(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】有機溶媒含有混合溶液から有機溶媒を分離する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/00 20060101AFI20220708BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20220708BHJP
C08F 236/06 20060101ALI20220708BHJP
C08F 136/06 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
B01D3/00 B
C08F212/08
C08F236/06
C08F136/06
(21)【出願番号】P 2020560776
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 KR2019014390
(87)【国際公開番号】W WO2020091391
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133010
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コ、チュン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ホイ-イン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、トン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ス-チ
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-122002(JP,A)
【文献】特開2001-300206(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0079701(KR,A)
【文献】特表2010-536945(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0141872(KR,A)
【文献】特表2016-530088(JP,A)
【文献】特表2006-520785(JP,A)
【文献】特開2015-100724(JP,A)
【文献】特表2018-510758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 3/00 - 3/42
1/00 - 1/30
17/00 - 17/12
C08F 6/00 - 246/00
301/00
C08J 11/00 - 11/28
C02F 1/02 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-1)第1蒸留塔に、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する過程と、
1-2)第2蒸留塔に、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する過程と、を互いに独立して行うステップと、および
2)前記第1分画と前記第2分画を第3蒸留塔に投入し、塔頂から有機溶媒リッチ分画を回収し、塔底から前記高沸点化合物Aおよび前記高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を回収するステップと、を含む有機溶媒の分離方法であって、
前記第1混合溶液は、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液であり、前記第2混合溶液は、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液
であり、
前記高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の含量が30重量%未満であり、
前記第3蒸留塔の塔底の温度が100℃未満である
有機溶媒の分離方法。
【請求項2】
前記第1混合溶液は、前記有機溶媒を95重量%以上で含む、請求項1に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項3】
前記第2混合溶液は、前記有機溶媒を95重量%以上で含む、請求項1または2に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項4】
前記ステップ2)は、前記第3蒸留塔の
塔底の圧力が0.4bar未満になるように調節された条件で行う、
請求項1~3のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項5】
前記ステップ2)は、前記第3蒸留塔の塔底の温度が70℃以上100℃未満に、圧力が0.05bar以上0.4bar未満になるように調節された条件で行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項6】
前記高沸点化合物Aは、未反応の芳香族ビニル系単量体、共役ジエン系単量体の二量体、共役ジエン系単量体の三量体、芳香族ビニル系単量体の二量体、芳香族ビニル系単量体の三量体、および極性添加剤を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項7】
前記高沸点化合物Bは、共役ジエン系単量体の二量体および共役ジエン系単量体の三量体を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項8】
前記第1分画と前記第2分画は、前記第3蒸留塔に投入する前に混合して投入する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項9】
前記高沸点化合物リッチ分画は、前記有機溶媒を40重量%以下で含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項10】
前記高沸点化合物リッチ分画中の前記有機溶媒は、前記高沸点化合物リッチ分画中の前記高沸点化合物
Aおよび前記高沸点化合物Bの合計1重量部に対して1.0重量部未満の割合で含まれている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項11】
有機溶媒損失率が0.05%未満である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の有機溶媒の分離方法。
【請求項12】
一側面に、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液を供給する第1供給ラインが備えられており、塔頂に前記有機溶媒を回収する第1有機溶媒回収ラインが備えられ、塔底に未回収の有機溶媒および前記高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する第1排出ラインが備えられた第1蒸留塔と、
一側面に、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液を供給する第2供給ラインが備えられており、塔頂に前記有機溶媒を回収する第2有機溶媒回収ラインが備えられ、塔底に未回収の有機溶媒および前記高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する第2排出ラインが備えられた第2蒸留塔と、
一側面に、前記第1排出ラインおよび前記第2排出ラインと連結されて第1分画および第2分画を供給する第3供給ラインが備えられており、塔頂には有機溶媒リッチ分画を回収する塔頂回収ラインが備えられ、塔底には前記高沸点化合物Aおよび前記高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を回収する塔底回収ラインが備えられた第3蒸留塔と、
を含み、
前記高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の含量が30重量%未満であり、
前記第3蒸留塔の塔底の温度は100℃未満である
有機溶媒分離システム。
【請求項13】
前記第2排出ラインは、前記第1排出ラインに連結されて前記第3供給ラインと連結される、
請求項12に記載の有機溶媒分離システム。
【請求項14】
前記第3蒸留塔の
塔底の圧力は0.4bar未満である、
請求項12または13に記載の有機溶媒分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月1日付けの韓国特許出願第10-2018-0133010号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、有機溶媒を含む混合溶液から有機溶媒を容易に分離回収できる有機溶媒の分離方法、およびそれを行うことができる有機溶媒分離システムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットグリップ性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットグリップ性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRやBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
一方、溶液重合により製造する際に、重合反応後に未反応単量体と有機溶媒を回収して再使用するために、スチームストリッピングおよび蒸留などの方法が用いられている。
【0007】
前記スチームストリッピングは、重合反応後に得られた重合体溶液をスチームと接触させることでゴム粒子を形成させ、ゴム粒子を除いた有機溶媒を含む揮発性物質を分離する工程であり、分離された揮発性物質中には、未反応単量体と有機溶媒だけでなく、単量体の二量体および三量体、重合反応に用いられた極性添加剤などのような添加剤などが含まれている。SBRとBRの製造工程における経済性の増加および重合安定性のためには、前記揮発性物質中の未反応単量体と有機溶媒は回収して再使用し、それ以外の単量体の二量体、三量体、添加剤などを含む高沸点物質は分離して除去すべきである。
【0008】
したがって、通常、蒸留塔を用いて前記揮発性物質から高沸点物質を分離除去し、有機溶媒を分離回収しているが、前記高沸点物質の除去時に、多量の有機溶媒が含有されて除去されるという問題がある。
【0009】
特に、SBRの製造工程では、蒸留塔の塔底から未反応の芳香族ビニル系単量体が他の高沸点物質および有機溶媒とともに排出されるため、塔底から排出される有機溶媒の含量を減らすために、塔底の温度を100℃以上に高め、有機溶媒の排出量を高沸点物質に対して1.5倍以下に調節する場合、塔底における未反応の芳香族ビニル系単量体の割合が高くなり、これらの単量体間の重合が起こる。そのため、再沸器および移送配管の詰まり現象が発生し、結果として、全SBR製造工程の停止が不可避となり、生産性低下の問題が生じ得る。
【0010】
したがって、SBR製造工程の経済性および安定性を確保するためには、製造工程中のスチームストリッピング後に発生した揮発性物質である廃溶液から有機溶媒を容易に分離回収できる方法の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0141872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、有機溶媒を含む混合溶液、例えば、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で発生した廃溶液から有機溶媒を容易に分離回収できる、有機溶媒の分離方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、上記の有機溶媒の分離方法を行うことができる有機溶媒分離システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1蒸留塔に、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する過程(ステップ1-1)と、第2蒸留塔に、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する過程(ステップ1-2)と、を互いに独立して行うステップ(ステップ1)と、前記第1分画と第2分画を第3蒸留塔に投入し、塔頂から有機溶媒リッチ分画を回収し、塔底から高沸点化合物Aおよび高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を回収するステップ(ステップ2)と、を含む有機溶媒の分離方法であって、前記高沸点化合物リッチ分画は、未反応の芳香族ビニル系単量体を30重量%未満で含むものであり、前記第1混合溶液は、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液であり、前記第2混合溶液は、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液である、有機溶媒の分離方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、一側面に、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液を供給する第1供給ラインが備えられており、塔頂に有機溶媒を回収する第1有機溶媒回収ラインが備えられ、塔底に未回収の有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する第1排出ラインが備えられた第1蒸留塔と、一側面に、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液を供給する第2供給ラインが備えられており、塔頂に有機溶媒を回収する第2有機溶媒回収ラインが備えられ、塔底に未回収の有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する第2排出ラインが備えられた第2蒸留塔と、一側面に、第1排出ラインおよび第2排出ラインと連結されて第1分画および第2分画を供給する第3供給ラインが備えられており、塔頂には有機溶媒リッチ分画を回収する塔頂回収ラインが備えられ、塔底には高沸点化合物Aおよび高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を回収する塔底回収ラインが備えられた第3蒸留塔と、を含む分離システムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る分離方法は、有機溶媒を含む混合溶液、例えば、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で発生した廃溶液から有機溶媒を分離回収するに際し、未反応の芳香族ビニル系単量体を含んでいない希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で発生した廃溶液を混合させて有機溶媒を分離することで、混合溶液中の芳香族ビニル系単量体の割合が低くなることができるため、排出される高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合が減少しても、芳香族ビニル系単量体の割合は30重量%未満に維持されることができ、結果として、再沸器および移送配管の詰まり現象が起こることなく有機溶媒損失率を著しく低減することができる。
【0017】
また、本発明に係る分離方法は、第3蒸留塔の塔底の温度および圧力を特定条件に調節することで、塔底に存在する高沸点化合物リッチ分画中の芳香族ビニル系単量体間の重合を抑え、芳香族ビニル系単量体の割合が急上昇することを抑制することができ、これにより、再沸器および移送配管の詰まり現象を抑えることができるため、分離方法を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に添付の次の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するためのものであって、上述の発明の内容とともに、本発明の技術思想をより理解させる役割をするものであるため、本発明は、この図面に記載の事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、有機溶媒を含む混合溶液から有機溶媒を分離回収するための分離システムを概略的に示した図である。
【
図2】本発明の比較例1に係る、有機溶媒を含む混合溶液から有機溶媒を分離回収するための分離システムを概略的に示した図である。
【
図3】本発明の比較例2に係る、有機溶媒を含む混合溶液から有機溶媒を分離回収するための分離システムを概略的に示した図である。
【
図4】本発明の比較例3に係る、有機溶媒を含む混合溶液から有機溶媒を分離回収するための分離システムを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0022】
本発明で用いる用語および測定方法は、別に定義しない限り、下記のように定義され得る。
【0023】
[用語]
本発明で用いられる用語「分画(fraction)」は、物質の区分付けのためのものであって、例えば、第1分画と第2分画は、各分画を構成する成分が異なるものである。
【0024】
本発明で用いられる用語「リッチ分画」は、種々の成分または混合物からなる分画中に、特定成分をそれ以外の成分に比べて高い割合で含んでいる分画を表し、例えば、有機溶媒リッチ分画は、分画を成す成分中に、有機溶媒を他の成分に比べて高い割合で含んでいる分画を表す。
【0025】
本発明で用いられる用語「有機溶媒」は、n-ペンタン、n-ヘキサン、およびシクロヘキサンからなる群から選択される1種以上であり得る。具体的には、有機溶媒はn-ヘキサンであってもよい。
【0026】
本発明で用いられる用語「ステップ1-1およびステップ1-2」は、ステップ1を構成する工程ステップであって、ステップ1-1とステップ1-2は、互いに独立して同時に行ってもよく、互いに独立して行い、且つ順に行ってもよい。
【0027】
本発明で用いられる用語「bar」はゲージ圧力を表し、1barは0.987atmと同一である。
【0028】
[測定方法]
本発明において、「有機溶媒損失率(%)」は、第1混合溶液および第2混合溶液を合わせた混合溶液中に含まれている有機溶媒の含量に対する、高沸点化合物リッチ分画中に含まれて排出される有機溶媒の含量の割合を表し、下記数学式1により計算された値であり得る。
【0029】
[数学式1]
有機溶媒損失率(%)=[高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の含量(kg)/混合溶液中の有機溶媒の含量(kg)]X100
【0030】
本発明は、有機溶媒を含む混合溶液、例えば、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で発生した廃溶液から有機溶媒を容易に分離回収できる有機溶媒の分離方法を提供する。
【0031】
また、本発明の分離方法は、前記スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で発生した廃溶液から有機溶媒を分離回収すると同時に、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で発生した廃溶液から有機溶媒を容易に分離回収することができる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る前記有機溶媒の分離方法は、第1蒸留塔に、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する過程(ステップ1-1)と、第2蒸留塔に、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する過程(ステップ1-2)と、を互いに独立して行うステップ(ステップ1)と、前記第1分画と第2分画を第3蒸留塔に投入し、塔頂から有機溶媒リッチ分画を回収し、塔底から高沸点化合物Aおよび高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を回収するステップ(ステップ2)と、を含む有機溶媒の分離方法であって、前記高沸点化合物リッチ分画は、未反応の芳香族ビニル系単量体を30重量%未満で含むことを特徴とする。前記第1混合溶液は、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液であり、前記第2混合溶液は、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液であることを特徴とする。
【0033】
前記ステップ1は、第1混合溶液および第2混合溶液から、それぞれ高沸点化合物Aを含む第1分画、および高沸点化合物Bを含む第2分画を分離するためのステップであり、第1混合溶液から第1分画を排出するステップ1-1と、第2混合溶液から第2分画を排出するステップ1-2と、で構成され、前記ステップ1-1とステップ1-2は互いに独立して行うことができる。
【0034】
以下、前記ステップ1-1とステップ1-2を分けて具体的に説明する。
【0035】
ステップ1-1
前記ステップ1-1は、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液から有機溶媒を回収し、未回収の有機溶媒と高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する過程であり、第1蒸留塔に前記第1混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から未回収の有機溶媒と高沸点化合物Aを含む第1分画を排出することで行うことができる。
【0036】
本発明において、前記第1混合溶液は、上述のように、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液(残余溶液)であり、有機溶媒を95重量%以上で含むものであってもよい。
【0037】
具体的に、前記溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体は、有機溶媒の存在下で、芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体とを重合開始剤および極性添加剤などの添加剤を用いて重合して重合体溶液を製造し、前記重合体溶液をスチームストリッピングして形成されたゴム粒子と、ゴム粒子を除いた有機溶媒を含む揮発性物質とを分離して製造される。この際、前記スチームストリッピング後に得られた揮発性物質が第1混合溶液である。また、前記スチームストリッピング後に得られた揮発性物質は、蒸留塔などにより、有機溶媒に比べて低い沸点を有する物質がさらに除去されてもよく、この場合、前記第1混合溶液は、スチームストリッピング後に得られた揮発性物質中の有機溶媒に比べて沸点の低い物質がさらに除去された状態の揮発性物質であってもよい。
【0038】
すなわち、前記第1混合溶液は、有機溶媒、共役ジエン系単量体、共役ジエン系単量体の二量体と三量体、芳香族ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体の二量体と三量体を含むものであり、場合によって、極性添加剤をさらに含むものであってもよい。
【0039】
一方、前記ステップ1-1は、第1蒸留塔を用いた蒸留により行うことができる。したがって、第1蒸留塔の塔頂からは相対的に低沸点の物質が、塔底からは高沸点の物質が分離されて回収および排出されることができる。
【0040】
すなわち、前記第1蒸留塔の塔頂からは有機溶媒および共役ジエン系単量体が回収されることができ、このように回収された有機溶媒と共役ジエン系単量体は重合反応に再使用されることができる。
【0041】
また、前記第1蒸留塔の塔底からは、未回収の有機溶媒と高沸点化合物が排出されることができ、前記高沸点化合物は、未反応の芳香族ビニル系単量体、共役ジエン系単量体の二量体と三量体、芳香族ビニル系単量体の二量体と三量体を含むものであって、場合によって、極性添加剤をさらに含んでもよい。
【0042】
この際、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的には1,3-ブタジエンであってもよい。
【0043】
また、前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-α-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)styrene)からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的にはスチレンであってもよい。
【0044】
また、前記重合開始剤は、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であり、具体的にはn-ブチルリチウムであってもよい。
【0045】
また、前記極性添加剤は、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパン、ジエチルエーテル、シクロアミルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、三次ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0046】
ステップ1-2
前記ステップ1-2は、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液から有機溶媒を回収し、未回収の有機溶媒と高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する過程であり、第2蒸留塔に前記第2混合溶液を投入し、塔頂から有機溶媒を回収し、塔底から未回収の有機溶媒と高沸点化合物Bを含む第2分画を排出することで行うことができる。
【0047】
本発明において、前記第2混合溶液は、上述のように、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で重合体が除去された廃溶液(残余溶液)であり、有機溶媒を95重量%以上で含むものであってもよい。
【0048】
具体的に、前記希土類金属触媒化ブタジエン重合体は、有機溶媒中で、希土類金属含有触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合して重合体溶液を製造し、前記重合体溶液をスチームストリッピングして形成されたゴム粒子と、ゴム粒子を除いた有機溶媒を含む揮発性物質とを分離して製造される。この際、前記スチームストリッピング後に得られた揮発性物質が第2混合溶液である。前記第2混合溶液は、有機溶媒、共役ジエン系単量体、および共役ジエン系単量体の二量体と三量体を含むものであってもよい。
【0049】
一方、前記ステップ1-2は、第2蒸留塔を用いた蒸留により行うことができる。したがって、第2蒸留塔の塔頂からは相対的に低沸点の物質が、塔底からは高沸点の物質が分離されて回収および排出されることができる。
【0050】
すなわち、前記第2蒸留塔の塔頂からは有機溶媒および共役ジエン系単量体が回収されることができ、このように回収された有機溶媒と共役ジエン系単量体は重合反応に再使用されることができる。
【0051】
また、前記第2蒸留塔の塔底からは、未回収の有機溶媒と高沸点化合物が排出されることができ、前記高沸点化合物は、共役ジエン系単量体の二量体と三量体を含むものであってもよい。
【0052】
この際、前記共役ジエン系単量体は、上述のとおりである。
【0053】
また、本発明において、前記希土類金属含有触媒組成物は、希土類金属含有化合物を含み、アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0054】
具体的に、前記希土類金属含有化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、ガドリニウム、またはプラセオジムなどのような、原子番号57~71の希土類金属の何れか1つまたは2つ以上の化合物であってもよい。前記希土類金属含有化合物としては、前記希土類金属含有カルボン酸塩(例えば、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム硫酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエートなど);有機リン酸塩(例えば、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、またはネオジムジデシルリン酸塩など);有機ホスホン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムジシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩、またはネオジムオクタデシルホスホン酸塩など);有機ホスフィン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、またはネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩など);カルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩、またはネオジムジベンジルカルバミン酸塩など);ジチオカルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、またはネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩など);キサントゲン酸塩(例えば、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩、またはネオジムベンジルキサントゲン酸塩など);β-ジケトネート(例えば、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、またはネオジムベンゾイルアセトネートなど);アルコキシドまたはアリルオキシド(例えば、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジムフェノキシド、またはネオジムノニルフェノキシドなど);ハロゲン化物または擬似ハロゲン化物(ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、ネオジムヨウ化物、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、またはネオジムアジドなど);オキシハライド(例えば、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、またはネオジムオキシブロミドなど);または1以上の希土類元素-炭素結合を含む希土類元素含有化合物(例えば、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、またはLn(アリル)2Clなど、前記式中、Lnは希土類金属元素であり、Rはヒドロカルビル基である)などが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい
【0055】
具体的に、前記希土類金属含有化合物は、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、Nd(2,2-ジメチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0056】
前記アルキル化剤としては、ブタジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として通常用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、例えば、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、または有機リチウム化合物などのように、重合溶媒に可溶性であり、且つ金属-炭素の結合を含有する有機金属化合物であってもよい。
【0057】
具体的には、前記有機アルミニウム化合物としては、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、または2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンなどのアルミノキサン;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、またはベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、またはn-オクチルアルミニウムジヒドリドなどのようなヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドなどが挙げられる。
【0058】
前記有機マグネシウム化合物としては、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、またはジベンジルマグネシウムのようなアルキルマグネシウム化合物などが挙げられ、また、前記有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウムなどのようなアルキルリチウム化合物などが挙げられる。
【0059】
前記ハロゲン化物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ハロゲン単体、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド、または有機金属ハライドなどが挙げられる。
【0060】
前記ハロゲン単体としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられる。
【0061】
また、前記ハロゲン間化合物としては、ヨウ素モノクロリド、ヨウ素モノブロミド、ヨウ素トリクロリド、ヨウ素ペンタフルオリド、ヨウ素モノフルオリド、またはヨウ素トリフルオリドなどが挙げられる。
【0062】
また、前記ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素が挙げられる。
【0063】
また、前記有機ハライドとしては、t-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも呼ばれる)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも呼ばれる)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも呼ばれる)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド、またはメチルヨードホルメートなどが挙げられる。
【0064】
また、前記非金属ハライドとしては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン、または四ヨウ化セレンなどが挙げられる。
【0065】
また、前記金属ハライドとしては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン、または二ヨウ化マグネシウムが挙げられる。
【0066】
また、前記有機金属ハライドとしては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド、またはジ-t-ブチルスズジヨージドなどが挙げられる。
【0067】
また、触媒組成物に含まれる共役ジエン系単量体は、上述のとおりである。
【0068】
前記ステップ2は、前記第1分画と第2分画から有機溶媒リッチ分画と高沸点化合物リッチ分画を分離するためのステップであり、第3蒸留塔に前記第1分画および第2分画を投入し、塔頂からは有機溶媒リッチ分画を回収し、塔底からは高沸点化合物リッチ分画を回収することで行うことができ、前記高沸点化合物リッチ分画は、高沸点化合物Aと高沸点化合物Bを含むものであってもよい。
【0069】
一方、前記第1分画と第2分画は、第3蒸留塔に投入する前に混合して投入することができる。
【0070】
前記ステップ2を行う間に、第3蒸留塔の塔底の温度は100℃未満、圧力は0.4bar未満になるように調節されてもよく、具体的には、塔底の温度は70℃以上100℃未満に、圧力は0.05bar以上0.4bar未満になるように調節された条件であってもよい。より具体的に、前記第3蒸留塔の塔底の温度は90℃以上100℃未満で、圧力は0.15bar以上0.4bar未満であり、より具体的には、95℃以上100℃未満の温度および0.15bar以上0.35bar未満の圧力であってもよい。
【0071】
また、前記高沸点化合物リッチ分画は、未反応の芳香族ビニル系単量体を30重量%以下で含むものであってもよい。ここで、前記高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の含量比は、第3蒸留塔の塔底における芳香族ビニル系単量体の組成比を表し、第3蒸留塔の塔底の温度および圧力を上述の条件に調節することにより調節されることができる。
【0072】
具体的に、前記第3蒸留塔の塔底の温度および圧力によって、高沸点化合物リッチ分画と分離されて回収される有機溶媒リッチ分画の含量が調節され、これにより、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合が影響を受け得て、結果として、高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の割合が変わり得る。例えば、回収される有機溶媒リッチ分画の含量が増加すると、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合は相対的に減少するはずであり、これにより、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合が減少する分、高沸点化合物リッチ分画を構成する他の成分の割合が増加するはずであるため、未反応の芳香族ビニル系単量体の割合も増加することになる。
【0073】
第3蒸留塔の塔底の温度が100℃以上であるか、高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の含量が30重量%を超える場合には、未反応の芳香族ビニル系単量体間の重合が起こり得るため、第3蒸留塔の塔底に連結されている再沸器および移送配管が詰まる問題が発生する恐れがある。
【0074】
すなわち、本発明の一実施形態に係る分離方法は、第3蒸留塔の塔底条件を上述のように調節することで、高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体間の重合が起こることを抑制することができ、さらに、高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の割合を特定の割合未満になるように調節することができるため、前記未反応の芳香族ビニル系単量体の割合の増加により起こるそれら間の重合も抑制することができる。これにより、第3蒸留塔の塔底に連結されている再沸器および移送配管の詰まり現象を抑制することができ、結果として、前記詰まり現象による工程中断が防止されて、経済的に優れる。
【0075】
また、本発明の一実施形態に係る分離方法は、第1分画を第2分画と共に同じ第3蒸留塔に投入し、有機溶媒リッチ分画と高沸点化合物リッチ分画を分離することで、第3蒸留塔内の有機溶媒の割合とは別に、未反応の芳香族ビニル系単量体の割合を低めることができ、これにより、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合の減少による、未反応の芳香族ビニル系単量体の割合の増加推移が緩やかである。したがって、高沸点化合物リッチ分画中の未反応の芳香族ビニル系単量体の割合の増加による問題から自由になることができて、より多くの有機溶媒を回収することができ、高沸点化合物リッチ分画に含まれて排出される有機溶媒の損失率を低減することができる。
【0076】
前記有機溶媒リッチ分画は、有機溶媒を90重量%以上、具体的には95重量%以上、より具体的には100重量%で含むものであってもよい。すなわち、本発明に係る分離方法により混合溶液から分離回収された有機溶媒リッチ分画は、大部分が有機溶媒からなるものであることができる。このように回収された有機溶媒は、重合反応に再使用されることができる。
【0077】
また、前記高沸点化合物リッチ分画は、高沸点化合物Aと高沸点化合物Bを主成分として含み、有機溶媒の一部を含んでいるものであってもよい。
【0078】
従来、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で排出された廃溶液を分離して排出される高沸点化合物リッチ分画は、再沸器と移送配管の詰まり現象を防止するために、有機溶媒が60重量%以上の高い割合で含まれるように工程が設計される。そのため、有機溶媒損失率が高かった。しかし、本発明の一実施形態に係る分離方法は、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で排出された廃溶液である第2混合溶液を、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程で排出された廃溶液である第1混合溶液と混合して分離することで、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合が減少されても芳香族ビニル系単量体の割合が30重量%未満に維持されることができ、これにより、再沸器および移送配管の詰まり現象問題から、より自由になることができる。
【0079】
したがって、本発明の一実施形態に係る分離方法により得られた前記高沸点化合物リッチ分画は、有機溶媒を40重量%以下で含むものであってもよく、前記高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒は、高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物1重量部に対して1.0重量部未満の割合、具体的には、高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物1.0重量部に対して0.7重量部未満の割合、より具体的には0.67重量部以下の割合で含まれてもよい。
【0080】
結果的に、本発明の一実施形態に係る分離方法は、第3蒸留塔の塔底に連結されている再沸器および移送配管の詰まり現象が起こることなく、排出される高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合が著しく減少されることができる。
【0081】
具体的に、前記分離方法は、有機溶媒損失率が0.05%未満であることができる。
【0082】
ここで、前記有機溶媒損失率は、第1混合溶液および第2混合溶液を合わせた混合溶液中に含まれている有機溶媒の含量に対する、高沸点化合物リッチ分画中に含まれて排出される有機溶媒の含量の割合を表し、下記数学式1により計算された値であってもよい。
【0083】
[数学式1]
有機溶媒損失率(%)=[高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の含量(kg)/混合溶液中の有機溶媒の含量(kg)]X100
【0084】
また、本発明の一実施形態に係る前記分離方法により分離回収された有機溶媒は、回収率が99.95%以上であることができる。
【0085】
ここで、前記有機溶媒の回収率は、第1混合溶液および第2混合溶液を合わせた混合溶液中に含まれている有機溶媒の含量に対する、回収された総有機溶媒の含量の割合を表し、下記数学式2により計算された値であってもよい。
【0086】
[数学式2]
有機溶媒回収率(%)=[{回収された総有機溶媒の含量(kg)}/{混合溶液中の有機溶媒の含量(kg)}]X100
【0087】
一方、本発明の一実施形態に係る前記有機溶媒の分離方法は、後述の分離システムを用いて行うことができる。
【0088】
本発明は、第1混合溶液および第2混合溶液から最終的に有機溶媒リッチ分画と高沸点化合物リッチ分画を分離して回収および排出することができる有機溶媒分離システムを提供する。
【0089】
本発明の一実施形態に係る前記分離システムは、一側面に、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液を供給する第1供給ラインが備えられており、塔頂に有機溶媒を回収する第1有機溶媒回収ラインが備えられ、塔底に未回収の有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する第1排出ラインが備えられた第1蒸留塔と、一側面に、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液を供給する第2供給ラインが備えられており、塔頂に有機溶媒を回収する第2有機溶媒回収ラインが備えられ、塔底に未回収の有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する第2排出ラインが備えられた第2蒸留塔と、一側面に、第1排出ラインおよび第2排出ラインと連結されて第1分画および第2分画を供給する第3供給ラインが備えられており、塔頂には有機溶媒リッチ分画を回収する塔頂回収ラインが備えられ、塔底には高沸点化合物Aおよび高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を回収する塔底回収ラインが備えられた第3蒸留塔と、を含むことを特徴とし、この際、前記第3蒸留塔の塔底の温度は100℃未満であり、圧力は0.4bar未満であってもよい。
【0090】
以下、
図1を参照して前記分離システムを具体的に説明する。
【0091】
図1は、本発明の一実施形態に係る第1混合溶液および第2混合溶液から最終的に有機溶媒リッチ分画と高沸点化合物リッチ分画を分離して回収および排出することができる有機溶媒分離システムを概略的に示した図である。
【0092】
図1に示したように、本発明の一実施形態に係る前記分離システム100は、第1蒸留塔10、第2蒸留塔20、および第3蒸留塔30を含み、前記各蒸留塔は、塔底に再沸器を備え、塔頂に凝縮器を備えていることができる。
【0093】
前記第1蒸留塔10は、有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1混合溶液から有機溶媒を回収し、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Aを含む第1分画を排出する過程を行うものであって、一側面に第1混合溶液を供給する第1供給ライン11が備えられており、塔頂には有機溶媒を回収する第1有機溶媒回収ライン12が備えられ、塔底には第1分画を排出する第1排出ライン13が備えられている。
【0094】
前記第2蒸留塔20は、有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2混合溶液から有機溶媒を回収し、未回収の有機溶媒および高沸点化合物Bを含む第2分画を排出する過程を行うものであって、一側面に第2混合溶液を供給する第2供給ライン21が備えられており、塔頂に有機溶媒を回収する第2有機溶媒回収ライン22が備えられ、塔底には第2分画を排出する第2排出ライン23が備えられている。
【0095】
また、第3蒸留塔30は、第1分画および第2分画から有機溶媒リッチ分画と高沸点化合物Aおよび高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画を分離して回収するものであって、一側面に第1分画および第2分画を供給する第3供給ライン31が備えられており、塔頂には有機溶媒リッチ分画を回収する塔頂回収ライン32が備えられ、塔底には高沸点化合物リッチ分画を回収する塔底回収ライン33が備えられていて、前記第3供給ライン31は、第1排出ライン13および第2排出ライン23と連結されていることができる。すなわち、前記第1蒸留塔10は第1排出ライン13により、第2蒸留塔20は第2排出ライン23により第3蒸留塔30と連結されていることができ、前記第1排出ライン13と第2排出ライン23は、それぞれ別のラインとして第3供給ライン31と連結されていてもよく、または、前記第2排出ライン23が第1排出ライン13に連結されて第3供給ライン31と連結されていてもよい。
【0096】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、下記実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、これらのみによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0097】
下記実施例および比較例は、商用工程模擬プログラムASPEN PLUSを利用して本発明に係る分離方法をシミュレーションした。シミュレーションに必要な定数は、前記プログラムに格納されている値、文献に記載されている値などを使用した。
【0098】
この際、第1混合溶液は、1,3-ブタジエン、スチレン、n-ヘキサン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、エチルベンゼン、1,3-ブタジエン、またはスチレンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコール(TBC)を含むと設定し、第2混合溶液は、1,3-ブタジエン、n-ヘキサン、ブトール(butol)、1,3-ブタジエンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコールを含むと設定した。この際、第1混合溶液中の構成は、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程後に得られる廃溶液の構成に該当し、第2混合溶液中の構成は、希土類金属触媒化ブタジエン重合体の製造工程におけるスチームストリッピング工程後に得られる廃溶液の構成に該当する。
【0099】
[実施例1]
図1に示したような分離システム100を用いて、前記第1混合溶液および第1混合溶液を含む混合溶液から有機溶媒の分離工程を行った。
【0100】
具体的に、第1混合溶液は、第1供給ライン11を介して第1蒸留塔10に供給され、塔頂の第1有機溶媒回収ライン12によってn-ヘキサンが回収され、塔底の第1排出ライン13によって、未回収のn-ヘキサンと高沸点化合物Aを含む第1分画が排出される。この際、第1有機溶媒回収ライン12によってn-ヘキサンとともに1,3-ブタジエンが回収され、前記高沸点化合物Aは、スチレン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、エチルベンゼン、1,3-ブタジエン、またはスチレンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコール(TBC)を含む。
【0101】
また、これと別に、第2混合溶液は第2供給ライン21を介して第2蒸留塔20に供給され、塔頂の第2有機溶媒回収ライン22によってn-ヘキサンが回収され、塔底の第2排出ライン23によって、未回収のn-ヘキサンと高沸点化合物Bを含む第2分画が排出される。この際、第2有機溶媒回収ライン22によってn-ヘキサンとともに1,3-ブタジエンが回収され、前記高沸点化合物Bは、ブトール(butol)、1,3-ブタジエンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコール(TBC)を含む。
【0102】
その後、前記第1分画と第2分画が第3供給ライン31を介して第3蒸留塔30に供給され、塔頂回収ライン32によってn-ヘキサンが回収され、塔底回収ライン33によって高沸点化合物Aおよび高沸点化合物Bを含む高沸点化合物リッチ分画が回収される。
【0103】
この際、前記第1混合溶液は、4bar、55℃の状態で、総73000kg/hr(1,3-ブタジエン21.8kg/hr、スチレン51.0kg/hr、n-ヘキサン72896.2kg/hr、エチルベンゼン9.1kg/hr、テトラメチルエチレンジアミン3.6kg/hr、前記1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体10.9kg/hr、三量体5.5kg/hr、および4-t-ブチルカテコール1.8kg/hr)で第1蒸留塔10に供給されるように設定し、第2混合溶液は、4bar、55℃の状態で、総65000kg/hr(1,3-ブタジエン19.5kg/h、n-ヘキサン64948.0kg/hr、ブトール16.3kg/hr、1,3-ブタジエンの二量体7.8kg/hr、三量体5.2kg/hr、および4-t-ブチルカテコール3.3kg/hr)で第2蒸留塔20に供給されるように設定し、第1蒸留塔10、第2蒸留塔20、および第3蒸留塔30は、下記表1に示したような温度および圧力に工程条件を設定した。最終的に有機溶媒の回収率は99.95%であった。
【0104】
【0105】
前記表1において、高沸点化合物は、スチレン、エチルベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、1,3-ブタジエン、またはスチレンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコール、ブトールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0106】
総n-ヘキサン損失率(%)=[(67.9)/(72896.2+64948)]X100
【0107】
[実施例2]
実施例1において、第3蒸留塔の温度および圧力を下記表2のように設定したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0108】
【0109】
前記表2において、高沸点化合物は、スチレン、エチルベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコール、ブトールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0110】
総n-ヘキサン損失率(%)=[(57.8)/(72896.2+64948)]X100
【0111】
[実施例3]
実施例1において、第3蒸留塔の温度および圧力を下記表3のように設定したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0112】
【0113】
前記表3において、高沸点化合物は、スチレン、エチルベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコール、ブトールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0114】
総n-ヘキサン損失率(%)=[59.8/(72896.2+64948)]X100
【0115】
[比較例1]
図2に示したような分離システム200を用いて、前記第1混合溶液から有機溶媒の分離工程を行った。
【0116】
具体的に、第1混合溶液は、第1供給ライン111を介して第1蒸留塔110に供給され、塔頂回収ライン112によってn-ヘキサンが回収され、塔底回収ライン113によって、未回収のn-ヘキサンと高沸点化合物Aを含む第1分画が排出される。この際、塔頂回収ライン112によってn-ヘキサンとともに1,3-ブタジエンが回収され、前記高沸点化合物Aは、スチレン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、エチルベンゼン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコール(TBC)を含む。
【0117】
この際、前記第1混合溶液は、4bar、55℃の状態で、総73000kg/hr(1,3-ブタジエン21.8kg/hr、スチレン51.0kg/hr、n-ヘキサン72896.2kg/hr、エチルベンゼン9.1kg/hr、テトラメチルエチレンジアミン3.6kg/hr、前記1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体10.9kg/hr、三量体5.5kg/hr、および4-t-ブチルカテコール1.8kg/hr)で第1蒸留塔110に供給されるように設定し、第1蒸留塔10は、下記表4に示したような温度および圧力に工程条件を設定した。
【0118】
【0119】
前記表4において、高沸点化合物は、スチレン、エチルベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0120】
総n-ヘキサン損失率(%)=[(289.7)/(72896.2)]X100
【0121】
[比較例2]
図3に示したような分離システム300を用いて、前記第2混合溶液から有機溶媒の分離工程を行った。
【0122】
具体的に、第2混合溶液は、第2供給ライン211を介して第2蒸留塔210に供給され、塔頂回収ライン212によってn-ヘキサンが回収され、塔底回収ライン213によって、未回収のn-ヘキサンと高沸点化合物Bを含む第2分画が排出される。この際、塔頂回収ライン212によってn-ヘキサンとともに1,3-ブタジエンが回収され、前記高沸点化合物Bは、ブトール(butol)、1,3-ブタジエンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコール(TBC)を含む。
【0123】
この際、前記第2混合溶液は、4bar、55℃の状態で、総65000kg/hr(1,3-ブタジエン19.5kg/hr、n-ヘキサン64948.0kg/hr、ブトール16.3kg/hr、1,3-ブタジエンの二量体7.8kg/hr、三量体5.2kg/hr、および4-t-ブチルカテコール3.3kg/hr)で第2蒸留塔210に供給されるように設定し、第2蒸留塔210は、下記表5に示したような温度および圧力に工程条件を設定した。
【0124】
【0125】
前記表5において、高沸点化合物は、1,3-ブタジエンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコール、およびブトールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0126】
総n-ヘキサン損失率(%)=[(44.1)/(64948)]X100
【0127】
[比較例3]
図4に示したような分離システム400を用いて、前記第1混合溶液から有機溶媒の分離工程を行った。
【0128】
具体的に、第1混合溶液は、第1-1供給ライン311を介して第1-1蒸留塔310に供給され、塔頂の第1-1有機溶媒回収ライン312によってn-ヘキサンが回収され、塔底の第1-1排出ライン313によって、未回収のn-ヘキサンと高沸点化合物A-1を含む第1-1分画が排出される。この際、第1-1有機溶媒回収ライン312によってn-ヘキサンとともに1,3-ブタジエンが回収され、前記高沸点化合物A-1は、スチレン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、エチルベンゼン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体および三量体、4-t-ブチルカテコール(TBC)を含む。
【0129】
その後、前記第1-1分画は、第1-2供給ライン321を介して第1-2蒸留塔320に供給され、塔頂回収ライン322によってn-ヘキサンが回収され、塔底回収ライン323によって高沸点化合物リッチ分画が回収される。
【0130】
この際、前記第1混合溶液は、4bar、55℃の状態で、総73000kg/hr(1,3-ブタジエン21.8kg/hr、スチレン51.0kg/hr、n-ヘキサン72896.2kg/hr、エチルベンゼン9.1kg/hr、テトラメチルエチレンジアミン3.6kg/hr、前記1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体10.9kg/hr、三量体5.5kg/hr、および4-t-ブチルカテコール1.8kg/hr)で第1蒸留塔10に供給されるように設定し、第1-1蒸留塔310および第1-2蒸留塔320は、下記表6に示したような温度および圧力に工程条件を設定した。
【0131】
【0132】
前記表6において、高沸点化合物は、スチレン、エチルベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0133】
総n-ヘキサン損失率(%)=[(100.9)/(72896.2)]X100
【0134】
[比較例4]
比較例3において、第1-2蒸留塔の塔頂および塔底の温度を下記表7に示したように設定したことを除き、比較例3と同様に行った。しかし、5日間繰り返して運転した後、第1-2蒸留塔の塔底に連結された再沸器および移送配管が詰まって運転を停止し、5日間詰まった再沸器および移送配管を洗浄した。
【0135】
【0136】
前記表7において、高沸点化合物は、スチレン、エチルベンゼン、テトラメチルエチレンジアミン、1,3-ブタジエンまたはスチレンの二量体、三量体、4-t-ブチルカテコールを含むものであり、有機溶媒の含量比は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の高沸点化合物に対する有機溶媒の含量の割合を表し、総n-ヘキサン損失率(%)は、上述の数学式1により計算された値であって、具体的には下記のとおりである。
【0137】
総n-ヘキサン損失率(%)=[(48.3)/(72896.2)]X100
【0138】
前記表1~表7から、本発明の一実施形態に係る実施例1~3の分離方法が、比較例1~4の分離方法に比べて再沸器と移送配管の詰まり現象なしに有機溶媒損失率が著しく減少したことを確認した。
【0139】
具体的に、実施例1~実施例3は、有機溶媒損失率が比較例1~4に比べて11%~72%のレベルに著しく減少したことを確認した。
【0140】
また、実施例1~実施例3は、最終的に排出された高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の含量が高沸点化合物1重量部に対して1.0重量部であって、比較例1~比較例3に比べて、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の割合が著しく減少されたにもかかわらず、スチレンの割合は30重量%未満に維持され、これにより、再沸器と移送配管の詰まり現象なし著しく減少された有機溶媒損失率で有機溶媒を容易に分離した。
【0141】
一方、蒸留塔の塔底から排出される芳香族ビニル系単量体を含む高沸点化合物リッチ分画において、芳香族ビニル系単量体の総含量が30重量%以上である場合、前記単量体間の重合が起こり得て、前記高沸点化合物リッチ分画中の芳香族ビニル系単量体の総含量が30重量%未満であっても、蒸留塔の塔底の温度が100℃以上である場合には、前記単量体間の反応によって重合が起こり得る。そのため、蒸留塔の塔底に連結されている再沸器および移送配管の詰まり現象が発生し得て、結果として、工程中断が発生して産業に適用時に莫大な損失が発生する恐れがある。
【0142】
したがって、産業に容易に適用するためには、本発明の一実施形態に係る分離方法のように、再沸器および移送配管の詰まり現象なしに有機溶媒の損失率は最小化しなければならない。
【0143】
具体的に、比較例4は、第1-2蒸留塔の温度を高め、塔頂に分離される有機溶媒の量を増加させて、高沸点化合物リッチ分画中の有機溶媒の含量を高沸点化合物1重量部に対して0.67重量部に減少させたが、高沸点化合物リッチ分画中のスチレンの割合が30重量%を超えたため、第1-2蒸留塔の塔底に連結された再沸器と移送配管の詰まり現象が発生した。さらに、比較例4は、第1-2蒸留塔の運転条件を実施例1に比べて高い温度に、難しい条件に調節したにもかかわらず、有機溶媒損失率は実施例1に比べて135%のレベルに著しく増加した。
【符号の説明】
【0144】
100、200、300、400 分離システム
10、110 第1蒸留塔
20、210 第2蒸留塔
30 第3蒸留塔
310 第1-1蒸留塔
320 第1-2蒸留塔
11、111 第1供給ライン
12 第1有機溶媒回収ライン
13 第1排出ライン
21、211 第2供給ライン
22 第2有機溶媒回収ライン
23 第2排出ライン
31 第3供給ライン
32、112、212、322 塔頂回収ライン
33、113、213、323 塔底回収ライン
311 第1-1供給ライン
312 第1-1有機溶媒回収ライン
313 第1-1排出ライン
321 第1-2供給ライン