IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7101765生体応用向けの自立膜を作製するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】生体応用向けの自立膜を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220708BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220708BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20220708BHJP
【FI】
C12M1/00 A
B82Y40/00
B82Y5/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020516550
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 US2018050383
(87)【国際公開番号】W WO2019060168
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】62/561,976
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/122,171
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴォラ, アンキット
(72)【発明者】
【氏名】大野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, フィリップ アレン
(72)【発明者】
【氏名】ヘサビ, ゾフレ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, ジョセフ アール.
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0042971(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0021204(US,A1)
【文献】特開2010-269304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0108068(US,A1)
【文献】Lab on a Chip,2015年,Vol.15, No.6,pp.1407-1411
【文献】Nanotechnology,2014年,Vol.25, No.35, 355302,pp.1-8
【文献】Nano Letters,2014年,Vol.14, No.1,pp.244-249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を形成するための方法であって、
高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、
前記高度にエッチング可能な層の上の前記薄膜を通して、一又は複数のナノポアを形成することと、
自立膜を形成するために、前記高度にエッチング可能な層の、前記一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することと、
一又は複数の追加の層を前記薄膜の上に堆積することと、
前記薄膜上の、前記一又は複数のナノポアに隣接していない位置に第1電極を設置することと、
ナノポア開口に隣接して前記薄膜上に第2電極を設置することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去することが、
エッチングチャンバ内に前記基板を配置することと、
前記エッチングチャンバに、前記高度にエッチング可能な層を除去するように選択されたエッチャントを導入することと、
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去するために、前記基板を前記エッチャントに曝露することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自立膜が誘電体膜であり、前記高度にエッチング可能な層がシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記自立膜の少なくとも一方の側に生体試料を載置することと、
前記自立膜における前記一又は複数のナノポアを通るように前記生体試料を導くことによって、前記生体試料を解析することとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一又は複数のナノポアの各々の直径が約100ナノメートル以下であり、前記自立膜の厚さが約50ナノメートル以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基板を形成するための方法であって
記基板は、
第1シリコン層と、
前記第1シリコン層の上に配置された誘電体層と、
前記誘電体層の一部の上に配置された第2シリコン層と、
前記第2シリコン層の上に配置された自立膜であって、少なくとも1つのナノポアと、当該ナノポアを通るように形成された少なくとも1つの開口とを有する自立膜と、
前記少なくとも1つのナノポアの下方に配置された第1ウェルと
前記少なくとも1つのナノポアの上方に配置された第2ウェルとを備えるものであり、
高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、
ポア径縮小プロセスを使用して、前記高度にエッチング可能な層の上の前記薄膜を通し
て、前記少なくとも1つのナノポアを形成することと、
薄型の自立膜を形成するために、前記高度にエッチング可能な層の、前記少なくとも1つのナノポアの下の部分を選択的に除去することと、
一又は複数の追加の層を前記薄膜の上に堆積することと、
前記薄膜上の、前記少なくとも1つのナノポアに隣接していない位置に第1電極を設置することと、
ナノポア開口部に隣接して前記薄膜上に第2電極を設置することと、
とを含む方法。
【請求項7】
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去することが、
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去するために選択されたエッチャントに、前記基板を曝露することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記自立膜の少なくとも一方の側に生体試料を載置することと、
前記自立膜における前記少なくとも1つのナノポアを通るように前記生体試料を導くことによって、前記生体試料を解析することとを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポア径縮小プロセスが、
前記薄膜に少なくとも1つの第1フィーチャを形成することと、
前記第1フィーチャ内に、少なくとも第1ドメイン及び第2ドメインを備えるブロックコポリマーを堆積させることと、
前記第2ドメインをエッチングすることとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ポア径縮小プロセスが、
前記薄膜に少なくとも1つの第1フィーチャを形成することと、
前記少なくとも1つの第1フィーチャの上に誘電体材料を堆積させることと、
前記少なくとも1つの第1フィーチャの上の前記誘電体材料の一部分をエッチングすることとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記誘電体材料を堆積させることと、前記誘電体材料の前記部分をエッチングすることとを、少なくとも1つのナノポアが形成されるまで反復することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1ウェルと前記第2ウェルの少なくとも一方の中にDNA含有流体を備え、前記少なくとも1つのナノポアの各々の直径が約100ナノメートル以下であり、前記自立膜の厚さが約50ナノメートル以下である、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書で開示している態様は、指向性自己集合を使用して、適切に制御されたナノポアを製造する方法、及び選択的エッチングを使用して自立膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
ナノポアは、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)のシークエンシング(sequencing)といった応用向けに、広く使用されている。一例では、ナノポアシークエンシングは、電気的検出法を使用して実施され、この電気的検出法は、一般に、導電性流体に浸漬されているナノポアを通して未知の試料を搬送すること、及びナノポアの両端間に電位を印加することを含む。ナノポアを通るイオン伝導から生じる電流が測定される。ナノポア表面全体における電流密度の大きさは、ナノポア寸法、及び当該時点でナノポアを占有している試料(DNA又はRNAなど)の組成に依存する。種々のヌクレオチドは、ナノポア表面全体における電流密度に特徴的な変化を引き起こす。かかる電流変化は、測定され、DNA又はRNAの試料をシークエンシングするために使用される。
【0003】
生体に関するシークエンシングには、様々な方法が使用されてきた。どの塩基がDNAの一本鎖に付着したかを特定するためには、合成によるシークエンシング、又は第2世代シークエンシングが使用される。DNAを直接読み取るためには、第3世代シークエンシング(一般に、単一のポアを通してDNA鎖全体をスレディング(threading)することを含む)が使用される。一部のシークエンシング方法では、DNA又はRNAの試料を切断してから再構築することが必要になる。加えて、一部のシークエンシング方法は生体膜及び生体ポアを使用するが、これらは保管寿命を有しており、使用前には冷蔵されている必要がある。
【0004】
最近では、固体状態ナノポア(窒化ケイ素又は酸化ケイ素などの自立膜上に形成されたナノメートルサイズのポア)が、シークエンシングに使用されている。しかし、固体状態ナノポアの既存の製造方法(トンネル電子顕微鏡、集束イオンビーム、又は電子ビームを使用するものなど)は、ナノポアのアレイを製造するために必要な、サイズ及び位置の制御要件を、容易かつ安価に満たすことが可能ではない。加えて、既存のナノポア製造方法は時間のかかるものである。更に、自立膜の既存の製造方法は、手作業であり、時間と費用がかかる上に、DNA又はRNAのシークエンシングに最適な薄さを有する自立膜を反復的に形成するために有効に使用されることが可能ではない。
【0005】
したがって、生体応用のための、適切に制御されたナノポア及び自立膜を製造する改良型の方法が、当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
指向性自己集合を使用して、適切に制御されたナノポアを製造する方法、及び選択的エッチングを使用して自立膜を製造する方法が、開示される。一態様では、フィーチャの限界寸法を縮小するために、一又は複数のナノポアが、ブロックコポリマーを用いて、直接自己集合により形成される。フィーチャはその後、薄膜に転写される。別の態様では、方法は、高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、高度にエッチング可能な層の上の薄膜を通して、一又は複数のナノポアを、例えばポア径縮小プロセスによって形成することと、次いで、薄型の自立膜を形成するために、高度にエッチング可能な層の、一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することとを、含む。
【0007】
一態様では、基板を形成するための方法が提供される。この方法は、高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、高度にエッチング可能な層の上の薄膜を通して、一又は複数のナノポアを形成することと、薄型の自立膜を形成するために、高度にエッチング可能な層の、一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することとを、含む。
【0008】
別の態様では、基板を形成するための方法が提供される。この方法は、高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、高度にエッチング可能な層の上の薄膜を通して、一又は複数のナノポアを形成することであって、薄膜に少なくとも1つの第1フィーチャを形成することを含む、一又は複数のナノポアを形成することと、第1フィーチャ内に、少なくとも第1ドメイン及び第2ドメインを備えるブロックコポリマーを堆積させることと、第2ドメインをエッチングすることと、薄型の自立膜を形成するために、高度にエッチング可能な層の、一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することとを、含む。
【0009】
更に別の態様では、基板が開示される。この基板は、第1シリコン層と、第1シリコン層の上に配置された誘電体層と、誘電体層の一部分の上に配置された第2シリコン層と、第2シリコン層の上に配置された自立膜であって、少なくとも1つのナノポア、及びこのナノポアを通るように形成された少なくとも1つの開口を有する自立膜と、少なくとも1つのナノポアの下方に配置された第1ウェルと、少なくとも1つのナノポアの上方に配置された第2ウェルとを、含む。
【0010】
上述した本開示の特徴を詳しく理解しうるように、上記で簡単に要約した本開示のより詳細な説明が、態様を参照することによって得られる。かかる態様の一部を、付随する図面に示している。しかし、付随する図面は、例示的な態様のみを示しており、したがって、態様の範囲を限定すると見なされるべきではなく、他の等しく有効な態様も許容しうることに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】生体応用向けの自立膜を有する基板を形成するための方法の、プロセスフロー図である。
図2A】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2B】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2C】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2D】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2E】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2F】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2G】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2H】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2I】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2J】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
図2K】自立膜を有する基板の断面図が描かれており、本書で開示されているプロセスにより、一又は複数のナノポアが自立膜を通って形成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするために、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに、可能であれば、同一の参照番号を使用した。一態様の要素及び特徴は、更なる記載がなくとも、他の態様に有益に組み込まれうると想定される。
【0013】
指向性自己集合を使用して、適切に制御されたナノポアを製造する方法、及び選択的エッチングを使用して自立膜を製造する方法が、開示される。一態様では、フィーチャの限界寸法を縮小するために、一又は複数のナノポアが、ブロックコポリマーを用いて、直接自己集合により形成される。フィーチャはその後、薄膜に転写される。別の態様では、方法は、高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、高度にエッチング可能な層の上の薄膜を通して、一又は複数のナノポアを、例えばポア径縮小プロセスによって、形成することと、次いで、薄型の自立膜を形成するために、高度にエッチング可能な層の、一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することとを、含む。
【0014】
本書に記載の方法は、一例として、半導体基板上にナノポアを形成することに言及している。記載されている方法は、別のポア様構造物を、固体状態の生体物質を含む様々な材料上に形成するのに有用であるとも想定される。本書に記載の方法は、例として一又は複数のトレンチ又はチューブの形成に言及しているが、その他のエッチングされたフィーチャ、及びそれらの任意の組合せも想定される。例示のために、酸化ケイ素層を有するシリコンオンインシュレータ(SOI)基板について説明しているが、任意の好適な基板材料及び誘電体材料も想定される。加えて、本書に記載の方法は、基板の上面及び裏面に言及している。上面と裏面は、一般に基板の両側のことであり、必ずしも上向き又は下向きの配向を指すわけではない。
【0015】
図1は、生体応用のための自立膜を有する基板を形成するための方法100のプロセスフローである。
【0016】
方法100に先だって、基板は処理される。基板のシリコン層の上に薄膜が堆積される。方法100は、工程110において、シリコン層の上に薄膜を有している基板を提供することによって始まる。工程120において、一又は複数のナノポアが、シリコン層の上の薄膜を通るように形成される。薄型自立膜を形成するために、工程130において、シリコン層の、一又は複数のナノポアの下の部分が選択的にエッチングされる。
【0017】
基板は、一般に、ドープされた又はドープされていないシリコン(Si)基板といった、任意の好適な基板である。基板の上面の上に堆積される薄膜は、一般に、任意の好適な薄膜である。薄膜は、一般に、原子層堆積(ALD)、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、及び電子ビーム堆積(EBD)を含むがこれらに限定されるわけではない、任意の好適な堆積プロセスによって堆積され、かつ任意の好適な厚さ(例えば約10ナノメートル(nm)未満、約5nm未満、約2nm未満、又は約1nm未満)のものである。一又は複数のナノポアは、一般に、任意の好適な技法によって形成される。以下の図2Aから図2Kについての説明において、一又は複数のナノポアは、一例として、ブロックコポリマーの指向性自己集合を使用して形成される。一又は複数のナノポアは、シーム利用(seam exploitation)、又は周期的ALD及びRIEエッチング、並びに絶縁破壊を含むが、これらに限定されるわけではない、他の好適な方法によって形成されることも想定される。
【0018】
図2Aから図2Kには、本書で開示されているプロセスフローによる(例えば方法100の様々な段階における)、自立膜であって、一又は複数のナノポアがそれを通っている自立膜を有する、基板200の断面図が描かれている。
【0019】
図2Aに示しているように、第1Si層202の上に、誘電体層(例えば酸化物層204)が成長するか、形成されるか、又は別様に堆積される。次いで、図2Bに示しているように、酸化物層204の上に第2Si層206が堆積されて、シリコンオンインシュレータ(SOI)基板が作製される。第2Si層206の厚さは、一般に、任意の好適な厚さ(例えば約0.5nmと約200nmとの間、例としては約80nm、又はの約1ミクロン(μm)と約10μmとの間、例としては約5μm)である。
【0020】
次いで、図2Cに示しているように、第2Si層206の上に薄膜208が堆積される。薄膜208は、一般に、ALDを含むがこれに限定されるわけではない、任意の好適な堆積プロセスによって堆積され、かつ一般に、約60ナノメートル未満、約5nm未満、約2nm未満、又は約1nm未満の厚さを有する。図2Cの例では、薄膜208は酸化ケイ素(SiO)膜である。
【0021】
薄膜208は、図2Dに示しているように、少なくとも1つの第1フィーチャ210(1つを図示している)、及び一又は複数の第2フィーチャ212(2つを図示している)を有するようにパターニングされる。パターニングは、一般に、標準的なリソグラフィにより実現される。図2Dの例では、第1フィーチャ210は、第1の幅又は直径を有し、第2フィーチャ212は第2の幅又は直径を有する。第1フィーチャ210は、図2Dの部分拡大図である図2Eに示しているように、一又は複数の側壁214と、第2Si層206の第1表面に対応する底部216とを含む。第1の幅又は直径は、一般に、約10ナノメートル(nm)と約100nmとの間(例えば約20nmと約60nmとの間、例えば約35nmと約50nmとの間、例としては約50nm)である。第2の幅又は直径は、一般に、約0.5μmと約10μmとの間(例えば約1μm)である。
【0022】
ブロックコポリマー218が、図2Fに示しているように、第1フィーチャ210内に堆積される。ブロックコポリマー218は、一般に、複数のドメインに相分離されたコポリマーからなる。図2Fに示しているように、ブロックコポリマー218は、Aドメイン220とBドメイン222とに相分離される。Aドメイン220は、Bドメイン222を環状に取り巻いている。Bドメイン222は、一般に、第1フィーチャ210の中心に位置しているか、又は中心付近にある。次いで、図2Gに示しているように、Bドメイン222が選択的にエッチングされる。これ以前に、第1フィーチャ210は、第1フィーチャ210の底部に誘電体層が残存するようにエッチングされている。残りのブロックコポリマー218は、誘電体層224のエッチングのためのハードマスクとして機能する。ゆえに、図2Hに示しているように、誘電体層224を通るようにナノポア226が形成される。
【0023】
上述したように、図2Aから図2Hは、薄膜208を通してナノポア226を形成する一例を示している。本書では、ナノポア226を形成するための好適な方法は全て想定される。例えば、ナノポアは、別のポア経縮小プロセス(例えば、周期的原子層堆積若しくは化学気相堆積と誘電体材料のエッチング、又は、誘電体材料を形成するための基板の酸化と、ナノポアの形成のための脆弱点若しくはシームにおける誘電体材料の破壊)によって、形成されてもよい。一部の態様では、堆積とエッチングの1つのフルサイクルが、適切に制御されたナノポアを形成するのに適することになるが、他の態様では、形成されるナノポアのサイズに応じて、サイクルを複数回反復することが、適切に制御されたナノポアを形成するのに適することになる。
【0024】
ナノポア226のサイズ(すなわち直径)は約100nm以下である。一態様では、ナノポア226のサイズは、約1nmと約10nmとの間(例えば約2nmと約3nmと間、例としては約2nm)である。別の態様では、ナノポア226のサイズは、約0.5nmと約5nmとの間(例えば約1nmと約3nmとの間、例としては2nm)である。別の態様では、ナノポア226のサイズは、約1.5nmと約1.8nmとの間(例えば約1.6nm)であり、これはDNAの一本鎖のおおよそのサイズである。別の態様では、ナノポア226のサイズは、約2nmと約3nmとの間(例えば約2.8nm)であり、これは二本鎖DNAのおおよそのサイズである。
【0025】
ナノポア226が形成された後、図2Jに示しているように、第2Si層206の、ナノポア226及び一又は複数の第2フィーチャ212の下の部分を除去するために、選択的エッチングプロセスが使用される。第2Si層206のこの部分を選択的にエッチングすることは、一般に、エッチングチャンバ内に基板200を配置することと、シリコンを除去するように選択されたエッチャントを導入することと、基板200をシリコンエッチャントに曝露して、第2Si層206のこの部分を除去することとを、含む。例えば、原子レベルの精度で第2Si層206を除去するための、微調整可能な選択性を付与するために、ラジカルベースの化学作用が使用される。選択されたエッチャント及びラジカルは、薄膜208の上の第2Si層を選択的にエッチングする。例えば、SiOとSiの選択的エッチング比は約1:2000となる。選択的エッチングを実施するためのチャンバの一例は、カリフォルニア州Santa ClaraのApplied Materials, Inc.から入手可能なProducer(登録商標)Selectra(商標)エッチングチャンバである。
【0026】
上記の例は、Si層206を選択的にエッチングすることを想定しているが、エッチングされる層は、一般に、任意の好適な高度にエッチング可能な層であると想定される。
【0027】
第2Si層206の一部分が選択的にエッチングされると、図2Jに示しているように、薄膜208から自立膜240が形成される。自立膜240は少なくとも1つのナノポア226と一又は複数の開口とを含み、そこにおいて第2Si層206の上に一又は複数の第2フィーチャ212が形成される。自立膜240は薄型である(例えば約50ナノメートル以下であり、例としては、約10nm未満、約5nm未満、約2nm未満、又は約1nm未満である)。自立膜240は、任意の好適な材料(薄型誘電体膜など)である。
【0028】
自立膜240を形成するための本開示の方法においては、更なる基板処理がオプションで実施される。例えば、追加の層228(例えば窒化ケイ素(SiN)層)が、自立膜240の一又は複数の部分の上に形成される。加えて、正電極230及び負電極232が、自立膜240の一又は複数の部分上に堆積され、ひいては、生体応用(DNAシークエンシングなど)に適した半導体基板が形成される。DNAシークエンシングの例では、第1ウェルが自立膜240の一方の側に形成され、第2ウェルが自立膜240の他方の側に形成される。一態様では、DNAを含有する溶液が第1ウェル内に配置され、DNAを有さない溶液が第2ウェル内に配置される。DNAは、負に帯電しているので、電流に従って、第1ウェルからナノポア226を通り、第2ウェルに移動することになる。DNAは、ナノポア226を通って移動する際に、ナノポア226を通過する電流を遮り、この電流の変化が測定される。これにより、例えばナノポア226を通って移動する塩基が特定されることによって、DNAがシークエンシングされうる。別の態様では、追加的又は代替的に、DNAを含有する溶液が第2ウェル内に配置される。
【0029】
図2Aから図2Kには、一例として、複数の工程の一シーケンスによるプロセスフローの様々な段階が描かれている。本書に記載の、図2Aから図2Kに図示されている工程は、任意の好適な順序で実行されうると想定される。例えば、更なる実施形態では、第2Si層206の一部分は、ナノポア226が保護されている間に選択的にエッチングされてよく、次いで、選択的エッチングが完了すると、ナノポア226は保護されなくなりうる。
【0030】
本開示の利点は、適切に制御されたナノポア及びナノポアアレイであって、一般に個別にアドレス可能な(addressable)ナノポア及びナノポアアレイを、迅速に形成する能力を含む。開示されている方法は、一般に、サイズ及び位置が適切に制御された、薄膜を通るナノポアを提供する。サイズが適切に制御されたナノポアを製造する方法は、信号対ノイズ比を向上させる。ナノポアのサイズは、ナノポアを通じて運ばれる試料(DNAの一本鎖など)のサイズに類似しており、これにより、ナノポアを通過する電流の変化が増大するからである。加えて、適切に制御された位置を有するナノポアを製造する方法は、試料(DNAなど)がナノポアを自由に通過することを可能にする。
【0031】
本書に記載の方法は、更に、生体応用(DNAシークエンシングなど)向けの自立膜であって、薄型(例えば1nm以下)であり、誘電性であり、生理食塩水(KCl)に対する化学的耐性を有し、エッチングプロセスの化学作用に対する高い選択性を有し、物理的及び電気的にピンホールがなく、応力が低く、かつ湿潤性(wettable)である、自立膜を提供する。自立膜が薄ければ薄いほど、ナノポアのエッジの周囲に電界がより一層集中する。ゆえに、本書に記載の方法に従って製造される自立膜が薄くなることで、生体応用(DNA塩基の識別など)に使用される際の、高い信号対ノイズ比が可能になる。
【0032】

以上の説明は本開示の態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱しなければ、本開示の他の態様及び更なる態様が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決まる。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
基板を形成するための方法であって、
高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、
前記高度にエッチング可能な層の上の前記薄膜を通して、一又は複数のナノポアを形成することと、
自立膜を形成するために、前記高度にエッチング可能な層の、前記一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することとを含む、
方法。
(態様2)
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去することが、
エッチングチャンバ内に前記基板を配置することと、
前記エッチングチャンバに、前記高度にエッチング可能な層を除去するように選択されたエッチャントを導入することと、
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去するために、前記基板を前記エッチャントに曝露することとを含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記自立膜が誘電体膜であり、前記高度にエッチング可能な層がシリコンを含む、態様1に記載の方法。
(態様4)
前記自立膜の少なくとも一方の側に生体試料を載置することと、
前記自立膜における前記一又は複数のナノポアを通るように前記生体試料を導くことによって、前記生体試料を解析することとを更に含む、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記一又は複数のナノポアの各々の直径が約100ナノメートル以下であり、前記自立膜の厚さが約50ナノメートル以下である、態様1に記載の方法。
(態様6)
基板を形成するための方法であって、
高度にエッチング可能な層の上に薄膜を有している、基板を提供することと、
ポア径縮小プロセスを使用して、前記高度にエッチング可能な層の上の前記薄膜を通して、一又は複数のナノポアを形成することと、
薄型の自立膜を形成するために、前記高度にエッチング可能な層の、前記一又は複数のナノポアの下の部分を選択的に除去することとを含む、
方法。
(態様7)
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去することが、
前記高度にエッチング可能な層の前記部分を選択的に除去するために選択されたエッチャントに、前記基板を曝露することを含む、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記自立膜の少なくとも一方の側に生体試料を載置することと、
前記自立膜における前記一又は複数のナノポアを通るように前記生体試料を導くことによって、前記生体試料を解析することとを更に含む、態様6に記載の方法。
(態様9)
前記ポア径縮小プロセスが、
前記薄膜に少なくとも1つの第1フィーチャを形成することと、
前記第1フィーチャ内に、少なくとも第1ドメイン及び第2ドメインを備えるブロックコポリマーを堆積させることと、
前記第2ドメインをエッチングすることとを含む、態様6に記載の方法。
(態様10)
前記ポア径縮小プロセスが、
前記薄膜に少なくとも1つの第1フィーチャを形成することと、
前記少なくとも1つの第1フィーチャの上に誘電体材料を堆積させることと、
前記少なくとも1つの第1フィーチャの上の前記誘電体材料の一部分をエッチングすることとを含む、態様6に記載の方法。
(態様11)
前記誘電体材料を堆積させることと、前記誘電体材料の前記部分をエッチングすることとを、少なくとも1つのナノポアが形成されるまで反復することを更に含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記ポア径縮小プロセスが、
前記薄膜に少なくとも1つの第1フィーチャを形成することと、
前記基板の上に誘電体材料を形成して、少なくとも1つの開口を充填するために、基板を酸化させることであって、前記誘電体材料には少なくとも1つのシームが形成されている、基板を酸化させることと、
少なくとも1つのナノポアを形成するために、前記少なくとも1つのシームを利用することとを含む、態様6に記載の方法。
(態様13)
前記薄膜の上に一又は複数の追加の層を堆積させることと、
前記薄膜の上に正極及び負極を堆積させることとを更に含む、態様6に記載の方法。
(態様14)
第1シリコン層と、
前記第1シリコン層の上に配置された誘電体層と、
前記誘電体層の一部分の上に配置された第2シリコン層と、
前記第2シリコン層の上に配置された自立膜であって、少なくとも1つのナノポア、及び前記ナノポアを通るように形成された少なくとも1つの開口を有する自立膜と、
前記少なくとも1つのナノポアの下方に配置された第1ウェルと、
前記少なくとも1つのナノポアの上方に配置された第2ウェルとを備える、
基板。
(態様15)
前記第1ウェルと前記第2ウェルの少なくとも一方の中にDNA含有流体を備え、前記少なくとも1つのナノポアの各々の直径が約100ナノメートル以下であり、前記自立膜の厚さが約50ナノメートル以下である、態様14に記載の基板。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K