果を解釈して反応式2に表した。
【0227】
【化28】
【0228】
【表1】
【0229】
前記実験例及び比較実験例の結果を通じて分かるように、[スチレン]/[Zn]の比率を500に固定し、[Me3SiCH2Li・(PMDETA)]/[Zn]の比を1.0、0.70、0.50または0.30に変化させながらアニオン重合反応を行って進めた実験例1~4において生成されたポリスチレンは、1H NMRスペクトルでMe3Si-*末端基シグナルが~0 ppmで極めて微弱なサイズとして観察された。また、[P
S-chains]/[Zn]の値は2.24~2.50の範囲を有する値であり、これにより全てのZn-C結合から優先的にポリスチレン鎖が成長し、以降、一部のMe3
iCH2-*部位からPS鎖が成長したことが分かる。特に、実験例1~4において生成
されたポリスチレンは分子量分布も好ましく狭かった(Mw/Mn、1.23~1.30)。また、実験例5~6のように、[スチレン]/[Zn]の比率が250で低い場合にも、1H NMRスペクトルでMe3SiCH2-末端基シグナルが観察されておらず、併
せて[PS-chains]/[Zn]の値が1.97及び2.08で全てのZn-C結合からポリスチレン鎖が成長しており、Me3SiCH2-*部位からはPS鎖が成長しなかった。
【0230】
一方、実験例1~6の[Me3SiCH2Li・(PMDETA)]の代わりに[Me3
SiCH2Li・(TMEDA)]を開始剤として投入した比較実験例1及び2は1H NMRスペクトルでMe3SiCH2-*末端基シグナルが観察されていないが、[PS-chains]/[Zn]の値が1.85または1.67であって、一部のZn-C結合からポリスチレン鎖が成長しなかった。
【0231】
また、nBuLi・(PMDETA)を開始剤として使用した場合では、シクロヘキサンにおいて高温(90℃)で急速に分解されて開始剤としての使用には適合していないこ
とを確認した。
【0232】
実施例1:ポリオレフィン両末端にポリスチレン鎖が付着された化学式1で表される多重ブロック共重合体の製造
【0233】
【化29】
【0234】
高圧反応器にメチルシクロヘキサン(17g)に溶解したトリメチルアルミニウム(14.4mg、200umol-Al)溶液を注入した。100℃で1時間の間、高圧反応器中の触媒毒を浄化し、溶液をカニューレを使用して除去した。
【0235】
高圧反応器に化学式2-1で表される有機亜鉛化合物(49.1mg、150μmol)をメチルシクロヘキサン(40g)に溶かして投入し、温度を80℃に上げた。化学式6の化合物と(C1837)N(Me)H+[B(C654-(4.0μmol)をベン
ゼンで2時間の間攪拌させた溶液をトリオクチルアルミニウム(50μmol、18.3mg)をメチルシクロヘキサン(15g)に溶かした溶液(1.0g)と希釈させた。触媒溶液を高圧反応器に注入した後、直ちにエチレン-プロピレン混合ガスを20barの圧力で注入した。反応器がファンで冷却されても、発熱反応により5分以内に~115℃まで温度が上昇した。温度は徐々に減少し、95~115℃の範囲で調節した。単量体の消費により圧力が徐々に減少しており、45℃で60分間重合工程を行った後、残りのガスは排出された。この過程で、重合体溶液は膨張してバルブを塞ぎ、この部分のサンプルは、下記の2ステップ反応に参加しないようになり、以後、取ってGPC及び1H NM
R分析を行った。
【0236】
Me3SiCH2Li(150μmol、14.1mg)とPMDETA(150μmol、26mg)をメチルシクロヘキサン(1.0g)に混合して前記反応器に注入した後、30分間攪拌させた。攪拌温度は90℃で100℃に保持した。スチレン(7.8g)を高圧反応器に注入した後、90℃で100℃の間に保持しながら5時間にかけて反応させ、スチレン単量体を全て転換させた(1H NMR分析で確認)。スチレンの完全な転
換後、酢酸及びエタノールが連続して注入された。収得された重合体を180℃の真空オーブンで一晩中乾燥させた。温度を常温に下げた後、生成されたブロック共重合体(2.8g)をフラスコに移し替え、クロロホルム(30.3g)を投入して還流しながら20分間75℃で攪拌した後、アセトン(60.6g)を注ぎ込んで高分子物質を沈殿させた。高分子物質が入っている溶液をフィルタして得た濾過液を真空ポンプで溶媒を除去し、ホモポリスチレンを得た(0.49g)。この抽出過程で、一部のブロック共重合体がホモポリスチレンと共に溶出されてGPC分析結果、分子量分布がバイモーダルで広く観察された。
【0237】
実施例2~8の化学式1で表されるポリオレフィンの両末端にポリスチレン鎖が付着されたブロック共重合体の製造
重合条件を下記の[表2]のように変更したことを除いて、実施例1と同じ方法で共重合体を製造した。[表3]に実施例1~8のブロック共重合体の製造結果をまとめて示した。
【0238】
【表2】
【0239】
【表3】
【0240】
実施例9:ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造
ボムブ(bomb)反応器(125mL)にメチルシクロヘキサン(17.0g)に溶解したトリメチルアルミニウム(14.4mg、200μmol-Al)溶液を装入した。加熱マントルを使用して100℃に温度を調節した後、1時間の間攪拌した後、触媒毒を浄化するために溶液をカニューレを使用して除去した。
【0241】
反応器を不活性大気下でメチルシクロヘキサン(45.0g)に溶解された製造例2で製造された多核性亜鉛化合物(Et[Zn(CH263ZnEt)(21.5mg、1
50μmol-Zn)の溶液で再び満たし、温度を70℃に設定した。触媒の原液はHf錯体である下記の化学式6(18.1mg、25.0μmol)を[(C18372Me
NH]+[B(C654-(30.4mg、25.0μmol)をベンゼン(4.0g
)で反応させて製造した。前記触媒の原液(583mg、4.0μmol-Hf錯体)を注射器を使用して反応器に注入し、エチレン/プロピレン混合物の気体を直ちに20barの圧力でシステムに充填させた。反応器がファンで冷却されても、発熱反応により5分以内に~125℃まで温度が上昇した。温度は徐々に減少し、95~125℃の範囲で調節した。単量体の消費により圧力が徐々に減少して最終的に16barに達しており、厚い粘度溶液の形成によって攪拌速度も300rpmから40rpmに次第に減少した。40分間重合工程を行った後、残りのガスは排出された。この過程で、重合体溶液は膨張してバルブを塞ぎ、GPC及び1H NMR分析のために回収された。温度が90℃に到達
すると、Me3SiCH2Li(11.3mg、0.120mmol)及びPMDETA(20.8mg、0.120mmol)をメチルシクロヘキサン(1.0g)に混合して製造したMe3SiCH2Li・(PMDETA)溶液を添加した。攪拌しながら温度を90℃で30分間保持した後、スチレン(7.8g、750mmol)を注入した。温度はマントルを使用して100~110℃の範囲で調節された。粘度は次第に増加して5時間以内にほとんど比が示性状態に到達した。分取物の1H NMR分析からスチレンの完全な
転換を確認した。スチレンの完全な転換後、酢酸及びエタノールが連続して注入された。収得された重合体の塊を160℃(24.7g)の真空オーブンで一晩中乾燥させた。60℃でクロロホルム(30.0g)に重合体(3.0g)を溶解させた後、アセトン(60.0g)を添加してブロック共重合体を沈殿させた。製造結果を下記の表5に示した。
【0242】
【化30】
【0243】
実施例10~15:ポリスチレン-ポリオレフィン-ポリスチレントリブロック共重合体の製造
反応条件を下記の表4のように変更したことを除いて、実施例9と同じ方法で共重合体を製造した。製造結果を下記の表5に示した。
【0244】
【表4】
【0245】
また、実施例12で製造されたトリブロック共重合体の1H NMRスペクトルを下記
図12に示した。
【0246】
また、実施例10で製造されたトリブロック共重合体のDSC分析結果を下記の図13に示した。
【0247】
【表5】
【0248】
前記表5において、b、c、d、e、f、gの具体的な内容は、下記の通りである。
【0249】
b:1H NMRスペクトルで測定されたPOsのうちプロピレンのモル分率を示す。
【0250】
また、[C2]はエチレンのモル分率、[C3]はプロピレンのモル分率を示す。
【0251】
c:アセトン及びクロロホルム(2:1重量比)で抽出されたPSの重量を消費されたスチレンの重量で除した値を示す。
【0252】
d:トルエンを希釈液として用いたPS-standards 400℃のGPC測定
値を示す(Measured with GPC at 40℃ eluting wi
th toluene using PS-standards)。
【0253】
e:1,2,4-トリクロロベンゼンを希釈液として用いたPS-standards
160℃のGPC測定値を示す(Measured with GPC at 160℃ eluting with 1,2,4-trichlorobenzene using PS-standards)。
【0254】
f:(PO(g))/((化学式8-1の連鎖移動剤中、Et-及び-(CH26-単位(mol))値を示す。
【0255】
g:汎用補正された転換PO当量の値を示す(Converted to PO equivalents by universal calibration)。
【0256】
比較例1
SBSを製造した後、これを水素化反応させて製造された従来のSEBS(製品名:polystyrene-block-poly(ethylene-ran-butylene)-block-polystyrene)をAldrich社から購入して使用した。
【0257】
<評価方法>
(1)GPCデータの矯正(Universal calibration of the GPC data)
PE試料の場合、既に知られたMark-Houwink-Sakurada PS媒介変数(K=0.000121;a=0.707)及びPE媒介(K=0.000406;a=0.725)を使用してPS標準分子量(MPS)をPE当量(MPE)に下記の式1のように変換した。
【0258】
【数2】
【0259】
ポリ(エチレン-Co-プロピレン)試料の場合、変換されたMPE値を下記の式2を使用してPO当量にさらに転換させた。
【0260】
【数3】
【0261】
前記式2において、SはCH3-側鎖(すなわち、S=(15×FC3)/[(1-FC3
)×28+(FC3×42)]);であり、FC3はポリ(エチレン-Co-プロピレン)試料におけるプロピレンのモル分率である。
【0262】
(2)透過電子顕微鏡検査(TEM)
試料の準備:実施例及び比較例のポリオレフィン-ポリスチレン多重ブロック共重合体(5mg)を100℃でトルエン(5mL)に完全に溶解させた。熱い溶液の一滴を炭素コーティングされた銅TEMグリッド(200メッシュ)に積載した。室温で一晩中溶媒を徐々に蒸発させた後、グリッド上のサンプルを150℃のオーブンで6時間焼鈍しさせた。RuO2(30mg)及びNaIO4(0.20g)を水(5ml)において0℃で4時間反応させて製造したRuO4の水溶液を含有する密閉されたチャンバで30分間フィ
ルムでコーティングされたTEMグリッドを懸濁させることにより、サンプルをRuO4
で染色した。
【0263】
(3)引張試験
実施例及び比較例のポリオレフィン-ポリスチレン多重ブロック共重合体のサンプルは、135℃の二つのホットプレートの間で5MPaの圧力で20分間保持した後、10MPaの圧力で100分間圧力を保持しながら圧縮させた。 厚さが1mmの得られたポリ
マーフィルムを4つの断片(100×10mm2のサイズ)に切断した。引張試験はAS
TM D882によって温度25(±2)℃及び湿度45(±5%)で50mmのゲージの長さに500mm/分の引き抜き速度でUTM(WL2100)を使用して各配置に対して二回ずつ行った。各試験片は、引張試験で測定された破断点距離の半分まで10サイクル以上引張した。
【0264】
<評価結果>
(1)GPCデータ
図2は、実施例5で製造された多重ブロック共重合体のGPC分析結果を示したものである。aは、第1ステップのオレフィン重合後に取ったサンプルの分子量分布であり、bは、次いで第2ステップのアニオン重合を行った後に得られたブロック共重合体の分子量分布である。アニオン重合後、数平均分子量が30,000Da増加した。アニオン重合においてポリスチレン鎖の成長点は、総450μmol(投入したアニオン重合開始剤Me3SiCH2Liのモル数+亜鉛のモル数×2)であり、従って、一つの成長点から17000Da(7.8g/450μmol)サイズのポリスチレン鎖が成長することを期待することができる。アニオン重合後、数平均分子量が30,000Da増加したことは、ポリオレフィン鎖の両末端基にポリスチレン鎖が付いていることを暗示している。実施例5以外の他の実施例においてもアニオン重合後、数平均分子量が33000、36000、31000、29000、36000、63000、24000増加したことに鑑み、ポリオレフィンの両末端基にポリスチレン鎖が付いていることが分かる。
【0265】
また、実施例9で製造されたトリブロック共重合体に対し、GPC分析結果を下記の図8に表した。
【0266】
前記の結果を通じて分かるように、実施例9において、GPC曲線はアニオン重合によりポリスチレンブロックを形成するステップの後、分子量(MnとMwのいずれも)がホモPS Mn(20kDa)の約二倍であるアニオン性スチレン重合後、50kDaほど増加した明確な全体変化を確認した。
【0267】
(2)透過電子顕微鏡検査(TEM)
図3、4、5、6は、それぞれ実施例3(a)、実施例4(b)、実施例5(c)、実施例8(d)で製造されたポリオレフィン-ポリスチレン多重ブロック共重合体の透過電
子顕微鏡イメージを示したものである。
【0268】
PS鎖はPO鎖と混合されないため相分離が起こり、RuO4により選択的に染色され
たPSドメインは、薄膜の透過電子顕微鏡(TEM)イメージにおいて暗い領域から明らかに確認することができる。図3~6を通じてPSドメインが均一に現れると共に、PSの含量を32wt%、37wt%、42wt%に増加させることにより、PSドメインのパターンが球状からさざ波状に変化することを確認することができる。
【0269】
図9は、実施例9(e)、実施例11(a)、実施例12(c)、実施例13(b)、実施例15(d)及び比較例1(f)で製造されたトリブロック共重合体の透過電子顕微鏡イメージを示したものである。
【0270】
PS鎖はPO鎖と混合されないため相分離が起こり、RuO4により選択的に染色され
たPSドメインは、薄膜の透過電子顕微鏡(TEM)イメージにおいて暗い領域から明らかに確認することができる。前記図9の形態変化を通じてPSの含量を28wt%から32wt%、38wt%、44wt%に増加させることにより、PSドメインのパターンが球状からさざ波状に変化することを確認することができる。
【0271】
しかし、実施例9、11、12、13のパターンは類似しているが、従来の狭いPDIを有するSBSの水素化を介して製造されたSEBS(比較例1)のイメージである図9の(f)と比較した時、規則性において差異を確認することができる。
【0272】
また、PO鎖が低いプロピレン分率(FC3、0.22)を有する実施例15(d)は、結晶質によりPSの含量が38重量%で高かったにもかかわらず、PSドメインの形態は持続的に球状に保持されていることを確認することができる。
【0273】
(3)引張試験結果
【0274】
【表6】
【0275】
前記表6は、実施例2、3、5、8で製造したポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体の引張試験と繰り返し引張試験結果である。前記の結果から低いプロピレン分率(FC3、0.22)は引張強度を増加させ、低いPSの重量%(32wt%)は伸び率を増加させることが分かる。
【0276】
図7のa~dは、それぞれ前記実施例2(a)、実施例3(b)、実施例5(c)、実施例8(d)で製造したブロック共重合体の繰り返し引張試験結果を従来のSEBSの比較例1の繰り返し引張試験結果と比較して示すもので、製造された多重ブロック共重合体において熱硬化性エラストマー性質が具現されたことを確認した。
【0277】
【表7】
【0278】
図10は、前記表7に表された引張試験結果のうち応力測定結果を示したグラフである。実施例9、10、12、15で製造されたトリブロック共重合体は破断のない小さい又は従来のSEBSと比較して同じ程度の応力を有することを確認した。
【0279】
図11は、前記実施例12で製造したトリブロック共重合体の繰り返された引張テスト結果を示したものである。
【0280】
図12は、本発明の比較例1のトリブロック共重合体(従来のSEBS)の繰り返された引張テスト結果を示したものである。
【0281】
図11図12を比較して、従来のSEBS(比較例1)と異なり、本発明の実施例12のトリブロック共重合体は、熱硬化性エラストマー性質が具現されたことを確認した。
【0282】
本発明の単純な変形ないし変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施されることができ、かかる変形や変更は、全て本発明の領域に含まれるものと見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14