(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20220711BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220711BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220711BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220711BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220711BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
G02B5/30
G02F1/1335
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2020515773
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 KR2019001695
(87)【国際公開番号】W WO2019177271
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0030717
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビョン
(72)【発明者】
【氏名】インヨン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クワンソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-133867(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012802(WO,A1)
【文献】特開2014-006447(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084729(WO,A1)
【文献】特開2012-008158(JP,A)
【文献】特開2009-217258(JP,A)
【文献】特開2016-218395(JP,A)
【文献】特開2015-108862(JP,A)
【文献】特開2014-102377(JP,A)
【文献】特表2011-511304(JP,A)
【文献】特表2018-533068(JP,A)
【文献】特開2009-276738(JP,A)
【文献】特開2012-234170(JP,A)
【文献】特表2014-529762(JP,A)
【文献】特表2014-525600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10- 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材;
前記光透過性基材上に形成されるハードコーティング層;および
前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層;を含み、
前記低屈折層は、バインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み、0.55μmの波長で1.55以上の屈折率を有する第1領域と、バインダー樹脂と低屈折無機ナノ粒子を含み、0.55μmの波長で1.45以下の屈折率を有する第2領域とを含み、
前記高屈折無機ナノ粒子は、前記低屈折無機ナノ粒子よりも多い量で
、前記バインダー樹脂100重量部に対して220~660重量部で含まれ、
前記低屈折層の厚さは250nm以上であり、また、第2領域に対する第1領域の厚さ比率は0.25~4であり、
前記第1領域が前記ハードコーティング層および前記低屈折層間の界面に接し、
前記第2領域が界面と接する面と異なる一面に前記第1領域が形成され、
前記低屈折層に含まれている第1領域および第2領域それぞれに対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上である、反射防止フィルム(ただし、低屈折層側の最表面から測定した粒子の体積基準頻度分布が、少なくとも2つのピークを有する分布である場合を除く):
【数1】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは0.3μm~1.8μmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【請求項2】
光透過性基材;
前記光透過性基材上に形成されるハードコーティング層;および
前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層;を含み、
前記低屈折層は、バインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み、0.55μmの波長で1.55以上の屈折率を有する第1領域と、バインダー樹脂と低屈折無機ナノ粒子を含み、0.55μmの波長で1.45以下の屈折率を有する第2領域とを含み、
前記高屈折無機ナノ粒子は、前記低屈折無機ナノ粒子よりも多い量で
、前記バインダー樹脂100重量部に対して220~660重量部で含まれ、
前記低屈折層の厚さは250nm以上であり、また、第2領域に対する第1領域の厚さ比率は0.25~4であり、
前記第1領域が前記ハードコーティング層および前記低屈折層間の界面に接し、
前記第2領域が界面と接する面と異なる一面に前記第1領域が形成され、
前記低屈折層に含まれている第1領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、下記Aは1.50~2.00であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足し、前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上である、反射防止フィルム(ただし、低屈折層側の最表面から測定した粒子の体積基準頻度分布が、少なくとも2つのピークを有する分布である場合を除く):
【数2】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは0.3μm~1.8μmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【請求項3】
前記低屈折層に含まれている第1領域および第2領域それぞれに対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、
前記第1領域は、下記Aが1.50~2.00である条件を満足し、
前記第2領域は、下記Aが1.00~1.40である条件を満足する、
請求項1に記載の反射防止フィルム:
【数3】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは0.3μm~1.8μmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【請求項4】
前記低屈折層に含まれている第2領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、下記Aは1.00~1.40であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足する、請求項2に記載の反射防止フィルム:
【数4】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは0.3μm~1.8μmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【請求項5】
前記反射防止フィルムは、380nm~780nmの可視光線波長帯領域で0.4%以下の反射率を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記第1領域は、20nm~300nmの厚さを有し、
前記第2領域は、70nm~400nmの厚さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記低屈折無機ナノ粒子の平均粒径に対する前記高屈折無機ナノ粒子の平均粒径の比率が0.008~0.55である、請求項1から6のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記高屈折無機ナノ粒子は、二酸化チタン(TiO
2)、三酸化二アンチモン(Sb
2O
3)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化錫(SnO
2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、チタン酸ジルコニウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群より選択された1種以上を含み、
前記低屈折無機ナノ粒子は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、中空シリカおよびメソ多孔質シリカ(mesoporoussilica)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記低屈折層に含まれる高屈折無機ナノ粒子の70体積%以上が前記第1領域に存在し、
前記低屈折層に含まれる低屈折無機ナノ粒子の70体積%以上が前記第2領域に存在する、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記低屈折層に含まれるバインダー樹脂は、光重合性化合物の(共)重合体および光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋(共)重合体を含む、 請求項1から
9のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記低屈折層に含まれる第1領域は、0.55μで2.50以下の屈折率を有し、
前記低屈折層に含まれる第2領域は、0.55μmで1.0以上の屈折率を有する、請求項1から1
0のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記ハードコーティング層は、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂および前記バインダー樹脂に分散した有機または無機微粒子;を含む、請求項1から1
1のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記ハードコーティング層に含まれる前記有機微粒子は1~10μmの粒径を有し、前記無機微粒子は1nm~500nmの粒径を有する、請求項1
2に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記光透過性基材は、環状オレフィン系高分子(cycloolefin polymer)フィルム、ポリ(メタ)アクリレート系フィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリノルボルネン(polynorbornene)フィルム、およびポリエステルフィルムからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1から1
3のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
前記光透過性基材は、波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のリタデーション(Rth)が3,000nm以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項16】
請求項1から1
5のいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含む偏光板。
【請求項17】
請求項1から1
5のいずれか一項に記載の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2018年3月16日付韓国特許出願第10-2018-0030717号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、PDP、LCDなどの平板ディスプレイ装置には外部から入射される光の反射を最小化するための反射防止フィルムが装着される。
【0004】
光の反射を最小化するための方法としては、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて基材フィルム上にコーティングし凹凸を付与する方法(anti-glare:AGコーティング);基材フィルム上に屈折率が異なる複数の層を形成させて光の干渉を用いる方法(anti-reflection:ARコーティング)またはこれらを混用する方法などがある。
【0005】
そのうち、前記AGコーティングの場合、反射される光の絶対量は一般的なハードコーティングと同等な水準であるが、凹凸を通じた光の散乱を用いて目に入る光の量を減らすことによって低反射効果を得ることができる。しかし、前記AGコーティングは表面凹凸によって画面の鮮明度が落ちるため、最近はARコーティングに対する多くの研究が行われている。
【0006】
前記ARコーティングを用いたフィルムとしては、基材フィルム上にハードコーティング層(高屈折率層)、低反射コーティング層などが積層された多層構造のものが商用化されている。しかし、前記のように複数の層を形成させる方法は、各層を形成する工程を別途に行うことによって層間密着力(界面接着力)が弱くて耐スクラッチ性が落ち、反復的な工程によって製造費用が上昇するという短所がある。
【0007】
また、以前は、反射防止フィルムに含まれる低屈折層の耐スクラッチ性を向上させるためには、ナノメートルサイズの多様な粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの粒子)を添加する方法が主に試みられた。しかし、前記のようにナノメートルサイズの粒子を使用する場合、低屈折層の反射率を低くしながら耐スクラッチ性を同時に高めにくい限界があり、ナノメートルのサイズの粒子によって低屈折層表面が有する防汚性が大きく低下した。
【0008】
これにより、外部から入射される光の絶対反射量を減らし表面の耐スクラッチ性と共に防汚性を向上させるための多くの研究が行われているが、これによる物性改善の程度が物足りないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い透光率、高い耐スクラッチ性、および防汚性を有しながらも低い反射率を実現してディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができる反射防止フィルムを提供するためのものである。
【0010】
また、本発明は、前記低い反射率を実現する反射防止フィルムを含んで高い鮮明度および優れた耐久性を有する偏光板を提供するためのものである。
【0011】
また、本発明は、前記反射防止フィルムを含み高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、光透過性基材;前記光透過性基材上に形成されるハードコーティング層;および前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層;を含み、前記低屈折層はバインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.55以上の屈折率を有する第1領域と、バインダー樹脂と低屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.45以下の屈折率を有する第2領域とを含み、前記低屈折層に含まれている第1領域および第2領域それぞれに対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上である、反射防止フィルムが提供される。
【0013】
【0014】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0015】
また、本明細書では、光透過性基材;前記光透過性基材上に形成されるハードコーティング層;および前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層;を含み、前記低屈折層はバインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.55以上の屈折率を有する第1領域と、バインダー樹脂と低屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.45以下の屈折率を有する第2領域とを含み、前記低屈折層に含まれている第1領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、下記Aは1.50~2.00であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足する、反射防止フィルムが提供される。
【0016】
また、本明細書では、前述の反射防止フィルムを含む偏光板が提供される。
【0017】
また、本明細書では、前述の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0018】
以下、発明の具体的な実施形態による反射防止フィルム、偏光板およびディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書で、光重合性化合物は、光が照射されれば、例えば可視光線または紫外線が照射されれば重合反応を起こす化合物をひっくるめて称する。
【0020】
また、含フッ素化合物は、化合物のうちの少なくとも1つ以上のフッ素元素が含まれている化合物を意味する。
【0021】
また、(メタ)アクリル[(Meth)acryl]は、アクリル(acryl)およびメタクリル(Methacryl)を両方とも含む意味である。
【0022】
また、(共)重合体は、共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)を両方とも含む意味である。
【0023】
また、中空シリカ粒子(silica hollow particles)とは、ケイ素化合物または有機ケイ素化合物から導出されるシリカ粒子であって、前記シリカ粒子の表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0024】
発明の一実施形態によれば、光透過性基材;前記光透過性基材上に形成されるハードコーティング層;および前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層;を含み、
前記低屈折層は、バインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.55以上の屈折率を有する第1領域と、バインダー樹脂と低屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.45以下の屈折率を有する第2領域とを含み、
前記低屈折層に含まれている第1領域および第2領域それぞれに対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上である、反射防止フィルムが提供される。
【0025】
【0026】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0027】
以前は、反射防止フィルムの反射率を調節するために1種以上の微細粒子を添加したが、反射率を一定水準以上に低くするのには限界があり、また反射防止フィルムの耐スクラッチ性や防汚性が低下する問題点があった。
【0028】
よって、本発明者らは反射防止フィルムに関する研究を行って、前記反射防止フィルムに含まれる低屈折層が前述の第1領域と第2領域を含み、このような第1領域および第2領域それぞれに対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上であれば、反射防止フィルムが非常に低い水準の反射率と高い透光率を有しながら高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0029】
前記コーシーパラメータAは最大波長での屈折率に関係し、前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上、0.200~0.500、または0.200~0.400であることにより、前記実施形態の反射防止フィルムは最適化された屈折率分布を維持しながらもより低い反射率を実現し、スクラッチまたは外部汚染物質に対して相対的に安定的な構造を有することができる。
【0030】
より具体的に、前記低屈折層に含まれている第1領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記低屈折層に含まれている第1領域に対して、前記Aは1.50~2.00、または1.53~1.90、または1.55~1.85であってもよい。
【0031】
また、前記低屈折層に含まれている第2領域に対して、楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記Aは1.0~1.40、または1.1~1.40、または1.2~1.40であってもよい。
【0032】
前記楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率および関連データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))は、通常知られた方法および装置を使用して測定することができる。例えば、前記低屈折層に含まれている第1領域および第2領域に対してJ.A.Woollam Co.M-2000の装置を用いて、70°の入射角を適用して380nm~1000nmの波長範囲で線偏光を測定することができる。前記測定された線偏光測定データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))はComplete EASE softwareを用いて前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で前記第1領域および第2領域に分けられて適用して平均自乗誤差(Mean Square Error、MSE)が5以下、または3以下になるように最適化(fitting)することができる。
【0033】
通常知られているように、平均自乗誤差は誤差(残差)の自乗に対する平均を取った値であって統計的推定の正確性に対する質的な尺度であり、MSEが小さいほど推定の正確性が高いと言える。前記平均自乗誤差(MSE)は通常知られた方法や統計プログラムなどを通じて算出することができ、例えば、線偏光測定データの最小自乗推定量(least square estimator)を算出し、前記算出された最小自乗推定量を用いて平均自乗誤差(Mean Square Error、MSE)を導出することができる。
【0034】
一方、発明の他の実施形態によれば、光透過性基材;前記光透過性基材上に形成されるハードコーティング層;および前記ハードコーティング層上に形成される低屈折層;を含み、
前記低屈折層は、バインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.55以上の屈折率を有する第1領域と、バインダー樹脂と低屈折無機ナノ粒子を含み、550nmの波長で1.45以下の屈折率を有する第2領域とを含み、
前記低屈折層に含まれている第1領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、下記Aは1.50~2.00であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足する、反射防止フィルムを提供することができる。
【0035】
【0036】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0037】
以前は、反射防止フィルムの反射率を調節するために1種以上の微細粒子を添加したが、反射率を一定水準以上に低くするのには限界があり、また反射防止フィルムの耐スクラッチ性や防汚性が低下する問題点があった。
【0038】
よって、本発明者らは反射防止フィルムに関する研究を行って、前記反射防止フィルムに含まれる低屈折層がバインダー樹脂と高屈折無機ナノ粒子を含み前述の第1領域および第2領域を含み、前記第1領域が楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記Aは1.50~2.00であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足すれば、反射防止フィルムが非常に低い水準の反射率と高い透光率を有しながら高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0039】
具体的に、前記低屈折層に含まれている第1領域に対して、前記Aは1.50~2.00、または1.53~1.90、または1.55~1.85でありながら、下記Bは0~0.10、または0~0.05、または0~0.01でありながら、下記Cは0~0.01、または0~0.005、または0~0.001である条件を満足することができ、これにより、前記実施形態の反射防止フィルムは最適化された屈折率分布を維持しながらもより低い反射率を実現し、スクラッチまたは外部汚染物質に対して相対的に安定的な構造を有することができる。
【0040】
また、前記低屈折層に含まれている第2領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、下記Aは1.0~1.40または1.10~1.40、または1.20~1.40でありながら、下記Bは0~0.1、または0~0.05、または0~0.01でありながら、下記Cは0~0.01、または0~0.005、または0~0.001である条件を満足することができる。
【0041】
前述の低屈折層に含まれている第1領域および第2領域それぞれでのコーシーパラメータA、BおよびCはそれぞれ波長による屈折率および消光係数の変化に関係し、前記低屈折層に含まれている第1領域が前述の前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した結果によるコーシーパラメータA、BおよびC範囲を満足する場合、内部に最適化された電子密度および屈折率分布を維持することができ、これにより非常に低い水準の反射率を実現しながらもスクラッチまたは外部汚染物質に対して相対的に安定的な構造を有することができる。
【0042】
具体的に、前記コーシーパラメータAは最大波長での屈折率に関係し、BおよびCは波長による屈折率の変化程度に関係する。これにより、前記低屈折層に含まれている第1領域および第2領域それぞれが前述の前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した結果によるコーシーパラメータA、BおよびC範囲を満足する場合に、前述の効果がより向上し極大化できる。
【0043】
前記楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率および関連データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))は、前記一実施形態に反射防止フィルムについて前述した方法などで測定および確認することができる。より具体的に、前記楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率は、70°の入射角を適用し380nm~1000nmの波長範囲で線偏光を測定して決定することができる。
【0044】
以下、前述の実施形態の反射防止フィルムの具体的な内容について説明する。
【0045】
前述の実施形態の反射防止フィルムで、前記第1領域および第2領域は、それぞれに含まれる粒子の種類の差や前記粒子の屈折率差、またはそれぞれの領域が有する屈折率の差で区別できる。
【0046】
前記低屈折層で前記第1領域および第2領域それぞれが有する立体形状や断面形状は大きく制限されず、例えば、第1領域および第2領域はそれぞれの境界やこれらの間の界面が明確でない分布形態を有することもでき、また前記第1領域および第2領域それぞれは所定の厚さを有する層(layer)であってもよく、また前記第1領域および第2領域それぞれは視覚的に区分される層(layer)ではないが、楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時に確認される計算上の層(layer)であってもよい。
【0047】
前述のように、前述の実施形態の反射防止フィルムは前述の特定の構成を満足することによって非常に低い水準の反射率を実現することができ、例えば、380nm~780nmの可視光線波長帯領域での平均反射率が0.6%以下、または0.5%以下、または0.4%以下、または0.3%以下の反射率を有することができる。前記反射防止フィルムの平均反射率は裏面に暗色処理を行って測定することができる。
【0048】
前述のように、前記低屈折層は、バインダー樹脂および高屈折無機ナノ粒子を含む第1領域と、バインダー樹脂および低屈折無機ナノ粒子を含む第2領域を含むことができる。
【0049】
前記第1領域のAは1.5~2.00であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足し、第2領域のAは1.0~1.40であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足するか、または前記第1領域に対するA値と前記第2領域に対するA値の差が0.200以上である場合、各界面での反射される光の相殺干渉が効率的に起こるようになって非常に低い反射率を実現することができる。
【0050】
前記高屈折無機ナノ粒子と低屈折無機ナノ粒子それぞれの種類が大きく限定されるのではないが、前記高屈折無機ナノ粒子は1.5以上、または1.55以上の屈折率を有することができ、前記低屈折無機粒子は1.45以下、または1.40以下の屈折率を有することができる。
【0051】
前記高屈折無機ナノ粒子の具体的な例としては、二酸化チタン(TiO2)、三酸化ニアンチモン(Sb2O3)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化錫(SnO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化セリウム(CeO2)、チタン酸ジルコニウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0052】
前記低屈折無機ナノ粒子の具体的な例としては、フッ化マグネシウム(MgF2)、中空シリカおよびメソ多孔質シリカ(mesoporous silica)からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0053】
前記第1領域および第2領域それぞれは、前記バインダー樹脂100重量部に対して高屈折無機ナノ粒子と低屈折無機ナノ粒子それぞれ30~600重量部で含むことができる。
【0054】
前記第1領域および第2領域それぞれで前述の無機ナノ粒子の含量が過多になる場合、前記2種類の粒子が混在して反射率が高くなることがあり、表面凹凸が過多に発生して耐スクラッチ性および防汚性が低下することがある。
【0055】
前記低屈折無機ナノ粒子の平均粒径に対する前記高屈折無機ナノ粒子の平均粒径の比率が0.008~0.55、または0.05~0.5であってもよい。本発明者らは、前記2種類の粒子間の平均粒径の差を前述の比率に調節する場合、最終製造される反射防止フィルムでより低い反射率を確保しながら向上した耐スクラッチ性と防汚性を実現することができるという点を確認した。
【0056】
より具体的に、前記低屈折層で前記高屈折無機ナノ粒子の平均粒径に対する前記低屈折無機ナノ粒子の平均粒径の比率が0.008~0.55、または0.05~0.5であることによって、前記低屈折層内で前記高屈折無機ナノ粒子および低屈折無機ナノ粒子が互いに異なる偏在および分布様相を示すことができ、例えば、前記高屈折無機ナノ粒子および低屈折無機ナノ粒子それぞれが主に分布する位置が前記ハードコーティング層および前記低屈折層間の界面を基準にして互いに異なる距離であってもよい。
【0057】
このように前記低屈折層で前記高屈折無機ナノ粒子および低屈折無機ナノ粒子が主に分布する領域が変わることによって、前記低屈折層が固有の内部構造および成分の配列様相を有するようになってより低い反射率を有することができ、また前記低屈折層の表面特性も共に変わるようになってより向上した耐スクラッチ性と防汚性を実現することができる。
【0058】
前記高屈折無機ナノ粒子および低屈折無機ナノ粒子それぞれの平均粒径はそれぞれ、前記反射防止フィルムのTEM写真(例えば、25,000倍の倍率)で確認される前記高屈折無機ナノ粒子および低屈折無機ナノ粒子の最短粒径を測定して得られた平均値であってもよい。
【0059】
前記反射防止フィルムが前述の特性、例えば、より低い反射率および高い透光率を有しながらより向上され高い耐スクラッチ性および防汚性を実現するために、前記高屈折無機ナノ粒子の平均粒径が1~66nm、または2~55nmの範囲以内であってもよく、また前記低屈折無機ナノ粒子の平均粒径が10~120nm、または30~120nmの範囲以内であってもよい。
【0060】
前記高屈折無機ナノ粒子は、1nm~66nmの直径を有することができる。
【0061】
前記低屈折無機ナノ粒子は、10nm~120nmの直径を有することができる。
【0062】
前記高屈折無機ナノ粒子および低屈折無機ナノ粒子の直径は、低屈折層の断面で確認される最短直径を意味することができる。
【0063】
一方、前述の実施形態の反射防止フィルムで、前記第1領域が第2領域に比べて前記ハードコーティング層および前記低屈折層間の界面により近く位置してもよい。より具体的に、前記第1領域が前記ハードコーティング層および前記低屈折層間の界面に接し、前記第2領域が界面と接する面と異なる一面に前記第1領域が形成できる。
【0064】
前記反射防止フィルムの低屈折層中、前記ハードコーティング層および前記低屈折層間の界面近くに第1領域が位置し、前記界面の反対面側には第2領域が位置することによって、前記低屈折層内に互いに屈折率の異なる2つ以上の部分または2つ以上の層が形成でき、これにより、各界面で反射される光の効率的な相殺干渉によって前記反射防止フィルムの反射率が低くなり得る。
【0065】
前述のように、前記低屈折層で前記第1領域および第2領域は区別される層であってもよいが、より低い反射率を実現するためには連続相として存在しそれぞれに含まれる粒子の種類によって2個の領域に区別されてもよい。即ち、前記低屈折層は、第1領域および第2領域を含む単一層高分子フィルムであってもよい。
【0066】
本明細書で、「単一層高分子フィルム」は所定の組成を有するコーティング液または原料から製造される連続相の単一層が存在するフィルムを意味し、例えば、バインダー樹脂の同一性があり相異なる種類の粒子が偏在して区分される前記第1領域および第2領域のような下位層(sub-layer)を含む場合も含む。前記単一層高分子フィルムは、相異なる組成または構造を有する複数のフィルムが積層されて形成される多層積層体のフィルムと区分される。
【0067】
また、前述のように、前記第1領域および第2領域それぞれが低屈折層内に存在するという点を可視的に確認することができる。例えば、透過電子顕微鏡[Transmission Electron Microscope]または走査電子顕微鏡[Scanning Electron Microscope]などを用いて第1領域および第2領域それぞれが低屈折層内に存在するという点を可視的に確認することができる。
【0068】
前記低屈折層で第1領域および第2領域それぞれは該当領域内で共通の光学特性を共有することができ、これにより、一つの領域として定義できる。より具体的に、前記第1領域および第2領域それぞれは楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、特定のコーシーパラメータA、BおよびCを有するようになり、これにより第1領域および第2領域は互いに区分できる。また、前記楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)を通じて前記第1領域および第2領域の厚さも導出できるため、前記低屈折層内で第1領域および第2領域を一定の層(layer)とも定義することができる。
【0069】
一方、前記楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時に導出されるコーシーパラメータA、BおよびCは、一つの領域内での平均値であってもよい。これにより、前記第1領域および第2領域の間に界面が存在する場合、前記第1領域および第2領域が有するコーシーパラメータA、BおよびCが重畳する領域が存在できる。但し、このような場合にも、前記第1領域および第2領域それぞれが有するコーシーパラメータA、BおよびCの平均値を満足する領域によって、前記第1領域および第2領域の厚さおよび位置が特定できる。
【0070】
一方、前記低屈折層で、バインダー樹脂および高屈折無機ナノ粒子を含む第1領域と、バインダー樹脂および低屈折無機ナノ粒子を含む第2領域とを形成する方法が大きく制限されるわけではない。例えば、高屈折無機ナノ粒子と低屈折無機ナノ粒子を含むコーティング溶液で乾燥温度や乾燥方法またはコーティング方法などを調節することによって達成可能であり、具体的に熱風乾燥方法などを使用することができる。
【0071】
一方、前記第1領域は、20nm~300nm、または50~270nm、または60~250nmの厚さを有することができる。また、前記第2領域は、70nm~400nm、または80~300nm、または90~200nmの厚さを有することができる。
【0072】
前記第1領域および第2領域の厚さは、楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)を通じても確認することができる。
【0073】
一方、前記第2領域に対する第1領域の厚さ比率が、0.25~4、または0.3~3、または0.4~2.5であってもよい。前記第1領域に対する第2領域の厚さ比率が0.25~4であることによって、各界面で反射される光の相殺干渉が適切に発生できる。
【0074】
一方、前述の実施形態の反射防止フィルムで、前記低屈折層に含まれる第1領域と第2領域は相異なる範囲の屈折率を有することができる。
【0075】
より具体的に、前記低屈折層に含まれる第1領域は、550nmで1.55~2.50、または1.55~2.30、または1.55~2.10、または1.55~2.00の屈折率を有することができる。
【0076】
また、前記低屈折層に含まれる第2領域は、550nmで1.0~1.45、または1.1~1.45、または1.2~1.45の屈折率を有することができる。
【0077】
前述の屈折率の測定は通常知られた方法を使用することができ、例えば、前記低屈折層に含まれる第1領域と第2領域それぞれに対して380nm~1,000nmの波長で測定された楕円偏光とコーシーモデルを用いて550nmでの屈折率を計算して決定することができる。
【0078】
前記低屈折層に含まれる第1領域と第2領域それぞれが前述の屈折率を有することによって、各界面で反射される光の相殺干渉が効率的に起こって低い反射率を実現することができる。
【0079】
一方、前記低屈折層に含まれるバインダー樹脂は、光重合性化合物の(共)重合体および光反応性官能基を含む含フッ素化合物間の架橋(共)重合体を含むことができる。
【0080】
具体的に、前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。より具体的に、前記光重合性化合物は、(メタ)アクリレートまたはビニル基を1以上、または2以上、または3以上含む単量体またはオリゴマーを含むことができる。
【0081】
前記(メタ)アクリレートを含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートまたはこれらの2種以上の混合物や、またはウレタン変性アクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー、デンドリティックアクリレートオリゴマー、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。この時、前記オリゴマーの分子量は、1,000~10,000であるのが好ましい。
【0082】
前記ビニル基を含む単量体またはオリゴマーの具体的な例としては、ジビニルベンゼン、スチレンまたはパラメチルスチレンが挙げられる。
【0083】
一方、前記光重合性化合物は、前述の単量体またはオリゴマー以外にフッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーをさらに含むことができる。前記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーをさらに含む場合、前記(メタ)アクリレートまたはビニル基を含む単量体またはオリゴマーに対する前記フッ素系(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーの重量比は、0.1%~10%であってもよい。
【0084】
一方、前記低屈折層には前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物に由来した部分が含まれてもよい。
【0085】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物には1以上の光反応性官能基が含まれるかまたは置換されてもよく、前記光反応性官能基は光の照射によって、例えば可視光線または紫外線の照射によって重合反応に参加できる官能基を意味する。前記光反応性官能基は光の照射によって重合反応に参加できると知られた多様な官能基を含むことができ、その具体的な例としては(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)またはチオール基(Thiol)が挙げられる。
【0086】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物それぞれは、2,000~200,000、好ましくは5,000~100,000の重量平均分子量(GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)を有することができる。
【0087】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物の重量平均分子量が過度に小さければ、前記光硬化性コーティング組成物で含フッ素化合物が表面に均一かつ効果的に配列されず最終製造される低屈折層の内部に位置するようになり、これによって前記低屈折層の表面が有する防汚性が低下し前記低屈折層の架橋密度が低まって全体的な強度や耐スクラッチ性などの機械的物性が低下することがある。
【0088】
また、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物の重量平均分子量が過度に高ければ、前記光硬化性コーティング組成物で他の成分との相溶性が低下することがあり、これにより、最終製造される低屈折層のヘイズが高まるか光透過度が低下することがあり、前記低屈折層の強度も低下することがある。
【0089】
具体的に、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換され、一つ以上の炭素がケイ素で置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つのケイ素に1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子(例えば、ポリジメチルシロキサン系高分子);iv)1以上の光反応性官能基で置換され少なくとも一つの水素がフッ素で置換されたポリエーテル化合物、または前記i)~iv)のうちの2以上の混合物またはこれらの共重合体が挙げられる。
【0090】
前記光硬化性コーティング組成物は、前記光重合性化合物100重量部に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物20~300重量部を含むことができる。
【0091】
前記光重合性化合物に対して前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物が過量で添加される場合、前記実施形態の光硬化性コーティング組成物のコーティング性が低下するか前記光硬化性コーティング組成物から得られた低屈折層が十分な耐久性や耐スクラッチ性を有しないことがある。また、前記光重合性化合物に対する前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物の量が過度に小さければ、前記光硬化性コーティング組成物から得られた低屈折層が十分な防汚性や耐スクラッチ性などの機械的物性を有しないことがある。
【0092】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、ケイ素またはケイ素化合物をさらに含むことができる。即ち、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は選択的に内部にケイ素またはケイ素化合物を含有することができ、具体的に前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物中のケイ素の含量は0.1重量%~20重量%であってもよい。
【0093】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物に含まれるケイ素は、前記実施形態の光硬化性コーティング組成物に含まれる他の成分との相溶性を高めることができ、これにより、最終製造される屈折層にヘイズ(haze)が発生することを防止して透明度を高める役割を果たすことができる。一方、前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物中のケイ素の含量が過度に大きくなれば、前記光硬化性コーティング組成物に含まれている他の成分と前記含フッ素化合物間の相溶性がむしろ低下することがあり、これにより、最終製造される低屈折層や反射防止フィルムが十分な透光度や反射防止性能を有さず表面の防汚性も低下することがある。
【0094】
一方、前記ハードコーティング層としては、通常知られたハードコーティング層を大きな制限なく使用することができる。
【0095】
前記ハードコーティング層の一例として、光硬化性樹脂を含むバインダー樹脂および前記バインダー樹脂に分散された有機または無機微粒子;を含むハードコーティング層が挙げられる。
【0096】
前記ハードコーティング層に含まれる光硬化型樹脂は、紫外線などの光が照射されれば重合反応を起こすことができる光硬化型化合物の重合体であって、当業界で通常のものであってもよい。具体的に、前記光硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、およびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体群より選択される1種以上を含むことができる。
【0097】
前記有機または無機微粒子は粒径が具体的に限定されるのではないが、例えば、有機微粒子は1~10μmの粒径を有することができ、前記無機微粒子は1nm~500nm、または1nm~300nmの粒径を有することができる。前記有機または無機微粒子の粒径は体積平均粒径と定義できる。
【0098】
また、前記ハードコーティング層に含まれる有機または無機微粒子の具体的な例が限定されるのではないが、例えば、前記有機または無機微粒子はアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシド樹脂およびナイロン樹脂からなる有機微粒子であるか、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる無機微粒子であってもよい。
【0099】
前記ハードコーティング層のバインダー樹脂は、重量平均分子量10,000以上の高分子量(共)重合体をさらに含むことができる。前記高分子量(共)重合体は、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、およびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0100】
前記ハードコーティング層のまた他の一例として、光硬化性樹脂のバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した帯電防止剤を含むハードコーティング層が挙げられる。
【0101】
前記ハードコーティング層に含まれる光硬化型樹脂は紫外線などの光が照射されれば重合反応を起こすことができる光硬化型化合物の重合体であって、当業界で通常のものであってもよい。但し、好ましくは、前記光硬化型化合物は多官能性(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーであってもよく、この時、(メタ)アクリレート系官能基の数は2~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~7であることが、ハードコーティング層の物性確保の面で有利である。より好ましくは、前記光硬化型化合物は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0102】
前記帯電防止剤は、4級アンモニウム塩化合物;ピリジニウム塩;1~3個のアミノ基を有する陽イオン性化合物;スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などの陰イオン性化合物;アミノ酸系またはアミノ硫酸エステル系化合物などの陽性化合物;イミノアルコール系化合物、グリセリン系化合物、ポリエチレングリコール系化合物などの非イオン性化合物;錫またはチタンなどを含む金属アルコキシド化合物などの有機金属化合物;前記有機金属化合物のアセチルアセトナート塩などの金属キレート化合物;このような化合物の2種以上の反応物または高分子化物;このような化合物の2種以上の混合物であってもよい。ここで、前記4級アンモニウム塩化合物は、分子内に1つ以上の4級アンモニウム塩基を有する化合物であってもよく、低分子型または高分子型を制限なく使用することができる。
【0103】
また、前記帯電防止剤としては、導電性高分子と金属酸化物微粒子も使用することができる。前記導電性高分子としては、芳香族共役系ポリ(パラフェニレン)、ヘテロ環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、脂肪族共役系のポリアセチレン、ヘテロ原子を含む共役系のポリアニリン、混合形態共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を有する共役系である複鎖型共役系化合物、共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重合させた導電性複合体などがある。また、前記金属酸化物微粒子としては、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫、酸化セリウム、インジウム錫酸化物、酸化インジウム、酸化アルミニウム、アンチモンドーピングされた酸化錫、アルミニウムドーピングされた酸化亜鉛などが挙げられる。
【0104】
前記光硬化性樹脂のバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した帯電防止剤を含むハードコーティング層は、アルコキシシラン系オリゴマーおよび金属アルコキシド系オリゴマーからなる群より選択される1種以上の化合物をさらに含むことができる。
【0105】
前記アルコキシシラン系化合物は当業界で通常のものであってもよいが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0106】
また、前記金属アルコキシド系オリゴマーは、金属アルコキシド系化合物および水を含む組成物のゾル-ゲル反応を通じて製造することができる。前記ゾル-ゲル反応は、前述のアルコキシシラン系オリゴマーの製造方法に準ずる方法で行うことができる。
【0107】
但し、前記金属アルコキシド系化合物は水と急激に反応することがあるので、前記金属アルコキシド系化合物を有機溶媒に希釈した後、水を徐々にドロッピングする方法で前記ゾル-ゲル反応を行うことができる。この時、反応効率などを勘案して、水に対する金属アルコキシド化合物のモル比(金属イオン基準)は3~170の範囲内で調節することが好ましい。
【0108】
ここで、前記金属アルコキシド系化合物は、チタニウムテトラ-イソプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、およびアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0109】
前記ハードコーティング層は、0.1μm~100μmの厚さを有することができる。
【0110】
前述のように、前記ハードコーティング層は、反射防止フィルムに使用できると知られた材質であれば大きな制限なく使用することができる。具体的に、ハードコーティング層形成用高分子樹脂組成物を基材上に塗布し光硬化する段階を通じてハードコーティング層を形成することができる。前記ハードコーティング層形成に使用される成分に関しては前記一実施形態の反射防止フィルムに関して前述した通りである。
【0111】
前記ハードコーティング層形成用高分子樹脂組成物を光硬化させる段階では200~400nm波長の紫外線または可視光線を照射することができ、照射時露光量は100~4,000mJ/cm2が好ましい。露光時間も特に限定されるのではなく、使用される露光装置、照射光線の波長または露光量によって適切に変化させることができる。また、前記ハードコーティング層形成用高分子樹脂組成物を光硬化させる段階では窒素大気条件を適用するために窒素パージなどを行うことができる。
【0112】
前述の実施形態の反射防止フィルムは、前記ハードコーティング層の他の一面に結合された光透過性基材を含むことができる。前記光透過性基材の具体的な種類や厚さは大きく限定されるのではなく、低屈折層または反射防止フィルムの製造に使用されると知られた基材を大きな制限なく使用することができる。
【0113】
より具体的に、前記光透過性基材は、光透過度が90%以上であり、ヘイズ1%以下である透明フィルムであってもよい。
【0114】
前記光透過性基材は、環状オレフィン系高分子(cycloolefin polymer)フィルム、ポリ(メタ)アクリレート系フィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリノルボルネン(polynorbornene)フィルムおよびポリエステルフィルムからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0115】
前記光透過性基材の厚さは、生産性などを考慮して10~300μmであってもよいが、これに限定するのではない。
【0116】
より具体的に、前記反射防止フィルムは、波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のリタデーション(Rth)が3,000nm以上、または5,000nm以上、または5,000nm~20,000nmである光透過性基材をさらに含むことができる。このような光透過性基材の具体的な例としては、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたは二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0117】
前記反射防止フィルムが、前記波長400nm~800nmで測定される厚さ方向のリタデーション(Rth)が3,000nm以上、5,000nm以上、または5,000nm~20,000nmである光透過性基材を含む場合、3,000nm以下のリタデーションを使用する場合に比べて可視光線の干渉によるレインボー現象が緩和され、透湿率が小さくてディスプレイ装置で光漏れ現象を緩和することができる。
【0118】
厚さ方向のリタデーション(Rth)は、通常知られた測定方法および測定装置を通じて確認することができる。例えば、厚さ方向のリタデーション(Rth)の測定装置としては、AXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)」などが挙げられる。
【0119】
例えば、厚さ方向のリタデーション(Rth)の測定条件としては、前記光透過性基材フィルムに対して、屈折率(589nm)値を前記測定装置に入力した後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を使用して、光透過性基材フィルムの厚さ方向のリタデーションを測定し、求められた厚さ方向のリタデーション測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚さ10μm当りリタデーション値に換算することによって求めることができる。また、測定試料の光透過性基材のサイズは、測定器のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければよいため、特に制限されないが、縦76mm、横52mm、厚さ13μmの大きさにすることができる。
【0120】
また、厚さ方向のリタデーション(Rth)の測定に用いる「前記光透過性基材の屈折率(589nm)」の値は、リタデーションの測定対象になるフィルムを形成する光透過性基材と同一な種類の樹脂フィルムを含む未延伸フィルムを形成した後、このような未延伸フィルムを測定試料として使用し(また、測定対象になるフィルムが未延伸フィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として使用することができる)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR-1T SOLID」)を使用し、589nmの光源を使用し、23℃の温度条件で、測定試料の面内方向(厚さ方向とは垂直の方向)の589nmの光に対する屈折率を測定して求めることができる。
【0121】
発明の他の実施形態によれば、前述の一実施形態の反射防止フィルムを含む偏光板を提供することができる。
【0122】
前記偏光板は、偏光膜と、前記偏光膜の少なくとも一面に形成された反射防止フィルムを含むことができる。
【0123】
前記偏光膜の材料および製造方法は特に限定せず、当技術分野に知られている通常の材料および製造方法を使用することができる。例えば、前記偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光膜であってもよい。
【0124】
前記偏光膜と反射防止フィルムの間には保護フィルムが備えられてもよい。
【0125】
前記保護フィルムの例が限定されるのではなく、例えば、COP(環状オレフィン系高分子、cycloolefin polymer)系フィルム、アクリル系フィルム、TAC(トリアセチルセルロース、triacetylcellulose)系フィルム、COC(環状オレフィン共重合体cycloolefin copolymer)系フィルム、PNB(ポリノルボルネン、polynorbornene)系フィルム、およびPET(ポリエチレンテレフタレート、polyethylene terephthalate)系フィルムのうちのいずれか一つ以上であってもよい。
【0126】
前記保護フィルムは、前記反射防止フィルムの製造時単一コーティング層を形成するための基材がそのまま使用されてもよい。
【0127】
前記偏光膜と前記反射防止フィルムは、水系接着剤または非水系接着剤などの接着剤によって張り合わせることができる。
【0128】
発明のまた他の実施形態によれば、前述の反射防止フィルムを含むディスプレイ装置を提供することができる。
【0129】
前記ディスプレイ装置の具体的な例が限定されるのではなく、例えば、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)、プラズマディスプレイ装置、有機発光ダイオード装置(Organic Light Emitting Diodes)などの装置であってもよい。
【0130】
一例として、前記ディスプレイ装置は、互いに対向する一対の偏光板;前記一対の偏光板の間に順次に積層された薄膜トランジスタ、カラーフィルタ、および液晶セル;およびバックライトユニットを含む液晶ディスプレイ装置であってもよい。
【0131】
前記ディスプレイ装置で、前記反射防止フィルムはディスプレイパネルの観測者側またはバックライト側の最外殻表面に備えられてもよい。
【0132】
前記反射防止フィルムを含むディスプレイ装置は、一対の偏光板のうちの相対的にバックライトユニットと距離が遠い偏光板の一面に反射防止フィルムが配置されてもよい。
【0133】
また、前記ディスプレイ装置は、ディスプレイパネル、前記パネルの少なくとも一面に備えられた偏光膜および前記偏光膜のパネルと接する反対側面に備えられた反射防止フィルムを含むことができる。
【発明の効果】
【0134】
本発明によれば、高い透光率、高い耐スクラッチ性および防汚性を有しながらも低い反射率を実現してディスプレイ装置の画面の鮮明度を高めることができる反射防止フィルムと、前記反射防止フィルムを含む偏光板と、前記反射防止フィルムを含み高い画面の鮮明度を提供するディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0135】
発明を下記実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0136】
<製造例>
製造例1:ハードコーティング層(HD1)の製造
KYOEISHA社塩タイプの帯電防止ハードコーティング液(固形分50重量%、製品名:LJD-1000)をトリアセチルセルロース(TAC)フィルムに#10 mayer barでコーティングし90℃で1分乾燥した以後、150mJ/cm2の紫外線を照射して約5μmの厚さを有するハードコーティングフィルムを製造した。
【0137】
製造例2:ハードコーティング層(HD2)の製造
ペンタエリスリトールトリアクリレート30g、高分子量共重合体(BEAMSET371、Arakawa社、Epoxy Acrylate、分子量40,000)2.5g、メチルエチルケトン20g、およびレべリング剤(Tego wet 270)0.5gを均一に混合した以後に、屈折率が1.525である微粒子としてアクリル-スチレン共重合体(体積平均粒径:2μm、製造社:Sekisui Plastic)2gを添加してハードコーティング組成物を製造した。
【0138】
このように得られたハードコーティング組成物をPETフィルム(厚さ80μm、リタデーション10000nm)に#10 mayer barでコーティングし、90℃で1分間乾燥した。前記乾燥物に150mJ/cm2の紫外線を照射して5μmの厚さを有するハードコーティング層を製造した。
【0139】
<実施例1~6:反射防止フィルムの製造>
(1)低屈折層製造用光硬化性コーティング組成物の製造
実施例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals)190重量部、ソリッド型ZrO2粒子(直径:約16nm)572重量部、含フッ素化合物(RS-923、DIC社)73重量部、開始剤(Irgacure 127、Ciba社)16.2重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度3重量%になるように希釈した。
【0140】
実施例2
トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals)97.5重量部、ソリッド型ZrO2粒子(直径:約16nm)244重量部、含フッ素化合物(RS-923、DIC社)37.5重量部、開始剤(Irgacure 127、Ciba社)9.3重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度3.2重量%になるように希釈した。
【0141】
実施例3
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals)133重量部、ソリッド型TiO2粒子(直径:約18nm)433重量部、含フッ素化合物(RS-923、DIC社)51.3重量部、開始剤(Irgacure127、Ciba社)11.3重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度3.1重量%になるように希釈した。
【0142】
実施例4
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals)190重量部、ソリッド型TiO2粒子(直径:約18nm)590重量部、含フッ素化合物(RS-923、DIC社)33.5重量部、開始剤(Irgacure 127、Ciba社)10重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度3.3重量%になるように希釈した。
【0143】
実施例5
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals)185重量部、ソリッド型TiO2粒子(直径:約18nm)244重量部、含フッ素化合物(RS-923、DIC社)50重量部、開始剤(Irgacure 127、Ciba社)9.3重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度3.2重量%になるように希釈した。
【0144】
実施例6
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals)155重量部、ソリッド型CeO2粒子(直径:約11nm)220重量部、含フッ素化合物(RS-923、DIC社)45.2重量部、開始剤(Irgacure 127、Ciba社)8.1重量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)に固形分濃度3.4重量%になるように希釈した。
【0145】
(2-1)低屈折層および反射防止フィルムの製造
前記製造例1のハードコーティング層(HD1)上に、前記で得られた光硬化性コーティング組成物を#5 mayer barで厚さが約250nmになるようにコーティングし、下記表1の温度および時間で乾燥および硬化した。前記硬化時には窒素パージ下で前記乾燥されたコーティング物に252mJ/cm2の紫外線を照射した。
【0146】
(2-2)低屈折層および反射防止フィルムの製造
前記製造例2のハードコーティング層(HD2)上に、前記で得られた光硬化性コーティング組成物を#5 mayer barで厚さが約260nmになるようにコーティングし、下記表1の温度および時間で乾燥および硬化した。前記硬化時には窒素パージ下で前記乾燥されたコーティング物に252mJ/cm2の紫外線を照射した。
【0147】
【0148】
<比較例:反射防止フィルムの製造>
比較例1
前記実施例1と同様な方法で低屈折層製造用光硬化性コーティング組成物を製造し、常温で2分間乾燥したことを除いては同様な方法で反射防止フィルムを製造した。
【0149】
比較例2
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)100重量部に対して、中空型シリカナノ粒子(直径:約50~60nm、JSC catalyst and chemicals社製品)281重量部、ソリッド型SiO2粒子(直径:約12nm)63重量部、含フッ素化合物(RS-537、DIC社)150重量部、開始剤(Irgacure 127、Ciba社)31重量部を、MIBK(メチルイソブチルケトン、methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度3重量%になるように希釈した。
【0150】
比較例3
前記実施例1で使用したソリッド型ZrO2粒子を110nm大きさのソリッド型ZnO2粒子で代替した点を除いて、前記実施例2と同様な方法で低屈折層製造用光硬化性コーティング組成物を製造し、実施例2と同様な方法で反射防止フィルムを製造した。
【0151】
<実験例:反射防止フィルムの物性測定>
前記実施例および比較例で得られた反射防止フィルムに対して次のような項目の実験を施行した。
【0152】
1.反射防止フィルムの反射率測定
前記実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの裏面を暗色処理した以後にSolidspec 3700(SHIMADZU)の反射率(Reflectance)モードを用いて380nm~780nm波長領域での平均反射率を測定した。
【0153】
2.防汚性測定
実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面に黒い色ネイムペンで5cm長さの直線を描き、無塵布を用いて擦った時に消される回数を確認して防汚性を測定した。
【0154】
<測定基準>
O:消される時点が10回以下、
△:消される時点が11回~20回
X:消される時点が20回超過
【0155】
3.耐スクラッチ性測定
スチールウール(#0000)に荷重をかけて27rpmの速度で10回往復しながら実施例および比較例で得られた反射防止フィルムの表面を擦った。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチ一つ以下が観察される最大荷重を測定した。
【0156】
4.楕円偏光法(ellipsometry)測定
前記実施例および比較例それぞれで得られた低屈折率層に対して楕円偏光法(ellipsometry)で偏極の楕円率を測定した。
【0157】
具体的に、前記実施例および比較例それぞれで得られた低屈折率層に対してJ.A.Woollam Co.M-2000の装置を用いて、70°の入射角を適用し380nm~1000nmの波長範囲で線偏光を測定した。前記測定された線偏光測定データ(Ellipsometry data(Ψ、Δ))をComplete EASE softwareを用いて前記低屈折率層の第1、2層(Layer1、Layer2)に対して下記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)でMSEが3以下になるように最適化(fitting)した。
【0158】
【0159】
上記一般式1で、n(λ)はλ波長での屈折率(refractive index)であり、λは300nm~1800nmの範囲であり、A、BおよびCはコーシーパラメータである。
【0160】
5.屈折率の測定
前記実施例で得られた低屈折率層に含まれる第1領域と第2領域それぞれに対して380nm~1,000nmの波長で測定された楕円偏光とコーシーモデルを用いて550nmでの屈折率を測定した。
【0161】
【0162】
【0163】
上記表2で確認されるように、前記低屈折層に含まれている第2領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記Aは1.0~1.40であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足するという点が確認され、前記低屈折層に含まれている第1領域に対して楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、前記Aは1.50~2.00であり、Bは0~0.10であり、Cは0~0.01の条件を満足するという点が確認された。
【0164】
また、前記表2に示されているように、実施例の反射防止フィルムは可視光線領域で0.50%以下の低い反射率を示しながら高い耐スクラッチ性および防汚性を同時に実現することができるという点が確認された。また、前記表3に示されているように、実施例の低屈折層に含まれる第1領域と第2領域は相異なる範囲の屈折率を示し、具体的に前記低屈折層の第1領域は1.55以上の屈折率を示し、前記低屈折層の第2領域は1.45以下の屈折率を示すという点が確認された。
【0165】
また、比較例1~3の反射防止フィルムは、楕円偏光法(ellipsometry)で測定した偏極の楕円率を前記一般式1のコーシーモデル(Cauchy model)で最適化(fitting)した時、実施例の反射防止フィルムと測定結果およびコーシーモデル(Cauchy model)による最適化(fitting)結果で相異なる範囲を示し、また相対的に高い反射率を示しながら低い耐スクラッチ性および防汚性を有するという点が確認された。
【0166】
特に、実施例の反射防止フィルムでは0.4%以下の平均反射率が実現されるのに対し、比較例1および3の反射防止フィルムは1.2%または1.3%の平均反射率を示し、比較例2の反射防止フィルムは0.68%の平均反射率を示して、実施例の反射防止フィルムが大きく低まった平均反射率を実現することができるという点が確認された。