(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】硫化水素を選択的に除去するための吸収剤および方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
(21)【出願番号】P 2020512814
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2018073351
(87)【国際公開番号】W WO2019043099
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-20
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】518377090
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Research & Engineering Company
【住所又は居所原語表記】1545 Route 22 East,Annandale,NJ 08801,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン エアンスト
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト フォアベルク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス イングラム
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ズィーダー
(72)【発明者】
【氏名】カーラ ペレイラ
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514684(JP,A)
【文献】特表2017-526527(JP,A)
【文献】特表2012-510895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0066834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18、
53/34-53/85、
53/92、53/96
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去するための吸収剤であって、ここで、前記吸収剤は、式(I)のアミ
ン
【化1】
[式中、
U-V-W
は、N-CO-CHR
5
であり
、
R
1は、独立してC
1~C
5アルキルであり、
R
2は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択され、
R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから独立して選択され、
R
4は、水素およびC
1~C
5アルキルから独立して選択され、
R
5は、水素、C
1~C
5アルキル、(C
1~C
5アルコキシ)-C
1~C
5アルキル、およびヒドロキシ-C
1~C
5アルキルから選択され、
xは1~10の整数である]を含む水溶液を含
み、かつ前記吸収剤は、該吸収剤の全重量に対して10~70重量%の全量の式(I)のアミンを含む、吸収剤。
【請求項2】
前記アミンが、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)プロピル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、および
1-[2-(イソプロピルアミノ)プロピル]ピロリジン-2-オン
から選択される、請求項1記載の吸収剤。
【請求項3】
前記アミンが、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
および
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オ
ン
から選択される、請求項
2記載の吸収剤。
【請求項4】
前記アミンが1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オンである、請求項
3記載の吸収剤。
【請求項5】
前記吸収剤が酸をさらに含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載の吸収剤。
【請求項6】
前記吸収剤が、前記一般式(I
)の化合物以外の第三級アミンおよび/または立体障害が非常に大きいアミンをさらに含む、請求項1から
5までのいずれか1項記載の吸収剤。
【請求項7】
前記吸収剤が非水性有機溶媒を含む、請求項1から
6までのいずれか1項記載の吸収剤。
【請求項8】
前記非水性有機溶媒が、C
4~
10アルコール、ケトン、エステル、ラクトン、アミド、ラクタム、スルホン、スルホキシド、グリコール、ポリアルキレングリコール、ジ-またはモノ(C
1~
4アルキルエーテル)グリコール、ジ-またはモノ(C
1~
4アルキルエーテル)ポリアルキレングリコール、環状尿素、チオアルカノールおよびそれらの混合物から選択される、請求項
7記載の吸収剤。
【請求項9】
二酸化炭素および硫化水素を含む流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する方法であって、前記流体流を、請求項1から
8までのいずれか1項記載の吸収剤と接触させて、負荷された吸収剤と処理された流体流とを得る、方法。
【請求項10】
前記負荷された吸収剤を、加熱、減圧および不活性流体によるストリッピングのうちの少なくとも1つの手段によって再生させる、請求項
9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去するのに適した吸収剤に関する。本発明はまた、流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する方法に関する。
【0002】
天然ガス、精製ガスまたは合成ガスなどの流体流から、酸性ガス、たとえばCO2、H2S、SO2、CS2、HCN、COSまたはメルカプタンを除去することは、さまざまな理由で望ましい。天然ガス中の硫黄化合物は、特に天然ガスに頻繁に同伴される水と一緒に腐食性酸を形成する傾向がある。したがって、パイプラインにおける天然ガスの輸送または天然ガス液化プラント(LNG=液化天然ガス)における更なる処理のために、硫黄含有不純物の所与の限界値が観察されなければならない。さらに、多くの硫黄化合物は、低濃度であっても悪臭と毒性がある。
【0003】
CO2の濃度が高いとガスの発熱量が低下するため、天然ガスから二酸化炭素が除去されなければならない。さらに、CO2は水分とともにパイプやバルブの腐食をもたらす可能性がある。
【0004】
酸性ガスを除去するための既知の方法には、無機塩基または有機塩基の吸収剤水溶液による洗浄操作が含まれる。酸性ガスが吸収剤に溶解すると、該塩基によりイオンが形成される。吸収剤は、より低い圧力への減圧および/またはストリッピングによって再生させることができ、それによってイオン種が逆反応し、酸性ガスが、不活性流体、たとえば蒸気により放出および/またはストリッピングされる。再生プロセスの後、吸収剤は再利用することができる。
【0005】
CO2とH2Sが実質的に除去される方法は「全吸収」と呼ばれる。腐食問題を回避し、消費者に必要な発熱量を提供するためにCO2の除去が必要になり得るが、該CO2の除去を最小限に抑えながら混合物からH2Sを選択的に除去するようにCO2とH2Sの両方を含有する酸性ガス混合物を処理することが必要であったり望ましかったりする場合もある。たとえば、天然ガスパイプラインの仕様では、H2SはCO2よりも毒性と腐食性が強いため、CO2よりもH2Sレベルに厳しい制限が課されている。一般的なキャリアの天然ガスパイプラインの仕様では、通常、H2S含有量を4ppmvに制限しているが、CO2は2体積%と制限がより緩和されている。選択的なH2S除去は、下流のClausプラントなどの硫黄回収のために供給流中のH2Sレベルを富化するのにしばしば望まれている。
【0006】
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)などの立体障害が非常に大きい第二級アミンや、メチルジエタノールアミン(MDEA)などの第三級アミンは、CO2よりもH2Sの速度論的選択性を示す。したがって、そのようなアミンは、CO2とH2Sを含むガス混合物からCO2よりもH2Sを選択的に除去するのに適しており、一般に水性混合物として利用される。これらのアミンはCO2と直接反応しない。代わりに、CO2はアミンとのゆっくりとした反応において水と反応することで重炭酸イオンを生じる。この反応速度論により、H2Sが吸着剤のアミン基とより迅速に直接反応して、水溶液中に水硫化物イオンを形成することが可能である。
【0007】
上記のようなヒドロキシル置換アミン(アルカノールアミン)の使用が一般的になってきた理由は、ヒドロキシル基の存在が、幅広く使用されている水性溶媒系における吸収剤およびその酸性ガス反応生成物の溶解性を改善する傾向にあり、そうして従来の吸収塔/再生塔ユニットを介した溶媒の循環が相分離の抑制によって促進されるためである。ヒドロキシル基の存在はまた、アミンの揮発性を低下させ、その結果、操作中のアミン損失を減らすことができる。
【0008】
しかしながら、この恩恵は、特定の状況でそれ自体の問題を提示する可能性がある。アルカノールアミンは、より高い圧力で酸性ガスを効果的に除去するであろうが、H2S除去の選択性は、液体溶媒中のCO2の直接的な物理的吸収とアミン化合物のヒドロキシル基との反応の両方によって著しく低下すると予想され得る。CO2はアミノ窒素と優先的に反応するが、より高い圧力は酸素との反応を強め、より高い圧力下にヒドロキシルサイトでの反応によって形成された重炭酸塩/ヘミ炭酸塩/炭酸塩反応生成物が安定化され、圧力の増加に伴ってH2S選択性が漸進的に失われる。
【0009】
さらに、ヒドロキシル基の存在は、アミンの水溶性を改善するが、ヒドロキシル基は界面活性剤特性を吸収剤/酸性ガス反応生成物に付与する傾向にあり、それによって潜在的にガス処理ユニットの操作中に厄介な発泡現象を引き起こす。
【0010】
ガス混合物の吸収処理において水性アミン混合物を使用する別の既知の問題は、水性アミン混合物の再生温度の範囲内の温度で、いくつかの相への分離が起こり得ることであり、この温度は、通常、50℃~170℃の範囲である。
【0011】
米国特許出願公開第2015/0027055号明細書は、立体障害のある末端エーテル化アルカノールアミンを含む吸収剤によりCO2含有ガス混合物からH2Sを選択的に除去する方法を記載している。アルカノールアミンの末端エーテル化と水の排除により、より高いH2S選択性が可能になることが見出された。
【0012】
米国特許出願公開第2010/003775号明細書は、アルキルアミノアルキルオキシ(アルコール)モノアルキルエーテルを含む酸性ガス吸収剤、および前記モノアルキルエーテルを含む吸収剤溶液を使用してH2SおよびCO2を含むガス混合物からH2Sを選択的に除去する方法を記載している。
【0013】
国際公開第2013/181245号は、H2Sの選択的除去に有用な吸収剤組成物を記載しており、ここで、該吸収剤組成物は、tert-ブチルアミンのアミノ化反応生成物とポリエチレングリコール混合物の水性アミン混合物のほかに、スルホン、スルホン誘導体およびスルホキシドから選択される有機共溶媒、ならびに相分離を抑制するための強酸を含む。
【0014】
国際公開第2013/181252号は、H2Sの選択的除去に有用な吸収剤組成物を記載しており、ここで、該吸収剤組成物は、tert-ブチルアミンのアミノ化反応生成物とポリエチレングリコール混合物の水性アミン混合物のほかに有機共溶媒を含む。
【0015】
国際公開第2014/001664号は、以下の式の化合物、および酸性ガスの除去におけるそれらの使用を記載している:
【化1】
R
1~R
4は、Hおよびアルキルから選択され、一方で、R
5およびR
6はアルキルであるか、またはR
5とR
6は一緒になって環を形成する。これらの化合物は、それぞれ塩基性窒素原子を有することを特徴とする第三級アミノ基のみを含む。
【0016】
米国特許出願公開第2013/0011314号明細書は、以下の式の化合物、およびH
2SおよびCO
2を含むガスからのH
2Sの選択的除去におけるそれらの使用を記載している:
【化2】
R
1およびR
2はアルキルであるか、またはピペリジン、ピロリジンもしくはモルホリンなどの複素環を一緒に形成してもよく、R
3~R
7は、H、アルキル基およびアルコキシ基から選択される。米国特許出願公開第2013/0011314号明細書に記載されている化合物は、第二級アミノ基および第三級アミノ基を有することを特徴とし、両方とも塩基性窒素原子を有することを特徴とする。
【0017】
二酸化炭素および硫化水素を含む流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去するのに適した、新しい改善された吸収剤を見出す必要がある。該吸収剤は、水性アミン混合物の再生温度の通常の範囲内にある温度で相分離の傾向が弱まるべきである。吸収剤は、水性溶媒中で低揮発性を示すべきである。流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する方法も提供されるべきである。
【0018】
この目的は、流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去するための吸収剤によって達成され、ここで、該吸収剤は、式(I)のアミンおよび/または式(II)のアミン
【化3】
[式中、
U-V-Wは、CH-O-CHR
5、N-CO-CHR
5またはN-CO-NR
5であり、
U’-V’-W’はC-O-CR
5であり、
R
1は、独立してC
1~C
5アルキルであり、
R
2は、水素およびC
1~C
5アルキルから選択され、
R
3は、水素およびC
1~C
5アルキルから独立して選択され、
R
4は、水素およびC
1~C
5アルキルから独立して選択され、
R
5は、水素、C
1~C
5アルキル、(C
1~C
5アルコキシ)-C
1~C
5アルキル、およびヒドロキシ-C
1~C
5アルキルから選択され、
xは1~10の整数である]を含む水溶液を含む。
【0019】
吸収剤は、再生温度で相分離の傾向が低下する。本発明による吸収剤は、一般に、36重量%水溶液として、130℃、好ましくは140℃の温度まで単相を形成する(かつ相分離を示さない)。
【0020】
一般式(I)および(II)のアミンは、CR1R1R2部分に直接隣接する第二級アミノ基を含む。したがって、前記第二級アミノ基における窒素原子は、直接隣接する少なくとも1つの第二級炭素原子または第三級炭素原子を有し、したがって立体障害がある。
【0021】
一般式(I)および(II)のアミンは、U-V-WまたはU’-V’-W’構造単位の性質に応じて、フラン、テトラヒドロフラン、ピロリドンまたは2-イミダゾリドン構造である5員環構造を含む。これらの構造は、吸収剤の吸収効率および選択性に影響を与えることなく、アミンとアミン/酸性ガスの両方の反応生成物の水溶性を効果的に高めることがわかっている。理解されるように、ピロリドンまたは2-イミダゾリドン構造は、1つまたは2つのアミド基を含む。カルボニル基の電子吸引効果のため、前記アミド基は本質的に塩基性ではない。塩基性の欠如により、前記アミド基は酸性ガスの吸収に寄与せず、したがって一般式(I)および(II)のアミンを含む吸収剤のH2S選択性に本質的に影響を及ぼさないと考えられる。
【0022】
好ましくは、R1はメチルである。好ましくは、R2は、C1~C5アルキル、特にメチルである。好ましくは、R3は水素である。好ましくは、R4は水素である。好ましくは、xは1~6の整数である。より好ましくは、xは1~3、特に1または2である。好ましくは、U-V-Wは、N-CO-CR5またはCH-O-CHR5、特にN-CO-CHR5である。
【0023】
U-V-WがN-CO-CHR5またはN-CO-NR5の場合、R5は、好ましくは水素またはC1~C5アルキル、特に水素である。U-V-WがCH-O-CHR5の場合、R5は、好ましくは(C1~C5-アルコキシ)-C1~C5アルキルまたはヒドロキシ-C1~C5アルキル、特に好ましくは(C1~C5-アルコキシ)-C1~C5アルキル、たとえばメトキシメチルなどのメトキシ-C1~C5アルキルである。
【0024】
式(II)のアミンにおいて、R5は、好ましくは(C1~C5アルコキシ)-C1~C5アルキル、たとえばメトキシメチルなどのメトキシ-C1~C5アルキルである。
【0025】
U-V-WがN-CO-CHR5またはN-CO-NR5の場合、xは、好ましくは2~10、より好ましくは2~6、特に2または3の整数である。
【0026】
U-V-WがCH-O-CHR5であるか、またはU’-V’-W’がC-O-CR5である実施形態では、R1はメチルであり、R2はC1~C5アルキルであり、R3は水素であり、R4は水素であり、xは1~6、たとえば1~3の整数であることが好ましい。より好ましくは、R1およびR2はメチルであり、R3およびR4は水素であり、xは1または2である。
【0027】
U-V-WがN-CO-CHR5またはN-CO-NR5である実施形態では、R1はメチルであり、R2はC1~C5アルキルであり、R3は水素であり、R4は水素であり、xは2~6の整数、たとえば2または3であることが好ましい。より好ましくは、R1およびR2はメチルであり、R3およびR4は水素であり、xは2または3である。
【0028】
「アルキル」という用語は、特定の数の炭素原子を有する分枝鎖と直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むと理解される。これは、アルコキシ置換基などの他の可能な置換基に含まれるアルキル基にも当てはまる。
【0029】
好ましい実施形態では、吸収剤は、式(I)のアミンを含む。別の実施形態では、吸収剤は、式(II)のアミンを含む。別の実施形態では、吸収剤は、一般式(I)および(II)のアミンの混合物を含む。
【0030】
式(I)の適切なアミンには以下のものが含まれる:
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)プロピル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(イソプロピルアミノ)プロピル]ピロリジン-2-オン、
2-メチル-N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、
2-メチル-N-(テトラヒドロフラン-2-イルエチル)プロパン-2-アミン、
N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、
N-(テトラヒドロフラン-2-イルエチル)プロパン-2-アミン、
[5-[(tert-ブチルアミノ)メチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
[5-[(tert-ブチルアミノ)エチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)メチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)エチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]エチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]エチル]プロパン-2-アミン、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]イミダゾリジン-2-オン、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)プロピル]イミダゾリジン-2-オン、および 1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]イミダゾリジン-2-オン、および
1-[2-(イソプロピルアミノ)プロピル]イミダゾリジン-2-オン。
【0031】
式(II)の適切なアミンには以下のものが含まれる:
N-(2-フリルメチル)-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-(2-フリルエチル)-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-(2-フリルメチル)プロパン-2-アミン、
N-(2-フリルエチル)プロパン-2-アミン、
[5-[(tert-ブチルアミノ)メチル]-2-フリル]メタノール、
[5-[(tert-ブチルアミノ)エチル]-2-フリル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)メチル]-2-フリル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)エチル]-2-フリル]メタノール、
N-[[5-(メトキシメチル)-2-フリル]メチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)-2-フリル]エチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)-2-フリル]メチル]プロパン-2-アミン、および
N-[[5-(メトキシメチル)-2-フリル]エチル]プロパン-2-アミン。
【0032】
好ましい実施形態では、吸収剤は、以下から選択される式(I)のアミンおよび/または式(II)のアミンを含む:
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
N-(2-フリルメチル)-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-(2-フリルメチル)プロパン-2-アミン、
[5-[(tert-ブチルアミノ)メチル]-2-フリル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)メチル]-2-フリル]メタノール、
N-[[5-(メトキシメチル)-2-フリル]メチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)-2-フリル]メチル]プロパン-2-アミン、
2-メチル-N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、
N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、
[5-[(tert-ブチルアミノ)メチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)メチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]プロパン-2-アミン、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]イミダゾリジン-2-オン、および
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]イミダゾリジン-2-オン。
【0033】
より好ましい実施形態では、吸収剤は、以下から選択される式(I)のアミンを含む: 1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
2-メチル-N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、
N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、
[5-[(tert-ブチルアミノ)メチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
[5-[(イソプロピルアミノ)メチル]テトラヒドロフラン-2-イル]メタノール、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]プロパン-2-アミン、
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]イミダゾリジン-2-オン、および
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]イミダゾリジン-2-オン。
【0034】
特に好ましい実施形態では、吸収剤は、以下から選択される式(I)のアミンを含む:
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
1-[2-(イソプロピルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン、
2-メチル-N-(テトラヒドロフラン-2-イルメチル)プロパン-2-アミン、および
N-[[5-(メトキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]メチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン。
【0035】
最も好ましくは、吸収剤に含まれる式(I)のアミンは、1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オンである。
【0036】
吸収剤は、該吸収剤の全重量に対して、好ましくは10~70重量%、より好ましくは15~65重量%、最も好ましくは20~60重量%の全量の一般式(I)および(II)のアミンを含む。
【0037】
一実施形態では、吸収剤は酸を含む。酸は、吸収剤を再生させて負荷量を低くし、方法の効率を高めるのに役立つ。酸と式(I)または(II)のアミンとの間でプロトン化平衡が形成される。平衡の位置は温度に依存し、より高い温度では、遊離オキソニウムイオンおよび/またはプロトン化エンタルピーがより低いアミン塩に向かって平衡がシフトする。吸収工程で一般的な比較的低い温度では、より高いpHが効率的な酸性ガス吸収を促進するのに対して、脱着工程で一般的な比較的高い温度では、より低いpHが吸収された酸性ガスの放出を支持する。
【0038】
驚くべきことに、本発明の吸収剤中の酸の存在はまた、より高いH2S選択性をもたらし得ることが見出された。
【0039】
酸は、25℃で測定して、6未満、特に5未満のpKAを有することが好ましい。複数の解離段階、したがって複数のpKAを有する酸の場合、この要件は、pKA値の1つが指定された範囲内にあるときに満たされる。酸は、プロトン酸(ブレンステッド酸)から適切に選択される。
【0040】
酸は、120℃で測定された水溶液のpHが、7.9~9.5未満、好ましくは8.0~8.8未満、より好ましくは8.0~8.5未満、最も好ましくは8.0~8.2未満であるような量で加えることが好ましい。
【0041】
一実施形態では、酸の量は、該吸収剤の全重量に対して、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~4.5重量%、より好ましくは0.5~4.0重量%、最も好ましくは1.0~2.5重量%である。
【0042】
酸は、有機酸および無機酸から選択される。適切な有機酸は、たとえば、ホスホン酸、スルホン酸、カルボン酸およびアミノ酸を含む。特定の実施形態では、酸は多塩基酸である。
【0043】
適切な酸は、たとえば、
鉱酸、たとえば塩酸、硫酸、アミド硫酸、リン酸、リン酸の部分エステル、たとえば、モノアルキルリン酸エステルおよびジアルキルリン酸エステルならびにモノアリールリン酸エステルおよびジアリールリン酸エステル、たとえばトリデシルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステル、ジフェニルリン酸エステルおよびビス(2-エチルヘキシル)リン酸エステル;ホウ酸;
カルボン酸、たとえば、飽和脂肪族モノカルボン酸、たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、n-ヘプタン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸;飽和脂肪族ポリカルボン酸、たとえばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸;脂環式モノカルボン酸および脂環式ポリカルボン酸、たとえばシクロヘキサンカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、樹脂酸、ナフテン酸;脂肪族ヒドロキシカルボン酸、たとえばグリコール酸、乳酸、マンデル酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸;ハロゲン化脂肪族カルボン酸、たとえばトリクロロ酢酸または2-クロロプロピオン酸;芳香族モノカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸、たとえば安息香酸、サリチル酸、没食子酸、位置異性体のトルイル酸、メトキシ安息香酸、クロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸;工業用カルボン酸混合物、たとえば、バーサチック酸;
スルホン酸、たとえばメチルスルホン酸、ブチルスルホン酸、3-ヒドロキシプロピルスルホン酸、スルホ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-キシレンスルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸およびジノニルナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸またはノナフルオロ-n-ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸、2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)-エタンスルホン酸(HEPES);
有機ホスホン酸、たとえば、式(III)
R6-PO3H (III)
[式中、R6は、カルボキシル、カルボキサミド、ヒドロキシルおよびアミノから独立して選択される最大4つの置換基で任意に置換されたC1~18アルキルである]のホスホン酸である。
【0044】
これらには、以下のものが含まれる:
アルキルホスホン酸、たとえばメチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸;ヒドロキシアルキルホスホン酸、たとえばヒドロキシメチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸;アリールホスホン酸、たとえばフェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸、たとえばアミノメチルホスホン酸、1-アミノエチルホスホン酸、1-ジメチルアミノエチルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、2-(N-メチルアミノ)エチルホスホン酸、3-アミノプロピルホスホン酸、2-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピル-2-クロロプロピルホスホン酸、2-アミノブチルホスホン酸、3-アミノブチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸、4-アミノブチルホスホン酸、2-アミノペンチルホスホン酸、5-アミノペンチルホスホン酸、2-アミノヘキシルホスホン酸、5-アミノヘキシルホスホン酸、2-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸;アミドアルキルホスホン酸、たとえば3-ヒドロキシメチルアミノ-3-オキソプロピルホスホン酸;ならびにホスホノカルボン酸、たとえば2-ヒドロキシホスホノ酢酸および2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸;
式(IV)
【化4】
[式中、R
7は、HまたはC
1~
6アルキルであり、Qは、H、OHまたはNR
8
2であり、R
8は、HまたはCH
2PO
3H
2、たとえば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸である]のホスホン酸;
式(V)
【化5】
[式中、Zは、C
2~6アルキレン、シクロアルカンジイル、フェニレン、またはシクロアルカンジイルもしくはフェニレンによって中断されたC
2~6アルキレンであり、Yは、CH
2PO
3H
2であり、mは、0~4である]のホスホン酸、たとえばエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);
式(VI)
R
9-NY
2 (VI)
[式中、R
9は、C
1~6アルキル、C
2~6ヒドロキシアルキルまたはR
10であり、R
10は、CH
2PO
3H
2である]のホスホン酸、たとえばニトリロトリス(メチレンホスホン酸)および2-ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するアミノカルボン酸、たとえば
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するα-アミノ酸、たとえばN,N-ジメチルグリシン(ジメチルアミノ酢酸)、N,N-ジエチルグリシン、アラニン(2-アミノプロピオン酸)、N-メチルアラニン(2-(メチルアミノ)プロピオン酸)、N,N-ジメチルアラニン、N-エチルアラニン、2-メチルアラニン(2-アミノイソ酪酸)、ロイシン(2-アミノ-4-メチルペンタン-1-オイック酸)、N-メチルロイシン、N,N-ジメチルロイシン、イソロイシン(1-アミノ-2-メチルペンタン酸)、N-メチルイソロイシン、N,N-ジメチルイソロイシン、バリン(2-アミノイソ吉草酸)、α-メチルバリン(2-アミノ-2-メチルイソ吉草酸)、N-メチルバリン(2-メチルアミノイソ吉草酸)、N,N-ジメチルバリン、プロリン(ピロリジン-2-カルボン酸)、N-メチルプロリン、N-メチルセリン、N,N-ジメチルセリン、2-(メチルアミノ)イソ酪酸、ピペリジン-2-カルボン酸、N-メチルピペリジン-2-カルボン酸、
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するβ-アミノ酸、たとえば3-ジメチルアミノプロピオン酸、N-メチルイミノジプロピオン酸、N-メチルピペリジン-3-カルボン酸、
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するγ-アミノ酸、たとえば4-ジメチルアミノ酪酸、または
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するアミノカルボン酸、たとえばN-メチルピペリジン-4-カルボン酸
が含まれる。
【0045】
無機酸の中で、リン酸および硫酸、特にリン酸が好ましい。
【0046】
カルボン酸の中で、ギ酸、酢酸、安息香酸、コハク酸およびアジピン酸が好ましい。
【0047】
スルホン酸の中で、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸および2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)が好ましい。
【0048】
ホスホン酸の中で、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)およびニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が好ましく、これらの中で、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸が特に好ましい。
【0049】
第三級アミノ基、または少なくとも1つの第二級炭素原子もしくは第三級炭素原子がアミノ基に直接隣接したアミノ基を有するアミノカルボン酸の中で、N,N-ジメチルグリシンおよびN-メチルアラニンが好ましい。
【0050】
より好ましくは、酸は無機酸である。
【0051】
一実施形態では、吸収剤は、一般式(I)および(II)のアミン以外の第三級アミンまたは立体障害が非常に大きい第一級アミンおよび/または立体障害が非常に大きい第二級アミンを含む。非常に大きな立体障害とは、第一級または第二級窒素原子に直接隣接した第三級炭素原子を意味すると理解される。この実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外の第三級アミンまたは立体障害が非常に大きいアミンを、該吸収剤の全重量に対して、一般に5~50重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは20~40重量%の量で含む。
【0052】
適切な第三級アミンには、特に以下のものが含まれる:
1.第三級アルカノールアミン、たとえば
ビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン(メチルジエタノールアミン、MDEA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン(トリエタノールアミン、TEA)、トリブタノ-ルアミン、2-ジエチルアミノエタノール(ジエチルエタノールアミン、DEEA)、2-ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン、DMEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(N,N-ジメチルプロパノールアミン)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール(DIEA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)メチルアミン(メチルジイソプロパノールアミン、MDIPA);
2.第三級アミノエーテル、たとえば
3-メトキシプロピルジメチルアミン;
3.第三級ポリアミン、たとえば、ビス第三級ジアミン、たとえば
N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N’,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジエチルエチレンジアミン(DMDEEDA)、1-ジメチルアミノ-2-ジメチルアミノエトキシエタン(ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TEDA)、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン;
およびそれらの混合物。
【0053】
第三級アルカノールアミン、すなわち、窒素原子に結合した少なくとも1つのヒドロキシアルキル基を有するアミンが一般に好ましい。メチルジエタノールアミン(MDEA)が特に好ましい。
【0054】
一般式(I)の化合物以外の適切な高度に立体障害のあるアミン(すなわち、第一級窒素原子または第二級窒素原子に直接隣接した第三級炭素原子を有するアミン)には、特に以下のものが含まれる:
1.立体障害が非常に大きい第二級アルカノールアミン、たとえば
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)、2-(2-tert-ブチルアミノ)プロポキシエタノール、2-(2-tert-アミルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-(1-メチル-1-エチルプロピルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、2-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-ブタノ-ル、および3-アザ-2,2-ジメチルヘキサン-1,6-ジオール、2-N-メチルアミノ-プロパン-1-オール、2-N-メチルアミノ-2-メチルプロパン-1-オール;
2.立体障害が非常に大きい第一級アルカノールアミン、たとえば
2-アミノ-2-メチルプロパノール(2-AMP);2-アミノ-2-エチルプロパノール;および2-アミノ-2-プロピルプロパノール;
3.立体障害が非常に大きいアミノエーテル、たとえば
1,2-ビス(tert-ブチルアミノエトキシ)エタン、ビス(tert-ブチルアミノエチル)エーテル;
およびそれらの混合物。
【0055】
立体障害が非常に大きい第二級アルカノールアミンが一般に好ましい。2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノールおよび2-(2-tert-ブチルアミノエトキシエトキシ)エタノールが特に好ましい。
【0056】
一般に、吸収剤は、立体障害のない第一級アミンまたは立体障害のない第二級アミンを含まない。立体障害のない第一級アミンとは、水素原子または第一級炭素原子もしくは第二級炭素原子のみが結合している第一級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体障害のない第二級アミンとは、水素原子または第一級炭素原子のみが結合している第二級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体障害のない第一級アミンまたは立体障害のない第二級アミンは、CO2吸収の強力な活性剤として作用する。吸収剤中にそれらが存在すると、該吸収剤のH2S選択性が失われてしまう可能性がある。
【0057】
一実施形態では、吸収剤は、少なくとも1種の非水性有機溶媒を含む。吸収剤の含水量を、たとえば最大20重量%、あるいは最大10重量%、好ましくは最大5重量%、または最大2重量%に制限することが望ましくあり得る。吸収剤の含水量を制限すると、CO2よりもH2Sに対する吸収剤の選択性が向上し得る。
【0058】
非水性溶媒は、好ましくは以下のものから選択される:
n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノールなどのC4~C10アルコール;
シクロヘキサノンなどのケトン;
酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル;
γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどのラクトン;
第三級カルボキサミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド;またはNホルミルモルホリンおよびN-アセチルモルホリンなどのアミド、;
γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのラクタム;
スルホランなどのスルホン;
ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;
エチレングリコール(EG)およびプロピレングリコールなどのグリコール;
ジエチレングリコール(DEG)およびトリエチレングリコール(TEG)などのポリアルキレングリコール;
エチレングリコールモノメチルまたはジメチルエーテルなどのジ-もしくはモノ(C1~C4アルキルエーテル)グリコール;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびトリエチレングリコールジメチルエーテルなどのジ-またはモノ(C1~C4-アルキルエーテル)ポリアルキレングリコール;
N,N-ジメチルイミダゾリジン-2-オンおよびジメチルプロピレン尿素(DMPU)などの環状尿素;
エチレンジチオエタノール、チオジエチレングリコール(チオジグリコール、TDG)およびメチルチオエタノールなどのチオアルカノール;
ならびにそれらの混合物。
【0059】
より好ましくは、非水性溶媒は、スルホン、グリコールおよびポリアルキレングリコールから選択される。最も好ましくは、非水性溶媒はスルホンから選択される。好ましい非水性溶媒はスルホランである。
【0060】
吸収剤はまた、腐食防止剤、酵素、消泡剤などの添加剤を含んでもよい。一般に、そのような添加剤の量は、吸収剤の全重量に対して、約0.005~3重量%の範囲である。
【0061】
式(I)のアミンはそれ自体知られているか、または式(VII)
【化6】
のアルコールを、第1級アミンH
2N(CR
1R
1R
2)、たとえばtert-ブチルアミンと、水素の存在下における高温高圧で、適切なアミノ化触媒の存在下に反応させることにより合成することができる。
【0062】
同様に、(II)のアミンはそれ自体知られているか、または式(VIII)
【化7】
のアルコールを、第1級アミンH
2N(CR
1R
1R
2)、たとえばtert-ブチルアミンと、水素の存在下における高温高圧で、適切なアミノ化触媒の存在下に反応させることにより合成することができる。
【0063】
U-V-W、U’-V’-W’、R1、R2、R3、R4、R5およびxは、上記で定義されるとおりである。
【0064】
好ましくは、第一級アミンH2N(CR1R1R2)は、反応中に式(VII)または(VIII)のアルコールのモル量に対してモル過剰で使用される。好ましい実施形態では、第一級アミンのモル量は、アルコールの量に対して、反応の開始時にアルコールのモル量を5~5,000モル%、好ましくは50~1,000モル%だけ超える。
【0065】
好ましくは、反応は、水素化/脱水素化触媒の存在下、たとえば、銅含有水素化/脱水素化触媒の存在下で行われる。触媒は、支持体、たとえばアルミナ支持体に適用されてもよい。
【0066】
一実施形態では、担持された銅、ニッケルおよびコバルト含有水素化/脱水素化触媒が使用され、ここで、触媒活性材料は、水素による還元前に、アルミニウム、銅、ニッケルおよびコバルトの酸素化合物と、SnOとして計算される0.2~5.0重量%の範囲のスズの酸素化合物を含む。好ましい実施形態では、国際公開第2011/067199号において特許請求された触媒に従った触媒、特に国際公開第2011/067199号の実施例5に記載の触媒が使用される。
【0067】
触媒負荷量は、式(VII)または(VIII)のアルコール0.01~2kg/(L・h)の範囲で、好ましくは0.1~1.0kg/(L・h)の範囲で、特に好ましい実施形態では、0.2~0.8kg/(L・h)の範囲で変えることができる。
【0068】
好ましい実施形態では、反応は150℃~260℃の温度で行われる。特に好ましい実施形態では、反応は170℃~240℃の温度で行われる。最も好ましい実施形態では、反応は190℃~220℃の温度で実施される。
【0069】
反応は、液相または気相で、5~300barの圧力で行うことができる。好ましい実施形態では、反応は60~200bar(絶対)の圧力で行われる。特に好ましい実施形態では、反応は70~130bar(絶対)の圧力で行われる。
【0070】
反応は、撹拌槽型反応器、固定床管型反応器および多管式反応器を使用して行うことができる。反応は、粗製反応混合物の再循環の有無にかかわらず、バッチ、セミバッチおよび連続モードで行うことができる。好ましい実施形態では、反応は、固定床管型反応器中で連続モードで行われる。
【0071】
好ましい実施形態では、過剰の第一級アミンH2N(CR1R1R2)は、一段階蒸留によって反応の生成物から分離される。「一段階蒸留」という用語は、リボイラーで生成された蒸気が直ちに凝縮器に送られる単純な蒸留配置の場合のように、単一の分離段階のみを伴う蒸留を意味すると理解される。対照的に、精留塔は、たとえば、いくつかの分離段階を有し、分留を表す。好ましくは、分離された過剰の第一級アミンは、アミン(I)または(II)の更なる製造に再循環される。
【0072】
アミン(I)または(II)、アルコール(VII)または(VIII)および第一級アミンH2N(CR1R1R2)に加えて、反応生成物にはいくつかの他の物質が含まれている。通常、反応生成物は、水と副生成物、たとえばアルコール(VII)または(VIII)の誘導体を含む。
【0073】
好ましい実施形態では、水と副生成物は、反応の生成物から分離される。特に好ましい実施形態では、水と副生成物のほかに、上記の一段階蒸留後に反応生成物中にまだ残っている過剰の第一級アミンは、第2の一段階蒸留によって反応生成物から除去される。この工程は、約90mbaraの圧力で行われることが好ましい。この工程には、適切なリボイラーを適用することができる。流下膜式蒸発器または薄膜式蒸発器を使用することができる。特に、「Sambay」式蒸発器を使用した薄膜蒸発を適用してよく、生成されたガスは室温で凝縮される。
【0074】
後処理工程の後、得られた生成物は、本発明の吸収剤を得るために水と混合してよい。上記のように、更なる物質を追加してもよい。
【0075】
あるいは後処理工程の後、得られた生成物を、ガス洗浄プラントなどの酸性ガス吸収剤の利用場所に輸送し、現場で水と混合して、本発明の吸収剤を得ることができる。上記のように、更なる物質を現場で追加してもよい。
【0076】
さらに提供されるのは、硫化水素と二酸化炭素を含む流体流から二酸化炭素よりも硫化水素を選択的に除去する方法であって、流体流を、上記の実施形態のいずれかの吸収剤と接触させ、ここで、負荷された吸収剤と処理された流体流とが得られる。
【0077】
本文脈において、「二酸化炭素に対する硫化水素の選択性」とは、次の商の値を意味すると理解される:
【化8】
[式中、
【化9】
は、気相と接触している液相中でのH
2S/CO
2モル比であり、
【化10】
は、気相中でのH
2S/CO
2モル比である。標準的なガス洗浄プロセスでは、液相は、吸収装置の底部にある負荷された吸収剤であり、気相は、処理すべき流体流である。
【0078】
上記の商の値が1よりも大きい場合、プロセスはCO2よりもH2Sに対して選択的であると理解される。本プロセスにおいて、二酸化炭素に対する硫化水素の選択性は、好ましくは少なくとも1.1、さらにより好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4、たとえば少なくとも6である。
【0079】
本発明の吸収剤は、あらゆる種類の流体の処理に適している。流体はまず、天然ガス、合成ガス、コークス炉ガス、分解ガス、石炭ガス化ガス、サイクルガス、埋立地ガスおよび燃焼ガスなどのガスであり、次にLPG(液化石油ガス)またはNGL(天然ガス液体)などの吸収剤と本質的に不混和性の液体である。本発明の方法は、炭化水素質の流体流の処理に特に適している。存在する炭化水素は、たとえば、メタンなどのC1~C4炭化水素などの脂肪族炭化水素、エチレンもしくはプロピレンなどの不飽和炭化水素、またはベンゼン、トルエンもしくはキシレンなどの芳香族炭化水素である。
【0080】
吸収剤は、硫化水素と二酸化炭素を含む流体流から硫化水素を選択的に除去するのに適しており、低い溶媒循環速度で選択的に高いH2Sを浄化することが可能である。吸収剤は、硫黄プラントテールガス処理ユニット(TGTU)の用途、該処理ユニットからの希薄酸オフガスをより高品質なClausプラント供給へと移し換える酸性ガス濃縮(AGE)プロセスにおいて有用であるか、または関連するガスおよび製油所ガスの処理に有用である。
【0081】
H2Sの選択的除去(CO2の同時除去)に加えて、流体流中に存在する可能性がある更なる酸性ガス、たとえば、SO3、SO2、CS2、HCN、COSおよびメルカプタンも除去することができる。SO3とSO2は、アミンと熱安定性の塩を形成する傾向にあり、再生時にストリッピングされない。
【0082】
本発明の方法では、流体流を、吸収装置における吸収工程において吸収剤と接触させ、その結果、二酸化炭素と硫化水素が少なくとも部分的に洗浄除去される。これにより、CO2とH2Sが低下した流体流と、CO2とH2Sが負荷された吸収剤が生じる。
【0083】
使用される吸収装置は、慣例のガス洗浄プロセスで使用される洗浄装置である。適切な洗浄装置は、たとえば、不規則充填物、規則充填物を有する塔、棚段を有する塔、膜接触器、ラジアルフロースクラバー、ジェットスクラバー、ベンチュリスクラバーおよびロータリースプレースクラバー、好ましくは規則充填物を有する塔、不規則充填物を有する塔、棚段を有する塔、より好ましくは棚段を有する塔および不規則充填物を有する塔である。流体流は、好ましくは、塔内で向流にて吸収剤で処理される。一般に、流体は下部領域に供給され、吸収剤は塔の上部領域に供給される。棚段塔には、シーブ棚段、バブルキャップ棚段またはバルブ棚段が取り付けられており、この棚段に液体が流れる。不規則充填物を有する塔には、異なる成形体を充填することができる。熱移動および物質移動は、通常約25~80mmの大きさの成形体によって引き起こされる表面積の増加によって改善される。既知の例は、ラシヒリング(中空円筒体)、ポールリング、ハイフローリング、インタロックスサドルなどである。不規則充填物は、塔に順序付けて導入したり、あるいは無作為に(ベッドとして)導入したりすることもできる。可能な材料には、ガラス、セラミック、金属およびプラスチックが含まれる。規則充填物は、順序付けられた不規則充填物をさらに発展させたものである。それらは規則的な構造を有している。その結果、充填物の場合、ガス流の圧力降下を減少させることが可能である。規則充填物のさまざまな設計、たとえば、織物状充填物またはシートメタル充填物が存在する。使用される材料は、金属、プラスチック、ガラスおよびセラミックであり得る。
【0084】
吸収工程での吸収剤の温度は、一般に約30℃~100℃であり、塔が使用される場合は、たとえば、塔の上部で30℃~70℃、下部で50℃~100℃である。
【0085】
本発明の方法は、1つ以上、特に2つの連続吸収工程を含み得る。吸収は、複数の連続する成分工程で実施することができ、この場合、酸性ガス成分を含む粗製ガスが、各成分工程における吸収剤のサブストリームと接触させられる。粗製ガスが接触させられる吸収剤は、すでに酸性ガスが部分的に負荷されていてもよく、たとえば、下流の吸収工程から最初の吸収工程に再循環された吸収剤、または部分的に再生された吸収剤であってよい。二段階吸収の性能に関して、刊行物である欧州特許出願公開第0159495号明細書、欧州特許出願公開第0190434号明細書、欧州特許出願公開第0359991号明細書および国際公開第00100271号が参照される。
【0086】
当業者は、吸収工程における条件、たとえば、より具体的には、吸収剤/流体流の比、吸収装置の塔高さ、吸収装置内の接触促進内部構造物、たとえば不規則充填物、棚段もしくは規則充填物の種類、および/または再生された吸収剤の残留負荷量を変えることによって、所定の選択性で高レベルの硫化水素除去を達成することができる。
【0087】
CO2はH2Sよりもゆっくりと吸収されることから、より短い滞留時間におけるよりも長い滞留時間においてより多くのCO2が吸収される。したがって、滞留時間が長いと、H2S選択性が低下する傾向にある。したがって、より高い塔では選択吸収がより少なくなる。比較的高い液体滞留量を有する棚段または規則充填物の場合も同様に選択吸収がより少なくなる。再生に導入された加熱エネルギーは、再生された吸収剤の残留負荷量を調整するために使用することができる。再生された吸収剤の残留負荷量が低いほど、吸収の改善につながる。
【0088】
この方法は、好ましくは、CO2とH2Sが負荷された吸収剤を再生させる再生工程を含む。再生工程では、CO2とH2Sが負荷された吸収剤から、CO2とH2Sおよび場合により更なる酸性ガス成分が放出されることで、再生された吸収剤が得られる。好ましくは、再生された吸収剤は、続いて吸収工程に再循環される。一般に、再生工程は、加熱、減圧および不活性流体によるストリッピングのうちの少なくとも1つの手段を含む。
【0089】
再生工程は、好ましくは、たとえば、ボイラー、自然循環蒸発器、強制循環蒸発器または強制循環フラッシュ蒸発器による、酸性ガス成分が負荷された吸収剤の加熱を含む。吸収された酸性ガスは、溶液を加熱することによって得られた蒸気により除去される。蒸気ではなく、窒素などの不活性流体を使用することも可能である。脱着装置内の絶対圧力は、通常0.1bar~3.5bar、好ましくは1.0bar~2.5barである。温度は、通常50℃~170℃、好ましくは70℃~140℃、より好ましくは110℃~135℃である。再生温度は、再生圧力に依存する。
【0090】
再生工程は、代替的または追加的に減圧を含むことができる。これには、負荷された吸収剤を、吸収工程の処置において存在する高圧から、より低い圧力に少なくとも1回減圧することが含まれる。減圧は、たとえば、スロットルバルブおよび/または減圧タービンにより達成することができる。減圧段階を伴う再生は、たとえば、刊行物である米国特許第4537753号明細書および米国特許第4553984号明細書に記載されている。
【0091】
酸性ガス成分は、再生工程で、たとえば減圧塔、たとえば垂直または水平に設置されたフラッシュ容器、または内部構造を備えた向流塔で放出され得る。
【0092】
再生塔も同様に、不規則充填物を有する塔、規則充填物を有する塔、または棚段を有する塔であってよい。再生塔は、底部にヒーター、たとえば、循環ポンプを備えた強制循環蒸発器を有する。頂部では、再生塔は、放出される酸性ガス用の出口を有する。同伴された吸収媒体の蒸気は、凝縮器中で凝縮され、塔に再循環される。
【0093】
複数の減圧塔を直列に接続し、異なる圧力で再生を行うことが可能である。たとえば、再生は、予備減圧塔において、吸収工程における酸性ガス構成成分の分圧を典型的には約1.5bar上回る高い圧力で行い、主要減圧塔において、低い圧力、たとえば1~2bar(絶対圧)で行うことができる。2つ以上の減圧段階を伴う再生は、刊行物である米国特許第4537753号明細書、米国特許第4553984号明細書、欧州特許出願公開第0159495号明細書、欧州特許出願公開第0202600号明細書、欧州特許出願公開第0190434号明細書および欧州特許出願公開第0121109号明細書に記載されている。
【0094】
本発明を、添付の図面および以下の実施例によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】本発明の方法を実施するのに適したプラントの概略図である。
【
図2】酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性を示す図である。
【0096】
図1によれば、入口Zを介して、硫化水素と二酸化炭素を含む適切に前処理されたガスが、吸収装置A1において、吸収剤ライン1.01を介して供給される再生された吸収剤と向流で接触させられる。吸収剤は、吸収によってガスから硫化水素と二酸化炭素を除去する。これにより、オフガスライン1.02を介して硫化水素と二酸化炭素が減少したクリーンガスが得られる。
【0097】
吸収剤ライン1.03、熱交換器1.04(ここでは、CO2とH2Sが負荷された吸収剤が、吸収剤ライン1.05を通って導かれる再生された吸収剤からの熱で加熱される)、および吸収剤ライン1.06を介して、CO2とH2Sが負荷された吸収剤が、脱着塔Dに供給され、再生される。
【0098】
吸収装置A1と熱交換器1.04との間に、1つ以上のフラッシュ容器を設けることができ(
図1には図示せず)、ここでは、CO
2とH
2Sが負荷された吸収剤は、たとえば、3~15barまで減圧される。
【0099】
脱着塔Dの下部から、吸収剤はボイラー1.07に導かれ、そこで加熱される。発生した蒸気は、脱着塔Dに再循環され、その一方で、再生された吸収剤は、吸収剤ライン1.05、熱交換器1.04(ここでは、再生された吸収剤が、CO2とH2Sが負荷された吸収剤を加熱し、同時にそれ自体冷却する)、吸収剤ライン1.08、冷却装置1.09および吸収剤ライン1.01を介して吸収装置A1に返送される。図示されるボイラーの代わりに、自然循環蒸発器、強制循環蒸発器または強制循環フラッシュ蒸発器などの他のタイプの熱交換器をエネルギー導入に使用することも可能である。これらの蒸発器タイプの場合、再生された吸収剤と蒸気との混合相流が脱着塔Dの底部に戻され、ここで、蒸気と吸収剤との間の相分離が生じる。熱交換器1.04に向かう再生された吸収剤は、脱着塔Dの底部から蒸発器に向かう循環流から抜き出されるか、または脱着塔Dの底部から熱交換器1.04に直接向かう別個のラインを介して導かれる。
【0100】
脱着塔Dにおいて放出されたCO2とH2Sとを含むガスは、オフガスライン1.10を介して脱着塔Dを抜ける。それは一体化された相分離1.11を伴う凝縮器中に導かれ、ここで、同伴された吸収剤蒸気から分離される。本発明の方法を実施するのに適したこれと他のあらゆるプラントでは、凝縮と相分離が互いに別個に存在していてもよい。続いて、凝縮液は、吸収剤ライン1.12を通って脱着塔Dの上部領域に導かれ、CO2とH2Sとを含むガスがガスライン1.13を介して排出される。
【0101】
実施例の説明では、次の略語を使用した。
HEP:ヒドロキシエチルピロリドン
M3ETB:(2-(2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エトキシ)エチル)メチルエーテル
MDEA:メチルジエタノールアミン
TBA:tert-ブチルアミン
TBAEE:2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール
TBAEEM:tert-ブチルアミノエトキシエチルモルホリン
TBAEPY:1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン TBAEM:tert-ブチルアミノエチルモルホリン
【0102】
実施例1:1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン(TBAEPY)の合成
1-[2-(tert-ブチルアミノ)エチル]ピロリジン-2-オン(TBAEPY)の合成は、連続実験室用高圧プラントを使用して、ヒドロキシエチルピロリドン(HEP)とtert-ブチルアミン(TBA)とを反応させることにより行った。このプラントは、長さ100cmおよび内径12mmの2つの油加熱式反応器で構成されていた。反応器を直列に配置し、2つの液体供給用の高圧供給ポンプと水素用の高圧供給源に接続した。反応器の出口にRECOバルブを配置し、反応器中で保持するのに必要な圧力に設定した。粗製反応混合物を低圧相分離器に収集し、オフガスをドラフトチャンバーに接続した。
【0103】
各反応器は、(国際公開第2011/067199号、実施例5に従って得られた)Al2O3上のNi、Co、Cu、Snを含む不動態化された触媒グリットで満たされていた。この触媒は、次のように活性化した:触媒1L当たり10Lの水素を、周囲圧力で20時間260℃にて反応器に通した。次いで、圧力を70barに上げ、触媒1L当たり10標準リットルの水素流量および188℃の温度で、モル比3:1のTBAとヒドロキシエチルピロリドンとを反応器中にポンプで送り込んだ。ヒドロキシエチルピロリドンに対する反応器負荷量は、触媒0.2kg/L/hであった。約1,000gのHEPを、1,694gのTBAを使用してそのように変換した。粗製反応生成物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。生成物は、電子イオン化とイオンイオン化を使用したGC-MS(184amuでの分子量ピーク)により同定した。
【0104】
GC法:使用したカラムは、RTX5 Aminタイプ、長さ30m;直径0.32mm;層厚1.5μmであった。温度プログラム:60℃で注入、280℃まで4℃/分で直接温度勾配、次いで280℃で35分。
【0105】
生成物をGC-MSで分析し、電子および化学イオン化(それぞれEIおよびCI)を使用して質量スペクトルを記録した。EIの条件:質量範囲:25~785amu;イオン化エネルギー:70eV。CIの条件:質量範囲:50~810amu。
【0106】
HEPの変換率は73.6%で、TBAEPYの選択率は96.8%であった。過剰のTBAを最初にロータリーエバポレーターで除去し、次いで生成物を1mbarにて30cmのカラムでの蒸留によって単離した。沸点は1mbarで146℃であった。蒸留後のGCによる純度は>99%であった。
【0107】
以下に、電荷で除算した正確な質量と、括弧内の最も強いシグナルに対する強度とを用いてピークを示す。さらに、可能な場合、分子フラグメントをピークに割り当てる。m/z=184(<1%,M+);169(20%);127(15%);112(100%,M-HN-C3H9);99(58%,M-C4H6NO+H);98(25%);86(72%);84(37%,M-CH2CH2-NC3H9);70(17%,M-NCH2CH2NHC4H9);69(20%);57(40%,C4H9
+);56(13%);44(17%);43(17%);42(25%);41(36%);30(96%)。
【0108】
予想されるモルピークM+が見出された。構造は、フラグメンテーションパターンによって確認した。
【0109】
実施2:pKA値
MDEAおよびTBAPDのpKa値を、滴定により測定した。アミン濃度0.005モル/Lのアミンの水溶液を使用し、20℃にて塩酸水溶液(0.1モル/L)で滴定した。
【0110】
【0111】
TBAEPYは、MDEAよりも高いpKA値を示す。吸収工程に存在するような比較的低い温度(たとえば20℃)での高いpKA値は、酸性ガスの効率的な吸収を促進すると考えられる。
【0112】
実施例3:負荷容量およびサイクル容量
負荷量の実験と、次いでストリッピングの実験を実施した。
【0113】
5℃で動作させるガラスコンデンサーを、サーモスタット付きジャケットを備えたガラスシリンダーに取り付けた。これにより、吸収剤の部分蒸発による試験結果のゆがみを防止した。ガラスシリンダーに、最初に約100mLの無負荷の吸収剤(水中のアミン30重量%)を入れた。吸収容量を測定するために、周囲圧力および40℃にて、8L(STP)/hのCO2またはH2Sをフリット経由で約4時間かけて吸収液に通過させた。続いて、CO2またはH2Sの負荷量を次のように測定した。
【0114】
H2Sの測定は、硝酸銀溶液を用いた滴定により行った。このために、分析すべきサンプルを、約2重量%の酢酸ナトリウムおよび約3重量%のアンモニアと一緒に水溶液に計量した。続いて、硝酸銀による電位差転換点滴定によってH2S含有量を測定した。転換点で、H2SはAg2Sとして完全に結合される。CO2含有量は、全無機炭素(島津社のTOC-Vシリーズ)として測定した。
【0115】
負荷溶液のストリッピングは、同一の装置セットアップを80℃に加熱し、負荷吸収剤を導入し、N2流(8L(STP)/h)を用いてそれをストリッピングすることにより行った。60分後、サンプルを採取し、吸収剤のCO2またはH2Sの負荷量を上記のように測定した。
【0116】
負荷実験の終了時の負荷量とストリッピング実験の終了時の負荷量との差により、それぞれのサイクル容量が得られる。
【0117】
結果を表1に示す。水性TBAEPYは、既知の適切なH
2S選択性吸収剤と同様のCO
2およびH
2S負荷容量を有する。
【表2】
【0118】
実施例4:揮発性
30重量%水溶液中のいくつかのアミンの揮発性を試験した。
【0119】
ガラスコンデンサーで得られた凝縮物をガラスコンデンサーに戻さず、ガスクロマトグラフィーとカールフィッシャー滴定により実験を終了した後に分離して組成を分析した以外は、実施例3と同じ装置を使用した。ガラスシリンダーを50℃に調整し、それぞれの場合において200mLの吸収剤を導入した。8時間の実験期間にわたって、周囲圧力で30L(STP)/hのN2を吸収剤に通過させた。
【0120】
実験は3回繰り返した。得られた平均値を次の表に示す:
【表3】
【0121】
TBAEPYの揮発性が、M3ETB、TBAEE、MDEAおよびTBAEMに比べて低く、TBAEEMに匹敵することは明らかである。
【0122】
実施例5:相分離
臨界溶液温度を測定するために、混和性ユニットを使用した。このユニットにより、相分離が発生する温度(「臨界溶液温度」)の測定が可能になる。
【0123】
混和性ユニットは、圧力計と熱電対を備えたサイトグラス容器で構成されていた。ヒーターを使用して、容器に熱を供給した。140℃の温度まで測定が可能であった。可能な相分離は、サイトグラスを介して視覚的に観察することができた。以下の表に、異なる水性アミン混合物について測定された臨界溶液温度を示す。
【表4】
【0124】
TBAEPYを含む水溶液が、比較例よりも高い臨界溶液温度を有していることは明らかである。
【0125】
実施例6:CO2に対するH2Sの選択性
実験は、ガスをアップフローモードで供給することができる撹拌オートクレーブと凝縮器を含む吸収ユニット(セミバッチ系)で行った。オートクレーブには、圧力計とJ型熱電対が備わっていた。安全破裂板がオートクレーブヘッドに取り付けられていた。高ワット数のセラミックファイバーヒーターを使用して、オートクレーブに熱を供給した。ガス流はマスフローコントローラー(Brooks Instrument製)によって制御し、凝縮器の温度はチラーによって維持した。最大使用圧力と温度は、それぞれ1000psi(69bar)と350℃であった。
【0126】
大気圧での運転中、オートクレーブの底部に取り付けられたpHプローブ(Cole-Parmer製)を使用することによって、溶液のpHをその場でモニターした。このpHプローブは、それぞれ135℃と100psiの最高温度と圧力の制限を受けていた。したがって、大気圧を超える圧力(「より高い圧力」)で実験を行う前に、pHプローブを取り外し、オートクレーブに蓋をした。両方の場合(大気圧とより高い圧力)において、液体サンプルは、バイアル(大気圧)または苛性アルカリが充填されたステンレス鋼製シリンダー(より高い圧力)をサンプリングシステムに直接取り付けて収集した。特別に設計されたLabVlEWプログラムを使用して、吸収ユニットの操作を制御し、温度、圧力、撹拌速度、pH(大気圧)、ガス流量およびオフガス濃度などの実験データを取得した。
【0127】
実施例で使用したガス混合物は、次の特性を有していた:
ガス供給組成:CO2 10モル%、H2S 1モル%、N2 89モル%
ガス流量:154SCCM
温度:40.8℃
圧力:1bar
容量:15mL(τ=0.1分)
撹拌速度:200rpm
【0128】
実験は、上記で指定されたガス混合物をオートクレーブに通して流すことによって実施した。オートクレーブには、それぞれのアミン水溶液(アミン濃度:2.17M)があらかじめ入れられていた。酸性ガス混合物を反応器の底部に供給した。同伴されたいかなる液体も除去するために、オートクレーブを抜けるガスを凝縮器に通し、これを10℃に保った。凝縮器を抜けるオフガスのスリップ流を、分析のためにマイクロガスクロマトグラフ(micro-gas-phase chromatograph)(Inficon製マイクロGC)に供給し、メインガス流はスクラバーを通過した。破過点に達した後、窒素を使用して系をパージした。
【0129】
オフガスのスリップ流は、特注のマイクロGCを使用して分析した。マイクロGCは製油所ガス分析装置として構成され、4つの塔(モレキュラーシーブ、PLOT U、OV-1、PLOT Q)[Aglient社]と4つの熱電子捕獲型検出器を含んでいた。オフガスの一部を約2分毎にマイクロGCに注入した。小型の内部真空ポンプを使用して、サンプルをマイクロGCに移した。サンプルティーとマイクロGCとの間で10倍のラインフラッシュ量を達成するために、公称ポンプ速度は約20mL/分であった。マイクロGCに注入された実際のガス量は約1μLであった。PLOT U塔を使用してH2SとCO2を分離し、同定し、マイクロTCDを使用してそれらを定量した。
【0130】
酸性ガス負荷量の関数としてのCO
2に対するH
2Sの選択性を決定した。結果を
図2に示す。
【0131】
本明細書で使用される「酸性ガス負荷量」という用語は、アミン1モル当たりのガスのモル量で表される、吸収剤溶液に物理的に溶解および化学的に結合されたH2SとCO2のガス濃度を表す。
【0132】
水性TBAEPY(2.17M)の最大選択性は、約0.15モルの負荷量で約13.0であり、H2SおよびCO2の負荷がより高くなると低下する。この値は、TBAEEM水溶液、M3ETB水溶液、TBAEE水溶液、MDEA水溶液の最大選択性よりも有意に高いものである。