(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-07
(45)【発行日】2022-07-15
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20220708BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2021536868
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026402
(87)【国際公開番号】W WO2021020039
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019137765
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】宮地 幸哉
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-245021(JP,A)
【文献】特開2013-153988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子アレイを含む超音波プローブとモニタを含む診断装置本体とが無線接続され且つカラーフローモードを備える超音波診断装置であって、
前記超音波プローブは、
前記振動子アレイから被検体に向けて超音波パルスを送信し且つ前記被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力される受信信号に受信フォーカス処理を施して音線信号を生成する送受信回路と、
前記送受信回路により生成された前記音線信号に基づいて、速度データと、分散データおよびパワーデータのうち少なくとも一方とからなるフロー画像情報を生成するフロー画像情報生成部と、
前記フロー画像情報生成部により生成された前記フロー画像情報を無線送信するプローブ側無線通信回路と
を含み、
前記診断装置本体は、
前記超音波プローブの前記プローブ側無線通信回路から無線送信された前記フロー画像情報を受信する本体側無線通信回路と、
前記本体側無線通信回路により受信された前記フロー画像情報に基づいてカラーフロー画像を生成するカラーフロー画像生成部と、
前記カラーフロー画像生成部により生成された前記カラーフロー画像を前記モニタに表示させる表示制御部と
を含む超音波診断装置。
【請求項2】
前記フロー画像情報生成部は、前記速度データと前記パワーデータとを生成し、
前記カラーフロー画像生成部は、前記本体側無線通信回路により受信された前記速度データおよび前記パワーデータに基づき、前記カラーフロー画像として速度画像を生成する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記カラーフロー画像生成部は、前記パワーデータが定められたパワーしきい値より大きい画素については前記速度画像を生成しない請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記カラーフロー画像生成部は、前記パワーデータが定められたパワーしきい値より大きく且つ前記速度データが定められた速度しきい値より小さい画素については前記速度画像を生成しない請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記フロー画像情報生成部は、前記速度データと前記パワーデータとを生成し、
前記カラーフロー画像生成部は、前記本体側無線通信回路により受信された前記速度データおよび前記パワーデータに基づき、前記カラーフロー画像としてディレクショナルパワー画像を生成する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記フロー画像情報生成部は、前記速度データと前記分散データとを生成し、
前記カラーフロー画像生成部は、前記本体側無線通信回路により受信された前記速度データおよび前記分散データに基づき、前記カラーフロー画像として速度分散画像を生成する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波プローブは、前記フロー画像情報生成部により生成された前記フロー画像情報を画像圧縮する画像圧縮部を含み、
前記プローブ側無線通信回路は、前記画像圧縮部により画像圧縮された前記フロー画像情報を無線送信する請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波プローブは、前記送受信回路により生成された前記音線信号に基づいてBモード画像を生成するBモード画像生成部を含み、
前記プローブ側無線通信回路は、前記Bモード画像生成部により生成された前記Bモード画像と前記フロー画像情報生成部により生成された前記フロー画像情報を無線送信し、
前記本体側無線通信回路は、前記Bモード画像と前記フロー画像情報を受信し、
前記表示制御部は、前記Bモード画像と前記カラーフロー画像を前記モニタに表示させる請求項1~7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
振動子アレイを含む超音波プローブとモニタを含む診断装置本体とが無線接続され且つカラーフローモードを備える超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波プローブにおいて、
前記振動子アレイから被検体に向けて超音波パルスを送信し且つ前記被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力される受信信号に受信フォーカス処理を施して音線信号を生成し、
生成された前記音線信号に基づいて複素ベースバンド信号を生成し、
生成された前記複素ベースバンド信号に基づいて、速度データと、分散データおよびパワーデータのうち少なくとも一方とからなるフロー画像情報を生成し、
生成された前記フロー画像情報を前記診断装置本体へ無線送信し、
前記診断装置本体において、
前記超音波プローブから無線送信された前記フロー画像情報を受信し、
受信された前記フロー画像情報に基づいてカラーフロー画像を生成し、
生成された前記カラーフロー画像を前記モニタに表示する
超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に係り、特に、超音波プローブと診断装置本体とが無線接続される超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された診断装置本体と、を備えており、超音波プローブから被検体に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信し、例えばその受信信号を診断装置本体において電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
特許文献1に開示されているように、近年、超音波プローブと診断装置本体との間を無線通信により無線接続することにより、超音波プローブの操作性および機動性を向上させようとする超音波診断装置が開発されている。
【0004】
このような無線接続型の超音波診断装置においては、例えば超音波プローブの振動子アレイから出力されたアナログの受信信号を無線通信により診断装置本体へ伝送する、あるいは、超音波プローブ内に信号処理のための回路を内蔵して、振動子アレイから出力された受信信号を超音波プローブ内においてデジタル処理した後に無線通信により診断装置本体に伝送することにより、診断装置本体において超音波画像の生成が行われる。
【0005】
また、被検体の血流等の状態を計測するために、例えば特許文献2に開示されている超音波診断装置においては、振動子アレイからそれぞれの走査線に対して超音波パルスを複数回送信して取得された受信信号に基づいて、いわゆる複素ベースバンド信号を生成し、生成された複素ベースバンド信号に対して相関演算を行うことにより、血流を表わす指標である速度、分散およびパワーを算出して、いわゆるカラーフロー画像を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-211726号公報
【文献】特開2014-008076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、無線接続型の超音波診断装置により血流等の状態を計測する場合、振動子アレイからそれぞれの走査線に対して超音波パルスを複数回送信して取得される受信信号の情報量が大きくなるため、受信信号を無線通信により超音波プローブから診断装置本体へ伝送することは困難である。
【0008】
また、超音波プローブ内において、振動子アレイから出力される受信信号に基づいて複素ベースバンド信号を生成し、生成された複素ベースバンド信号を無線通信により診断装置本体へ伝送して診断装置本体側でカラーフロー画像を生成しようとしても、伝送すべき複素ベースバンド信号の情報量が大きいため、複素ベースバンド信号の無線通信による伝送に多大な時間を要してしまい、例えば、診断装置本体のモニタにおいてリアルタイムにカラーフロー画像を表示することが困難になるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたものであり、超音波プローブと診断装置本体とが無線接続されながらも診断装置本体において円滑にカラーフロー画像を表示することができる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波診断装置は、
振動子アレイを含む超音波プローブとモニタを含む診断装置本体とが無線接続され且つカラーフローモードを備える超音波診断装置であって、
超音波プローブは、
振動子アレイから被検体に向けて超音波パルスを送信し且つ被検体からの超音波エコーを受信した振動子アレイから出力される受信信号に受信フォーカス処理を施して音線信号を生成する送受信回路と、
送受信回路により生成された音線信号に基づいて、速度データと、分散データおよびパワーデータのうち少なくとも一方とからなるフロー画像情報を生成するフロー画像情報生成部と、
フロー画像情報生成部により生成されたフロー画像情報を無線送信するプローブ側無線通信回路と
を含み、
診断装置本体は、
超音波プローブのプローブ側無線通信回路から無線送信されたフロー画像情報を受信する本体側無線通信回路と、
本体側無線通信回路により受信されたフロー画像情報に基づいてカラーフロー画像を生成するカラーフロー画像生成部と、
カラーフロー画像生成部により生成されたカラーフロー画像をモニタに表示させる表示制御部と
を含むことを特徴とする。
【0011】
フロー画像情報生成部は、速度データとパワーデータとを生成し、カラーフロー画像生成部は、本体側無線通信回路により受信された速度データおよびパワーデータに基づき、カラーフロー画像として速度画像を生成することができる。
カラーフロー画像生成部は、パワーデータが定められたパワーしきい値より大きい画素については速度画像を生成しないことが好ましい。あるいは、カラーフロー画像生成部は、パワーデータが定められたパワーしきい値より大きく且つ速度データが定められた速度しきい値より小さい画素については速度画像を生成しないように構成することもできる。
【0012】
フロー画像情報生成部は、速度データとパワーデータとを生成し、カラーフロー画像生成部は、本体側無線通信回路により受信された速度データおよびパワーデータに基づき、カラーフロー画像としてディレクショナルパワー画像を生成することもできる。
あるいは、フロー画像情報生成部は、速度データと分散データとを生成し、カラーフロー画像生成部は、本体側無線通信回路により受信された速度データおよび分散データに基づき、カラーフロー画像として速度分散画像を生成してもよい。
【0013】
また、超音波プローブは、フロー画像情報生成部により生成されたフロー画像情報を画像圧縮する画像圧縮部を含み、プローブ側無線通信回路は、画像圧縮部により画像圧縮されたフロー画像情報を無線送信するように構成することもできる。
超音波プローブは、送受信回路により生成された音線信号に基づいてBモード画像を生成するBモード画像生成部を含み、プローブ側無線通信回路は、Bモード画像生成部により生成されたBモード画像とフロー画像情報生成部により生成されたフロー画像情報を無線送信し、本体側無線通信回路は、Bモード画像とフロー画像情報を受信し、表示制御部は、Bモード画像とカラーフロー画像をモニタに表示させることが好ましい。
【0014】
本発明に係る超音波診断装置の制御方法は、
振動子アレイを含む超音波プローブとモニタを含む診断装置本体とが無線接続され且つカラーフローモードを備える超音波診断装置の制御方法であって、
超音波プローブにおいて、
振動子アレイから被検体に向けて超音波パルスを送信し且つ被検体からの超音波エコーを受信した振動子アレイから出力される受信信号に受信フォーカス処理を施して音線信号を生成し、
生成された音線信号に基づいて複素ベースバンド信号を生成し、
生成された複素ベースバンド信号に基づいて、速度データと、分散データおよびパワーデータのうち少なくとも一方とからなるフロー画像情報を生成し、
生成されたフロー画像情報を診断装置本体へ無線送信し、
診断装置本体において、
超音波プローブから無線送信されたフロー画像情報を受信し、
受信されたフロー画像情報に基づいてカラーフロー画像を生成し、
生成されたカラーフロー画像をモニタに表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超音波プローブが、送受信回路により生成された音線信号に基づいて、速度データと、分散データおよびパワーデータのうち少なくとも一方とからなるフロー画像情報を生成するフロー画像情報生成部と、フロー画像情報生成部により生成されたフロー画像情報を無線送信するプローブ側無線通信回路とを含み、診断装置本体が、超音波プローブのプローブ側無線通信回路から無線送信されたフロー画像情報を受信する本体側無線通信回路と、本体側無線通信回路により受信されたフロー画像情報に基づいてカラーフロー画像を生成するカラーフロー画像生成部と、カラーフロー画像生成部により生成されたカラーフロー画像をモニタに表示させる表示制御部とを含むため、超音波プローブと診断装置本体とが無線接続されながらも診断装置本体において円滑にカラーフロー画像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における受信回路の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるBモード画像生成部の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるフロー画像情報生成部の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】フロー画像情報生成部により生成された速度データおよびパワーデータからカラーフロー画像生成部により速度画像が生成される様子を模式的に示す図である。
【
図7】フロー画像情報生成部により生成された速度データおよびパワーデータからカラーフロー画像生成部によりディレクショナルパワー画像が生成される様子を模式的に示す図である。
【
図8】ディレクショナルパワー画像のカラーマップを示す図である。
【
図9】フロー画像情報生成部により生成された速度データおよび分散データからカラーフロー画像生成部により速度分散画像が生成される様子を模式的に示す図である。
【
図10】速度分散画像のカラーマップを示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を表すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0018】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1の構成を示す。超音波診断装置1は、超音波プローブ2と、超音波プローブ2に無線接続された診断装置本体3を有し、カラーフローモードを備える超音波診断装置である。ここで、「カラーフローモード」とは、いわゆるカラーフローマッピングにより、被検体内の血行動態に対応して色を付け、Bモード画像上に重ね合わせながらリアルタイムで表示する表示モードのことをいう。
図1に示されるように、超音波プローブ2は、振動子アレイ11を有しており、振動子アレイ11に、送信回路12と受信回路13が接続されている。送信回路12と受信回路13により、送受信回路14が構成されており、送信回路12および受信回路13に、超音波送受信制御部15が接続されている。受信回路13に、Bモード画像生成部16とフロー画像情報生成部17が並列に接続され、これらBモード画像生成部16およびフロー画像情報生成部17にプローブ側無線通信回路18が接続されている。
【0019】
プローブ側無線通信回路18に通信制御部19が接続され、超音波送受信制御部15、Bモード画像生成部16、フロー画像情報生成部17および通信制御部19に、プローブ制御部20が接続されている。超音波送受信制御部15、Bモード画像生成部16、フロー画像情報生成部17、通信制御部19およびプローブ制御部20により、プローブ側プロセッサ21が構成されている。また、超音波プローブ2は、バッテリ22を内蔵している。
【0020】
一方、診断装置本体3は、本体側無線通信回路31を有し、本体側無線通信回路31に、通信制御部32が接続されている。また、本体側無線通信回路31にカラーフロー画像生成部33が接続され、本体側無線通信回路31とカラーフロー画像生成部33に表示制御部34およびモニタ35が順次接続されている。
【0021】
通信制御部32、カラーフロー画像生成部33および表示制御部34に、本体制御部36が接続されており、本体制御部36に、入力装置37と格納部38が接続されている。ここで、本体制御部36と格納部38とは、互いに双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。通信制御部32、カラーフロー画像生成部33、表示制御部34および本体制御部36により、本体側プロセッサ39が構成されている。
【0022】
超音波プローブ2の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの振動子は、それぞれ送信回路12から供給される駆動信号に従って超音波を送信し、且つ、被検体からの反射波を受信してアナログの受信信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0023】
超音波送受信制御部15は、送受信回路14の送信回路12および受信回路13を制御することにより、プローブ制御部20から指示された検査モードおよび走査方式に基づいて、超音波ビームの送信および超音波エコーの受信を行う。ここで、検査モードは、Bモード(Brightness Mode:輝度モード)およびCFモード(Color Flow Mode:カラーフローモード)を少なくとも含む他、PWモード(Pulsed Wave Doppler Mode:パルスドプラモード)、CWモード(Continuous Wave Doppler Mode:連続波ドプラモード)等、超音波診断装置において使用可能な検査モードが含まれ、走査方式は、例えば、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式、電子コンベックス走査方式等のいずれかを示すものとする。
【0024】
送受信回路14は、振動子アレイ11から被検体に向けて超音波ビームを送信し且つ被検体からの超音波エコーを受信した振動子アレイ11から出力される受信信号に受信フォーカス処理を施して音線信号を生成する。
【0025】
送受信回路14の送信回路12は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0026】
送信された超音波ビームは、例えば被検体の部位等の対象において反射され、超音波エコーが振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して受信信号(電気信号)を発生させ、これらの受信信号を受信回路13に出力する。
【0027】
送受信回路14の受信回路13は、超音波送受信制御部15からの制御信号に従い、振動子アレイ11から出力される信号の処理を行って、音線信号を生成する。
図2に示されるように、受信回路13は、増幅部41、AD(Analog Digital:アナログデジタル)変換部42およびビームフォーマ43が直列接続された構成を有している。
【0028】
増幅部41は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの振動子から入力されたアナログ信号である受信信号を増幅し、増幅した受信信号をAD変換部42に送信する。
AD変換部42は、増幅部41から送信されたアナログの受信信号をデジタル信号に変換して受信データを取得し、この受信データをビームフォーマ43に送出する。
ビームフォーマ43は、超音波送受信制御部15からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づき、設定された音速に従う各受信データにそれぞれの遅延を与えて加算(整相加算)を施す、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理を施すことにより、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が生成される。
【0029】
Bモード画像生成部16は、送受信回路14の受信回路13により生成された音線信号に基づいて、いわゆるBモード画像を生成する。Bモード画像生成部16は、
図3に示されるように、信号処理部44、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)45および画像処理部46が順次直列に接続された構成を有している。
【0030】
信号処理部44は、受信回路13により生成された音線信号に対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体の体内組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC45は、信号処理部44で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部46は、DSC45から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、画像処理が施されたBモード画像信号(Bモード画像)をプローブ側無線通信回路18に出力する。
【0031】
フロー画像情報生成部17は、送受信回路14の受信回路13により生成された音線信号に基づいて、例えば、被検体の血管、心臓等の循環系における血行動態を表す指標となる速度、分散、パワーに関するフロー画像情報を生成する。
図4に示されるように、フロー画像情報生成部17は、検波部47、ハイパスフィルタ48、自己相関部49およびフロー画像情報変換部50が直列接続された構成を有している。
【0032】
検波部47は、送受信回路14の受信回路13により生成された音線信号に基づいて、いわゆる複素ベースバンド信号を生成する。より具体的には、検波部47は、音線信号に参照周波数のキャリア信号を混合することで音線信号を直交検波して、音線信号を複素ベースバンド信号に変換する。
ハイパスフィルタ48は、いわゆるウォールフィルタ(Wall Filter)として機能するもので、検波部47で生成された複素ベースバンド信号から、いわゆるクラッタ信号と呼ばれる、被検体の体内組織の運動に由来する低周波数成分の信号を除去する。
【0033】
自己相関部49は、ハイパスフィルタ48によりクラッタ信号が除去された複素ベースバンド信号に対して自己相関処理を施して、式(1)および式(2)に表される自己相関信号X、Yを生成する。
X=Σ(In-1・I*
n+Qn-1・Q*
n)/(REP-1) (n=1,2,・・・,REP-1)・・・(1)
Y=Σ(In-1・Q*
n-Qn-1・I*
n)/(REP-1) (n=1,2,・・・,REP-1)・・・(2)
【0034】
ここで、In、Qnは、ハイパスフィルタ48によりクラッタ信号が除去された複素ベースバンド信号であり、InとQnは、互いに位相が90度ずれた信号である。また、I*
nは、Inの複素共役を表しており、Q*
nは、Qnの複素共役を表している。また、REPは、振動子アレイ11から被検体内に送信される超音波パルスの1走査線あたりの繰り返し送信数である。
【0035】
フロー画像情報変換部50は、自己相関部49で生成された自己相関信号X、Yに基づいて、パワーデータ、速度データ、分散データからなるフロー画像情報を生成する。例えば、フロー画像情報変換部50は、次式(3)に従って、自己相関信号X、YをパワーデータPに変換する。
P=Σ(In・I*
n+Qn・Q*
n)/REP (n=1,2,・・・,REP-1)・・・(3)
このパワーデータPは、各点における信号強度を示すもので、血流の強度を表す指標となる。
【0036】
また、フロー画像情報変換部50は、次式(4)に従って、自己相関信号X、Yを速度データVに変換することができる。
V=tan-1(X,Y)・・・(4)
この速度データVは、各点における血流の方向および速度を表す指標である。
さらに、フロー画像情報変換部50は、次式(5)に従って、自己相関信号X、Yを分散データAに変換することができる。
A=1.0-{(X/P)2+(Y/P)2}0.5・・・(5)
この分散データAは、振動子アレイ11から被検体内に送信される超音波パルスの1走査線あたりの繰り返し送信数REPに対する速度のバラつきを表す指標である。
【0037】
このようにしてフロー画像情報変換部50により生成された速度データV、分散データA、パワーデータPは、それぞれ、例えば8ビットのデータに変換されてプローブ側無線通信回路18に出力される。
なお、上記の式(3)により得られるパワーデータPは、そのままでは大きな値を有する場合には、デシベル値に変換することもできる。
そして、これらの速度データV、分散データA、パワーデータPは、それぞれ、例えば0~255の256個の整数値に変換されることで、8ビットのデータとして表すことができる。
【0038】
フロー画像情報変換部50は、速度データV、分散データA、パワーデータPのすべてを生成することもできるが、必ずしも速度データV、分散データA、パワーデータPのすべてを生成する必要はなく、速度データVとパワーデータP、または、速度データVと分散データAのみを生成するように構成することもできる。
【0039】
プローブ側無線通信回路18は、Bモード画像生成部16により生成されたBモード画像およびフロー画像情報生成部17により生成されたフロー画像情報を診断装置本体3へ無線送信する。
より具体的には、プローブ側無線通信回路18は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、Bモード画像およびフロー画像情報に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、Bモード画像およびフロー画像情報を診断装置本体3へ無線送信する。キャリアの変調方式としては、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation:16直角位相振幅変調)等が用いられる。
【0040】
通信制御部19は、プローブ制御部20により設定された送信電波強度でBモード画像およびフロー画像情報の送信が行われるようにプローブ側無線通信回路18を制御する。
プローブ制御部20は、予め記憶しているプログラム等に基づいて、超音波プローブ2の各部の制御を行う。
バッテリ22は、超音波プローブ2に内蔵されており、超音波プローブ2の各回路に電力を供給する。
【0041】
なお、超音波プローブ2の超音波送受信制御部15、Bモード画像生成部16、フロー画像情報生成部17、通信制御部19およびプローブ制御部20を有するプローブ側プロセッサ21は、各種のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0042】
また、プローブ側プロセッサ21の超音波送受信制御部15、Bモード画像生成部16、フロー画像情報生成部17、通信制御部19およびプローブ制御部20は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
【0043】
診断装置本体3の本体側無線通信回路31は、超音波プローブ2のプローブ側無線通信回路18から無線送信されたBモード画像およびフロー画像情報を受信する。
より具体的には、本体側無線通信回路31は、電波の送信および受信を行うためのアンテナを含んでおり、超音波プローブ2のプローブ側無線通信回路18により送信された伝送信号を、アンテナを介して受信し、受信した伝送信号を復調することにより、Bモード画像を表示制御部34に送出し、フロー画像情報をカラーフロー画像生成部33に送出する。
【0044】
カラーフロー画像生成部33は、本体側無線通信回路31により受信されたフロー画像情報に基づいて、被検体内の血流の血行動態に対応する色情報を表すカラーフロー画像信号(カラーフロー画像)を生成する。
【0045】
例えば、
図5に示されるように、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データとパワーデータからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合には、カラーフロー画像生成部33は、パワーデータを参照しながら速度データを用いることにより、カラーフロー画像として速度画像を生成することができる。速度画像は、
図6に示されるように、各点の速度データに基づき、画素毎に、例えば、超音波プローブ2に近づく方向の血流を赤、超音波プローブ2から遠ざかる方向の血流を青で表し、それらの明度により血流の速さを表すもので、血流速度の分布を直感的に把握することができる。
【0046】
このとき、パワーデータは、各点における信号強度を示すものであり、例えば、血管内の血液と血管壁とでは、一般的にパワーデータの値が相違する。具体的には、血管壁におけるパワーデータは、血液に対するパワーデータよりも大きくなることが知られている。そこで、カラーフロー画像生成部33は、パワーデータが、定められたパワーしきい値より大きい画素については、血液ではなく血管壁等の組織に対応していると判断して、速度画像を生成しないように構成することができる。
また、比較的太い血管の血流は、一般に、パワーが小さくても速度が速いため、カラーフロー画像生成部33は、パワーデータが定められたパワーしきい値より大きく且つ速度データが定められた速度しきい値より小さい画素については、血管壁等の組織に対応していると判断して、速度画像を生成しないように構成することもできる。
【0047】
また、
図7に示されるように、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データとパワーデータからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合に、カラーフロー画像生成部33は、速度データおよびパワーデータを用いることにより、カラーフロー画像としてディレクショナルパワー画像を生成することができる。ディレクショナルパワー画像は、
図8に示されるように、各点の速度データに基づき、画素毎に、例えば、超音波プローブ2に近づく方向の血流に対するパワーを赤、超音波プローブ2から遠ざかる方向の血流に対するパワーを青で表し、それらの明度によりパワーの大きさを表すもので、パワーの分布と共に血流方向を直感的に把握することができる。
【0048】
図9に示されるように、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データと分散データからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合に、カラーフロー画像生成部33は、速度データおよび分散データを用いることにより、カラーフロー画像として速度分散画像を生成することができる。速度分散画像は、速度画像に分散データの値が加味された画像である。すなわち、速度分散画像は、
図10に示されるように、各点の速度データに基づき、画素毎に、例えば、例えば、超音波プローブ2に近づく方向の血流を赤、超音波プローブ2から遠ざかる方向の血流を青で表し、それらの明度により血流の速さを表すと共に、各点の分散データの値に応じて、例えば緑色の成分を加えたもので、血流速度の分布と血流速度のばらつきの程度を直感的に把握することができる。
【0049】
また、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データと分散データとパワーデータからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信することもできる。この場合には、カラーフロー画像生成部33は、操作者の操作に基づいて、速度画像、ディレクショナルパワー画像、速度分散画像のうち任意のカラーフロー画像を選択して生成することができる。
【0050】
なお、例えば、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データとパワーデータからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合に、カラーフロー画像生成部33は、
図5または
図7に示されるように、速度画像またはディレクショナルパワー画像を生成するだけでなく、パワーデータに基づいて、血流方向を加味せずにパワーの分布のみを表す、いわゆるパワー画像を生成することができるのは言うまでもない。
【0051】
同様に、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データと分散データからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合に、カラーフロー画像生成部33は、
図9に示されるように、速度分散画像を生成するだけでなく、速度データに基づいて、分散を加味せずに速度分布のみを表す速度画像を生成することもできる。
【0052】
表示制御部34は、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像を表示画像としてモニタ35に表示させる。具体的には、この実施の形態1では、表示制御部34は、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像と、本体側無線通信回路31により受信されたBモード画像とを互いに重ね合わせたものを表示画像としてモニタ35に表示させる。表示制御部34は、表示画像に任意の画像処理を施して、画像処理が施された表示画像をモニタ35に表示させてもよい。
【0053】
モニタ35は、表示制御部34の制御により、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像を表示画像として表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含む。この実施の形態1の場合、モニタ35は、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像と、本体側無線通信回路31により受信されたBモード画像とを重ね合わせたものを表示画像として表示する。
【0054】
通信制御部32は、超音波プローブ2のプローブ側無線通信回路18から送信された伝送信号の受信が行われるように本体側無線通信回路31を制御する。
本体制御部36は、格納部38等に予め記憶されているプログラムおよび入力装置37を介した操作者による入力操作に基づいて、診断装置本体3の各部の制御を行う。
入力装置37は、操作者が入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。なお、モニタ35にタッチセンサを組み合わせて、タッチセンサを入力装置37として使用する構成とすることもできる。このようなタッチセンサを利用した入力装置37は、緊急治療等の際に、屋外における診断にも極めて有効なものとなる。
【0055】
格納部38は、診断装置本体3の制御プログラム等を格納するもので、格納部38として、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0056】
なお、診断装置本体3の通信制御部32、カラーフロー画像生成部33、表示制御部34および本体制御部36を有する本体側プロセッサ39は、CPU、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA、DSP、ASIC、GPU、その他のICを用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
また、本体側プロセッサ39の通信制御部32、カラーフロー画像生成部33、表示制御部34および本体制御部36は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
【0057】
次に、
図11のフローチャートを参照しながら、超音波プローブ2と診断装置本体3からなる超音波診断装置1の動作を説明する。
【0058】
まず、超音波プローブ2において、超音波送受信制御部15の制御の下、送受信回路14の送信回路12からの駆動信号に従って振動子アレイ11の複数の振動子から超音波ビームが被検体内に送信される。被検体による超音波エコーは、振動子アレイ11の複数の振動子により受信され、複数の振動子からアナログ信号である受信信号が受信回路13に出力され、増幅部41で増幅され、AD変換部42でAD変換されて受信データが取得される(ステップS1)。この受信データに対して、ビームフォーマ43により受信フォーカス処理を施すことにより、音線信号が生成される(ステップS2)。
【0059】
受信回路13のビームフォーマ43により生成された音線信号は、Bモード画像生成部16に入力されて、Bモード画像生成部16により、Bモード画像が生成される(ステップS3)。この際に、Bモード画像生成部16の信号処理部44により、超音波の反射位置の深度に応じた距離による減衰の補正、包絡線検波処理が施され、DSC45により、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換され、画像処理部46により、階調処理等の各種の必要な画像処理が施される。
【0060】
また、受信回路13のビームフォーマ43により生成された音線信号は、フロー画像情報生成部17にも入力される。
フロー画像情報生成部17の検波部47は、音線信号に参照周波数のキャリア信号を混合することで音線信号を直交検波することにより、複素ベースバンド信号を生成する(ステップS4)。
このようにして生成された複素ベースバンド信号は、ハイパスフィルタ48により、いわゆるクラッタ信号と呼ばれる被検体の体内組織の運動に由来する低周波数成分が除去された後、自己相関部49により、上述した式(1)、式(2)で表される自己相関信号X、Yが生成される。
【0061】
さらに、フロー画像情報変換部50により、自己相関信号X、Yに基づいて、フロー画像情報が生成される(ステップS5)。
フロー画像情報変換部50は、自己相関信号X、Yから、上述した式(4)で表される速度データVと、式(5)で表される分散データAおよび式(3)で表されるパワーデータPのうち少なくとも一方とを、フロー画像情報として生成することができる。すなわち、フロー画像情報変換部50により、速度データV、分散データAおよびパワーデータPのすべて、または、速度データVおよびパワーデータP、または速度データVおよび分散データAが生成される。
【0062】
なお、一般的に、クラッタ信号の信号強度は、複素ベースバンド信号に含まれる信号のうち血流に由来する血流信号の信号強度と比べて、例えば300倍~1000倍もの強さとなることがある。そのため、複素ベースバンド信号がクラッタ信号と血流信号の双方を含む状態で、複素ベースバンド信号がフロー画像情報に変換されたと仮定すると、クラッタ信号と血流信号の信号強度差に起因して、血流信号が著しく劣化することが考えられる。この実施の形態1に係る超音波診断装置1においては、フロー画像情報変換部50のハイパスフィルタ48により、検波部47で生成された複素ベースバンド信号からクラッタ信号が除去されるため、複素ベースバンド信号からフロー画像情報に変換される過程で血流信号が劣化することを防止することができる。
【0063】
フロー画像情報変換部50により生成されたフロー画像情報とBモード画像生成部16により生成されたBモード画像は、通信制御部19の制御の下、プローブ側無線通信回路18から診断装置本体3に無線送信される(ステップS6)。
ここで、仮に、フロー画像情報生成部17の検波部47により生成された複素ベースバンド信号をそのまま無線通信により診断装置本体3へ伝送して、診断装置本体3側でカラーフロー画像を生成しようとすると、伝送すべき複素ベースバンド信号の情報量が大きいため、複素ベースバンド信号の無線通信による伝送に多大な時間を要し、特に、無線通信状態が不安定な場合に無線送信中のデータの欠損が生じやすい等、複素ベースバンド信号の無線送信が困難になるおそれがある。
【0064】
この実施の形態1の超音波診断装置1においては、フロー画像情報生成部17の検波部47により生成された複素ベースバンド信号は、ハイパスフィルタ48によりクラッタ信号が除去された後、自己相関部49に入力されて自己相関信号X、Yが生成され、これらの自己相関信号X、Yに基づいてフロー画像情報変換部50によりフロー画像情報が生成される。
このため、検波部47により生成された複素ベースバンド信号に比べて情報量が低減されたフロー画像情報をプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3に無線送信することができ、診断装置本体3において円滑にカラーフロー画像をモニタ35に表示することが可能となる。
【0065】
このようにして、超音波プローブ2のプローブ側無線通信回路18から無線送信されたフロー画像情報は、診断装置本体3の本体側無線通信回路31により受信されて(ステップS7)、カラーフロー画像生成部33に送出される。
カラーフロー画像生成部33は、本体側無線通信回路31により受信されたフロー画像情報に基づいて、カラーフロー画像を生成する(ステップS8)。
例えば、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データVおよびパワーデータPからなるフロー画像情報が生成されて、プローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合には、カラーフロー画像生成部33は、パワーデータを参照しながら速度データを用いることにより、カラーフロー画像として速度画像を生成することができる。
【0066】
カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像と、超音波プローブ2のBモード画像生成部16により生成されたBモード画像は、表示制御部34に送出される。
表示制御部34は、本体制御部36の制御の下、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像と本体側無線通信回路31から送出されたBモード画像に所定の処理を施してモニタ35に表示する(ステップS9)。
具体的には、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像と、本体側無線通信回路31により受信されたBモード画像とを重ね合わせたものが、モニタ35に表示される。
【0067】
図5に示されるように、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データVとパワーデータPからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合には、カラーフロー画像生成部33は、パワーデータPを参照しながら速度データVを用いることにより、カラーフロー画像として速度画像を生成し、Bモード画像に速度画像が重畳されたものがモニタ35に表示される。これにより、操作者は、血流速度の分布を直感的に把握することが可能となる。
【0068】
また、
図7に示されるように、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データVとパワーデータPからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合に、カラーフロー画像生成部33は、速度データVおよびパワーデータPを用いることにより、カラーフロー画像としてディレクショナルパワー画像を生成し、Bモード画像にディレクショナルパワー画像が重畳されたものがモニタ35に表示される。これにより、操作者は、パワーの分布と共に血流方向を直感的に把握することが可能となる。
【0069】
図9に示されるように、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データVと分散データAからなるフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信された場合に、カラーフロー画像生成部33は、速度データVおよび分散データAを用いることにより、カラーフロー画像として速度分散画像を生成し、Bモード画像に速度分散画像が重畳されたものがモニタ35に表示される。これにより、操作者は、血流速度の分布と血流速度のばらつきの程度を直感的に把握することが可能となる。
【0070】
また、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により、速度データVと分散データAとパワーデータPのすべてを含むフロー画像情報が生成されてプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3の本体側無線通信回路31に無線送信することもでき、この場合には、操作者が入力装置37を操作することにより、速度画像、ディレクショナルパワー画像、速度分散画像のうち任意のカラーフロー画像を生成して、これらのカラーフロー画像がBモード画像に重畳されたものをモニタ35に表示することが可能となる。
【0071】
なお、
図1に示した超音波診断装置1においては、超音波プローブ2の送受信回路14の受信回路13が、増幅部41およびAD変換部42と共にビームフォーマ43を有しているが、ビームフォーマ43は、受信回路13の内部ではなく、受信回路13とBモード画像生成部16およびフロー画像情報生成部17との間に配置されていてもよい。この場合、プローブ側プロセッサ21によりビームフォーマ43を構成することもできる。
【0072】
また、超音波プローブ2のBモード画像生成部16が、信号処理部44、DSC45および画像処理部46を有しているが、これらのうち、DSC45および画像処理部46は、Bモード画像生成部16の内部ではなく、診断装置本体3の本体側無線通信回路31と表示制御部34との間に配置されていてもよい。
この場合、Bモード画像生成部16の信号処理部44において包絡線検波処理を施すことにより生成されたBモード画像信号が、プローブ側無線通信回路18から無線送信され、診断装置本体3の本体側無線通信回路31で受信されたBモード画像信号に対して、DSC45による画像信号への変換および画像処理部46による画像処理が施され、画像処理が施されたBモード画像信号(Bモード画像)が表示制御部34に送出される。このように診断装置本体3内に配置されるDSC45および画像処理部46は、本体側プロセッサ39により構成されることもできる。
【0073】
実施の形態2
上記の実施の形態1においては、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により生成されたフロー画像情報が、プローブ側無線通信回路18から診断装置本体3へ無線送信されるが、フロー画像情報を画像圧縮した状態でプローブ側無線通信回路18から診断装置本体3へ無線送信することもできる。
【0074】
図12に、本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置1Aの構成を示す。超音波診断装置1Aは、
図1に示した実施の形態1の超音波診断装置1において、超音波プローブ2の代わりに超音波プローブ2Aを備え、診断装置本体3の代わりに診断装置本体3Aを備えている。超音波プローブ2Aは、実施の形態1における超音波プローブ2において、画像圧縮部51が追加され、プローブ制御部20の代わりにプローブ制御部20Aが用いられ、プローブ側プロセッサ21の代わりにプローブ側プロセッサ21Aが用いられたものである。診断装置本体3Aは、実施の形態1における診断装置本体3において、画像解凍部52が追加され、本体制御部36の代わりに本体制御部36Aが用いられ、本体側プロセッサ39の代わりに本体側プロセッサ39Aが用いられたものである。
【0075】
超音波プローブ2Aにおいて、フロー画像情報生成部17とBモード画像生成部16に、画像圧縮部51が接続され、画像圧縮部51に、プローブ側無線通信回路18が接続されている。
また、診断装置本体3Aにおいて、本体側無線通信回路31に通信制御部32と画像解凍部52が接続され、画像解凍部52に、カラーフロー画像生成部33と表示制御部34が接続されている。
【0076】
超音波プローブ2Aの画像圧縮部51は、フロー画像情報生成部17により生成されたフロー画像情報を、いわゆるJPEG(Joint Photographic Experts Group)等の形式に画像圧縮する。これにより、速度データVと、分散データAおよびパワーデータPのうち少なくとも一方とからなるフロー画像情報の情報量をさらに低減することができる。また、画像圧縮部51は、Bモード画像生成部16により生成されたBモード画像についても、画像圧縮する。
【0077】
なお、画像圧縮部51は、速度データVとパワーデータPに対しては、分散データAよりも高い圧縮比で画像圧縮することができる。これは、速度データVとパワーデータPは、分散データAに比べて、高周波成分が少なく、低周波成分を多く含むため、画像圧縮の圧縮比を高くしても、データの劣化が少ないからである。
これに対して、Bモード画像は、一般に高周波成分を多く含むため、Bモード画像生成部16により生成されたBモード画像を画像圧縮部51により画像圧縮する際には、画像の劣化を防ぐ目的で、圧縮比を低く抑えることが望ましい。
【0078】
超音波プローブ2Aのプローブ側無線通信回路18は、画像圧縮部51により画像圧縮されたフロー画像情報およびBモード画像を、通信制御部19による制御の下で診断装置本体3Aに無線送信する。
【0079】
診断装置本体3Aの本体側無線通信回路31は、超音波プローブ2Aのプローブ側無線通信回路18により無線送信されたフロー画像情報およびBモード画像を受信して、受信されたフロー画像情報およびBモード画像を画像解凍部52に送出する。
画像解凍部52は、本体側無線通信回路31から送出されたフロー画像情報およびBモード画像を、画像圧縮部51により画像圧縮される前の形式に解凍する。すなわち、画像解凍部52は、本体側無線通信回路31から送出されたフロー画像情報を、超音波プローブ2のフロー画像情報生成部17により生成された直後のフロー画像情報と同一の形式に解凍し、本体側無線通信回路31から送出されたBモード画像を、Bモード画像生成部16により生成された直後のBモード画像と同一の形式に解凍する。解凍されたフロー画像情報は、カラーフロー画像生成部33に送出され、解凍されたBモード画像は、表示制御部34に送出される。
【0080】
カラーフロー画像生成部33は、画像解凍部52により解凍されたフロー画像情報に基づいてカラーフロー画像を生成する。
表示制御部34は、カラーフロー画像生成部33により生成されたカラーフロー画像と画像解凍部52から送出されたBモード画像に対して所定の処理を施し、カラーフロー画像とBモード画像をモニタ35に表示させる。
【0081】
以上により、本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置1Aによれば、フロー画像情報生成部17により生成されたフロー画像情報が画像圧縮部51により画像圧縮されるため、フロー画像情報の情報量をさらに低減することができる。また、Bモード画像生成部16により生成されたBモード画像についても、画像圧縮部51により圧縮されるため、Bモード画像の情報量も低減することができる。このため、無線通信状態が良好でない環境においても、診断装置本体3Aにおいて円滑にカラーフロー画像を表示することが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A 超音波診断装置、2,2A 超音波プローブ、3,3A 診断装置本体、11 振動子アレイ、12 送信回路、13 受信回路、14 送受信回路、15 超音波送受信制御部、16 Bモード画像生成部、17 フロー画像情報生成部、18 プローブ側無線通信回路、19,32 通信制御部、20,20A プローブ制御部、21,21A プローブ側プロセッサ、22 バッテリ、31 本体側無線通信回路、33 カラーフロー画像生成部、34 表示制御部、35 モニタ、36,36A 本体制御部、37 入力装置、38 格納部、39,39A 本体側プロセッサ、41 増幅部、42 AD変換部、43 ビームフォーマ、44 信号処理部、45 DSC、46 画像処理部、47 検波部、48 ハイパスフィルタ、49 自己相関部、50 フロー画像情報変換部、51 画像圧縮部、52 画像解凍部。